(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-13
(45)【発行日】2022-01-13
(54)【発明の名称】キノフタロン化合物、顔料組成物及びカラーフィルタ
(51)【国際特許分類】
C09B 25/00 20060101AFI20220105BHJP
C09B 67/20 20060101ALI20220105BHJP
G02B 5/20 20060101ALI20220105BHJP
【FI】
C09B25/00 Z CSP
C09B25/00 B
C09B67/20 F
G02B5/20 101
(21)【出願番号】P 2021519687
(86)(22)【出願日】2020-11-12
(86)【国際出願番号】 JP2020042251
(87)【国際公開番号】W WO2021117410
(87)【国際公開日】2021-06-17
【審査請求日】2021-04-08
(31)【優先権主張番号】P 2019225436
(32)【優先日】2019-12-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002886
【氏名又は名称】DIC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100177471
【氏名又は名称】小川 眞治
(74)【代理人】
【識別番号】100163290
【氏名又は名称】岩本 明洋
(74)【代理人】
【識別番号】100149445
【氏名又は名称】大野 孝幸
(72)【発明者】
【氏名】日▲高▼ 悠太
(72)【発明者】
【氏名】近藤 仁
(72)【発明者】
【氏名】山崎 竜史
(72)【発明者】
【氏名】清水 郁馬
(72)【発明者】
【氏名】岡部 英樹
【審査官】井上 明子
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-203798(JP,A)
【文献】国際公開第2018/159372(WO,A1)
【文献】特開2012-078396(JP,A)
【文献】特開昭55-108466(JP,A)
【文献】特開2003-147224(JP,A)
【文献】特開2008-095007(JP,A)
【文献】特開2013-054200(JP,A)
【文献】特開2020-033523(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09B 25/00
C09B 67/20
G02B 5/20
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)で表されるキノフタロン化合物。
【化1】
(1)
【化2】
(2)
【化3】
(3)
[式(1)中、R
1およびR
2はそれぞれ独立に水素原子、式(2)で表されるフタルイミド系原子団、または式(3)で表されるイミドメチル原子団を示す。式(1)中のX
1~X
16および式(2)中のX
17~X
20は各々独立して水素原子、ハロゲン原子または式(3)で表されるイミドメチル系原子団を示す。このとき、式(1)および(2)中のR
1、R
2とX
1~X
20における式(3)で表されるイミドメチル原子団の合計の数は、1から4である。式(3)中のYは、アリーレン基を表し、当該アリーレン基は、ハロゲン原子、アリールスルホニル基、アシル基、または-(C=O)-C
6H
4-(C=O)-により置換されても良い。]
【請求項2】
キノフタロン顔料と、下記式(1)で表されるキノフタロン化合物と、を含む顔料組成物。
【化4】
(1)
【化5】
(2)
【化6】
(3)
[式(1)中、R
1およびR
2はそれぞれ独立に水素原子、式(2)で表されるフタルイミド系原子団、または式(3)で表されるイミドメチル原子団を示す。式(1)中のX
1~X
16および式(2)中のX
17~X
20は各々独立して水素原子、ハロゲン原子または式(3)で表されるイミドメチル系原子団を示す。このとき、式(1)および(2)中のR
1、R
2とX
1~X
20における式(3)で表されるイミドメチル原子団の合計の数は、1から4である。式(3)中のYは、アリーレン基を表し、当該アリーレン基は、ハロゲン原子、アリールスルホニル基、アシル基、または-(C=O)-C
6H
4-(C=O)-により置換されても良い。]
【請求項3】
前記キノフタロン顔料が、下記式(4-1)、(4-2)、(4-3)、(4-4)及び(5)で表されるキノフタロン化合物の少なくとも何れか1つである請求項2に記載の顔料組成物。
【化7】
【化8】
【化9】
【化10】
[式(4-1)、(4-2)、(4-3)及び(4-4)中、R
3~R
15、R
16~R
30、R
31~R
45、及びR
46~R
62は各々独立に、水素原子、ハロゲン原子、置換基を有しても良いアルキル基、置換基を有しても良いアルコキシル基、置換基を有しても良いアリール基、-SO
3H基、-COOH基、-SO
3H基もしくは-COOH基の金属塩、-SO
3H基もしくは-COOH基のアルキルアンモニウム塩、置換基を有しても良いフタルイミドメチル基、または置換基を有しても良いスルファモイル基を示す。]
【化11】
[式(5)中、R
63~R
70は各々独立に、水素原子、ハロゲン原子、置換基を有しても良いアルキル基、置換基を有しても良いアルコキシル基、置換基を有しても良いアリール基、-SO
3H基、-COOH基、-SO
3H基もしくは-COOH基の金属塩、-SO
3H基もしくは-COOH基のアルキルアンモニウム塩、置換基を有しても良いフタルイミドメチル基、または置換基を有しても良いスルファモイル基を示す。また、R
71~R
74は各々独立に水素原子、ハロゲン原子または下記式(6)で表されるフタルイミド系原子団を示す。]
【化12】
(6)
[式(6)中、X
21~X
24は各々独立に水素原子、またはハロゲン原子を示す。]
【請求項4】
カラーフィルタ用である請求項2または3に記載の顔料組成物。
【請求項5】
請求項2から4のいずれか1項に記載の顔料組成物を含有する画素部を有する、カラーフィルタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規なキノフタロン化合物、当該化合物を含む顔料組成物、及び当該顔料組成物を有するカラーフィルタに関する。
【背景技術】
【0002】
