(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-13
(45)【発行日】2022-01-13
(54)【発明の名称】粘着テープ
(51)【国際特許分類】
C09J 7/25 20180101AFI20220105BHJP
C09J 201/00 20060101ALI20220105BHJP
B32B 27/00 20060101ALI20220105BHJP
【FI】
C09J7/25
C09J201/00
B32B27/00 M
(21)【出願番号】P 2016228921
(22)【出願日】2016-11-25
【審査請求日】2019-09-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000002886
【氏名又は名称】DIC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100177471
【氏名又は名称】小川 眞治
(74)【代理人】
【識別番号】100163290
【氏名又は名称】岩本 明洋
(74)【代理人】
【識別番号】100149445
【氏名又は名称】大野 孝幸
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 大亮
【審査官】澤村 茂実
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-152072(JP,A)
【文献】特開2015-187263(JP,A)
【文献】国際公開第2015/046341(WO,A1)
【文献】特開2014-152198(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 7/00-7/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材の少なくとも片面に粘着剤層が設けられた粘着テープであって、
前記粘着テープの流れ方向の破断点応力が8.0MPa~50.0MPaであり、前記
基材の厚さが10μm~70μmであり、
前記粘着テープの流れ方向の23℃での引張貯蔵弾性率E’が1.0×10
7Pa~5.0×10
8Paであ
り、
前記粘着テープの接着力が7N/20mm~15N/20mmであり、
前記基材はポリオレフィンフィルムである粘着テープ。
【請求項2】
前記
ポリオレフィンフィルムが
、ポリエチレンフィルム、またはポリプロピレンフィルムである請求項1記載の粘着テープ。
【請求項3】
前記粘着テープの流れ方向の上降伏点応力が4.0MPa~50.0MPaである請求項1又は2に記載の粘着テープ。
【請求項4】
前記粘着テープの幅方向の23℃での引張貯蔵弾性率E’が1.0×10
7Pa~5.0×10
8Paである請求項1~3の何れか一項に記載の粘着テープ。
【請求項5】
前記粘着テープの流れ方向の破断点伸度が100%以上である請求項1~
4の何れか一項に記載の粘着テープ。
【請求項6】
前記粘着テープの前記粘着剤層に使用する粘着剤の70℃でのせん断貯蔵弾性率G’が3.0×10
4~1.0×10
5Paであり、且つ130℃での損失正接tanδtが1未満である請求項1~
5の何れか一項に記載の粘着テープ。
【請求項7】
封止用途に用いられる請求項1~
6の何れか一項に記載の粘着テープ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、容器本体の開口部封止用、例えばトナーを使用して印刷又は複写を行うプリンタ又はコピー機等に装填されるトナーボックスの開口部封止用に用いられる粘着テープに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、プリンタやコピー機などではトナーを充填したボックスや印刷後の廃トナーを回収するためのボックスをカートリッジ方式で装着するものが使用される。