(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-16
(45)【発行日】2022-01-14
(54)【発明の名称】偏光板
(51)【国際特許分類】
G02B 5/30 20060101AFI20220106BHJP
C08F 290/14 20060101ALI20220106BHJP
【FI】
G02B5/30
C08F290/14
(21)【出願番号】P 2017211912
(22)【出願日】2017-11-01
【審査請求日】2020-03-30
(73)【特許権者】
【識別番号】000002093
【氏名又は名称】住友化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【氏名又は名称】松谷 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100104592
【氏名又は名称】森住 憲一
(74)【代理人】
【識別番号】100162710
【氏名又は名称】梶田 真理奈
(72)【発明者】
【氏名】赤石 聡
(72)【発明者】
【氏名】鄭 有延
(72)【発明者】
【氏名】山口 智之
【審査官】酒井 康博
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2010/095409(WO,A1)
【文献】特開2011-221186(JP,A)
【文献】特開2013-140379(JP,A)
【文献】特開2016-062033(JP,A)
【文献】特開2016-035579(JP,A)
【文献】特開2016-153474(JP,A)
【文献】特開2015-052710(JP,A)
【文献】特開2009-230045(JP,A)
【文献】特表2016-541005(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 5/30
C08F 290/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
偏光子と、偏光子の少なくとも一方の面に直接形成された保護膜とを含む偏光板であって、前記保護膜が、
(a)ポリオルガノシルセスキオキサンから構成されるラジカル重合性シリコーン化合物、および
(b)(メタ)アクリルアミド系ラジカル重合性化合物
を含んでなる活性エネルギー線硬化性組成物の硬化物からなり、
該活性エネルギー線硬化性組成物が、活性エネルギー線硬化性組成物に含まれる全重合性化合物の総量に対して5~25質量%の(b)(メタ)アクリルアミド系ラジカル重合性化合物を含んでなり、
前記(b)(メタ)アクリルアミド系ラジカル重合性化合物が、下記式(2):
〔R
1は、水素原子またはメチル基であり、R
2およびR
3は、それぞれ独立して、水素原子または炭素数1~6のアルキル基である〕
で表される化合物である、偏光板。
【請求項2】
活性エネルギー線硬化性組成物が、(c)ウレタン系ラジカル重合性化合物をさらに含んでなる、請求項1に記載の偏光板。
【請求項3】
前記(a)ラジカル重合性シリコーン化合物を構成するポリオルガノシルセスキオキサンが、籠型構造を有し、下記式(1):
[RSiO
3/2]
n (1)
〔式中、Rは(メタ)アクリロイル基を有する有機官能基であり、nは8、10または12である〕
で表される構造単位を有する、請求項1または2に記載の偏光板。
【請求項4】
活性エネルギー線硬化性組成物が、活性エネルギー線硬化性組成物に含まれる全重合性化合物の総量に対して40~90質量%の(a)ラジカル重合性シリコーン化合物を含んでなる、請求項1~3のいずれかに記載の偏光板。
【請求項5】
前記(c)ウレタン系ラジカル重合性化合物が、2~6個のラジカル重合性基を含むウレタン系モノマー、または、2~6個のラジカル重合性基を含み、1000~20000の重量平均分子量を有するウレタン系オリゴマーである、請求項2に記載の偏光板。
【請求項6】
活性エネルギー線硬化性組成物が、活性エネルギー線硬化性組成物に含まれる全重合性化合物の総量に対して3~20質量%の(c)ウレタン系ラジカル重合性化合物を含んでなる、請求項2または
5に記載の偏光板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、偏光板に関する。具体的には、偏光子の少なくとも一方の面に直接形成された、ポリオルガノシルセスキオキサンから構成されるラジカル重合性シリコーン化合物とアクリルアミド系ラジカル重合性化合物とを含む活性エネルギー線硬化性組成物の硬化物からなる保護膜を備える偏光板に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、各種画像表示装置を構成する多くの偏光板においては、偏光子の保護や偏光板の機械強度を高めるために、偏光子の片面または両面に保護層が備えられている。このような保護層としては、接着剤を介して偏光子に貼合する、トリアセチルセルロースやシクロオレフィン等から形成される保護フィルムが広く用いられているが、近年の画像表示装置の薄型化に伴い、硬化性組成物を偏光子上に直接塗布し硬化させることにより形成される薄層化された保護膜を有する偏光板が開発されている。例えば、特許文献1には、籠型構造を有するポリオルガノシルセスキオキサンを主成分とするシリコーン樹脂とラジカル重合性不飽和化合物を含む硬化性樹脂組成物を、偏光子の片面または両面に塗布して硬化させることにより得られる保護膜を有する偏光板が記載されている。また、特許文献2には、重合性基を有するシリコーン化合物と、重合性基および偏光子と結合形成可能な基を有する化合物としてボロン酸系化合物を含むシリコーン系組成物を、偏光子に直接塗布し硬化させることにより得られる偏光子保護フィルムを備える偏光板が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】国際公開第2010/095409号パンフレット