顔料組成物としては、様々な組成物が知られており、このような顔料組成物の具体的な用途としては、印刷インキ、塗料、樹脂用着色剤、繊維用着色剤、IT情報記録用色材(カラーフィルタ、トナー、インクジェット)などが挙げられる。顔料は、分子状態で発色する染料とは異なり、粒子状態(一次粒子の凝集体)での発色のため、一般的に顔料は染料に比べて、耐性においては優位であるものの、着色力や彩度(鮮明性)では劣っている。顔料組成物は、一般的に色特性(着色力、鮮明性)、耐性(耐候性、耐光性、耐熱性、耐溶剤性)などが求められる。また、キノフタロン顔料は全般的に凝集しやすい傾向にあり、顔料組成物にした際に分散性の問題を引き起こす場合がある。下記特許文献1や特許文献2に記載の一定の構造を有するビスキノフタロン顔料が知られている。また、特許文献3には、所定のキノフタロン顔料を含有する着色組成物が開示されている。
【0003】
上記顔料組成物において、着色力や鮮明性といった色特性を高めるための一つの手法として、顔料誘導体を併用し顔料の分散性を上げる方法が良く取られるが、特にキノフタロンなどの黄色有機顔料に対して効果的な顔料誘導体は十分ではなく、新たな誘導体が希求されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】国際公開2013/098836号パンフレット
【文献】特公昭48-32765号公報
【文献】特開2012-247587号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、顔料誘導体として、特にキノフタロンなどの黄色有機顔料に対し凝集抑制効果を発揮し、分散性が良く、着色力や鮮明性といった色特性に優れた顔料組成物とすることができるキノフタロン化合物を提供することである。また、本発明の課題は、顔料誘導体として当該キノフタロン化合物を含む顔料組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意検討した結果、特定のキノフタロン化合物を顔料誘導体として含むことによって、特にキノフタロンなどの黄色有機顔料の凝集を抑制して着色力や鮮明性といった色特性に優れた顔料組成物が得られることを見出し、本発明を完成させた。
【0007】
すなわち、本発明は、以下に関する。
項1.下記式(1)で表されるキノフタロン化合物。
【化1】
(1)
【化2】
(2)
【化3】
(3)
[式(1)中、R
1およびR
2はそれぞれ独立に水素原子、式(2)で表されるフタルイミド系原子団、または式(3)で表されるイミドメチル原子団を示す。式(1)中のX
1~X
16および式(2)中のX
17~X
20は各々独立して水素原子、ハロゲン原子または式(3)で表されるイミドメチル系原子団を示す。このとき、式(1)および(2)中のR
1、R
2とX
1~X
20における式(3)で表されるイミドメチル原子団の合計の数は、1から4である。式(3)中のYは、アリーレン基を表し、当該アリーレン基は、ハロゲン原子、アリールスルホニル基、アシル基、または-(C=O)-C
6H
4-(C=O)-により置換されても良い。]
【0008】
項2.キノフタロン顔料と、下記式(1)で表されるキノフタロン化合物と、を含む顔料組成物。
【化4】
(1)
【化5】
(2)
【化6】
(3)
[式(1)中、R
1およびR
2はそれぞれ独立に水素原子、式(2)で表されるフタルイミド系原子団、または式(3)で表されるイミドメチル原子団を示す。式(1)中のX
1~X
16および式(2)中のX
17~X
20は各々独立して水素原子、ハロゲン原子または式(3)で表されるイミドメチル系原子団を示す。このとき、式(1)および(2)中のR
1、R
2とX
1~X
20における式(3)で表されるイミドメチル原子団の合計の数は、1から4である。式(3)中のYは、アリーレン基を表し、当該アリーレン基は、ハロゲン原子、アリールスルホニル基、アシル基、または-(C=O)-C
6H
4-(C=O)-により置換されても良い。]
【0009】
項3.前記キノフタロン顔料が、下記式(4-1)、(4-2)、(4-3)、(4-4)及び(5)で表されるキノフタロン化合物の少なくとも何れか1つである項2に記載の顔料組成物。
【化7】
【化8】
【化9】
【化10】
[式(4-1)、(4-2)、(4-3)及び(4-4)中、R
3~R
15、R
16~R
30、R
31~R
45、及びR
46~R
62は各々独立に、水素原子、ハロゲン原子、置換基を有しても良いアルキル基、置換基を有しても良いアルコキシル基、置換基を有しても良いアリール基、-SO
3H基、-COOH基、-SO
3H基もしくは-COOH基の金属塩、-SO
3H基もしくは-COOH基のアルキルアンモニウム塩、置換基を有しても良いフタルイミドメチル基、または置換基を有しても良いスルファモイル基を示す。]
【化11】
[式(5)中、R
63~R
70は各々独立に、水素原子、ハロゲン原子、置換基を有しても良いアルキル基、置換基を有しても良いアルコキシル基、置換基を有しても良いアリール基、-SO
3H基、-COOH基、-SO
3H基もしくは-COOH基の金属塩、-SO
3H基もしくは-COOH基のアルキルアンモニウム塩、置換基を有しても良いフタルイミドメチル基、または置換基を有しても良いスルファモイル基を示す。また、R
71~R
74は各々独立に水素原子、ハロゲン原子または下記式(6)で表されるフタルイミド系原子団を示す。]
【化12】
(6)
[式(6)中、X
21~X
24は各々独立に水素原子、またはハロゲン原子を示す。]
【0010】
項4.カラーフィルタ用である項2または3に記載の顔料組成物。
【0011】
項5.項2から4のいずれか1項に記載の顔料組成物を含有する画素部を有する、カラーフィルタ。
【発明の効果】
【0012】
本発明のキノフタロン化合物は、特にキノフタロンなどの黄色顔料に対し凝集抑制効果を発揮し、分散性が良く、着色力や鮮明性といった色特性に優れた顔料組成物とすることができる。また、本発明の顔料組成物は、分散性が良く、着色力や鮮明性といった色特性に優れる。よって、本発明のキノフタロン化合物及び顔料組成物は、特にカラーフィルタ用として使用したとき輝度及びコントラストに優れる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
[キノフタロン化合物]
本発明のキノフタロン化合物は、主にキノフタロンなどの黄色顔料に対して顔料誘導体として作用するものであり、下記式(1)で表される。
【化13】
(1)
【化14】
(2)
【化15】
(3)
【0014】
