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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-13
(45)【発行日】2022-02-03
(54)【発明の名称】加飾層付き透明板、および表示装置
(51)【国際特許分類】
   B32B 17/10 20060101AFI20220127BHJP
   B32B 7/02 20190101ALI20220127BHJP
   G09F 9/00 20060101ALI20220127BHJP
   G09F 13/04 20060101ALI20220127BHJP
   G09F 7/00 20060101ALN20220127BHJP
【FI】
B32B17/10
B32B7/02
G09F9/00 302
G09F13/04 J
G09F7/00 D
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2018122872
(22)【出願日】2018-06-28
(65)【公開番号】P2019010871
(43)【公開日】2019-01-24
【審査請求日】2021-02-17
(31)【優先権主張番号】P 2017127579
(32)【優先日】2017-06-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000000044
【氏名又は名称】AGC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000637
【氏名又は名称】特許業務法人樹之下知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 淳
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼井 あずさ
【審査官】千葉 直紀
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2014/021245(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03B11/00-11/06
G02B5/20-5/28
B32B1/00-43/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
可視光が透過する材料で構成され、2つの主面を有する透明板と、一方の前記主面に設けられた加飾層とを備えた加飾層付き透明板であって、
一方の前記主面から見た平面視において、前記加飾層は、端部のほぼ全体にわたり連続した凸部および凹部の少なくとも一方を備え、
前記透明板は、表示装置用のカバーガラスであり、前記加飾層は、前記表示装置が非表示の場合の色彩に対応した色彩を有し、
前記凸部は、半値幅が20μm以上、200μm以下、高さが20μm以上、100μm以下であり、
前記凹部は、半値幅が20μm以上、200μm以下、深さが20μm以上、100μm以下である
ことを特徴とする加飾層付き透明板。
【請求項2】
前記加飾層は、
平面視において、前記凸部の頂点に引いた凸部接線と、前記加飾層に引いた、前記凸部接線に平行な接線のうち、前記加飾層との接点が前記凸部の頂点に最も近い凸部隣接接線との最短距離が20μm以上、100μm以下であり、かつ前記最短距離に対する前記凸部の半値幅が、20μm以上、200μm以下である請求項1に記載の加飾層付き透明板。
【請求項3】
前記加飾層は、
平面視において、前記凹部の頂点に引いた凹部接線と、前記加飾層に引いた、前記凹部接線に平行な接線のうち、前記加飾層との接点が前記凹部の頂点に最も近い凹部隣接接線の最短距離が20μm以上、100μm以下であり、かつ前記最短距離に対する前記凹部の半値幅が、20μm以上、200μm以下である請求項に記載の加飾層付き透明板。
【請求項4】
前記加飾層は、波形の平面形状を有する請求項1からのいずれか一項に記載の加飾層付き透明板。
【請求項5】
前記波形の平面形状は、1周期の振幅が20μm以上、100μm以下である請求項に記載の加飾層付き透明板。
【請求項6】
前記波形の平面形状は、1周期の半波長が20μm以上、200μm以下である請求項またはに記載の加飾層付き透明板。
【請求項7】
前記波形の平面形状は、正弦波、三角波、矩形波のいずれかである請求項からのいずれか一項に記載の加飾層付き透明板。
【請求項8】
前記加飾層は、その厚さが、端面に向けて、薄くなっている請求項1からのいずれか一項に記載の加飾層付き透明板。
【請求項9】
前記加飾層は、枠形の平面形状を有し、前記端部は、枠の内周または外周である請求項1からのいずれか一項に記載の加飾層付き透明板。
【請求項10】
平面視において、前記加飾層の前記凹部を埋めるように設けられ、前記加飾層よりも可視光の透過率が高い付加領域を備える請求項に記載の加飾層付き透明板。
【請求項11】
前記透明板は、ガラスである請求項1から10のいずれか一項に記載の加飾層付き透明板。
【請求項12】
前記ガラスは、屈曲ガラスである請求項11に記載の加飾層付き透明板。
【請求項13】
前記ガラスは、強化ガラスからなる請求項11または12に記載の加飾層付き透明板。
【請求項14】
請求項1から13のいずれか一項に記載の加飾層付き透明板と、
表示パネルと、
前記加飾層付き透明板と前記表示パネルとを貼合する接着層とを備える表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加飾層付き透明板、および表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
カーナビゲーションシステムや、オーディオ等の車載用情報機器や、携帯通信機器は、表示装置を備える。
