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特許6993395遠隔プラズマ源を使用する低温での選択的な酸化のための装置及び方法
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  • 特許-遠隔プラズマ源を使用する低温での選択的な酸化のための装置及び方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-13
(45)【発行日】2022-01-13
(54)【発明の名称】遠隔プラズマ源を使用する低温での選択的な酸化のための装置及び方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/31 20060101AFI20220105BHJP
   H01L 21/316 20060101ALI20220105BHJP
【FI】
H01L21/31 E
H01L21/316 S
【請求項の数】 20
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2019211351
(22)【出願日】2019-11-22
(62)【分割の表示】P 2018080657の分割
【原出願日】2013-07-25
(65)【公開番号】P2020061555
(43)【公開日】2020-04-16
【審査請求日】2019-12-23
(31)【優先権主張番号】61/678,452
(32)【優先日】2012-08-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】13/869,208
(32)【優先日】2013-04-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】390040660
【氏名又は名称】アプライド マテリアルズ インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】APPLIED MATERIALS,INCORPORATED
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】パン, ホン
(72)【発明者】
【氏名】ロジャーズ, マシュー スコット
(72)【発明者】
【氏名】ジャンドラ, アグス エス.
(72)【発明者】
【氏名】オルセン, クリストファー エス.
【審査官】田中 崇大
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-176330(JP,A)
【文献】特開2008-060456(JP,A)
【文献】特開昭53-062982(JP,A)
【文献】特開2009-224736(JP,A)
【文献】特開2012-054475(JP,A)
【文献】特表2005-529491(JP,A)
【文献】特開2010-232240(JP,A)
【文献】特表2012-516577(JP,A)
【文献】特開2001-338921(JP,A)
【文献】特開平09-063964(JP,A)
【文献】特開2011-029415(JP,A)
【文献】国際公開第2006/098300(WO,A1)
【文献】国際公開第2006/095752(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/31
H01L 21/316
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリコンの表面の選択的な酸化のための方法であって:
基板を処理チャンバの中に位置決めすること;
水素をホットワイヤ装置の近傍に流して活性化水素ガスを発生させること;
前記活性化水素ガスを第1の管類を通して前記処理チャンバの中へ流すこと、ここで前記第1の管類は石英材料を備え、前記水素は、処理チャンバの圧力をTorrとTorrとの間に維持するために前記処理チャンバの中に流され;
酸素ラジカルを含む遠隔プラズマを発生させること;
前記遠隔プラズマを石英材料を備える第2の管類を通して前記処理チャンバの中へ流すこと;
前記処理チャンバの中で前記遠隔プラズマを前記活性化水素ガスと混合して活性化された処理ガスを生成すること;
前記基板を前記活性化された処理ガスに晒してシリコンを酸化すること、ここで前記活性化された処理ガスはシリコンの表面を酸化しかつ金属の表面を還元する;及び
前記基板を冷却することを含む、方法。
【請求項2】
水素は、酸素と水素との合計と比較して前記活性化された処理ガスの少なくとも70原子パーセント含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
