(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-15
(45)【発行日】2022-01-14
(54)【発明の名称】粗骨材の回収方法、および、粗骨材用洗浄水
(51)【国際特許分類】
B28C 7/16 20060101AFI20220106BHJP
【FI】
B28C7/16
(21)【出願番号】P 2021096618
(22)【出願日】2021-06-09
【審査請求日】2021-06-23
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000183266
【氏名又は名称】住友大阪セメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002734
【氏名又は名称】特許業務法人藤本パートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】本田 和也
(72)【発明者】
【氏名】小田部 裕一
【審査官】山本 吾一
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-190538(JP,A)
【文献】特開2012-000547(JP,A)
【文献】特開平11-319765(JP,A)
【文献】特開平05-238792(JP,A)
【文献】特開2001-139353(JP,A)
【文献】韓国登録特許第10-0714771(KR,B1)
【文献】特開平09-168775(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B28C
C02F
B09B
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
生コンクリートから粗骨材を回収する粗骨材の回収方法であって、
生コンクリートまたは生コンクリートから回収した粗骨材を洗浄水と混合して混合水を形成することで粗骨材を洗浄する洗浄工程と、
洗浄工程後、混合水から粗骨材を回収する回収工程と、
を備えており、
洗浄水は、炭酸水から構成される、
粗骨材の回収方法。
【請求項2】
炭酸水は、二酸化炭素濃度が0.17g/l~1.72g/lである、
請求項1に記載の粗骨材の回収方法。
【請求項3】
洗浄工程は、生コンクリートまたは生コンクリートから分離した粗骨材を炭酸水と混合して混合水を形成する混合工程と、混合水を攪拌する攪拌洗浄工程および混合水を攪拌せずに静置する静置洗浄工程の少なくとも一方とを備える、
請求項1または2に記載の粗骨材の回収方法。
【請求項4】
洗浄工程で使用する炭酸水の体積は、生コンクリートの体積に対して100%以上である、
請求項1~3の何れか一項に記載の粗骨材の回収方法。
【請求項5】
請求項1~4の何れか一項に記載の粗骨材の回収方法で生コンクリートまたは生コンクリートから分離した粗骨材と混合する洗浄水であって、
炭酸水から構成される、
粗骨材用洗浄水。
【請求項6】
二酸化炭素濃度が0.17g/l~1.72g/lである、
請求項5に記載の粗骨材用洗浄水。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生コンクリートから粗骨材を回収する粗骨材の回収方法、および、該回収方法で用いる粗骨材用洗浄水に関する。
【背景技術】
【0002】
生コンクリートの製造や運搬、生コンクリートを用いた製品の製造等を行った際に残る生コンクリートから粗骨材を回収し、回収した粗骨材を再び生コンクリートの材料として使用する場合がある。生コンクリートから粗骨材を回収する方法としては、例えば、特許文献1には、生コンクリートと接触した設備を洗浄水で洗浄し、生コンクリートを含む洗浄水を篩に通すことで、篩上に残る粗骨材を回収する方法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記のような方法では、生コンクリートを構成していた粗骨材以外の成分(以下では、「モルタル成分」とも記す)が、回収した粗骨材に比較的多く付着した状態となる。このような状態の粗骨材を用いて生コンクリートを製造すると、所望する性状(流動性や強度など)の生コンクリートを製造することができない。このため、モルタル成分の付着量が比較的少ない粗骨材を回収することができる粗骨材の回収方法が要求されている。
