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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-13
(45)【発行日】2022-02-04
(54)【発明の名称】消音及び冷却設備
(51)【国際特許分類】
   F16L 55/033 20060101AFI20220128BHJP
   F27D 17/00 20060101ALI20220128BHJP
   B01J 3/02 20060101ALI20220128BHJP
   C22B 3/08 20060101ALN20220128BHJP
   C22B 23/00 20060101ALN20220128BHJP
【FI】
F16L55/033
F27D17/00 104D
F27D17/00 104G
B01J3/02 A
C22B3/08
C22B23/00 102
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2018059593
(22)【出願日】2018-03-27
(65)【公開番号】P2019173778
(43)【公開日】2019-10-10
【審査請求日】2020-10-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000183303
【氏名又は名称】住友金属鉱山株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001704
【氏名又は名称】特許業務法人山内特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大田 浩和
(72)【発明者】
【氏名】内藤 慶一
【審査官】岩瀬 昌治
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-267147(JP,A)
【文献】特表2005-500501(JP,A)
【文献】米国特許第06019818(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16L 55/033
F27D 17/00
B01J 3/02
C22B 3/08
C22B 23/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上側から下側へ向けて高温の排ガスが通過する第1縦方向通気管と、
該第1縦方向通気管の下流側で、前記第1縦方向通気管と直接連通する横方向通気管と、
を含んで構成され、
前記第1縦方向通気管には、該第1縦方向通気管の内面に液体流れ膜を形成するための、冷却水噴出装置が設けられており、
前記冷却水噴出装置を構成する横方向冷却水噴出装置が、
前記第1縦方向通気管の側面に設けられ、
前記冷却水噴出装置を構成する縦方向冷却水噴出装置が、
前記第1縦方向通気管の上部に設けられ、
前記第1縦方向通気管と前記横方向通気管との連結部分の上側に、冷却水が前記横方向通気管の方へ流れるのを抑制するための下部張出板が設けられている、
ことを特徴とする消音及び冷却設備。
【請求項2】
前記第1縦方向通気管と前記第1縦方向通気管の下流側で連通し、下側から上側に向けて前記排ガスが通過する第2縦方向通気管が設けられている、
ことを特徴とする請求項1記載の消音及び冷却設備。
【請求項3】
前記第2縦方向通気管の内部には前記排ガスが通過する多孔板が設けられている、
ことを特徴とする請求項2記載の消音及び冷却設備。
【請求項4】
記横方向冷却水噴出装置が
以上設けられており、
前記第1縦方向通気管の周上に等分の角度になるように配置されている、
ことを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の消音及び冷却設備。
【請求項5】
前記冷却水噴出装置が、
噴霧角度90度のスプレーノズルである、
ことを特徴とする請求項1からのいずれかに記載の消音及び冷却設備。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、消音及び冷却設備に関する。さらに詳しくは、内部を通過する高温の排ガスの騒音を低減する消音及び冷却設備に関する。
【背景技術】
【0002】
