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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-10
(45)【発行日】2022-01-12
(54)【発明の名称】ベンゾトリアゾール誘導体化合物
(51)【国際特許分類】
   C07D 401/10 20060101AFI20220104BHJP
   G02B 5/20 20060101ALI20220104BHJP
【FI】
C07D401/10 CSP
G02B5/20
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2017058303
(22)【出願日】2017-03-23
(65)【公開番号】P2018158912
(43)【公開日】2018-10-11
【審査請求日】2020-02-13
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成26年度経済産業省近畿経済産業局の委託に係わる戦略的基盤技術高度化支援事業委託研究で、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】301000675
【氏名又は名称】シプロ化成株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000190895
【氏名又は名称】新中村化学工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】519135633
【氏名又は名称】公立大学法人大阪
(74)【代理人】
【識別番号】100126549
【弁理士】
【氏名又は名称】中川 信治
(72)【発明者】
【氏名】上坂 敏之
(72)【発明者】
【氏名】石谷 朋之
(72)【発明者】
【氏名】藤原 貴文
(72)【発明者】
【氏名】吉田 彰次郎
(72)【発明者】
【氏名】〆野 孝仁
(72)【発明者】
【氏名】中澄 博行
(72)【発明者】
【氏名】前田 壮志
【審査官】早乙女 智美
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-169181(JP,A)
【文献】PL 107741 B1
【文献】Bojinov, V. B. et al.,Novel functionalized 2-(2-hydroxyphenyl)-benzotriazole-benzo[de]isoquinoline-1,3-dione fluorescent U,Journal of Photochemistry and Photobiology A: Chemistry,2005年,172,p.308-315
【文献】Bojinov, V. et al.,Novel adducts of a 2-(2-hydroxyphenyl)-benzotriazole and a blue emitting benzo[de]isoquinoline-1,3-d,Polymer Degradation and Stability,2005年,88,p.420-427
【文献】BOJINOV, V. B. et al.,Synthesis and absorption properties of new yellow-green emitting benzo[de]isoquinoline-1,3-diones containing hindered amine and 2-hydroxyphenylbenzotriazole fragments,Dyes and Pigments,2007年,74(3),pp. 551-560
【文献】BOJINOV, V. et al.,Synthesis of novel fluorophores-combination of hindered amine and UV absorber in the molecule of benzo[de]isoquinoline-1,3-dione,Journal of the University of Chemical Technology and Metallurgy,2006年,41(3),pp. 277-284
【文献】Bojinov, V. B. et al.,Novel 4-(2,2,6,6-tetramethylpiperidin-4-ylamino)-1,8-naphthalimide based yellow-green emitting fluor,Dyes and Pigments,2009年,80,p.61-66
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D
CAplus/REGISTRY(STN)
JSTPlus/JST7580/JSTChina(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の一般式(1)で表されることを特徴とするベンゾトリアゾール誘導体化合物。
【化1】
一般式(1)
[式中Rはホルミル基、アルキル炭素数1~7のアルキルカルボニル基、ベンゾイル基、トルオイル基、アクリロイル基またはメタクリロイル基を表し、Rは水素原子、炭素数1~18の直鎖アルキル基、アルキル炭素数1~7のカルボキシ直鎖アルキル基、各アルキル炭素数の合計が2~15のアルキルオキシカルボニル直鎖アルキル基、炭素数1~8のヒドロキシ直鎖アルキル基、各アルキル炭素数の合計が2~15のアルキルカルボニルオキシ直鎖アルキル基、アルキル炭素数1~8のアクリロイルオキシ直鎖アルキル基、又はアルキル炭素数1~8のメタクリロイルオキシ直鎖アルキル基を表し、Rは水素原子、ハロゲン原子、炭素数1~18のアルキル基、アルキル炭素数1~7のカルボキシアルキル基、各アルキル炭素数の合計が2~15のアルキルオキシカルボニルアルキル基、炭素数1~8のヒドロキシアルキル基、各アルキル炭素数の合計が2~15のアルキルカルボニルオキシアルキル基、ヒドロキシル基、炭素数1~18のアルコキシ基、アミノ基、アルキル炭素数1~4のモノアルキルアミノ基、各アルキル炭素数の合計が2~8のジアルキルアミノ基、ニトロ基、カルボキシル基、アルキル炭素数1~8のアルキルオキシカルボニル基、またはシアノ基を表す]
【請求項2】
