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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-10
(45)【発行日】2022-01-12
(54)【発明の名称】測定器およびその制御方法
(51)【国際特許分類】
   G01D 3/032 20060101AFI20220104BHJP
【FI】
G01D3/032
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2017181643
(22)【出願日】2017-09-21
(65)【公開番号】P2019056641
(43)【公開日】2019-04-11
【審査請求日】2020-08-04
(73)【特許権者】
【識別番号】000137694
【氏名又は名称】株式会社ミツトヨ
(74)【代理人】
【識別番号】100166545
【弁理士】
【氏名又は名称】折坂 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】小林 博和
(72)【発明者】
【氏名】麦倉 俊
【審査官】岩本 太一
(56)【参考文献】
【文献】特開昭58-176527(JP,A)
【文献】特開平03-282331(JP,A)
【文献】特開昭63-303393(JP,A)
【文献】特開昭53-091780(JP,A)
【文献】特開平09-153817(JP,A)
【文献】特開平05-034185(JP,A)
【文献】特開昭56-108918(JP,A)
【文献】米国特許第04660662(US,A)
【文献】特開平03-137570(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01D 3/00- 4/18
G01G 1/00- 9/00
21/00-23/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
測定器に関する情報を記憶する記憶手段と、測定結果を算出する制御手段と、前記制御手段により算出された前記測定結果を表示する表示手段と、を備える測定器であって、
前記制御手段は、
前記表示手段に表示される表示値の変化を抑制するフィルタ処理を実行するか否かを判定するフィルタ処理判定部と、
前記フィルタ処理判定部にて前記フィルタ処理を実行すると判定された場合、前記フィルタ処理を実行するフィルタ処理実行部と、
前記表示値を安定させる安定化処理を実行する安定化処理部とを備え、
前記安定化処理は、前記表示値を所定の丸め幅の整数倍の数値に置き換える丸め処理と、前記丸め処理の前記丸め幅に対してヒステリシスを与えるヒステリシス処理とを含み、
前記表示手段は、前記安定化処理部により安定化された前記表示値を表示し、
前記記憶手段は、
前記表示値を記憶する第1の記憶部と、
前記表示手段に表示された過去の表示値を記憶する第2の記憶部と、を有し、
前記制御手段は、
前記表示値と前記過去の表示値との偏差を算出する偏差算出部を備え、
前記フィルタ処理判定部は、
前記偏差算出部にて算出された前記偏差に基づき前記フィルタ処理を実行するか否かを判定し、
前記フィルタ処理実行部は、
前記フィルタ処理が実行された表示値である平滑化表示値P' について、
前記表示値P と、前記過去の表示値P n-1 と、0<α <1を満たす平滑化係数α と、に基づいて、
P' =α ×P +(1-α )×P n-1 …(1)
式(1)を用いて算出し、
前記平滑化表示値P' を前記第1の記憶部が記憶する前記表示値P と置き換えて、
=P' …(2)
式(2)を満たすように前記平滑化表示値P' を前記表示値P として前記第1の記憶部に記憶させることを特徴とする測定器。
【請求項2】
請求項に記載された測定器において、
前記平滑化係数αは、0より大きい整数βに基づき、
α=1/2βn …(3)
式(3)を満たすことを特徴とする測定器。
【請求項3】
請求項に記載された測定器において、
前記平滑化係数αは、
前記フィルタ処理判定部にて前記フィルタ処理を実行すると判定された回数nについて、
n,n+1の場合はβ=1、
n+2,n+3の場合はβ=2、
n+4以上の場合はβ=3、とするとき、
α=1/2βn …(3)
式(3)を満たすことを特徴とする測定器。
【請求項4】
請求項から請求項のいずれかに記載された測定器において、
前記偏差算出部は、
前記表示値Pと、前記過去の表示値Pn-1と、に基づいて、
偏差=|P-Pn-1| …(4)
式(4)を用いて前記偏差を算出することを特徴とする測定器。
【請求項5】
請求項から請求項のいずれかに記載された測定器において、
前記偏差算出部は、
正の整数kと、前記表示値Pと、前記過去の表示値Pn-1と、に基づいて、
偏差=k×標準偏差(P,Pn-1,…,P,P) …(5)
式(5)を用いて前記偏差を算出することを特徴とする測定器。
【請求項6】
請求項から請求項のいずれかに記載された測定器において、
前記表示値および前記過去の表示値は、
前記表示手段に表示される表示桁と、前記表示桁よりも下位の桁であり前記表示手段には表示されない非表示桁と、を有し、
前記フィルタ処理実行部は、前記非表示桁に対してフィルタ処理を実行し、
前記安定化処理部は、前記非表示桁に対して安定化処理を実行することを特徴とする測定器。
【請求項7】
測定器に関する情報を記憶する記憶手段と、測定結果を算出する制御手段と、前記制御手段により算出された前記測定結果を表示する表示手段と、を備える測定器の制御方法であって、
前記記憶手段は、
前記表示手段に表示される表示値を記憶する第1の記憶部と、
