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特許6991712着色ポリイミドフィルム、カバーレイフィルム、銅張積層板及び回路基板
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-10
(45)【発行日】2022-01-12
(54)【発明の名称】着色ポリイミドフィルム、カバーレイフィルム、銅張積層板及び回路基板
(51)【国際特許分類】
   C08J 5/18 20060101AFI20220104BHJP
   B32B 27/34 20060101ALI20220104BHJP
   B32B 15/088 20060101ALI20220104BHJP
【FI】
C08J5/18 CFG
B32B27/34
B32B15/088
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2016256926
(22)【出願日】2016-12-28
(65)【公開番号】P2018109107
(43)【公開日】2018-07-12
【審査請求日】2019-11-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000006644
【氏名又は名称】日鉄ケミカル&マテリアル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100115118
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邊 和浩
(74)【代理人】
【識別番号】100095588
【弁理士】
【氏名又は名称】田治米 登
(74)【代理人】
【識別番号】100094422
【弁理士】
【氏名又は名称】田治米 惠子
(74)【代理人】
【識別番号】110000224
【氏名又は名称】特許業務法人田治米国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】須藤 芳樹
(72)【発明者】
【氏名】森 亮
【審査官】橋本 有佳
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-047862(JP,A)
【文献】特開2011-105811(JP,A)
【文献】特表2010-534726(JP,A)
【文献】特開2016-189392(JP,A)
【文献】国際公開第2016/158672(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/038083(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08J 5/00-5/02;
5/12-5/22
B32B 1/00-43/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の式(1a)又は(1b)で表されるベンゾジフラノン誘導体を含有するとともに、下記の数式(a)、
E1=√ε1×Tanδ1 ・・・(a)
[ここで、ε1は、スプリットポスト誘導体(SPDR)共振器による10GHzにおける誘電率を示し、Tanδ1は、スプリットポスト誘導体(SPDR)共振器による10GHzにおける誘電正接を示す]
に基づき算出される、誘電特性を示す指標であるE1値が0.02以下である、黒色に着色された着色ポリイミドフィルム。
【化1】
[式(1a)及び(1b)において、R 及びR は、それぞれ独立して、水素原子又はフッ素原子であり、R 、R 、R 、R 、R 及びR 10 は、水素原子、フッ素原子又は塩素原子であり、R 及びR は、水素原子、臭素原子、塩素原子、NO 、OCH 、OC 、CH 、C 、N(CH 、N(CH )(C )、N(C 、α-ナフチル、β-ナフチル又はSO であり、R はR と同一、R はR と同一、R はR と同一、R はR と同一、及び/又はR はR 10 と同一である。]
【請求項2】
ベンゾジフラノン誘導体として、ビス-オキソジヒドロインドリレン-ベンゾジフラノン系化合物を含有するとともに、下記の数式(a)、
E1=√ε1×Tanδ1 ・・・(a)
[ここで、ε1は、スプリットポスト誘導体(SPDR)共振器による10GHzにおける誘電率を示し、Tanδ1は、スプリットポスト誘導体(SPDR)共振器による10GHzにおける誘電正接を示す]
に基づき算出される、誘電特性を示す指標であるE1値が0.02以下である、黒色に着色された着色ポリイミドフィルム。
【請求項3】
ポリイミド絶縁層(A)と、前記ポリイミド絶縁層(A)の一方の面に設けられたポリイミド接着剤層(B)と、を含むカバーレイフィルムであって、
前記ポリイミド絶縁層(A)及び/又は前記ポリイミド接着剤層(B)が、請求項1又は2に記載の着色ポリイミドフィルムによって構成されていることを特徴とするカバーレイフィルム。
【請求項4】
請求項3に記載のカバーレイフィルムを備えた回路基板。
【請求項5】
絶縁樹脂層と、該絶縁樹脂層の少なくとも一方の面に銅箔を備えた銅張積層板であって、
前記絶縁樹脂層が請求項1又は2に記載の着色ポリイミドフィルムの層を含むことを特徴とする銅張積層板。
【請求項6】
請求項5に記載の銅張積層板の銅箔を配線に加工してなる回路基板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、着色ポリイミドフィルム、カバーレイフィルム、銅張積層板及び回路基板に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子機器の小型化、軽量化、省スペース化の進展に伴い、薄く軽量で、可撓性を有し、屈曲を繰り返しても優れた耐久性を持つ電子部品として、フレキシブルプリント基板(FPC;Flexible Printed Circuits)の需要が増大している。FPCは、限られたスペースでも立体的かつ高密度の実装が可能であるため、例えば、HDD、携帯情報端末等の電子機器における可動部分の配線や、ケーブル、コネクター等の部品にその用途が拡大しつつある。
【0003】
