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特許6991644アクリル系粘着剤組成物、偏光板、およびディスプレイ装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-10
(45)【発行日】2022-01-13
(54)【発明の名称】アクリル系粘着剤組成物、偏光板、およびディスプレイ装置
(51)【国際特許分類】
   C09J 133/14 20060101AFI20220104BHJP
   C09J 11/06 20060101ALI20220104BHJP
   G02B 5/30 20060101ALI20220104BHJP
【FI】
C09J133/14
C09J11/06
G02B5/30
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2020530374
(86)(22)【出願日】2019-02-14
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-02-18
(86)【国際出願番号】 KR2019001842
(87)【国際公開番号】W WO2020067613
(87)【国際公開日】2020-04-02
【審査請求日】2020-06-02
(31)【優先権主張番号】10-2018-0116476
(32)【優先日】2018-09-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】500239823
【氏名又は名称】エルジー・ケム・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100122161
【弁理士】
【氏名又は名称】渡部 崇
(72)【発明者】
【氏名】ウン・スク・キム
(72)【発明者】
【氏名】キ・ヨン・キム
【審査官】水野 明梨
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-025128(JP,A)
【文献】特開2018-145368(JP,A)
【文献】特開2014-152312(JP,A)
【文献】国際公開第2014/092186(WO,A3)
【文献】特開2013-189631(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 133/14
C09J 11/06
G02B 5/30
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アセトアセチル基を含む(メタ)アクリル系単量体、ヒドロキシ基を含む(メタ)アクリル系単量体、脂環式基を含む(メタ)アクリレート単量体、およびアルキル(メタ)アクリレート系単量体を含む単量体混合物を重合して形成されるアクリル系共重合体と、
金属キレート化合物およびイソシアネート系化合物を含む硬化剤と、を含むアクリル系粘着剤組成物であって、
前記単量体混合物は、前記単量体混合物100重量部に対して、
前記アセトアセチル基を含む(メタ)アクリル系単量体1~40重量部と、
前記ヒドロキシ基を含む(メタ)アクリル系単量体1~10重量部と、
前記脂環式基を含む(メタ)アクリレート系単量体1~10重量部と、
前記アルキル(メタ)アクリレート系単量体40~97重量部と、を含み、
前記アクリル系粘着剤組成物の硬化後のガラス転移温度が-30℃以上であ
前記アクリル系粘着剤組成物の硬化後のゲル分率が90%以上である、アクリル系粘着剤組成物。
【請求項2】
前記単量体混合物は、芳香族基を含む(メタ)アクリレート系単量体をさらに含む、請求項1に記載のアクリル系粘着剤組成物。
【請求項3】
前記単量体混合物は、前記単量体混合物100重量部に対して、
前記アセトアセチル基を含む(メタ)アクリル系単量体1~40重量部と、
前記ヒドロキシ基を含む(メタ)アクリル系単量体1~10重量部と、
前記脂環式基を含む(メタ)アクリレート系単量体1~10重量部と、
前記芳香族基を含む(メタ)アクリレート系単量体1~20重量部と、
前記アルキル(メタ)アクリレート系単量体40~96重量部と、を含む、請求項に記載のアクリル系粘着剤組成物。
【請求項4】
前記単量体混合物は、カルボキシ基含有単量体をさらに含む、請求項1~のいずれか一項に記載のアクリル系粘着剤組成物。
【請求項5】
前記カルボキシ基含有単量体は、単量体混合物100重量部に対して、3重量部以下で含まれる、請求項に記載のアクリル系粘着剤組成物。
【請求項6】
前記単量体混合物の重合を、重合転化率70%~90%で行い、前記アクリル系共重合体を形成する、請求項1~のいずれか一項に記載のアクリル系粘着剤組成物の製造方法
【請求項7】
前記アクリル系共重合体は、重量平均分子量が1,000,000~2,000,000である、請求項1~のいずれか一項に記載のアクリル系粘着剤組成物。
【請求項8】
前記硬化剤は、前記アクリル系共重合体100重量部に対して、0.1~2重量部で含まれる、請求項1~5及び7のいずれか一項に記載のアクリル系粘着剤組成物。
【請求項9】
アルカリ金属塩をさらに含む、請求項1~5、7及び8のいずれか一項に記載のアクリル系粘着剤組成物。
【請求項10】
前記アクリル系共重合体100重量部に対して、0.01~5重量部のリチウム塩をさらに含み、
前記アクリル系共重合体の酸価が10以下であり、
前記硬化剤が、アクリル系共重合体100重量部に対して0.1~2重量部で含まれる、請求項1~5及び7~9のいずれか一項に記載のアクリル系粘着剤組成物。
【請求項11】
偏光フィルムと、
前記偏光フィルムの片面または両面に形成され、請求項1~5及び7~10のいずれか一項に記載のアクリル系粘着剤組成物の硬化物を含む粘着層と、を含む偏光板。
【請求項12】
請求項1に記載の偏光板を含むディスプレイ装置。
【請求項13】
前記偏光板上に配置されるタッチパネルをさらに含む、請求項1に記載のディスプレイ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2018年9月28日付けで出願された韓国特許出願第10-2018-0116476号に基づく優先権の利益を主張し、当該韓国特許出願の文献に開示された全ての内容は、本明細書の一部として組み込まれる。
【0002】