水素は、前記活性化された処理ガスの最大で95原子パーセントを含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
酸素ラジカルを含む遠隔プラズマを発生させることに先立って、前記基板を水素の中に浸すことをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記浸すことは、少なくとも45秒の間において、摂氏600度と摂氏800度の間の温度で維持される、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記浸すことは水素の圧力が約450Torrと約550Torrの間に維持される請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記活性化された処理ガスを生成する前にアルゴン、ヘリウムまたはクリプトンを前記処理チャンバの中に流すことにより前記処理チャンバから水素ガスを除去することをさらに含む、請求項4に記載の方法。
【請求項8】
前記水素ガスの流量は、約3.33sccm/cmから約33.3sccm/cmまでである、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記水素ガスの流量は、約3.33sccm/cmから約16.67sccm/cmまでである、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
水素は、前記活性化された処理ガスの最大で95原子パーセントを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
シリコンの表面の選択的な酸化のための方法であって:
基板を処理チャンバの中に位置決めすること;
水素をホットワイヤ装置の近傍に流して活性化水素ガスを発生させること;
前記活性化水素ガスを第1の管類を通して前記処理チャンバの中へ流すこと、ここで前記第1の管類は石英材料を備え、前記水素は処理チャンバの圧力をTorrとTorrとの間に維持するために前記処理チャンバの中に流され;
酸素ラジカルを含む遠隔プラズマを発生させること;
前記遠隔プラズマを前記処理チャンバの中へ石英材料を備える第2の管類を通して流すこと;
前記処理チャンバの中で前記遠隔プラズマを前記活性化水素ガスと混合して、活性化された処理ガスを生成すること;
前記基板を前記活性化された処理ガスに晒してシリコンを酸化すること、ここで前記活性化された処理ガスはシリコンの表面を酸化しかつ金属の表面を還元し、水素は、酸素と水素との合計と比較して前記活性化された処理ガスの少なくとも70原子パーセントを含む、酸化すること;及び
前記基板を冷却することを含む、方法。
【請求項12】
水素は、活性化された処理ガス最大で95原子パーセントを含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
酸素ラジカルを含む遠隔プラズマを発生させることに先立って、前記基板を水素の中に浸すことをさらに含む、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
前記浸すことは、少なくとも45秒、摂氏600度と摂氏800度の間の温度で維持される、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記浸すことは水素の圧力が約450Torrと約550Torrの間に維持される請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記活性化された処理ガスを生成する前にアルゴン、ヘリウムまたはクリプトンを前記処理チャンバの中に流すことにより前記処理チャンバから水素ガスを除去することをさらに含む、請求項13に記載の方法。
【請求項17】
シリコンの表面の選択的な酸化のための方法であって:
基板を処理チャンバの中に位置決めすること;
水素をホットワイヤ装置の近傍に流して活性化水素ガスを発生させること;
前記活性化水素ガスを第1の管類を通して前記処理チャンバの中へ流すことであって、前記第1の管類は石英材料を備え、前記水素は前記処理チャンバに流され、プロセスチャンバの圧力をTorrとTorrとの間に維持すること;
酸素を含む遠隔プラズマを発生させることに先立って、前記基板を水素の中に浸すこと;
酸素ラジカルを含む遠隔プラズマを発生させること;
前記遠隔プラズマを前記処理チャンバの中へ石英材料を備える第2の管類を通して流すことと;
前記処理チャンバの中で前記遠隔プラズマを前記活性化水素ガスと混合して、活性化された処理ガスを生成すること;
前記基板を前記活性化された処理ガスに晒してシリコンを酸化することにおいて、前記活性化された処理ガスはシリコンの表面を酸化しかつ金属の表面を還元し、水素は、酸素と水素との合計と比較して少なくとも70原子パーセントの前記活性化された処理ガスを含む、酸化すること;及び