オートクレーブは、内部を高圧にすることが可能な耐圧性の容器であり、滅菌処理または炭素繊維強化プラスチックなどの複合材の成形、人工スレートなどのコンクリートの養生で使用されている。一方でオートクレーブは、水熱反応の反応容器として、ニッケル酸化鉱石または、ニッケルとコバルトの混合硫化物(Mixed Sulfide、以下本明細書ではMSと称することがある)の加圧浸出に使用されている。特許文献1では、MSを製造するためのニッケル酸化鉱石の高圧酸浸出法(HPAL:High Pressure Acid Leaching)で使用されているオートクレーブが開示されている。このオートクレーブ内では、内部に貯留されたスラリーが、撹拌機により撹拌されることで、内部で行われる浸出反応が促進されている。
【0003】
高圧酸浸出法で製造されたMSは、その後別の加圧浸出工程に付される。MSの加圧浸出工程は、高温・高圧状態のMSのスラリー中に空気を吹き込み、撹拌して空気中の酸素とMSとを反応させることにより、硫酸ニッケルまたは硫酸コバルトとして浸出する工程である。この加圧浸出工程で用いられるオートクレーブは、隔壁により複数の反応室に分けられており、スラリーが供給される上流側の反応室から、浸出した硫酸ニッケル等が排出される下流側の反応室へ、内部のスラリーが順次流れている。そして、最下流側の反応室から浸出された硫酸ニッケル等を含むスラリーが排出管を通じて内部圧力により排出される。排出されたスラリーは、フラッシュタンクと呼ばれる降温降圧装置にて常圧に減圧され冷却された後、スラリーと排ガスに分離されて排出される。また、オートクレーブ内の圧力を制御するため、オートクレーブの気相部からは圧力調節弁を介して高温高圧の排ガスが排気される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2014-88620号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
加圧浸出工程からの上記排ガスは、高圧かつ水分が飽和した100℃を超える高温のガスである。この高温高圧の排ガスは、冷却設備が備えられた通気管内で、80℃程度に冷却される。冷却された排ガスは、微量に含有される酸ミストなどを取り除く処理設備で処理され、大気中に放出される。通気管内を通過する高温の排ガスは、急激に減圧されたり、飽和した水分が冷却により凝縮したりすることにより、体積が急激に変化するため、通気管内でジェット音などによる騒音が発生する原因となる。このジェット音などを原因とする通気管からの発生音量を小さくするために、従来は、通気管の外に遮音材を巻きつけていたが、ジェット音などが通気管内で反響し、通気管内を排ガスの流送方向に伝播するため、広範囲に遮音施工をする必要があった。このため、遮音設備が大掛かりとなり、遮音設備に対し費用を多く費やす必要があった。
【0006】
本発明は上記事情に鑑み、ジェット音などの音自体の発生を抑制することで、ジェット音などを原因とする通気管からの発生音量を抑制できる消音及び冷却設備を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1発明の消音及び冷却設備は、 上側から下側へ向けて高温の排ガスが通過する第1縦方向通気管と、該第1縦方向通気管の下流側で、前記第1縦方向通気管と直接連通する横方向通気管と、を含んで構成され、前記第1縦方向通気管には、該第1縦方向通気管の内面に液体流れ膜を形成するための、冷却水噴出装置が設けられており、前記冷却水噴出装置を構成する横方向冷却水噴出装置が、前記第1縦方向通気管の側面に設けられ、前記冷却水噴出装置を構成する縦方向冷却水噴出装置が、前記第1縦方向通気管の上部に設けられ、前記第1縦方向通気管と前記横方向通気管との連結部分の上側に、冷却水が前記横方向通気管の方へ流れるのを抑制するための下部張出板が設けられていることを特徴とする。
第2発明の消音及び冷却設備は、第1発明において、前記第1縦方向通気管と前記第1縦方向通気管の下流側で連通し、下側から上側に向けて前記排ガスが通過する第2縦方向通気管が設けられていることを特徴とする。
第3発明の消音及び冷却設備は、第2発明において、前記第2縦方向通気管の内部には前記排ガスが通過する多孔板が設けられていることを特徴とする。
第4発明の消音及び冷却設備は、第1発明から第3発明のいずれかにおいて、前記横方向冷却水噴出装置が、2以上設けられており、前記第1縦方向通気管の周上に等分の角度になるように配置されていることを特徴とする。
発明の消音及び冷却設備は、第1発明から第発明のいずれかにおいて、前記冷却水噴出装置が、噴霧角度90度のスプレーノズルであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
第1発明によれば、第1縦方向通気管には、冷却水噴出装置により第1縦方向通気管の内面に液体流れ膜が形成されるので、第1縦方向通気管を通過する排ガスの音場が変化し、ジェット音など音自体の発生を抑制できる。音自体の発生が抑制できるため、ジェット音などを原因とする通気管からの発生音を小さくできる。
