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特許6991505半発酵茶の風香味改善方法及び半発酵茶の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-10
(45)【発行日】2022-01-12
(54)【発明の名称】半発酵茶の風香味改善方法及び半発酵茶の製造方法
(51)【国際特許分類】
   A23F 3/06 20060101AFI20220104BHJP
   A23F 3/08 20060101ALI20220104BHJP
【FI】
A23F3/06 T
A23F3/08
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2017188655
(22)【出願日】2017-09-28
(65)【公開番号】P2019062755
(43)【公開日】2019-04-25
【審査請求日】2020-06-17
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】312017444
【氏名又は名称】ポッカサッポロフード&ビバレッジ株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】501203344
【氏名又は名称】国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】根角 厚司
(72)【発明者】
【氏名】山下 修矢
(72)【発明者】
【氏名】山本 万里
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 良樹
(72)【発明者】
【氏名】川瀬 陸
(72)【発明者】
【氏名】福本 修一
(72)【発明者】
【氏名】井上 孝司
【審査官】安田 周史
(56)【参考文献】
【文献】特許第5368652(JP,B1)
【文献】特開2005-229918(JP,A)
【文献】特開平11-151064(JP,A)
【文献】特開昭62-032842(JP,A)
【文献】特開2016-013098(JP,A)
【文献】特開2014-054219(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23F 3/06
A23F 3/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
異なる種類の茶葉を2種以上混合した後、10~30時間萎凋処理される工程を含み、前記茶葉は、紅茶品種及び緑茶品種のみを含む半発酵茶の風香味改善方法。
【請求項2】
前記紅茶品種は、「べにふうき」及び「べにひかり」から選ばれる少なくとも一種であり、
前記緑茶品種は、「やぶきた」、「みなみさやか」、「さえみどり」、及び「ゆたかみどり」から選ばれる少なくとも一種である請求項1に記載の半発酵茶の風香味改善方法。
【請求項3】
前記茶葉は、一番茶、二番茶、三番茶、及び秋冬番茶から選ばれる少なくとも一種を含む請求項1又は2に記載の半発酵茶の風香味改善方法。
【請求項4】
前記茶葉は、三番茶及び秋冬番茶から選ばれる少なくとも一種を含む請求項3に記載の半発酵茶の風香味改善方法。
【請求項5】
異なる種類の茶葉を2種以上混合した後、10~30時間萎凋処理される工程を含み、前記茶葉は、紅茶品種及び緑茶品種のみを含む半発酵茶の製造方法。
【請求項6】
紅茶品種の含有量と緑茶品種の含有量の質量比は、1:0.5~7である請求項5に記載の半発酵茶の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半発酵茶の風香味改善方法及び半発酵茶の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、お茶の種類は、原料茶葉を発酵させる程度により、不発酵茶、半発酵茶、発酵茶に分けられる。半発酵茶として代表的なものとして、ウーロン茶が知られている。ウーロン茶は、茶葉を摘んだ後、発酵工程を加熱等により途中で止めることにより得られる。したがって、ウーロン茶は、紅茶及び緑茶にはない特有の風香味を有している。
【0003】