前記表示手段に表示された過去の表示値を記憶する第2の記憶部と、を有し、
前記制御手段は、
前記表示値と前記過去の表示値との偏差を算出する偏差算出工程と、
前記偏差算出工程にて算出された前記偏差に基づき前記表示手段に表示される表示値の変化を抑制するフィルタ処理を実行するか否かを判定するフィルタ処理判定工程と、
前記フィルタ処理判定工程にて前記フィルタ処理を実行すると判定された場合、前記フィルタ処理を実行するフィルタ処理実行工程と、
前記表示値を安定させる安定化処理を実行する安定化処理工程と、を実行し
前記フィルタ処理実行工程において、
前記フィルタ処理が実行された表示値である平滑化表示値P' について、
前記表示値P と、前記過去の表示値P n-1 と、0<α <1を満たす平滑化係数α と、に基づいて、
P' =α ×P +(1-α )×P n-1 …(1)
式(1)を用いて算出し、
前記平滑化表示値P' を前記第1の記憶部が記憶する前記表示値P と置き換えて、
=P' …(2)
式(2)を満たすように前記平滑化表示値P' を前記表示値P として前記第1の記憶部に記憶させ、
前記安定化処理は、前記表示値を所定の丸め幅の整数倍の数値に置き換える丸め処理と、前記丸め処理の前記丸め幅に対してヒステリシスを与えるヒステリシス処理とを含み、
前記表示手段は、
前記安定化処理工程による前記安定化処理にて安定化された前記表示値を表示することを特徴とする測定器の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報を表示する表示手段を備える測定器およびその制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、測定器に関する情報を記憶する記憶手段と、測定結果を算出する制御手段と、制御手段により算出された測定結果を表示する表示手段と、を備える測定器が知られている。測定器は、例えばダイヤルゲージやノギス、インジケータ、リニアスケール、マイクロメータ等である。
【0003】
このような測定器として、例えばスピンドルの先端に設けられる測定子を測定対象物に接触させて測定子の変動から測定対象物の寸法等を測定するダイヤルゲージがある。ダイヤルゲージは、測定子および測定対象物を静止させた状態で接触させているにも関わらず、表示手段に表示される測定結果などの表示値の最小桁の値が変動することがある。具体的には、表示手段は、表示値の最小桁の値について例えば「4」や「5」、「6」等、頻繁に切り替えて表示することがある。このような表示値の最小桁の値の頻繁な切り替わり(ちらつき)が起こると、ダイヤルゲージ(測定器)の使用者は、表示値の最小桁の値が安定しないことから正確な測定結果を読み取ることができず、測定器の信頼性を疑うことがあるという問題がある。
【0004】
このような問題に対して、例えば特許文献1のデジタル表示式ノギス(測定器)は、本尺およびスライダの相対移動変位量を検出するエンコーダと、エンコーダからの出力信号に基づき表示値を表示するデジタル表示器(表示手段)と、表示値の表示桁および端数桁(非表示桁)を記憶する第1のデータレジスタおよび第2のデータレジスタと、表示値の安定表示方法を実行するための安定表示回路と、を備える。
【0005】
安定表示回路は、第1のデータレジスタおよび第2のデータレジスタのそれぞれに同一の初期値を設定する第1工程と、エンコーダからの出力信号に基づく表示値の表示桁を第1のデータレジスタに記憶させるとともに、記憶させた表示桁の値と、第2のデータレジスタに記憶されている表示桁の値と、を比較して所定の条件にてオフセット値を選択する第2工程と、選択したオフセット値および第1のデータレジスタに記憶させた表示値を加算し、加算した値を第2のデータレジスタに記憶させるとともに加算した値の表示桁の値をデジタル表示器に表示する第3工程と、を実行する。
【0006】
安定表示回路は、第2工程および第3工程を繰り返し実行することにより、デジタル表示器に表示される表示値を安定させている。すなわち、デジタル表示式ノギスの安定表示回路は、エンコーダの出力信号に基づく表示値を繰り返し取得し、表示値について安定化方法を実行することでデジタル表示器に表示される表示値の最小桁の値のちらつきを抑制している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開昭63-303393号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、このような測定器は、例えばダイヤルゲージにて測定子や測定対象物が動作している際、その動作にともない表示手段に表示される表示値も変動することから、表示値が変動する都度、安定化方法(安定化処理)を実行することとなる。このため、測定器は、安定化処理が追いつかないこと等を原因として表示手段に表示される表示値の更新が遅くなる。したがって、測定器は、応答性が低下するという問題がある。
【0009】
本発明の目的は、表示手段に表示される表示値のちらつきを抑制するとともに測定器の応答性の向上を図ることができる測定器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の測定器は、測定器に関する情報を記憶する記憶手段と、測定結果を算出する制御手段と、制御手段により算出された測定結果を表示する表示手段と、を備える測定器であって、制御手段は、表示手段に表示される表示値の変化を抑制するフィルタ処理を実行するか否かを判定するフィルタ処理判定部と、フィルタ処理判定部にてフィルタ処理を実行すると判定された場合、フィルタ処理を実行するフィルタ処理実行部と、を備えることを特徴とする。
