(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-10
(45)【発行日】2022-01-12
(54)【発明の名称】マーキング装置、欠陥検査システム及びフィルム製造方法
(51)【国際特許分類】
G01N 21/892 20060101AFI20220104BHJP
【FI】
G01N21/892 A
(21)【出願番号】P 2017040930
(22)【出願日】2017-03-03
【審査請求日】2020-01-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000002093
【氏名又は名称】住友化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106909
【氏名又は名称】棚井 澄雄
(74)【代理人】
【識別番号】100196058
【氏名又は名称】佐藤 彰雄
(74)【代理人】
【識別番号】100126664
【氏名又は名称】鈴木 慎吾
(74)【代理人】
【識別番号】100153763
【氏名又は名称】加藤 広之
(72)【発明者】
【氏名】井村 圭太
(72)【発明者】
【氏名】越野 哲史
【審査官】吉田 将志
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-240816(JP,A)
【文献】特開2010-099996(JP,A)
【文献】特開2005-119024(JP,A)
【文献】特開2011-178089(JP,A)
【文献】特開2008-175940(JP,A)
【文献】特開2014-195881(JP,A)
【文献】特開2010-099997(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2006/0109454(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 21/84 - G01N 21/958
B41J 2/01 - B41J 2/215
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
長尺帯状の光学フィルムに対し、前記光学フィルムの欠陥箇所に直接液滴を射出することにより前記欠陥箇所に情報をマーキング可能なマーキング装置であって、
前記光学フィルムに前記液滴を射出する射出孔が形成される射出面を有する液滴射出装置と、
前記射出面に対向して設けられ、前記射出孔から前記液滴が射出される際に飛散する飛沫を遮断可能な遮蔽部材と、を備え、
前記液滴射出装置は、前記液滴を射出可能な複数の射出ヘッドを備え、
前記複数の射出ヘッドは、前記射出孔を複数有し、
複数の前記射出孔は、前記光学フィルムの幅方向に配列し、
前記遮蔽部材には、前記射出孔と対向する位置に開口すると共に、前記射出面の法線と交差する方向に飛散する前記飛沫を遮る内壁面を有する開口部が形成され、
前記遮蔽
部材の前記射出面側の面は、前記射出面と同一平面に配置されるマーキング装置。
【請求項2】
前記遮蔽部材は、前記射出面の法線と平行な方向に厚みを有する遮蔽板を備える請求項1に記載のマーキング装置。
【請求項3】
前記遮蔽板を前記液滴射出装置に固定可能な固定部材を更に備える請求項2に記載のマーキング装置。
【請求項4】
前記固定部材は、前記液滴射出装置及び前記遮蔽板の双方における前記射出面の法線と交差する方向に位置する側端部を覆う第一壁部と、前記遮蔽板の前記射出面とは反対側の面における前記開口部の外周の外縁部を覆う第二壁部とを備える請求項3に記載のマーキング装置。
【請求項5】
前記固定部材は、前記遮蔽板と一体に形成されると共に、前記液滴射出装置における前記射出面の法線と交差する方向に位置する側端部を覆う側壁部を備える請求項3に記載のマーキング装置。
【請求項6】
前記遮蔽板は、前記複数の射出ヘッドごとに複数設けられ、
前記固定部材は、前記遮蔽板を前記複数の射出ヘッドごとに固定可能に複数設けられる請求項3から5までの何れか一項に記載のマーキング装置。
【請求項7】
前記開口部の直径は、前記射出孔の直径よりも大きい請求項1から6までの何れか一項に記載のマーキング装置。
【請求項8】
前記遮蔽部材は、前記射出面の法線と平行な方向に延びる筒部材を備える請求項1に記載のマーキング装置。
【請求項9】
前記筒部材の内径は、前記射出孔の直径よりも大きい請求項8に記載のマーキング装置。
【請求項10】
前記開口部における前記射出面の側の縁部には、前記射出孔に臨むように前記射出面の法線に対して傾斜する傾斜面を有するテーパ部が形成される請求項1から9までの何れか一項に記載のマーキング装置。
【請求項11】
前記液滴射出装置は、長尺帯状の前記光学フィルムを搬送する間に、前記光学フィルムに接するガイドロールに前記光学フィルムを挟んで対向して配置されて、前記光学フィルムの前記ガイドロールと接する位置とは反対側から前記液滴を射出する請求項1から10までの何れか一項に記載のマーキング装置。
【請求項12】
長尺帯状のフィルムを搬送する搬送ラインと、
前記搬送ラインで搬送されるフィルムの欠陥検査を行う欠陥検査装置と、
前記欠陥検査の結果に基づいて欠陥の位置に液滴を射出することにより情報をマーキング可能な請求項1から11までの何れか一項に記載のマーキング装置と、を備える欠陥検査システム。
【請求項13】
請求項12に記載の欠陥検査システムを用いてマーキングする工程を含むフィルム製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マーキング装置、欠陥検査システム及びフィルム製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、偏光フィルムなどの光学フィルムは、異物欠陥や凹凸欠陥などの欠陥検査を行った後、芯材の周りに巻き取られる。欠陥の位置や種類に関する情報(以下「欠陥情報」という。)は、光学フィルムの幅方向の端部にバーコードを印字したり、欠陥箇所にマーキングを施したりすることによって、光学フィルムに記録される。芯材に巻き取られた光学フィルムは、巻き取り量が一定量に達すると、上流側の光学フィルムから切り離され、原反ロールとして出荷される。又、欠陥箇所に施されたマーキングに基づいて光学フィルムを切り出すことで、枚葉物(製品)が取り出される。
例えば、特許文献1には、一定の幅を有し、幅方向に垂直な長さ方向に搬送されるシート状製品の部分的な欠陥を検出しながら、検出された欠陥の部分を明示するためにマーキング用の傷をつけることが可能な欠陥マーキング装置が開示されている。一方、特許文献2には、マーキング手段としてインクジェット等の非接触の印字方式が例示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2002-303580号公報
【文献】特開2011-102985号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本出願人においても、光学フィルムに対して液滴を射出することにより情報をマーキング可能なマーキング装置の開発を進めている。このマーキング装置は、光学フィルムに液滴を射出する射出孔が形成される射出面を有する液滴射出装置を備える。このようなマーキング装置では、射出孔から射出される液滴のサイズ及び粘性等の特性によって、射出孔から液滴が射出される際に飛沫が飛散することが、本発明者の検討によって明らかになっている。射出孔から液滴が射出される際に飛沫が飛散した場合、飛散した飛沫が光学フィルムの欠陥箇所以外の領域に付着すると、本来製品として取り出されるべき部分が飛沫で汚れてしまい、汚れた部分を不良品として廃棄せざるを得ないことがあり、製品の歩留まりが低下する可能性があった。
【0005】
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、射出孔から液滴が射出される際に飛沫が飛散しても、飛沫がフィルムの欠陥箇所以外の領域に付着することを抑制し、製品の歩留まりを向上することができるマーキング装置、欠陥検査システム及びフィルム製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するために、本発明は以下の手段を採用した。
(1)本発明の一つの態様に係るマーキング装置は、光学フィルムに対して液滴を射出することにより情報をマーキング可能なマーキング装置であって、前記光学フィルムに前記液滴を射出する射出孔が形成される射出面を有する液滴射出装置と、前記射出面に設けられ、前記射出孔から前記液滴が射出される際に飛散する飛沫を遮断可能な遮蔽部材と、を備え、前記遮蔽部材には、前記射出孔と対向する位置に開口すると共に、前記射出面の法線と交差する方向に飛散する前記飛沫を遮る内壁面を有する開口部が形成される。
【0007】
(2)上記(1)に記載のマーキング装置では、前記遮蔽部材は、前記射出面の法線と平行な方向に厚みを有する遮蔽板を備えてもよい。
【0008】
(3)上記(2)に記載のマーキング装置では、前記遮蔽板を前記液滴射出装置に固定可能な固定部材を更に備えてもよい。
【0009】
(4)上記(3)に記載のマーキング装置では、前記固定部材は、前記液滴射出装置及び前記遮蔽板の双方における前記射出面の法線と交差する方向に位置する側端部を覆う第一壁部と、前記遮蔽板の前記射出面とは反対側の面における前記開口部の外周の外縁部を覆う第二壁部とを備えてもよい。
【0010】
(5)上記(3)に記載のマーキング装置では、前記固定部材は、前記遮蔽板と一体に形成されると共に、前記液滴射出装置における前記射出面の法線と交差する方向に位置する側端部を覆う側壁部を備えてもよい。
【0011】
(6)上記(3)から(5)までの何れか一項に記載のマーキング装置では、前記液滴射出装置は、前記液滴を射出可能な複数の射出ヘッドを備え、前記遮蔽板は、前記複数の射出ヘッドごとに複数設けられ、前記固定部材は、前記遮蔽板を前記複数の射出ヘッドごとに固定可能に複数設けられてもよい。
【0012】
(7)上記(2)から(6)までの何れか一項に記載のマーキング装置では、前記遮蔽板は、前記射出面に当接してもよい。
【0013】
(8)上記(2)から(6)までの何れか一項に記載のマーキング装置では、前記遮蔽板は、前記射出面から離反してもよい。
【0014】
(9)上記(1)から(8)までの何れか一項に記載のマーキング装置では、前記開口部の直径は、前記射出孔の直径よりも大きくてもよい。
【0015】
(10)上記(1)に記載のマーキング装置では、前記遮蔽部材は、前記射出面の法線と平行な方向に延びる筒部材を備えてもよい。
【0016】
(11)上記(10)に記載のマーキング装置では、前記筒部材の内径は、前記射出孔の直径よりも大きくてもよい。
【0017】
(12)上記(1)から(11)までの何れか一項に記載のマーキング装置では、前記開口部における前記射出面の側の縁部には、前記射出孔に臨むように前記射出面の法線に対して傾斜する傾斜面を有するテーパ部が形成されてもよい。
【0018】
(13)上記(1)から(12)までの何れか一項に記載のマーキング装置では、前記液滴射出装置は、長尺帯状の前記光学フィルムを搬送する間に、前記光学フィルムに接するガイドロールに前記光学フィルムを挟んで対向して配置されて、前記光学フィルムの前記ガイドロールと接する位置とは反対側から前記液滴を射出してもよい。
【0019】
(14)本発明の一つの態様に係る欠陥検査システムは、長尺帯状のフィルムを搬送する搬送ラインと、前記搬送ラインで搬送されるフィルムの欠陥検査を行う欠陥検査装置と、前記欠陥検査の結果に基づいて欠陥の位置に液滴を射出することにより情報をマーキング可能な上記(1)から(13)までの何れか一項に記載のマーキング装置と、を備える。
【0020】
(15)上記(14)に記載の欠陥検査システムでは、前記マーキング装置は、前記搬送ラインで鉛直方向と平行な方向に搬送されるフィルムに対して鉛直方向と交差する方向から前記液滴を射出してもよい。
【0021】
(16)上記(14)に記載の欠陥検査システムでは、前記マーキング装置は、前記搬送ラインで鉛直方向と交差する方向に搬送されるフィルムに対して下方から前記液滴を射出してもよい。
【0022】
(17)上記(14)から(16)までの何れか一項に記載の欠陥検査システムでは、前記フィルムに接するガイドロールを更に備え、前記マーキング装置は、前記フィルムを挟んで前記ガイドロールに対向して配置されて、前記フィルムの前記ガイドロールと接する位置とは反対側から前記液滴を射出してもよい。
【0023】
(18)上記(17)に記載の欠陥検査システムでは、前記フィルムは、前記ガイドロールの外周面に40°以上且つ130°以下の角度範囲で掛け合わされてもよい。
【0024】
(19)本発明の一つの態様に係るフィルム製造装置は、上記(14)から(18)までの何れか一項に記載の欠陥検査システムを備える。
【0025】