【0005】
そこで、本発明は、モルタル成分の付着量が比較的少ない粗骨材を回収することができる粗骨材の回収方法、および、斯かる回収方法で用いる粗骨材用洗浄水を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る粗骨材の回収方法は、生コンクリートから粗骨材を回収する粗骨材の回収方法であって、生コンクリートまたは生コンクリートから回収した粗骨材を洗浄水と混合して混合水を形成することで粗骨材を洗浄する洗浄工程と、洗浄工程後、混合水から粗骨材を回収する回収工程と、を備えており、洗浄水は、炭酸水から構成される。
【0007】
炭酸水は、二酸化炭素濃度が0.17g/l~1.72g/lであってもよい。
【0008】
洗浄工程は、生コンクリートまたは生コンクリートから分離した粗骨材を炭酸水と混合して混合水を形成する混合工程と、混合水を攪拌する攪拌洗浄工程および混合水を攪拌せずに静置する静置洗浄工程の少なくとも一方とを備えてもよい。
【0009】
洗浄工程で使用する炭酸水の体積は、生コンクリートの体積に対して100%以上であってもよい。
【0010】
本発明に係る粗骨材用洗浄水は、上記の粗骨材の回収方法で生コンクリートまたは生コンクリートから分離した粗骨材と混合する洗浄水であって、炭酸水から構成される。
【0011】
本発明に係る粗骨材用洗浄水は、二酸化炭素濃度が0.17g/l~1.72g/lであってもよい。
【発明の効果】
【0012】
以上のように、本発明によれば、モルタル成分の付着量が比較的少ない粗骨材を回収することができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
<第一実施形態>
以下、本発明の第一実施形態について説明する。
【0014】
本実施形態に係る粗骨材の回収方法は、生コンクリートから粗骨材を回収するものである。生コンクリートは、流動性を有するものである。また、生コンクリートは、少なくともセメントと粗骨材と細骨材と水とが混練されて形成されるものである。なお、以下では、生コンクリートを構成する粗骨材以外の成分をモルタル成分とも記す。
【0015】
セメントとしては、特に限定されず、市場で入手できる種々のセメントを用いることができる。具体的には、セメントとしては、普通ポルトランドセメント、早強ポルトランドセメント等の各種ポルトランドセメントや、高炉セメント、シリカセメント及びフライアッシュセメント等の各種混合セメントが挙げられる。また、他のセメントとしては、例えば、白色ポルトランドセメント、アルミナセメントが挙げられる。また、さらに他のセメントとしては、例えば、カルシウムアルミネート系、カルシウムサルフォアルミネート系、カルシウムフルオロアルミネート系等の超速硬セメントが挙げられる。そして、セメントとしては、上記の各セメントの一つを用いてもよく、複数を混合して用いてもよい。
【0016】
粗骨材は、5mmの篩目を通過しないものが85質量%以上となるサイズのものを用いることができる。具体的には、粗骨材としては、砂岩砕石、玉砂利(川砂利)、天然軽量粗骨材(パーライト、ヒル石等)、副産軽量粗骨材、人工軽量粗骨材、再生骨材等が挙げられる。セメントに対する粗骨材の使用量としては、特に限定されるものではなく、例えば、150質量%以上500質量%以下であってもよく、160質量%以上490質量%以下であってもよい。
【0017】
細骨材は、10mmの篩目をすべて通過し、5mmの篩目を通過するものが85質量%以上となるサイズのものを用いることができる。具体的には、細骨材としては、山砂、川砂、陸砂、及び、海砂等の天然砂や、砂岩,石灰岩等を人工的に破砕して形成された砕砂(より詳しくは、石灰砕砂等)が挙げられる。セメントに対する細骨材の使用量としては、特に限定されるものではなく、例えば、150質量%以上500質量%以下であってもよく、160質量%以上490質量%以下であってもよい。
