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特許6992242液晶配向剤組成物、これを用いた液晶配向膜および液晶表示素子
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-13
(45)【発行日】2022-01-13
(54)【発明の名称】液晶配向剤組成物、これを用いた液晶配向膜および液晶表示素子
(51)【国際特許分類】
   G02F 1/1337 20060101AFI20220105BHJP
   C08K 5/5455 20060101ALI20220105BHJP
   C08L 79/08 20060101ALI20220105BHJP
【FI】
G02F1/1337 525
C08K5/5455
C08L79/08 A
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2020546958
(86)(22)【出願日】2020-01-16
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-07-01
(86)【国際出願番号】 KR2020000805
(87)【国際公開番号】W WO2020153659
(87)【国際公開日】2020-07-30
【審査請求日】2020-09-14
(31)【優先権主張番号】10-2019-0007630
(32)【優先日】2019-01-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2020-0005494
(32)【優先日】2020-01-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】500239823
【氏名又は名称】エルジー・ケム・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】龍華国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】クォン、スーンホ
(72)【発明者】
【氏名】ジョ、ジュン ホ
【審査官】岩村 貴
(56)【参考文献】
【文献】特表2020-510235(JP,A)
【文献】国際公開第2015/072554(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2016/109759(US,A1)
【文献】国際公開第2016/047774(WO,A1)
【文献】特開2015-212807(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2016-0095801(KR,A)
【文献】国際公開第2011/149071(WO,A1)
【文献】韓国公開特許第10-2009-0119286(KR,A)
【文献】国際公開第2010/114103(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02F 1/1337
C08L 79/08
C08K 5/5455
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液晶配向剤用重合体;および
末端の架橋官能基がケイ素含有熱脱離性保護基でキャッピングされた架橋剤化合物を含み、
下記数式1による粒子個数の変化が30個以下である、液晶配向剤組成物:
[数式1]
粒子個数の変化(△EA)=EA-EA
上記数式1中、
EAは、前記液晶配向剤組成物が得られた最初の時点(0秒)で、前記液晶配向剤組成物に含まれる粒径0.5μm以上の粒子個数であり、
EAは、最初の時点(0秒)から30日間前記液晶配向剤組成物をマイナス20℃以上0℃以下で保管した以降の時点で、前記液晶配向剤組成物に含まれる粒径0.5μm以上の粒子個数である。
【請求項2】
上記数式1中の粒子個数は、15℃以上35℃以下の温度およびParticle class 1000以下で粒度分析装置を用いて測定したものである、請求項1に記載の液晶配向剤組成物。
【請求項3】
前記粒子は、前記末端の架橋官能基が熱脱離性保護基でキャッピングされた架橋剤化合物の析出物を含む、請求項1または2に記載の液晶配向剤組成物。
【請求項4】
前記液晶配向剤組成物は、
前記液晶配向剤用重合体および末端の架橋官能基が熱脱離性保護基でキャッピングされた架橋剤化合物が、有機溶媒に溶解した高分子樹脂溶液を含む、請求項1から3のいずれか一項に記載の液晶配向剤組成物。
【請求項5】
前記高分子樹脂溶液中に粒子が分散した、請求項4に記載の液晶配向剤組成物。
【請求項6】
前記末端の架橋官能基が熱脱離性保護基でキャッピングされた架橋剤化合物は、前記高分子樹脂溶液中の固形分の含有量を基準にして、0.1重量%以上30重量%以下含む、請求項4または5に記載の液晶配向剤組成物。
【請求項7】
前記液晶配向剤用重合体は、ポリアミック酸繰り返し単位、ポリアミック酸エステル繰り返し単位、およびポリイミド繰り返し単位からなる群から選択される1種以上を含む、請求項1から6のいずれか一項に記載の液晶配向剤組成物。
【請求項8】
前記液晶配向剤用重合体は、下記化学式3で表される繰り返し単位、下記化学式4で表される繰り返し単位および下記化学式5で表される繰り返し単位からなる群から選択される1種以上の繰り返し単位を含む第1液晶配向剤用重合体;および
下記化学式6で表される繰り返し単位、下記化学式7で表される繰り返し単位および下記化学式8で表される繰り返し単位からなる群から選択される1種以上の繰り返し単位を含む第2液晶配向剤用重合体;を含む、請求項1から7のいずれか一項に記載の液晶配向剤組成物:
[化学式3]
【化1】
[化学式4]
【化2】
[化学式5]
【化3】
[化学式6]
【化4】
[化学式7]
【化5】
[化学式8]
【化6】
上記化学式3~8中、
およびRのうちの少なくとも一つは炭素数1~10のアルキル基であり、残りは水素であり、
およびRのうちの少なくとも一つは炭素数1~10のアルキル基であり、残りは水素であり、
~Xはそれぞれ独立して、4価の有機基であり、
~Yはそれぞれ独立して、下記化学式9で表される2価の有機基であり、
[化学式9]
【化7】
上記化学式9中、
Tは下記化学式10で表される4価の有機基であり、
およびDはそれぞれ独立して、炭素数1~20のアルキレン基、炭素数1~10のヘテロアルキレン基、炭素数3~20のシクロアルキレン基、炭素数6~20のアリーレン基または炭素数2~20のヘテロアリーレン基であり、
[化学式10]
【化8】
上記化学式10中、
10~R15はそれぞれ独立して、水素または炭素数1~6のアルキル基であり、
は単結合、-O-、-CO-、-COO-、-S-、-SO-、-SO-、-CR167-、-(CH-、-O(CHO-、-COO(CHOCO-、-CONH-、フェニレンまたはこれらの組み合わせからなる群から選択されるいずれか一つであり、
前記R16およびR17はそれぞれ独立して、水素、炭素数1~10のアルキル基またはハロアルキル基であり、
zは1~10の整数であり、
~Yはそれぞれ独立して、下記化学式11で表される2価の有機基であり、
[化学式11]
【化9】
上記化学式11中、
18およびR19はそれぞれ独立して、水素、ハロゲン、シアノ、ニトリル、炭素数1~10のアルキル、炭素数1~10のアルケニル、炭素数1~10のアルコキシ、炭素数1~10のフルオロアルキル、または炭素数1~10のフルオロアルコキシであり、
pおよびqはそれぞれ独立して、0~4の整数であり、
は単結合、-O-、-CO-、-S-、-SO-、-C(CH-、-C(CF-、-CONH-、-COO-、-(CH-、-O(CHO-、-O(CH-、-NH-、-NH(CH-NH-、-NH(CHO-、-OCH-C(CH-CHO-、-COO-(CH-OCO-、または-OCO-(CH-COO-であり、
yは1~10の整数であり、
kおよびmはそれぞれ独立して、0~3の整数であり、
nは0~3の整数であり、kかnの少なくともいずれか一方は1以上である。
【請求項9】
第1液晶配向剤用重合体と第2液晶配向剤用重合体は1:2以上1:5以下の重量比で含まれる、請求項8に記載の液晶配向剤組成物。
【請求項10】
前記末端の架橋官能基が熱脱離性保護基でキャッピングされた架橋剤化合物は下記化学式1-1で表される、請求項1から9のいずれか一項に記載の液晶配向剤組成物:
[化学式1-1]
【化10】
上記化学式1-1中、
Aは1価~4価の官能基であり、
jは1~4の整数であり、
およびLは互いに同一または異なり、それぞれ独立して、炭素数1~10のアルキレン基または炭素数6~20のアリーレン基のうちの一つであり、
およびRはそれぞれ独立して、ケイ素含有1価の官能基である。
【請求項11】
請求項1から10のいずれか一項に記載の液晶配向剤組成物の配向硬化物を含む、液晶配向膜。
【請求項12】
請求項11に記載の液晶配向膜を含む、液晶表示素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願の相互参照]
本出願は、2019年1月21日付の韓国特許出願第10-2019-0007630号、および2020年1月15日付の韓国特許出願第10-2020-0005494号に基づく優先権の利益を主張し、当該韓国特許出願の文献に開示された全ての内容は本明細書の一部として含まれる。
【0002】
本発明は、優れた膜強度を有し、かつ向上した貯蔵安定性および電気的特性を実現できる液晶配向剤組成物、これを用いた液晶配向膜の製造方法、これを用いた液晶配向膜および液晶表示素子に関する。
【背景技術】
【0003】
