(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-13
(45)【発行日】2022-01-13
(54)【発明の名称】金属分散液及び画像記録方法
(51)【国際特許分類】
B22F 9/00 20060101AFI20220105BHJP
B22F 1/00 20220101ALI20220105BHJP
C09D 11/322 20140101ALI20220105BHJP
B41J 2/01 20060101ALI20220105BHJP
B41M 5/00 20060101ALI20220105BHJP
【FI】
B22F9/00 B
B22F1/00 K
C09D11/322
B41J2/01 501
B41M5/00 120
(21)【出願番号】P 2019537963
(86)(22)【出願日】2018-07-02
(86)【国際出願番号】 JP2018025108
(87)【国際公開番号】W WO2019039093
(87)【国際公開日】2019-02-28
【審査請求日】2020-01-17
(31)【優先権主張番号】P 2017158891
(32)【優先日】2017-08-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】306037311
【氏名又は名称】富士フイルム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】特許業務法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】原田 基
(72)【発明者】
【氏名】清都 尚治
(72)【発明者】
【氏名】一木 晃
【審査官】河口 展明
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-052041(JP,A)
【文献】特開2012-052198(JP,A)
【文献】特開2014-118589(JP,A)
【文献】特開2014-070255(JP,A)
【文献】特開2010-070841(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B22F 1/00-9/30
C09D 11/322
B41J 2/01
B41M 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属粒子と、水と、を含み、
前記金属粒子は、平均厚さに対する平均円相当径の比である平均アスペクト比が20を超え、かつ、平均円相当径が50nm以上1000nm以下である平板状金属粒子A、及び、前記平均アスペクト比が1以上15以下であり、かつ、平均円相当径が1nm以上150nm以下である金属粒子Bであり
、
前記平板状金属粒子Aの平均円相当径A1と前記金属粒子Bの平均円相当径B1とが、下記の式(1)を満たし、
金属分散液の全質量に対する、前記平板状金属粒子Aの含有率a及び前記金属粒子Bの含有率bが、下記の式(2)を満た
し、
前記平板状金属粒子Aに含まれる金属元素が銀であり、かつ、前記金属粒子Bに含まれる金属元素が銀である、又は、前記平板状金属粒子Aに含まれる金属元素が金であり、かつ、前記金属粒子Bに含まれる金属元素が金である金属分散液。
A1>B1 ・・・式(1)
0.0001≦b/(a+b)≦0.3・・・式(2)
【請求項2】
前記金属粒子Bの前記平均アスペクト比が、1以上8未満である請求項1に記載の金属分散液。
【請求項3】
金属分散液の全質量に対する、前記平板状金属粒子Aの含有率a及び前記金属粒子Bの含有率bが、下記の式(2-1)を満たす請求項1
又は請求項2に記載の金属分散液。
0.0001≦b/(a+b)≦0.2 ・・・式(2-1)
【請求項4】
金属分散液の全質量に対する、前記平板状金属粒子Aの含有率a及び前記金属粒子Bの含有率bが、下記の式(2-2)を満たす請求項1~請求項
3のいずれか1項に記載の金属分散液。
0.0001≦b/(a+b)≦0.15 ・・・式(2-2)
【請求項5】
前記平板状金属粒子Aの平均円相当径が、50nm以上500nm以下である請求項1~請求項
4のいずれか1項に記載の金属分散液。
【請求項6】
前記金属粒子Bの平均円相当径が、1nm以上120nm以下である請求項1~請求項
5のいずれか1項に記載の金属分散液。
【請求項7】
更に、分散剤を含む請求項1~請求項
6のいずれか1項に記載の金属分散液。
【請求項8】
前記分散剤が、ゼラチンである請求項
7に記載の金属分散液。
【請求項9】
インクとして用いられる請求項1~請求項
8のいずれか1項に記載の金属分散液。
【請求項10】
インクジェット記録に用いられる請求項
9に記載の金属分散液。
【請求項11】
請求項1~請求項
10のいずれか1項に記載の金属分散液を、インクジェット法によって基材上に付与する工程を含む画像記録方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、金属分散液及び画像記録方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、遮光性、遮熱性等を有する膜を形成するための金属分散液が知られている。
例えば、融点降下が起こる粒子サイズの金属微粒子を含有していても、耐熱性に優れ、熱処理による金属微粒子の粒子サイズ、形状等の変化が抑制された金属微粒子含有組成物として、少なくとも1つの硫黄原子を含有する複素環化合物と、金属微粒子とを含む金属微粒子含有組成物が知られている(例えば、特開2008-1844号公報参照)。
また、遮熱性能及び可視光透過率がともに優れる熱線遮蔽材を製造できる金属平板粒子分散液として、三角形状又は六角形状乃至円形状の主面を有する平板状の金属粒子Aと、三角形状又は六角形状乃至円形状の主面を有する平板状以外の形状の金属粒子Bとを含み、円相当直径が40nm以上の金属粒子Bを含有する比率が、金属粒子A及び金属粒子Bの合計に対して30個数%以下である金属平板粒子分散液が知られている(例えば、特開2014-70246号公報参照)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、金属粒子を含む金属分散液には、光沢性に優れる膜(例えば、画像)を形成できることが求められる場合がある。特に、金属粒子を含む金属分散液を、画像の記録又は画像の装飾のために用いる場合には、非常に高い光沢性、即ち、鏡面光沢性を有する膜を形成できることが望まれる。
【0004】
本発明者らは、鏡面光沢性を有する膜を形成するためには、金属分散液中の金属粒子として平板状の金属粒子を選択し、かつ、平板状の金属粒子のアスペクト比を高めることが有効であることを見出した。アスペクト比の大きな平板状の金属粒子を含む金属分散液を用いて形成された膜では、平板状の金属粒子の配向性が向上し、平板状の金属粒子の側面(即ち、2つの主平面以外の面)における光の散乱が抑制されるため、鏡面光沢性が得られると考えられる。
また、本発明者らは、アスペクト比の大きな平板状の金属粒子を含む金属分散液によれば、色味が抑制された膜を形成できることを見出した。可視領域の波長以下のサイズの粒径を有する金属粒子では、プラズモン共鳴が生じる。そのため、金属粒子を含む金属分散液では、上記プラズモン共鳴に起因し、金属粒子が可視領域中の特定の波長の光を吸収することで、形成される膜に色味が生じる場合がある。金属分散液中の金属粒子がアスペクト比の大きな平板状の金属粒子であると、プラズモン共鳴による金属粒子の吸収波長が長波側、即ち、赤外域となるため、色味が抑制された膜を形成できると考えられる。
【0005】
しかし、その一方で、アスペクト比の大きな平板状の金属粒子を含む金属分散液では、分散安定性が低下する場合があることが判明した。一般に、金属粒子のアスペクト比が大きくなると、金属粒子の円相当径も大きくなる。円相当径が大きい金属粒子は、表面積が大きく、ファンデルワールス力が強いため、凝集し易い傾向がある。
【0006】
本発明の実施形態が解決しようとする課題は、分散安定性に優れ、かつ、鏡面光沢性を有し、色味が抑制された膜を形成できる金属分散液を提供することである。
また、本発明の他の実施形態が解決しようとする課題は、鏡面光沢性を有し、色味が抑制された画像を記録できる画像記録方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するための手段には、以下の態様が含まれる。
<1> 平均厚さに対する平均円相当径の比である平均アスペクト比が20を超え、かつ、平均円相当径が50nm以上1000nm以下である平板状金属粒子Aと、上記平均アスペクト比が1以上15以下であり、かつ、平均円相当径が1nm以上150nm以下である金属粒子Bと、水と、を含み、上記平板状金属粒子Aの平均円相当径A1と上記金属粒子Bの平均円相当径B1とが、下記の式(1)を満たし、金属分散液の全質量に対する、上記平板状金属粒子Aの含有率a及び上記金属粒子Bの含有率bが、下記の式(2)を満たす金属分散液。
A1>B1 ・・・式(1)
0.0001≦b/(a+b)≦0.3 ・・・式(2)
【0008】
<2> 上記金属粒子Bの上記平均アスペクト比が、1以上8未満である<1>に記載の金属分散液。
<3> 上記平板状金属粒子Aが、銀、金、及び白金からなる群より選ばれる少なくとも1種の金属元素を含む<1>又は<2>に記載の金属分散液。
<4> 上記平板状金属粒子Aが、銀を含む<1>~<3>のいずれか1つに記載の金属分散液。
<5> 金属分散液の全質量に対する、上記平板状金属粒子Aの含有率a及び上記金属粒子Bの含有率bが、下記の式(2-1)を満たす<1>~<4>のいずれか1つに記載の金属分散液。
0.0001≦b/(a+b)≦0.2 ・・・式(2-1)
【0009】
<6> 金属分散液の全質量に対する、上記平板状金属粒子Aの含有率a及び上記金属粒子Bの含有率bが、下記の式(2-2)を満たす<1>~<5>のいずれか1つに記載の金属分散液。
0.0001≦b/(a+b)≦0.15 ・・・式(2-2)
【0010】
<7> 上記平板状金属粒子Aの平均円相当径が、50nm以上500nm以下である<1>~<6>のいずれか1つに記載の金属分散液。
<8> 上記金属粒子Bの平均円相当径が、1nm以上120nm以下である<1>~<7>のいずれか1つに記載の金属分散液。
<9> 更に、分散剤を含む<1>~<8>のいずれか1つに記載の金属分散液。
<10> 上記分散剤が、ゼラチンである<9>に記載の金属分散液。
<11> インクとして用いられる<1>~<10>のいずれか1つに記載の金属分散液。
<12> インクジェット記録に用いられる<11>に記載の金属分散液。
<13> <1>~<12>のいずれか1つに記載の金属分散液を、インクジェット法によって基材上に付与する工程を含む画像記録方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明の実施形態によれば、分散安定性に優れ、かつ、鏡面光沢性を有し、色味が抑制された膜を形成できる金属分散液が提供される。
また、本発明の他の実施形態によれば、鏡面光沢性を有し、色味が抑制された画像を記録できる画像記録方法が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を適用した金属分散液及び画像記録方法の実施形態の一例について説明する。但し、本発明は、以下の実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の目的の範囲内において、適宜、変更を加えて実施することができる。
【0013】
本開示において「~」を用いて示された数値範囲は、「~」の前後に記載される数値をそれぞれ最小値及び最大値として含む範囲を意味する。
本開示に段階的に記載されている数値範囲において、ある数値範囲で記載された上限値又は下限値は、他の段階的な記載の数値範囲の上限値又は下限値に置き換えてもよい。また、本開示に記載されている数値範囲において、ある数値範囲で記載された上限値又は下限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。
本開示において、2以上の好ましい態様の組み合わせは、より好ましい態様である。
本開示において、各成分の量は、各成分に該当する物質が複数種存在する場合には、特に断らない限り、複数種の物質の合計量を意味する。
【0014】
本開示において、「工程」との語は、独立した工程だけでなく、他の工程と明確に区別できない場合であっても工程の所期の目的が達成されれば、本用語に含まれる。
本開示において、「光」は、γ線、β線、電子線、紫外線、可視光線、赤外線等の活性エネルギー線を包含する概念である。
【0015】
本開示では、「平板状金属粒子A及び金属粒子B」を「金属粒子」と総称する場合がある。
本開示でいう金属粒子(即ち、平板状金属粒子A及び金属粒子B)の「平均アスペクト比」とは、金属粒子(即ち、平板状金属粒子A及び金属粒子B)における、平均厚さに対する平均円相当径の比〔平均円相当径/平均厚さ〕を指す。
平均厚さ、平均円相当径、及び平均アスペクト比を求める方法については後述する。
【0016】
本開示でいう膜(例えば、画像)の「鏡面光沢性」とは、膜(例えば、画像)に対向する物体が写り込む程の高い光沢性を示し、単なる金属光沢とは区別される(例えば、後述の実施例における「1.画像の鏡面光沢性」の「(2)官能評価」の評価基準を参照)。
本開示において、膜(例えば、画像)の「鏡面光沢性」は、20°グロス値及び官能評価(目視による観察)によって評価される。
20°グロス値は、数値が高いほど、画像の鏡面光沢性に優れることを意味する。
【0017】
本開示において、膜(例えば、画像)の「色味」は、メトリック彩度値によって評価される。メトリック彩度値が低いほど、膜(例えば、画像)の色味が抑制されていることを意味する。また、「色味が抑制されている」状態とは、金属粒子による可視領域中の特定の波長の光の吸収が抑制され、ニュートラルな色味であることを意味する。
【0018】
[金属分散液]
本開示の金属分散液は、平均厚さに対する平均円相当径の比である平均アスペクト比が20を超え、かつ、平均円相当径が50nm以上1000nm以下である平板状金属粒子Aと、上記平均アスペクト比が1以上15以下であり、かつ、平均円相当径が1nm以上150nm以下である金属粒子Bと、水と、を含み、上記平板状金属粒子Aの平均円相当径A1と上記金属粒子Bの平均円相当径B1とが、下記の式(1)を満たし、金属分散液の全質量に対する、上記平板状金属粒子Aの含有率a及び上記金属粒子Bの含有率bが、下記の式(2)を満たす金属分散液である。
A1>B1 ・・・式(1)
0.0001≦b/(a+b)≦0.3 ・・・式(2)
【0019】
本開示の金属分散液は、分散安定性に優れる。また、本開示の金属分散液によれば、鏡面光沢性を有し、かつ、色味が抑制された膜を形成できる。
本開示の金属分散液がこのような効果を奏し得る理由については明らかではないが、本発明者らは、以下のように推測している。
【0020】
本開示の金属分散液は、金属粒子として、平均アスペクト比が20を超え、かつ、平均円相当径が50nm以上1000nm以下である平板状金属粒子Aを含むことにより、鏡面光沢性を有し、かつ、色味が抑制された膜を形成できる。
【0021】
本開示の金属分散液は、金属粒子として平板状金属粒子を含み、かつ、この平板状金属粒子の平均アスペクト比が20を超えることにより、形成される膜では、平板状金属粒子の配向性が向上し、平板状金属粒子の側面(即ち、2つの主平面以外の面)における光の散乱が抑制されるため、鏡面光沢性が得られると推測される。