表示装置には、表示パネルの前面に接着層を介して板状の透明板である保護カバーが設けられる(特許文献1)。保護カバーは、外光反射を低減したり、表示パネルを外部衝撃から保護したりする機能を備える。保護カバーの表示パネル側の面には、例えば、遮光性の加飾層が枠状に設けられる。加飾層は、美観以外に表示パネル側の配線を隠蔽したり、バックライトの照明光を隠蔽して、表示パネルの周囲から照明光が漏れるのを防止したりする機能を備える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2015-5049号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
加飾層は、表示パネルに対応した色彩とする場合がある。例えば、表示パネルの電源を切っている時、あるいは電源が入っていても使用していないときは、表示領域は一般的に黒色であるため、加飾層を目立たなくするために、黒色系の色彩とする場合がある。
【0005】
このような加飾層を、加飾層成分を含むインクを塗布し、焼成することによって形成する場合、加飾層には、硬さや表示パネルへの密着性等の物理的特性も求められる。
【0006】
しかしながら、加飾層に求められる色彩と物理的特性が完全に両立できない場合、物理的特性を優先するために、所望の色彩が得られない可能性がある。
所望の色彩が得られないと、表示パネルと加飾層の境界の色彩差が目立ってしまい、美観を損ねるおそれがあった。
【0007】
加飾層の主面への投影面形状が目視では、1本の線(直線、曲線)にみえるが、微視的(μmレベル)にはスムーズではない線、例えばギザギザ形状、とすることで、加飾層と透明板との境界が目立たなくなるとの気付きから本発明に至った。
本発明は、透明板と加飾層の境界の色彩差が目立ち難く、かつ加飾層に求められる物理的特性を満たす加飾層付き透明板、およびそれを用いた表示装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の加飾層付き透明板は、可視光が透過する材料で構成され、2つの主面を有する透明板と、一方の前記主面に設けられた加飾層とを備えた加飾層付き透明板であって、一方の前記主面から見た平面視において、前記加飾層は、端部に凸部および凹部の少なくとも一方を備えることを特徴とする。
【0009】
本発明では、透明板に設けられた加飾層の端部に、凸部および凹部の少なくとも一方が設けられるので、人間の目には加飾層と透明板の境界がぼやけて見える。
そのため、透明板と加飾層の境界の色彩差が小さくなり、目立たなくなる。
また、本発明では、加飾層の平面形状で透明板との境界を目立たなくするため、境界の色彩差を小さくするために、加飾層の物理的特性を変更する必要はない。よって加飾層は、求められる物理的特性を満たす。
【0010】
本発明において、前記凸部は、半値幅が20μm以上、200μm以下、高さが20μm以上、100μm以下であるのが好ましい。
本発明のこの態様では、加飾層の端面に、人間の眼の分解能に近いか、それ以下の半値幅と高さの凸部が設けられるため、人間の目には、凸部における透明板と加飾層の境界が、ぼやけて見える。そのため、凸部において、透明板と加飾層の境界の色彩差が小さくなり、目立たなくなる。
【0011】
本発明において、前記加飾層は、平面視において、前記凸部の頂点に引いた凸部接線と、前記加飾層に引いた、前記凸部接線に平行な接線のうち、前記加飾層との接点が前記凸部の頂点に最も近い凸部隣接接線との最短距離が20μm以上、100μm以下であり、かつ前記最短距離に対する前記凸部の半値幅が、20μm以上、200μm以下であるのが好ましい。
本発明のこの態様では、加飾層の端面に、人間の眼の分解能に近いか、それ以下の半値幅と高さの凸部が設けられるため、人間の目には、凸部における透明板と加飾層の境界が、ぼやけて見える。
そのため凸部において、透明板と加飾層の境界の色彩差が小さくなり目立たなくなる。
【0012】
本発明において、前記凹部は、半値幅が20μm以上、200μm以下、深さが20μm以上、100μm以下であるのが好ましい。
本発明のこの態様では、加飾層の端面に、人間の眼の分解能に近いか、それ以下の半値幅と深さの凹部が設けられるため、人間の目には、凹部における透明板と加飾層の境界が、ぼやけて見える。
そのため、凹部において、透明板と加飾層の境界の色彩差が小さくなり、目立たなくなる。
【0013】
本発明において、前記加飾層は、平面視において、前記凹部の頂点に引いた凹部接線と、前記加飾層に引いた、前記凹部接線に平行な接線のうち、前記加飾層との接点が前記凹部の頂点に最も近い凹部隣接接線の最短距離が20μm以上、100μm以下であり、かつ前記最短距離に対する前記凹部の半値幅が、20μm以上、200μm以下であるのが好ましい。
本発明のこの態様では、加飾層の端面に、人間の眼の分解能に近いか、それ以下の半値幅の凹部が設けられるため、人間の目には、凹部における透明板と加飾層の境界が、ぼやけて見える。
そのため、凹部において、透明板と加飾層の境界の色彩差が小さくなり、色彩差が目立たなくなる。
【0014】
本発明において、前記加飾層は、波形の平面形状を有するのが好ましい。
本発明のこの態様では、加飾層の端部が波形であり、端面の透過率の変動が周期的であるため、人間の目には加飾層の端部が一様にぼやけて見える。
そのため、透明板と加飾層の境界の色彩差が自然に小さくなり、色彩差が目立たなくなる。
【0015】
本発明において、前記波形の平面形状は、1周期の振幅が20μm以上、100μm以下であるのが好ましい。
本発明のこの態様では、1周期の振幅が人間の眼の分解能に近いか、それ以下であるため、人間の目には加飾層の端面が、波の振幅方向にぼやけて見える。
そのため、透明板と加飾層の境界の色彩差が自然に小さくなり、色彩差が目立たなくなる。
【0016】
本発明において、前記波形の平面形状は、1周期の半波長が20μm以上、200μm以下であるのが好ましい。
本発明のこの態様では、1周期の半波長が人間の眼の分解能に近いか、それ以下であるため、人間の目には加飾層の端面が、波の波長方向にぼやけて見える。
そのため、透明板と加飾層の境界の色彩差が自然に小さくなり、色彩差が目立たなくなる。
【0017】
本発明において、前記波形の平面形状は、正弦波、三角波、矩形波のいずれかであるのが好ましい。
