IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日立化成株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-鉛蓄電池用の収容金枠及び組電池 図1
  • 特許-鉛蓄電池用の収容金枠及び組電池 図2
  • 特許-鉛蓄電池用の収容金枠及び組電池 図3
  • 特許-鉛蓄電池用の収容金枠及び組電池 図4
  • 特許-鉛蓄電池用の収容金枠及び組電池 図5
  • 特許-鉛蓄電池用の収容金枠及び組電池 図6
  • 特許-鉛蓄電池用の収容金枠及び組電池 図7
  • 特許-鉛蓄電池用の収容金枠及び組電池 図8
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-13
(45)【発行日】2022-01-13
(54)【発明の名称】鉛蓄電池用の収容金枠及び組電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 50/209 20210101AFI20220105BHJP
   H01M 50/103 20210101ALI20220105BHJP
   H01M 50/202 20210101ALI20220105BHJP
   H01M 50/55 20210101ALI20220105BHJP
   H01M 10/16 20060101ALI20220105BHJP
【FI】
H01M50/209
H01M50/103
H01M50/202 501S
H01M50/202 401Z
H01M50/55 101
H01M10/16 R
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2020518196
(86)(22)【出願日】2019-04-05
(86)【国際出願番号】 JP2019015158
(87)【国際公開番号】W WO2019216079
(87)【国際公開日】2019-11-14
【審査請求日】2020-08-17
(31)【優先権主張番号】P 2018092424
(32)【優先日】2018-05-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004455
【氏名又は名称】昭和電工マテリアルズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100169454
【弁理士】
【氏名又は名称】平野 裕之
(74)【代理人】
【識別番号】100180851
【弁理士】
【氏名又は名称】▲高▼口 誠
(72)【発明者】
【氏名】苅谷 賢二
(72)【発明者】
【氏名】木村 徹也
(72)【発明者】
【氏名】小笠原 佳孝
(72)【発明者】
【氏名】辻井 伸長
(72)【発明者】
【氏名】向谷 一郎
【審査官】儀同 孝信
(56)【参考文献】
【文献】実開昭62-152358(JP,U)
【文献】国際公開第2018/029816(WO,A1)
【文献】実開平01-077268(JP,U)
【文献】特開2002-042763(JP,A)
【文献】中国実用新案第2193595(CN,Y)
【文献】特開2011-134552(JP,A)
【文献】国際公開第2018/030471(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2004/0185339(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2003/0003350(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2007/0042263(US,A1)
【文献】特表平07-505737(JP,A)
【文献】実開昭48-090122(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 50/20
H01M 50/10
H01M 50/50