従来より、特許文献1に開示されるようなウーロン茶の風香味を改善したウーロン茶飲料が知られている。特許文献1は、アミノ酸含有量、カフェイン含有量、タンニン含有量に着目し、各成分の配合量を所定の関係を有するように調整している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2016-158520号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的とするところは、風香味を向上できる新たな半発酵茶の風香味改善方法及び半発酵茶の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、異なる種類の茶葉を2種以上混合した後、萎凋処理することにより、半発酵茶の風香味を向上できることを見出したことに基づくものである。
上記目的を達成するために、本発明の一態様では、異なる種類の茶葉を2種以上混合した後、萎凋処理される工程を含む半発酵茶の風香味改善方法が提供される。前記茶葉は、紅茶品種及び緑茶品種を含んでもよい。前記紅茶品種は、「べにふうき」及び「べにひかり」から選ばれる少なくとも一種であり、前記緑茶品種は、「やぶきた」、「みなみさやか」、「さえみどり」、及び「ゆたかみどり」から選ばれる少なくとも一種であってもよい。前記茶葉は、一番茶、二番茶、三番茶、及び秋冬番茶から選ばれる少なくとも一種を含んでもよい。前記茶葉は、三番茶及び秋冬番茶から選ばれる少なくとも一種を含んでもよい。
【0007】
本発明の別の態様では、異なる種類の茶葉を2種以上混合した後、萎凋処理される工程を含む半発酵茶の製造方法が提供される。前記茶葉は、紅茶品種及び緑茶品種を含み、紅茶品種の含有量及び緑茶品種の含有量の質量比は、1:0.5~7であってもよい。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、半発酵茶の風香味を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】試験例1における合葉する原料茶葉の評価に関するグラフ。
図2】試験例2における原料茶葉の採取時期の評価に関するグラフ。(a)一番茶及び二番茶の風香味の評価を示すグラフ。(b)三番茶及び秋冬番茶の風香味の評価を示すグラフ。
図3】試験例3における合葉の比率の評価に関するグラフ。
図4】試験例4における萎凋時間の評価に関するグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(第1実施形態)
以下、本発明の半発酵茶の風香味改善方法を具体化した第1実施形態を説明する。本実施形態の半発酵茶の風香味改善方法は、異なる種類の茶葉を2種以上混合した後、萎凋処理される工程を含む。半発酵茶としては、酸化発酵処理を行っていない未発酵茶(発酵度0%)、紅茶(発酵度100%)以外の茶であればいずれも適用することができ、より具体的には、ウーロン茶、青茶、白茶等が挙げられる。半発酵茶の発酵度としては、特に限定されないが、半発酵茶特有の風香味を得る観点から、好ましくは15~70%、より好ましくは30~60%である。
【0011】
通常、半発酵茶は、生茶葉を摘採した後、発酵処理工程である萎凋処理される。本実施形態においては、萎凋処理前に異なる種類の原料茶葉を合葉する。本実施形態において異なる種類の茶葉とは、原料茶葉の品種が異なることを意味する。品種としては、農林水産省登録したもの、各県で独自に育成し、その県に限っての推奨品種としたもの、種苗登録したものが挙げられる。半発酵茶の原料茶葉の品種としては、特に限定されないが、例えば紅茶品種、緑茶品種等を挙げることができる。
【0012】
紅茶品種の具体例としては、農林水産省登録品種名として、例えば「べにふうき」、「べにひかり」、「べにほまれ」、「べにかおり」、「べにふじ」、「いんど」、「はつもみじ」、「べにたちわせ」、「あかね」、「さつまべに」等が挙げられる。これらの品種は、1種類のみを用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらの中で、半発酵茶の風香味向上効果に優れる観点から「べにふうき」、「べにひかり」が好ましい。
【0013】