本発明のこの態様では、波形の平面形状を、正弦波、三角波、矩形波とすることにより、波の形状に対応して、可視光の透過率が低い領域と高い領域が周期的に端部に現れ、人間の目には加飾層の端面が、ぼやけて見える。
そのため、透明板と加飾層の境界の色彩差が自然に小さくなり、色彩差が目立たなくなる。
【0018】
本発明において、前記加飾層は、その厚さが、端面に向けて、薄くなっているのが好ましい。
本発明のこの態様では、加飾層の端部の厚さが、端面側に向けて薄くなっており、端面側に向けて透過率が高くなる。
そのため、透明板と加飾層の境界の色彩差が自然に小さくなり、色彩差がより目立たなくなる。
【0019】
本発明において、前記加飾層は、枠形の平面形状を有し、前記端部は、枠の内周または外周であるのが好ましい。
本発明のこの態様では、特に枠の内側と、枠の境界の色彩差を小さくできるので、枠の内側の表示部等と、枠の境界の美観を高められる。
【0020】
本発明の加飾層付き透明板は、平面視において、前記加飾層の前記凹部を埋めるように設けられ、前記加飾層よりも可視光の透過率が高い付加領域を備えるのが好ましい。
本発明のこの態様では、平面視における加飾層の端面を直線状にしつつ、透明板と加飾層の境界の色彩差を小さくできる。
【0021】
本発明において、前記透明板は、表示装置用のカバーガラスであり、前記加飾層は、前記表示装置が非表示の場合の色彩に対応した色彩を有するのが好ましい。
本発明のこの態様では、表示パネルと加飾層の境界の色彩差を小さくできる。そのため、加飾層に求められる色彩と物理的特性が両立できない場合であっても、加飾層の色彩が原因で、美観を損ねるおそれがない。
【0022】
本発明において、前記透明板は、ガラスであるのが好ましい。
本発明のこの態様では、板としてガラスを用いることで、高い強度と良好な質感とを兼ね備えた加飾層付き透明板を提供できる。
【0023】
本発明において、前記ガラスは、屈曲ガラスであるのが好ましい。
本発明のこの態様では、板として屈曲ガラスを用いることで、加飾層付き透明板を取り付ける相手側部材が屈曲形状を有していても、取り付けの精度が下がるおそれがない。
【0024】
本発明において、前記ガラスは、強化ガラスからなるのが好ましい。
本発明のこの態様では、ガラスとして強化ガラスを用いることで、強度と耐擦傷性に優れた加飾層付き透明板を提供できる。
【0025】
本発明の表示装置は、上述の加飾層付き透明板と、表示パネルと、前記加飾層付き透明板と前記表示パネルとを貼合する接着層とを備える。
本発明では、加飾層付き透明板の透明板と加飾層の境界の色彩差を小さくできるため、色彩差が目立たなくなる。
そのため、美観に優れた表示装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】本発明の一実施形態に係る加飾層付き透明板の斜視図。
図2図1のB-B線に沿った断面図。
図3図1の平面図、および平面図における領域R1の拡大図。
図4図3の領域R1のさらなる拡大図。
図5図3の領域R1のさらなる拡大図。
図6】本発明の一実施形態に係る加飾層付き透明板における、加飾層の端部の平面形状の変形例を示す図。
図7】本発明の一実施形態に係る加飾層付き透明板における、変形例の縦断面図。
図8】本発明の一実施形態に係る加飾層付き透明板における、変形例の平面図、および平面図における領域R2の拡大図。
図9】本発明の一実施形態に係る加飾層付き透明板における、加飾層の端部の平面形状の変形例を示す図。
図10】前記加飾層付き透明板を備える表示装置の部分断面図。
図11】本発明の実施例における、加飾層付き透明板の、加飾層端面近傍の拡大図。
図12】本発明の実施例における、加飾層付き透明板の、加飾層端面近傍の拡大図。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の一実施形態について図面を参照して説明する。
〔加飾層付き透明板の構成〕
まず、加飾層付き透明板の構成について説明する。
図1に示す加飾層付き透明板1は、透明板2と、加飾層3とを備える。
透明板2は平面視で矩形であり、可視光が透過する材料で構成された、透明な強化ガラスである。図2に示すように、透明板2は、第1の主面21と、第2の主面22と、端面23とを備える。端面23には、面取り部24が設けられる。
【0028】
加飾層3は、加飾層付き透明板1に遮光性を付与するために設けられ、透明板2よりも可視光の透過率が低い。図1では、加飾層3は、四角形の枠状であり、透明板2における第1の主面21の周縁部に設けられる。
図2に示すように、加飾層3は、表面32が平坦な平坦部41と、端部43とを備える。端部43の、透明板2との境界には加飾層端面11が形成される。平坦部41にも端面31が形成される。
【0029】
平坦部41は表面が平坦な部分である。
端部43は、平坦部41の内周端部に設けられる。
【0030】
端部43は、一方の主面である第1の主面21から見た平面視において、凸部57および凹部59の少なくとも一方を備える。
ここでは、図3図5に示すように、端部43は波形の平面形状を有する。図3図5において、波は正弦波である。
なお、凸部57および凹部59は、基準線から突出あるいは後退した部分を意味するため、波形の場合、基準線の位置によって、波を凸部57のみの集合とも、凹部59のみの集合ともみなせる。
例えば、図4では、基準線を接線T2にすると、波は凸部57のみの集合とみなせる。
図5では、基準線を接線T1にすると、波は凹部59のみの集合とみなせる。
1とT2の間に基準線を設けると、波は凸部57および凹部59の両方を備えるともみなせる。しかしながら端部43は、平面視で波の振幅や波長が一定でなくてもよく、波の数も限定されない。また、波は非対称な形状でもよいので、T1とT2の間、例えば振幅の平均を基準線とすることが困難な場合がある。
よって、以下の説明では、波形を凸部57のみの集合とみなした場合と、凹部59のみの集合とみなした場合とで、基準線の位置を異なる位置とし、さらに1つの凸部57または凹部59について、別々に基準線を規定し、それぞれ寸法の特定方法を説明する。
【0031】
