(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-15
(45)【発行日】2022-01-14
(54)【発明の名称】基板処理装置、反応管及び半導体装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/31 20060101AFI20220106BHJP
C23C 16/46 20060101ALI20220106BHJP
【FI】
H01L21/31 E
H01L21/31 B
C23C16/46
(21)【出願番号】P 2020027459
(22)【出願日】2020-02-20
【審査請求日】2020-09-08
(31)【優先権主張番号】P 2019059430
(32)【優先日】2019-03-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】318009126
【氏名又は名称】株式会社KOKUSAI ELECTRIC
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】特許業務法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】丸林 哲也
(72)【発明者】
【氏名】村田 慧
(72)【発明者】
【氏名】平野 敦士
(72)【発明者】
【氏名】中村 厳
【審査官】宇多川 勉
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第05948300(US,A)
【文献】国際公開第2006/030857(WO,A1)
【文献】特開平03-235329(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/31
C23C 16/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を処理する処理室を内部に構成し、周囲に設けられた加熱部によって加熱される反応管であって、
前記反応管の下端側に設けられ処理ガスが導入されるガス導入部と、
少なくとも前記基板を処理する基板処理領域に対向する位置では前記反応管の側面に沿うように配置される第1供給部と、前記基板処理領域よりも低い位置に
おいて、前記ガス導入部から前記反応管の天井部に向かう方向に延びる第1予備加熱部と、前記反応管の天井部に向かう方向に対して垂直方向に延びる第2予備加熱部を有し、前記第1予備加熱部と前記第2予備加熱部を組合せることにより、前記ガス導入部と前記第1供給部を連通するように構成されている予備加熱部と、を備え
、
前記第1予備加熱部の断面形状と前記第2予備加熱部の断面形状は異なるよう構成される反応管。
【請求項2】
前記予備加熱部では、前記第1予備加熱部と前記第2予備加熱部を交互に組合わせて予備加熱経路が形成される請求項1記載の反応管。
【請求項3】
前記予備加熱経路は、矩形波状、サインカーブ形状、三角波形状よりなる群から選択される少なくとも一つの形状に形成される請求項2記載の反応管。
【請求項4】
前記予備加熱部では、前記第2予備加熱部が前記予備加熱経路の初めと終わりを構成する請求項2記載の反応管。
【請求項5】
前記第1予備加熱部は、前記第2予備加熱部と前記第2予備加熱部の間に設けられる請求項1記載の反応管。
【請求項6】
前記第1予備加熱部の流路断面積と前記第2予備加熱部の流路断面積は略等しく構成される請求項1記載の反応管。
【請求項7】
前記第2予備加熱部の流路断面積は前記第1予備加熱部の流路断面積より大きく構成される請求項1記載の反応管。
【請求項8】
更に、前記第2予備加熱部は、前記第1予備加熱部と接続するための継手部と、を備え、
前記第1予備加熱部の断面形状と前記第2予備加熱部の断面形状とは同じである請求項1記載の反応管。
【請求項9】
前記第1予備加熱部は、前記第1供給部と同じ構成を有する請求項1記載の反応管。
【請求項10】
前記第1予備加熱部と前記第1供給部は、複数の管を有し、
前記管の本数は同じである請求項1記載の反応管。
【請求項11】
更に、複数の取付部を有し、
前記第2予備加熱部は、前記取付部を介して前記反応管に取り付けられている請求項1記載の反応管。
【請求項12】
更に、前記ガス導入部が配置される反応管側面の他端側であって、前記処理室に前記処理ガスを供給するガス供給部が設けられる第2供給部と、を備え、
前記第2予備加熱部が前記反応管の周方向に配置される範囲は、前記ガス導入部と前記第2供給部の位置関係に応じて決定するよう構成されている請求項1記載の反応管。
【請求項13】
更に、前記処理室の前記処理ガスを排気する排気部を備え、
前記第2予備加熱部が前記反応管の周方向に配置される範囲は、前記ガス導入部が配置される位置から、前記排気部が設けられる側の前記反応管の周方向に前記第2供給部の位置までの範囲である請求項12記載の反応管。
【請求項14】
前記ガス導入部が配置される位置を0度として、前記排気部が設けられる側の前記反応管の周方向に前記第2供給部が配置される位置までの角度をN度とすると、前記第2予備加熱部が前記反応管の周方向に配置される範囲は、0度よりも大きくN度よりも小さく構成される請求項13記載の反応管。
【請求項15】
前記第2予備加熱部が前記反応管の周方向に配置される範囲は、前記ガス導入部が配置される位置を0度として、前記排気部が設けられる側の前記反応管の周方向に180度よりも大きくN度よりも小さく構成される請求項13記載の反応管。
【請求項16】
更に、前記反応管の外側に設けられ、前記処理室の温度を検出する温度センサ、を備え、
前記温度センサは、前記ガス導入部が配置される位置から、前記排気部が設けられない側の前記反応管の周方向に前記第2供給部の位置までの範囲である請求項13記載の反応管。
【請求項17】
前記第2予備加熱部が前記反応管の周方向に配置される範囲は、前記排気部が設けられない側の前記反応管の周方向に前記温度センサが配置される位置までの範囲を含む請求項16記載の反応管。
【請求項18】
基板を処理する処理室を内部に構成し、周囲に設けられた加熱部によって加熱される反応管であって、前記反応管の下端側に設けられ処理ガスが導入されるガス導入部と、少なくとも前記基板を処理する基板処理領域に対向する位置では前記反応管の側面に沿うように配置される第1供給部と、前記基板処理領域よりも低い位置において、前記ガス導入部から前記反応管の天井部に向かう方向に延びる第1予備加熱部と、前記反応管の天井部に向かう方向に対して垂直方向に延びる第2予備加熱部を有し、前記第1予備加熱部と前記第2予備加熱部を組合せることにより、前記ガス導入部と前記第1供給部を連通するように構成されている予備加熱部と、を備え、前記第1予備加熱部の断面形状と前記第2予備加熱部の断面形状は異なるよう構成される反応管と、
前記予備加熱部を介して前記基板に前記処理ガスを供給し、前記基板を処理するよう制御する制御部と、
を備えた基板処理装置。
【請求項19】