また、冷却水噴出装置が、第1縦方向通気管の上部に設けられていることにより、液体流れ膜を第1縦方向通気管のより上部から形成することができるので、第1縦方向通気管を通過する排ガスの音場が変化し、ジェット音などの音自体の発生がさらに抑制される。
第2発明によれば、下側から上側に向けて排ガスが通過する第2縦方向通気管が設けられていることにより、消音及び冷却設備の下流側に、排ガスと一緒に冷却水が持ち出されるのを抑制できる。
第3発明によれば、第2縦方向通気管の内部に排ガスが通過する多孔板が設けられていることにより、より冷却水の持ち出しを抑制できる。
第4発明によれば、冷却水噴出装置を構成する横方向冷却水噴出装置が、第1縦方向通気管の周上に等分の角度になるように設けられていることにより、液体流れ膜がより均等に形成される。これによりジェット音自体の発生がより抑制される。
発明によれば、冷却水噴出装置が噴霧角度90度のスプレーノズルであることにより、流体流れ膜が、さらにより均等に形成される。これによりジェット音自体の発生が、さらに抑制される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の第1実施形態に係る消音及び冷却設備の正面図である。
図2図1の消音及び冷却設備を構成する第1縦方向通気管の水平断面図である。
図3】本発明の第2実施形態に係る消音及び冷却設備の正面図である。
図4】本発明の第3実施形態に係る消音及び冷却設備の正面図である。
図5図4の消音及び冷却設備を構成する第1縦方向通気管の水平断面図である。
図6図1の消音及び冷却設備が設けられている加圧浸出システムの説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
つぎに、まず硫酸ニッケルの製造プロセスについて説明した後、この製造プロセスのオートクレーブの排気側に用いられている、本発明の実施形態に係る消音及び冷却設備1~3を図面に基づき説明する。硫酸ニッケルの製造プロセスでは、原料としてMSを加圧浸出処理するためにオートクレーブ11が使用されている。ただし、以下に示す実施の形態は、本発明の技術思想を具体化するための消音及び冷却設備を例示するものであって、本発明は消音及び冷却設備を以下のものに特定しない。なお、各図面が示す部材の大きさまたは位置関係等は、説明を明確にするため誇張していることがある。
【0011】
(硫酸ニッケルの製造プロセス)
硫酸ニッケルの原料としてMSが用いられる。このMSは低ニッケル品位のニッケル酸化鉱石を加圧酸浸出し、加圧酸浸出液から鉄などの不純物を除去した後、ニッケルイオンおよびコバルトイオンを含む浸出液に硫化水素ガスを吹き込む湿式硫化反応などによって得られたものである。ニッケル・コバルト混合硫化物の主成分はNiS等の硫化物である。
【0012】
上記MSに対して、レパルプ工程が実施される。このレパルプ工程において、MSは水などによりレパルプされスラリーとなる。レパルプ工程では、固体粉末状のMSをレパルプ槽に投入し、水とともに混合、撹拌してスラリーを製造する。スラリーは、オートクレーブ11に装入され加圧浸出に供される。
【0013】
つぎに、加圧浸出工程が実施される。この加圧浸出工程では、オートクレーブ11によって混合硫化物に含まれるニッケルおよびコバルトが高圧空気により浸出される。例えば、オートクレーブ11に装入されるスラリーの固形分濃度は200~300g/L、流量は50~100L/分である。オートクレーブ内の温度は150~220℃、圧力はゲージ圧で1.7~2.3MPaである。
【0014】
オートクレーブ11からは硫酸ニッケルと硫酸コバルトとの混合水溶液である加圧浸出液が排出される。加圧浸出液は、固体分である浸出残渣を含んだスラリー状である。加圧浸出液は降圧、冷却された後に次工程に供給され、硫酸ニッケルの製造に用いられる。オートクレーブ11から排出される加圧浸出液は、降温降圧装置(フラッシュタンク50)に圧送される(図6参照)。フラッシュタンク50では、加圧浸出液が大気圧まで減圧され、100℃以下の水溶液となる。その際、大量の水蒸気が発生し、それが加圧浸出工程からの排ガスとして処理される。加圧浸出液は、不純物を除去するため、次工程である浄液工程に送られる。一方、オートクレーブ11内の圧力を制御するため、オートクレーブ11の気相部からは、サイクロン52を経由して圧力調節弁53から高温高圧の排ガスが排出される。この排ガスも、加圧浸出工程からの排ガスとして処理される。これら高温高圧の排ガスは、本発明にかかる消音及び冷却設備1~3にて、温度が80℃前後に冷却される。また、消音及び冷却設備で処理されたあとの排ガスの圧力は大気圧である。
【0015】
(加圧浸出システム)
