(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-14
(45)【発行日】2022-01-14
(54)【発明の名称】半導体デバイスの製造中にシリコン-ゲルマニウム/ゲルマニウムスタックからシリコン-ゲルマニウム合金を選択的に除去するためのエッチング溶液
(51)【国際特許分類】
H01L 21/308 20060101AFI20220106BHJP
【FI】
H01L21/308 B
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2019042453
(22)【出願日】2019-03-08
【審査請求日】2019-05-22
(32)【優先日】2018-03-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2019-02-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】517114182
【氏名又は名称】バーサム マテリアルズ ユーエス,リミティド ライアビリティ カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100195213
【氏名又は名称】木村 健治
(74)【代理人】
【識別番号】100173107
【氏名又は名称】胡田 尚則
(74)【代理人】
【識別番号】100142387
【氏名又は名称】齋藤 都子
(72)【発明者】
【氏名】リウ ウェン ダー
(72)【発明者】
【氏名】リ イー-チア
【審査官】鈴木 聡一郎
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/007893(WO,A1)
【文献】特開2017-108122(JP,A)
【文献】特開2008-153533(JP,A)
【文献】特開2016-127065(JP,A)
【文献】特表2008-512862(JP,A)
【文献】特開2005-303305(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2017-0034036(KR,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0343576(US,A1)
【文献】特表2018-519674(JP,A)
【文献】特開2016-213461(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/306-21/3063
H01L 21/308
H01L 21/465-21/467
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
マイクロエレクトロニクスデバイスからゲルマニウムよりもシリコン-ゲルマニウム合金を選択的に除去するのに適したエッチング溶液であって、
水、
0.001質量%~40質量%の酸化剤、
7質量%~65質量%の水混和性有機溶媒、
0.01質量%~8質量%のフッ化物イオン源、
0.1質量%~10質量%の腐食防止剤、
緩衝剤、
場合により、界面活性剤、及び
場合により、キレート剤、
を含む、エッチング溶液であって、
前記酸化剤がキノンであり、
前記水混和性有機溶媒はエチレングリコール、プロピレングリコール、ブチルジグリコール、1,4-ブタンジオール、
ポリエチレングリコール、トリプロピレングリコールメチルエーテル、プロピレングリコールプロピルエーテル、ジエチレングリコールn-ブチルエーテル、ヘキシルオキシプロピルアミン、ポリ(オキシエチレン)ジアミン、ジメチルスルホキシド、テトラヒドロフルフリルアルコール、グリセロール、アルコール、スルホキシド、
スルホラン、スルホレン、スルホン、ジメチルアセトアミド、ピロリドン、
n-メチルピロリドン、硫黄含有溶媒又はそれらの混合物からなる群より選ばれ、
前記フッ化物イオン源は、フッ化水素酸、フッ化アンモニウム、第四級アンモニウムフッ化物、フルオロボレート、フルオロホウ酸、テトラブチルアンモニウムテトラフルオロボレート、六フッ化アルミニウム、及び、
R
1NR
2R
3R
4F
(上式中、R
1、R
2、R
3及びR
4は、個別にH又は(C
1~C
4)アルキル基を表す)
を有する、脂肪族第一級、第二級又は第三級アミンのフッ化物塩からなる群より選ばれ、
前記腐食防止剤は、キノリン、キノリン誘導体、臭化セチルトリメチルアンモニウム、11-メルカプトウンデカン酸及びn-メチル-n-オクチルアミンからなる群より選ばれる、エッチング溶液。
【請求項2】
前記酸化剤は1,4-ベンゾキノン、1,2-ベンゾキノン、1,4-ナフトキノン及び9,10-アントラキノンからなる群より選ばれる、請求項1記載のエッチング溶液。
【請求項3】
前記エッチング溶液は過酸化物を含まない、請求項1又は2記載のエッチング溶液。
【請求項4】
前記水混和性溶媒はスルホキシド、スルホラン、スルホレン、スルホン又はそれらの混合物からなる群より選ばれる、請求項1~3のいずれか一項記載のエッチング
溶液。
【請求項5】
前記水混和性溶媒はスルホラン、ジメチルスルホキシド、n-メチルピロリドン、ポリエチレングリコール及びジメチルアセトアミド又はそれらの混合物からなる群より選ばれる、請求項1~3のいずれか一項記載のエッチング
溶液。
【請求項6】
前記腐食防止剤はヒドロキシ置換キノリン、8-ヒドロキシキノリン、アルキル置換キノリン、2-メチルキノリン及び4-メチルキノリンからなる群より選ばれる、請求項1~5のいずれか一項記載のエッチング
溶液。
【請求項7】
前記腐食防止剤は8-ヒドロキシキノリン、臭化セチルトリメチルアンモニウム(CTAB)、11-メルカプトウンデカン酸及びn-メチル-n-オクチルアミンからなる群より選ばれる、請求項1~5のいずれか一項記載のエッチング
溶液。
【請求項8】
前記腐食防止剤はキノリンを含む、請求項1~5のいずれか一項記載のエッチング
溶液。
【請求項9】
前記緩衝剤はクエン酸及びクエン酸トリアンモニウムを含む、請求項1~8のいずれか一項記載のエッチング
溶液。
【請求項10】
前記緩衝
剤はアミン化合物及び多官能有機酸を含む、請求項1~9のいずれか一項記載のエッチング
溶液。
【請求項11】
前記アミン化合物はアルカノールアミンであり、そして前記多官能有機酸は少なくとも3つのカルボン酸基を有する多塩基酸である、請求項10記載のエッチング
溶液。
【請求項12】
前記多塩基酸はクエン酸、2-メチルプロパン-1,2,3-トリスカルボン酸、ベンゼン-1,2,3-トリカルボン酸[ヘミメリット酸]、プロパン-1,2,3-トリカルボン酸[トリカルバリル酸]、1,シス-2,3-プロペントリカルボン酸[アコニット酸]、ブタン-1,2,3,4-テトラカルボン酸、シクロペンタンテトラ-1,2,3,4-カルボン酸、ベンゼン-1,2,4,5-テトラカルボン酸[ピロメリット酸]、ベンゼンペンタカルボン酸及びベンゼンヘキサカルボン酸[メリット酸]及びそれらの混合物からなる群より選ばれる、請求項11記載のエッチング
溶液。
【請求項13】
前記フッ化物イオン源はフッ化アンモニウム、二フッ化アンモニウム、フッ化テトラメチルアンモニウム、フッ化テトラエチルアンモニウム、フッ化メチルトリエチルアンモニウム及びフッ化テトラブチルアンモニウムからなる群より選ばれる、請求項1~12のいずれか一項記載のエッチング
溶液。
【請求項14】
前記フッ化物イオン源はフッ化アンモニウムである、請求項13記載のエッチング
溶液。
【請求項15】
前記
エッチング溶液は前記キレート剤を含む、請求項1~14のいずれか一項記載のエッチング
溶液。
【請求項16】
前記エッチング溶液は前記界面活性剤を含む、請求項1~15のいずれか一項記載のエッチング
溶液。
【請求項17】
ゲルマニウム及びシリコン-ゲルマニウムを含む半導体デバイス上のシリコン-ゲルマニウムのゲルマニウムに対するエッチング速度を選択的に向上させる方法であって、
請求項1~16のいずれか一項記載のエッチング
溶液と、シリコン及びシリコン-ゲルマニウムを含む半導体デバイスを接触させる工程、及び、
シリコン-ゲルマニウムが少なくとも部分的に除去された後に複合半導体デバイスをすすぐ工程を含み、シリコン-ゲルマニウムのゲルマニウムに対するエッチングの選択比は2より大きい、方法。
【請求項18】
前記半導体デバイスを乾燥する工程をさらに含む、請求項17記載の方法。
【請求項19】
シリコン-ゲルマニウムのゲルマニウムに対するエッチングの選択比は2.5より大きい、請求項17又は18記載の方法。
【請求項20】