【0011】
このような本発明によれば、制御手段は、表示値の変化を抑制して安定させる必要があるか否かをフィルタ処理判定部に判定させ、表示値を安定させる必要がある場合、フィルタ処理実行部にフィルタ処理を実行させることで、表示手段に表示される表示値のちらつきを抑制することができる。すなわち、制御手段は、表示値の変化を抑制して安定させる必要がある場合にフィルタ処理を実行するため、フィルタ処理が追いつかないこと等を原因として表示手段に表示される表示値の更新が遅くなることを防止することができる。したがって、測定器は、表示手段に表示される表示値のちらつきを抑制するとともに測定器の応答性の向上を図ることができる。
【0012】
この際、記憶手段は、表示値を記憶する第1の記憶部と、表示手段に表示された過去の表示値を記憶する第2の記憶部と、を有し、制御手段は、表示値と過去の表示値との偏差を算出する偏差算出部を備え、フィルタ処理判定部は、偏差算出部にて算出された偏差に基づきフィルタ処理を実行するか否かを判定することが好ましい。
【0013】
このような構成によれば、フィルタ処理判定部は、表示値と過去の表示値に基づきフィルタ処理を実行するか否かを判定することができる。したがって、制御手段は、記憶手段が記憶する情報に基づいて表示手段に表示される表示値に対して適切なタイミングにてフィルタ処理を実行することができる。
【0014】
この際、制御手段は、表示値を安定させる安定化処理を実行する安定化処理部を備え、表示手段は、安定化処理部により安定化された表示値を表示することが好ましい。
【0015】
ここで、フィルタ処理とは、例えば数学的な演算として表現できるフィルタである平滑化処理などをいう。平滑化処理とは、例えば移動平均や2項展開係数に従う重みづけのある移動平均や指数平滑フィルタによる処理などである。
これに対して、安定化処理とは、丸め処理やヒステリシス処理のことをいう。丸め処理は、表示手段に表示される表示値をある一定の丸め幅の整数倍の数値に置き換えることであり、ヒステリシス処理は、丸め処理の丸め幅に対してヒステリシスを与える処理のことである。
【0016】
このような本発明によれば、安定化処理部は、安定化処理により表示値を安定させることができる。したがって、測定器は、表示値の安定性を確保することができる。
【0017】
この際、フィルタ処理実行部は、フィルタ処理が実行された表示値である平滑化表示値P'について、表示値Pと、過去の表示値Pn-1と、0<α<1を満たす平滑化係数αと、に基づいて、
P'=α×P+(1-α)×Pn-1 …(1)
式(1)を用いて算出し、平滑化表示値P'を第1の記憶部が記憶する表示値Pと置き換えて、
=P' …(2)
式(2)を満たすように平滑化表示値P'を表示値Pとして第1の記憶部に記憶させることが好ましい。
【0018】
このような構成によれば、フィルタ処理実行部は、平滑化表示値P'について、表示値Pと、過去の表示値Pn-1と、0<α<1を満たす平滑化係数αと、に基づいて式(1)を用いて算出することができる。すなわち、フィルタ処理実行部は、簡単な積和演算である式(1)を用いて平滑化表示値P'を算出することができる。したがって、測定器は、フィルタ処理実行部を容易に実装することができる。
【0019】
また、フィルタ処理実行部は、平滑化表示値P'を第1の記憶部が記憶する表示値Pと置き換えて式(2)を満たすように平滑化表示値P'を表示値Pとして第1の記憶部に記憶させることで、フィルタ処理が実行されなかった場合は表示値Pについて、フィルタ処理が実行された場合は平滑化表示値P'について、表示値Pとすることができる。制御手段は、安定化処理部を備えている場合は、フィルタ処理が実行された場合またはフィルタ処理が実行されなかった場合の双方の表示値P(平滑化表示値P')について安定化処理を実行することができる。
【0020】
この際、平滑化係数αは、0より大きい整数βに基づき、
α=1/2βn …(3)
式(3)を満たすことが好ましい。
【0021】
このような構成によれば、測定器は、演算能力に制限のある制御手段を用いた場合であっても、フィルタ処理実行部を実装することができる。したがって、測定器は、低コスト化を図りつつ表示値Pのちらつきを抑制することができる。
【0022】
この際、平滑化係数αは、フィルタ処理判定部にてフィルタ処理を実行すると判定された回数nについて、n,n+1の場合はβ=1、n+2,n+3の場合はβ=2、n+4以上の場合はβ=3、とするとき、
α=1/2βn …(3)
式(3)を満たすことが好ましい。
【0023】
このような構成によれば、平滑化係数αは、フィルタ処理実行部による平滑化処理の平滑化の強さを段階的に変更することができる。したがって、フィルタ処理実行部は、平滑化表示値P'について収束性を向上させて高分解能化を図ることができる。
【0024】
この際、偏差算出部は、表示値Pと、過去の表示値Pn-1と、に基づいて、
偏差=|P-Pn-1| …(4)
式(4)を用いて偏差を算出することが好ましい。
【0025】
このような構成によれば、測定器は、演算能力に制限のある制御手段を用いた場合であっても、偏差算出部を実装することができる。したがって、測定器は、低コスト化を図りつつ表示値Pのちらつきを抑制することができる。
【0026】
この際、偏差算出部は、正の整数kと、表示値Pと、過去の表示値Pn-1と、に基づいて、
偏差=k×標準偏差(P,Pn-1,…,P,P) …(5)
式(5)を用いて偏差を算出することが好ましい。
【0027】
