IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社トクヤマの特許一覧

<>
  • 特許-窒化アルミニウムグリーンシート 図1
  • 特許-窒化アルミニウムグリーンシート 図2
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-10
(45)【発行日】2022-01-13
(54)【発明の名称】窒化アルミニウムグリーンシート
(51)【国際特許分類】
   C04B 35/634 20060101AFI20220105BHJP
   C04B 35/581 20060101ALI20220105BHJP
【FI】
C04B35/634 200
C04B35/581
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2018069242
(22)【出願日】2018-03-30
(65)【公開番号】P2019178042
(43)【公開日】2019-10-17
【審査請求日】2020-07-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000003182
【氏名又は名称】株式会社トクヤマ
(72)【発明者】
【氏名】姫野 雅孝
(72)【発明者】
【氏名】山本 泰幸
【審査官】小川 武
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-020453(JP,A)
【文献】特開2001-192271(JP,A)
【文献】特開平06-164080(JP,A)
【文献】特開平06-107465(JP,A)
【文献】特公平06-006503(JP,B2)
【文献】特開平09-087040(JP,A)
【文献】特開2007-261848(JP,A)
【文献】国際公開第2018/139405(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C04B 35/00-35/84
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
窒化アルミニウム粉末、焼結助剤、熱可塑性樹脂、可塑剤を含む窒化アルミニウムグリーンシートにおいて、
上記熱可塑性樹脂が、ポリビニルブチラール樹脂であり、
上記可塑剤が、ビス〔2-(2-ブトキシエトキシ)エチル〕アジペートまたはグリセリンジアセトモノラウレートである
ことを特徴とする、窒化アルミニウムグリーンシート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規な窒化アルミニウムグリーンシートに関する。詳しくは、窒化アルミニウムグリーンシートの状態で長期間保存していても、その柔軟性が低下しにくい、優れた保存安定性を有する窒化アルミニウムグリーンシートを提供する。
【背景技術】
【0002】
窒化アルミニウム基板は、その特性からIGBT基板、LED放熱基板などに利用されており、近年需要が伸びている。
【0003】
窒化アルミニウム基板となる窒化アルミニウム焼結体は、一般的に、以下の方法で製造される。先ず、窒化アルミニウム粉末、熱可塑性樹脂、焼結助剤、可塑剤及び溶剤等を混合し、得られた成形用組成物をシート状に成形し、溶剤を乾燥させて除去し、窒化アルミニウムグリーンシートを得る。次いで、該窒化アルミニウムグリーンシートに型を当て必要な大きさに打ち抜き、空気雰囲気中で450~650℃に加熱して熱可塑性樹脂等の有機成分を除去し、窒素等の非酸化性雰囲気中で1600~1900℃で0.5~10時間保持し、窒化アルミニウム焼結体を製造する(特許文献1参照)。
【0004】