液晶表示素子において、液晶配向膜は液晶を一定方向に配向させる役割を担当している。具体的には、液晶配向膜は液晶分子の配列に配向子(director)の役割を果たして電場(electric field)により液晶が動いて画像を形成する時、適当な方向を取るようにする。液晶表示素子において均一な輝度(brightness)と高いコントラスト比(contrast ratio)を得るためには液晶を均一に配向することが必須である。
【0004】
従来には液晶を配向させる方法の一つとして、ガラスなどの基板にポリイミドなどの高分子膜を塗布し、この表面をナイロンやポリエステルなどの繊維を用いて一定方向に擦るラビング(rubbing)方法が用いられた。しかし、ラビング方法は、繊維質と高分子膜が摩擦する時に微細なホコリや静電気(electrical discharge:ESD)が発生することがあり、液晶パネルの製造時に深刻な問題を引き起こすことがある。
【0005】
前記ラビング方法の問題を解決するために、最近では摩擦でなく光照射によって高分子膜に異方性(非等方性、anisotropy)を誘導し、これを用いて液晶を配列する光配向法が研究されている。
【0006】
前記光配向法に使用できる材料としては多様な材料が紹介されており、その中でも液晶配向膜の良好な諸般性能のためにポリイミドが主に使用されている。そのため、ポリアミック酸またはポリアミック酸エステルなどの前駆体形態でコーティングした後、200℃以上230℃以下の温度で熱処理工程を経てポリイミドを形成させ、ここに光照射を行って配向処理を行うことになる。
【0007】
しかし、このようなポリイミド状態の膜に光照射して十分な液晶配向性を得るためには多くのエネルギーが必要になり、実際の生産性確保に困難が生じるだけでなく、光照射後の配向安定性を確保するために追加の熱処理工程も必要になり、パネルの大型化により製造工程上のカラムスペーサ(Column space、CS)の偏り現象が発生しながら液晶配向膜の表面にヘイズが発生し、これによってピンホール不良が生じてパネルの性能が十分に具現できない限界があった。
【0008】
また、液晶表示素子の高品位駆動のためには高い電圧保持率(voltage holding ratio;VHR)を示さなければならないが、ポリイミドだけではこれを示すのに限界があった。特に、最近では低電力ディスプレイに対する要求が増加することに伴い、液晶配向剤は液晶の配向性という基本特性だけでなく、直流/交流電圧によって発生する残像、電圧保持率などの電気的な特性にも影響を及ぼしうることを発見し、これにより、優れた液晶配向性と電気的特性を同時に実現できる液晶配向材料に対する開発の必要性が大きくなっている。
【0009】
そこで、ディスプレイ分野で要求される高い膜強度の液晶配向膜を製造するために多様な架橋剤を液晶配向剤組成物に添加する方案が提案されたが、架橋剤化合物の安定性が低下し、液晶配向剤組成物が均一性を持ちにくくなるので信頼性が低下する限界があった。しかも、架橋剤化合物の単なる添加によって高温、低周波数での電気的特性が減少して高性能/低電力ディスプレイへの適用が可能な液晶配向膜の製造には困難があった。
【0010】
したがって、高い膜強度を有する配向膜を製造しながらも、配向膜の配向特性と貯蔵安定性および電気的特性を高めることができる液晶配向剤組成物の開発が要求されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、液晶配向膜の合成時に優れた膜強度を有し、かつ向上した貯蔵安定性および電気的特性を実現できる液晶配向剤組成物を提供する。
【0012】
また、本発明は、前記液晶配向剤組成物の配向硬化物を含む、液晶配向膜とこれを含む液晶表示素子を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、液晶配向剤用重合体および末端の架橋官能基がケイ素含有熱脱離性保護基でキャッピングされた架橋剤化合物を含み、下記数式1による粒子個数の変化が30個以下である、液晶配向剤組成物が提供される。
【0014】
[数式1]
粒子個数の変化(△EA)=EA-EA
【0015】
上記数式1中、EAは、前記液晶配向剤組成物が得られた最初の時点(0秒)で、前記液晶配向剤組成物に含まれる粒径0.5μm以上の粒子個数であり、EAは、最初の時点(0秒)から30日間前記液晶配向剤組成物をマイナス20℃以上0℃以下で保管した以降の時点で、前記液晶配向剤組成物に含まれる粒径0.5μm以上の粒子個数である。
【0016】
また、本発明は、前記液晶配向剤組成物の配向硬化物を含む、液晶配向膜とこれを含む液晶表示素子が提供される。
【0017】
以下、本発明の具体的な実施形態による液晶配向剤組成物、これを用いた液晶配向膜および液晶表示素子についてより詳細に説明する。
【0018】
本明細書において特別な制限がない限り、次の用語は下記のように定義される。
【0019】
本明細書において、ある部分がある構成要素を「含む」という時、これは特に反対の意味を示す記載がない限り、他の構成要素を除くのではなく他の構成要素をさらに含み得ることを意味する。
【0020】
本明細書において、「置換」という用語は、化合物中の水素原子の代わりに他の官能基が結合することを意味し、置換される位置は水素原子が置換される位置、すなわち、置換基が置換可能な位置であれば限定されず、2以上置換される場合、2以上の置換基は互いに同一または異なってもよい。
【0021】
本明細書において「置換または非置換の」という用語は、重水素;ハロゲン基;シアノ基;ニトロ基;ヒドロキシ基;カルボニル基;エステル基;イミド基;アミド基;アミノ基;カルボキシ基;スルホン酸基;スルホンアミド基;ホスフィンオキシド基;アルコキシ基;アリールオキシ基;アルキルチオキシ基;アリールチオキシ基;アルキルスルホキシ基;アリールスルホキシ基;シリル基;ホウ素基;アルキル基;シクロアルキル基;アルケニル基;アリール基;アラルキル基;アラルケニル基;アルキルアリール基;アリールホスフィン基;またはN、O、およびS原子のうち1個以上を含むヘテロ環基からなる群から選択される1個以上の置換基で置換または非置換されるか、前記例示した置換基のうち2以上の置換基が連結された置換または非置換のものを意味する。例えば、「2以上の置換基が連結された置換基」は、ビフェニル基であり得る。すなわち、ビフェニル基はアリール基であり得、2個のフェニル基が連結された置換基と解釈されることもできる。
【0022】
本明細書において、
【化1】
または
【化2】
は、他の置換基に連結される結合を意味し、直接結合はLで表される部分に別途の原子が存在しない場合を意味する。
【0023】
本明細書において、アルキル基は直鎖または分枝鎖であり得、炭素数は特に限定されないが、1~10であることが好ましい。他の一実施形態によれば、前記アルキル基の炭素数は1~6である。アルキル基の具体的な例としては、メチル、エチル、プロピル、n-プロピル、イソプロピル、ブチル、n-ブチル、イソブチル、tert-ブチル、sec-ブチル、1-メチル-ブチル、1-エチル-ブチル、ペンチル、n-ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、tert-ペンチル、ヘキシル、n-ヘキシル、1-メチルペンチル、2-メチルペンチル、4-メチル-2-ペンチル、3,3-ジメチルブチル、2-エチルブチル、ヘプチル、n-ヘプチル、1-メチルヘキシル、シクロペンチルメチル、シクロヘキシルメチル、オクチル、n-オクチル、tert-オクチル、1-メチルヘプチル、2-エチルヘキシル、2-プロピルペンチル、n-ノニル、2,2-ジメチルヘプチル、1-エチル-プロピル、1,1-ジメチル-プロピル、イソヘキシル、2-メチルペンチル、4-メチルヘキシル、5-メチルヘキシルなどがあるが、これらに限定されない。
【0024】
本明細書において、ハロアルキル基は上述したアルキル基にハロゲン基が置換された官能基を意味し、ハロゲン基の例としてはフッ素、塩素、臭素またはヨウ素がある。前記ハロアルキル基は置換または非置換され得る。
【0025】
15族元素は、窒素(N)、リン(P)、ヒ素(As)、スズ(Sn)またはビスマス(Bi)であり得る。
【0026】
窒素酸化物は、窒素原子と酸素原子が結合した化合物であって、窒素酸化物官能基は官能基内に窒素酸化物を含む官能基を意味する。前記窒素酸化物官能基の例としては、ニトロ基(-NO)などを使用することができる。
【0027】
本明細書において、アリール基はアレーン(arene)に由来する1価の官能基であって、特に限定されないが炭素数6~20であることが好ましく、単環式アリール基または多環式アリール基であり得る。前記単環式アリール基としてはフェニル基、ビフェニル基、テルフェニル基などであり得るが、これらに限定されるものではない。前記多環式アリール基としてはナフチル基、アントラセニル基、フェナントリル基、ピレニル基、ペリレニル基、クリセニル基、フルオレニル基などであり得るが、これらに限定されるものではない。前記アリール基は置換または非置換され得る。
【0028】
本明細書において、アリーレン基は、アレーン(arene)に由来する2価の官能基であって、これらは2価の官能基であることを除いては、上述したアリール基に関する説明が適用される。
【0029】
本明細書において、多価官能基は、任意の化合物に結合された複数の水素原子が除去された形態の残基で、例えば2価の官能基、3価の官能基、4価の官能基が挙げられる。一例として、シクロブタンに由来する4価の官能基は、シクロブタンに結合された任意の水素原子4個が除去された形態の残基を意味する。
【0030】
本明細書において、直接結合または単結合は、当該位置にいかなる原子または原子団も存在せず、結合線で連結されることを意味する。具体的には、化学式中、RまたはL(aおよびbは、それぞれ1~20の整数)で表される部分に別途の原子が存在しない場合を意味する。