式(1)中、R1およびR2はそれぞれ独立に水素原子、式(2)で表されるフタルイミド系原子団、または式(3)で表されるイミドメチル原子団を示す。式(1)中のX1~X16および式(2)中のX17~X20は各々独立して水素原子、ハロゲン原子または式(3)で表されるイミドメチル系原子団を示す。このとき、式(1)および(2)中のR1、R2とX1~X20における式(3)で表されるイミドメチル原子団の合計の数は、1から4である。式(3)中のYは、アリーレン基を表し、当該アリーレン基は、ハロゲン原子、アリールスルホニル基、アシル基、または-(C=O)-C6H4-(C=O)-により置換されても良い。
【0015】
式(1)中のX1~X8および式(2)中のX17~X20は、顔料に対し凝集抑制効果を発揮しやすい点から、ハロゲン原子のなかでも塩素、臭素原子が好ましく、なかでも塩素原子がより好ましい。上記式(3)で表されるイミドメチル原子団の数は、1から4であり、なかでも1から3が好ましく、特に1から2が好ましい。式(3)中のYは、アリーレン基を表し、当該アリーレン基は、ハロゲン原子、アリールスルホニル基、アシル基、または-(C=O)-C6H4-(C=O)-により置換されても良い。Yにおけるアリーレン基としては、顔料に対し凝集抑制効果を発揮しやすい点から、フェニレン基、ナフタレン基が好ましく、なかでもフェニレン基が特に好ましい。
【0016】
本発明のキノフタロン化合物としては、例えば、下記式(1-1)から(1-15)で表される化合物が挙げられる。なお、下記式中のnは、イミドメチル原子団の置換基数を示し、1から4の整数を表す。当該イミドメチル原子団基は、左記のキノフタロン骨格における任意の水素原子と置換する。
【化16】
【0017】
[キノフタロン化合物の製造方法]
本発明のキノフタロン化合物は、特に制限されるものではなく従来公知の方法を適宜利用して製造することができる。本発明のキノフタロン化合物の製造例として、式(1)中のR1およびR2が水素原子もしくは式(3)で表されるイミドメチル系原子団であるである場合の化合物(上記式(1-1)から(1-7)の化合物)と、式(1)中のR1およびR2が式(2)であらわされるフタルイミド系原子団である場合の化合物(上記式(1-8)から(1-15)の化合物)とに分けて説明する。本発明のすべてのキノフタロン化合物は、後述の実施例を含む下記の方法を参考にして、適宜使用する原料を変更することにより製造することができる。
【0018】
まず、式(1)中のR1およびR2が水素原子もしくは式(3)で表されるイミドメチル系原子団である場合の化合物(上記式(1-1)から(1-7)の化合物)の例として、上記式(1-1)である化合物の製造方法について説明をする。上記式(1-1)である化合物は、例えば以下の工程A-I及び工程A-IIを含む方法により得ることができる。
【0019】
(工程A-I)
工程A-Iでは、安息香酸などの酸触媒下、安息香酸メチルを加えて加熱溶融後、テトラクロロフタル酸無水物と、6,6’-メチレンジキナルジン[例えばPolymer, volume39, No.20(1998), p4949記載の方法で得られる]とを加え、加熱攪拌して反応させることで、下記式(A-1)で示す中間体を得る。
【化17】
(A-1)
【0020】
工程A-Iにおける反応温度は例えば100℃~300℃、好ましくは150℃~250℃であり、反応時間は例えば1時間~8時間、好ましくは3時間~6時間である。
【0021】
(工程A-II)
工程A-IIでは、発煙硫酸などの硫酸下、パラホルムアルデヒドと、フタルイミドとを加え攪拌後、上記工程A-Iで得られた式(A-1)で示す中間体を加え、加熱攪拌して反応させることで、上記式(1-1)で示すキノフタロン化合物が得られる。
【0022】
工程A-IIにおける反応温度は例えば20℃~150℃、好ましくは80℃~120℃であり、反応時間は例えば1時間~8時間、好ましくは2時間~6時間である。
【0023】
次に、式(1)中のR1およびR2が式(2)であらわされるフタルイミド系原子団である場合の化合物(上記式(1-8)から(1-15)の化合物)の例として、上記式(1-8)である化合物の製造方法について説明をする。上記式(1-8)である化合物は、例えば以下の工程B-I、工程B-II、工程B-III、及び工程B-IVを含む方法により得ることができる。
【0024】
(工程B-I)
工程B-Iでは、濃硫酸などの硫酸に、氷冷下で攪拌しながら6,6’-メチレンジキナルジン[例えばPolymer, volume39, No.20(1998), p4949記載の方法で得られる]を加え、さらに10℃以下を保ちながら硝酸を滴下し、攪拌して反応させ、下記式(B-1)で示す中間体を得る。
【化18】
(B-1)
【0025】
工程B-Iにおける反応温度は例えば-20℃~70℃、好ましくは0℃~50℃であり、反応時間は例えば0.5時間~4時間、好ましくは1時間~3時間である。
【0026】
(工程B-II)
工程B-IIでは、工程B-Iで得られた式(B-1)で示す中間体1当量に対し、還元鉄を6~8当量加え、反応させることで、下記式(B-2)で示す中間体を得ることができる。
【化19】
(B-2)
【0027】
工程B-IIにおける反応温度は例えば40℃~80℃、好ましくは50℃~70℃であり、反応時間は例えば0.5時間~12時間、好ましくは1時間~3時間である。
【0028】
(工程B-III)
工程B-IIIでは、安息香酸などの酸触媒下、工程B-IIで得られた式(B-2)で示す中間体と、テトラクロロフタル酸無水物と、無水塩化亜鉛とを加え、加熱攪拌して反応させることで、下記式(B-3)で示す中間体が得られる。なお、この式(B-3)で示す中間体は、上記式(5)で表すキノフタロン顔料として用いることもできる。
【化20】
(B-3)
【0029】
工程B-IIIにおいて反応温度は例えば180℃~300℃、好ましくは200℃~250℃であり、反応時間は例えば2時間~8時間、好ましくは3時間~6時間である。
【0030】
(工程B-IV)
工程B-IVでは、発煙硫酸などの硫酸下、パラホルムアルデヒドと、フタルイミドとを加え攪拌後、上記工程B-IIIで得られた式(B-3)で示す中間体を加え、加熱攪拌して反応させることで、上記式(1-8)で示すキノフタロン化合物が得られる。
【0031】
工程B-IVにおける反応温度は例えば20℃~150℃、好ましくは80℃~120℃であり、反応時間は例えば1時間~8時間、好ましくは2時間~6時間である。