上記窒化アルミニウムグリーンシートについて、その作製工程において引張りや曲げ等の応力が負荷されることから、このような応力に耐えられるように、可塑剤を使用し、該窒化アルミニウムシートに柔軟性を付与している。しかしながら、上記窒化アルミニウムグリーンシートを、グリーンシートの状態で保存しておくと、次第にその柔軟性が失われることを、本発明者等は確認した。そして、そのような窒化アルミニウムグリーンシートを打ち抜くと、バリや欠け等が発生し、その欠片が上記窒化アルミニウムグリーンシートに付着することにより、得られる窒化アルミニウム焼結体が異物付着不良で不良品になる場合があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2014-069993号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従って、本発明の目的は、窒化アルミニウムグリーンシートの状態で長期間保存していても、その柔軟性が低下しにくい、優れた保存安定性を有する窒化アルミニウムグリーンシートを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者等は、上記課題を解決するために検討を重ねた結果、窒化アルミニウムグリーンシートについて成形性および柔軟性に優れることから、ポリビニルブチラール樹脂を熱可塑性樹脂として用いることが良いという知見を得た。そして、本発明者等は前記の知見を更に発展させ、上記ポリビニルブチラール樹脂に対して特定の可塑剤を使用すると、窒化アルミニウムグリーンシートの柔軟性低下を効果的に抑制することができることを見出し、本発明は、これらの組み合わせにより完成するに至った。
【0008】
即ち、本発明は、窒化アルミニウム粉末、焼結助剤、熱可塑性樹脂、可塑剤を含む窒化アルミニウムグリーンシートにおいて、上記熱可塑性樹脂が、ポリビニルブチラール樹脂であり、上記可塑剤が、300以上の分子量を有し、且つ、脂肪族多価カルボン酸と脂肪族モノアルコールとのエステル又は脂肪族多価アルコールと脂肪族モノカルボン酸とのエステルであり、2つ以上のエステル結合を有するものであることを特徴とする、窒化アルミニウムグリーンシートである。
【発明の効果】
【0009】
本発明の窒化アルミニウムグリーンシートは、長期間保存した後でも良好な柔軟性を有しており、さらに、上記長期間保存した窒化アルミニウムグリーンシートはバリや欠け等が発生しにくく、良好な打ち抜き性を有する。
【0010】
さらに、本発明の窒化アルミニウムグリーンシートは、前記優れた保存安定性を活かして、例えば、ロール状に巻き取るなどして作り置きをすることができ、その結果、次工程とのバランスを考慮し効率的な作業が可能となるため、工業的利用価値が高い。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施例1で得られた窒化アルミニウムグリーンシートを打ち抜いた際の、シート断面について、ビデオマイクロスコープ観察で得た画像である。
図2】比較例1で得られた窒化アルミニウムグリーンシートを打ち抜いた際の、シート断面について、ビデオマイクロスコープ観察で得た画像である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(本発明の窒化アルミニウムグリーンシート)
本発明の窒化アルミニウムグリーンシートは、窒化アルミニウム粉末、焼結助剤、熱可塑性樹脂、可塑剤により構成される。
【0013】
<組成>
[窒化アルミニウム粉末]
本発明の窒化アルミニウムグリーンシートの一成分である窒化アルミニウム粉末は、公知のものが何ら制限無く使用される。一般に、熱伝導性に優れた窒化アルミニウム焼結体を得るためには、酸素含有量や陽イオン不純物が少ないことが好ましい。尚、本発明における窒化アルミニウムは、アルミニウムと窒素の1:1の化合物であり、これ以外のものをすべて不純物として扱う。但し、窒化アルミニウムの表面は空気中で不可避的に酸化され、Al-N結合がAl-O結合に置き換っているが、この結合Alは陽イオン不純物とみなさない。従って、Al-N、Al-Oの結合をしていない金属アルミニウムは陽イオン不純物である。
【0014】
また、本発明で用いられる窒化アルミニウム粉末の粒子は、粒子径の小さいものが揃っているものが好ましい。例えば、粒度分布測定装置、例えば、日機装製のMICROTRACK-HRA(商品名)を用いて、レーザー回折法により、平均粒子径(D50)が5μm以下、さらには3μm以下であることが好ましい。
【0015】
[焼結助剤]