例えば、金属粒子の形状が、球、立方体等の平板以外の形状である場合には、金属光沢性を有する膜が得られるとしても、金属粒子の表面における光の散乱の影響により、膜の鏡面光沢性は損なわれると考えられる。また、金属粒子が平板状金属粒子である場合であっても、平板状金属粒子のアスペクト比が低い場合には、膜を形成した場合に、膜中における平板状金属粒子の配向性が低くなるため、平板状金属粒子の側面(2つの主平面以外の面)における光の散乱の影響により、膜の鏡面光沢性が損なわれると考えられる。
また、本開示の金属分散液は、金属粒子として平板状金属粒子を含み、かつ、この平板状金属粒子の平均円相当径が50nm以上であることにより、基材上に金属分散液を付与した際に、基材上に並ぶ金属粒子の粒子間の界面数が少なくなるため、鏡面光沢性を有する膜を形成できると推測される。
【0022】
ところで、可視領域の波長以下のサイズの粒径を有する金属粒子を含む金属分散液を用いて膜を形成した場合、形成された膜に色味が生じることがある。その理由としては、以下のことが考えられる。可視領域の波長以下のサイズの粒径を有する金属粒子では、プラズモン共鳴が生じる。そのため、金属粒子を含む金属分散液では、上記プラズモン共鳴に起因し、金属粒子が可視領域中の特定の波長の光を吸収することで、形成される膜に色味が生じ得る。
これに対し、本開示の金属分散液は、金属粒子として、平均アスペクト比が20を超える平板状金属粒子Aを含むことにより、色味が抑制された膜を形成できる。
平均アスペクト比が20を超える平板状金属粒子は、プラズモン共鳴による金属粒子の吸収波長を長波側、即ち、赤外域に有する。すなわち、本開示の金属分散液は、プラズモン共鳴による吸収波長を赤外域に有し、可視光域の吸収率が低い金属粒子を含むため、色味が抑制された膜を形成できると推測される。
【0023】
既述のとおり、平均アスペクト比が20を超え、かつ、平均円相当径が50nm以上1000nm以下である平板状金属粒子Aによれば、鏡面光沢性を有し、色味が抑制された膜を形成できる金属分散液を実現し得る。しかし、その一方で、平板状金属粒子Aのようにアスペクト比の大きな金属粒子を含む金属分散液では、分散安定性が低下し得ることが判明した。一般に、金属粒子のアスペクト比が大きくなると、金属粒子の円相当径も大きくなる。円相当径が大きい金属粒子は、表面積が大きい。金属粒子は、表面積が大きいほどファンデルワールス力が強くなるため、凝集し易い傾向がある。
これに対し、本開示の金属分散液は、平均アスペクト比が20を超え、かつ、平均円相当径が50nm以上1000nm以下である平板状金属粒子Aに加え、平均アスペクト比が1以上15以下であり、かつ、平均円相当径が1nm以上150nm以下である金属粒子Bを、上記の式(1)及び式(2)を満たすように含むことにより、鏡面光沢性を有し、かつ、色味が抑制された膜を形成できるだけでなく、分散安定性にも優れる。
本開示の金属分散液では、平板状金属粒子Aと、平板状金属粒子Aよりも平均円相当径が小さい特定量(即ち、式(2)を満たす量)の金属粒子Bと、を含むことにより、金属粒子Bによって、平板状金属粒子Aの凝集が抑制されるため、分散安定性に優れると推測される。
また、本開示の金属分散液では、平板状金属粒子Aの含有率a及び金属粒子Bの含有率bが式(2)を満たすことにより、平板状金属粒子Aによる効果、即ち、鏡面光沢性を有し、かつ、色味が抑制された膜を形成できる効果が、金属粒子Bによって損なわれ難い。
さらに、本開示の金属分散液では、平板状金属粒子Aに加え、平板状金属粒子Aよりも平均円相当径が小さい金属粒子Bを含むため、基材上に金属分散液を付与した際に生じ得る平板状金属粒子Aの粒子間の隙間に、金属粒子Bが入り込み、隙間が埋まる。その結果、膜の光沢性が増し、鏡面光沢性を有する膜を形成できると推測される。
【0024】
本開示の金属分散液に対し、特開2008-1844号公報に記載の金属微粒子含有組成物、及び、特開2014-70246号公報に記載の金属平板粒子分散液は、いずれも遮光性、遮熱性等を有する膜を形成するための金属分散液であって、鏡面光沢性を有し、かつ、色味が抑制された膜を形成することを目的としていない。また、特開2008-1844号公報に記載の金属微粒子含有組成物は、平均アスペクト比が20を超える平板状金属粒子を含むことを想定していない(例えば、段落[0041]参照)。すなわち、特開2008-1844号公報では、平均アスペクト比が20を超える平板状金属粒子を含むことによる金属分散液の分散安定性の低下という問題は生じ得ない。さらに、特開2008-1844号公報の記載からは、アスペクト比が大きい平板状金属粒子を含む金属分散液では、平板状金属粒子が凝集し易くなり、分散安定性が低下する場合があることまでは、想定し得ないと考えられる。特開2014-70246号公報についても、平均アスペクト比が20を超える平板状金属粒子を含むことによる金属分散液の分散安定性の低下の問題には、着目しておらず、ましてや、その分散安定性の低下を、金属分散液中にアスペクト比等が小さい金属粒子を特定量存在させることで改善させることについては、一切想定していないと考えられる。
【0025】
上記の推測は、本発明の効果を限定的に解釈するものではなく、一例として説明するものである。
【0026】
以下、本開示の金属分散物における各成分について詳細に説明する。
【0027】
〔平板状金属粒子A〕
本開示の金属分散液は、平均厚さに対する平均円相当径の比である平均アスペクト比が20を超え、かつ、平均円相当径が50nm以上1000nm以下である平板状金属粒子A(以下、単に「平板状金属粒子A」ともいう。)を含む。
本開示において、「平板状」とは、2つの主平面を有する形状を意味する。
【0028】
平板状金属粒子Aの形状としては、平板状、即ち、2つの主平面を有する形状であれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択できる。
平板状金属粒子Aの形状としては、三角形状、四角形状、六角形状、八角形状、円形状等が挙げられる。
平板状金属粒子Aの形状としては、可視光域の吸収率が低いという観点から、三角形状以上の多角形状及び円形状(以下、「三角形状乃至円形状」ともいう。)が好ましい。
【0029】
円形状としては、透過型電子顕微鏡(Transmission Electron Microscope;TEM)を用いて、平板状金属粒子Aを主平面の法線方向から観察した際に、角が無く、丸い形状であれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択できる。
三角形状以上の多角形状としては、透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて、平板状金属粒子Aを主平面の法線方向から観察した際に、三角形状以上の多角形状であれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択できる。
三角形状以上の多角形状の角は、鋭角であってもよいし、鈍角であってもよいが、可視光域の吸収を軽減し得る点で、鈍角であることが好ましい。
【0030】
平板状金属粒子Aのうち、三角形状乃至円形状の平板状金属粒子Aは、全平板状金属粒子Aの個数に対して、60個数%以上であることが好ましく、65個数%以上であることがより好ましく、70個数%以上であることが更に好ましい。
三角形状乃至円形状の平板状金属粒子Aの割合が60個数%以上であると、可視光域の吸収率がより低くなる。
「個数%」とは、500個の平板状金属粒子A中における三角形状乃至円形状の平板状金属粒子Aの数の割合(百分率)を意味する。個数%は、TEMを用いて、主平面の法線方向から平板状金属粒子Aを500個観察することによって求める。
【0031】
平板状金属粒子Aの平均円相当径は、50nm以上1000nm以下である。
平板状金属粒子Aの平均円相当径が50nm以上であると、基材上に金属分散液を付与した際に、基材上に並ぶ金属粒子の粒子間の界面数が少なくなるため、鏡面光沢性を有する膜を形成し得る。
平板状金属粒子Aの平均円相当径が1000nm以下であると、金属分散液中における平板状金属粒子Aの分散性が良好となるため、分散安定性に優れる金属分散液を実現し得る。また、金属分散液をインクジェット記録用インクとして用いた場合には、平板状金属粒子Aの平均円相当径が1000nm以下であると、金属分散液によるインクジェットヘッドのノズルの詰まりが抑制されるため、吐出性に優れる金属分散液を実現し得る。
また、平板状金属粒子Aの平均円相当径は、50nm以上500nm以下であることが好ましく、50nm以上400nm以下であることがより好ましく、50nm以上300nm以下であることが更に好ましい。
【0032】
本開示において、「平板状金属粒子Aの平均円相当径」は、500個の平板状金属粒子Aの円相当径の数平均値を意味する。
個々の平板状金属粒子Aの円相当径は、透過型電子顕微鏡像(TEM像)に基づき求める。詳細には、TEM像における平板状金属粒子Aの面積(即ち、投影面積)と同一面積の円の直径を、円相当径とする。
平板状金属粒子Aの平均円相当径の測定方法の例は、後述の実施例に示すとおりである。
【0033】
平板状金属粒子Aの粒度分布における変動係数は、35%以下であることが好ましく、30%以下であることがより好ましく、20%以下であることが更に好ましい。
「平板状金属粒子Aの粒度分布における変動係数」とは、500個の平板状金属粒子Aの円相当径(粒度分布)の標準偏差を、500個の平板状金属粒子Aの円相当径の数平均値(平均円相当径)で割って100を乗じた値(%)を意味する。
【0034】
平板状金属粒子Aの平均厚さは、例えば、金属分散液中における平板状金属粒子Aの分散性、及び、金属分散液をインクジェット記録用インクとして用いた場合における吐出性の観点から、50nm以下であることが好ましく、2nm以上25nm以下であることがより好ましく、3nm以上15nm以下であることが更に好ましい。
本開示において、「平板状金属粒子Aの平均厚さ」は、500個の平板状金属粒子Aの厚さの数平均値を意味する。
平板状金属粒子Aの厚さは、FIB-TEM(Focused Ion Beam - Transmission Electron Microscopy)法により測定する。
平板状金属粒子Aの平均厚さの測定方法の例は、後述の実施例に示すとおりである。
【0035】
平板状金属粒子Aの平均アスペクト比(即ち、平均円相当径/平均厚さ)は、20を超える。
平板状金属粒子Aの平均アスペクト比が20を超えることにより、形成される膜では、平板状金属粒子の配向性が向上し、平板状金属粒子の側面(即ち、2つの主平面以外の面)における光の散乱が抑制されるため、鏡面光沢性が得られると推測される。
平板状金属粒子Aの平均アスペクト比は、例えば、膜の色味をより抑制し、かつ、膜の鏡面光沢性をより向上させる観点から、22以上であることが好ましく、23.5以上であることがより好ましく、25以上であることが更に好ましい。
平板状金属粒子Aの平均アスペクト比の上限としては、特に制限はないが、例えば、平板状金属粒子Aの分散性の観点から、100以下であることが好ましく、60以下であることがより好ましく、40以下であることが更に好ましい。
【0036】
平板状金属粒子Aに含まれる金属元素としては、特に制限はなく、例えば、銀、金、白金、アルミニウム等の金属元素が挙げられる。
平板状金属粒子Aは、例えば、膜(例えば、画像)の鏡面光沢性の観点から、銀、金、及び白金からなる群より選ばれる少なくとも1種の金属元素を含むことが好ましく、銀及び金から選ばれる少なくとも1種の金属元素を含むことがより好ましく、銀を含むことが更に好ましい。
また、平板状金属粒子Aは、例えば、膜(例えば、画像)の色味抑制の観点から、銀及び白金から選ばれる少なくとも1種の金属元素を含むことが好ましく、銀を含むことがより好ましい。
【0037】
例えば、膜(例えば、画像)の鏡面光沢性をより向上させる観点からは、平板状金属粒子Aは、銀を、平板状金属粒子Aの全量に対して80質量%以上含むことが好ましく、90質量%以上含むことがより好ましい。上限は特にないが、通常100質量%以下である。
【0038】
本開示の金属分散液は、平板状金属粒子Aを1種のみ含んでいてもよく、2種以上含んでいてもよい。
【0039】
本開示の金属分散液中における平板状金属粒子Aの含有率は、特に制限されない。
本開示の金属分散液中における平板状金属粒子Aの含有率は、例えば、金属分散液の全量に対して、0.1質量%以上50質量%以下であることが好ましく、1.0質量%以上30質量%以下であることがより好ましく、1.0質量%以上20質量%以下であることが更に好ましい。
本開示の金属分散液中における平板状金属粒子Aの含有率が、金属分散液の全量に対して0.1質量%以上であると、膜の鏡面光沢性がより向上し得る。
本開示の金属分散液中における平板状金属粒子Aの含有率が、金属分散液の全量に対して50質量%以下であると、例えば、金属分散液をインクジェット記録用インクとして用いた場合に、吐出性がより向上し得る。
【0040】
~平板状金属粒子Aの合成方法~
平板状金属粒子Aの合成方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
例えば、三角形状以上の多角形状の平板状金属粒子Aを合成する方法としては、例えば、化学還元法、光化学還元法、電気化学還元法等の液相法が挙げられる。
これらの中でも、三角形状以上の多角形状の平板状金属粒子Aを合成する方法としては、形状及びサイズの制御性の観点から、化学還元法又は光化学還元法が好ましい。
三角形状以上の多角形状の平板状金属粒子Aを合成する場合、合成後に、硝酸、亜硫酸ナトリウム等の銀を溶解する溶解種によるエッチング処理、加熱によるエージング処理等を行うことにより、三角形状以上の多角形状の平板状金属粒子Aの角を鈍らせてもよい。
【0041】
平板状金属粒子Aの合成方法としては、既述の合成方法の他、予め、フィルム、ガラス等の透明基材の表面に種晶を固定した後、平板状に金属(例えば、銀)粒子を結晶成長させてもよい。
平板状金属粒子Aの合成方法としては、例えば、特開2014-70246号公報の段落[0041]~[0053]の記載を参照できる。
【0042】
平板状金属粒子Aには、所望の特性を付与するために、更なる処理を施してもよい。
更なる処理としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択できる。
更なる処理の例としては、特開2014-184688号公報の段落[0068]~[0070]に記載の高屈折率シェル層の形成、特開2014-184688号公報の段落[0072]~[0073]に記載の各種添加剤の添加等が挙げられる。
【0043】
〔金属粒子B〕
本開示の金属分散液は、平均アスペクト比が1以上15以下であり、かつ、平均円相当径が1nm以上150nm以下である金属粒子B(以下、単に「金属粒子B」ともいう。)を含む。
【0044】
金属粒子Bの形状としては、特に制限はない。
金属粒子Bの形状としては、球状、棒状、平板状等の形状が挙げられる。
本開示における「球状」には、真球状の他、回転楕円体、卵形等の形状も含まれる。金属粒子Bにおける「平板状」は、平板状金属粒子Aにおける「平板状」と同義であり、好ましい態様も同様であるため、ここでは説明を省略する。
これらの中でも、金属粒子Bの形状としては、球状が好ましい。
金属粒子Bの形状が球状であると、金属分散液の分散安定性がより向上し得る。また、膜の鏡面光沢性がより向上し得る。
【0045】
金属粒子Bのうち、球状の金属粒子Bは、全金属粒子Bの個数に対して、40個数%以上であることが好ましく、50個数%以上であることがより好ましく、60個数%以上であることが更に好ましい。
球状の金属粒子Bの割合が40個数%以上であると、金属分散液の分散安定性がより向上し得る。また、膜の鏡面光沢性がより向上し得る。