(20)本発明の一つの態様に係るフィルム製造方法は、上記(14)から(18)までの何れか一項に記載の欠陥検査システムを用いてマーキングする工程を含む。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、射出孔から液滴が射出される際に飛沫が飛散しても、飛沫がフィルムの欠陥箇所以外の領域に付着することを抑制し、製品の歩留まりを向上することができるマーキング装置、欠陥検査システム及びフィルム製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図4】第一実施形態に係るフィルム製造装置の構成を示す側面図である。
【
図6】第一実施形態に係るマーキング装置を示す斜視図である。
【
図7】第一実施形態に係るマーキング装置における液滴射出装置、遮蔽板及び固定部材を示す正面図である。
【
図9】
図8の要部拡大図であり、第一実施形態に係る遮蔽板の作用を説明するための図である。
【
図10】固定部材の第一変形例を示す図であり、
図8に相当する断面図である。
【
図11】固定部材の第二変形例を示す図であり、
図8に相当する断面図である。
【
図12】遮蔽部材の変形例を示す図であり、
図8に相当する断面図である。
【
図13】第二実施形態に係るマーキング装置を示す斜視図である。
【
図14】
図13の要部拡大図を含み、第二実施形態に係るマーキング装置における飛散規制部材の作用を説明するための図である。
【
図15】第三実施形態に係るマーキング装置を示す斜視図である。
【
図16】第三実施形態に係るマーキング装置における吸引装置の作用を説明するための図である。
【
図17】第四実施形態に係るマーキング装置を示す図であり、
図8に相当する断面を含む図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
(第一実施形態)
以下、本発明の第一実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。
本実施形態では、光学表示デバイスの生産システムとして、その一部を構成するフィルム製造装置、及びこのフィルム製造装置を用いたフィルム製造方法について説明する。
【0029】
フィルム製造装置は、樹脂製のフィルム状の光学部材(光学フィルム)を製造するものである。例えば、光学フィルムとしては、偏光フィルム、位相差フィルム及び輝度向上フィルム等が挙げられる。例えば、光学フィルムは、液晶表示パネル及び有機EL表示パネル等のパネル状の光学表示部品(光学表示パネル)に貼合される。フィルム製造装置は、このような光学表示部品や光学部材を含む光学表示デバイスを生産する生産システムの一部を構成している。
【0030】
本実施形態では、光学表示デバイスとして透過型の液晶表示装置を例示している。透過型の液晶表示装置は、液晶表示パネルと、バックライトとを備えている。この液晶表示装置では、バックライトから出射された照明光を液晶表示パネルの裏面側から入射し、液晶表示パネルにより変調された光を液晶表示パネルの表面側から出射することによって、画像を表示することが可能である。
【0031】
(光学表示デバイス)
先ず、光学表示デバイスとして、
図1及び
図2に示す液晶表示パネルPの構成について説明する。
図1は、液晶表示パネルPの一例を示す平面図である。
図2は、
図1のII-II断面図である。尚、
図2では、断面を示すハッチングの図示を省略している。
【0032】
液晶表示パネルPは、
図1及び
図2に示すように、第一の基板P1と、第一の基板P1に対向して配置された第二の基板P2と、第一の基板P1と第二の基板P2との間に配置された液晶層P3とを備えている。
【0033】
第一の基板P1は、平面視で長方形状をなす透明基板からなる。第二の基板P2は、第一の基板P1よりも比較的小形の長方形状をなす透明基板からなる。液晶層P3は、第一の基板P1と第二の基板P2との間の周囲をシール材(不図示)で封止し、シール材によって囲まれた平面視で長方形状をなす領域の内側に配置されている。液晶表示パネルPでは、平面視で液晶層P3の外周の内側に収まる領域を表示領域P4とし、この表示領域P4の周囲を囲む外側の領域を額縁部Gとする。
【0034】
液晶表示パネルPの裏面(バックライト側)には、偏光フィルムとしての第一の光学フィルムF11と、この第一の光学フィルムF11に重ねて輝度向上フィルムとしての第三の光学フィルムF13とが順に積層されて貼合されている。液晶表示パネルPの表面(表示面側)には、偏光フィルムとしての第二の光学フィルムF12が貼合されている。以下、第一~第三の光学フィルムF11~F13のいずれか一つを含むフィルムを光学フィルムF1Xと総称することがある。
【0035】
(光学フィルム)
次に、
図3に示す光学フィルムF1Xの一例について説明する。
図3は、光学フィルムF1Xの構成を示す断面図である。尚、
図3では、断面を示すハッチングの図示を省略している。
【0036】
光学フィルムF1Xは、
図3に示す長尺帯状の光学シートFXから所定の長さのシート片を切り出すことによって得られる。具体的に、この光学フィルムF1Xは、基材シートF4と、基材シートF4の一方の面(
図3中の上面)に設けられた粘着層F5と、粘着層F5を介して基材シートF4の一方の面に設けられたセパレータシートF6と、基材シートF4の他方の面(
図3中の下面)に設けられた表面保護シートF7とを有する。
【0037】
基材シートF4は、例えば偏光フィルムの場合、偏光子F4aを一対の保護フィルムF4b,F4cが挟み込む構造を有している。粘着層F5は、基材シートF4を液晶表示パネルPに貼り合わせるものである。セパレータシートF6は、粘着層F5を保護するものである。セパレータシートF6は、基材シートF4を、粘着層F5を介して液晶表示パネルPに貼合する前に、光学フィルムF1Xの粘着層F5から剥離される。尚、光学フィルムF1XからセパレータシートF6を除いた部分は、貼合シートF8とされる。
表面保護シートF7は、基材シートF4の表面を保護するものである。表面保護シートF7は、貼合シートF8の基材シートF4が液晶表示パネルPに貼着された後に、基材シートF4の表面から剥離される。
【0038】
尚、基材シートF4については、一対の保護フィルムF4b,F4cのうち何れか一方を省略してもよい。例えば、粘着層F5側の保護フィルムF4bを省略して、偏光子F4aに粘着層F5が直接設けられていてもよい。又、表面保護シートF7側の保護フィルムF4cには、例えば、液晶表示パネルPの最外面を保護するハードコート処理や、防眩効果が得られるアンチグレア処理などの表面処理が施されていてもよい。又、基材シートF4については、上述した積層構造のものに限らず、単層構造のものであってもよい。又、表面保護シートF7を省略してもよい。
【0039】
(フィルム製造装置及びフィルム製造方法)
次に、
図4に示すフィルム製造装置1について説明する。
図4は、第一実施形態に係るフィルム製造装置1の構成を示す側面図である。
【0040】
例えば、フィルム製造装置1は、偏光フィルムの両面に表面保護フィルムが貼合された光学フィルムF10Xを製造するものである。フィルム製造方法は、光学フィルムF10Xの製造工程を含む。例えば、フィルム製造方法は、長尺帯状の偏光フィルムの原反ロール(不図示)を製造する原反ロール製造工程と、長尺帯状の偏光フィルムに長尺帯状の表面保護フィルムを貼合して長尺帯状の光学フィルムF10Xの原反ロールR1を製造する貼合工程と、長尺帯状の光学フィルムF10Xの欠陥検査の結果に基づいて欠陥の位置にマーキングを行うマーキング工程と、を含む。尚、マーキング工程の後には、マーキングされた部分を不良品として除去し、且つマーキングされていない部分を良品として回収する製品化工程が行われる。
【0041】
例えば、原反ロール製造工程では、PVA(Polyvinyl Alcohol)などの偏光子の基材となるフィルムに対して、染色処理、架橋処理及び延伸処理などを施した後、前記処理を施したフィルムの両面にTAC(Triacetylcellulose)などの保護フィルムを貼合することにより長尺帯状の偏光フィルムを製造し、製造された偏光フィルムを芯材に巻き取ることにより原反ロール(不図示)を得る。
【0042】
貼合工程では、長尺帯状の偏光フィルムの原反ロール及び長尺帯状の表面保護フィルムの原反ロール(何れも不図示)から長尺帯状の偏光フィルム及び長尺帯状の表面保護フィルムをそれぞれ巻き出しつつニップロール等で挟み込んで貼合し引き出すことにより長尺帯状の光学フィルムF10Xを製造し、製造された光学フィルムF10Xを芯材に巻き取ることにより原反ロールR1を得る。例えば、表面保護フィルムとしては、PET(Polyethylene terephthalate)が用いられる。
【0043】
マーキング工程では、欠陥検査の結果に基づいて欠陥の位置にインク4i(液滴)を射出することにより光学フィルムF10Xに情報をマーキングする。ここで、「射出」とは、例えば
図6に示す射出孔21からインク4iを発射することである。マーキング工程では、光学フィルムF10Xの欠陥箇所に、欠陥よりも大きいドット状のマークを印字(マーキング)することによって、欠陥箇所に直接記録を行う。
【0044】
図5は、製品化工程を示す斜視図である。
図5に示すように、製品化工程では、長尺帯状の光学フィルムF10Xから複数の枚葉物(製品)を得る。光学フィルムF10Xにおける欠陥11の近傍には、欠陥11よりも大きいドット状のマーク12が印字されている。尚、光学フィルムF10Xにおける領域MAは、フィルム幅方向全体にマーキング(以下「全幅マーキング」という。)が施された領域である。例えば、全幅マーキングは、光学フィルムF10Xの所定領域に欠陥が多発した時等に行われる。
【0045】
製品化工程は、マーキングの情報に基づいて、光学フィルムF10Xを切断する切断工程を含む。切断工程では、マーキングの情報に基づいて光学フィルムF10Xを切り出すことで、枚葉物(製品)が取り出される。製品化工程では、マーキングされた部分を不良品13として除去し、且つマーキングされていない部分を良品14として回収する。
【0046】
図4に示すように、フィルム製造装置1は、搬送ライン9を備える。搬送ライン9は、原反ロールR1から巻き出された長尺帯状の光学フィルムF10Xを搬送する搬送経路を形成するものである。光学フィルムF10Xは、欠陥検査及びマーキング等の所定処理が施されて、巻取部8において、所定処理後の原反ロールR2として芯材に巻き取られる。
【0047】
搬送ライン9には、一対のニップロール5a,5bが配置される。尚、搬送ライン9には、複数のダンサーロールを含むアキュームレーター(不図示)と、ガイドロール7(
図17参照)とが配置されていてもよい。
【0048】
一対のニップロール5a,5bは、その間に光学フィルムF10Xを挟み込みながら、互いに逆向きに回転することによって、
図4中に示す矢印の方向V1(光学フィルムF10Xの搬送方向)に光学フィルムF10Xを引き出すものである。
【0049】
アキュームレーター(不図示)は、光学フィルムF10Xの送り量の変動による差を吸収すると共に、光学フィルムF10Xに加わる張力の変動を低減するためのものである。
例えば、アキュームレーターは、搬送ライン9の所定区間で、上部側に位置する複数のダンサーロールと、下部側に位置する複数のダンサーロールとが交互に並んで配置された構成を有している。
【0050】
アキュームレーターでは、上部側のダンサーロールと下部側のダンサーロールとに光学フィルムF10Xが互い違いに掛け合わされた状態で、光学フィルムF10Xを搬送させながら、上部側のダンサーロールと下部側のダンサーロールとを相対的に上下方向に昇降動作させる。これにより、搬送ライン9を停止することなく、光学フィルムF10Xを蓄積することが可能とされる。例えば、アキュームレーターでは、上部側のダンサーロールと下部側のダンサーロールとの間の距離を広げることよって、光学フィルムF10Xの蓄積を増やす一方、上部側のダンサーロールと下部側のダンサーロールとの間の距離を狭めることよって、光学フィルムF10Xの蓄積を減らすことができる。アキュームレーターは、例えば、原反ロールR1、R2の芯材を交換した後の紙継ぎなどの作業時に稼働される。
【0051】
ガイドロール7(
図17参照)は、回転しながらニップロール5a,5bにより引き出された光学フィルムF10Xを搬送ライン9の下流側に案内するものである。尚、ガイドロール7は、1つに限らず複数配置されていてもよい。
【0052】
光学フィルムF10Xは、巻取部8において、所定処理後の原反ロールR2として芯材に巻き取られた後、次工程へと送られる(
図5参照)。
【0053】
(欠陥検査システム)
次に、上記フィルム製造装置1が備える欠陥検査システム10について説明する。
欠陥検査システム10は、
図4に示すように、搬送ライン9と、欠陥検査装置2と、欠陥情報読取装置3と、マーキング装置4と、制御装置6とを備える。
