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特許6992548酸素濃度測定プローブ及び酸素濃度検出器
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  • 特許-酸素濃度測定プローブ及び酸素濃度検出器 図1
  • 特許-酸素濃度測定プローブ及び酸素濃度検出器 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-13
(45)【発行日】2022-01-13
(54)【発明の名称】酸素濃度測定プローブ及び酸素濃度検出器
(51)【国際特許分類】
   G01N 27/411 20060101AFI20220105BHJP
【FI】
G01N27/411
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2018012952
(22)【出願日】2018-01-29
(65)【公開番号】P2019132617
(43)【公開日】2019-08-08
【審査請求日】2020-08-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000005083
【氏名又は名称】日立金属株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002583
【氏名又は名称】特許業務法人平田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】辻 隆之
(72)【発明者】
【氏名】秦 昌平
(72)【発明者】
【氏名】藤戸 啓輔
(72)【発明者】
【氏名】黒田 洋光
(72)【発明者】
【氏名】鷲見 亨
【審査官】小澤 理
(56)【参考文献】
【文献】特開平09-288082(JP,A)
【文献】特開平06-017215(JP,A)
【文献】米国特許第06083368(US,A)
【文献】特開昭61-017060(JP,A)
【文献】特開2017-161469(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 27/411
G01N 27/406
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部電極及び外部電極と、前記内部電極と前記外部電極の間に配置され、溶融金属へ浸漬される浸漬部を有した固体電解質管と、前記外部電極の外表面に接触して配置され、不活性ガスが流入する第1の端部と流入した不活性ガスを放出する第2の端部を有し、前記第2の端部が前記外部電極の先端の位置と同じかそれよりも下方であって、放出される前記不活性ガスを前記溶融金属の流れに沿って前記浸漬部の表面に当てることが可能な位置に配置されている管状部材と、を備える酸素濃度測定プローブ。
【請求項2】
前記不活性ガスは、窒素、又はアルゴンからなる請求項1に記載の酸素濃度測定プローブ。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の酸素濃度測定プローブを備える酸素濃度検出器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、酸素濃度測定プローブ及び酸素濃度検出器に関する。
【背景技術】
【0002】
酸素濃度測定プローブとして、例えば、特許文献1に記載されるようなものがある。この酸素濃度測定プローブは、固体酸素基準極を内包する固体電解質管の浸漬部を溶融金属、例えば、溶銅に浸漬し、内部電極と外部電極との間に発生する電位差を計測することにより、溶融金属中の酸素濃度を測定していた。
【0003】
上記酸素濃度測定プローブでは、固体酸素基準極が前記固体電解質管の内側に設けられる金属/金属酸化物からなり、当該固体酸素基準極内に内部電極が埋設されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開昭57-90151号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
この酸素濃度測定プローブは、溶融金属中の酸素濃度を測定する場合、固体電解質管の先端部(以下、「浸漬部」ともいう)が溶融金属内に浸漬されて使用されるため、その表面に溶融金属中に存在するスラグ等が酸化物の状態で付着するおそれがある。酸素濃度測定プローブでは、スラグ等からなる酸化物が固体電解質管の浸漬部の表面に付着すると、溶融金属中の酸素濃度が高く測定されてしまう。そのため、溶融金属中の酸素濃度を精度良く測定することができない。
【0006】
そこで、本発明は、溶融金属中の酸素濃度を精度良く測定することができる酸素濃度測定プローブ及び当該酸素濃度測定プローブを備えた酸素濃度検出器を提供することを目的とする。
【0007】
本発明は、上記目的を達成するために、[1]~[3]の酸素濃度測定プローブ及び[4]の酸素濃度検出器を提供する。
【0008】
[1]内部電極及び外部電極と、前記内部電極と前記外部電極の間に配置され、溶融金属へ浸漬される浸漬部を有した固体電解質管と、前記外部電極の外表面に配置され、不活性ガスが流入する第1の端部と流入した不活性ガスを放出する第2の端部を有する管状部材を備える酸素濃度測定プローブ。
[2]前記管状部材の前記第2の端部は、前記固体電解質管の前記浸漬部の近傍に位置する前記[1]に記載の酸素濃度測定プローブ。
[3]前記不活性ガスは、窒素、又はアルゴンからなる前記[1]に記載の酸素濃度測定プローブ。