前記接触工程は25℃~60℃の温度で行われる、請求項17~19のいずれか一項記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は35U.S.C.§119(e)に基づいて2018年3月9日に出願された米国仮特許出願第62/641,168号に対する優先権を主張し、その全体を参照により本明細書に取り込む。
【0002】
発明の背景
本発明は半導体デバイスの製造に使用されるエッチング水溶液に関する。より具体的には、本発明は、シリコン-ゲルマニウム/ゲルマニウム複合半導体デバイスにおいて、ゲルマニウム膜よりもシリコン-ゲルマニウム合金膜の高いエッチング選択性を示すエッチング水溶液を提供する。
【背景技術】
【0003】
従来のプレーナ型金属酸化物半導体電界効果トランジスタ(MOSFET)は、常に続く縮小化及び超高密度集積回路の速度及び機能性に対して益々求められる厳しい要求により、ゲート酸化物厚さのスケール化及びチャネル領域上のゲート電極の静電制御などの課題を伴う多くの困難に直面している。フィン型電界効果トランジスタ(FinFET)は、ゲート電極をフィン型チャネルの3つの面に巻き付けることによってプレーナゲートMOSFET設計よりも改善された制御性を示している。
【0004】
GAA MOSFETはFinFETに似ているが、ゲート電極がチャネルを完全に包囲するので、チャネルに対してさらに高い静電制御性を有する可能性がある。GAA MOSFETにおいて、チャネル領域は本質的にナノワイヤである。ナノワイヤチャネルは、典型的には、数十ナノメートル(nm)以下の厚さ(又は直径)を有し、自由な長さを有する。ナノワイヤチャネルは、GAA MOSFETのはるかに大きいソース領域及びドレイン領域の間にほぼ水平に吊り下げられて固定されている。
【0005】
GAA MOSFETは完全互換CMOS技術を利用してバルクシリコン基板上に製造することができる。GAA MOSFETにおいてチャネル領域を形成する典型的な製造方法は、バルク基板の上でチャネル層の間に挟まれた犠牲層のスタック(エピスタック)をエピタキシャル成長させることを含む。犠牲層及びチャネル層は、選択エッチングによって犠牲層を除去することができるように2つの異なる材料からなる。
【0006】
一例として、エピスタックは、ゲルマニウム(Ge)とシリコンゲルマニウム(SiGe)の交互の層から形成することができ、ここで、SiGe層は犠牲層であり、Ge層はチャネル層である。次に、SiGe層を選択エッチング(例えば、湿式エッチング処理溶液を介して)によって除去することができ、そのことは、犠牲層を構成する材料と基板を構成する材料とが類似しているためにバルク基板に意図せずにトレンチを形成させることにもなる。その後、Ge層をトレンチ上に懸架されたナノワイヤチャネルとすることができる。次に、薄いゲート誘電体を、Geナノワイヤチャネルの周囲及び基板の凹トレンチの上に配置する。次に金属を誘電体上に配置して、GAA MOSFETの金属ゲート電極を形成する。
【0007】
SiGe合金をエッチングするための従来の湿式化学エッチング溶液は、典型的には酸化剤及び酸化物除去剤を使用する。最も一般的な溶液は、酸化ケイ素エッチング用のHF、及び、SiGe酸化用の過酸化水素(H2O2)及び酢酸(CH3COOH)の溶液である。 H2O2/CH3COOH/HF混合物は、SiよりもSi1-xGexに対して高度に選択的であり、滑らかさが改善されている。しかしながら、本発明の発明者は、この化学的性質は垂直スタック上のシリコン-ゲルマニウムの除去にはそれほど有効ではなく、酸化物及び窒化物に対する高いエッチング速度のために窒化物/酸化物マスクと適合しないことを見出した。
【0008】
したがって、上記の欠点に悩まされない、犠牲SiGe層の除去中のエッチングプロセスのより良好な制御性を提供するシリコン-ゲルマニウムエッチング剤組成物、及び、GAA MOSFETにおけるGeナノワイヤチャネルなどを形成する該組成物の使用方法が当該技術分野で要求されている。
【発明の概要】
【0009】
発明の簡単な要旨
1つの態様において、本発明は、マイクロエレクトロニクスデバイスからゲルマニウムよりもシリコン-ゲルマニウムを選択的に除去するのに適したエッチング溶液であって、水、酸化剤、水混和性有機溶媒、フッ化物イオン源、腐食防止剤、及び、場合により以下のうちの1種以上:界面活性剤、キレート剤及び緩衝剤(緩衝剤系又は緩衝剤組成物とも呼ばれる)を含むエッチング溶液を提供する。好ましい組成物において、シリコン-ゲルマニウムのゲルマニウムに対するエッチング選択比は、約2超、又は約2.5超、又は約3超、又は約3.5超、又は約4超、又は約4.5超、又は約5超である。さらに、好ましい組成物において、Geのエッチング速度は25Å/分未満、又は20Å/分未満、又は15Å/分未満、又は13Å /分未満、又は12Å/分未満である。
【0010】
別の態様において、本発明は、ゲルマニウム及びシリコン-ゲルマニウムを含む複合半導体デバイス上において、シリコン-ゲルマニウムのゲルマニウムに対するエッチング速度を選択的に向上させる方法であって、ゲルマニウム及びシリコン-ゲルマニウムを含む複合半導体デバイスを、水、酸化剤、水混和性有機溶媒、フッ化物イオン源、腐食防止剤、及び、場合により以下のうちの1種以上:界面活性剤、キレート剤及び緩衝剤を含む水性組成物と接触させる工程、及び、シリコン-ゲルマニウムが少なくとも部分的に除去された後に複合半導体デバイスをすすぐ工程を含み、ここで、シリコン-ゲルマニウムのゲルマニウムに対するエッチングの選択比は、約2超、又は約2.5超、又は約3超、又は約3.5超、又は約4超、又は約4.5超、又は約5超である方法を提供する。
【0011】
本発明の実施形態は、単独で又は互いに組み合わせて使用することができる。
【0012】
幾つかの実施形態において、本発明の組成物及び方法は以下の1つ以上の利点を提供する:SiGe/Geエッチング選択比であって、幾つかの実施形態において、2を超えること、窒化物/酸化物マスクとの適合性、Geナノワイヤを首尾よく製造するための犠牲SiGe層の除去を、完了しないとしても実質的に完了すること、窒化ケイ素/酸化ケイ素に対する低いエッチング速度であって、スペーサ/ILD酸化物がナノワイヤ解放プロセスにおいて攻撃されるのを防止すること、未処理表面に対して表面粗さの観察可能な増加がなく、ナノワイヤ表面品質がエッチングプロセスによって影響されないことを示すこと、及び、ナノワイヤ表面上に残る化学的汚染物がないこと。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】
図1は本発明の組成物及び方法によってSiGe層がエッチング及び/又は除去されるウエハ上のSiGe/Geスタックの1つの実施形態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0014】
発明の詳細な説明
本明細書に引用された刊行物、特許出願及び特許を含む全ての参考文献は、あたかも各参考文献が個別にかつ具体的に参照により取り込まれたかのように示され、その全体が本明細書に示されたかのように同程度に参照により本明細書に取り込まれる。
【0015】
本発明の記載の関係における(特に以下の特許請求の範囲の関係における)用語「a」及び「an」及び「the」ならびに類似の指示対象の使用は、本明細書で別段の指示がない限り又は文脈によって明らかに矛盾しない限り、単数形及び複数形の両方を含むと解釈されるべきである。用語「a」及び「an」及び「the」の使用は、出現する場合はどこでも、「1つ以上」又は「1つの」又は「1つより多くの」に置き換えることができる。用語「含む(comprising)」、「有する(having)」、「含む(including)」及び「含む(containing)」は、特に断りのない限り、無制限の用語として解釈されるべきである(すなわち、「含むが、これに限定されない」を意味する)。本明細書中の値の範囲の列挙は、本明細書中に別段の指示がない限り、その範囲内に含まれる各個別の値を個々に指す簡潔な方法として機能することが単に意図されており、各別個の値はそれが個別に記載されているかのように本明細書に取り込まれる。本明細書に記載のすべての方法は、本明細書に別段の指示がない限り又は文脈によって明らかに矛盾しない限り、任意の適切な順序で実行することができる。本明細書で提供されるありとあらゆる例、又は例示的な言語(例えば、「など(such as)」)の使用は、単に本発明をよりよく明らかにするためのものであり、特に主張されない限り本発明の範囲を制限するものではない。本明細書中のいかなる言語も、特許請求されていない要素を本発明の実施に必須であることを示すと解釈されるべきではない。本明細書及び特許請求の範囲における用語「含む(comprising)」の使用は、より狭い用語「から本質的になる」及び「からなる」を含む。