【0031】
本明細書において、重量平均分子量はGPC法によって測定したポリスチレン換算の重量平均分子量を意味する。前記GPC法によって測定したポリスチレン換算の重量平均分子量を測定する過程では、通常知られている分析装置と示差屈折率検出器(Refractive Index Detector)などの検出器および分析用カラムを用いることができ、通常適用される温度条件、溶媒、flow rateを適用することができる。前記測定条件の具体的な例としては、Polymer Laboratories PLgel MIX-B 300mm長さのカラムを用いてWaters PL-GPC220機器を用いて、評価温度は40℃であり、1,2,4-トリクロロベンゼンを溶媒として使用し、流速は1mL/minの速度で、サンプルは10mg/10mLの濃度に調製した後、200μLの量で供給し、ポリスチレン標準を用いて形成された検定曲線によりMwの値を求めることができる。ポリスチレン標準品の分子量は、2,000/10,000/30,000/70,000/200,000の5種を使用した。
【0032】
従来の液晶配向剤組成物の場合、高い膜強度を有する液晶配向膜を製造するために、多様な架橋剤を添加した。しかし、架橋剤化合物を含有する液晶配向剤組成物の場合、架橋剤化合物の安定性が低下して長期保管が難しいだけでなく、液晶配向剤組成物が均一性を有することが難しくなり、信頼性が低下するという限界があった。
【0033】
そこで、本発明者らは、前記のように上記数式1によって計算される粒子個数の変化が特定範囲を満足する液晶配向剤組成物を利用すれば、長期保管でも均一性を有することによって信頼度および安定性が強化された液晶配向膜を製造することができることを確認した。
【0034】
一般に液晶配向剤組成物が不安定な場合液晶配向剤組成物に含まれている化合物間反応が起きて副産物を形成するだけでなく、溶解度の低下による析出などが発生するので、長期保管後、液晶配向剤組成物に含まれている粒子個数が少ないということは、液晶配向剤組成物の安定性に優れ、長期保管に適することを意味する。
【0035】
したがって、前記一実施形態の液晶配向剤組成物の上記数式1による粒子個数の変化が上述した範囲を満足すると、長期保管でも副産物がほとんど形成されず、溶解度の低下による架橋剤化合物の析出も少ないので、長期保管安定性および信頼性向上を通して液晶配向剤組成物から製造される液晶配向膜の物性が向上するだけでなく、製膜工程の効率性が顕著に向上する効果を実現することができる。
【0036】
これに対し、液晶配向剤組成物の上記数式1による粒子個数の変化が上述した範囲を外れる場合には長期保管時、架橋剤化合物と液晶配向剤用重合体間の架橋結合反応が起こるか、または架橋剤化合物自体の溶解度低下によって、粒子が多数形成されてこれから製造される液晶配向膜の液晶配向性が低下するか、長期保管には適していない。
【0037】
1.液晶配向剤組成物
本発明の一実施形態によれば、液晶配向剤用重合体;および末端の架橋官能基がケイ素含有熱脱離性保護基でキャッピングされた架橋剤化合物を含み、上記数式1による粒子個数の変化が30個以下である液晶配向剤組成物が提供され得る。
【0038】
上記数式1中、EAは、前記液晶配向剤組成物が得られた最初の時点(0秒)で、前記液晶配向剤組成物に含まれる粒径0.5μm以上の粒子個数であり、EAは、最初の時点(0秒)から30日間前記液晶配向剤組成物をマイナス20℃以上0℃以下で保管した以降の時点で、前記液晶配向剤組成物に含まれる粒径0.5μm以上の粒子個数である。
【0039】
上記数式1中、EAは、前記液晶配向剤組成物が得られた最初の時点(0秒)で、前記液晶配向剤組成物に含まれる粒径0.5μm以上、0.5μm以上100μm以下、0.5μm以上50μm以下、0.5μm以上10μm以下、または0.5μm以上5μm以下の粒子個数であり、EAは、最初の時点(0秒)から30日間前記液晶配向剤組成物をマイナス20℃以上0℃以下で保管した以降の時点で、前記液晶配向剤組成物に含まれる粒径0.5μm以上、0.5μm以上100μm以下、0.5μm以上50μm以下、0.5μm以上10μm以下、または0.5μm以上5μm以下の粒子個数である。
【0040】
上記数式1中のEAは、最初の時点(0秒)から30日間前記液晶配向剤組成物をマイナス20℃以上0℃以下、マイナス20℃以上マイナス10℃以下、マイナス20℃以上マイナス15℃以下で保管した以降の時点で、前記液晶配向剤組成物に含まれる粒径0.5μm以上の粒子個数である。
【0041】
また、上記数式1中のEAは、最初の時点(0秒)から30日間常圧条件で保管した以降の時点で、前記液晶配向剤組成物に含まれる粒径0.5μm以上の粒子個数であり、前記常圧条件とは、通常の大気圧で特に限定されないが、1気圧の圧力を意味する。
【0042】
上記数式1中の前記粒子個数は、15℃以上35℃以下の温度およびParticle class1000以下で粒度分析装置を用いて測定したものである。
【0043】
具体的には、前記Particle class1000以下とは、1ft内に存在する粒径0.5μm以上の粒子個数が1000個以下である条件を意味する。
【0044】
また、前記粒度分析装置は、光散乱法(Light scattering method)を用いて粒子の大きさおよび個数を測定する装置であり、具体的には液中パーティクルセンサである。
【0045】
前記光散乱法(Light scattering method)は、試料に光を照射して散乱されてきた光がphoto detectorに感知されて電気的信号に変換され、その電気的信号の大きさによって粒子の大きさを求め、電気的信号の頻度によって粒子の個数を求める原理である。
【0046】
上記数式1中の粒子個数は、液中パーティクルセンサ(KS-42B、Rion社製)を用いて、15℃以上および35℃以下の温度およびParticle class1000以下の条件で0.2μm以上、0.3μm以上、0.5μm以上、1.0μm以上、2.0μm以上の総5個のチャンネルのうち、4個以上5個以下のチャンネルを利用して電気的信号を測定した後、0.5μmの粒径を有する粒子に対して示す電気的信号の大きさより大きく測定された電気的信号の個数から分かる。具体的には、0.5μmより小さい粒径を有する0.2μm以上、0.3μm以上のチャンネルに対して測定される粒子の個数を除いて、0.5μm以上、1.0μm以上、2.0μm以上のチャンネルで測定される各粒子の個数を全て足して計算できる。
【0047】
上記数式1による粒子個数の変化は30個以下、10個以下、8個以下、5個以下、4個以下、または3個以下であり得る。
【0048】
具体的には、上記数式1中のEAは、前記液晶配向剤組成物が得られた最初の時点(0秒)で、前記液晶配向剤組成物に含まれる粒径0.5μm以上の粒子個数であって、30個以下、15個以下、12個以下、11個以下、10個以下、または8個以下であり得る。
【0049】
上記数式1中のEAは、最初の時点(0秒)から30日間前記液晶配向剤組成物をマイナス20℃以上0℃以下で保管した以降の時点で、前記液晶配向剤組成物に含まれる粒径0.5μm以上の粒子個数であって、500個以下、100個以下、30個以下、20個以下、14個以下、13個以下、または12個以下であり得る。
【0050】
これに対し、液晶配向剤組成物の上記数式1による粒子個数の変化が上述した範囲を外れる場合には長期保管時、架橋剤化合物と液晶配向剤用重合体間の架橋結合反応が起こるか、または架橋剤化合物自体の溶解度低下によって粒子が多数形成されて、これから製造される液晶配向膜の液晶配向性が低下するか、長期保管に適していない。
【0051】
前記一実施形態の液晶配向剤組成物に含まれる前記架橋剤化合物は、末端の架橋官能基がケイ素含有熱脱離性保護基でキャッピングされた架橋剤化合物であり得る。好ましくは、前記架橋剤化合物では末端のすべての架橋官能基を熱脱離性保護基でキャッピングされ得る。
【0052】
前記架橋剤化合物で、末端の架橋官能基は、前記液晶配向剤用重合体と結合して架橋結合反応を起こすことができる官能基を意味し、例えば、ヒドロキシ基(-OH)であり得る。
【0053】
前記架橋剤化合物で、前記ケイ素含有熱脱離性保護基は、末端の架橋官能基で水素原子の代わりに置換された官能基で、液晶配向剤用重合体と架橋剤化合物間の架橋反応を抑制させることができる。
【0054】
また、前記架橋剤化合物で末端の架橋官能基がケイ素含有熱脱離性保護基でキャッピングされたことは、上述のように末端の架橋官能基で水素原子の代わりにケイ素含有熱脱離性保護基が置換されたことを意味し、例えば、前記ケイ素含有熱脱離性保護基はケイ素含有1価の官能基であり得る。
【0055】
前記熱脱離性保護基は、液晶配向剤組成物から液晶配向膜を製造する乾燥工程、露光工程、硬化工程などを経て、一定水準以上の温度に上昇する時に水素原子で置換されて脱着され得る。
【0056】
架橋剤化合物の末端の架橋官能基をケイ素含有熱脱離性保護基でキャッピングする場合、従来の架橋官能基を末端とする架橋剤よりも初期乾燥工程での架橋剤の反応性が低下し、配向のための露光工程後に架橋反応が始まり、架橋剤による初期配向低下を減らすことができる。
【0057】
前記架橋剤化合物の架橋官能基末端に導入された熱脱離性保護基は、一定水準以上の温度、具体的には150℃以上の温度で熱処理される場合、脱着除去されながら架橋官能基末端が回復して円滑な架橋反応を行うことができ、150℃未満の温度では架橋官能基による架橋反応を抑制させて不要な架橋構造の形成を最小化して、組成物の安定性および信頼性を向上させることができる。すなわち、前記架橋剤化合物の架橋官能基末端に導入された熱脱離性保護基は、液晶配向膜の乾燥または焼成過程時の熱処理によってほぼ150℃以上の温度で脱着除去されながら架橋官能基末端が回復して円滑な架橋反応を行い、配向膜の機械的物性を向上させることができる。