緑茶品種としては、緑茶用途の他、煎茶用途、玉露用途、てん茶用途として用いられる品種であれば、適宜採用することができる。より具体的には、例えば「やぶきた」、「みなみさやか」、「さえみどり」、「ゆたかみどり」、「かなやみどり」、「さやまかおり」、「おくみどり」、「とよか」、「めいりょく」、「ふくみどり」、「みねかおり」、「みなみかおり」、「りょうふう」、「はるみどり」、「そうふう」、「おくゆたか」、「しゅんめい」等が挙げられる。これらの品種は、1種類のみを用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらの中で、半発酵茶の風香味向上効果に優れる観点から「やぶきた」、「みなみさやか」、「さえみどり」、「ゆたかみどり」が好ましい。
【0014】
本実施形態の半発酵茶の風香味改善方法において、風香味向上効果に優れる観点から、紅茶品種から選ばれる少なくとも一種と、緑茶品種から選ばれる少なくとも一種を含むことが好ましい。また、「べにふうき」及び「べにひかり」から選ばれる少なくとも一種の紅茶品種と、「やぶきた」、「みなみさやか」、「さえみどり」、及び「ゆたかみどり」から選ばれる少なくとも一種の緑茶品種との組み合わせがより好ましい。また、「べにふうき」及び「べにひかり」から選ばれる少なくとも一種の紅茶品種と、「やぶきた」との組み合わせがさらに好ましい。原料茶葉として、紅茶品種と緑茶品種とを組み合わせて使用する場合、紅茶品種の含有量及び緑茶品種の含有量の質量比は、好ましくは1:0.5~7、より好ましくは1:1~5、さらに好ましくは1:1~3である。かかる質量比の範囲内に規定することにより、半発酵茶の風香味をより向上させる。具体的には、半発酵茶特有の香りの向上と、後に引く苦味の低減とのバランスを図ることができる。
【0015】
原料茶葉の採取時期は、特に限定されず、一番茶、二番茶、三番茶、秋冬番茶(四番茶)のいずれであってもよい。一番茶、二番茶、三番茶、秋冬番茶(四番茶)のいずれも、半発酵茶の風香味を向上させる。半発酵茶を飲用した際、後に引く苦味をより低減させる場合、三番茶、秋冬番茶を使用することが好ましく、秋冬番茶を使用することがより好ましい。
【0016】
本実施形態の半発酵茶の風香味改善方法は、上述した異なる種類の茶葉を2種以上合葉してから萎凋処理する以外、通常の半発酵茶製造の工程が適用される。萎凋処理した後、例えば釜炒り(殺青)、揉捻、締め揉み(包揉)、玉解き、乾燥処理が順次行われることにより、半発酵茶が製造される。なお、本発明の効果が得られる限りにおいて、これらの工程のいくつかは省略してもよい。
【0017】
萎凋処理する工程は、公知の酸化発酵の処理工程が適用され、通常、晴天時に天日にさらす日干萎凋、室内で萎凋を行う室内萎凋、及び葉の周辺を擦り合せて発酵を促進する回転発酵(揺青)に分けられる。各萎凋処理工程を全て実施してもよく、処理時間の短縮の観点から日干萎凋及び回転発酵の処理工程を省略して実施してもよい。また、室内萎凋の処理時間の下限は、適宜設定されるが、好ましくは10時間以上、より好ましくは15時間以上、さらに好ましくは20時間以上である。室内萎凋の処理時間を10時間以上とすることにより、半発酵茶の風香味を向上できる。特に半発酵茶の後に引く苦味をより低減できる。室内萎凋の処理時間の上限は、適宜設定されるが、好ましくは30時間以下、より好ましくは25時間以上、さらに好ましくは24時間以下である。室内萎凋の処理時間を30時間以下とすることにより、特に半発酵茶の香りをより向上できる。
【0018】
上記のように得られた半発酵茶を飲用する場合、半発酵茶の抽出方法は、公知の方法を適宜採用することができる。例えば、撹拌抽出、ニーダー抽出、ドリップ抽出、カラム抽出等の公知の抽出方法を採用できる。抽出溶剤としては、例えば硬水、軟水、イオン交換水、蒸留水等の水、さらにエタノール等の有機溶剤、上記の水とエタノール等の有機溶剤との混合液等が挙げられる。抽出溶剤は、必要により抽出助剤等を添加することができる。抽出助剤としては、例えばアスコルビン酸、炭酸カリウム、重曹等のpH調整剤が挙げられる。
【0019】
茶葉の抽出条件は、風香味向上の観点から適宜設定される。抽出温度は、好ましくは70~100℃、より好ましくは80~95℃である。抽出溶媒の使用量は、茶葉に対する質量比で好ましくは5~60倍、より好ましくは10~50倍である。抽出時間は、好ましくは1~20分、より好ましくは2~10分である。