【0018】
なお、上記の粗骨材及び細骨材のサイズは、JIS A 1102に従う骨材の篩分け試験方法によって測定されるもので、JIS Z 8801-1の試験用篩目を表したものである。
【0019】
また、生コンクリートに含まる他の材料としては、特に限定されるものではなく、例えば、繊維材(ガラス繊維、鋼繊維、ビニロン繊維、アラミド繊維、ポリプロピレン繊維、炭素繊維等)、混和材(高炉スラグ、フライアッシュ、シリカフューム、膨張材等)、混和剤(減水剤、増粘剤、消泡剤等)等が挙げられる。
【0020】
水としては、特に限定されず、例えば、一般的な上水道水、地下水、後述する回収水等を用いることができる。また、水は、例えば、モルタルやコンクリートを混練する際に使用する減水剤等の混和剤、ポリマーディスパージョン液、収縮低減剤、凝結調整剤等を含むものであってもよい。
【0021】
本実施形態に係る粗骨材の回収方法は、生コンクリートを洗浄水(粗骨材用洗浄水)と混合して混合水を形成する洗浄工程を備える。また、本実施形態に係る粗骨材の回収方法は、混合水から粗骨材を回収する回収工程を備える。
【0022】
洗浄工程で用いる洗浄水(粗骨材用洗浄水)は、炭酸水から構成される。該炭酸水の二酸化炭素濃度(生コンクリートとの混合時の二酸化炭素濃度)としては、特に限定されず、例えば、0.2g/l~1.7g/lであることが好ましく、0.9g/l~1.7g/lであることがより好ましい。二酸化炭素濃度は、下記実施例に記載の方法で測定することができる。生コンクリートと混合する炭酸水の量(体積)としては、特に限定されず、例えば、生コンクリートの体積に対して、好ましくは100%以上、より詳しくは、100%超である。
【0023】
炭酸水の作製方法としては、特に限定されず、例えば、上水道水に二酸化炭素を吹き込む方法、地下水に二酸化炭素を吹き込む方法、および、生コンクリートの製造工場で発生する回収水に二酸化炭素を吹き込む方法等が挙げられる。回収水としては、生コンクリートと接触する設備を洗浄した際に生じる洗浄廃水(生コンクリートを含むもの)から粗骨材および細骨材を除いたものが挙げられる。また、回収水としては、例えば、セメントから溶出した水酸化カルシウム等を含み、アルカリ性が比較的高いもの(具体的には、pH10~12であるもの)が挙げられる。また、回収水は、セメント等の固形分を含むスラッジ水であってもよく、スラッジ水から固形分を除去した上澄水であってもよい。炭酸水を作製する際に用いる二酸化炭素としては、例えば、市販されているもの、各種工場(例えば、セメント工場、生コンクリート工場、コンクリート製品の製造工場等)の設備(例えば、ボイラー設備等)で発生するガスに含まれるもの等が挙げられる。炭酸水の作製は、例えば、後述する混合工程の直前に行うことが好ましい。
【0024】
本実施形態では、洗浄工程は、生コンクリートを炭酸水(粗骨材用洗浄水)と混合して混合水を形成する混合工程を備える。また、洗浄工程は、混合水を攪拌する攪拌洗浄工程、および、混合水を攪拌せずに静置する静置洗浄工程の少なくとも一方を備える。
【0025】
混合工程は、生コンクリート自体を炭酸水と混合することで行ってもよく、生コンクリートと接触した設備を洗浄した際に生じる洗浄廃水(生コンクリートを含むもの)を炭酸水と混合することで行ってもよい。混合工程は、例えば、生コンクリートを収容した容器に炭酸水を供給し、該容器内で生コンクリート自体を炭酸水と混合することで行ってもよく、洗浄廃水(生コンクリートを含むもの)を収容した容器に炭酸水を供給し、該容器内で洗浄廃水(生コンクリートを含むもの)を炭酸水と混合することで行ってもよく、または、炭酸水を収容した容器に生コンクリートまたは洗浄廃水を供給し、斯かる容器内で生コンクリートまたは洗浄廃水を炭酸水と混合することで行ってもよい。
【0026】