前記基板を冷却することを含む、方法。
【請求項18】
水素は、最大で95原子パーセントの前記活性化された処理ガスを含む、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記浸すことは、少なくとも45秒の間において、摂氏600度と摂氏800度の間の温度で維持され、かつ前記浸すことは水素の圧力が約450Torrと約550Torrの間に維持される請求項17に記載の方法。
【請求項20】
前記活性化された処理ガスを生成する前にアルゴン、ヘリウムまたはクリプトンを前記処理チャンバの中に流して前記処理チャンバから水素ガスを除去することをさらに含む、請求項17に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、概して、選択的にシリコンを酸化するための装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
シリコンの酸化は、集積回路の始まりまでさかのぼる、CMOS製造に対して基本的な技術である。シリコンの酸化のための最も一般的な方法は、O、HO/H、HO/O、O/H、又はそれらの組み合わせの雰囲気の中の熱処理をよりどころにしている。IC製造においてシリコン酸化処理を提供するために使用されるハードウェアは、バッチ熱炉及びRTPである。従来の酸化システム及び処理において、高温(摂氏700より高い)は、シリコン又はポリシリコンの上の酸化物成長のための活性化エネルギーを提供するために必要とされる。
【0003】
進化した集積回路の製造は、酸化ケイ素の薄膜がシリコン又はポリシリコンの構造体の上で成長する、任意の数の処理ステップを必要とする。いくつかの用途に対して、タングステンを含む他の材料が酸化されないよう、酸化処理は選択的でなければならない。高温(摂氏700度より高い)におけるO、HO/H、又はHO/Oのいずれかの雰囲気の中での最近の熱処理は、この酸化処理を実行するために使用される。
【0004】
高温は、処理を実用的にするような酸化物成長速度を得るために必要であり、かついくつかの場合においては酸化物の質のために必要とされる。しかしながら、次世代のデバイスの多くは、高温及び酸化環境の組み合わせに晒される場合、酸化物成長が必要とされる処理のための流れの中のポイントにおいて重大な損傷を経験するだろう。それ故、他の表面物質を酸化することなく低い温度でのシリコンの選択的な酸化を可能にする、方法及び装置に対する技術面での必要性が存在する。
【発明の概要】
【0005】
本発明の実施形態は、概して、シリコンの選択的な酸化の方法に関する。一実施形態において、露出されているシリコンの表面の選択的な酸化のための装置は、第1の入口接続部及び第2の入口接続部を有する複数の壁を有する熱処理チャンバを含むことができ、ここで、複数の壁は、処理チャンバの範囲内の処理領域、処理チャンバの範囲内の基板支持体、処理チャンバの第1の入口接続部と流体接続している水素源、水素源と接続している熱源、処理チャンバの第2の入口接続部と流体接続している遠隔プラズマ源、及び遠隔プラズマ源と流体接続している酸素源を画定する。いくつかの実施形態において、流体接続は、不活性物質を含む管類を備えることができる。
【0006】
別の実施形態において、非金属の表面の選択的な酸化のための方法は、基板を処理チャンバの中に位置決めすることであって、処理チャンバは摂氏800度より低い温度において維持される、位置決めすること、水素を処理チャンバの中へ流すこと、酸素を含む遠隔プラズマを発生させること、遠隔プラズマを処理チャンバの中へ流すことであって、遠隔プラズマは水素ガスと混合して活性化された処理ガスを生成する、流すこと、及び基板を活性化されたガスに晒すことを含むことができる。
【0007】
別の実施形態において、非金属の表面の選択的な酸化のための方法は、基板を処理チャンバの中に位置決めすることであって、処理チャンバは摂氏800度より低い温度において維持される、位置決めすること、水素をホットワイヤ装置の近傍に流して活性化水素を発生させること、活性化水素を処理チャンバの中へ流すこと、酸素を含む遠隔プラズマを発生させること、処理チャンバの中で遠隔プラズマを水素ガスと混合して活性化された処理ガスを生成すること、基板を活性化されたガスに晒して望ましい量のシリコンを酸化することであって、活性化されたガスはシリコンの表面を酸化しかつ金属の表面を還元する、酸化すること、及び基板を冷却することを含むことができる。
【0008】