近年では、電子機器の高性能化が進んだことから、FPCにおける伝送信号の高周波化への対応も必要とされている。高周波信号を伝送する際に、信号の伝送経路の伝送損失が大きい場合、電気信号のロスや信号の遅延時間が長くなるなどの不都合が生じる。そのため、FPCの伝送損失の低減が求められている。
【0004】
ところで、FPCを使用する電子機器において、FPCの配線部分を保護するためのカバーレイフィルム表面からの反射光や、FPCを介する透過光が電子機器の性能に悪影響を与えることがある。そのため、FPCやカバーレイフィルムに遮光性が求められる場合がある。また、電子機器の内部で複数の配線を識別したり、電子機器の筐体が透明であったりする場合は、FPCやカバーレイフィルムに着色しておくことが便利であり、意匠性が求められる場合がある。
【0005】
FPCにおける絶縁樹脂層やカバーレイフィルムには、屈曲性、耐熱性、絶縁性などを兼ね備えたポリイミドフィルムが好ましく用いられる。そして、ポリイミドフィルムに遮光性や意匠性を付与するため、顔料を含有させることが行われている。
【0006】
例えば、特許文献1では、2種以上の顔料を含有し、光沢度と熱膨張係数が所定範囲内に調節された顔料添加ポリイミドフィルムが提案されている。また、特許文献2では、カーボンブラック等の顔料の添加による電気絶縁性や電気信頼性の低下を改善するために、透湿度を所定の値に調節した黒色ポリイミドフィルムが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特願2014-141575号公報
【文献】特願2016-47863号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記従来技術では、ポリイミドフィルムに顔料を添加することによって、遮光性、意匠性などを付与したり、顔料の添加による電気絶縁性の低下を補完したりする工夫がなされている。しかし、顔料の添加が高周波信号の伝送損失に与える影響については、一切考慮されていない。ポリイミドフィルムに顔料を配合することによって、誘電特性(誘電率、誘電正接)が悪化する可能性があり、顔料を配合したポリイミドフィルムをFPCにおける絶縁樹脂層やカバーレイフィルムに適用した場合、高周波信号の伝送への影響が懸念される。
【0009】
従って、本発明は、着色性と低誘電特性との両立が可能な着色ポリイミドフィルムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記実情に鑑み鋭意研究の結果、着色剤としてベンゾジフラノン誘導体を配合することによって、ポリイミドフィルムの誘電特性を改善できることを見出し、本発明を完成した。
すなわち、本発明の着色ポリイミドフィルムは、ベンゾジフラノン誘導体を含有するものである。
【0011】
本発明の着色ポリイミドフィルムは、ベンゾジフラノン誘導体が、下記の式(1a)又は(1b)で表されるものであり、黒色に着色されたものであってもよい。
【0012】
【化1】
【0013】
式(1a)及び(1b)において、R及びRは、それぞれ独立して、水素原子又はフッ素原子であり、R、R、R、R、R及びR10は、水素原子、フッ素原子又は塩素原子であり、R及びRは、水素原子、臭素原子、塩素原子、NO、OCH、OC、CH、C、N(CH、N(CH)(C)、N(C、α-ナフチル、β-ナフチル又はSO であり、RはRと同一、RはRと同一、RはRと同一、RはRと同一、及び/又はRはR10と同一である。
【0014】
本発明の着色ポリイミドフィルムは、下記の数式(a)、
E1=√ε1×Tanδ1 ・・・(a)
[ここで、ε1は、スプリットポスト誘導体(SPDR)共振器による10GHzにおける誘電率を示し、Tanδ1は、スプリットポスト誘導体(SPDR)共振器による10GHzにおける誘電正接を示す]
に基づき算出される、誘電特性を示す指標であるE1値が0.02以下であってもよい。
【0015】
本発明のカバーレイフィルムは、ポリイミド絶縁層(A)と、前記ポリイミド絶縁層(A)の一方の面に設けられたポリイミド接着剤層(B)と、を含むカバーレイフィルムである。本発明のカバーレイフィルムにおいて、前記ポリイミド絶縁層(A)及び/又は前記ポリイミド接着剤層(B)が、上記着色ポリイミドフィルムによって構成されていることを特徴とする。
【0016】
本発明の回路基板は、上記カバーレイフィルムを備えたものである。
【0017】
本発明の銅張積層板は、絶縁樹脂層と、該絶縁樹脂層の少なくとも一方の面に銅箔を備えた銅張積層板であって、前記絶縁樹脂層が上記いずれかの着色ポリイミドフィルムの層を含むことを特徴とする。
【0018】
本発明の回路基板は、上記銅張積層板の銅箔を配線に加工してなるものである。
【発明の効果】
【0019】
本発明の着色ポリイミドフィルムは、着色剤としてベンゾジフラノン誘導体を含有するため、遮光性、隠蔽性、意匠性を有するとともに、誘電特性が改善されたものである。
従って、本発明の着色ポリイミドフィルムを、FPCにおける絶縁樹脂層、カバーレイフィルムなどに適用することで、遮光性、隠蔽性、意匠性を備え、かつ、高周波信号の伝送にも対応可能なFPCを提供することができる。
また、本発明の着色ポリイミドフィルムを使用したFPCは、カバーレイフィルム表面からの反射光やFPCを介する透過光を遮断できるとともに、識別性も優れているため、FPCを搭載する電子機器の信頼性の向上にも寄与する。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態について説明する。
[着色ポリイミドフィルム]
本実施の形態に係る着色ポリイミドフィルムは、ベンゾジフラノン誘導体を含有する。着色ポリイミドフィルムを構成するポリイミドは、例えば、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミド、ポリエステルイミド、ポリシロキサンイミド、ポリベンズイミダゾールイミドなど、分子構造中にイミド基を有するポリマーからなる樹脂を意味する。ベンゾジフラノン誘導体は、ポリイミドフィルムを黒色、濃赤色などの色に着色する顔料である。ベンゾジフラノン誘導体の中でも、黒色を発現するものとして、下記の式(1a)又は(1b)で表されるものが好ましい。
【0021】
【化2】
【0022】