【0054】
欠陥検査装置2は、光学フィルムF10Xの欠陥検査を行うものである。具体的に、欠陥検査装置2は、光学フィルムF10Xを製造する際、及び光学フィルムF10Xを搬送する際に生じた異物欠陥、凹凸欠陥、輝点欠陥などの各種欠陥を検出する。欠陥検査装置2は、搬送ライン9で搬送される光学フィルムF10Xに対して、例えば、反射検査、透過検査、斜め透過検査、クロスニコル透過検査などの検査処理を実行することにより、光学フィルムF10Xの欠陥を検出する。
【0055】
例えば、欠陥検査装置2は、搬送ライン9において、ニップロール5a,5bよりも上流側に、光学フィルムF10Xに照明光を照射する複数の照明部(不図示)と、光学フィルムF10Xを透過した光(透過光)又は光学フィルムF10Xで反射された光(反射光)を検出する複数の光検出部を有している。
【0056】
欠陥検査装置2が透過光を検出する構成の場合、光学フィルムF10Xの搬送方向に並ぶ複数の照明部と光検出部とは、それぞれ光学フィルムF10Xを挟んで対向して配置される。尚、欠陥検査装置2は、透過光を検出する構成に限らず、反射光を検出する構成、若しくは透過光及び反射光を検出する構成であってもよい。反射光を検出する場合は、光検出部を照明部側に配置すればよい。
【0057】
照明部は、欠陥検査の種類に応じて光強度や波長、偏光状態等が調整された照明光を光学フィルムF10Xに照射する。光検出部は、CCD等の撮像素子を用いて、光学フィルムF10Xの照明光が照射された位置の画像を撮像する。光検出部で撮像された画像(欠陥検査の結果)は、制御装置6に出力される。
【0058】
尚、長尺帯状の光学フィルム及び長尺帯状の表面保護フィルムが貼合される前の長尺帯状の偏光フィルムの欠陥検査を行う欠陥検査装置と、この欠陥検査装置の欠陥検査の結果に基づく欠陥情報を前記偏光フィルムに記録する記録装置(何れも不図示)とを更に備えていてもよい。不図示の欠陥検査装置は、上述の欠陥検査装置2と同様の構成を有し、偏光フィルムの欠陥を検出する。
【0059】
記録装置(不図示)が記録する欠陥情報は、欠陥の位置や種類等に関する情報を含み、例えば、文字、バーコード、二次元コード(DataMatrixコード、QRコード(登録商標)等)などの識別コードとして記録される。識別コードには、例えば、不図示の欠陥検査装置で検出された欠陥が、識別コードが印字された位置からフィルム幅方向に沿ってどれだけの距離だけ離れた位置に存在するかを示す情報(欠陥の位置に関する情報)が含まれる。又、識別コードには、検出された欠陥の種類に関する情報が含まれていてもよい。
【0060】
記録装置は、偏光フィルムの搬送ラインにおいて、不図示の欠陥検査装置よりも下流側に設けられる。記録装置は、例えばインクジェット方式を採用した印字ヘッドを有している。この印字ヘッドは、偏光フィルムの幅方向の端縁部(端部)に沿った位置にインクを吐出し、上記欠陥情報の印字を行う。
【0061】
欠陥情報読取装置3は、搬送ライン9において、欠陥検査装置2よりも下流側に設けられている。欠陥情報読取装置3は、光学フィルムF10X(前記偏光フィルム)に記録された欠陥情報を読み取るものである。欠陥情報読取装置3は、撮像装置を有している。撮像装置は、CCD等の撮像素子を用いて、搬送される光学フィルムF10Xの欠陥情報を撮像する。
【0062】
欠陥情報読取装置3は、欠陥の位置や種類等に関する情報を含み、例えば、文字、バーコード、二次元コード(DataMatrixコード、QRコード(登録商標)等)などの識別コードとして記録された欠陥情報を読み取る。例えば、欠陥情報を読み取ることにより、欠陥検査装置2等で検出された欠陥が、識別コードが印字された位置からフィルム幅方向に沿ってどれだけの距離だけ離れた位置に存在するかを示す情報(欠陥の位置に関する情報)が得られる。又、識別コードに検出された欠陥の種類に関する情報が含まれる場合には、欠陥情報を読み取ることにより、検出された欠陥の種類に関する情報が得られる。欠陥情報読取装置3により得られた欠陥情報(読取結果)は、制御装置6に出力される。
【0063】
マーキング装置4は、搬送ライン9において、欠陥情報読取装置3よりも下流側に設けられている。マーキング装置4は、欠陥検査の結果に基づいて欠陥の位置にインク4iを射出することにより光学フィルムF10Xに情報をマーキングするものである。マーキング装置4は、光学フィルムF10Xの欠陥箇所に、欠陥よりも大きいドット状のマークを印字(マーキング)することによって、欠陥箇所に直接記録を行う。
【0064】
尚、マーキング装置4は、欠陥を包含するような大きさのドット状、ライン状若しくは枠状のマークを印字(マーキング)することによって、欠陥箇所に直接記録を行ってもよい。このとき、マークの他にも欠陥の種類を示す記号や模様を欠陥箇所に印字することによって、欠陥の種類に関する情報を記録してもよい。
【0065】
欠陥検査システム10は、光学フィルムF10Xの搬送量を測定する測長器(不図示)を備えていてもよい。例えば、測長器しては、搬送ライン9において、ニップロールにロータリーエンコーダ等の角位置センサを配置してもよい。測長器は、光学フィルムF10Xに接して回転するニップロールの回転変位量に応じて、光学フィルムF10Xの搬送量を測定する。測長器の測定結果は、制御装置6に出力される。
【0066】
制御装置6は、フィルム製造装置1の各部を統括制御するものである。具体的に、この制御装置6は、電子制御装置としてのコンピュータシステムを備えている。コンピュータシステムは、CPU等の演算処理部と、メモリーやハードディスク等の情報記憶部とを備えている。
【0067】
制御装置6の情報記憶部には、コンピュータシステムを制御するオペレーティングシステム(OS)や、演算処理部にフィルム製造装置1の各部に各種の処理を実行させるプログラムなどが記録されている。又、制御装置6は、フィルム製造装置1の各部の制御に要する各種処理を実行するASIC等の論理回路を含んでいてもよい。又、制御装置6は、コンピュータシステムの外部装置との入出力を行うためのインターフェースを含む。このインターフェースには、例えはキーボードやマウス等の入力装置や、液晶表示ディスプレイ等の表示装置、通信装置などが接続可能となっている。
【0068】
制御装置6は、欠陥検査装置の光検出部で撮像された画像を解析して、欠陥の有無(位置)や種類などを判別する。制御装置6は、偏光フィルムに欠陥が存在すると判定した場合には、記録装置を制御して偏光フィルムに欠陥情報を記録する。制御装置6は、欠陥検査装置の検査結果及び欠陥情報読取装置3の読取結果等に基づいて、光学フィルムF10Xに欠陥が存在すると判定した場合には、マーキング装置4を制御して光学フィルムF10Xにマークを印字する。
【0069】
(マーキング装置)
次に、上記欠陥検査システム10が備えるマーキング装置4について説明する。
図6は、第一実施形態に係るマーキング装置4を示す斜視図である。
マーキング装置4は、
図6に示すように、液滴射出装置20と、遮蔽板30(遮蔽部材)と、固定部材40と、を備える。マーキング装置4は、光学フィルムF10Xにインク4iを射出することにより、光学フィルムF10Xの欠陥箇所に、欠陥よりも大きいドット状のマーク12を印字する。
【0070】
以下の説明においては、必要に応じてxyz直交座標系を設定し、このxyz直交座標系を参照しつつ各部材の位置関係について説明する。本実施形態においては、液滴射出装置20の射出面22の法線方向をx方向としており、射出面22の面内においてx方向に直交する方向(射出面22の幅方向)をy方向、x方向及びy方向に直交する方向をz方向としている。ここでは、x方向とy方向が水平面内にあり、z方向が鉛直方向(上下方向)にある。尚、x方向を前後方向、y方向を左右方向ということがある。又、+x方向を前方向、-x方向を後方向、+y方向を左方向、-y方向を右方向、+z方向を上方向、-z方向を下方向ということがある。
【0071】
図6に示すように、マーキング装置4は、搬送ライン9で鉛直方向と平行な方向V1(上方)に搬送される光学フィルムF10Xに対して、鉛直方向と直交する水平方向からインク4iを射出する。例えば、光学フィルムF10Xの搬送速度(以下「ライン速度」という。)は、光学フィルムF10Xにマーク12を印字可能な範囲として50m/min以下の値とする。本実施形態では、ライン速度は30m/min以下の値とする。
【0072】
図7は、第一実施形態に係るマーキング装置4における液滴射出装置20、遮蔽板30及び固定部材40を示す正面図である。
図8は、
図7のVIII-VIII断面図である。
図9は、
図8の要部拡大図であり、第一実施形態に係る遮蔽板30の作用を説明するための図である。尚、
図9においては便宜上、固定部材40の図示を省略する。
【0073】
図7に示すように、液滴射出装置20は、インクを射出可能な複数の射出ヘッド20Aを備える。
図7では一例として、3つの射出ヘッド20Aを図示しているが、射出ヘッド20Aの数はこれに限らず、1つ若しくは2つ又は4つ以上等、適宜必要に応じて設定可能である。射出ヘッド20Aは、y方向に長手を有する直方体状をなす。射出ヘッド20Aの射出面22(
図8参照)は、
図7の正面視でy方向に長手を有する長方形状をなす。
【0074】
遮蔽板30は、複数の射出ヘッド20Aごとに複数設けられる。
図7では一例として、3つの射出ヘッド20Aごとに設けられる3つの遮蔽板30を図示しているが、遮蔽板30の数はこれに限らず、射出ヘッド20Aの数に合わせて設定可能であり、1つ若しくは2つ又は4つ以上等、適宜必要に応じて設定可能である。遮蔽板30の射出面22とは反対側の面32(以下「第一主面」という。)は、
図7の正面視で射出面22と略同じ大きさの長方形状をなす。
【0075】
固定部材40は、遮蔽板30を複数の射出ヘッド20Aごとに固定可能に複数設けられる。
図7では一例として、遮蔽板30を3つの射出ヘッド20Aごとに固定可能に設けられる3つの固定部材40を図示しているが、固定部材40の数はこれに限らず、射出ヘッド20A及び遮蔽板30の数に合わせて設定可能であり、1つ若しくは2つ又は4つ以上等、適宜必要に応じて設定可能である。固定部材40は、
図7の正面視で遮蔽板30の第一主面32の外形に沿う矩形枠状をなす。
【0076】
例えば、射出ヘッド20Aは、バルブ方式のインクジェットヘッドを採用する。例えば、射出ヘッド20Aの射出孔21から射出されるインクの量(以下「液滴量」という。)は、光学フィルムF10Xに印字されるドット状のマーク12の直径(以下「ドット径」という。)が1mm以上且つ10mm以下の範囲の値となるようにするため、0.05μL以上且つ0.2μL以下の範囲の値とする。本実施形態では、液滴量は0.166μL程度とする。
【0077】
例えば、射出ヘッド20Aの射出孔21から射出されるインクの粘度(以下「インク粘度」という。)は、ドット径が1mm以上且つ10mm以下の範囲の値となるようにするため、0.05×10-3Pa・s以上且つ1.00×10-3Pa・s以下の範囲の値
とする。本実施形態では、インク粘度は0.89×10-3Pa・sとする。
【0078】
例えば、射出ヘッド20Aからのインクの射出速度(以下「インク射出速度」という。
)は、印字可能な範囲として1m/s以上且つ10m/s以下の範囲の値、好ましくは4m/s以上且つ5m/s以下の範囲の値とする。本実施形態では、インク射出速度は4.2m/s程度とする。インク射出速度を上記範囲内とすることにより、搬送中の光学フィルムF10の目標とする印字領域に精度良く印字することができ、インクの着弾時の飛沫(例えば
図14に示す第二の飛沫4b)の発生を抑えることができる。ここで、「インクの着弾」とは、射出されたインク4iが光学フィルムF10Xに接触し、インク4iの形状を崩しながら光学フィルムF10X上で印字となることを示す。
【0079】
例えば、射出ヘッド20Aの射出孔21の開口時間は、光学フィルムF10Xにマーク12を印字可能な範囲として0.5ms以上の範囲の値、好ましくは0.8ms以上且つ1.5ms以下の範囲、より好ましくは0.9ms以上且つ1.2ms以下の範囲の値とする。本実施形態では、開口時間は1.0ms程度とする。開口時間を上記範囲内とすることにより、射出されるインクの量を安定化させ、目的のドット径とすることができ、インク射出時に飛沫4aの発生を抑えることができる。
【0080】
例えば、射出ヘッド20Aからのインクの射出圧力(以下「インク射出圧力」という。
)は、光学フィルムF10Xにマーク12を印字可能な範囲として0.030MPa以下の範囲、好ましくは0.020MPa以上且つ0.028MPa以下の範囲の値とする。
本実施形態では、インク射出圧力は0.025MPa程度とする。インク射出圧力を上記範囲内とすることにより、インク射出速度を安定化させ、インク射出時の飛沫4a及びインクの着弾時の飛沫(例えば
図14に示す第二の飛沫4b)の発生を抑えることができる。
【0081】
