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特許6992097レジストパターンの製造方法、回路基板の製造方法及びタッチパネルの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-10
(45)【発行日】2022-01-13
(54)【発明の名称】レジストパターンの製造方法、回路基板の製造方法及びタッチパネルの製造方法
(51)【国際特許分類】
   G03F 7/004 20060101AFI20220105BHJP
   G03F 7/023 20060101ALI20220105BHJP
   G03F 7/039 20060101ALI20220105BHJP
   G03F 7/38 20060101ALI20220105BHJP
   G03F 7/20 20060101ALI20220105BHJP
   G06F 3/041 20060101ALI20220105BHJP
   H05K 3/28 20060101ALI20220105BHJP
【FI】
G03F7/004 512
G03F7/023
G03F7/039 601
G03F7/38 501
G03F7/20 501
G06F3/041 660
H05K3/28 D
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2019572291
(86)(22)【出願日】2019-02-15
(86)【国際出願番号】 JP2019005642
(87)【国際公開番号】W WO2019160101
(87)【国際公開日】2019-08-22
【審査請求日】2020-05-12
(31)【優先権主張番号】P 2018026223
(32)【優先日】2018-02-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】306037311
【氏名又は名称】富士フイルム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】特許業務法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松田 知樹
(72)【発明者】
【氏名】山田 悟
(72)【発明者】
【氏名】石坂 壮二
【審査官】川村 大輔
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2008/065827(WO,A1)
【文献】特開2000-321775(JP,A)
【文献】特開2016-057612(JP,A)
【文献】特表2008-537597(JP,A)
【文献】特開2016-046031(JP,A)
【文献】特開2006-317501(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0255100(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03F 7/004-7/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
仮支持体と、重合体及び光酸発生剤を含むポジ型感光性樹脂層と、を有する転写材料の、前記仮支持体を基準として前記ポジ型感光性樹脂層側の最外層を基板に接触させて前記基板に貼り合わせる工程、
前記貼り合わせる工程後の、前記ポジ型感光性樹脂層を加熱する工程、
前記加熱する工程後の前記ポジ型感光性樹脂層をパターン露光する工程、及び、
前記パターン露光された前記ポジ型感光性樹脂層を現像する工程、を含み、
前記貼り合わせる工程後、前記加熱する工程前に、前記ポジ型感光性樹脂層及び前記基板を含む構造体をロールとして巻き取る工程を含み、
前記加熱する工程が、前記ロールを加熱する工程であり、
前記加熱する工程後、前記パターン露光する工程前に、前記ロールを巻き出す工程を含む、
レジストパターンの製造方法。
【請求項2】
仮支持体と、重合体及び光酸発生剤を含むポジ型感光性樹脂層と、を有する転写材料の、前記仮支持体を基準として前記ポジ型感光性樹脂層側の最外層を基板に接触させて前記基板に貼り合わせる工程、
前記貼り合わせる工程後の、前記ポジ型感光性樹脂層を加熱する工程、
前記加熱する工程後の前記ポジ型感光性樹脂層をパターン露光する工程、及び、
前記パターン露光された前記ポジ型感光性樹脂層を現像する工程、を含み、
前記加熱する工程における加熱温度が、前記重合体の1気圧下でのガラス転移温度以上の温度である、
レジストパターンの製造方法。
【請求項3】
前記重合体が、酸分解性基で保護された酸基を有する、請求項1又は請求項2に記載のレジストパターンの製造方法。
【請求項4】
前記加熱する工程における加熱温度が、前記重合体における前記酸分解性基で保護された酸基の1気圧下での分解温度以下である、請求項に記載のレジストパターンの製造方法。
【請求項5】
仮支持体と、重合体及び光酸発生剤を含むポジ型感光性樹脂層と、を有する転写材料の、前記仮支持体を基準として前記ポジ型感光性樹脂層側の最外層を基板に接触させて前記基板に貼り合わせる工程、
前記貼り合わせる工程後の、前記ポジ型感光性樹脂層を加熱する工程、
前記加熱する工程後の前記ポジ型感光性樹脂層をパターン露光する工程、及び、
前記パターン露光された前記ポジ型感光性樹脂層を現像する工程、を含み、
前記重合体が、酸分解性基で保護された酸基を有
前記重合体における前記酸分解性基で保護された酸基を有する構成単位が、下記式A3により表される構成単位である、
レジストパターンの製造方法。
【化1】

式A3中、R31及びR32はそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基又はアリール基を表し、少なくともR31及びR32のいずれか一方がアルキル基又はアリール基であり、R33はアルキル基又はアリール基を表し、R31又はR32と、R33とが連結して環状エーテルを形成してもよく、R34は水素原子又はメチル基を表し、Xは単結合又はアリーレン基を表し、Yは-S-、又は-O-を表す。
【請求項6】
仮支持体と、重合体及び光酸発生剤を含むポジ型感光性樹脂層と、を有する転写材料の、前記仮支持体を基準として前記ポジ型感光性樹脂層側の最外層を基板に接触させて前記基板に貼り合わせる工程、
前記貼り合わせる工程後の、前記ポジ型感光性樹脂層を加熱する工程、
前記加熱する工程後の前記ポジ型感光性樹脂層をパターン露光する工程、及び、
前記パターン露光された前記ポジ型感光性樹脂層を現像する工程、を含み、
前記加熱する工程における前記加熱を、0.15MPa以上である雰囲気下で行う、
レジストパターンの製造方法。
【請求項7】
前記基板として、導電層及び基材を有する基板を用い、前記導電層上に請求項1~請求項のいずれか1項に記載のレジストパターンの製造方法によりレジストパターンを製造する工程、及び、
前記レジストパターンを製造する工程により得られた前記レジストパターンをマスクとして用い、前記導電層をエッチングする工程、を含む、
回路基板の製造方法。
【請求項8】
前記導電層が銅を含む層を含む、請求項に記載の回路基板の製造方法。
【請求項9】
前記基材が、シクロオレフィンポリマーを含む、請求項又は請求項に記載の回路基板の製造方法。
【請求項10】
請求項~請求項のいずれか1項に記載の回路基板の製造方法を含む、タッチパネルの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、レジストパターンの製造方法、回路基板の製造方法及びタッチパネルの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、静電容量型入力装置などのタッチパネルを備えた表示装置等(例えば、有機エレクトロルミネッセンス(EL)表示装置、液晶表示装置など)においては、視認部のセンサーに相当する電極パターン、周辺配線部分及び取り出し配線部分の配線などの回路配線がタッチパネル内部に設けられている。
このような、パターン化した回路配線の形成には、必要とするパターン形状を得るための工程数が少ないといった理由から、ドライフィルムレジストを感光性転写材料として用いてレジストパターンを製造することが検討されている。
具体的には、ドライフィルムレジストを用いて、基板上に感光性樹脂層(感光性樹脂組成物の層)を形成し、上記感光性樹脂層を、パターンを有するマスクを介する等によりパターン露光し、露光後の感光性樹脂層を現像してレジストパターンを得、その後基板に対してエッチング処理を行うことにより、回路配線を形成する方法が広く使用されている。
【0003】
特開平11-327164号公報には、感光性樹脂組成物層と支持体フィルムからなるフォトレジストフィルムを感光性樹脂組成物層側を基板に接するようにラミネートした後、温度20~100℃、圧力1kg/cm以上で1~60分間オートクレーブ処理をした後、露光及び現像をすることを特徴する画像形成方法が記載されている。
特開平10-20113号公報には、透明基板上に、ベースフイルムと着色された感光性樹脂層を有する感光性フイルムを、(1)着色された感光性樹脂層が上記基板に面するように貼り合わせる工程、(2)パターン状に露光する工程及び(3)現像工程を含む工程を繰り返して多色パターンを形成させるカラーフイルタの製造法において、二色目以降の工程において、(1)の工程後上記感光性フィルムが貼り合わされた上記基板を急冷し、その後上記(2)の工程の前に上記基板を高圧下に放置する工程を含むことを特徴とするカラーフイルタの製造法が記載されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明者らは、ポジ型感光性樹脂層を有する感光性転写材料を用いてレジストパターンの製造を行う場合、露光及び現像後に、ポジ型感光性樹脂層における基板側の表面付近において現像が不十分となり、基板の表面に現像しきれない残膜が残ってしまう、等の問題が発生し、解像度の高いレジストパターンの形成が困難となる場合があることを見出した。
【0005】
本開示の一実施形態が解決しようとする課題は、解像度に優れたレジストパターンが得られるレジストパターンの製造方法、及び、上記レジストパターンの製造方法を用いた回路基板の製造方法及びタッチパネルの製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するための手段には、以下の態様が含まれる。
<1> 仮支持体と、重合体及び光酸発生剤を含むポジ型感光性樹脂層と、を有する転写材料の、上記仮支持体を基準として上記ポジ型感光性樹脂層側の最外層を基板に接触させて上記基板に貼り合わせる工程、上記貼り合わせる工程後の、上記ポジ型感光性樹脂層を加熱する工程、上記加熱する工程後の上記ポジ型感光性樹脂層をパターン露光する工程、及び、上記パターン露光された上記ポジ型感光性樹脂層を現像する工程、を含む
レジストパターンの製造方法。
<2> 上記貼り合わせる工程後、上記加熱する工程前に、上記ポジ型感光性樹脂層及び上記基板を含む構造体をロールとして巻き取る工程を含み、上記加熱する工程が、上記ロールを加熱する工程であり、上記加熱する工程後、上記パターン露光する工程前に、上記ロールを巻き出す工程を含む、上記<1>に記載のレジストパターンの製造方法。
<3> 上記加熱する工程における加熱温度が、上記重合体の1気圧下でのガラス転移温度以上の温度である、上記<1>又は<2>に記載のレジストパターンの製造方法。
<4> 上記重合体が、酸分解性基で保護された酸基を有する、上記<1>~<3>のいずれか1つに記載のレジストパターンの製造方法。
<5> 上記加熱する工程における加熱温度が、上記重合体における上記酸分解性基で保護された酸基の1気圧下での分解温度以下である、上記<4>に記載のレジストパターンの製造方法。
<6> 上記重合体における上記酸分解性基で保護された酸基を有する構成単位が、下記式A3により表される構成単位である、上記<4>又は<5>に記載のレジストパターンの製造方法。
【0007】
【化1】
【0008】
式A3中、R31及びR32はそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基又はアリール基を表し、少なくともR31及びR32のいずれか一方がアルキル基又はアリール基であり、R33はアルキル基又はアリール基を表し、R31又はR32と、R33とが連結して環状エーテルを形成してもよく、R34は水素原子又はメチル基を表し、Xは単結合又はアリーレン基を表し、Yは-S-、又は-O-を表す。
<7> 上記加熱する工程における上記加熱を、0.15MPa以上である雰囲気下で行う、上記<1>~<6>のいずれか1つに記載のレジストパターンの製造方法。
<8> 上記基板として、導電層及び基材を有する基板を用い、上記導電層上に上記<1>~<7>のいずれか1つに記載のレジストパターンの製造方法によりレジストパターンを製造する工程、及び、上記レジストパターンを製造する工程により得られた上記レジストパターンをマスクとして用い、上記導電層をエッチングする工程、を含む、回路基板の製造方法。
<9> 上記導電層が銅を含む層を含む、上記<8>に記載の回路基板の製造方法。
<10> 上記基材が、シクロオレフィンポリマーを含む、上記<8>又は<9>に記載の回路基板の製造方法。
<11> 上記<8>~<10>のいずれか1つに記載の回路基板の製造方法を含む、タッチパネルの製造方法。
【発明の効果】
【0009】
本開示の一実施形態によれば、解像度に優れたレジストパターンが得られるレジストパターンの製造方法、及び、上記レジストパターンの製造方法を用いた回路基板の製造方法及びタッチパネルの製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、本開示に係るポジ型感光性転写材料の層構成の一例を示す概略図である。
図2図2は、本開示に係るポジ型感光性転写材料を用いたタッチパネル用回路基板の製造方法の一例を示す概略図である。
図3図3は、パターンAを示す概略図である。
図4図4は、パターンBを示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本開示の内容について説明する。なお、添付の図面を参照しながら説明するが、符号は省略する場合がある。
また、本明細書において「~」を用いて表される数値範囲は、「~」の前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む範囲を意味する。
本明細書中に段階的に記載されている数値範囲において、一つの数値範囲で記載された上限値又は下限値は、他の段階的な記載の数値範囲の上限値又は下限値に置き換えてもよい。また、本明細書中に記載されている数値範囲において、その数値範囲の上限値又は下限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。
また、本明細書において、「(メタ)アクリル」はアクリル及びメタクリルの双方、又は、いずれかを表し、「(メタ)アクリレート」はアクリレート及びメタクリレートの双方、又は、いずれかを表す。
更に、本明細書において組成物中の各成分の量は、組成物中に各成分に該当する物質が複数存在する場合、特に断らない限り、組成物中に存在する該当する複数の物質の合計量を意味する。
本明細書において「工程」との語は、独立した工程だけでなく、他の工程と明確に区別できない場合であっても工程の所期の目的が達成されれば、本用語に含まれる。
本明細書において「全固形分」とは、組成物の全組成から溶剤を除いた成分の総質量をいう。また、「固形分」とは、上述のように、溶剤を除いた成分であり、例えば、25℃において固体であっても、液体であってもよい。
本明細書における基(原子団)の表記において、置換及び無置換を記していない表記は、置換基を有さないものと共に置換基を有するものをも包含するものである。例えば「アルキル基」とは、置換基を有さないアルキル基(無置換アルキル基)のみならず、置換基を有するアルキル基(置換アルキル基)をも包含するものである。
また、本明細書における化学構造式は、水素原子を省略した簡略構造式で記載する場合もある。
本開示において、「質量%」と「重量%」とは同義であり、「質量部」と「重量部」とは同義である。
また、本開示において、2以上の好ましい態様の組み合わせは、より好ましい態様である。
また、本開示における重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)は、特に断りのない限り、TSKgel GMHxL、TSKgel G4000HxL、TSKgel G2000HxL(何れも東ソー(株)製の商品名)のカラムを使用したゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)分析装置により、溶媒THF(テトラヒドロフラン)、示差屈折計により検出し、標準物質としてポリスチレンを用いて換算した分子量である。
【0012】
(レジストパターンの製造方法)