図6には、本発明の第1実施形態に係る消音及び冷却設備1が設けられている加圧浸出システムの説明図を示す。加圧浸出システムは、加圧浸出容器の一つであるオートクレーブ11と、このオートクレーブ11からの排ガスを冷却する消音及び冷却設備1と、冷却された排ガス中の酸性の成分などを処理する処理設備18と、を含んで構成されている。図6では排ガスの流れを白抜き矢印で示しており、原則として図6の紙面上左から右へ排ガスは流れている。
【0016】
(オートクレーブ11)
オートクレーブ11の本体12は、両端に鏡板を有する円筒体であり、その軸心を水平に配置する構成である。本体12は、スラリーを酸化浸出する反応容器であり、本体12内は、複数の反応室に、隔壁により区画化されている。
【0017】
図6においては、MSのスラリーが左側からスラリーの供給管(不図示)により供給され、左から右に向けて、このスラリーが移動し、スラリーの排出管により、このスラリーは本体12から排出される。
【0018】
各反応室では、吹込空気管15により高圧空気が供給され、空気中の酸素とMSとが反応する。また吹込空気管15の排出口近傍には、タービン翼を供えた撹拌機14が備えられており、所定の回転数で高速回転し、それぞれの反応室内で、吹込まれた空気をせん断し微細化して、気体と、液体および固体の反応界面積を増加させると共に、スラリーを撹拌させ、酸素とMSとの反応を促進している。オートクレーブ11からレベル調節弁51によって排出される加圧浸出液は、オートクレーブ11の気相部の圧力から加圧浸出液の飽和蒸気圧を減じた差圧によってフラッシュタンク50に圧送される。フラッシュタンク50では、加圧浸出液が大気圧まで減圧され、100℃以下の水溶液となる。その際、大量の水蒸気が発生し、それが加圧浸出工程からの排ガスとして処理される。一方、オートクレーブ11内の圧力を制御するため、オートクレーブ11の気相部からは、サイクロン52を経由して圧力調節弁53から高温高圧の排ガスが排出される。この排ガスも、加圧浸出工程からの排ガスとして処理される。
【0019】
(第1実施形態に係る消音及び冷却設備1)
図1は、本発明の第1実施形態に係る消音及び冷却設備1の正面図であり、図2は、消音及び冷却設備1の、図1のII-II矢視での水平断面図である。図1の紙面における上下は、実際の消音及び冷却設備1の上下と一致している。図1では、排ガスの流れは、白抜き矢印で示しており、排ガスは左側から右側へ向けて流れ、第2縦方向通気管23を出たところでは上向きに流れている。本明細書では、排ガスの流れを基準として上流側、下流側と称することがある。また、理解が容易にできるように、図1では第1縦方向通気管22から下流側に位置する部材は、断面図として表示されている。
【0020】
各実施形態に係る消音及び冷却設備1~3は、排ガスを水平位置が異なる別の地点に導く横方向通気管と、排ガスを鉛直位置が異なる別の地点に導く縦方向通気管と、を組み合わせて構成されている。本明細書では、複数の横方向通気管、および複数の縦方向通気管について説明があるが、「第1」などの順序表示をつけた横方向通気管(たとえば「第1横方向通気管20」)を包括して横方向通気管と称し、同じように「第1」などの順序表示をつけた縦方向通気管(たとえば「第1縦方向通気管22」)を包括して縦方向通気管と称することがある。
【0021】
また、横方向通気管の軸心は水平である必要はなく、横方向通気管は、その軸心と水平面との間の角度のうち、小さいほうの角度が0度以上45度以下の通気管を含む。これに対し縦方向通気管の軸心は厳密に鉛直である必要はなく、縦方向通気管は、その軸心と水平面との間の角度のうち、小さいほうの角度が75度以上90度以下の通気管を含む。
【0022】
本実施形態にかかる消音及び冷却設備1を構成する横方向通気管、および縦方向通気管の材料は、内部を通過する排ガスの性質によって異なる。消音及び冷却設備1がオートクレーブ11の排ガス側に設けられている場合、この排ガスは腐食性のミストを含んでいることからSUS316Lが好適に用いられる。
【0023】
本実施形態の消音及び冷却設備1は、第1横方向通気管20と、この第1横方向通気管20と連通している第1縦方向通気管22と、を含んで構成されている。本実施形態では、第1横方向通気管20の軸心は水平面内にあり、第1縦方向通気管22の軸心は鉛直面内にある。第1縦方向通気管22は、この上部分で第1横方向通気管20と連通している。なお第1横方向通気管20と第1縦方向通気管22とは直接連通している必要はなく、他の部材を挟んで連通している場合もある。
【0024】