「個数%」とは、500個の金属粒子B中における球状の金属粒子Bの数の割合(百分率)を意味する。個数%は、TEMを用いて、主平面の法線方向から金属粒子Bを500個観察することによって求める。
【0046】
金属粒子Bの平均円相当径は、1nm以上150nm以下である。
金属粒子Bの平均円相当径が1nm以上であると、形状を安定的に制御でき、製造適性に優れる。
金属粒子Bの平均円相当径が150nm以下であると、平板状金属粒子Aの凝集を抑制できるため、分散安定性に優れる金属分散液を実現し得る。また、金属粒子Bの平均円相当径が150nm以下であると、基材上に金属分散液を付与した際に生じ得る平板状金属粒子Aの粒子間の隙間に、金属粒子Bが入り込み、隙間を埋めることができる。金属粒子Bによって、平板状金属粒子Aの粒子間の隙間が埋まると、膜の光沢性が増すため、鏡面光沢性を有する膜を実現し得る。
金属粒子Bの平均円相当径は、1nm以上120nm以下であることが好ましく、1nm以上100nm以下であることがより好ましい。
【0047】
本開示において、「金属粒子Bの平均円相当径」は、500個の金属粒子Bの円相当径の数平均値を意味する。
個々の金属粒子Bの円相当径は、透過型電子顕微鏡像(TEM像)に基づき求める。詳細には、TEM像における金属粒子Bの面積(即ち、投影面積)と同一面積の円の直径を、円相当径とする。
金属粒子Bの平均円相当径の測定方法の例は、後述の実施例に示すとおりである。
【0048】
金属粒子Bの粒度分布における変動係数は、50%以下であることが好ましく、40%以下であることがより好ましく、30%以下であることが更に好ましい。
「金属粒子Bの粒度分布における変動係数」とは、500個の金属粒子Bの円相当径(粒度分布)の標準偏差を、500個の金属粒子Bの円相当径の数平均値(平均円相当径)で割って100を乗じた値(%)を意味する。
【0049】
金属粒子Bの平均厚さは、例えば、金属粒子Bの体積が小さく抑えられることで、基材上に金属分散液を付与した際に生じ得る平板状金属粒子Aの粒子間の隙間に、金属粒子Bが入り込みやすくなるとの観点から、50nm以下であることが好ましく、1nm以上50nm以下であることがより好ましく、1nm以上30nm以下であることが更に好ましく、1nm以上15nm以下であることが特に好ましい。
本開示において、「金属粒子Bの平均厚さ」は、500個の金属粒子Bの厚さの数平均値を意味する。
金属粒子Bの厚さは、FIB-TEM(Focused Ion Beam - Transmission Electron Microscopy)法により測定する。
金属粒子Bの平均厚さの測定方法の例は、後述の実施例に示すとおりである。
【0050】
金属粒子Bの平均アスペクト比(即ち、平均円相当径/平均厚さ)は、1以上15以下である。
金属粒子Bの平均アスペクト比が1以上15以下であると、平板状金属粒子Aの凝集を抑制できるため、分散安定性に優れる金属分散液を実現し得る。
また、金属粒子Bの平均アスペクト比が15以下であると、基材上に金属分散液を付与した際に生じ得る平板状金属粒子Aの粒子間の隙間に、金属粒子Bが入り込み、隙間を埋めることができる。金属粒子Bによって、平板状金属粒子Aの粒子間の隙間が埋まると、膜の光沢性が増すため、鏡面光沢性を有する膜を実現し得る。
金属粒子Bの平均アスペクト比は、1以上8未満であることが好ましく、1以上6以下であることがより好ましい。
【0051】
金属粒子Bに含まれる金属元素としては、特に制限はなく、例えば、銀、金、白金、アルミニウム等の金属元素が挙げられる。
金属粒子Bは、膜(例えば、画像)の鏡面光沢性の観点から、銀、金、及び白金からなる群より選ばれる少なくとも1種の金属元素を含むことが好ましく、銀及び金から選ばれる少なくとも1種の金属元素を含むことがより好ましく、銀を含むことが更に好ましい。
また、金属粒子Bは、膜(例えば、画像)の色味抑制の観点から、銀及び白金から選ばれる少なくとも1種の金属元素を含むことが好ましく、銀を含むことがより好ましい。
【0052】
例えば、膜(例えば、画像)の鏡面光沢性をより向上させる観点からは、金属粒子Bは、銀を、金属粒子Bの全量に対して80質量%以上含むことが好ましい。
【0053】
本開示の金属分散液は、金属粒子Bを1種のみ含んでいてもよく、2種以上含んでいてもよい。
【0054】
~金属粒子Bの合成方法~
金属粒子Bの合成方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
例えば、金属粒子Bの形状が球状である場合、金属粒子Bを合成する方法としては、例えば、化学還元法、光化学還元法、電気化学還元法等の液相法が挙げられる。
これらの中でも、球状の金属粒子Bを合成する方法としては、サイズの制御性の観点から、化学還元法又は光化学還元法が好ましい。
例えば、金属粒子Bの形状が棒状である場合、金属粒子Bを合成する方法としては、例えば、化学還元法、光化学還元法、電気化学還元法等の液相法が挙げられる。
これらの中でも、棒状の金属粒子Bを合成する方法としては、形状及びサイズの制御性の観点から、化学還元法又は光化学還元法が好ましい。
金属粒子Bの形状が平板状である場合、金属粒子Bを合成する方法としては、既述の平板状金属粒子Aと同様の方法を適用できる。
【0055】
金属粒子Bの合成方法としては、既述の合成方法の他、予め、フィルム、ガラス等の透明基材の表面に種晶を固定した後、所望の形状(球状、棒状、平板状等)に金属(例えば、銀)粒子を結晶成長させてもよい。
【0056】
金属粒子Bには、所望の特性を付与するために、更なる処理を施してもよい。
金属粒子Bに施してもよい更なる処理は、平板状金属粒子Aに施してもよい更なる処理と同様であるため、ここでは説明を省略する。
【0057】
-平板状金属粒子Aの平均アスペクト比と金属粒子Bの平均アスペクト比との差-
本開示の金属分散液では、平板状金属粒子Aの平均アスペクト比と金属粒子Bの平均アスペクト比との差が、6以上であることが好ましく、10以上であることがより好ましく、15以上であることが更に好ましく、20以上であることが特に好ましい。
平板状金属粒子Aの平均アスペクト比と金属粒子Bの平均アスペクト比との差が、6以上であると、金属分散液の分散安定性がより向上し得る。また、金属分散液をインクジェット記録用インクとして用いた場合に、吐出性がより向上し得る。
平板状金属粒子Aの平均アスペクト比と金属粒子Bの平均アスペクト比との差の上限は、特に制限はないが、例えば、50以下であることが好ましい。
【0058】
-平板状金属粒子Aの平均円相当径A1と金属粒子Bの平均円相当径B1との関係-
平板状金属粒子Aの平均円相当径A1と金属粒子Bの平均円相当径B1とは、下記の式(1)を満たす。
A1>B1 ・・・式(1)
【0059】
本開示の金属分散液では、既述の要件を満たす平板状金属粒子Aの平均円相当径A1と、既述の要件を満たす金属粒子Bの平均円相当径B1と、が式(1)を満たすと、金属粒子Bによって、平板状金属粒子Aの凝集を抑制できるため、分散安定性に優れる金属分散液を実現し得る。
また、本開示の金属分散液では、既述の要件を満たす平板状金属粒子Aの平均円相当径A1と、既述の要件を満たす金属粒子Bの平均円相当径B1と、が式(1)を満たすと、基材上に金属分散液を付与した際に生じ得る平板状金属粒子Aの粒子間の隙間に、金属粒子Bが入り込み、隙間を埋めることができる。金属粒子Bによって、平板状金属粒子Aの粒子間の隙間が埋まると、膜の光沢性が増すため、鏡面光沢性を有する膜を実現し得る。
【0060】
-平板状金属粒子Aの含有率aと金属粒子Bの含有率bとの関係-
本開示の金属分散液では、金属分散液の全質量に対する、平板状金属粒子Aの含有率a及び金属粒子Bの含有率bが、下記の式(2)を満たす。
0.0001≦b/(a+b)≦0.3 ・・・式(2)
【0061】
本開示の金属分散液では、金属分散液の全質量に対する、既述の要件を満たす平板状金属粒子Aの含有率aと、既述の要件を満たす金属粒子Bの含有率bと、が式(2)を満たすと、平板状金属粒子Aによる効果、即ち、鏡面光沢性を有し、かつ、色味が抑制された膜を形成できる効果を保持しつつ、金属分散液の分散安定性を向上し得る。また、金属分散液をインクジェット記録用インクとして用いた場合に、吐出性がより向上し得る。
金属分散液の全質量に対する、平板状金属粒子Aの含有率a及び金属粒子Bの含有率bは、色味がより抑制された膜を形成する観点から、下記の式(2-1)を満たすことが好ましく、鏡面光沢性により優れ、かつ、色味がより抑制された膜を形成する観点から、下記の式(2-2)を満たすことがより好ましい。
0.0001≦b/(a+b)≦0.2 ・・・式(2-1)
0.0001≦b/(a+b)≦0.15 ・・・式(2-2)
【0062】
本開示の金属分散液中における、金属分散液の全質量に対する、平板状金属粒子Aの含有率a及び金属粒子Bの含有率bは、以下の方法により測定する。
ICP(Inductively Coupled Plasma)発光分光分析により、金属分散液中に含まれる金属の総含有量を求める。次に、TEM像を元にそれぞれ500個の金属粒子を観察して得られた平均厚み及び平均円相当径に基づき、平板状金属粒子A及び金属粒子Bの平均体積をそれぞれ計算する。加えて同様のTEM像から任意に抽出した500個の金属粒子に関して、平板状金属粒子Aと金属粒子Bとの存在比率を求める。平板状金属粒子Aの密度と金属粒子Bの密度とが同じであると仮定し、平板状金属粒子A及び金属粒子Bの積算体積比(平均体積×存在比率)より、金属分散液中における平板状金属粒子Aと金属粒子Bとの含有比率を計算する。上記にて求めた、金属分散液中に含まれる金属の総含有量、及び、金属分散液中における平板状金属粒子Aと金属粒子Bとの含有比率から、平板状金属粒子Aの含有率a(単位:質量%)及び金属粒子Bの含有率b(単位:質量%)を算出する。
【0063】
〔水〕
本開示の金属分散液は、水を含む。
本開示の金属分散液は、水を含むことで、取り扱い性が良好となる。また、水の代わりに有機溶剤を含む場合に比べて、環境への負荷が軽減される。
【0064】
本開示の金属分散液中における水の含有率としては、特に制限はない。
本開示の金属分散液中における水の含有率は、例えば、金属分散液の取り扱い性、及び、環境負荷の軽減の観点から、金属分散液の全量に対して、10質量%以上であることが好ましく、20質量%以上であることがより好ましく、30質量%以上であることが更に好ましい。
また、本開示の金属分散液中における水の含有率は、例えば、金属分散液をインクジェット記録用インクとして用いた場合の吐出性の観点から、金属分散液の全量に対して、90質量%以下であることが好ましく、80質量%以下であることがより好ましく、75質量%以下であることが更に好ましい。
【0065】
〔分散剤〕
本開示の金属分散液は、金属粒子(即ち、平板状金属粒子A及び金属粒子B)の分散性の観点から、分散剤を含むことが好ましい。
分散剤としては、特に制限はないが、水溶性分散剤であることが好ましい。
なお、水溶性分散剤における「水溶性」とは、25℃の水100gに対して5g以上(好ましくは10g以上)溶解する性質を意味する。
分散剤の例としては、ポリビニルアセタール、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリビニルブチラール、ポリアクリレート、ポリメチルメタクリレート、ポリカーボネート、ポリ塩化ビニル、(飽和)ポリエステル、ポリウレタン、ポリエチレンイミン等の樹脂、セルロース等の多糖類、ゼラチン、ポリエチレングリコール、ポリビニルピロリドン(PVP)などが挙げられる。
【0066】
これらの中でも、分散剤としては、ゼラチンが特に好ましい。
本開示の金属分散液は、ゼラチンを含むことにより、金属粒子(即ち、平板状金属粒子A及び金属粒子B)の分散性が顕著に向上し得る。金属粒子(特に、平板状金属粒子A)の分散性が向上すると、形成される膜の鏡面光沢性の向上が期待できる。また、金属粒子(即ち、平板状金属粒子A及び金属粒子B)の分散性が向上すると、金属分散液をインクジェット法による画像記録に用いた場合に、インクジェットヘッドのノズルからの金属分散液の吐出性が向上し得る。
特に、平板状金属粒子Aが銀を含む場合、分散剤としてゼラチンを選択すると、金属分散液中において、平板状金属粒子Aをより高い濃度で良好に分散できるため、膜の鏡面光沢性がより向上し得る。
【0067】
ゼラチンとしては、コラーゲンからの誘導過程で石灰等のアルカリによる処理を伴うアルカリ処理ゼラチン;塩酸等の酸による処理を伴う酸処理ゼラチン;加水分解酵素等の酵素による処理を伴う酵素処理ゼラチン;酸素処理ゼラチン;ゼラチン分子中に含まれる官能基としてのアミノ基、イミノ基、ヒドロキシ基又はカルボキシ基を、これらの官能基と反応し得る基を一つ有する試薬によって変性した変性ゼラチン(フタル化ゼラチン、コハク化ゼラチン、トリメトリト化ゼラチン等);例えば、特開昭62-215272号公報の第222頁左下欄6行目から第225頁左上欄末行目に記載される当業界内で一般に用いられているゼラチンなどが挙げられる。
【0068】
ゼラチンの重量平均分子量は、金属粒子(特に、平板状金属粒子A)の分散性の観点から、5,000~1,000,000であることが好ましく、10,000~500,000であることがより好ましく、20,000~200,000であることが更に好ましい。
【0069】
本開示において、重量平均分子量は、ゲル透過クロマトグラフ(GPC)によって測定された値を意味する。
GPCによる重量平均分子量の測定は、測定装置として、HLC-8020GPC(東ソー(株))を用い、カラムとして、TSKgel(登録商標)Super Multipore HZ-H(東ソー(株)、4.6mmID×15cm)を3本用い、溶離液としてTHF(テトラヒドロフラン)を用いて行う。また、GPCによる重量平均分子量の測定は、試料濃度を0.45質量%、流速を0.35mL/min、サンプル注入量を10μL、及び測定温度を40℃とし、示差屈折率(RI)検出器を用いて行う。検量線は、東ソー(株)の「標準試料TSK standard,polystyrene」:「F-40」、「F-20」、「F-4」、「F-1」、「A-5000」、「A-2500」、「A-1000」、及び「n-プロピルベンゼン」の8サンプルから作製する。
【0070】
本開示の金属分散液が分散剤を含む場合、分散剤を1種のみ含んでいてもよく、2種以上含んでいてもよい。
【0071】
本開示の金属分散液が分散剤を含む場合、金属分散液中における分散剤の含有率は、特に制限されない。
本開示の金属分散液中における分散剤(好ましくは、ゼラチン)の含有率は、例えば、金属分散液の全量に対して、0.005質量%以上であることが好ましく、0.01質量%以上であることがより好ましく、0.02質量%以上であることが更に好ましい。
本開示の金属分散液中における分散剤の含有率が、金属分散液の全量に対して0.005質量%以上であると、金属粒子(即ち、平板状金属粒子A及び金属粒子B)の分散性がより向上し得る。
また、本開示の金属分散液中における分散剤の含有率は、例えば、金属分散液の全量に対して、15質量%以下であることが好ましく、10質量%以下であることがより好ましく、5質量%以下であることが更に好ましい。
金属分散液中における分散剤(特に、ゼラチン)の含有率が高すぎると、形成される膜の鏡面光沢性が損なわれる場合がある。金属分散液中における分散剤の含有率が、インクの全量に対して15質量%以下であると、形成される膜の鏡面光沢性が損なわれ難い。
【0072】