H01M 10/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極板及び負極板がセパレータを介して積層された電極群と、前記電極群を収容する電槽と、を有し、前記正極板及び前記負極板は、平面視において外形を形成する枠体から外側に向いて突出する凸部を有する格子体に電極材が充填されることによって形成されている鉛蓄電池を収容する鉛蓄電池用の収容金枠であって、
水平方向に開口する開口部を有すると共に前記鉛蓄電池が収容される、導電性の筐体と、
前記筐体に収容される前記鉛蓄電池の前記電槽を形成する各面のうち、前記凸部に対向する第一の面と前記筐体との間に配置されると共に、絶縁材料から形成されている第一保護部と、
平板状の第二本体部と前記第二本体部の縁部から立設する第二立設部とを有している第二保護部と、を備え
前記第二保護部は、前記筐体を形成する各面のうち、前記鉛蓄電池を収容したときに前記鉛蓄電池を下方から支持する底面と、前記筐体に収容される前記鉛蓄電池との間に配置されている、鉛蓄電池用の収容金枠。
【請求項2】
前記第一保護部と前記第二保護部とは一体的に形成されている、請求項記載の鉛蓄電池用の収容金枠。
【請求項3】
前記第二本体部には、吸液紙が配置されている、請求項又は記載の鉛蓄電池用の収容金枠。
【請求項4】
正極板及び負極板がセパレータを介して積層された電極群と、前記電極群を収容する電槽と、を有し、前記正極板及び前記負極板は、平面視において外形を形成する枠体から外側に向いて突出する凸部を有する格子体に電極材が充填されることによって形成されている鉛蓄電池を収容する鉛蓄電池用の収容金枠であって、
水平方向に開口する開口部を有すると共に前記鉛蓄電池が収容される、導電性の筐体と、
前記筐体に収容される前記鉛蓄電池の前記電槽を形成する各面のうち、前記凸部に対向する第一の面と前記筐体との間に配置されると共に、絶縁材料から形成されている第一保護部と、を備え、
前記第一保護部は、前記鉛蓄電池ごとに設けられると共に、平板状の第一本体部と、前記第一本体部の縁部から立設する第一立設部と、を有している、鉛蓄電池用の収容金枠。
【請求項5】
前記電槽における前記第一の面の内面には、前記凸部を支持する支持部が形成されている、請求項1~4の何れか一項記載の鉛蓄電池用の収容金枠。
【請求項6】
公称電圧が2V以上の前記鉛蓄電池を収容する、請求項1~の何れか一項記載の鉛蓄電池用の収容金枠。
【請求項7】
請求項1~の何れか一項記載の鉛蓄電池用の収容金枠と、
前記筐体の開口方向と鉛直方向とに直交する方向に沿って配列された状態で収容される複数の前記鉛蓄電池と、を備える、組電池。
【請求項8】
前記電槽を形成する各面の外面には、リブが形成されている、請求項記載の組電池。
【請求項9】
前記鉛蓄電池は、前記電槽を形成する各面のうち端子が設けられる第二の面が前記開口部から露出するように配置されている、請求項又は記載の組電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の一側面は、鉛蓄電池用の収容金枠及び組池に関する。
【背景技術】
【0002】
所望の出力電圧を得るために、複数の鉛蓄電池を組み合わせた組電池が用いられることがある。特許文献1には、上下方向に積み重ねられた複数の電池ユニットを備える組電池が開示されている。電池ユニットのそれぞれは、鉛蓄電池用の収容金枠と、当該鉛蓄電池用の収容金枠に一方向に配列された状態で収容される複数の鉛蓄電池と、を備える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2002-93397号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
サイクル用途の鉛蓄電装置では、繰り返し充放電を行う間に、電極材が充填される格子体が伸びる。また、スタンバイ(トリクル用途)の鉛蓄電池についても、時間の経過に伴って、電極材が充填される格子体が伸びる。本願発明者らは、このようにして伸びた格子体の一部のうち、特に、平面視において格子体の外形を形成する枠体から外側に向いて突出する凸部が電槽を突き破り、鉛蓄電池が配列される鉛蓄電池用の収容金枠に接触することによって、地絡(漏電)するおそれがあることを見出した。
【0005】