基板を処理する処理室が内部に構成される反応管であって、前記反応管の下端側に設けられ処理ガスが導入されるガス導入部と、少なくとも前記基板を処理する基板処理領域と対向する位置では、前記反応管の側面に沿うように配置される第1供給部と、前記基板処理領域よりも低い位置に設けられ、前記ガス導入部から前記反応管の天井部に向かう方向に延びる第1予備加熱部と、前記反応管の前記天井部に向かう方向に対して垂直方向に延びる第2予備加熱部を有し、前記第1予備加熱部と前記第2予備加熱部を組合せることにより、前記ガス導入部と前記第1供給部を連通するように構成されている予備加熱部と、を備え、
前記第1予備加熱部の断面形状と前記第2予備加熱部の断面形状は異なるよう構成される反応管内に前記基板を搬入する工程と、
前記予備加熱部を介して前記基板に前記処理ガスを供給し、前記基板を処理する工程と、
を有する半導体装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、基板処理装置、反応管及び半導体装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
基板に酸化、拡散等の処理を施す基板処理装置において、反応管下部に設けているガス導入ポートからガスを導入し、反応室にガスを供給するよう構成されることがある。特許文献1や特許文献2には、ガスを一時的に溜めて圧力を整える空間が反応管に設けられ、この空間からガスを反応室内に流す反応管構造が記載されている。
【0003】
特許文献3によれば、基板保持部の基板処理領域より下部に予備加熱筒を備え、ガス導入部からのガスを予備加熱筒に流通させてガスを上昇させることが記載されている。
【0004】
また、特許文献4によれば、基板保持部の基板処理領域より下部に配置された配管を流通するガスを予備加熱することが記載されている。
【0005】
しかしながら、ガス導入部から導入されたガスは温度が十分に温まらないまま、基板処理領域の側面に配置された配管を通過することがある。その結果、基板処理領域下部の外周の温度が低下し、基板間の処理結果に差が生ずることがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開平11-067750号公報
【文献】特開2018-088520号公報
【文献】特開2012-248675号公報
【文献】米国特許5948300号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本開示の目的は、基板処理領域に配置された基板間の処理結果の差異を小さくする構成を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の一態様によれば、基板を処理する処理室を内部に構成し、周囲に設けられた加熱部によって加熱される反応管であって、前記反応管の下端側に設けられ処理ガスが導入されるガス導入部と、少なくとも前記基板を処理する基板処理領域に対向する位置では前記反応管の側面に沿うように配置される第1供給部と、前記基板処理領域よりも低い位置において、前記ガス導入部から前記反応管の天井部に向かう方向に延びる第1予備加熱部と、前記反応管の天井部に向かう方向に対して垂直方向に延びる第2予備加熱部を有し、前記第1予備加熱部と前記第2予備加熱部を組合せることにより、前記ガス導入部と前記第1供給部を連通するように構成されている予備加熱部と、を備え、前記第1予備加熱部の断面形状と前記第2予備加熱部の断面形状は異なるよう構成される反応管を備えた構成が提供される。
【発明の効果】
【0009】
基板処理領域のガス流れによる温度低下を抑制することができ、その結果、基板処理領域に配置された基板間の処理結果の差異を小さくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本開示の第1の実施形態に係る基板処理装置を示す概略の側面図である。
【
図2】本開示の第1の実施形態に係る基板処理装置の制御部を示すブロック図である。
【
図3】本開示の第1の実施形態に係る基板処理装置の処理炉を示す縦断面図である。
【
図4】(A)~(C)は本開示の第1の実施形態に係る基板処理装置の反応管の構成を示す斜視図であり、(D)は予備加熱部の構成を示す縦断面図である。
【
図5】本開示の第1の実施形態に係る基板処理装置の処理炉を示す平面断面図である。
【
図6】本開示の第1の実施形態に係る基板処理装置の処理炉の内部構造を示す概略構成図である。
【
図7】本開示の第2の実施形態に係る基板処理装置の処理炉の内部構造を示す概略構成図である。
【
図8】(A)、(B)は本開示の第3の実施形態に係る基板処理装置の反応管の構成を示す斜視図であり、(C)は予備加熱部の構成を示す縦断面図である。
【
図9】比較例1に係る基板処理装置の処理炉を示す縦断面図である。
【
図10】試験例に用いた比較例、及び実施例に係る基板処理装置の反応管の構成を示す側面図、及び平面図である。
【
図11】比較例、及び実施例に係る基板処理装置の反応管の温度分布が示された試験結果である。
【
図12】比較例、及び実施例に係る基板処理装置の反応管の内壁の温度を示すグラフである。
【
図13】本開示の他の実施形態に係る基板処理装置の反応管の構成および予備加熱部の構成を示す概略構成図である。
【
図14】本開示の更に他の実施形態に係る基板処理装置の反応管の構成および予備加熱部の構成を示す概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
[第1の実施形態]
一方に説明する本開示の第1の実施形態に係る処理装置100(基板処理装置)は、半導体ウエハを扱うものとして構成されており、半導体ウエハに酸化膜形成や拡散およびCVDのような処理を施すものとして構成されている。本実施形態において、基板としての半導体ウエハ(以下、ウエハという)200はシリコン等の半導体から作製されており、ウエハ200を収納して搬送するキャリア(収容器)としては、FOUP(Front Opening Unified Pod)110が使用されている。
【0012】
図1に示されているように、第1の実施形態に係る基板処理装置(以下、処理装置ともいう)100は筐体111を備えている。筐体111の正面壁111aの正面前方部には、メンテナンス可能なように開口空間が設けられ、この開口空間を開閉する正面メンテナンス扉104a、104bがそれぞれ建て付けられている。
【0013】
筐体111の正面壁111aには、FOUP(以下、ポッドという)110を搬入搬出するためのポッド搬入搬出口112が筐体111の内外を連通するように開設されており、ポッド搬入搬出口112はフロントシャッタ113によって開閉されるようになっている。
【0014】
ポッド搬入搬出口112の正面前方側にはロードポート114が設置されており、ロードポート114はポッド110を載置した状態で位置合わせするように構成されている。ポッド110はロードポート114上に工程内搬送装置(図示せず)によって搬入され、かつまた、ロードポート114上から搬出される。
【0015】
筐体111内の前後方向の略中央部における上部には、回転可能なポッド保管用の収容棚105が設置されており、収容棚105は複数個のポッド110を保管するように構成されている。すなわち、収容棚105は垂直に立設され、支柱116と、支柱116にn(nは1以上)段の棚板117とを備えており、複数枚の棚板117はポッド110を複数個宛それぞれ載置した状態で保持するように構成されている。
【0016】