本発明は、アクリル系粘着剤組成物、偏光板、およびディスプレイ装置に関し、より詳細には、耐久性に優れるとともに、タッチパネルの透明電極を腐食させることのないアクリル系粘着剤組成物、およびそれを用いて製造された偏光板、並びにディスプレイ装置に関する。
【背景技術】
【0003】
一般に、液晶表示装置(Liquid crystal display device、LCD)は、液晶を含んでいる液晶セルと偏光板を備えており、液晶セルと偏光板を付着するために粘着層が用いられる。かかる粘着層を形成するための偏光板付着用粘着剤としては、アクリル系樹脂、ゴム類、ウレタン系樹脂、シリコーン系樹脂、またはEVA(Ethylene Vinyl Acetate)などが用いられており、中でも、透明性、酸化抵抗性、および黄変抵抗性を有するアクリル系樹脂をベースとする粘着剤が多く用いられている。
【0004】
一方、近年、自動車用ディスプレイ、携帯電話、ナビゲーションなどの小型ディスプレイ装置にタッチ機能が付与されており、これに伴い、高い耐久信頼性が求められている。そのため、従来は、偏光板用粘着剤組成物にカルボキシ基含有単量体を含ませ、粘着剤組成物に強い架橋構造を形成することにより、耐久性を向上させる方法が用いられてきた。しかしながら、カルボキシ基を含有する単量体を使用した粘着剤は、タッチパネルと長時間接触する場合、カルボン酸成分がタッチパネルの透明電極と反応して透明電極の腐食が発生し、これにより、タッチパネルの物性が低下するという問題がある。
【0005】
したがって、タッチパネルの物性を低下させることなく、高い耐久性を実現できる粘着剤組成物の開発が求められている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記の問題を解決するためのものであって、高い耐久性を有するとともに、タッチパネルの腐食が発生しないアクリル系粘着剤組成物を提供することを目的とする。
【0007】
また、本発明は、上記のアクリル系粘着剤組成物から形成された粘着層を含む偏光板、およびそれを含むディスプレイ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
一態様において、本発明は、アセトアセチル基を含む(メタ)アクリル系単量体、ヒドロキシ基を含む(メタ)アクリル系単量体、脂環式基を含む(メタ)アクリレート単量体、およびアルキル(メタ)アクリレート系単量体を含む単量体混合物を重合して形成されるアクリル系共重合体と、金属キレート化合物およびイソシアネート系化合物を含む硬化剤と、を含むアクリル系粘着剤組成物であって、前記アクリル系粘着剤組成物の硬化後のガラス転移温度が-30℃以上である、アクリル系粘着剤組成物を提供する。
【0009】
他の態様において、本発明は、偏光フィルムと、前記偏光フィルムの片面または両面に形成され、本発明に係るアクリル系粘着剤組成物の硬化物を含む粘着層と、を含む偏光板を提供する。
【0010】
さらに他の態様において、本発明は、前記本発明の偏光板を含むディスプレイ装置を提供する。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係るアクリル系粘着剤組成物は、アクリル系共重合体の形成時に、ヒドロキシ基含有単量体とアセトアセチル基含有単量体をともに使用し、硬化剤として、金属キレート化合物とイソシアネート系化合物をともに使用することで、強い架橋構造が形成される。これにより、カルボキシ基含有単量体を使用しない場合や、極少量で含む場合にも、優れた耐久性を実現することができ、これにより、カルボキシ基含有単量体によるタッチパネルの腐食などの副作用の発生を抑制することができる。
【0012】
また、本発明のアクリル系粘着剤組成物は、脂環式基含有単量体を使用することで、相対的に高いガラス転移温度を有する粘着剤組成物を製造することができ、カルボキシ基含有単量体を使用しない場合や、極少量で使用する場合にも、優れた粘着力を実現することができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明について具体的に説明する。
【0014】
本明細書において、「含む」、「有する」、「からなる」などが用いられる場合、「~のみ」が用いられない限り、他の部分が追加され得る。構成要素を単数で表現した場合、特に明示的な記載事項がない限り、複数を含む場合を含む。
【0015】
また、本発明の構成要素を解釈するにあたり、別の明示的な記載がなくても、誤差範囲を含むと解釈する。
【0016】
本明細書において、「(メタ)アクリル」は、アクリルおよびメタクリルの総称である。例えば、(メタ)アクリレートは、メタクリレートとアクリレートを含み、(メタ)アクリル酸は、アクリル酸とメタクリル酸を含む。
【0017】
本明細書において、範囲を示す「X~Y」は、「X以上Y以下」を意味する。
【0018】
以下、本発明に係る粘着剤組成物について具体的に説明する。
【0019】
粘着剤組成物
本発明に係る粘着剤組成物は、アセトアセチル基を含む(メタ)アクリル系単量体、ヒドロキシ基を含む(メタ)アクリル系単量体、脂環式基を含む(メタ)アクリレート単量体、およびアルキル(メタ)アクリレート系単量体を含む単量体混合物を重合して形成されるアクリル系共重合体と、金属キレート化合物およびイソシアネート系化合物を含む硬化剤と、を含む。
【0020】
以下、本発明に係る粘着剤組成物の各成分について説明する。
【0021】
(1)アクリル系共重合体
前記アクリル系共重合体は、(A)アセトアセチル基を含む(メタ)アクリル系単量体、(B)ヒドロキシ基を含む(メタ)アクリル系単量体、(C)脂環式基を含む(メタ)アクリレート単量体、および(D)アルキル(メタ)アクリレート系単量体を含む単量体混合物を重合して形成されるものである。
【0022】
前記(A)アセトアセチル基を含む(メタ)アクリル系単量体は、後述の(B)ヒドロキシ基を含む(メタ)アクリル系単量体とともに共重合体中に架橋点を形成することで、粘着剤組成物中に強い架橋構造が形成されるようにし、粘着剤組成物の耐久性を向上させるためのものである。
【0023】
前記(A)アセトアセチル基を含む(メタ)アクリル系単量体としては、例えば、アセトアセチルエチルメタクリレートおよびアセトアセチルエチルアクリレートからなる群から選択される1種以上が使用できるが、これらに限定されるものではない。
【0024】