【0058】
一方、前記粒子は、末端の架橋官能基が熱脱離性保護基でキャッピングされた架橋剤化合物の析出物を含み得る。析出物とは、結晶状固体が溶解している溶液状態の組成物から、前記結晶状固体が溶解度によって分離されて形成された物質を意味する。具体的には、前記末端の架橋官能基が熱脱離性保護基でキャッピングされた架橋剤化合物が溶解度の低下によって液晶配向剤組成物から析出して粒子を形成することができる。
【0059】
一般に膜強度の上昇のために架橋剤化合物を液晶配向剤用組成物に添加するが、従来の架橋剤化合物の場合架橋剤化合物の溶解度が不良で液晶配向剤用組成物から析出して液晶配向剤用組成物の貯蔵安定性が不良となる問題があった。
【0060】
これに対し、前記一実施形態の液晶配向剤用組成物は、優れた溶解度を示す末端の架橋官能基が熱脱離性保護基でキャッピングされた架橋剤化合物を含むことによって、架橋剤化合物の析出量が微々であり、架橋剤化合物を含まない液晶配向剤用組成物で形成される粒子個数と同等水準の粒子のみを形成して、長期保管でも貯蔵安定性および信頼性に優れた技術的効果を実現することができる。
【0061】
前記一実施形態の液晶配向剤組成物は、前記液晶配向剤用重合体および前記末端の架橋官能基が熱脱離性保護基でキャッピングされた架橋剤化合物が有機溶媒に溶解した高分子樹脂溶液を含み得る。
【0062】
前記有機溶媒の具体的な例としては、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチル-2-ピロリドン、N-メチルカプロラクタム、2-ピロリドン、N-エチルピロリドン、N-ビニルピロリドン、ジメチルスルホキシド、テトラメチル尿素、ピリジン、ジメチルスルホン、ヘキサメチルスルホキシド、γ-ブチロラクトン、3-メトキシ-N,N-ジメチルプロパンアミド、3-エトキシ-N,N-ジメチルプロパンアミド、3-ブトキシ-N,N-ジメチルプロパンアミド、1,3-ジメチル-イミダゾリジノン、エチルアミルケトン、メチルノニルケトン、メチルエチルケトン、メチルイソアミルケトン、メチルイソプロピルケトン、シクロヘキサノン、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ジグライム、4-ヒドロキシ-4-メチル-2-ペンタノン、などが挙げられる。これらは単独で用いることもでき、混合して用いることもできる。
【0063】
前記液晶配向剤組成物は、有機溶媒以外にも他の成分をさらに含み得る。非制限的な例として、液晶配向剤が塗布されたとき、膜厚均一性や表面平滑性を向上させるか、あるいは液晶配向膜と基板との密着性を向上させるか、あるいは液晶配向膜の誘電率や導電性を変化させるか、あるいは液晶配向膜の緻密性を増加させる添加剤をさらに含み得る。このような添加剤としては各種溶媒、界面活性剤、シラン系化合物、誘電体または架橋性化合物などが挙げられる。
【0064】
また、前記一実施形態の液晶配向剤組成物は、前記高分子樹脂の溶液中に粒子が分散した液晶配向剤組成物であり得る。
【0065】
すなわち、前記液晶配向剤用重合体および前記末端の架橋官能基が熱脱離性保護基でキャッピングされた架橋剤化合物が有機溶媒に溶解した高分子樹脂溶液に、前記溶解度の低下によって液晶配向剤組成物から析出した末端の架橋官能基が熱脱離性保護基でキャッピングされた架橋剤化合物を含む粒子をさらに含み得る。
【0066】
前記末端の架橋官能基が熱脱離性保護基でキャッピングされた架橋剤化合物は、前記高分子樹脂溶液中の固形分の含有量を基準にして、0.1重量%以上30重量%以下、または0.1重量%以上20重量%以下、または1重量%以上20重量%以下、または1重量%以上15重量%以下、または5重量%以上15重量%以下、または1重量%以上7重量%以下、または13重量%以上20重量%以下に含み得る。
【0067】
一般的に使用される架橋剤化合物の場合、末端の架橋官能基が熱脱離性保護基でキャッピングされず、架橋剤化合物の溶解性が不良で、これにより、液晶配向剤組成物に架橋剤化合物が過剰に含まれる場合、架橋剤化合物の一部が析出して粒子を形成しながら、液晶配向剤組成物の保管安定性が不良となるだけでなく、これから製造される液晶配向膜の配向特性が不良となる問題があった。
【0068】
これとは異なり、前記一実施形態の末端の架橋官能基が熱脱離性保護基でキャッピングされた架橋剤化合物は溶解性に優れているため、従来の架橋剤化合物と比較して液晶配向剤組成物に過剰に含まれ、これにより、液晶配向剤組成物の保管安定性に優れ、これから製造される液晶配向膜が優れた膜強度および液晶配向特性を示すことができる。
【0069】
前記架橋剤化合物の含有量が多すぎると、前記液晶配向剤用重合体の架橋度が増加しすぎて前記重合体の柔軟性が減少することがあり、組成物の粘度の増加による貯蔵安定性の減少および組成物中でのゲル化反応により基板への塗布性が減少することがある。
【0070】
これに対し、前記架橋剤化合物の含有量が少なすぎると、前記液晶配向剤用重合体の架橋度の増加による機械的強度および電気的特性の向上効果が十分に具現されないこともある。
【0071】
前記一実施形態の液晶配向剤組成物は、液晶配向剤用重合体を含み得る。前記液晶配向剤用重合体は特に限定されないが、ポリイミドおよびポリイミド前駆体などが挙げられる。
【0072】
前記一実施形態の液晶配向剤組成物は、ポリアミック酸繰り返し単位、ポリアミック酸エステル繰り返し単位、およびポリイミド繰り返し単位からなる群から選択される1種以上を含む液晶配向剤用重合体を含み得る。
【0073】
具体的には、前記一実施形態の液晶配向剤組成物は、下記化学式3で表される繰り返し単位、下記化学式4で表される繰り返し単位および下記化学式5で表される繰り返し単位からなる群から選択される1種以上の繰り返し単位を含む第1液晶配向剤用重合体;および下記化学式6で表される繰り返し単位、下記化学式7で表される繰り返し単位および下記化学式8で表される繰り返し単位からなる群から選択される1種以上の繰り返し単位を含む第2液晶配向剤用重合体;を含み得る。
【0074】
[化学式3]
【化3】
[化学式4]
【化4】
[化学式5]
【化5】
[化学式6]
【化6】
[化学式7]
【化7】
[化学式8]
【化8】
【0075】
上記化学式3~8中、RおよびRのうちの少なくとも一つは炭素数1~10のアルキル基であり、残りは水素であり、RおよびRのうちの少なくとも一つは炭素数1~10のアルキル基であり、残りは水素であり、X~Xはそれぞれ独立して、4価の有機基であり、Y~Yはそれぞれ独立して、下記化学式9で表される2価の有機基であり、
[化学式9]
【化9】
上記化学式9中、Tは下記化学式10で表される4価の有機基であり、DおよびDはそれぞれ独立して、炭素数1~20のアルキレン基、炭素数1~10のヘテロアルキレン基、炭素数3~20のシクロアルキレン基、炭素数6~20のアリーレン基または炭素数2~20のヘテロアリーレン基であり、
[化学式10]
【化10】
上記化学式10中、R10~R15はそれぞれ独立して、水素または炭素数1~6のアルキル基であり、Lは単結合、-O-、-CO-、-COO-、-S-、-SO-、-SO-、-CR167-、-(CH-、-O(CHO-、-COO(CHOCO-、-CONH-、フェニレンまたはこれらの組み合わせからなる群から選択されるいずれか一つであり、前記R16およびR17はそれぞれ独立して、水素、炭素数1~10のアルキル基またはハロアルキル基であり、zは1~10の整数であり、
~Yはそれぞれ独立して、下記化学式11で表される2価の有機基であり、
[化学式11]
【化11】
上記化学式11中、R18およびR19はそれぞれ独立して、水素、ハロゲン、シアノ、ニトリル、炭素数1~10のアルキル、炭素数1~10のアルケニル、炭素数1~10のアルコキシ、炭素数1~10のフルオロアルキル、または炭素数1~10のフルオロアルコキシであり、pおよびqはそれぞれ独立して、0~4の整数であり、Lは単結合、-O-、-CO-、-S-、-SO-、-C(CH-、-C(CF-、-CONH-、-COO-、-(CH-、-O(CHO-、-O(CH-、-NH-、-NH(CH-NH-、-NH(CHO-、-OCH-C(CH-CHO-、-COO-(CH-OCO-、または-OCO-(CH-COO-であり、yは1~10の整数であり、kおよびmはそれぞれ独立して、0~3の整数であり、nは0~3の整数である。
【0076】
具体的には、一実施形態による液晶配向剤組成物のうちの第1液晶配向剤用重合体および第2液晶配向剤用重合体において、上記化学式3~8の繰り返し単位でX~Xはそれぞれ独立して、4価の官能基であり得る。
【0077】
一例として、前記X~Xはそれぞれ独立して、上記化学式10で表される4価の官能基であり得る。
【0078】
また、一実施形態による液晶配向剤組成物のうちの第1液晶配向剤用重合体は、上記化学式3~5の繰り返し単位でY~Yはそれぞれ独立して、上記化学式9で表される2価の官能基であり得る。
【0079】
上記化学式9中、Tは4価の官能基であり、DおよびDはそれぞれ独立して、炭素数1~20のアルキレン基、炭素数1~10のヘテロアルキレン基、炭素数3~20のシクロアルキレン基、炭素数6~20のアリーレン基または炭素数2~20のヘテロアリーレン基のうちの一つであり得る。
【0080】
上記化学式9は、液晶配向剤用重合体の形成に使用される前駆体であるイミド基などを含有する特定構造のジアミンに由来する繰り返し単位中の一部に相当する。
【0081】
より具体的には、上記化学式9中のDおよびDはそれぞれ独立して、下記化学式12または化学式13であり得る。