[4]前記[1]~[3]のいずれか1つに記載の酸素濃度測定プローブを備える酸素濃度検出器。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、溶融金属中の酸素濃度を精度良く測定することができる酸素濃度測定プローブ及び当該酸素濃度測定プローブを備えた酸素濃度検出器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】(a)は本発明の実施の形態に係る酸素濃度測定プローブを備えた酸素濃度検出器の一例を示す概略断面図であり、(b)は不活性ガスを流入及び放出する管状部材の配置の位置を示す説明図である。
図2】本発明の実施の形態の変形例に係る酸素測定プローブを備えた酸素濃度検出器を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
〔酸素濃度測定プローブ〕
本発明の実施形態に係る酸素濃度測定プローブを備えた酸素濃度検出器を以下に図を参照して詳細に説明する。
図1(a)は、本発明の実施の形態に係る酸素濃度測定プローブを備えた酸素濃度検出器の一例を示す概略断面図である。
【0012】
本発明の実施形態に係る酸素濃度測定プローブ10は、外部電極7と、外部電極7の内部に配置され、浸漬部4aを有した固体電解質管4と、固体電解質管4の管内に配置された、内部電極1及び基準極3と、外部電極7の外表面に接触して配置され、内部に不活性ガスが流入する管状部材8を備える。
【0013】
図1(a)に示す酸素濃度測定プローブ10は、基準極3を固体電解質管4の管内に封止するための封止材3Aと、固体電解質管4の外側に設けられた補強管5と、補強管5の外側に設けられた耐火物6とを更に備え、また、必要に応じて、内部電極1は、金属コーティングによって被覆されている。プローブ10の全長は、例えば500mm~800mm程度である。
【0014】
(内部電極1)
内部電極1の材質としては、測定対象である溶融金属より融点が高く、酸素濃度測定プローブとして使用できるものであれば特に限定されないが、例えばステンレス鋼(SUS)、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、白金(Pt)が挙げられる。特に外部電極7にステンレス鋼(SUS)を用いる場合は内部電極1として同じステンレス鋼(SUS)を用いれば、異種金属を使用することによる熱起電力が発生せず、好適である。酸素濃度測定プローブ10の使用時に内部電極1の表面が1000℃程度に熱せられる。白金(Pt)電極は、1000℃程度に熱せられてもその表面に酸化膜が形成されにくい。
【0015】
内部電極1の形状としては、図1(a)のような棒状(線状)が好適であるが、これに限られない。例えば、前述の特許文献1の第1図(先端部分が太くなっている形状)や第3図(先端部分が球状となっている形状)に記載の形状等を採用できる。
【0016】
(金属コーティング2)
内部電極1上に金属コーティング2を必要に応じて設けてもよい。金属コーティング2は、例えば、白金(Pt)、ロジウム(Rh)、パラジウム(Pd)、イリジウム(Ir)からなる貴金属又は当該貴金属の合金からなる。これらの金属を使用すれば、酸素濃度測定プローブ10の使用時に内部電極1の表面が1000℃程度に熱せられた際に金属コーティング2の表面に酸化膜が形成されないため、酸化膜が形成され、それが剥がれて隙間が生じるという問題が生じない。金属コーティング2の成膜厚さは、特に限定されないが、1μm以上2000μm以下が好ましい。
【0017】
金属コーティング2の成膜範囲は、内部電極1が基準極3と直接に接触し得る部位全体であることが好ましいが、その一部であっても良い。図1(a)に示す実施形態では、基準極3と直接に接触し得る部位全体にコーティングし、更に基準極3が存在しない上方の部分まで金属コーティング2を設けている。
【0018】
金属コーティング2の形成方法は、種々の方法が可能である。例えば、金属めっきにより形成できる。
【0019】
なお、「内部電極1上に形成された」とは、図1(a)に示されるような内部電極1の表面に(直上に)形成される場合のほか、例えば、前述の特許文献1(3頁右欄、第4図)に記載のFe又はステンレス鋼等のスリーブが内部電極1の先端部に設けられている実施形態において当該スリーブ上に形成される場合も包含する。
【0020】
(基準極3)
基準極3としては、例えばFe/FeO粉、Ni/NiO粉、Cr/CrO粉等の金属/金属酸化物が使用された固体酸素基準極、あるいは空気等の気体が使用された空気基準極(気体基準極)からなり、固体電解質管4の内部の酸素濃度を一定に保つ効果を持つ。なお、図1及び図2では、基準極3として固体酸素基準極が使用された場合を示す。
【0021】
基準極3は、固体電解質管4内を満たすように封入され、内部電極1の端部がその中心部に埋設されている。溶融金属と直接に接する固体電解質管4の先端部分(図1(a)の長さaで示される領域)には、内部電極1は到達しておらず、基準極3が充填されている。長さaは、例えば3mm~5mm程度が好ましい。一方、固体電解質管4の残部(補強管5等に覆われて溶融金属と直接に接しない部分)の長さ(図1(a)における長さb)は、例えば50mm~70mm程度が好ましい。
【0022】