本開示に係るレジストパターンの製造方法は、仮支持体と、重合体及び光酸発生剤を含むポジ型感光性樹脂層(以下、単に「ポジ型感光性樹脂層」ともいう。)と、を有する転写材料の、上記仮支持体を基準として上記ポジ型感光性樹脂層側の最外層を基板に接触させて上記基板に貼り合わせる工程、上記貼り合わせる工程後の、上記ポジ型感光性樹脂層を加熱する工程、上記加熱する工程後の上記ポジ型感光性樹脂層をパターン露光する工程、及び、上記パターン露光された上記ポジ型感光性樹脂層を現像する工程、を含む。
【0013】
本発明者らは、鋭意検討した結果、本開示に係るレジストパターンの製造方法によれば、解像度に優れたレジストパターンが得られることを見出した。
上記効果が得られる機序の詳細は不明であるが、下記のように推測している。
【0014】
本発明者らは、ポジ型感光性樹脂層を有する転写材料を用いたレジストパターンの製造においては、露光及び現像後に、ポジ型感光性樹脂層における基板側の表面付近において現像が不十分となり、基板の表面に現像しきれない残膜が残ってしまう、等の問題が発生し、解像度の高いレジストパターンの形成が困難となる場合があることを見出した。
上記問題の原因は定かではないが、空気中の微量のアミン成分が、ポジ型感光性樹脂層の仮支持体とは反対側の表面付近に入り込んでしまい、現像性が低下するためであると推測される。
ここで、例えば基板に感光性組成物を塗布してポジ型感光性樹脂層を形成し、レジストパターンを形成する場合には、空気と接する側であるポジ型感光性樹脂層の上部(ポジ型感光性樹脂層の基板とは反対側)にアミン成分が入り込むと考えられる。そのため、塗布によるポジ型感光性樹脂層を用いた場合には、パターンの上部の現像性等が低下する場合があるが、パターンの下部(基板側)の現像性は良好であると考えられる。したがって、基板に塗布によりポジ型感光性樹脂層を形成した場合には、残膜等の問題は発生しにくいと考えられる。
しかし、仮支持体に感光性組成物を塗布してポジ型感光性樹脂層を形成する感光性転写材料を用いた場合には、空気と接してアミン成分が入り込むのは、ポジ型感光性樹脂層の仮支持体とは反対側であると考えられる。このような、ポジ型感光性樹脂層の仮支持体とは反対側にアミン成分が入り込んだポジ型感光性樹脂層を基材に転写した場合には、アミン成分が入り込んだ領域はポジ型感光性樹脂層の基材側となる。
また、ポジ型感光性樹脂層にアミン成分が入り込んだ領域における現像性の低下は、光酸発生剤により発生する酸がアミン成分によりトラップされる、酸分解性基で保護された酸基を用いる場合には、酸分解性基の脱保護が上記アミン成分により阻害される、等の現象により引き起こされるものであると考えられる。
このように、空気中のアミン成分等による現像性の低下は、ネガ型感光性樹脂層では起こらない、ポジ型感光性樹脂層を用いた場合に特有の問題であると考えられる。
そこで、本発明者らは、鋭意検討した結果、本開示に係るレジストパターンの製造方法によれば、解像度に優れたレジストパターンの製造方法が得られることを見出した。
上記効果が得られるメカニズムは定かではないが、加熱によりアミン成分がポジ型感光性樹脂層中に拡散することで、ポジ型感光性樹脂層の基材側の表面付近におけるアミン成分の偏在が解消されるためであると推測される。
特に、ポジ型感光性樹脂層が酸分解性基で保護された酸基を有する重合体を含む場合には、加熱によりアミン成分が拡散されることにより、アミン成分が偏在している場合と比較して、上記酸分解性基で保護された酸基の脱保護がポジ型感光性樹脂層の露光部分において均一に近い状態で進行しやすくなるため、パターン形状が良化し、解像度に優れたレジストパターンが得られやすいと考えられる。
以下、本開示に係るレジストパターンの製造方法について、詳細に説明する。
【0015】
<貼り合わせ工程>
本開示に係るレジストパターンの製造方法は、仮支持体と、重合体及び光酸発生剤を含むポジ型感光性樹脂層と、を有する転写材料の、上記仮支持体を基準として上記ポジ型感光性樹脂層側の最外層を基板に接触させて上記基板に貼り合わせる工程(貼り合わせ工程)を含む。
上記最外層は、ポジ型感光性樹脂層であってもよいし、ポジ型感光性転写材料においてポジ型感光性樹脂層上に形成された、紫外線吸収層、密着層等のその他の層であってもよい。
本開示において用いられるポジ型感光性転写材料の詳細については後述する。
【0016】
〔基板〕
基板としては、特に限定されないが、基材の表面に導電層を有する基板(「回路配線形成用基板」ともいう。)を用いることが好ましい。
また、基板は材質の異なる複数の導電層を有していてもよく、その場合には、基材上に材質の異なる複数の導電層が積層されていることが好ましい。
基板として回路配線形成用基板を用いる場合、貼り合わせ工程において上記ポジ型感光性転写材料の上記最外層を、上記基板の上記導電層に接触させて貼り合わせることが好ましい。
【0017】
本開示に係るレジストパターンの製造方法により得られたレジストパターンを用いて、回路配線形成用基板における導電層をエッチング等によりパターニングすることで、回路配線を有する基板を製造することができる。
本開示において、回路配線が形成された基板を、「回路基板」ともいう。
本開示においては、回路配線形成用基板として、ポリエチレンテレフタレート(PET)、シクロオレフィンポリマーなどのフィルム基材に金属酸化物、金属などの複数の導電層が設けられたものを用いることも好ましい。
【0018】
-基材-
基材はガラス基材又はフィルム基材であることが好ましく、フィルム基材であることがより好ましい。本開示に係るレジストパターンの製造方法は、タッチパネル用の回路基板の製造に用いられる場合、基材がシート状樹脂であることが特に好ましい。
また、基材は透明であることが好ましい。
基材の屈折率は、1.40~1.70であることが好ましい。
基材は、ガラス基材等の透光性基材で構成されていてもよく、コーニング社のゴリラガラスに代表される強化ガラスなどを用いることができる。また、前述の透明基材としては、特開2010-86684号公報、特開2010-152809号公報及び特開2010-257492号公報に用いられている材料を好ましく用いることができる。
基材としてフィルム基材を用いる場合は、光学的に歪みが少ない基材、及び、透明度が高い基材を用いることがより好ましく、具体的な素材には、ポリエチレンテレフタレート(polyethylene terephthalate;PET)、ポリエチレンナフタレート、ポリカーボネート、トリアセチルセルロース、シクロオレフィンポリマーをあげることができる。
上記の中でも、光学特性及び加熱工程における加熱に対する耐熱性の観点からは、基材としては、シクロオレフィンポリマーを含む基材が好ましい。シクロオレフィンポリマーとしてはヘイズが低いものが好ましく、例としては、ゼオノアフィルムZF-14、ZF-16(日本ゼオン(株)製)などが挙げられる。
【0019】
-導電層-
基板に含まれる導電層としては、一般的な回路配線又はタッチパネル配線に用いられる導電層を、特に制限なく用いることができる。
導電層の材料としては、金属及び金属酸化物などを挙げることができる。
金属酸化物としては、ITO(Indium Tin Oxide)、IZO(Indium Zinc Oxide)、SiO等を挙げることができる。金属としては、Al、Zn、Cu、Fe、Ni、Cr、Mo等を挙げることができる。
これらの中でも、導電性等の観点からは、導電層が銅を含む層を含むことが好ましい。
【0020】
基板が複数の導電層を含む場合、本開示に係るレジストパターンの製造方法は、複数の導電層のうち少なくとも一つの導電層が金属酸化物を含むことが好ましい。
導電層としては、静電容量型タッチパネルに用いられる視認部のセンサーに相当する回路配線パターン又は周辺取り出し部の回路配線パターンを形成するための導電層であることが好ましい。
【0021】
〔貼り合わせ方法〕
貼り合わせ工程における貼り合わせ方法としては、特に制限されず、公知の方法が使用可能である。
例えば、ポジ型感光性転写材料のポジ型感光性樹脂層側の最外層を基板上(好ましくは導電層上)に重ね、ロール等による加圧及び加熱を行うことに貼り合わせることが好ましい。貼り合わせには、ラミネータ、真空ラミネータ、及び、より生産性を高めることができるオートカットラミネーター等の公知のラミネータを使用することができる。
基板の基材が樹脂フィルムである場合は、ロールツーロールでの貼り合わせも行うこともできる。
なお、このような基板と感光性転写材料との貼り合わせを「転写」又は「ラミネート」と称する場合がある。
【0022】
<加熱工程>
本開示に係るレジストパターンの製造方法は、上記貼り合わせる工程後の、上記ポジ型感光性樹脂層を加熱する工程(加熱工程)を含む。
【0023】
〔加熱温度〕
加熱する工程における加熱温度は、上記ポジ型感光性樹脂層に含まれる重合体の1気圧下でのガラス転移温度以上の温度であることが好ましく、上記ガラス転移温度よりも5℃以上高い温度であることがより好ましく、上記ガラス転移温度よりも10℃以上高い温度であることが更に好ましい。
上記加熱する工程における上記加熱温度は、重合体が、後述する酸分解性基で保護された酸基を有する重合体を含む場合、上記重合体における上記酸分解性基で保護された酸基の1気圧下での分解温度以下であることが好ましく、上記分解温度よりも20℃以上低い温度であることがより好ましく、上記分解温度よりも30℃以上低い温度であることが更に好ましい。
また、樹脂フィルムの変形等を抑制する観点から、上記加熱温度は、100℃以下であることが好ましく、70℃以下であることがより好ましい。
また、加熱温度の下限は、特に限定されないが、25℃を超えることが好ましく、30℃以上であることがより好ましく、40℃以上であることがより好ましい。
上記加熱温度は、例えば、熱電対を用いてポジ型感光性樹脂層の温度として測定される。
本開示において、1気圧は101,325Paである。
【0024】
-重合体のガラス転移温度-
本開示において、ポジ型感光性樹脂層に含まれる重合体には、例えば、後述するポジ型感光性転写材料におけるポジ型感光性樹脂層に含まれる重合体成分が含まれる。
【0025】
<<ガラス転移温度の測定>>
本開示における重合体のガラス転移温度(Tg)は、示差走査熱量測定(DSC)を用いて測定することができる。ガラス転移温度の測定は、1気圧下で行われる。
具体的な測定方法は、JIS K 7121(1987年)に記載の方法に順じて行う。本明細書におけるガラス転移温度は、補外ガラス転移開始温度(以下、Tigと称することがある)を用いている。
ガラス転移温度の測定方法をより具体的に説明する。
ガラス転移温度を求める場合、予想される重合体のTgより約50℃低い温度にて装置が安定するまで保持した後、加熱速度:20℃/分で、ガラス転移が終了した温度よりも約30℃高い温度まで加熱し、示差熱分析(DTA)曲線又はDSC曲線を描かせる。
補外ガラス転移開始温度(Tig)、すなわち、本明細書におけるガラス転移温度Tgは、DTA曲線又はDSC曲線における低温側のベースラインを高温側に延長した直線と、ガラス転移の階段状変化部分の曲線の勾配が最大になる点で引いた接線との交点の温度として求める。
【0026】
重合体成分が2種以上の重合体を含む場合、重合体成分のTgは下記のように求められる。
1つ目の重合体のTgをTg1(K:ケルビン)、重合体の合計質量に対する1つ目の重合体の質量分率をW1とし、2つ目の重合体のTgをTg2(K:ケルビン)とし、重合体成分の合計質量に対する2つ目の重合体の質量分率をW2としたときに、重合体成分のTg0(K:ケルビン)は、以下のFOX式にしたがって推定することが可能である。
FOX式:1/Tg0=(W1/Tg1)+(W2/Tg2)
また、重合体成分が3種以上の重合体を含む場合、重合体成分のTg0(K:ケルビン)は、n個目の重合体のTgをTgn(K:ケルビン)、重合体成分の合計質量に対するn個目の重合体の質量分率をWnとしたときに、上記と同様、以下の式にしたがって推定することが可能である。
FOX式:1/Tg0=(W1/Tg1)+(W2/Tg2)+(W3/Tg3)・・・+(Wn/Tgn)
【0027】
上記重合体成分のTgは、貼り合わせ工程におけるラミネートを低温で行う観点、及び、回路配線における線幅のばらつきを抑制する観点から、20℃を超え60℃以下であることが好ましく、30℃以上50℃以下であることがより好ましい。
【0028】
-酸分解性基で保護された酸基の分解温度-
重合体における酸分解性基で保護された酸基における酸分解性基は、酸により分解される基であるが、高温によっても分解されるものが多い。
本開示では、1気圧下において上記酸分解性基が分解する温度を、重合体における上記酸分解性基で保護された酸基の1気圧下での分解温度ともいう。
重合体における上記酸分解性基で保護された酸基の1気圧下での分解温度は、JIS K 7120(1987)(熱重量測定)に従い測定され、試験片の質量変化が始まる温度を1気圧下での分解温度とする。
酸分解性基で保護された酸基が複数含まれる場合、例えば、それらの複数の分解温度のうち最も低い温度以下の温度で加熱を行うことが好ましい。また、最も多く含まれる酸分解性基の分解温度以下の温度で加熱を行ってもよい。
【0029】
〔加熱時間〕
加熱工程における加熱時間は、レジストパターンの解像度を向上する観点から、10分間~300分間であることが好ましく、20分間~180分間であることがより好ましい。
【0030】
〔加熱手段〕
加熱手段としては、特に限定されず、公知の手段を用いることができ、ヒーター、オーブン、ホットプレート、赤外線ランプ、赤外線レーザー等が挙げられる。また、加圧しながら加熱を行う場合、後述するオートクレーブ等の装置を使用することもできる。
【0031】
〔圧力〕
上記加熱は、1気圧(約0.1MPa)以上である雰囲気下で行うことが好ましく、0.15MPa以上である雰囲気下で行うことがより好ましく、0.2MPa以上である雰囲気下で行うことが更に好ましく、0.3MPa以上である雰囲気下で行うことが特に好ましい。上限は特に定めるものではないが、装置の実用上の観点から、100MPa以下が好ましく、10MPa以下がより好ましく、3MPa以下が最も好ましい。
加圧しながら加熱を行うことにより、ポジ型感光性樹脂層等の基板と接する層と基板との密着性が向上するため、より解像度の高いレジストパターンが得られると考えられる。
上記圧力をかける方法(加圧方法)としては、オートクレーブ等の加圧装置を用いる方法が挙げられる。
また、上記加熱は空気環境下で行ってもよいし、窒素置換環境下で行ってもよい。
【0032】
〔ロールを加熱する工程〕
また、本開示に係るレジストパターンの製造方法を、後述するロールツーロール方式を用いて行う場合には、上記ポジ型感光性樹脂層及び上記基板を含む構造体を巻き出した状態で加熱してもよいし、ロール状に巻き取った状態で加熱してもよい。
すなわち、加熱工程は、ロールを加熱する工程であってもよい。
【0033】
加熱工程の一実施態様としては、上記貼り合わせる工程後、後述する加熱する工程前に、上記ポジ型感光性樹脂層及び上記基板を含む構造体をロールとして巻き取る工程を含み、上記加熱する工程が、上記ロールを加熱する工程であり、上記加熱する工程後、上記パターン露光する工程前に、上記ロールを巻き出す工程を含む態様が好ましく挙げられる。
上記巻き取る工程及び巻き出す工程は、特に制限されず、公知のロールツーロール方式における巻取り方法又は巻き出し方法を用いて巻き取り又は巻き出しを行えばよい。
ロールを加熱する場合、上述の加熱温度は、ロール最内部の温度とすることが好ましい。また、上述の加熱時間としては、ロール最内部の温度が加熱温度に達してから維持される時間であることが好ましい。
【0034】
加熱工程の別の実施態様としては、ロールツーロール方式を用いて、上記ポジ型感光性樹脂層及び上記基板を含む構造体を巻き出した状態で搬送しながら加熱(オンライン加熱)する工程が挙げられる。
具体的には、例えば、構造体を巻き出した後に、構造体が搬送されるライン上に露光工程を行う露光手段を配置し、上記ライン上の露光手段の上流側に上述の加熱手段を配置することにより、上記構造体を巻き出した状態で搬送しながら加熱した後に露光することが可能となる。
また、加熱工程の別の実施態様としては、シート状の基板を用い、シート状で作製した上記ポジ型感光性樹脂層及び上記基板を含む構造体を、シート状のまま加熱する工程、ロールツーロール方式を用いて、上記ポジ型感光性樹脂層及び上記基板を含む構造体の一部を、シート状に切断してから、得られたシート状の構造体を加熱する工程、等が挙げられる。
更に、加熱工程において、仮支持体を剥離した後に加熱を行ってもよい。
【0035】
<露光工程>
本開示に係るレジストパターンの製造方法は、加熱する工程後の上記ポジ型感光性樹脂層をパターン露光する工程を含む。
【0036】
本開示における露光工程、現像工程、及びその他の工程の例としては、特開2006-23696号公報の段落0035~段落0051に記載の方法を本開示においても好適に用いることができる。
【0037】
露光方法としては、例えば、ポジ型感光性樹脂層の、基板とは反対側の上方に所定のパターンを有するマスクを配置し、その後、上記マスクを介して紫外線による露光を行う方法等が挙げられる。