このような構成によれば、制御手段は、偏差算出部にて算出された偏差に基づいてフィルタ処理判定部にフィルタ処理を実行するか否かを適正に判定させることができる。したがって、制御手段は、表示手段に表示される表示値Pに対して適切なタイミングにてフィルタ処理をフィルタ処理実行部に実行させることができる。
【0028】
この際、表示値および過去の表示値は、表示手段に表示される表示桁と、表示桁よりも下位の桁であり表示手段には表示されない非表示桁と、を有し、フィルタ処理実行部は、非表示桁に対してフィルタ処理を実行し、安定化処理部は、非表示桁に対して安定化処理を実行することが好ましい。
【0029】
このような構成によれば、フィルタ処理実行部や安定化処理部は、フィルタ処理や安定化処理を実行することにより生じる表示値の変動を表示手段に表示することなく処理を実行することができる。したがって、測定器は、表示手段に表示される表示値のちらつきを抑制するとともに測定器の応答性の向上を図ることができる。
【0030】
本発明の測定器は、測定器に関する情報を記憶する記憶手段と、測定結果を算出する制御手段と、制御手段により算出された測定結果を表示する表示手段と、を備える測定器であって、制御手段は、式(4)を用いて偏差を算出する偏差算出部と、偏差算出部にて算出された偏差に基づきフィルタ処理を実行するか否かを判定するフィルタ処理判定部と、平滑化表示値P'について、表示値Pと、過去の表示値Pn-1と、0<α<1を満たすとともに0より大きい整数βに基づき式(3)を満たす平滑化係数αと、に基づいて式(1)を用いて算出するフィルタ処理実行部と、を備えることを特徴とする。
【0031】
このような本発明によれば、測定器は、演算能力に制限のある制御手段を用いた場合であっても、偏差算出部やフィルタ処理実行部を実装することができる。したがって、測定器は、低コスト化を図りつつ表示値Pのちらつきを抑制することができる。
【0032】
本発明の測定器は、測定器に関する情報を記憶する記憶手段と、測定結果を算出する制御手段と、制御手段により算出された測定結果を表示する表示手段と、を備える測定器の制御方法であって、記憶手段は、表示値Pを記憶する第1の記憶部と、表示手段に表示された過去の表示値を記憶する第2の記憶部と、を有し、制御手段は、表示値と過去の表示値との偏差を算出する偏差算出工程と、偏差算出工程にて算出された偏差に基づきフィルタ処理を実行するか否かを判定するフィルタ処理判定工程と、フィルタ処理判定工程にてフィルタ処理を実行すると判定された場合、フィルタ処理を実行するフィルタ処理実行工程と、安定化処理を実行する安定化処理工程と、を備え、表示手段は、安定化処理工程による安定化処理にて安定化された表示値を表示することを特徴とする。
【0033】
このような本発明によれば、測定器は、表示手段に表示される表示値のちらつきを抑制するとともに測定器の応答性の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
図1】本発明の第1実施形態に係る測定器を示す正面図
図2】前記測定器の制御手段を示すブロック図
図3】前記測定器の制御方法を示すフローチャート
図4】本発明の第2実施形態に係る測定器の制御手段を示すブロック図
図5】前記測定器の制御方法を示すフローチャート
図6】本発明の第3実施形態に係る測定器の制御手段を示すブロック図
図7】前記測定器の制御方法を示すフローチャート
図8】本発明の表示手段の表示値の変形例を示す図
【発明を実施するための形態】
【0035】
〔第1実施形態〕
以下、本発明の第1実施形態を図面に基づいて説明する。
図1は、本発明の第1実施形態に係る測定器を示す正面図である。
測定器1は、図1に示すように、測定対象物から測定結果を算出するための測定情報を取得する測定手段2と、測定結果を表示する表示手段3と、を備えるダイヤルゲージである。
【0036】
測定器1は、測定手段2として円盤状の本体部21と、本体部21を上下方向に貫通するように設けられたスピンドル22と、スピンドル22の先端であり本体部21とは反対側に設けられた測定子23と、備える。
表示手段3は、本体部21の正面の略中央に設けられた液晶パネルである。表示手段3は、測定結果などの表示値Pを表示する。なお、表示手段3は、液晶パネルに限らず有機EL(Electro-Luminescence)や電子ペーパーであってもよい。また、表示手段3は、本体部21の正面の略中央に設けられていなくてもよく、測定器1と有線や無線で接続された状態にて本体部21の外部に設けられていてもよい。要するに、表示手段3は、測定結果などの情報を表示することができれば、どのようなものであってもよい。
【0037】
ここで、実際に表示手段3に表示される表示値Pは、例えば図1に示すように「1.2345」であるが、後述する制御手段5(図2参照)が算出する測定結果(表示値P)は、実際に表示手段3に表示される表示値Pよりも高分解能である。そのため、制御手段5により算出された表示値Pは、例えば表示手段3には図示されない桁の値も含めた「1.23456」等である。
【0038】
したがって、表示値Pは、実際に表示手段3に表示される表示値P(表示桁P)と、表示桁Pよりも下位の桁であり表示手段3には表示されない非表示桁と、を有する。本実施形態では、表示値Pの最小桁は、非表示桁における最小桁のことをいい、図1の表示手段3に表示される表示桁Pの「1.2345」における「5」の右隣りに存在する非表示桁を最小桁とする。
測定器1は、スピンドル22の測定子23を図示しない測定対象物に接触させて測定子23の変動から測定対象物の寸法等を測定する。
【0039】
図2は、前記測定器の制御手段を示すブロック図である。
測定器1は、図2に示すように、測定器1に関する情報を記憶する記憶手段4と、測定結果を算出する制御手段5と、をさらに備える。