【0016】
本発明を実施するための本発明の発明者が知っている最良の形態を含む本発明の実施形態を本明細書に記載する。これらの実施形態の変形は、前述の説明を読めば当業者に明らかになるであろう。本発明の発明者は、当業者がそのような変形を適宜採用することを期待し、そして本発明の発明者は、本明細書に具体的に記載された方法とは別の方法で本発明が実施されることを意図する。したがって、本発明は、適用法によって許容されるように、本明細書に添付の特許請求の範囲に記載の主題のすべての変更形態及び均等形態を含む。さらに、そのすべての可能な変形形態における上記の要素のあらゆる組み合わせは、本明細書中に別段の指示がない限り又は文脈によって明らかに矛盾しない限り、本発明に包含される。
【0017】
本発明は、一般に、マイクロエレクトロニクスデバイスの製造中に、ゲルマニウムよりもシリコン-ゲルマニウム合金を、そのような材料を有するマイクロエレクトロニクスデバイスから選択的に除去するのに有用な組成物に関する。シリコン-ゲルマニウム合金は、いかなる量のシリコン及びゲルマニウムを含んでもよい。
【0018】
参照を容易にするために、「マイクロエレクトロニクスデバイス」は、半導体基板、フラットパネルディスプレイ、相変化メモリデバイス、及び、ソーラー基板、光起電力装置及びマイクロエレクトロメカニカルシステム(MEMS)を含む他の製品であって、マイクロエレクトロニクス、集積回路又はコンピュータチップ用途で使用するために製造されるものに対応する。用語「マイクロエレクトロニクスデバイス」は、決して限定的であることが意図されず、最終的にマイクロエレクトロニクスデバイス又はマイクロエレクトロニクスアセンブリとなるいかなる基板をも含むことを理解されたい。
【0019】
本明細書で規定されるときに、「低-k誘電材料」は、層状マイクロエレクトロニクスデバイスにおいて誘電材料として使用されるあらゆる材料に対応し、ここで、材料は約3.5未満の誘電率を有する。好ましくは、低-k誘電材料としては、ケイ素含有有機ポリマー、ケイ素含有複合有機/無機材料、オルガノシリケートガラス(OSG)、TEOS、フッ素化シリケートガラス(FSG)、二酸化ケイ素及び炭素ドープされた酸化物(CDO)ガラスなどの低極性材料が挙げられる。低-k誘電材料は様々な密度及び様々な空隙率を有することができることを理解されたい。
【0020】
本明細書で規定されるときに、用語「バリア材料」は、誘電材料への金属、例えば銅の拡散を最小限に抑えるために、金属配線、例えば銅相互接続をシールするために当該技術分野で使用されるあらゆる材料に対応する。好ましいバリア層材料としては、タンタル、チタン、ルテニウム、ハフニウム及び他の耐熱金属、ならびにそれらの窒化物及びケイ化物が挙げられる。
【0021】
「実質的に含まない」とは、本明細書では、0.001wt%未満と規定される。「実質的に含まない」はまた、0.000wt%を含む。用語「含まない」は、0.000wt%を意味する。
【0022】
本明細書で使用されるときに、「約」は記載された値の±5%に対応することが意図されている。
【0023】
組成物の特定の成分がゼロ下限値を含む質量パーセント範囲を参照して論じられる全てのそのような組成物において、そのような成分は組成物の様々な特定の実施形態に存在しても又はしなくてもよく、そのような成分が存在する場合には、そのような成分が使用される組成物の全質量に基づいて0.001質量%程度の低い濃度で存在することができることは理解されたい。
【0024】
この態様の広い実施において、本開発のエッチング溶液は、水、酸化剤、水混和性有機溶媒、フッ化物イオン源、腐食防止剤、及び、場合により、界面活性剤、キレート剤及び/又は緩衝剤もしくは緩衝剤系を含み、本質的にそれらからなり、又はそれらからなる。
【0025】
幾つかの実施形態において、本明細書に開示されるエッチング溶液組成物は、第四級アンモニウムフルオリド及び/又は第四級アンモニウムヒドロキシドを含みうる、無機塩基及び/又は第四級アンモニウム化合物を実質的に含まない又は含まないように配合され、例えば、組成物は下記の1種以上を含まないことができる:テトラメチルアンモニウムフルオリド、テトラエチルアンモニウムフルオリド、メチルトリエチルアンモニウムフルオリド及びテトラブチルアンモニウムフルオリド、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、メチルトリエチルアンモニウムヒドロキシド、及び/又はテトラブチルアンモニウムヒドロキシド及び/又はフッ化水素酸。別の実施形態において、本発明のエッチング組成物は、特定の酸化剤を含まず又は実質的に含まないことができる。組成物は下記の1種以上を含まず又は実質的に含まないことができる:ペルオキシ化合物、すなわち、例えば、過酸化物、過硫酸塩(例えば、モノ過硫酸塩及びジ過硫酸塩)、過炭酸塩及びそれらの酸、それらの塩、及びそれらの混合物を含む、少なくとも1つのペルオキシ基(-O-O-)を含む化合物。組成物が含まないことができる他の酸化剤としては、下記の1種以上が挙げられる:酸化ハロゲン化物(例えば、ヨウ素酸塩、過ヨウ素酸塩及びそれらの酸、ならびにそれらの混合物など)、過ホウ酸、過ホウ酸塩、過炭酸塩、ペルオキシ酸(例えば、過酢酸、過安息香酸、それらの塩、それらの混合物など)、過マンガン酸塩、セリウム化合物、フェリシアン化物(例えば、フェリシアン化カリウム)、それらの混合物など。別の実施形態において、本発明のエッチング組成物は、いかなる組み合わせでも下記の1種以上を含まず又は実質的に含まないことができる:過酸化水素、過酸化水素尿素、過ヨウ素酸、過ヨウ素酸カリウム、過マンガン酸カリウム、過硫酸アンモニウム、モリブデン酸アンモニウム、硝酸第二鉄、硝酸、硝酸カリウム、アンモニア及びそれらの混合物。
【0026】
本明細書で使用される見出しは限定することを意図せず、むしろ、それらは組織化の目的のためだけに含まれている。
【0027】
水
本開発のエッチング組成物は水性であり、したがって水を含む。本発明において、水は、例えば、成分のキャリアとして、残留物の除去の補助剤として、組成物の粘度調整剤としてそして希釈剤として、組成物の1つ以上の成分を溶解するなどの様々な様式で機能する。好ましくは、クリーニング組成物に使用される水は脱イオン(DI)水である。
【0028】
ほとんどの用途において、組成物中の水の質量パーセントは、以下の数の群より選ばれる開始点及び終了点を有する範囲で存在すると考えられる:0.5、1、5、10、15、18、20、22、25、30、40、42、45、47、50、60、70、80及び90。組成物中に使用されうる水(全ての供給源から)の範囲の例としては、例えば約0.5質量%~約90質量%、又は1質量%~約85質量%の水、又は、約5.0質量%~約80質量%、又は約10質量%~約70質量%の水が挙げられる。本発明のさらに他の好ましい実施形態は、他の成分の所望の質量パーセントを達成する量の水を含みうる。
【0029】
酸化剤
本発明のエッチング組成物は、「オキシダイザー」とも呼ばれる酸化剤を含む。オキシダイザーは、主に、シリコン-ゲルマニウム合金と共に対応する酸化物を形成することによって、シリコン-ゲルマニウム合金をエッチングするように機能する。酸化剤は、シリコン-ゲルマニウム合金とともに酸化物を形成しないいかなる適切な酸化剤であってもよい。適切な酸化剤としては、1,4-ベンゾキノン、1,2-ベンゾキノン、1,4-ナフトキノン及び9,10-アントラキノンなどのキノンのような弱酸化剤が挙げられる。
【0030】
幾つかの実施形態において、酸化剤の量は組成物の約0.001質量%~約40質量%、又は約0.01質量%~約20質量%、又は約0.05質量%~約10質量%、又は0.1質量%~約5質量%、又は0.2質量%~約3質量%を構成し、又はまさに記載された数及び0.07、0.3、0.6、0.9、1、1.5、2及び8のいずれかを使用して範囲の終点を規定するいずれかの範囲、例えば、約0.01質量%~約3質量%、又は約3質量%~約10質量%を構成する。
【0031】
別の実施形態において、弱酸化剤の混合物を少量、例えば0.1wt%未満、0.05wt%未満、又は0.01wt%未満の追加の酸化剤と使用してよく、該酸化剤は、例えば、ペルオキシ化合物、すなわち、少なくとも1個のペルオキシ基(-O-O-)を含む化合物であり、例えば、過酸化物、過硫酸塩(例えば、モノ過硫酸塩及びジ過硫酸塩)、過炭酸塩及びそれらの酸ならびにそれらの混合物、酸化ハロゲン化物(例えば、ヨウ素酸塩、過ヨウ素酸塩、及び、それらの酸及びそれらの混合物など)、過ホウ酸、過ホウ酸塩、過炭酸塩、ペルオキシ酸(例えば、過酢酸、過安息香酸塩、それらの塩、それらの混合物など)、過マンガン酸塩、セリウム化合物、フェリシアン化物(例えば、フェリシアン化カリウム)、それらの混合物など、過酸化水素、過酸化水素尿素、過ヨウ素酸、ヨウ素酸カリウム、過マンガン酸カリウム、過硫酸アンモニウム、モリブデン酸アンモニウム、硝酸第二鉄、硝酸、硝酸カリウム、アンモニア、及び、それらの混合物が挙げられる。
【0032】
フッ化物イオン源
本開示のエッチング組成物はまた、1種以上のフッ化物イオン源を含む。フッ化物イオンは主に酸化されたSiGeの除去を助けるために機能する。本発明によるフッ化物イオン源を提供する典型的な化合物は、フッ化水素酸、フッ化アンモニウム、第四級フッ化アンモニウム、例えばフッ化ホウ酸塩、フルオロホウ酸、テトラブチルアンモニウムテトラフルオロボレート、六フッ化アルミニウム、及び、下記式を有する脂肪族第一級、第二級又は第三級アミンのフッ化物塩である。
R1NR2R3R4F
上式中、R1、R2、R3及びR4は、個別にH又は(C1~C4)アルキル基を表す。典型的には、R1、R2、R3及びR4基中の総炭素原子数は12個以下の炭素原子である。脂肪族第一級、第二級又は第三級アミンのフッ化物塩の例は、例えば、テトラメチルアンモニウムフルオリド、テトラエチルアンモニウムフルオリド、メチルトリエチルアンモニウムフルオリド及びテトラブチルアンモニウムフルオリドなどである。
【0033】
フッ化物イオンの供給源を選択する際に、供給源がクリーニングされる表面に悪影響を及ぼすイオンを解放するかどうかに関して考慮すべきである。例えば、半導体素子のクリーニングにおいて、クリーニング組成物中のナトリウムイオン又はカルシウムイオンの存在は素子の表面に悪影響を及ぼす可能性がある。幾つかの実施形態において、フッ化物イオン源はフッ化アンモニウムである。
【0034】
クリーニング組成物中のフッ化物イオンの供給源として使用される化合物の量は、ほとんどの用途について、約0.01~約8質量%又は約0.01~約20質量%の40%フッ化アンモニウムの溶液又はその化学量論的等価物を含むと考えられる。好ましくは、化合物は、約0.02~約8質量%、より好ましくは約0.02~約6質量%、さらにより好ましくは約1~約8質量%、そして最も好ましくは約0.025~約5質量%の約40%フッ化アンモニウム溶液を含む。幾つかの実施形態において、組成物は、約0.01~約8質量%又は約0.01~約7質量%のフッ化物イオン源を含み、これは40%フッ化アンモニウム溶液によって提供されうる。好ましくは、化合物は、約0.02~約6質量%のフッ化物イオン源、そして最も好ましくは、約0.025~約5質量%、又は約0.04~約2.5質量%のフッ化物イオン源又は約0.05~約15質量%の40%フッ化アンモニウム溶液、最も好ましくは約0.0625~約12.5質量%、又は約0.1~約6.25質量%の40%フッ化アンモニウム溶液を含む。本発明の組成物に有用な100%フッ化物イオン源の範囲について上記の端点を変換すると、次の端点が提供される:0.004、0.008、0.01、0.02、0.025、0.026、0.04、0.07、0.1、0.2、0.4、1、1.2、2.5、1.8、2、2.4、2.5、2.8、3.2、5、6、7及び8wt%フッ化物イオン源(100%濃度)。端点は、約2~約6wt%、又は約0.004~約0.01wt%、又は約0.04~約2wt%のフッ化物イオン源などの任意の組み合わせで使用することができる。しかしながら、使用されるフッ化物イオンの量は、典型的に、クリーニングされる特定の基板に依存することを理解されたい。例えば、特定のクリーニング用途では、フッ化物エッチングに対して高い耐性を有する誘電材料を含む基板をクリーニングするときに、フッ化物イオンの量は比較的多くなりうる。逆に、他の用途では、例えば、フッ化物エッチングに対して低い耐性を有する誘電材料を含む基板をクリーニングするときに、フッ化物イオンの量は比較的少量にすべきである。後者は、本発明の組成物及び方法で処理されるほとんどの基材についてより典型的である。
【0035】
水混和性溶媒
本発明のエッチング組成物は1種以上の水混和性溶媒を含む。用いることができる水混和性有機溶媒の例は、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチルジグリコール、1,4-ブタンジオール、トリプロピレングリコールメチルエーテル、プロピレングリコールプロピルエーテル、ジエチレングリコールn-ブチルエーテル(例えば、商品名Dowanol DBで市販)、ヘキシルオキシプロピルアミン、ポリ(オキシエチレン)ジアミン、ジメチルアセトアミド(DMAC)、ジメチルスルホキシド、テトラヒドロフルフリルアルコール、グリセロール、アルコール、ピロリドン、例えばn-メチルピロリドン、硫黄含有溶媒、例えばスルホキシド、例えばジメチルスルホキシド(DMSO)、スルホラン、スルホレン、スルホン又はそれらの混合物である。1つの実施形態において、好ましい溶媒は硫黄含有溶媒であり、単独で又は1種を超える硫黄含有溶媒の混合物で、あるいは1種以上の硫黄含有溶媒と1種以上の非硫黄含有溶媒との混合物で用いられる。
【0036】
本発明の幾つかの実施形態において、水混和性有機溶媒はグリコールエーテルを含むことができる。グリコールエーテルの例としては、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノイソプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノイソブチルエーテル、ジエチレングリコールモノベンジルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、ポリエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、トリエチレングリコールエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコール、モノプロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノイソプロピルエーテル、ジプロピレンモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールジイソプロピルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、1-メトキシ-2-ブタノール、2-メトキシ-1-ブタノール、2-メトキシ-2-メチルブタノール、1,1-ジメトキシエタン及び2-(2-ブトキシエトキシ)エタノールが挙げられる。幾つかの実施形態において、1種以上のグリコールエーテルの混合物、又は1種以上のグリコールエーテルと他の溶媒との混合物、又は1種以上のグリコールエーテルと1種以上の硫黄含有溶媒との混合物を本発明のエッチング組成物において使用することができる。
【0037】
ほとんどの用途において、組成物中の水混和性有機溶媒の量は、下記の質量%リストから選択される開始点及び終了点を有する範囲内であることができる:7、12、15、20、25、30、35、40、45、47、50、52、55、60、64、65、70、75、79、80、85、90。そのような溶媒(1種以上の溶媒の総計)の範囲の例としては、組成物の約7質量%~約65質量%、又は約15質量%~約75質量%、又は約20質量%~約80質量%、又は約35質量%~約64質量%、又は約40質量%~約70質量%、又は約45質量%~約60質量%、又は約50質量%~約65質量%、又は約47質量%~約64質量%が挙げられる。
腐食防止剤
エッチング組成物の別の成分はゲルマニウムを保護するように機能する腐食防止剤である。有用な腐食防止剤としては、カテコール、メチルカテコール、エチルカテコール及びtert-ブチルカテコールなどの(C1~C6)アルキルカテコール、ベンゾトリアゾール、(C1~C10)アルキルベンゾトリアゾール、1,2,3-トリアゾール、1,2,4-トリアゾール、ベンゾトリアゾール、(C1~C10)アルキルベンゾトリアゾールなどのトリアゾール、ベンゾトリアゾール-5-カルボン酸、イミダゾール、クエン酸、酒石酸、グルコン酸、サッカリン酸、グリセリン酸、シュウ酸、フタル酸、マレイン酸、マンデル酸、マロン酸、乳酸、サリチル酸、没食子酸、没食子酸メチル及び没食子酸プロピルなどの没食子酸エステル、システイン、メチルビス(1-ジメチルアミノエチル)アミン(polycat 5)、1-オクチルアミン、キノリン及びキノリン誘導体、例えば8-ヒドロキシキノリンなどのヒドロキシ置換キノリン、2-メチルキノリン及び4-メチルキノリンなどのアルキル置換キノリン、臭化セチルトリメチルアンモニウム(CTAB)、11-メルカプトウンデカン酸、n-メチル-n-オクチルアミンが挙げられる。好ましいのは、8-ヒドロキシキノリン、臭化セチルトリメチルアンモニウム(CTAB)、1-メルカプトウンデカン酸及びn-メチル-n-オクチルアミンである。