本実施形態では、第1縦方向通気管22には、第1縦方向通気管22の内面に液体流れ膜40を形成するための冷却水噴出装置が設けられている。本実施形態では、冷却水噴出装置は、水平方向、すなわち第1縦方向通気管22の内面と垂直な方向に冷却水の大部分を噴出する横方向冷却水噴出装置26である。図2に示すように、横方向冷却水噴出装置26から噴出する冷却水は、横方向冷却水噴出装置26から出た後、水平面内で広がり、図2の水平断面において、第1縦方向通気管22の内面の半分以上の部分に降りかかる。降り注がれた冷却水は、第1縦方向通気管の内面を流れ落ちる。この流れ落ちる冷却水により、液体流れ膜40が形成される。また、この横方向冷却水噴出装置26は、一般に市販されているスプレーノズルを使用することができる。本実施形態では、水平面内のみに拡散するスプレーノズルを示したが、噴霧角度90度で全周方向に拡散するスプレーノズルであることが、より好ましい。噴霧角度90度で全周方向に拡散するスプレーノズルとすることにより、液体流れ膜が、さらにより均等に形成される。これによりジェット音自体の発生が、さらにより抑制される。
【0025】
液体流れ膜40は、第1縦方向通気管の内面のすべてに形成されることが望ましい。しかし、本実施形態のように、水平断面において、縦方向通気管の軸心を中心とした円を考えたときに、液体流れ膜40により形成される角度θが180度以上、もしくは少なくとも90度の角度以上あれば音場を変化させることができる。
【0026】
第1縦方向通気管22は、この下部分で第2横方向通気管21と連通している。第1縦方向通気管22の下端には冷却水排出口27が設けられている。この冷却水排出口27は、必要に応じて開閉され、液体流れ膜40を形成していた冷却水などが設備外へ排出される。排出口27は直下に貯留槽を据えるなどして液封することで、常時開放状態としても良い。また、排出口27から抜き取った冷却水は、プレート式熱交換器などの熱交換器により冷却し、横方向冷却水噴出装置26に繰り返すようにすることが好ましい。
【0027】
第1縦方向通気管22と第2横方向通気管21との連結部分の上側には、第1縦方向通気管22内の下側に向けて水平面と45度の角度を持った下部張出板30が設けられている。この下部張出板30により、液体流れ膜40を形成していた冷却水が第2横方向通気管21のほうへ流れるのを抑制でき、冷却水が冷却水排出口27へ導かれる。
【0028】
第2横方向通気管21は、一方の端部で第1縦方向通気管22と直接連通するとともに、他方の端部で第2縦方向通気管23と直接連通している。すなわち第2縦方向通気管23は、第2横方向通気管21を介して、第1縦方向通気管22と連通している。そして第2縦方向通気管23内では、排ガスは下側から上側へ流れている。
【0029】
第2縦方向通気管23は、上側に位置する上側部材23aと、下側に位置する下側部材23bとを組み合わせて構成されている。そして上側部材23aと下側部材23bとの間には、排ガスが通過可能な多数の孔が設けられている多孔板31が設けられている。多孔板31の材質は、通気管の材質と同じである。また第2縦方向通気管23においても、第1縦方向通気管22と同様、下端に冷却水排出口27が設けられているとともに、下部張出板32が設けられている。この下部張出板32により多孔板31などから落下する冷却水が冷却水排出口27へ導かれる。
【0030】
消音及び冷却設備1を構成する通気管には、適宜通気管の中の温度等を測定するための測定口28が設けられている。本実施形態では、第1横方向通気管20に1箇所、第2縦方向通気管23に2箇所の測定口28が設けられている。
【0031】
上記の構成により、本実施形態の消音及び冷却設備1は以下の効果を奏する。
(1)第1縦方向通気管22には、第1縦方向通気管22の内面に液体流れ膜40を形成するための冷却水噴出装置が設けられていることにより、第1縦方向通気管22を通過する排ガスの音場が変化し、ジェット音自体の発生を抑制できる。すなわちジェット音は、圧力が開放されることにより生じる流れ、およびこの流れが置かれた音場の関係から発生するところ、液体流れ膜40により音場の状態が変化し、共鳴などが抑制されることで、ジェット音自体の発生が抑制される。このことから、ジェット音を原因とする通気管からの発生音を小さくできる。このため、通気管に設けていた遮音設備の設置コストを抑えることができる。
【0032】
(2)下側から上側に向けて排ガスが通過する第2縦方向通気管23が設けられていることにより、消音及び冷却設備1の下流側に、排ガスと一緒に冷却水が持ち出されるのを抑制できる。また、第2縦方向通気管の内部に排ガスが通過する多孔板31が設けられていることにより、より冷却水の持ち出しを抑制できる。
【0033】
(処理設備18)