一方、前記(A)アセトアセチル基を含む(メタ)アクリル系単量体は、単量体混合物100重量部に対して、1~40重量部、好ましくは1~20重量部、より好ましくは3~10重量部で含まれてもよい。(A)アセトアセチル基を含む(メタ)アクリル系単量体の含量が上記の範囲を満たす場合、優れた耐久性および透明性を確保することができる。具体的には、(A)アセトアセチル基を含む(メタ)アクリル系単量体の含量が1重量部未満である場合には、高耐久性を得ることが困難であり、40重量部を超える場合には、ヘイズが高くなり、光学部材用粘着剤として適しない。
【0025】
次に、前記(B)ヒドロキシ基を含む(メタ)アクリル系単量体は、粘着剤組成物の粘着力を向上させ、硬化剤との架橋構造を形成するためのものである。
【0026】
前記(B)ヒドロキシ基を含む(メタ)アクリル系単量体としては、例えば、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、6-ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、8-ヒドロキシオクチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチレングリコール(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピレングリコール(メタ)アクリレート、またはこれらの混合物が使用できるが、これらに限定されるものではない。
【0027】
前記(B)ヒドロキシ基を含む(メタ)アクリル系単量体は、単量体混合物100重量部に対して、1~10重量部、好ましくは1~8重量部で含まれてもよい。(B)ヒドロキシ基を含む(メタ)アクリル系単量体の含量が上記の範囲を満たす場合、優れた粘着力および耐久性を実現することができる。
【0028】
次に、前記(C)脂環式基を含む(メタ)アクリレート系単量体は、アクリル系共重合体のガラス転移温度(Tg)を高め、粘着剤組成物の粘着力を改善するためのものである。
【0029】
前記(C)脂環式基を含む(メタ)アクリレート系単量体としては、例えば、ジシクロペンチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、1-アクリロキシ-2-ヒドロキシアダマンタン、3,4-エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート、5-エチル-1,3-ジオキセニルメチル(メタ)アクリレート、ジヒドロキシシクロペンタジエニル(メタ)アクリレート、またはこれらの混合物が使用できるが、これらに限定されるものではない。
【0030】
前記(C)脂環式基を含む(メタ)アクリレート系単量体は、単量体混合物100重量部に対して、1~10重量部、好ましくは1~8重量部、より好ましくは2~7重量部で含まれてもよい。(C)脂環式基を含む(メタ)アクリレート系単量体の含量が上記の範囲を満たす場合、適切な粘度および重量平均分子量を有する粘着剤組成物を製造することができる。
【0031】
次に、前記(D)アルキル(メタ)アクリレート系単量体は、粘着力を付与するためのものであって、炭素数1~14のアルキル基を含むことが好ましい。アルキル(メタ)アクリレート系単量体に含まれるアルキル基が長くなりすぎると、粘着剤の凝集力が低下し、ガラス転移温度(Tg)や粘着性を調節しにくくなる恐れがあるためである。前記アルキル(メタ)アクリレート系単量体の例としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n-プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート、sec-ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、2-エチルブチル(メタ)アクリレート、n-オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、およびテトラデシル(メタ)アクリレートが挙げられ、本発明では、上記のうち1種または2種以上の混合物を使用できる。
【0032】
好ましくは、前記(D)アルキル(メタ)アクリレート系単量体として、アルキルアクリレート単量体およびアルキルメタクリレート単量体の混合物が使用可能であり、具体的には、メチルメタクリレートとブチルアクリレートの混合物が使用できる。このようにアルキルアクリレートとアルキルメタクリレートを混合して用いる場合、粘着剤組成物の硬化後に、アルキルアクリレート単量体のみを用いた場合に比べて、相対的に高いガラス転移温度を実現することができる。
【0033】
前記アルキル(メタ)アクリレート系単量体は、単量体混合物100重量部に対して、40~97重量部、40~96重量部、好ましくは64~97重量部、より好ましくは78~94重量部の含量で含まれてもよい。アルキル(メタ)アクリレート系単量体の含量が上記の範囲を満たす場合、優れた粘着力および耐久性を得ることができる。
【0034】
一方、アルキル(メタ)アクリレート系単量体としてアルキルアクリレートとアルキルメタクリレートの混合物を用いる場合、前記アルキルアクリレートとアルキルメタクリレートの混合比率は、重量比で20:1~5:1、好ましくは20:1~10:1であってもよい。アルキルアクリレートとアルキルメタクリレートの混合比率が上記の範囲を満たす場合、適切な粘着力および高いガラス転移温度を実現することができる。
【0035】
一具体例によると、前記アクリル系共重合体は、前記単量体混合物100重量部に対して、アセトアセチル基を含む(メタ)アクリル系単量体1~40重量部と、ヒドロキシ基を含む(メタ)アクリル系単量体1~10重量部と、脂環式基を含む(メタ)アクリレート系単量体1~10重量部と、アルキル(メタ)アクリレート系単量体40~97重量部と、を含む単量体混合物を重合して形成されるものであってもよい。
【0036】
一方、本発明に係るアクリル系共重合体を製造するための単量体混合物には、必要に応じて、(E)芳香族基を含む(メタ)アクリレート系単量体がさらに含まれてもよい。
【0037】
(E)芳香族基を含む(メタ)アクリレート系単量体が含まれる場合、ディスプレイ装置の光漏れが改善される効果がある。
【0038】
前記(E)芳香族基を含む(メタ)アクリレート系単量体としては、例えば、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、2-(1-ナフチルオキシ)-1-エチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチル化β-ナフトールアクリレート、ビフェニル(メタ)アクリレート、またはこれらの混合物などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0039】