上記一般式(1)におけるRがホルミル基、またはアルキル炭素数1~7のアルキルカルボニル基であり、Rが水素原子、炭素数1~8の直鎖アルキル基、アルキル炭素数1~7のカルボキシ直鎖アルキル基、各アルキル炭素数の合計が2~15のアルキルオキシカルボニル直鎖アルキル基、炭素数1~8のヒドロキシ直鎖アルキル基、又は各アルキル炭素数の合計が2~15のアルキルカルボニルオキシ直鎖アルキル基であり、Rが水素原子、またはハロゲン原子である請求項1記載のベンゾトリアゾール誘導体化合物。
【請求項3】
請求項1または2に記載のベンゾトリアゾール誘導体化合物を含有する波長変換材料。
【請求項4】
請求項3に記載の波長変換材料を用いた波長変換フィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ナフタルイミドを含有する新規なベンゾトリアゾール誘導体化合物に関し、さらに、これを含有する波長変換材料、およびそれを用いた波長変換フィルムに関する。さらに詳しくは、340nm付近の紫外線を強く吸収して450~470nm付近の強い青色発光を示す優れた波長変換性を示し、同時に優れた耐光性を示す波長変換材料、およびそれを用いた波長変換フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
波長変換材料は照射された特定の波長の光を吸収して別の波長の光を放出する材料であり、単体、有機溶媒中、フィルム中などで用いられ、幅広い分野で使用されている。
【0003】
太陽電池は一般的に紫外域の感度が低く、太陽光に含まれる紫外線を十分活用できていないため、紫外線を可視光に変換する波長変換フィルムを太陽電池表面に取り付けることで、感度が高い可視光域の光をより多く取り入れて、太陽電池の効率を向上させることが実施されている。また、ビニールハウスのフィルムに波長変換材料を添加することで、特定の波長の光をより多く植物に当て、植物の生育を促進させることが実施されている。
【0004】
上記の各用途で使用される波長変換材料には、紫外線または可視光を十分吸収して強い光を発する、優れた波長変換性があることが求められており、さらに太陽光が直接照射されることから、太陽光に含まれる紫外線により変質しない高い安定性が要求される。すなわち、物質が光を吸収する程度を示す指標であるモル吸光係数が高く、吸収された光子数に対する放出された光子数の比で表される蛍光量子効率が高く、紫外線に対する耐性の指標である耐光性が高い波長変換材料が求められており、モル吸光係数、蛍光量子効率および耐光性が高いほど優れた波長変換材料となる。
【0005】
波長変換材料はフィルム等の樹脂中で使用されることが多く、固体状態で波長変換性が優れていることが求められており、さらに、波長変換材料自体のブリードが起こらないような、樹脂との相溶性が高い波長変換材料が求められている。また、波長変換材料はフィルム等の表面に成膜して使用されることが多く、成膜時に有機溶媒に溶解させる必要があり、有機溶媒に溶解しやすい波長変換材料が求められている。
【0006】
これまで波長変換性に優れた波長変換材料が各種提案されており、それを用いた波長変換フィルムを取り付けることで、太陽電池の効率向上や植物の生育促進が示されている。しかしながら、耐光性に優れた波長変換材料は少なく、特に紫外線を青色光に効率よく変換する波長変換性と耐光性を両立する波長変換材料はほとんどない。
【0007】
波長変換材料としては一般的に有機蛍光色素が用いられており、例えば非特許文献1に記載されているように、オキサジアゾール誘導体、トリアゾール誘導体等が提案されている。しかし、これらの化合物のモル吸光係数および蛍光量子効率はすべてが十分大きいと言えず、特に青色蛍光色素の固体蛍光量子効率が不十分であり、波長変換性が高いとは言えない。また、青色蛍光色素の耐光性の記載がされていない。
【0008】
太陽電池用および農業用波長変換フィルムでは、例えば特許文献1~3に記載されているように、ベンゾ複素環誘導体、キノリノール誘導体の金属錯体、フェナジン誘導体、オキサゾール誘導体等を波長変換材料として使用することが提案されており、波長変換フィルムを用いることで太陽電池の効率向上および植物の生育促進が示されている。しかしながら、これら波長変換材料の耐光性は十分ではないか、または耐光性への言及がない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】特開2014-98156号公報
【文献】特開2012-188473号公報
【文献】特開2010-88420号公報
【0010】
【文献】ファインケミカル2011年2月号 vol.40 No.2 p52
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
このような状況下、本発明における課題は、溶液およびフィルム状態において紫外線を青色光に効率よく変換する優れた波長変換性を示し、紫外線が照射しても劣化しない優れた耐光性を示す波長変換材料になりうる新規化合物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明では、下記一般式(1)で示されるベンゾトリアゾール誘導体化合物を、波長変換材料、および波長変換フィルムに用いることを上記課題の主要な解決手段とする。
【化1】
一般式(1)
[式中Rはホルミル基、アルキル炭素数1~7のアルキルカルボニル基、ベンゾイル基、トルオイル基、アクリロイル基またはメタクリロイル基を表し、Rは水素原子、炭素数1~18の直鎖アルキル基、アルキル炭素数1~7のカルボキシ直鎖アルキル基、各アルキル炭素数の合計が2~15のアルキルオキシカルボニル直鎖アルキル基、炭素数1~8のヒドロキシ直鎖アルキル基、各アルキル炭素数の合計が2~15のアルキルカルボニルオキシ直鎖アルキル基、アルキル炭素数1~8のアクリロイルオキシ直鎖アルキル基、又はアルキル炭素数1~8のメタクリロイルオキシ直鎖アルキル基を表し、Rは水素原子、ハロゲン原子、炭素数1~18のアルキル基、アルキル炭素数1~7のカルボキシアルキル基、各アルキル炭素数の合計が2~15のアルキルオキシカルボニルアルキル基、炭素数1~8のヒドロキシアルキル基、各アルキル炭素数の合計が2~15のアルキルカルボニルオキシアルキル基、ヒドロキシル基、炭素数1~18のアルコキシ基、アミノ基、アルキル炭素数1~4のモノアルキルアミノ基、各アルキル炭素数の合計が2~8のジアルキルアミノ基、ニトロ基、カルボキシル基、アルキル炭素数1~8のアルキルオキシカルボニル基、またはシアノ基を表す]
請求項3に記載の波長変換材料を用いた波長変換フィルム。
【0013】