まず、波を凸部57のみの集合とみなした場合について、図4を参照して説明する。
凸部57は、図4に示す半値幅W1が20μm以上、200μm以下、高さL1が20μm以上、100μm以下であるのが好ましい。それぞれが上限値以下であることにより、半値幅W1と高さL1が人間の眼の分解能に近いか、それ未満となり、透明板2と加飾層3の境界が、ぼやけて、色彩差が目立たなくなる。それぞれが下限値以上であることにより、凸部57が存在すること自体は人間の眼で認識できるので、透明板2と加飾層3の境界が、ぼやけて見える。
高さL1は20μm以上、80μm以下がより好ましく、30μm以上、70μm以下がより好ましい。上限値以下だと、液晶モジュールを配置して表示装置とした場合、視認者が表示装置を視認する距離において、凸部57をより視認させず、より透明板2と加飾層3の境界における色彩差を目立たなくできる。下限値以上だと、インクジェット法により所望のパターンを形成する場合に、パターンの安定性を保持した凸部57を形成できる。
半値幅Wは20μm以上、150μm以下であるのがより好ましく、20μm以上、100μm以下がさらに好ましい。半値幅Wが上限値以下であると、液晶モジュールを配置して表示装置とした場合、視認者が表示装置を視認する距離において、透明板2と加飾層3の境界がより視認し難くなり、色彩差を目立たなくできる。
【0032】
半値幅W1、高さL1は、以下のように求められる。
まず、凸部57の頂点H1に接線T1(凸部接線ともいう)を引く。次に、接線T1と平行な接線を加飾層3に引き、加飾層3との接点がH1から最も近いものを選ぶ。ここでは、H1から最も近い接点はH2なので、H2に引かれた接線T2(凸部隣接接線ともいう)を選ぶ。他の接線Tは、接点Hとの距離がより遠いので、ここでは選択しない。T1とT2の最短距離が高さL1である。最短距離(高さL1)に対する凸部57の半値幅が、半値幅W1である。ここでは波が正弦波なので、中点C1、C2間の距離が半値幅になる。
【0033】
次に、波を凹部59のみの集合とみなした場合について、図5を参照して説明する。
凹部59は、半値幅W2が20μm以上、200μm以下、深さL2が20μm以上、100μm以下であるのが好ましい。それぞれが上限値以下であることにより、半値幅W2と深さL2が人間の眼の分解能に近いか、それ未満となり、透明板2と加飾層3の境界が、ぼやけて、色彩差が目立たなくなる。それぞれが下限値以上であることにより、凹部59が存在すること自体は人間の眼で認識できるので、凹部59における透明板2と加飾層3の境界が、ぼやけて見える。
深さLは20μm以上、80μm以下であるのがより好ましく、30μm以上、70μm以下がより好ましい。上限値以下だと、液晶モジュールを配置して表示装置とした場合、視認者が表示装置を視認する距離において、凹部59をより視認させず、より、透明板2と加飾層3の境界における色彩差を目立たなくできる。下限値以上だと、インクジェット法により所望のパターンを形成する場合に、パターンの安定性を保持した凹部59を形成できる。
半値幅Wは20μm以上、150μm以下であるのがより好ましく、20μm以上、100μm以下がさらに好ましい。半値幅Wが上限値以下であると、液晶モジュールを配置して表示装置とした場合、視認者が表示装置を視認する距離において、透明板2と加飾層3の境界がより視認し難くなり、色彩差を目立たなくできる。
【0034】
半値幅W2、深さL2は、以下のように求められる。
まず、凹部59の頂点H2に接線T2(凹部接線ともいう)を引く。次に、接線T2と平行な接線を加飾層3に引き、加飾層3との接点がH2から最も近いものを選ぶ。ここでは、H2から最も近い接点はH1なので、H1に引かれた接線T1(凹部隣接接線ともいう)を選ぶ。他の接線Tは、接点Hとの距離がより遠いので、ここでは選択しない。T2とT1の最短距離が深さL2である。最短距離(深さL2)に対する凹部59の半値幅が、半値幅W2である。ここでは波が正弦波なので、中点C2、C3間の距離が半値幅になる。
【0035】
図3図5では平面視で、端部43が波形であるため、1周期の半波長は半値幅W1、W2と等しくなる。振幅は高さL1、深さL2と等しくなる。よって、1周期の半波長が20μm以上、200μm以下となり、振幅が20μm以上、100μm以下となる。
【0036】
図1に示すように、加飾層付き透明板1における加飾層3で囲まれた領域は、液晶パネル等の表示パネルが配置される表示領域4となる。加飾層付き透明板1が表示装置(図10参照)に用いられる場合、この表示領域4には液晶パネル等の表示パネルが配置される。表示パネルには駆動のための配線や回路等が設けられており、加飾層3がないと透明板2を通して表示パネルを視認した場合、配線等が見えてしまい美観を損なう。そこで、加飾層3を透明板2の周縁部に設けることにより、外周近傍に配置された配線等を隠蔽でき、美観を高められる。
【0037】
また表示パネルが液晶パネルの場合、自発光ではない液晶パネルの背面にバックライトが設けられるが、バックライトからの照明光が表示領域4の外側に漏れると美観を損なう。そこで、加飾層3を透明板2の周縁部に設けることにより、表示領域4の外周から照明光が漏れるのを防止でき、美観を高められる。
【0038】
〔加飾層付き透明板の製造方法〕
次に、加飾層付き透明板1の製造方法について説明する。
なお、本明細書において、加飾層とは、隠蔽性や美観性を付与できる層をいい、例えば、スクリーン法やインクジェット法で印刷された印刷層等が挙げられる。
まず、透明なガラスを所定の大きさに切断し、面取りを行った透明板2を準備する。このとき、平面視での面取り部24の寸法が、0.05mm以上0.5mm以下となるように面取りを行うことが好ましい。
【0039】
この後、透明板2に加飾層3を形成する。