前記(E)芳香族基を含む(メタ)アクリレート系単量体は、単量体混合物100重量部に対して、1~20重量部、好ましくは1~15重量部、より好ましくは5~15重量部で含まれてもよい。(E)芳香族基を含む(メタ)アクリレート系単量体の含量が上記の範囲を満たす場合、適切な粘度および重量平均分子量を有する粘着剤組成物を製造することができ、優れた光漏れ改善効果を得ることができる。
【0040】
一態様によると、前記アクリル系共重合体は、前記単量体混合物100重量部に対して、アセトアセチル基を含む(メタ)アクリル系単量体1~40重量部と、ヒドロキシ基を含む(メタ)アクリル系単量体1~10重量部と、脂環式基を含む(メタ)アクリレート系単量体1~10重量部と、芳香族基を含む(メタ)アクリレート系単量体1~20重量部と、アルキル(メタ)アクリレート系単量体40~96重量部と、を含む単量体混合物を重合して形成されるものであってもよい。
【0041】
また、本発明に係るアクリル系共重合体を製造するための単量体混合物には、必要に応じて、少量の(F)カルボキシ基含有単量体がさらに含まれてもよい。
【0042】
カルボキシ基含有単量体は、粘着剤組成物の耐久性を向上させる効果があるが、一定量以上が用いられる場合、酸成分がタッチパネルの電極と反応してタッチパネルの腐食を発生させる恐れがあるため、タッチパネルの性能が低下し得る。したがって、本発明では、パネルの腐食が発生しない程度の少量のカルボキシ基含有単量体のみを用いる。具体的に、本発明において、前記(F)カルボキシ基含有単量体は、単量体混合物100重量部に対して、3重量部未満、好ましくは0超過3重量部以下、より好ましくは0超過2重量部以下で含まれる。従来の粘着剤組成物は、カルボキシ基単量体を上記のように少量で含む場合、十分な耐久性向上効果が得られないという問題があったが、本発明は、アセトアセチル基含有単量体および2種の硬化剤を用いることで、架橋構造を形成することにより耐久性が向上するため、上記のように少量のカルボキシ基含有単量体を用いても、十分な耐久性を確保することができる。
【0043】
前記カルボキシ基含有単量体としては、例えば、(メタ)アクリル酸、2-(メタ)アクリロイルオキシ酢酸、3-(メタ)アクリロイルオキシプロピル酸、4-(メタ)アクリロイルオキシブチル酸、アクリル酸二量体、イタコン酸、マレイン酸、マレイン酸無水物などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0044】
本発明に係るアクリル系共重合体は、上述のそれぞれの単量体を混合して単量体混合物を製造した後、それを重合することで製造されることができる。この際、前記重合方法としては、特に限定されないが、当該技術分野において知られている様々な重合方法、例えば、溶液重合、光重合、バルク重合、懸濁重合、または乳化重合などの重合法が用いられてもよい。前記重合時には、重合開始剤、分子量調節剤などをさらに添加してもよく、各成分の投入時期は特に限定されない。すなわち、前記成分は、一括投入してもよく、複数回に分けて分割投入してもよい。
【0045】
本発明では、特に、溶液重合法によりアクリル系共重合体を製造することができ、溶液重合は、それぞれの単量体が均一に混合された状態で開始剤、分子量調節剤などを添加し、50℃~140℃の重合温度で行うことが好ましい。この過程で使用可能な開始剤の例としては、アゾビスイソブチロニトリルまたはアゾビスシクロヘキサンカルボニトリルなどのアゾ系開始剤;および/または、過酸化ベンゾイルまたは過酸化アセチルなどの過酸化物などの通常の開始剤が挙げられ、上記のうち1種または2種以上の混合物を用いてもよいが、これらに制限されるものではない。また、前記分子量調節剤としては、t-ドデシルメルカプタン、またはn-ドデシルメルカプタンなどのメルカプタン類、ジペンチン、またはt-テルペンなどのテルペン類、クロロホルム、または四塩化炭素などのハロゲン化炭化水素、またはペンタエリスリトールテトラキス3-メルカプトプロピオネートなどが使用できるが、これらに制限されるものではない。
【0046】
一方、上記のように製造される本発明のアクリル系共重合体は、重合転化率が70%~90%、具体的には75~85%程度であることが好ましい。重合転化率が低すぎると、アクリル系共重合体の重量平均分子量が小さくて耐久性が低下し得、重合転化率が高すぎると、低分子量体が多くなって粘着物性が低下し得る。一方、前記重合転化率は、重合反応中に得られた反応中間体を150℃で30分間乾燥して重合溶媒および未反応単量体を揮発させてから、固形分量を測定し、測定された固形分量を初期単量体の固形分量で除した後、100を乗じて得られた値である。
【0047】
一方、本発明のアクリル系共重合体は、重量平均分子量が1,000,000g/mol~2,000,000g/mol、好ましくは1,500,000g/mol~2,000,000g/molであってもよい。アクリル系共重合体の重量平均分子量が上記の範囲を満たす場合、タッチパネルが適用されたディスプレイ装置で求められる高いレベルの耐久性を実現することができる。
【0048】
また、本発明のアクリル系共重合体は、酸価が10以下、好ましくは5以下、より好ましくは1以下であってもよい。前記酸価は、アクリル系共重合体の試料1g中に含有されている遊離脂肪酸、樹脂酸などを中和するのに必要な水酸化カリウムのmg数を意味する。アクリル系共重合体の酸価が10を超える場合には、タッチパネルなどの腐食防止の効果が微小であるだけでなく、帯電防止剤としてアルカリ金属塩などを添加する場合、アルカリ金属塩との相互作用が大きいカルボキシ基などが多数存在することにより、イオン伝導を妨害する恐れがあって、帯電防止性能が低下する問題が発生し得る。
【0049】
(2)硬化剤
本発明に係る粘着剤組成物は、硬化剤として、金属キレート化合物およびイソシアネート系化合物を含む。前記金属キレート化合物およびイソシアネート系化合物は、アクリル系共重合体中のアセトアセチル基および/またはヒドロキシ基と反応して架橋構造を形成することで、粘着剤組成物の耐久性を向上させる役割を果たす。
【0050】
本発明のように、硬化剤として金属キレート化合物およびイソシアネート系化合物をともに用いる場合、1種類の硬化剤のみを用いる場合に比べて、より速く且つ強い二重架橋構造が得られるため、粘着剤の凝集力を向上させる効果を得ることができる。