上記一般式(1)で示されるベンゾトリアゾール誘導体化合物は、好ましくは、Rがホルミル基、またはアルキル炭素数1~7のアルキルカルボニル基であり、Rが水素原子、炭素数1~8の直鎖アルキル基、アルキル炭素数1~7のカルボキシ直鎖アルキル基、各アルキル炭素数の合計が2~15のアルキルオキシカルボニル直鎖アルキル基、炭素数1~8のヒドロキシ直鎖アルキル基、又は各アルキル炭素数の合計が2~15のアルキルカルボニルオキシ直鎖アルキル基であり、Rが水素原子、またはハロゲン原子である。
【発明の効果】
【0014】
本発明の一般式(1)で示されるベンゾトリアゾール誘導体化合物は、340nm付近の紫外線を強く吸収して450~470nm付近の強い青色発光を示し、モル吸光係数が約27000であり、蛍光量子効率が溶液で約60%、フィルムで約30%であることから、紫外線を青色光に変換する波長変換性が高く、さらに耐光性が従来の波長変換材料より高いため、従来技術の課題を解決し得る波長変換材料、および波長変換フィルムとして有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下に本発明につき詳細に説明する。本発明は波長変換材料、および波長変換フィルムとして、下記一般式(1)で示されるベンゾトリアゾール誘導体化合物を用いたものである。以下に下記一般式(1)において表される化合物について説明する。
【化1】
一般式(1)
【0016】
一般式(1)中、Rはホルミル基;アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基、イソブチリル基、オクタノイル基、2-エチルヘキサノイル基等のアルキル炭素数1~7の直鎖または分岐のアルキルカルボニル基;ベンゾイル基;トルオイル基;アクリロイル基;メタクリロイル基が挙げられ、Rは水素原子;メチル基、エチル基、プロピル基、ブチ基、ヘキシル基、オクチル基、ドデシル基、オクタデシル基等の炭素数1~18の直鎖のアルキル基;カルボキシエチル基、カルボキシヘプチル基等のアルキル炭素数1~7のカルボキシ直鎖アルキル基;メトキシカルボニルエチル基、オクチルオキシカルボニルヘプチル基等の各アルキル炭素数の合計が2~15のアルキルオキシカルボニル直鎖アルキル基;ヒドロキシエチル基、ヒドロキシオクチル基等の炭素数1~8のヒドロキシ直鎖アルキル基;メチルカルボニルオキシエチル基、ヘプチルカルボニルオキシオクチル基等の各アルキル炭素数の合計が2~15のアルキルカルボニルオキシ直鎖アルキル基;アクリロイルオキシエチル基、アクリロイルオキシオクチル基等のアルキル炭素数1~8のアクリロイルオキシ直鎖アルキル基;メタクリロイルオキシエチル基、メタクリロイルオキシオクチル基等のアルキル炭素数1~8のメタクリロイルオキシ直鎖アルキル基が挙げられ、Rは水素原子;フッ素、塩素、ヨウ素などのハロゲン原子;メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、ヘキシル基、オクチル基、2-エチルヘキシル基、ドデシル基、オクタデシル基等の炭素数1~18の直鎖または分岐のアルキル基;カルボキシエチル基、カルボキシヘプチル基等のアルキル炭素数1~7のカルボキシアルキル基;メトキシカルボニルエチル基、オクチルオキシカルボニルヘプチル基等の各アルキル炭素数の合計が2~15のアルキルオキシカルボニルアルキル基;ヒドロキシエチル基、ヒドロキシオクチル基等の炭素数1~8のヒドロキシアルキル基;メチルカルボニルオキシエチル基、ヘプチルカルボニルオキシオクチル基等の各アルキル炭素数の合計が2~15のアルキルカルボニルオキシアルキル基;ヒドロキシル基;メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基、イソブトキシ基、sec-ブトキシ基、tert-ブトキシ基、ヘキシルオキシ基、オクチルオキシ基、2-エチルヘキシルオキシ基、ラウリルオキシ基、ステアリルオキシ基等の炭素数1~18の直鎖または分岐のアルコキシ基;アミノ基;モノメチルアミノ基、モノエチルアミノ基、モノブチルアミノ基、モノイソブチルアミノ基等の炭素数1~4の直鎖または分岐のモノアルキルアミノ基;ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジブチルアミノ基、ジイソブチルアミノ基等の各炭素数の合計が2~8の直鎖または分岐のジアルキルアミノ基;ニトロ基;カルボキシル基;メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、ブトキシカルボニル基、イソブトキシカルボニル基、sec-ブトキシカルボニル基、tert-ブトキシカルボニル基、ヘキシルオキシカルボニル基、オクチルオキシカルボニル基、2-エチルヘキシルオキシカルボニル基等のアルキル炭素数1~8のアルキルオキシカルボニル基;シアノ基が挙げられる。
【0017】
上記一般式(1)の置換基の中でも好ましくは、Rがホルミル基、またはアルキル炭素数1~7のアルキルカルボニル基であり、Rが水素原子、炭素数1~8の直鎖アルキル基、アルキル炭素数1~7のカルボキシ直鎖アルキル基、各アルキル炭素数の合計が2~15のアルキルオキシカルボニル直鎖アルキル基、炭素数1~8のヒドロキシ直鎖アルキル基、または各アルキル炭素数の合計が2~15のアルキルカルボニルオキシ直鎖アルキル基であり、Rが水素原子、またはハロゲン原子である。
【0018】
本発明のベンゾトリアゾール誘導体化合物一般式(1)としては、例えば、次に示すものを挙げることができる。
N-{2-[3-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-2-ヒドロキシフェニル]-1,3-ジオキソ-2,3-ジヒドロ-1H-ベンゾ[de]イソキノリン-6-イル}アセトアミド、N-{2-[3-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-2-ヒドロキシ-5-メチルフェニル]-1,3-ジオキソ-2,3-ジヒドロ-1H-ベンゾ[de]イソキノリン-6-イル}アセトアミド、N-{2-[3-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-2-ヒドロキシ-5-(2-アセチルオキシエチル)フェニル]-1,3-ジオキソ-2,3-ジヒドロ-1H-ベンゾ[de]イソキノリン-6-イル}アセトアミド、N-{2-[3-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-2-ヒドロキシフェニル]-1,3-ジオキソ-2,3-ジヒドロ-1H-ベンゾ[de]イソキノリン-6-イル}オクタンアミド、N-{2-[3-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-2-ヒドロキシフェニル]-1,3-ジオキソ-2,3-ジヒドロ-1H-ベンゾ[de]イソキノリン-6-イル}ベンズアミド、N-{2-[3-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-2-ヒドロキシフェニル]-1,3-ジオキソ-2,3-ジヒドロ-1H-ベンゾ[de]イソキノリン-6-イル}メタクリルアミド、N-{2-[3-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-2-ヒドロキシ-5-(2-メタクリロイルオキシエチル)フェニル]-1,3-ジオキソ-2,3-ジヒドロ-1H-ベンゾ[de]イソキノリン-6-イル}メタクリルアミド、N-{2-[3-(5-クロロ-2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-2-ヒドロキシフェニル]-1,3-ジオキソ-2,3-ジヒドロ-1H-ベンゾ[de]イソキノリン-6-イル}アセトアミド、N-{2-[2-ヒドロキシ-3-(5-メチル-2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)フェニル]-1,3-ジオキソ-2,3-ジヒドロ-1H-ベンゾ[de]イソキノリン-6-イル}アセトアミド、N-{2-[2-ヒドロキシ-3-(5-メトキシ-2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)フェニル]-1,3-ジオキソ-2,3-ジヒドロ-1H-ベンゾ[de]イソキノリン-6-イル}アセトアミド。
【0019】
本発明のベンゾトリアゾール誘導体化合物一般式(1)を合成する方法に特に限定はないが、たとえば、下記の化2~化11に示した反応式を経て合成することができる。
【化2】
【化3】
【化4】
【化5】
【化6】
【化7】
【化8】
【化9】
【化10】
【化11】
【0020】
波長変換材料はフィルム成型時に配合したり、フィルム表面または中間層に成膜して、波長変換フィルムとして使用されることが多く、本発明のベンゾトリアゾール誘導体化合物も同様に、波長変換フィルムに使用できる。本発明のベンゾトリアゾール誘導体化合物を使用できるフィルムの樹脂素材は特に限定されるわけではないが、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリペンテン、ポリ-3-メチルブチレン、ポリメチルペンテンなどのα-オレフィン重合体またはエチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-プロピレン共重合体などのポリオレフィン、ポリ塩化ビニル、ポリ臭化ビニル、ポリフッ化ビニル、塩素化ポリエチレン、塩素化ポリプロピレン、臭素化ポリエチレン、塩化ゴム、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル-エチレン共重合体、塩化ビニル-プロピレン共重合体、塩化ビニル-スチレン共重合体、塩化ビニル-イソブチレン共重合体、塩化ビニル-塩化ビニリデン共重合体、塩化ビニル-スチレン-無水マレイン酸三元共重合体、塩化ビニル-スチレン-アクリロニトリル三元共重合体、塩化ビニル-ブタジエン共重合体、塩化ビニル-イソブチレン共重合体、塩化ビニル-塩素化プロピレン共重合体、塩化ビニル-塩化ビニリデン-酢酸ビニル三元共重合体、塩化ビニル-アクリル酸エステル共重合体、塩化ビニル-マレイン酸エステル共重合体、塩化ビニル-メタクリル酸エステル共重合体、塩化ビニル-アクリロニトリル共重合体、内部可塑性ポリ塩化ビニルなどの含ハロゲン合成樹脂、石油樹脂、クマロン樹脂、ポリスチレン、スチレンと他の単量体(無水マレイン酸、ブタジエン、アクリロニトリルなど)との共重合体、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン樹脂、アクリル酸エステル-ブタジエン-スチレン樹脂、メタクリル酸エステル-ブタジエン-スチレン樹脂などのスチレン系樹脂、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、ポリビニルホルマール、ポリビニルブチラール、アクリル樹脂、メタクリレート樹脂、ポリアクリロニトリル、ポリフェニレンオキシド、ポリカーボネート、変性ポリフェニレンオキシド、ポリアセタール、フェノール樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、シリコン樹脂、ポリエチレンテレフタレート、強化ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリスルホン系樹脂、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンスルフィド、ポリエーテルケトン、ポリエーテルイミド、ポリオキシベンゾイル、ポリイミド、ポリマレイミド、ポリアミドイミド、アルキド樹脂、アミノ樹脂、ビニル樹脂、水溶性樹脂、粉体塗料用樹脂、ポリアミド樹脂、ポリウレタン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂等を挙げることができる。
【0021】
本発明のベンゾトリアゾール誘導体化合物を波長変換フィルムに使用する場合、波長変換材料としては本発明のベンゾトリアゾール誘導体化合物のみ、あるいは他の波長変換材料と組合せて使用できる。本発明のベンゾトリアゾール誘導体化合物以外の波長変換機能を有する化合物としては、一般に市場で入手できるもので紫外線領域に励起帯を有し可視光領域に発光ピークを有するものあれば特に限定されない。例えば、ペリレン誘導体、クマリン誘導体、有機金属錯体、ピラン誘導体、スチルベン誘導体、アクリドン誘導体、オキサゾン誘導体、キナクリドン誘導体、ベンゾオキサゾール誘導体、ポリフルオレン誘導体、ポリフェニレンビニレン誘導体等、一般的な低分子蛍光材料、低分子リン光材料、ポリマー発光材料等が用いられる。これらの発光材料は、一種類のみを用いてもよく、また、二種類以上を適宜混合して用いてもよい。
【0022】
本発明のベンゾトリアゾール誘導体化合物をフィルムに配合する場合、樹脂に対して少なすぎると十分な発光が得られず、また、多すぎると濃度消光が起こるため、0.001~20重量%、好ましくは0.01~10重量%の範囲で使用されることが好ましい。