そこで、本発明の一側面の目的は、格子体の一部である凸部が電槽を突き破るようなことがあっても、地絡することを防止できる、鉛蓄電池用の収容金枠及び組池を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一側面に係る鉛蓄電池用の収容金枠は、正極板及び負極板がセパレータを介して積層された電極群と、電極群を収容する電槽と、を有し、正極板及び負極板は、平面視において外形を形成する枠体から外側に向いて突出する凸部を有する格子体に電極材が充填されることによって形成されている鉛蓄電池を収容する鉛蓄電池用の収容金枠であって、水平方向に開口する開口部を有すると共に鉛蓄電池が収容される、導電性の筐体と、筐体に収容される鉛蓄電池の電槽を形成する各面のうち、凸部に対向する第一の面と筐体との間に配置されると共に、絶縁材料から形成されている第一保護部と、を備える。
【0007】
この構成の鉛蓄電池用の収容金枠では、筐体に鉛蓄電池を収容したときに、第一の面と筐体との間に絶縁材料からなる第一保護部が配置される。すなわち、この構成の収容金枠では、電槽の内側から見ると、第一の面の先に第一保護部が配置されている。これにより、繰り返し充放電を行う間に格子体が伸び、格子体の一部である凸部が電槽を突き破ったとしても、突き破った先には第一保護部が配置されていることとなる。この結果、格子体の一部である凸部が電槽を突き破るようなことがあっても、凸部が筐体に直接接触することがなくなるので、地絡することを防止できる。
【0008】
本発明の一側面に係る鉛蓄電池用の収容金枠では、電槽における第一の面の内面には、凸部を支持する支持部が形成されていてもよい。これにより、凸部と共に電槽を突き破る場合であっても、地絡することを防止できる。
【0009】
本発明の一側面に係る鉛蓄電池用の収容金枠では、第一保護部は、平板状の第一本体部と、第一本体部の縁部から立設する第一立設部と、を有していてもよい。これにより、第一の保護部を電槽の第一の面に嵌合させることができるので、第一の面に第一保護部を確実に配置することができる。
【0010】
本発明の一側面に係る鉛蓄電池用の収容金枠は、平板状の第二本体部と第二本体部の縁部から立設する第二立設部とを有している第二保護部を更に備え、第二保護部は、筐体を形成する各面のうち、鉛蓄電池を収容したときに鉛蓄電池を下方から支持する底面と、筐体に収容される鉛蓄電池との間に配置されていてもよい。これにより、凸部が電槽の第一の面を突き破ったときに漏れ出す電解液を受け止めることが可能になる。この結果、電解液を介した地絡を防止することができる。
【0011】
本発明の一側面に係る鉛蓄電池用の収容金枠では、第一保護部と第二保護部とは一体的に形成されていてもよい。これにより、鉛蓄電池に対して第一保護部と第二保護部とを容易に固定することが可能となる。
【0012】
本発明の一側面に係る鉛蓄電池用の収容金枠では、第二本体部には、吸液紙が配置されていてもよい。これにより、第二保護部から電解液が漏れ出すことをより確実に防止することができる。
【0013】
本発明の一側面に係る鉛蓄電池用の収容金枠では、公称電圧が2V以上の鉛蓄電池を収容してもよい。これにより、収容金枠は、高電圧の鉛蓄電池を収容する場合であっても、地絡することを防止できる。
【0014】
本発明の一側面に係る組電池は、上記の鉛蓄電池用の収容金枠と、筐体の開口方向と鉛直方向とに直交する方向に沿って配列された状態で収容される複数の鉛蓄電池と、を備えてもよい。この組電池では、格子体の一部である凸部が電槽を突き破るようなことがあっても、地絡することを防止できる。
【0015】
本発明の一側面に係る組電池では、電槽を形成する各面の外面には、リブが形成されていてもよい。これにより、保護部材を鉛蓄電池に取り付けたときに、第二保護部の第一本体部と電槽との間に空間が形成されるので、この空間に電解液を保持することが可能になる。
【0016】
本発明の一側面に係る組電池では、鉛蓄電池は、電槽を形成する各面のうち端子が設けられる第二の面が開口部から露出するように配置されていてもよい。この場合、鉛蓄電池を横にした状態で筐体に収容することができる。
【0017】