このようなトナーボックスにはトナーの漏出防止を目的とした封止テープが使用されているが、トナーが漏出しないための十分な封止性を満足させるために、被着体の凹凸やそれに伴う空隙を追従しながら貼着できる段差追従性を有することはもちろんのこと、トナーボックスのリサイクルのために封止テープをきれいに除去できる再剥離性への要求が高まっている。また、従来は前記封止性を満足させるために封止テープの貼合工程は手作業で行われてきたが、今後はコスト低減を目的としたトナーボックス製造工程の自動化が検討されている。封止テープの貼合工程が自動化される場合、封止テープのたるみを抑制する目的で適度にテンションをかけた状態で貼り合わせられることになるが、その際に封止テープ自体にシワやよじれが生じてしまい必要な封止性能を満足できなくなってしまう懸念がある。
【0003】
こうしたなか、リサイクル可能な封止テープとして、例えば合成樹脂製一軸延伸テープとホットメルト型接着剤を組み合わせた封止テープが提案されている(例えば特許文献1)。しかしながら、合成樹脂製一軸延伸テープを応用した封止テープは幅方向の段差追従性に劣るため、十分な封止性を実現することが出来なかった。また、衝撃や引き剥がし応力に対して割裂性を有するため、被着体に対するテープ残りを除去できず、トナーボックスの二つ以上の部品を固定する用途には適合していなかった。
【0004】
また、一般に使用される強接着力を有する粘着テープを活用する方法もあるが、封止性、段差追従性、再剥離性、作業性を同時に解決するための手段が十分に開示されていなかった。
【0005】
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みなされたものであり、その解決課題は、自動貼合機による貼付作業時にテープにシワやよじれが生じることを抑制しながら貼付することができ封止性に優れ、被着体の凹凸や空隙に対する段差追従性に優れ、十分な接着力を有しながらも長期間使用後の再剥離性に優れる封止用の粘着テープを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは鋭意研究した結果、特定の基材厚さ、破断点応力及び引張貯蔵弾性率を有する粘着テープによれば上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明は、基材の少なくとも片面に粘着剤層が設けられた粘着テープであって、前記粘着テープの流れ方向の破断点応力が8.0MPa~50.0MPaであり、基材の厚さが10μm~100μmであり、前記粘着テープの流れ方向の23℃での引張貯蔵弾性率E’‘が1.0×107Pa~5.0×108Paの粘着テープを提供するものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明の粘着テープは、トナーが漏出しないための十分な封止性を満足させるために凹凸やそれに伴う空隙を追従しながら貼着できる段差追従性を有することはもちろんのこと、トナーボックスのリサイクルなどのために粘着テープをきれいに除去できる再剥離性を有する。また、トナーボックス製造工程における粘着テープの貼合工程がマシンによる自動化が進んだ場合にも、封止テープのシワやよじれが生じにくく貼り合わせ作業上の問題を解決することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下に、本発明の粘着テープの構成について更に詳しく説明する。
【0011】
<粘着テープ>
本発明の粘着テープは、基材の少なくとも片面に粘着剤層が設けられた粘着テープであって、前記粘着テープの流れ方向の破断点応力が8.0MPa~50.0MPaであり、基材の厚さが10μm~100μmであり、前記粘着テープの流れ方向の23℃での引張貯蔵弾性率E’‘が1.0×107Pa~5.0×108Paの粘着テープである。
【0012】
前記粘着テープの流れ方向の破断点応力は8.0MPa~50.0MPaであるが、8.5MPa~47.0MPaであることがより好ましく、9.0MPa~45.0MPaであることが更に好ましい。流れ方向の破断点応力が上記範囲であることで、自動貼合機での貼り合わせの際に粘着テープが伸長してしまうことを抑制することができ、被着体に対してシワやよじれ無く貼合することができる。更に、例えばトナーボックスが曲面などを有する異形状であったとしても粘着テープを十分に密着させながら貼り合わせることができ、更には曲面や凹凸によって生じる反発応力に対して生じ得る剥がれを抑制することができる。