式(1a)及び(1b)において、R及びRは、それぞれ独立して、水素原子又はフッ素原子であり、R、R、R、R、R及びR10は、水素原子、フッ素原子又は塩素原子であり、R及びRは、水素原子、臭素原子、塩素原子、NO、OCH、OC、CH、C、N(CH、N(CH)(C)、N(C、α-ナフチル、β-ナフチル又はSO であり、RはRと同一、RはRと同一、RはRと同一、RはRと同一、及び/又はRはR10と同一である。
【0023】
式(1a)又は(1b)で表されるベンゾジフラノン誘導体は、ポリイミドフィルムを黒色に着色させ得るとともに、その誘電特性の改善(低誘電率化、低誘電正接化)にも寄与する。
【0024】
着色ポリイミドフィルム中のベンゾジフラノン誘導体の含有量は、ポリイミド100重量部に対して、1~20重量部の範囲内が好ましく、1~10重量部の範囲内がより好ましい。ベンゾジフラノン誘導体の含有量が1重量部未満であると、着色が不十分になったり、誘電特性の改善が不十分となったりする場合があり、20重量部を超えると、ポリイミドフィルムが脆弱になったり、電気絶縁性が低下したりする場合がある。
【0025】
例えば、式(1a)又は(1b)で表されるベンゾジフラノン誘導体を、ポリイミド100重量部に対して、好ましくは1~20重量部の範囲内、より好ましくは1~10重量部の範囲内で含有する黒色ポリイミドフィルムは、下記の数式(a)、
E1=√ε1×Tanδ1 ・・・(a)
[ここで、ε1は、スプリットポスト誘導体(SPDR)共振器による10GHzにおける誘電率を示し、Tanδ1は、SPDR共振器による10GHzにおける誘電正接を示す]
に基づき算出される、誘電特性を示す指標であるE1値が0.02以下である。
【0026】
本実施の形態の着色ポリイミドフィルムを、式(1a)又は(1b)で表されるベンゾジフラノン誘導体を含有する黒色ポリイミドフィルムとする場合、遮光性、隠蔽性、意匠性等を効果的に発現させるために、誘電特性の改善効果を損なわない範囲で、式(1a)又は(1b)で表されるベンゾジフラノン誘導体以外の黒色顔料や、黒色ポリイミドフィルム表面の光沢を抑制するつや消し顔料などを含むことができる。
【0027】
ベンゾジフラノン誘導体以外の黒色顔料としては、例えば、アニリンブラック、ペリレンブラック等の有機系顔料、カーボンブラック、鉄マンガンビスマスブラック、鉄クロムブラック、コバルト鉄クロムブラック、鉄マンガン酸化物スピネルブラック、銅クロムマンガンブラック、マンガンビスマスブラック、マンガンイットリウムブラック、銅クロマイトスピネルブラック、ヘマタイト、マグネタイト、雲母状酸化鉄、チタンブラックなどの無機系顔料を挙げることができる。
【0028】
ベンゾジフラノン誘導体以外の黒色顔料の含有量は、式(1a)又は(1b)で表されるベンゾジフラノン誘導体との合計量として、ポリイミド100重量部に対して、1~20重量部の範囲内が好ましく、1~10重量部の範囲内がより好ましい。式(1a)又は(1b)で表されるベンゾジフラノン誘導体と黒色顔料の合計量が1重量部未満であると、十分な黒色が発現しない場合があり、20重量部を超えるとポリイミドフィルムが脆弱になったり、電気絶縁性が低下したりする場合がある。
【0029】
つや消し顔料としては、例えば、シリカ、雲母、酸化チタン、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、リン酸カルシウム等が挙げられる。つや消し顔料は、黒色ポリイミドフィルムの光沢度を、例えば40%以下、好ましくは30%以下に抑えるために、ポリイミド100重量部に対して、例えば3~12重量部の範囲内で含有させることが好ましい。つや消し顔料の含有量が3重量部未満であると、光沢性の抑制が不十分になる場合があり、12重量部を超えると、黒色ポリイミドフィルムの強度を低下させる場合がある。
【0030】
なお、ベンゾジフラノン誘導体として、黒色以外(例えば濃赤色)を発色するものを用いる場合も、同様に、他の顔料やつや消し顔料を併用できる。
【0031】
[着色ポリイミドフィルムの製造]
本実施の形態の着色ポリイミドフィルムは、酸無水物成分とジアミン成分を溶媒中で反応させ、前駆体を生成したのち加熱閉環させることにより製造できる。例えば、酸無水物成分とジアミン成分をほぼ等モルで有機溶媒中に溶解させて、0~100℃の範囲内の温度で30分~24時間撹拌し重合反応させることでポリイミドの前駆体であるポリアミド酸が得られる。ここで、酸無水物とジアミン成分は、着色ポリイミドフィルムの使用目的に応じて適宜選択できる。反応にあたっては、生成する前駆体が有機溶媒中に5~30重量%の範囲内、好ましくは10~20重量%の範囲内となるように反応成分を溶解する。重合反応に用いる有機溶媒としては、例えば、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド(DMAC)、N-メチル-2-ピロリドン、2-ブタノン、ジメチルスホキシド、硫酸ジメチル、シクロヘキサノン、ジオキサン、テトラヒドロフラン、ジグライム、トリグライム等が挙げられる。これらの溶媒を2種以上併用して使用することもでき、更にはキシレン、トルエンのような芳香族炭化水素の併用も可能である。有機溶剤の使用量としては、特に制限されるものではないが、重合反応によって得られるポリアミド酸溶液(ポリイミド前駆体溶液)の濃度が5~30重量%程度になるような使用量に調整して用いることが好ましい。
【0032】
合成された前駆体は、通常、反応溶媒溶液として使用することが有利であるが、必要により濃縮、希釈又は他の有機溶媒に置換することができる。また、前駆体は一般に溶媒可溶性に優れるので、有利に使用される。着色剤であるベンゾジフラノン誘導体は、前駆体であるポリアミド酸を合成するために使用する上記有機溶媒中に混合しておいてもよいし、ポリアミド酸を合成した後で、ポリアミド酸にベンゾジフラノン誘導体の分散液を混合してもよい。前駆体をイミド化させる方法は、特に制限されず、例えば前記溶媒中で、80~400℃の範囲内の温度条件で1~24時間かけて加熱するといった熱処理が好適に採用される。
【0033】
以上のようにして得られる着色ポリイミドフィルムは、例えばFPCに代表される回路基板におけるカバーレイフィルムとして、あるいは、回路基板において配線を支持する絶縁樹脂層として、好ましく適用可能である。例えば、本実施の形態の着色ポリイミドフィルムは、絶縁樹脂層と、該絶縁樹脂層の少なくとも一方の面に銅箔を備えた銅張積層板において、絶縁樹脂層を構成する一つないし複数の層として適用できる。そして、この銅張積層板の銅箔を配線に加工することによって、回路基板を作製することができる。