例えば、射出ヘッド20Aの射出孔21と光学フィルムF10Xとの間の距離K1(
図9参照)は、光学フィルムF10Xにマーク12を印字可能な範囲として50mm以下の値、好ましくは5mm以上且つ15mm以下の値とする。この理由は、距離K1を小さくしすぎると射出ヘッド20Aが光学フィルムF10Xに接する可能性があり、距離K1を大きくしすぎると射出孔21からインクが射出される際に飛散する飛沫が広範囲に広がる可能性があるからである。本実施形態では、距離K1は13mm程度とする。尚、距離K1は、射出面22における射出孔21の中心と光学フィルムF10Xの印字面(-x方向側の面)とを射出面22の法線方向で結んだ線分の長さとする。射出ヘッド20Aの射出孔21と光学フィルムF10Xとの間の距離は、射出ヘッド20Aの射出面22と光学フィルムF10Xとの間の距離に相当する。
【0082】
例えば、光学フィルムF10Xの搬送により発生する光学フィルムF10X周辺の風速は、光学フィルムF10Xにマーク12を印字可能な範囲として0.5m/s以下の範囲の値、好ましくは0.2m/s以下の範囲の値とする。本実施形態では、ライン速度25m/min程度の条件で、前記風速が0.1m/s程度になるようにする。風速が上記範囲内であると、発生した飛沫4a,4bが広範囲に広がることを抑えることができる。
【0083】
射出ヘッド20A(液滴射出装置20)の射出面22には、光学フィルムF10Xにインクを射出する複数の射出孔21が形成される。複数の射出孔21は、射出面22の上下方向(z方向)の中央に、射出面22の幅方向(y方向)に並んで一列に配置される。
図7では一例として、一つの射出面22につき9個の射出孔21を図示しているが、本実施形態では、一つの射出面22につき16個の射出孔21が形成される。尚、射出孔21の数はこれに限らず、8個以下の数又は10個以上の数等、適宜必要に応じて設定可能である。又、射出孔21の列は一列に限らず、2列以上等、適宜必要に応じて設定可能である。射出孔21は、
図7の正面視で円形をなす。
【0084】
図8に示すように、遮蔽板30は、射出面22に設けられる。
図9に示すように、遮蔽板30は、射出面22の法線と平行な方向(x方向)に厚みt1を有する。例えば、遮蔽板30の厚みt1は、好ましくは2mm以上且つ10mm以下の範囲の値、より好ましくは2mm以上且つ5mm以下の範囲の値とする。本実施形態では、遮蔽板30の厚みt1は3mm程度とする。尚、遮蔽板30の厚みt1は、遮蔽板30が光学フィルムF10Xに接しない範囲で可能な限り大きくしてもよい。
【0085】
遮蔽板30は、射出孔21からインク4iが射出される際に飛散する飛沫4aを遮断可能である。遮蔽板30には、射出孔21と対向する位置に開口する開口部31が形成される。開口部31は、インク4iが射出される射出通路Iaに臨む内壁面31aを有する。
開口部31の内壁面31aは、射出経路Iaを中心軸とする円筒状をなす。開口部31の内壁面31aは、射出孔21からインク4iが射出される際に射出面22の法線と交差する方向に飛散する飛沫4aを遮る。飛散した飛沫4aの少なくとも一部は、開口部31の内壁面31aに付着する。
【0086】
図7に示すように、開口部31は、複数の射出孔21ごとに複数設けられる。複数の開口部31は、第一主面32の上下方向(z方向)の中央に、第一主面32の幅方向(y方向)に並んで一列に配置される。
図7では一例として、一つの遮蔽板30につき9個の開口部31を図示しているが、本実施形態では、一つの遮蔽板30につき、16個の射出孔21に合わせて16個の開口部31が設けられる。尚、開口部31の数はこれに限らず、8個以下の数又は10個以上の数等、適宜必要に応じて設定可能である。又、開口部31の列は一列に限らず、2列以上等、適宜必要に応じて設定可能である。開口部31は、
図7の正面視で円形をなす。
【0087】
図9に示すように、開口部31の直径d1は、射出孔21の直径d2よりも大きい(d1>d2)。例えば、開口部31の直径d1と射出孔21の直径d2との比d1/d2は、好ましくは1.5以上且つ5以下の範囲の値、より好ましくは2以上且つ4以下の範囲の値とする。本実施形態では、比d1/d2は3程度とし、開口部31の直径d1は3mm程度、射出孔21の直径d2は1mm程度とする。尚、射出孔21の直径d2は、0.1mm以上かつ2mm以下の範囲の値としてもよい。
【0088】
遮蔽板30の第一主面32は、光学フィルムF10Xから離反する。例えば、遮蔽板30の第一主面32と光学フィルムF10Xとの間の距離L1は、好ましくは10mm以下の値、より好ましくは5mm以下の値とする。本実施形態では、前記距離L1は10mm程度とする。尚、前記距離L1は、遮蔽板30が光学フィルムF10Xに接しない範囲で可能な限り小さくしてもよい。
【0089】
遮蔽板30は、射出面22に当接する。言い換えると、遮蔽板30の射出面22の側の面35(以下「第二主面」という。)は、射出面22と同一平面に配置される。
【0090】
例えば、遮蔽板30は、SUS等の金属板、又はアクリル板及びポリプロピレン板(PP板)等のプラスチック板により形成される。本実施形態では、遮蔽板30は、アクリル板により形成される。尚、遮蔽板30は、インクに対し反応しない板材により形成してもよい。これにより、遮蔽板30のインクによる腐食を抑制できるため、遮蔽板30の耐食性を向上できる。
【0091】
固定部材40は、遮蔽板30を射出ヘッド20Aに固定する。
図8に示すように、固定部材40は、第一壁部41と、第二壁部42とを備える。例えば、固定部材40は、SUS等の金属板により形成される。
【0092】
第一壁部41は、射出ヘッド20A及び遮蔽板30の双方における射出面22の法線と直交する方向に位置する側端部23,33を覆う。第一壁部41は、前後方向(x方向)に延びる矩形筒状をなす。第一壁部41は、射出ヘッド20Aの上下方向(z方向)及び幅方向(y方向)の側端部23における射出面22側の部分と、遮蔽板30の上下方向(z方向)及び幅方向(y方向)の側端部33との双方に当接する。例えば、第一壁部41は、ボルト等の締結部材により射出ヘッド20Aに締結される。これにより、射出ヘッド20A及び遮蔽板30の上下方向(z方向)及び幅方向(y方向)の相対移動が規制される。
【0093】
第二壁部42は、遮蔽板30の第一主面32における開口部31の外周の外縁部34を覆う。第二壁部42は、第一壁部41の前端(+x方向端)からz方向内側に向けて延びる矩形枠状をなす。第二壁部42は、遮蔽板30の第一主面32における開口部31の外周の外縁部34に当接する。例えば、第二壁部42は、第一壁部41と同一の部材により一体に形成される。尚、第二壁部42は、ボルト等の締結部材により第一壁部41に締結されてもよい。これにより、射出ヘッド20A及び遮蔽板30の前後方向(x方向)の相対移動が規制される。
【0094】
以上説明したように、本実施形態に係るマーキング装置4は、光学フィルムF10Xに対してインク4iを射出することによりマーク12をマーキング可能なマーキング装置4であって、光学フィルムF10Xにインク4iを射出する射出孔21が形成される射出面22を有する液滴射出装置20と、射出面22に設けられ、射出孔21からインク4iが射出される際に飛散する飛沫4aを遮断可能な遮蔽板30と、を備え、遮蔽板30には、射出孔21と対向する位置に開口すると共に、射出面22の法線と交差する方向に飛散する飛沫4aを遮る内壁面31aを有する開口部31が形成されるものである。
【0095】
本実施形態によれば、遮蔽板30に、射出孔21と対向する位置に開口すると共に、射出面22の法線と交差する方向に飛散する飛沫4aを遮る内壁面31aを有する開口部31を形成することで、遮蔽板30を設けずに液滴射出装置20からそのままインク4iを射出する場合と比較して、射出面22の法線と交差する方向に飛散する飛沫4aの拡散範囲、具体的には飛沫4aが光学フィルムF10Xに付着したときのマーク12を中心とする飛散径L2(
図9参照)を小さくすることができるため、射出孔21からインク4iが射出される際に飛沫4aが飛散しても、飛沫4aが光学フィルムF10Xの欠陥箇所以外の領域に付着することを抑制し、製品の歩留まりを向上することができる。
【0096】
又、射出面22の法線と平行な方向に厚みt1を有する遮蔽板30を備えることで、遮蔽板30の厚みt1を調整することにより飛沫4aの拡散範囲を調整できるため、飛沫4aが光学フィルムF10Xの欠陥箇所以外の領域に付着することを抑制することができる。例えば、遮蔽板30の厚みt1を、遮蔽板30が光学フィルムF10Xに接しない範囲で可能な限り大きくすることにより、飛沫4aの拡散範囲を最大限小さくすることができる。
【0097】
又、遮蔽板30を液滴射出装置20に固定可能な固定部材40を更に備えることで、固定部材40を設けない場合と比較して、遮蔽板30を液滴射出装置20に強固に固定し易くなる。
【0098】
又、固定部材40が、射出ヘッド20A及び遮蔽板30の双方における射出面22の法線と直交する方向に位置する側端部23,33を覆う第一壁部41と、遮蔽板30の第一主面32における開口部31の外周の外縁部34を覆う第二壁部42とを備えることで、遮蔽板30を射出ヘッド20Aに強固に固定し、且つ、射出ヘッド20A及び遮蔽板30の前後左右上下方向(xyz方向)の相対移動を簡単な構成で規制することができる。
【0099】
又、液滴射出装置20がインク4iを射出可能な複数の射出ヘッド20Aを備え、遮蔽板30が複数の射出ヘッド20Aごとに複数設けられ、固定部材40が遮蔽板30を複数の射出ヘッド20Aごとに固定可能に複数設けられることで、個々の射出ヘッド20Aと一対一の関係で遮蔽板30及び固定部材40の位置決めができるため、複数の射出ヘッド20Aに対応する大きさの遮蔽板及び固定部材が設けられる場合と比較して、射出ヘッド20A、遮蔽板30及び固定部材40の相対位置がずれることを抑制することができる。
【0100】
又、遮蔽板30が射出面22に当接することで、遮蔽板30が射出面22から離反する場合と比較して、射出ヘッド20A及び遮蔽板30の前後方向(x方向)の相対移動を規制し易くなる。
【0101】
又、開口部31の直径d1を射出孔21の直径d2よりも大きくすることで、射出孔21から射出されるインク4iが開口部31に触れることを回避することができる。
【0102】
本実施形態に係る欠陥検査システム10は、長尺帯状の光学フィルムF10Xを搬送する搬送ライン9と、搬送ライン9で搬送される光学フィルムF10Xの欠陥検査を行う欠陥検査装置2と、欠陥検査の結果に基づいて欠陥11の位置にインク4iを射出することによりマーク12を印字可能なマーキング装置4と、を備えるものである。
【0103】
本実施形態によれば、上述したマーキング装置4を備えることで、射出孔21からインク4iが射出される際に飛沫4aが飛散しても、飛沫4aが光学フィルムF10Xの欠陥箇所以外の領域に付着することを抑制し、製品の歩留まりを向上することができる。又、欠陥検査の結果に基づいて欠陥11の位置にインク4iを射出することによりマーク12を印字可能なマーキング装置4を備えることで、欠陥の位置に合わせてマーク12を印字できるため、飛沫4aが光学フィルムF10Xの欠陥箇所以外の領域に付着することを効果的に抑制し、製品の歩留まりをより一層向上することができる。
【0104】
又、マーキング装置4が搬送ライン9で鉛直方向と平行な方向に搬送される光学フィルムF10Xに対して鉛直方向と直交する水平方向からインク4iを射出することで、マーキング装置4が水平方向に搬送される光学フィルムF10Xに対して鉛直方向で下方にインク4iを射出する場合と比較して、重力の影響で射出孔21からインク4iが自然に垂れることを抑制することができる。
【0105】
本実施形態に係るフィルム製造装置1は、上述の欠陥検査システム10を備えるものである。
【0106】
本実施形態によれば、上述した欠陥検査システム10を備えることで、射出孔21からインク4iが射出される際に飛沫4aが飛散しても、飛沫4aが光学フィルムF10Xの欠陥箇所以外の領域に付着することを抑制し、製品の歩留まりを向上することができる。
又、欠陥の位置に合わせてマーク12を印字することで、飛沫4aが光学フィルムF10Xの欠陥箇所以外の領域に付着することを効果的に抑制し、製品の歩留まりをより一層向上することができる。
【0107】
本実施形態に係るフィルム製造方法は、上述の欠陥検査システム10を用いてマーキングする工程を含むものである。
【0108】
本実施形態によれば、上述のマーキング工程を含むことで、射出孔21からインク4iが射出される際に飛沫4aが飛散しても、飛沫4aが光学フィルムF10Xの欠陥箇所以外の領域に付着することを抑制し、製品の歩留まりを向上することができる。又、欠陥の位置に合わせてマーク12を印字することで、飛沫4aが光学フィルムF10Xの欠陥箇所以外の領域に付着することを効果的に抑制し、製品の歩留まりをより一層向上することができる。