本開示においてパターンの詳細な配置及び具体的サイズは特に限定されない。
本開示により製造されるレジストパターンを、回路配線を有する入力装置を備えた表示装置(例えばタッチパネル)の製造に用いる場合、表示品質を高め、また、取り出し配線の占める面積をできるだけ小さくしたいことから、レジストパターンの少なくとも一部(特にタッチパネルの電極パターン及び取り出し配線の形成に用いられる部分)は100μm以下の細線であることが好ましく、70μm以下の細線であることが更に好ましい。
ここで、露光に使用する光源としては、ポジ型感光性転写材料の露光された箇所が現像液に溶解しうる波長域の光(例えば、365nm、405nmなど)を照射できれば適宜選定して用いることができる。具体的には、超高圧水銀灯、高圧水銀灯、メタルハライドランプ等が挙げられる。
露光量としては、5mJ/cm~200mJ/cmであることが好ましく、10mJ/cm~100mJ/cmであることがより好ましい。
【0038】
なお、パターン露光は、仮支持体をポジ型感光性樹脂層から剥離してから行っても、仮支持体を剥離する前に、仮支持体を介して露光し、その後、ポジ型感光性樹脂層から仮支持体を剥離してもよい。ポジ型感光性樹脂層とマスクの接触によるマスク汚染の防止、及びマスクに付着した異物による露光への影響を避けるためには、仮支持体を剥離せずに露光することが好ましい。なお、パターン露光は、マスクを介した露光でもよいし、レーザー等を用いたデジタル露光でもよい。
【0039】
<現像工程>
現像工程は、パターン露光されたポジ型感光性樹脂層を現像することによりパターンを形成する工程である。
パターン露光されたポジ型感光性樹脂層の現像は、現像液を用いて行うことができる。
現像液としては、ポジ型感光性樹脂層の露光部分を除去することができれば特に制限はなく、例えば、特開平5-72724号公報に記載の現像液など、公知の現像液を使用することができる。なお、現像液はポジ型感光性樹脂層の露光部が溶解型の現像挙動をする現像液が好ましい。例えば、pKa=7~13の化合物を0.05mol/L(リットル)~5mol/Lの濃度で含むアルカリ水溶液系の現像液が好ましい。現像液は、更に、水と混和性を有する有機溶剤、界面活性剤等を含有してもよい。本開示において好適に用いられる現像液としては、例えば、国際公開第2015/093271号の段落0194に記載の現像液が挙げられる。
【0040】
現像方式としては、特に制限はなくパドル現像、シャワー現像、シャワー及びスピン現像、ディップ現像等のいずれでもよい。ここで、シャワー現像について説明すると、露光後のポジ型感光性樹脂層に現像液をシャワーにより吹き付けることにより、露光部分を除去することができる。また、現像の後に、洗浄剤などをシャワーにより吹き付け、ブラシなどで擦りながら、現像残渣を除去することが好ましい。現像液の液温度は20℃~40℃が好ましい。
【0041】
<ポストベーク工程>
更に、現像して得られたポジ型感光性樹脂層を含むパターンを加熱処理するポストベーク工程を有していてもよい。
ポストベークの加熱は8.1kPa~121.6kPaの環境下で行うことが好ましく、506.6kPa以上の環境下で行うことがより好ましい。ポストベークの加熱は、114.6kPa以下の環境下で行うことがより好ましく、101.3kPa以下の環境下で行うことが特に好ましい。
ポストベークの温度は、80℃~250℃であることが好ましく、110℃~170℃であることがより好ましく、130℃~150℃であることが特に好ましい。
ポストベークの時間は、1分~30分であることが好ましく、2分~10分であることがより好ましく、2分~4分であることが特に好ましい。
ポストベークは、空気環境下で行っても、窒素置換環境下で行ってもよい。
また、ポスト露光工程等、その他の工程を有していてもよい。
【0042】
<ロールツーロール方式>
本開示に係るレジストパターンの製造方法は、ロールツーロール方式により行われることが好ましい。
ロールツーロール方式とは、基板として、巻取り及び巻き出しが可能な基板を用い、レジストパターンの製造方法に含まれるいずれかの工程の前に、基材又は貼り合わせ工程により形成された上記構造体を巻き出す巻き出し工程を、いずれかの工程の後に基材又は上記構造体を巻き取る巻き取り工程を含み、少なくともいずれかの工程(好ましくは、全ての工程又は加熱工程以外の全ての工程)を、基材又は上記構造体を搬送しながら行う方式をいう。
巻き出し工程における巻き出し方法、及び、巻取り工程における巻取り方法としては、特に制限されず、ロールツーロールの製造方法において公知の方法を用いればよい。
【0043】
具体的には、上述の貼り合わせ工程、加熱工程、露光工程、現像工程の間に、貼り合わせ工程により形成された上記ポジ型感光性樹脂層と上記基板とが貼り合わされた構造体を巻き取る工程、及び、上記構造体を巻き出す工程を含むことが好ましい。
また、上述の貼り合わせ工程の前に、樹脂フィルム等のフィルム上に金属等の導電層を作製し、巻き取ることにより作製されるロール状基板を巻き出す工程を含み、巻き出された上記ロール状基板を貼り合わせ工程において基板として用いてもよい。
【0044】
本開示に係るレジストパターンの製造方法をロールツーロール方式により行う場合、下記のような方法が好ましく挙げられる。
【0045】
(方法A)
(A-1)ロール状基板を巻き出し、貼り合わせ工程を行った後に構造体を巻き取る。
(A-2)巻き取られた構造体(ロール)を加熱し、加熱工程を行う。
(A-3)巻き取られた構造体を巻き出し、露光工程を行った後に、構造体を巻き取る。
(A-4)加熱された構造体を巻き出し、現像工程を行う。
【0046】
(方法B)
(B-1)ロール状基板を巻き出し、貼り合わせ工程を行った後に連続して加熱を行う。構造体を巻き取る。
(B-2)巻き取られた構造体を巻き出し、露光工程及び加熱工程を連続して行った後に、構造体を巻き取る。
(B-3)構造体を巻き出し、現像工程を行う。
上記A-2において、上述のオンライン加熱が行われる。
また、上記A-4又はB-3において、後述する回路基板の製造方法においては、上記現像工程の後に、エッチング工程、及び、必要に応じてポジ型感光性樹脂層除去工程を行うことが好ましい。エッチング工程、及び、必要に応じて行われるポジ型感光性樹脂層除去工程は、例えば、現像工程後に巻取り工程を行わずに、現像工程と連続して行われる。
【0047】
本開示に係るレジストパターンの製造方法は、他の任意の工程を含んでもよい。
【0048】
(ポジ型感光性転写材料)
以下、本開示において用いられるポジ型感光性転写材料(以下、単に「感光性転写材料」ともいう。)について、詳細に説明する。
【0049】
図1は、本開示に係る感光性転写材料の層構成の一例を概略的に示している。図1に示す感光性転写材料100は、仮支持体12と、ポジ型感光性樹脂層14と、カバーフィルム16とがこの順に積層されている。
ポジ型感光性樹脂層14は、重合体と、光酸発生剤とを含有する。
【0050】
<仮支持体>
仮支持体は、ポジ型感光性樹脂層を支持し、ポジ型感光性樹脂層から剥離可能な支持体である。
本開示に用いられる仮支持体は、ポジ型感光性樹脂層をパターン露光する際に仮支持体を介してポジ型感光性樹脂層を露光し得る観点から、光透過性を有することが好ましい。
光透過性を有するとは、パターン露光に使用する光の主波長の透過率が50%以上であることを意味し、パターン露光に使用する光の主波長の透過率は、露光感度向上の観点から、60%以上が好ましく、70%以上がより好ましい。透過率の測定方法としては、大塚電子(株)製MCPD Seriesを用いて測定する方法が挙げられる。
仮支持体としては、ガラス基板、樹脂フィルム、紙等が挙げられ、強度及び可撓性等の観点から、樹脂フィルムが特に好ましい。樹脂フィルムとしては、ポリエチレンテレフタレートフィルム、トリ酢酸セルロースフィルム、ポリスチレンフィルム、ポリカーボネートフィルム等が挙げられる。中でも、2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムが特に好ましい。
【0051】
仮支持体の厚みは、特に限定されず、5μm~200μmの範囲が好ましく、取扱い易さ、汎用性などの点で、10μm~150μmの範囲がより好ましい。
仮支持体の厚みは、支持体としての強度、回路配線形成用基板との貼り合わせに求められる可撓性、最初の露光工程で要求される光透過性などの観点から、材質に応じて選択すればよい。
【0052】
仮支持体の好ましい態様については、例えば、特開2014-85643号公報の段落0017~段落0018に記載があり、この公報の内容は本明細書に組み込まれる。
【0053】
<ポジ型感光性樹脂層>
本開示において用いられるポジ型感光性転写材料は、仮支持体上に、重合体及び光酸発生剤を含むポジ型感光性樹脂層を有する。また、上記重合体は、酸分解性基で保護された酸基を有することが好ましい。
また、本開示におけるポジ型感光性樹脂層は、感度の観点からは、化学増幅ポジ型感光性樹脂層であることが好ましい。
後述するオニウム塩、オキシムスルホネート化合物等の光酸発生剤は、活性放射線(活性光線ともいう。)に感応して生成される酸が、上記重合体中の保護された酸基の脱保護に対して触媒として作用するので、1個の光量子の作用で生成した酸が、多数の脱保護反応に寄与し、量子収率は1を超え、例えば、10の数乗のような大きい値となり、いわゆる化学増幅の結果として、高感度が得られる。
一方、活性放射線に感応する光酸発生剤としてキノンジアジド化合物を用いた場合、逐次型光化学反応によりカルボキシ基を生成するが、その量子収率は必ず1以下であり、化学増幅型には該当しない。
【0054】
〔酸分解性で保護された酸基を有する構成単位を有する重合体〕
上記ポジ型感光性樹脂層は、酸分解性で保護された酸基を有する構成単位(「構成単位A」ともいう。)を有する重合体(単に「重合体A1」ともいう。)を含むことが好ましい。
また、上記ポジ型感光性樹脂層は、構成単位Aを有する重合体A1に加え、他の重合体を含んでいてもよい。本開示においては、構成単位Aを有する重合体A1及び他の重合体をあわせて、「重合体成分」ともいう。
なお、重合体成分には、後述する界面活性剤は含まれないものとする。
上記重合体A1は、露光により生じる触媒量の酸性物質の作用により、重合体A1中の酸分解性基で保護された酸基が脱保護反応を受け酸基となる。この酸基により、現像液への溶解が可能となる。
更に、重合体A1は、酸基を有する構成単位を更に有することが好ましい。
以下に構成単位Aの好ましい態様について説明する。
【0055】
上記ポジ型感光性樹脂層は、更に、酸分解性基で保護された酸基を有する構成単位を有する重合体A1以外の重合体を含んでいてもよい。
また、上記重合体成分に含まれる全ての重合体がそれぞれ、後述する酸基を有する構成単位を少なくとも有する重合体であることが好ましい。
また、上記ポジ型感光性樹脂層は、更に、これら以外の重合体を含んでいてもよい。本開示における上記重合体成分は、特に述べない限り、必要に応じて添加される他の重合体を含めたものを意味するものとする。なお、後述する架橋剤及び分散剤に該当する化合物は、高分子化合物であっても、上記重合体成分に含まないものとする。
【0056】
重合体A1は、付加重合型の樹脂であることが好ましく、(メタ)アクリル酸又はそのエステルに由来する構成単位を有する重合体であることがより好ましい。なお、(メタ)アクリル酸又はそのエステルに由来する構成単位以外の構成単位、例えば、スチレンに由来する構成単位、ビニル化合物に由来する構成単位等を有していてもよい。
【0057】
上記ポジ型感光性樹脂層は、パターン形状の変形抑制、現像液への溶解性及び転写性の観点から、重合体成分として、上記構成単位Aとして下記式A1~式A3のいずれかにより表される構成単位よりなる群から選ばれた少なくとも1種の構成単位を有する重合体を含むことが好ましく、重合体成分として、上記構成単位Aとして下記式A1~式A3のいずれかにより表される構成単位よりなる群から選ばれた少なくとも1種の構成単位、及び、酸基を有する重合体を含むことがより好ましい。
上記ポジ型感光性樹脂層に含まれる重合体A1は、1種のみであっても、2種以上であってもよい。
【0058】
-構成単位A-
上記重合体成分は、酸分解性基で保護された酸基を有する構成単位Aを少なくとも有する重合体A1を含むことが好ましい。上記重合体成分が構成単位Aを有する重合体を含むことにより、ポジ型感光性樹脂層を、極めて高感度な化学増幅ポジ型の感光性樹脂層とすることができる。
本開示における「酸分解性基で保護された酸基」は、酸基及び酸分解性基として公知のものを使用でき、特に限定されない。具体的な酸基としては、カルボキシ基、及び、フェノール性水酸基が好ましく挙げられる。また、酸分解性で保護された酸基としては、酸により比較的分解し易い基(例えば、式A3により表される構成単位において-CR3132(YR33)基で保護されたエステル基、テトラヒドロピラニルエステル基、又は、テトラヒドロフラニルエステル基等のアセタール系官能基)、又は酸により比較的分解し難い基(例えば、tert-ブチルエステル基等の第三級アルキルエステル基、tert-ブチルカーボネート基等の第三級アルキルカーボネート基)を用いることができる。
これらの中でも、上記酸分解性基としては、アセタールの形で保護された構造を有する基であることが好ましい。
また、酸分解性基としては、得られるレジストパターンにおける線幅のバラツキが抑制される観点から、分子量が300以下の酸分解性基であることが好ましい。
【0059】
上記酸分解性基で保護された酸基を有する構成単位Aは、感度及び解像度の観点から、下記式A1~式A3のいずれかにより表される構成単位よりなる群から選ばれた少なくとも1種の構成単位であることが好ましく、式A3により表される構成単位であることがより好ましく、後述する式A3-2により表される構成単位であることが更に好ましい。
【0060】
【化2】
【0061】
式A1中、R11及びR12はそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基又はアリール基を表し、少なくともR11及びR12のいずれか一方がアルキル基又はアリール基であり、R13はアルキル基又はアリール基を表し、R11又はR12と、R13とが連結して環状エーテルを形成してもよく、R14は水素原子又はメチル基を表し、Xは単結合又は二価の連結基を表し、R15は置換基を表し、nは0~4の整数を表す。
式A2中、R21及びR22はそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基又はアリール基を表し、少なくともR21及びR22のいずれか一方がアルキル基又はアリール基であり、R23はアルキル基又はアリール基を表し、R21又はR22と、R23とが連結して環状エーテルを形成してもよく、R24はそれぞれ独立に、ヒドロキシ基、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、アルケニル基、アリール基、アラルキル基、アルコキシカルボニル基、ヒドロキシアルキル基、アリールカルボニル基、アリールオキシカルボニル基又はシクロアルキル基を表し、mは0~3の整数を表す。
式A3中、R31及びR32はそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基又はアリール基を表し、少なくともR31及びR32のいずれか一方がアルキル基又はアリール基であり、R33はアルキル基又はアリール基を表し、R31又はR32と、R33とが連結して環状エーテルを形成してもよく、R34は水素原子又はメチル基を表し、Xは単結合又はアリーレン基を表し、Yは-S-、又は-O-を表す。
【0062】
<<式A1により表される構成単位の好ましい態様>>
式A1中、R11又はR12がアルキル基の場合、炭素数は1~10のアルキル基が好ましい。R11又はR12がアリール基の場合、フェニル基が好ましい。R11及びR12は、それぞれ、水素原子又は炭素数1~4のアルキル基が好ましい。
式A1中、R13は、アルキル基又はアリール基を表し、炭素数1~10のアルキル基が好ましく、炭素数1~6のアルキル基がより好ましい。
また、R11~R13におけるアルキル基及びアリール基は、置換基を有していてもよい。
式A1中、R11又はR12と、R13とが連結して環状エーテルを形成してもよく、R11又はR12と、R13とが連結して環状エーテルを形成することが好ましい。環状エーテルの環員数は特に制限はないが、5又は6であることが好ましく、5であることがより好ましい。
式A1中、Xは単結合又は二価の連結基を表し、単結合又はアルキレン基、-C(=O)O-、-C(=O)NR-、-O-又はこれらの組み合わせが好ましく、単結合がより好ましい。アルキレン基は、直鎖状でも分岐を有していても環状構造を有していてもよく、置換基を有していてもよい。アルキレン基の炭素数は1~10が好ましく、1~4がより好ましい。Xが-C(=O)O-を含む場合、-C(=O)O-に含まれる炭素原子と、R14が結合した炭素原子とが直接結合する態様が好ましい。Xが-C(=O)NR-を含む場合、-C(=O)NR-に含まれる炭素原子と、R14が結合した炭素原子とが直接結合する態様が好ましい。Rはアルキル基又は水素原子を表し、炭素数1~4のアルキル基又は水素原子が好ましく、水素原子がより好ましい。