【0013】
前記粘着テープの流れ方向の23℃での引張貯蔵弾性率E’は1.0×107Pa~5.0×108Paであることが好ましく、2.5×107Pa~4.0×108Paであることがより好ましく、5.0×107Pa~3.0×108Paであることが更に好ましい。上記範囲であれば、粘着テープを貼り合わせる際に生じる流れ方向のテンションによって引き伸ばされた状態であった場合でも粘着テープの端部から生じる剥がれを抑制することをできる。
【0014】
前記粘着テープの厚みは30μm~200μmであることが好ましく、40μm~150μmであることがより好ましく、50μm~125μmであることが更に好ましい。粘着テープの厚みが上記範囲であることで、被着体の凹凸や空隙に対する追従性が良好で、貼り合わせ作業時に粘着テープのたるみやシワの発生を抑制し易い。
【0015】
前記粘着テープの流れ方向の上降伏点応力は4.0MPa~60.0MPaであることが好ましく、5.0MPa~5.0MPaであることがより好ましく、6.0MPa~45.0MPaであることが更に好ましい。粘着テープの流れ方向の上降伏点応力がこの値であれば、自動貼合機で粘着テープを貼り合わせる際のテンションによる粘着テープの伸長が少なくなりシワやよじれの発生を抑制することができる。また、例えばトナーボックスが曲面や凹凸を有する形状であったとしても粘着テープを十分に密着させながら貼り合わせることができ、更には曲面から生じる反発応力に対して生じ得る剥がれを抑制することができる。なお、上降伏点とは粘着テープの引っ張り強度を測定する際に最初に現れるピークである。
【0016】
前記粘着テープの幅方向の23℃での引張貯蔵弾性率E’は1.0×107Pa~5.0×108Paであることが好ましく、2.5×107Pa~4.0×108Paであることがより好ましく、5.0×107Pa~3.0×108Paであることが更に好ましい。上記範囲であれば、粘着テープが引き裂かれるような応力がかかった場合にも粘着テープがちぎれずに使用することができ、粘着テープの幅方向に凹凸が生じている被着体に対しても十分に追従させながら貼付することができる。
【0017】
前記粘着テープの破断点伸度は100%以上であることが好ましく、150%以上であることがより好ましい。破断点伸度が上記範囲である場合、粘着テープを被着体から剥がす際に粘着テープを伸長させながら引き剥がすことができる。粘着テープが伸長すると接着強度に影響する粘着層が同時に引き伸ばされることで実質厚みが薄くなるため、被着体に強力に接着していた場合でも千切れてしまうことなくテープを引き剥がし易い。特に、前記粘着テープの流れ方向の貯蔵弾性率が1.0×108を下回る場合には破断点伸度が300%以上であることが好ましい。
【0018】
前記粘着テープの接着力は7.0N/20mm~15.0N/20mmであることが好ましく、8.0N/20mm~14.0N/20mmであることがより好ましい。
粘着テープの接着力が上記範囲である場合、トナーボックスの二つ以上の部品に橋かけ状に粘着テープを貼付して固定する際にも剥がれなどの不具合を抑制し易く、リサイクルの際に粘着テープを剥がす際にも粘着テープが千切れてしまうことを抑制し易い。
【0019】
<基材>
本発明の粘着テープに使用する基材としては、例えばポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリブチレンテレフタレートフィルム、ポリエチレンナフタレートフィルム、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、セロファンフィルム、ジアセチルセルロースフィルム、トリアセチルセルロースフィルム、アセチルセルロースブチレートフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、ポリ塩化ビニリデンフィルム、ポリビニルアルコールフィルム、エチレン-酢酸ビニル共重合体フィルム、ポリスチレンフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリメチルペンテンフィルム、ポリスルホンフィルム、ポリエーテルエーテルケトンフィルム、ポリエーテルスルホンフィルム、ポリエーテルイミドフィルム、ポリイミドフィルム、フッソ樹脂フィルム、ナイロンフィルム、アクリル樹脂フィルム等を使用することができる。