加飾層3を形成する方法としては、特に限定はされないが好ましい方法として、インクジェット法が挙げられる。インクジェット法とは、ノズルから液状にしたインクの微少液滴をパルス状に吐出して、透明板2上にパターンを形成する方法である。ノズル移動機構の原点を基準として透明板2を位置決めし、コンピュータからの指令に基づき、ノズルがインクの微少液滴を吐出しながら透明板2の面上を、概略水平方向へ移動する。これにより、点状のインクが連続して形成されて所定のパターンの加飾層3が形成される。被印刷面が屈曲部を有する透明板2の場合は、パターンの歪などを考慮すると、インクの液滴を吐出するノズルと透明板2との距離は略一定であることが好ましい。例えば、ノズルと透明板2との距離を概略一定に維持した上で、パターンに応じてノズルまたは透明板2を回動、移動させる機構を使用することが好ましい。なお、インクをノズルまで供給する供給圧力が安定し、ノズルからのインクの吐出量を一定に保持できることから、ノズルを固定して、そのノズルに対して透明板2を回動、移動させる機構がより好ましい。
【0040】
インクジェット法は、一般にノズルを1方向に直線移動させながらパターンを形成する。よって、図3のように、加飾層3が枠状の場合、上辺加飾層60、下辺加飾層63、右辺加飾層65、左辺加飾層67の4つの直線状のパターンに分けて印刷するのが好ましい。
【0041】
具体的には、透明板2を図示しない支持台に載置し、ノズルの吐出孔を透明板2の第1の主面21における図3の右下端部に位置させる。この後、吐出孔からインクを吐出しつつ、ノズルを左下端部まで移動させて、図3に示す下辺加飾層63を印刷する。
次に、支持台およびノズルの少なくとも一方を相対移動させて、吐出孔を第1の主面21における右上端部に位置させる。この後、吐出孔からインクを吐出しつつ、ノズルを左上端部にまで移動させて、図3に示すような上辺加飾層60を印刷する。
【0042】
次に、ノズルの吐出孔を透明板2の第1の主面21における図3の右上端部に位置させる。この後、吐出孔からインクを吐出しつつ、ノズルを右下端部まで移動させて図3に示す右辺加飾層65を印刷する。
次に、支持台およびノズルの少なくとも一方を相対移動させて、吐出孔を第1の主面21における左上端部に位置させる。この後、吐出孔からインクを吐出しつつ、ノズルを左下端部まで移動させて、図3に示すような左辺加飾層67を印刷する。
【0043】
加飾層3の厚さは、吐出孔からのインクの吐出量やノズルの移動速度を制御することで調整できる。厚くする場合には、吐出量を多くしたり、移動速度を遅くすればよい。薄くする場合には、吐出量を少なくしたり、移動速度を速くすればよい。
【0044】
インクの吐出量は、ノズルの吐出孔から吐出する液滴量と、吐出する間隔(吐出ピッチ)により制御できる。一つの吐出孔からの液滴量をL(pL)、吐出ピッチをP(μm)とする場合、L/P(pL/μm)と吐出量に相関関係がある。L/Pは7以下が好ましい。L/Pが上限値以下であると、吐出量が安定し直線状に印刷する場合に滲みが抑えられ直線性が安定する。また、曲線状に印刷する場合にはインク垂れが抑制でき、所望の曲線形状が得られる。L/Pは6以下がより好ましく、4以下がさらに好ましい。
L/Pは0.5以上が好ましい。下限値以上であると、遮光性を求める印刷などに適した厚さや印刷品質が得られ、良好な加飾層3が得られる。L/Pは0.6以上がより好ましく、0.8以上がさらに好ましい。
【0045】
ノズルと透明板2との相対移動速度は、例えば250mm/秒以下が好ましい。ノズルと透明板2との相対移動速度が上限値より速いと、これらの間で生じる気流や振動による影響を受けやすくなる。気流により巻き込んだ異物が加飾層3に混入し、欠陥になる可能性がある。また振動により所望の形状精度とならない可能性がある。そこで上限値以下の相対移動速度が好ましい。相対移動速度は230mm/秒以下がより好ましく、200mm/秒以下がさらに好ましい。
ノズルと透明板2との相対移動速度の下限値は特に制限はないが、5mm/秒以上が好ましい。相対移動速度は、製造時間に影響を与える。相対移動速度が下限値以上であれば、高い品質の加飾層3を備えた加飾層付き透明板1を高い生産効率で作製できる。相対移動速度は10mm/秒以上がより好ましく、20mm/秒以上がさらに好ましい。
加飾層3のうち、凸部57および凹部59を形成する部分を印刷する際は、形成しない部分と比較して、印刷ピッチを狭くすると同時に、インクの吐出ヘッド1孔あたりの吐出量を少なくするのが好ましい。
印刷ピッチを狭くすることで、凸部57および凹部59を含む微細なパターンを描画できる。インクの吐出量を少なくすることにより、凸部57および凹部59が過量なインクで潰れるのを防ぐことができる。
【0046】
本実施形態では、上辺加飾層60、下辺加飾層63、右辺加飾層65、左辺加飾層67の厚さは同じであり、これらの印刷条件(インクの吐出量およびノズルの移動速度)は同じであることが好ましい。
【0047】
ノズルと透明板2との間隔は、0.5mm以上2mm以下に制御されること好ましい。所望の厚さの範囲に制御でき、均質な加飾層3が得られる。
また、上辺加飾層60、下辺加飾層63、右辺加飾層65、左辺加飾層67の印刷用インクは、同じ種類のインクが好ましい。
【0048】
その後、乾燥、焼成を行うことで、加飾層3が硬化し、加飾層付き透明板1が得られる。上辺加飾層60、下辺加飾層63、右辺加飾層65、左辺加飾層67の乾燥や焼成は、形成した都度実施してもよく、全てを形成してから実施してもよい。
【0049】
〔加飾層付き透明板の作用効果〕
透明板2に設けられた加飾層3の端部43に、凸部57および凹部59の少なくとも一方が設けられているので、人間の目には加飾層3と透明板2の境界がぼやけて見える。
そのため、透過率を一定にする場合と比べて透明板2と加飾層3の境界の色彩差が小さくなり、目立たなくなる。
【0050】
凸部57の半値幅W1が20μm以上、200μm以下、高さL1が20μm以上、100μm以下であり、人間の眼の分解能に近いか、それ以下の寸法であるため、人間の目には、凸部57における透明板2と加飾層3の境界が、ぼやけて見える。
そのため、透明板2と加飾層3の境界の色彩差が小さくなり、目立たなくなる。
【0051】
接線T1と、接線T2の距離(凸部57の高さL1)が、20μm以上、100μm以下、および凸部57の半値幅が、20μm以上、200μm以下であるため、人間の目には、凸部57における透明板2と加飾層3の境界が、ぼやけて見える。