【0109】
ところで、射出孔からインクがされる際に飛沫が飛散する因子としては、(A1)液滴量、(A2)インク粘度などが考えられる。
【0110】
以下、上記因子について説明する。
液滴量が微小であれば、射出孔からインクが射出される際に飛沫がほとんど飛散しないか、又は飛沫が飛散したとしても光学フィルムを汚染するほどの影響は少ないと考えられる。一方、液滴量が多いと、射出孔からインクが射出される際に飛沫が飛散し、飛散した飛沫が光学フィルムを汚染することが本発明者の検討によって明らかになっている。
【0111】
例えば、市販のインクジェットプリンターでは、液滴量は1×10-6μL程度であり微小であるため、射出孔からインクが射出される際に飛沫がほとんど飛散しないか、又は飛沫が飛散したとしても光学フィルムを汚染するほどの影響は少ないと考えられる。一方、本実施形態に係る液滴射出装置20では、液滴量は0.166μL程度であり、市販のインクジェットプリンターと比較するとかなり多いため、射出孔からインクが射出される際に飛沫が飛散し、飛散した飛沫が光学フィルムを汚染することがある。
【0112】
又、インク粘度が大きければ、射出孔からインクが射出される際に飛沫がほとんど飛散しないと考えられる。一方、インク粘度が小さいと、射出孔からインクが射出される際に飛沫が飛散し、飛散した飛沫が光学フィルムを汚染することが本発明者の検討によって明らかになっている。
【0113】
例えば、市販のインクジェットプリンターでは、インク粘度は1.17×10-3Pa・s程度である。一方、本実施形態に係る液滴射出装置20では、インク粘度は0.89×10-3Pa・s程度であり、市販のインクジェットプリンターと比較して小さいため、射出孔からインクが射出される際に飛沫が飛散し、飛散した飛沫が光学フィルムを汚染することがある。
【0114】
上記因子(A1)、(A2)等により射出孔からインクが射出される際に飛沫が飛散した場合であっても、本実施形態によれば、遮蔽板30に、射出孔21と対向する位置に開口すると共に、射出面22の法線と交差する方向に飛散する飛沫4aを遮る内壁面31aを有する開口部31を形成することで、遮蔽板30を設けずに液滴射出装置20からそのままインク4iを射出する場合と比較して、射出面22の法線と交差する方向に飛散する飛沫4aの拡散範囲、具体的には飛沫4aが光学フィルムF10Xに付着したときのマーク12を中心とする飛散径L2(
図9参照)を小さくすることができるため、飛沫4aが光学フィルムF10Xの欠陥箇所以外の領域に付着することを効果的に抑制し、製品の歩留まりをより一層向上することができる。
【0115】
以下、実施形態の変形例について説明する。以下の変形例において、第一実施形態と共通する構成要素については、同じ符号を付し、その詳細な説明は省略する。
【0116】
(固定部材の第一変形例)
図10は、固定部材の第一変形例を示す図であり、
図8に相当する断面図である。
上記実施形態では、固定部材40が遮蔽板30とは別部材で形成される例を挙げた。これに対し、本変形例では、
図10に示すように、固定部材140が遮蔽板130と同一の部材により一体に形成される。
【0117】
固定部材140は、遮蔽板130と共に射出ヘッド20Aに固定される。固定部材140は、遮蔽板130と、側壁部141とを備える。例えば、固定部材140は、SUS等の金属板により形成される。
側壁部141は、射出ヘッド20Aにおける射出面22の法線と直交する方向に位置する側端部23を覆う。側壁部141は、前後方向(x方向)に延びる矩形筒状をなす。側壁部141は、射出ヘッド20Aの上下方向(z方向)及び幅方向(y方向)の側端部23における射出面22側の部分に当接する。
【0118】
遮蔽板130は、側壁部141の前端(+x方向端)からz方向内側に向けて延びる矩形枠状をなす。遮蔽板130には、射出孔21と対向する位置に開口すると共に、射出面22の法線と交差する方向に飛散する飛沫4aを遮る内壁面131aを有する開口部131が形成される。遮蔽板130は、射出面22に当接する。言い換えると、遮蔽板130の第二主面135は、射出面22と同一平面に配置される。
【0119】
例えば、側壁部141は、ボルト等の締結部材により射出ヘッド20Aに締結される。
これにより、射出ヘッド20A及び遮蔽板30の上下方向(z方向)、幅方向(y方向)及び前後方向(x方向)の相対移動が規制される。
【0120】
本変形例によれば、固定部材140が遮蔽板130と一体に形成され、射出ヘッド20Aにおける射出面22の法線と直交する方向に位置する側端部23を覆う側壁部141を備えることで、遮蔽板130を射出ヘッド20Aに強固に固定し、且つ、射出ヘッド20A及び遮蔽板130の前後左右上下方向(xyz方向)の相対移動を簡単な構成で規制することができる。又、固定部材40が遮蔽板30とは別部材で形成される場合と比較して、部品点数を削減することができ、装置構成の簡素化を図ることができる。
【0121】
(固定部材の第二変形例)
図11は、固定部材の第二変形例を示す図であり、
図8に相当する断面図である。
上記第一変形例では、遮蔽板130が射出面22に当接する例を挙げた。これに対し、本変形例では、
図11に示すように、遮蔽板130は射出面22から離反する。具体的には、遮蔽板130の第二主面135は、射出面22よりも前方(+x方向)に配置される。
【0122】
本変形例によれば、遮蔽板130を射出面22から離反することで、遮蔽板130と射出面22との間隔を調整することにより飛沫4aの拡散範囲を調整できるため、飛沫4aが光学フィルムF10Xの欠陥箇所以外の領域に付着することを抑制することができる。
例えば、遮蔽板130と射出面22との間隔を、遮蔽板130が光学フィルムF10Xに接しない範囲で可能な限り大きくすることにより、飛沫4aの拡散範囲を最大限小さくすることができる。又、遮蔽板130を射出面22に当接する場合と比較して、遮蔽板130の厚みt1を調整しなくても、遮蔽板130と射出面22との間隔を調整するだけで飛沫4aの拡散範囲を調整できるため、設計の自由度が向上する。
【0123】
(遮蔽部材の変形例)
図12は、遮蔽部材の変形例を示す図であり、
図8に相当する断面図である。
上記実施形態では、遮蔽部材として射出面22の法線と平行な方向に厚みを有する遮蔽板30を備える例を挙げた。これに対し、本変形例では、
図12に示すように、遮蔽部材として射出面22の法線と平行な方向に延びる筒部材230を備える。
【0124】
筒部材230には、射出孔21と対向する位置に開口する開口部231が形成される。
図12に示すように、開口部231は、インクが射出される射出通路Ia(
図9参照)に臨む内壁面231aを有する。開口部231の内壁面231aは、射出孔21からインクが射出される際に射出面22の法線と交差する方向に飛散する飛沫4a(
図9参照)を遮る。
開口部231の内壁面231aは、射出経路Iaを中心軸とする円筒状をなす。開口部231の直径(筒部材230の内径)は、射出孔21の直径よりも大きい。
筒部材230は、射出面22に当接する。言い換えると、筒部材230の端面235(第二主面)は、射出面22と同一平面に配置される。
【0125】
本変形例によれば、射出面22の法線と平行な方向に延びる筒部材230を備えることで、筒部材230の長さ(x方向の長さ)を調整することにより飛沫4aの拡散範囲を調整できるため、飛沫4aが光学フィルムF10Xの欠陥箇所以外の領域に付着することを抑制することができる。例えば、筒部材230の長さを、筒部材230が光学フィルムF10Xに接しない範囲で可能な限り大きくすることにより、飛沫4aの拡散範囲を最大限小さくすることができる。
【0126】
又、開口部231の直径を射出孔21の直径よりも大きくすることで、射出孔21から射出されるインク4iが開口部231に触れることを回避することができる。
【0127】
(第二実施形態)
以下、本発明の第二実施形態に係るマーキング装置の構成について説明する。
図13は、第二実施形態に係るマーキング装置204を示す斜視図である。
図14は、
図13の要部拡大図を含み、第二実施形態に係るマーキング装置204における飛散規制部材50の作用を説明するための図である。尚、
図14においては便宜上、固定壁部53,54の図示を省略する。本実施形態において、第一実施形態と共通する構成要素については、同じ符号を付し、その詳細な説明は省略する。
【0128】
第一実施形態においては、
図6に示したように、マーキング装置4が、液滴射出装置20と、遮蔽板30と、固定部材40とを備える例を挙げた。これに対し、本実施形態においては、
図13に示すように、マーキング装置204は、飛散規制部材50を更に備える。
【0129】
図14に示すように、飛散規制部材50は、射出面22と光学フィルムF10Xとの間に設けられる。具体的には、飛散規制部材50は、遮蔽板30よりも前方において固定部材40と光学フィルムF10Xとの間に設けられる。飛散規制部材50は、射出孔21よりインク4iが射出されてから光学フィルムF10Xに着弾するまでに飛散する飛沫を遮断する。前記飛沫は、射出孔21からインク4iが射出される際に飛散する第一の飛沫4aと、インク4iが光学フィルムF10Xに着弾する際に飛散する第二の飛沫4bとの少なくとも一方を含む。第一の飛沫4a及び第二の飛沫4bは、印字対象に対し特に影響が大きい。
【0130】
ここで、射出孔21よりインク4iが射出されてから光学フィルムF10Xに着弾するまでに飛散する飛沫としては、インク射出、着弾時に発生する飛沫4a,4b以外にも、インク4iが射出孔21から光学フィルムF10Xへ向かう飛行中に飛散する飛沫も挙げられる。しかし、このインク4iが飛行中に飛散する飛沫は、インク射出、着弾時に発生する飛沫4a,4bと比べると発生する数は少なく、飛沫自体の大きさも非常に小さいため、印字対象を汚染するほどの影響は少ないと考えられる。
【0131】
尚、第一の飛沫4aは、遮蔽板30の開口部31の内壁面31aに付着せずに、開口部31を通過して空中を浮遊するものを含む。又、インク4iが飛行中に飛散する飛沫は、第一の飛沫4aと同様の挙動をとる。
【0132】
飛散規制部材50には、射出面22の法線と直交する方向に広がる遮断面50fが形成される。飛散規制部材50において、射出面22側の遮断面50fは、第一の飛沫4aが光学フィルムF10X側に移動することを規制し、光学フィルムF10X側の遮断面50fは、第二の飛沫4bが射出面22側に移動することを規制する。すなわち、飛散した第一の飛沫4aの少なくとも一部は、飛散規制部材50における射出面22側の遮断面50fに付着し、飛散した第二の飛沫4bの少なくとも一部は、飛散規制部材50における光学フィルムF10X側の遮断面50fに付着する。
【0133】
尚、遮断面50fは、射出面22の法線と直交する方向に広がることに限らず、射出面22の法線と交差する方向に広がっていてもよい。例えば、遮断面50fは、第一の飛沫4a及び第二の飛沫4bを効果的に遮断する観点からは、光学フィルムF10Xとの対向面積が最も大きくなるよう、フィルム搬送方向と平行となる方向且つ、射出面50fの法線に対して直交する方向に広がることが好ましい。尚、設備レイアウトの関係から上記関係を保つことができない場合は、フィルム搬送方向に対してできるだけ平行となるよう、遮断面50fと射出面22の法線とのなす角度を調整してもよい。
【0134】
図13に示すように、飛散規制部材50は、飛散規制板51,52と、固定壁部53,54とを備える。
飛散規制板51,52は、射出面22の法線と平行な方向(x方向)に厚みを有する。
本実施形態では、飛散規制板51,52の厚みは3mm程度とする。尚、飛散規制板51,52の厚みは、適宜必要に応じて設定してもよく、第一の飛沫4a及び第二の飛沫4bを遮断可能な程度に設定されていればよい。
【0135】
飛散規制板51,52は、フィルム幅方向(
図13に示すy方向)に長辺を有し且つフィルム搬送方向(
図13に示すz方向)に短辺を有する長方形状とされる。本実施形態では、飛散規制板51,52の長辺の長さはフィルム幅に相当する1600mm程度とし、飛散規制板51,52の短辺の長さは50mm程度とする。
【0136】
図14に示すように、第一飛散規制板51は、インク4iが射出される射出通路Iaを挟んで一方側に配置される。第二飛散規制板52は、射出通路Iaを挟んで他方側に配置される。第一飛散規制板51は、鉛直方向で射出通路Iaよりも上方に配置され、第二飛散規制板52は、鉛直方向で射出通路Iaよりも下方に配置される。第一飛散規制板51及び第二の飛散規制板52は、射出通路Iaを挟んで隣り合う位置に配置される。第一飛散規制板51には、射出面22の法線と直交する方向に広がる第一の遮断面51fが形成され、第二飛散規制板52には、第一の遮断面51fと平行に広がる第二の遮断面52fが形成される。
【0137】
図13に示すように、第一飛散規制板51及び第二飛散規制板52が離反する間隔s1(以下「スリット間隔」という。)は、射出孔21の直径d2(