本開示の金属分散液が分散剤を含む場合、分散剤の含有量に対する金属粒子の含有量(即ち、平板状金属粒子A及び金属粒子Bの合計含有量)の比(以下、「金属粒子の含有量/分散剤の含有量」ともいう。)は、質量基準で、0.1以上10000以下であることが好ましく、0.5以上500以下であることがより好ましく、1以上100以下であることが更に好ましい。
金属粒子の含有量/分散剤の含有量が、上記の範囲内であると、金属粒子(特に、平板状金属粒子A)の分散性がより向上するため、鏡面光沢性により優れた膜を形成し得る。また、金属粒子の含有量/分散剤の含有量が、上記の範囲内であると、形成される膜の色味がより良好に抑制される。
【0073】
〔有機溶剤〕
本開示の金属分散液は、有機溶剤を含むことができる。
例えば、本開示の金属分散液をインクジェット法による画像記録に用いる場合には、吐出性の観点から、有機溶剤を含むことが好ましい。
有機溶剤としては、特に制限はないが、水溶性有機溶剤であることが好ましい。
水溶性有機溶剤における「水溶性」とは、25℃の水100gに対して5g以上(好ましくは10g以上)溶解する性質をいう。
【0074】
水溶性有機溶剤としては、特に制限はない。
水溶性有機溶剤の例としては、グリセリン、1,2,6-ヘキサントリオール、トリメチロールプロパン、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ペンタエチレングリコール、ジプロピレングリコール、2-ブテン-1,4-ジオール、2-エチル-1,3-ヘキサンジオール、2-メチル-2,4-ペンタンジオール、1,2-オクタンジオール、1,2-ヘキサンジオール、1,2-ペンタンジオール、4-メチル-1,2-ペンタンジオール等の多価アルコール類;エタノール、メタノール、ブタノール、プロパノール、イソプロパノール等の炭素数1~4のアルキルアルコール類;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノ-n-プロピルエーテル、エチレングリコールモノ-iso-プロピルエーテル、ジエチレングリコールモノ-iso-プロピルエーテル、エチレングリコールモノ-n-ブチルエーテル、エチレングリコールモノ-t-ブチルエーテル、ジエチレングリコールモノ-t-ブチルエーテル、1-メチル-1-メトキシブタノール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノ-t-ブチルエーテル、プロピレングリコールモノ-n-プロピルエーテル、プロピレングリコールモノ-iso-プロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノ-n-プロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノ-iso-プロピルエーテルなどのグリコールエーテル類;2-ピロリドン、N-メチル-2-ピロリドン等のピロリドン類などが挙げられる。
【0075】
水溶性有機溶剤としては、上記以外にも、例えば、特開2011-46872号公報の段落[0176]~[0179]に記載されている水溶性有機溶剤、及び、特開2013-18846号公報の段落[0063]~[0074]に記載されている水溶性有機溶剤の中から、適宜選択することもできる。
【0076】
なお、水溶性有機溶剤の中でも、多価アルコール類は、乾燥防止剤又は湿潤剤としても有用である。
乾燥防止剤又は湿潤剤としての多価アルコール類の例としては、特開2011-42150号公報の段落[0117]に記載されている多価アルコール類が挙げられる。
【0077】
水溶性有機溶剤としては、沸点が150℃以上であり、かつ、溶解度パラメータ(以下、「SP値」ともいう。)が24MPa1/2以上である有機溶剤(以下、「特定有機溶剤」ともいう。)が好ましい。
例えば、本開示の金属分散液をインクジェット法による画像記録に用いる場合には、金属分散液中に含まれる水溶性有機溶剤の沸点が150℃以上である(即ち、水溶性有機溶剤の沸点が水の沸点よりも高い)と、溶剤の揮発に起因する金属分散液の吐出性の低下がより抑制されるため好ましい。
水溶性有機溶剤の沸点は、170℃以上であることがより好ましく、180℃以上であることが更に好ましい。
水溶性有機溶剤の沸点の上限としては、特に制限はなく、例えば、金属分散液の粘度の観点から、300℃以下であることが好ましい。
水溶性有機溶剤の沸点は、Titan Technologies社の沸点測定器(DosaTherm300)を用いて測定される値である。
本開示において、沸点は、大気圧下での沸点を意味する。
【0078】
また、水溶性有機溶剤のSP値が24MPa1/2以上であると、基材上に付与された金属分散液中において、平板状金属粒子Aの配向性がより向上し、その結果、形成される膜の鏡面光沢性がより向上するため好ましい。
水溶性有機溶剤のSP値は、25MPa1/2以上であることがより好ましく、26MPa1/2以上であることが更に好ましく、27MPa1/2以上であることが特に好ましい。
水溶性有機溶剤のSP値の上限としては、特に制限はなく、例えば、金属分散液の粘度の観点から、40MPa1/2以下であることが好ましい。
【0079】
水溶性有機溶剤の溶解度パラメータ(SP値)は、沖津法によって求められる値〔単位:MPa1/2〕である。沖津法は、従来周知のSP値の算出方法の一つであり、例えば、日本接着学会誌Vol.29、No.6(1993年)249頁~259頁に詳述されている方法である。
【0080】
以下、特定有機溶剤の具体例を示す。なお、カッコ内の数値は、記載した順に、沸点(単位:℃)及びSP値(単位:MPa1/2)を示す。
エチレングリコール(197℃、29.9MPa1/2)、ジエチレングリコール(244℃、24.8MPa1/2)、プロピレングリコール(188℃、27.6MPa1/2)、1,4-ブタンジオール(230℃、30.7MPa1/2)、1,2-ペンタンジオール(206℃、28.6MPa1/2)、1,5-ペンタンジオール(206℃、29.0MPa1/2)、1,6-ヘキサンジオール(250℃、27.7MPa1/2)、グリセリン(290℃、33.8MPa1/2)、ホルムアミド(210℃、39.3MPa1/2)、ジメチルホルムアミド(153℃、30.6MPa1/2)、トリエタノールアミン(208℃(20hPa)、32.3MPa1/2)、ポリエチレングリコール(250℃、26.1MPa1/2)、1,2-へキサンジオール(223℃、24.1MPa1/2)、及びジプロピレングリコール(230℃、27.1MPa1/2)。
これらの中でも、特定有機溶剤としては、プロピレングリコール、グリセリン、及びエチレングリコールからなる群より選ばれる少なくとも1種が好ましい。これらの特定有機溶剤は、例えば、本開示の金属分散液をインクジェット法による画像記録に用いた場合に、金属分散液の吐出性をより向上し得るため好ましい。
【0081】
本開示の金属分散液が有機溶剤を含む場合、有機溶剤を1種のみ含んでいてもよく、2種以上含んでいてもよい。
【0082】
本開示の金属分散液が有機溶剤を含む場合、金属分散液中における有機溶剤の含有率は、特に制限されない。
本開示の金属分散液中における有機溶剤(好ましくは、特定有機溶剤)の含有率は、例えば、金属分散液の全量に対して、5質量%以上80質量%以下であることが好ましく、5質量%以上70質量%以下であることがより好ましく、5質量%以上50質量%以下であることが更に好ましく、10質量%以上40質量%以下であることが特に好ましい。
【0083】
〔界面活性剤〕
本開示の金属分散液は、界面活性剤を含むことができる。
本開示の金属分散液が界面活性剤を含む場合、界面活性剤としては、フッ素系界面活性剤が好ましい。
本開示の金属分散液がフッ素系界面活性剤を含むと、金属分散液の表面張力が低下するため、基材に付与された金属分散液中では、平板状金属粒子Aの配向性が向上し得る。その結果、鏡面光沢性により優れた膜を形成できる。
フッ素系界面活性剤としては、特に制限はなく、公知のフッ素系界面活性剤の中から、適宜選択できる。
フッ素系界面活性剤の例としては、「界面活性剤便覧」(西一郎、今井怡知一郎、及び笠井正蔵編、産業図書株式会社、1960年発行)に記載されているフッ素系界面活性剤が挙げられる。
【0084】
フッ素系界面活性剤としては、分子中にパーフルオロ基を含み、かつ、屈折率が1.30~1.42(好ましくは1.32~1.40)であるフッ素系界面活性剤が好ましい。
屈折率が1.30~1.42であるフッ素系界面活性剤によれば、形成される膜の鏡面光沢性をより向上させることができる。
上記のフッ素系界面活性剤の屈折率は、カルニュー精密屈折計(KPR-3000、(株)島津製作所)を用いて測定される値である。フッ素系界面活性剤が液体である場合には、フッ素系界面活性剤をセルに収容し、屈折率を測定する。フッ素系界面活性剤が固体である場合には、固体試料をカルニュー精密屈折計(KPR-3000、(株)島津製作所)付属のVブロックプリズムに設置するVブロック法にて、屈折率を測定する。
【0085】
フッ素系界面活性剤が分子中にパーフルオロ基を含むと、フッ素系界面活性剤の屈折率を上記の範囲内に調整しやすく、また、比較的少量で金属分散液の表面張力を調整できる。
【0086】
分子内にパーフルオロ基を含み、かつ、屈折率が1.30~1.42であるフッ素系界面活性剤としては、パーフルオロアルキルカルボン酸塩、パーフルオロアルキルスルホン酸塩、パーフルオロアルキルリン酸エステル等のアニオン型;パーフルオロアルキルベタイン等の両性型;パーフルオロアルキルトリメチルアンモニウム塩等のカチオン型;パーフルオロアルキルアミンオキサイド、パーフルオロアルキルエチレンオキシド付加物、パーフルオロアルキル基及び親水性基を含有するオリゴマー、パーフルオロアルキル基及び親油性基を含有するオリゴマー、パーフルオロアルキル基、親水性基及び親油性基を含有するオリゴマー、パーフルオロアルキル基及び親油性基を含有するウレタン等のノニオン型などが挙げられる。また、特開昭62-170950号公報、特開昭62-226143号公報、及び特開昭60-168144号公報に記載されているフッ素系界面活性剤も好適な例として挙げられる。
【0087】
フッ素系界面活性剤としては、市販品を用いることができる。
フッ素系界面活性剤の市販品の例としては、AGCセイミケミカル(株)のサーフロン(登録商標)シリーズ(S-243、S-242等)、DIC(株)のメガファック(登録商標)シリーズ(F-444、F-410等)、3M社のNOVEC(登録商標)シリーズ(例えば、27002)、イー・アイ・デュポン・ネメラス・アンド・カンパニー社のゾニールシリーズ(例えば、FSE)などが挙げられる。
【0088】
本開示の金属分散液が界面活性剤を含む場合、界面活性剤を1種のみ含んでいてもよく、2種以上含んでいてもよい。
【0089】
本開示の金属分散液が界面活性剤を含む場合、金属分散液中における界面活性剤の含有率は、特に制限されない。
本開示の金属分散液中における界面活性剤(好ましくは、フッ素系界面活性剤)の含有率は、例えば、金属分散液の全量に対して、0.01質量%以上5.0質量%以下であることが好ましく、0.03質量%以上1.0質量%以下であることがより好ましく、0.03質量%以上0.5質量%以下であることが更に好ましい。
本開示の金属分散液中における界面活性剤の含有率が、上記範囲内であると、金属分散液をインクジェット記録用インクとして用いる場合、即ち、インクジェット法による画像記録に用いる場合に、金属分散液の表面張力を、金属分散液の吐出性がより良好となる範囲に調整しやすい。
【0090】
〔その他の成分〕
本開示の金属分散液は、必要に応じて、既述した成分以外の成分(所謂、その他の成分)を含んでいてもよい。
その他の成分としては、防腐剤、消泡剤等が挙げられる。
防腐剤としては、特開2014-184688号公報の段落[0073]~[0090]の記載を参照できる。
消泡剤としては、特開2014-184688号公報の段落[0091]及び[0092]の記載を参照できる。
【0091】
また、その他の成分としては、固体湿潤剤(例えば、尿素)、褪色防止剤、乳化安定剤、浸透促進剤、紫外線吸収剤、防黴剤、pH調整剤、粘度調整剤、防錆剤、キレート剤等も挙げられる。
【0092】
また、その他の成分としては、ポリマー粒子も挙げられる。
ポリマー粒子としては、例えば、特開2010-64480号公報の段落[0090]~[0121]、特開2011-068085号公報の段落[0130]~[0167]、及び特開2011-62998号公報の段落[0180]~[0234]に記載されている自己分散性ポリマー粒子が挙げられる。
【0093】
また、本開示の金属分散液は、着色剤(顔料、染料等)を含んでいてもよい。
着色剤としては、膜(例えば、画像)の耐光性、膜(例えば、画像)の耐候性等の観点から、顔料が好ましい。
顔料としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択できる。
顔料としては、例えば、公知の有機顔料及び無機顔料が挙げられる。
有機顔料及び無機顔料としては、黄色顔料、赤色顔料、マゼンタ顔料、青色顔料、シアン顔料、緑色顔料、橙色顔料、紫色顔料、褐色顔料、黒色顔料、白色顔料等が挙げられる。また、顔料としては、表面処理された顔料(樹脂、顔料誘導体の分散剤等で顔料表面を処理した顔料、粒子表面に親水性基を有する自己分散顔料など)も挙げられる。さらに、顔料としては、市販の顔料分散体を用いてもよい。
着色剤として顔料を用いる場合には、必要に応じて顔料分散剤を用いてもよい。
顔料等の色材及び顔料分散剤については、特開2014-040529号公報の段落[0180]~[0200]を適宜参照できる。
【0094】
但し、色味が抑制された金属調の膜(例えば、画像)を形成(例えば、記録)する場合には、本開示の金属分散液中における着色剤の含有率は、金属分散液の全量に対して、1質量%以下が好ましく、1質量%未満がより好ましく、0.1質量%以下が更に好ましく、0質量%、即ち、本開示の金属分散液が着色剤を含まないことが最も好ましい。
【0095】
また、本開示の金属分散液は、重合性化合物を少なくとも1種含む光硬化型のインクとして用いてもよい。この場合、金属分散液は、更に重合開始剤を含むことが好ましい。
重合性化合物としては、例えば、2011-184628号公報の段落[0128]~[0144]、特開2011-178896号公報の段落[0019]~[0034]、及び特開2015-25076号公報の段落[0065]~[0086]に記載されている重合性化合物(例えば、2官能以上の(メタ)アクリルアミド化合物)が挙げられる。
重合開始剤としては、例えば、特開2011-184628号公報の段落[0186]~[0190]、特開2011-178896号公報の段落[0126]~[0130]、及び特開2015-25076の段落[0041]~[0064]に記載されている公知の重合開始剤が挙げられる。
【0096】
<金属分散液の好ましい物性>
本開示の金属分散液の物性としては、特に制限はないが、例えば、以下の物性を有していることが好ましい。
本開示の金属分散液の25℃(±1℃)におけるpHは、7.5以上であることが好ましく、7.5~12であることがより好ましく、7.5~10であることが更に好ましい。
【0097】
本開示の金属分散液の粘度は、0.5mPa・s~100mPa・sであることが好ましく、1mPa・s~50mPa・sであることがより好ましい。
本開示の金属分散液の粘度は、VISCOMETER TV-22(TOKI SANGYO CO.LTD)を用いて、30℃の条件下で測定される値である。
【0098】
本開示の金属分散液の25℃(±1℃)における表面張力は、60mN/m以下であることが好ましく、20mN/m~50mN/mであることがより好ましく、25mN/m~45mN/mであることが更に好ましい。