本発明の上述の特徴が詳細に理解され得るやり方において、上で短く要約された本発明のより具体的な説明が、実施形態に言及することによって認識され、それらのうちのいくつかは、添付の図面の中において示される。これらの実施形態のいくつかを、添付の図面に示す。しかし、本発明は他の等しく有効な実施形態も許容しうるため、添付の図面は本発明の典型的な実施形態のみを示しており、したがって本発明の範囲を限定すると見なすべきではないことに留意されたい。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、一実施形態による、遠隔プラズマ源を有する熱処理チャンバの概略的な表現である。
図2図2は、一実施形態による、選択的な酸化の方法のブロック図である。
図3A図3A及び図3Bは、予備焼きなましを用いる場合及び用いない場合の両方において取得される選択的な酸化及び還元のグラフ表示である。
図3B図3A及び図3Bは、予備焼きなましを用いる場合及び用いない場合の両方において取得される選択的酸化及び還元のグラフ表示である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
理解を容易にするため、可能な場合には、上記の図に共通する同一の要素を示すのに同一の参照符号を使用した。一実施形態で開示する要素は、具体的な記述がなくても、他の実施形態で有益に利用できることが企図されている。
【0011】
本発明の実施形態は、概して、シリコンの選択的な酸化の方法に関する。実施形態は、より具体的には、シリコンの選択的な酸化、及び自然酸化物を除去するためのタングステンの選択的な還元に関する。
【0012】
タングステンを覆うSiの選択的な酸化は、進化したCMOSデバイスにおけるSiO誘電体の上のタングステンゲート電極の周りのイオン注入又は反応性イオンエッチング(RIE)によってもたらされる酸化ケイ素の損傷を修繕するための、重要な処理である。本明細書の中において説明される実施形態は、遠隔プラズマ及び熱処理の組み合わせを使用することによって、急速熱処理(RTP)チャンバ又は熱炉の中の非金属を覆うシリコンを選択的に酸化するために採用されることができる。
【0013】
理論によってしばられることなく、シリコンの酸化の間に誘発されるギブスの自由エネルギーの変化は、タングステンの酸化の間のそれよりも大きく、それ故、タングステンを覆うシリコンの選択的な酸化をもたらす。酸化処理の関連技術として、反応は、高い温度及び圧力において基板に送られる水蒸気又は水素及び酸素の燃焼を含む。高温は、タングステンのウィスカリング(whiskering)をもたらす可能性があり、それは、デバイスの性能に対して有害となり得るタングステンからの、長い結晶性の構造体の形成である。タングステンのウィスカリングを考慮すると、より低い温度での選択的な酸化の使用は、デバイスの全体的な性能に対してより好ましいものとなる。
【0014】
本発明の実施形態は、以下の図面を参照してより明快に説明することができる。
【0015】
図1は、一実施形態による、遠隔プラズマ源を有するRTPチャンバである。本発明の実施形態を用いて採用されるRTPチャンバは、カリフォルニア州のサンタクララにあるApplied Materials,Inc.から購入できる、Centura熱処理システム又はVantage RTPシステムなどの、基板の周りの雰囲気状態を維持している間に基板を加熱及び冷却することができる、任意のタイプのものであり得る。他の製造者からのチャンバを含む他の熱処理チャンバは、本発明の範囲から逸脱することなしに本発明の実施形態を用いて採用され得ることが想定される。
【0016】
RTPチャンバは、基板支持体の中で形成される抵抗加熱要素などの抵抗加熱器から、加熱ランプなどから、又はレーザアニーリングシステムなどからの放射エネルギーからの、加熱を採用することができる。
【0017】
処理チャンバ100は、概して、基板102が熱的に処理され得る処理領域110を画定するチャンバ本体101を備える。基板102は、処理領域110を画定する助けとなることができる基板支持体112の上に位置決めされる。エネルギー源103は、放射エネルギー105を処理領域110に向けるように構成される。センサ108は、チャンバ本体101の内装の中の構成要素の特性を測定するための位置に配置される。一実施形態において、センサ108は、基板102からの放射エネルギーを取得しかつ測定することによって、基板102の温度を測定するように構成される。センサ108は、システムコントローラ109に接続され得、システムコントローラ109は、センサ108からの測定値にしたがってエネルギー源103を調整するために使用され得る。
【0018】
遠隔プラズマ源120は、処理チャンバ100に接続される。本発明の実施形態を用いて採用される遠隔プラズマ源は、マサチューセッツ州のアンドーバーにあるMKS Instrumentsから購入できる、RevolutionIII遠隔RFプラズマ源などの、少なくとも酸素を含む遠隔プラズマを生成するために使用されることができる任意のタイプのものであり得る。他の製造者からのチャンバを含む他の遠隔プラズマチャンバは、本発明の範囲から逸脱することなしに本発明の実施形態を用いて採用され得ることが想定される。