筐体111内におけるロードポート114と収容棚105との間には、第一搬送装置としてのポッド搬送装置118が設置されている。ポッド搬送装置118はポッド110を保持したまま昇降可能なポッドエレベータ118aと、ポッド搬送機構118bとで構成されている。ポッド搬送装置118はポッドエレベータ118aとポッド搬送機構118bとの連続動作により、ロードポート114、収容棚105、ポッドオープナ121との間で、ポッド110を搬送するように構成されている。
【0017】
処理装置100は酸化膜形成等の処理を施す半導体製造装置を備えている。半導体製造装置の筐体を構成するサブ筐体119は、筐体111内の前後方向の略中央部における下部に後端にわたって構築されている。
【0018】
サブ筐体119の正面壁119aにはウエハ200(
図3参照)をサブ筐体119内に対して搬入搬出するためのウエハ搬入搬出口(基板搬入搬出口)120が一対、垂直方向に上下二段に並べられて開設されており、上下段のウエハ搬入搬出口120には一対のポッドオープナ121がそれぞれ設置されている。
【0019】
ポッドオープナ121はポッド110を載置する載置台122と、ポッド110のキャップを着脱するキャップ着脱機構123とを備えている。ポッドオープナ121は載置台122に載置されたポッド110のキャップをキャップ着脱機構123によって着脱することにより、ポッド110のウエハ出し入れ口を開閉するように構成されている。
【0020】
サブ筐体119はポッド搬送装置118や収容棚105の設置空間から流体的に隔絶された移載室124を構成している。移載室124の前側領域にはウエハ移載機構(基板移載機構)125が設置されている。基板移載機構125はウエハ移載装置(基板移載装置)125aとウエハ移載装置エレベータ(基板移載装置昇降機構)125bとで構成されている。基板移載装置125aはツイーザ125cによってウエハ200を保持して、ウエハ200を水平方向に回転乃至直動させる。基板移載装置昇降機構125bは基板移載装置125aを昇降させる。基板移載機構125は基板移載装置昇降機構125bおよび基板移載装置125aの連続動作により、ボート(基板保持具)217に対してウエハ200を装填(チャージング)および脱装(ディスチャージング)する。
【0021】
図1、及び
図3に示すように、移載室124には後述する昇降機構としてのボートエレベータ115が設置されている。ボートエレベータ115はボート217を昇降させるように構成されている。ボートエレベータ115に連結された連結具としてのアームには、蓋体としての蓋体219が水平に据え付けられており、蓋体219はボート217を垂直に支持し、処理炉202の下端部を閉塞可能なように構成されている。ボート217は複数本の支持部としての保持部材を備えており、複数枚(例えば、50枚~125枚程度)のウエハ200をその中心を揃えて垂直方向に整列させた状態で、それぞれ水平に、一定の間隔で支持部に保持するように構成されている。
【0022】
尚、保持部材の材質は、石英(SiO2)若しくはSiC(炭化珪素またはシリコンカーバイド)、Si(シリコン)で出来ている。また、材質は、プロセス処理温度によって使い分けている。例えば、プロセス処理温度が950℃以下であれば、石英材を用い、プロセス処理温度が高温処理950℃以上であれば、SiC材やSi材等を用いる。また、支持部の爪の形状は、短いもの、長いもの、ウエハ200との接触面積を小さくしたもの等の様々の種類があり、プロセス条件によって異なるよう構成している。
【0023】
(処理装置のポッド搬入搬出動作)
次に、処理装置100のポッド搬入搬出動作について説明する。
図1に示されているように、ポッド110がロードポート114に供給されると、ポッド搬入搬出口112がフロントシャッタ113によって開放され、ロードポート114の上のポッド110はポッド搬送装置118によって筐体111の内部へポッド搬入搬出口112から搬入される。
【0024】
搬入されたポッド110は収容棚105の指定された棚板117へポッド搬送装置118によって自動的に搬送されて受け渡され、一時的に保管された後、棚板117から一方のポッドオープナ121に搬送されて載置台122に移載されるか、もしくは直接ポッドオープナ121に搬送されて載置台122に移載される。この際、ポッドオープナ121のウエハ搬入搬出口120はキャップ着脱機構123によって閉じられており、移載室124にはクリーンエアが流通され、充満されている。
【0025】
載置台122に載置されたポッド110はその開口側端面がサブ筐体119の正面壁119aにおけるウエハ搬入搬出口120の開口縁辺部に押し付けられるとともに、そのキャップがキャップ着脱機構123によって取り外され、ポッド110のウエハ出し入れ口が開放される。ウエハ200はポッド110から基板移載装置125aのツイーザ125cによってウエハ出し入れ口を通じてピックアップされ、ノッチ合わせ装置(図示せず)にてウエハを整合した後、ボート217へ移載されて装填(ウエハチャージング)される。ボート217にウエハ200を受け渡した基板移載装置125aはポッド110に戻り、次のウエハ200をボート217に装填する。
【0026】
この一方(上段または下段)のポッドオープナ121における基板移載機構125によるウエハ200のボート217への装填作業中に、他方(下段または上段)のポッドオープナ121には収容棚105ないしロードポート114から別のポッド110がポッド搬送装置118によって搬送され、ポッドオープナ121によるポッド110の開放作業が同時進行される。
【0027】
予め指定された枚数のウエハ200がボート217装填されると、処理炉202の下端部が炉口ゲートバルブ147によって開放される。続いて、蓋体219がボートエレベータ115の昇降台によって上昇されて、蓋体219に支持されたボート217が処理炉202内へ搬入(ローディング)されて行く。
【0028】
ローディング後は、処理炉202にてウエハ200に処理が実施される。処理後は、図示しない昇降機構によりボート217が引き出される。その後は、図示しないノッチ合わせ装置でのウエハ200の整合工程を除き、前述と逆の手順で、ウエハ200およびポッド110は筐体111の外部へ払出される。
【0029】
次に、制御部としてのコントローラ240の構成について
図2を参照しながら説明する。コントローラ240は、処理部としてのCPU(中央処理装置)224、一時記憶部としてのメモリ(RAM、ROM等)226、記憶部としてのハードディスクドライブ(HDD)222、通信部としての送受信モジュール228を備えたコンピュータとして構成されている。また、コントローラ240は、上述したCPU224及びメモリ226などを少なくとも含む指令部220と、送受信モジュール228と、ハードディスクドライブ222の他、液晶ディスプレイなどの表示装置及びキーボードやマウス等のポインティングデバイスを含む操作部としてのユーザインタフェース(UI)装置248を構成に含めても構わない。ハードディスクドライブ222には、処理条件及び処理手順が定義されたレシピ等の各レシピファイル、これら各レシピファイルを実行させるための制御プログラムファイル、処理条件及び処理手順を設定するためのパラメータファイルの他、プロセスパラメータを入力する入力画面を含む各種画面ファイル等(いずれも図示せず)が格納されている。