【0051】
前記金属キレート化合物としては、アルミニウム、鉄、亜鉛、スズ、チタン、アンチモン、マグネシウム、銀、ジルコニウム、クロム、ニッケル、およびバナジウムなどの多価金属がアセチルアセトンまたはアセト酢酸エチルなどに配位している化合物などが使用可能であり、例えば、トリスエチルアセトアセテートアルミニウム、エチルアセトアセテートアルミニウムジイソプロピレート、トリスアセチルアセトネートアルミニウム、またはこれらの混合物が使用できる。
【0052】
前記金属キレート化合物は、前記アクリル系共重合体100重量部に対して、0.01~1重量部、好ましくは0.2~0.8重量部で含まれてもよい。金属キレート化合物の含量が上記の範囲を満たす場合、粘着剤の凝集が崩壊することなく適切に形成される効果がある。
【0053】
一方、前記イソシアネート系化合物としては、例えば、トルエンジイソシアネート、2,4-トリレンジイソシアネート、2,6-トリレンジイソシアネート、水素化トリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、1,3-キシレンジイソシアネート、1,4-キシレンジイソシアネート、ジフェニルメタン-4,4-ジイソシアネート、1,3-ビスイソシアナートメチルシクロヘキサン、テトラメチルキシレンジイソシアネート、1,5-ナフタレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、2,4,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチロールプロパン変性トルエンジイソシアネート、トリメチロールプロパン変性トリレンジイソシアネート、トリメチロールプロパンのトリレンジイソシアネートアダクト、トリメチロールプロパンのキシレンジイソシアネートアダクト、トリフェニルメタントリイソシアネート、メチレンビストリイソシアネート、これらのポリオール(トリメチロールプロパン)、またはこれらの混合物などが使用できる。
【0054】
前記イソシアネート系化合物は、アクリル系共重合体100重量部に対して、0.01~1重量部、好ましくは0.01~0.8重量部、より好ましくは0.1~0.5重量部で含まれることが好ましい。イソシアネート系硬化剤を0.01重量部未満で用いる場合には、所望の時間に粘着剤の凝集力を形成することが困難であり、1重量部以上用いる場合には、凝集力と接着力のバランスが崩れて物性を満たすことができない。
【0055】
一方、前記硬化剤は、アクリル系共重合体100重量部に対して、0.1~2重量部、好ましくは0.1~1重量部で含まれてもよい。硬化剤の含量が上記の範囲を満たす場合、凝集力および接着力の物性が何れも優れる。
【0056】
(3)その他の成分
本発明の粘着剤組成物は、物性調節のために、上述の成分以外に、溶媒、シランカップリング剤、アルカリ金属塩、架橋触媒剤、粘着性付与樹脂、添加剤などの他の成分をさらに含んでもよい。
【0057】
本発明の粘着剤組成物は、粘度調節のための溶媒をさらに含んでもよい。この際、前記溶媒としては、例えば、エチルアセテート、n-ペンタン、イソペンタン、ネオペンタン、n-ヘキサン、n-オクタン、n-ヘプタン、メチルエチルケトン、アセトン、トルエン、またはこれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0058】
また、本発明の粘着剤組成物は、シランカップリング剤をさらに含んでもよい。
【0059】
かかるカップリング剤は、粘着剤と基材との密着性および接着安定性を向上させるためのものであって、本発明で使用可能なカップリング剤の例としては、γ-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、γ-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ-メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、γ-アセトアセチルプロピルトリメトキシシラン、γ-アセトアセチルプロピルトリエトキシシラン、β-シアノアセチルトリメトキシシラン、β-シアノアセチルトリエトキシシラン、アセトキシアセトトリメトキシシランが挙げられ、上記のうち1種または2種以上の混合物が使用できる。本発明では、アセトアセテート基またはβ-シアノアセチル基を有するシラン系カップリング剤を用いることが好ましいが、これらに制限されるものではない。
【0060】
本発明の粘着剤組成物において、シラン系カップリング剤は、アクリル系共重合体100重量部に対して、0.01重量部~5重量部、好ましくは0.01重量部~1重量部の量で含まれてもよい。カップリング剤の含量が0.01重量部未満である場合には、密着性増加の効果が微小であり、5重量部を超える場合には、耐久性が低下する恐れがある。
【0061】
また、本発明の粘着剤組成物は、帯電防止性能を付与するために、アルカリ金属塩をさらに含んでもよい。この際、前記アルカリ金属塩としては、リチウム、ナトリウム、カリウムから構成される金属塩が挙げられ、具体的には、Li、Na、Kから構成されるカチオンと、Cl、Br、I、BF 、PF 、SCN、CLO 、CFSO 、(CFSO、(CFSOから構成されるアニオンと、から構成される金属塩が好適に用いられる。中でも、特に、LiBr、LiI、LiBF、LiPF、LiSCN、LiCLO、LiCFSO、Li(CFSON、Li(CFSOCなどのリチウム塩が好ましい。これらのアルカリ金属塩は、単独で用いてもよく、または2種以上を混合して用いてもよい。
【0062】
前記粘着剤組成物に用いられるアルカリ金属塩の配合量については、アクリル系共重合体100重量部に対して、アルカリ金属塩を0.01~5重量部配合することが好ましく、0.05~3重量部配合することがより好ましい。0.01重量部より少なくなる場合には、十分な帯電特性が得られないことがあり、一方、5重量部より大きくなる場合には、被着体への汚染が増加する傾向があるため、好ましくない。
【0063】