【0034】
[カバーレイフィルム]
次に、本実施の形態の着色ポリイミドフィルムを、回路基板のカバーレイフィルムに適用する場合を例に挙げて説明する。カバーレイフィルムは、ポリイミド絶縁層(A)と、このポリイミド絶縁層(A)の一方の面に設けられたポリイミド接着剤層(B)とからなる。ベンゾジフラノン誘導体を含有する着色ポリイミドフィルムは、ポリイミド絶縁層(A)、ポリイミド接着剤層(B)のいずれにも適用可能である。
【0035】
なお、カバーレイフィルムは、ポリイミド接着剤層(B)側の面に離型材を貼り合わせて離型材層を有する形態としてもよい。離型材の材質は、カバーレイフィルムの形態を損なうことなく剥離可能であれば特に限定されるものではないが、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン、ポリプロピレンなどの樹脂フィルムや、これらの樹脂フィルムを紙上に積層したものなどを用いることができる。
【0036】
次に、ポリイミド絶縁層(A)と、ポリイミド接着剤層(B)について、それぞれ詳細に説明する。
【0037】
[ポリイミド絶縁層(A)]
ポリイミド絶縁層(A)に用いる樹脂は、芳香族テトラカルボン酸無水物成分を含む酸無水物成分と、脂肪族ジアミン及び/又は芳香族ジアミン等を含むジアミン成分と、を反応させて得られるポリイミドである。ポリイミドは、一般に、酸無水物とジアミンとを反応させて製造されるので、酸無水物とジアミンを説明することにより、ポリイミドの具体例が理解される。以下、ポリイミド絶縁層(A)の材料として好ましいポリイミドを酸無水物とジアミンにより説明する。
【0038】
<酸無水物>
ポリイミド絶縁層(A)に用いるポリイミドの原料の酸無水物として、無水ピロメリット酸、1,4,5,8-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’-ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、4,4’-オキシジフタル酸無水物が好ましく例示される。また、酸無水物として、2,2',3,3'-、2,3,3',4'-又は3,3',4,4'-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,3',3,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2',3,3'-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3',3,4'-ジフェニルエーテルテトラカルボン酸二無水物、ビス(2,3-ジカルボキシフェニル)エーテル二無水物、3,3'',4,4''-、2,3,3'',4''-又は2,2'',3,3''-p-テルフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2-ビス(2,3-又は3,4-ジカルボキシフェニル)-プロパン二無水物、ビス(2,3-又は3.4-ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、ビス(2,3-又は3,4-ジカルボキシフェニル)スルホン二無水物、1,1-ビス(2,3-又は3,4-ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、1,2,7,8-、1,2,6,7-又は1,2,9,10-フェナンスレン-テトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7-アントラセンテトラカルボン酸二無水物、2,2-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)テトラフルオロプロパン二無水物、2,3,5,6-シクロヘキサン二無水物、2,3,6,7-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,2,5,6-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、4,8-ジメチル-1,2,3,5,6,7-ヘキサヒドロナフタレン-1,2,5,6-テトラカルボン酸二無水物、2,6-又は2,7-ジクロロナフタレン-1,4,5,8-テトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7-(又は1,4,5,8-)テトラクロロナフタレン-1,4,5,8-(又は2,3,6,7-)テトラカルボン酸二無水物、2,3,8,9-、3,4,9,10-、4,5,10,11-又は5,6,11,12-ペリレン-テトラカルボン酸二無水物、シクロペンタン-1,2,3,4-テトラカルボン酸二無水物、ピラジン-2,3,5,6-テトラカルボン酸二無水物、ピロリジン-2,3,4,5-テトラカルボン酸二無水物、チオフェン-2,3,4,5-テトラカルボン酸二無水物、4,4’-ビス(2,3-ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルメタン二無水物等を用いることもできる。
【0039】
<ジアミン>
ポリイミド絶縁層(A)に用いるポリイミドの原料のジアミン成分として、ダイマー酸の二つの末端カルボン酸基が1級のアミノメチル基若しくはアミノ基に置換されてなるダイマー酸型ジアミン、パラフェニレンジアミン、4,4’-ジアミノ-2,2’-ジメチルビフェニル、4,4’-ジアミノ-3,3’-ジメチルビフェニル、4,4’-ジアミノ-2,2’-ビス(トリフルオロメチル)ビフェニル、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル、2’-メトキシ-4,4’-ジアミノベンズアニリド、1,4-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、2,2’-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2’-ジメチル-4,4’-ジアミノビフェニル、3,3’-ジヒドロキシ-4,4’