式A1中、R15は置換基を表し、アルキル基又はハロゲン原子が好ましい。アルキル基の炭素数は、1~10が好ましく、1~4がより好ましい。
式A1中、nは0~4の整数を表し、0又は1が好ましく、0がより好ましい。
【0063】
式A1中、R14は水素原子又はメチル基を表し、重合体A1のTgをより低くし得るという観点から、水素原子であることが好ましい。
より具体的には、重合体A1に含まれる構成単位Aの全含有量に対し、式A1におけるR14が水素原子である構成単位は20質量%以上であることが好ましい。
なお、構成単位A中の、式A1におけるR14が水素原子である構成単位の含有量(含有割合:質量比)は、13C-核磁気共鳴スペクトル(NMR)測定から常法により算出されるピーク強度の強度比により確認することができる。
【0064】
式A1で表される構成単位の中でも、パターン形状の変形抑制の観点から、下記式A1-2で表される構成単位がより好ましい。
【0065】
【化3】
【0066】
式A1-2中、RB4は水素原子又はメチル基を表し、RB5~RB11はそれぞれ独立に、水素原子又は炭素数1~4のアルキル基を表し、RB12は置換基を表し、nは0~4の整数を表す。
式A1-2中、RB4は水素原子が好ましい。
式A1-2中、RB5~RB11は、水素原子が好ましい。
式A1-2、RB12は置換基を表し、アルキル基又はハロゲン原子が好ましい。アルキル基の炭素数は、1~10が好ましく、1~4がより好ましい。
式A1-2中、nは0~4の整数を表し、0又は1が好ましく、0がより好ましい。
【0067】
式A1で表される構成単位の好ましい具体例としては、下記の構成単位が例示できる。なお、RB4は水素原子又はメチル基を表す。
【0068】
【化4】
【0069】
<<式A2により表される構成単位の好ましい態様>>
式A2中、R21及びR22がアルキル基の場合、炭素数1~10のアルキル基が好ましい。R21及びR22がアリール基の場合、フェニル基が好ましい。R21及びR22は、それぞれ、水素原子又は炭素数1~4のアルキル基が好ましく、少なくとも一方が水素原子であることがより好ましい。
上記一般式A2中、R23はアルキル基又はアリール基を表し、炭素数1~10のアルキル基が好ましく、1~6のアルキル基がより好ましい。
21又はR22と、R23とが連結して環状エーテルを形成してもよい。
式A2中、R24はそれぞれ独立に、炭素数1~10のアルキル基又は炭素数1~10のアルコキシ基であることが好ましい。R24は、R24と同様の基により更に置換されていてもよい。
式A2中、mは1又は2であることが好ましく、1であることがより好ましい。
【0070】
式A2で表される構成単位の好ましい具体例としては、下記の構成単位が例示できる。
【0071】
【化5】
【0072】
<<式A3により表される構成単位の好ましい態様>>
式A3中、R31又はR32がアルキル基の場合、炭素数は1~10のアルキル基が好ましい。R31又はR32がアリール基の場合、フェニル基が好ましい。R31及びR32は、それぞれ、水素原子又は炭素数1~4のアルキル基が好ましい。
式A3中、R33は、アルキル基又はアリール基を表し、炭素数1~10のアルキル基が好ましく、炭素数1~6のアルキル基がより好ましい。
また、R31~R33におけるアルキル基及びアリール基は、置換基を有していてもよい。
式A3中、R31又はR32と、R33とが連結して環状エーテルを形成してもよく、R31又はR32と、R33とが連結して環状エーテルを形成することが好ましい。環状エーテルの環員数は特に制限はないが、5又は6であることが好ましく、5であることがより好ましい。
式A3中、Xは単結合又はアリーレン基を表し、単結合が好ましい。アリーレン基は、置換基を有していてもよい。
式A3中、Yは、-S-、又は-O-を表し、露光感度の観点から、-O-が好ましい。
【0073】
上記式A3で表される構成単位は、酸分解性基で保護されたカルボキシ基を有する構成単位である。重合体A1が式A3で表される構成単位を含むことで、パターン形成時の感度に優れ、また、解像度より優れる。
式A3中、R34は水素原子又はメチル基を表し、重合体A1のTgをより低くし得るという観点から、水素原子であることが好ましい。
より具体的には、重合体A1に含まれる式A3で表される構成単位の全量に対し、式A3におけるR34が水素原子である構成単位は20質量%以上であることが好ましい。
なお、式A3で表される構成単位中の、式A1におけるR34が水素原子である構成単位の含有量(含有割合:質量比)は、13C-核磁気共鳴スペクトル(NMR)測定から常法により算出されるピーク強度の強度比により確認することができる。
【0074】
式A3で表される構成単位の中でも、下記式A3-2で表される構成単位が、パターン形成時の露光感度を更に高める観点からより好ましい。
【0075】
【化6】
【0076】
式A3-2中、R31及びR32はそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基又はアリール基を表し、少なくともR31及びR32のいずれか一方がアルキル基又はアリール基であり、R33はアルキル基又はアリール基を表し、R31又はR32と、R33とが連結して環状エーテルを形成してもよく、R34は水素原子又はメチル基を表し、Xは単結合又はアリーレン基を表す。
【0077】
式A3-2中、R31、R32、R33、R34及びXはそれぞれ、式A3中のR31、R32、R33、R34及びXと同義であり、好ましい態様も同様である。
【0078】
式A3で表される構成単位の中でも、下記式A3-3で表される構成単位が、パターン形成時の感度を更に高める観点からより好ましい。
【0079】
【化7】
【0080】
式A3-3中、R34は水素原子又はメチル基を表し、R35~R41はそれぞれ独立に、水素原子又は炭素数1~4のアルキル基を表す。
式A3-3中、R34は水素原子が好ましい。
式A3-3中、R35~R41は、水素原子が好ましい。
【0081】
式A3で表される、酸分解性基で保護されたカルボキシ基を有する構成単位の好ましい具体例としては、下記の構成単位が例示できる。なお、R34は水素原子又はメチル基を表す。
【0082】
【化8】
【0083】
重合体A1に含まれる構成単位Aは、1種であっても、2種以上であってもよい。
重合体A1における構成単位Aの含有量は、重合体A1の全質量に対して、20質量%以上であることが好ましく、20質量%~90質量%であることがより好ましく、30質量%~70質量%であることが更に好ましい。
重合体A1における構成単位Aの含有量(含有割合:質量比)は、13C-NMR測定から常法により算出されるピーク強度の強度比により確認することができる。
また、全ての重合体成分を構成単位(モノマー単位)に分解したうえで、構成単位Aの割合は、重合体成分の全質量に対して、5質量%~80質量%であることが好ましく、10質量%~80質量%であることがより好ましく、30質量%~70質量%であることが特に好ましい。
【0084】
-構成単位B-
上記重合体A1は、酸基を有する構成単位Bを含むことが好ましい。
構成単位Bは、保護基、例えば、酸分解性基で保護されていない酸基、すなわち、保護基を有さない酸基を有する構成単位である。重合体A1が構成単位Bを含むことで、パターン形成時の感度が良好となり、パターン露光後の現像工程においてアルカリ性の現像液に溶けやすくなり、現像時間の短縮化を図ることができる。
本明細書における酸基とは、pKaが12以下のプロトン解離性基を意味する。酸基は、通常、酸基を形成しうるモノマーを用いて、酸基を有する構成単位(構成単位B)として、重合体に組み込まれる。感度向上の観点から、酸基のpKaは、10以下が好ましく、6以下がより好ましい。また、酸基のpKaは、-5以上であることが好ましい。
【0085】
上記酸基としては、カルボキシ基、スルホンアミド基、ホスホン酸基、スルホン酸基、フェノール性水酸基、及び、スルホニルイミド基等が例示される。中でも、カルボン酸基及びフェノール性水酸基よりなる群から選ばれる少なくとも1種の酸基が好ましい。
重合体A1への酸基を有する構成単位の導入は、酸基を有するモノマーを共重合させること又は酸無水物構造を有するモノマーを共重合させ酸無水物を加水分解することで行うことができる。
構成単位Bである、酸基を有する構成単位は、スチレン化合物に由来する構成単位若しくはビニル化合物に由来する構成単位に対して酸基で置換した構成単位、又は、(メタ)アクリル酸に由来する構成単位であることがより好ましい。具体的には、カルボキシ基を有するモノマーとしては、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸、4-カルボキシスチレン等が挙げられ、フェノール性水酸基を有するモノマーとしてはp-ヒドロキシスチレン、4-ヒドロキシフェニルメタクリレート等が挙げられ、酸無水物を有するモノマーとしては、無水マレイン酸等が挙げられる。
【0086】
構成単位Bとしては、カルボン酸基を有する構成単位、又は、フェノール性水酸基を有する構成単位が、パターン形成時の感度がより良好となるという観点から好ましい。
構成単位Bを形成しうる酸基を有するモノマーは既述の例に限定されない。
【0087】
重合体A1に含まれる構成単位Bは、1種のみであっても、2種以上であってもよい。
重合体A1は、重合体A1の全質量に対し、酸基を有する構成単位(構成単位B)を0.1質量%~20質量%含むことが好ましく、0.5質量%~15質量%含むことがより好ましく、1質量%~10質量%含むことが更に好ましい。上記範囲であると、パターン形成性がより良好となる。
重合体A1における構成単位Bの含有量(含有割合:質量比)は、13C-NMR測定から常法により算出されるピーク強度の強度比により確認することができる。
【0088】
<<その他の構成単位>>
重合体A1は、既述の構成単位A及び構成単位B以外の、他の構成単位(以下、構成単位Cと称することがある。)を、本開示に係る感光性転写材料の効果を損なわない範囲で含んでいてもよい。
構成単位Cを形成するモノマーとしては、特に制限はなく、例えば、スチレン類、(メタ)アクリル酸アルキルエステル、(メタ)アクリル酸環状アルキルエステル、(メタ)アクリル酸アリールエステル、不飽和ジカルボン酸ジエステル、ビシクロ不飽和化合物、マレイミド化合物、不飽和芳香族化合物、共役ジエン系化合物、不飽和モノカルボン酸、不飽和ジカルボン酸、不飽和ジカルボン酸無水物、脂肪族環式骨格を有する基、その他の不飽和化合物を挙げることができる。
構成単位Cの種類及び含有量の少なくともいずれかを調整することで、重合体A1の諸特性を調整することができる。特に、構成単位Cを適切に使用することで、重合体A1のTgを容易に調整することができる。
重合体A1のガラス転移温度を120℃以下とすることで、重合体A1を含有するポジ型感光性樹脂層は、転写性、仮支持体からの剥離性を良好なレベルに維持しつつ、パターン形成時の解像度及び感度がより良好となる。
重合体A1は、構成単位Cを1種のみ含んでもよく、2種以上含んでいてもよい。
【0089】
構成単位Cは、具体的には、スチレン、tert-ブトキシスチレン、メチルスチレン、α-メチルスチレン、アセトキシスチレン、メトキシスチレン、エトキシスチレン、クロロスチレン、ビニル安息香酸メチル、ビニル安息香酸エチル、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n-プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸イソボルニル、アクリロニトリル、又は、エチレングリコールモノアセトアセテートモノ(メタ)アクリレートなどを重合して形成される構成単位を挙げることができる。その他、特開2004-264623号公報の段落0021~段落0024に記載の化合物を挙げることができる。
【0090】
また、構成単位Cとしては、芳香環を有する構成単位、又は、脂肪族環式骨格を有する構成単位が、得られる転写材料の電気特性を向上させる観点で好ましい。これら構成単位を形成するモノマーとして、具体的には、スチレン、tert-ブトキシスチレン、メチルスチレン、α-メチルスチレン、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、及び、ベンジル(メタ)アクリレート等が挙げられる。中でも、構成単位Cとしては、シクロヘキシル(メタ)アクリレート由来の構成単位が好ましく挙げられる。
【0091】
また、構成単位Cを形成するモノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸アルキルエステルが、密着性の観点で好ましい。中でも、炭素数4~12のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルが密着性の観点でより好ましい。具体的には、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸n-ブチル、及び、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシルが挙げられる。
【0092】
構成単位Cの含有量は、重合体A1の全質量に対し、70質量%以下が好ましく、60質量%以下がより好ましく、50質量%以下が更に好ましい。下限値としては、0質量%でもよいが、1質量%以上であることが好ましく、5質量%以上であることがより好ましい。上記範囲であると、解像度及び密着性がより向上する。
【0093】
重合体A1が、構成単位Cとして、上記構成単位Bにおける酸基のエステルを有する構成単位を含むことも、現像液に対する溶解性、及び、上記ポジ型感光性樹脂層の物理物性を最適化する観点から好ましい。
中でも、重合体A1は、構成単位Bとして、カルボン酸基を有する構成単位を含み、更に、カルボン酸エステル基を含む構成単位Cを共重合成分として含むことが好ましく、例えば、(メタ)アクリル酸由来の構成単位Bと、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル又は(メタ)アクリル酸n-ブチル由来の構成単位(c)とを含む重合体がより好ましい。
以下、本開示における重合体A1の好ましい例を挙げるが、本開示は以下の例示に限定されない。なお、下記例示化合物における構成単位の比率、重量平均分子量は、好ましい物性を得るために適宜選択される。
【0094】
【化9】
【0095】
-重合体A1のガラス転移温度:Tg-
本開示における重合体A1のガラス転移温度(Tg)は、転写性の観点、及び、上述の加熱工程における加熱温度を調節する観点から、90℃以下であることが好ましく、20℃以上70℃以下であることがより好ましく30℃以上60℃以下であることが更に好ましい。
【0096】
重合体のTgを、既述の好ましい範囲に調整する方法としては、例えば、目的とする重合体の各構成単位の単独重合体のTgと各構成単位の質量比より、FOX式を指針にして、目的とする重合体A1のTgを制御することが可能である。
FOX式について、以下説明する。
重合体に含まれる第1の構成単位の単独重合体のTgをTg1、第1の構成単位の共重合体における質量分率をW1とし、第2の構成単位の単独重合体のTgをTg2とし、第2の構成単位の共重合体における質量分率をW2としたときに、第1の構成単位と第2の構成単位とを含む共重合体のTg0(K:ケルビン)は、以下の式にしたがって推定することが可能である。
FOX式:1/Tg0=(W1/Tg1)+(W2/Tg2)
既述のFOX式を用いて、共重合体に含まれる各構成単位の種類と質量分率を調整して、所望のTgを有する共重合体を得ることができる。
また、重合体の重量平均分子量を調整することにより、重合体のTgを調整することも可能である。
【0097】
-重合体A1の酸価-
重合体A1の酸価は、現像性及び転写性の観点から、0mgKOH/g以上200mgKOH/g以下であることが好ましく、5mgKOH/g以上100mgKOH/g以下であることがより好ましい。
【0098】
本開示における重合体の酸価は、重合体1gあたりの酸性成分を中和するのに要する水酸化カリウムの質量を表したものである。具体的には、測定サンプルをテトラヒドロフラン/水=9/1(体積比)混合溶媒に溶解し、電位差滴定装置(商品名:AT-510、京都電子工業(株)製)を用いて、得られた溶液を25℃において、0.1M水酸化ナトリウム水溶液で中和滴定する。滴定pH曲線の変曲点を滴定終点として、次式により酸価を算出する。
A=56.11×Vs×0.1×f/w
A:酸価(mgKOH/g)
Vs:滴定に要した0.1mol/L水酸化ナトリウム水溶液の使用量(mL)
f:0.1mol/L水酸化ナトリウム水溶液の力価
w:測定サンプルの質量(g)(固形分換算)
【0099】
-重合体A1の分子量:Mw-