【0030】
なお、コントローラ240の送受信モジュール228には、スイッチングハブ等が接続されている。コントローラ240は、送受信モジュール228によりネットワークを介して外部のコンピュータなどとデータの送信及び受信を行うように構成されている。
【0031】
また、コントローラ240は、送受信モジュール228により通信回線を介して筐体111内に設置されているセンサ等、ガス流量制御部235、圧力制御部236、駆動制御部237、温度制御部238に電気的に接続されている。
【0032】
尚、本開示の実施の形態にかかるコントローラ240は、専用のシステムによらず、通常のコンピュータシステムを用いて実現可能である。例えば、汎用コンピュータに、上述の処理を実行するためのプログラムを格納した記録媒体(USBなど)から当該プログラムをインストールすることにより、所定の処理を実行する各コントローラを構成することができる。
【0033】
そして、これらのプログラムを供給するための手段は任意である。上述のように所定の記録媒体を介して供給できる他、例えば、通信回線、通信ネットワーク、通信システムなどを介して供給してもよい。この場合、例えば、通信ネットワークの掲示板に当該プログラムを掲示し、ネットワークを介して搬送波に重畳して提供してもよい。そして、このように提供されたプログラムを起動し、OSの制御下で、他のアプリケーションプログラムと同様に実行することにより、所定の処理を実行することができる。
【0034】
(処理炉の構成)
図3に示されているように、処理炉202は、ヒータ(加熱部)206を有する。ヒータ206は、円筒形状であり、保持板(ヒータベース)251に支持されることにより垂直に据え付けられている。なお、ヒータ206の上部開口は、蓋部材207で閉塞されている。
【0035】
ヒータ206の内側には均熱管(外管)205がヒータ206と同心円に配設されている。均熱管205はSiC等の耐熱性材料が使用されて、上端が閉塞し下端が開口した円筒形状に形成されている。
【0036】
均熱管205の内側には反応管(内管)204が均熱管205と同心円に配設されている。反応管204は石英等の耐熱性材料が使用されて、上端が閉塞し下端が開口した円筒形状に形成されている。反応管204の筒中空部は処理室201を形成しており、処理室201は、ウエハ200を水平姿勢で垂直方向に多段に整列した状態で保持したボート217を収容可能に構成されている。ここで、反応管204と均熱管205とのスペースは、30mm程度のクリアランスしか設けられておらず、径が大きい管を設けることができない。
【0037】
図4、及び
図5に示すように、反応管204の下部には、外部より処理ガスが供給される管状のガス導入部233が設けられている。
ガス導入部233から、ガス導入部233よりも小径とされた複数本(本実施形態では3本)の断面円形の細管230が反応管204の外周面に沿って上方に延びており、細管230の上端が、反応管204の外周面に配置された予備加熱経路としての予備加熱部260に接続されている。なお、細管230はガス導入部233の一部としてもよい。
複数の細管230が、それぞれ内管204に接触すると共に、細管230同士が隣りあわせになるよう内管204に固定されている。このように、細管230を複数本設けることで、内菅204に一度に供給できる流量を多くすることができる。尚、細管230は、内管204と外管205とのスペースに収まるように細ければよく、管の断面形状が円に限らず、長方形等でもよいのは言うまでもない。例えば、細管230の径は、5mm以上8mm以下の範囲であり、好ましくは5mmである。また細管230の本数も複数本であればよく、例えば、3本以上であってもよい。
【0038】
そして、予備加熱部260は、複数本(本実施形態では3本)の断面円形の細管270に接続され、細管230と同じ構成である細管270は、反応管204の天井部に設けられたバッファ部272を介してガス供給部としてのノズル管274に接続される。反応管204の外周面に配置されたノズル管274に設けられたガス供給部としてのガス孔278からガス導入部233から導入された処理ガスが、処理室201に供給されるように構成される。
【0039】
ここで、本明細書では、管部材はガス導入部233からガス孔278までを連通する部材であり、上述の細管230、予備加熱部260、細管270、バッファ部272、ノズル管274、細管276をまとめて管部材と称することができる。但し、管部材は、細管230、予備加熱部260、細管270、バッファ部272、ノズル管274、細管276を備える本実施形態の構成に限定されない。また、
図3に示すように、これら管部材は、反応管204の外側に設けられるため、反応管204とヒータ206との間に設けられるよう構成される。また、細管230、細管270、細管276は同じ径である。
【0040】
(予備加熱部の構成)
なお、本実施形態では、反応管204の側面(以後、側壁ともいうことがある)において、内部でガス処理されるウエハ200と対向する領域を、基板処理領域としてのウエハ処理領域262と呼び、ウエハ処理領域262の下方で予備加熱部260の配置されている領域をガス予熱領域264と呼ぶ。そして、ガス予熱領域264では、予備加熱部260は、反応管204の側面であって、処理室201にウエハ200が配置されるウエハ処理領域262よりも低い位置に設けられると共にガス導入部233から反応管204の天井部に向かう方向に対して迂回する方向に延びるように構成されている。また、例えば、予備加熱部260は、ガス導入部233から導入された処理ガスが反応管204の天井部まで最短距離で流れる方向と交差する方向に延びるように構成されている。また、例えば、予備加熱部260の少なくとも一部が、反応管204の外周方向に延びるよう設けられる。以下、図を用いて説明する。
【0041】
図4及び
図5に示すように、予備加熱部260には、反応管204の周方向に凡そ190°の範囲に渡って延びる予熱管266が、上下方向に複数(本実施形態では4本)配置されており、互いに隣接する予熱管266の端部が、断面円形の小径の連結管(本実施形態では3本)268によって互い違いに連結され、全体として矩形波状(2サイクル。2往復。)の予備加熱経路を形成している。
なお、本実施形態において、連結管268が第1予備加熱部に相当し、予熱管266が第2予備加熱部に相当し、連結管268と予熱管266とを組み合わせることにより予備加熱部260が構成されている。
なお、予熱管266が反応管204の周方向に設けられる範囲は、ガス導入部233とノズル管274の位置関係によって任意に決められる。一例として、予熱管266が反応管204の周方向に設けられる範囲は、ガス導入部233から周方向にノズル管274の配置されている位置までの範囲である。一例として、予熱管266が反応管204の周方向に設けられる範囲は、
図5に示すように、ガス導入部233が配置される位置を0°として、ノズル管274が配置される位置までをN°としたときに、予熱管266が反応管204の周方向に配置される範囲は、0°よりも大きく、N°よりも小さく設定することができる。さらに、予熱管266が反応管204の周方向に設けられる範囲は、180°よりも大きく、N°よりも小さく設定することができる。尚、上述の190°は一例であるのは言うまでもない。また、予備加熱経路が長くなるように予熱管266は、反応管204の周方向に配置されるように構成される。ここで、連結管266は、細管230(細管270)と同じ構成である。本実施形態では、連結管266の流路断面積は、細管230(3本分)、及び細管270(3本分)の流路断面積と略同じまたは同じに設定されている。