金属分散液の表面張力が60mN/m以下であると、濡れ性の向上、及び、基材におけるカールの発生抑制の観点から有利である。
本開示の金属分散液の表面張力は、Automatic Surface Tensiometer CBVP-Z(協和界面科学(株))を用いて、プレート法により測定される値である。
【0099】
<金属分散液の用途>
本開示の金属分散液は、基材(例えば、記録媒体)に対して膜(例えば、画像)を形成するための液体として好適に用いることができる。このような液体としては、基材に対して塗膜を形成するための塗布液(例えば、コーティング液)、記録媒体としての基材に対して画像を形成するためのインク〔例えば、ボールペンに用いられるインク(即ち、ボールペン用インク)、及び、インクジェット記録に用いられるインク(即ち、インクジェット記録用インク)〕等が挙げられる。
【0100】
本開示の金属分散液は、分散安定性に優れるため、塗布液として用いた場合には、塗布ムラが生じ難い。また、本開示の金属分散液は、分散安定性に優れるため、ボールペン用インクとして用いた場合には、インクの詰まりが生じ難い。また、本開示の金属分散液は、分散安定性に優れるため、インクジェット記録用インクとして用いた場合には、インクジェットヘッドのノズルに詰まりが生じ難く、吐出性に優れる。
【0101】
本開示の金属分散液は、鏡面光沢性を有し、かつ、色味が抑制された膜(例えば、画像)を形成できるため、加飾画像の記録、特に、インクジェット法による加飾画像の記録に用いられることが好ましい。
「加飾画像の記録」とは、対象物に対して装飾を加えることを目的とした画像記録全般を意味する。加飾画像の記録は、上記目的以外の記録(例えば、導電性ラインを形成するための記録)とは異なる。
本開示の金属分散液を加飾画像の記録に用いた場合には、対象物に対して、鏡面光沢性を有し、かつ、色味が抑制された装飾を加えることができる。
【0102】
本開示の金属分散液は、鏡面光沢性をより効果的に得る観点から、最小幅1mm以上の画像の記録に用いられることが好ましい。
本開示の金属分散液によって記録される画像の最小幅は、2mm以上がより好ましく、3mm以上が更に好ましい。
本開示の金属分散液によって記録される画像の最小幅の上限としては、特に制限はなく、例えば、300mm以下であり、200mm以下が好ましい。
【0103】
<金属分散液の製造方法>
本開示の金属分散液の製造方法としては、特に制限はなく、例えば、既述の各成分を混合する方法が挙げられる。
本開示の金属分散液の製造方法の好ましい態様(以下、「第1の態様」ともいう。)としては、平板状金属粒子Aを含む分散液(以下、「分散液A」という。)を準備する工程(以下、「準備工程A」ともいう。)と、金属粒子Bを含む分散液(以下、「分散液B」という。)を準備する工程(以下、「準備工程B」ともいう。)と、分散液A、分散液B、及び、必要に応じて、分散剤、有機溶剤、界面活性剤等の他の成分を混合する工程(以下、「混合工程X」ともいう。)と、を含む態様である。
第1の態様では、混合工程Xにおいて、金属分散液の全質量に対する、平板状金属粒子Aの含有率a及び金属粒子Bの含有率bが、既述の式(2)を満たす(好ましくは、既述の式(2-1)を満たし、より好ましくは、既述の式(2-2)を満たす)ように、分散液A及び分散液Bの混合割合を調整する。
【0104】
また、本開示の金属分散液の製造方法の好ましい別の態様(以下、「第2の態様」ともいう。)としては、平板状金属粒子A及び金属粒子Bを含む分散液(以下、「分散液C」という。)を準備する工程(以下、「準備工程C」ともいう。)と、分散液C、及び、必要に応じて、分散剤、有機溶剤、界面活性剤等の他の成分を混合する工程(以下、「混合工程Y」ともいう。)と、を含む態様である。
第2の態様では、最終的に既述の式(2)を満たす(好ましくは、既述の式(2-1)を満たし、より好ましくは、既述の式(2-2)を満たす)金属分散液が得られるように、準備工程Cにおいて、あらかじめ平板状金属粒子A及び金属粒子Bの含有割合を調整した分散液Cを準備する。
【0105】
分散液Cの製造方法としては、特に制限はなく、例えば、化学還元法、光化学還元法、電気化学還元法等の液相法が挙げられる。
分散液Cに含まれる金属粒子の形状及びサイズ(所謂、円相当径及び厚さ)は、例えば、金属粒子を合成する際の合成技術(例えば、合成に使用する試薬の添加量、添加のタイミング等の調整)により調整できる。
また、分散液Cに含まれる平板状金属粒子A及び金属粒子Bの含有比率は、金属粒子を合成した後の後処理(遠心分離、限外濾過等)により調整できる。後処理の方法としては、例えば、特開2014-70246号公報の段落[0060]~[0062]の記載を参照できる。
【0106】
<インクセット>
本開示の金属分散液は、インクセットを構成するインクとして好適に用いることができる。
本開示の金属分散液をインクとして用いたインクセットとしては、特に制限はないが、下記の本実施形態のインクセットが好ましい。
【0107】
本実施形態のインクセットは、既述の本開示の金属分散液である第1のインクと、着色剤を含み、かつ、第1のインクとは異なる第2のインクと、を有する。
本実施形態のインクセットは、鏡面光沢性を有する画像(所謂、鏡面画像)と、鏡面光沢性を有しない着色画像と、を組み合わせた画像を記録することができるインクセットである。
【0108】
本実施形態のインクセットの好ましい使用態様では、基材上に、第1のインクによる画像(即ち、鏡面画像)と第2のインクによる着色画像とを並べて又は重ねて形成する。
第1のインクによる鏡面画像と第2のインクによる着色画像とを重ねて形成する場合、第1のインクによる鏡面画像と第2のインクによる着色画像とは、いずれを下層(即ち、基材に近い側の層)としてもよい。
第1のインクによる鏡面画像を下層(即ち、基材に近い側の層)とし、第の2インクによる着色画像を上層(即ち、基材からみて遠い側の層)とした場合には、第1のインクによる鏡面画像と第2のインクによる着色画像との重なり部分において、鏡面光沢性を有する着色画像が得られる。
第2のインクによる着色画像を下層(即ち、基材に近い側の層)とし、第1のインクによる鏡面画像を上層(即ち、基材からみて遠い側の層)とした場合には、第1のインクによる鏡面画像と第2のインクによる着色画像との重なり部分において、第2のインクによる着色画像を、第1のインクによる画像(例えば、銀色の画像)によって隠蔽することができる。
【0109】
第1のインクの詳細については、金属分散液の項にて説明したとおりであるため、ここでは説明を省略する。
【0110】
第2のインクとしては、着色剤を含むインクであれば、特に制限はなく、公知のインクを、適宜選択することができる。
第2のインクは、黒色若しくは白色の着色剤を含む無彩色のインク、又は、R(所謂、赤色)、G(所謂、緑色)、B(所謂、青色)、Y(所謂、黄色)、M(所謂、マゼンタ色)、若しくはC(所謂、シアン色)の着色剤を含む有彩色のインクから選ばれる少なくとも一つを含むことが好ましい。
第2のインクは、主たる溶媒として水を含む水系インクであってもよいし、主たる溶媒として溶剤を含む溶剤系インクであってもよい。
また、第2のインクは、重合性化合物及び光重合開始剤を含む光硬化型のインクであってもよい。
【0111】
着色剤としては、顔料、染料等の着色剤が挙げられる。
これらの中でも、着色剤としては、画像の耐光性、画像の耐候性等の観点から、顔料が好ましい。
顔料としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
顔料としては、例えば、公知の有機顔料及び無機顔料が挙げられる。
有機顔料及び無機顔料としては、黄色顔料、赤色顔料、マゼンタ顔料、青色顔料、シアン顔料、緑色顔料、橙色顔料、紫色顔料、褐色顔料、黒色顔料、白色顔料等が挙げられる。
【0112】
また、顔料としては、表面処理された顔料(樹脂、顔料誘導体の分散剤等で顔料表面を処理した顔料、粒子表面に親水性基を有する自己分散顔料など)も挙げられる。さらに、顔料としては、市販の顔料分散体を用いてもよい。
【0113】
着色剤として顔料を用いる場合には、必要に応じて顔料分散剤を併用してもよい。
顔料等の着色剤及び顔料分散剤については、特開2014-040529号公報の段落[0180]~[0200]を適宜参照することができる。
【0114】
第2のインクは、着色剤を1種のみ含んでいてもよく、2種以上含んでいてもよい。
【0115】
第2のインク中における着色剤(好ましくは、顔料)の含有率は、画像濃度の観点から、第2のインクの全量に対して、1質量%以上であることが好ましく、1質量%~20質量%であることがより好ましく、2質量%~10質量%であることが更に好ましい。
【0116】
本実施形態のインクセットでは、第1のインクにおける着色剤の含有率が、第1のインクの全量に対して1質量%未満(より好ましくは0.1質量%以下)であり、かつ、第2のインクにおける着色剤の含有率が、第2のインクの全量に対して1質量%以上(より好ましくは1質量%~20質量%、更に好ましくは2質量%~10質量%)であることが好ましい。
【0117】
[画像記録方法]
本開示の金属分散液は、画像の記録に用いることができる。
本開示の金属分散液を用いた画像記録方法としては、特に制限はないが、下記の本実施形態の画像記録方法(以下、「第1の実施形態の画像記録方法」ともいう。)が好ましい。
【0118】
第1の実施形態の画像記録方法は、本開示の金属分散液を、インクジェット法によって基材上に付与する工程(以下、「付与工程」ともいう。)を含む。
第1の実施形態の画像記録方法では、本開示の金属分散液をインクジェット記録用インクとして用いる。本開示の金属分散液は、分散安定性に優れるため、第1の実施形態の画像記録方法では、インクジェット記録用インクに起因するインクジェットヘッドのノズルの詰まりが抑制されるため、吐出性が良好となる。また、第1の実施形態の画像記録方法によれば、鏡面光沢性を有し、かつ、色味が抑制された画像を記録することができる。
【0119】
基材としては、特に制限はなく、例えば、紙基材、樹脂基材等が挙げられる。
紙基材としては、普通紙、光沢紙、コート紙等が挙げられる。
光沢紙は、原紙と、原紙上に配置された高分子又は多孔性微粒子と、を備える紙基材である。
光沢紙としては、特に制限はない。光沢紙の市販品の例としては、富士フイルム(株)の「画彩(登録商標)」、セイコーエプソン(株)の写真用紙、フォト光沢紙等、コニカミノルタ(株)の光沢紙などが挙げられる。
コート紙は、原紙と、原紙上に配置されたコート層と、を備える紙基材である。
コート紙としては、特に制限はない。コート紙の市販品の例としては、王子製紙(株)の「OKトップコート(登録商標)+」、日本製紙(株)の「オーロラコート」等が挙げられる。
紙基材としては、鏡面光沢性により優れた画像を記録することができる点で、光沢紙又はコート紙が好ましく、光沢紙がより好ましい。
【0120】
樹脂基材としては、例えば、樹脂フィルムが挙げられる。
樹脂フィルムとしては、ポリ塩化ビニル(PVC:Polyvinyl chloride)、二酢酸セルロース、三酢酸セルロース、プロピオン酸セルロース、酪酸セルロース、酢酸酪酸セルロース、硝酸セルロース、ポリエチレンテレフタレート(PET:Polyethylene terephthalate)、ポリエチレンナフタレート、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリビニルアセタール、アクリル樹脂等のフィルムが挙げられる。
これらの中でも、樹脂フィルムとしては、鏡面光沢性により優れた画像を記録することができる点で、PVCフィルム又はPETフィルムが好ましく、PETフィルムがより好ましい。
上述の基材は、必要に応じて、インクの定着性、画質等の向上などを目的として設けられるインク受像層を有していてもよい。
【0121】
また、基材は、既に画像が記録されている基材であってもよい。すなわち、第1の実施形態の画像記録方法は、既に画像が記録されている基材の画像(所謂、記録画像)上に、本開示の金属分散液を用いて画像を記録する方法であってもよい。
基材に記録されている画像上に、本開示の金属分散液を用いて画像を記録することで、基材に記録されている画像に対して、鏡面光沢性を有する装飾を加えることができる。また、基材に記録されている画像を、本開示の金属分散液により記録される画像(例えば、銀色の画像)によって隠蔽することもできる。
【0122】
インクジェット法の方式としては、特に制限はなく、公知の方式の中から適宜選択することができる。
インクジェット法の方式の例としては、静電誘引力を利用してインクを吐出させる電荷制御方式;ピエゾ素子の振動圧力を利用するドロップオンデマンド方式(所謂、圧力パルス方式);電気信号を音響ビームに変えインクに照射して放射圧を利用してインクを吐出させる音響インクジェット方式;インクを加熱して気泡を形成し、生じた圧力を利用するサーマルインクジェット(バブルジェット(登録商標))方式等が挙げられる。
【0123】
インクジェットヘッドの方式は、オンデマンド方式であってもよいし、コンティニュアス方式であってもよい。
インクジェットヘッドからのインクの吐出方式としては、特に制限はない。
インクの吐出方式の例としては、電気-機械変換方式(シングルキャビティー型、ダブルキャビティー型、ベンダー型、ピストン型、シェアーモード型、シェアードウォール型等);電気-熱変換方式(サーマルインクジェット型、バブルジェット(登録商標)型等);静電吸引方式(電界制御型、スリットジェット型等);放電方式(例えば、スパークジェット型)などが挙げられる。
【0124】
インクジェット法における記録方式としては、単尺のシリアルヘッドを用いてヘッドを基材の幅方向に走査させながら記録を行うシャトル方式;基材の1辺の全域に対応して記録素子が配列されているラインヘッドを用いたライン方式(所謂、シングルパス方式)等が挙げられる。
【0125】
吐出ヘッドのノズル径としては、特に制限はなく、例えば、より精細な画像を記録することができる点で、25μm未満であることが好ましく、5μm以上25μm未満であることがより好ましく、10μm以上25μm未満であることが更に好ましく、15μm以上25μm未満であることが特に好ましい。
【0126】
第1の実施形態の画像記録方法は、基材上に付与された金属分散液を乾燥させる工程を含んでいてもよい。
乾燥は、室温における自然乾燥であってもよいし、加熱乾燥であってもよい。
基材として樹脂基材を用いる場合には、加熱乾燥が好ましい。
【0127】
加熱乾燥の手段としては、特に制限はなく、ヒートドラム、温風、赤外線ランプ、熱オーブン等が挙げられる。
加熱乾燥の温度は、50℃以上であることが好ましく、60℃以上150℃以下であることがより好ましく、70℃以上100℃以下であることが更に好ましい。
加熱乾燥の時間は、金属分散液の組成及び金属分散液の吐出量を加味して適宜設定することができ、例えば、1分間~180分間であることが好ましく、5分間~120分間であることがより好ましく、5分間~60分間であることが更に好ましい。
【0128】
本開示の金属分散液を用いた画像記録方法としては、既述の第1の実施形態の画像記録方法以外に、下記の第2の実施形態の画像記録方法も挙げられる。第2の実施形態の画像記録方法では、既述の本実施形態のインクセットを用いる。
【0129】
第2の実施形態の画像記録方法は、既述の本開示の金属分散液である第1のインクを、インクジェット法によって基材に付与する工程(以下、「第1のインク付与工程」ともいう。)と、着色剤を含み、かつ、第1のインクとは異なる第2のインクを、基材に付与する工程(以下、「第2のインク付与工程」ともいう。)と、を含む。
第1のインク付与工程及び第2のインク付与工程は、いずれを先に行ってもよい。