本発明の窒化アルミニウムグリーンシートに使用される焼結助剤は、窒化アルミニウム粉末の焼結を促進するものであり、公知のものが特に制限なく使用され、具体的には、アルカリ金属、アルカリ土類金属又は希土類元素の酸化物を使用することができる。上記アルカリ金属としては、リチウムが挙げられる。また、上記アルカリ土類金属元素としては、ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム等が挙げられる。上記希土類元素としては、イットリウム、ランタン、セリウム、プラセオジム、ネオジム、プロメチウム、サマリウム、ユーロピウム、ガドリニウム、テルビウム、ジスプロシウム、ホルミウム、エルビウム、ツリウム、イッテルビウム、ルテチウム等が挙げられる。この内、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、イットリウム、ランタン、セリウム、ネオジムの酸化物が好適に用いられる。これらの化合物は、単独で使用しても、複数を組み合わせて使用してもよい。
【0016】
本発明の窒化アルミニウムグリーンシートに含まれる焼結助剤の量は、窒化アルミニウム粉末100質量部に対して、酸化物換算で0.05~10質量部であることが好ましく、1~7質量部であることがより好ましく、3~6質量部であることが特に好ましい。
【0017】
[熱可塑性樹脂]
本発明において、熱可塑性樹脂は、窒化アルミニウム粉末の結合剤として用いるものであり、窒化アルミニウムグリーンシートにおいて成形性および柔軟性に優れることから、ポリビニルブチラール樹脂を使用することが、本発明の特徴の一つである。
【0018】
本発明において使用するポリビニルブチラール樹脂の分子量は、特に制限されないが、一般には15000~150000、好ましくは、30000~100000のものを用いると、成形性および柔軟性に優れた窒化アルミニウムグリーンシートを得るのに好適である。
【0019】
本発明において使用するポリビニルブチラール樹脂としては、適宜製造したものであってもよいし、市販品であってもよく、それ自体公知のものを使用することができる。市販品としては、例えば、Mowital(Mowital B 14S、Mowital B 16H、Mowital B 20H、Mowital B 30T、Mowital B 30H、Mowital B 30HH、Mowital B 45H、Mowital B 60T、Mowital B 60H、Mowital B 60HH、Mowital B 75H、Mowital BA 20S)(以上、株式会社クラレ製 商品名)、エスレックB(BL-1、BL-1H、BL-2、BL-2H、BL-5、BL-10、BL-S、BX-1、BX-5、BX-L、BM-1、BM-2、BM-5、BM-S、BH-3、BH-6、BH-S(以上、積水化学工業(株)製 商品名)等のポリビニルブチラール樹脂が例示される。
【0020】
本発明の窒化アルミニウムグリーンシートに含まれる熱可塑性樹脂の量は、窒化アルミニウム粉末100質量部に対して3~20質量部であることが好ましく、5~10質量部であることが好ましい。熱可塑性樹脂の量を上記範囲とすることによって、上記窒化アルミニウム粉末、焼結助剤、可塑剤を熱可塑性樹脂中に均一に分散させることができる。
【0021】
[可塑剤]
本発明において、可塑剤は、熱可塑性樹脂を可塑化し柔軟性を与えるものであり、本発明の最大の特徴は、前記ポリビニルブチラール樹脂に対して、特定の可塑剤、具体的には、300以上の分子量を有し、且つ、脂肪族多価カルボン酸と脂肪族モノアルコールとのエステル又は脂肪族多価アルコールと脂肪族モノカルボン酸とのエステルであり、2つ以上のエステル結合を有するものを可塑剤として使用した点にある。これによって、本発明の窒化アルミニウムグリーンシートは、長期間保存した後でも良好な柔軟性を有することができる。このような効果が得られた理由は、必ずしも明らかではないが、前記熱可塑性樹脂と可塑剤との組み合わせにより、可塑剤の揮発性が効果的に抑制された結果、可塑剤が窒化アルミニウムグリーンシート中に長期間存在しうるためと本発明者らは考えている。
【0022】
前記脂肪族多価カルボン酸としては、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸等の脂肪族2価カルボン酸、プロパントリカルボン酸、ブタントリカルボン酸、ペンタントリカルボン酸等の脂肪族3価カルボン酸等が挙げられる。