【0023】
本発明のベンゾトリアゾール誘導体化合物を配合したフィルムを成形する方法として、押出成型法、溶液流延法、キャスト法などが挙げられる。溶液流延法やキャスト法を行うには、波長変換材料を有機溶媒に溶解させる必要があり、有機溶媒に溶解しやすい波長変換材料を用いることが望ましい。前記ベンゾトリアゾール誘導体化合物は、有機溶媒に溶解しやすく、溶液流延法やキャスト法でも容易に波長変換フィルムを成形することができる。
【0024】
本発明のベンゾトリアゾール誘導体化合物をフィルムに成膜する方法として、例えば、インクジェット法、スピンコート法、キャスト法やディップコート法などの湿式塗布法が挙げられる。
【0025】
本発明のベンゾトリアゾール誘導体化合物を用いた波長変換フィルムを成形または成膜する際に、本ベンゾトリアゾール誘導体化合物を有機溶媒に溶解させる必要がある場合、使用できる有機溶媒として、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン等の脂肪族炭化水素;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素;シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等の脂環式炭化水素;石油エーテル、石油ベンジン等の石油系溶媒;四塩化炭素、クロロホルム、1,2-ジクロロエタン、ジクロロメタン等のハロゲン化炭化水素;エチルエーテル、イソプロピルエーテル、アニソール、ジオキサン、テトラヒドロフラン等のエーテル;アセトン、メチルイソブチルケトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、アセトフェノン、イソフォロン等のケトン;酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等のアミド;アセトニトリル;ジメチルスルフォキシド;クロロベンゼン、ジクロロベンゼン等のハロゲン化ベンゼン等が挙げられる。これらは一種類のみを用いてもよく、また、二種類以上を適宜混合して用いてもよい。
【実施例
【0026】
以下に本発明で実施したベンゾトリアゾール誘導体化合物の合成法と特性を示す。ただし、合成方法はこれらに限定されるものではない。
【0027】
(実施例1)
[中間体;2-(5-tert-ブチル-2-ヒドロキシフェニル)-2H-ベンゾトリアゾールの合成]
【化12】
【0028】
500mlの4つ口フラスコに玉付きコンデンサー、温度計、撹拌装置を取り付け、オルソニトロアニリン27.6g(0.200モル)、水150ml、62.5%硫酸65.9g(0.420モル)を入れて混合し、3~7℃で36%亜硝酸ナトリウム水溶液40.6g(0.212モル)を2時間かけて滴下し、同温度で2時間撹拌してジアゾニウム塩水溶液を得た。1000mlの4つ口フラスコに玉付きコンデンサー、温度計、撹拌装置を取り付け、4-tert-ブチルフェノール36.0g(0.240モル)、水140ml、メチルアルコール120ml、水酸化ナトリウム15.4g(0.385モル)、炭酸カリウム13.8g(0.100モル)を入れて混合し、炭酸カリウム41.4g(0.300モル)を徐々に加えながらジアゾニウム塩水溶液を3~8℃で3時間かけて滴下し、同温度で2時間撹拌した。撹拌を停止して生成している結晶を沈殿させ、上層の水を分液して除去し、イソプロピルアルコール100mlを加えて、20℃で結晶をろ過、洗浄、乾燥し、4-tert-ブチル-2-(2-ニトロフェニルアゾ)フェノールを45.0g得た。
【0029】
500mlの4つ口フラスコに玉付きコンデンサー、温度計、撹拌装置を取り付け、4-tert-ブチル-2-(2-ニトロフェニルアゾ)フェノールを45.0g(0.150モル)、トルエン70ml、水120ml、水酸化ナトリウム8.7g(0.218モル)、ハイドロキノン0.14gを入れて、65~70℃で60%ヒドラジン一水和物9.0g(0.108モル)を1時間かけて滴下し、70~75℃で3時間撹拌した。70~75℃で上層のトルエン層を分液して除去し、イソプロピルアルコール70ml、水30mlを加えて、62.5%硫酸でpH6に調整し、70~75℃で下層の水層を分液して除去した。イソプロピルアルコール35ml、水50mlを加えて、5℃に冷却して析出している結晶をろ過、洗浄、乾燥し、2-(5-tert-ブチル-2-ヒドロキシフェニル)-2H-ベンゾトリアゾール N-オキシドを38.2g得た。
【0030】
300mlの4つ口フラスコに玉付きコンデンサー、温度計、撹拌装置を取り付け、2-(5-tert-ブチル-2-ヒドロキシフェニル)-2H-ベンゾトリアゾール N-オキシドを38.2g(0.135モル)、トルエン75ml、水50ml、亜鉛末10.9g(0.167モル)を入れて、60~70℃で62.5%硫酸30.3g(0.193モル)を2時間かけて滴下し、75~80℃で2時間撹拌した。75~80℃で下層の水層を分液して除去し、水20mlを加えて、75~80℃で下層の水層を分液して除去し、トルエンを減圧回収し、イソプロピルアルコール70mlを加えた。20℃に冷却して析出している結晶をろ過、洗浄、乾燥し、2-(5-tert-ブチル-2-ヒドロキシフェニル)-2H-ベンゾトリアゾールを31.5g得た。収率59%(オルソニトロアニリンから)であった。
【0031】
(実施例2)
[化合物(a);N-{2-[3-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-2-ヒドロキシフェニル]-1,3-ジオキソ-2,3-ジヒドロ-1H-ベンゾ[de]イソキノリン-6-イル}アセトアミドの合成]
【化13】
化合物(a)
【0032】
200mlの4つ口フラスコに玉付きコンデンサー、温度計、撹拌装置を取り付け、2-(5-tert-ブチル-2-ヒドロキシフェニル)-2H-ベンゾトリアゾールを31.5g(0.118モル)、クロロベンゼン35mlを入れて、50℃にして溶解させ、300mlの4つ口フラスコに玉付きコンデンサー、温度計、撹拌装置を取り付け、69%硝酸16.5g(0.181モル)、水50mlを入れたものに、45~55℃で3時間かけて滴下した。50~55℃で3時間撹拌した後、70~75℃で3時間撹拌し、20℃に冷却して析出している結晶をろ過、洗浄、乾燥し、2-(5-tert-ブチル-2-ヒドロキシ-3-ニトロフェニル)-2H-ベンゾトリアゾールを34.6g得た。
