(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-10
(45)【発行日】2022-01-13
(54)【発明の名称】レーザー焼結粉末のための抗核形成剤
(51)【国際特許分類】
B29C 64/153 20170101AFI20220105BHJP
B29C 64/268 20170101ALI20220105BHJP
B33Y 10/00 20150101ALI20220105BHJP
C08L 77/00 20060101ALI20220105BHJP
C08K 5/3465 20060101ALI20220105BHJP
C08K 5/46 20060101ALI20220105BHJP
【FI】
B29C64/153
B29C64/268
B33Y10/00
C08L77/00
C08K5/3465
C08K5/46
(21)【出願番号】P 2018544074
(86)(22)【出願日】2017-02-16
(86)【国際出願番号】 EP2017053500
(87)【国際公開番号】W WO2017140779
(87)【国際公開日】2017-08-24
【審査請求日】2020-02-14
(32)【優先日】2016-02-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】508020155
【氏名又は名称】ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
(74)【代理人】
【識別番号】100100354
【氏名又は名称】江藤 聡明
(72)【発明者】
【氏名】オスターマン,ライナー
(72)【発明者】
【氏名】ガブリエル,クラウス
(72)【発明者】
【氏名】マイアー,トマス
(72)【発明者】
【氏名】グラムリヒ,ジモン
【審査官】北澤 健一
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2012/041793(WO,A1)
【文献】特開2015-205513(JP,A)
【文献】特開2001-011055(JP,A)
【文献】特開昭59-033329(JP,A)
【文献】Bio-Medical Materials and Engineering,2007年,Vol.17,p.147-157
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 64/00- 64/40
C08K 3/00- 13/08
C08L 1/00-101/14
C08J 3/00- 3/28
C08G 69/00- 69/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリアミド(P)と、焼結粉末(SP)の全質量に基づき0.1質量%~5質量%の少なくとも1種の添加剤(A)とを含む前記焼結粉末(SP)の選択的レーザー焼結によって成形体を製造する方法であって、前記少なくとも1種の添加剤(A)が式(I)
【化1】
(式中、
R
1及びR
2は、H、C
1~C
4アルキル及びNR
5R
6からなる群から独立して選択され、
このR
5及びR
6は、H、C
1~C
4アルキルからなる群から独立して選択され、
R
3及びR
4は、H、C
1~C
4アルキル及びNR
9R
10からなる群から独立して選択され、
このR
9及びR
10は、H、C
1~C
4アルキルからなる群から独立して選択され、
Xは、N、S
+又はN
+R
13であり、
このR
13は、H、C
1~C
4アルキルからなる群から選択され、
この式(I)の化合物は、XがS
+又はN
+R
13であるときは正電荷を有し、そこでこの式(I)の化合物はアニオンY
-を有し、
このY
-は、ヒドロキシド、クロリド、ブロミド、イオダイド、サルフェート、サルファイト、ホスフェート及びホスファイトからなる群から選択される)
の化合物からなる群から選択される方法。
【請求項2】
前記式(I)の化合物中のXがN、S
+又はN
+R
13であり、前記式(I)の化合物は、XがS
+又はN
+R
13であるときは正電荷を有し、そこで前記式(I)の化合物はアニオンY
-を有し、このY
-は、ヒドロキシド及びクロリドからなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記少なくとも1種の添加剤(A)が、メチレンブルー及びニュートラルレッドからなる群から選択される、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記ポリアミド(P)が、PA4、PA6、PA7、PA8、PA9、PA11、PA12、PA46、PA66、PA69、PA610、PA612、PA613、PA1212、PA1313、PA6T、PA MXD6、PA6l、PA6-3-T、PA6/6T、PA6/66、PA66/6、PA6/12、PA66/6/610、PA6l/6T、PA PACM12、PA6l/6T/PACM、PA12/MACMI、PA12/MACMT、PA PDA-Tからなる群から選択される少なくとも1種のポリアミド、及び上述したポリアミドの2種以上から形成されるコポリアミドである、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記ポリアミド(P)が、ナイロン-6(PA6)、ナイロン-6,6(PA66)、ナイロン-6/6,6(PA6/66)、ナイロン-6,6/6(PA66/6)、ナイロン-6,10(PA610)、ナイロン-6/6T(PA6/6T)、ナイロン-12(PA12)及びナイロン-12,12(PA1212)からなる群から選択される少なくとも1種のポリアミドである、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記焼結粉末(SP)が焼結窓(W
SP)を有し、前記焼結粉末(SP)中に存在する前記ポリアミド(P)が焼結窓(W
P)を有し、ここで前記焼結窓(W
SP;W
P)はいずれの場合も、溶融の開始温度(T
M
開始)と結晶化の開始温度(T
C
開始)との間の差であり、且つ前記焼結粉末(SP)の前記焼結窓(W
SP)は前記焼結粉末(SP)中に存在する前記ポリアミド(P)の前記焼結窓(W
P)よりも少なくとも5%大きい、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記焼結粉末(SP)の粒子径が10~250μmの範囲である、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
ポリアミド(P)と、焼結粉末(SP)の全質量に基づき0.1質量%~5質量%の少なくとも1種の添加剤(A)とを含む前記焼結粉末(SP)の選択的レーザー焼結によって成形体を製造するための焼結粉末(SP)を製造する方法であって、以下の工程:
a)ポリアミド(P)を溶媒(S)中に溶解し、溶解前、溶解中及び/又は溶解後に前記少なくとも1種の添加剤(A)を添加して、前記少なくとも1種の添加剤(A)を含むポリアミド溶液(PS)を得る工程、
b)工程a)からの前記少なくとも1種の添加剤(A)を含む前記ポリアミド溶液(PS)に沈殿剤(PR)を添加し、前記溶媒(S)及び前記沈殿剤(PR)を含む溶液中に懸濁した前記焼結粉末(SP)を含む懸濁液を得る工程、
c)工程b)で得られた前記懸濁液から前記焼結粉末(SP)を分離する工程、
を含み、前記少なくとも1種の添加剤(A)が式(I)
【化2】
(式中、
R
1及びR
2は、H、C
1~C
4アルキル及びNR
5R
6からなる群から独立して選択され、
このR
5及びR
6は、H、C
1~C
4アルキルからなる群から独立して選択され、
R
3及びR
4は、H、C
1~C
4アルキル及びNR
9R
10からなる群から独立して選択され、
このR
9及びR
10は、H、C
1~C
4アルキルからなる群から独立して選択され、
Xは、N、S
+又はN
+R
13であり、
このR
13は、H、C
1~C
4アルキルからなる群から選択され、
この式(I)の化合物は、XがS
+又はN
+R
13であるときは正電荷を有し、そこでこの式(I)の化合物はアニオンY
-を有し、
このY
-は、ヒドロキシド、クロリド、ブロミド、イオダイド、サルフェート、サルファイト、ホスフェート及びホスファイトからなる群から選択される)
の化合物からなる群から選択される方法。
【請求項9】
ポリアミド(P)と、焼結粉末(SP)の全質量に基づき0.1質量%~5質量%の少なくとも1種の添加剤(A)とを含む前記焼結粉末(SP)の選択的レーザー焼結によって成形体を製造するための焼結粉末(SP)を製造する方法であって、以下の工程:
a)ポリアミド(P)及び溶媒(S)を含む混合物を、曇り点温度(T
C)を超える温度まで加熱し、曇り点温度(T
C)を超える温度では、前記ポリアミド(P)が前記溶媒(S)中に完全に溶解し、加熱前、加熱中及び/又は加熱後に前記少なくとも1種の添加剤(A)を添加して、前記少なくとも1種の添加剤(A)を含むポリアミド溶液(PS)を得る工程、
b)工程a)で得られた前記少なくとも1種の添加剤(A)を含む前記ポリアミド溶液(PS)を曇り点温度(T
C)以下の温度まで冷却し、その後続いて沈殿剤(PR)を添加して、前記溶媒(S)及び前記沈殿剤(PR)を含む溶液中に懸濁した前記焼結粉末(SP)を含む懸濁液を得る工程、
c)工程b)で得られた前記懸濁液から前記焼結粉末(SP)を分離する工程、
を含み、前記少なくとも1種の添加剤(A)が式(I)
【化3】
(式中、
R
1及びR
2は、H、C
1~C
4アルキル及びNR
5R
6からなる群から独立して選択され、
このR
5及びR
6は、H、C
1~C
4アルキルからなる群から独立して選択され、
R
3及びR
4は、H、C
1~C
4アルキル及びNR
9R
10からなる群から独立して選択され、
このR
9及びR
10は、H、C
1~C
4アルキルからなる群から独立して選択され、
Xは、N、S
+又はN
+R
13であり、
このR
13は、H、C
1~C
4アルキルからなる群から選択され、
この式(I)の化合物は、XがS
+又はN
+R
13であるときは正電荷を有し、そこでこの式(I)の化合物はアニオンY
-を有し、
このY
-は、ヒドロキシド、クロリド、ブロミド、イオダイド、サルフェート、サルファイト、ホスフェート及びホスファイトからなる群から選択される)
の化合物からなる群から選択される方法。
【請求項10】
前記溶媒(S)がアルコール、ラクタム及びケトンからなる群から選択される、請求項8から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記沈殿剤(PR)が、前記沈殿剤(PR)の総質量に基づき、少なくとも50質量%の水を含む、請求項8から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記焼結粉末(SP)が請求項8から11のいずれか一項に記載の方法によって製造される、請求項1から7のいずれか一項に記載の選択的レーザー焼結によって成形体を製造する方法
。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリアミド(P)と0.1質量%~5質量%の少なくとも1種の添加剤(A)とを含む焼結粉末(SP)の選択的レーザー焼結によって、成形体を製造する方法に関する。本発明はまた、ポリアミド(P)と0.1質量%~5質量%の少なくとも1種の添加剤(A)とを含む成形体に関する。本発明はさらに、ポリアミド(P)と0.1質量%~5質量%の少なくとも1種の添加剤(A)とを含む焼結粉末(SP)を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
プロトタイプの迅速な提供は、近年頻繁に課せられる課題である。この「ラピッドプロトタイピング(rapid prototyping)」に特に適している1つの方法は、選択的レーザー焼結である。この方法は、チャンバー内でポリマー粉末をレーザービームに選択的に暴露することを含む。粉末は溶融し、溶融した粒子が融合して再凝固する。ポリマー粉末の繰り返し施与とその後に続くレーザーへの暴露で、三次元成形品のモデル化が可能となる。
【0003】
粉末状ポリマーから成形体を製造するためのレーザー焼結の方法は、特許明細書US6136948及びWO96/06881に詳細に記載されている。
【0004】
選択的レーザー焼結法に適したポリマーは、溶融温度と凝固温度(結晶化温度)との間に大きな差を有するべきである。EP0911142A1には、レーザー焼結によって成形体を製造するためのナイロン-12粉末(PA12)が記載されている。これらの粉末は、185~189℃の溶融温度、112kJ/molの融解エンタルピー及び138~143℃の凝固温度を有する。EP0911142A1に記載されているポリマーの使用方法の欠点は、成型品の冷却の過程で結晶構造が拡張して形成されることであり、それはその冷却の結果として部品の収縮の増加又は反りが観察されるからである。この反りは、こうして得られた構成要素の使用又はさらなる加工を困難にする。成形品の製造中であっても、反りは非常に深刻となる可能性があり、さらなる層の施与が不可能となるため、製造プロセスを停止させなければならない。もう一つの欠点は、EP0911142A1に従って使用されるナイロン-12粉末の再利用が困難を伴ってのみ可能なことである。レーザー焼結中、ナイロン-12粉末の一部分のみが溶融する。未溶融粉末は、理想的には再利用されるべきである。しかしながら、ナイロン-12粉末の溶融物の流動性は、レーザー焼結循環の数が増加するにつれて減少し、溶融粘度が増加する。これは、ナイロン-12粉末の再利用を困難にし、ナイロン-12粉末の消費量が高いためにEP0911142A1に記載された方法を費用がかかるものとする。
【0005】
US6395809B1は、ポリアミド、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート又はポリフェニレンスルフィドを含む半結晶性ポリマー中に非水溶性のニグロシン粉末を使用する方法を開示している。ニグロシンは、第一に染料として使用することができ、第二にポリマーの結晶化温度を低下させるためにも使用することができる。非水溶性のニグロシンは、市販のニグロシンから、硫酸及び/又はリン酸で処理することによって製造される。特に高い色密度を有する製品を得るためには、20質量%~40質量%のニグロシンを使用することが好ましい。使用される非水溶性のニグロシンの欠点は、非水溶性のニグロシンを得るために市販のニグロシンを硫酸及び/又はリン酸と反応させなければならない、該方法の追加の工程である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】US6136948
【文献】WO96/06881
【文献】EP0911142A1
【文献】US6395809B1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、前述の先行技術の欠点を、あるとしてもより低い程度でのみ有する、選択的レーザー焼結によって成形体を製造する方法を提供することである。該方法は、簡易で安価な様態で実施可能であるべきであり、得られる成形体は、特に最小限の反り(「カーリング(curling)」と呼ばれる)を有するべきである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この目的は、ポリアミド(P)と、焼結粉末(SP)の全質量に基づき0.1質量%~5質量%の少なくとも1種の添加剤(A)とを含む焼結粉末(SP)の選択的レーザー焼結によって成形体を製造する方法であって、その少なくとも1種の添加剤(A)が式(I)
【0009】
【化1】
(式中、
R
1及びR
2は、H、C
1~C
10アルキル、C
6~C
10アリール及びNR
5R
6からなる群から独立して選択され、
このR
5及びR
6は、H、C
1~C
10アルキル及びC
6~C
10アリールからなる群から独立して選択され、
又はR
1及びR
2は、一緒になって式(Ia)又は(Ib)
【化2】
(式中、
R
7及びR
8は、H、C
1~C
10アルキル及びC
6~C
10アリールからなる群から独立して選択される)の単位を形成し、
R
3及びR
4は、H、C
1~C
10アルキル、C
6~C
10アリール及びNR
9R
10からなる群から独立して選択され、
このR
9及びR
10は、H、C
1~C
10アルキル及びC
6~C
10アリールからなる群から独立して選択され、
又はR
3及びR
4は、一緒になって式(Ic)又は(Id)
【化3】
(式中、
R
11及びR
12は、H、C
1~C
10アルキル及びC
6~C
10アリールからなる群から独立して選択される)の単位を形成し、
Xは、N、O
+、S
+又はN
+R
13であり、
このR
13は、H、C
1~C
10アルキル及びC
6~C
10アリールからなる群から選択され、
この式(I)の化合物は、XがO
+、S
+又はN
+R
13であるときは正電荷を有し、そこでこの式(I)の化合物はアニオンY
-を有し、
このY
-は、ヒドロキシド、クロリド、ブロミド、イオダイド、サルフェート、サルファイト、ホスフェート及びホスファイトからなる群から選択される)
の化合物からなる群から選択される方法によって達成される。
【0010】
驚くべきことに、ポリアミド(P)と0.1質量%~5質量%の少なくとも1種の添加剤(A)とを含む焼結粉末(SP)は、非常に拡大した焼結窓(WSP)を有し、焼結粉末(SP)の選択的レーザー焼結によって製造された成形体の反りが、あるとしても明らかに低減されることが見出された。驚くべきことに、本発明の方法によって製造された成形体は、改善された色安定性を有することも見出された。
【0011】
本発明に従って製造された焼結粉末(SP)は、先行技術に記載された焼結粉末よりも高い球形度、及びより均質でより滑らかな表面をさらに有する。その結果、より均質な溶融フィルムがレーザー焼結処理中に形成され、これは同様に、成形体の反りを明らかにより低下させる。さらに、その結果として、より良好に規定された表面を有する成形体が得られる。
【0012】
成形体の製造において溶融しない焼結粉末(SP)を再利用できることも有利である。複数のレーザー焼結循環の後でさえ、焼結粉末(SP)は、最初の焼結循環中の焼結特性と同様の有利な焼結特性を有する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】
図1は、加熱工程(H)及び冷却工程(C)を含むDSC図を表す。
【発明を実施するための形態】
【0014】
選択的レーザー焼結
選択的レーザー焼結という方法は、例えばUS6136948及びWO96/06881から、それ自体当業者に既知である。
【0015】
レーザー焼結では、焼結可能な粉末の第一層を粉末床に配置し、レーザービームに局所的に短時間暴露する。レーザービームに暴露した焼結可能な粉末の一部分のみが選択的に溶融する(選択的レーザー焼結)。溶融した焼結可能な粉末は融合し、それによって暴露領域で均質な溶融物を形成する。その後続いてこの領域は再び冷えて、焼結可能な粉末が再凝固する。次いで、粉末床を第一層の層の厚さで低下させ、焼結可能な粉末の第二の層を施与し、選択的に暴露してレーザーで溶融する。これにより、焼結可能な粉末の上の第二層が低い方の第一層とまず結合する。第二の層内の焼結可能な粉末の粒子も溶融により互いに結合する。粉末床の低下、焼結可能な粉末の施与及び焼結可能な粉末の溶融を繰り返すことにより、三次元の成形体を製造することが可能になる。レーザービームを或る位置に選択的に暴露することにより、例えば空洞も有する成形体を製造することが可能になる。未溶融の焼結可能な粉末自体が支持材料として作用するので、追加の支持材料は必要ではない。
【0016】
適切な焼結可能な粉末は、当業者に既知でレーザーへの暴露によって溶融することが可能なすべての粉末である。焼結可能な粉末の例は、本発明の焼結粉末(SP)及び焼結粉末(SP)中に存在するポリアミド(P)である。
【0017】
「焼結可能な粉末」及び「焼結粉末(SP)」という用語は、本発明の文脈において同義語として使用することができ、その場合同じ意味を有する。
【0018】
選択的レーザー焼結のための好適なレーザーは、例えば、ファイバレーザー、Nd:YAGレーザー(ネオジムでドープしたイットリウムアルミニウムガーネットレーザー)及び二酸化炭素レーザーである。
【0019】
選択的レーザー焼結法において特に重要なのは、「焼結窓(sintering window)(W)」と呼ばれる焼結可能な粉末の溶融範囲である。焼結可能な粉末が本発明の焼結粉末(SP)である場合、焼結窓(W)は本発明の文脈において、焼結粉末(SP)の「焼結窓(WSP)」と言う。焼結可能な粉末が焼結粉末(SP)中に存在するポリアミド(P)である場合、焼結窓(W)は本発明の文脈において、ポリアミド(P)の「焼結窓(WP)」と言う。
【0020】
焼結可能な粉末の焼結窓(W)は、例えば示差走査熱量測定、DSCによって決定することができる。
【0021】
示差走査熱量測定では、試料の温度、すなわち本例では焼結可能な粉末の試料の温度及び標準の温度が、時間と共に直線的に変化する。この目的のために、試料と標準に熱を供給し/試料と標準から熱を除去する。試料を標準と同じ温度に保つために必要な熱量Qを決定する。標準に供給/標準から除去する熱量QRが標準値となる。
【0022】
試料が吸熱相変化を受ける場合、試料を標準と同じ温度に保つために、追加の熱量Qを供給しなければならない。発熱相変化が起こる場合、試料を標準と同じ温度に保つために、熱量Qを除去しなければならない。この測定は、試料に供給する/試料から除去する熱量Qが温度Tの関数としてプロットされるDSC図をもたらす。
【0023】
測定は、典型的には、最初に加熱工程(H)を実施することを含む。すなわち、試料及び標準を直線的に加熱する。試料の溶融中(固相/液相変化)に、試料を標準と同じ温度に保つために追加の熱量Qを供給しなければならない。そしてDSC図に、溶融ピークと呼ばれるピークが観察される。
【0024】
加熱工程(H)の後、典型的には冷却工程(C)が測定される。これは、試料及び標準を直線的に冷却すること、すなわち、試料及び標準から熱を除去することを含む。結晶化/凝固の過程で熱が放出されるので、試料の結晶化/凝固(液体/固相変化)の間に、より大きい量の熱Qを除去して試料を標準と同じ温度に保たなければならない。そして冷却工程(C)のDSC図に、結晶化ピークと呼ばれるピークが溶融ピークの反対の方向に観察される。
【0025】
加熱工程(H)及び冷却工程(C)を含むそのようなDSC図は、
図1の例のように表される。DSC図は、溶融の開始温度(T
M
開始)及び結晶化の開始温度(T
C