また、
図4(C)、及び
図5に示すように、反応管204と均熱管205(
図4(C)、及び
図5では図示せず)との空間(円筒空間)に設けられている温度計測器としての温度センサ267は、予熱管266と接触もしくは近接しないように、予熱管266の反対側に設けられることが好ましい。つまり、予熱管266と温度センサ267が近くなると、本来、反応管204内の温度を計測する温度センサ267が予熱管266の温度を計測してしまう可能性があるからである。
【0042】
図4(D)に示すように、本実施形態の予熱管266には、反応管204と均熱管205との空間が上述のように非常に狭いため、縦断面形状が矩形の管部材が用いられている。このように、この間隙(空間)の縦断面形状に管部材の形状を合わせることにより、予備加熱経路の断面形状を大きくすることができるので、この予備加熱経路を通過するガスの流量を大きくすることができる。
また、予備加熱部260を構成する予熱管266、及び連結管268は、反応管204の外周面に近接または接触しており、ヒータ206からの熱、及び反応管204からの熱を、予熱管266及び連結管268の内部に構成される予備加熱経路を通過するガスに伝達する役目を有している。
本実施形態では、ガス予熱領域264において、複数の細管230および複数の連結管268の断面形状と予熱管266の断面形状が異なるため、予備加熱部260の細管230と予熱管266との連結部分、および連結管268と予熱管266との連結部分では、予備加熱流路を通過するガスが混合するように構成されている。これにより、この連結部分でのガスの温度の均一化を伴いながら、細管230から導入されたガスが予備加熱部260を介して細管270に導入されるよう構成されている。
このガス混合による温度均一化の効果は回数の多い方が良い。予熱管266の縦方向の長さを短くすれば連結管268と予熱管266との連結部分の回数を多くすることができる。一方で、予熱管266の予備加熱経路の断面積を小さくすることであるため、この予備加熱経路を通過するガスの流量を小さくすることになる。
従って、本実施形態の場合、予備加熱部260は、細管230の流路断面積または連結管268内の予備加熱経路の断面積と予熱管266内の予備加熱経路の断面積が同じか、または、予熱管266内の予備加熱経路の断面積のほうが大きく、かつ連結管268内の予備加熱経路の断面積と予熱管266内の予備加熱経路をガスが複数回通過するように構成される。
また、
図4に示すように、予熱管266は、取付部266aを介して反応管204に固定される。そして、取付部266aは、反応管204の外周方向に複数設けられている。
反応管204に予熱管266を接触させて固定(溶接)すると、(1)予熱管266内を流れるガスにより反応室の温度低下、(2)予熱管266の溶接変形によるガス流量低下、(3)反応管204の溶接変形による反応管内部品(ボート217等)とのクリアランスバラツキ、更には干渉といったリスクが考えられるため、
図4(D)に示す構造が採用されている。この構造によれば、反応管204との溶接部分(面積)や接触面積を極力減らすことができ、上述の溶接面積や接触面積に起因するリスクを低減できる。
【0043】
なお、予備加熱部260を構成している最も下側に配置された予熱管266の端部に、ガス導入部233から延びた細管230の上端が接続されており、最も上側に配置された予熱管266の端部には、上方に向けて延びる細管270の下端が接続されている。
【0044】
(バッファ部272)
反応管204の頂点部(天井部の上側)には、円形に形成されたバッファボックスとしてのバッファ部272が設けられている。バッファ部272には、径方向の一方側に、予備加熱部260から延びた細管270の上端が接続されており、予備加熱部260を経由したガスが内部に導入されるようになっている。
【0045】
反応管204には、細管230、及び細管270が配置されている側とは反対側の外周面に、鉛直方向に沿って延びるノズル管274が設けられている。具体的には、ノズル管274は反応管204の側壁の一部を構成し、ノズル管274の一部は、反応管204と均熱管205との空間にはみ出すようにして設けられている。ノズル管274の上端は、小径の細管276を介してバッファ部272と接続されており、バッファ部272を経由したガスがノズル管274の内部に導入されるようになっている。ノズル管274の径は、横断面形状が円形状となっており、細管276の径よりも大きく構成されている。例えば、20mmより大きく50mm程度の径に調整されている。なお、ノズル管274の一部に細管276を含めるようにしてもよい。
【0046】
ノズル管274には、反応管204の内部に向けてガスを噴出するガス孔278(
図5参照)が、下端から上端に渡って、長手方向に沿って予め設定された所定の間隔(一定の間隔)で複数形成されている。
なお、ガス孔278は、ボート217のウエハ200を支持する複数本の支持部の間隔と同じ間隔で、ウエハ200とウエハ200との間に配置されて、ウエハ200とウエハ200との間にガスを噴出するようにノズル管274に形成されている。
【0047】
図3~
図5に示すように、反応管204の下部には、ノズル管274の配置されている側とは反対側に、反応管204の内部の雰囲気を外部へ排出するため、管状に形成されたガス排気部(排気ポート)231が設けられている。
【0048】
ガス導入部233の上流側には、
図3に示すガス流量制御部としてのMFC(マスフローコントローラ)235を介して図示しない処理ガス供給源、キャリアガス供給源、不活性ガス供給源が接続されている。MFC235は、処理室201に供給するガスの流量を所望の量となるよう所望のタイミングにて制御するように構成されている。本実施形態におけるガス供給系は、少なくとも図示しない処理ガス供給源、キャリアガス供給源、不活性ガス供給源及びMFC235で少なくとも構成されている。
【0049】
また、図示しないシーケンサは、ガスの供給や停止を図示しないバルブを開閉させることにより制御するように構成されている。そして、コントローラ240は、処理室201に供給するガスの流量が所望のタイミングにて所望の流量となるように、これらMFC235やシーケンサを制御するよう構成されている。
【0050】
図6には反応管204内にボート217を装入したときの処理炉202が示されている。尚、ウエハ200は説明のため一部のみ表示しており、横向きの矢印は、処理ガスの流れ(方向)を表している。
ボート217の断熱領域(後述する断熱筒218の断熱板218Aが保持されている領域)は、断熱板218A間のピッチが十数ミリ程度となっており、ノズル管274のガス孔278(
図6では図示せず)の間隔もこのピッチと同じに合せている。そして、最も下側に形成されるガス孔278(
図6では図示せず)は、ガス排気部231(
図5参照)に対向する位置に設けられている。
【0051】