第2の実施形態の画像記録方法は、第1のインク付与工程と第2のインク付与工程との間、並びに、第1のインク付与工程及び第2のインク付与工程のうち後に行われる工程の後、の少なくとも一方に、基材に付与したインク(即ち、第1のインク及び第2のインクの少なくとも一方)を乾燥させる工程を含んでいてもよい。インク(即ち、第1のインク及び第2のインクの少なくとも一方)を乾燥させる工程の詳細は、既述の第1の実施形態の画像記録方法における金属分散液を乾燥させる工程と同様であるため、ここでは説明を省略する。
【0130】
第2の実施形態の画像記録方法の好ましい態様は、第1のインク付与工程の後に、第2のインク付与工程を行う態様であり、具体的には、第1のインクをインクジェット法によって基材に付与する工程(即ち、第1のインク付与工程)と、第1のインクが付与された基材の第1のインク上に、第2のインクを付与する工程(即ち、第2のインク付与工程)と、を含む態様である。
この態様によれば、第1のインクによる鏡面画像と第2のインクによる着色画像との重なり部分において、鏡面光沢性を有する着色画像を形成することができる。
【0131】
第2の実施形態の画像記録方法の好ましい別の態様は、第2のインク付与工程の後に、第1のインク付与工程を行う態様であり、具体的には、第2のインクを基材に付与する工程(即ち、第2のインク付与工程)と、第2のインクが付与された基材の第2のインク上に、第1のインクをインクジェット法によって付与する工程(即ち、第1のインク付与工程)と、を含む態様である。
この態様によれば、第2のインクによる着色画像を、第1のインクによる画像(例えば、銀色の画像)によって隠蔽することができる。
【0132】
第1のインク付与工程の好ましい態様は、既述の第1の実施形態の画像記録方法における付与工程と同様である。
第2のインク付与工程における第2のインクの付与方法としては、特に制限はなく、公知の画像記録方法における基材へのインクの付与方法を適用することができる。
第2のインク付与工程は、第1のインク付与工程と同じ条件で行ってもよいし、第1のインク付与工程とは異なる条件で行ってもよい。
【0133】
[記録物]
本開示の金属分散液は、記録物の作製に用いることができる。
本開示の金属分散液によれば、鏡面光沢性を有し、かつ、色味が抑制された画像を備える記録物を作製することができる。また、本開示の金属分散液は、分散安定性に優れるため、記録物が備える画像は、ムラの発生が抑制されている。
【0134】
本開示の金属分散液を用いて作製される記録物としては、例えば、下記の本実施形態の記録物が挙げられる。
本実施形態の記録物は、基材と、基材上に配置され、平均アスペクト比が20を超え、かつ、平均円相当径が50nm以上1000nm以下である平板状金属粒子A、及び、平均アスペクト比が1以上15以下であり、かつ、平均円相当径が1nm以上150nm以下である金属粒子Bを含み、平板状金属粒子Aの平均円相当径A1と金属粒子Bの平均円相当径B1とが、下記の式(1)を満たし、画像に含まれる成分の全質量に対する、平板状金属粒子Aの含有率ax及び金属粒子Bの含有率bxが、下記の式(2x)を満たす画像と、を備える。
A1>B1 ・・・式(1)
0.0001≦bx/(ax+bx)≦0.3 ・・・式(2x)
【0135】
本実施形態の記録物における基材は、本実施形態の画像記録方法における基材の好ましい態様と同様である。
本実施形態の記録物における平板状金属粒子Aの好ましい態様は、本開示の金属分散液における平板状金属粒子Aの好ましい態様と同様である。
本実施形態の記録物における金属粒子Bの好ましい態様は、本開示の金属分散液における金属粒子Bの好ましい態様と同様である。
本実施形態の記録物における画像の好ましい態様(例えば、画像の最小幅)は、「金属分散液の用途」の項で説明した画像の好ましい態様と同様である。
【0136】
本実施形態の記録物における画像は、本開示の金属分散液の成分として例示した成分(好ましくは、水及び有機溶剤以外の成分)を含むことができる。
【0137】
本実施形態の記録物は、平板状金属粒子A及び金属粒子Bを含む画像上、並びに、基材と平板状金属粒子A及び金属粒子Bを含む画像との間の少なくとも一方に、着色剤を含む画像(所謂、着色画像)を備えていてもよい。
本実施形態の記録物は、平板状金属粒子A及び金属粒子Bを含む画像上に着色画像を備える場合には、平板状金属粒子A及び金属粒子Bを含む画像と、着色画像との重なり部分において、鏡面光沢性を有する着色画像が設けられた態様となる。
また、本実施形態の記録物は、基材と平板状金属粒子A及び金属粒子Bを含む画像との間に着色画像を備える場合には、平板状金属粒子A及び金属粒子Bを含む画像と、着色画像との重なり部分において、平板状金属粒子A及び金属粒子Bを含む画像(例えば、銀色の画像)によって、着色画像が隠蔽された態様となる。
【0138】
平板状金属粒子A及び金属粒子Bを含む画像と着色画像とを備える態様の記録物は、本開示の金属分散液と、着色剤を含む公知のインクと、を用いて作製することができる。
【実施例】
【0139】
以下、本発明を実施例により更に具体的に説明するが、本発明はその主旨を超えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。
【0140】
以下の実施例(但し、比較例9A及び比較例9Bを除く。)では、金属分散液が2種の金属粒子を含む場合、2種の金属粒子のうち、平均円相当径が大きい方の金属粒子を「第1の金属粒子」と称し、平均円相当径が小さい方の金属粒子を[第2の金属粒子」と称する。また、金属分散液が1種の金属粒子を含む場合には、その金属粒子を「第1の金属粒子」と称する。
【0141】
[金属分散液の調製]
<実施例1A>
-金属粒子形成液の調製-
高Cr-Ni-Moステンレス鋼(NTKR-4、日本金属工業(株))製の反応容器を準備した。この反応容器は、ステンレス鋼(SUS316L)製のシャフトにNTKR-4製のプロペラ4枚及びNTKR-4製のパドル4枚を取り付けたアジターを備えている。
上記反応容器内にイオン交換水13L(リットル)を入れ、このイオン交換水を上記アジターによって撹拌しながら、更に10g/Lのクエン酸三ナトリウム(無水物)水溶液1.0Lを添加した。得られた液体を35℃に保温した。
35℃に保温された上記液体に対し、8.0g/Lのポリスチレンスルホン酸水溶液0.68Lを添加し、更に、水素化ホウ素ナトリウムの濃度を23g/Lに調節した水素化ホウ素ナトリウム水溶液0.041Lを添加した。水素化ホウ素ナトリウム水溶液の濃度の調節は、0.04N(mol/L)の水酸化ナトリウム(NaOH)水溶液を用いて行った。
水素化ホウ素ナトリウム水溶液が添加された液体に対し、更に、0.10g/Lの硝酸銀水溶液13Lを5.0L/minの速度で添加した。
得られた液体に対し、更に、10g/Lのクエン酸三ナトリウム(無水物)水溶液2.0L及びイオン交換水11Lを添加し、更に80g/Lのヒドロキノンスルホン酸カリウム水溶液0.68Lを添加した。
次に、撹拌の速度を800rpm(revolutions per minute;以下同じ)に上げ、次いで、0.10g/Lの硝酸銀水溶液8.1Lを0.95L/minの速度で添加した後、得られた液体の温度を30℃に降温した。
30℃に降温した液体に対し、44g/Lのメチルヒドロキノン水溶液8.0Lを添加し、次いで、後述する40℃のゼラチン水溶液を全量添加した。
次いで、撹拌の速度を1,200rpmに上げ、後述する亜硫酸銀白色沈殿物混合液を全量添加した。亜硫酸銀白色沈殿物混合液が添加された液体のpHは、除々に変化した。
上記液体のpHの変化が止まった段階で、この液体に対し、1N(mol/L)のNaOH水溶液5.0Lを0.33L/minの速度で添加した。得られた液体を、NaOH及びクエン酸(無水物)を用いてpH=7.0±1.0に調整した。次に、このpH調整後の液体に対し、2.0g/Lの1-(m-スルホフェニル)-5-メルカプトテトラゾールナトリウム水溶液0.18Lを添加し、次いで、アルカリ性に調整して溶解させた70g/Lの1,2-ベンズイソチアゾリン-3-オン水溶液0.078Lを添加した。
以上により、金属粒子形成液を調製した。
【0142】
金属粒子形成液は、ユニオンコンテナーII型の20Lの容器(低密度ポリエチレン製容器、アズワン(株))に分液して収納し、30℃で貯蔵した。
なお、金属粒子形成液の物理特性は、以下のとおりであった。
【0143】
(金属粒子形成液の物理特性)
・pH:9.4(金属粒子形成液の液温を25℃に調整し、アズワン(株)のKR5Eを用いて測定した値)
・電気伝導度:8.1mS/cm(東亜ディーケーケー(株)のCM-25Rを用いて測定した値)
・粘度:2.1mPa・s(金属粒子形成液の液温を25℃に調整し、(株)エー・アンド・デイのSV-10を用いて測定した値)
【0144】
<<ゼラチン水溶液の調製>>
SUS316L製のアジターを備えたSUS316L製の溶解タンクを準備した。
この溶解タンク内にイオン交換水16.7Lを入れ、このイオン交換水を上記アジターによって低速撹拌しながら、更に、脱イオン処理を施したアルカリ処理牛骨ゼラチン(重量平均分子量:20万、GPCによる測定値)1.4kgを添加した。
得られた液体に、更に、脱イオン処理、蛋白質分解酵素処理、及び過酸化水素による酸化処理を施したアルカリ処理牛骨ゼラチン(重量平均分子量:2.1万、GPCによる測定値)0.91kgを添加した。
その後、液体の温度を40℃に昇温し、ゼラチンの膨潤及び溶解を行うことにより、ゼラチンを完全に溶解させた。
以上により、ゼラチン水溶液を調製した。
【0145】
<<亜硫酸銀白色沈殿物混合液の調製>>
SUS316L製のアジターを備えたSUS316L製の溶解タンクを準備した。
この溶解タンク内にイオン交換水8.2Lを入れ、更に、100g/Lの硝酸銀水溶液8.2Lを添加した。
得られた液体を上記アジターによって高速撹拌しながら、更に、140g/Lの亜硫酸ナトリウム水溶液2.7Lを短時間で添加することにより、亜硫酸銀の白色沈澱物を含む混合液(即ち、亜硫酸銀白色沈殿物混合液)を調製した。
この亜硫酸銀白色沈殿物混合液は、使用する直前に調製した。
【0146】
-金属分散液の調製(脱塩処理及び再分散処理)-
上記金属粒子形成液に対して、脱塩処理及び再分散処理を施すことにより金属分散液を得た。詳細な操作は、以下のとおりである。
【0147】
上記のように調製した金属粒子形成液を遠沈管に800g採取し、遠心分離機(himacCR22GIII、アングルロータ:R9A、日立工機(株))を用いて、35℃、9,000rpm、及び60分間の条件にて遠心分離操作を行った後、上澄み液を784g捨てた。残った固体(即ち、金属粒子及びゼラチンを含む固体)に対し、0.2mmol/LのNaOH水溶液を加えて合計40gとし、次いで、撹拌棒を用いて手撹拌することにより、粗分散液Xを得た。
上記と同様の操作を行い、120本分の粗分散液Xを調製した。調製した全ての粗分散液X(合計で4,800g)を、SUS316L製のタンクに投入して混合した。次いで、このタンク内に、更に、Pluronic31R1(ノニオン系界面活性剤、BASF社)の10g/L溶液(溶媒:メタノール/イオン交換水=1/1(体積比)の混合液)を10mL添加した。
次に、プライミクス(株)のオートミクサー20型(撹拌部:ホモミクサーMARKII)を用いて、タンク中の粗分散液Xの混合物に対し、9,000rpmで120分間のバッチ式分散処理を施した。分散処理中、液温を50℃に保った。
【0148】
上記分散処理後、液温を25℃に降温してから、プロファイルIIフィルター(製品型式:MCY1001Y030H13、日本ポール(株))を用いて、シングルパスの濾過を行った。
以上により、実施例1Aの金属分散液を調製した。
【0149】
実施例1Aの金属分散液は、ユニオンコンテナーII型の20Lの容器(低密度ポリエチレン製容器、アズワン(株))に収納し、30℃で貯蔵した。
実施例1Aの金属分散液中における金属粒子の含有率は、金属分散液の全量に対して、15質量%であった。また、実施例1Aの金属分散液中におけるゼラチン(分散剤)の含有率は、金属分散液の全量に対して、0.75質量%であった。
なお、実施例1Aの金属分散液の物理特性は、以下のとおりであった。
【0150】
(金属分散液の物理特性)
・pH:7.0(金属分散液の液温を25℃に調整し、アズワン(株)のKR5Eを用いて測定した値)
・電気伝導度:0.08mS/cm(東亜ディーケーケー(株)のCM-25Rを用いて測定した値)
・粘度:7.4mPa・s(金属分散液の液温を25℃に調整し、(株)エー・アンド・デイのSV-10を用いて測定した値)
【0151】
(金属粒子の形状)
上記金属分散液を希釈した後、光学顕微鏡用グリッドメッシュ上に滴下し、乾燥させることにより、観察用サンプルを作製した。作製した観察用サンプルを、透過型電子顕微鏡(TEM)にて観察することにより、金属分散液に含まれる金属粒子の形状を確認したところ、平板状の金属粒子と球状の金属粒子とが含まれていた。
【0152】
(金属粒子の平均円相当径)
-平板状の金属粒子の平均円相当径-
透過型電子顕微鏡(TEM)にて観察して得られた上記観察用サンプルのTEM像を、画像処理ソフトImageJ(アメリカ国立衛生研究所(NIH:National Institutes of Health)提供)に取り込み、取り込んだTEM像に対し、画像処理を施した。
より詳細には、数視野のTEM像から任意に抽出した500個の平板状の金属粒子に関して画像解析を行い、同面積円相当直径を算出した。得られた500個の平板状の金属粒子の同面積円相当直径を単純平均(即ち、数平均)することにより、平板状の金属粒子の平均円相当径を求めた。結果を表1に示す。
【0153】
-球状の金属粒子の平均円相当径-
球状の金属粒子の平均円相当径は、上記平板状の金属粒子の平均円相当径と同様の方法により求めた。すなわち、数視野のTEM像から任意に抽出した500個の球状の金属粒子に関して画像解析を行い、同面積円相当直径を算出した。得られた500個の球状の金属粒子の同面積円相当直径を単純平均(即ち、数平均)することにより、球状の金属粒子の平均円相当径を求めた。結果を表1に示す。
【0154】
(金属粒子の平均厚さ)
-平板状の金属粒子の平均厚さ-
上記金属分散液をシリコン基板上に滴下し、乾燥させることにより、平均厚さ測定用サンプルを作製した。作製した平均厚さ測定用サンプルを用い、上記金属分散液に含まれる平板状の金属粒子500個の厚さをFIB-TEM(Focused Ion Beam-Transmission Electron Microscopy)法によって測定した。500個の平板状の金属粒子の厚さを単純平均(即ち、数平均)することにより、平板状の金属粒子の平均厚さを求めた。結果を表1に示す。
【0155】
-球状の金属粒子の平均厚さ-
球状の金属粒子の平均厚さは、上記平板状の金属粒子の平均厚さと同様の方法により求めた。すなわち、作製した平均厚さ測定用サンプルを用い、上記金属分散液に含まれる球状の金属粒子500個の厚さをFIB-TEM法によって測定し、単純平均(即ち、数平均)することにより、球状の金属粒子の平均厚さを求めた。結果を表1に示す。
【0156】
(金属粒子の平均アスペクト比)
上記金属粒子の平均円相当径を金属粒子の平均厚さで割ることにより、金属粒子の平均アスペクト比を求めた。結果を表1に示す。
【0157】
(金属粒子の含有率)
金属分散液中における第1の金属粒子の含有率(単位:質量%)と、金属分散液中における第2の金属粒子の含有率(単位:質量%)とは、以下の方法により測定した。
ICP(Inductively Coupled Plasma)発光分光分析により、金属分散液中に含まれる金属の総含有量を求めた。