開始)を決定するために使用することができる。
【0026】
溶融の開始温度(TM
開始)を決定するために、溶融ピーク未満の温度にある加熱工程(H)のベースラインに対して接線を引く。第2の接線を、溶融ピークの最大での温度未満の温度にある溶融ピークの第1の変曲点に対して引く。2つの接線は、それらが交差するまで外挿する。温度軸に対する交点の垂直外挿は、溶融の開始温度(TM
開始)を示す。
【0027】
結晶化の開始温度(TC
開始)を決定するために、結晶化ピークより高い温度にある冷却工程(C)のベースラインに対して接線を引く。第2の接線は、結晶化ピークの最小点での温度より高い温度にある結晶化ピークの変曲点に対して引く。2つの接線は、それらが交差するまで外挿する。温度軸に対する交点の垂直外挿は、結晶化の開始温度(TC
開始)を示す。
【0028】
焼結窓(W)は、溶融の開始温度(TM
開始)と結晶化の開始温度(TC
開始)の差である。よって:
W= TM
開始 - TC
開始
である。
【0029】
本発明の文脈において、「焼結窓(W)」「焼結窓の寸法(W)」及び「溶融の開始温度(TM
開始)と結晶化の開始温度(TC
開始)との間の差」という用語は同じ意味を有し、同義語として使用する。
【0030】
焼結粉末(SP)の焼結窓(WSP)の決定及びポリアミド(P)の焼結窓(WP)の決定は、上記のように行う。この場合、焼結粉末(SP)の焼結窓(WSP)の決定に使用する試料は、焼結粉末(SP)であり、ポリアミド(P)の焼結窓(WP)の決定に使用する試料は、ポリアミド(P)である。
【0031】
焼結粉末
選択的レーザー焼結中に溶融物が早期結晶化又は早期凝固するのを避けるために、焼結粉末(SP)の焼結窓(WSP)は、可能な限り大きくすべきである。なぜなら、これは得られる成形体に反りをもたらす可能性があるからである。この効果は「カーリング」とも言う。
【0032】
本発明の一実施形態では、焼結粉末(SP)の焼結窓(WSP)は、少なくとも10℃、好ましくは少なくとも15℃、より好ましくは少なくとも20℃、特に好ましくは少なくとも25℃である。
【0033】
焼結窓(W)は、℃(摂氏度)ではなくK(ケルビン)で記述されることが多い。1K=1℃である。
【0034】
好ましい実施形態では、焼結粉末(SP)は、焼結粉末(SP)中に存在するポリアミド(P)の焼結窓(WP)よりも少なくとも5%、好ましくは少なくとも10%、特に好ましくは少なくとも20%大きい焼結窓(WSP)を有する。
【0035】
よって本発明はまた、焼結粉末(SP)が焼結窓(WSP)を有し、焼結粉末(SP)中に存在するポリアミド(P)が焼結窓(WP)を有する方法を提供する。該方法において、焼結窓(WSP;WP)はいずれの場合も、溶融の開始温度(TM
開始)と結晶化の開始温度(TC
開始)との間の差であり、且つ焼結粉末(SP)の焼結窓(WSP)は焼結粉末(SP)中に存在するポリアミド(P)の焼結窓(WP)よりも少なくとも5%大きい。
【0036】
これは、焼結粉末(SP)の焼結窓(WSP)と焼結粉末(SP)中に存在するポリアミド(P)の焼結窓(WP)との間の差(ΔW)が、例えば少なくとも3℃、好ましくは少なくとも5℃、特に好ましくは少なくとも10℃であることを意味する。
【0037】
ΔW = WSP - WP
【0038】
焼結粉末(SP)の焼結窓(WSP)と焼結粉末(SP)中に存在するポリアミド(P)の焼結窓(WP)との間の差(ΔW)は、例えば3~20℃の範囲、好ましくは8~20℃の範囲、特に好ましくは12~20℃の範囲である。
【0039】
焼結粉末(SP)の焼結窓(WSP)及びポリアミド(P)の焼結窓(WP)に関して、及びその決定に関しては、上述した焼結窓についての詳細(W)及び好ましい例が対応して適用される。
【0040】
焼結粉末(SP)及びポリアミド(P)の両方の溶融の開始温度(TM
開始)及び結晶化の開始温度(TC
開始)がポリアミド(P)の種類に依存することは、当業者には明らかであろう。
【0041】
例えば、ポリアミド(P)としてのナイロン-6(PA6)のポリアミド(P)の溶融の開始温度(TM
開始)は205~215℃の範囲であり、ポリアミド(P)としてのPA6のポリアミド(P)の結晶化の開始温度(TC
開始)は、189~192℃の範囲である。よって焼結窓(WP)、すなわちポリアミド(P)としてのPA6のポリアミド(P)の溶融の開始温度(TM
開始)と結晶化の開始温度(TC
開始)との間の差は、14~25℃の範囲である。
【0042】
例えば、焼結粉末(SP)中に存在するポリアミド(P)としてのPA6の焼結粉末(SP)の溶融の開始温度(TM
開始)は、205~215℃の範囲であり、焼結粉末(SP)中に存在するポリアミド(P)としてのPA6の焼結粉末(SP)の結晶化の開始温度(TC
開始)は、173~178℃の範囲である。よって焼結窓(WSP)、すなわち焼結粉末(SP)中に存在するポリアミド(P)としてのPA6の焼結粉末(SP)の溶融の開始温度(TM
開始)と結晶化の開始温度(TC
開始)との間の差は、32~36℃の範囲である。
【0043】
例えば、ポリアミド(P)としてのナイロン-6,10(PA6.10)のポリアミド(P)の溶融の開始温度(TM
開始)は212~215℃の範囲であり、ポリアミド(P)としてのPA6.10のポリアミド(P)の結晶化の開始温度(TC
開始)は、194~196℃の範囲である。よって焼結窓(WP)、すなわちポリアミド(P)としてのPA6.10のポリアミド(P)の溶融の開始温度(TM
開始)と結晶化の開始温度(TC
開始)との間の差は、16~21℃の範囲である。
【0044】
例えば、焼結粉末(SP)中に存在するポリアミド(P)としてのPA6.10の焼結粉末(SP)の溶融の開始温度(TM
開始)は211~214℃の範囲であり、焼結粉末(SP)中に存在するポリアミド(P)としてのPA6.10の焼結粉末(SP)の結晶化の開始温度(TC
開始)は、187~189℃の範囲である。よって焼結窓(WSP)、すなわち焼結粉末(SP)中に存在するポリアミド(P)としてのPA6.10の焼結粉末(SP)の溶融の開始温度(TM
開始)と結晶化の開始温度(TC
開始)との間の差は、22~27℃の範囲である。
【0045】
例えば、ポリアミド(P)としてのナイロン-6,6(PA6.6)のポリアミド(P)の溶融の開始温度(TM
開始)は248~250℃の範囲であり、ポリアミド(P)としてのPA6.6のポリアミド(P)の結晶化の開始温度(TC
開始)は、234~236℃の範囲である。よって焼結窓(WP)、すなわちポリアミド(P)としてのPA6.6のポリアミド(P)の溶融の開始温度(TM
開始)と結晶化の開始温度(TC
開始)との間の差は、12~16℃の範囲である。
【0046】
例えば、焼結粉末(SP)中に存在するポリアミド(P)としてのPA6.6の焼結粉末(SP)の溶融の開始温度(TM
開始)は246~248℃の範囲であり、焼結粉末(SP)中に存在するポリアミド(P)としてのPA6.6の焼結粉末(SP)の結晶化の開始温度(TC
開始)は、224~226℃の範囲である。よって焼結窓(WSP)、すなわち焼結粉末(SP)中に存在するポリアミド(P)としてのPA6.6の焼結粉末(SP)の溶融の開始温度(TM
開始)と結晶化の開始温度(TC
開始)との間の差は、20~24℃の範囲である。
【0047】
上記の実施形態及び好ましい例は、溶融の開始温度(TM
開始)が結晶化の開始温度(TC
開始)よりも高い、すなわちTM
開始>TC
開始であるという仮定の下で常に適用される。
【0048】
本発明によれば、焼結粉末(SP)は、ポリアミド(P)、及び焼結粉末(SP)の全質量に基づき0.1質量%~5質量%の式(I)の化合物からなる群から選択される少なくとも1種の添加剤(A)を含む。
【0049】
好ましくは、焼結粉末(SP)は0.5~2.5質量%の少なくとも1種の添加剤(A)を含み、より好ましくは、焼結粉末(SP)は0.5~1質量%の少なくとも1種の添加剤(A)を含む(いずれの場合も焼結粉末(SP)の全質量に基づく)。
【0050】
本発明によれば、焼結粉末(SP)の粒子の寸法は一般に、10~250μmの、好ましくは30~200μmの、より好ましくは50~120μmの、特に好ましくは50~90μmの範囲である。
【0051】
よって本発明はまた、焼結粉末(SP)の粒子径が10~250μmの範囲である方法を提供する。
【0052】
本発明の焼結粉末(SP)は一般に、
10~30μmの範囲のD10、
25~70μmの範囲のD50及び
50~150μmの範囲のD90を有する。
【0053】
好ましい実施形態において、焼結粉末(SP)は、
20~30μmの範囲のD10、
40~60μmの範囲のD50及び
80~100μmの範囲のD90を有する。
【0054】
本発明の文脈において、「D10」はこの関連において、粒子の全体積に基づき10体積%の粒子がD10より小さい又は同等であり、且つ粒子の全体積に基づき90体積%の粒子がD10より大きい粒子径を意味すると理解される。類似して、「D50」は、粒子の全体積に基づき50体積%の粒子がD50より小さい又は同等であり、且つ粒子の全体積に基づき50体積%の粒子がD50より大きい粒子径を意味すると理解される。類似して、「D90」は、粒子の全体積に基づき90体積%の粒子がD90より小さい又は同等であり、且つ粒子の全体積に基づき10体積%の粒子がD90より大きい粒子径を意味すると理解される。
【0055】
粒子径を決定するために、焼成粉末(SP)は、圧縮空気を使用した乾燥状態で、又は溶媒、例えば水若しくはエタノール中で懸濁させて懸濁液を分析する。D10、D50及びD90は、Malvern Mastersizer 2000を使用するレーザー回折により決定する。評価はフラウンホーファ(Fraunhofer)回析により行う。
【0056】
本発明の方法のさらなる実施形態では、少なくとも1種の添加剤(A)は、塩化リチウム及び式(I)の化合物からなる群から選択される。
【0057】
この場合、焼結粉末(SP)は、ポリアミド(P)、並びに塩化リチウム及び式(I)の化合物からなる群から選択される少なくとも1種の添加剤(A)を、焼結粉末(SP)の全質量に基づき0.1質量%~5質量%含む。
【0058】
焼結粉末(SP)の製造のために、ポリアミド(P)と少なくとも1種の添加剤(A)とを混合する。
【0059】
混合後、ポリアミド(P)及び少なくとも1種の添加剤(A)は、互いに並んで別個の粒子として焼結粉末(SP)中に存在してよい。本発明の好ましい実施形態では、ポリアミド(P)は少なくとも1種の添加剤(A)を含む。換言すれば、本発明の好ましい実施形態では、焼結粉末(SP)は、少なくとも1種の添加剤(A)を含むポリアミド(P)を含む。少なくとも1種の添加剤(A)は、ポリアミド(P)の粒子中で均質に又は不均質に分布してよい。ポリアミド(P)の粒子中で少なくとも1種の添加剤(A)の分布が均質か又は不均質かどうかは、焼結粉末(SP)の製造方法に依存する。さらに、少なくとも1種の添加剤(A)をポリアミド(P)の粒子の表面に施与することができる。
【0060】
少なくとも1種の添加剤(A)がポリアミド(P)の粒子中で均質に分布している場合、少なくとも1種の添加剤(A)は、例えばポリアミド(P)の粒子に溶解してよい。次いで少なくとも1種の添加剤(A)は、ポリアミド(P)の粒子中で分子的に分散させてよい。そして少なくとも1種の添加剤(A)は同様に、ポリアミド(P)の粒子中で微細に分布していてもよい。