このように、ボート217下端(ガス排気部231に対向する位置)にもガス孔278を設けてガスを供給することができるので、ボート217下端のガス淀みを無くすことができる。特に、断熱領域であってもガス孔278からガスを処理室201に供給し、断熱板218Aの表面に対して平行したガスの流れを形成することができる。このように、ウエハ処理領域262と同様のガス流れを形成することができるので、ウエハ処理領域262下端のガス淀みに起因するパーティクルを抑制できる。
【0052】
なお、前述したバッファ部272で一時的にガスが留まっている間、ガスは、連続的に反応管204からの熱、及びヒータ206からの熱で加熱される。そして、十分に加熱されたガスが、ノズル管274のガス孔278から噴出されて処理室201に供給される。よって、供給されるガスの温度と処理室201を構成する部品(SiC部品、石英部品、ウエハ200)との温度差が小さくなり、この温度差に起因するパーティクルが低減される。
【0053】
図3に示すように、反応管204の下端部には、反応管204の下端開口を気密に閉塞可能なベースフランジとしての保持体257と、蓋体219とが設けられている。蓋体219は例えばステンレス等の金属からなり、円盤状に形成されている。保持体257は例えば石英からなり、円盤状に形成され、蓋体219の上に取付けられている。保持体257の上面には反応管204の下端と当接するシール部材としてのOリング223が設けられる。
【0054】
蓋体219の処理室201と反対側にはボート217を回転させる回転機構254が設置されている。回転機構254の回転軸255は、蓋体219および保持体257を貫通して、断熱筒218とボート217に接続されており、断熱筒218およびボート217を回転させることでウエハ200を回転させるように構成されている。
【0055】
蓋体219は、反応管204の外部に垂直に設備されたボートエレベータ115によって垂直方向に昇降されるように構成されており、これによりボート217を処理室201に対し搬入搬出することが可能となっている。回転機構254およびボートエレベータ115には、駆動制御部237が電気的に接続されており、所望の動作をするよう所望のタイミングにて制御するように構成されている。
【0056】
ボート217は、例えば石英や炭化珪素等の耐熱性材料からなり、複数枚のウエハ200を水平姿勢でかつ互いに中心を揃えた状態で整列させて保持するように構成されている。ボート217の下方には、例えば石英や炭化珪素等の耐熱性材料からなる円筒形状をした断熱部材としての断熱筒218がボート217を支持するように設けられており、ヒータ206からの熱が反応管204の下端側に伝わりにくくなるように構成されている。
【0057】
なお、ヒータ206と温度センサ267には、電気的に温度制御部238が接続されており、温度センサ267により検出された温度情報に基づきヒータ206への通電具合を調整することにより処理室201の温度が所望の温度分布となるよう所望のタイミングにて制御するように構成されている。
【0058】
ガス排気部231には排気配管229が接続されている。排気配管229の下流側にはAPCバルブを少なくとも含む圧力調整装置242、及び排気装置が接続されている。これらは、排気系の一部を構成する。また、圧力制御部236は、圧力調整装置242と排気装置とに電気的に接続され、処理室201の圧力が所定の圧力となるよう排気系を制御している。
【0059】
(作用、効果)
次に、処理装置100に係る処理炉202を用いて、半導体装置の製造工程の一工程として、ウエハ200に酸化、拡散等の処理(特に、PYRO、DRY酸化、アニール等の処理)を施す方法について説明する。以下の説明において、処理装置100を構成する各部の動作はコントローラ240により制御される。
【0060】
複数枚のウエハ200がボート217に装填(ウエハチャージング)されると、複数枚のウエハ200を保持したボート217は、ボートエレベータ115によって持ち上げられて処理室201に搬入(ボートローディング)される。この状態で、蓋体219は保持体257、Oリング223を介して反応管204下端を密閉した状態となる。
【0061】
処理室201が所望の温度となるようにヒータ206によって加熱される。この際、処理室201が所望の温度分布となるように温度センサ267が検出した温度情報に基づきヒータ206への通電具合がフィードバック制御される。
続いて、回転機構254により、断熱筒218、ボート217が回転されることで、ウエハ200が回転される。
【0062】
次いで、図示しない処理ガス供給源およびキャリアガス供給源から供給され、MFC235にて所望の流量となるように制御されたガスは、ガス導入部233に導入される。
反応管204下部のガス導入部233に導入されたガスは、細管230内を流通して予備加熱部260、細管270、及びバッファ部272を介してノズル管274に導入され、複数のガス孔278から処理室201に導入される。
【0063】
ガス導入部233に導入されたガスは、予備加熱部260において、ヒータ206からの熱、及び反応管204からの熱により予熱されて十分に温度が上がってからウエハ処理領域262の細管270を通過するので、ウエハ処理領域262の温度低下が抑制され、反応管204の中のウエハ200と対向するウエハ処理領域262の温度を均一化することができる。
【0064】
なお、ガス導入部233に導入されたガスを予熱しないでウエハ処理領域262を通過させると、細管270に冷たいガスが通過することとなり、細管270の配置されている部分の温度が低下し、反応管204の温度が不均一となる。その結果、ウエハ200の温度均一性に悪影響を及ぼす。
【0065】
予備加熱部260を通過して加熱されたガスは、バッファ部272を経由してノズル管274に設けられたガス孔278から処理室201へ噴き出される。複数のガス孔278から噴き出したガスは、処理室201を通過する際にウエハ200の表面と接触し、ウエハ200に対して酸化、拡散等の処理がなされる。この際、ボート217が回転されることにより、ウエハ200も回転されているので、ガスはウエハ200の表面を万遍なく接触することになる。
【0066】
また、複数のウエハ200と対向するウエハ処理領域262の温度が均一になっているため、複数のウエハ200を均一に加熱することができる。
【0067】
更に、ガス排気部231の下流側に設けた図示しないエジェクタによる排気により、複数のガス孔278のそれぞれから均等な流量のガスが、所定の流速で処理室201に供給され、これにより、例えば、熱処理中のアウトガスを素早く排気系に排気することが可能となっている。
【0068】
なお、ウエハ200に対して水蒸気を用いた処理を行う場合は、MFC235にて所望の流量となるように制御されたガスは水蒸気発生装置に供給され、水蒸気発生装置にて生成された水蒸気(H2O)を含むガスが処理室201に導入される。
【0069】
予め設定された処理時間が経過すると、不活性ガス供給源から不活性ガスが供給され、処理室201が不活性ガスに置換されるとともに、処理室201の圧力が常圧に復帰される。
【0070】
その後、蓋体219が昇降機構151によって下降されて、反応管204の下端が開口されるとともに、処理済のウエハ200がボート217に保持された状態で反応管204の下端から反応管204の外部に搬出(ボートアンローディング)される。その後、処理済のウエハ200はボート217よって取出される(ウエハディスチャージング)。