【0033】
500mlの4つ口フラスコに玉付きコンデンサー、温度計、撹拌装置を取り付け、2-(5-tert-ブチル-2-ヒドロキシ-3-ニトロフェニル)-2H-ベンゾトリアゾールを34.6g(0.111モル)、エタノール200mlを入れて、塩化すず105.0g(0.554モル)と36%塩酸112.0g(1.106モル)の混合液を70~75℃で1時間かけて滴下した後、同温度で1時間撹拌した。25℃に冷却して析出している結晶をろ過、洗浄、乾燥し、2-(3-アミノ-5-tert-ブチル-2-ヒドロキシフェニル)-2H-ベンゾトリアゾールを31.0g得た。
【0034】
1000mlの4つ口フラスコに玉付きコンデンサー、温度計、撹拌装置を取り付け、2-(3-アミノ-5-tert-ブチル-2-ヒドロキシフェニル)-2H-ベンゾトリアゾールを31.0g(0.110モル)、塩化アルミニウム44.4g(0.333モル)、クロロベンゼン370mlを入れて、65~75℃で4時間撹拌し、氷水300mlを加えて、20℃に冷却して析出している結晶をろ過、洗浄、乾燥し、2-(3-アミノ-2-ヒドロキシフェニル)-2H-ベンゾトリアゾールを24.3g得た。
【0035】
2000mlの4つ口フラスコに玉付きコンデンサー、温度計、撹拌装置を取り付け、2-(3-アミノ-2-ヒドロキシフェニル)-2H-ベンゾトリアゾールを24.3g(0.107モル)、4-ニトロ-1,8-ナフタル酸無水物13.2g(0.054モル)、酢酸850mlを入れて、120℃で30時間還流撹拌した。水150mlを加えて、30℃に冷却して析出している結晶をろ過、洗浄、乾燥し、粗結晶を得た。粗結晶を酢酸でリパルプ洗浄し、2-[3-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-2-ヒドロキシフェニル]-6-ニトロ-1H-ベンゾ[de]イソキノリン-1,3(2H)-ジオンを2.0g得た。
【0036】
200mlの4つ口フラスコに玉付きコンデンサー、温度計、撹拌装置を取り付け、2-[3-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-2-ヒドロキシフェニル]-6-ニトロ-1H-ベンゾ[de]イソキノリン-1,3(2H)-ジオンを2.0g(0.0044モル)、エタノール50ml、塩化すず3.4g(0.0179モル)、36%塩酸15.3g(0.151モル)を入れて、85℃で3時間還流撹拌した。20℃に冷却して析出している結晶をろ過、洗浄、乾燥し、2-[3-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-2-ヒドロキシフェニル]-6-アミノ-1H-ベンゾ[de]イソキノリン-1,3(2H)-ジオンを1.8g得た。
【0037】
300mlの4つ口フラスコに玉付きコンデンサー、温度計、撹拌装置を取り付け、2-[3-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-2-ヒドロキシフェニル]-6-アミノ-1H-ベンゾ[de]イソキノリン-1,3(2H)-ジオンを1.8g(0.0043モル)、無水酢酸75g(0.7346モル)、濃硫酸0.2mlを入れて、55~65℃で15分撹拌した。水150mlを加えて、20℃に冷却して析出している結晶をろ過、洗浄、乾燥し、2-(6-アセトアミド-1,3-ジオキソ-1H-ベンゾ[de]イソキノリン-2(3H)-イル)-6-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)フェニル アセテートを1.8g得た。
【0038】
500mlの4つ口フラスコに玉付きコンデンサー、温度計、撹拌装置を取り付け、2-(6-アセトアミド-1,3-ジオキソ-1H-ベンゾ[de]イソキノリン-2(3H)-イル)-6-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)フェニル アセテートを1.8g(0.0036モル)、炭酸カリウム3.2g(0.0232モル)、スルホラン120ml、水20ml入れて、75~80℃で4時間撹拌した。水200ml、酢酸7mlを加えて、20℃に冷却して析出している結晶をろ過、洗浄、乾燥して粗結晶を得た。この粗結晶をN,N-ジメチルホルムアミドとメチルアルコールの混合溶媒で再結晶して、化合物(a)を1.1g得た。収率2%(2-(5-tert-ブチル-2-ヒドロキシフェニル)-2H-ベンゾトリアゾールから)であった。融点は300℃以上。
【0039】
また、HPLC分析により、化合物(a)の純度を測定した。
<測定条件>
装置:L-2130((株)日立ハイテクノロジーズ製)
使用カラム:SUMIPAX ODS A-212 6.0×150mm 5μm
カラム温度:40℃
移動相: メタノール/水=8/2(リン酸3ml/L)
流速:1.0ml/min
検出:UV250nm
<測定結果>
HPLC純度:97.8%
また、以下の実施例6も本実施例と同様の測定条件でHPLC分析を行った。
【0040】
また、化合物(a)のNMR測定を行った結果、上記構造を支持する結果が得られた。測定条件は次のとおりである。
<測定条件>
装置:JEOL ECX-400
共振周波数:400MHz(1H-NMR)
溶媒:DMSO-d6
1H-NMRの内部標準物質として、テトラメチルシランを用い、ケミカルシフト値はδ値(ppm)、カップリング定数はHertzで示した。またsはsinglet、dはdoublet、tはtriplet、mはmultipletの略とする。以下の実施例4、6も同様である。また、以下の実施例4、6も本実施例と同様の測定条件でNMR測定を行った。得られたNMRスペクトルの内容は以下のとおりである。
δ=10.52(s,1H,N-H),10.49(s,1H,phenol-OH),8.79(d,1H,J=8.8Hz,naphthalene-H),8.51(m,2H,naphthalene-H),8.37(d,1H,J=10.0Hz,naphthalene-H),8.07(m,2H,benzotriazole-H),7.94(m,2H,naphthalene-H,phenol-H),7.56(m,3H,phenol-H,benzotriazole-H),7.20(t,1H,phenol-H),2.31(s,3H,CH-H)
【0041】
(実施例3)
[中間体;2-[5-(2-ヒドロキシエチル)-2-ヒドロキシフェニル]-2H-ベンゾトリアゾールの合成]