【0061】
少なくとも1種の添加剤(A)がポリアミド(P)の粒子中で均質に分布している場合、少なくとも1種の添加剤(A)の粒子径は、例えば、0.5nm~1000nmの範囲、好ましくは0.5nm~500nmの範囲、より好ましくは1nm~250nmの範囲である。
【0062】
少なくとも1種の添加剤(A)がポリアミド(P)の粒子中で不均質に分布している場合、少なくとも1種の添加剤(A)は、例えば、溶解していない形態で、例えば粒子状の形態で、ポリアミド(P)の粒子中にあってよい。少なくとも1種の添加剤(A)がポリアミド(P)の粒子の表面に付着することも可能である。
【0063】
少なくとも1種の添加剤(A)がポリアミド(P)の粒子中で不均質に分布している場合、少なくとも1種の添加剤(A)の粒子径は、例えば>1000nm~10000nmの範囲、好ましくは>1000nm~5000nmの範囲、より好ましくは1500nm~2500nmの範囲である。
【0064】
ポリアミド(P)中の添加剤(A)の分布の様態は、本発明にとって本質ではない。添加剤(A)が、ポリアミド(P)の粒子中又は粒子上に存在することが好ましい。
【0065】
少なくとも1種の添加剤(A)がポリアミド(P)の粒子中で分布している焼結粉末(SP)の適切な製造の方式は、原則として当業者に既知のすべての方式である。
【0066】
例えば、少なくとも1種の添加剤(A)はポリアミド(P)と混合することができ、少なくとも1種の添加剤(A)の添加前、添加中又は添加後に、少なくともポリアミド(P)を溶融させることができる。混合及び/又は溶融は、例えば押出機中で行うことができる。その後続いて、ポリアミド(P)と少なくとも1種の添加剤(A)との混合物を含む溶融物を、押出すことができる。冷却後、凝固したポリアミド/添加剤混合物が得られる。この混合物はその後続いて、焼結粉末(SP)を得るために、例えば当業者に既知の方式で粉砕することができる。粉砕は、例えば、シフターミル(sifter mill)、対向ジェットミル、ボールミル、ハンマーミル、振動ミル又はローターミル内で行うことができる。
【0067】
焼結粉末(SP)を沈殿によって製造することも可能である。これが好ましい。この目的のために、ポリアミド(P)を溶媒(S)と混合し、任意に加熱しながらポリアミド(P)を溶媒(S)中に溶解して、ポリアミド溶液(PS)を得る。ポリアミド(P)は、溶媒(S)中に部分的に又は完全に溶解してよい。ポリアミド(P)は、溶媒(S)中に完全に溶解させることが好ましい。よって、溶媒(S)中に完全に溶解したポリアミド(P)を含むポリアミド溶液(PS)を得ることが好ましい。
【0068】
少なくとも1種の添加剤(A)をポリアミド(P)と溶媒(S)との混合物に添加する。少なくとも1種の添加剤(A)を添加する時点はここでは重要ではないが、添加は一般に焼結粉末(SP)の沈殿に先行する。ポリアミド(P)を溶媒(S)と混合する前に、少なくとも1種の添加剤(A)を溶媒(S)に添加することができる。同様に、ポリアミド(P)を溶媒(S)中に溶解する前に、少なくとも1種の添加剤(A)をポリアミド(P)と溶媒(S)との混合物に添加することも可能である。さらに、少なくとも1種の添加剤(A)をポリアミド溶液(PS)に添加することも可能である。
【0069】
その後続いて、少なくとも1種の添加剤(A)を含むポリアミド溶液(PS)から焼結粉末(SP)を沈殿させることができる。
【0070】
沈殿は、当業者に既知の方式によって行うことができる。例えば、焼結粉末(SP)は、少なくとも1種の添加剤(A)を含むポリアミド溶液(PS)の冷却によって、少なくとも1種の添加剤(A)を含むポリアミド溶液(PS)からの溶媒(S)の蒸留によって、又は少なくとも1種の添加剤(A)を含むポリアミド溶液(PS)への沈殿剤(PR)の添加によって、沈殿させることができる。好ましくは、焼結粉末(SP)は少なくとも1種の添加剤(A)を含むポリアミド溶液(PS)を冷却することによって沈殿させる。
【0071】
少なくとも1種の添加剤(A)を含むポリアミド溶液(PS)の冷却によって焼結粉末(SP)を沈殿させる場合、特に微細な焼結粉末(SP)粒子を製造するために、ポリアミド溶液(PS)を例えば冷却中に撹拌することができる。
【0072】
さらに好ましい実施形態では、焼結粉末(SP)は、沈殿剤(PR)で沈殿させることによって製造する。
【0073】
この目的のために、ポリアミド(P)を最初に溶媒(S)と混合し、任意に加熱しながら溶媒(S)中に溶解して、少なくとも1種の添加剤(A)を含むポリアミド溶液(PS)を得る。
【0074】
少なくとも1種の添加剤(A)を添加する時点は、本発明にとって本質ではない。本発明とって本質であることは、ポリアミド溶液が、沈殿剤(PR)の添加前に少なくとも1種の添加剤(A)を含むことのみである。好ましい実施形態では、少なくとも1種の添加剤(A)は同様に、沈殿の前に溶媒(S)中に溶解させる。
【0075】
使用する溶媒(S)は、厳密に1種の溶媒でよい。同様に、溶媒(S)として2種以上の溶媒を使用することも可能である。
【0076】
適切な溶媒(S)は、例えば、アルコール、ラクタム及びケトンからなる群から選択される。溶媒(S)は、好ましくは、アルコール及びラクタムからなる群から選択される。
【0077】
本発明はまた、溶媒(S)がアルコール、ラクタム及びケトンからなる群から選択される焼結粉末(SP)を製造する方法を提供する。
【0078】
本発明によれば、「ラクタム」は、環内に3~12個の炭素原子を、好ましくは4~6個の炭素原子を有する環状アミドを意味すると理解される。適切なラクタムの例は、3-アミノプロパノラクタム(β-ラクタム;β-プロピオラクタム)、4-アミノブタノラクタム(γ-ラクタム;γ-ブチロラクタム)、5-アミノペンタノラクタム(δ-ラクタム;δ-バレロラクタム)、6-アミノヘキサノラクタム(ε-ラクタム;ε-カプロラクタム)、7-アミノヘプタノラクタム(ζ-ラクタム;ζ-ヘプタノラクタム)、8-アミノオクタノラクタム(η-ラクタム;η-オクタノラクタム)、9-ノナノラクタム(θ-ラクタム;θ-ノナノラクタム)、10-デカノラクタム(ω-デカノラクタム)、11-ウンデカノラクタム(ω-ウンデカノラクタム)及び12-ドデカノラクタム(ω-ドデカノラクタム)からなる群から選択される。
【0079】
ラクタムは、非置換又は少なくとも一置換されていてよい。少なくとも一置換のラクタムを使用する場合、その窒素原子及び/又はその環炭素原子は、C1~C10-アルキル、C5~C6-シクロアルキル、及びC5~C10-アリールからなる群から独立して選択される1個、2個又はそれ以上の置換基を有してよい。
【0080】
適切なC1~C10-アルキル置換基は、例えばメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n-ブチル、sec-ブチル及びtert-ブチルである。適切なC5~C6-シクロアルキル置換基は、例えばシクロヘキシルである。好ましいC5~C10-アリール置換基は、フェニル及びアントラニルである。
【0081】
非置換のラクタムの使用が好ましく、γ-ラクタム(γ-ブチロラクタム)、δ-ラクタム(δ-バレロラクタム)及びε-ラクタム(ε-カプロラクタム)が好ましい。δ-ラクタム(δ-バレロラクタム)及びε-ラクタム(ε-カプロラクタム)が特に好ましく、ε-カプロラクタムが特に好ましい。
【0082】
溶媒(S)は、いずれの場合も溶媒(S)の全質量に基づき、好ましくは少なくとも55質量%のラクタム、より好ましくは少なくとも80質量%のラクタム、特に好ましくは少なくとも90質量%のラクタム、最も好ましくは少なくとも98質量%のラクタムを含む。
【0083】
さらに、溶媒(S)がラクタムからなることが最も好ましい。
【0084】
また、溶媒(S)が、いずれの場合も溶媒(S)の全質量に基づき、45質量%未満の水、より好ましくは20質量%未満の水、特に好ましくは10質量%未満の水、最も好ましくは2質量%未満の水を含むことが好ましい。
【0085】
溶媒(S)の水含量の下限は、いずれの場合も溶媒(S)の全質量に基づき、一般に0~0.5質量%の範囲、好ましくは0~0.3質量%の範囲、より好ましくは0~0.1質量%の範囲である。
【0086】
少なくとも1種の添加剤(A)を添加する時点に関しては、上記の詳細が適用可能である。
【0087】
ポリアミド溶液(PS)が少なくとも1種の添加剤(A)を含めばすぐに、焼結粉末(SP)を沈殿剤(PR)の添加によって沈殿させることが可能である。
【0088】
使用する沈殿剤(PR)は、厳密に1種の沈殿剤でよい。同様に、沈殿剤(PR)として2種以上の沈殿剤を使用することも可能である。
【0089】
適切な沈殿剤(PR)は、当業者に既知であり、例えば、水、メタノール及びエタノールからなる群から選択される。
【0090】
好ましい実施形態では、沈殿剤(PR)は、いずれの場合も沈殿剤(PR)の総質量に基づき、少なくとも50質量%の水、より好ましくは少なくとも70質量%の水、特に好ましくは少なくとも80質量%の水、最も好ましくは少なくとも90質量%の水を含む。
【0091】
本発明はまた、沈殿剤(PR)が、沈殿剤(PR)の総質量に基づき、少なくとも50質量%の水を含む、焼結粉末(SP)を製造する方法を提供する。
【0092】
さらに、最も好ましくは、沈殿剤(PR)は水からなる。
【0093】
すると、沈殿した焼結粉末(SP)は、溶媒(S)及び沈殿剤(PR)を含む溶液中で懸濁した状態である。この溶液は、沈殿していないポリアミド(P)を含んでもよく、少なくとも1種の添加剤(A)を含んでもよい。
【0094】
沈殿した焼結粉末(SP)は、当業者に既知の方式、例えば、デカント、ふるい分け、濾過又は遠心分離によって、この溶液から分離することができる。
【0095】
よって本発明はまた、選択的レーザー焼結によって成形体を製造する方法を提供し、該方法において、焼結粉末(SP)を以下の工程:
a)ポリアミド(P)を溶媒(S)中に溶解し、溶解前、溶解中及び/又は溶解後に少なくとも1種の添加剤(A)を添加して、少なくとも1種の添加剤(A)を含むポリアミド溶液(PS)を得る工程、
b)該方法の工程a)からの少なくとも1種の添加剤(A)を含むポリアミド溶液(PS)に沈殿剤(PR)を添加し、溶媒(S)及び沈殿剤(PR)を含む溶液中に懸濁した焼結粉末(SP)を含む懸濁液を得る工程、
c)該方法の工程b)で得られた懸濁液から焼結粉末(SP)を分離する工程、
を含む方法によって製造する。
【0096】
従って本発明はまた、焼結粉末(SP)を製造する方法であって、以下の工程:
a)ポリアミド(P)を溶媒(S)中に溶解し、溶解前、溶解中及び/又は溶解後に少なくとも1種の添加剤(A)を添加して、少なくとも1種の添加剤(A)を含むポリアミド溶液(PS)を得る工程、
b)該方法の工程a)からの少なくとも1種の添加剤(A)を含むポリアミド溶液(PS)に沈殿剤(PR)を添加し、溶媒(S)及び沈殿剤(PR)を含む溶液中に懸濁した焼結粉末(SP)を含む懸濁液を得る工程、
c)該方法の工程b)で得られた懸濁液から焼結粉末(SP)を分離する工程、
を含む方法を提供する。
【0097】
本発明によれば、少なくとも1種の添加剤(A)を工程b)の前に添加することが好ましい。
【0098】
より好ましくは、少なくとも1種の添加剤(A)は、溶解前、溶解中及び/又は溶解後、並びに該方法の工程b)の前に添加する。
【0099】