本発明の一側面に係る地絡防止方法は、正極板及び負極板がセパレータを介して積層された電極群と、電極群を収容する電槽と、を有し、正極板及び負極板は、平面視において外形を形成する枠体から外側に向いて突出する凸部を有する格子体に電極材が充填されることによって形成されている鉛蓄電池を、導電性を有する材料から形成される収容金枠に収容する際の地絡防止方法であって、筐体に収容される鉛蓄電池の電槽を形成する各面のうち、凸部に対向する第一の面と筐体との間に、絶縁材料から形成されている保護部材を配置する。
【0018】
この地絡防止方法は、筐体に鉛蓄電池を収容したときに、第一の面と筐体との間に絶縁材料からなる保護部材が配置される。すなわち、この構成の収容金枠では、電槽の内側から見ると、第一の面の先に保護部材が配置されている。これにより、繰り返し充放電を行う間に格子体が伸び、格子体の一部である凸部が電槽を突き破ったとしても、突き破った先には保護部材が配置されていることとなる。この結果、格子体の一部である凸部が電槽を突き破るようなことがあっても、凸部が筐体に直接接触することがなくなるので、地絡することを防止できる。
【発明の効果】
【0019】
本発明の一側面によれば、格子体の一部である凸部が電槽を突き破るようなことがあっても、地絡することを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1図1は、一実施形態に係る鉛蓄電池を示す分解斜視図である。
図2図2は、一実施形態に係る格子体の平面図である。
図3図3は、電槽内部の格子体に形成された凸部を拡大して示した図である。
図4図4は、一実施形態に係る格子体基材の平面図である。
図5図5は、鉛蓄電池が収容された筐体から一の鉛蓄電池を取り外した状態を示した斜視図である。
図6図6は、鉛蓄電池が収容された筐体が積み重ねられた組電池を示した斜視図である。
図7図7(a)は、保護部材を示した斜視図であり、図7(b)は、保護部材が取り付けられた鉛蓄電池を示した斜視図である。
図8図8(a)は、変形例に係る保護部材を示した斜視図であり、図8(b)は、変形例に係る保護部材が取り付けられた鉛蓄電池を示した斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の一側面に係る実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。図面において、同一又は同等の要素には同じ符号を付し、重複する説明を省略する。
【0022】
<鉛蓄電池>
図1は、一実施形態に係る鉛蓄電池を示す分解斜視図である。図1に示されるように、鉛蓄電池1は、上面が開口している電槽2と、電槽2の開口を塞ぐ蓋3と、電極群4と、を備える。なお、鉛蓄電池1の説明において、蓋3が位置する方向を便宜上、「上」としている。
【0023】
電槽2は、例えば、ポリプロピレン(PP)、ABS又はポリフェニレンエーテル(PPE)で形成されている。電槽2を形成する各面のうち端子が設けられる蓋(第二の面)3には、正極端子5と、負極端子6と、過剰なガスを電槽2外に排出するための制御弁7と、が設けられている。電槽2を形成する各面の外面2aには、リブ2b(図3参照)が形成されている。リブ2bの高さ(外面2aからの突出高)の例は、2mm~5mmである。電槽2の内部には、電極群4と、希硫酸等の電解液と、が収容されている。
【0024】
電極群4は、正極板9と、負極板10と、正極板9と負極板10との間に配置されたセパレータ11と、を備える。具体的には、電極群4は、正極板9と負極板10とがセパレータ11を介して交互に積層された構造を有している。正極板9及び負極板10は、それらの主面が電槽2の開口面と垂直になるように配置されている。電極群4において、複数の正極板9における各正極格子体12が有する耳部23同士は、正極ストラップ16で一体的に溶接されている。同様に、複数の負極板10における各負極格子体14が有する耳部23同士は、負極ストラップ17で一体的に溶接されている。正極ストラップ16は、正極柱18を介して正極端子5に接続されている。負極ストラップ17は、負極柱19を介して負極端子6に接続されている。
【0025】