そのため、凸部57において、透明板2と加飾層3の境界の色彩差が小さくなり、目立たなくなる。
【0052】
凹部59の半値幅W2が20μm以上、200μm以下、深さL2が20μm以上、100μm以下であり、人間の眼の分解能に近いか、それ以下の寸法であるため、人間の目には、凹部59における透明板2と加飾層3の境界が、ぼやけて見える。
そのため、透明板2と加飾層3の境界の色彩差が小さくなり、目立たなくなる。
【0053】
接線T2と、接線T1の距離(凹部59の深さL2)が、20μm以上、100μm以下、および凹部59の半値幅が、20μm以上、200μm以下であるため、人間の目には、凹部59における透明板2と加飾層3の境界が、ぼやけて見える。
そのため、凹部59において、透明板2と加飾層3の境界の色彩差が小さくなり、色彩差が目立たなくなる。
【0054】
加飾層3が波形の平面形状を有しており、端部43の透過率の変動が周期的であるため、人間の目には透明板2と加飾層3の境界が、一様にぼやけて見える。
そのため、透明板2と加飾層3の境界の色彩差が自然に小さくなり、色彩差が目立たなくなる。
【0055】
端部43の波形の平面形状は、1周期の振幅が20μm以上、100μm以下であり、人間の眼の分解能に近いか、それ以下であるため、人間の目には透明板2と加飾層3の境界が、波の振幅方向にぼやけて見える。
そのため、透明板2と加飾層3の境界の色彩差が自然に小さくなり、色彩差が目立たなくなる。
【0056】
波形の平面形状は、1周期の半波長が20μm以上、200μm以下であり、1周期の半波長が人間の眼の分解能に近いか、それ以下であるため、人間の目には透明板2と加飾層3の境界が、波の波長方向にぼやけて見える。
そのため、透明板2と加飾層3の境界の色彩差が自然に小さくなり、色彩差が目立たなくなる。
加飾層3は、枠形の平面形状を有し、端部43は、枠の内周であり、枠の内側と、枠の境界の色彩差を小さくできるので、枠の内側の表示領域4と、枠の境界の美観を高められる。
透明板2が強化ガラスであるため、加飾層付き透明板1が強度と耐擦傷性に優れる。
【0057】
[変形例]
本発明は上記実施形態にのみ限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々の改良ならびに設計の変更等が可能である。本発明の実施の際の具体的な手順、および構造等は、本発明の目的を達成できる範囲で他の構造等としてもよい。
【0058】
例えば、透明板2としては、用途に応じて、種々の形状、材料からなるものを使用できる。
形状としては、例えば、平坦面のみを有する板のみならず、少なくとも一部に曲面を有する板、凹部を有する板であってもよい。例えば、透明板2がガラスである場合、屈曲ガラスでもよい。透明板2として屈曲ガラスを用いることで、加飾層付き透明板1を取り付ける相手側部材が屈曲形状を有していても、取り付けの精度が下がるおそれがない。また、透明板2はフィルム状であってもよい。
材料としては、透明であればよく、一般的なガラス、例えば、無機ガラス、ポリカーボネートやアクリル等の有機ガラスを使用でき、その他の合成樹脂等も使用できる。
透明板2として、無機ガラスを用いる場合、その厚さは0.5mm以上5mm以下が好ましい。この下限値以上の厚さを備えたガラスであれば、高い強度と良好な質感を兼ね備えた加飾層付き透明板1を得られる利点がある。また、無機ガラスを用いる場合、その厚さは、0.7mm以上3mm以下がより好ましく、1mm以上3mm以下がさらに好ましい。
透明板2として、有機ガラスや合成樹脂等を用いる場合、同種・異種問わず重ねられた基材で構成されていてもよく、基材間に各種接着層が挿入されていてもよい。
透明板2として無機ガラスを用いる場合、化学強化処理、物理強化処理のいずれを行ってもよいが、化学強化処理を行うことが好ましい。上述のような比較的、薄い無機ガラスを強化処理する場合、化学強化処理が適切である。
【0059】
透明板2の第1の主面21および第2の主面22のうち少なくとも一方の面には、防眩処理(AG処理)、反射防止処理(AR処理)、耐指紋処理(AFP処理)等が施されることが好ましい。加飾層3が設けられる第1の主面21および面取り部24には、加飾層3との密着性を向上させるため、プライマー処理やエッチング処理等が施されていてもよい。
【0060】
加飾層3を形成するインクは、無機系でも有機系であってもよい。無機系のインクとしては、例えば、SiO2、ZnO、B23、Bi23、Li2O、Na2OおよびK2Oから選択される1種以上、CuO、Al23、ZrO2、SnO2およびCeO2から選択される1種以上、Fe23およびTiO2からなる組成物であってもよい。
【0061】
有機系のインクとしては、樹脂を溶剤に溶解した種々の印刷材料を使用できる。例えば、樹脂としては、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、酢酸ビニル樹脂、フェノール樹脂、オレフィン、エチレン-酢酸ビニル共重合樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、天然ゴム、スチレン-ブタジエン共重合体、アクリルニトリル-ブタジエン共重合体、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリウレタンポリオール等の樹脂からなる群から選ばれる、少なくとも1種以上を選択して使用してよい。溶媒としては、水、アルコール類、エステル類、ケトン類、芳香族炭化水素系溶剤、脂肪族炭化水素系溶剤を用いてもよい。例えば、アルコール類としては、イソプロピルアルコール、メタノール、エタノール等を使用でき、エステル類としては酢酸エチル、ケトン類としてはメチルエチルケトンを使用できる。芳香族炭化水素系溶剤としては、トルエン、キシレン、ソルベッソTM100、ソルベッソTM150等を使用でき、脂肪族炭化水素系溶剤としてはヘキサン等を使用できる。なお、これらは例として挙げたものであり、その他、種々の印刷材料を使用できる。前記有機系の印刷材料は、透明板2に塗布した後、溶媒を蒸発させて樹脂の加飾層3を形成できる。加熱により硬化できる熱硬化性インクでもよく、UV硬化性インクでもよく、特に制限はない。