【0082】
[化学式12]
【化12】
[化学式13]
【化13】
【0083】
上記化学式13中、Lは単結合、-O-、-SO-、または-CR2021-であり、ここで、R20およびR21はそれぞれ独立して、水素、または炭素数1~10のアルキルである。
【0084】
好ましくは、上記化学式12は下記化学式12-1であり得る。
【0085】
[化学式12-1]
【化14】
【0086】
また、上記化学式13は下記化学式13-1であり得る。
【0087】
[化学式13-1]
【化15】
【0088】
上記化学式13-1中のLはO、またはCHである。
【0089】
より具体的には、上記化学式9で表される有機基の例は特に限定されるものではないが、例えば下記化学式9-aまたは化学式9-bで表される官能基であり得る。
【0090】
[化学式9-a]
【化16】
[化学式9-b]
【化17】
【0091】
また、具体的には、上記化学式9中のTは、下記化学式10-1で表される官能基または下記化学式10-2で表される官能基であり得る。
【0092】
[化学式10-1]
【化18】
[化学式10-2]
【化19】
【0093】
そして、一実施形態による液晶配向剤組成物のうちの第1液晶配向剤用重合体は、上記化学式3、化学式4および化学式5で表される繰り返し単位中で、イミド繰り返し単位である化学式3で表される繰り返し単位を、繰り返し単位全体に対して5以上74モル%以下、好ましくは10以上60モル%以下に含み得る。
【0094】
上述したように、上記化学式3で表されるイミド繰り返し単位を特定の含有量を含む重合体を利用すれば、前記第1液晶配向剤用重合体がすでにイミド化されたイミド繰り返し単位を一定の含有量含むため、高温の熱処理工程を省略し、直ちに光を照射しても液晶配向性と安定性に優れた液晶配向膜を製造することができる。
【0095】
万一、化学式3で表される繰り返し単位が前記含有量範囲より少なく含まれると、十分な配向特性を示すことができず、配向安定性が低下することがあり、上記化学式3で表される繰り返し単位の含有量が上記範囲を超えると、コーティング可能な安定した配向液を製造しにくい問題が現れることがある。これにより、上記化学式3で表される繰り返し単位を上述した含有量範囲で含むのが、保管安定性、電気的特性、配向特性および配向安定性にすべて優れた液晶配向剤用重合体を提供できて好ましい。
【0096】
また、上記化学式4で表される繰り返し単位または化学式5で表される繰り返し単位は、目的とする特性に応じて適切な含有量で含み得る。
【0097】
具体的には、上記化学式4で表される繰り返し単位は、上記化学式3~5で表される繰り返し単位全体に対して0以上40モル%以下、好ましくは0以上30モル%以下含まれる。上記化学式4で表される繰り返し単位は、光照射後、高温熱処理工程中においてイミドに転換される比率が低いため、上記範囲を越える場合、全体的なイミド化率が不足して配向安定性が低下することがある。したがって、上記化学式4で表される繰り返し単位は、上述した範囲内で工程特性に優れかつ高いイミド化率を実現可能な液晶配向剤用重合体を提供することができる。
【0098】
そして、上記化学式5で表される繰り返し単位は、上記化学式3~5で表される繰り返し単位全体に対して0以上95モル%以下、好ましくは10以上90モル%以下含まれる。上記の範囲内で優れたコーティング性を示して工程特性に優れかつ高いイミド化率を実現可能な液晶配向剤用重合体を提供することができる。
【0099】
具体的には、前記一実施形態の液晶配向剤組成物で上記化学式3で表される繰り返し単位、上記化学式4で表される繰り返し単位および上記化学式5で表される繰り返し単位からなる群から選択される1種以上の繰り返し単位は、テトラカルボン酸二無水物とジアミンの結合物を含み得る。前記テトラカルボン酸二無水物とジアミンの結合物は、テトラカルボン酸二無水物とジアミンとの反応生成物に相当し、上記化学式3~5中のX~Xはポリアミック酸、ポリアミック酸エステルまたはポリイミド合成時に使用されるテトラカルボン酸二無水物化合物に由来する4価の有機基であり得、前記Y~Yはポリアミック酸、ポリアミック酸エステルまたはポリイミドの合成時に使用されるジアミン化合物に由来する2価の有機基であり得る。
【0100】
すなわち、前記テトラカルボン酸二無水物は、下記化学式10-aで表され、下記化学式10-a中のXに対する内容は、上記化学式10で上述した内容と同様である。
【0101】
[化学式10-a]
【化20】
【0102】
また、前記ジアミンは、下記化学式9-1で表され、下記化学式9-1中のD~D、Tに対する内容は、上記化学式9で上述した内容と同様である。
【0103】
[化学式9-1]
【化21】
【0104】
また、一実施形態による液晶配向剤組成物のうちの第2液晶配向剤用重合体において、上記化学式6~8の繰り返し単位でY~Yはそれぞれ独立して、上記化学式11で表される2価の官能基であり得る。
【0105】
上記化学式11中、R18およびR19はそれぞれ独立して、水素、ハロゲン、シアノ、ニトリル、炭素数1~10のアルキル、炭素数1~10のアルケニル、炭素数1~10のアルコキシ、炭素数1~10のフルオロアルキル、または炭素数1~10のフルオロアルコキシであり、pおよびqはそれぞれ独立して、0~4の整数であり、Lは単結合、-O-、-CO-、-S-、-SO-、-C(CH-、-C(CF-、-CONH-、-COO-、-(CH-、-O(CHO-、-O(CH-、-NH-、-NH(CH-NH-、-NH(CHO-、-OCH-C(CH-CHO-、-COO-(CH-OCO-、または-OCO-(CH-COO-であり、yは1~10の整数であり、kおよびmはそれぞれ独立して、0~3の整数であり、nは0~3の整数である。
【0106】
より具体的には、上記化学式11はそれぞれ独立して、下記化学式14または化学式15であり得る。
【0107】
[化学式14]
【化22】
[化学式15]
【化23】
【0108】
上記化学式15中のLは単結合、-O-、-SO-、または-CR2627-であり、ここで、R26およびR27はそれぞれ独立して、水素、または炭素数1~10のアルキルである。
【0109】
好ましくは、上記化学式14は下記化学式14-1であり得る。
【0110】
[化学式14-1]
【化24】
【0111】
また、上記化学式15は下記化学式15-1であり得る。
【0112】
[化学式15-1]
【化25】
【0113】
上記化学式15-1中のLはO、またはCHである。
【0114】
より好ましくは、上記化学式11は上記化学式15-1で表され、上記化学式15-1中のLは-O-であり得る。
【0115】
具体的には、前記一実施形態の液晶配向剤組成物で上記化学式6で表される繰り返し単位、上記化学式7で表される繰り返し単位および上記化学式8で表される繰り返し単位からなる群から選択される1種以上の繰り返し単位は、テトラカルボン酸二無水物とジアミンの結合物を含み得る。前記テトラカルボン酸二無水物とジアミンの結合物は、テトラカルボン酸二無水物とジアミンとの反応生成物に相当し、上記化学式6~8中のX~Xはポリアミック酸、ポリアミック酸エステル、またはポリイミドの合成時に使用されるテトラカルボン酸二無水物化合物に由来する4価の有機基であり得、前記Y~Yはポリアミック酸、ポリアミック酸エステル、またはポリイミドの合成時に使用されるジアミン化合物に由来する2価の有機基であり得る。
【0116】
すなわち、前記テトラカルボン酸二無水物は下記化学式10-aで表され、下記化学式10-a中のXに対する内容は、上記化学式10で上述した内容と同様である。
【0117】
[化学式10-a]
【化26】
【0118】
また、前記ジアミンは下記化学式11-1で表され、下記化学式11-1中のR18~R19、L、p、q、k、mおよびnは上記化学式11で上述した内容と同様である。
【0119】
[化学式11-1]
【化27】
【0120】
一方、一実施形態による液晶配向剤組成物において、前記第1液晶配向剤用重合体と第2液晶配向剤用重合体は約1:2以上1:5以下、好ましくは約1:2以上1:4以下、または1:2以上1:3以下の重量比で含み得る。
【0121】
また、前記第1液晶配向剤用重合体および第2液晶配向剤用重合の重量平均分子量は1,000g/mol以上200,000g/mol以下であり得る。
【0122】
前記一実施形態による末端の架橋官能基が熱脱離性保護基でキャッピングされた架橋剤化合物は、下記化学式1-1で表される特定の化学構造を有する架橋剤化合物であり得る。
【0123】
[化学式1-1]
【化28】
【0124】
上記化学式1-1中、Aは1価~4価の官能基であり、jは1~4の整数であり、LおよびLは互いに同一または異なり、それぞれ独立して、炭素数1~10のアルキレン基または炭素数6~20のアリーレン基のうちの一つであり、RおよびRはそれぞれ独立して、ケイ素含有1価の官能基である。
【0125】
上記化学式1-1中、Aは1価~4価の官能基であり、jは1~4の整数である。前記Aは架橋剤化合物の中心に位置する官能基であり、Aに含まれている末端官能基に化学式1中の中括弧「[]」で表した官能基がj個程度結合することができる。
【0126】
すなわち、上記化学式1-1中のjが1の場合、Aは1価の官能基である。また、jが2の場合、Aは2価の官能基である。また、jが3の場合、Aは3価の官能基である。また、jが4の場合、Aは4価の官能基である。好ましくは、上記化学式1中のjは2であり、Aは炭素数1~10のアルキレン基、具体的にはブチレン基であり得る。
【0127】
上記化学式1-1中のLおよびLは互いに同一または異なり、それぞれ独立して、炭素数1~10のアルキレン基または炭素数6~20のアリーレン基のうちの一つであり、好ましくは、LおよびLはそれぞれ独立して、炭素数1~5のアルキレン基、例えばエチレン基であり得る。