正極板9は、正極格子体12と、正極格子体12に充填された正極材13と、を備える。正極格子体12は、鉛蓄電池1の正極板9に用いられる格子体である。正極格子体12は、例えば鉛を主成分として含む鉛合金から構成されている。鉛合金は、鉛以外の成分として、アンチモン、錫、カルシウム及びアルミニウムのうちの一種以上の元素を含んでもよい。鉛合金は、例えばビスマス及び銀の少なくとも何れかをさらに含有してもよい。正極材13は、正極活物質及び添加剤等を含む。正極活物質としては、二酸化鉛等が挙げられる。添加剤としては、炭素材料及び補強用短繊維等が挙げられる。
【0026】
負極板10は、負極格子体14と、負極格子体14に充填された負極材15と、を有している。負極格子体14は、鉛蓄電池1の負極板10に用いられる格子体である。負極格子体14は、例えば鉛を主成分として含む鉛合金から構成されている。鉛合金は、鉛以外の成分として、アンチモン、錫、カルシウム及びアルミニウムのうちの一種以上の元素を含んでもよい。鉛合金は、例えばビスマス及び銀の少なくとも何れかをさらに含有してもよい。負極材15は、負極活物質、及び添加剤等を含む。負極活物質としては、海綿状鉛(Spongylead)等が挙げられる。添加剤としては、硫酸バリウム、炭素材料及び補強用短繊維等が挙げられる。
【0027】
セパレータ11は、例えば、希硫酸等の電解液を保持する電解液保持体(リテーナ)である。セパレータ11は、正極板9と負極板10との間の電気的な接触を阻止しつつ、電解液を保持して硫酸イオン及び水素イオン(プロトン)を透過させる。本実施形態では、セパレータ11は、板状であるが、例えば正極板9を包むことが可能な袋状であってもよい。上記鉛蓄電池1の公称電圧は、2V以上である。
【0028】
<格子体>
次に、正極格子体12及び負極格子体14の構成について説明する。図2は、格子体の平面図である。図2に示されるように、格子体20は、枠体21と、格子部22と、耳部23と、凸部24と、を備える。
【0029】
なお、以下の説明では、正極格子体12と負極格子体14とは同様の構成を有しているので、ここでは、それらを区別することなく格子体20として説明する。X軸方向は、幅方向である。Z軸方向は、上下方向である。Y軸方向は、厚さ方向である。
【0030】
枠体21は、電極材(正極材13及び負極材15)を保持するための内部空間20aを規定する。枠体21は、矩形状の枠である。格子部22は、内部空間20aに設けられ、電極材を保持する。格子部22は、複数の格子骨29と、複数の格子骨30と、を備える。複数の格子骨29のそれぞれは、X軸方向に沿って延びる長尺の柱状部材である。複数の格子骨30のそれぞれは、Z軸方向に沿って延びる長尺の柱状部材である。複数の格子骨29と複数の格子骨30とは、互いに交差しており、格子を成すように配置されている。複数の格子骨29の詳細については、後述する。耳部23は、枠体21の上部に設けられた矩形板状の集電用部材である。
【0031】
凸部24は、枠体21の下部に設けられた板状の部材である。凸部24は、平面視において外形を形成する枠体21から外側に向いて突出している。図3は、電槽内部の格子体に形成された凸部を拡大して示した図である。凸部24は、図3に示されるように、移動規制部24a,24aと、移動規制部24a,24aの間に配置される被支持部24bと、を有している。移動規制部24a,24aは、被支持部24bよりも下方に突出している。このような凸部24を含む格子体20は、枠体21、格子部22、耳部23、及び凸部24を形成する部分を備える鋳型に溶融金属を流し込むことによって製造される。
【0032】
電槽2を形成する各面のうち、凸部24に対向する第一の面2cの内面には、支持部2dが形成されている。支持部2dは、凸部24の被支持部24bを支持する。第一の面2cは、蓋3に対向する面でもある。なお、凸部24は、被支持部24bのみから形成され、移動規制部24a,24aが形成されていなくてもよい。
【0033】