次に、上記にて求めた平均厚み及び平均円相当径に基づき、第1の金属粒子(実施例1Aでは、平板状の金属粒子)及び第2の金属粒子(実施例1Aでは、球状の金属粒子)の平均体積をそれぞれ計算した。次に、TEM像を元にそれぞれ500個の金属粒子を観察して得られた平均厚み及び平均円相当径に基づき、平板状金属粒子A及び金属粒子Bの平均体積をそれぞれ計算した。そして、第1の金属粒子の密度と第2の金属粒子の密度とが同じであると仮定し、上記にて計算した第1の金属粒子及び第2の金属粒子の積算体積比(平均体積×存在比率)より、金属分散液中における第1の金属粒子と第2の金属粒子との含有比率を計算した。上記にて求めた金属の総含有量、及び、第1の金属粒子と第2の金属粒子との含有比率から、それぞれの含有率(単位:質量%)を算出した。
【0158】
<実施例2A~実施例5A>
実施例1Aにおいて、「-金属分散液の調製(脱塩処理及び再分散処理)-」の際に、遠心分離操作を行った後の上澄み液の廃棄量を調整し、金属分散液中における、第1の金属粒子及び第2の金属粒子の合計含有量に対する第2の金属粒子の含有量の割合(第2の金属粒子の含有量/第1の金属粒子及び第2の金属粒子の合計含有量)を、表1に示す値に変更したこと以外は、実施例1Aと同様にして、実施例2A~実施例5Aの金属分散液をそれぞれ調製した。
【0159】
<実施例6A>
実施例1Aにおいて、「-金属粒子形成液の調製-」の際に、「1N(mol/L)の水酸化ナトリウム(NaOH)水溶液5.0L」の添加のタイミングを早め、かつ、「-金属分散液の調製(脱塩処理及び再分散処理)-」の際に、遠心分離操作を行った後の上澄み液の廃棄量を調整し、金属分散液中における、第1の金属粒子及び第2の金属粒子の合計含有量に対する第2の金属粒子の含有量の割合(第2の金属粒子の含有量/第1の金属粒子及び第2の金属粒子の合計含有量)を、表1に示す値に変更したこと以外は、実施例1Aと同様にして、実施例6Aの金属分散液を調製した。
【0160】
<実施例7A及び実施例8A>
実施例1Aにおいて、「-金属分散液の調製(脱塩処理及び再分散処理)-」の際に、遠心分離操作を行った後の上澄み液を全て廃棄したこと以外は、実施例1Aと同様にして、金属粒子として、表1に示す第1の金属粒子のみを含む分散液(第1の金属粒子分散液)を調製した。また、実施例1Aにおいて、「-金属粒子形成液の調製-」の際に、「1N(mol/L)の水酸化ナトリウム(NaOH)水溶液5.0L」の添加のタイミングを早め、かつ、「-金属分散液の調製(脱塩処理及び再分散処理)-」の際に、遠心分離操作を行った後の上澄み液を全て廃棄したこと以外は、実施例1Aと同様にして、金属粒子として、表1に示す第2の金属粒子のみを含む分散液(第2の金属粒子分散液)を調製した。
上記のようにして調製した第1の金属粒子分散液と第2の金属粒子分散液とを、金属分散液中における、第1の金属粒子及び第2の金属粒子の合計含有量に対する第2の金属粒子の含有量の割合(第2の金属粒子の含有量/第1の金属粒子及び第2の金属粒子の合計含有量)が、表1に示す値となるように混合することにより、実施例7A及び実施例8Aの金属分散液を調製した。
【0161】
<実施例9A>
実施例9Aの金属分散液として、金分散液を調製した。
三口フラスコ内に、0.0005Mのクエン酸ナトリウムを3L入れ、水浴により撹拌しながら50℃まで加熱した。0.0013Mのテトラクロロ金(III)酸(HAuCl4)と、0.008Mの臭化セチルトリメチルアンモニウムと、を含む水溶液2Lも同様に加熱し、50℃になってから上記クエン酸ナトリウム水溶液に注入した。50℃で30分撹拌した後、80℃まで昇温し、更に10分間反応させた。液温を40℃に降温させた後、実施例1Aで調製したものと同様の40℃のゼラチン水溶液を全量添加した。
以上により、金属粒子形成液を調製した。
【0162】
上記のように調製した金属粒子形成液を遠沈管に800g採取し、遠心分離機(himacCR22GIII、アングルロータ:R9A、日立工機(株))を用いて、35℃、9,000rpm、及び60分間の条件にて遠心分離操作を行った後、上澄み液を784g捨てた。残った固体(即ち、金属粒子及びゼラチンを含む固体)に対し、0.2mmol/LのNaOH水溶液を加えて合計40gとし、次いで、撹拌棒を用いて手撹拌することにより、粗分散液Xを得た。
上記と同様の操作を行い、120本分の粗分散液Xを調製した。調製した全ての粗分散液X(合計で4,800g)を、SUS316L製のタンクに投入して混合した。次いで、このタンク内に、更に、Pluronic31R1(ノニオン系界面活性剤、BASF社)の10g/L溶液(溶媒:メタノール/イオン交換水=1/1(体積比)の混合液)を10mL添加した。
次に、プライミクス(株)のオートミクサー20型(撹拌部:ホモミクサーMARKII)を用いて、タンク中の粗分散液Xの混合物に対し、9,000rpmで120分間のバッチ式分散処理を施した。分散処理中、液温を50℃に保った。
以上により、実施例9Aの金属分散液を調製した。
【0163】
<実施例10Aの調製>
-第1の金属粒子分散液の調製-
実施例1Aにおいて、「-金属分散液の調製(脱塩処理及び再分散処理)-」の際に、遠心分離操作を行った後の上澄み液を全て廃棄したこと以外は、実施例1Aと同様にして、金属粒子として、表1に示す第1の金属粒子のみを含む分散液(第1の金属粒子分散液)を調製した。
【0164】
-第2の金属粒子分散液の調製-
予め、下記の添加液A、添加液B、及び添加液Cを調製した。
〔添加液A〕
硝酸銀粉末0.51gを純水50mLに溶解し、溶解液を得た。得られた溶解液に、1N(1mol/L)のアンモニア水を、溶解液が透明になるまで添加した後、全量が100mLになるように純水を添加して、添加液Aを調製した。
〔添加液B〕
グルコース粉末0.5gを純水140mLに溶解し、添加液Bを調製した。
〔添加液C〕
ヘキサデシルトリメチルアンモニウムブロミド(HTAB)粉末0.5gを純水27.5mLに溶解し、添加液Cを調製した。
【0165】
次に、三口フラスコ内に、純水410mLを入れた後、20℃にて撹拌しながら、添加液C 82.5mL、及び添加液B 206mLをロートにて添加し、第1の液を得た(一段目)。次いで、第1の液を撹拌回転数800rpmにて撹拌し、撹拌中の第1の液に、添加液A 206mLを流量2.0mL/minにて添加し、第2の液を得た(二段目)。10分間後、第2の液に、添加液Cを30mL添加し、第3の液を得た(三段目)。次いで、第3の液を、3℃/minで内温75℃まで昇温した後、撹拌回転数を200rpmに落とし、75℃にて5時間加熱し、水分散液を得た。
限外濾過モジュール(型式:SIP1013、分画分子量:6,000、旭化成(株))、マグネットポンプ、及びステンレスカップを、シリコーン製のチューブを用いて接続し、限外濾過装置を作製した。上記にて得られた水分散液を冷却した後、作製した限外濾過装置のステンレスカップに入れ、ポンプを稼動させて限外濾過を行った。限外濾過モジュールからの濾液が50mLになった時点で、ステンレスカップに950mLの蒸留水を加え、洗浄を行った。この洗浄を、濾液の伝導度が50μS/cm以下になるまで繰り返した後、濃縮を行い、第2の金属粒子のみを含む分散液(第2の金属粒子分散液)を調製した。
上記のようにして調製した第1の金属粒子分散液と第2の金属粒子分散液とを、金属分散液中における、第1の金属粒子及び第2の金属粒子の合計含有量に対する第2の金属粒子の含有量の割合(第2の金属粒子の含有量/第1の金属粒子及び第2の金属粒子の合計含有量)が、表1に示す値となるように混合することにより、実施例10Aの金属分散液を調製した。
【0166】
<実施例11A>
実施例1Aにおいて、「-金属粒子形成液の調製-」の際に、ゼラチン水溶液を使用する代わりにポリエチレンイミン(重量平均分子量:25万、ポリサイエンス(株))の12質量%水溶液を使用し、かつ、「-金属分散液の調製(脱塩処理及び再分散処理)-」の際に、遠心分離操作を行った後の上澄み液の廃棄量を調整し、金属分散液中における、第1の金属粒子及び第2の金属粒子の合計含有量に対する第2の金属粒子の含有量の割合(第2の金属粒子の含有量/第1の金属粒子及び第2の金属粒子の合計含有量)を、表1に示す値に変更したこと以外は、実施例1Aと同様にして、実施例11Aの金属分散液を調製した。
【0167】
<実施例12A>
実施例11Aにおいて、「-金属粒子形成液の調製-」の際に、ゼラチン水溶液を使用する代わりにポリビニルアルコール(PVA、製品コード:04398-500、ポリサイエンス(株))の12質量%水溶液を使用したこと以外は、実施例11Aと同様にして、実施例12Aの金属分散液を調製した。
【0168】
<実施例13A>
実施例11Aにおいて、「-金属粒子形成液の調製-」の際に、ゼラチン水溶液を使用する代わりにポリビニルピロリドン(PVP、商品名:ポリビニルピロリドン K-30、ポリサイエンス(株))の12質量%水溶液を使用したこと以外は、実施例11Aと同様にして、実施例13Aの金属分散液を調製した。
【0169】
<実施例14A>
実施例1Aにおいて、「-金属粒子形成液の調製-」の際に、水素化ホウ素ナトリウム水溶液が添加された液体に対して添加した0.10g/Lの硝酸銀水溶液の添加量を「13L」から「25L」に変更したこと以外は、実施例1Aと同様にして、実施例14Aの金属分散液を調製した。
【0170】
<実施例15A>
実施例1Aにおいて、「-金属粒子形成液の調製-」の際に、水素化ホウ素ナトリウム水溶液が添加された液体に対して添加した0.10g/Lの硝酸銀水溶液の添加量を「13L」から「1.3L」に変更したこと以外は、実施例1Aと同様にして、実施例15Aの金属分散液を調製した。
【0171】
<実施例16A>
実施例1Aにおいて、「-金属粒子形成液の調製-」の際に、水素化ホウ素ナトリウム水溶液が添加された液体に対して添加した0.10g/Lの硝酸銀水溶液の添加量を「13L」から「0.3L」に変更したこと以外は、実施例1Aと同様にして、実施例16Aの金属分散液を調製した。
【0172】
<比較例1A>
実施例1Aにおいて、「-金属分散液の調製(脱塩処理及び再分散処理)-」の際に、遠心分離操作を行った後の上澄み液を全て廃棄したこと以外は、実施例1Aと同様にして、比較例1Aの金属分散液を調製した。
【0173】
<比較例2A>
実施例1Aにおいて、「-金属分散液の調製(脱塩処理及び再分散処理)-」の際に、遠心分離操作を行った後の上澄み液の廃棄量を調整し、金属分散液中における、第1の金属粒子及び第2の金属粒子の合計含有量に対する第2の金属粒子の含有量の割合(第2の金属粒子の含有量/第1の金属粒子及び第2の金属粒子の合計含有量)を、表2に示す値に変更したこと以外は、実施例1Aと同様にして、比較例2Aの金属分散液を調製した。
【0174】
<比較例3A>
実施例1Aにおいて、「-金属粒子形成液の調製-」の際に、「1N(mol/L)の水酸化ナトリウム(NaOH)水溶液5.0L」の添加のタイミングを早め、かつ、「-金属分散液の調製(脱塩処理及び再分散処理)-」の際に、遠心分離操作を行った後の上澄み液の廃棄量を調整し、金属分散液中における、第1の金属粒子及び第2の金属粒子の合計含有量に対する第2の金属粒子の含有量の割合(第2の金属粒子の含有量/第1の金属粒子及び第2の金属粒子の合計含有量)を、表2に示す値に変更したこと以外は、実施例1Aと同様にして、比較例3Aの金属分散液を調製した。
【0175】
<比較例4A>
実施例1Aにおいて、「-金属分散液の調製(脱塩処理及び再分散処理)-」の際に、遠心分離操作を行った後の上澄み液を全て廃棄したこと以外は、実施例1Aと同様にして、金属粒子として、表2に示す第1の金属粒子のみを含む分散液(第1の金属粒子分散液)を調製した。また、実施例1Aにおいて、「-金属粒子形成液の調製-」の際に、「1N(mol/L)の水酸化ナトリウム(NaOH)水溶液5.0L」の添加のタイミングを早め、かつ、「-金属分散液の調製(脱塩処理及び再分散処理)-」の際に、遠心分離操作を行った後の上澄み液を全て廃棄したこと以外は、実施例1Aと同様にして、金属粒子として、表2に示す第2の金属粒子のみを含む分散液(第2の金属粒子分散液)を調製した。
上記のようにして調製した第1の金属粒子分散液と第2の金属粒子分散液とを、金属分散液中における、第1の金属粒子及び第2の金属粒子の合計含有量に対する第2の金属粒子の含有量の割合(第2の金属粒子の含有量/第1の金属粒子及び第2の金属粒子の合計含有量)が、表2に示す値となるように混合することにより、比較例4Aの金属分散液を調製した。
【0176】
<比較例5A>
実施例1Aにおいて、「-金属粒子形成液の調製-」の際に、「1N(mol/L)の水酸化ナトリウム(NaOH)水溶液5.0L」の添加のタイミングを早め、かつ、「-金属分散液の調製(脱塩処理及び再分散処理)-」の際に、遠心分離操作を行った後の上澄み液の廃棄量を調整し、金属分散液中における、第1の金属粒子及び第2の金属粒子の合計含有量に対する第2の金属粒子の含有量の割合(第2の金属粒子の含有量/第1の金属粒子及び第2の金属粒子の合計含有量)を、表2に示す値に変更したこと以外は、実施例1Aと同様にして、比較例5Aの金属分散液を調製した。
【0177】
<比較例6A>
実施例1Aにおいて、「-金属粒子形成液の調製-」の際に、水素化ホウ素ナトリウム水溶液が添加された液体に対して添加した0.10g/Lの硝酸銀水溶液の添加量を「13L」から「30L」に変更したこと以外は、実施例1Aと同様にして、比較例6Aの金属分散液を調製した。
【0178】
<比較例7A>
実施例1Aにおいて、「-金属粒子形成液の調製-」の際に、水素化ホウ素ナトリウム水溶液が添加された液体に対して添加した0.10g/Lの硝酸銀水溶液の添加量を「13L」から「0.25L」に変更したこと以外は、実施例1Aと同様にして、比較例7Aの金属分散液を調製した。
【0179】
<比較例8A>
実施例1Aにおいて、「-金属粒子形成液の調製-」の際に、水素化ホウ素ナトリウム水溶液が添加された液体に対して添加した0.10g/Lの硝酸銀水溶液の添加量を「13L」から「1.3L」に変更し、かつ、「-金属分散液の調製(脱塩処理及び再分散処理)-」の際に、遠心分離操作を行った後の上澄み液を全て廃棄したこと以外は、実施例1Aと同様にして、表2に示す第1の金属粒子のみを含む分散液(第1の金属粒子分散液)を調製した。
また、実施例1Aにおいて、「-金属粒子形成液の調製-」の際に、「1N(mol/L)の水酸化ナトリウム(NaOH)水溶液5.0L」の添加のタイミングを早め、かつ、「-金属分散液の調製(脱塩処理及び再分散処理)-」の際に、遠心分離操作を行った後の上澄み液を全て廃棄したこと以外は、実施例1Aと同様にして、金属粒子として、表2に示す第2の金属粒子のみを含む分散液(第2の金属粒子分散液)を調製した。
上記のようにして調製した第1の金属粒子分散液と第2の金属粒子分散液とを、金属分散液中における、第1の金属粒子及び第2の金属粒子の合計含有量に対する第2の金属粒子の含有量の割合(第2の金属粒子の含有量/第1の金属粒子及び第2の金属粒子の合計含有量)が、表2に示す値となるように混合することにより、比較例8Aの金属分散液を調製した。
【0180】
<比較例9A>
実施例1Aにおいて、「-金属粒子形成液の調製-」の際に、水素化ホウ素ナトリウム水溶液が添加された液体に対して添加した0.10g/Lの硝酸銀水溶液の添加量を「13L」から「25L」に変更し、かつ、「-金属分散液の調製(脱塩処理及び再分散処理)-」の際に、遠心分離操作を行った後の上澄み液を全て廃棄したこと以外は、実施例1Aと同様にして、表2に示す第1の金属粒子のみを含む分散液(第1の金属粒子分散液)を調製した。