【化14】
【0042】
4-tert-ブチルフェノールを4-(2-ヒドロキシエチル)フェノールとした以外は実施例1と同様にして、2-[2-ヒドロキシ-5-(2-ヒドロキシエチル)フェニル]-2H-ベンゾトリアゾールを収率64%(オルソニトロアニリンから)で得た。
【0043】
(実施例4)
[化合物(b);N-{2-[3-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-2-ヒドロキシ-5-(2-アセチルオキシエチル)フェニル]-1,3-ジオキソ-2,3-ジヒドロ-1H-ベンゾ[de]イソキノリン-6-イル}アセトアミドの合成]
【化15】
化合物(b)
【0044】
300mlの4つ口フラスコに玉付きコンデンサー、温度計、撹拌装置を取り付け、2-[2-ヒドロキシ-5-(2-ヒドロキシエチル)フェニル]-2H-ベンゾトリアゾールを10.0g(0.0392モル)、ジクロロエタン30ml、69%硝酸5.5g(0.0602モル)を入れて、95%硫酸2.5g(0.0242モル)を20~30℃で滴下した。減圧で溶媒を回収し、トルエン60ml、水40mlを加えて、20℃に冷却して析出している結晶をろ過、洗浄、乾燥して、2-[2-ヒドロキシ-5-(2-ヒドロキシエチル)-3-ニトロフェニル]-2H-ベンゾトリアゾールを7.8g得た。
【0045】
300mlの4つ口フラスコに玉付きコンデンサー、温度計、撹拌装置を取り付け、2-[2-ヒドロキシ-5-(2-ヒドロキシエチル)-3-ニトロフェニル]-2H-ベンゾトリアゾールを7.8g(0.0260モル)、エタノール50ml、塩化すず8.0g(0.0422モル)、36%塩酸9.4g(0.0928モル)を入れて、85℃で4時間還流撹拌した。溶剤を減圧回収し、トルエン100ml、水20mlを加えて、20℃に冷却して析出している結晶をろ過、洗浄、乾燥して、2-[3-アミノ-2-ヒドロキシ-5-(2-ヒドロキシエチル)フェニル]-2H-ベンゾトリアゾールを4.0g得た。
【0046】
200mlの4つ口フラスコに玉付きコンデンサー、温度計、撹拌装置を取り付け、2-[3-アミノ-2-ヒドロキシ-5-(2-ヒドロキシエチル)フェニル]-2H-ベンゾトリアゾールを4.0g(0.0148モル)、4-ニトロ-1,8-ナフタル酸無水物3.2g(0.0132モル)、酢酸30mlを入れて、120℃で6時間還流撹拌した。20℃に冷却して析出している結晶をろ過、洗浄、乾燥し、2-[3-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-2-ヒドロキシ-5-(2-ヒドロキシエチル)フェニル]-6-ニトロ-1H-ベンゾ[de]イソキノリン-1,3(2H)-ジオンを4.4g得た。
【0047】
200mlの4つ口フラスコに玉付きコンデンサー、温度計、撹拌装置を取り付け、2-[3-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-2-ヒドロキシ-5-(2-ヒドロキシエチル)フェニル]-6-ニトロ-1H-ベンゾ[de]イソキノリン-1,3(2H)-ジオンを4.4g(0.0089モル)、エタノール30ml、塩化すず3.0g(0.0158モル)、36%塩酸3.5g(0.0346モル)を入れて、85℃で4時間還流撹拌した。5℃に冷却して析出している結晶をろ過、洗浄、乾燥して、2-[3-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-2-ヒドロキシ-5-(2-ヒドロキシエチル)フェニル]-6-アミノ-1H-ベンゾ[de]イソキノリン-1,3(2H)-ジオンを3.9g得た。
【0048】
200mlの4つ口フラスコに玉付きコンデンサー、温度計、撹拌装置を取り付け、2-[3-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-2-ヒドロキシ-5-(2-ヒドロキシエチル)フェニル]-6-アミノ-1H-ベンゾ[de]イソキノリン-1,3(2H)-ジオンを3.9g(0.0084モル)、酢酸35ml、無水酢酸14g(0.1371モル)を入れて、60~70℃で48時間撹拌した。20℃に冷却して析出している結晶をろ過、洗浄、乾燥し、化合物(b)を2.3g得た。収率11%(2-[2-ヒドロキシ-5-(2-ヒドロキシエチル)フェニル]-2H-ベンゾトリアゾールから)であった。融点は283℃。
【0049】
また、HPLC分析により、化合物(b)の純度を測定した。
<測定条件>
装置:L-2130((株)日立ハイテクノロジーズ製)
使用カラム:SUMIPAX ODS A-212 6.0×150mm 5μm
カラム温度:40℃
移動相: アセトニトリル/水=6/4
流速:1.0ml/min
検出:UV250nm
<測定結果>
HPLC純度:95.7%
【0050】
また、化合物(b)のNMR測定を行った結果、上記構造を支持する結果が得られた。得られたNMRスペクトルの内容は以下のとおりである。
δ=10.47(s,1H,N-H),10.44(s,1H,phenol-OH),8.79(d,1H,J=8.0Hz,naphthalene-H),8.51(m,2H,naphthalene-H),8.37(d,1H,J=10.0Hz,naphthalene-H),8.07(m,2H,benzotriazole-H),7.94(t,1H,naphthalene-H),7.89(m,1H,phenol-H),7.56(m,2H,benzotriazole-H),7.46(m,1H,phenol-H),4.30(m,2H,phenol-CH-CH-H),2.99(m,2H,phenol-CH-H),2.31(s,3H,NH-CO-CH-H),2.03(s,3H,O-CO-CH-H)
【0051】
参考例1
[中間体;2-(4-アミノ-2-ヒドロキシフェニル)-2H-ベンゾトリアゾールの合成]
【化16】
【0052】
4-tert-ブチルフェノールを3-アミノフェノールとした以外は実施例1と同様にして、2-(4-アミノ-2-ヒドロキシフェニル)-2H-ベンゾトリアゾールを収率55%(オルソニトロアニリンから)で得た。
【0053】
参考例2
[化合物(c);N-{2-[4-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-3-ヒドロキシフェニル]-1,3-ジオキソ-2,3-ジヒドロ-1H-ベンゾ[de]イソキノリン-6-イル}アセトアミドの合成].