【0032】
[顔料組成物]
本発明の顔料組成物は、キノフタロン顔料と上記式(1)で表されるキノフタロン化合物とを含む。本発明の顔料組成物は、上記本発明のキノフタロン化合物を少なくとも1種含めばよく、2種以上のキノフタロン化合物を含んでいてもよい。また、本発明の顔料組成物は、キノフタロン顔料、本発明のキノフタロン化合物以外の成分を含んでいてもよい。
【0033】
(キノフタロン顔料)
本発明の顔料組成物においてキノフタロン顔料としては、例えばキナルジンと無水フタル酸との縮合により合成されるキノフタロン骨格を有する顔料であれば特に限定されないが、このようなキノフタロン顔料としては、下記式(4-1)、(4-2)、(4-3)、(4-4)及び(5)で表されるキノフタロン顔料が好ましい。
【化21】
【化22】
【化23】
【化24】
【0034】
上記式(4-1)、(4-2)、(4-3)及び(4-4)中、R3~R15、R16~R30、R31~R45、及びR46~R62は各々独立に、水素原子、ハロゲン原子、置換基を有しても良いアルキル基、置換基を有しても良いアルコキシル基、置換基を有しても良いアリール基、-SO3H基、-COOH基、-SO3H基もしくは-COOH基の金属塩、-SO3H基もしくは-COOH基のアルキルアンモニウム塩、置換基を有しても良いフタルイミドメチル基、または置換基を有しても良いスルファモイル基を示す。上記のR3~R10、R22~R25、R31~R34は、耐熱性、耐溶剤性、耐候性に優れる点からハロゲン原子が好ましく、なかでも塩素原子が特に好ましい。上記のR11~R15、R26~R30、R41~R45、R58~R62は、水素原子が特に好ましい。
【0035】
【0036】
式(5)中、R
63~R
70は各々独立に、水素原子、ハロゲン原子、置換基を有しても良いアルキル基、置換基を有しても良いアルコキシル基、置換基を有しても良いアリール基、-SO
3H基、-COOH基、-SO
3H基もしくは-COOH基の金属塩、-SO
3H基もしくは-COOH基のアルキルアンモニウム塩、置換基を有しても良いフタルイミドメチル基、または置換基を有しても良いスルファモイル基を示す。上記のR
63~R
70は、耐熱性、耐溶剤性、耐候性に優れる点からハロゲン原子が好ましく、なかでも塩素原子が好ましい。また、式(5)中のR
71~R
74は各々独立に水素原子、ハロゲン原子または下記一般式(6)で表されるフタルイミド系原子団を示す。
【化26】
(6)
【0037】
式(6)中、X21~X24は各々独立に水素原子、ハロゲン原子を示す。上記のX21~X24は、耐熱性、耐溶剤性、耐候性に優れる点からハロゲン原子が好ましく、なかでも塩素原子が好ましい。なお、上記式(4-1)、(4-2)、(4-3)、(4-4)、(5)及び(6)におけるハロゲン原子としては、例えばフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられる。
【0038】
上記式(4-1)で表されるキノフタロン顔料の代表例としては、C.I.ピグメントイエロー138が挙げられる。式(4-1)、(4-2)、(4-3)及び(4-4)で表されるキノフタロン顔料は、例えば以下の方法で製造することができる。また、これらのキノフタロン顔料としては、市販のものを用いてもよい。
【0039】
上記式(4-1)、(4-2)、(4-3)及び(4-4)で表されるキノフタロン顔料は、例えば、8-アミノキナルジン類1当量に対して、無水フタル酸類または無水ナフタル酸類2~3当量を、安息香酸中、窒素雰囲気下、160~200℃で加熱して縮合反応させることで得ることができる。この反応で無水フタル酸類のみを用いたとき、式(4-1)で表されるキノフタロン顔料が得られる。この反応で無水ナフタル酸類のみを用いたとき、式(4-4)で表されるキノフタロン顔料が得られる。また、この反応で無水フタル酸と無水ナフタル酸類とを用いたとき、式(4-2)と(4-3)で表されるキノフタロン顔料が得られる。
【0040】
上記式(5)で表されるキノフタロン顔料としては、例えば下記式(5-1)~(5-21)が挙げられる。これらのキノフタロン顔料は、1種を単独で、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0041】
【化27】
【化28】
【化29】
【化30】
【化31】
【0042】
なお、式(5)の構造には、下記式(5-i)及び式(5-ii)等の構造の互変異性体が存在するが、上記式(5)で表されるキノフタロン顔料は、これらのいずれの構造であってもよい。なお、式(5-i)及び(5-ii)中のR
63~R
74は式(5)と同じである。
【化32】
【0043】
上記式(5)で表されるキノフタロン顔料は、特に限定されないが、例えば以下の下記式(7)で表されるアルキレン化合物と下記式(8)で表される酸無水物とを縮合させる方法により得られる。なお、式(7)及び(8)中のR
72とR
74及びR
63~R
66は式(5)と同じである(R
63~R
66はR
67~R
70と実質的に同じ)。式(7)で表されるアルキレン化合物は、後述の方法により製造することができる。
【化33】
【化34】
【0044】
式(7)で表される具体的なアルキレン化合物としては、例えば下記式(7-1)や(7-2)で表される化合物が挙げられる。式(7)で表されるアルキレン化合物としては、1種を単独で用いてよく、2種以上を組み合わせてもよい。
【化35】
【化36】
【0045】
式(7)で表される具体的な酸無水物としては、例えば、無水フタル酸及びハロゲン置換フタル酸無水物が挙げられ、ハロゲン置換フタル酸無水物の具体例としては、テトラフルオロフタル酸無水物、テトラクロロフタル酸無水物、テトラブロモフタル酸無水物、4,5-ジクロロフタル酸無水物、4-クロロフタル酸無水物、4,5-ジブロモフタル酸無水物等が挙げられる。式(7)で表される酸無水物は、1種を単独で用いてよく、2種以上を組み合わせてもよい。式(7)で表される酸無水物として異なる二種以上を用いることで、複数のR63同士、複数のR64同士、複数のR65同士及び複数のR66同士がそれぞれ異なる上記式(5)で表されるキノフタロン顔料を得ることができる。
【0046】
式(7)で表されるアルキレン化合物は、例えば以下の工程C-I、工程C-II及び工程C-IIIを含む方法により得ることができる。なお、式(7-i)及び式(7-ii)中の複数のR72同士及び複数のR74同士は、それぞれ同じでも異なっていてもよい。