【0062】
加飾層3に用いられるインクには、着色剤が含まれてもよい。着色剤としては、例えば、加飾層3を黒色とする場合、カーボンブラック等の黒色の着色剤を使用できる。その他、所望の色に応じて適切な色の着色剤を使用できる。
加飾層3は、所望の回数だけ積層してもよく、印刷に用いるインクは、各層異なるものを使用してもよい。また、加飾層3は、一方の主面だけでなく、他方の主面にも印刷してよく、端面に印刷してもよい。
加飾層3を所望の回数だけ積層する場合、各層で異なるインクを用いてもよい。例えば、利用者が加飾層付き透明板1を第2の主面22側から見たときに、加飾層3を白く見せたい場合には、1層目を白色で印刷し、続いて2層目を黒色で印刷すればよい。これにより使用者が第2の主面22側から加飾層3を見た際、加飾層3の背面の視認性に関わる、いわゆる「透け感」を抑制した白色の加飾層3を形成できる。
【0063】
加飾層3の平面形状は、第1の主面21の一辺に沿う線状、連続する二辺に沿うL字状、対向する二辺に沿う2本の直線状でもよい。加飾層3は、第1の主面21が四角形以外の多角形や円形あるいは異形の場合、これらの形状に対応する枠状、多角形の一辺に沿う直線状、円形の一部に沿う円弧状でもよい。
【0064】
加飾層3の端部43の平面形状を波形とする場合、波の形状は、図6(A)に示すように、三角波でもよく、図6(B)に示すように矩形波でもよい。いずれの形状でも、波の形状に対応して、可視光の透過率が低い領域と高い領域が周期的に端部43に現れ、人間の目には透明板2と加飾層3の境界が、ぼやけて見える。
そのため、透明板2と加飾層3の境界の色彩差が自然に小さくなり、色彩差が目立たなくなる。
ところで、図6Aに示すような三角波の場合であっても、凸部および凹部の先端は実質的には湾曲した形状となるため、三角波の場合の凸部接線と凹部接線は、上述した正弦波の場合と同様に定義できる。
波を凸部57の集合と見た場合、図6(C)に示す、加飾層3の端部43の凸部57A、57Bのように、他の凸部57と高さが異なってもよい。
波を凹部59の集合と見た場合、図6(C)に示す凹部59Bのように、他の凹部59と深さが異なってもよい。
波を凸部57の集合と見た場合、図6(C)に示す凸部57Cのように、他の凸部57と半値幅が異なってもよい。
波を凹部59の集合と見た場合、図6(C)に示す凹部59Aのように、他の凹部59と半値幅が異なってもよい。
【0065】
図7に示すように、加飾層3の端部43の厚さは、加飾層端面11に向かって薄くなってもよい。図7では、端部43の断面視での輪郭は曲線であるが、直線でもよい。
この構造では、加飾層端面11側に向けて透過率が高くなり、透明板2と加飾層3の境界の色彩差が自然に小さくなり、色彩差がより目立たなくなる。
凸部57と凹部59の数は特に限定されない。図8に示す領域R2に示すように、凹部59が1つのみでもよい。
加飾層3を凹部59の集合として見た場合、図9に示すように、加飾層付き透明板1は、凹部59を埋めるように付加領域55を備えてもよい。付加領域55は、加飾層3よりも可視光の透過率が高い領域である。付加領域55を設けることにより、平面視における加飾層3の加飾層端面11を直線状にしつつ、透明板2と加飾層3の境界の色彩差を小さくできる。
加飾層3が枠状である場合、外周側に凸部57または凹部59が設けられてもよい。
【0066】
本発明の加飾層付き透明板1は、例えば、液晶ディスプレイや有機ELディスプレイ等のパネルディスプレイや、車載用情報機器、携帯機器のカバーガラスといった表示装置用のカバー部材に使用できる。本発明の加飾層付き透明板1を表示装置用カバーに用いることで、視認性を確保しつつ被対象物を保護できる。また、カバー部材の透明板2と加飾層3の境界の色彩差を小さくでき、美観に優れた表示装置を提供できる。
加飾層付き透明板1を表示装置に用いる場合、加飾層3は、表示装置が非表示の場合の色彩に対応した色彩を有するのが好ましい。例えば、非表示の場合の色彩が黒色系の場合は、加飾層3も黒色系であるのが望ましい。
加飾層3は、求められる色彩と物理的特性が両立できない場合があるが、この場合であっても、凸部57または凹部59によって、透明板2と加飾層3の境界の色彩差が小さくなるため、加飾層3の色彩が原因で、表示装置の美観を損ねるおそれがない。
本発明の加飾層付き透明板1の加飾層3は、この加飾層付き透明板1が用いられる物品の模様を構成し、当該物品の意匠性を向上させるものでもよい。
【0067】
ここで、加飾層付き透明板1を備える表示装置の一例について説明する。
図10に示す表示装置10は、フレーム5を備える。フレーム5は、底部51と、底部51に対して交差する側壁部52と、底部51に対向する開口部53とを備える。底部51と側壁部52とで囲まれた空間には、液晶モジュール6が配置されている。液晶モジュール6は、底部51側に配置されたバックライト61と、バックライト61上に配置された液晶パネル(表示パネル)62とを備える。
また、フレーム5の上端には、第1の主面21が液晶モジュール6側を向くように加飾層付き透明板1が設けられる。加飾層付き透明板1は、開口部53および側壁部52の上端面に設けられた接着層7を介して、加飾層3がフレーム5に、加飾層3の一部および第1の主面21の表示領域4が、液晶モジュール6に、それぞれ貼合されている。
【0068】
なお、接着層7は、透明板2と同じく透明で、透明板2との屈折率差が小さいことが好ましい。
接着層7としては、例えば、液状の硬化性樹脂組成物を硬化して得られる透明樹脂からなる層が挙げられる。硬化性樹脂組成物としては、例えば、光硬化性樹脂組成物、熱硬化性樹脂組成物等が挙げられ、その中でも、硬化性化合物および光重合開始剤を含む光硬化性樹脂組成物が好ましい。硬化性樹脂組成物を、例えば、ダイコータ、ロールコータ等の方法を用いて塗布し、硬化性樹脂組成物膜を形成する。
接着層7は、OCAフィルム(OCAテープ)であってもよい。この場合、加飾層付き透明板1の第1の主面21側にOCAフィルムを貼合すればよい。