本発明の粘着剤組成物は、また、粘着性能の調節の点から、アクリル系共重合体100重量部に対して、1重量部~100重量部の粘着性付与樹脂をさらに含んでもよい。このような粘着性付与樹脂の種類は特に限定されず、例えば、(水添)ヒドロカーボン系樹脂、(水添)ロジン樹脂、(水添)ロジンエステル樹脂、(水添)テルペン樹脂、(水添)テルペンフェノール樹脂、重合ロジン樹脂、または重合ロジンエステル樹脂などの1種または2種以上の混合物が使用できる。前記粘着性付与樹脂の含量が1重量部より小さい場合には、添加効果の微小である恐れがあり、100重量部を超える場合には、相溶性および/または凝集力向上の効果が低下する恐れがある。
【0064】
本発明の粘着剤組成物は、また、発明の効果に影響を与えない範囲内で、エポキシ樹脂、硬化剤、紫外線安定剤、酸化防止剤、調色剤、補強剤、充填剤、消泡剤、界面活性剤、および可塑剤からなる群から選択される1つ以上の添加剤をさらに含んでもよい。
【0065】
一方、上記の成分を含む本発明の粘着剤組成物は、硬化後に、ガラス転移温度(Tg)が-30℃以上、好ましくは-30℃~-20℃であってもよい。硬化後の粘着剤組成物のガラス転移温度が-30℃未満である場合には、弾性力が不足であって耐久性が低下し得る。
【0066】
また、本発明の粘着剤組成物は、硬化後に、ゲル分率が90%以上であることが好ましい。硬化後のゲル分率が90%未満である場合には、凝集力が不足であって耐熱耐久性を満たさないという問題が発生し得るためである。
【0067】
また、前記粘着剤組成物は、粘着剤組成物の全重量を基準として、固形分の含量が10~20重量%、好ましくは10~15重量%であり、23℃での粘度が500~4,000cP、好ましくは1,000~3,000cPであることが好ましい。粘着剤組成物の固形分の含量および粘度が上記の範囲を満たす場合、優れたコーティング性を実現することができる。
【0068】
偏光板
次に、本発明に係る偏光板について説明する。
【0069】
本発明は、また、偏光フィルムと、前記偏光フィルムの片面または両面に形成され、上述の本発明に係る粘着剤組成物の硬化物を含有する粘着層と、を含む偏光板に関する。
【0070】
本発明で用いる偏光フィルムの種類は特に制限されず、この分野で公知の一般的な種類が採用可能である。例えば、前記偏光フィルムは、偏光子と、前記偏光子の片面または両面に形成された保護フィルムと、を含んでもよい。
【0071】
本発明の偏光板に含まれる偏光子の種類は特に制限されず、例えば、ポリビニルアルコール系偏光子などのように、この分野で公知の一般的な種類が制限されずに採用可能である。
【0072】
偏光子は、複数の方向に振動しながら入射される光から、一方向に振動する光のみを抽出することができる機能性フィルムまたはシートである。かかる偏光子は、例えば、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムに二色性色素が吸着配向されている形態であってもよい。偏光子を構成するポリビニルアルコール系樹脂は、例えば、ポリビニルアセテート系樹脂をゲル化して得ることができる。この場合、使用可能なポリビニルアセテート系樹脂には、ビニルアセテートの単独重合体はいうまでもなく、ビニルアセテート、および上記と共重合可能な他の単量体の共重合体も含まれ得る。上記のビニルアセテートと共重合可能な単量体の例としては、不飽和カルボン酸類、オレフィン類、ビニルエーテル類、不飽和スルホン酸類、およびアンモニウム基を有するアクリルアミド類などの1種または2種以上の混合物が挙げられるが、これらに制限されるものではない。ポリビニルアルコール系樹脂のゲル化度は、通常、85モル%~100モル%程度、好ましくは98モル%以上であってもよい。前記ポリビニルアルコール系樹脂はさらに変性されていてもよく、例えば、アルデヒド類で変性されたポリビニルホルマールまたはポリビニルアセタールなども使用可能である。また、ポリビニルアルコール系樹脂の重合度は、通常、1,000~10,000程度、好ましくは1,500~5,000程度であってもよい。
【0073】
上記のポリビニルアルコール系樹脂を製膜し、偏光子の原反フィルムとして用いることができる。ポリビニルアルコール系樹脂を製膜する方法は特に限定されず、この分野において公知の一般的な方法を用いてもよい。
【0074】
ポリビニルアルコール系樹脂で製膜された原反フィルムの厚さは、特に制限されず、例えば、1μm~150μmの範囲内で適切に制御されることができる。延伸の容易性などを考慮し、前記原反フィルムの厚さは10μm以上に制御されることができる。
【0075】
偏光子は、上記のポリビニルアルコール系樹脂フィルムを延伸(例えば、一軸延伸)する工程、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムを二色性色素で染色し、その二色性色素を吸着させる工程、二色性色素が吸着されたポリビニルアルコール系樹脂フィルムをホウ酸(boric acid)水溶液で処理する工程、およびホウ酸水溶液で処理後に水洗する工程などを経て製造されることができる。上記において、二色性色素としては、ヨウ素(iodine)や二色性の有機染料などが用いられてもよい。
【0076】
本発明の偏光フィルムは、また、前記偏光子の片面または両面に形成された保護フィルムをさらに含んでもよい。本発明の偏光板に含まれ得る保護フィルムの種類は特に制限されず、例えば、トリアセチルセルロースなどのセルロース系フィルム;ポリカーボネートフィルムまたはポリエチレンテレフタレートフィルムなどのポリエステル系フィルム;ポリエーテルスルホン系フィルム;および/またはポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、またはシクロ系やノルボルネン構造を有するポリオレフィンフィルム、またはエチレンプロピレン共重合体などのポリオレフィン系フィルムなどから構成された保護フィルムが積層された多層フィルムからなってもよい。この際、前記保護フィルムの厚さも特に制限されず、通常の厚さで形成してよい。
【0077】
本発明において、偏光フィルムに粘着層を形成する方法は特に制限されず、例えば、前記フィルムまたは素子にバーコータなどの通常の手段により粘着剤組成物(コーティング液)を塗布し、硬化させる方法、または、一旦、粘着剤組成物を剥離性基材の表面に塗布して硬化させた後、形成された粘着層を偏光フィルムまたは素子の表面に転写する方法などが用いられてもよい。
【0078】
本発明において、粘着層の形成過程は、また、粘着剤組成物(コーティング液)中の揮発成分または反応残留物などの気泡誘発成分を十分に除去してから行うことが好ましい。これにより、粘着剤の架橋密度または分子量などが低すぎて弾性率が低下し、高温状態でガラス板および粘着層の間に存在する気泡が大きくなって内部で散乱体を形成するという問題などを防止することができる。