炭酸水を供給する容器(生コンクリートまたは洗浄廃水を収容した容器)としては、特に限定されず、例えば、アジテータ車のドラム型容器、生コンクリートを混練するミキサ、これらから排出された生コンクリートまたは洗浄廃水を収容する容器、および、生コンクリートまたは洗浄廃水を流通させる配管等が挙げられる。また、炭酸水を供給する他の容器としては、洗浄廃水から粗骨材を除去したものを収容する集水槽等が挙げられる。
【0027】
攪拌洗浄工程は、例えば、混合水を収容する容器(以下では、「混合水容器」とも記す)を回転させること、または、該混合水容器内の混合水中で攪拌翼を回転させること等で行うことができる。例えば、混合水容器がアジテータ車のドラム型容器である場合、該ドラム型容器を回転させることで混合水を攪拌することができる。なお、ドラム型容器の回転とは、ドラム型容器を、一方向へ1回転以上させることであってもよく、360°未満の所定角度だけ一方向へ回転させることであってもよい。また、ドラム型容器の回転は、一方向への回転と逆方向への回転を交互に行うことであってもよい。
【0028】
攪拌洗浄工程は、炭酸水の量が上記の範囲で行うことが好ましい。また、攪拌洗浄工程を行う時間としては、特に限定されず、例えば、3秒以上であってもよく、5秒以上であってもよい。攪拌洗浄工程は、混合工程と並行して行ってもよく、混合工程後に行ってもよい。また、攪拌洗浄工程は、粗骨材へのモルタル成分の付着状況を確認することで終了するか継続するかを判断することが好ましい。付着状況の確認は、後述する実施例に記載の除去率を確認することで行うことができる。例えば、除去率が99%以上となったことを確認してから攪拌洗浄工程を終了することが好ましい。
【0029】
静置洗浄工程は、混合水を、所定時間、攪拌せずに静置することで行うことができる。また、静置洗浄工程は、炭酸水量が上記の範囲で行うことが好ましい。静置洗浄工程を行う時間としては、特に限定されず、例えば、10秒以上であってもよく、15秒以上であってもよい。静置洗浄工程は、混合工程と並行して行ってもよく、混合工程後に行ってもよい。静置洗浄工程は、粗骨材へのモルタル成分の付着状況を確認することで終了するか継続するかを判断することが好ましい。付着状況の確認は、後述する実施例に記載の除去率を確認することで行うことができる。例えば、除去率が99%以上となったことを確認してから静置洗浄工程を終了することが好ましい。
【0030】
洗浄工程では、攪拌洗浄工程および静置洗浄工程のどちらか一方を1回のみ行ってもよく、攪拌洗浄工程および静置洗浄工程を交互に1回以上行ってもよい。攪拌洗浄工程と静置洗浄工程とを交互に行う場合としては、例えば、最初に攪拌洗浄工程を行った後、静置洗浄工程を行う場合、最初に静置洗浄工程を行った後、攪拌洗浄工程を行う場合等が挙げられる。
【0031】
本実施形態に係る粗骨材の回収方法は、混合水容器内から、混合水を排出する排出工程を備えてもよい。排出工程は、洗浄工程後に行ってもよく、洗浄工程と並行して行ってもよい。排出工程を洗浄工程と並行して行う場合としては、混合工程後に攪拌洗浄工程または静置洗浄工程を行いつつ排出工程を行う場合、または、混合工程と攪拌洗浄工程または静置洗浄工程とを行いつつ排出工程を行う場合が挙げられる。また、排出工程を洗浄工程と並行して行う場合、洗浄工程は、炭酸水の量を上記の範囲に維持しつつ行うことが好ましい。
【0032】
本実施形態では、回収工程は、洗浄工程の後(具体的には、排出工程の後)に行う。回収工程を行う方法としては、特に限定されず、例えば、洗浄工程後の混合水を篩に通し、篩上に残る粗骨材を回収する方法等が挙げられる。混合水を通す篩としては、特に限定されず、例えば、コンベア等の搬送機に付いた篩や、搬送機とは別体の篩等が挙げられる。篩目としては、粗骨材の大きさによって適宜選択することができる。
【0033】
<第二実施形態>
第二実施形態に係る粗骨材の回収方法は、第一実施形態と比較して、生コンクリートから分離した粗骨材を洗浄工程で用いる点が主に異なる。そこで、以下では、第一実施形態と異なる点について説明し、共通する点については、説明を繰り返さない。
【0034】
第二実施形態に係る粗骨材の回収方法は、生コンクリートから粗骨材を回収する第一回収工程を備える。該第一回収工程は、洗浄工程の前に行う。