【0020】
上述した本実施形態の半発酵茶の風香味改善方法により、萎凋処理前に合葉する工程を省略して得られた半発酵茶よりも風香味が向上している。これは、萎凋処理した後に合葉する場合よりも、香り成分や旨味成分を生成する酵素反応がより進むことにより、風香味がより向上するものと推察される。風香味の向上とは、例えば半発酵茶中の香気成分の増加、半発酵茶飲料の風味の増加、苦味の低減等の少なくとも一つの効能の向上を示す。なお、半発酵茶の香りは、例えば花香(フローラル)や果実様(フルーティ)等に例えられる華やかな香り、ウーロン茶特有の香り(華やかな香りとグリーンな香りの調和がとれた香り)等を示す。さらに、華やかな香りを呈す成分の具体例として、例えばゲラニオール、リナロール、2-フェニルエタノール、ベンジルアルコール等が挙げられる。
【0021】
本実施形態の半発酵茶の風香味改善方法によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1)本実施形態の半発酵茶の風香味改善方法では、異なる種類の茶葉を2種以上混合した後、萎凋処理される工程を含んでいる。したがって、半発酵茶の風香味を改善できる。より具体的には、半発酵茶中の香気成分を増加させたり、半発酵茶飲料の風味を増加させたり、苦味の低減を図ることができる。
【0022】
(2)本実施形態の半発酵茶の風香味改善方法において、原料茶葉の種類として、紅茶品種から選ばれる少なくとも一種と、緑茶品種から選ばれる少なくとも一種とを含む場合、半発酵茶の風香味をより向上することができる。
【0023】
(3)本実施形態の半発酵茶の風香味改善方法において、原料茶葉の種類として、一番茶、二番茶、三番茶、秋冬番茶を使用する場合、半発酵茶の風香味をより向上することができる。特に、三番茶又は秋冬番茶を使用する場合、半発酵茶を飲用した際、後に引く苦味をより低減することができる。
【0024】
(第2実施形態)
以下、本発明の半発酵茶の製造方法を具体化した第2実施形態を説明する。なお、第2実施形態について、下記の記載以外は、第1実施形態の半発酵茶の風香味改善方法と同様の構成が適用される。
【0025】
本実施形態の半発酵茶の製造方法は、異なる種類の茶葉を2種以上混合した後、萎凋処理される工程を含む。本実施形態の半発酵茶の製造方法は、かかる異なる種類の茶葉を2種以上合葉してから萎凋処理する以外、通常の半発酵茶製造の工程が適用される。具体的には、萎凋処理した後、例えば釜炒り(殺青)、揉捻、締め揉み(包揉)、玉解き、乾燥処理が順次行われることにより、半発酵茶が製造される。なお、本発明の効果が得られる限りにおいて、これらの工程のいくつかは省略してもよい。本実施形態において適用される原料茶葉としては、第1実施形態欄と同様の茶葉を適用することができる。
【0026】
本実施形態の半発酵茶の製造方法によれば、第1実施形態の効果に加えて以下のような効果を得ることができる。
(4)本実施形態の半発酵茶の製造方法では、異なる種類の茶葉を2種以上混合した後、萎凋処理する工程が含まれる。したがって、風香味に優れた半発酵茶を得ることができる。
【0027】
(5)茶飲料の分野において、茶飲料中の特定の風香味成分に着目し、その含有量を調整する発明が知られている。しかしながら、特定成分の含有量を調整することにより、茶の風香味を向上させる方法は、まず特定の風香味成分の含有量を測定し、さらにその成分の含有量を規定の範囲内に調整する必要があるため、非常に煩雑である。本実施形態の方法では、半発酵茶中に含有される特定の香味成分を検出したり、成分調整する工程を必ずしも必要とするものではなく、異なる種類の茶葉を2種以上合葉するという簡易な方法により半発酵茶の風香味の改善を図ることができる。
【0028】
なお、上記実施形態は以下のように変更してもよい。
・上記実施形態の半発酵茶の風香味改善方法及び半発酵茶の製造方法では、異なる種類の茶葉を2種以上混合した後、萎凋処理される工程を含む。さらに、半発酵茶中の特定の香味成分に着目し、その含有量を調整することを妨げるものではない。本発明の異なる種類の茶葉を2種以上混合した後、萎凋処理する工程を含む限り、本発明の範囲に含まれるものとする。
【実施例
【0029】