【0071】
このように、本実施形態の処理装置100では、ウエハ処理領域262に配置された細管270を通過するガスが予備加熱部260で十分に予熱されており、細管270を通過するガスの温度によるウエハ処理領域262への影響が抑制される。この結果、複数のウエハ200に対向するウエハ処理領域262の温度が均一化されているので、温度の不均一に起因するウエハ200の処理不良が抑制される。
【0072】
[第2の実施形態]
次に、第2の実施形態に係る処理装置100を
図7にしたがって説明する。なお、第1の実施形態と同一構成には同一符号を付し、その説明は省略する。
【0073】
図7に示すように、本実施形態の処理装置100では、ヒータ206の上側において、バッファ部272の径方向外側で、かつ反応管204の内部でガス処理されるウエハ200の径方向外側と対向しない位置(ウエハ処理領域262よりも上側)に円筒状の上部ヒータ280が設けられており、均熱管205の上方には、板状の天井ヒータ282が設けられている。なお、上部ヒータ280、及び天井ヒータ282は、コントローラ240により、ヒータ206とは異なる温度に設定可能である。
【0074】
本実施形態の処理装置100では、バッファ部272に溜まったガスを上部ヒータ280、及び天井ヒータ282のうち少なくとも一方で加熱することができる構成となっているので、第1実施形態よりも高温のガスを反応管204の処理室201に供給してウエハ200を処理することができる。これにより、処理室201を構成する部材の温度との差を小さくして処理ガスを処理室201に供給することができるため、この温度差に起因するパーティクルが低減される。なお、その他の作用、効果は、第1の実施形態と同様である。
【0075】
[第3の実施形態]
次に、本開示の第3の実施形態に係る処理装置100を
図8にしたがって説明する。なお、前述した実施形態と同一構成には同一符号を付し、その説明は省略する。
【0076】
図8に示すように、本実施形態の処理装置100の予備加熱部260は、第1の実施形態の予備加熱部260の断面矩形の予熱管266を、断面円形の3本の細管からなる予熱管284に置き換えたものである。なお、予熱管284と連結管268、予熱管284と細管230、及び予熱管284と細管270は、各々継手286を介して接続されている。
本実施形態の連結管168は、縦断面形状が矩形の管部材であり、断面円形の連結管268、予熱管284、細管230、及び細管270とは断面形状が異なっている。 本実施形態では、予熱管284に細管を用いているが、3本一組として流路断面積を多くとっているので、第1の実施形態の予熱管266と同様にガスの予熱を十分に行うことができる。
なお、その他の作用、効果は、第1、2の実施形態と同様である。
【0077】
(試験例)
比較例に係る反応管2種(比較例1、2)と、上述の予備加熱経路を有する実施形態に適用された実施例の反応管3種(実施例1~3)とを用いて試験を実施し、比較検証を行った結果を以下に説明する。なお、以下の比較例、実施例を説明する図面において、上記実施形態と同一構成には同一符号を付している。
【0078】
比較例、及び実施例は、反応管の内部構成、及びノズル管に関しては同一構造であるが、ガス導入部からノズル管に至るガスの経路の構成が異なっている。以下に、ガスの経路の相違点について説明する。
【0079】
比較例1:
図9、
図10に示すように、反応管204の外面において、ガス導入部233から上方に向けて延びる内径φ5mmの3本の細管290が、反応管204の頂点部を横断してノズル管274に直接接続されているものである(予備加熱経路なし)。
【0080】
比較例2:
図10に示すように、反応管204の外面において、ガス導入部233から上方に向けて延びる内径φ21mmの1本の細管292が、反応管204の頂点部を横断してノズル管274に直接接続されているものである(予備加熱経路なし)。
【0081】
実施例1:
図10に示すように、反応管204の外面において、ガス導入部233から上方に向けて内径φ5mmの3本の細管230が予備加熱部260に延びており、予備加熱部260から更に上方に向けて延びる3本の細管270が反応管204の頂点部を横断してノズル管274に接続されているものである。なお、予備加熱部260は、細管230を周方向に190°配設して予備加熱経路を一往復させたものである。
【0082】
実施例2:
図10に示すように、反応管204の外面において、ガス導入部233から上方に向けて内径φ5mmの3本の細管230が予備加熱部260に延びており、予備加熱部260から更に上方に向けて延びる3本の細管270が反応管204の頂点部を横断してノズル管274に接続されているものである。なお、予備加熱部260は、細管230を周方向に190°配設して予備加熱経路を二往復させたものである。
【0083】
実施例3:
図10に示すように、反応管204の外面において、ガス導入部233から上方に向けて内径φ5mmの3本の細管230が予備加熱部260を介して延びており、予備加熱部260から更に上方に向けて延びる3本の細管270が反応管204の頂点部を横断してノズル管274に接続されているものである。なお、予備加熱部260は、内径が24×3mmの断面矩形の角型管294を周方向に190°配設して予備加熱経路を二往復させたものである。
【0084】
図11には、試験結果として、比較例1、2、及び実施例1~3の反応管の内壁温度が濃度の違いで示されている。なお、濃度が濃いほど(黒いほど)温度が高いことを表している。
図11に示すように、比較例1、2では、ガス導入部233から上方に延びる細管部分の温度が、反応管の温度(細管の配設されていない部分の温度)よりも低くなっており、反応管の温度にムラがあり、実施例1~3では、比較例1、2に比較して、反応管の温度のムラが抑制されていることが分かる。
【0085】
実施例(実施例1乃至実施例3)は、比較例(比較例1または比較例2)と比較して、予備加熱部260の予備加熱経路が長くなっているため、より効率よくガスが予熱され、細管270を通過するガスの影響が低減されているため、反応管204の温度のムラが抑制されている。
また、実施例2および実施例3は、実施例1と比較して、予備加熱部260の予備加熱経路が長くなっているため、より効率よくガスが予熱され、細管270を通過するガスの影響が低減されているため、応管204の温度のムラが抑制されている。
更に、実施例3は、実施例2と比較して、予熱管266の予備加熱経路の断面積が連結管268の予備加熱経路の断面積より大きいため、より効率よくガスが予熱され、細管270を通過するガスの影響が低減されているため、応管204の温度のムラが抑制されている。
特に、実施例3は、予備加熱部260の予備加熱経路の断面積(内径)が大きく、かつ予備加熱経路が長くなっているため、予備加熱部260において、ガスに熱を付与する面積、及び接触時間が長くなり、細管270内に流れるまでにガスの温度が十分に高くなっていると考えられる。よって、ウエハ処理領域262における温度ムラが実質的に解消されている。
【0086】