【0035】
第一回収工程を行う方法としては、特に限定されず、例えば、生コンクリートと接触する設備を洗浄した際に生じる洗浄廃水(生コンクリートを含むもの)を篩に通し、篩上に残る粗骨材を回収する方法等が挙げられる。生コンクリートを接触する設備としては、特に限定されず、例えば、アジテータ車のドラム型容器や生コンクリートを製造するミキサ等が挙げられる。また、洗浄廃水を通す篩としては、特に限定されず、例えば、コンベア等の搬送機に付いた篩や、搬送機とは別体の篩等が挙げられる。篩目としては、粗骨材の大きさによって適宜選択することができる。
【0036】
第一実施形態の混合工程では、生コンクリートまたは洗浄廃水(生コンクリートを含むもの)を炭酸水と混合して混合水を形成しているが、第二実施形態では、混合工程は、第一回収工程で回収した粗骨材(以下では、「回収粗骨材」とも記す)を炭酸水と混合することで混合水を形成する。
【0037】
また、第一実施形態の攪拌洗浄工程は、生コンクリートまたは洗浄廃水(生コンクリートを含むもの)を含む混合水を攪拌することで行うが、第二実施形態では、攪拌洗浄工程は、回収粗骨材を含む混合水を攪拌することで行う。
【0038】
また、第一実施形態の静置洗浄工程は、生コンクリートまたは洗浄廃水(生コンクリートを含むもの)を含む混合水を攪拌せずに静置することで行うが、第二実施形態では、静置洗浄工程は、回収粗骨材を含む混合水を攪拌せずに静置することで行う。
【0039】
また、第一実施形態の排出工程は、生コンクリートまたは洗浄廃水(生コンクリートを含むもの)を含む混合水を混合水容器から排出することで行うが、第二実施形態では、排出工程は、回収粗骨材を含む混合水を混合水容器から排出することで行う。
【0040】
また、第一実施形態の回収工程は、生コンクリートまたは洗浄廃水(生コンクリートを含むもの)を含む混合水から粗骨材を回収することで行うが、第二実施形態では、回収工程(第二回収工程)は、回収粗骨材を含む混合水から回収粗骨材を回収する。
【0041】
以上のように、上記の各本実施形態に係る粗骨材の回収方法および粗骨材用洗浄水によれば、モルタル成分の付着量が比較的少ない粗骨材を回収することができる。
【0042】
即ち、生コンクリートまたは生コンクリートから回収した粗骨材を洗浄水と混合して混合水を形成することで粗骨材を洗浄する洗浄工程と、洗浄工程後、混合水から粗骨材を回収する回収工程と、を備えており、洗浄水は、炭酸水から構成されることで、モルタル成分の付着量が比較的少ない粗骨材を回収することができる。
【0043】
また、炭酸水の二酸化炭素濃度が上記の範囲であることで、モルタル成分の付着量がより少ない粗骨材を回収することができる。
【0044】
また、洗浄工程は、生コンクリートまたは生コンクリートから分離した粗骨材を炭酸水と混合して混合水を形成する混合工程と、混合水を攪拌する攪拌洗浄工程および混合水を攪拌せずに静置する静置洗浄工程の少なくとも一方とを備えることで、モルタル成分の付着量が比較的少ない粗骨材を回収することができる。
【0045】
また、洗浄工程で使用する炭酸水の体積が上記の範囲であることで、モルタル成分の付着量がより少ない粗骨材を回収することができる。
【0046】
なお、本発明に係る粗骨材の回収方法および粗骨材用洗浄水は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。また、上記した複数の実施形態の構成や方法等を任意に採用して組み合わせてもよく(1つの実施形態に係る構成や方法等を他の実施形態に係る構成や方法等に適用してもよく)、さらに、他の各種の変更例に係る構成や方法等を任意に選択して、上記した実施形態に係る構成や方法等に採用してもよいことは勿論である。
【実施例】
【0047】
以下、本発明の実施例について説明するが、本発明は、下記の実施例に限定されるものではない。
【0048】
<モルタル材料>
・セメントC:普通ポルトランドセメント(住友大阪セメント社製)
・粗骨材G:茨城県岩瀬町産砕石5~20mm
・細骨材S:静岡県掛川市産山砂5mm以下