【0038】
腐食防止剤が存在する場合には、それは組成物の約0.1wt%~約10wt%の量、好ましくは約0.2wt%~約5wt、又は約0.4wt%~約4wt%、又は下記の数のリスト:0.01、0.03、0.05、0.07、0.1、0.2、0.3、0.4、0.8、1、3、4、5、7及び10から選択される開始点及び終了点を有する任意のwt%範囲の量で組成物中に存在すると考えられる。
【0039】
キレート剤(任意成分)
エッチング組成物の別の成分は、溶液中に金属を保持しそして金属残留物の溶解を促進する組成物の能力を増大させるように機能することができるキレート剤である。この目的に有用なキレート剤の典型例は、以下の有機酸及びそれらの異性体及び塩である:エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、ブチレンジアミン四酢酸、(1,2-シクロヘキシレンジアミン)四酢酸(CyDTA)、ジエチレントリアミン五酢酸(DETPA)、エチレンジアミンテトラプロピオン酸、(ヒドロキシエチル)エチレンジアミン三酢酸(HEDTA)、N,N,N',N'-エチレンジアミンテトラ(メチレンホスホン)酸(EDTMP)、トリエチレンテトラアミン六酢酸(TTHA)、1,3-ジアミノ-2-ヒドロキシプロパン-N,N,N,N’-四酢酸(DHPTA)、メチルイミノ二酢酸、プロピレンジアミン四酢酸及びニトロ三酢酸(NTA)。好ましいキレート剤は、EDTA、CyDTAなどのアミノカルボン酸及びEDTMPなどのアミノホスホン酸である。
【0040】
存在する場合には、キレート剤は組成物の約0.1wt%~約10wt%の量、好ましくは0.2wt%~約5wt%、又は0.4wt%~約4wt%、又は下記の数のリスト:0.05、0.07、0.1、0.2、0.3、0.4、1、4、5及び10から選択される開始点及び終了点を有する任意のwt%範囲の量で組成物中に存在すると考えられる。
【0041】
幾つかの実施形態において、本発明の組成物は、組成物に添加される上記のキレート剤の一部又はすべてを含まないか又は実質的に含まず、例えば、組成物はEDTA及び/又はCyDTA及び/又はEDTMPを実質的に含まず、又は含まないことができる。
【0042】
界面活性剤(任意成分)
本発明のエッチング組成物は、場合により、少なくとも1種の界面活性剤を含む。界面活性剤はシリコンをエッチングから保護するように機能する。本明細書に記載の組成物に使用するための界面活性剤としては、限定するわけではないが、両性塩、カチオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、双性イオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤及びそれらの組み合わせが挙げられ、そして限定するわけではないが、ビス(2-エチルヘキシル)ホスフェート、ペルフルオロヘプタン酸、デカン酸、プレフルオロデカン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、ホスホノ酢酸、ドデセニルコハク酸、リン酸水素ジオクタデシル、リン酸二水素オクタデシル、ドデシルアミン、ドデセニルコハク酸モノジエタノールアミド、ラウリン酸、パルミチン酸、オレイン酸、ビャクシン酸、12ヒドロキシステアリン酸、リン酸ドデシルが挙げられる。
【0043】
考えられる非イオン性界面活性剤としては、限定するわけではないが、ポリオキシエチレンラウリルエーテル(Emalmin NL-100(Sanyo)、Brij 30、Brij 98、Brij 35)、ドデセニルコハク酸モノジエタノールアミド(DSDA、Sanyo)、エチレンジアミンテトラキス(エトキシレート-ブロック- プロポキシレート)テトロール(Tetronic 90R4)、ポリエチレングリコール(例えばPEG 400)、ポリプロピレングリコール、ポリエチレン又はポリプロピレングリコールエーテル、エチレンオキシド及びプロピレンオキシドに基づくブロックコポリマー(Newpole PE-68(Sanyo)、Pluronic L31、Pluronic 31R1、Pluronic L61、Pluronic F-127)、ポリオキシプロピレンスクロースエーテル(SN008S, Sanyo)、t-オクチルフェノキシポリエトキシエタノール(Triton X100)、10-エトキシ-9,9-ジメチルデカン-1-アミン(TRITON(登録商標)CF-32)、ポリオキシエチレン(9)ノニルフェニルエーテル、分岐鎖(IGEPAL CO-250)、ポリオキシエチレン(40)ノニルフェニルエーテル、分岐鎖(IGEPAL CO-890)、ポリオキシエチレンソルビトールヘキサオレエート、ポリオキシエチレンソルビトールテトラオレエート、ポリエチレングリコールソルビタンモノオレエート(Tween 80)、ソルビタンモノオレエート(Span 80) Tween 80とSpan 80の組み合わせ、アルコールアルコキシレート(例えば、Plurafac RA-20)、アルキル-ポリグルコシド、エチルペルフルオロブチレート、1,1,3,3,5,5-ヘキサメチル-1,5-ビス[2-(5-ノルボルネン-2-イル)エチル]トリシロキサン、SIS6952.0(Siliclad, Gelest)などのモノマーオクタデシルシラン誘導体、PP1-SG10 Siliclad Glide 10(Gelest)などのシロキサン変性ポリシラザン、Silwet L-77(Setre Chemical Company)、Silwet ECO Spreader(Momentive)及びエトキシル化フルオロ界面活性剤(ZONYL(登録商標)FSO-100、ZONYL(登録商標)FSN-100)などのシリコーン-ポリエーテルコポリマーが挙げられる。
【0044】
考えられるカチオン性界面活性剤としては、限定するわけではないが、テトラエチルアンモニウム、塩化ステアリルトリメチルアンモニウム(Econol TMS-28, Sanyo)、臭化4-(4-ジエチルアミノフェニルアゾ)-1-(4-ニトロベンジル)ピリジニウム、塩化セチルピリジニウム一水和物、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、塩化ベンジルジメチルドデシルアンモニウム、塩化ベンジルジメチルヘキサデシルアンモニウム、臭化ヘキサデシルトリメチルアンモニウム、塩化ジメチルジオクタデシルアンモニウム、塩化ドデシルトリメチルアンモニウム、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムp-トルエンスルホネート、臭化ジドデシルジメチルアンモニウム、塩化ジ(水素化タロー)ジメチルアンモニウム、臭化テトラへプチルアンモニウム、臭化テトラキス(デシル)アンモニウム、Aliquat(登録商標)336及び臭化オキシフェノニウム、塩酸グアニジン(C(NH2)3Cl)、又は、トリフレート塩、例えば、テトラブチルアンモニウムトリフルオロメタンスルホネート、塩化ジメチルジオクタデシルアンモニウム、臭化ジメチルジヘキサデシルアンモニウム及び塩化ジ(水素化タロー)ジメチルアンモニウム(例えば、Arquad 2HT-75、Akzo Nobel)が挙げられる。
【0045】
幾つかの実施形態において、カチオン性界面活性剤が用いられる場合、それはポリアルキレンイミンを含む。好ましくは、ポリアルキレンイミンはポリエチレンイミン(PEI)である。いかなるPEIも使用することができるが、使用される場合に、ホモポリマーポリエチレンイミンを使用することが好ましい。PEIは分岐鎖でも又は直鎖でもよいが、分岐鎖であることが好ましい。
【0046】
使用されるPEIは有効性のためにいかなる式量を有してもよいが、好ましくはPEIはより低い式量(FW)を有することが見出された。1つの実施形態において、PEIは、100~50,000、400~25,000、800~10,000、又は1000~3000のFWを有する。
【0047】
1つの実施形態において、ポリアルキレンイミンはポリエチレンイミン(PEI)を含み、好ましくはPEIは組成物の1質量%未満、好ましくは0.5質量%未満、好ましくは0.25質量%未満、最も好ましくは組成物の0.2質量%未満を占める。好ましくは、PEIは100~2500、好ましくは200~1500、最も好ましくは400~1200の分子量を有する。
【0048】
1つの実施形態において、ポリアルキレンイミンは100~2500、200~1500、400~1200、又は700~900の分子量を有する。800の分子量は特に適している。分子量は、当該技術分野において公知の光散乱技術によって適切に決定される。