-ジアミノビフェニル、4,4’-ジアミノベンズアニリド、2,2-ビス-[4-(3-アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス[4-(3-アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス[4-(4-アミノフェノキシ)]ビフェニル、ビス[4-(3-アミノフェノキシ)ビフェニル、ビス[1-(4-アミノフェノキシ)]ビフェニル、ビス[1-(3-アミノフェノキシ)]ビフェニル、ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]メタン、ビス[4-(3-アミノフェノキシ)フェニル]メタン、ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]エーテル、ビス[4-(3-アミノフェノキシ)フェニル]エーテル、ビス[4-(4-アミノフェノキシ)]ベンゾフェノン、ビス[4-(3-アミノフェノキシ)]ベンゾフェノン、ビス[4,4'-(4-アミノフェノキシ)]ベンズアニリド、ビス[4,4'-(3-アミノフェノキシ)]ベンズアニリド、9,9-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]フルオレン、9,9-ビス[4-(3-アミノフェノキシ)フェニル]フルオレン、2,2-ビス-[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、2,2-ビス-[4-(3-アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、4,4’-メチレンジ-o-トルイジン、4,4’-メチレンジ-2,6-キシリジン、4,4’-メチレン-2,6-ジエチルアニリン、4,4’-ジアミノジフェニルプロパン、3,3’-ジアミノジフェニルプロパン、4,4’-ジアミノジフェニルエタン、3,3’-ジアミノジフェニルエタン、4,4’-ジアミノジフェニルメタン、3,3’-ジアミノジフェニルメタン、4,4’-ジアミノジフェニルスルフィド、3,3’-ジアミノジフェニルスルフィド、4,4’-ジアミノジフェニルスルホン、3,3’-ジアミノジフェニルスルホン、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル、3,3-ジアミノジフェニルエーテル、3,4'-ジアミノジフェニルエーテル、ベンジジン、3,3’-ジアミノビフェニル、3,3’-ジメトキシベンジジン、4,4''-ジアミノ-p-テルフェニル、3,3''-ジアミノ-p-テルフェニル、m-フェニレンジアミン、p-フェニレンジアミン、2,6-ジアミノピリジン、1,4-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、4,4'-[1,4-フェニレンビス(1-メチルエチリデン)]ビスアニリン、4,4'-[1,3-フェニレンビス(1-メチルエチリデン)]ビスアニリン、ビス(p-アミノシクロヘキシル)メタン、ビス(p-β-アミノ-t-ブチルフェニル)エーテル、ビス(p-β-メチル-δ-アミノペンチル)ベンゼン、p-ビス(2-メチル-4-アミノペンチル)ベンゼン、p-ビス(1,1-ジメチル-5-アミノペンチル)ベンゼン、1,5-ジアミノナフタレン、2,6-ジアミノナフタレン、2,4-ビス(β-アミノ-t-ブチル)トルエン、2,4-ジアミノトルエン、m-キシレン-2,5-ジアミン、p-キシレン-2,5-ジアミン、m-キシリレンジアミン、p-キシリレンジアミン、2,6-ジアミノピリジン、2,5-ジアミノピリジン、2,5-ジアミノ-1,3,4-オキサジアゾール、ピペラジン等を用いることができる。
【0040】
上記酸無水物及びジアミンはそれぞれ、その1種のみを使用してもよいし、2種以上を併用して使用することもできる。また、上記以外のジアミン及び酸無水物を使用することもできる。酸無水物及びジアミンの種類や、2種以上の酸無水物又はジアミンを使用する場合のそれぞれのモル比を選定することにより、熱膨張性、接着性、ガラス転移温度等を制御することができる。
【0041】
ポリイミド絶縁層(A)を構成するポリイミドは、イミド基濃度が36重量%以下であることが好ましく、35重量%以下であることがより好ましい。ここで、「イミド基濃度」は、ポリイミド中のイミド基部(-(CO)-N-)の分子量を、ポリイミドの構造全体の分子量で除した値を意味する。イミド基濃度が36重量%を超えると、ポリイミドの難燃性が低下するとともに、極性基の増加によって誘電特性も悪化する。
【0042】
ポリイミド絶縁層(A)を構成するポリイミドは、上記の酸無水物成分とジアミン成分を溶媒中で反応させ、前駆体を生成したのち加熱閉環させることにより製造できる。酸無水物成分とジアミン成分から前駆体を合成し、イミド化するまでの工程は、上記「着色ポリイミドフィルムの製造」に記載した方法に準じて実施できる。
【0043】
ポリイミド絶縁層(A)は、保護フィルムとして機能を発現し、尚且つ製造時および接着剤層塗工時の搬送性の観点から、12μm以上であることが好ましく、またカバーレイフィルムとして誘電特性の悪化を避けるためには、30μm以下の範囲にあることが好ましい。
【0044】
ポリイミド絶縁層(A)は、耐熱性の観点から、ガラス転移温度(Tg)が280℃以上であることが好ましく、さらに、300℃以上であることがより好ましい。また、カバーレイフィルムとして、FPCと貼り合せた際における反り抑制の観点から、ポリイミド絶縁層(A)の熱線膨張係数は、1~30[ppm/K]の範囲内、好ましくは1~25[ppm/K]の範囲内、より好ましくは15~25[ppm/K]の範囲内にあることがよい。
【0045】
また、ポリイミド絶縁層(A)に用いる樹脂には、任意成分として、例えば可塑剤、エポキシ樹脂などの他の硬化樹脂成分、硬化剤、硬化促進剤、カップリング剤、充填剤、溶剤、難燃剤などを適宜配合することができる。ただし、可塑剤には、極性基を多く含有するものがあり、それが銅配線からの銅の拡散を助長する懸念があるため、可塑剤は極力使用しないことが好ましい。
【0046】
[ポリイミド接着剤層(B)]