中でも、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルムは、安価に入手し易いため好適に使用できる。
【0020】
前記基材としては、粘着剤層との密着性をより一層向上させることを目的として、プライマー層が設けられたもの、サンドブラスト法や溶剤処理法などによる表面の凹凸化処理、コロナ放電処理、クロム酸処理、火炎処理、熱風処理、オゾン処理、紫外線照射処理、酸化処理などの表面処理が施されたものを使用することができる。
【0021】
前記基材としては、前記した樹脂材料とともに、帯電防止剤等を含有するものを使用することができる。
【0022】
前記基材の製造方法としては、押し出し成型によるキヤスト法、一軸延伸法、逐次二次延伸法、同時二軸延伸法、インフレーション法、チューブ法、さらに、カレンダー法、溶液法などがある。中でも押し出し成型によるキヤスト法、一軸延伸法、逐次二次延伸法、同時二軸延伸法、インフレーション法、チューブ法による製造方法が好適に使用でき、本発明の封止テープに必要な機械的強度に合わせて選択すればよい。
【0023】
前記基材の厚みは、10μm~100μmであることが好ましく、15μm~70μmであることがより好ましく、20μm~50μmであることがさらに好ましい。前記基材の厚みが上記範囲であることで貼り合わせ作業時に封止テープに生じるシワやよじれを抑制でき、被着体の凹凸や二つ以上の部品に橋かけ状に貼り合わせた際に生じる空隙などに追従することができる。
【0024】
<粘着剤層>
本発明における粘着剤層を構成する粘着剤組成物は、通常の粘着テープに使用される粘着剤組成物を用いることができる。当該粘着剤組成物としては、例えば(メタ)アクリル系粘着剤、ウレタン系粘着剤、合成ゴム系粘着剤、天然ゴム系粘着剤、シリコーン系粘着剤などが挙げられるが、アクリル系重合体をベースポリマーとし、これに必要に応じて粘着付与樹脂や架橋剤などの添加剤が配合された(メタ)アクリル系粘着剤を使用することが好ましい。
【0025】
前記アクリル系重合体の製造に使用可能な(メタ)アクリレートとしては、例えばメチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート、n-ヘキシル(メタ)アクリレート、n-オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレートなどの炭素原子数が1~12のアルキル基を有する(メタ)アクリレートなどが挙げられ、これらの1種または2種以上を使用することができる。なかでも、炭素原子数が4~12であるアルキル基を有する(メタ)アクリレートを使用することが好ましく、炭素原子数が4~8である直鎖または分岐構造からなるアルキル基を有する(メタ)アクリレートを使用することがさらに好ましい。特に、前記(メタ)アクリレートとしては、n-ブチルアクリレート、2-エチルヘキシルアクリレートの少なくとも一種を使用することが、被着体との密着性を確保しやすく凝集力に優れるため好ましい。
【0026】
前記アクリル系重合体を製造する際に使用するアクリル単量体の全量に対する炭素原子数1~12のアルキル基を有する(メタ)アクリレートの含有量は、60質量%以上であることが好ましく、80質量%~98.5質量%であることがより好ましく、90質量%~98.5質量%であることがさらに好ましい。
【0027】
また、前記アクリル系重合体を製造する際には、アクリル単量体として高極性ビニル単量体を使用することができる。前記高極性ビニル単量体としては、水酸基を有するビニル単量体、カルボキシル基を有するビニル単量体、アミド基を有するビニル単量体などが挙げられ、これらの1種または2種以上が用いられる。