【0049】
ポリエチレンイミンは市販されており、例えば、BASFによって供給されているLupasol(登録商標)800である。
【0050】
考えられるアニオン性界面活性剤としては、限定するわけではないが、ポリアクリル酸アンモニウム(例えば、DARVAN 821A)、水中の変性ポリアクリル酸(例えば、SOKALAN CP10S)、リン酸ポリエーテルエステル(例えば、TRITON H-55)、SAS-10、デシルホスホン酸、ドデシルホスホン酸(DDPA)、テトラデシルホスホン酸、ヘキサデシルホスホン酸、オクタデシルホスホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、ポリ(アクリル酸ナトリウム塩)、ポリオキシエチレンラウリルエーテルナトリウム、ジヘキシルスルホコハク酸ナトリウム、ジシクロヘキシルスルホコハク酸ナトリウム塩、7-エチル-2-メチル-4-ウンデシル硫酸ナトリウム(Tergitol 4)、SODOSIL RM02、ならびにZonyl FSJ及びZONYL(登録商標)URなどのリン酸塩フルオロ界面活性剤が挙げられる。
【0051】
双性イオン性界面活性剤としては、限定するわけではないが、アセチレンジオール又は変性アセチレンジオール(例えば、SURFONYL(登録商標)504)、コカミドプロピルベタイン、エチレンオキシドアルキルアミン(AOA-8、Sanyo)、N,N-ジメチルドデシルアミンN-オキシド、コカミンプロピナートナトリウム(sodium cocaminpropinate)(LebonApl-D、Sanyo)、3-(N,N-ジメチルミリスチルアンモニオ)プロパンスルホネート及び(3-(4-ヘプチル)フェニル-3-ヒドロキシプロピル)ジメチルアンモニオプロパンスルホネートが挙げられる。好ましくは、少なくとも1つの界面活性剤は、ドデシルベンゼンスルホン酸、ドデシルホスホン酸、ドデシルホスフェート、TRITON X-100、SOKALAN CP10S、PEG 400及びPLURONIC F-127を含む。
【0052】
存在する場合には、界面活性剤の量は、濃縮物の総質量に基づいて、約0.001wt%~約1wt%、好ましくは約0.1wt%~約1wt%の範囲であることができる。あるいは、幾つかの用途では、存在する場合に、1種以上の界面活性剤は組成物の約0.1wt%~約15wt%、約0.1wt%~約10wt%、又は約0.5wt%~約5wt%、又は約0.1wt%~約1wt%、又は約0.5wt%~約5wtを構成すると考えられる。別の実施形態において、組成物の総質量に基づく組成物中の界面活性剤の質量パーセントは0.05、0.1、0.5、1、5、10、15、20及び30から選択される開始点及び終了点を有する任意の範囲内にあることができる。
【0053】
幾つかの実施形態において、本発明の組成物は、上記の界面活性剤のいずれか又はすべてを含まないか、又は実質的に含まないであろう。
【0054】
緩衝剤(任意成分)
エッチング組成物は、場合により、緩衝剤組成物を含む。緩衝剤組成物は、以下に詳述するようなアミン化合物及び多官能有機酸を含み、それらから本質的になり、又はそれらからなることができる。
【0055】
アミン化合物(緩衝剤)
幾つかの実施形態において、本開示のエッチング組成物の任意成分の緩衝剤組成物は、第二級又は第三級有機アミンを含む。第二級又は第三級有機アミンは主に緩衝剤の共役塩基成分を提供するように機能する。
【0056】
本開示の特定の好ましい実施形態において緩衝剤成分として使用するための第二級又は第三級有機アミン化合物の例としてはアルカノールアミンが挙げられる。好ましいアルカノールアミンとしては、1~5個の炭素原子を有する第二級及び/又は第三級の低級アルカノールアミンが挙げられる。そのようなアルカノールアミンの例としては、ジエタノールアミン、ジ-及びトリイソプロパノールアミン、2-(2-アミノエチルアミノ)エタノール、2-(2-アミノエトキシ)エタノール、トリエタノールアミン、N-エチルエタノールアミン、N,N-ジメチルエタノールアミン、N,N-ジエチルエタノールアミン、N-メチルジエタノールアミン、N-エチルジエタノールアミン、シクロヘキシルアミンジエタノール及びそれらの混合物が挙げられる。
【0057】
1つの実施形態において、アミン化合物は、トリエタノールアミン(TEA)、ジエタノールアミン、N-メチルジエタノールアミン、ジイソプロパノールアミン、N-メチルエタノールアミン及びそれらの混合物からなる群より選ばれるアルカノールアミンであることができる。
【0058】
他の実施形態において、アンモニウム塩を緩衝剤の塩基として、緩衝剤の1種以上の酸とともに使用することができる。酸がアンモニウム塩基と反応すると、それらは、例えば、塩化アンモニウム、硫酸アンモニウム、硝酸アンモニウム、炭酸アンモニウム、次亜塩素酸アンモニウム、塩素酸アンモニウム、過マンガン酸アンモニウム、酢酸アンモニウム、リン酸二塩基性アンモニウム、クエン酸二アンモニウム、クエン酸トリアンモニウム(TAC)、スルファミン酸アンモニウム、シュウ酸アンモニウム、ギ酸アンモニウム、酒石酸アンモニウム、酒石酸水素アンモニウム及びグリコール酸アンモニウムを生成する。幾つかの実施形態において、組成物を緩衝するために、(多官能酸などの酸に加えて)緩衝剤の一部として1種以上の上記アンモニウム塩を組成物に添加することができる。それらの実施形態において、緩衝剤は1種以上のアンモニウム塩及び1種以上の酸を含むことができる。
【0059】
存在する場合、組成物を緩衝するために添加される任意成分の塩基の質量パーセント/有機酸及び無機酸の質量パーセント。緩衝剤溶液は、組成物を緩衝するように作用する組成物中に存在する、弱酸とその共役塩基、又はその逆の混合物からなる水溶液であり、1:10~10:1、又は1:8~8:1、又は1:5~5:1、又は1:3~3:1、又は1:2~2:1、又は1.5:1~1:1.5、又は1.3:1~1:1.3、又は1.1:1~1:1.1の範囲内でありうる。
【0060】
緩衝組成物の一部として添加されるアミン化合物の量は、組成物中に存在する場合に、組成物の約10質量%~約30質量%、具体的には、約20質量%~約30質量%、あるいは、0.1wt%超~10wt%未満、又は0.1wt%超~5wt%未満、又は0.1wt%超~2wt%を占めると考えられる。
【0061】
好ましくは、アミン化合物はpKa<9.0を有する。
【0062】
多官能有機酸(緩衝剤成分)
幾つかの実施形態において、本開示のエッチング組成物の任意成分の緩衝剤組成物は、主に緩衝剤の共役酸部分として機能する1種以上の多官能有機酸を含む。本明細書で使用されるときに、用語「多官能有機酸」は、1個より多くのカルボキシレート基を有する酸又は多酸を指し、限定するわけではないが、(i)ジカルボキシレート酸(例えば、マロン酸、リンゴ酸など)、芳香族部分を有するジカルボン酸(例えば、フタル酸など)及びそれらの組み合わせ、及び、(ii)トリカルボン酸(例えば、クエン酸など)、芳香族部分を有するトリカルボン酸(例えば、トリメリット酸など)及びそれらの組み合わせが挙げられる。酸が組成物中に存在する場合に、それは腐食防止剤と同様に緩衝剤成分としても作用し得るなど、1つより多くの目的を果たすことができる。
【0063】
緩衝剤系に好ましい酸は少なくとも3個のカルボン酸基を有する多価である。そのような酸は少なくとも第二及び第三の解離定数を有し、その各々はそのそれぞれの先行する定数と比較してより高い。これは、第一のプロトンが単一の負電荷のイオンから分離するのに対し、第二のプロトンは二重の負電荷のイオンから分離するので、酸が第二のプロトンよりも第一のプロトンを容易に失うことを示している。二重の負電荷はプロトンを強く引き寄せて酸性イオンに戻すと考えられる。第二及び第三の分離プロトンの間にも同様の関係がある。従って、例えば少なくとも3個のカルボン酸基を有する酸のような多塩基酸は、溶液のpHを、特にそれらのより高いpKa値に対応するpHに制御するのに有用である。したがって、約5~約7のpKa値を有することに加えて、本発明の好ましい多塩基酸は複数のpKa値を有し、ここで最高のpKaは約5~約7である。
【0064】
本発明による少なくとも3つのカルボン酸基を有する多塩基酸は、多価溶媒と非常に相溶性である。好ましい多塩基酸の例としては、トリカルボン酸(例えば、クエン酸、2-メチルプロパン-1,2,3-トリスカルボン酸、ベンゼン-1,2,3-トリカルボン酸[ヘミメリット酸]、プロパン-1,2,3-トリカルボン酸[トリカルバリル酸])、1,シス-2,3-プロペントリカルボン酸[アコニット酸]など)、テトラカルボン酸(例えば、ブタン-1,2,3,4-テトラカルボン酸、シクロペンタンテトラ-1,2,3,4-カルボン酸、ベンゼン-1,2,4,5-テトラカルボン酸([ピロメリット酸]など)、ペンタカルボン酸(例えば、ベンゼンペンタカルボン酸)及びヘキサカルボン酸(例えば、ベンゼンヘキサカルボン酸[メリット酸])などが挙げられる。これらの酸のそれぞれのpKa値を表1に提供する。特に好ましい多塩基酸としてはトリカルボン酸が挙げられ、クエン酸が最も好ましい。