図9参照)よりも大きい。例えば、スリット間隔s1は、好ましくは2mm以上且つ10mm以下の範囲の値、より好ましくは2mm以上且つ5mm以下の範囲の値とする。この理由は、スリット間隔s1を小さくしすぎるとインク4iがスリット間隔s1を通らない、すなわちインク4iが第一飛散規制板51及び第二飛散規制板52に触れる可能性があり、スリット間隔s1を大きくしすぎると射出孔21から第一の飛沫4aが広範囲に広がる可能性があるからである。本実施形態では、スリット間隔s1は5mm程度とする。尚、射出孔21の直径d2は1mm程度とする。
【0138】
第一固定壁部53は、上壁部53aと、側壁部53bとを備える。第一固定壁部53は、第一飛散規制板51と一体に形成される。第一固定壁部53の上壁部53aは、第一飛散規制板51の上端に一体に繋がると共に、後側(-x方向側)ほど上方に位置するように傾斜する。第一固定壁部53の側壁部53bは、第一飛散規制板51の左右側端及び上壁部53aの左右側端に一体に繋がると共に、後側(-x方向側)ほど上方に位置するように傾斜した後、後方に屈曲して延びる。これにより、第一飛散規制板51の支持剛性を向上すると共に、第一の飛沫4aの上方及び左右側方への移動を規制することができる。
【0139】
例えば、第一固定壁部53は、ボルト等の締結部材により射出ヘッド20Aに締結される。これにより、射出ヘッド20A、第一固定壁部53及び第一飛散規制板51の上下方向(z方向)、幅方向(y方向)及び前後方向(x方向)の相対移動が規制される。
【0140】
第二固定壁部54は、下壁部54aと、側壁部54bとを備える。第二固定壁部54は、第二飛散規制板52と一体に形成される。第二固定壁部54の下壁部54aは、第二飛散規制板52の下端に一体に繋がると共に、後方(-x方向)に延びる。第二固定壁部54の側壁部54bは、第二飛散規制板52下部の左右側端及び下壁部54aの左右側端に一体に繋がると共に、下壁部54aの後端に至るまで後方に延びる。これにより、第二飛散規制板52の支持剛性を向上すると共に、第一の飛沫4aの下方及び左右側方への移動を規制することができる。
【0141】
例えば、第二固定壁部54は、ボルト等の締結部材により射出ヘッド20Aに締結される。これにより、射出ヘッド20A、第二固定壁部54及び第二飛散規制板52の上下方向(z方向)、幅方向(y方向)及び前後方向(x方向)の相対移動が規制される。
【0142】
飛散規制部材50の光学フィルムF10X側の遮断面50fは、光学フィルムF10Xから離反する。例えば、飛散規制部材50の光学フィルムF10X側の遮断面50fと光学フィルムF10Xとの間の距離(以下「遮断面・光学フィルム間距離」という。)は、好ましくは10mm以下の値、より好ましくは1mm以上且つ5mm以下の値とする。この理由は、遮断面・光学フィルム間距離を小さくしすぎると飛散規制部材50が光学フィルムF10Xに接する可能性があり、遮断面・光学フィルム間距離を大きくしすぎると遮断面50fにより第二の飛沫4bの移動を規制できない可能性があるからである。本実施形態では、遮断面・光学フィルム間距離は3mm程度とする。
【0143】
飛散規制部材50の射出面22側の遮断面50fは、射出面22から離反する。例えば、飛散規制部材50の射出面22側の遮断面50fと射出面22との間の距離(以下「遮断面・射出面間距離」という。)は、3mm以上の値とする。本実施形態では、遮断面・射出面間距離は10mm程度とする。この理由は、遮断面・射出面間距離を小さくしすぎると遮断面50fにより第二の飛沫4bの移動を規制できない可能性があり、遮断面・射出面間距離を大きくしすぎるとスリット間隔s1を大きくする必要があるからである。
【0144】
例えば、飛散規制部材50は、SUS等の金属板、又はアクリル板及びポリプロピレン板(PP板)等のプラスチック板により形成される。本実施形態では、飛散規制部材50は、アクリル板により形成される。尚、飛散規制部材50は、インクに対し反応しない板材により形成してもよい。これにより、飛散規制部材50のインクによる腐食を抑制できるため、飛散規制部材50の耐食性を向上できる。
【0145】
本実施形態によれば、射出面22と光学フィルムF10Xとの間に、射出孔21からインク4iが射出される際に飛散する第一の飛沫4aと、インク4iが光学フィルムF10Xに着弾する際に飛散する第二の飛沫4bとの少なくとも一方を遮断可能な飛散規制部材50を設け、飛散規制部材50に、射出面22の法線と直交する方向に広がる遮断面50fを形成することで、飛散規制部材50を設けずに液滴射出装置20からそのままインク4iを射出する場合と比較して、射出面22と光学フィルムF10Xとの間で第一の飛沫4aが光学フィルムF10X側に移動することを規制すると共に、第二の飛沫4bが射出面22側に移動することを規制することができるため、射出孔21からインク4iが射出される際に第一の飛沫4aが飛散したり、インク4iが光学フィルムF10Xに着弾する際に第二の飛沫4bが飛散したりしても、第一の飛沫4a及び第二の飛沫4bが光学フィルムF10Xの欠陥箇所以外の領域に付着することを抑制し、製品の歩留まりを向上することができる。
【0146】
又、飛散規制部材50が、射出面22の法線と平行な方向(x方向)に厚みを有する飛散規制板51,52を備えることで、飛散規制板51,52の厚みを調整することにより飛散規制板51,52の剛性を向上することができ、第一の飛沫4a及び第二の飛沫4bを効果的に遮断することができる。
【0147】
又、飛散規制部材50が、インク4iが射出される射出通路Iaを挟んで一方側に配置される第一飛散規制板51と、射出通路Iaを挟んで他方側に配置される第二飛散規制板52とを備えることで、射出通路Iaを挟んで両側に飛散する第一の飛沫4a及び第二の飛沫4bを簡単な構成で効果的に遮断することができる。
【0148】
又、第一飛散規制板51が鉛直方向で射出通路Iaよりも上方に配置され、第二飛散規制板52が鉛直方向で射出通路Iaよりも下方に配置されることで、射出通路Iaを挟んで上下両側に飛散する第一の飛沫4a及び第二の飛沫4bを簡単な構成で効果的に遮断することができる。
【0149】
又、第一飛散規制板51には、射出面22の法線と直交する方向に広がる第一の遮断面51fが形成され、第二飛散規制板52には、第一の遮断面51fと平行に広がる第二の遮断面52fが形成されることで、第一の遮断面51f及び第二の遮断面52fが互いに交差する場合と比較して、射出面22と光学フィルムF10Xとの間における第一の飛沫4aの光学フィルムF10X側への移動と、第二の飛沫4bの射出面22側への移動とを、何れか一方の規制に片寄ることなく効果的に規制することができる。
【0150】
又、スリット間隔s1を射出孔21の直径d2よりも大きくすることで、インク4iが第一飛散規制板51及び第二飛散規制板52に触れることを回避することができる。
【0151】
尚、上記実施形態では、第一飛散規制板51及び第二の飛散規制板52を、射出通路Iaを挟んで両側に配置する例を挙げて説明したが、これに限らない。例えば、飛散規制板は、鉛直方向でインク4iが射出される射出通路Iaよりも下方にのみ配置されてもよい。これにより、第一飛散規制板51及び第二の飛散規制板52を、射出通路Iaを挟んで両側に配置する場合と比較して、部品点数を削減することにより簡単な構成としてコスト低減を図ると共に、重力の影響で射出通路Iaよりも下方に飛散する第一の飛沫4a及び第二の飛沫4bを選択的に遮断することができる。特に、ドット径が大きいと(液滴量が多いと)、光学フィルムF10Xを上下方向に搬送する場合、下方に飛散する飛沫が多くなるため、飛散規制板を射出通路Iaよりも下方にのみ配置する実益が大きくなる。
【0152】
ところで、インクが光学フィルム(印字対象)に着弾する際に飛沫が飛散する因子としては、(B1)ドット径(液滴量)、(B2)インク粘度、(B3)印字対象、(B4)ライン速度などが考えられる。
【0153】
以下、上記因子について説明する。
ドット径が極めて小さければ(液滴量が微小であれば)、インクが印字対象に着弾する際に飛沫がほとんど飛散しないか、又は飛沫が飛散したとしても印字対象を汚染するほどの影響は少ないと考えられる。一方、ドット径が大きいと(液滴量が多いと)、インクが印字対象に着弾する際に飛沫が飛散し、飛散した飛沫が印字対象を汚染することが本発明者の検討によって明らかになっている。
【0154】
例えば、市販のインクジェットプリンターでは、ドット径は20μm程度と極めて小さく、液滴量は1×10-6μL程度と推定され、インクが印字対象に着弾する際に飛沫がほとんど飛散しないか、又は飛沫が飛散したとしても印字対象を汚染するほどの影響は少ないと考えられる。一方、本実施形態に係る液滴射出装置20では、ドット径は1mm以上且つ10mm以下の範囲の値であり、液滴量は0.166μL程度と推定され、市販のインクジェットプリンターと比較すると、ドット径がかなり大きいため(液滴量がかなり多いため)、インクが印字対象に着弾する際に飛沫が飛散し、飛散した飛沫が印字対象を汚染することがある。
【0155】
又、インク粘度が大きければ、インクが印字対象に着弾する際に飛沫がほとんど飛散しないと考えられる。一方、インク粘度が小さいと、インクが印字対象に着弾する際に飛沫が飛散し、飛散した飛沫が印字対象を汚染することが本発明者の検討によって明らかになっている。
【0156】
例えば、市販のインクジェットプリンターでは、インク粘度は1.17×10-3Pa・s程度である。一方、本実施形態に係る液滴射出装置20では、インク粘度は0.89×10-3Pa・s程度であり、市販のインクジェットプリンターと比較して小さいため、インクが印字対象に着弾する際に飛沫が飛散し、飛散した飛沫が印字対象を汚染することがある。
【0157】
又、印字対象が記録紙などの紙媒体であれば、インクが印字対象に着弾する際に飛沫がほとんど飛散しないと考えられる。一方、印字対象がPVA及びTACを含む光学フィルムであると、インクが印字対象に着弾する際に飛沫が飛散し、飛散した飛沫が印字対象を汚染することが本発明者の検討によって明らかになっている。
【0158】
例えば、市販のインクジェットプリンターでは、印字対象は紙媒体である。一方、本実施形態に係る液滴射出装置20では、印字対象は光学フィルムであり、インクが印字対象に着弾する際に飛沫が飛散し、飛散した飛沫が印字対象を汚染することがある。
【0159】
又、ライン速度が小さければ、インクが印字対象に着弾する際に飛沫がほとんど飛散しないと考えられる。一方、ライン速度が大きいと、インクが印字対象に着弾する際に飛沫が広範囲に飛散し、飛散した飛沫が印字対象を汚染することが本発明者の検討によって明らかになっている。
【0160】
例えば、市販のインクジェットプリンターでは、ライン速度は3m/min程度と小さい。一方、本実施形態では、ライン速度は30m/min以下の値であり、光学フィルムF10Xにマーク12を印字可能な範囲としては50m/min以下の値と上限が大きく、インクが印字対象に着弾する際に飛沫が広範囲に飛散し、飛散した飛沫が印字対象を汚染することがある。
【0161】
上記因子(A1)、(A2)等により射出孔からインクが射出される際に飛沫が飛散した場合であっても、又、上記因子(B1)~(B4)等によりインクが印字対象に着弾する際に飛沫が飛散した場合であっても、本実施形態によれば、射出面22と光学フィルムF10Xとの間に、射出孔21からインク4iが射出される際に飛散する第一の飛沫4aと、インク4iが光学フィルムF10Xに着弾する際に飛散する第二の飛沫4bとの少なくとも一方を遮断可能な飛散規制部材50を設け、飛散規制部材50に、射出面22の法線と直交する方向に広がる遮断面50fを形成することで、飛散規制部材50を設けずに液滴射出装置20からそのままインク4iを射出する場合と比較して、射出面22と光学フィルムF10Xとの間で第一の飛沫4aが光学フィルムF10X側に移動することを規制すると共に、第二の飛沫4bが射出面22側に移動することを規制することができるため、第一の飛沫4a及び第二の飛沫4bが光学フィルムF10Xの欠陥箇所以外の領域に付着することを効果的に抑制し、製品の歩留まりをより一層向上することができる。
【0162】
(第三実施形態)
以下、本発明の第三実施形態に係るマーキング装置の構成について説明する。
図15は、第三実施形態に係るマーキング装置304を示す斜視図である。
図16は、
図15の要部拡大図を含み、第三実施形態に係る吸引装置60の作用を説明するための図である。尚、便宜上、
図15においては第二吸引機構62(下側吸引機構)のみを図示し、
図16においては第一吸引機構61及び第二吸引機構62を図示する。又、
図15においては便宜上、光学フィルムF10Xを二点鎖線で示す。本実施形態において、第一実施形態と共通する構成要素については、同じ符号を付し、その詳細な説明は省略する。
【0163】
第一実施形態においては、