【0079】
また、偏光板の製造時に本発明の粘着剤組成物を硬化させる方法も特に限定されず、例えば、組成物中に含まれているアクリル系共重合体と硬化剤の架橋反応が誘発されるように、前記粘着層を適切な温度で維持させる方式により行ってもよい。
【0080】
本発明の偏光板は、また、保護層、反射層、防眩層、位相差板、広視野角補償フィルム、および輝度向上フィルムからなる群から選択される1つ以上の機能性層をさらに含んでもよい。
【0081】
ディスプレイ装置
次に、本発明のディスプレイ装置について説明する。
【0082】
本発明のディスプレイ装置は、上記の本発明に係る偏光板を含む。
【0083】
より具体的には、前記ディスプレイ装置は、本発明に係る偏光板が片面または両面に接合されている液晶パネルを含む液晶表示装置であってもよい。この際、前記液晶パネルの種類は特に限定されない。本発明では、例えば、その種類が制限されず、TN(Twisted Nematic)型、STN(Super Twisted Nematic)型、F(強誘電体;ferroelectric)型、およびPD(ポリマー分散(polymer dispersed) LCD)型などを含む各種パッシブマトリクス方式;二端子型(two terminal)および三端子型(three terminal)を含む各種アクティブマトリックス方式;横電界型(IPS mode)パネルおよび垂直配向型(VA mode)パネルを含む公知の液晶パネルが何れも適用可能である。また、本発明の液晶表示装置に含まれるその他の構成の種類およびその製造方法も特に限定されず、この分野の一般的な構成を制限されずに採用して使用できる。
【0084】
また、本発明に係るディスプレイ装置は、前記偏光板上に配置されるタッチパネルをさらに含んでもよい。本発明の粘着剤組成物は、酸成分を含まないか、極めて微量で含んでいるため、偏光板の粘着層とタッチパネルが長時間接触しても、タッチパネル電極の腐食が発生しないという利点がある。この際、前記タッチパネルは、人体やスタイラス(stylus)などの導電体がタッチする時に生じるキャパシタンスの変化を検知し、電気的信号を発生させる装置を意味するものであって、当該技術分野で知られている種々のタッチパネルが制限されずに使用可能である。
【0085】
以下、本発明が属する技術分野における通常の知識を有する者が容易に実施できるように、本発明の実施例について詳細に説明する。しかし、本発明は種々の異なる形態で実現可能であり、ここで説明する実施例に限定されない。
【実施例
【0086】
次に、具体的な実施例を挙げて本発明をより詳細に説明する。
【0087】
製造例
ブチルアクリレート(BA)、メチルメタクリレート(MMA)、ヒドロキシエチルアクリレート(HEA)、アセトアセチルエチルメタクリレート(AAEM)、ジシクロペンチルメタクリレート(DCPMA)、アクリル酸(AA)、フェノキシエチルアクリレート(PEA)を、下記表1に記載の含量で混合し、単量体混合物を製造した。窒素ガスが還流され、温度調節が容易であるように冷却装置を取り付けた3Lの反応器に、製造された単量体混合物とエチルアセテート(EAc)50重量部を投入した。その後、前記反応器の温度を67℃に維持しながら、重合開始剤としてアゾビス(イソブチルニトリル(V-60、製造社:Junsei)0.03重量部を投入し、8時間反応させることで、アクリル系共重合体A-1~A-7を製造した。
【0088】
製造されたアクリル系共重合体の重量平均分子量(Mw)を下記物性測定方法により測定し、下記表1に示した。
【0089】
【表1】
【0090】
下記実施例および比較例で使用された成分の仕様は、次のとおりである。
【0091】
(A)アクリル系共重合体:前記製造例1~7で製造されたアクリル系共重合体A-1~A-7を使用した。
(B)架橋剤:
(B-1)金属キレート化合物:シグマアルドリッチ(Sigma-Aldrich)社のアルミニウムアセチルアセトネート(Aluminium acetylacetonate)を使用した。
(B-2)イソシアネート化合物:日本ポリウレタン工業社のコロネートLを使用した。
(B-3)エポキシ系硬化剤:三菱ガス化学社のTETRAD-Xを使用した。
(C)シランカップリング剤:信越社のKBM-403を使用した。
(D)アルカリ金属塩:シグマアルドリッチ社のLi(CFSONを使用した。
【0092】
酢酸エチル40重量部に、成分(A)~(C)を下記表2に記載の含量で混合して撹拌し、粘着剤組成物を製造した。下記表2に記載の含量は、アクリル系共重合体100重量部に対する重量部である。
【0093】
上記の方法により製造された実施例および比較例の粘着剤組成物のガラス転移温度を、下記の物性測定方法により測定した。
【0094】
また、上記の方法により製造された実施例および比較例の粘着剤組成物を用いて粘着シートまたは偏光板を製造した後、下記の物性測定方法により、ずれ距離、常温粘着力、熟成(Aging)後の粘着力、長期耐久性、ゲル分率、腐食性、および光漏れの程度を測定した。測定結果は下記表2に記載した。
【0095】
物性測定方法
(1)重量平均分子量(g/mol):
製造例で製造されたアクリル系共重合体の重量平均分子量をGPCにより下記条件で測定した後、Agilent systemの標準ポリスチレンを用いて測定結果を換算した。
【0096】
<測定条件>
測定器:Agilent GPC(Agulent 1200 series、米国)
カラム:PL Mixed B 2個を連結
カラム温度:40℃
溶離液:テトロヒドロフラン
流速:1.0mL/分
濃度:~1mg/mL(100μL injection)
【0097】
(2)ガラス転移温度(℃):
実施例および比較例で製造された粘着剤組成物を離型フィルムに塗布した後、85℃で3分間乾燥させて粘着層を形成した。前記粘着層のある離型フィルムを恒温恒湿条件(23℃、50%R.H.)で6日間放置した後、前記粘着層から試料を採取し、示差走査熱量計(DSC)を用いて、硬化後の粘着剤組成物のガラス転移温度を測定した。具体的には、約3~8mgの粘着層を試料として採取し、採取された試料を専用パン(pan)に密封し、10℃/minの昇温速度で-50℃~150℃の範囲で区間加熱しながら、温度による吸熱および発熱量を測定し、これからガラス転移温度を測定した。
【0098】
(3)ずれ距離(Creep、μm)