重合体A1の分子量は、ポリスチレン換算重量平均分子量で、60,000以下であることが好ましい。重合体A1の重量平均分子量が60,000以下であることで、ポジ型感光性樹脂層の溶融粘度を低く抑え、上記基板と貼り合わせる際において低温(例えば130℃以下)での貼り合わせを実現することができる。
また、重合体A1の重量平均分子量は、2,000~60,000であることが好ましく、3,000~50,000であることがより好ましい。
なお、重合体の重量平均分子量は、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)によって測定することができ、測定装置としては、様々な市販の装置を用いることができ、装置の内容、及び、測定技術は当業者に公知である。
ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)による重量平均分子量の測定は、測定装置として、HLC(登録商標)-8220GPC(東ソー(株)製)を用い、カラムとして、TSKgel(登録商標)Super HZM-M(4.6mmID×15cm、東ソー(株)製)、Super HZ4000(4.6mmID×15cm、東ソー(株)製)、Super HZ3000(4.6mmID×15cm、東ソー(株)製)、Super HZ2000(4.6mmID×15cm、東ソー(株)製)をそれぞれ1本、直列に連結したものを用い、溶離液として、THF(テトラヒドロフラン)を用いることができる。
また、測定条件としては、試料濃度を0.2質量%、流速を0.35ml/min、サンプル注入量を10μL、及び測定温度を40℃とし、示差屈折率(RI)検出器を用いて行うことができる。
検量線は、東ソー(株)製の「標準試料TSK standard,polystyrene」:「F-40」、「F-20」、「F-4」、「F-1」、「A-5000」、「A-2500」及び「A-1000」の7サンプルのいずれかを用いて作製できる。
【0100】
重合体A1の数平均分子量と重量平均分子量との比(分散度)は、1.0~5.0が好ましく、1.05~3.5がより好ましい。
【0101】
-重合体A1の製造方法-
重合体A1の製造方法(合成法)は特に限定されないが、一例を挙げると、構成単位Aを形成するための重合性単量体、酸基を有する構成単位Bを形成するための重合性単量体、更に必要に応じて、その他の構成単位Cを形成するための重合性単量体を含む有機溶剤中、重合開始剤を用いて重合することにより合成することができる。また、いわゆる高分子反応で合成することもできる。
【0102】
本開示における上記ポジ型感光性樹脂層は、上記基板に対して良好な密着性を発現させる観点から、ポジ型感光性樹脂層の全固形分に対し、上記重合体成分を50質量%~99.9質量%の割合で含むことが好ましく、70質量%~98質量%の割合で含むことがより好ましい。
また、上記ポジ型感光性樹脂層は、上記基板に対して良好な密着性を発現させる観点から、ポジ型感光性樹脂層の全固形分に対し、上記重合体A1を50質量%~99.9質量%の割合で含むことが好ましく、70質量%~98質量%の割合で含むことがより好ましい。
【0103】
〔他の重合体〕
上記ポジ型感光性樹脂層は、重合体成分として、重合体A1に加え、本開示に係る感光性転写材料の効果を損なわない範囲において、構成単位Aを含まない重合体(「他の重合体」と称する場合がある。)を更に含んでいてもよい。上記ポジ型感光性樹脂層が他の重合体を含む場合、他の重合体の配合量は、全重合体成分中、50質量%以下であることが好ましく、30質量%以下であることがより好ましく、20質量%以下であることが更に好ましい。
【0104】
上記ポジ型感光性樹脂層は、重合体A1に加え、他の重合体を1種類のみ含んでいてもよいし、2種類以上含んでいてもよい。
他の重合体として、例えばポリヒドロキシスチレンを用いることができ、市販されている、SMA 1000P、SMA 2000P、SMA 3000P、SMA 1440F、SMA 17352P、SMA 2625P、及び、SMA 3840F(以上、サートマー社製)、ARUFON UC-3000、ARUFON UC-3510、ARUFON UC-3900、ARUFON UC-3910、ARUFON UC-3920、及び、ARUFON UC-3080(以上、東亞合成(株)製)、並びに、Joncryl 690、Joncryl 678、Joncryl 67、及び、Joncryl 586(以上、BASF社製)等を用いることもできる。
【0105】
〔光酸発生剤〕
上記ポジ型感光性樹脂層は、光酸発生剤を含有する。
本開示で使用される光酸発生剤としては、紫外線、遠紫外線、X線、及び、荷電粒子線等の放射線を照射することにより酸を発生することができる化合物である。
本開示で使用される光酸発生剤としては、波長300nm以上、好ましくは波長300nm~450nmの活性光線に感応し、酸を発生する化合物が好ましいが、その化学構造は制限されない。また、波長300nm以上の活性光線に直接感応しない光酸発生剤についても、増感剤と併用することによって波長300nm以上の活性光線に感応し、酸を発生する化合物であれば、増感剤と組み合わせて好ましく用いることができる。
本開示で使用される光酸発生剤としては、pKaが4以下の酸を発生する光酸発生剤が好ましく、pKaが3以下の酸を発生する光酸発生剤がより好ましく、pKaが2以下の酸を発生する光酸発生剤が特に好ましい。pKaの下限値は特に定めないが、例えば、-10.0以上であることが好ましい。
【0106】
光酸発生剤としては、イオン性光酸発生剤と、非イオン性光酸発生剤とを挙げることができる。
また、光酸発生剤としては、感度及び解像度の観点から、後述するオニウム塩化合物、及び、後述するオキシムスルホネート化合物よりなる群から選ばれた少なくとも1種の化合物を含むことが好ましく、オキシムスルホネート化合物を含むことがより好ましい。
【0107】
非イオン性光酸発生剤の例として、トリクロロメチル-s-トリアジン類、ジアゾメタン化合物、イミドスルホネート化合物、及び、オキシムスルホネート化合物などを挙げることができる。これらの中でも、感度、解像度、及び、密着性の観点から、光酸発生剤がオキシムスルホネート化合物であることが好ましい。これら光酸発生剤は、1種単独又は2種類以上を組み合わせて使用することができる。トリクロロメチル-s-トリアジン類、及び、ジアゾメタン誘導体の具体例としては、特開2011-221494号公報の段落0083~段落0088に記載の化合物が例示できる。
【0108】
オキシムスルホネート化合物、すなわち、オキシムスルホネート構造を有する化合物としては、下記式(B1)で表されるオキシムスルホネート構造を有する化合物が好ましい。
【0109】
【化10】
【0110】
式(B1)中、R21は、アルキル基又はアリール基を表し、*は他の原子又は他の基との結合部位を表す。
【0111】
式(B1)で表されるオキシムスルホネート構造を有する化合物は、いずれの基も置換されてもよく、R21におけるアルキル基は、直鎖状であっても、分岐構造を有していても、環構造を有していてもよい。許容される置換基は以下に説明する。
21のアルキル基としては、炭素数1~10の、直鎖状又は分岐状アルキル基が好ましい。R21のアルキル基は、炭素数6~11のアリール基、炭素数1~10のアルコキシ基、シクロアルキル基(7,7-ジメチル-2-オキソノルボルニル基などの有橋式脂環基を含む、好ましくはビシクロアルキル基等)、又は、ハロゲン原子で置換されてもよい。
21のアリール基としては、炭素数6~18のアリール基が好ましく、フェニル基又はナフチル基がより好ましい。R21のアリール基は、炭素数1~4のアルキル基、アルコキシ基及びハロゲン原子よりなる群から選ばれた1つ以上の基で置換されてもよい。
【0112】
式(B1)で表されるオキシムスルホネート構造を有する化合物は、特開2014-85643号公報の段落0078~0111に記載のオキシムスルホネート化合物であることも好ましい。
【0113】
イオン性光酸発生剤の例として、ジアリールヨードニウム塩類及びトリアリールスルホニウム塩類等のオニウム塩化合物、第四級アンモニウム塩類等を挙げることができる。これらのうち、オニウム塩化合物が好ましく、トリアリールスルホニウム塩類及びジアリールヨードニウム塩類が特に好ましい。
【0114】
イオン性光酸発生剤としては特開2014-85643号公報の段落0114~0133に記載のイオン性光酸発生剤も好ましく用いることができる。
【0115】
また、化学増幅ポジ型感光性樹脂層ではないポジ型感光性樹脂層を用いる場合、光酸発生剤としては、キノンジアジド化合物を用いることも可能である。キノンジアジド化合物としては、例えばTS-200TF、4NT-300(いずれも東洋合成工業(株)製)を用いることができる。
【0116】
光酸発生剤は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
上記ポジ型感光性樹脂層における光酸発生剤の含有量は、感度、解像度の観点から、上記ポジ型感光性樹脂層の全質量に対して、0.1質量%~10質量%であることが好ましく、0.5質量%~5質量%であることがより好ましい。
【0117】
〔溶剤〕
上記ポジ型感光性樹脂層は、溶剤を含んでいてもよい。
また、上記ポジ型感光性樹脂層を形成する感光性樹脂組成物は、上記ポジ型感光性樹脂層を容易に形成するため、一旦溶剤を含有させて感光性樹脂組成物の粘度を調節し、溶剤を含む感光性樹脂組成物を塗布及び乾燥して、上記ポジ型感光性樹脂層を好適に形成することができる。
本開示に使用される溶剤としては、公知の溶剤を用いることができる。溶剤としては、エチレングリコールモノアルキルエーテル類、エチレングリコールジアルキルエーテル類、エチレングリコールモノアルキルエーテルアセテート類、プロピレングリコールモノアルキルエーテル類、プロピレングリコールジアルキルエーテル類、プロピレングリコールモノアルキルエーテルアセテート類、ジエチレングリコールジアルキルエーテル類、ジエチレングリコールモノアルキルエーテルアセテート類、ジプロピレングリコールモノアルキルエーテル類、ジプロピレングリコールジアルキルエーテル類、ジプロピレングリコールモノアルキルエーテルアセテート類、エステル類、ケトン類、アミド類、及び、ラクトン類等が例示できる。また、溶剤の具体例としては特開2011-221494号公報の段落0174~段落0178に記載の溶剤も挙げられ、これらの内容は本明細書に組み込まれる。
【0118】
また、既述の溶剤に、更に必要に応じて、ベンジルエチルエーテル、ジヘキシルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、イソホロン、カプロン酸、カプリル酸、1-オクタノール、1-ノナール、ベンジルアルコール、アニソール、酢酸ベンジル、安息香酸エチル、シュウ酸ジエチル、マレイン酸ジエチル、炭酸エチレン、又は、炭酸プロピレン等の溶剤を添加することもできる。
溶剤は、1種のみ用いてもよく、2種以上を使用してもよい。
本開示に用いることができる溶剤は、1種単独で用いてもよく、2種を併用することがより好ましい。溶剤を2種以上使用する場合には、例えば、プロピレングリコールモノアルキルエーテルアセテート類とジアルキルエーテル類との併用、ジアセテート類とジエチレングリコールジアルキルエーテル類との併用、又は、エステル類とブチレングリコールアルキルエーテルアセテート類との併用が好ましい。
【0119】
また、溶剤としては、沸点130℃以上160℃未満の溶剤、沸点160℃以上の溶剤、又は、これらの混合物であることが好ましい。
沸点130℃以上160℃未満の溶剤としては、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(沸点146℃)、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート(沸点158℃)、プロピレングリコールメチル-n-ブチルエーテル(沸点155℃)、及び、プロピレングリコールメチル-n-プロピルエーテル(沸点131℃)が例示できる。
沸点160℃以上の溶剤としては、3-エトキシプロピオン酸エチル(沸点170℃)、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル(沸点176℃)、プロピレングリコールモノメチルエーテルプロピオネート(沸点160℃)、ジプロピレングリコールメチルエーテルアセテート(沸点213℃)、3-メトキシブチルエーテルアセテート(沸点171℃)、ジエチレングリコールジエチエルエーテル(沸点189℃)、ジエチレングリコールジメチルエーテル(沸点162℃)、プロピレングリコールジアセテート(沸点190℃)、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート(沸点220℃)、ジプロピレングリコールジメチルエーテル(沸点175℃)、及び、1,3-ブチレングリコールジアセテート(沸点232℃)が例示できる。
【0120】
感光性樹脂組成物を塗布する際における溶剤の含有量は、感光性樹脂組成物中の全固形分100質量部あたり、50質量部~1,900質量部であることが好ましく、100質量部~900質量部であることがより好ましい。
また、上記ポジ型感光性樹脂層における溶剤の含有量は、上記ポジ型感光性樹脂層の全質量に対し、2質量%以下であることが好ましく、1質量%以下であることがより好ましく、0.5質量%以下であることが更に好ましい。
【0121】
〔その他の添加剤〕
本開示における上記ポジ型感光性樹脂層は、重合体及び光酸発生剤に加え、必要に応じて公知の添加剤を含むことができる。
【0122】
-可塑剤-
上記ポジ型感光性樹脂層は、可塑性を改良する目的で、可塑剤を含有してもよい。
上記可塑剤は、重合体A1よりも重量平均分子量が小さいことが好ましい。
可塑剤の重量平均分子量は、可塑性付与の観点から500以上10,000未満が好ましく、700以上5,000未満がより好ましく、800以上4,000未満が更に好ましい。
可塑剤は、重合体A1と相溶して可塑性を発現する化合物であれば特に限定されないが、可塑性付与の観点から、可塑剤は、分子中にアルキレンオキシ基を有することが好ましい。可塑剤に含まれるアルキレンオキシ基は下記構造を有することが好ましい。
【0123】
【化11】
【0124】
上記式中、Rは炭素数2~8のアルキレン基であり、nは1~50の整数を表し、*は他の原子との結合部位を表す。
【0125】
なお、例えば、上記構造のアルキレンオキシ基を有する化合物(「化合物X」とする。)であっても、化合物X、重合体A1及び光酸発生剤を混合して得た化学増幅ポジ型感光性樹脂組成物が、化合物Xを含まずに形成した化学増幅ポジ型感光性樹脂組成物に比べて可塑性が向上しない場合は、本開示における可塑剤には該当しない。例えば、任意に添加される界面活性剤は、一般に感光性樹脂組成物に可塑性をもたらす量で使用されることはないため、本明細書における可塑剤には該当しない。
【0126】
上記可塑剤としては、例えば、下記構造を有する化合物が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0127】
【化12】
【0128】
可塑剤の含有量は、密着性の観点から、上記ポジ型感光性樹脂層の全質量に対して、1質量%~50質量%であることが好ましく、2質量%~20質量%であることがより好ましい。
上記ポジ型感光性樹脂層は、可塑剤を1種のみを含んでいてもよく、2種以上を含んでいてもよい。
【0129】
-増感剤-
上記ポジ型感光性樹脂層は、増感剤を更に含むことができる。
増感剤は、活性光線を吸収して電子励起状態となる。電子励起状態となった増感剤は、光酸発生剤と接触して、電子移動、エネルギー移動、及び、発熱などの作用が生じる。これにより光酸発生剤は化学変化を起こして分解し、酸を生成する。
増感剤を含有させることで、露光感度を向上させることができる。
【0130】
増感剤としては、アントラセン誘導体、アクリドン誘導体、チオキサントン誘導体、クマリン誘導体、ベーススチリル誘導体、及び、ジスチリルベンゼン誘導体よりなる群からえらばれた化合物が好ましく、アントラセン誘導体がより好ましい。
アントラセン誘導体としては、アントラセン、9,10-ジブトキシアントラセン、9,10-ジクロロアントラセン、2-エチル-9,10-ジメトキシアントラセン、9-ヒドロキシメチルアントラセン、9-ブロモアントラセン、9-クロロアントラセン、9,10-ジブロモアントラセン、2-エチルアントラセン、又は、9,10-ジメトキシアントラセンが好ましい。
【0131】
上記増感剤としては、国際公開第2015/093271号の段落0139~段落0141に記載の化合物を挙げることができる。
【0132】
増感剤の含有量は、上記ポジ型感光性樹脂層の全質量に対して、0質量%~10質量%であることが好ましく、0.1質量%~10質量%であることがより好ましい。
【0133】
-塩基性化合物-
上記ポジ型感光性樹脂層は、塩基性化合物を更に含むことが好ましい。