【0065】
【0066】
好ましい多塩基酸であるクエン酸は、3つのpKa値を有するトリカルボン酸であり、それぞれ、三水素クエン酸イオン、二水素クエン酸イオン及び一水素クエン酸イオンに対応するそれぞれ3.13、4.76及び6.40である。本発明の特定の好ましい実施形態において、緩衝剤系はクエン酸の塩を含み、特に好ましい緩衝剤はクエン酸アンモニウム三塩基酸塩(TAC)及びクエン酸の水溶液を含む。
【0067】
本開示の組成物中の多官能有機酸の量は、約0.01wt%~5wt%、好ましくは0.05wt%~3wt%、より好ましくは0.08wt%~2wt%であろうと考えられる。そして、存在する場合には、共役塩は、約0.05wt%~10wt%、好ましくは0.1wt%~8wt%、より好ましくは0.4wt%~5.0wt%又は0.1wt%~2wt%の量で存在する。幾つかの実施形態において、緩衝剤の酸及び塩基のそれぞれは、下記の開始点及び終了点によって規定されるいずれかのwt%範囲内のいずれかの量で存在しうる:0.01、0.05、0.08、0.1、0.4、0.8、1、2、3、5、8及び10。
【0068】
好ましくは、開示されたエッチング組成物の緩衝組成物はアルカリ性であるように組成物を緩衝する。幾つかの実施形態において、pHは約4~約8である。他の実施形態において、pHは約4.5~約7.5である。他の実施形態において、pHは約5~約7である。
【0069】
その他の任意成分
本発明のエッチング組成物はまた、1種以上の下記の添加剤:化学改質剤、染料、殺生物剤及び他の添加剤を含み得る。添加剤は、それらが組成物の性能に悪影響を及ぼさない範囲で添加することができる。
【0070】
染料、殺生物剤などの他の一般に知られている成分は、慣用の量、例えば組成物の合計約5質量%までの量でクリーニング組成物中に含めることができる。
【0071】
幾つかの実施形態において、組成物は、1種以上の下記のもの:水酸化物、KOH又はLiOH又はNaOHなどの金属水酸化物を実質的に含まない、又は含まないことができる。他の実施形態において、組成物は、1種以上のフッ素含有化合物以外のハロゲン化物含有化合物を実質的に含まないか又は含まないことができ、例えば、1種以上の下記のもの:臭素、塩素又はヨウ素含有化合物を実質的に含まないか又は含まないことができる。他の実施形態において、組成物はスルホン酸及び/又はリン酸及び/又は硫酸及び/又は硝酸及び/又は塩酸及び/又は無機酸及び/又は酢酸及び/又は有機酸を実質的に含まない、又は含まないことができる。他の実施形態において、組成物は硫酸塩及び/又は硝酸塩及び/又は亜硫酸塩及び/又は亜硝酸塩を実質的に含まない、又は含まないことができる。他の実施形態において、組成物は、水酸化アンモニウム及び/又はエチルジアミンを実質的に含まない、又は含まないことができる。他の実施形態において、組成物は、ナトリウム含有化合物及び/又はカルシウム含有化合物及び/又はマンガン含有化合物又はマグネシウム含有化合物及び/又はクロム含有化合物及び/又は硫黄含有化合物を実質的に含まない、又は含まないことができる。
【0072】
本発明のエッチング溶液組成物は、典型的には、全ての固形分が水性媒体に溶解するまで、室温にて容器内で成分を一緒に混合することによって調製される。
【0073】
方法
別の態様において、ゲルマニウム及びシリコン-ゲルマニウムを含む複合半導体デバイス上で、シリコン-ゲルマニウムのゲルマニウムに対するエッチング速度を選択的に向上させる方法は提供され、該方法は、水、酸化剤、水混和性有機溶媒、フッ化物イオン源、腐食防止剤及び、場合により緩衝剤及び/又は界面活性剤及び/又はキレート剤を含む水性組成物と、ゲルマニウム及びシリコン-ゲルマニウムを含む複合半導体デバイスを接触させる工程、及び、シリコン-ゲルマニウムが少なくとも部分的に除去された後に複合半導体デバイスをすすぐ工程を含み、ここで、シリコンゲルマニウムのゲルマニウムに対するエッチングの選択比は約2より大きい、又は約3より大きい、又は約10より大きい、又は約15より大きい、又は約20より大きい、又は約25より大きい、又は約30より大きい、又は約35より大きい、又は約40より大きい。追加の乾燥工程もまた、該方法に含まれてもよい。「少なくとも部分的に除去される」とは、材料の少なくとも50%の除去、好ましくは少なくとも80%の除去を意味する。最も好ましくは、本開発の組成物を用いてシリコン-ゲルマニウムの100%除去が達成される。
【0074】
接触工程は、例えば、浸漬、スプレー、又はシングルウエハプロセスによるなどの任意の適切な手段によって実施することができる。接触工程中の組成物の温度は、好ましくは約25~約100℃、より好ましくは約30~約50℃である。
【0075】
幾つかの実施形態において、例えば、本発明の組成物を用いて観察された水平スタックからの、シリコン-ゲルマニウムのGeに対するエッチング選択比は、2より大きい、又は2.5より大きい、又は3より大きい、又は10より大きい、より好ましくは約10又は20~40である。
【0076】
本発明の組成物は、好ましくは下記の性能特性を示す:SiGe/Geに対するエッチング速度選択比は2より大きい、又は2.5より大きい、又は3より大きい、又は10より大きい、及び/又は、SiNエッチング速度は5Å/分未満であり、及び/又は、熱酸化物エッチング速度は10Å/分未満、又は7Å/分未満、又は5Å/分未満、又は3Å/分未満、又は1Å/分未満であり、及び/又は、Geエッチング速度は25Å/分未満、又は20Å/分未満、又は15Å/分未満、又は10Å/分未満、又は7Å/分未満である。
【0077】
接触工程の後は場合によりすすぎ工程がある。すすぎ工程は、任意の適切な手段、例えば、浸漬又はスプレー技術によって脱イオン水で基板をすすぐことによって行うことができる。好ましい実施形態において、すすぎ工程は、脱イオン水と、例えばイソプロピルアルコールなどの有機溶媒との混合物を用いて行うことができる。
【0078】
接触工程及び場合により行うすすぎ工程の後に、場合により乾燥工程があり、適切な手段、例えば、イソプロピルアルコール(IPA)蒸気乾燥、加熱、又は向心力によって行われる。
【実施例】
【0079】
特徴及び利点は以下に説明される例示的な実施例によってより完全に示される。
【0080】
例
クリーニング組成物を調製するための一般的な手順
本実施例の主題である全ての組成物は、1インチのテフロン(登録商標)でコーティングされた攪拌棒を有する250mLビーカー中で成分を混合することによって調製された。典型的には、ビーカーに添加された最初の材料は脱イオン(DI)水であり、次いで、他の成分を不特定の順序で添加した。典型的には、酸化剤は使用直前に添加される。
【0081】
基板の組成
図1は、実施例において本発明の方法によって処理(エッチング)された試験基板100の概略図を示す。
図1のA側はエッチング前の基板であり、
図1のB側は処理(エッチング)後の基板である。
図1のA側に示される基板を作製するために、SiGe/Ge多層をSiウエハ14上にヘテロエピタキシによって堆積した。SiGe/Ge多層堆積は、Si基板14上の厚いSiGe(70%)層12から始めた。SiGe(70%)層12の後に、10nm(又は他の試験では15nm)厚の層でSiGe(65%)18及びGe16を交互に作製し、図示のようにGe/SiGe多層堆積19を形成した。酸化シリコン25及び窒化シリコン27ハードマスク(HM)を、30%Si及び70%Geからなる合金を意味するSiGe(70%)の上に堆積させ、Siウエハ基板14上で平行FINにパターン化した。A側のウエハ上に存在するSiGe/GeナノワイヤFIN18を、その後、本発明の方法及び組成物を用いて選択的にエッチングし(
図1の矢印は方法工程を示す)、B側のウエハ上にGeナノワイヤ16を形成した200。
【0082】
幾つかのSiGe合金を使用して試験基板を作製し、それを以下で試験した。SiGe(70%)は30%のSiと70%のGeからなる合金を意味する。 SiGe(65%)は35%のSiと65%のGeからなる合金を意味する。SiGe(50%)は50%のSiと50%のGeからなる合金を意味する。
【0083】
処理条件