【0028】
水酸基を有する単量体としては、例えば、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、6-ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレートなどなどの水酸基含有(メタ)アクリレートを使用できる。
【0029】
カルボキシル基を有するビニル単量体としては、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、(メタ)アクリル酸2量体、クロトン酸、エチレンオキサイド変性琥珀酸アクリレートなどを使用でき、なかでもアクリル酸を共重合成分として使用することが好ましい。
【0030】
また、アミド基を有する単量体としては、N-ビニルピロリドン、N-ビニルカプロラクタム、アクリロイルモルホリン、アクリルアミド、N,N-ジメチルアクリルアミド、などが挙げられる。
【0031】
その他の高極性ビニル単量体として、酢酸ビニル、エチレンオキサイド変性琥珀酸アクリレート、2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルフォン酸などのスルホン酸基含有モノマーなどがあげられる。
【0032】
高極性ビニル単量体の使用量は、アクリル系重合体の製造に使用する単量体成分の全量ン対して、1.5質量%~20質量%であることが好ましく、1.5質量%~10質量%であることがより好ましく、2質量%~8質量%であることが、粘着剤の凝集力や保持力、接着性を好適な範囲に調整された粘着テープを得るうえでさらに好ましい。
【0033】
また、前記粘着剤として、前記アクリル系重合体とともにイソシアネート系架橋剤を使用する場合、そのイソシアネート基と反応する官能基を前記アクリル系重合体に導入することが好ましい。その際に使用可能なアクリル単量体としては、例えば水酸基を有するビニル単量体が好ましく、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、6-ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレートが特に好ましい。イソシアネート系架橋剤と反応する水酸基を有するビニル単量体の使用量は、アクリル系重合体の製造に使用する単量体成分の全量に対して0.01質量%~1.0質量%であることが好ましく、0.03質量%~0.3質量%であることが特に好ましい。
【0034】
前記アクリル系重合体は、溶液重合法、隗状重合法、懸濁重合法、乳化重合法などの公知の重合方法で、前記単量体成分を重合させることによって製造することができる。
【0035】
前記重合方法としては、前記粘着剤層の耐水性をより一層向上するうえで溶液重合法や塊状重合法を採用することが好ましい。重合の開始方法も、過酸化ベンゾイルや過酸化ラウロイルなどの過酸化物系、アゾビスイソブチルニトリルなどのアゾ系の熱重合開始剤を用いた熱による開始方法や、アセトフェノン系、ベンゾインエーテル系、ベンジルケタール系、アシルフォスフィンオキシド系、ベンゾイン系、ベンゾフェノン系の光重合開始剤を用いた紫外線照射による開始方法や、電子線照射による方法を任意に選択できる。
【0036】
上記アクリル系重合体の分子量は、ゲルパーミエッションクロマトグラフ(GPC)で測定される標準ポリスチレン換算での重量平均分子量が、40万~300万、好ましくは80万~250万である。
【0037】
ここで、GPC法による分子量の測定は、東ソー株式会社製GPC装置(HLC-8329GPC)を用いて測定される、スタンダードポリスチレン換算値であり、測定条件は以下のとおりである。
【0038】
サンプル濃度:0.5質量%(THF溶液)
サンプル注入量:100μl
溶離液:THF
流速:1.0ml/分
測定温度:40℃
本カラム:TSKgel GMHHR-H(20)2本
ガードカラム:TSKgel HXL-H
検出器:示差屈折計
スタンダードポリスチレン分子量:1万~2000万(東ソー株式会社製)