【0047】
まず、工程C-Iでは、J.Heterocyclic,Chem,30,17(1993)に記載の方法などにより、ビスアニリン類を1当量に対し、クロトンアルデヒドを2~3当量加え、酸化剤存在下、強酸中において反応させ、下記式(7-i)の化合物を合成する。
【化37】
【0048】
ここで、強酸としては、塩酸、硫酸、硝酸などが挙げられる。酸化剤としては、ヨウ化ナトリウム、p-クロラニル、ニトロベンゼンなどが挙げられる。工程C-Iにおける反応温度は例えば80℃~100℃、好ましくは90℃~100℃であり、反応時間は例えば1時間~6時間、好ましくは3時間~6時間である。
【0049】
さらに、工程C-IIでは、得られた式(7-i)の化合物と硝酸又は発煙硝酸を濃硫酸存在下において反応させることで、下記式(7-ii)の化合物を得ることができる。
【化38】
【0050】
工程C-IIにおける反応温度は例えば-20℃~70℃、好ましくは0℃~50℃であり、反応時間は例えば0.5時間~4時間、好ましくは1時間~3時間である。
【0051】
さらに、工程C-IIIでは、得られた式(7-ii)の化合物の還元によって、ニトロ基(-NO2)をアミノ基(-NH2)に変換することで、上記式(7)で表されるアルキレン化合物を得ることができる。
【0052】
工程C-IIIでは、例えば、式(7-ii)の化合物を還元鉄によって還元処理することで、式(7)で表されるアルキレン化合物を得ることができる。このとき、還元鉄の量は、式(7-ii)の化合物1当量に対して6~8当量であってよく、反応温度は、40℃~80℃、好ましくは50℃~70℃であってよく、反応時間は、0.5時間~12時間、好ましくは1時間~3時間であってよい。また、式(7-ii)の化合物をパラジウム-炭素(Pd-C)、白金-炭素(Pt-C)、ラネーニッケル等の金属触媒を用いて還元処理することで、式(7)で表されるアルキレン化合物を得ることもできる。このとき、金属触媒の量は、例えば、金属量として式(7-ii)の化合物の0.4質量%~5質量%であってよく、反応温度は、例えば30℃~100℃であってよく、反応時間は、例えば1時間~10時間であってよい。反応の水素源としては、水素ガス、ヒドラジン、ギ酸アンモニウム等が使用できる。
【0053】
[顔料組成物における成分の含有量]
本発明の顔料組成物における、上記式(1)で表されるキノフタロン化合物の含有量は、顔料組成物全体に対して、例えば1~15質量%、好ましくは2~10質量%、より好ましくは3~8質量%である。また、上記式(1)で表されるキノフタロン化合物の含有量は、顔料100質量部に対して、例えば1~20質量部、好ましくは2~15質量部、より好ましくは3~10質量部である。キノフタロン化合物の含有量が上記範囲であると、分散性が良く、着色力や鮮明性といった色特性に優れる。
【0054】
本発明の顔料組成物における、上記式(4-1)、(4-2)、(4-3)、(4-4)及び(5)で表されるキノフタロン顔料の合計含有量は、顔料組成物全量に対して、例えば5~98質量%、好ましくは10~95質量%、より好ましくは15~90質量%である。本発明の顔料組成物においては、上記式(4-1)、(4-2)、(4-3)、(4-4)及び(5)で表されるキノフタロン顔料以外の後述する顔料を用いてもよい。上記式(4-1)、(4-2)、(4-3)、(4-4)及び(5)で表されるキノフタロン顔料の合計含有量は、黄色顔料全量に対して、例えば90質量%以上、好ましくは95質量以上、より好ましくは99質量%以上である。
【0055】
本発明の顔料組成物では、分散性が良く、着色力や鮮明性といった色特性に優れるという上記式(1)で表されるキノフタロン化合物の特性を発揮しやすい点から、式(5)で表されるキノフタロン顔料を含むことが好ましい。式(5)で表されるキノフタロン顔料を含む場合の上記式(5)で表されるキノフタロン顔料の含有量は、顔料組成物全量に対して、例えば1~80質量%、好ましくは2~70質量%、より好ましくは3~60質量%である。
【0056】
また、上記式(4-1)、(4-2)、(4-3)、及び(4-4)で表されるキノフタロン顔料と、式(5)で表されるキノフタロン顔料とを併用する場合、上記式(5)で表されるキノフタロン顔料の含有量は、顔料組成物中に含まれるキノフタロン顔料の合計含有量に対して、例えば30~95質量%、好ましくは40~90質量%、より好ましくは50~85質量%である。なお、上記含有量は、式(5)で表されるキノフタロン顔料を2種以上含む場合はその合計の含有量である。
【0057】
本発明の顔料組成物における顔料(特にキノフタロン顔料)の含有量は、顔料組成物全体に対して、例えば70~99質量%、好ましくは75~98質量%、より好ましくは80~97質量%である。
【0058】
本発明の顔料組成物において、顔料としては、キノフタロン顔料以外の顔料、例えばアゾ顔料、フタロシアニン顔料、アゾメチン、アントラキノン、イソインドリン、イソインドリノン、ジオキサジン、ペリレン、キナクリドン、ジケトピロロピロールなどの縮合多環系顔料を含んでいてもよい。
【0059】
本発明の顔料組成物は、上記以外の成分として、ロジン、界面活性剤、樹脂、分散剤、感光性樹脂、硬化性樹脂等を含有していてもよい。これらの成分は、例えば、上記キノフタロン顔料の表面処理により添加されたものであってもよい。顔料の表面処理としては、例えば、ロジン処理、界面活性剤処理、溶剤処理、樹脂処理等の公知の方法が挙げられる。
【0060】
本発明の顔料組成物は、上記特定の顔料誘導体を含むため、分散性が良く、着色力や鮮明性といった色特性に優れる。そのため、特にカラーフィルタを形成するための組成物(カラーフィルタ用顔料組成物)として好適である。本発明の顔料組成物をカラーフィルタ用として使用したとき、カラーフィルタにおける輝度、特にコントラストに優れる。
【0061】
[カラーフィルタ]
本発明のカラーフィルタは、上記本発明の顔料組成物を含有する画素部を有する。カラーフィルタは、顔料組成物に溶剤などを加えて着色組成物(若しくは、感光性樹脂を加えて感光性着色組成物)とし、当該着色組成物(感光性着色組成物)を、スピンコート法、ロールコート法、インクジェット法等でガラス基板等の透明基板上に塗布し、ついでこの塗布膜に対して、フォトマスクを介して紫外線によるパターン露光を行った後、未露光部分を有機溶剤やアルカリ水等で洗浄して着色パターンを得る、フォトリソグラフィーと呼ばれる方法が挙げられる。画素部の形成方法は特に限定されず例えば、電着法、転写法、ミセル電解法、PVED(Photovoltaic Electrodeposition)法等の方法で画素部のパターンを形成して、カラーフィルタを製造してもよい。