以下に試験例を挙げ、前記実施形態をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
(試験例1:合葉する原料茶葉の評価)
合葉する原料茶葉の品種の組み合わせを変えて、半発酵茶としてウーロン茶を製造し、風香味について官能評価した。原料茶葉として、紅茶品種として二番茶の「べにふうき」及び「べにひかり」、緑茶品種として二番茶の「やぶきた」及び「みなみさやか」を使用した。図1に示される各品種の組み合わせにおいて質量比1:1で合葉したものを各実施例の原料茶葉とした。室内萎凋の処理時間は18時間の条件とした。その他は、通常のウーロン茶の製造方法に従い、室内萎凋、釜炒り(殺青)、揉捻、乾燥処理を順次行い、各実施例のウーロン茶葉を得た。
【0030】
得られた各ウーロン茶葉100gと重曹0.83gを混合した。次に、92~98℃の熱湯4500gを注ぎ、7分間蒸らした。布でろ過し、氷水で湯温を30℃以下に冷却した。タンニン量が47±3mg/100mLとなるように水で調整するとともに、ビタミンCが最終濃度0.03質量%及び重曹が最終濃度0.019質量%になるように添加し、ペットボトルに充填した後、約135℃30秒の条件で殺菌したものを各実施例のウーロン茶飲料とした。
【0031】
なお、比較例のウーロン茶飲料は、品種ごとにウーロン茶飲料を調製し、後で異なる品種のウーロン茶飲料を混合したものを採用する。まず「べにふうき」、「べにひかり」、「やぶきた」、及び「みなみさやか」のそれぞれについて、合葉せずに上述した製造方法にてウーロン茶葉を製造した。次に、得られた各ウーロン茶葉を用いて上記と同様の方法にてウーロン茶飲料を得た。得られた各品種のウーロン茶飲料について、各実施例に対応する品種の組み合わせに応じて、質量比1:1で混合したものを各比較例のウーロン茶飲料とした。
【0032】
(官能評価1:華やかでウーロン茶特有の香りの強さ)
華やかでウーロン茶特有の香りの強さは、華やかな香りとウーロン茶特有の香りを別々に評価し、その平均値として求めた。華やかな香りとは、花香(フローラル)や果実様(フルーティ)等に例えられる香りを示す。ウーロン茶特有の香りとは、華やかな香りとグリーンな香りの調和がとれた香りを示す。
【0033】
各実施例のウーロン茶飲料をパネラー11名が試飲し、対応する各比較例のウーロン茶飲料に対して華やかな香りを強く感じるか否かについて評価した。なお、ISO 6564-1985(E)に定める官能評価基準に準じて評価を実施した。実施例の方が強く感じる場合を10点、実施例の方がやや強く感じる場合を5点、変わらない場合を0点、対応比較例の方がやや強く感じる場合を-5点、対応比較例の方が強く感じる場合を-10点とした。パネラーの採点結果について平均値を算出した。
【0034】
同様に、ウーロン茶特有の香りを強く感じるか否かについて評価した。実施例の方が強く感じる場合を10点、実施例の方がやや強く感じる場合を5点、変わらない場合を0点、対応比較例の方がやや強く感じる場合を-5点、対応比較例の方が強く感じる場合を-10点とした。パネラーの採点結果について平均値を算出した。
【0035】
得られた華やかな香りの平均値とウーロン茶特有の香りの平均値を足して2で割った値を華やかでウーロン茶特有の香りの評価結果とした。官能評価1の結果を図1に示す(図1中の「香りの強さ」の項目(以下同じ))。
【0036】
(官能評価2:後を引く苦味の弱さ)
各実施例のウーロン茶飲料をパネラー11名が試飲し、対応する各比較例のウーロン茶飲料に対して後を引く苦味を弱く感じるか否かについて評価した。実施例の方が弱く感じる場合を10点、実施例の方がやや弱く感じる場合を5点、変わらない場合を0点、対応比較例の方がやや弱く感じる場合を-5点、対応比較例の方が弱く感じる場合を-10点とした。パネラーの採点結果について平均値を算出した。官能評価2の結果を図1に示す(図1中の「苦味の弱さ」の項目(以下同じ))。
【0037】
図1に示されるように、萎凋処理前に合葉して得られたウーロン茶葉は、後でウーロン茶飲料を混合した比較例よりも、風香味に優れていることが確認された。特に、「やぶきた」と「べにふうき」又は「べにひかり」の組み合わせが風香味に優れていることが確認された。
【0038】
(試験例2:原料茶葉の採取時期の評価)