【0019】
遠隔プラズマ源120は、第1の管類122を介して処理チャンバ100に流体結合され、第1の管類122は見通し可能な管類であり得る。酸素ガス源126はまた、誘導的に結合される遠隔プラズマ源などの、遠隔プラズマ源120に流体結合される。さらなる実施形態は、処理チャンバ100の処理領域110に送られることができる酸素/不活性ガスプラズマを生成するために、遠隔プラズマ源120と結合される不活性ガス源128を含むことができる。
【0020】
第1の管類122は、遠隔プラズマ源120を処理チャンバ100に流体結合する。本明細書の中で使用される用語「見通し可能」は、ラジカル再結合又は管類の表面への吸着の可能性を最小化するために、遠隔プラズマ源120と処理チャンバ100との間の短い距離を伝達することを意味する。第1の管類122は、遠隔プラズマ源120によって提供される酸素ラジカルの吸着及び/又は再結合を妨げるために、サファイア、クオーツ、又は他のセラミック材料などの不活性物質を含むことができる。第1の管類122は、遠隔プラズマ源120の中で発生される酸素ラジカルの、処理チャンバ100の中への直接的かつ短い経路を提供するように構成されることができる。
【0021】
水素ガス源124は、処理チャンバ100に接続される。水素ガス源124は、水素ガスが遠隔プラズマ源120から送られる酸素を含む遠隔プラズマによって活性化される、処理領域110へ水素ガスを送る。ホットワイヤ装置130は、随意に、水素ガス源124と処理チャンバ100との間に位置決めされることができる。ホットワイヤ装置130を有する実施形態において、水素ガスは、水素をチャンバの中へ送るのに先立って、水素を活性化するホットワイヤ装置130のホットフィラメントを覆って流されることができる。さらに、ホットワイヤ装置130は、見通し可能な管類などの、第2の管類132を使用して、処理チャンバに接続されることができる。第1の管類122の組成及びパラメータは、第2の管類132に使用されることができる。
【0022】
温度制御は、酸化ケイ素の形成のために重要であり、一方、同時に、タングステンの上にウィスカー構造体は形成されない。そのようにして、本明細書の中において説明される実施形態の中で使用されるRTPチャンバは、チャンバの中の基板の急速な加熱及び冷却を用いて摂氏500度から摂氏1100度の間の範囲で温度を制御することができるべきである。そのような加熱及び冷却は、基板支持体の中の加熱要素及び/又は冷却ポートなどの、構造体を使用して実行され得る。
【0023】
図2は、一実施形態による、選択的な酸化の方法のブロック図である。方法200は、熱処理チャンバの中に基板を位置決めすることを含むことができ、ここで、基板は、ステップ202において、摂氏800度より低い温度に維持される。摂氏800度より高い温度では、基板の表面上に堆積するタングステンの特徴の上にタングステンウィスカーが生じる。タングステンウィスカーが成長すると、それらは基板の不均質な表面を生成するのと同様に、隣接する特徴と接触し得る。さらに、摂氏約800度より低い温度を維持することは、低いサーマルバジェットを伴う用途に対して有益である。それ故、摂氏約800度より低い温度、及び好ましくは摂氏約700度以下における基板の管理は、半導体デバイスの全体的な機能性に対して有益となり得る。
【0024】
方法200はさらに、ステップ204において、処理チャンバの中へ水素を流すことを含むことができる。シリコンは、ふつう非常に高い温度及び長い時間を必要とするO又はHOの中の従来型の熱酸化によって酸化することは難しい。それは、酸素プラズマによって発生する核種を含む、原子状酸素の中で酸化することが知られている。プラズマによって活性化するOを含む、O及びHの混合の使用はまた、シリコンの酸化を可能にし、一方でまた、シリコン並びにタングステンなどの他の材料の酸化の速度及び/又は相対速度を変化させる。
【0025】
適切なサイズのチャンバの中の300ミリメートルの基板に対して、Hの流量は、約1slmから約10slm(約3.33sccm/cmから約33.33sccm/cm)の範囲内に含まれ得る。水素は、チャンバの中へ流れ、チャンバ全体の圧力を、1.5Torrなどの、1Torrから2Torrの間の圧力に維持することができる。基板の温度は、摂氏約600度まで低減される基板などのように、摂氏約550度から摂氏約650度の間に低減されることができる。いくつかの実施形態において、チャンバは、基板と同じ温度に維持されることができる。
【0026】