【0039】
本発明に使用する粘着剤としては、被着体との密着性や面接着強度をより一層向上させることを目的として、粘着付与樹脂を含有するものを使用することが好ましい。粘着付与樹脂としては、ロジン系、重合ロジン系、重合ロジンエステル系、ロジンフェノール系、安定化ロジンエステル系、不均化ロジンエステル系、水添ロジンエステル系、テルペン系、テルペンフェノール系、石油樹脂系、(メタ)アクリレート系樹脂などを使用することができる。エマルジョン型の粘着剤組成物に使用する場合には、エマルジョン型の粘着付与樹脂を使用することが好ましい。
【0040】
なかでも、不均化ロジンエステル系粘着付与樹脂、重合ロジンエステル系粘着付与樹脂、ロジンフェノール系粘着付与樹脂、水添ロジンエステル系粘着付与樹脂、(メタ)アクリレート系樹脂、テルペンフェノール系樹脂が好ましい。粘着付与樹脂は1種または2種類以上を使用してもよい。また、これら粘着付与樹脂と石油系樹脂を併用することも好ましい。
【0041】
粘着付与樹脂の軟化点は、特に規定されないが30~180℃、好ましくは70℃~140℃である。軟化点の高い粘着付与樹脂を配合することで、高い接着性能が期待できる。(メタ)アクリレート系の粘着付与樹脂の場合は、ガラス転移温度が30~200℃、好ましくは50℃~160℃である。
【0042】
アクリル系重合体と粘着付与樹脂とを使用する際の配合比は、アクリル系重合体100質量部に対する粘着付与樹脂の含有量が、5質量部~65質量部であることが好ましく、8質量部~55質量部であることが好ましい。両者の比率を当該範囲とすることで、被着体との密着性を確保しやすくなる。
【0043】
本発明に使用する粘着剤は、粘着剤層の凝集力を上げるために架橋剤を使用することが好ましい。このような架橋剤としては、イソシアネート系架橋剤、エポキシ系架橋剤、金属キレート系架橋剤、アジリジン系架橋剤などが挙げられる。そのなかでも、重合終了後に添加し、架橋反応を進行させるタイプの架橋剤が好ましく、(メタ)アクリル系重合体との反応性に富むイソシアネート系架橋剤及びエポキシ系架橋剤が好ましく、基材との密着性が向上することからイソシアネート系架橋剤がより好ましい。
【0044】
イソシアネート系架橋剤としては、トリレンジイソシアネート、ナフチレン-1,5-ジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、トリメチロールプロパン変性トリレンジイソシアネートなどが挙げられ、トリレンジイソシアネート及びこれらのトリメチロールプロパン付加体などを使用することが好ましい。
【0045】
架橋度合いの指標として、粘着剤層をトルエンに24時間浸漬した後の不溶分を測定するゲル分率の値が用いられる。ゲル分率は、好ましくは70質量%以下である。より好ましくは20質量%~60質量%、更に好ましくは25質量%~55質量%の範囲であれば、凝集性と接着性がともに良好である。
【0046】
なお、ゲル分率の測定は下記による。剥離シート上に、乾燥後の厚さが50μmになるように粘着剤組成物を塗工し、100℃で3分間乾燥し、40℃2日エージングしたものを50mm角に切り取り、これを試料とする。次に、予め上記試料のトルエン浸漬前の質量(G1)を測定しておき、トルエン溶液中に23℃で24時間浸漬した後の試料のトルエン不溶解分を300メッシュ金網で濾過することにより分離し、110℃で1時間乾燥した後の残渣の質量(G2)を測定し、以下の式に従ってゲル分率が求められる。
【0047】
ゲル分率(質量%)=(G2/G1)×100
【0048】
前記粘着剤は、各種添加剤を含有していてもよい。前記添加剤としては、例えば可塑剤、軟化剤、酸化防止剤、難燃剤、ガラスやプラスチック製の繊維・バルーン・ビーズ、金属粉末、金属酸化物、金属窒化物などの充填剤、顔料・染料などの着色剤、レベリング剤、増粘剤、撥水剤、消泡剤などの公知のものを粘着剤組成物に任意で添加することができる。
【0049】
本発明の粘着テープに使用する粘着剤は、70℃でのせん断貯蔵弾性率G’が3.0×104Pa~1.0×105Paであることが好ましい。3.0×104Pa未満の場合は接着力が強くなりすぎ、剥離時に封止テープの切れが発生しやすい。また1.0×105Paを越える場合は好適な接着性が得られなくなる。