【0062】
カラーフィルタは、典型的には、赤色画素部と、青色画素部と、緑色画素部とを有している。本発明の顔料組成物は、特に制限されないが、黄色色材として従来の緑色色材や青色色材とともに緑色画素部や青色画素部を形成する顔料の一部として使用することが好ましい。なお、上記画素部の厚さは、例えば3.6μm以下である。
【0063】
(着色組成物)
上記着色組成物における溶剤としては、有機溶剤が好ましい。有機溶剤としては、例えばトルエンやキシレン、メトキシベンゼン等の芳香族系溶剤、酢酸エチルや酢酸ブチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート等の酢酸エステル系溶剤、エトキシエチルプロピオネート等のプロピオネート系溶剤、メタノール、エタノール等のアルコール系溶剤、ブチルセロソルブ、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル等のエーテル系溶剤、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶剤、ヘキサン等の脂肪族炭化水素系溶剤、N,N-ジメチルホルムアミド、γ-ブチロラクタム、N-メチル-2-ピロリドン、アニリン、ピリジン等の窒素化合物系溶剤、γ-ブチロラクトン等のラクトン系溶剤、カルバミン酸メチルとカルバミン酸エチルの48:52の混合物のようなカルバミン酸エステル等が挙げられる。有機溶剤は、好ましくは、極性を有し水に可溶な溶剤であり、より好ましくは、プロピオネート系溶剤、アルコール系溶剤、エーテル系溶剤、ケトン系溶剤、窒素化合物系溶剤、又はラクトン系溶剤である。
【0064】
着色組成物は、上記キノフタロン顔料以外の有機顔料及び有機染料等の色材、上記式(1)で表されるキノフタロン化合物以外の顔料誘導体等を更に含有していてもよい。上記以外の有機顔料としては、例えば、C.I.ピグメントグリーン36、58、59、62、63などのフタロシアニン顔料(緑色色材)、下記式(8-1)及び(8-2)で表されるアルミフタロシアニン顔料または黄色顔料との混合物(緑色色材)、C.I.ピグメントブルー15:6などのε型銅フタロシアニン顔料(青色色材)、C.I.ピグメントレッド177などのジアンスラキノニル顔料、C.I.ピグメントレッド254などのジケトピロロピロール顔料、C.I.ピグメントレッド269などのナフトール系アゾ顔料(以上、赤色色材)が挙げられる。
【化39】
(8-1)
【化40】
(8-2)
【0065】
上記式(8-1)及び(8-2)中のA1~A4、及びA5~A12はそれぞれ独立して、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアリール基、置換基を有してもよいシクロアルキル基、置換基を有してもよい複素環基、置換基を有してもよいアルコキシル基、置換基を有してもよいアリールオキシ基、置換基を有してもよいアルキルチオ基、または置換基を有してもよいアリールチオ基を表す。上記式(8-1)及び(8-2)中のD1~D4及びD5~D12はそれぞれ独立して、ハロゲン原子、ニトロ基、置換基を有してもよいフタルイミドメチル基、または置換基を有してもよいスルファモイル基を表す。上記式(8-1)中のZ1は、水酸基、塩素原子、-OP(=O)R1R2、または-O-SiR3R4R5を表す。ここでR1~R5はそれぞれ独立して、水素原子、水酸基、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアリール基、置換基を有してもよいアルコキシル基、または置換基を有してもよいアリールオキシ基を表し、R同士が互いに結合して環を形成しても良い。上記式(8-2)中のZ2は、-O-SiR6R7-O-、-O-SiR6R7-O-SiR8R9-O-、または-O-P(=O)R10-O-を表し、R6~R10はそれぞれ独立して、水素原子、水酸基、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアリール基、置換基を有してもよいアルコキシル基、または置換基を有してもよいアリールオキシ基を表す。上記式(8-1)及び(8-2)中のa1~a4、a5~a12、d1~d4、d5~d12は、それぞれ独立して0~4の整数を表し、a1+d1、a2+d2、a3+d3、a4+d4、a5+d5、a6+d6、a7+d7、a8+d8、a9+d9、a10+d10、a11+d11、a12+d12は、各々、0~4の整数で、同一でも異なっても良い。
【0066】
着色組成物は、分散剤を更に含有していてもよい。分散剤としては、例えばANTI-TERRA(登録商標名)U/U100、同204、DISPERBYK(登録商標名)106、同108、同109、同112、同130、同140、同142、同145、同161、同162、同163、同164、同167、同168、同180、同182、同183、同184、同185、同2000、同2001、同2008、同2009、同2013、同2022、同2025、同2026、同2050、同2055、同2150、同2155、同2163、同2164、同9076、同9077、BYK LPN-6919、同21116、同21324、同22102(ビックケミー株式会社製)、EFKA(登録商標名)46、同47、同4010、同4020、同4320、同4300、同4330、同4401、同4570、同5054、同7461、同7462、同7476、同7477(BASF株式会社製)、アジスパー(登録商標名)PB814、同821、同822、同881(味の素ファインテクノ株式会社製)、Solsperse(登録商標名)24000、同28000、同37500、同76500(ルーブリゾール株式会社製)などが挙げられる。
【0067】
着色組成物は、更に、上記以外の成分として、レベリング剤、カップリング剤、カチオン系のロジン、界面活性剤、感光性樹脂、硬化性樹脂等を更に含有していてもよい。
【0068】
着色組成物の粘度は特に限定されず、その用途等に応じて適宜調整してよい。着色組成物の20℃における粘度は、加工に適する粘性を保持する観点から、例えば0.5~100mPa・s、好ましくは1~50mPa・sである。
【0069】