図2に示すように、記憶手段4は、表示手段3に表示される表示値Pを記憶する第1の記憶部41と、表示手段3に表示された過去の表示値Pn-1を記憶する第2の記憶部42と、を有する。
【0040】
第1の記憶部41は、表示桁Pおよび非表示桁を有する表示値Pを記憶する。
第2の記憶部42は、表示桁Pおよび非表示桁を有する過去の表示値Pn-1を記憶する。過去の表示値Pn-1とは、具体的には、表示値Pに更新される前に表示手段3に表示されていた表示値Pの一つ前の過去の表示値Pn-1(前回の表示値Pn-1)である。
【0041】
制御手段5は、偏差を算出する偏差算出部51と、フィルタ処理を実行するか否かを判定するフィルタ処理判定部52と、フィルタ処理を実行するフィルタ処理実行部53と、表示値Pの表示桁Pを安定させる安定化処理を実行する安定化処理部54と、を備える。
偏差算出部51は、第1の記憶部41に記憶された表示値Pと第2の記憶部42に記憶された前回のPn-1とに基づいて偏差を算出する。
【0042】
フィルタ処理判定部52は、偏差算出部51にて算出された偏差に基づきフィルタ処理を実行するか否かを判定する。
ここで、フィルタ処理とは、表示値Pの変化を抑制して表示桁Pを安定させる処理であり、本実施形態では、平滑化処理のことをいう。
フィルタ処理判定部52にてフィルタ処理である平滑化処理を実行すると判定された場合、フィルタ処理実行部53は平滑化処理を実行し、平滑化された表示値Pである平滑化表示値P'を算出する。具体的には、フィルタ処理実行部53は、表示値Pにおける非表示桁の最小桁の値に対して平滑化処理を実行し、平滑化された非表示桁を有する平滑化表示値P'を算出する。
【0043】
フィルタ処理実行部53は、平滑化表示値P'を算出すると、表示桁Pおよび平滑化された非表示桁を有する平滑化表示値P'と第1の記憶部41に記憶された表示桁Pおよび非表示桁を有する表示値Pとを置き換える。フィルタ処理実行部53は、表示値Pとして平滑化表示値P'を第1の記憶部41に記憶させる。
【0044】
安定化処理部54は、第1の記憶部41に記憶された表示値Pについて、表示手段3に表示される表示値Pの表示桁Pを安定させる安定化処理を実行する。具体的には、安定化処理部54は、第1の記憶部41に記憶された表示値Pの非表示桁に対して丸め処理およびヒステリシス処理を実行する。そして、表示手段3は、安定化処理部54により安定化された表示値Pの表示桁Pを表示する。
【0045】
図3は、前記測定器の制御方法を示すフローチャートである。
以下、測定器1の制御方法について、図3を参照して説明する。
測定器1の制御手段5における偏差算出部51は、先ず、偏差算出工程にて第1の記憶部41に記憶された表示値Pおよび第2の記憶部42に記憶された前回の表示値Pn-1の偏差を算出する。具体的には、偏差算出部51は、表示桁Pおよび非表示桁を有する表示値Pと表示桁Pおよび非表示桁を有する前回の表示値Pn-1とに基づいて式(4)を用いて偏差を算出する(ステップST01)。
【0046】
偏差=|P-Pn-1| …(4)
【0047】
次に、フィルタ処理判定部52は、偏差算出部51にて算出された偏差に基づき平滑化処理を実行するか否かを判定するフィルタ処理判定工程を実行する。具体的には、フィルタ処理判定部52は、偏差が表示値Pの非表示桁の最小桁の分解能より小さいか否かを判定する(ステップST02)。
フィルタ処理判定部52は、偏差が表示値Pの非表示桁の最小桁の分解能より小さいと判定した場合(ステップST02でYES)、フィルタ処理実行部53によるフィルタ処理実行工程を実行する(ステップST03)。フィルタ処理判定部52は、偏差が表示値Pの非表示桁の最小桁の分解能より大きいと判定した場合(ステップST02でNO)、安定化処理部54による安定化処理工程を実行する(ステップST05)。
【0048】
ステップST02でYESの場合、フィルタ処理実行部53は、表示値Pと、前回の表示値Pn-1と、0<α<1を満たす平滑化係数αと、に基づいて、式(1)を用いて平滑化処理が実行された表示値である平滑化表示値P'を算出する(ステップST03)。
【0049】
P'=α×P+(1-α)×Pn-1 …(1)
【0050】
この際、平滑化係数αは、0より大きい整数βに基づき式(3)を満たすように設定される。
【0051】
α=1/2βn …(3)
【0052】
フィルタ処理実行部53は、平滑化表示値P'を算出すると、平滑化表示値P'と第1の記憶部41に記憶された表示値Pとを置き換えて、式(2)を満たすように表示値Pとして平滑化表示値P'を第1の記憶部41に記憶させる表示値記憶工程を実行する(ステップST04)。
【0053】
=P' …(2)
【0054】
ステップST02でNOの場合または表示値記憶工程(ステップST04)の後、安定化処理部54は、安定化処理にて表示値Pの表示桁Pを安定させる安定化処理工程を実行する。具体的には、安定化処理部54は、第1の記憶部41に記憶された表示値Pの非表示桁に対して丸め処理およびヒステリシス処理を実行する(ステップST05)。そして、表示手段3は、安定化処理部54により安定化された表示値Pの表示桁Pを表示する(図1参照)。制御手段5は、表示手段3に表示された表示値Pの表示桁Pおよび非表示桁を前回の表示値Pn-1として第2の記憶部42に記憶させる。
【0055】
このような本実施形態によれば、以下の作用・効果を奏することができる。