さらなる実施形態は、予浸/予備焼きなましの処理を含み得る。一実施形態において、水素(H)は、その中に配置される基板を有する処理チャンバの中へ流される。その後、基板は、基板を摂氏約700度に維持する一方で、約450Torrから約550Torrの間のHの中に浸される。その後、基板は、60秒などの、約45秒から約75秒の間などの短い期間に対してH溶液の中に維持される。関連データは、Hの中の予浸は、同時にタングステンの表面上に形成される自然酸化物を還元する一方で、酸化ケイ素の形成という利益をもたらし得ることを示している。
【0027】
またさらなる実施形態は、Hをチャンバの中へ流す前に、ホットワイヤを使用してHを活性化することを含み得る。この実施形態において、Hは、ホットフィラメントを覆って流される。フィラメントは、タングステン又はルテニウム‐タングステンなどの、耐食性の金属又は合金から成ることができる。ホットフィラメントは、プラズマを生成しないで水素を活性化することができ、それによって水素をプラズマとして使用する場合に見られることができる、より酷い悪影響のうちのいくつかを妨げることができる。活性化水素は、H及び電離水素を含み、処理チャンバの中へ流され、そこでは、活性化水素は、タングステンなどの露出金属の表面上に形成される自然酸化物から酸素を抽出するとともに、シリコンの上に酸素を堆積する。タングステンの還元は、70原子パーセントから95原子パーセントの範囲内に含まれる水素で見られた。
【0028】
方法200はさらに、ステップ206において、酸素を含む遠隔プラズマを発生させることを含むことができる。遠隔プラズマとしてのHの生成に関する任意の数の問題が存在する。何よりも、Hは、プラズマに変換される場合、電源、及び陽極酸化アルミ、クオーツ、及びサファイアからなる構成要素などの他のチャンバ構成要素に到達することができる。この反応は、時期尚早な電源の故障をもたらし得る。さらに、Hを伴う反応は、金属水素化物などの堆積前駆体を生成することができ、それは基板上に堆積することができる。酸素だけの遠隔プラズマを生成することによって、活性化された酸素の核種は、基板に対する最小の損傷を伴って、かつチャンバの他の部分に接触する場合に水素プラズマの悪影響を有することなしに、生成されることができる。さらに、活性化酸素は、基板に対する電離した/ラジカル化した水素の影響を制限するために、基板の存在の中で水素を活性化するために使用されることができる。
【0029】
酸素ガスは、300平方センチメートルの基板に対して約1slmから約5slmの範囲内に含まれる流量(約3.33sccm/cmから約16.67sccm/cm)で、遠隔プラズマ源の中へ流される。酸素ガスは、不活性ガスと混合し、酸素混合ガスを生成することができる。不活性ガスは、アルゴン、ヘリウム、又はクリプトンなどのガスを含むことができる。その後、酸素ガス又は混合ガスのいずれも、エネルギー源を使用してプラズマに変換されることができる。エネルギー源は、容量性、誘導性、又はマイクロ波のエネルギー源であり得る。
【0030】
方法200はさらに、ステップ208において、遠隔プラズマを処理チャンバの中へ流すことを含むことができ、ここで、遠隔プラズマは水素ガスと混合し、活性化された処理ガスを生成することができる。プラズマは、プラズマとして見通し可能な管を通ってチャンバの中へ流れる前に急冷されることも、又はプラズマとして見通し可能な管を通ってチャンバの中へ流されることもできる。プラズマは、基板を覆う水素と混合して、H、O、及びOH分子を生成する。基板の温度は、摂氏600度などの、摂氏550度から摂氏650度の間に維持され、酸化ケイ素の形成という利益をもたらす。
【0031】
一実施形態において、予備焼きなましステップの中でチャンバの中に流された水素は、活性化された処理ガスに対する水素ガスとして再使用され得る。さらなる実施形態は、活性化されたガスを生成するために水素の中へ流れるのに先立って、不活性ガス又は水素を用いて、チャンバを清掃することを含むことができる。これらのステップは、酸素プラズマの生成と同時に生じ得る。同様に、水素は、酸素プラズマが遠隔プラズマ源から流れる前に、又は酸素プラズマが基板を覆う酸素プラズマと混合するために同時に流される前に、チャンバの中へ流され得る。
【0032】
方法200はさらに、ステップ210において、基板を活性化されたガスに晒して、シリコンを酸化しかつタングステンなどの露出金属を還元することを含むことができる。シリコンのプラズマ酸化は、概して、アレニウスの様な温度への依存性に従うが、プラズマの中で生成される酸素ラジカルの存在のおかげで、熱酸化よりもかなり低い活性化エネルギーを伴う。酸素の活性化、及びそれに引き続いて若しくはそれと同時に起きる水素の活性化のために、シリコンは酸化される。さらに、水素及び酸素の活性化された核種は、同じ条件の下にタングステンの還元をもたらす。
【0033】