【0023】
前記脂肪族モノアルコールとしては、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、ヘプタノール、オクタノール、ノナノール、デカノール、2-(2-メトキシエトキシ)エタノール、2-(2-エトキシエトキシ)エタノール、2-(2-ブトキシエトキシ)エタノール等が挙げられる。
【0024】
前記脂肪族多価アルコールとしては、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール等の脂肪族2価アルコール、グリセリン、ブタントリオール等の脂肪族3価アルコール等が挙げられる。
【0025】
前記脂肪族モノカルボン酸としては、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、ベヘニン酸、ヤシ脂肪酸等が挙げられる。
【0026】
本発明において特に好ましい可塑剤としては、ビス[2-(2-ブトキシエトキシ)エチル]アジペート、グリセリンジアセトモノラウレートが挙げられる。
【0027】
なお、上記可塑剤は、単独で用いてもよく、2つ以上を混合して用いてもよい。
【0028】
本発明の窒化アルミニウムグリーンシートに含まれる可塑剤の量は、熱可塑性樹脂100質量部に対して、20~60質量部であることが好ましく、30~50質量部であることがより好ましく、35~40質量部であることが特に好ましい。可塑剤の量を上記範囲とすることによって、前記可塑剤による効果を十分に得られる。
【0029】
<物性>
本発明において、窒化アルミニウムグリーンシートの厚みは、窒化アルミニウム焼結体の用途によるため一概にはいえないが、0.1~5mm、好ましくは、0.2~1.5mmであることが好ましい。
【0030】
本発明において、窒化アルミニウムグリーンシートの柔軟性は、引張強度および伸びの値により評価する。本発明の窒化アルミニウムグリーンシートについて、その引張強度が1.2~2.0MPaであり、且つ、その伸びが30~50%であることが好ましく、より好ましくは、その引張強度が1.5~1.8MPaであり、且つ、その伸びが32~48%であることが好ましい。上記引張強度および伸びの値が、窒化アルミニウムグリーンシート作製直後および長期間保存後において上記範囲であることにより、柔軟性に優れ、引張りや曲げ等の応力が負荷されても窒化アルミニウムグリーンシートが割れ難い。なお、上記引張強度および伸びは、後述するダンベル試験片を用いた引張試験により求めることができる。
【0031】
また、本発明の窒化アルミニウムグリーンシートの保存条件は、特に制限されるものではないが、0~25℃の範囲で、保存することが好ましい。この温度範囲であれば、100日以上保存したとしても、柔軟性の低下を抑制できる。
【0032】
(本発明の窒化アルミニウムグリーンシートの製造方法)
本発明において、窒化アルミニウムグリーンシートは、具体的には下記の工程を経て製造される。即ち、窒化アルミニウム粉末、焼結助剤、熱可塑性樹脂、可塑剤等を混練して成形用組成物を得る工程(混練工程)、得られた成形用組成物をドクターブレード法等によって板状またはシート状に成形する工程(成形工程)、溶剤を乾燥させて除去し窒化アルミニウムグリーンシートを得る工程(乾燥工程)を経て製造される。
【0033】
以下、各工程について順を追って説明する。
【0034】
<混練工程>
上記混練工程において、混練する各成分の使用量は、得られる窒化アルミニウムグリーンシートが前記組成になるように適宜決定すればよい。また、必要に応じて分散剤や溶剤を使用してもよい。
【0035】
また、各成分を混練する方法は、公知の混練装置を用いて混合することができる。混練装置としては、例えば、加圧ニーダー、バンバリーミキサー、ディスクニーダー、1軸あるいは2軸押出機等、公知の混練装置が挙げられる。また、各成分の混練及び分散を十分に行うために、一般に二回に分けて混練される。一回目は、窒化アルミニウム粉末、焼結助剤、必要に応じて分散剤、溶剤を加えて混練され、二回目は、一回目の混合物に熱可塑性樹脂、可塑剤、必要に応じて溶剤を加えて混練される。こうして、成形用組成物が作製される。
【0036】