(1)制御手段5は、表示手段3に表示される表示値Pの変化を抑制して表示桁Pを安定させる平滑化処理を実行するか否かを判定するフィルタ処理判定部52と、フィルタ処理判定部52にて平滑化処理を実行すると判定された場合、平滑化処理を実行するフィルタ処理実行部53と、を備えることで、表示値Pの表示桁Pを安定させる必要がある場合に平滑化処理を実行することができる。このため、測定器1は、平滑化処理が追いつかないこと等を原因として表示手段3に表示される表示値Pの更新が遅くなることを防止することができる。したがって、測定器1は、表示手段3に表示される表示値Pの表示桁Pのちらつきを抑制するとともに測定器1の応答性の向上を図ることができる。
【0056】
(2)制御手段5は、表示値Pと前回の表示値Pn-1との偏差を算出する偏差算出部51を備え、フィルタ処理判定部52は、偏差算出部51にて算出された偏差に基づき平滑化処理を実行するか否かを判定するため、表示値Pと前回の表示値Pn-1に基づき平滑化処理を実行するか否かを判定することができる。したがって、制御手段5は、記憶手段4が記憶する情報に基づいて表示手段3に表示される表示値Pの非表示桁に対して適切なタイミングにて平滑化処理を実行することができる。
【0057】
(3)制御手段5は、安定化処理である丸め処理およびヒステリシス処理にて表示値Pの表示桁Pを安定させる安定化処理部54を備え、表示手段3は、安定化処理部54により安定化された表示値Pの表示桁Pを表示することができるため、表示値Pの安定性を確保することができる。
(4)フィルタ処理実行部53は、平滑化表示値P'について、表示値Pと、前回の表示値Pn-1と、0<α<1を満たす平滑化係数αと、に基づいて簡単な積和演算である式(1)を用いて平滑化表示値P'を算出することができる。したがって、測定器1は、フィルタ処理実行部53を容易に実装することができる。
【0058】
(5)フィルタ処理実行部53は、平滑化表示値P'を第1の記憶部41が記憶する表示値Pと置き換えて式(2)を満たすように平滑化表示値P'を表示値Pとして第1の記憶部41に記憶させることで、平滑化処理が実行されなかった場合は表示値Pについて、平滑化処理が実行された場合は平滑化表示値P'について、表示値Pとすることができる。制御手段5は、平滑化処理が実行された場合または平滑化処理が実行されなかった場合の双方の表示値Pの非表示桁について安定化処理を実行することができる。
【0059】
(6)平滑化係数αは、0より大きい整数βに基づき式(3)を満たすことで、演算能力に制限のある制御手段5を用いた場合であっても、フィルタ処理実行部53を実装することができる。したがって、測定器1は、低コスト化を図りつつ表示値Pの表示桁Pのちらつきを抑制することができる。
(7)偏差算出部51は、表示値Pと、前回の表示値Pn-1と、に基づいて、式(4)を用いて偏差を算出することで、演算能力に制限のある制御手段5を用いた場合であっても、偏差算出部51を実装することができる。したがって、測定器1は、低コスト化を図りつつ表示値Pの表示桁Pのちらつきを抑制することができる。
【0060】
(8)表示値Pおよび過去の表示値Pn-1は、表示手段3に表示される表示桁Pと、表示桁Pよりも下位の桁であり表示手段3には表示されない非表示桁と、を有し、フィルタ処理実行部53は、非表示桁に対してフィルタ処理を実行し、安定化処理部54は、非表示桁に対して安定化処理を実行するため、フィルタ処理や安定化処理を実行することにより生じる表示値Pの変動を表示手段3に表示することなく処理を実行することができる。したがって、測定器1は、表示手段3に表示される表示値Pの表示桁Pのちらつきを抑制するとともに測定器1の応答性の向上を図ることができる。
【0061】
(9)測定器1は、本発明における偏差算出部51と、フィルタ処理判定部52と、フィルタ処理実行部53と、を備えることで、演算能力に制限のある制御手段5を用いた場合であっても、偏差算出部51とフィルタ処理実行部53を実装することができる。したがって、測定器1は、低コスト化を図りつつ表示値Pの表示桁Pのちらつきを抑制することができる。
(10)制御手段5は、偏差算出工程(ステップST01)と、フィルタ処理判定工程(ステップST02)と、フィルタ処理実行工程(ステップST03)と、安定化処理工程(ステップST05)と、を備え、表示手段3は、安定化処理工程(ステップST05)により安定化された表示値Pの表示桁Pを表示する。これにより、測定器1は、表示手段3に表示される表示値Pの表示桁Pのちらつきを抑制するとともに測定器1の応答性の向上を図ることができる。
【0062】
〔第2実施形態〕
以下、本発明の第2実施形態を図面に基づいて説明する。なお、以下の説明では、既に説明した部分については、同一符号を付してその説明を省略する。
図4は、本発明の第2実施形態に係る測定器の制御手段を示すブロック図である。
本実施形態の測定器1Aは、制御手段5Aを除き、前記第1実施形態の測定器1と略同様の構成を備える。
【0063】
前記第1実施形態の制御手段5は、図2に示すように、偏差を算出する偏差算出部51と、フィルタ処理を実行するか否かを判定するフィルタ処理判定部52と、表示桁Pおよび非表示桁を有する表示値Pと、表示桁Pおよび非表示桁を有する前回の表示値Pn-1と、0より大きい整数βに基づく式(3)および0<α<1を満たす平滑化係数αと、に基づいて、式(1)を用いて平滑化表示値P'を算出し、表示値記憶工程を実行するフィルタ処理実行部53と、表示値Pの非表示桁に対して安定化処理をすることで表示値Pの表示桁Pを安定させる安定化処理部54と、を備えていた。
本実施形態では、制御手段5Aは、前記第1実施形態のフィルタ処理実行部53が用いた平滑化係数αとは異なる平滑化係数αを用いて平滑化表示値P'を算出するフィルタ処理実行部53Aを備える点で、前記第1実施形態と異なる。