【0050】
本発明の粘着テープに使用する粘着剤は、130℃での損失正接tanδが1未満であることが好ましい。130℃でのtanδが1以上の場合は再剥離性が低下しやすくなる。また、定荷重剥離性など耐剥がれ性を考慮する場合は、130℃での損失正接tanδは0.5以上が好ましい。
【0051】
(せん断貯蔵弾性率G’と損失正接tanδの測定法)
本発明におけるせん断貯蔵弾性率G’と損失正接tanδは、5mm厚にまで重ね合わせ粘着剤を試験片とし、レオメトリックス社製粘弾性試験機アレス2kSTDに直径7.9mmのパラレルプレートを装着し、試験片を挟み込み周波数1Hzで測定した値である。
【0052】
本発明の粘着テープの粘着剤層の厚みは、好ましくは10μm~100μm、より好ましくは20μm~80μm、さらに好ましくは30μm~70μmである。10μm未満では接着性が低下する。また100μmを超えると、再剥離性が低下する。
【0053】
本発明の封止テープの粘着剤層の塗布方法としては、ロールコーター等で直接基材に塗布する方法や、剥離紙上にいったん粘着剤層を形成後、基材に転写する方法が用いられる。
【実施例】
【0054】
以下に実施例により具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
(粘着剤aの調製)
(1) 攪拌機、寒流冷却器、温度計、滴下漏斗及び窒素ガス導入口を備えた反応容器にブチルアクリレート93.4質量部(以下、「部」と記す。)、酢酸ビニル3部、アクリル酸2.5部、N-ビニルピロリドリン1部、β-ヒドロキシエチルアクリレート0.1部のモノマー100部と重合開始剤として2,2'-アゾビスイソブチルニトリル0.2部とを酢酸エチル100部に溶解し、80℃で8時間重合して、重量平均分子量70万のアクリル共重合体溶液を得た。
【0055】
(2) 上記のアクリル共重合体固形分100部に対し、ロジンエステル系樹脂A-100(荒川化学社製)を15部、重合ロジンエステル系樹脂D-135(荒川化学社製)を15部添加し、トルエンで希釈混合し固形分40%の粘着剤溶液aを得た。
【0056】
〔実施例1〕
上記粘着剤a 100部に対して、イソシアネート系架橋剤(綜研化学社製L-45、固形分45%)を0.9部添加し15分攪拌後、剥離処理した厚さ75μmのポリエステルフィルム上に乾燥後の厚さが50μmになるように塗工して、80℃で3分間乾燥した。得られた粘着シートを、基材となるフタムラ化学株式会社製ポリオレフィンフィルム「FRTK-G#50」(厚さ50μm)の片面に転写した後40℃で2日間熟成し片面粘着テープを得た。
【0057】
〔実施例2〕
粘着剤a 100部に換えアクリル系粘着剤溶液(綜研化学社製SKダイン1717、固形分45%)100部とし、イソシアネート系架橋剤(綜研化学株式会社製L-45、固形分45%)0.9部に換え、同架橋剤1.3部とした以外は実施例1と同様にして片面粘着テープを作製した。
【0058】
〔実施例3〕
基材に三井化学東セロ株式会社製ポリオレフィンフィルム「GLC#30」(厚さ30μm)を使用した以外は、実施例1と同様に片面粘着テープを作製した。
【0059】
〔実施例4〕
基材にフタムラ化学株式会社製ポリオレフィンフィルム「FOR#25」(厚さ25μm)を使用した以外は、実施例1と同様に片面粘着テープを作製した。
【0060】
〔実施例5〕
基材にタマポリ株式会社製ポリオレフィンフィルム「UB-0B#40」(厚さ40μm)を使用した以外は、実施例1と同様に片面粘着テープを作製した。
【0061】
〔比較例1〕
基材にフタムラ化学株式会社製ポリエチレンテレフタレートフィルム「FE2001#25」(厚さ25μm)を使用した以外は、実施例1と同様に片面粘着テープを作製した。
【0062】
〔比較例2〕
基材にフタムラ化学株式会社製ポリオレフィンフィルム「FOS#40」(厚さ40μm)を使用した以外は、実施例1と同様に片面粘着テープを作製した。
【0063】
〔比較例3〕