なお、前記分散剤は、前記成形用組成物中における、窒化アルミニウム粉末、焼結助剤等の分散性を高めるために使用することが好ましく、一般に、界面活性剤が好適に使用される。
【0037】
前記界面活性剤は、公知のものが何ら制限無く使用される。本発明において好適に使用しうる界面活性剤を具体的に例示すると、カルボキシル化トリオキシエチレントリデシルエーテル、ジグリセリンモノオレート、ジグリセリンモノステアレート、カルボキシル化ヘプタオキシエチレントリデシルエーテル、テトラグリセリンモノオレート、ヘキサグリセリンモノオレート、ソルビタンラウレート、ソルビタンオレート、ソルビタントリオレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレート、ポリオキシエチレンソルビタントリオレート等が挙げられる。なお、これら界面活性剤は、2種以上を混合して使用しても良い。
【0038】
前記分散剤の量は、窒化アルミニウム粉末の量および焼結助剤の量を足し合わせた合計100質量部に対し、1~5重量部の範囲から選択され、使用される。
【0039】
また、前記溶剤は、前記成形用組成物について混錬性および成形性を良くするために使用することが好ましく、一般に有機溶媒が好適に使用される。
【0040】
前記有機溶媒として好ましく使用されるものを例示すれば、アセトン、メチルエチルケトン及びメチルイソブチルケトン等のケトン類;エタノール、プロパノール及びブタノール等のアルコール類;ベンゼン、トルエン及びキシレン等の芳香族炭化水素類;あるいはトリクロロエチレン、テトラクロロエチレン及びブロムクロロメタン等のハロゲン化炭化水素類の1種または2種以上の混合物が挙げられる。
【0041】
前記溶剤の量は、窒化アルミニウム粉末の量、焼結助剤の量、熱可塑性樹脂の量、および可塑剤の量をすべて足し合わせた合計100質量部に対し、50~150重量部の範囲から選択され、使用される。
【0042】
なお、前記溶剤を使用し得られた成形用組成物の粘度が低い場合、該成形用組成物中の溶剤の一部を除去する操作を行い、次工程に適する粘度になるように調整してもよい。上記操作として、例えば、真空雰囲気下で攪拌し、溶剤を留去する操作が挙げられる。
【0043】
<成形工程>
前記成形工程において、前記成形用組成物をシート状に成形する方法は、特に制限されず、公知の方法および装置を使用することができる。例えば、ドクターブレード法等のシート成形機を用いて、シート状に成形される。
【0044】
<乾燥工程>
前記乾燥工程において、シート状に成形した成形体を乾燥する方法は、特に制限されず、公知の方法および装置を使用することができる。一般に、空気や窒素雰囲気中で、溶剤の沸点の温度で乾燥し、溶剤を除去して、窒化アルミニウムグリーンシートを得ることができる。
【0045】
なお、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲内で種々
に改変することができる。
【実施例
【0046】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。また、実施例に記載した測定及び評価の結果は以下の方法によって得た。
【0047】
<窒化アルミニウムグリーンシートの引張強度および伸び>
本発明の窒化アルミニウムグリーンシートの引張強度および伸びの評価は、JIS K 7161に準拠し行った。
【0048】
具体的には、シート打ち抜き用ダンベル(JIS規格品ASTM D 1822 L タイプ)を用いて、窒化アルミニウムグリーンシートのシート成形方向に沿って試験片を打ち抜き、該試験片について、万能材料試験機(ストログラフM2、東洋精機製作所製)を使用し、測定荷重と伸びを測定した。このときの測定条件は、ロードセル容量;100kgf、クロスヘッドスピード;10mm/min、ロードセレクター;×50、チャートスピード;20mm/minとした。そして、引張強度の値については、上記測定荷重の値を、試験片断面積(幅×厚み)の値で割って算出した。なお、引張強度および伸びの値は、試験片5個の測定値の平均値とした。
【0049】
<窒化アルミニウムグリーンシートの打ち抜き性>