図6に示すように、消音及び冷却設備1を通過した排ガスは、処理設備18に導かれる。オートクレーブ11の排ガスは、酸性ミストを含んでいるため、処理設備18において酸性ミスト成分が処理された後、大気に放出される。処理設備18では耐薬品性を確保するため処理塔やファンの材質としてFRP(繊維強化プラスチック)等の樹脂を使用しているので、その耐熱性から高温の排ガスの処理が難しい。そこで、消音及び冷却設備1で排ガスは80℃前後に冷却される。
【0034】
(第2実施形態に係る消音及び冷却設備2)
図3は、本発明の第2実施形態に係る消音及び冷却設備2の正面図である。図1と同様、図3の紙面における上下は、実際の消音及び冷却設備2の上下と一致している。また図1と同様、図3では、排ガスの流れは、白抜き矢印で示している。加えて、図1と同様、図3では第1縦方向通気管22から下流側に位置する部材は、断面図として表示されている。
【0035】
第1実施形態の消音及び冷却設備1との相違点は、冷却水噴出装置が、第1縦方向通気管22の上部に設けられている点である。本実施形態では、冷却水噴出装置には、横方向冷却水噴出装置26に加えて、第1縦方向通気管22の軸方向に冷却水の大部分を噴出する縦方向冷却水噴出装置25が設けられている。縦方向冷却水噴出装置25は、第1縦方向通気管22が、その上部において、第1横方向通気管20と結合するために曲折した部分に、下向きに設けられている。図3に示すように、縦方向冷却水噴出装置25から噴出する冷却水は、縦方向冷却水噴出装置25から出た後、第1縦方向通気管22の内壁面に略均一に分散し、分散した冷却水により液体流れ膜40が形成される。また、この縦方向冷却水噴出装置25は、一般に市販されているスプレーノズルを使用することができる。このスプレーノズルにおいても、噴霧角度90度で全周方向に拡散するスプレーノズルであることが、より好ましい。噴霧角度90度で全周方向に拡散するスプレーノズルとすることにより、液体流れ膜が、さらにより均等に形成される。これによりジェット音自体の発生が、さらにより抑制される。
【0036】
なお、本実施形態では、冷却水噴出装置は、横方向冷却水噴出装置26と、縦方向冷却水噴出装置25と、から構成されているが、縦方向冷却水噴出装置25のみにより構成される場合もある。
【0037】
冷却水噴出装置が、第1縦方向通気管22の上部に設けられていることにより、液体流れ膜を第1縦方向通気管22のより上部から形成することができるので、ジェット音などの音自体の発生がさらに抑制される。
【0038】
(第3実施形態に係る消音及び冷却設備3)
図4は、本発明の第3実施形態に係る消音及び冷却設備3の正面図であり、図5は、消音及び冷却設備3の、図4のV-矢視での水平断面図である。図1と同様、図5の紙面における上下は、実際の消音及び冷却設備3の上下と一致している。また図1と同様、図5では、排ガスの流れは、白抜き矢印で示している。加えて、図1と同様、図5では第1縦方向通気管22から下流側に位置する部材は、断面図として表示されている。
【0039】
第2実施形態の消音及び冷却設備2との相違点は、冷却水噴出装置として、横方向冷却水噴出装置26が、第1縦方向通気管の側面に2以上、具体的には4つ設けられている点である。これら4つの横方向冷却水噴出装置26は、同一水平面内に設けられている。そして、これらの4つの横方向冷却水噴出装置26は、第1縦方向通気管22の軸心の上方から第1縦方向通気管22を見たときに、横方向冷却水噴出装置26が周上に等分の角度になるように配置されている。本実施形態では、90度ごとに横方向冷却水噴出装置26は配置されている。なお、これら4つの横方向冷却水噴出装置26は、同一水平面内に設ける必要はなく、たとえば少しずつ高さが異なるように設置することができる。ただしこの場合も、周上に等分の角度になるように配置されていることが望ましい。なお横方向冷却水噴出装置26が4つ設けられている場合について説明したが、2つまたは3つ、5つ以上設置される場合もある。
【0040】
冷却水噴出装置が、第1縦方向通気管22の周上に等分の角度になるように設けられていることにより、液体流れ膜がより均等に形成される。これにより第1縦方向通気管22を通過する排ガスの音場が変化し、ジェット音自体の発生がより抑制される。
【産業上の利用可能性】
【0041】
本発明の消音及び冷却設備1~3が、オートクレーブなどの加圧浸出装置の排ガスを処理するために設置されて利用されている場合を説明したが、本発明の消音及び冷却設備1~3は、他の用途、たとえばボイラーの排ガスまたは、燃焼炉の燃焼排ガスに対しても使用することができる。
【符号の説明】
【0042】
1、2、3 消音及び冷却設備
20 第1横方向通気管
22 第1縦方向通気管
25 縦方向冷却水噴出装置
26 横方向冷却水噴出装置
31 多孔板
図1
図2
図3
図4
図5
図6