図6に示したように、マーキング装置4が、液滴射出装置20と、遮蔽板30と、固定部材40とを備える例を挙げた。これに対し、本実施形態においては、
図15に示すように、マーキング装置304は、吸引装置60を更に備える。
【0164】
図16に示すように、吸引装置60は、射出面22と光学フィルムF10Xとの間に設けられる。吸引装置60は、射出孔21からインク4iが射出される際に飛散する第一の飛沫4aと、インク4iが光学フィルムF10Xに着弾する際に飛散する第二の飛沫4bとの少なくとも一方を吸引する。
【0165】
図15に示すように、本実施形態では、吸引装置60は、第二吸引機構62を備える。
第二吸引機構62は、鉛直方向でインク4iが射出される射出通路Iaよりも下方にのみ配置される。第二吸引機構62には、射出経路Iaに臨むように前上方に傾斜する吸引面62fが形成される。
【0166】
第二吸引機構62の吸引面62fには、第一の飛沫4a及び第二の飛沫4bを吸引する吸引孔62hが形成される。吸引孔62hは、吸引面62fに、吸引面62fの幅方向(y方向)に沿うように長手を有して延びる。
図15では一例として、吸引面62fの幅方向(y方向)に沿うように延びる吸引孔62hを図示しているが、吸引孔62hの配置はこれに限らず、複数の吸引孔が吸引面62fの幅方向(y方向)に並んで一列に配置されるように、吸引孔62hを吸引面62fの幅方向(y方向)で分割する等、適宜必要に応じて設定可能である。
【0167】
例えば、吸引面62fと光学フィルムF10Xとの間の距離J1(以下「吸引面・光学フィルム間距離」という。)は、10mm以上の値とする。この理由は、吸引面・光学フィルム間距離J1を小さくしすぎると、吸引面62fと光学フィルムF10Xとが接触する可能性があるからである。本実施形態では、吸引面・光学フィルム間距離J1は10mm程度とする。尚、吸引面・光学フィルム間距離J1は、吸引面62fの下端と光学フィルムF10Xの印字面とを印字面の法線方向(x方向)で結んだ線分の長さとする。
【0168】
例えば、吸引面62fと固定部材40との間の距離J2(以下「吸引面・固定部材間距離」という。)は、30mm以上の値とする。この理由は、吸引面・固定部材間距離J2を小さくしすぎると、吸引面62fと固定部材40とが接触する可能性があるからである。本実施形態では、吸引面・固定部材間距離J2は30mm程度とする。尚、吸引面・固定部材間距離J2は、吸引面62fの上端と固定部材40の下端とを固定部材40の下面の法線方向(z方向)で結んだ線分の長さとする。
【0169】
例えば、吸引孔62hと射出孔21との間の距離J3(以下「吸引孔・射出孔間距離」という。)は、好ましくは50mm以下の値、より好ましくは15mm以上且つ50mm以下の範囲の値とする。本実施形態では、吸引孔・射出孔間距離J3は45mm程度とする。尚、吸引孔・射出孔間距離J3は、吸引面62fにおける吸引孔62hの中心と射出面22における射出孔21の中心とを結んだ線分の長さとする。
【0170】
例えば、吸引孔62hの長さは、吸引面62fの幅方向(y方向)の長さと同程度、具体的には吸引面62fの幅方向(y方向)の長さよりも第二吸引機構62の左右側壁の厚み分だけ小さい長さとする。尚、吸引孔62hの長さは、吸引孔62hの長手方向(y方向)の長さとする。
例えば、吸引孔62hの幅は、好ましくは50mm以下の値、より好ましくは5mm以上且つ20mm以下の範囲の値とする。本実施形態では、吸引孔62hの幅は10mm程度とする。尚、吸引孔62hの幅は、吸引孔62hの短手方向(吸引面62fの傾斜方向)の長さとする。
【0171】
例えば、吸引孔62hにより飛沫を吸引するときの風速(以下「吸引風速」という。)は、好ましくは2m/sec以上の値、より好ましくは5m/sec以上且つ7m/sec以下の範囲の値とする。本実施形態では、吸引風速は6.4m/secとする。尚、吸引風速は、インク4i(飛沫ではなく主滴)を引っ張らない範囲として、4m/sec以上且つ20m/sec以下の範囲の値とされる。
【0172】
吸引孔62hの大きさは、変更可能とされる。例えば、吸引面62fに、吸引孔62hの長手方向に沿うように移動可能なシャッター等の閉塞機構を設けることで、吸引孔62hの大きさを変更可能としてもよい。
【0173】
第二吸引機構62は、吸引面62fが射出経路Iaに臨むように前上方に傾斜して延びる形状をなす。具体的に、第二吸引機構62は、幅方向(y方向)に長手を有する長方形状をなす吸引面62fと、吸引面62fの左右側縁を上底として前上方に延びる台形状をなす左右側面64とを備える。第二吸引機構62の後端部(-x方向側端部)には、左右側面64の法線と平行に左右側方(y方向)に突出する支持軸65が設けられる。
【0174】
第二吸引機構62の左右側方には、第二吸引機構62を回動自在に支持可能な支持機構73が設けられる。第二吸引機構62の下方には、フィルム幅方向(y方向)に延びるステージ72が設けられる。支持機構73は、ステージ72に固定される支持台73aと、支持台73aに固定される支持板73bと、支持板73bの幅方向内側端部(+y方向側端部)から上方に延びる起立片73cとを備える。
【0175】
起立片73cには、起立片73cの厚み方向(y方向)に開口すると共に、上下に延びる長孔73hが形成される。起立片73cの長孔73hには、第二吸引機構62の支持軸65が挿通される。長孔73hの大きさは、支持軸65を上下移動可能且つ支持軸65の軸線回りに回動可能な大きさとされる。長孔73hへの挿通状態で、支持軸65は、起立片73cから左右側方に突出する。第二吸引機構62は、不図示の固定具により起立片73cに支持軸65を固定することで、上下移動及び支持軸65の軸線回りの回動が規制される。例えば、支持軸65の左右側端部にネジ山を形成し、支持軸65のネジ山にナット等を螺着し締め込むことで、第二吸引機構62の位置を規制してもよい。
【0176】
尚、図中符号71は、液滴射出装置20を支持する支持台である。支持台71は、液滴射出装置20の幅方向(y方向)に延びる。例えば、液滴射出装置20は、ボルト等の締結部材により支持台71に締結される。
【0177】
本実施形態によれば、射出面22と光学フィルムF10Xとの間に、射出孔21からインク4iが射出される際に飛散する第一の飛沫4aと、インク4iが光学フィルムF10Xに着弾する際に飛散する第二の飛沫4bとの少なくとも一方を吸引可能な吸引装置60を設けることで、吸引装置60を設けずに液滴射出装置20からそのままインク4iを射出する場合と比較して、射出面22と光学フィルムF10Xとの間を飛散する第一の飛沫4a及び第二の飛沫4bを吸引することができるため、射出孔21からインク4iが射出される際に第一の飛沫4aが飛散したり、インク4iが光学フィルムF10Xに着弾する際に第二の飛沫4bが飛散したりしても、第一の飛沫4a及び第二の飛沫4bが光学フィルムF10Xの欠陥箇所以外の領域に付着することを抑制し、製品の歩留まりを向上することができる。
【0178】
又、第二吸引機構62が、鉛直方向でインク4iが射出される射出通路Iaよりも下方にのみ配置されることで、吸引機構を、射出通路Iaを挟んで両側に配置する場合と比較して、部品点数を削減することにより簡単な構成としてコスト低減を図ると共に、重力の影響で射出通路Iaよりも下方に飛散する第一の飛沫4a及び第二の飛沫4bを選択的に吸引することができる。特に、ドット径が大きいと(液滴量が多いと)、光学フィルムF10Xを上下方向に搬送する場合、下方に飛散する飛沫が多くなるため、第二吸引機構62のみとする実益(吸引機構を射出通路Iaよりも下方にのみ配置する実益)が大きくなる。
【0179】
尚、上記実施形態では、第二吸引機構62を、鉛直方向でインク4iが射出される射出通路Iaよりも下方にのみ配置する例を挙げて説明したが、これに限らない。例えば、
図16に示すように、吸引装置60が、インク4iが射出される射出通路Iaを挟んで一方側に配置される第一吸引機構61と、射出通路Iaを挟んで他方側に配置される第二吸引機構62とを備えてもよい。すなわち、吸引機構61,62を、射出通路Iaを挟んで両側に配置してもよい。これにより、射出通路Iaを挟んで両側に飛散する第一の飛沫4a及び第二の飛沫4bを簡単な構成で効果的に吸引することができる。
【0180】
又、第一吸引機構61が鉛直方向で射出通路Iaよりも上方に配置され、第二吸引機構62(上記実施形態の第二吸引機構62に相当)が鉛直方向で射出通路Iaよりも下方に配置されてもよい。これにより、射出通路Iaを挟んで上下両側に飛散する第一の飛沫4a及び第二の飛沫4bを簡単な構成で効果的に吸引することができる。
【0181】
第一吸引機構61は、射出通路Iaの上方を飛散する第一の飛沫4a及び第二の飛沫4bを吸引し、第二の吸引機構62は、射出通路Iaの下方を飛散する第一の飛沫4a及び第二の飛沫4bを吸引する。第一吸引機構61により吸引された飛沫は、配管を経て矢印の方向Q1に移送され、第二吸引機構62により吸引された飛沫は、配管を経て矢印の方向Q2に移送され、それぞれ不図示のタンクに貯留される。
【0182】
(第四実施形態)
以下、本発明の第四実施形態に係るマーキング装置の構成について説明する。
図17は、第四実施形態に係るマーキング装置404を示す図であり、
図8に相当する断面を含む図である。本実施形態において、第一実施形態及び第一実施形態の第二変形例と共通する構成要素については、同じ符号を付し、その詳細な説明は省略する。
【0183】
第一実施形態においては、
図6に示したように、マーキング装置4が、液滴射出装置20と、遮蔽板30と、固定部材40とを備える例を挙げ、第一実施形態の第二変形例では、
図11に示したように、固定部材140が遮蔽板130と同一の部材により一体に形成される構成において、遮蔽板130を射出面22から離反する例を挙げた。これに対し、本実施形態においては、
図17に示すように、マーキング装置404は、液滴射出装置20と、固定部材440と、吸引装置460を備える。
【0184】
固定部材440は、遮蔽板430と同一の部材により一体に形成される。固定部材440は、遮蔽板430と共に射出ヘッド20Aに固定される。固定部材440は、遮蔽板430と、側壁部141とを備える。例えば、固定部材140は、SUS等の金属板により形成される。
【0185】
遮蔽板430は、射出面22から離反する。具体的には、遮蔽板430の第二主面435は、射出面22よりも前方(+x方向)に配置される。遮蔽板430を射出面22から離反することにより、遮蔽板430は上述した飛散規制部材としても機能するようになる。具体的に、遮蔽板430を射出面22から離反することにより、遮蔽板430の第二主面435(射出面22側の面)は、第一の飛沫4aが光学フィルムF10X側に移動することを規制し、遮蔽板430の第一主面432(光学フィルムF10X側の面)は、第二の飛沫4bが射出面22側に移動することを規制するようになる。
【0186】
遮蔽板430の開口部431における射出面22の側の縁部には、射出孔21に臨むように射出面22の法線に対して傾斜する傾斜面436aを有するテーパ部436が形成される。尚、遮蔽板430の開口部431における射出面22の側の縁部は、開口部431の内壁面431aと、遮蔽板430の第二主面435との境界部とする。
【0187】
本実施形態では、光学フィルムF10Xに接するガイドロール7が設けられる。本実施形態に係る液滴射出装置20は、光学フィルムF10Xを搬送する間に、ガイドロール7に光学フィルムF10Xを挟んで対向して配置される。液滴射出装置20は、光学フィルムF10Xのガイドロール7と接する位置とは反対側からインク4i(
図9参照)を射出する。
【0188】
光学フィルムF10Xは、ガイドロール7の外周面に40°以上且つ130°以下の角度範囲(以下「抱き角度θ」という。)で掛け合わされていることが好ましい。尚、抱き角度は、光学フィルムF10Xがガイドロール7の外周面に周方向で接触する部分の角度範囲をガイドロール7の中心角で表した値とする。
【0189】
この理由は、抱き角度θが40°未満であると、光学フィルムF10Xがガイドロール7の外周面上で滑り易くなり、光学フィルムF10Xに擦り傷等が生じる可能性があり、抱き角度θが130°を超えると、例えば表面保護フィルムと偏光フィルムとの間に気泡が噛み込み易くなるためである。
【0190】
また、光学フィルムF10Xにかかる張力が小さい場合は、抱き角度θを90°超える値とすることが好ましく、95°以上とすることがより好ましい。光学フィルムF10Xにかかる張力が小さいほどバタツキが生じ易くなるが、抱き角度θを95°以上とすることにより、光学フィルムF10Xにかかる張力が小さい場合であっても、光学フィルムF10Xに発生するバタツキを抑えることができる。一方、光学フィルムF10Xにかかる張力が大きい場合は、抱き角度θを90°未満とすることが好ましく、85°以下とすることがより好ましい。これにより、光学フィルムF10Xにかかる張力が大きい場合であっても、光学フィルムF10Xがガイドロール7の外周面に密着しすぎることを抑えることができる。