窒化アルミニウムグリーンシートの打ち抜き性に係る評価は、パンチング機(SSP-1000、日本オートマチックマシン製)を用いて、パンチング圧力;98kN、プレス機下降速度;80mm/sec、シート送り速度;280mm/secの条件で2インチ基板の金型を押し当て、窒化アルミニウムグリーンシートを打ち抜き、ビデオマイクロスコープでその断面を観察し行った。評価基準を以下に示す。
【0050】
評価基準
○:断面が全体的に平滑である
△:刃が入った方向の上部に凹凸が見られる
×:断面が全体的に凹凸である
また、実施例では下記の原料を使用した。
【0051】
[窒化アルミニウム粉末]
・株式会社トクヤマ製H-No.1グレード、粒子径(D50)1.6μm
[熱可塑性樹脂]
・ポリビニルブチラール樹脂:積水化学工業株式会社製 エスレックB BM-S
[焼結助剤]
・酸化イットリウム:日本イットリウム株式会社製
[可塑剤]
・ビス[2-(2-ブトキシエトキシ)エチル]アジペート:大八化学工業株式会社製 BXA-N
・グリセリンジアセトモノラウレート::理研ビタミン株式会社製 リケマール PL-012
・ジブチルフタレート:大八化学工業株式会社製 DBP
・ジブチルアジペート:大八化学工業株式会社製 DBA
[分散剤]
・ソルビタントリオレート:理研ビタミン株式会社製 リケマール OR-85
実施例1
窒化アルミニウム粉末2000g、酸化イットリウム100g、ソルビタントリオレート50g、トルエン400g、エタノール234g、およびブタノール34gを、10L回転ボールミル、ミルボール(アルミナφ10mm)9.3kgを用いて、25℃、ミル回転数38±1rpmの条件で、14時間混練した。次いで、得られた混練物に、ポリビニルブチラール樹脂160g、ビス[2-(2-ブトキシエトキシ)エチル]アジペート60g、トルエン558g、エタノール326g、およびブタノール48gを加えて、上記条件で18時間混練した。さらに、得られた成形用組成物を、攪拌脱泡粘調装置(KD-15型、大和精機株式会社製)を用いて、真空下、攪拌速度;50rpm、ヒーター設定23℃の条件で、上記成形用組成物の粘度が21000~26000mPa・sになるまで溶剤を除去して粘度調整を実施した。そして、粘度調整した成形用組成物を、中型シート成形機(平野金属株式会社製)を用いてドクターブレード法によりシート状に成形した。このときのシート成形条件は、ブレードギャップ;2.10mm、塗工速度;0.27m/min、成形幅;280mmとした。次いで、その成形したシートを、上記中型シート成形機内で、循環ファン;1200rpm、温度および時間;78℃の温度で0.5h乾燥し、さらに118℃の温度で0.3h乾燥し、窒化アルミニウムグリーンシートを作製した。
【0052】
得られた窒化アルミニウムグリーンシートの引張強度、伸び、および打ち抜き性について、上記窒化アルミニウムグリーンシートを作製した直後およびその窒化アルミニウムグリーンシートを空気中、25℃の条件で100日間保存した後に評価した結果を表1に示す。
【0053】
得られた窒化アルミニウムグリーンシートは、作製直後、そして、100日間保存後においても、優れた柔軟性を有していた。また、上記窒化アルミニウムグリーンシートを打ち抜いたときのシート断面は、全体的に平滑であり、良好な打ち抜き性が認められた。
【0054】
実施例2
表1に示す可塑剤を使用し、それ以外は実施例1と同様にして、得られた窒化アルミニウムグリーンシートの引張強度、伸びおよび打ち抜き性について評価をした結果を表1に示す。
【0055】
得られた窒化アルミニウムグリーンシートは、作製直後、そして、100日間保存後においても、優れた柔軟性を有していた。また、上記窒化アルミニウムグリーンシートを打ち抜いたときのシート断面は、全体的に平滑であり、良好な打ち抜き性が認められた。
【0056】
比較例1、2
表1に示す可塑剤を使用し、それ以外は実施例1と同様にして、得られた窒化アルミニウムグリーンシートの引張強度、伸びについて評価をした結果を表1に示す。
【0057】
得られた窒化アルミニウムグリーンシートの柔軟性について、作製直後は良好なものであったが、100日間保存後は、柔軟性が大きく低下しており、取扱が困難であった。また、上記窒化アルミニウムグリーンシートを打ち抜いたときのシート断面について、刃が入った方向の上部または断面全体に凹凸が発生した。
【0058】
【表1】
図1
図2