基材に東レデュポン株式会社製ポリエチレンテレフタレートフィルム「ルミラー6CF53#6」(厚さ6μm)を使用した以外は、実施例1と同様に片面粘着テープを作製した。
【0064】
〔比較例4〕
基材にフタムラ化学株式会社製ポリオレフィンフィルム「LL-XMTN#30」(厚さ30μm)を使用した以外は、実施例1と同様に片面粘着テープを作製した。
【0065】
〔比較例5〕
基材に東レ株式会社製ポリエチレンテレフタレートフィルム「ルミラーS10#188」(厚さ188μm)を使用した以外は、実施例1と同様に片面粘着テープを作製した。
【0066】
実施例1~5、比較例1~5で作製した粘着剤溶液及び片面粘着テープについて、以下に示す方法により試験し、評価結果を表1、2に示した。
【0067】
[粘着テープの破断点強度、破断点伸度、上降伏点応力の測定]
粘着テープの破断点強度、破断点伸度、上降伏点応力は、粘着テープを標線長さ20mm、幅10mmのダンベル状に打ち抜き、23℃, 50%RHの条件で、テンシロン引張試験機を用い、引張速度300mm/minで長さ方向に引っ張ることで測定した。
【0068】
[粘着テープの動的粘弾性の測定]
実施例及び比較例で得た粘着テープをダンベルカッターを用い、JIS K 7127の試験片タイプ5の形状に打ち抜いたものを試験片とした。
【0069】
前記試験片を用い、レオメトリックス社製の動的粘弾性測定装置RSA-II(周波数1Hz、昇温速度3℃/分)により測定し、23℃での引張貯蔵弾性率E’を得た。
【0070】
[接着力の測定]
20mm幅の粘着テープ試料をステンレス板に貼付し、23℃にて2kg荷重を加えながらローラーにて1往復加圧した。23℃にて1時間静置した後、180°方向に引張速度300mm/minで引っ張り、接着力を測定した。
【0071】
[追従性評価1]
粘着テープを長さ130mm、幅4mmのサイズにカットしたものを試験片とした。水道水2mlを入れた大久保製壜所社製規格瓶PS-13Kに付属される赤キャップ2つをカプセル状に組み合わせたあと、その繋ぎ目を試験片で封止するように巻きつけながら貼付した。前記にて作成した二対の赤キャップを1~10m/minの速度で転がした際の水の漏れ具合を評価した。
〇=水が漏れない
×=水が漏れた
【0072】
[追従性評価2]
厚み1mm、直径35mmの円盤状のポリプロピレン板を2枚と幅4mm長さ120mmの粘着テープを準備した。ポリプロピレン板を2枚重ね合わせたあと、その円周を粘着テープで巻きつけながら貼付することで固定した場合の粘着テープの幅方向の剥がれ状態を観察した。
〇=粘着テープが2枚の円盤の円周を隙間無く覆いながら貼付できた
△=粘着テープにシワが生じていたが2枚の円盤の円周を貼付できた
×=粘着テープに浮き剥がれが生じて貼付できなかった
【0073】
[再剥離性評価]
20mm幅の粘着テープをステンレスに貼付し、2kg荷重を加えながらローラーにて1往復加圧した。貼付後、60℃,90%RHの条件で7日間放置し、23℃にて1日冷却した後、135°の方向に粘着テープ試料を手で5m/minの速度で剥がしたときに粘着テープが切れるかを目視にて確認した。
○:テープが切れなかった。
×:テープが切れた。
【0074】
[作業性]
粘着テープを長さ130mm、幅4mmのサイズにカットしたものを試験片とした。大久保製壜所社製規格瓶PS-13Kに付属される赤キャップ2つをカプセル状に組み合わせたあと、その繋ぎ目を試験片で封止するように巻きつけながら貼付した際の粘着テープのよじれ具合を評価した。
〇=粘着テープがきれいに貼れた
△=粘着テープが少しよじれて小さなシワが生じた
×=粘着テープがよじれてシワが生じた
【0075】
【0076】
【0077】
表1の結果から明らかなように、本発明に基づく基材と粘着剤層との組み合わせで作成した粘着テープは何れも良好な追従性と再剥離性と作業性を有している。
【0078】
一方、表2の結果から明らかなように、比較例1、2、5は再剥離性と作業性には優れるものの、追従性に劣る結果であった。また、比較例3、4については追従性には優れるものの、再剥離性や作業性に劣る結果となった。