また、実施例1Aにおいて、「-金属粒子形成液の調製-」の際に、「1N(mol/L)の水酸化ナトリウム(NaOH)水溶液5.0L」の添加のタイミングを早め、かつ、「-金属分散液の調製(脱塩処理及び再分散処理)-」の際に、遠心分離操作を行った後の上澄み液を全て廃棄したこと以外は、実施例1Aと同様にして、金属粒子として、表2に示す第2の金属粒子のみを含む分散液(第2の金属粒子分散液)を調製した。
上記のようにして調製した第1の金属粒子分散液と第2の金属粒子分散液とを、金属分散液中における、第1の金属粒子及び第2の金属粒子の合計含有量に対する第2の金属粒子の含有量の割合(第2の金属粒子の含有量/第1の金属粒子及び第2の金属粒子の合計含有量)が、表2に示す値となるように混合することにより、比較例9Aの金属分散液を調製した。
【0181】
実施例2A~実施例16A及び比較例1A~比較例9Aの金属分散液それぞれに対し、実施例1Aの金属分散液と同様の確認(形状)及び測定(平均円相当径、平均厚さ、及び平均アスペクト比)を行った。結果を表1及び表2に示す。
【0182】
なお、上記の金属分散液の調製では、「-金属粒子形成液の調製-」において、「1N(mol/L)の水酸化ナトリウム(NaOH)水溶液5.0L」の添加のタイミングを早めること(例えば、亜硫酸銀白色沈殿物混合液が添加された液体のpHの変化が止まる前に、「1N(mol/L)の水酸化ナトリウム(NaOH)水溶液5.0L」を添加すること)により、厚みをより厚くし、平均アスペクト比をより低下させることができる。また、「0.10g/Lの硝酸銀水溶液13L」の添加量を減らすことにより、形成される金属粒子の平均円相当径をより上昇させ、平均アスペクト比をより上昇させることができる。
【0183】
[評価]
実施例1A~実施例16A及び比較例1A~比較例9Aの金属分散液について、下記の評価を行った。結果を表1及び表2に示す。
【0184】
1.金属分散液の分散安定性
金属分散液に含まれる粒子の粒子径の経時での変化を測定し、粒子同士の凝集による粒子径の増大の程度に基づいて、金属分散液の分散安定性を評価した。具体的には、以下の方法により評価した。
上記にて調製した調製直後の金属分散液に含まれる粒子の平均粒子径Xを、濃厚系粒径アナライザー(FPAR-1000、大塚電子(株))を用いて測定した。
一方、上記にて調製した金属分散液を、雰囲気温度30℃の条件下にて1ヶ月保管し、保管後の金属分散液に含まれる粒子の平均粒子径Yを、濃厚系粒径アナライザー(FPAR-1000、大塚電子(株))を用いて測定した。
得られた平均粒子径Xの測定値及び平均粒子径Yの測定値から、金属分散液に含まれる粒子の粒子径の経時での増大比((平均粒子径Yの測定値-平均粒子径Xの測定値)/平均粒子径Xの測定値×100(単位:%);以下、「[(Y-X)/X]×100」と称する。)を算出した。得られた値に基づき、下記評価基準に従い、金属分散液の分散安定性を評価した。
Y/Xは、数値が小さいほど、金属分散液の分散安定性が優れることを示す。
評価結果が「5」、「4」又は「3」であれば、実用に適していると判断した。
【0185】
~評価基準~
5:[(Y-X)/X]×100≦5%
4:5%<[(Y-X)/X]×100≦10%
3:10%<[(Y-X)/X]×100≦20%
2:20%<[(Y-X)/X]×100≦50%
1:50%<[(Y-X)/X]×100
【0186】
【0187】
【0188】
表1及び表2中の「-」は、該当するものがないことを示す。
【0189】
表1に示すように、平均アスペクト比が20を超え、かつ、平均円相当径が50nm以上1000nm以下である平板状金属粒子と、平均アスペクト比が1以上15以下であり、かつ、平均円相当径が1nm以上150nm以下である金属粒子と、水とを含み、上記平板状金属粒子の平均円相当径A1と上記金属粒子の平均円相当径B1とが既述の式(1)を満たし、金属分散液の全質量に対する上記平板状金属粒子の含有率a及び上記金属粒子の含有率bが既述の式(2)を満たす、実施例1A~実施例16Aの金属分散液は、いずれも分散安定性に優れていた。
【0190】
一方、表2に示すように、平均アスペクト比が20を超え、かつ、平均円相当径が50nm以上1000nm以下である平板状金属粒子を含むが、平均アスペクト比が1以上15以下であり、かつ、平均円相当径が1nm以上150nm以下である金属粒子を含まない、比較例1Aの金属分散液は、分散安定性に劣っていた。
また、平均アスペクト比が20を超え、かつ、平均円相当径が50nm以上1000nm以下である平板状金属粒子と、平均円相当径が1nm以上150nm以下である金属粒子とを含むが、上記金属粒子の平均アスペクト比が15を超える、比較例4Aの金属分散液も、分散安定性に劣っていた。
【0191】
平均アスペクト比が20を超える平板状金属粒子と、平均アスペクト比が1以上15以下であり、かつ、平均円相当径が1nm以上150nm以下である金属粒子とを含むが、上記平板状金属粒子の平均円相当径が1000nmを超える、比較例7Aの金属分散液は、分散安定性に劣っていた。
平均アスペクト比が20を超え、かつ、平均円相当径が50nm以上1000nm以下である平板状金属粒子と、平均アスペクト比が1以上15以下である金属粒子とを含むが、上記金属粒子の平均円相当径が150nmを超える、比較例8Aの金属分散液は、分散安定性に劣っていた。
上記平板状金属粒子の平均円相当径A1と上記金属粒子の平均円相当径B1とが既述の式(1)を満たさない、比較例9Aの金属分散液は、分散安定性に劣っていた。
【0192】
[インクジェット記録用インクの調製]
<実施例1B~実施例16B及び比較例1B~比較例9B>
上記にて調製した実施例1A~実施例16A及び比較例1A~比較例9Aの各金属分散液を用いて、下記に示す組成のインクジェット記録用インクを調製した。
調製されたインクジェット記録用インクも、金属分散液の一態様である。
本実施例中では、ここで作製されたインクジェット記録用インクを「インク」と称し、上記にて調製した金属分散液と区別する。
【0193】
-インクの組成-
・金属粒子 2質量%
・表3又は表4に記載の分散剤 表3又は表4に記載の量
・プロピレングリコール 30質量%
(有機溶剤、沸点:188℃、SP値:27.6(MPa)1/2)
・サーフロン(登録商標)S-243 0.15質量%
(パーフルオロ基を有するフッ素系界面活性剤、屈折率:1.35、AGCセイミケミカル(株))
・イオン交換水 合計で100質量%となる残量
【0194】
-インクに含まれる金属粒子の形状及びサイズ-
インクに含まれる金属粒子の形状及びサイズ(詳細には、平均円相当径、平均厚さ、及び平均アスペクト比)を、金属分散液に含まれる金属粒子の形状及びサイズと同様の方法により確認した。
結果を表3及び表4に示す。
【0195】
[画像記録]
インクジェットプリンター(型番:DMP-2831、FUJIFILM DIMATIX社)の専用カートリッジ(Dimatix Materials Cartridge(Jetpowerd))に、上記にて調製したインクを充填した。次いで、インクが充填された専用カートリッジを、インクジェットプリンターにセットした。上記専用カートリッジは、インクカートリッジとインクジェットヘッドとが一体化された構造を有する。インクジェットヘッドは、ノズル径が21.5μmであり、かつ、ノズル数が16であるノズルを有するものである。
次いで、室温下で、基材としての光沢紙(富士フイルム(株)のインクジェットペーパーである画彩(登録商標)写真仕上げPro)上に、インク液滴量2.8pL、吐出周波数25.5kHz、及び解像度1,200dpi(dot per inch)×1,200dpiの吐出条件にて、インクを吐出し、光沢紙上にベタ画像(Solid Image;長さ70mm×幅30mm)を記録した。記録後、ベタ画像を完全に乾燥させた。
【0196】
[評価]
1.画像の鏡面光沢性
(1)グロス値に基づく評価
乾燥後のベタ画像について、光沢時計(micro-TRI-gloss、BYK社)を用い、20°グロス値を測定した。得られた20°グロス値に基づき、下記の評価基準に従い、画像の鏡面光沢性を評価した。評価結果を表3及び表4に示す。
20°グロス値は、数値が高いほど、画像の鏡面光沢性が優れることを示す。
評価結果が「5」、「4」又は「3」であれば、実用に適していると判断した。
【0197】
~評価基準~
5:20°グロス値が800以上であった。
4:20°グロス値が600以上800未満であった。
3:20°グロス値が300以上600未満であった。
2:20°グロス値が150以上300未満であった。
1:20°グロス値が150未満であった。
【0198】
(2)官能評価
乾燥後のベタ画像を目視で観察することにより、画像の鏡面光沢性を評価した。評価結果を表3及び表4に示す。
評価基準は、以下に示すとおりである。
評価結果が「5」、「4」又は「3」であれば、実用に適していると判断した。
【0199】
~評価基準~
5:極めて優れた鏡面光沢性を有し、映りこんだ物体が鏡に映った像のように明確に見える。
4:優れた鏡面光沢性を有し、映りこんだ物体が何であるかを識別できる。
3:鏡面光沢性を有するが、映りこんだ物体が何であるかまでは識別できない。
2:金属調の弱い光沢を示すが、鏡面光沢性を有さず、物体が映りこまない。
1:光沢がなく、灰色に見える。
【0200】
2.画像の色味
乾燥後のベタ画像について、紫外可視近赤外分光光度計(V-660、日本分光(株))を用い、正反射の反射色味を測定した。得られたa*及びb*の測定値から、算出式(a*2+b*2)1/2に基づいて、メトリック彩度c*を算出した。得られたメトリック彩度c*の値に基づき、下記評価基準に従い、画像の色味を評価した。評価結果を表3及び表4に示す。
メトリック彩度c*は、数値が小さいほど、画像の色味が抑制されていること(即ち、ニュートラルな色味の画像であること)を示す。
評価結果が「5」、「4」又は「3」であれば、実用に適していると判断した。
【0201】
~評価基準~
5:c*<10
4:10≦c*<15
3:15≦c*<20
2:20≦c*<25c*
1:25≦c*
【0202】
3.インクの吐出性
既述の[画像記録]にてベタ画像を記録する際、インクジェットヘッドのノズルからインクが吐出される様子を、インクジェットプリンターDMP-2831に付属のカメラを用いて撮影した。撮影した映像を観察し、100個のインク滴について、分離又は液別れの発生率を求め、以下の評価基準にしたがって評価した。評価結果を表3及び表4に示す。
なお、「分離」とは、インク滴の進行方向に対して前後に液滴が分離することを意味し、「液別れ」とは、インク吐出の際に、理想の進行方向に対して別方向に液が飛散することを意味する。
評価結果が「5」、「4」又は「3」であれば、実用に適していると判断した。
【0203】
~評価基準~
5:吐出されたインク滴の分離又は液別れの発生率が1%未満である。
4:吐出されたインク滴の分離又は液別れの発生率が1%以上5%未満である。
3:吐出されたインク滴の分離又は液別れの発生率が5%以上20%未満である。
2:吐出されたインク滴の分離又は液別れの発生率が20%以上50%未満である。
1:吐出されたインク滴の分離又は液別れの発生率が50%以上である。
【0204】
【0205】
【0206】
表3及び表4中の「-」は、該当するものがないことを示す。
表3及び表4中、第1の金属粒子の及び第2の金属粒子の欄に記載の「含有率[質量%]」は、インクの全質量に対する含有率を意味する。
【0207】
表3に示すように、平均アスペクト比が20を超え、かつ、平均円相当径が50nm以上1000nm以下である平板状金属粒子と、平均アスペクト比が1以上15以下であり、かつ、平均円相当径が1nm以上150nm以下である金属粒子と、水とを含み、上記平板状金属粒子の平均円相当径A1と上記金属粒子の平均円相当径B1とが既述の式(1)を満たし、インクの全質量に対する上記平板状金属粒子の含有率a及び上記金属粒子の含有率bが既述の式(2)を満たす、実施例1B~実施例16Bのインクによれば、鏡面光沢性を有する画像を記録することができた。また、実施例1B~実施例16Bのインクを用いて記録された画像は、色味が抑制されていた。さらに、実施例1B~実施例16Bのインクは、インクジェットヘッドのノズルからの吐出性(以下、単に「吐出性」ともいう。)に優れていた。
【0208】
一方、表4に示すように、平均アスペクト比が20を超え、かつ、平均円相当径が50nm以上1000nm以下である平板状金属粒子を含むが、平均アスペクト比が1以上15以下であり、かつ、平均円相当径が1nm以上150nm以下である金属粒子を含まない、比較例1Bのインクの吐出性は、実用には問題ないレベルであるが、実施例のインクと比較すると、劣る傾向を示した。
平均アスペクト比が20を超え、かつ、平均円相当径が50nm以上1000nm以下である平板状金属粒子と、平均アスペクト比が1以上15以下であり、かつ、平均円相当径が1nm以上150nm以下である金属粒子と、水とを含み、上記平板状金属粒子の平均円相当径A1と上記金属粒子の平均円相当径B1とが既述の式(1)を満たすが、インクの全質量に対する上記平板状金属粒子の含有率a及び上記金属粒子の含有率bが既述の式(2)を満たさない、比較例2Bのインクを用いて記録された画像は、色味が顕著に生じ、かつ、鏡面光沢性を有していなかった。
【0209】
平均円相当径が50nm以上1000nm以下である平板状金属粒子と、平均アスペクト比が1以上15以下であり、かつ、平均円相当径が1nm以上150nm以下である金属粒子とを含むが、平板状金属粒子の平均アスペクト比が20以下である、比較例3B及び比較例5Bのインクを用いて記録された画像は、色味が顕著に生じていた。
平均アスペクト比が20を超え、かつ、平均円相当径が50nm以上1000nm以下である平板状金属粒子と、平均円相当径が1nm以上150nm以下である金属粒子とを含むが、上記金属粒子の平均アスペクト比が15を超える、比較例4Bのインクの吐出性は、実用には問題ないレベルであるが、実施例のインクと比較すると、劣る傾向を示した。
【0210】
平均アスペクト比が20を超える平板状金属粒子と、平均アスペクト比が1以上15以下であり、かつ、平均円相当径が1nm以上150nm以下である金属粒子とを含むが、上記平板状金属粒子の平均円相当径が50nm未満である、比較例6Bのインクを用いて記録された画像は、鏡面光沢性を有していなかった。
平均アスペクト比が20を超える平板状金属粒子と、平均アスペクト比が1以上15以下であり、かつ、平均円相当径が1nm以上150nm以下である金属粒子とを含むが、上記平板状金属粒子の平均円相当径が1000nmを超える、比較例7Bのインクの吐出性は、実用には問題ないレベルであるが、実施例のインクと比較すると、劣る傾向を示した。
平均アスペクト比が20を超え、かつ、平均円相当径が50nm以上1000nm以下である平板状金属粒子と、平均アスペクト比が1以上15以下である金属粒子とを含むが、上記金属粒子の平均円相当径が150nmを超える、比較例8Bのインクを用いて記録された画像は、色味が顕著に生じていた。また、比較例8Bのインクは、吐出性に劣っていた。
上記平板状金属粒子の平均円相当径A1と上記金属粒子の平均円相当径B1とが既述の式(1)を満たさない、比較例9Bのインクを用いて記録された画像は、色味が顕著に生じていた。また、比較例9Bのインクは、吐出性に劣っていた。
【0211】
2017年8月21日に出願された日本国特許出願2017-158891号の開示は、その全体が参照により本明細書に取り込まれる。
本明細書に記載された全ての文献、特許出願、及び技術規格は、個々の文献、特許出願、及び技術規格が参照により取り込まれることが具体的に、かつ、個々に記された場合と同程度に、本明細書中に参照により取り込まれる。