図3Aは、シリコン基板上の増加した酸化ケイ素の成長を示す実験データである。全てのデータは、300ミリメートルのベアシリコン基板から収集された。基板は、最初に摂氏700度まで加熱され、次に随意の予備焼きなましステップが行われた。随意の予備焼きなましステップは、530Torrの圧力においてHの中に60秒間だけ浸すことを含む。予備焼きなましステップの後に、温度は摂氏600度まで下げられ、かつ圧力は1.5Torrまで下げられた。選択的な酸化の部分の間、温度は摂氏600度に維持された。遠隔プラズマは、60秒の間だけ3000ワットに固定されたソース電力を用いて酸素から生み出され、かつその後チャンバに流されて、そこでは、遠隔プラズマは別々にチャンバの中に流されるHと混合された。チャンバの中のH及びOの全圧力は、1.5Torrであった。
【0034】
グラフ表示は、80原子パーセントから100原子パーセントの間のH原子パーセントの範囲内に含まれる酸化ケイ素の厚さを示している。シリコン成長は、80原子パーセントから90原子パーセントの範囲内に含まれる水素(それぞれ、20原子パーセント及び10原子パーセントの酸素)ではより高かった。(本明細書の中においては示されない)さらなる類似の実験の中で示されるように、70原子パーセントから95原子パーセントの範囲内に含まれる水素(それぞれ、30原子パーセント及び5原子パーセントの酸素)は、シリコン上の最適な酸化物成長を提供する。酸化ケイ素の厚さは、一貫して、予備焼きなましされたシリコン基板が焼かれていないシリコン基板よりも高く、温度の増加を必要とせずに0.2Åから0.8Åの間の増加された厚さを提供している。予備焼きなましされた酸化ケイ素は、自然酸化物の存在の中の水素によって再分配される隔離された酸素からの酸化物成長であり得る、100パーセントのHのサンプルの中において著しくより高い。
【0035】
図3Bは、自然タングステン酸化物の還元を示している実験データである。全てのデータは、CVD処理によって堆積したタングステンを伴う300平方ミリメートルのシリコン基板から収集された。基板は、最初に摂氏700度まで加熱され、次に随意の予備焼きなましステップが行われた。随意の予備焼きなましステップは、530Torrの圧力においてHの中に60秒間だけ浸すことを含む。予備焼きなましの後に、温度は摂氏600度まで下げられ、かつ圧力は1.5Torrまで下げられた。選択的な酸化の部分の間、温度は摂氏600度に維持された。遠隔プラズマは、60秒の間だけ3000ワットに固定されたソース電力を用いて酸素から生み出され、かつその後チャンバに流されて、そこでは、遠隔プラズマは別々にチャンバの中に流されるHと混合された。チャンバの中のH及びOの全圧力は、1.5Torrであった。
【0036】
グラフ表示は、酸素が無い場合と比較して、水素及び酸素の両方の存在の中の自然タングステン酸化物の厚さにおける全般的な減少を示している。酸素濃度は、X‐線の光電子分光法(XPS)を使用して測定された。XPS測定は、堆積したタングステン(自然WOx)の中の38パーセントから39パーセントの範囲内に含まれる酸素パーセントを示している。自然WOx含有量における減少は、80原子パーセントから90原子パーセントの範囲に含まれる水素(それぞれ、20原子パーセント及び10原子パーセントの酸素)ではより高かった。(本明細書の中においては示されない)さらなる類似の実験の中で示されるように、70原子パーセントから95原子パーセントの範囲に含まれる水素(それぞれ、30原子パーセント及び5原子パーセントの酸素)は、自然WOxの減少のために使用されることができる。酸化ケイ素の厚さに関連して、自然WOxは、一貫して、焼かれていないタングステン被覆基板よりも予備焼きなましされたタングステン被覆基板の方がより低く、温度の増加を必要とせずに0.2パーセントから0.8パーセントの間の酸化物の還元を提供している。予備焼きなましされた自然WOxは、酸素処理を伴って相乗的にふるまう自然WOxの全体的な還元における予備焼きなましに対する利益を証明する、100パーセントHのサンプルの中でより低い。
【0037】
ここまで議論してきたが、タングステンは、チャンバの間での移送の間などに、雰囲気と接触することによって酸化物を形成し得る。これらの酸化物は、基板上に形成されるタングステンの特徴の機能をおとしめかつ寿命を短くする。そのようにして、これらの欠点を取り除くことは重要である。それ故、自然WOx形成を低減する利益は、低温酸化ケイ素の生成に対して教示されたのと同じ処理及び条件を使用して取得されることができる。さらに、同じ処理によるタングステンの還元及びシリコンの酸化の組み合わせは、酸素を自然WOxの層から隔離してかつ露出したシリコンの上に酸化ケイ素を形成することによって、さらに相乗的になり得ることが信じられている。
【0038】