図4は、一実施形態に係る格子体基材の平面図である。図4に示される格子体基材40は、格子体20のもととなる部材であり、第一部分41と第二部分42とを備える。第一部分41及び第二部分42のそれぞれは、枠体21と、格子部22と、耳部23を形成するための突出部43と、第一部分41と第二部分42とを連結する凸部24と、を備える。つまり、格子体基材40は、二つの電極板を製造するために用いられる。第一部分41と第二部分42とに分離するときは、凸部24を切断する。第一部分41の突出部43と第二部分42の突出部43とは、互いに反対方向に突出する。第一部分41の凸部24と第二部分42の凸部24とは、互いに連結されており、連結部44を成している。このように製造される格子体20の凸部24は、底部が平坦に形成されている。すなわち、凸部24は、被支持部24bのみから形成され、移動規制部24a,24aが形成されていない。なお、格子体基材から格子体20が形成される場合にも、適宜な加工によって移動規制部24a,24aを形成してもよい。
【0034】
<収容金枠>
次に、上述した鉛蓄電池1用の収容金枠60について説明する。図5は、鉛蓄電池が収容された筐体から一個の鉛蓄電池を取り外した状態を示した斜視図である。図7(a)は、保護部材を示した斜視図であり、図7(b)は、保護部材が取り付けられた鉛蓄電池を示した斜視図である。図5に示されるように、収容金枠60は、筐体61と、保護部材70(図7(a)参照)と、を備えている。筐体61は、開口部61aを有し、開口部61aが水平方向を向いた状態で鉛蓄電池1が収容される。筐体61は、SPHC(熱間圧延鋼板)及びSS400等の導電性の材料から形成されており、フレーム62と、一対の側面65,65と、上面66と、底面67と、背面68と、を有している。
【0035】
保護部材70は、難燃オリブチレンテレフタレート等の絶縁材料から形成されている。保護部材70は、図7(a)に示されるように、第一保護部71と第二保護部73と有している。図5に示されるように、第一保護部71は、鉛蓄電池1の電槽2を形成する各面のうち、凸部24に対向する第一の面2c(図3参照)と筐体61との間に配置される。本実施形態では、鉛蓄電池1が筐体61に収容されたとき、第一保護部71は、鉛蓄電池1を形成する電槽2の第一の面2c(図3参照)と筐体61の背面68との間に配置される。図7(a)に示されるように、第一保護部71は、平板状の第一本体部71aと、第一本体部71aの縁部から立設する第一立設部71b,71c,71dと、を有している。なお、後述する第二本体部73aは、第一立設部としての役割も兼ねている。第一本体部71aの厚みは、例えば、0.1mm~1.0mmである。第一立設部71b,71c,71dの高さH1(第一本体部71aからの突出高さ)は、例えば10mm~200mmである。
【0036】
第二保護部73は、筐体61に収容される鉛蓄電池1の電槽2を形成する一つの面と筐体61の底面67との間に配置される。上記底面67は、筐体61を形成する各面のうち、鉛蓄電池1を収容したときに鉛蓄電池1を下方から支持する面である。第二保護部73は、平板状の第二本体部73aと第二本体部73aの縁部から立設する第二立設部73b,73c,73dとを有している。上述した第一本体部71aは、第二立設部としての役割も兼ねている。第二本体部73aの厚みは、例えば、0.1mm~1.0mmである。第二立設部73b,73c,73dの高さH2(第二本体部73aからの突出高)は、例えば10mm~40mmである。
【0037】
第二保護部73の第二本体部73aには、吸液紙77が配置されている。更に詳細には、吸液紙77は、四方を第二立設部73b,73c,73d及び第一本体部71aによって囲まれた空間に配置されている。第一保護部71と第二保護部73とは一体的に形成されている。これにより、図7(b)に示されるように、鉛蓄電池1の電槽2を形成する二つの面に接触するように嵌め込みが可能となっている。
【0038】
<組電池>
図6は、鉛蓄電池が収容された筐体が積み重ねられた組電池を示した斜視図である。なお、図6に示されるように、組電池80は、横方向に六個(複数)配列された状態の筐体61が鉛直方向に四段積み重ねられている。すなわち、筐体61には、筐体61の開口部61aの方向と鉛直方向とに直交する方向に沿って配列された状態で六個の鉛蓄電池1が収容される。鉛蓄電池1は、保護部材70(図7(a)参照)が取り付けられた状態で筐体61に収容されている。更に詳細には、鉛蓄電池1は、電槽2を形成する各面のうち正極端子5、負極端子6及び制御弁7が形成された蓋3が開口部61aから露出するように配置されている。組電池80は、このような状態で収容された各鉛蓄電池1が電気的に接続されている。なお、図6では、各鉛蓄電池1を接続する接続部の図示は省略している。