【化17】
化合物(c)
【0054】
300mlの4つ口フラスコに玉付きコンデンサー、温度計、撹拌装置を取り付け、2-(4-アミノ-2-ヒドロキシフェニル)-2H-ベンゾトリアゾールを3.4g(0.0150モル)、4-ニトロ-1,8-ナフタル酸無水物1.2g(0.0049モル)、酢酸150mlを入れて、120℃で6時間還流撹拌し、20℃に冷却して析出している結晶をろ過、洗浄、乾燥して粗結晶を得た。粗結晶を酢酸でリパルプ洗浄し、2-[4-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-3-ヒドロキシフェニル]-6-ニトロ-1H-ベンゾ[de]イソキノリン-1,3(2H)-ジオンを1.1g得た。
【0055】
300mlの4つ口フラスコに玉付きコンデンサー、温度計、撹拌装置を取り付け、2-[4-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-3-ヒドロキシフェニル]-6-ニトロ-1H-ベンゾ[de]イソキノリン-1,3(2H)-ジオンを1.1g(0.0024モル)、エタノール50ml、塩化すず1.8g(0.0095モル)、36%塩酸15.3g(0.1511モル)を入れて、77℃で4時間還流撹拌した。20℃に冷却して析出している結晶をろ過、洗浄、乾燥して、2-[4-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-3-ヒドロキシフェニル]-6-アミノ-1H-ベンゾ[de]イソキノリン-1,3(2H)-ジオンを1.0g得た。
【0056】
200mlの4つ口フラスコに玉付きコンデンサー、温度計、撹拌装置を取り付け、2-[4-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-3-ヒドロキシフェニル]-6-アミノ-1H-ベンゾ[de]イソキノリン-1,3(2H)-ジオンを1.0g(0.0024モル)、無水酢酸40g(0.3918モル)、濃硫酸0.1mlを入れて、60℃で15分撹拌した。水80mlを加えて、15℃に冷却して析出している結晶をろ過、洗浄、乾燥して、5-(6-アセトアミド-1,3-ジオキソ-1H-ベンゾ[de]イソキノリン-2(3H)-イル)-2-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)フェニル アセテートを0.5g得た。
【0057】
200mlの4つ口フラスコに玉付きコンデンサー、温度計、撹拌装置を取り付け、5-(6-アセトアミド-1,3-ジオキソ-1H-ベンゾ[de]イソキノリン-2(3H)-イル)-2-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)フェニル アセテートを0.5g(0.0010モル)、スルホラン35ml、水5ml、炭酸カリウム0.9g(0.0065モル)を入れて、75~80℃で4時間撹拌した。水90ml、酢酸2mlを加えて、20℃に冷却して析出している結晶をろ過、洗浄、乾燥して粗結晶を得た。この粗結晶をN,N-ジメチルホルムアミドとイソプロピルアルコールの混合溶媒で再結晶して、化合物(c)を0.4g得た。収率6%(2-(4-アミノ-2-ヒドロキシフェニル)-2H-ベンゾトリアゾールから)であった。融点は300℃以上、HPLC純度は97.7%であった。
【0058】
また、化合物(c)のNMR測定を行った結果、上記構造を支持する結果が得られた。得られたNMRスペクトルの内容は以下のとおりである。
δ=10.78(s,1H,phenol-OH),10.47(s,1H,N-H),8.78(d,1H,J=8.4Hz,naphthalene-H),8.52(m,2H,naphthalene-H),8.37(d,1H,J=10.0Hz,naphthalene-H),8.09(m,2H,benzotriazole-H),7.93(m,2H,naphthalene-H,phenol-H),7.57(m,2H,benzotriazole-H),7.23(m,1H,phenol-H),7.10(d,1H,J=8.4Hz,phenol-H),2.31(s,3H,CO-CH-H)
【0059】
(比較例)
従来の一般的な青色発光材料であり、ナフタルイミド誘導体である化合物(d);N-[2-(4-tert-ブチルフェニル)-1,3-ジオキソ-2,3-ジヒドロ-1H-ベンゾ[de]イソキノリン-6-イル]アセトアミドを比較例として合成した。
【0060】
[溶液の吸収および発光特性]
上記の実施例および比較例により得られた化合物(a)~(d)の吸収および発光特性を表1に示す。
【0061】
【表1】
【0062】
[波長変換フィルムの作製]
上記の実施例および比較例で得られた化合物(a)、(d)それぞれと、ポリメタクリル酸メチルおよび溶媒を、表2で示す比率で混合し、波長変換材料を有した樹脂組成物の溶液を得た。得られた波長変換材料を有した樹脂組成物の溶液を、バーコーターNo.4を用いてガラス板(セントラル社製「フロートガラス板」、厚み=2mm)に塗布し、加熱乾燥90℃を2分、120℃を3分の順で行った後、減圧乾燥40℃を24時間実施して溶媒を除去。膜厚4μmの波長変換材料を有するフィルムを得た。
【0063】
【表2】
【0064】
[フィルムの吸収および発光特性]
上記で得られた化合物(a)、(d)のフィルムでの吸収および発光特性を表3に示す。
【0065】
【表3】
【0066】
[耐光性]
上記で得られた化合物(a)、(d)のフィルムの、紫外線照射による耐光性を表4に示す。
【0067】
【表4】
【0068】
表1および3より、従来の一般的な青色発光材料である化合物(d)は、10000以上のモル吸光係数を示し、溶液で80%以上、フィルムで50%以上の蛍光量子効率を示すことから、優れた波長変換性をもつと言えるが、表4より、紫外線照射で吸光度および蛍光量子効率が大きく低下したことから、耐光性が不十分で長期使用が困難な問題があることがわかる。本発明品は、従来品の2倍程度である約27000のモル吸光係数を示し、溶液で約60%、フィルムで約30%の蛍光量子効率を示すことから、優れた波長変換性をもつと言え、さらに紫外線照射による吸光度および蛍光量子効率の低下が少ないことから、優れた耐光性をもち、長期使用が可能であることから、有用な波長変換材料であることがわかる。なお、実施例および比較例により得られた化合物の吸収スペクトル、発光スペクトル、励起スペクトル、蛍光量子効率、および耐光性の測定条件は次の通りである。
【0069】
<溶液の吸収スペクトル測定条件>
装置:UV-2450((株)島津製作所製)
測定波長:250~ 500nm
濃度:10ppm
セル:1cm石英
【0070】
<フィルムの吸収スペクトル測定条件>
装置: U-3900H((株)日立ハイテクサイエンス製)
測定波長:310~510nm
【0071】
<溶液の発光スペクトル、励起スペクトルおよび蛍光量子効率測定条件>
装置:FP-8500(日本分光(株)製)
測定波長:200~ 850nm
濃度:10ppm
セル:1cm石英
【0072】
<フィルムの発光スペクトル、励起スペクトルおよび蛍光量子効率測定条件>
装置:FP-8500(日本分光(株)製)
測定波長:200~ 850nm
【0073】
<耐光性測定条件>
装置:スーパーキセノンウェザーメーター SX-75(スガ試験機(株))
照射照度:60W/m
照射時間:24時間
ブラックパネル温度:63℃
槽内湿度:50%
【産業上の利用可能性】
【0074】
本発明のベンゾトリアゾール誘導体化合物は、モル吸光係数および蛍光量子効率が大きく、優れた波長変換性を示す。また、紫外線の照射による劣化が少なく、優れた耐光性を示すことから、長期使用が可能であり、波長変換材料および波長変換フィルムとして、好適に利用できる。