塩基性化合物としては、化学増幅レジストで用いられる塩基性化合物の中から任意に選択して使用することができる。例えば、脂肪族アミン、芳香族アミン、複素環式アミン、第四級アンモニウムヒドロキシド、及び、カルボン酸の第四級アンモニウム塩等が挙げられる。これらの具体例としては、特開2011-221494号公報の段落0204~段落0207に記載の化合物が挙げられ、これらの内容は本明細書に組み込まれる。
【0134】
具体的には、脂肪族アミンとしては、例えば、トリメチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、ジ-n-プロピルアミン、トリ-n-プロピルアミン、ジ-n-ペンチルアミン、トリ-n-ペンチルアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、ジシクロヘキシルアミン、及び、ジシクロヘキシルメチルアミンなどが挙げられる。
芳香族アミンとしては、例えば、アニリン、ベンジルアミン、N,N-ジメチルアニリン、及び、ジフェニルアミンなどが挙げられる。
複素環式アミンとしては、例えば、ピリジン、2-メチルピリジン、4-メチルピリジン、2-エチルピリジン、4-エチルピリジン、2-フェニルピリジン、4-フェニルピリジン、N-メチル-4-フェニルピリジン、4-ジメチルアミノピリジン、イミダゾール、ベンズイミダゾール、4-メチルイミダゾール、2-フェニルベンズイミダゾール、2,4,5-トリフェニルイミダゾール、ニコチン、ニコチン酸、ニコチン酸アミド、キノリン、8-オキシキノリン、ピラジン、ピラゾール、ピリダジン、プリン、ピロリジン、ピペリジン、ピペラジン、モルホリン、4-メチルモルホリン、1,5-ジアザビシクロ[4.3.0]-5-ノネン、及び、1,8-ジアザビシクロ[5.3.0]-7-ウンデセンなどが挙げられる。
第四級アンモニウムヒドロキシドとしては、例えば、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、テトラ-n-ブチルアンモニウムヒドロキシド、及び、テトラ-n-ヘキシルアンモニウムヒドロキシドなどが挙げられる。
カルボン酸の第四級アンモニウム塩としては、例えば、テトラメチルアンモニウムアセテート、テトラメチルアンモニウムベンゾエート、テトラ-n-ブチルアンモニウムアセテート、及び、テトラ-n-ブチルアンモニウムベンゾエートなどが挙げられる。
【0135】
上記塩基性化合物は、1種単独で使用しても、2種以上を併用してもよい。
塩基性化合物の含有量は、上記ポジ型感光性樹脂層の全質量に対して、0.001質量%~5質量%であることが好ましく、0.005質量%~3質量%であることがより好ましい。
【0136】
-ヘテロ環状化合物-
本開示におけるポジ型感光性樹脂層は、ヘテロ環状化合物を含むことができる。
本開示におけるヘテロ環状化合物には、特に制限はない。例えば、以下に述べる分子内にエポキシ基又はオキセタニル基を有する化合物、アルコキシメチル基含有ヘテロ環状化合物、その他、各種環状エーテル、環状エステル(ラクトン)などの含酸素モノマー、環状アミン、オキサゾリンといった含窒素モノマー、更には珪素、硫黄、リンなどのd電子をもつヘテロ環モノマー等を添加することができる。
【0137】
ポジ型感光性樹脂層中におけるヘテロ環状化合物の添加量は、ヘテロ環状化合物を添加する場合には、上記ポジ型感光性樹脂層の全質量に対し、0.01質量%~50質量%であることが好ましく、0.1質量%~10質量%であることがより好ましく、1質量%~5質量%であることが更に好ましい。上記範囲であると、密着性及びエッチング耐性の観点で好ましい。ヘテロ環状化合物は1種のみを用いてもよく、2種以上を併用することもできる。
【0138】
分子内にエポキシ基を有する化合物の具体例としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、脂肪族エポキシ樹脂等を挙げることができる。
【0139】
分子内にエポキシ基を有する化合物は市販品として入手できる。例えば、JER828、JER1007、JER157S70(三菱化学(株)製)、JER157S65((株)三菱ケミカルホールディングス製)など、特開2011-221494号公報の段落0189に記載の市販品などが挙げられる。
その他の市販品として、ADEKA RESIN EP-4000S、同EP-4003S、同EP-4010S、同EP-4011S(以上、(株)ADEKA製)、NC-2000、NC-3000、NC-7300、XD-1000、EPPN-501、EPPN-502(以上、(株)ADEKA製)、デナコールEX-611、EX-612、EX-614、EX-614B、EX-622、EX-512、EX-521、EX-411、EX-421、EX-313、EX-314、EX-321、EX-211、EX-212、EX-810、EX-811、EX-850、EX-851、EX-821、EX-830、EX-832、EX-841、EX-911、EX-941、EX-920、EX-931、EX-212L、EX-214L、EX-216L、EX-321L、EX-850L、DLC-201、DLC-203、DLC-204、DLC-205、DLC-206、DLC-301、DLC-402、EX-111,EX-121、EX-141、EX-145、EX-146、EX-147、EX-171、EX-192(以上ナガセケムテック製)、YH-300、YH-301、YH-302、YH-315、YH-324、YH-325(以上、新日鐵住金化学(株)製)セロキサイド2021P、2081、2000、3000、EHPE3150、エポリードGT400、セルビナースB0134、B0177((株)ダイセル製)などが挙げられる。
分子内にエポキシ基を有する化合物は1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0140】
分子内にエポキシ基を有する化合物の中でも、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂及び脂肪族エポキシ樹脂がより好ましく挙げられ、脂肪族エポキシ樹脂が特に好ましく挙げられる。
【0141】
分子内にオキセタニル基を有する化合物の具体例としては、アロンオキセタンOXT-201、OXT-211、OXT-212、OXT-213、OXT-121、OXT-221、OX-SQ、PNOX(以上、東亞合成(株)製)を用いることができる。
【0142】
また、オキセタニル基を含む化合物は、単独で又はエポキシ基を含む化合物と混合して使用することが好ましい。
【0143】
本開示におけるポジ型感光性樹脂層においては、ヘテロ環状化合物がエポキシ基を有する化合物であることが、エッチング耐性及び線幅安定性の観点から好ましい。
【0144】
-アルコキシシラン化合物-
上記ポジ型感光性樹脂層は、アルコキシシラン化合物を含有してもよい。アルコキシシラン化合物としては、トリアルコキシシラン化合物が好ましく挙げられる。
アルコキシシラン化合物としては、例えば、γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリアコキシシラン、γ-グリシドキシプロピルアルキルジアルコキシシラン、γ-メタクリロキシプロピルトリアルコキシシラン、γ-メタクリロキシプロピルアルキルジアルコキシシラン、γ-クロロプロピルトリアルコキシシラン、γ-メルカプトプロピルトリアルコキシシラン、β-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリアルコキシシラン、ビニルトリアルコキシシランが挙げられる。これらのうち、γ-グリシドキシプロピルトリアルコキシシラン及びγ-メタクリロキシプロピルトリアルコキシシランがより好ましく、γ-グリシドキシプロピルトリアルコキシシランが更に好ましく、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシランが特に好ましい。これらは1種単独又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0145】
-界面活性剤-
上記ポジ型感光性樹脂層は、膜厚均一性の観点から界面活性剤を含有することが好ましい。界面活性剤としては、アニオン系、カチオン系、ノニオン系(非イオン系)、又は、両性のいずれでも使用することができるが、好ましい界面活性剤はノニオン界面活性剤である。
ノニオン系界面活性剤の例としては、ポリオキシエチレン高級アルキルエーテル類、ポリオキシエチレン高級アルキルフェニルエーテル類、ポリオキシエチレングリコールの高級脂肪酸ジエステル類、シリコーン系、フッ素系界面活性剤を挙げることができる。また、以下商品名で、KP(信越化学工業(株)製)、ポリフロー(共栄社化学(株)製)、エフトップ(JEMCO社製)、メガファック(DIC(株)製)、フロラード(住友スリーエム(株)製)、アサヒガード、サーフロン(旭硝子(株)製)、PolyFox(OMNOVA社製)、及び、SH-8400(東レ・ダウコーニング(株)製)等の各シリーズを挙げることができる。
また、界面活性剤として、下記式I-1で表される構成単位A及び構成単位Bを含み、テトラヒドロフラン(THF)を溶剤とした場合のゲルパーミエーションクロマトグラフィーで測定されるポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)が1,000以上10,000以下である共重合体を好ましい例として挙げることができる。
【0146】
【化13】
【0147】
式(I-1)中、R401及びR403はそれぞれ独立に、水素原子又はメチル基を表し、R402は炭素数1以上4以下の直鎖アルキレン基を表し、R404は水素原子又は炭素数1以上4以下のアルキル基を表し、Lは炭素数3以上6以下のアルキレン基を表し、p及びqは重合比を表す質量百分率であり、pは10質量%以上80質量%以下の数値を表し、qは20質量%以上90質量%以下の数値を表し、rは1以上18以下の整数を表し、sは1以上10以下の整数を表し、*は他の構造との結合部位を表す。
【0148】
Lは、下記式(I-2)で表される分岐アルキレン基であることが好ましい。式(I-2)におけるR405は、炭素数1以上4以下のアルキル基を表し、相溶性と被塗布面に対する濡れ性の点で、炭素数1以上3以下のアルキル基が好ましく、炭素数2又は3のアルキル基がより好ましい。pとqとの和(p+q)は、p+q=100、すなわち、100質量%であることが好ましい。
【0149】
【化14】
【0150】
共重合体の重量平均分子量(Mw)は、1,500以上5,000以下がより好ましい。
【0151】
その他、特許第4502784号公報の段落0017、特開2009-237362号公報の段落0060~段落0071に記載の界面活性剤も用いることができる。
【0152】
界面活性剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
界面活性剤の添加量は、上記ポジ型感光性樹脂層の全質量に対して、10質量%以下であることが好ましく、0.001質量%~10質量%であることがより好ましく、0.01質量%~3質量%であることが更に好ましい。
【0153】
-その他の成分-
本開示におけるポジ型感光性樹脂層には、金属酸化物粒子、酸化防止剤、分散剤、酸増殖剤、現像促進剤、導電性繊維、着色剤、熱ラジカル重合開始剤、熱酸発生剤、紫外線吸収剤、増粘剤、架橋剤、及び、有機又は無機の沈殿防止剤などの公知の添加剤を更に加えることができる。
その他の成分の好ましい態様については特開2014-85643号公報の段落0165~段落0184にそれぞれ記載があり、この公報の内容は本明細書に組み込まれる。
【0154】
〔ポジ型感光性樹脂層の形成方法〕
各成分、及び、溶剤を任意の割合でかつ任意の方法で混合し、撹拌溶解してポジ型感光性樹脂層を形成するための感光性樹脂組成物を調製することができる。例えば、各成分を、それぞれ予め溶剤に溶解させた溶液とした後、得られた溶液を所定の割合で混合して組成物を調製することもできる。以上の如くして調製した組成物は、孔径0.2μmのフィルター等を用いてろ過した後に、使用に供することもできる。
【0155】
感光性樹脂組成物を仮支持体上に塗布し、乾燥させることで、ポジ型感光性樹脂層を形成することができる。
塗布方法は特に限定されず、スリット塗布、スピン塗布、カーテン塗布、インクジェット塗布などの公知の方法で塗布することができる。
なお、仮支持体上に後述のその他の層を形成した上に、ポジ型感光性樹脂層を塗布することもできる。
【0156】
<その他の層>
本開示に係る感光性転写材料は、上記ポジ型感光性樹脂層以外の層(以下、「その他の層」と称することがある)を有していてもよい。その他の層としては、中間層、カバーフィルム、熱可塑性樹脂層等を挙げることができる。
【0157】
〔中間層〕
上記ポジ型感光性樹脂層の上に、複数層を塗布する目的、及び塗布後の保存の際における成分の混合を防止する目的で、中間層を設けることができる。
中間層としては、特開2005-259138号公報の段落0084~0087に記載の中間層を用いることができる。中間層としては、水又はアルカリ水溶液に分散又は溶解するものが好ましい。
中間層に用いられる材料としては、例えばポリビニルアルコール系樹脂、ポリビニルピロリドン系樹脂、セルロース系樹脂、アクリルアミド系樹脂、ポリエチレンオキサイド系樹脂、ゼラチン、ビニルエーテル系樹脂、ポリアミド樹脂、及びこれらの共重合体などの樹脂が挙げられる。中でも特に好ましいのはポリビニルアルコールとポリビニルピロリドンとの組み合わせである。
【0158】
〔熱可塑性樹脂層、カバーフィルム等〕
本開示に係る感光性転写材料は、転写性の観点から、上記仮支持体と上記ポジ型感光性樹脂層との間に、熱可塑性樹脂層を有していてもよい。
また、本開示に係る感光性転写材料は、上記ポジ型感光性樹脂層を保護する目的でカバーフィルムを有していてもよい。
熱可塑性樹脂層の好ましい態様については特開2014-85643号公報の段落0189~段落0193、他の層の好ましい態様については特開2014-85643号公報の段落0194~段落0196にそれぞれ記載があり、この公報の内容は本明細書に組み込まれる。
中でも、転写性の観点から、熱可塑性樹脂層が、アクリル樹脂及びスチレン/アクリル共重合体よりなる群から選ばれた少なくとも1種の熱可塑性樹脂を含むことが好ましい。
【0159】
本開示に係る感光性転写材料が、熱可塑性樹脂層等のその他の層を有する場合、特開2006-259138号公報の段落0094~段落0098に記載の感光性転写材料の作製方法に準じて作製することができる。
例えば、熱可塑性樹脂層及び中間層を有する本開示に係る感光性転写材料を作製する場合には、仮支持体上に、熱可塑性の有機高分子と添加剤とを溶解した溶解液(熱可塑性樹脂層用塗布液)を塗布し、乾燥させて熱可塑性樹脂層を設けた後、得られた熱可塑性樹脂層上に熱可塑性樹脂層を溶解しない溶剤に樹脂及び添加剤を加えて調製した調製液(中間層用塗布液)を塗布し、乾燥させて中間層を積層する。形成した中間層上に、更に、中間層を溶解しない溶剤を用いて調製した感光性樹脂組成物を塗布し、乾燥させてポジ型感光性樹脂層を積層することによって、本開示に係る感光性転写材料を好適に作製することができる。
【0160】
(回路基板の製造方法)
本開示に係る回路基板の製造方法は、上記基板として、導電層及び基材を有する基板を用い、上記導電層上に本開示に係るレジストパターンの製造方法によりレジストパターンを製造する工程、及び、上記レジストパターンを製造する工程により得られた上記レジストパターンをマスクとして用い、上記導電層をエッチングする工程、を含む。
導電層及び基材を有する基板としては、上述の回路配線形成用基板が好ましく用いられる。
本開示に係るレジストパターンの製造方法によれば解像度に優れたレジストパターンが得られるため、本開示に係る回路基板の製造方法によれば、回路配線の解像度に優れた回路基板が得られる。
【0161】
従来、感光性樹脂組成物は感光システムの違いから、活性光線を照射した部分が像として残るネガ型と、活性光線を照射していない部分を像として残すポジ型とに分けられる。ポジ型では活性光線を照射することにより、例えば活性光線を照射されて酸を発生する感光剤などを用いて露光部の溶解性を高めるため、パターン露光時点では露光部及び未露光部がいずれも硬化せず、得られたパターン形状が不良であった場合には全面露光などによって基板を再利用(リワーク)できる。そのため、いわゆるリワーク性に優れる観点からは、ポジ型が好ましい。また、残存したポジ型感光性樹脂層を再度露光して異なるパターンを作製する、という技術はポジ型感光性樹脂層でなければ実現できない。本開示に係る回路基板の製造方法において、露光を2回以上行う態様も好ましく挙げられる。
【0162】
本開示に係る回路基板の製造方法の第1の実施態様は、露光を1回のみ行う態様であり、上記基板として、導電層及び基材を有する基板を用い、上記導電層上に本開示に係るレジストパターンの製造方法によりレジストパターンを製造する工程、及び、上記レジストパターンを製造する工程により得られた上記レジストパターンをマスクとして用い、上記導電層をエッチングする工程(エッチング工程)、を含む。