【0039】
鉛直方向に積み重ねられた筐体61同士は、ボルト及びナット(図示せず)によって固定される。四段に積み重ねられた筐体61は、台座部69に載置されている。台座部69は、例えば、SS400等の鋼材からなるH鋼であり、組電池80を設置する床面に設けられる。床面と台座部69との間には、絶縁シート等が配置されてもよい。組電池80は、このような収容金枠60に収容された複数の鉛蓄電池を電気的に接続することによって構成されている。組電池80は、太陽光、風力発電システム、ロードレベリング(負荷平準化)システム等のサイクル用途、UPS、通信設備等のトリクル用途として使用される。
【0040】
次に上記実施形態の収容金枠60及び組電池80の作用効果について説明する。上記実施形態の収容金枠60及び地絡防止方法では、筐体61に鉛蓄電池1を収容すると、第一の面2cと筐体61との間に絶縁材料からなる第一保護部71が配置される。すなわち、上記実施形態の収容金枠60では、電槽2の内側から見ると、第一の面2cの先に第一保護部71が配置されている。これにより、繰り返し充放電を行う間に、電極材が充填される格子体20が伸び、格子体20の一部である凸部24が電槽2を突き破ったとしても、突き破った先には第一保護部71が配置されていることとなる。この結果、格子体20の一部である凸部24が電槽2を突き破るようなことがあっても、凸部24が筐体61に直接接触することがなくなるので、地絡することを防止できる。
【0041】
上記実施形態の収容金枠60では、凸部24が支持部2dと一体となって突き破る場合であっても、地絡することを防止できる。
【0042】
上記実施形態では、第一保護部71を電槽2の第一の面2cに嵌合させるように取り付けることができるので、第一の面2cに第一保護部71を確実に配置することができる。
【0043】
上記実施形態では、平板状の第二本体部73aと第二本体部の縁部から立設する第二立設部73b,73c,73dとを有する第二保護部73が、筐体61の底面67と筐体61に収容される鉛蓄電池1との間に配置されている。これにより、凸部24が電槽2の第一の面2cを突き破ったときに、電解液が漏れ出したとしても、当該電解液を受け止めることが可能になる。この結果、電解液を介した地絡を防止することができる。
【0044】
上記実施形態では、第一保護部71と第二保護部73とは一体的に形成されているので、鉛蓄電池1に対して第一保護部71と第二保護部73とを容易に固定することが可能となる。
【0045】
上記実施形態では、第二本体部73aに吸液紙77が配置されているので、第二保護部73から電解液が溢れ出すことをより確実に防止することができる。
【0046】
上記実施形態の収容金枠60は、公称電圧が2V以上の鉛蓄電池1を収容するための金枠であるので、高電圧の鉛蓄電池1を収容する場合であっても、より安全に鉛蓄電池1を収容することが可能になる。
【0047】
上記実施形態では、電槽2を形成する各面の外面2aには、リブ2bが形成されている。このため、第二保護部73の第二本体部73aと電槽2との間に空間が形成されるので、その空間に電解液を保持することが可能になる。
【0048】
上記実施形態では、鉛蓄電池1は、正極端子5、負極端子6及び制御弁7が形成された蓋3が開口部61aから露出するように配置される場合、すなわち、鉛蓄電池1を横にした状態で筐体61に収容する場合であっても、地絡することを防止できる。
【0049】
以上、一実施形態について説明したが、本発明の一側面は、上記実施形態に限られるものではなく、発明の一側面の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能である。
【0050】