原料茶葉の採取時期を変えて、ウーロン茶を製造し、風香味について官能評価した。原料茶葉として「べにふうき」及び「やぶきた」を質量比1:1で合葉する組み合わせを採用した。採取時期は、組み合わせる2品種とも同じ採取時期とし、4月(一番茶)、6月(二番茶)、8月(三番茶)、10月(秋冬番茶)を採用した。室内萎凋時間は、一番茶及び二番茶が18時間、三番茶及び秋冬番茶が24時間とした。その他は、試験例1と同様の方法にてウーロン茶飲料を得た。
【0039】
なお、比較例のウーロン茶飲料は、試験例1と同様に、品種ごとにウーロン茶飲料を調製し、後で異なる品種のウーロン茶飲料を混合したものを採用する。まず、各採取時期の「べにふうき」及び「やぶきた」のそれぞれについて、合葉せずに上述した製造方法により各ウーロン茶葉を製造した。次に、得られた各ウーロン茶葉を用いて、上記と同様の方法にてウーロン茶飲料を得た。得られた各品種の採取時期の異なるウーロン茶飲料について、対応する実施例に応じて質量比1:1で混合したものを各比較例のウーロン茶飲料とした。得られた各ウーロン茶飲料について、試験例1と同様に、官能評価1,2を評価した。一番茶及び二番茶を使用した場合の結果を図2(a)に、三番茶及び秋冬番茶を使用した場合の結果を図2(b)にそれぞれ示す。
【0040】
図2(a)(b)に示されるように、1番茶、2番茶、3番茶、及び秋冬番茶のそれぞれについて、香りの強さが向上すると共に、苦味が低減しており、風香味の向上効果が得られていることが確認された。
【0041】
(試験例3:合葉の比率の評価)
原料茶葉の合葉の比率を変えて、ウーロン茶を製造し、風香味について官能評価した。原料茶葉として秋冬番茶の「べにふうき」及び「やぶきた」を採用した。両原料茶葉の配合比は、質量比1:1、1:3、1:5、1:10とした。室内萎凋の処理時間は24時間の条件とした以外、試験例1と同様の方法にてウーロン茶飲料を得た。
【0042】
なお、比較例のウーロン茶飲料は、試験例1と同様に、品種ごとにウーロン茶飲料を調製し、後で異なる品種のウーロン茶飲料を混合したものを採用する。まず「べにふうき」及び「やぶきた」のそれぞれについて、合葉せずに上述した製造方法により各ウーロン茶葉を製造した。次に、得られた各ウーロン茶葉を用いて、上記と同様の方法にてウーロン茶飲料を得た。得られた「べにふうき」及び「やぶきた」の各ウーロン茶飲料について、対応する実施例に応じて質量比1:1、1:3、1:5、1:10で混合したものを各比較例のウーロン茶飲料とした。得られた各ウーロン茶飲料について、パネラーを7名として評価した以外は試験例1と同様に、官能評価1,2を評価した。結果を図3に示す。
【0043】
図3に示されるように、特に質量比で1:3の場合に、香りが強くなることが確認された。また、特に質量比で1:1の場合に、苦味が弱くなることが確認された。
(試験例4:萎凋時間の評価)
原料茶葉を合葉した後の室内萎凋時間を変えて、ウーロン茶を製造し、風香味について官能評価した。原料茶葉として3番茶の「べにふうき」及び「やぶきた」を質量比1:1で合葉した組み合わせを採用した。室内萎凋時間は、12時間及び24時間とした。その他は、試験例1と同様の方法にてウーロン茶飲料を得た。
【0044】
なお、比較例のウーロン茶飲料は、試験例1と同様に、品種ごとにウーロン茶飲料を調製し、その後異なる品種のウーロン茶飲料を混合したものを採用する。まず「べにふうき」及び「やぶきた」のそれぞれについて、合葉せずに上述した製造方法により各ウーロン茶葉を製造した。その際、室内萎凋時間は、12時間及び24時間とした。次に、得られた各ウーロン茶葉を用いて、上記と同様の方法にてウーロン茶飲料を得た。得られた各品種のウーロン茶飲料について、対応する実施例に応じて質量比1:1で混合したものを各比較例のウーロン茶飲料とした。得られた各ウーロン茶飲料について、試験例1と同様に、官能評価1,2を評価した。結果を図4に示す。
【0045】
図4に示されるように、萎凋時間が12時間及び24時間において、風香味の向上効果が得られることが確認された。なお、図2(a)の結果より、1番茶(萎凋時間18時間)及び2番茶(萎凋時間18時間)を使用した場合でも、風香味の向上効果が得られており、萎凋時間が12~24時間において、茶葉の採取時期によらず風香味の向上効果が得られることが確認された。
図1
図2
図3
図4