80パーセントよりも高い水素の濃度を伴って、タングステン膜の中のXPS測定された酸素パーセントは、温度、予備焼きなましの条件、及びRP電力に応じる還元の結果として、31パーセントから33パーセントの範囲に下がった。それ故、選択的な酸化は、摂氏600度における少なくとも80原子パーセントのチャンバの中の水素濃度を用いて実現されることができると結論付けられる。本明細書の中において説明される実験パラメータは、上述されたのとは異なる、他の温度、圧力、流量、及びデバイスパラメータが本明細書の中で開示されるのと同じ利益を提供し得るように、限定的であることを企図しない。
【0039】
本明細書の中において説明される実験は、自然WOxを還元する一方で露出されたシリコンを選択的に酸化する装置及び方法に関する。NANDフラッシュデバイス(flash devices)の形成の間などの、基板の処理の間、酸化ケイ素の層は、エッチングなどの処理によって損傷を受け得る。さらに、上述されたように、タングステンなどの堆積した金属は、デバイスの性能に対して有害であり得る自然酸化物を含む。上述された装置及び方法は、堆積した金属の上の自然酸化物を還元し、その一方で同時に、摂氏800度より高い温度を必要とせずに、露出されたシリコンから酸化ケイ素を形成することができる。
【0040】
上記は本発明の実施形態を対象とするが、本発明の基本的な範囲から逸脱することなく、本発明の他のさらなる実施形態を考案することもでき、本発明の範囲は、以下の特許請求の範囲によって決定される。
また、本願は以下に記載する態様を含む。
(態様1)
露出されたシリコンの表面の選択的な酸化のための装置であって:
第1の入口接続部及び第2の入口接続部を有する、複数の壁を有する熱処理チャンバにおいて、前記複数の壁は前記処理チャンバの範囲内の処理領域を画定する、熱処理チャンバ;
前記処理チャンバの範囲内の基板支持体;
前記処理チャンバの前記第1の入口接続部と流体接続する水素源;
前記水素源と接続する熱源;
前記処理チャンバの前記第2の入口接続部と流体接続する遠隔プラズマ源;及び
前記遠隔プラズマ源と流体接続する酸素源を備える、装置。
(態様2)
前記熱源は、前記水素源を前記処理チャンバの前記第1の入口接続部に接続する、態様1に記載の装置。
(態様3)
水素ガスが前記処理チャンバの中へ入る前にホットワイヤ装置によって活性化されるように、前記水素源と前記処理チャンバの間の流体連通内に形成される前記ホットワイヤ装置をさらに備える、態様1に記載の装置。
(態様4)
前記水素源との流体接続は、不活性物質を含む管類を備える、態様1に記載の装置。
(態様5)
非金属の表面の選択的な酸化のための方法であって:
基板を処理チャンバの中に位置決めすることにおいて、前記処理チャンバは摂氏800度より低い温度において維持される、位置決めすること;
水素を前記処理チャンバの中へ流すこと;
酸素を含む遠隔プラズマを発生させること;
前記遠隔プラズマを前記処理チャンバの中へ流すことにおいて、前記遠隔プラズマは水素ガスと混合して活性化された処理ガスを生成する、流すこと;及び
前記基板を前記活性化された処理ガスに晒すことを含む、方法。
(態様6)
水素は、酸素と比較して少なくとも70原子パーセントの水素を含む、態様5に記載の方法。
(態様7)
酸素を含む遠隔プラズマを発生させることに先立って、前記基板を水素の中に浸すことをさらに含む、態様5に記載の方法。
(態様8)
浸す処理は、少なくとも45秒の間において、摂氏600度と摂氏800度の間の温度で維持される、態様7に記載の方法。
(態様9)
水素ガスの流量は、約3.33sccm/cm から約33.33sccm/cm までである、態様7に記載の方法。
(態様10)
非金属の表面の選択的な酸化のための方法であって:
基板を処理チャンバの中に位置決めすることにおいて、前記処理チャンバは摂氏800度より低い温度において維持される、位置決めすること;
水素をホットワイヤ装置の近傍に流して活性化水素を発生させること;
前記活性化水素を前記処理チャンバの中へ流すこと;
酸素を含む遠隔プラズマを発生させること;
前記処理チャンバの中で前記遠隔プラズマを水素ガスと混合して活性化された処理ガスを生成すること;
前記基板を前記活性化された処理ガスに晒して望ましい量のシリコンを酸化することにおいて、前記活性化された処理ガスはシリコンの表面を酸化しかつ金属の表面を還元する、酸化すること;及び
前記基板を冷却することを含む、方法。
(態様11)
水素は、酸素と比較して少なくとも70原子パーセントの水素を含む、態様10に記載の方法。
(態様12)
水素は、最大で95原子パーセントの前記活性化された処理ガスを含む、態様11に記載の方法。
(態様13)
酸素を含む遠隔プラズマを発生させることに先立って、前記基板を水素の中に浸すことをさらに含む、態様10に記載の方法。
(態様14)
浸す処理は、少なくとも45秒の間において、摂氏600度と摂氏800度の間の温度で維持される、態様13に記載の方法。
(態様15)
水素ガスの流量は、約3.33sccm/cm から約33.33sccm/cm までである、態様10に記載の方法。
図1
図2
図3A
図3B