接着層7の厚さは、5μm以上400μm以下が好ましく、50μm以上200μm以下がより好ましい。接着層7の貯蔵せん断弾性率は、5kPa以上5MPa以下が好ましく、1MPa以上5MPa以下がより好ましい。
【0069】
表示装置10を製造するにあたり、組立順序は特に限定されない。例えば、予め加飾層付き透明板1に接着層7を配置した構造体を準備しておき、フレーム5に配置し、その後、液晶モジュール6を貼合してもよい。
表示装置10は、タッチセンサ等を備えていてもよい。タッチセンサを組み込む場合は、加飾層付き透明板1の第1の主面21側に、図示しない別の接着層を介してタッチセンサを配置し、それに接着層7を介して液晶モジュール6を配置する。
【実施例
【0070】
次に、本発明の実施例について説明する。本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0071】
透明板2として、厚さが2mm、主面が四角形の板状ガラス(ドラゴントレイル(登録商標)、旭硝子社製)を用い、以下の手順で加飾層付きガラス板を得た。
【0072】
<例1>
ガラス板に(1)防眩処理、(2)端面の研削処理、(3)化学強化処理およびアルカリ処理、(4)加飾層の形成、の順に処理を行った。具体的な処理は以下のとおりである。
【0073】
(1)防眩処理
ガラス板の第2の主面22に以下の手順で、フロスト処理による防眩処理を行った。
まず、耐酸性の保護フィルム(以下、単に「保護フィルム」という)を、ガラス板の防眩処理を施さない側の主面(第1の主面21)に貼合した。このガラス板を3質量%のフッ化水素水溶液に3分間浸漬し、ガラス板をエッチングし、ガラス板の第2の主面22に付着した汚れを除去した。続いてガラス板を15質量%フッ化水素、15%フッ化カリウムの混合水溶液に3分間浸漬し、ガラス板の第2の主面22にフロスト処理を施した。その後、ガラス板を10質量%フッ化水素水溶液に6分間浸漬することで防眩処理を施した。ガラス板の保護フィルムを除去しヘーズ値を測定したところ25%となった。なお、ヘーズ値は、JIS K 7136: 2000によりヘーズメータ(商品名:HZ-V3、スガ試験機社製)を用いて測定した。
【0074】
(2)端面の研削処理
防眩処理を施したガラス板を、150mm×250mmの大きさに切断した。その後、ガラス板の全周にわたってガラスの端面から0.2mmの寸法でC面取りを行った。面取りは600番の砥石(東京ダイア社製)を用い、砥石の回転数が6500rpm、砥石の移動速度が5000mm/min.で処理した。これにより端面の算術表面粗さRaが450nmとなった。
【0075】
(3)化学強化処理およびアルカリ処理
次に、450℃に加熱して硝酸カリウム塩を溶融させた溶融塩に、ガラス板を2時間浸漬して化学強化処理を行った。その後、ガラス板を溶融塩より引き上げ、1時間かけて90℃まで徐冷した後に、25℃の部屋に開放した。以上の処理で、表面圧縮応力(CS)が730MPa、応力層の深さ(DOL)が30μmの化学強化されたガラス板を得た。
さらに、このガラス板をアルカリ溶液(商品名:サンウォッシュTL-75、ライオン社製)に4時間浸漬してアルカリ処理を施した。
【0076】
(4)加飾層の形成
ガラス板の第1の主面21の外周部に、幅2cm、平均厚さ3.5μmの枠状に加飾層3を形成した。
加飾層3は、インクジェット装置を使用して形成した。インクジェットノズル(Xaar社製、型番#1001)は架台に固定しておき、インクジェットノズルの吐出口を下向きとし、鉛直方向にインクが塗布されるようにした。ガラス板は、第2の主面22を別の架台に把持させ、第1の主面21を印刷面とした。インクジェットノズル吐出口と第1の主面21との距離が、0.8mm~2mmとなるようにした。また、第1の主面21の法線方向と、インクジェットノズルの吐出方向(今回は鉛直方向)が略同一直線上(ほぼ同一平面上)となるように、ガラス板の位置や角度を調整した。インクとして熱硬化性黒色インクを使用した。
【0077】
まず、加飾層3を形成する前に、ガラス板の第1の主面21について、コロナ処理を1~30秒間実施し、第1の主面21の水に対する接触角が5°以下となるようにした。その後、印刷を開始し、第1の主面21に下辺加飾層63を形成した。この際、インクジェットノズルに対してガラス板を、10mm/秒の速度で移動させた。同様に、上辺加飾層60を形成した。
続いて、左辺加飾層67および右辺加飾層65を形成した。
この際、波型を形成しない上辺加飾層60と比較して、印刷ピッチを50%~70%にし、インクの吐出量も、体積比率で30%~50%に減らすことにより、左辺加飾層67の端部43が波形になるようにした。
内周端部の拡大図を図11に示す。加飾層3の内周に凸部57または凹部59が形成された。凸部57の高さL1または凹部59の深さL2は20μm~30μm程度であった。凸部57の半値幅W1または凹部59の半値幅W2は30μm~50μm程度であった。
この結果から、インクジェット装置を用いて、図3に示すような凸部57または凹部59を形成できることが分かった。形成した加飾層3の端部付近はぼやけたように観察された。
【0078】
<例2>
(4)加飾層の形成において、例1と同様に、波型を形成する部分の印刷ピッチを50%~70%に狭くし、インクの吐出量も、体積比率で30%~50%に減らし、その他の条件は例1と同様として、図8に示すように、凹部59のみを枠の内周角部近傍(右辺加飾層65の右上端部)に形成した。
内周角部近傍の拡大図を図12に示す。加飾層3の内周角部近傍には凹部59のみが形成されており、深さL2は39μm、半値幅W2は100~120μm程度であった。この結果から、インクジェット装置を用いて、凹部59を形成できることが分かった。形成した加飾層3の波型形成部付近はぼやけたように観察された。
【符号の説明】
【0079】
1…加飾層付き透明板、2…透明板、3…加飾層、6…液晶モジュール、7…接着層、10…表示装置、21…第1の主面、22…第2の主面
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12