【0128】
上記化学式1-1中のRおよびRは、前記架橋剤化合物の架橋性官能基であるヒドロキシ基(-OH)の末端で水素原子の代わりに置換された官能基で、ポリイミドまたはその前駆体重合体と上記化学式1-1で表される架橋剤化合物との架橋反応を抑制させることができる。
【0129】
前記RおよびRは、液晶配向剤組成物から液晶配向膜を製造する乾燥工程、露光工程、硬化工程などを経て、150℃以上の温度に上昇する時に水素原子で置換されて脱着され得る。
【0130】
前記一実施形態の液晶配向剤組成物のように液晶配向剤用重合体と一緒に添加される架橋剤化合物が上記化学式1-1で表されるように、架橋性官能基であるヒドロキシ基(-OH)の末端をRおよびRの特定の官能基で置換させる場合、液晶配向剤組成物の膜強度が上昇するだけでなく、優れた電気的特性が具現される。
【0131】
また、前記一架橋性官能基であるヒドロキシ基(-OH)の末端をRおよびRのケイ素含有官能基で置換させる場合、ケイ素含有官能基を含むことによって従来のヒドロキシ基(-OH)末端の架橋剤より初期乾燥工程での架橋剤の反応性が減り、配向のための露光工程後に架橋反応が始まり、架橋剤による初期配向の低下を減らすことを確認した。また、配向のための露光後にイミド化が進行する過程でイミド化転換率が高くなりながら再配列率が増加して配向性が増加する。
【0132】
前記架橋剤化合物の架橋性官能基末端に導入されたRおよびRの官能基は、90℃以上の温度で熱処理される場合、脱着除去されながら架橋性官能基末端のヒドロキシ基が回復して円滑な架橋反応を行うことができ、150℃未満の温度では架橋性官能基による架橋反応を抑制させて不要な架橋構造の形成を最小化して組成物の安定性および信頼性を向上させることができ、液晶配向膜の乾燥または焼成過程時の熱処理によってほぼ150℃以上の温度で脱着除去されながら架橋性官能基末端のヒドロキシ基が回復して円滑な架橋反応を行い、配向膜の機械的物性を向上させることができる。
【0133】
すなわち、150℃未満の温度に維持される液晶配向剤組成物内においては上記化学式1-1で表される架橋剤化合物の構造が維持されて、液晶配向剤用重合体と上記化学式1-1で表される架橋剤化合物間の架橋反応が抑制される。そして、液晶配向剤組成物から液晶配向膜を製造する乾燥工程、露光工程、硬化工程などを経て、熱処理によって温度が上昇するときに上記化学式1-1で表される架橋剤化合物でRおよびRの官能基が水素原子で置換されて、液晶配向剤用重合体と上記化学式1で表される架橋剤化合物間の架橋反応が行われる。
【0134】
したがって、前記一実施形態の液晶配向剤組成物は、組成物中に添加される架橋剤化合物の架橋反応性を抑制して架橋剤化合物と液晶配向剤用重合体の分散性を十分に向上させることができ、後述する他の実施形態の液晶配向膜の製造過程中に組成物内で架橋剤化合物と液晶配向剤用重合体間の架橋反応により配向膜の強度が向上し、最終製造された液晶配向セルで優れた配向特性および電気的特性を実現することができる。
【0135】
前記RおよびRはそれぞれ独立して、ケイ素含有1価の官能基であり得る。
【0136】
具体的には、前記ケイ素含有1価の官能基は、下記化学式2で表される官能基であり得る。
【0137】
[化学式2]
【化29】
【0138】
上記化学式2中、R~Rはそれぞれ独立して、水素または炭素数1~10のアルキルのうちの一つであり得る。
【0139】
より具体的には、上記化学式2中、R~Rは炭素数1~10のアルキル、好ましくはメチル基であり得る。
【0140】
上記化学式1-1中のAは炭素数1~10のアルキレン基であり、jは2である。すなわち、上記化学式1-1で表される架橋剤化合物は、下記化学式1-aで表される化合物を含み得る。
【0141】
[化学式1-a]
【化30】
【0142】
上記化学式1-a中、A'は炭素数1~10のアルキレン基であり、L~L10はそれぞれ独立して、炭素数1~5のアルキレン基であり、R22~R25はそれぞれ独立して、ケイ素含有1価の官能基であり得る。
【0143】
より具体的には、上記化学式1-aで表される架橋剤化合物の例としては、A'は炭素数4のブチレン基であり、L~L10は炭素数2のエチレン基であり、R22~R25は上記化学式2で表される官能基(R~Rがメチル基)である下記化学式1-bで表される化合物が挙げられる。
【0144】
[化学式1-b]
【化31】
【0145】
また、上記化学式1-aで表される架橋剤化合物の他の例としては、A'は炭素数4のブチレン基であり、L~L10は炭素数2のエチレン基であり、R22~R25は上記化学式2で表される官能基(R22~R25がエチル基)である下記化学式1-cで表される化合物が挙げられる。
【0146】
[化学式1-c]
【化32】
【0147】
2.液晶配向膜
一方、発明の他の実施形態によれば、上述した液晶配向膜の製造方法により製造された液晶配向膜が提供される。具体的には、前記液晶配向膜は、前記一実施形態の液晶配向剤組成物の配向硬化物を含み得る。前記配向硬化物とは、前記一実施形態の液晶配向剤組成物の配向工程および硬化工程を経て得られる物質を意味する。
【0148】
上述のように、液晶配向剤用重合体および末端の架橋官能基が熱脱離性保護基でキャッピングされた架橋剤化合物を含み、上記数式1による粒子個数の変化が30個以下である液晶配向剤組成物を利用すれば、液晶配向性と安定性が強化された液晶配向膜を製造することができる。
【0149】
具体的には、前記液晶配向膜は、ASTM D3363試験規格に基づく方法により、鉛筆硬度試験器を用いて50gの錘を乗せて測定した膜強度が2H以上、または3H以上、または4H以上であり得る。
【0150】
前記液晶配向膜の厚さが特に限定されるものではないが、例えば、0.01μm以上1,000μm以下の範囲内で自由に調節可能である。前記液晶配向膜の厚さが特定の数値ほど増加または減少する場合、液晶配向膜で測定される物性も一定の数値ほど変化することがある。
【0151】
一方、前記液晶配向膜を製造する方法の例は特に限定されるものではないが、例えば、液晶配向剤組成物を基板に塗布して塗膜を形成する段階(段階1)と;前記塗膜を乾燥する段階(段階2)と;前記塗膜に光を照射またはラビング処理して配向処理する段階(段階3)と;前記配向処理された塗膜を熱処理して硬化する段階(段階4)と、を含む、液晶配向膜の製造方法を使用することができる。
【0152】
前記段階1は、上述した液晶配向剤組成物を基板に塗布して塗膜を形成する段階である。前記液晶配向剤組成物に関する内容は、前記一実施形態で上述した内容をすべて含む。
【0153】
前記液晶配向剤組成物を基板に塗布する方法は特に限定されず、例えば、スクリーン印刷、オフセット印刷、フレキソ印刷、インクジェットなどの方法を使用することができる。
【0154】
そして、前記液晶配向剤組成物は、有機溶媒に溶解または分散させたものであり得る。前記有機溶媒の具体的な例としては、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチル-2-ピロリドン、N-メチルカプロラクタム、2-ピロリドン、N-エチルピロリドン、N-ビニルピロリドン、ジメチルスルホキシド、テトラメチル尿素、ピリジン、ジメチルスルホン、ヘキサメチルスルホキシド、γ-ブチロラクトン、3-メトキシ-N,N-ジメチルプロパンアミド、3-エトキシ-N,N-ジメチルプロパンアミド、3-ブトキシ-N,N-ジメチルプロパンアミド、1,3-ジメチル-イミダゾリジノン、エチルアミルケトン、メチルノニルケトン、メチルエチルケトン、メチルイソアミルケトン、メチルイソプロピルケトン、シクロヘキサノン、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ジグライム、4-ヒドロキシ-4-メチル-2-ペンタノン、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテルアセテート、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、エチレングリコールモノイソプロピルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテートなどが挙げられる。これらは単独で用いることもでき、混合して用いることもできる。
【0155】
また、前記液晶配向剤組成物は、有機溶媒以外にも他の成分をさらに含み得る。非制限的な例として、前記液晶配向剤組成物が塗布されたとき、膜厚均一性や表面平滑性を向上させるか、あるいは液晶配向膜と基板との密着性を向上させるか、あるいは液晶配向膜の誘電率や導電性を変化させるか、あるいは液晶配向膜の緻密性を増加させる添加剤をさらに含み得る。このような添加剤としては各種溶媒、界面活性剤、シラン系化合物、誘電体または架橋性化合物などが挙げられる。
【0156】
前記段階2は、前記液晶配向剤組成物を基板に塗布して形成された塗膜を乾燥する段階である。
【0157】
前記塗膜を乾燥する段階は、塗膜の加熱、真空蒸発などの方法を使用することができ、50℃以上150℃以下、または60℃以上140℃以下で行われることが好ましい。
【0158】
前記段階3は、前記塗膜に光を照射して配向処理する段階である。
【0159】
前記配向処理段階での塗膜は、乾燥段階直後の塗膜を意味し、前記乾燥段階以後の熱処理を経た後の塗膜でもある。前記「乾燥段階直後の塗膜」は、乾燥段階以後に乾燥段階以上の温度で熱処理する段階を行わず、直ちに光を照射することを意味し、熱処理以外の他の段階は付加することができる。
【0160】