実施例および比較例で製造された偏光板を幅10mm、長さ10mmのサイズに裁断し、試験片を製造した。次いで、粘着層に付着された離型PETフィルムを剥離し、JIS Z 0237規定に準じて、2kgのローラを用いて偏光板を無アルカリガラスに付着し、測定用試験片を製造した。その後、前記測定用試験片を恒温恒湿条件(23℃、50%R.H.)でそれぞれ1日および6日間保管した後、TA装備(Texture Analyzer、イギリスのStable Micro Systems社製)を用いてそれぞれのずれ距離を測定した。具体的には、前記ずれ距離は、1,000gの荷重で、1,000秒間測定用試験片の偏光板を引っぱった時に、前記偏光板がガラス基板からずれた距離(単位:μm)で測定した。
【0099】
(4)常温接着力(gf/25mm)
実施例および比較例で製造された偏光板を恒温恒湿条件(23℃、50%R.H.)でそれぞれ3日および6日間保管した後、幅25mm、長さ100mmとなるように裁断して試験片を製造した。次いで、粘着層に付着された離型PETフィルムを剥離し、JIS Z 0237規定に準じて、2kgのローラを用いて偏光板を無アルカリガラスに付着し、測定用試験片を製造した。
【0100】
前記測定用試験片を恒温恒湿条件(23℃、50%R.H.)で4時間保管した。その後、TA装備(Texture Analyzer、イギリスのStable Micro Systems社製)を用いて、剥離速度300mm/min、剥離角度180度の条件で前記偏光板を引っぱり、ガラス基板から偏光板を完全に分離させるのに要求される力を測定し、常温粘着力(単位:gf/25mm)を測定した。
【0101】
(5)熟成(Aging)後の粘着力(gf/25mm)
実施例および比較例で製造された粘着剤組成物をコロナ処理されたPET(厚さ:100μm)にラミネートして粘着フィルムを製造し、6日間保管した。次に、前記粘着フィルムを幅25mm、長さ100mmとなるように裁断して試験片を製造した後、粘着層に付着された離型PETフィルムを剥離し、JIS Z 0237規定に準じて、2kgのローラを用いて粘着フィルムを無アルカリガラスに付着し、測定用試験片を製造した。その後、測定用試験片を110℃の温度でそれぞれ24時間および250時間放置した後、TA装備(Texture Analyzer、イギリスのStable Micro Systems社製)を用いて、剥離速度300mm/min、剥離角度180度の条件で前記粘着フィルムを引っぱり、ガラス基板から粘着フィルムを完全に分離させるのに要求される力を測定し、熟成(Aging)後の粘着力(単位:gf/25mm)を測定した。
【0102】
(6)耐久性評価
実施例および比較例で製造された偏光板を無アルカリガラス基板上に付着し、測定用試験片を製作した。
【0103】
製造された測定用試験片をそれぞれ80℃および110℃の温度で500時間放置した後、気泡または剥離の発生有無を目視観察して評価した。
【0104】
<評価基準>
OK:気泡および剥離が観察されない。
NG:気泡および/または剥離が観察される。
【0105】
(7)ゲル分率(単位:%)
実施例および比較例で製造された粘着剤組成物を離型フィルムに塗布した後、85℃で3分間乾燥させて粘着層を形成した。前記粘着層のある離型フィルムを恒温恒湿条件(23℃、50%R.H.)で6日間放置した後、離型フィルムから粘着層を剥離させてサンプルを採取し、その重量Wを秤量した。その後、前記採取された粘着層サンプルに酢酸エチルを加え、72時間溶解させた後、W(g)の200メッシュのステンレス鉄網で濾過分離し、150℃で30分間乾燥させた後、前記ステンレス鉄網と残留物の総重量(W(g))を測定した。前記総重量Wからステンレス製鉄網の重量Wを引いた値をWとし、WおよびWを下記式(1)に代入してゲル分率を求めた。
【0106】
式(1):ゲル分率(%)=(W/W)×100
【0107】
(8)腐食性
実施例および比較例で製造された粘着剤組成物を離型フィルムに塗布した後、85℃で3分間乾燥させて粘着層を形成した。その後、前記粘着層をITOフィルムにラミネートし、粘着層を含むITOフィルムを製造した。線抵抗測定器(Wolfgang Metriso 2000)を利用してフィルムの抵抗Aを測定した。
【0108】
その後、前記ITOフィルムを耐湿熱条件(60℃、90%)で10日間放置した後、線抵抗測定器(Wolfgang Metriso 2000)を用いてフィルムの抵抗Aを測定した。測定された抵抗値を下記式(2)に代入して抵抗変化率を測定し、下記評価基準で腐食性を判断した。抵抗値が上昇するほど、腐食が進んでいると判断することができる。
【0109】
式(2):抵抗変化率(%)=(A-A/A)×100
【0110】
前記式(2)において、Aは、上記のフィルムを耐湿熱条件に投入する前の抵抗値であり、Aは、前記試験片を60℃、90%RH条件で10日間保管してから測定した抵抗値である。
【0111】
<評価基準>
OK:抵抗変化率値が30%未満
NG:抵抗変化率値が30%以上
【0112】
(9)光漏れ評価
実施例および比較例で製造された偏光板(160mm×90mm)2枚を、無アルカリガラス基板の両面に偏光板の光軸が90度交差するように付着し、測定用試験片を製造した。その後、前記測定用試験片を95℃で250時間放置した後、常温で取り出してバックライト上に載せ、暗室で光透過性の均一性有無を目視観察して評価した。評価基準は次のとおりである。
【0113】
◎:光透過性の不均一現象が目視で確認されない。
○:光透過性の不均一現象がやや確認される。
×:光透過性の不均一現象が多く確認される。
【0114】
【表2】
【0115】
前記表2に示されたように、本発明に係る実施例1~3の粘着剤組成物は、ゲル分率値が高く、ずれ距離、常温粘着力、熟成後の粘着力が良好であり、110℃の高温で優れた耐久性を示すことを確認することができる。また、腐食性および光漏れ特性にも優れていた。これに対し、脂環式基を含む(メタ)アクリレート単量体を使用せずに製造されたアクリル系共重合体を使用した比較例1は、110℃高温耐久性および光漏れ特性が低下しており、脂環式基を含む(メタ)アクリレート単量体とアセトアセチル基含有単量体を使用せずに製造されたアクリル系共重合体を使用した比較例2および7は、ゲル分率、高温耐久性、および光漏れ特性が低下していた。一方、比較例3および4は、アクリル酸単量体の使用によって腐食が発生し、1種類の硬化剤のみを使用した比較例5および6は、110℃高温耐久性および光漏れ特性が低下していた。