エッチング試験を、400rpmに設定された1/2インチ丸型テフロン(登録商標)攪拌棒を備えた250mlビーカー中の100gのエッチング組成物を用いて行った。エッチング組成物をホットプレート上で約35℃、又は30~45℃の温度に加熱した。試験クーポンを、撹拌しながら約5分間又は3~5分間組成物に浸漬した。
【0084】
次にセグメントをDI水浴又はスプレーで3分間すすぎ、続いて濾過した窒素を用いて乾燥した。ゲルマニウム及びシリコン-ゲルマニウムのエッチング速度は、エッチング前及び後の厚さの変化から評価し、SCI FilmTek SE2000を使用して分光偏光解析法により測定した。
【0085】
例1
この例は、選択された酸化剤がSiGeのエッチング速度に影響を及ぼし得ることを示している。
【表2】
量は成分のwt%である。報告されたGe及びSiGeエッチング速度の単位はA/分である。結果は、酸化剤が存在しない場合に、SiGeが効果的にエッチングされないことを示している。
例2
この実施例は、エッチング速度に対する異なる溶媒の影響を示す。
【表3】
TACはクエン酸トリアンモニウムであり、
8HQは8-ヒドロキシキノリンであり、
DMSOはジメチルスルホキシドであり、
NMPはN-メチル-2-ピロリドンであり、
DMACはジメチルアセトアミドである。
量は成分のwt%である。報告されたGe、SiGe及びTEOSエッチング速度の単位はA/分である。
【0086】
例3
以下の組成物を調製して、Geを保護する際の腐食防止剤に対する効果を決定した。
【表4】
CTABは臭化セチルトリメチルアンモニウムであり、
Polycat 5はメチルビス(2-ジメチルアミノエチル)アミン又はPMDETAであり、
SAS10はアニオン界面活性剤である。
量は成分のwt%である。
報告されたGeエッチング速度の単位はA/分である。
本発明の組成物で処理した後に撮影されたAFM画像は、Geブランケットウエハの表面粗さを減少させた。
処理されたブランケットウエハ上に残っている化学的残留物のオージェ特性は、本発明の組成物で処理した後に、薬品及び腐食防止剤がDIWすすぎ工程において完全に除去されたことを示した。
【0087】
上記の記載は、主に例示を目的としていることが意図される。本発明をその例示的な実施形態に関して示し説明したが、その形態及び詳細における前述及び他の様々な変更、省略及び追加は発明の主旨及び範囲から逸脱することなく行うことができることを当業者は理解すべきである。
本開示は以下も包含する。
[1] マイクロエレクトロニクスデバイスからゲルマニウムよりもシリコン-ゲルマニウム合金を選択的に除去するのに適したエッチング溶液であって、
水、
酸化剤、
水混和性有機溶媒、
フッ化物イオン源、
腐食防止剤、
場合により、界面活性剤、
場合により、緩衝剤、及び、
場合により、キレート剤、
を含む、エッチング溶液。
[2] 前記酸化剤はキノンである、上記態様1記載のエッチング溶液。
[3] 前記酸化剤は1,4-ベンゾキノン、1,2-ベンゾキノン、1,4-ナフトキノン及び9,10-アントラキノンからなる群より選ばれる、上記態様1記載のエッチング溶液。
[4] 組成物は過酸化物を実質的に含まない、上記態様1記載のエッチング溶液。
[5] 前記水混和性溶媒はエチレングリコール、プロピレングリコール、ブチルジグリコール、1,4-ブタンジオール、トリプロピレングリコールメチルエーテル、プロピレングリコールプロピルエーテル、ジエチレングリコールn-ブチルエーテル、ヘキシルオキシプロピルアミン、ポリ(オキシエチレン)ジアミン、ジメチルスルホキシド、テトラヒドロフルフリルアルコール、グリセロール、アルコール、スルホキシド、ジメチルアセトアミド、ピロリドン、硫黄含有溶媒又はそれらの混合物からなる群より選ばれる、上記態様1記載のエッチング組成物。
[6] 前記水混和性溶媒はスルホキシド、スルホラン、スルホレン、スルホン又はそれらの混合物からなる群より選ばれる、上記態様1記載のエッチング組成物。
[7] 前記水混和性溶媒はスルホラン、ジメチルスルホキシド、n-メチルピロリドン、ポリエチレングリコール及びジメチルアセトアミド又はそれらの混合物からなる群より選ばれる、上記態様1記載のエッチング組成物。
[8] 前記腐食防止剤はカテコール、(C
1
~C
6
)アルキルカテコール、トリアゾール、イミダゾール、没食子酸、没食子酸エステル、システイン、メチルビス(1-ジメチルアミノエチル)アミン(polycat 5)、1-オクチルアミン、キノリン、キノリン誘導体、臭化セチルトリメチルアンモニウム(CTAB)、11- メルカプトウンデカン酸及びn-メチル-n-オクチルアミンからなる群より選ばれる、上記態様1記載のエッチング組成物。
[9] 前記腐食防止剤はメチルカテコール、エチルカテコール及びtert-ブチルカテコール、ベンゾトリアゾール、(C
1
~C
10
)アルキルベンゾトリアゾール、1,2,3-トリアゾール、1,2,4-トリアゾール、ベンゾトリアゾール、(C
1
~C
10
)アルキルベンゾトリアゾール、ベンゾトリアゾール-5-カルボン酸、没食子酸メチル、没食子酸プロピル、ヒドロキシ置換キノリン、8-ヒドロキシキノリン、アルキル置換キノリン、2-メチルキノリン及び4-メチルキノリンからなる群より選ばれる、上記態様1記載のエッチング組成物。
[10] 前記腐食防止剤は8-ヒドロキシキノリン、臭化セチルトリメチルアンモニウム(CTAB)、1-メルカプトウンデカン酸及びn-メチル-n-オクチルアミンからなる群より選ばれる、上記態様1記載のエッチング組成物。
[11] 前記腐食防止剤はキノリンを含む、上記態様1記載のエッチング組成物。
[12] 前記緩衝剤は組成物中に存在する、上記態様1記載のエッチング組成物。
[13] 前記緩衝剤はクエン酸及びクエン酸トリアンモニウムを含む、上記態様12記載のエッチング組成物。
[14] 前記緩衝組成物はアミン化合物及び多官能有機酸を含む、上記態様12記載のエッチング組成物。
[15] 前記アミン化合物はアルカノールアミンであり、そして前記多官能有機酸は少なくとも3つのカルボン酸基を有する多塩基酸である、上記態様14記載のエッチング組成物。
[16] 前記多塩基酸はクエン酸、2-メチルプロパン-1,2,3-トリスカルボン酸、ベンゼン-1,2,3-トリカルボン酸[ヘミメリット酸]、プロパン-1,2,3-トリカルボン酸[トリカルバリル酸]、1,シス-2,3-プロペントリカルボン酸[アコニット酸]、例えばブタン-1,2,3,4-テトラカルボン酸、シクロペンタンテトラ-1,2,3,4-カルボン酸、ベンゼン-1,2,4,5-テトラカルボン酸[ピロメリット酸]、ベンゼンペンタカルボン酸及びベンゼンヘキサカルボン酸[メリット酸]及びそれらの混合物からなる群より選ばれる、上記態様15記載のエッチング組成物。
[17] 前記フッ化物イオン源は、フッ化水素酸、フッ化アンモニウム、第四級アンモニウムフッ化物、例えば、フルオロボレート、フルオロホウ酸、テトラブチルアンモニウムテトラフルオロボレート、六フッ化アルミニウム、及び、
R
1
NR
2
R
3
R
4
F
(上式中、R
1
、R
2
、R
3
及びR
4
は、個別にH又は(C
1
~C
4
)アルキル基を表す)
を有する、脂肪族第一級、第二級又は第三級アミンのフッ化物塩からなる群より選ばれる、上記態様1記載のエッチング組成物。
[18] 前記フッ化物イオン源はフッ化アンモニウム、二フッ化アンモニウム、フッ化テトラメチルアンモニウム、フッ化テトラエチルアンモニウム、フッ化メチルトリエチルアンモニウム及びフッ化テトラブチルアンモニウムからなる群より選ばれる、上記態様17記載のエッチング組成物。
[19] 前記フッ化物イオン源はフッ化アンモニウムである、上記態様17記載のエッチング組成物。
[20] 前記組成物は前記キレート剤を含む、上記態様1記載のエッチング組成物。
[21] 組成物は前記界面活性剤を含む、上記態様1記載のエッチング組成物。
[22] ゲルマニウム及びシリコン-ゲルマニウムを含む半導体デバイス上のシリコン-ゲルマニウムのゲルマニウムに対するエッチング速度を選択的に向上させる方法であって、
水、酸化剤、水混和性有機溶媒、フッ化物イオン源及び腐食防止剤、場合により界面活性剤、場合によりキレート剤及び場合により緩衝剤を含む水性組成物と、シリコン及びシリコン-ゲルマニウムを含む半導体デバイスを接触させる工程、及び、
シリコン-ゲルマニウムが少なくとも部分的に除去された後に複合半導体デバイスをすすぐ工程を含み、シリコン-ゲルマニウムのゲルマニウムに対するエッチングの選択比は約2より大きい、方法。
[23] 前記半導体デバイスを乾燥する工程をさらに含む、上記態様22記載の方法。
[24] シリコン-ゲルマニウムのゲルマニウムに対するエッチングの選択比は2.5より大きい、上記態様22記載の方法。
[25] 前記接触工程は約25℃~約60℃の温度で行われる、上記態様22記載の方法。