より具体的には、従来のポリアミック酸またはポリアミック酸エステルを含む液晶配向剤を使用して液晶配向膜を製造する場合は、ポリアミック酸のイミド化のために必須に高温の熱処理を行った後、光を照射する段階を含むが、上述した一実施形態の液晶配向剤を用いて液晶配向膜を製造する場合は、前記熱処理段階を含まず、直ちに光を照射して配向処理した後、配向処理された塗膜を熱処理して硬化することによって配向膜を製造することができる。
【0161】
そして、前記配向処理する段階における光照射は、150nm以上450nm以下の波長の偏光した紫外線を照射することである。この時、露光の強度は、液晶配向剤用重合体の種類によって異なり、10mJ/cm以上10J/cm以下のエネルギー、好ましくは30mJ/cm以上2J/cm以下のエネルギーを照射することができる。
【0162】
前記紫外線としては、石英ガラス、ソーダライムガラス、ソーダライムフリーガラスなどの透明基板の表面に誘電異方性の物質がコーティングされた基板を用いた偏光装置、微細にアルミニウムまたは金属ワイヤが蒸着された偏光板、または石英ガラスの反射によるブルースター偏光装置などを通過または反射する方法で偏光処理された紫外線から選ばれた偏光紫外線を照射して配向処理する。この時、偏光された紫外線は、基板面に垂直に照射することもでき、特定の角で入射角を傾斜して照射することもできる。このような方法によって液晶分子の配向能力が塗膜に付与される。
【0163】
また、前記配向処理する段階におけるラビング処理は、ラビング布を用いる方法を使用することができる。より具体的には、前記ラビング処理は、金属ローラにラビング布の生地を貼り付けたラビングローラを回転させながら熱処理段階以後の塗膜の表面を一方向にラビングすることができる。
【0164】
前記段階4は、前記配向処理された塗膜を熱処理して硬化する段階である。
【0165】
前記配向処理された塗膜を熱処理して硬化する段階において、前記配向処理された塗膜で上記化学式1-1で表される架橋剤化合物のRおよびRの官能基が水素原子で置換されて脱着され得、液晶配向剤用重合体との架橋反応が行われ得る。
【0166】
具体的には、前記配向処理された塗膜を熱処理して硬化する段階において、前記配向処理された塗膜に下記化学式1-2で表される架橋剤化合物を含み得る。
【0167】
[化学式1-2]
【化33】
【0168】
上記化学式1-2中、A、j、LおよびLは、前記一実施形態の化学式1-1で定義したとおりである。
【0169】
具体的には、上記化学式1-2で表される架橋剤化合物は、化学式1-1で表される架橋剤化合物の置換反応の結果物であり得る。上記化学式1-1で表される架橋剤化合物は、架橋性官能基であるヒドロキシ基(-OH)の末端がRおよびRの特定の官能基で置換されているが、前記配向処理された塗膜を熱処理して硬化する段階で温度が90℃以上に上昇することによって、上記化学式1-1で表される架橋剤化合物でRおよびRの官能基が水素原子で置換され、上記化学式1-2で表される架橋剤化合物を生成することができる。
【0170】
前記一実施形態の液晶配向剤組成物に上記化学式1-2で表される架橋剤化合物が含まれる場合、組成物内から一部の架橋反応を行うことにより架橋剤化合物が組成物内に均一に分散しにくく、貯蔵安定性も減少することになる。
【0171】
反面、本発明は、液晶配向剤組成物内では上記化学式1-1で表される架橋剤化合物を添加して組成物内での架橋反応を抑制し、前記配向処理された塗膜を熱処理して硬化する段階で上記化学式1-1で表される架橋剤化合物が化学式1-2で表される架橋剤化合物に転換されるように誘導することができる。これにより、組成物においては架橋剤化合物の分散性および安定性を高めることができ、配向膜においては架橋構造の形成により膜強度の向上効果を実現することができる。
【0172】
前記配向処理された塗膜を熱処理して硬化する段階は、従来のポリアミック酸またはポリアミック酸エステルを含む液晶配向剤用重合体を用いて液晶配向膜を製造する方法においても光照射した後に行う段階で、液晶配向剤を基板に塗布し、光を照射する前または光を照射しながら液晶配向剤をイミド化させるために行う熱処理段階とは区分される。
【0173】
この時、前記熱処理はホットプレート、熱風循環炉、赤外線炉などの加熱手段によって行うことができ、150以上300℃以下、または200以上250℃以下で行うことが好ましい。
【0174】
一方、前記塗膜を乾燥する段階(段階2)以後に必要に応じて、前記乾燥段階直後の塗膜に乾燥段階以上の温度で熱処理する段階をさらに含み得る。前記熱処理は、ホットプレート、熱風循環炉、赤外線炉などの加熱手段によって行うことができ、150℃以上250℃以下で行うことが好ましい。この過程で液晶配向剤をイミド化させることができる。
【0175】
すなわち、前記液晶配向膜の製造方法は、上述した液晶配向剤を基板に塗布して塗膜を形成する段階(段階1)と、前記塗膜を乾燥する段階(段階2)と、前記乾燥段階直後の塗膜に乾燥段階以上の温度で熱処理する段階(段階3)と、前記熱処理された塗膜に光を照射またはラビング処理して配向処理する段階(段階4)と、前記配向処理された塗膜を熱処理して硬化する段階(段階5)とを含み得る。
【0176】
3.液晶表示素子
また、本発明のまた他の実施形態によれば、上述した液晶配向膜を含む液晶表示素子が提供される。
【0177】
前記液晶配向膜は、公知の方法によって液晶セルに導入され、前記液晶セルは、同様に公知の方法によって液晶表示素子に導入される。前記液晶配向膜は、前記液晶配向剤用重合体および末端の架橋官能基が熱脱離性保護基でキャッピングされた架橋剤化合物を含む液晶配向剤組成物から製造され、優れた諸般物性と共に、優れた安定性を実現することができる。これにより、高い信頼度を示すことができる液晶表示素子を提供することができる。
【0178】
一方、前記液晶配向表示素子は1Hz、60℃で、TOYO corporation製の6254C装置を用いて測定した電圧保持率(voltage holding ratio、VHR)が85%以上、85%以上99%以下、88%以上99%以下、89%以上99%以下、90%以上99%以下、または94%以上99%以下であり得る。
【発明の効果】
【0179】
本発明は、液晶配向膜の合成時に優れた膜強度を有し、かつ向上した貯蔵安定性および電気的特性を実現できる液晶配向剤組成物、これを用いた液晶配向膜の製造方法、これを用いた液晶配向膜および表示素子を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0180】
発明を下記の実施例でより詳細に説明する。ただし、下記の実施例は本発明を例示するものに過ぎず、本発明の内容が下記の実施例により限定されるものではない。
【0181】
<製造例および比較製造例>
製造例1:ジアミンDA-1の合成
ジアミンDA-1を下記反応式により合成した。
【0182】
【化34】
【0183】
具体的には、1,3-ジメチルシクロブタン-1,2,3,4-テトラカルボン酸二無水物(1,3-dimethylcyclobuthane-1,2,3,4-tetracarboxylic dianhydride、DMCBDA)と4-ニトロアニリン(4-nitroaniline)をDMF(Dimethylformamide)に溶解させて混合物を製造した。次に、前記混合物を、約80℃で約12時間反応させてアミック酸を製造した。以降、前記アミック酸をDMFに溶解させ、酢酸無水物および酢酸ナトリウムを添加して混合物を製造した。次に、前記混合物に含まれているアミック酸を約90℃で約4時間イミド化させた。このようにして得られたイミドをDMAc(Dimethylacetamide)に溶解させた後、Pd/Cを添加して混合物を製造した。これを45℃および6barの水素圧力下で20分間還元させて、ジアミンDA-1を製造した。
【0184】
製造例2:架橋剤の製造
【化35】
【0185】
N,N,N',N'-テトラキス(2-ヒドロキシエチル)アジポアミド(N,N,N',N'-Tetrakis(2-hydroxyethyl)adipamide)5g(15.6mmol)とクロロトリメチルシラン(Chlorotrimethylsilane)10.2g(94mmol)をクロロホルム(Chloroform)150mlに投入した後、炭酸カリウム(KCO)17.3g(125mmol)を添加し、0℃の窒素環境下で10時間攪拌した。反応終了後、セルライトパットでろ過した濾液を濃縮して、N1,N1,N6,N6-テトラキス(2-(トリメチルシリルオキシ)エチル)アジポアミド(N1,N1,N6,N6-tetrakis(2-(trimethylsilyloxy)ethyl)adipamide)7.3g(収率77%)を製造した。
【0186】
比較製造例1:架橋剤の製造
前記製造例2の反応物であるN,N,N',N'-テトラキス(2-ヒドロキシエチル)アジポアミド(N,N,N',N'-Tetrakis(2-hydroxyethyl)adipamide)を比較製造例1の架橋剤として使用した。
【0187】
<合成例>
合成例1:液晶配向剤用重合体P-1の製造
前記製造例1で製造したDA-1 5.665g(0.014mol)を無水N-メチルピロリドン(anhydrous N-methyl pyrrolidone:NMP)77.3gに完全に溶かした。そして、氷浴(ice bath)下で1,3-ジメチル-シクロブタン-1,2,3,4-テトラカルボン酸二無水物(DMCBDA)2.92g(0.013mmol)を前記溶液に添加して16時間常温で攪拌して、液晶配向剤用重合体P-1を製造した。
【0188】
合成例2:液晶配向剤用重合体Q-1の製造
4,4'-メチレンジアニリン(4,4'-Methylenedianiline、MDA)14.492g(0.073mmol)を無水N-メチルピロリドン(anhydrous N-methyl pyrrolidone:NMP)195.5gに完全に溶かした。