【0163】
すなわち、回路基板の製造方法の第1の実施態様は、仮支持体と、重合体及び光酸発生剤を含むポジ型感光性樹脂層と、を有する転写材料の、上記仮支持体を基準として上記ポジ型感光性樹脂層側の最外層を基板に接触させて貼り合わせる工程(貼り合わせ工程)、上記貼り合わせる工程後の、上記ポジ型感光性樹脂層を加熱する工程(加熱工程)、上記加熱する工程後の上記ポジ型感光性樹脂層をパターン露光する工程(露光工程)、上記パターン露光された上記ポジ型感光性樹脂層を現像する工程(現像工程)、及び、上記現像工程により得られたレジストパターンが配置されていない領域における上記基板をエッチング処理する工程(エッチング工程)、を含む。
上記貼り合わせ工程、加熱工程、露光工程及び現像工程は、上述の本開示に係るレジストパターンの製造方法における加熱工程、露光工程及び現像工程にそれぞれ該当する。また、レジストパターンの製造方法をロールツーロール方式により行う場合、各工程の間に巻取り工程及び巻き出し工程を含んでもよい。具体的には、上述の方法A又は方法Bにおいて記載した通りである。
【0164】
また、本開示に係る回路基板の製造方法の第2の実施態様は、露光を2回行う態様であり、上記基板として、基材、及び、互いに構成材料が異なる第1導電層及び第2導電層を含む複数の導電層とを有し、上記基材の表面上に、上記基材の表面から遠い順に、最表面層である上記第1導電層及び上記第2導電層が積層されている基板を用い、上記導電層上に本開示に係るレジストパターンの製造方法によりレジストパターンを製造する工程、上記レジストパターンを製造する工程により得られた上記レジストパターン(第1パターン)をマスクとして用い、上記複数の導電層のうち少なくとも上記第1導電層及び上記第2導電層をエッチング処理する工程(第1エッチング工程)、上記第1エッチング工程後の上記第1パターンを上記第1パターンとは異なるパターンでパターン露光する工程(第2露光工程)、上記第2露光工程後の上記第1パターンを現像して第2パターンを形成する工程(第2現像工程)、並びに、上記第2パターンが配置されていない領域における上記複数の導電層のうち少なくとも上記第1導電層をエッチング処理する工程(第2エッチング工程)、をこの順に含む。
【0165】
すなわち、回路基板の製造方法の第2の実施態様は、基材、及び、互いに構成材料が異なる第1導電層及び第2導電層を含む複数の導電層とを有し、上記基材の表面上に、上記基材の表面から遠い順に、最表面層である上記第1導電層及び上記第2導電層が積層されている基板を用い、仮支持体と、重合体及び光酸発生剤を含むポジ型感光性樹脂層と、を有する転写材料の、上記仮支持体を基準として上記ポジ型感光性樹脂層側の最外層を基板に接触させて上記基板に貼り合わせる工程(貼り合わせ工程)、上記貼り合わせる工程後の、上記ポジ型感光性樹脂層を加熱する工程(加熱工程)、上記加熱する工程後の上記ポジ型感光性樹脂層をパターン露光する工程(第1露光工程)、上記パターン露光された上記ポジ型感光性樹脂層を現像して第1パターンを形成する工程(第1現像工程)、上記第1パターンをマスクとして用い、上記複数の導電層のうち少なくとも上記第1導電層及び上記第2導電層をエッチング処理する工程(第1エッチング工程)と、上記第1エッチング工程後の上記第1パターンを上記第1パターンとは異なるパターンでパターン露光する工程(第2露光工程)、上記第2露光工程後の上記第1パターンを現像して第2パターンを形成する工程(第2現像工程)、並びに、上記第2パターンをマスクとして用い、上記複数の導電層のうち少なくとも上記第1導電層をエッチング処理する工程(第2エッチング工程)と、をこの順に含む。上記第2の実施形態としては、加熱工程以外の工程については国際公開第2006/190405号を参考にすることができ、この内容は本明細書に組み込まれる。
上記貼り合わせ工程、加熱工程、第1露光工程及び第1現像工程は、上述の本開示に係るレジストパターンの製造方法における加熱工程、露光工程及び現像工程にそれぞれ該当する。また、第2露光工程及び第2現像工程は、露光パターンが異なる以外は、第1露光工程及び第1現像工程と、それぞれ同一の方法により行われればよい。
【0166】
すなわち、本開示に係る回路基板の製造方法は、露光工程、現像工程及びエッチング処理する工程をそれぞれ複数含んでもよい。
上記複数含む場合の好ましい態様としては、例えば、露光工程、現像工程及びエッチング処理する工程をこの順で行うことを1つのセットとして、貼り合わせる工程と、加熱工程と、複数の上記セットと、を含む回路基板の製造方法が挙げられる。
以下、上記回路基板の製造方法の実施態様を、図2を用いて説明する。
【0167】
<貼り合わせ工程>
貼り合わせ工程の一例を、図2(a)に概略的に示した。
まず、貼り合わせ工程では、基材22と、互いに構成材料が異なる第1導電層24及び第2導電層26を含む複数の導電層とを有し、基材22の表面上に、基材22の表面から遠い順に、最表面層である第1導電層24と第2導電層26とが積層されている基板(回路配線形成用基板)20に対し、本開示に係る感光性転写材料100のポジ型感光性樹脂層14を第1導電層24に接触させて貼り合わせる。
図1に示したように感光性転写材料100のポジ型感光性樹脂層14上にカバーフィルム16を有する場合は、感光性転写材料100(ポジ型感光性樹脂層14)からカバーフィルム16を除去した後、感光性転写材料100のポジ型感光性樹脂層14を第1導電層24に接触させて貼り合わせる。
【0168】
<加熱工程>
上記貼り合わせ工程の後に、加熱工程が行われる。
加熱工程の詳細は上述の通りである。
【0169】
<露光工程(第1露光工程)>
上記第1の実施態様においては露光工程が、上記第2の実施態様においては第1露光工程が行われる。露光工程(第1露光工程)の一例を、図2(b)に概略的に示した。
露光工程(第1露光工程)では、貼り合わせ工程後の感光性転写材料の仮支持体12を介してポジ型感光性樹脂層14をパターン露光する。
露光方法の詳細は上述の通りである。
例えば、第1導電層24の上に配置された感光性転写材料100の上方(第1導電層24と接する側とは反対側)に所定のパターンを有するマスク30を配置し、その後、マスク30を介してマスク上方から紫外線で露光する方法などが挙げられる。
【0170】
<現像工程(第1現像工程)>
上記第1の実施態様においては現像工程が、上記第2の実施態様においては第1現像工程が行われる。現像工程(第1現像工程)の一例を、図2(c)に概略的に示した。
現像工程(第1現像工程)では、露光工程(第1露光工程)後のポジ型感光性樹脂層14から仮支持体12を剥離した後、露光工程(第1露光工程)後のポジ型感光性樹脂層14を現像して第1パターン14Aを形成する。
現像方法の詳細は上述の通りである。
【0171】
<エッチング工程(第1エッチング工程)>
上記第1の実施態様においてはエッチング工程が、上記第2の実施態様においては第1エッチング工程が行われる。エッチング工程(第1エッチング工程)の一例を、図2(d)に概略的に示した。
エッチング工程(第1エッチング工程)では、得られたレジストパターン(第1パターン)をマスクとして用い、導電層(複数の導電層のうち少なくとも上記第1導電層及び上記第2導電層)をエッチング処理する。
レジストパターン(第1パターン)をマスクとして用いることにより、レジストパターン(第1パターン)が配置されていない領域における上記基板がエッチング処理される。
エッチング工程(第1エッチング工程)では、第1パターン14Aが配置されていない領域における複数の導電層のうち少なくとも第1導電層24及び第2導電層26をエッチング処理する。エッチングにより、同じパターンを有する第1導電層24A及び第2導電層26Aが形成される。
【0172】
導電層のエッチングは、特開2010-152155号公報の段落0048~段落0054等に記載の方法、公知のプラズマエッチング等のドライエッチングによる方法など、公知の方法でエッチングを適用することができる。
【0173】
例えば、エッチングの方法としては、一般的に行われている、エッチング液に浸漬するウェットエッチング法が挙げられる。ウェットエッチングに用いられるエッチング液は、エッチングの対象に合わせて酸性タイプ又はアルカリ性タイプのエッチング液を適宜選択すればよい。
酸性タイプのエッチング液としては、塩酸、硫酸、フッ酸、リン酸等の酸性成分単独の水溶液、酸性成分と塩化第二鉄、フッ化アンモニウム、過マンガン酸カリウム等の塩の混合水溶液等が例示される。酸性成分は、複数の酸性成分を組み合わせた成分を使用してもよい。
アルカリ性タイプのエッチング液としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニア、有機アミン、テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイドのような有機アミンの塩等のアルカリ成分単独の水溶液、アルカリ成分と過マンガン酸カリウム等の塩の混合水溶液等が例示される。アルカリ成分は、複数のアルカリ成分を組み合わせた成分を使用してもよい。
【0174】
エッチング液の温度は特に限定されないが、45℃以下であることが好ましい。本開示でエッチングマスク(エッチングパターン)として使用される第1パターンは、45℃以下の温度域における酸性及びアルカリ性のエッチング液に対して特に優れた耐性を発揮することが好ましい。したがって、エッチング工程中にポジ型感光性樹脂層が剥離することが防止され、ポジ型感光性樹脂層の存在しない部分が選択的にエッチングされることになる。
【0175】
エッチング工程後、工程ラインの汚染を防ぐために、必要に応じて洗浄工程及び乾燥工程を行ってもよい。洗浄工程については、例えば常温で純水により10秒~300秒間基板を洗浄して行い、乾燥工程については、例えばエアブローを使用し、エアブロー圧(好ましくは0.1kg/cm~5kg/cm程度)を適宜調整して乾燥を行えばよい。
【0176】
<第2露光工程>
上記第2の実施態様においては第2露光工程が行われる。第2露光工程の一例を、図2(e)に概略的に示した。
第1エッチング工程後、第1エッチング工程後の第1パターン14Aを第1パターンとは異なるパターンでパターン露光する。
【0177】
第2露光工程では、第1導電層上に残存する第1パターンに対し、後述する第2現像工程において少なくとも第1導電層の除去すべき部分に相当する箇所を露光する。
第2露光工程におけるパターン露光は、第1露光工程で用いたマスク30とはパターンが異なるマスク40を用いること以外は第1露光工程におけるパターン露光と同じ方法を適用することができる。
【0178】
<第2現像工程>
上記第2の実施態様においては第2現像工程が行われる。第2現像工程の一例を、図2(f)に概略的に示した。
第2現像工程では、第2露光工程後の第1パターン14Aを現像して第2パターン14Bを形成する。
現像により、第1パターンのうち第2露光工程において露光された部分が除去される。
なお、第2現像工程では、第1現像工程における現像と同じ方法を適用することができる。
【0179】
<第2エッチング工程>
上記第2の実施態様においては第2露光工程が行われる。第2エッチング工程の一例を、図2(g)に概略的に示した。
第2エッチング工程では、第2パターン14Bが配置されていない領域における複数の導電層のうち少なくとも第1導電層24Aをエッチング処理する。
【0180】
第2エッチング工程におけるエッチングは、エッチングにより除去すべき導電層に応じたエッチング液を選択すること以外は第1エッチング工程におけるエッチングと同じ方法を適用することができる。
第2エッチング工程では、所望のパターンに応じて、第1エッチング工程よりも少ない導電層を選択的にエッチングすることが好ましい。例えば、図2(g)に示すように、ポジ型感光性樹脂層が配置されていない領域において第1導電層24Aのみを選択的にエッチングするエッチング液を用いてエッチングを行うことで、第1導電層を第2導電層のパターンとは異なるパターンにすることができる。
第2エッチング工程の終了後、少なくとも2種類のパターンの導電層24B,26Aを含む回路配線が形成される。
【0181】
<ポジ型感光性樹脂層除去工程>
ポジ型感光性樹脂層除去工程の一例を、図2(h)に概略的に示した。
第2エッチング工程の終了後、第1導電層24B上の一部には第2パターン14Bが残存している。ポジ型感光性樹脂層が不要であれば、残存する全てのポジ型感光性樹脂層の第2パターン14Bを除去すればよい。
【0182】
残存するポジ型感光性樹脂層を除去する方法としては特に制限はないが、薬品処理により除去する方法を挙げることができる。
ポジ型感光性樹脂層の除去方法としては、好ましくは30℃~80℃、より好ましくは50℃~80℃にて撹拌中の剥離液にポジ型感光性樹脂層などを有する基材を1分~30分間浸漬する方法が挙げられる。
【0183】
剥離液としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の無機アルカリ成分、又は、第1級アミン、第2級アミン、第3級アミン、第4級アンモニウム塩等の有機アルカリ成分を、水、ジメチルスルホキシド、N-メチルピロリドン又はこれらの混合溶液に溶解させた剥離液が挙げられる。剥離液を使用し、スプレー法、シャワー法、パドル法等により剥離してもよい。
【0184】
本開示に係る回路基板の製造方法は、他の任意の工程を含んでもよい。例えば、以下のような工程が挙げられるが、これらの工程に限定されない。
【0185】
<保護フィルムを貼り付ける工程>
上記第2の実施態様において、第1エッチング工程の後、第2露光工程の前に、第1パターン上に、光透過性を有する保護フィルム(不図示)を貼り付ける工程を更に有してもよい。
この場合、第2露光工程において、保護フィルムを介して第1パターンをパターン露光し、第2露光工程後、第1パターンから保護フィルムを剥離した後、第2現像工程を行うことが好ましい。
【0186】
<可視光線反射率を低下させる工程>
本開示に係る回路基板の製造方法は、基材上の複数の導電層の一部又は全ての可視光線反射率を低下させる処理をする工程を含むことが可能である。
可視光線反射率を低下させる処理としては、酸化処理などを挙げることができる。例えば、銅を酸化処理して酸化銅とすることで、黒化することにより、可視光線反射率を低下させることができる。
可視光線反射率を低下させる処理の好ましい態様については、特開2014-150118号公報の段落0017~段落0025、並びに、特開2013-206315号公報の段落0041、段落0042、段落0048及び段落0058に記載があり、この公報の内容は本明細書に組み込まれる。
【0187】
<絶縁膜上に新たな導電層を形成する工程>
本開示に係る回路基板の製造方法は、形成した回路基板における回路配線(以下、「第一の電極パターン」ともいう。)上に絶縁膜を形成する工程と、絶縁膜上に新たな導電層(以下、「第二の電極パターン」ともいう。)を形成する工程を含むことも好ましい。
このような構成により、上述の第二の電極パターンを、第一の電極パターンと絶縁しつつ、形成することができる。
絶縁膜を形成する工程については、特に制限はなく、公知の永久膜を形成する方法を挙げることができる。また、絶縁性を有する感光性材料を用いて、フォトリソグラフィにより所望のパターンの絶縁膜を形成してもよい。
絶縁膜上に新たな導電層を形成する工程については、特に制限はない。導電性を有する感光性材料を用いて、フォトリソグラフィにより所望のパターンの新たな導電層を形成してもよい。
【0188】
また、図2を参照した説明では、2層の導電層を備えた回路配線形成用基板に対して2つの異なるパターンを有する回路配線を形成する場合について説明したが、本開示に係る回路基板の製造方法を適用する基板の導電層の数は2層に限定されず、導電層が3層以上積層された回路配線形成用基板を用い、前述した露光工程、現像工程、及びエッチング工程の組み合わせを3回以上行うことで、3層以上の導電層をそれぞれ異なる回路配線パターンに形成することもできる。
【0189】
また、図2には示していないが、本開示に係る回路基板の製造方法は、基材が両方の表面にそれぞれ複数の導電層を有し、基材の両方の表面に形成された導電層に対して逐次又は同時に回路形成することも好ましい。このような構成により、基材の一方の表面に第一の導電パターン、もう一方の表面に第二の導電パターンを形成したタッチパネル用回路配線を形成することができる。また、このような構成のタッチパネル用回路配線を、ロールツーロールで基材の両面から形成することも好ましい。
【0190】
(入力装置及び表示装置)
本開示に係る回路基板の製造方法により製造される回路基板を備えた装置として、入力装置が挙げられる。
本開示における入力装置は、静電容量型タッチパネルであることが好ましい。
本開示における表示装置は、本開示における入力装置を備えることが好ましい。
また、本開示における表示装置は、有機EL表示装置、及び、液晶表示装置等の画像表示装置であることが好ましい。
【0191】
(タッチパネル、及び、タッチパネル表示装置並びにこれらの製造方法)