着色組成物は、感光性樹脂を更に含有してもよい。感光性樹脂を含有する着色組成物は、感光性着色組成物ということもできる。感光性樹脂としては、例えばウレタン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリアミド酸系樹脂、ポリイミド系樹脂、スチレンマレイン酸系樹脂、スチレン無水マレイン酸系樹脂等の熱可塑性樹脂や、例えば1,6-ヘキサンジオールジアクリレート、エチレングリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、ビス(アクリロキシエトキシ)ビスフェノールA、3-メチルペンタンジオールジアクリレート等のような2官能モノマー、トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、トリス-(2-アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート等のような多官能モノマー等の光重合性モノマーなどが挙げられる。
【0070】
感光性着色組成物は、光重合開始剤を更に含有してもよい。光重合開始剤としては、例えばアセトフェノン、ベンゾフェノン、ベンジルジメチルケタノール、ベンゾイルパーオキサイド、2-クロロチオキサントン、1,3-ビス(4’-アジドベンザル)-2-プロパン、1,3-ビス(4’-アジドベンザル)-2-プロパン-2’-スルホン酸、4,4’-ジアジドスチルベン-2,2’-ジスルホン酸等が挙げられる。
【0071】
キノフタロン顔料100質量部当たり、1~20質量部の上記式(1)で表されるキノフタロン化合物と、300~2000質量部の有機溶剤とを、均一となる様に攪拌分散して分散液(着色組成物)を得ることができる。次いでこの分散液に、分散液100質量部当たり3~25質量部の感光性樹脂と、感光性樹脂1質量部当たり0.05~3質量部の光重合開始剤と(必要に応じてさらに有機溶剤と)を添加し、均一となる様に攪拌分散して、感光性着色組成物を得ることができる。
【0072】
着色組成物(感光性着色組成物)がカラーフィルタの緑色画素部の形成用である場合、上記キノフタロン顔料100質量部当たり、200質量部以下の緑色色材及び/又は200質量部以下の青色色材が更に添加されていてよい。
【実施例】
【0073】
実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明は、以下の実施例の態様に限定されるものではない。
まず、下記合成例1-6に記載の方法でキノフタロン化合物(顔料誘導体)およびキノフタロン顔料を得た。次に、顔料化例1-6に記載の方法で、得られたキノフタロン化合物およびキノフタロン顔料を使用して顔料化を行い、顔料組成物を得た。そして、実施例1-4、比較例1-2に記載の方法で黄色調色用組成物を作製し、最後に得られたカラーフィルタのコントラスト測定を行った。
【0074】
[合成例1]
フラスコ中に、安息香酸234g、安息香酸メチル133gを加え、窒素気流下で160℃にて加熱溶解させた。その後、テトラクロロフタル酸無水物46.1g、文献(Polymer, volume39, No.20(1998), p4949)記載の方法で得られる6,6’-メチレンジキナルジン9.1g加え、200℃にて5時間攪拌した。冷却後、N-メチルピロリドン(NMP)440mL添加し、80℃で熱濾過し、NMPで洗浄した。メタノール200mLに解膠し、60℃にて一時間加熱攪拌した。放冷後、濾過、メタノール洗浄、減圧乾燥により黄色粉末である中間体(9)25.2gを得た。
【化41】
(9)
FT-IR(KBr disk) cm
-1:1682、1636、1618、1590、1538,1420、1382、1306、730
FD-MS:834M+
【0075】
[合成例2]
フラスコ中に3.6%発煙硫酸24.4gを仕込み、パラホルムアルデヒド6.8g、フタルイミド14.4g加え、30分室温で攪拌した。その後、合成例1で得た中間体(9)5g加え、100℃で3時間攪拌した。放冷後、氷水173gに加え、60℃で30分攪拌した後、沈殿を濾過した。温水で三回洗浄し、90℃で送風乾燥することにより、茶色粉末であるキノフタロン化合物(10)を6.76g得た。
【化42】
(10)
FT-IR(KBr disk) cm
-1:1773、1716、1629、1610、1537、1417、1400、1304、728
FD-MS:993(n=1)、1152(n=2)、1311(n=3)M+
【0076】
[合成例3]
フラスコ中に濃硫酸55gを仕込み、氷冷下に攪拌しながら文献(Polymer, volume39, No.20(1998), p4949)記載の方法で得られる6,6’-メチレンジキナルジン7.0gを添加した。10℃以下を保ちながら60%硝酸6.1gを滴下し、10℃から20℃で1時間攪拌を続けた。反応液を氷水150mlに注ぎ、20wt%水酸化ナトリウム水溶液を用いてpH3に調整した。析出した粉末を減圧ろ過で回収し、水で中性まで洗浄した。得られた固体を70℃で送風乾燥した後、粗生成物を熱酢酸エチル100ml、次いで熱トルエン60mlで洗浄ろ過し、中間体(11)6.52gを得た。
【化43】
(11)
1H-NMR (DMSO-d6) δppm: 2.70 (s, 6H), 4.42 (s, 2H), 7.58 (d, J = 8.8 Hz, 2H), 7.63 (d, J=8.8Hz, 2H), 8.09 (d, J = 8.8 Hz, 2H), 8.13 (d, J=8.8Hz, 2H)
13C-NMR (DMSO-d6) δppm: 24.5, 32.0, 117.7, 124.8, 127.5, 129.8, 130.5, 131.9, 145.8, 146.2, 160.7
FT-IR (KBr disk) cm
-1: 3048, 1602, 1520, 1494, 1363
【0077】
[合成例4]
フラスコ中に還元鉄5.30g、酢酸135mlを仕込み攪拌しながら50℃に加熱した。次いで合成例3で得た中間体(11)4.50gを70℃以下に保つように添加した。添加終了後60℃で1hr攪拌を続けた後、反応液を35℃以下に冷却し、氷水500mlに注ぎ、20%NaOH水でpH9に調製した。生成した沈殿をセライト上で減圧ろ過した。固形物を回収し、70℃で送風乾燥後、ジメチルスルホキシド(DMSO)100mlとN,N-ジメチルホルムアミド(DMF)100mlの混合溶媒に加え、90℃で1hr攪拌した。混合物をセライト上で減圧ろ過し、得られたろ液を水1Lに攪拌しながら加えた。生成した沈殿を減圧濾過で回収し、水洗して中間体(12)3.80gを得た。