ポリイミド接着剤層(B)に用いる樹脂は、芳香族テトラカルボン酸無水物成分を含む酸無水物成分と、脂肪族ジアミン及び/又は芳香族ジアミンと、を反応させて得られるポリイミドである。以下、ポリイミド接着剤層(B)の材料として好ましいポリイミドを酸無水物とジアミンにより説明する。
【0047】
ポリイミド接着剤層(B)に用いる樹脂は、原料の酸無水物として、例えば、3,3’,4,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物(BTDA)、4,4’-オキシジフタル酸無水物(ODPA、別名;5,5’-オキシビス-1,3-イソベンゾフランジオン)、3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)、3,3’,4,4’-ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物(DSDA)、ピロメリット酸二無水物(PMDA)、5,5'-[1-メチル-1,1-エタンジイルビス(1,4-フェニレン)ビスオキシ]ビス(イソベンゾフラン-1,3-ジオン)(BISDA)、4,4'-ジアミノジシクロヘキシルメタン等を好ましく使用することができる。これらは単独又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0048】
<脂肪族ジアミン>
ポリイミド接着剤層(B)に用いる樹脂は、原料のジアミン成分として、例えばダイマー酸の二つの末端カルボン酸基が1級のアミノメチル基若しくはアミノ基に置換されてなるダイマー酸型ジアミン、1,4-ジアミノブタン、1,5-ジアミノペンタン、1,6-ジアミノヘキサン、2-メチル-1,5-ジアミノペンタン、1,7-ジアミノヘプタン、1,8-ジアミノオクタン、1,3-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1,4-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1,9-ジアミノノナン、1,10-ジアミノデカン、1,11-ジアミノウンデカン、1,12-ジアミノドデカン、4,4’-メチレンビスシクロヘキシルアミン等のジアミノアルカン類、トリス(2-アミノエチル)アミン、N,N’-ビス(2-アミノエチル)-1,3-プロパンジアミン、ビス(3-アミノプロピル)エチレンジアミン、1,4-ビス(3-アミノプロピル)ピペラジン、ジエチレントリアミン、N-メチル-2,2’-ジアミノジエチルアミン、3,3’-ジアミノジプロピルアミン、N,N-ビス(3-アミノプロピル)メチルアミン等の窒素原子を含有するアミン類、ビス(3-アミノプロピル)エーテル、1,2-ビス(2-アミノエトキシ)エタン、3,9-ビス(3-アミノプロピル)-2,4,8,10-テトラオキサスピロ[5.5]-ウンデカン等の酸素原子を含有するアミン類、2,2’-チオビス(エチルアミン)等の硫黄原子を有するアミン類等の脂肪族ジアミン類を主成分とすることが望ましく、これらは単独又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0049】
<芳香族ジアミン>
ポリイミド接着剤層(B)に用いる樹脂は、原料のジアミン成分として、4,4’-ジアミノ-2,2’-ジメチルビフェニル、4,4’-ジアミノ-3,3’-ジメチルビフェニル、4,4’-ジアミノ-2,2’-ビス(トリフルオロメチル)ビフェニル、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル、2’-メトキシ-4,4’-ジアミノベンズアニリド、1,4-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、2,2’-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2’-ジメチル-4,4’-ジアミノビフェニル、3,3’-ジヒドロキシ-4,4’-ジアミノビフェニル、4,4’-ジアミノベンズアニリド、2,2-ビス-[4-(3-アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス[4-(3-アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス[4-(4-アミノフェノキシ)]ビフェニル、ビス[4-(3-アミノフェノキシ)ビフェニル、ビス[1-(4-アミノフェノキシ)]ビフェニル、ビス[1-(3-アミノフェノキシ)]ビフェニル、ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]メタン、ビス[4-(3-アミノフェノキシ)フェニル]メタン、ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]エーテル、ビス[4-(3-アミノフェノキシ)フェニル]エーテル、ビス[4-(4-アミノフェノキシ)]ベンゾフェノン、ビス[4-(3-アミノフェノキシ)]ベンゾフェノン、ビス[4,4'-(4-アミノフェノキシ)]ベンズアニリド、ビス[4,4'-(3-アミノフェノキシ)]ベンズアニリド、9,9-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]フルオレン、9,9-ビス[4-(3-アミノフェノキシ)フェニル]フルオレン、2,2-ビス-[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、2,2-ビス-[4-(3-アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、4,4’-メチレンジ-o-トルイジン、4,4’-メチレンジ-2,6-キシリジン、4,4’-メチレン-2,6-ジエチルアニリン、4,4’-ジアミノジフェニルプロパン、3,3’-ジアミノジフェニルプロパン、4,4’-ジアミノジフェニルエタン、3,3’-ジアミノジフェニルエタン、4,4’-ジアミノジフェニルメタン、3,3’-ジアミノジフェニルメタン、4,4’-ジアミノジフェニルスルフィド、3,3’-ジアミノジフェニルスルフィド、4,4’-ジアミノジフェニルスルホン、3,3’-ジアミノジフェニルスルホン、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル、3,3-ジアミノジフェニルエーテル、3,4'-ジアミノジフェニルエーテル、ベンジジン、3,3’-ジアミノビフェニル、3,3’-ジメトキシベンジジン、4,4''-ジアミノ-p-テルフェニル、3,3''-ジアミノ-p-テルフェニル、m-フェニレンジアミン、p-フェニレンジアミン、2,6-ジアミノピリジン、1,4-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、4,4'-[1,4-フェニレンビス(1-メチルエチリデン)]ビスアニリン、4,4'-[1,3-フェニレンビス(1-メチルエチリデン)]ビスアニリン、ビス(p-アミノシクロヘキシル)メタン、ビス(p-β-アミノ-t-ブチルフェニル)エーテル、ビス(p-β-メチル-δ-アミノペンチル)ベンゼン、p-ビス(2-メチル-4-アミノペンチル)ベンゼン、p-ビス(1,1-ジメチル-5-アミノペンチル)ベンゼン、1,5-ジアミノナフタレン、2,6-ジアミノナフタレン、2,4-ビス(β-アミノ-t-ブチル)トルエン、2,4-ジアミノトルエン、m-キシレン-2,5-ジアミン、p-キシレン-2,5-ジアミン、m-キシリレンジアミン、p-キシリレンジアミン、2,6-ジアミノピリジン、2,5-ジアミノピリジン、2,5-ジアミノ-1,3,4-オキサジアゾール、ピペラジン等の芳香族ジアミンを含んでもよく、これらは単独又は2種以上を組み合わせて使用することができる。また、芳香族ジアミンと脂肪族ジアミンとを組み合わせてもよい。
【0050】
ポリイミド接着剤層(B)に用いる樹脂は、上記の酸無水物成分とジアミン成分を溶媒中で反応させ、前駆体を生成したのち加熱閉環させることにより製造できる。酸無水物成分とジアミン成分から前駆体を合成し、イミド化するまでの工程は、上記「着色ポリイミドフィルムの製造」に記載した方法に準じて実施できる。
【0051】
また、ポリイミド接着剤層(B)に用いる樹脂には、ポリイミドの他に、任意成分として、例えば可塑剤、エポキシ樹脂などの他の硬化樹脂成分、硬化剤、硬化促進剤、カップリング剤、充填剤、溶剤、難燃剤などを適宜配合することができる。ただし、可塑剤には、極性基を多く含有するものがあり、それが銅配線からの銅の拡散を助長する懸念があるため、可塑剤は極力使用しないことが好ましい。
【0052】
以上のようにして得られるポリイミド接着剤層(B)用の樹脂は、これを用いて接着剤層を形成した場合に優れた柔軟性と熱可塑性を有するものとなり、例えばFPC、リジッド・フレックス回路基板などの配線部を保護するカバーレイフィルム用の接着剤として好ましい特性を有している。
【0053】
[着色カバーレイフィルムの製造]
本実施の形態の着色カバーレイフィルムは、例えば、以下に例示する方法で製造できる。
まず、第1の方法として、ポリイミド絶縁層(A)用のフィルム材の片面にポリイミド接着剤層(B)となる接着剤樹脂組成物を溶液の状態(例えば、溶剤を含有するワニス状)で塗布した後、例えば60~220℃の温度で熱圧着させることにより、ポリイミド絶縁層(A)とポリイミド接着剤層(B)を有する着色カバーレイフィルムを形成できる。ここで、着色剤であるベンゾジフラノン誘導体は、ポリイミド絶縁層(A)用のフィルム材と接着剤樹脂組成物のどちらか片方、又は両方に配合しておくことができる。なお、架橋剤やエポキシ樹脂などの樹脂成分を含有する場合、熱圧着の際の熱を利用して架橋反応や熱硬化性樹脂の硬化反応を進行させることができる。また、熱圧着の際の加熱縮合が充分でない場合でも、熱圧着の後に更に熱処理を施して加熱縮合させることもできる。熱圧着後に熱処理を施す場合、熱処理温度は、例えば60~220℃が好ましく、80~200℃がより好ましい。
【0054】
また、第2の方法として、任意の基材上に、ポリイミド接着剤層(B)用の接着剤樹脂組成物を溶液の状態(例えば、溶剤を含有するワニス状)で塗布し、例えば80~180℃の温度で乾燥した後、剥離することにより、ポリイミド接着剤層(B)用の接着剤フィルムを形成し、この接着剤フィルムを、ポリイミド絶縁層(A)用のフィルム材と例えば60~220℃の温度で熱圧着させることによっても、本実施の形態の着色カバーレイフィルムを形成できる。ここで、着色剤であるベンゾジフラノン誘導体は、ポリイミド絶縁層(A)用のフィルム材と接着剤樹脂組成物のどちらか片方、又は両方に配合しておくことができる。なお、ポリイミド接着剤層(B)は、任意の基材上に、例えばスクリーン印刷により接着剤樹脂組成物を溶液の状態で塗布して塗布膜を形成し、これを例えば80~180℃の温度で乾燥させてフィルム化して使用することもできる。
【実施例
【0055】
以下、実施例及び比較例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0056】
なお、実施例及び比較例における各特性は、次のようにして評価した。
【0057】
[誘電率及び誘電正接の測定]
ベクトルネットワークアナライザ(Agilent社製、商品名E8363C)及びスプリットポスト誘導体(SPDR)共振器を用いて、所定の周波数における樹脂シートの誘電率(ε1)および誘電正接(tanδ1)を測定した。これらの測定値から、E1=√ε1×Tanδ1を算出した。なお、測定に使用した材料は、温度;24~26℃、湿度;45~55%の条件下で、24時間放置したものである。
【0058】
[熱膨張係数(CTE)の測定]
3mm×20mmのサイズのポリイミドフィルムを、サーモメカニカルアナライザー(Bruker社製、商品名;4000SA)を用い、5.0gの荷重を加えながら一定の昇温速度で30℃から265℃まで昇温させ、更にその温度で10分保持した後、5℃/分の速度で冷却し、240℃から100℃までの平均熱膨張係数(線熱膨張係数)を求めた。
【0059】
[粘度]
E型粘度計を用いて測定することにより求めた。
【0060】
実施例及び比較例に用いた略号は、以下の化合物を示す。
BPDA:3,3’,4,4’-ジフェニルテトラカルボン酸二無水物
PMDA:ピロメリット酸二無水物
m‐TB:2,2’‐ジメチル‐4,4’‐ジアミノビフェニル
PDA :パラフェニレンジアミン
BTDA:3,3’,4,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物