本開示に係るタッチパネルは、本開示に係る回路基板の製造方法により製造された回路基板を少なくとも有するタッチパネルであることが好ましい。また、本開示に係るタッチパネルは、透明基板と、電極と、絶縁層又は保護層とを少なくとも有することが好ましい。
本開示に係るタッチパネル表示装置は、本開示に係る回路基板の製造方法により製造された回路基板を少なくとも有するタッチパネル表示装置であり、本開示に係るタッチパネルを有するタッチパネル表示装置であることが好ましい。
本開示に係るタッチパネル又はタッチパネル表示装置の製造方法は、本開示に係る回路基板の製造方法を含むことが好ましい。
本開示に係るタッチパネル又はタッチパネル表示装置の製造方法は、感光性転写材料の製造方法により得られた感光性転写材料の上記ポジ型感光性樹脂層を上記基板に接触させて貼り合わせる工程と、上記貼り合わせる工程後の上記感光性転写材料の上記ポジ型感光性樹脂層をパターン露光する工程と、上記露光する工程後のポジ型感光性樹脂層を現像してパターンを形成する工程と、上記パターンが配置されていない領域における基板をエッチング処理する工程と、を含むことが好ましい。各工程の詳細は、上述の回路基板の製造方法における各工程の詳細と同義であり、好ましい態様も同様である。
本開示に係るタッチパネル及び本開示に係るタッチパネル表示装置のおける検出方法としては、抵抗膜方式、静電容量方式、超音波方式、電磁誘導方式、及び、光学方式など公知の方式いずれでもよい。中でも、静電容量方式が好ましい。
タッチパネル型としては、いわゆる、インセル型(例えば、特表2012-517051号公報の図5図6図7図8に記載のもの)、いわゆる、オンセル型(例えば、特開2013-168125号公報の図19に記載のもの、特開2012-89102号公報の図1及び図5に記載のもの)、OGS(One Glass Solution)型、TOL(Touch-on-Lens)型(例えば、特開2013-54727号公報の図2に記載のもの)、その他の構成(例えば、特開2013-164871号公報の図6に記載のもの)、各種アウトセル型(いわゆる、GG、G1・G2、GFF、GF2、GF1、G1Fなど)を挙げることができる。
本開示に係るタッチパネル及び本開示に係るタッチパネル表示装置としては、『最新タッチパネル技術』(2009年7月6日、(株)テクノタイムズ社発行)、三谷雄二監修、“タッチパネルの技術と開発”、シーエムシー出版(2004,12)、FPD International 2009 Forum T-11講演テキストブック、Cypress Semiconductor Corporation アプリケーションノートAN2292等に開示されている構成を適用することができる。
【実施例
【0192】
以下に実施例を挙げて本開示の実施形態を更に具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、及び、処理手順等は、本開示の実施形態の趣旨を逸脱しない限り、適宜、変更することができる。したがって、本開示の実施形態の範囲は以下に示す具体例に限定されない。なお、特に断りのない限り、「部」、「%」は質量基準である。
【0193】
<重合体成分>
以下の合成例において、以下の略語はそれぞれ以下の化合物を表す。
ATHF:2-テトラヒドロフラニルアクリレート(合成品)
MATHF:2-テトラヒドロフラニルメタクリレート(合成品)
ATHP:テトラヒドロ-2H-ピラン-2-イルアクリレート(新中村化学工業(株)製)
TBA:tert-ブチルアクリレート(富士フイルム和光純薬(株)製)
AA:アクリル酸(富士フイルム和光純薬(株)製)
EA:アクリル酸エチル(富士フイルム和光純薬(株)製)
MMA:メタクリル酸メチル(富士フイルム和光純薬(株)製)
CHA:アクリル酸シクロヘキシル(富士フイルム和光純薬(株)製)
BMA:メタクリル酸ベンジル(富士フイルム和光純薬(株)製)
PGMEA:プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(昭和電工(株)製)
V-601:ジメチル 2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオネート)(富士フイルム和光純薬(株)製)
【0194】
<ATHFの合成>
3つ口フラスコにアクリル酸(72.1g、1.0mol)、ヘキサン(72.1g)を加え20℃に冷却した。カンファースルホン酸(7.0mg、0.03mmol)、2-ジヒドロフラン(77.9g、1.0mol)を滴下した後に、20℃±2℃で1.5時間撹拌した後、35℃まで昇温して2時間撹拌した。ヌッチェにキョーワード200(ろ過材、水酸化アルミニウム粉末、協和化学工業(株)製)、キョーワード1000(ろ過材、ハイドロタルサイト系粉末、協和化学工業(株)製)をこの順に敷き詰めた後、反応液をろ過することでろ過液を得た。得られたろ過液にヒドロキノンモノメチルエーテル(MEHQ、1.2mg)を加えた後、40℃で減圧濃縮することで、アクリル酸テトラヒドロフラン-2-イル(ATHF)140.8gを無色油状物として得た(収率99.0%)。
【0195】
<MATHFの合成>
3つ口フラスコにメタクリル酸(86.1g、1.0mol)、ヘキサン(86.1g)を加え20℃に冷却した。カンファースルホン酸(7.0mg、0.03mmol)、2-ジヒドロフラン(70.1g、1.0mol)を滴下した後に、20℃±2℃で1.5時間撹拌した後、35℃まで昇温して2時間撹拌した。ヌッチェにキョーワード200、キョーワード1000をこの順に敷き詰めた後、反応液をろ過することでろ過液を得た。得られたろ過液にMEHQ(1.2mg)を加えた後、40℃で減圧濃縮することで、メタクリル酸テトラヒドロフラン-2-イル(MATHF)156.2gを無色油状物として得た(収率98.0%)。
【0196】
<重合体A-1の合成例>
3つ口フラスコにPGMEA(75.0g)を入れ、窒素雰囲気下において90℃に昇温した。ATHF(40.0g)、AA(2.0g)、アクリル酸エチル(EA、10.0g)、メタクリル酸メチル(MMA、32.0g)、アクリル酸シクロヘキシル(CHA、16.0g)、V-601(4.0g)、PGMEA(75.0g)を加えた溶液を、90℃±2℃に維持した3つ口フラスコ溶液中に2時間かけて滴下した。滴下終了後,90℃±2℃にて2時間撹拌することで、重合体A-1(固形分濃度40.0%)を得た。
【0197】
<重合体A-2~A-8の合成例>
重合体A-2~A-8は、モノマーの種類等を下記表1に示す通りに変更し、その他の条件については、A-1と同様の方法で合成した。重合体の固形分濃度は40質量%とした。表1中の数値は各モノマーに由来する構成単位の含有量(質量%)を示している。また、Tgの欄の記載は各重合体のガラス転移温度を、Mwの欄の記載は各重合体の重量平均分子量を、分解温度の欄は各重合体における酸分解性基で保護された酸基の分解温度をそれぞれ示している。分解温度の欄の>200の記載は、分解温度が200℃を超えていることを示している。
【0198】
【表1】
【0199】
<感光性転写材料の作製>
各実施例及び比較例において、下記表2に示す固形分比となるように、重合体成分、光酸発生剤、塩基性化合物、及び、界面活性剤をPGMEAに固形分濃度10質量%になるように溶解混合し、孔径0.2μmのポリテトラフルオロエチレン製フィルターで濾過して、感光性樹脂組成物を得た。
この感光性樹脂組成物を、仮支持体となる厚さ30μmのポリエチレンテレフタレートフィルムの上に、スリット状ノズルを用いて乾燥膜厚が3.0μm、塗布幅が1.0mとなるように塗布した。その後、80℃の乾燥ゾーンを40秒間かけて通過させ、カバーフィルムとしてポリエチレンフィルム(トレデガー社製、OSM-N)を圧着して感光性転写材料1を作製し、感光性転写材料を巻き取ってロール形態にした。
なお、上記厚さ30μmのポリエチレンテレフタレートフィルムの全光ヘイズは0.19%であった。フィルムヘイズはスガ試験機(株)製ヘイズメーターHZ-2を用い、JIS-K-7136に準拠してベース小片の全光ヘイズ値(%)を測定した。
【0200】
(レジストパターンの作製及び評価)
<感度評価>
実施例1~実施例9及び比較例1においては、作製したロール形態の感光性転写材料を巻き出した後、ラミネート用の加熱ロール温度120℃、線圧0.8MPa、線速度1.0m/minのラミネート条件で、銅層付きシクロオレフィンポリマー基板にラミネートし、巻き取ってロール形態にした。その後、ロール形態にて表2に記載の加熱処理条件に従い、加熱を行った。
表2に記載の加熱処理条件は、加熱装置において、ロールの最内部の温度が表2に記載の加熱温度になっていると考えられ、また、ロールの最内部の温度が上記加熱温度になっている時間が、表2に記載の加熱時間となっていると考えられる。
銅層付きシクロオレフィンポリマー基板としては、厚さ100μmのシクロオレフィンポリマーフィルム上に、銅を真空蒸着法で200nm厚にて成膜したシクロオレフィンポリマー基板を使用した。
ロールを巻き出した後、仮支持体を剥離せずに線幅3μm~20μmのラインアンドスペースパターンマスク(Duty比 1:1)を介して超高圧水銀灯で露光後、1時間静置した後に仮支持体を剥離して現像した。現像は25℃の1.0質量%炭酸ナトリウム水溶液を用い、シャワー現像で30秒行った。
実施例10においては、感光性転写材料を銅層付きシクロオレフィンポリマー基板にラミネートした後に、一部を切り出してシート形態にして、表2に記載の加熱処理条件に従い、加熱及び加圧を行った。その後、実施例1と同様の方法により露光及び現像を行った。
これら実施例において加熱及び加圧のための装置としてはTBR-200(チヨダエレクトリック(株)製)を使用した。なお、表2中の圧力(MPa)の記載は、加圧容器内の圧力を示しており、0.1MPaが約1気圧に相当する。すなわち、実施例5は加圧を行っていない例である。
【0201】
上記方法により20μmのラインアンドスペースパターンを形成したとき、スペース部の残渣を走査型電子顕微鏡(SEM)により観察し評価し、残渣が確認できなくなる露光量を求めた。
露光量が小さいほど感度に優れることを示しており、露光量が200mJ/cm未満が好ましい。評価は下記評価基準に従って行い、評価結果は表3に記載した。
【0202】
〔評価基準〕
5:露光量が80mJ/cm未満である
4:露光量が80mJ/cm以上150mJ/cm未満である
3:露光量が150mJ/cm以上200mJ/cm未満である
2:露光量が200mJ/cm以上300mJ/cm未満である
1:露光量が300mJ/cm以上である
【0203】
<レジストパターンの解像度評価>
上記感度評価にて残渣が確認できなくなる露光量により得られたラインアンドスペースパターンにおいて、ラインアンドスペースパターンが1:1で形成できている場合に解像できていると判断して、最も高解像度であったパターンを到達解像度とした。また到達解像度を判断する際、パターンの側壁部に荒れが生じている場合には、解像できていないとした。到達解像度が小さいほど解像度に優れるといえる。評価は下記評価基準に従って行い、評価結果は表3に記載した。
【0204】
〔評価基準〕
5:到達解像度が5μm未満である。
4:到達解像度が6μm未満、5μm以上である。
3:到達解像度が8μm未満、6μm以上である。
2:到達解像度が10μm未満、8μm以上である。
1:到達解像度が10μm以上である。
【0205】
(回路基板の作製及び評価)
<配線の解像度評価>
実施例1~実施例9及び比較例1においては、作製したロール形態の感光性転写材料を巻き出した後、ラミネート用の加熱ロール温度120℃、線圧0.8MPa、線速度1.0m/minのラミネート条件で銅層付きシクロオレフィンポリマー基板にラミネートし、巻き取ってロール形態にした。その後、ロール形態にて所定の条件で表2に記載の加熱処理条件に従い、加熱を行った。
ロールを巻き出した後、仮支持体を剥離せずに線幅3~20μmのラインアンドスペースパターンマスク(Duty比 1:1)を介して超高圧水銀灯で露光後、1時間静置した後に仮支持体を剥離して現像した。露光量は、上述の感度評価において求められた、残渣が確認できなくなる露光量とした。
現像は25℃の1.0質量%炭酸ナトリウム水溶液を用い、シャワー現像で30秒行った。次いで25℃の銅エッチング液(関東化学(株)製Cu-02)を用いて銅層をディップ法にて60秒間エッチングした。残ったポジ型感光性樹脂層を50℃の剥離液(関東化学(株)製KP-301)を用い、シャワーで剥離した。
実施例10においては、感光性転写材料を銅層付きシクロオレフィンポリマー基板にラミネートした後に、一部を切り出してシート形態にして、表2に記載の加熱処理条件に従い、加熱及び加圧を行った。その後、実施例1と同様の方法により露光、現像、エッチング及び剥離を行った。
このようにして得られた銅配線のラインアンドスペースパターンで、最も高解像度であったパターンを到達解像度とした。また到達解像度を判断する際、パターンの側壁部に荒れが生じている場合には、解像できていないとした。評価は下記評価基準に従って行い、評価結果は表3に記載した。
【0206】
〔評価基準〕
5:到達解像度が5μm未満である。
4:到達解像度が6μm未満、5μm以上である。
3:到達解像度が8μm未満、6μm以上である。
2:到達解像度が10μm未満、8μm以上である。
1:到達解像度が10μm以上である。
【0207】
【表2】
【0208】
【表3】
【0209】
表3に記載の結果から、本開示に係るレジストパターンの製造方法によれば、解像度に優れるレジストパターンが得られることがわかる。
また、本開示に係るレジストパターンの製造方法を含む回路基板の製造方法によれば、解像度に優れる回路配線を有する回路基板が得られることがわかる。
【0210】
上述した以外の表2中の化合物の詳細は下記の通りである。
【0211】
<光酸発生剤>
B-1:下記に示す構造(特開2013-047765の段落0227に記載の化合物、段落0227に記載の方法に従って合成した)
B-2:PAG-103(商品名、BASF社製)
B-3:下記に示す構造(特開2014-197155号公報の段落番号0210に記載の方法に従って合成した。Tsはパラトルエンスルホニル基を表す。)
B-4:GSID-26-1、トリアリールスルホニウム塩(BASF社製)
【0212】
【化15】
【0213】
<界面活性剤>
C-1:下記に示す構造
【0214】
【化16】
【0215】
<塩基性化合物>
D-1: 下記に示す構造の化合物
D-2: 2,4,5-トリフェニルイミダゾール(東京化成工業(株)製)
D-3: 1,5-ジアザビシクロ[4.3.0]-5-ノネン(東京化成工業(株)製)
【0216】
【化17】
【0217】
<ナフトキノンジアジド>
TS-200TF (東洋合成工業(株)製、下記構造)
【0218】
【化18】
【0219】
(実施例101)
100μm厚シクロオレフィンポリマー基材上に、第2層の導電層として酸化インジウムスズ(ITO)をスパッタリングで150nm厚にて成膜し、その上に第1層の導電層として銅を真空蒸着法で200nm厚にて成膜して、回路形成基板とした。
銅層上に実施例1で作製した感光性転写材料をラミネートした(線圧0.8MPa、線速度3.0m/min、ロール温度120℃)。
感光性転写材料及び基板を含む構造体をロールとして巻き取り、50℃、0.4MPaの条件で30分間加熱、加圧した。その後、ロールを巻きだして、仮支持体を剥離せずに一方向に導電層パッドが連結された構成を持つ図3に示すパターン(以下、「パターンA」とも称する。)を設けたフォトマスクを用いてコンタクトパターン露光した。
なお、図3に示すパターンAは、実線部SL及びグレー部Gが遮光部であり、点線部DLはアライメント合わせの枠を仮想的に示したものである。
その後仮支持体を剥離し、現像、水洗を行ってパターンAを得た。次いで銅エッチング液(関東化学(株)製Cu-02)を用いて銅層をエッチングした後、ITOエッチング液(関東化学(株)製ITO-02)を用いてITO層をエッチングすることで、銅(実線部SL)とITO(グレー部G)とが共にパターンAで描画された基板を得た。
【0220】
次いで、アライメントを合わせた状態で図4に示すパターン(以下、「パターンB」とも称する。)の開口部を設けたフォトマスクを用いてパターン露光し、現像、水洗を行った。
なお、図4に示すパターンBは、グレー部Gが遮光部であり、点線部DLはアライメント合わせの枠を仮想的に示したものである。
その後、Cu-02を用いて銅層をエッチングし、残った感光層を剥離液(10質量%水酸化ナトリウム水溶液)を用いて剥離し、配線基板を得た。
これにより、配線基板を得た。顕微鏡で観察したところ、剥がれ、欠けなどは無く、きれいなパターンであった。
【0221】
2018年2月16日に出願された日本国特許出願2018-026223号の開示は、その全体が参照により本明細書に取り込まれる。本明細書に記載された全ての文献、特許出願、及び技術規格は、個々の文献、特許出願、及び技術規格が参照により取り込まれることが具体的かつ個々に記された場合と同程度に、本明細書中に参照により取り込まれる。
図1
図2
図3
図4