【0191】
尚、光学フィルムF10Xの搬送速度は、通常は9m/min以上且つ50m/min以下の範囲の値である。また、光学フィルムF10Xにかかる張力は、乾燥炉内で400N以上且つ1500N以下の範囲の値、乾燥炉外で200N以上且つ500N以下の範囲の値とされる。尚、光学フィルムF10Xの幅は、500mm以上且つ1500mm以下の範囲の値、光学フィルムF10Xの厚みは、10μm以上且つ300μm以下の範囲の値とされる。光学フィルムF10Xの幅が大きくなるほど、又、光学フィルムF10Xの厚みが薄くなるほどバタツキが生じ易くなる。
【0192】
例えば、ガイドロール7の外径は、100mm以上且つ150mm以下の範囲の値とすることが好ましい。この理由は、ガイドロール7の外径を大きくすると、抱き角度θに対するガイドロール7の外周面に接触する光学フィルムF10Xの面積が大きくなるため、光学フィルムF10Xに発生するバタツキを抑えることができるが、ガイドロール7の外径を大きくしすぎると、光学フィルムF10Xに上述した擦り傷及び気泡の噛み込み等が生じ易くなるためである。
【0193】
例えば、ガイドロール7の真円度は、好ましくは1.0mm以下の値、より好ましくは0.5mm以下の値とする。この理由は、ガイドロール7の真円度が小さいほど、ガイドロール7に接触する光学フィルムF10Xの振動を抑えることができるからである。
【0194】
例えば、ガイドロール7の外周面における表面粗さ(最大粗さRy)は、好ましくは100s以下の値、より好ましくは25s以下の値とする。この理由は、ガイドロール7の外周面における表面粗さ(最大粗さRy)が大きすぎると、光学フィルムF10Xに上述した擦り傷及び気泡の噛み込み等が生じ易くなるためである。
【0195】
また、光学フィルムF10Xに発生するバタツキをより効果的に抑える観点からは、ガイドロール7の上流側及び下流側にも、光学フィルムF10Xと接するガイドロールを追加で設けてもよい。また、追加するガイドロールに対して光学フィルムF10Xに抱き角度を持たせてもよい。
【0196】
ガイドロール7は、光学フィルムF10Xの搬送方向V1と交差する方向V2に進退可能とされる。例えば、ガイドロール7にシリンダ機構等を取り付けることで、ガイドロール7を前下方及び後上方等の斜め方向に移動可能としてもよい。これにより、通紙性、継ぎ目、ヘッド美装等の観点から作業性向上を図ることができる。
具体的に、通紙性の観点からは、搬送ライン9に光学フィルムF10が搬送されていない状態(通っていない状態)から光学フィルムF10を搬送する際(通す際)に、マーキング装置404とガイドロール7との距離を広げることにより、作業性が向上することを意味する。
次に,継ぎ目の観点から説明する。原反ロールR1,R2を交換した際、光学フィルムF10Xをテープ等でつなぐと継ぎ目が生じる。光学フィルムF10Xにおいて継ぎ目の部分の厚みは、通常の箇所の厚み(継ぎ目が無い部分の厚み)と比べて大きくなる。このような場合であっても、ガイドロール7を移動可能とすることにより、継ぎ目の部分とマーキング装置404との接触を回避し、搬送ライン9に光学フィルムF10Xを搬送させることができ、作業性が向上することを意味する。
尚、ヘッド美装とは、ヘッドの掃除を意味しており、ガイドロール7を移動可能とすることにより、作業空間を広げることができるため、作業性を向上することができる。
【0197】
尚、液滴射出装置20を、光学フィルムF10Xの搬送方向V1と交差する方向(例えば前後方向)に進退可能としてもよい。
【0198】
図17中符号Vaは、インク4iが射出される射出通路Ia(
図9参照)を含む、固定部材440とガイドロール7とが対向する部分(以下「対向部分」という。)を示す。
吸引装置460は、対向部分Vaを挟んで一方側に配置される第一吸引機構461と、対向部分Vaを挟んで他方側に配置される第二吸引機構462とを備える。すなわち、吸引機構461,462は、対向部分Vaを挟んで両側に配置される。具体的に、第一吸引機構461は、鉛直方向で対向部分Vaよりも上方に配置され、第二吸引機構462は、鉛直方向で対向部分Vaよりも下方に配置される。
【0199】
第一吸引機構461には、対向部分Vaに臨むように前下方に傾斜する吸引面461fが形成される。第二吸引機構462には、対向部分Vaに臨むように後下方に傾斜する吸引面462fが形成される。各吸引面461f,462fには、第一の飛沫4a及び第二の飛沫4bを吸引する吸引孔(不図示)が形成される。各吸引機構461,462は、各吸引面461f,462fが遮蔽板430の第一主面432とガイドロール7に接する光学フィルムF10Xとの間の隙間に入り込むように配置される。
【0200】
本実施形態によれば、遮蔽板430の開口部431における射出面22の側の縁部に、射出孔21に臨むように射出面22の法線に対して傾斜する傾斜面436aを有するテーパ部436を形成することで、第一の飛沫4aを傾斜面436aで受けることができるため、第一の飛沫4aが分裂することを回避することができる。仮に、遮蔽板430の開口部431における射出面22の側の縁部にテーパ部を形成しないと、開口部431の内壁面431aと、遮蔽板430の第二主面435との境界部に断面視で90°程度の角部が形成されるため、射出孔21からインク4iが射出される際に飛散する第一の飛沫4aが角部で分裂する可能性がある。
【0201】
又、吸引装置460が、対向部分Vaを挟んで一方側に配置される第一吸引機構461と、対向部分Vaを挟んで他方側に配置される第二吸引機構462とを備えることで、対向部分Vaを挟んで両側に飛散する第一の飛沫4a及び第二の飛沫4bを簡単な構成で効果的に吸引することができる。
【0202】
又、第一吸引機構461が鉛直方向で対向部分Vaよりも上方に配置され、第二吸引機構462が鉛直方向で対向部分Vaよりも下方に配置されることで、対向部分Vaを挟んで上下両側に飛散する第一の飛沫4a及び第二の飛沫4bを簡単な構成で効果的に吸引することができる。
【0203】
又、各吸引機構461,462を、各吸引面461f,462fが遮蔽板430の第一主面432とガイドロール7に接する光学フィルムF10Xとの間の隙間に入り込むように配置することで、吸引孔を射出経路Iaに近づけることができるため、射出面22と光学フィルムF10Xとの間を飛散する第一の飛沫4a及び第二の飛沫4bを効果的に吸引することができる。尚、吸引孔をインク4iの着弾位置に近づけることにより、第二の飛沫4bをより効果的に吸引することができる。
【0204】
又、光学フィルムF10Xを搬送する間に、液滴射出装置20を、光学フィルムF10Xに接するガイドロール7に光学フィルムF10Xを挟んで対向して配置することで、光学フィルムF10Xに発生するバタツキを抑えた状態で液滴射出装置20及び固定部材440を配置できるため、固定部材440の遮蔽板430と射出面22との間隔を、遮蔽板430が光学フィルムF10Xに接しない範囲で可能な限り小さくすることにより、飛沫4aの拡散範囲を最大限小さくすることができる。
又、吸引機構461,462の吸引面と対向部分Vaとの間隔を、吸引機構461,462が光学フィルムF10Xを吸い込まない範囲で可能な限り小さくすることにより、飛沫4a,4bを最大限吸収することができる。
尚、固定部材440(遮蔽板430)を備えない場合であっても、射出ヘッド20Aの射出孔21と光学フィルムF10Xとの間隔を、射出面22が光学フィルムF10Xに接しない範囲で可能な限り小さくすることにより、飛沫4aの拡散範囲を最大限小さくすることができる。
【0205】
本実施形態に係る欠陥検査システム410は、光学フィルムF10Xに接するガイドロール7を更に備え、マーキング装置404は、光学フィルムF10Xを挟んでガイドロール7に対向して配置されて、光学フィルムF10Xのガイドロール7と接する位置とは反対側からインク4iを射出するものである。
【0206】
本実施形態によれば、上述したガイドロール7を更に備えることで、光学フィルムF10Xに発生するバタツキを抑えた状態で液滴射出装置20及び固定部材440を配置できるため、固定部材440の遮蔽板430と射出面22との間隔を、遮蔽板430が光学フィルムF10Xに接しない範囲で可能な限り小さくすることにより、飛沫4aの拡散範囲を最大限小さくすることができる。
【0207】
尚、本実施形態では、遮蔽板430を平板状、すなわち遮蔽板430の第一主面432をyz平面と平行な面とする例を挙げて説明したが、これに限らない。例えば、遮蔽板のうちガイドロール7と対向する部分をガイドロール7とは反対側に凹むように断面視円弧状、すなわち遮蔽板の第一主面をガイドロール7の外周面に沿うように円弧状をなす面としてもよい。これにより、遮蔽板430を平板状とする場合と比較して、遮蔽板と光学フィルムF10Xとの間隔をより一層小さくすることができるため、飛沫4aの拡散範囲をより効果的に小さくすることができる。
【0208】
尚、本発明は、上記実施形態のものに必ずしも限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
【0209】
上記実施形態では、マーキング装置が搬送ライン9で鉛直方向と平行な方向に搬送される光学フィルムF10Xに対して鉛直方向と直交する水平方向からインク4iを射出する例を挙げて説明したが、これに限らない。例えば、マーキング装置が水平方向に搬送される光学フィルムF10Xに対して下方からインク4iを射出してもよい。この場合においても、マーキング装置が水平方向に搬送される光学フィルムF10Xに対して上方からインク4iを射出する場合と比較して、重力の影響で射出孔21からインク4iが自然に垂れることを抑制することができる。
又、上記実施形態では、マーキング装置からインク4iが射出される射出通路Iaを挟んで両側に飛散規制板や吸引機構が配置される例を挙げて説明したが、これに限らない。
例えば、光学フィルムF10Xの搬送により発生する風の向きやインク4iの射出通路Iaの方向により、射出通路Iaを挟んで一方側にインク4iの飛沫が集中する場合は、その一方側にのみ飛散規制板や吸引機構が配置されてもよい。
又、上記実施形態では、
図7等で示すような液滴射出装置において、複数の射出孔を有する射出ヘッドが、光学フィルムF10Xの幅方向に印字範囲をカバーするように複数配置する構成を例に挙げて説明したが、これに限らない。例えば、1~3個の射出孔を有する単独の射出ヘッドを有する液滴射出装置が、制御装置からの欠陥位置情報に応じて光学フィルムF10Xの幅方向および搬送方向に移動することで光学フィルムF10X上の欠陥位置に対して、インク4iを射出し、印字してもよい。なお、飛散規制板や吸引機構も液滴射出装置と共に欠陥位置へ移動し、インク4iの飛沫による光学フィルムへの汚染を防いでもよい。
【0210】
又、上記欠陥検査システム10は、フィルム製造装置1の一部に設けられた構成を一例として挙げて説明したが、これに限らない。上記欠陥検査システム10は、フィルム製造装置1とは別個独立に設けられていてもよい。例えば、フィルム製造装置1は上記欠陥検査システム10を備えず、フィルム製造装置1において製造される光学フィルムF10Xを、巻取部8で光学フィルムF10Xの原反ロールR2として芯材に巻き取った後、次工程へと送り、次工程における設備の一部に上記欠陥検査システム10が設けられていてもよい。
【0211】
尚、本発明が適用されるフィルムについては、上述した偏光フィルム、位相差フィルム及び輝度向上フィルムといった光学フィルムに必ずしも限定されるものではなく、マーキング装置による印字が行われるフィルムに対して本発明を幅広く適用することが可能である。
【0212】
以上、添付図面を参照しながら本発明に係る好適な実施の形態例について説明したが、本発明は係る例に限定されないことは言うまでもない。上述した例において示した各構成部材の諸形状や組み合わせ等は一例であって、本発明の主旨から逸脱しない範囲において設計要求等に基づき種々変更可能である。
【符号の説明】
【0213】
1…フィルム製造装置 2…欠陥検査装置 4,204,304,404…マーキング
装置 4a…飛沫 4b…飛沫 7…ガイドロール 9…搬送ライン 10,410…欠
陥検査システム 11…欠陥 12…情報 20…液滴射出装置 20A…射出ヘッド
21…射出孔 22…射出面 23…液滴射出装置の側端部 30,130,230,4
30…遮蔽部材、遮蔽板 31,131,231,431…開口部 31a,131a,
231a,431a…内壁面 32,432…第一主面(遮蔽板の射出面とは反対側の面
) 33…遮蔽板の側端部 34…遮蔽板の外縁部 40,140,440…固定部材
41…第一壁部 42…第二壁部 141,441…固定部材の側壁部 230…筒部材
436…テーパ部 436a…傾斜面 d1…開口部の直径 d2…射出孔の直径 F
10X…光学フィルム