少なくとも1種の添加剤(A)は、得られる焼結粉末(SP)が、焼結粉末(SP)の全質量に基づき0.1質量%~5質量%の、好ましくは0.5質量%~2.5質量%の、より好ましくは0.5質量%~1質量%の少なくとも1種の添加剤(A)を含むような量で添加する。
【0100】
さらに好ましい実施形態では、該方法の工程a)でポリアミド(P)を溶媒(S)と混合し、次いで温度(T1)まで加熱し、加熱前、加熱中及び/又は加熱後に少なくとも1種の添加剤(A)を添加し、溶媒(S)中にポリアミド(P)を溶解させて、少なくとも1種の添加剤(A)を含むポリアミド溶液(PS)を得る。
【0101】
温度(T1)は、一般に溶媒(S)の沸点より低く、ポリアミド(P)の溶融温度よりも低い。好ましくは、温度(T1)は、溶媒(S)の沸点及び/又はポリアミド(P)の溶融温度より少なくとも50℃低く、より好ましくは、溶媒(S)の沸点及び/又はポリアミド(P)の溶融温度より少なくとも35℃低く、特に好ましくは、溶媒(S)の沸点及び/又はポリアミド(P)の溶融温度より少なくとも20℃低く、最も好ましくは溶媒(S)の沸点及び/又はポリアミド(P)の溶融温度より少なくとも20℃低い。
【0102】
温度(T1)はまた、一般に溶媒(S)の溶融温度よりも高い。好ましくは、温度(T1)は、溶媒(S)の溶融温度より少なくとも5℃高く、より好ましくは溶媒(S)の溶融温度より少なくとも10℃高く、特に好ましくは溶媒(S)の溶融温度より少なくとも30℃高い。
【0103】
少なくとも1種の添加剤(A)がポリアミド溶液(PS)中に存在すればすぐに、少なくとも1種の添加剤(A)を含むポリアミド溶液(PS)を温度(T2)まで冷却することが可能である。
【0104】
温度(T2)は一般に、溶媒(S)の溶融温度よりも高い。好ましくは、温度(T2)は、溶媒(S)の溶融温度より少なくとも5℃高く、より好ましくは溶媒(S)の溶融温度より少なくとも10℃高く、特に好ましくは溶媒(S)の溶融温度より少なくとも30℃高い。
【0105】
少なくとも1種の添加剤(A)を含むポリアミド溶液(PS)を温度(T2)まで冷却したら、沈殿剤(PR)を添加し、焼結粉末(SP)を沈殿させる。その後続いて、焼結粉末(SP)を分離することができる。
【0106】
焼結粉末(SP)の一部分は、温度(T2)までの冷却中にすでに沈殿している可能性もある。
【0107】
よって本発明はまた、選択的レーザー焼結によって成形体を製造する方法を提供し、該方法において、焼結粉末(SP)を以下の工程:
a)ポリアミド(P)及び溶媒(S)を含む混合物を、温度(T1)(温度(T1)を超える温度では、ポリアミド(P)が溶媒(S)中に溶解する)まで加熱し、加熱中及び/又は加熱後に少なくとも1種の添加剤(A)を添加して、少なくとも1種の添加剤(A)を含むポリアミド溶液(PS)を得る工程、
b)該方法の工程a)で得られた少なくとも1種の添加剤(A)を含むポリアミド溶液(PS)を温度(T2)まで冷却し、その後続いて沈殿剤(PR)を添加して、溶媒(S)及び沈殿剤(PR)を含む溶液中に懸濁した焼結粉末(SP)を含む懸濁液を得る工程、
c)該方法の工程b)で得られた懸濁液から焼結粉末(SP)を分離する工程、
を含む方法によって製造する。
【0108】
従って本発明はまた、焼結粉末(SP)を製造する方法であって、以下の工程:
a)ポリアミド(P)及び溶媒(S)を含む混合物を、温度(T1)(温度(T1)を超える温度では、ポリアミド(P)が溶媒(S)中に溶解する)まで加熱し、加熱前、加熱中及び/又は加熱後に少なくとも1種の添加剤(A)を添加して、少なくとも1種の添加剤(A)を含むポリアミド溶液(PS)を得る工程、
b)該方法の工程a)から得られた少なくとも1種の添加剤(A)を含むポリアミド溶液(PS)を温度(T2)まで冷却し、その後続いて沈殿剤(PR)を添加して、溶媒(S)及び沈殿剤(PR)を含む溶液中に懸濁した焼結粉末(SP)を含む懸濁液を得る工程、
c)該方法の工程b)で得られた懸濁液から焼結粉末(SP)を分離する工程、
を含む方法を提供する。
【0109】
溶媒(S)、少なくとも1種の添加剤(A)の添加、沈殿剤(PR)及び焼結粉末(SP)の分離に関し、上述した詳細及び好ましい例が適用可能である。
【0110】
特に好ましい実施形態では、ポリアミド(P)を溶媒(S)と混合して、曇り点温度(TC)(曇り点温度(TC)を超える温度ではポリアミド(P)が溶媒(S)中に完全に溶解する)を超える温度まで加熱し、少なくとも1種の添加剤(A)を含むポリアミド溶液(PS)を得る。加熱前、加熱中及び/又は加熱後に少なくとも1種の添加剤(A)を添加する。
【0111】
曇り点温度(TC)は、ポリアミド溶液(PS)の曇り度が明らかである温度及びそれより低い温度を意味すると理解される。曇り点温度(TC)より高温では、ポリアミド(P)は溶媒(S)中に完全に溶解する。
【0112】
ポリアミド溶液(PS)を加熱する、曇り点温度(TC)を超える温度は、一般に溶媒(S)の沸点より低く、ポリアミド(P)の溶融温度より低い。特に好ましくは、ポリアミド(P)と溶媒(S)との混合物を、溶媒(S)の沸点及び/又はポリアミド(P)の溶融温度より10℃~50℃の範囲で低い温度まで、より好ましくは溶媒(S)の沸点及び/又はポリアミド(P)の溶融温度より10~35℃の範囲で低い温度まで、特に溶媒(S)の沸点及び/又はポリアミド(P)の溶融温度より10~20℃の範囲で低い温度まで加熱する。
【0113】
ポリアミド溶液(PS)が少なくとも1種の添加剤(A)を含めばすぐに、ポリアミド溶液(PS)を曇り点温度(TC)より低い温度に冷却することが可能である。好ましくは、少なくとも1種の添加剤(A)を含むポリアミド溶液(PS)は、曇り点温度(TC)より少なくとも0.5℃、より好ましくは少なくとも1℃低い温度まで冷却する。
【0114】
少なくとも1種の添加剤(A)を含むポリアミド溶液(PS)を冷却する曇り点温度(TC)より低い温度は、一般に溶媒(S)の溶融温度よりも高い。好ましくは、その温度は、溶媒(S)の溶融温度より少なくとも5℃高く、より好ましくは溶媒(S)の溶融温度より少なくとも10℃高く、特に好ましくは溶媒(S)の溶融温度より少なくとも30℃高い。
【0115】
少なくとも1種の添加剤(A)を含むポリアミド溶液(PS)を曇り点温度(TC)より低い温度に冷却した後、沈殿剤(PR)を添加する。これにより、焼結粉末(SP)が沈殿する。その後続いて、焼結粉末(SP)を分離することが可能である。
【0116】
少なくとも1種の添加剤(A)を含むポリアミド溶液(PS)の冷却の過程で、焼結粉末(SP)の一部分がすでに沈殿している可能性もある。
【0117】
よって本発明はまた、選択的レーザー焼結によって成形体を製造する方法を提供し、該方法において、焼結粉末(SP)を以下の工程:
a)ポリアミド(P)及び溶媒(S)を含む混合物を、曇り点温度(TC)(曇り点温度(TC)を超える温度ではポリアミド(P)が溶媒(S)中に完全に溶解する)を超える温度まで加熱し、加熱前、加熱中及び/又は加熱後に少なくとも1種の添加剤(A)を添加して、少なくとも1種の添加剤(A)を含むポリアミド溶液(PS)を得る工程、
b)該方法の工程a)で得られた少なくとも1種の添加剤(A)を含むポリアミド溶液(PS)を曇り点温度(TC)より低い/等しい温度まで冷却し、その後続いて沈殿剤(PR)を添加して、溶媒(S)及び沈殿剤(PR)を含む溶液中に懸濁した焼結粉末(SP)を含む懸濁液を得る工程、
c)該方法の工程b)で得られた懸濁液から焼結粉末(SP)を分離する工程、
を含む方法によって製造する。
【0118】
従って本発明はまた、焼結粉末(SP)を製造する方法であって、以下の工程:
a)ポリアミド(P)及び溶媒(S)を含む混合物を、曇り点温度(TC)(曇り点温度(TC)を超える温度ではポリアミド(P)が溶媒(S)中に完全に溶解する)を超える温度まで加熱し、加熱前、加熱中及び/又は加熱後に少なくとも1種の添加剤(A)を添加して、少なくとも1種の添加剤(A)を含むポリアミド溶液(PS)を得る工程、
b)該方法の工程a)で得られた少なくとも1種の添加剤(A)を含むポリアミド溶液(PS)を曇り点温度(TC)以下の温度まで冷却し、その後続いて沈殿剤(PR)を添加して、溶媒(S)及び沈殿剤(PR)を含む溶液中に懸濁した焼結粉末(SP)を含む懸濁液を得る工程、
c)該方法の工程b)で得られた懸濁液から焼結粉末(SP)を分離する工程、
を含む方法を提供する。
【0119】
溶媒(S)、少なくとも1種の添加剤(A)の添加、沈殿剤(PR)及び焼結粉末(SP)の分離に関し、上述した詳細及び好ましい例が適用可能である。
【0120】
よって本発明はまた、選択的レーザー焼結によって成形体を製造する方法を提供し、該方法において、焼結粉末(SP)を以下の工程:
a)ポリアミド(P)及びラクタムを含む混合物を、曇り点温度(TC)(曇り点温度(TC)を超える温度ではポリアミド(P)がラクタム中に完全に溶解する)を超える温度まで加熱し、加熱前、加熱中及び/又は加熱後に少なくとも1種の添加剤(A)を添加して、ラクタム中に完全に溶解したポリアミド(P)を含む溶融物を得る工程、
b)該方法の工程a)で得られた溶融物を曇り点温度(TC)以下の温度まで冷却し、その後続いて水を添加して、水及びラクタムを含む溶液中に懸濁した焼結粉末(SP)を含む懸濁液を得る工程、及び
c)該方法の工程b)で得られた懸濁液から焼結粉末(SP)を分離する工程、
を含む方法によって製造する。
【0121】
従って本発明はまた、焼結粉末(SP)を製造する方法であって、以下の工程:
a)ポリアミド(P)及びラクタムを含む混合物を、曇り点温度(TC)(曇り点温度(TC)を超える温度ではポリアミド(P)がラクタム中に完全に溶解する)を超える温度まで加熱し、加熱前、加熱中及び/又は加熱後に少なくとも1種の添加剤(A)を添加して、ラクタム中に完全に溶解したポリアミド(P)を含む溶融物を得る工程、
b)該方法の工程a)で得られた溶融物を曇り点温度(TC)以下の温度まで冷却し、その後続いて水を添加して、水及びラクタムを含む溶液中に懸濁した焼結粉末(SP)を含む懸濁液を得る工程、及び
c)該方法の工程b)で得られた懸濁液から焼結粉末(SP)を分離する工程、
を含む方法を提供する。
【0122】
沈殿剤(PR)を用いる焼結粉末(SP)の沈殿により、特に狭い粒径分布がもたらされる。驚くべきことに、この方法によって製造された焼結粉末(SP)は、非常に均質な溶融フィルムを形成するため、特に高い球形度及び均質で滑らかな表面を有し、選択的レーザー焼結を使用する成形体の製造に特に好適であることが見出された。
【0123】
高い球形度は、粒子が特に丸い形状を有することを意味する。これに使用される尺度は、球形度値(SPHT)と呼ばれるものである。ここで、焼結粉末(SP)の粒子の球形度は、焼結粉末(SP)の粒子の表面積の、同体積の理想球の表面積に対する比を示す。球形度は、例えばCamsizerを使用して、画像分析によって決定することができる。
【0124】
本発明の方法により得ることができる焼結粉末(SP)は、一般に0.4~1.0の範囲の球形度を有する。
【0125】
粒径分布の広さの尺度は、D90値とD10値との間の差(D90からD10を差し引く)である。これらの2つの値が互いに近いほど、すなわち差が小さいほど、粒度分布は狭くなる。
【0126】
上述の方法により得ることができる焼結粉末(SP)は、D90とD10との間の差について、一般に10~100μmの範囲の、好ましくは10~50μmの範囲の値を有する。