【化44】
(12)
1H-NMR (DMSO-d6) δppm: 2.57 (s, 6H), 3.45 (s, 2H), 5.66 (s, 4H), 7.06 (d, J=8.2Hz, 2H), 7.16 (d, J=8.2Hz, 2H), 7.23 (d, J=8.2Hz, 2H), 8.49 (d, J=8.2Hz, 2H)
13C-NMR (DMSO-d6) δppm: 24.6, 32.1, 115.8, 116.2, 119.5, 130.9, 131.8, 141.5, 147.4, 157.0
FT-IR (KBr disk) cm
-1: 3464, 3363, 3315, 3192, 1640, 1591, 1573, 1415, 1365, 801
【0078】
[合成例5]
窒素雰囲気下、フラスコ中に安息香酸135gを量りとり、140℃にて溶融させた。そこに、合成例4で得た中間体(12) 3.80gとテトラクロロフタル酸無水物17.99g、無水塩化亜鉛0.49gを加え、220℃にて6時間攪拌した。反応混合物を120℃に冷却後、クロロベンゼン300mLを加えて1時間攪拌し、減圧ろ過にて黄色粉末であるキノフタロン顔料(13)を10.5g得た。
【化45】
(13)
FT-IR cm
-1: 1788, 1729, 1688, 1638, 1607, 1537, 1420, 1310, 732
FD-MS: 1399 M+
【0079】
[合成例6]
フラスコ中に3.6%発煙硫酸73.2gを仕込み、パラホルムアルデヒド12.2g、フタルイミド3.78g加え、30分室温で攪拌した。その後、合成例5で得たキノフタロン顔料(13)5g加え、120℃で3時間攪拌した。放冷後、氷水518gに加え、60℃で30分攪拌した後、沈殿を濾過した。温水で三回洗浄し、90℃で送風乾燥することにより、茶色粉末であるキノフタロン化合物(14)14.4gを得た。
【化46】
(14)
FD-MS:1559(n=1)M+
【0080】
[顔料化例1]
合成例5で得たキノフタロン顔料(13)47.5g、合成例2で得たキノフタロン化合物(10)2.5g、塩化ナトリウム400g、ジエチレングリコール66.6gとともに磨砕した。その後、この混合物を2000gの温水に投じ、1時間攪拌した。水不溶分をろ過分離して温水でよく洗浄した後、90℃で送風乾燥した。
【0081】
[顔料化例2]
合成例2で得たイミドメチル誘導体であるキノフタロン化合物(10)に代えて、合成例6で得たキノフタロン化合物(14)を用いた以外は、顔料化例1と同様の方法で顔料化を行った。
【0082】
[顔料化例3]
合成例5で得たキノフタロン顔料(13)の量を47.5gから48.5gに変えて、合成例2で得たキノフタロン化合物(10)の量を2.5から1.5gに変えた以外は、顔料化例1と同様の方法で顔料化を行った。
【0083】
[顔料化例4]
合成例5で得たキノフタロン顔料(13)の量を47.5gから46.5gに変えて、合成例2で得たキノフタロン化合物(10)の量を2.5から3.5gに変えた以外は、顔料化例1と同様の方法で顔料化を行った。
【0084】
[顔料化例5]
合成例5で得たキノフタロン顔料(13)50g、塩化ナトリウム400g、ジエチレングリコール66.6gとともに磨砕した。その後、この混合物を2000gの温水に投じ、1時間攪拌した。水不溶分をろ過分離して温水でよく洗浄した後、90℃で送風乾燥した。
【0085】
[顔料化例6]
合成例2で得たイミドメチル誘導体であるキノフタロン化合物(10)を特開2013-54200に記載された方法で合成したC.I.ピグメントイエロー138のイミドメチル誘導体に代えた以外は、顔料化例1と同様の方法で顔料化を行った。
【0086】
[実施例1]
顔料化例1で得たキノフタロン顔料化組成物0.8gをガラス瓶に入れ、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート13.25g、DISPERBYK(登録商標)LPN-6919(ビックケミー株式会社製)0.4g、アクリル樹脂溶液ユニディック(登録商標)ZL-295(DIC株式会社製)0.6g、0.3-0.4mmφセプルビーズ22.0gを加え、ペイントシェーカー(東洋精機株式会社製)で2時間半分散し、顔料分散体を得た。実施例1における顔料および誘導体の含有量は、下記表1のとおりである。さらに、それらの顔料分散体3.6g、アクリル樹脂溶液ユニディック(登録商標)ZL-295(DIC株式会社製)0.6gをガラス瓶に入れ、振とうさせることで黄色調色用組成物を作製した。得られた黄色調色用組成物をスピンコーターによりガラス基板上に塗布後、乾燥させた。得られた評価用ガラス基板を230℃で1時間加熱した後に、コントラスト測定器(壺坂電気株式会社製CONTRAST TESTER CT-1)を用いて、コントラスト測定を行った。測定結果を表1に示す。なおコントラストは、いずれも塗膜の厚さが1μmのときの値である。
【0087】
[実施例2]
顔料化例1で得たキノフタロン顔料化組成物を顔料化例2で得たキノフタロン顔料化組成物に代えた以外は、実施例1と同様の方法で黄色調色用組成物を作製し、コントラスト測定を行った。
【0088】
[実施例3]
顔料化例1で得たキノフタロン顔料化組成物を顔料化例3で得たキノフタロン顔料化組成物に代えた以外は、実施例1と同様の方法で黄色調色用組成物を作製し、コントラスト測定を行った。
【0089】
[実施例4]
顔料化例1で得たキノフタロン顔料化組成物を顔料化例4で得たキノフタロン顔料化組成物に代えた以外は、実施例1と同様の方法で黄色調色用組成物を作製し、コントラスト測定を行った。
【0090】
[比較例1]
顔料化例1で得たキノフタロン顔料化組成物を顔料化例5で得たキノフタロン顔料化組成物に代えた以外は、実施例1と同様の方法で黄色調色用組成物を作製し、コントラスト測定を行った。
【0091】
[比較例2]
顔料化例1で得たキノフタロン顔料化組成物を顔料化例6で得たキノフタロン顔料化組成物に代えた以外は、実施例1と同様の方法で黄色調色用組成物を作製し、コントラスト測定を行った。
【0092】
【0093】
表1に示すとおり、実施例1-4では比較例1-2よりも、コントラストに優れたカラーフィルタが得られた。この結果から、キノフタロン顔料と特定のキノフタロン系誘導体の組み合わせによって、コントラストに優れたカラーフィルタを実現できることが確認された。