図12の左側のグラフには、ガス導入部側(Inlet nozzle side)の上下方向の温度分布が示されており、
図12の中央のグラフには、ガス排出部側(Outlet nozzle side)の上下方向の温度分布が示されている。グラフの縦軸は、ウエハ処理領域262下端を基準(0)とした高さ寸法(単位mm)、グラフの横軸は反応管204の内壁の温度(℃)を表している。
また、
図12の右側のグラフの縦軸は、ガス導入部側の温度とガス排出部側の温度との温度差が示されている。
図12の右側のグラフに示すように、実施例1~3は、比較例1、2に比較して、ウエハ処理領域262の温度差が小さい、即ち、温度ムラが小さいことが分かる。
このように、本開示の適用された実施例の構成では、反応管204のウエハ処理領域262の温度ムラが抑制されるので、ボート217に配置された複数のウエハ200を均一に処理できることが分かる。
【0087】
[その他の実施形態]
上述の実施形態によれば、予備加熱部260に加え反応管204の頂点部にバッファ部272を設け、バッファ部272で一時的に溜まったガスを加熱するようにしていたが、ノズル管274から処理室201に噴出するガスの温度が十分に高くなる(言い換えれば、ウエハ200の処理に必要な温度になる)ことにより、バッファ部272を省き、
図13に示すように、細管270の端部をノズル管274に接続する構成としてもよい。ここで、本実施形態における管部材は、細管230、予備加熱部260、細管270、ノズル管274である。
【0088】
この実施形態によれば、ウエハ200を処理する処理室201を内部に構成する反応管204であって、反応管204の下端側に設けられ処理ガスが導入されるガス導入部233と、該ガス導入部233と、処理室201に処理ガスを供給するガス孔278を備えて反応管204の側面に設けられるノズル管274と、を連通し、該ガス導入部233から延びて反応管204の天井部を経由し、該反応管204とヒータ206との間に設けられる管部材と、反応管204の側面であって、ガス導入部233の設置位置とは反対側の下端側に設けられ、処理室201から処理ガスを排出させるガス排気部231と、を備え、該管部材は、反応管204の側面であって処理室201に配置されるウエハ200が対向する基板処理領域よりも低い位置に設けられてガス導入部233と天井部とを結ぶ最短距離の方向と交差する方向に延びる予備加熱経路(予備加熱部260)を有する構成が提供される。この実施形態における作用、効果は、少なくとも第1の実施形態と同様である。また、第2の実施形態における上部ヒータ280および天井ヒータ282のどちらか一方を少なくとも追加する構成としてもよく、この場合の作用、効果は、第2の実施形態と同様である。
【0089】
[更に他の実施形態]
更に上述の実施形態によれば、ノズル管274から処理室201に噴出するガスの温度が十分に高くなる(言い換えれば、ウエハ200の処理に必要な温度になる)ようにしていた。しかし、予備加熱部260を設けることにより、処理室201に噴出するガスの温度を十分に高くすることができると共にガス孔278までの流路のガスの温度を十分に高くすることができる。このため、バッファ部272およびノズル管274を省き、
図14に示すように、反応管204の外周面に細管230、270および予備加熱部260を設け、反応管204の天井部で細管270にガス孔278を有するだけのシンプルな構成としてもよい。つまり、本実施形態における、管部材は、細管230、予備加熱部260、細管270である。
【0090】
この実施形態によれば、ウエハ200を処理する処理室201を内部に構成し、周囲に設けられたヒータ206によって加熱される反応管204であって、該反応管204の下端側に設けられ処理ガスが導入されるガス導入部233と、該ガス導入部233と、天井部に設けられて処理室201に処理ガスを供給するガス孔278と、を連通し、反応管204とヒータ206との間に設けられる管部材と、を備え、該管部材は、反応管204の側面であって、処理室201に配置されるウエハ200が対向する基板処理領域よりも低い位置に設けられてガス導入部233と反応管204の天井部とを最短距離で結ぶ方向と交差する方向に延びる予備加熱経路(予備加熱部260)を有する構成が提供される。この実施形態における作用、効果は、第1の実施形態と同様である。
【0091】
更に、この実施形態において、反応管204の天井部に設けられ処理ガスを一時的に滞留させるバッファ部272を有する構成としてもよい。バッファ部272は、管部材から処理室201までを連通させると共に該処理室201に処理ガスを供給するガス孔278を有するように構成されている。この実施形態では、バッファ部272を設けることにより、バッファ部272に滞留しているときにも処理ガスは、ヒータ206により加熱されており、更に効果を増すことが考えられる。更に加えて、第2の実施形態における上部ヒータ280および天井ヒータ282のどちらか一方を少なくとも追加する構成としてもよく、この場合の作用、効果は、第2の実施形態と同様である。
【0092】
なお、本開示は以上の実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲
で種々に変更が可能であることはいうまでもない。
【0093】
上記実施形態の予備加熱部260では、反応管204の側面視で、ガスの流路、即ち、予備加熱経路(予熱管266、連結管268等で構成される)の形状が矩形波状となっていたが、予備加熱経路の形状は、矩形波状に限らず、サインカーブ形状、三角波形状等、所謂ジグザグ形状であれば特にその形状、及びジグザグ形状の延びる方向は限定されない。
【0094】
即ち、予備加熱部260においては、反応管204の側面において、ガスの流路にガス導入部233とバッファ部272とを結ぶ最短距離の方向(反応管204の上下方向)と交差する方向(一例として反応管204の周方向)に延びる部分があり、ガス導入部233からバッファ部272までを最短距離で結ぶのではなく、一例として周方向に迂回して予備加熱経路が長くなる配管があればよい。これにより、ガスを十分に予熱することができる。
【0095】
なお、図示はしないが、予備加熱部260において、ガスが通過する予備加熱経路(配管)が、反応管204の外周面を螺旋状に設けられていてもよい。この場合でも、ガスの流れる予備加熱経路が長くなり、十分にガスを予熱することができる。
【0096】
本開示における実施形態においては、ウエハを処理する場合について説明したが、本開示は液晶パネルのガラス基板や磁気ディスクや光ディスク等の基板を処理する基板処理装置全般に適用することができる。
【符号の説明】
【0097】
100…処理装置(基板処理装置)、200…ウエハ(基板)、201…処理室、202…処理炉、204…反応管(内管)、206…ヒータ(加熱部)、217…ボート(保持具)、230…細管(管部材)、231…ガス排気部〈排気部)、233…ガス導入部、240…コントローラ(制御部)、260…予備加熱部(管部材、予備加熱経路)、262…ウエハ処理領域(基板処理領域)、266…予熱管(第2予備加熱部、管部材、予備加熱経路)、268…連結管(第1予備加熱部、管部材、予備加熱経路)、270…細管(第1供給部、管部材)、274…ノズル管(管部材)、278…ガス孔(ガス供給部)、284…予熱管(管部材、予備加熱経路)