上記実施形態の収容金枠60では、図7(a)に示されるように、第一保護部71と第二保護部73とが一体化された保護部材70を例に挙げて説明したが、これに限定されない。例えば、図8(a)に示されるように、保護部材170は、鉛蓄電池1の電槽2を形成する各面のうち、凸部24に対向する第一の面2cと筐体61との間に配置される第一保護部171のみから構成されてもよい。すなわち、保護部材170は、鉛蓄電池1を形成する電槽2の第一の面2cと筐体61の背面68との間に配置されてもよい。図8(b)に示されるように、変形例に係る保護部材170では、凸部24に対向する第一の面2cに篏合させることが可能となる。変形例に係る保護部材170を備える収容金枠60であっても、格子体20の一部である凸部24が電槽2を突き破るようなことがあっても、地絡することを防止できる。
【0051】
上記変形例の第一保護部171では、第一本体部171aの縁部に第一立設部171b,171c,171d,171eを有する例を挙げて説明したが、板状の第一本体部71aのみから構成されてもよい。この場合であっても、格子体20の一部である凸部24が電槽2を突き破るようなことがあっても、地絡することを防止できる。
【0052】
上記実施形態及び変形例では、六個の鉛蓄電池1が配置された筐体61が四段積み重ねられた例を挙げて説明したが、本発明の一側面はこれに限定されない。例えば、二個以上五個以下又は七個以上の鉛蓄電池1が筐体61に配列されてもよい。また、鉛蓄電池1が収容される筐体61も一段であってもよいし、二段、三段、又は五段以上であってもよい。これらの数は、用途に応じて適宜設定される。
【0053】
上記実施形態及び変形例では、第一保護部71は、鉛蓄電池1を形成する電槽2の第一の面2cと筐体61の背面68との間に配置される例を挙げて説明したが、これに加えて、第一の面2c及び蓋3に直交する、電槽2を形成する一の面と筐体61の側面65との間に第三保護部を備えてもよい。第三保護部は、第一保護部71と同じ絶縁材料から形成される板状の部材である。
【0054】
上記実施形態及び変形例では、電槽2を形成する面のうち蓋3に対向する面が、凸部24と対向する面となる例を挙げて説明したが、蓋3に直交する面の一つが凸部24と対向する面となってもよい。この場合も、第一保護部71は、凸部24と対向する第一の面2cと筐体61を構成する一の面との間に配置される。
【0055】
上記実施形態及び変形例のように、凸部24に対向する第一の面2cは、電槽2を形成する一の面に形成されるから、上述したように、蓋3と対向する面であったり、蓋3と直交する面であったりする。また、鉛蓄電池1も筐体61に対して様々な態様で収容されるから(上記実施形態では、蓋3が露出するように収容)、保護部材70,170は、凸部24が形成される位置と筐体61との関係によって適宜配置される。
【0056】
上記実施形態及び変形例では、正極端子5、負極端子6及び制御弁7が形成された蓋3が開口部61aから露出するように鉛蓄電池1が配置される例、すなわち、鉛蓄電池1を横にした状態で筐体61に収容される例を挙げて説明したが、本発明の一側面はこれに限定されない。例えば、鉛蓄電池1は、蓋3が上方を向いた状態で配置されてもよい。すなわち、鉛蓄電池1は、縦にした状態で筐体61に収容されてもよい。
【0057】
上記実施形態及び変形例では、鉛蓄電池1の電槽2を形成する各面の外面2aには、リブ2bが形成されている例を挙げて説明したが、電槽2を形成する各面の外面2aの全て又は一部は、リブ2bが形成されてなくてもよい。
【0058】
本発明の一側面は、上記実施形態及びその他の変形例として記載の内容を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0059】
1…鉛蓄電池、2…電槽、2a…外面、2b…リブ、2c…第一の面、2d…支持部、3…蓋、20…格子体、21…枠体、24…凸部、24a…移動規制部、24b…被支持部、60…収容金枠、61…筐体、61a…開口部、62…フレーム、67…底面、68…背面、69…台座部、70…保護部材、71…第一保護部、71a…第一本体部、71b,71c,71d…第一立設部、73…第二保護部、73a…第二本体部、73b,73c,73d…第二立設部、77…吸液紙、80…組電池、170…保護部材、171…第一保護部、171a…第一本体部、171b,171c,171d,171e…第一立設部。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8