DDA:炭素数36の脂肪族ジアミン(クローダジャパン株式会社製、商品名;PRIAMINE1074、アミン価;210mgKOH/g、環状構造及び鎖状構造のダイマージアミンの混合物、ダイマー成分の含有量;95重量%以上)
N-12:ドデカン二酸ジヒドラジド
OP935:ホスフィン酸のアルミニウム塩(クラリアントジャパン株式会社製、商品名
;エクソリットOP935、リン含有量;23%、平均粒径:2μm)
DMAc:N,N‐ジメチルアセトアミド
黒色顔料分散液(i):ビス-オキソジヒドロインドリレン-ベンゾジフラノン系化合物溶液(濃度16重量%、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)溶液)
黒色顔料分散液(ii):カーボンブラック溶液(濃度25重量%、PGMEA溶液)
銅箔:Rz=0.35μm、厚み12μm
【0061】
(合成例1)
<ポリイミド絶縁層用の樹脂の調製>
窒素気流下で、500mlのセパラブルフラスコに、14.00gのm‐TB(0.066モル)及び170gのDMAcを投入し、室温で撹拌して溶解させた。次に、6.73gのBPDA(0.023モル)及び9.26gのPMDA(0.042モル)を添加した後、室温で3時間撹拌を続けて重合反応を行い、ポリアミド酸溶液aを調製した。ポリアミド酸溶液aにおける固形分濃度は15重量%であり、溶液粘度は20,600cpsであった。
【0062】
(合成例2)
<ポリイミド絶縁層用の樹脂の調製>
窒素気流下で、500mlのセパラブルフラスコに、12.23gのm‐TB(0.058モル)、1.10gのPDA(0.010モル)及び170gのDMAcを投入し、室温で撹拌して溶解させた。次に、7.89gのBPDA(0.027モル)及び8.78gのPMDA(0.040モル)を添加した後、室温で3時間撹拌を続けて重合反応を行い、ポリアミド酸溶液bを調製した。ポリアミド酸溶液bにおける固形分濃度は15重量%であり、溶液粘度は12,400cpsであった。
【0063】
(比較例1)
合成例1で調製したポリアミド酸溶液aの40gに、黒色顔料分散液(ii)の1.2g(ポリアミド酸の固形分100重量部に対して2.5重量部)を配合・脱泡して黒色顔料配合ポリアミド酸溶液Aを調製した。銅箔に、黒色顔料配合ポリアミド酸溶液Aを硬化後の厚みが約25μmとなるように均一に塗布した後、85℃~110℃まで段階的な加熱処理にて溶媒を除去した後、120℃から360℃まで段階的な熱処理を行い、イミド化を完結して、金属張積層体Aを調製した。銅箔を除去することで、不透明な黒色ポリイミドフィルムAを調製した。黒色ポリイミドフィルムAの特性を表1に示す。
表1中、「黒色顔料」の数値は、ポリアミド酸の固形分100重量部に対する黒色顔料の重量部を示す。
【0064】
(比較例2)
表1に示すポリアミド酸溶液、黒色顔料分散液の種類、及びそれぞれの添加量を用いて、比較例1と同様にして、不透明な黒色ポリイミドフィルムBを調製した。黒色ポリイミドフィルムBの特性を表1に示す。
【0065】
(実施例1~6)
表1に示すポリアミド酸溶液、黒色顔料分散液の種類、及びそれぞれの添加量を用いて、比較例1と同様にして、不透明な黒色ポリイミドフィルム1~6を調製した。黒色ポリイミドフィルム1~6の外観は、比較例1の黒色ポリイミドフィルムAと同等であった。黒色ポリイミドフィルム1~6の特性を表1に示す。
【0066】
(参考例1、2)
表1に示すポリアミド酸溶液を用い、黒色顔料分散液(ii)を使用しないこと以外、比較例1と同様にして、ポリイミドフィルム1a及び2bを調製した。ポリイミドフィルム1a及び2bの特性を表1に示す。
【0067】
比較例1、2に示すように、黒色顔料にカーボンブラックを用いた場合は、誘電率及び誘電正接が高くなり、誘電特性が損なわれる結果となった。
【0068】
比較例1、2に対し、黒色顔料分散液(i)を使用した実施例1~6の黒色ポリイミドフィルム1~6に関しては誘電特性の低下を抑制でき、良好な結果となった。
【0069】
【表1】
【0070】
<ポリイミド接着剤層用の樹脂の調製>
(合成例3)
窒素気流下で、500mlのセパラブルフラスコに、44.98gのBTDA(0.139モル)、75.02gのDDA(0.140モル)、168gのN-メチル-2-ピロリドン及び112gのキシレンを装入し、40℃で30分間良く混合して、ポリアミド酸溶液を調製した。このポリアミド酸溶液を190℃に昇温し、4.5時間加熱、攪拌し、112gのキシレンを加えてイミド化を完結したポリイミド接着剤溶液cを調製した。ポリイミド接着剤溶液cにおける固形分は29.1重量%であり、粘度は7,800cpsであった。また、ポリイミド接着剤溶液cの重量平均分子量(Mw)は87,700であった。
【0071】
<ポリイミド接着剤層用の樹脂の調製>
(合成例4)
合成例3で調製したポリイミド接着剤溶液cの34.4g(固形分として10g)、1.25gのN-12及び2.5gのExolit OP935(クラリアントジャパン株式会社製)を配合し、1.297gのN-メチル-2-ピロリドン及び3.869gのキシレンを加えて希釈してポリイミド接着剤溶液dを調製した。
【0072】
(実施例7)
合成例5で調製したポリイミド接着剤溶液dを乾燥後の厚みが約25μmとなるように、実施例1で作製した黒色ポリイミドフィルム1の片面に塗布した後、80℃で15分間加熱乾燥して黒色カバーレイフィルムCL1を調製した。黒色カバーレイフィルムCL1を180℃で120分間加熱した後、23℃、50%環境下で調湿した誘電特性を表2に示す。
【0073】
(実施例8~12)
実施例1で調製した黒色ポリイミドフィルム1の代わりに、実施例2~6で調製した黒色ポリイミドフィルム2~6を使用した以外は同様にして、黒色カバーレイフィルムCL2~CL6を調製した。黒色カバーレイフィルムCL2~CL6の誘電特性を表2に示す。
【0074】
(参考例3、4)
実施例1で調製した黒色ポリイミドフィルム1の代わりに、比較例1、2で調製した黒色ポリイミドフィルムA及びBを使用した以外は同様にして、黒色カバーレイフィルムCL1a及びCL2bを調製した。黒色カバーレイフィルムCL1a及びCL2bの誘電特性を表2に示す。
【0075】
【表2】
【0076】
以上、本発明の実施の形態を例示の目的で詳細に説明したが、本発明は上記実施の形態に制約されることはない。