【0189】
そして、氷浴(ice bath)下で4,4'-ビフタル酸無水物(4,4'-biphthalic anhydride、BPDA)20g(0.068mmol)を前記溶液に添加して16時間常温で攪拌して、液晶配向剤用重合体Q-1を製造した。
【0190】
合成例3:液晶配向剤用重合体Q-2の製造
4,4'-オキシジアニリン(4,4'-oxydianiline、ODA)14.636g(0.073mmol)を無水N-メチルピロリドン(anhydrous N-methyl pyrrolidone:NMP)196.3gに完全に溶かした。
【0191】
そして、氷浴(ice bath)下で4,4'-ビフタル酸無水物(4,4'-biphthalic anhydride、BPDA)20g(0.068mmol)を前記溶液に添加して16時間常温で攪拌して、液晶配向剤用重合体Q-2を製造した。
【0192】
<実施例および比較例:液晶配向剤組成物、液晶配向膜、液晶配向セルの製造>
実施例1
(1)液晶配向剤組成物の製造
下記表1に示すような組成で、前記合成例1で製造した液晶配向剤用重合体P-1、6gと前記合成例2で製造した液晶配向剤用重合体Q-1、14gをNMP 12.4gとn-ブトキシエタノール7.6gを入れて5wt%溶液を得た。そして、前記溶液に、架橋剤として前記製造例2で得られたN1,N1,N6,N6-tetrakis(2-(trimethylsilyloxy)ethyl)adipamideを全体溶液に含まれている固形分の含有量を基準にして5重量%で添加した後、25℃で16時間攪拌した。得られた溶液をポリ(テトラフルオレンエチレン)材質の気孔サイズが0.1μmのフィルターで加圧ろ過して、液晶配向剤組成物を製造した。
【0193】
(2)液晶配向膜の製造
2.5cmx2.7cmの大きさを有する四角形のガラス基板上に厚さ60nm、面積1cmx1cmのITO電極がパターン化された電圧保持率(VHR)用の上下基板それぞれに、スピンコーティング方式で液晶配向剤組成物を塗布した。次に、液晶配向剤が塗布された基板を約70℃のホットプレート上に置き、3分間乾燥して溶媒を蒸発させた。
【0194】
このようにして得られた塗膜を配向処理するために、上/下板それぞれの塗膜に、線偏光子付き露光器を用いて254nmの紫外線を約0.1~1J/cmの露光量で照射した。その後、配向処理された上/下板を約230℃のオーブンで30分間焼成(硬化)して、膜厚さ0.1μmの液晶配向膜を得た。
【0195】
(3)液晶配向セルの製造
4.5μm大きさのボールスペーサが含浸されたシーリング剤(sealing agent)を液晶注入口を除いた上板の周縁に塗布した。そして、上板および下板に形成された液晶配向膜が互いに対向して配向方向が互いに並ぶように整列させた後、上下板を貼り合わせ、シーリング剤をUVおよび熱硬化することによって、空セルを製造した。そして、前記空セルに液晶を注入し、注入口をシーリング剤で密封して、液晶配向セルを製造した。
【0196】
実施例2
下記表1に示すような組成で、架橋剤を全体溶液に含まれている固形分の含有量を基準にして10重量%で添加したことを除いては、前記実施例1と同様の方法で、液晶配向剤組成物、液晶配向膜、液晶配向セルを製造した。
【0197】
実施例3
下記表1に示すような組成で、架橋剤を全体溶液に含まれている固形分の含有量を基準にして15重量%で添加したことを除いては、前記実施例3と同様の方法で、液晶配向剤組成物、液晶配向膜、液晶配向セルを製造した。
【0198】
実施例4
下記表1に示すような組成で、前記合成例2で製造した液晶配向剤用重合体Q-1の代わりに前記合成例3で製造した液晶配向剤用重合体Q-2を使用したことを除いては、前記実施例1と同様の方法で、液晶配向剤組成物、液晶配向膜、液晶配向セルを製造した。
【0199】
比較例1
下記表1に示すような組成で、前記製造例2の架橋剤を添加しないことを除いては、前記実施例1と同様の方法で、液晶配向剤組成物、液晶配向膜、液晶配向セルを製造した。
【0200】
比較例2
下記表1に示すような組成で、前記製造例2の架橋剤の代わりに、比較製造例1のN,N,N',N'-Tetrakis(2-hydroxyethyl)adipamideを全体溶液に含まれている固形分の含有量を基準にして3重量%で添加したことを除いては、前記実施例1と同様の方法で、液晶配向剤組成物、液晶配向膜、液晶配向セルを製造した。
【0201】
比較例3
下記表1に示すような組成で、前記製造例2の架橋剤の代わりに、比較製造例1のN,N,N',N'-Tetrakis(2-hydroxyethyl)adipamideを全体溶液に含まれている固形分の含有量を基準にして8重量%で添加したことを除いては、前記実施例1と同様の方法で、液晶配向剤組成物、液晶配向膜、液晶配向セルを製造した。
【0202】
参考例1
下記表1に示すような組成で、前記製造例2の架橋剤の代わりに、下記化学式Aで表される架橋剤を全体溶液に含まれている固形分の含有量を基準にして3重量%で添加したことを除いては、前記実施例1と同様の方法で、液晶配向剤組成物、液晶配向膜、液晶配向セルを製造した。
【0203】
[化学式A]
【化36】
【0204】
【表1】
【0205】
<実験例>
1)液晶配向特性評価
前記実施例および比較例で得られた液晶配向セルの上板および下板に、偏光板を互いに垂直となるように取り付けた。この時、下板に取り付けられた偏光板の偏光軸は、液晶配向セルの配向軸と平行にした。そして、偏光板付き液晶配向セルを明るさ7,000cd/mのバックライト上に置き、肉眼で光漏れを観察した。この時、液晶配向膜の配向特性に優れて液晶をよく配列させれば、互いに垂直に取り付けられた上下の偏光板によって光が通過せず、不良なしに暗く観察される。この場合の配向特性を「良好」、液晶の流れ跡や輝点のような光漏れが観察されると「不良」と表2に示す。
【0206】
2)電圧保持率(voltage holding ratio、VHR)測定
前記実施例および比較例で得られた液晶配向セルの電気的特性である電圧保持率(VHR)をTOYO corporation製の6254C装置を用いて測定した。電圧保持率は1V、1Hz、60℃の苛酷条件で測定して、下記表2に示す。
【0207】
3)膜強度
前記実施例および比較例で得られた配向膜に対して前記配向膜膜強度を測定し、その結果を下記表2に示す。具体的には、前記配向膜の膜強度は、ASTM D3363試験規格に基づく方法により、鉛筆硬度試験器を用いて50gの錘を乗せて多様な硬度の鉛筆を用いて測定した。
【0208】
4)粒子個数の変化
前記実施例および比較例の液晶配向剤組成物に対して、下記数式1によって粒子個数の変化を測定した。
【0209】
[数式1]
粒子個数の変化(△EA)=EA-EA
【0210】
上記数式1中、
EAは、前記液晶配向剤組成物が得られた最初の時点(0秒)で、前記液晶配向剤組成物に含まれる粒径0.5μm以上の粒子個数であり、
EAは、最初の時点(0秒)から30日間前記液晶配向剤組成物をほぼマイナス17℃の温度条件で保管した以降の時点で、前記液晶配向剤組成物に含まれる粒径0.5μm以上の粒子個数である。
【0211】
上記数式1中の粒子個数は、液中パーティクルセンサ(KS-42B、Rion社製;光源波長780nm、光源出力40mW、流量10mL/min、最大粒子個数1,200個/mL、同時計測損失5%、DC12V)を用いて、23℃およびParticle class1000以下の条件で0.2μm以上、0.3μm以上、0.5μm以上、1.0μm以上、2.0μm以上の5個のチャンネルに対して粒子個数を測定した後、前記0.5μm以上、1.0μm以上、2.0μm以上のチャンネルで測定される各粒子の個数を全て足して計算できる。
【0212】
【表2】
【0213】
上記表2に示すように、組成物中にポリイミド系重合体と一緒に製造例2の架橋剤が含まれている実施例での液晶配向剤組成物は、優れた液晶配向特性を示すとともに膜強度が3H以上4H以下に高いことを確認することができ、電圧保持率が88%以上94%以下の非常に高い値を示した。これにより、前記実施例の液晶配向剤組成物から製造される配向セルは、優れた配向性および膜強度を有すると共に、優れた電気的特性を実現することを確認した。
【0214】
これに対し、製造例2の架橋剤が含まれていない比較例1の液晶配向剤組成物から得られた配向膜は膜強度が1Hで測定され、膜強度が非常に不良で、電圧保持率は65%を示して、前記実施例に比べて著しく減少したことを確認した。
【0215】
一方、比較製造例1の架橋剤を用いた比較例2および比較例3の液晶配向剤組成物の場合、電圧保持率は実施例の液晶配向剤組成物と同等の水準に現れたが、粒子個数の変化が550個以上で、実施例に比べて顕著に多くの粒子個数の変化を示し、本実施例に比べて液晶配向剤用組成物の長期保管安定性が顕著に劣等であることを確認することができた。
【0216】
これに対し、前記製造例2の架橋剤を含有する本実施例の液晶配向剤組成物は粒子個数の変化が9個以下に示して、架橋剤を含有しない比較例1の液晶配向剤組成物と同等の水準の粒子個数の変化を示すことを確認することができた。
【0217】
また、上記化学式Aで表される架橋剤を用いた参考例1の液晶配向剤組成物から得られた配向膜は膜強度が1Hで測定され、膜強度が非常に不良で、電圧保持率は68%を示して、前記実施例に比べて著しく減少したことを確認した。
【0218】
これにより、前記製造例2の架橋剤を含有する本実施例の液晶配向剤組成物は粒子個数の変化が顕著に小さく、長期保管安定性に非常に優れている同時に、優れた配向性、膜強度および優れた電気的特性を実現することを確認した。