【0064】
図5は、前記測定器の制御方法を示すフローチャートである。
以下、測定器1Aの制御方法について、図5を参照して説明する。
測定器1Aにおける制御手段5Aのフィルタ処理実行部53Aは、図5に示すように、ステップST02でYESの場合、表示桁Pおよび非表示桁を有する表示値Pと、表示桁Pおよび非表示桁を有する前回の表示値Pn-1と、0<α<1を満たす平滑化係数αと、に基づいて、式(1)を用いて平滑化処理が実行された平滑化表示値P'を算出する(ステップST13)。
【0065】
P'=α×P+(1-α)×Pn-1 …(1)
【0066】
この際、平滑化係数αは、フィルタ処理判定部52にて平滑化処理を実行すると判定された回数nについて、n,n+1の場合はβ=1、n+2,n+3の場合はβ=2、n+4以上の場合はβ=3、とするとき、式(3)を満たすように設定される。
【0067】
α=1/2βn …(3)
【0068】
このような本実施形態においても、前記第1実施形態における(1)~(5),(7),(8)と同様の作用、効果を奏することができる他、以下の作用、効果を奏することができる。
(11)平滑化係数αは、フィルタ処理判定部にて平滑化処理を実行すると判定された回数nについて、n,n+1の場合はβ=1、n+2,n+3の場合はβ=2、n+4以上の場合はβ=3、とするとき式(3)を満たすことで、フィルタ処理実行部による平滑化処理の平滑化の強さを段階的に変更することができる。したがって、フィルタ処理実行部は、平滑化表示値P'について収束性を向上させて高分解能化を図ることができる。
(12)制御手段5Aは、偏差算出工程(ステップST01)と、フィルタ処理判定工程(ステップST02)と、フィルタ処理実行工程(ステップST13)と、安定化処理工程(ステップST05)と、を備え、表示手段3は、安定化処理工程(ステップST05)により安定化された表示値Pの表示桁Pを表示する。これにより、測定器1Aは、表示手段3に表示される表示値Pの表示桁Pのちらつきを抑制するとともに測定器1Aの応答性の向上を図ることができる。
【0069】
〔第3実施形態〕
以下、本発明の第3実施形態を図面に基づいて説明する。なお、以下の説明では、既に説明した部分については、同一符号を付してその説明を省略する。
図6は、本発明の第3実施形態に係る測定器の制御手段を示すブロック図である。
本実施形態の測定器1Bは、制御手段5Bを除き、前記第1実施形態の測定器1と略同様の構成を備える。
【0070】
前記第1実施形態の制御手段5は、図2に示すように、式(4)を用いて偏差を算出する偏差算出部51と、偏差算出部51にて算出された偏差に基づいて平滑化処理を実行するか否かを判定するフィルタ処理判定部52と、平滑化表示値P'を算出し、表示値記憶工程を実行するフィルタ処理実行部53と、表示値Pの非表示桁に対して安定化処理を実行し表示桁Pを安定させる安定化処理部54と、を備えていた。
本実施形態では、制御手段5Bは、前記第1実施形態の偏差算出部51が用いた式(4)とは異なる算出方法を用いて偏差を算出する偏差算出部51Bと、偏差算出部51Bにて算出された偏差に基づいて平滑化処理を実行するか否かを判定するフィルタ処理判定部52Bと、を備える点で、前記第1実施形態と異なる。
【0071】
図7は、前記測定器の制御方法を示すフローチャートである。
以下、測定器1Bの制御方法について、図7を参照して説明する。
測定器1Bにおける制御手段5Bの偏差算出部51Bは、図7に示すように、正の整数kと、表示桁Pおよび非表示桁を有する表示値Pと、表示桁Pおよび非表示桁を有する前回の表示値Pn-1と、に基づいて、式(5)を用いて偏差を算出する(ステップST21)。
【0072】
偏差=k×標準偏差(P,Pn-1,…,P,P) …(5)
【0073】
次に、フィルタ処理判定部52Bは、偏差算出部51Bにて算出された偏差に基づき平滑化処理を実行するか否かを判定するフィルタ処理判定工程を実行する。具体的には、フィルタ処理判定部52Bは、偏差が表示値Pの非表示桁の最小桁の分解能より小さいか否かを判定する(ステップST22)。
【0074】
このような本実施形態においても、前記第1実施形態における(1)~(6),(8)と同様の作用、効果を奏することができる他、以下の作用、効果を奏することができる。
(13)偏差算出部51Bは、正の整数kと、表示桁Pおよび非表示桁を有する表示値Pと、表示桁Pおよび非表示桁を有する前回の表示値Pn-1と、に基づいて、式(5)を用いて偏差を算出することで、フィルタ処理判定部52Bに平滑化処理を実行するか否かを適正に判定させることができる。したがって、制御手段5Bは、表示値Pの非表示桁に対して適切なタイミングにて平滑化処理を実行することができる。
【0075】
(14)制御手段5Bは、偏差算出工程(ステップST21)と、フィルタ処理判定工程(ステップST22)と、フィルタ処理実行工程(ステップST03)と、安定化処理工程(ステップST05)と、を備え、表示手段3は、安定化処理工程(ステップST05)により安定化された表示値Pの表示桁Pを表示する。これにより、測定器1Bは、表示手段3に表示される表示値Pの表示桁Pのちらつきを抑制するとともに測定器1Bの応答性の向上を図ることができる。
【0076】
〔実施形態の変形〕
なお、本発明は、前記各実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
例えば、前記各実施形態では、測定器1,1A~1Bはダイヤルゲージであったが、ノギスやインジケータ、リニアスケール等であってもよい。また、測定器1,1A~1Bは、形式や方式などについて特に限定されるものではなく、測定結果などを表示する表示手段を備えた測定器であれば、その他の測定器などにおいても利用可能である。