なお、図示していないが、基準極3として空気基準極(気体基準極)が使用される場合は、固体電解質管4の外部から固体電解質管4の内部へ空気等の気体を導入するためのパイプを固体電解質管4の内部に設ける。このとき、固体電解質管4の内部は、このパイプを介して導入された空気等の気体が充填されており、酸素濃度が一定に保たれている。基準極3として空気基準極が使用される場合は、固体酸素基準極と比較して長時間(数十時間~数百時間)の測定ができるというメリットがある。
【0023】
(固体電解質管4)
固体電解質管4は、当該固体電解質管4の先端部である浸漬部4aを有し、その材質としては、固体電解質(イオン導電性固体)の性質を持ち、選択的に酸素イオン(O2-)だけを通すものであればよく、例えば安定化ジルコニア(ZrO+MgO)が好適なものとして挙げられる。
【0024】
(補強管5)
補強管5は、固体電解質管4の割れを防止するためのものであり、例えばアルミナ管が好適である。
【0025】
(耐火物6)
耐火物6の材質としては、耐火セメント、が好適であり、例えばマグネシウム系セメントが好適である。
【0026】
(外部電極7)
外部電極7の材質としては、酸素濃度測定プローブ10を溶融金属中に浸漬した際に溶融しない金属であればよく、例えばステンレス鋼(SUS)が好適である。内部電極1及び外部電極7ともにステンレス鋼(SUS)を使用することが最適であり、この場合、内部電極1と外部電極7との間に測定誤差の原因となる熱起電力が発生しないため、測定誤差を補正する必要が生じないメリットがある。
【0027】
(管状部材8)
管状部材8の材質としては、酸素濃度測定プローブ10を溶融金属中に浸漬した際に溶融しない金属であればよく、例えばステンレス鋼(SUS)やセラミックス等からなる。管状部材8の内部には、不活性ガスが流入する。不活性ガスとしては、例えば窒素(N)やアルゴン(Ar)からなるガスが好適である。
【0028】
管状部材8は、不活性ガスが流入する第1の端部及び第1の端部から流入した不活性ガスを放出する第2の端部を有するものである。管状部材8は、酸素濃度測定プローブ10に沿わせるように溶融金属の流れに対して固体電解質管4が配置される位置よりも上流側に配置される。管状部材8は、例えば、ステンレス等の材質からなる固定部材によって外部電極7の外表面に接触するように固定されて配置される。固体電解質管4よりも上流側に配置した管状部材8の内部を流入する窒素(N)やアルゴン(Ar)等からなる不活性ガスは、連続あるいは間欠的に固体電解質管4の浸漬部4aの近傍に位置する管状部材8の第2の端部から溶融金属の流れに沿って流れ出る。流れ出た不活性ガスが固体電解質管4の溶融金属に浸漬している浸漬部4a表面に当たることになる。なお、管状部材8の第2の端部が浸漬部4aの近傍に位置するとは、外部電極7の外表面に配置された管状部材8の第2の端部が外部電極7の先端の位置と同じかそれよりも下方であって、第2の端部から放出する不活性ガスを浸漬部4aの表面に当てることが可能な位置に配置されている場合を包含する。これにより、固体電解質管4の溶融金属に浸漬している浸漬部4a表面は、スラグ等からなる酸化物が形成されにくくなるか、または、すでに形成されている酸化物を除去することができる。その結果、スラグ等からなる酸化物が固体電解質管4の表面に付着して溶融金属中の酸素濃度が高く測定されてしまうことを抑制することができるため、溶融金属中の酸素濃度を精度良く測定することができる。
【0029】
図1中のS領域は、空気であるが、基準極3の寿命を延ばすために窒素をフローする実施形態としてもよい。
【0030】
本発明の実施形態に係る酸素濃度測定プローブ10は、種々の溶融金属(例えば溶銅)中の酸素濃度を測定するために好適である。
【0031】
図1(b)は、酸素濃度測定プローブ10において、管状部材8が放出する不活性ガスの流れの方向8aを示す。不活性ガスの流れの方向8aは、固体電解質間4の浸漬部4aが位置する中心Oに向いている。
【0032】
図1(a),(b)において、外部電極7に沿って設けられた管状部材8は、第1の端部に接続された接続部12を介して接続チューブ16に接続されている。接続チューブ16は、ポンプ13によって不活性ガス源14から不活性ガスを管状部材8の第1の端部へ供給する。
【0033】
ポンプ13は、制御部15によって制御され、不活性ガスの管状部材8への供給量、連続供給、間欠供給等が制御される。制御部15は、電位差計11が出力する電位差信号を入力して溶融金属中の酸素濃度を監視し、その結果を記録し、また、その結果により、ポンプ13を制御する。
【0034】
図2は、酸素濃度測定プローブ10において、管状部材81,82,83が3本設けられた変形例を示す。この変形例では、不活性ガスの流れの方向8aは、いずれも中心に向くように、管状部材8の不活性ガス放出端の形状を工夫してもよい。
【0035】
〔酸素濃度検出器〕
本発明の実施形態に係る酸素濃度検出器は、本発明の実施形態に係る上記酸素濃度測定プローブ10を備える。
【0036】
内部電極1及び外部電極7にはそれぞれリード線が接続されており、各リード線は、前述した電位差計11に接続されている。内外電極間には酸素濃度比によって決まる起電力が発生しており、この電極間に発生する電圧を電位差計11で測定することにより、周知の換算式を用いて酸素濃度を求めることができる。
【0037】
なお、本発明は、上記実施の形態及び実施例に限定されず種々に変形実施が可能である。
【符号の説明】
【0038】
1…内部電極
2…金属コーティング
3…基準極
3A…封止材
4…固体電解質管
5…補強管
6…耐火物
7…外部電極
8,81,82,83…管状部材
10…酸素濃度測定プローブ
11…電位差計
12…接続部
13…ポンプ
14…不活性ガス源
15…制御部
16…接続チューブ
図1
図2