【0127】
狭い粒径分布はまた、上記で特定した方法のうちの1つによって製造した焼結粉末(SP)の粒子を篩い分けすることにより、又は寸法によって、例えばウィンドシフティング(windsifting)によってそれら粒子を分離することにより、得ることが可能である。粒径によって分離するためのさらなる方法は、それ自体当業者には既知である。
【0128】
本発明のさらに好ましい実施形態では、ポリアミド(P)を最初に溶媒(S)に溶解して溶液を得ることによって焼結粉末(SP)を製造する。溶解は、例えば上記のように、当業者に既知の任意の方式によって行うことができるが、少なくとも1種の添加剤(A)を添加しないことが好ましい。その後続いてポリアミド(P)を溶液から沈殿させ、乾燥させてポリアミド(P)の粉末を得る。適切な沈殿の方式は、当業者に既知のすべての方式、例えばポリアミド溶液(PS)について上述したものを含む。
【0129】
次いで、得られたポリアミド(P)の粉末を少なくとも1種の添加剤(A)の溶液と接触させ、その後続いて乾燥させて焼結粉末(SP)を得る。少なくとも1種の添加剤(A)の溶液中の適切な溶媒は、当業者に既知のすべての溶媒であり、少なくとも1種の添加剤(A)を溶解し、好ましくは、ポリアミド(P)を、溶解させる場合はやや溶解させにくいもの、例えば水及び/又はアルコールである。ポリアミド(P)の粉末を少なくとも1種の添加剤(A)の溶液と接触させる適切な方式は、同様に、当業者に既知のすべての方式である。接触は、典型的には、10~30℃の範囲の温度で行う。
【0130】
焼結粉末(SP)は、ポリアミド(P)及び少なくとも1種の添加剤(A)だけでなく、さらなる添加剤(B)を含んでよい。さらなる添加剤(B)を含む焼結粉末(SP)の製造に関しては、添加剤(A)に関する詳細及び好ましい例が対応して適用可能である。
【0131】
さらなる添加剤(B)を含む焼結粉末を製造する方法は、それ自体当業者に既知である。例えばさらなる添加剤(B)は、上述のように少なくとも1種の添加剤(A)と共にポリアミド(P)と混合する及び/又はポリアミド(P)で沈殿させることができる。
【0132】
さらなる添加剤(B)が、焼結粉末(SP)中に存在するポリアミド(P)粒子に加えて個別の粒子として別に存在する場合、さらなる添加剤(B)が、焼結粉末(SP)中に存在するポリアミド(P)粒子と同様の粒子径を有することが特に好ましい。「同様の粒子径」とは、本発明によれば、粒子径のポリアミド(P)の粒子径との間の差が+/-20μm以下、好ましくは+/-10μm以下、より好ましくは+/-5μm以下であることを意味すると理解される。
【0133】
適切なさらなる添加剤(B)は、例えば、遷移金属酸化物などの無機顔料、フェノール、タルク、アルカリ土類金属シリケート及びアルカリ土類金属グリセロホスフェートなどの安定剤、ガラスビーズ、ガラスファイバー、カーボンファイバー、ナノチューブ及びチョークなどの充填剤、衝撃改質ポリマー、特にエチレンプロピレン(EPM)又はエチレン-プロピレン-ジエン(EPDM)ゴム又は熱可塑性ポリウレタンをベースにするもの、難燃剤、可塑剤及び接着促進剤からなる群から選択される。
【0134】
焼結粉末(SP)は、0質量%~20質量%のさらなる添加剤(B)を含んでよい;好ましくは、焼結粉末(SP)は、いずれの場合も焼結粉末(SP)の全質量に基づき、0質量%~10質量%のさらなる添加剤(B)、特に好ましくは0質量%~5質量%のさらなる添加剤(B)を含む。
【0135】
焼結粉末(SP)は一般に、
79.5質量%~99.5質量%のポリアミド(P)、
0.5質量%~2.5質量%の少なくとも1種の添加剤(A)、及び
任意に0質量%~20質量%のさらなる添加剤(B)、
を含み、
質量パーセントはいずれの場合も焼結粉末(SP)の全質量に基づく。
【0136】
好ましくは、焼結粉末(SP)は、
89.5質量%~99.5質量%のポリアミド(P)、
0.5質量%~2.0質量%の少なくとも1種の添加剤(A)、及び
0質量%~10質量%のさらなる添加剤(B)、
を含み、
質量パーセントはいずれの場合も焼結粉末(SP)の全質量に基づく。
【0137】
より好ましくは、焼結粉末(SP)は、
94.5質量%~99.5質量%のポリアミド(P)、
0.5質量%~2.0質量%の少なくとも1種の添加剤(A)、及び
0質量%~5質量%のさらなる添加剤(B)、
を含み、
質量パーセントはいずれの場合も焼結粉末(SP)の全質量に基づく。
【0138】
特に好ましくは、焼結粉末(SP)は、
98.0質量%~99.5質量%のポリアミド(P)及び
0.5質量%~2.0質量%の少なくとも1種の添加剤(A)、
を含み、
質量パーセントはいずれの場合も焼結粉末(SP)の全質量に基づく。
【0139】
ポリアミド(P)、少なくとも1種の添加剤(A)及びさらなる添加剤(B)の質量パーセンテージの総合計は、一般に加算すると100質量%である。
【0140】
ポリアミド
使用するポリアミド(P)は、厳密に1種のポリアミド(P)でよい。2種以上のポリアミド(P)の混合物を使用することも可能である。厳密に1種のポリアミド(P)を使用することが好ましい。
【0141】
適切なポリアミド(P)は一般に、70~350mL/gの、好ましくは70~240mL/gの粘度数を有する。本発明によれば、粘度数は、ISO307に従い25℃における96質量%硫酸中のポリアミド(P)の0.5質量%溶液から決定する。
【0142】
好ましいポリアミド(P)は、半結晶性ポリアミドである。適切なポリアミド(P)は、500~2000000g/molの範囲の、好ましくは5000~500000g/molの範囲の、より好ましくは10000~100000g/molの範囲の重量平均分子量(MW)を有する。重量平均分子量(Mw)は、ASTM D4001に従って決定する。
【0143】
適切なポリアミド(P)は、例えば、7~13環員を有するラクタムから誘導されるポリアミド(P)である。適切なポリアミド(P)には、ジカルボン酸とジアミンとの反応によって得られるポリアミド(P)がさらに含まれる。
【0144】
ラクタムから誘導されるポリアミド(P)の例には、ポリカプロラクタム、ポリカプリロラクタム及び/又はポリラウロラクタムから誘導されるポリアミドが含まれる。
【0145】
適切なポリアミド(P)は、さらに、ω-アミノアルキルニトリルから得ることができるものを含む。好ましいω-アミノアルキルニトリルは、ナイロン-6をもたらすアミノカプロニトリルである。さらに、ジニトリルをジアミンと反応させることができる。ここでは、重合してナイロン-6,6をもたらすアジポニトリル及びヘキサメチレンジアミンが好ましい。ニトリルの重合は水の存在下で行われ、直接重合とも言う。
【0146】
ジカルボン酸及びジアミンから得ることができるポリアミド(P)を使用する場合、6~36個の炭素原子を、好ましくは6~12個の炭素原子を、より好ましくは6~10個の炭素原子を有するジカルボキシアルカン(脂肪族ジカルボン酸)を用いてよい。芳香族ジカルボン酸も適している。
【0147】
ジカルボン酸の例には、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカンジオン酸及びテレフタル酸及び/又はイソフタル酸が含まれる。
【0148】
適切なジアミンには、例えば4~36個の炭素原子を有するアルカンジアミン、好ましくは6~12個の炭素原子を有するアルカンジアミン、特に6~8個の炭素原子を有するアルカンジアミン、及び芳香族ジアミン、例えばm-キシリレンジアミン、ジ(4-アミノフェニル)メタン、ジ(4-アミノシクロヘキシル)メタン、2,2-ジ(4-アミノフェニル)プロパン、2,2-ジ(4-アミノシクロヘキシル)プロパン及び1,5-ジアミノ-2-メチルペンタンが含まれる。
【0149】
好ましいポリアミド(P)は、ポリヘキサメチレンアジパミド、ポリヘキサメチレンセバカミド(polyhexamethylene sebacamide)及びポリカプロラクタム並びに特に5~95質量%のカプロラクタム単位の割合を有するナイロン-6/6,6である。
【0150】
上記及び下記のモノマーの2種以上の共重合により得ることができるポリアミド(P)、又は任意の所望の混合比での複数のポリアミド(P)の混合物も適している。特に好ましい混合物は、ナイロン-6,6と他のポリアミド(P)、特にナイロン-6/6,6との混合物である。
【0151】
よって適切なポリアミド(P)は、脂肪族、半芳香族又は芳香族ポリアミド(P)である。「脂肪族ポリアミド」という用語は、ポリアミド(P)が独占的に脂肪族モノマーから形成されていることを意味すると理解される。「半芳香族ポリアミド」という用語は、ポリアミド(P)が脂肪族及び芳香族モノマーの両方から形成されていることを意味すると理解される。「芳香族ポリアミド」という用語は、ポリアミド(P)が独占的に芳香族モノマーから形成されていることを意味すると理解される。
【0152】
以下の非限定的なリストは、本発明による方法への使用及び存在するモノマーに適した上記のポリアミド(P)及びさらなるポリアミド(P)を含む。
【0153】
ABポリマー:
PA4 ピロリドン
PA6 ε-カプロラクタム
PA7 エナントラクタム
PA8 カプリロラクタム
PA9 9-アミノペラルゴン酸
PA11 11-アミノウンデカン酸
PA12 ラウロラクタム
AA/BBポリマー:
PA46 テトラメチレンジアミン、アジピン酸
PA66 ヘキサメチレンジアミン、アジピン酸
PA69 ヘキサメチレンジアミン、アゼライン酸
PA610 ヘキサメチレンジアミン、セバシン酸
PA612 ヘキサメチレンジアミン、デカンジカルボン酸
PA613 ヘキサメチレンジアミン、ウンデカンジカルボン酸
PA1212 ドデカン-1,12-ジアミン、デカンジカルボン酸
PA1313 トリデカン-1,13-ジアミン、ウンデカンジカルボン酸
PA6T ヘキサメチレンジアミン、テレフタル酸
PA9T ノニルジアミン、テレフタル酸
PAMXD6 m-キシリレンジアミン、アジピン酸
PA6l ヘキサメチレンジアミン、イソフタル酸
PA6-3-T トリメチルヘキサメチレンジアミン、テレフタル酸
PA6/6T (PA6及びPA6T参照)
PA6/66 (PA6及びPA66参照)
PA6/12 (PA6及びPA12参照)
PA66/6/610 (PA66、PA6及びPA610参照)
PA6I/6T (PA6I及びPA6T参照)
PA PACM 12 ジアミノジシクロヘキシルメタン、ラウロラクタム
PA6I/6T/PACM PA6I/6T及びジアミノジシクロヘキシルメタンとして
PA12/MACMI ラウロラクタム、ジメチルジアミノジシクロヘキシルメタン、イソフタル酸
PA12/MACMT ラウロラクタム、ジメチルジアミノジシクロヘキシルメタン、テレフタル酸
PA PDA-T フェニレンジアミン、テレフタル酸
【0154】
よって本発明は、ポリアミド(P)が、PA4、PA6、PA7、PA8、PA9、PA11、PA12、PA46、PA66、PA69、PA610、PA612、PA613、PA1212、PA1313、PA6T、PA MXD6、PA6l、PA6-3-T、PA6/6T、PA6/66、PA66/6、PA6/12、PA66/6/610、PA6l/6T、PA PACM12、PA6l/6T/PACM、PA12/MACMI、PA12/MACMT、PA PDA-Tからなる群から選択される少なくとも1種のポリアミド、及び上記ポリアミドの2種以上から構成されるコポリアミドである方法を提供する。