【0077】
前記各実施形態では、制御手段5,5A~5Bは、偏差算出部51,51Bと、安定化処理部54と、を備えていたが、制御手段は、偏差算出部と、安定化処理部と、を備えていなくてもよい。この場合、フィルタ処理判定部は、例えばセンサ等の値に基づいてフィルタ処理を実行するか否かを判定してもよい。
また、制御手段は、前記各実施形態に記載された偏差算出部や、フィルタ処理判定部、フィルタ処理実行部、安定化処理実行部について任意の組み合わせにて備えていてもよく、どのような組み合わせで制御手段を構成してもよい。要するに、制御手段は、フィルタ処理を実行するか否かを判定するフィルタ処理判定部と、フィルタ処理判定部にてフィルタ処理を実行すると判定された場合、フィルタ処理を実行するフィルタ処理実行部と、を備えていればよい。
【0078】
前記各実施形態では、フィルタ処理実行部53,53Aは、フィルタ処理として平滑化処理を実行していたが、フィルタ処理は、表示値Pの変化を抑制させる処理を実行することができれば、どのようなフィルタを用いて処理を実行してもよい。
また、前記第1実施形態および前記第3実施形態では、フィルタ処理実行部53は、0より大きい整数βに基づき式(3)を満たす平滑化係数αを用いて平滑化処理を実行し、前記第2実施形態では、フィルタ処理実行部53Aは、フィルタ処理判定部52にて平滑化処理を実行すると判定された回数nについて、n,n+1の場合はβ=1、n+2,n+3の場合はβ=2、n+4以上の場合はβ=3、とするとき式(3)を満たす平滑化係数αを用いて平滑化処理を実行していたが、フィルタ処理判定部は、平滑化処理においてどのような平滑化係数αを用いてフィルタ処理を実行してもよい。
【0079】
前記各実施形態では、記憶手段4の第1の記憶部41は、表示桁Pおよび非表示桁を有する表示値Pを記憶し、第2の記憶部42は、表示桁Pおよび非表示桁を有する前回の表示値Pn-1を記憶していたが、第1の記憶部および第2の記憶部は、表示値Pの表示桁のみを記憶してもよい。また、記憶手段4の第2の記憶部42は、前回の表示値Pn-1を記憶していたが、第2の記憶手段は一つの表示値(前回の表示値Pn-1)だけではなく、複数の表示値を記憶していてもよい。要するに、第1の記憶部は、表示手段に表示される表示値を記憶し、第2の記憶部は、表示手段に表示された過去の表示値を記憶することができればよい。
【0080】
前記各実施形態では、表示値Pおよび過去の表示値Pn-1は、表示手段3に表示される表示桁Pと、表示桁Pよりも下位の桁であり表示手段3には表示されない非表示桁と、を有していたが、表示値Pおよび前回の表示値Pn-1は、表示桁のみを有し非表示桁を有していなくてもよい。この場合、フィルタ処理実行部や安定化処理部は、表示値Pや前回の表示値Pn-1の表示桁の最小桁に対してフィルタ処理や安定化処理を実行すればよい。
【0081】
また、フィルタ処理実行部53,53Aや安定化処理部54は、表示値Pの非表示桁の最小桁に対して平滑化処理や安定化処理を実行していたが、フィルタ処理実行部や安定化処理部は、表示値Pの任意の桁に対してフィルタ処理や安定化処理を実行してもよい。要するに、フィルタ処理実行部は、表示手段に表示される表示値Pの変化を抑制するフィルタ処理を実行し、安定化処理部は、表示手段に表示される表示値Pを安定させる安定化処理を実行することができればよい。
【0082】
前記各実施形態では、安定化処理部54は、丸め処理およびヒステリシス処理を実行していたが、安定化処理部は、表示値を安定させる安定化処理を実行することができれば、どのような処理を用いて表示値を安定化させてもよい。
前記第1実施形態および前記第2実施形態では、偏差算出部51は式(4)を用いて偏差を算出し、前記第3実施形態では、偏差算出部51Bは、式(5)を用いて偏差を算出したが、偏差算出部は、表示値と過去の表示値との偏差を算出することができれば、どのような算出方法にて偏差を算出してもよい。
【0083】
図8は、本発明の表示手段の表示値の変形例を示す図である。具体的には、図8(A)は、メータ等のインジケータにおける表示手段を示す図であり、図8(B)は、目盛の増減にて測定結果を表示する測定器における表示手段を示す図である。
前記各実施形態では、表示手段3は、表示値Pの表示桁Pについて具体的な数字にて測定結果を表示していた。測定器1Cにおける表示手段3Cは、図8(A)に示すように、本発明にて処理された表示値Pをインジケータの針F1の動作として表示している点で前記各実施形態と異なる。また、測定器1Dにおける表示手段3Dは、図8(B)に示すように、本発明にて処理された表示値Pを目盛F2の増減として表示している点で前記各実施形態と異なる。要するに、表示手段は、制御手段により算出された測定結果を表示することができれば、どのような構成であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0084】
以上のように、本発明は、情報を表示する表示手段を備える測定器およびその制御方法に好適に利用できる。
【符号の説明】
【0085】
1,1A~1D 測定器
2 測定手段
3,3C~3D 表示手段
4 記憶手段
5 制御手段
41 第1の記憶部
42 第2の記憶部
51,51B 偏差算出部
52,52B フィルタ処理判定部
53,53A フィルタ処理実行部
54 安定化処理部
P 表示桁
表示値
n-1 前回の表示値(過去の表示値)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8