・練り混ぜ水W:水道水
<洗浄水>
・水道水(CO2濃度:0.03g/l以下、pH7.1、水温20℃)
・上澄水(CO2濃度:0.03g/l以下、pH13.1、水温20℃)
・炭酸水1(水道水に炭酸ガスを吹き込んだもの、CO2濃度:1.72g/l)
・炭酸水2(炭酸水1を水道水で希釈したもの、CO2濃度:0.34g/l)
・炭酸水3(炭酸水1を水道水で希釈したもの、CO2濃度:0.17g/l)
・炭酸水4(上澄水に炭酸ガスを吹き込んだもの、CO2濃度:1.72g/l)
・炭酸水5(炭酸水4を上澄水で希釈したもの、CO2濃度:0.34g/l)
・炭酸水6(炭酸水4を上澄水で希釈したもの、CO2濃度:0.17g/l)
【0049】
<生コンクリートの作製>
下記表1の配合で、生コンクリートを作製した。
【0050】
【0051】
<静置洗浄効果の確認>
(1)上記の生コンクリート250mlの質量G0と、生コンクリートに用いる粗骨材の質量(表乾状態の質量)G1とを測定した。
(2)1000mlのプラスティック製の容器に、上記の洗浄水を500ml入れた後、生コンクリート250mlを容器へ投入し、生コンクリートと洗浄水との混合水を形成して静置した(静置洗浄工程)。静置した時間(洗浄時間)は、下記表2に示す。
(3)その後、混合水を5mm目の篩に通し、篩の上に残った粗骨材を回収し(回収工程)、回収した粗骨材の質量G2を測定した。
(4)そして、生コンクリート250mlの質量G0と、生コンクリートの作製に用いた粗骨材の質量G1と、回収した粗骨材の質量G2と、下記式(1)とから、生コンクリートを構成する全てのモルタル成分に対する篩を通過したモルタル成分の質量割合(即ち、粗骨材から分離したモルタル成分の割合)を算出し、除去率(%)とした。つまり、粗骨材から除去されて篩を通過したモルタル成分が、多い場合は除去率が高くなり、少ない場合は除去率が低くなる。換言すれば、除去率が高いことは、粗骨材へのモルタル成分の付着量が少ないことを示す。炭酸水の二酸化炭素濃度、上記質量G0~G2、および、除去率は、下記表2に示す。なお、炭酸水の二酸化炭素濃度は、島津製作所社製TOC計を用い、無機炭素量からCO2量に換算することで求めた。
除去率(%)=[1-{(G2-G1)/(G0-G1)}]×100・・・(1)
【0052】
<攪拌洗浄効果の確認>
(1)上記の静置洗浄工程と同じ条件で、洗浄水を入れた容器に生コンクリートを投入した。
(2)そして、容器を密閉した状態で、1秒間に30cmの距離を1往復する速度で容器を往復移動させることで、容器内の混合水を攪拌した(攪拌洗浄工程)。往復運動させた時間(洗浄時間)は、下記表2に示す。
(3)その後、上記の静置洗浄工程と同じ条件で、回収工程を行った。
(4)生コンクリート250mlの質量G0、生コンクリートの作製に用いた粗骨材の質量G1、および、回収した粗骨材の質量G2を、上記の静置洗浄工程と同一条件で測定し、上記式(1)から、除去率(%)を算出した。炭酸水の二酸化炭素濃度、上記質量G0~G2、および、除去率は、下記表2に示す。
【0053】
【0054】
<まとめ>
上記の表2を見ると、静置洗浄では、各実施例の方が各比較例よりも除去率が高いことが認められる。また、攪拌洗浄では、各実施例と各比較例の洗浄時間が同一のものを比較すると、各実施例の方が除去率が高いことが認められる。つまり、本発明のように、粗骨材の回収において、生コンクリート(具体的には、粗骨材)を炭酸水と混合して洗浄することで、粗骨材からモルタル成分を効果的に除去することができるため、モルタル成分の付着量が比較的少ない粗骨材を回収することができる。
【要約】
【課題】モルタル成分の付着量が比較的少ない粗骨材を回収することができる粗骨材の回収方法を提供することを課題とする。
【解決手段】生コンクリートから粗骨材を回収する粗骨材の回収方法であって、生コンクリートまたは生コンクリートから回収した粗骨材を洗浄水と混合して混合水を形成することで粗骨材を洗浄する洗浄工程と、洗浄工程後、混合水から粗骨材を回収する回収工程と、を備えており、洗浄水は、炭酸水から構成される。
【選択図】なし