【0155】
好ましくは、ポリアミド(P)はナイロン-6(PA6)、ナイロン-6,6(PA66)、ナイロン-6/6,6(PA6/66)、ナイロン-6,10(PA610)、ナイロン-6/6T(PA6/6T)、ナイロン-12(PA12)及びナイロン-12,12(PA1212)からなる群から選択される少なくとも1種のポリアミドである。
【0156】
特に好ましいポリアミド(P)は、ナイロン-6(PA6)及び/又はナイロン-6,6(PA66)であり、ナイロン-6(PA6)が特に好ましい。
【0157】
よって本発明はまた、ポリアミドが、ナイロン-6(PA6)、ナイロン-6,6(PA66)、ナイロン-6/6,6(PA6/66)、ナイロン-6,6/6(PA66/6)ナイロン-6,10(PA610)、ナイロン-6/6T(PA6/6T)、ナイロン-12(PA12)及びナイロン-12,12(PA1212)からなる群から選択される少なくとも1種のポリアミドである方法を提供する。
【0158】
添加剤(A)
本発明によって使用する少なくとも1種の添加剤(A)は、抗核形成剤とも言う。
【0159】
本発明によれば、少なくとも1種の添加剤(A)は、一般式(I)
【化4】
(式中、
R
1及びR
2は、H、C
1~C
10アルキル、C
6~C
10アリール及びNR
5R
6からなる群から独立して選択され、
このR
5及びR
6は、H、C
1~C
10アルキル及びC
6~C
10アリールからなる群から独立して選択され、
又はR
1及びR
2は、一緒になって式(Ia)又は(Ib)
【化5】
(式中、
R
7及びR
8は、H、C
1~C
10アルキル及びC
6~C
10アリールからなる群から独立して選択される)の単位を形成し、
R
3及びR
4は、H、C
1~C
10アルキル、C
6~C
10アリール及びNR
9R
10からなる群から独立して選択され、
このR
9及びR
10は、H、C
1~C
10アルキル及びC
6~C
10アリールからなる群から独立して選択され、
又はR
3及びR
4は、一緒になって式(Ic)又は(Id)
【化6】
(式中、
R
11及びR
12は、H、C
1~C
10アルキル及びC
6~C
10アリールからなる群から独立して選択される)の単位を形成し、
Xは、N、O
+、S
+又はN
+R
13であり、
このR
13は、H、C
1~C
10アルキル及びC
6~C
10アリールからなる群から選択され、
この式(I)の化合物は、XがO
+、S
+又はN
+R
13であるときは正電荷を有し、そこでこの式(I)の化合物はアニオンY
-を有し、
このY
-は、ヒドロキシド、クロリド、ブロミド、イオダイド、サルフェート、サルファイト、ホスフェート及びホスファイトからなる群から選択される)
の化合物からなる群から選択される。
【0160】
一般式(I)の化合物が正電荷を有する場合、式(I)に存在するアニオンY-は一般に正電荷を相殺することが当業者には明白であろう。これは例えば、一般式(I)の化合物が正電荷を有し、アニオンY-がクロリドである場合、一般式(I)の正電荷及びアニオンY-の負電荷が互いに相殺することを意味する。一般式(I)の化合物が正電荷を有し、アニオンY-が例えばホスフェートである場合、アニオンは三重の負電荷を有する。電荷の1つは一般式(I)の化合物の正電荷を相殺し、残りの2つの負電荷は一般式(I)のさらなる化合物の正電荷を相殺する。これは当業者には既知である。
【0161】
好ましい実施形態では、式(I)の化合物中、
R1及びR2は、H、C1~C4アルキル、フェニル及びNR5R6からなる群から独立して選択され、
このR5及びR6は、H、C1~C4アルキル及びフェニルからなる群から独立して選択され、
又はR1及びR2は、一緒になって式(Ia)又は(Ib)
(式中、R7及びR8は、H、C1~C4アルキル及びフェニルからなる群から独立して選択される)の単位を形成し、
R3及びR4は、H、C1~C4アルキル、フェニル及びNR9R10からなる群から独立して選択され、
このR9及びR10は、H、C1~C4アルキル及びフェニルからなる群から独立して選択され、
又はR3及びR4は、一緒になって式(Ic)又は(Id)
(式中、R11及びR12は、H、C1~C4アルキル及びフェニルからなる群から独立して選択される)の単位を形成し、
Xは、N、S+又はN+R13であり、
このR13は、H、C1~C4アルキル及びフェニルからなる群から選択され、
この式(I)の化合物は、XがS+又はN+R13であるときは正電荷を有し、そこでこの式(I)の化合物はアニオンY-を有し、
このY-は、ヒドロキシド、クロリド、ブロミド、イオダイド、サルフェート、サルファイト、ホスフェート及びホスファイトからなる群から選択される。
【0162】
さらに好ましい実施形態では、式(I)の化合物中、
R1及びR2は、H、C1~C4アルキル及びNR5R6からなる群から独立して選択され、
このR5及びR6は、H及びC1~C4アルキルからなる群から独立して選択され、
R3及びR4は、H、C1~C4アルキル及びNR9R10からなる群から独立して選択され、
このR9及びR10は、H及びC1~C4アルキルからなる群から独立して選択され、
Xは、N、S+又はN+R13であり、
このR13は、H及びC1~C4アルキルからなる群から選択され、
この式(I)の化合物は、XがS+又はN+R13であるときは正電荷を有し、そこでこの式(I)の化合物はアニオンY-を有し、
このY-は、ヒドロキシド、クロリド、ブロミド、イオダイド、サルフェート、サルファイト、ホスフェート及びホスファイトからなる群から選択される。
【0163】
特に好ましい実施形態では、式(I)の化合物中、
R
1及びR
2は、H、メチル及びNR
5R
6からなる群から独立して選択され、
このR
5及びR
6は、H、メチル及びフェニルからなる群から独立して選択され、
又はR
1及びR
2は、一緒になって式(Ie)又は(If)
【化7】
の単位を形成し、
R
3及びR
4は、H、メチル及びNR
9R
10からなる群から独立して選択され、
このR
9及びR
10は、H、メチル及びフェニルからなる群から独立して選択され、
又はR
3及びR
4は、一緒になって式(Ig)又は(Ih)
【0164】
【化8】
の単位を形成し、
Xは、N、S
+又はN
+R
13であり、
このR
13は、フェニルであり、
この式(I)の化合物は、XがS
+又はN
+R
13であるときは正電荷を有し、そこでこの式(I)の化合物はアニオンY
-を有し、
このY
-は、ヒドロキシド及びクロリドからなる群から選択される。
【0165】
式(I)が正電荷を有する時、アニオンY-は好ましくはヒドロキシド及びクロリドからなる群から選択される。
【0166】
よって本発明はまた、式(I)の化合物中のXがN、O+、S+又はN+R13であり、この式(I)の化合物は、XがO+、S+又はN+R13であるときは正電荷を有し、そこでこの式(I)の化合物はアニオンY-を有し、このY-は、ヒドロキシド及びクロリドからなる群から選択される方法を提供する。
【0167】
本発明の文脈において、ヒドロキシドはOH-を意味し、クロリドはCl-を意味し、ブロミドはBr-を意味し、イオダイドはI-を意味し、サルフェートはSO4
2-を意味し、サルファイトはSO3
2-を意味し、ホスフェートはPO4
3-を意味し、ホスファイトはPO3
3-を意味すると理解される。
【0168】
本発明の文脈において、C1~C10-アルキルは、1~10個の炭素原子を有する脂肪族炭化水素ラジカルを意味すると理解される。これらは分岐又は非分岐の形態であってよい。1~10個の炭素原子を有する脂肪族炭化水素ラジカルは、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル及びtert-ブチルからなる群から選択される。
【0169】
本発明の一実施形態では、C1~C10-アルキルは置換されていてもよい。適切な置換基は、例えば、F、Cl、Br、OH、CN、NH2及びC1~C10-アルキルからなる群から選択される。好ましくは、C1~C10-アルキルは非置換である。
【0170】
本発明の文脈において、C6~C10-アリールは、6~10個の炭素を有する芳香族環系を意味すると理解される。芳香族環系は、単環式又は二環式であってよい。C6~C10-アリールの例は、フェニル及びナフチルである。C6~C10-アリールは、さらに置換されていてもよい。適切な置換基は、例えば、F、Cl、Br、OH、CN、NH2及びC1~C10アルキルからなる群から選択される。好ましくは、C6~C10-アリールは非置換である。
【0171】
式(Ia)、(Ib)、(Ic)及び(Id)において、「*」は、ラジカルが結合している式(I)の炭素原子への結合を示す。式(Ib)、(Id)、(Ie)、(If)、(Ig)及び(Ih)は無論、式(Ib‘)、(Id‘)、(Ie‘)、(If‘)、(Ig‘)及び(Ih‘)の異性化合物を含む。
【0172】
【0173】
本発明によれば、式(Ib)、(Id)、(Ie)、(If)、(Ig)及び(Ih)は無論、対応するメソメリー化合物も含む。
【0174】
R
1及びR
2が一緒になって式(Ia)の単位を形成する場合、式(I)の化合物は式(I1)
【化10】
(式中、
R
3及びR
4は、H、C
1~C
10アルキル、C
6~C
10アリール及びNR
9R
10からなる群から独立して選択され、
このR
9及びR
10は、H、C
1~C
10アルキル及びC
6~C
10アリールからなる群から独立して選択され、
又はR
3及びR
4は、一緒になって式(Ic)又は(Id)
(式中、
R
11及びR
12は、H、C
1~C
10アルキル及びC
6~C
10アリールからなる群から独立して選択される)の単位を形成し、
R
7及びR
8は、H、C
1~C
10アルキル及びC
6~C
10アリールからなる群から独立して選択され、
Xは、N、O
+、S
+又はN
+R
13であり、
このR
13は、H、C
1~C
10アルキル及びC
6~C
10アリールからなる群から選択され、
この式(I)の化合物は、XがO
+、S
+又はN
+R
13であるときは正電荷を有し、そこでこの式(I)の化合物はアニオンY
-を有し、
このY
-は、ヒドロキシド、クロリド、ブロミド、イオダイド、サルフェート、サルファイト、ホスフェート及びホスファイトからなる群から選択される)
の化合物を含む。
【0175】
R
1及びR
2が一緒になって式(Ib)の単位を形成する場合、式(I)の化合物は式(I2)
【化11】
(式中、
R
3及びR
4は、H、C
1~C
10アルキル、C
6~C
10アリール及びNR
9R
10からなる群から独立して選択され、
このR
9及びR
10は、H、C
1~C
10アルキル及びC
6~C
10アリールからなる群から独立して選択され、
又はR
3及びR
4は、一緒になって式(Ic)又は(Id)
(式中、
R
11及びR
12は、H、C
1~C
10アルキル及びC
6~C
10アリールからなる群から独立して選択される)の単位を形成し、
R
7は、H、C
1~C
10アルキル及びC
6~C
10アリールからなる群から選択され、
Xは、N、O
+、S
+又はN
+R
13であり、
このR
13は、H、C
1~C
10アルキル及びC
6~C
10アリールからなる群から選択され、
この式(I)の化合物は、XがO
+、S
+又はN
+R
13であるときは正電荷を有し、そこでこの式(I)の化合物はアニオンY
-を有し、
このY
-は、ヒドロキシド、クロリド、ブロミド、イオダイド、サルフェート、サルファイト、ホスフェート及びホスファイトからなる群から選択される)
の化合物を含む。
【0176】
R
3及びR
4が一緒になって式(Ic)の単位を形成する場合、式(I)の化合物は式(I3)
【化12】
(式中、
R
1及びR
2は、H、C
1~C
10アルキル、C
6~C
10アリール及びNR
5R
6からなる群から独立して選択され、
このR
5及びR
6は、H、C
1~C
10アルキル及びC
6~C
10アリールからなる群から独立して選択され、
又はR
1及びR
2は、一緒になって式(Ia)又は(Ib)
(式中、
R
7及びR
8は、H、C
1~C
10アルキル及びC
6~C
10アリールからなる群から独立して選択される)の単位を形成し、
R
11及びR
12は、H、C
1~C
10アルキル及びC
6~C
10アリールからなる群から独立して選択され、
Xは、N、O
+、S
+又はN
+R
13であり、
このR
13は、H、C
1~C
10アルキル及びC
6~C
10アリールからなる群から選択され、
この式(I)の化合物は、XがO
+、S
+又はN
+R
13であるときは正電荷を有し、そこでこの式(I)の化合物はアニオンY
-を有し、
このY
-は、ヒドロキシド、クロリド、ブロミド、イオダイド、サルフェート、サルファイト、ホスフェート及びホスファイトからなる群から選択される)
の化合物を含む。
【0177】
R
3及びR
4が一緒になって式(Id)の単位を形成する場合、式(I)の化合物は式(I4)
【化13】
(式中、
R
1及びR
2は、H、C
1~C
10アルキル、C
6~C
10アリール及びNR
5R
6からなる群から独立して選択され、
このR
5及びR
6は、H、C
1~C
10アルキル及びC
6~C
10アリールからなる群から独立して選択され、
又はR
1及びR
2は、一緒になって式(Ia)又は(Ib)
(式中、
R
7及びR
8は、H、C
1~C
10アルキル及びC
6~C
10アリールからなる群から独立して選択される)の単位を形成し、
R
11は、H、C
1~C
10アルキル及びC
6~C
10アリールからなる群から選択され、
Xは、N、O
+、S
+又はN
+R
13であり、
このR
13は、H、C
1~C
10アルキル及びC
6~C
10アリールからなる群から選択され、
この式(I)の化合物は、XがO
+、S
+又はN
+R
13であるときは正電荷を有し、そこでこの式(I)の化合物はアニオンY
-を有し、
このY
-は、ヒドロキシド、クロリド、ブロミド、イオダイド、サルフェート、サルファイト、ホスフェート及びホスファイトからなる群から選択される)
の化合物を含む。
【0178】
特に好ましい実施形態では、少なくとも1種の添加剤(A)は、式(II)の、式(III)の、式(IV)の、式(V)の、式(VI)の、式(VII)の、式(VIII)の及び式(IX)の化合物からなる群から選択される
【化14】
(式中、式(IV)の、式(V)の、式(VI)の、式(VII)の、式(VIIIの)及び式(IX)の化合物において、Y
-は、ヒドロキシド、クロリド、ブロミド、イオダイド、サルフェート、サルファイト、ホスフェート及びホスファイトからなる群から選択される。好ましくは、Y
-は、ヒドロキシド及びクロリドからなる群から選択される)。
【0179】
式(II)の化合物は、メチレンブルーとしても知られている染料である。他の名称は、N,N,N’,N’-テトラメチレンチオニンクロリド及びベーシックブルー9(色指数52015;CAS番号61-73-4/122965-43-9)である。
【0180】
式(III)の化合物はニュートラルレッドとしても知られている染料である。ニュートラルレッドは、3-アミノ-7-ジメチルアミノ-2-メチルフェナジンヒドロクロリド/トリレンレッド(色指数50040;CAS番号553-24-2)の名称でも知られている。
【0181】
式(IV)~(IX)の化合物はニグロシンである。後者は、例えば、ニトロベンゼン、アニリン及びアニリンヒドロクロリドを銅又は鉄の存在下で加熱することによって製造する。ニグロシンは、「ソルベントブラック5」(色指数50415)としても知られる合成黒色又は灰色の染料である。ニグロシンの主成分は、式(IV)~(IX)の化合物である。
【0182】
好ましい実施形態では、少なくとも1種の添加剤(A)は、ニグロシン、メチレンブルー及びニュートラルレッドからなる群から選択される。
【0183】
よって本発明はまた、少なくとも1種の添加剤(A)が、ニグロシン、メチレンブルー及びニュートラルレッドからなる群から選択される方法も提供する。
【0184】
さらに好ましい実施形態では、少なくとも1種の添加剤(A)は、ニグロシン、メチレンブルー及びニュートラルレッドからなる群から選択される。
【0185】
さらに好ましい実施形態では、少なくとも1種の添加剤(A)は、メチレンブルー及びニュートラルレッドからなる群から選択される。
【0186】
さらなる実施形態では、少なくとも1種の添加剤(A)は、リチウムクロリド、ニグロシン、メチレンブルー及びニュートラルレッドからなる群から選択される。
【0187】
さらなる実施形態では、少なくとも1種の添加剤(A)は、リチウムクロリド及びニグロシンからなる群から選択される。
【0188】
成形体
本発明の成形体は、さらに説明する選択的レーザー焼結という方法によって得られる。
【0189】
選択的暴露においてレーザーによって溶融した焼結粉末(SP)は、暴露後に再凝固し、それによって本発明の成形体を形成する。成形体は、凝固直後に粉末床から除去することができる;同様に、成形体を最初に冷却してから、その後にそれらを粉末床から除去することが可能である。付着しているポリマー粒子は、既知の方式によって表面から機械的に除去することができる。成形体の表面処理方式には、例えば、振動粉砕又はバレル研磨、サンドブラスト、ガラスビーズブラスト又はマイクロビーズブラストが含まれる。
【0190】
得られた成形体をさらに処理に付すること、又は例えば成形体を被覆することによって表面を処理することも可能である。
【0191】
本発明の成形体は、ポリアミド(P)、及びいずれの場合も成形体の全質量に基づき0.1質量%~5質量%の少なくとも1種の添加剤(A)、好ましくは0.5質量%~2.5質量%の範囲の、特に好ましくは0.5質量%~1質量%の範囲の少なくとも1種の添加剤(A)を含む。本発明によれば、少なくとも1種の添加剤(A)は、焼結粉末(SP)中に存在していた少なくとも1種の添加剤(A)、及びポリアミド(P)は、焼結粉末(SP)中に存在していたポリアミド(P)である。
【0192】
さらに、成形体はさらなる添加剤(B)を含んでよい。さらなる添加剤(B)は、焼結粉末(SP)中に既に存在していたさらなる添加剤(B)である。
【0193】
本発明の一実施形態では、成形体は、成形体の全質量に基づき0質量%~50質量%のさらなる添加剤(B)を含む。好ましい実施形態では、その成形体は0質量%~30質量%のさらなる添加剤(B)を含む。特に好ましい実施態様では、その成形体は0質量%~20質量%のさらなる添加剤(B)を含む。成形体は、特に好ましくは、いずれの場合も成形体の全質量に基づき、0質量%~5質量%のさらなる添加剤(B)を含む。
【0194】
本発明はまた、選択的レーザー焼結によって成形体を製造するための方法を提供し、該方法において、焼結粉末(SP)を、焼結粉末(SP)を製造するための本発明の方法によって製造する。
【0195】
選択的レーザー焼結によって成形体を製造するための本方法に関しては、上述した詳細及び好ましい例が対応して適用可能である。
【0196】
よって本発明はまた、本発明の方法によって得ることができる成形体を提供する。
【実施例】
【0197】
以下の成分を使用した:
- ポリアミド(P):
(P1)ナイロン-12 (PA2200、EOS)
(P2)ナイロン-6 (Ultramid(登録商標)B27、BASF SE)
(P3)ナイロン-6,10 (Ultramid(登録商標)S3k Balance、BASF SE)
(P4)ナイロン-6,6 (Ultramid(登録商標)A27、BASF SE)
- 添加剤(A):
(A1)ニグロシン (Orient Chemical)
(A2)ニュートラルレッド (3-アミノ-7-ジメチルアミノ-2-メチルフェナジンヒドロクロリド;Carl Roth)
(A3)リチウムクロリド
【0198】
焼結粉末の製造
表1は、焼結粉末の製造が沈殿によるものか粉砕によるものかを示す。
【0199】
粉砕によって製造した焼結粉末のために、表1に報告する成分を、表1に詳述する比率で、速度200rpm、バレル温度240℃及び50kg/hのスループットでの二軸スクリュー押出機(ZSK40)において配合し、その後続いて押出成形でペレット化した。このようにして得たペレット化材料を極低温粉砕に付して焼結粉末(SP)を得た。
【0200】
沈殿により焼結粉末を製造するために、ポリアミド(P)を表1に詳述する量で、いずれの場合も溶媒の全質量に基づき40質量%のカプロラクタム及び60質量%の水からなる溶媒中で、120℃で2時間、160℃で2時間、175℃で0.5時間の温度傾斜を使用して溶解し、その後続いて冷却により沈殿させた。水洗及び乾燥後、ポリアミド(P)を粉末として得た。このようにして得たポリアミド(P)の粉末を、その後続いて添加剤(A)の溶液と接触させたが、ポリアミド(P)及び添加剤(A)は表1に詳述する比率で用いた。添加剤(A)の溶液に使用した溶媒は、添加剤(A)としてのニグロシンにはエタノール、添加剤(A)としてのニュートラルレッド又はリチウムクロリドには水であった。乾燥後、焼結粉末(SP)を得た。
【0201】
【0202】
焼結粉末の溶融の開始温度(T
M
開始)及び結晶化の開始温度(T
C
開始)を
図1に記載したように決定した。これを焼結窓(W)の決定に使用した。
【0203】
反りを決定するために引張り試験片も作製した。
【0204】
引っ張り試験片の作製
焼結粉末は、表2に詳述する温度で0.1mmの層の厚さでキャビティに導入した。その後続いて焼結粉末を、表2に詳述するレーザーパワー出力と詳述するポイント間隔とを有するレーザーに暴露したが、ここで暴露中の試料に対するレーザーの速度は、表2に詳述する通りであった。ポイント間隔は、レーザトラック間隔又はレーン間隔としても知られている。選択的レーザー焼結は、典型的には縞状の走査を含む。ポイント間隔は、縞の中心間の距離、すなわち2つの縞のレーザービームの2つの中心間の距離を示す。
【0205】
【0206】
反りの決定
得られた焼結した試験片の反りを決定するために、焼結した試験片を、凹面を下にして平面上に置いた。平面と、焼結した試験片の中央の上端との間の距離(am)を決定した。さらに、焼結した試験片の中央の厚さ(dm)も決定した。そして%で表す反りは、次の式で決定する:
V=100 ・ (am-dm) / dm
【0207】
焼結した試験片の寸法は、典型的には、長さが80mm、幅が10mm、厚さが4mmであった。
【0208】
焼結窓(W)及び反りの測定結果を表3に報告する。
【0209】
【0210】
表3から明らかなように、焼結粉末(SP)中に少なくとも1種の添加剤(A)を使用すると、焼結窓が著しく広がる。さらに、反りが著しく減少する。