【文献】特開2015-52710号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献に記載されるような偏光板においては、保護層の薄層化は達成できるものの、薄層化されたことにより十分に高い機械強度を維持することが難しく、保護膜が割れ易くなるといった問題があった。また、偏光子と保護膜との密着性も十分でない場合があった。
【0005】
本発明は、保護層の薄層化を達成するとともに、機械強度が高く、かつ、偏光子との密着性に優れた保護膜を備える偏光板を提供することを目的とする。また、機械強度および偏光子との密着性に優れた薄い保護膜を形成し得る活性エネルギー線硬化性組成物を提供することも目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、以下の好適な態様を提供するものである。
[1]偏光子と、偏光子の少なくとも一方の面に直接形成された保護膜とを含む偏光板であって、前記保護膜が、
(a)ポリオルガノシルセスキオキサンから構成されるラジカル重合性シリコーン化合物、および
(b)(メタ)アクリルアミド系ラジカル重合性化合物
を含んでなる活性エネルギー線硬化性組成物の硬化物からなる、偏光板。
[2]活性エネルギー線硬化性組成物が、(c)ウレタン系ラジカル重合性化合物をさらに含んでなる、前記[1]に記載の偏光板。
[3]前記(a)ラジカル重合性シリコーン化合物を構成するポリオルガノシルセスキオキサンが、籠型構造を有し、下記式(1):
[RSiO
3/2]
n (1)
〔式中、Rは(メタ)アクリロイル基を有する有機官能基であり、nは8、10または12である〕
で表される構造単位を有する、前記[1]または[2]に記載の偏光板。
[4]活性エネルギー線硬化性組成物が、活性エネルギー線硬化性組成物に含まれる全重合性化合物の総量に対して40~90質量%の(a)ラジカル重合性シリコーン化合物を含んでなる、前記[1]~[3]のいずれかに記載の偏光板。
[5]前記(b)(メタ)アクリルアミド系ラジカル重合性化合物が、下記式(2):
【化1】
〔R
1は、水素原子またはメチル基であり、R
2およびR
3は、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1~6のアルキル基またはR
2とR
3が一緒になって、それらが結合する窒素原子と共に、酸素原子を環構成員として有してもよい5員環若しくは6員環であり、該アルキル基に含まれる水素原子は、ヒドロキシル基またはアミノ基で置換されていてもよい〕
で表される化合物である、前記[1]~[4]のいずれかに記載の偏光板。
[6]前記(b)(メタ)アクリルアミド系ラジカル重合性化合物が、N,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド、N-ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミドおよびN,N-ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミドからなる群から選択される、前記[1]~[5]のいずれかに記載の偏光板。
[7]活性エネルギー線硬化性組成物が、活性エネルギー線硬化性組成物に含まれる全重合性化合物の総量に対して5~25質量%の(b)(メタ)アクリルアミド系ラジカル重合性化合物を含んでなる、前記[1]~[6]のいずれかに記載の偏光板。
[8]前記(c)ウレタン系ラジカル重合性化合物が、2~6個のラジカル重合性基を含むウレタン系モノマー、または、2~6個のラジカル重合性基を含み、1000~20000の重量平均分子量を有するウレタン系オリゴマーである、前記[2]~[7]のいずれかに記載の偏光板。
[9]活性エネルギー線硬化性組成物が、活性エネルギー線硬化性組成物に含まれる全重合性化合物の総量に対して3~20質量%の(c)ウレタン系ラジカル重合性化合物を含んでなる、前記[2]~[8]のいずれかに記載の偏光板。
[10](a)ポリオルガノシルセスキオキサンから構成されるラジカル重合性シリコーン化合物、および
(b)(メタ)アクリルアミド系ラジカル重合性化合物
を含んでなる活性エネルギー線硬化性組成物。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、機械強度が高く、かつ、偏光子との密着性に優れた薄い保護膜を備える偏光板を提供することができる。また、機械強度および偏光子の密着性に優れた薄い保護膜を形成し得る活性エネルギー線硬化性組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施の形態について、詳細に説明する。なお、本発明の範囲はここで説明する実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を損なわない範囲で種々の変更をすることができる。
【0009】
<偏光板>
〔保護膜〕
本発明の偏光板は、偏光子と、偏光子の少なくとも一方の面に直接形成された保護膜とを含む偏光板である。本発明の偏光板を構成する前記保護膜は、(a)ポリオルガノシルセスキオキサンから構成されるラジカル重合性シリコーン化合物および(b)(メタ)アクリルアミド系ラジカル重合性化合物を含んでなる活性エネルギー線硬化性組成物の硬化物からなる。ここで、偏光子の少なくとも一方の面に「直接形成された保護膜」とは、前記(a)ラジカル重合性シリコーン化合物と(b)(メタ)アクリルアミド系ラジカル重合性化合物とを含む活性エネルギー線硬化性組成物を、偏光子のいずれか一方の面または両面に直接塗布することにより塗布膜を形成した後、塗布膜を構成する活性エネルギー線硬化性組成物を重合して硬化させることにより得られる硬化物からなる膜(層)を意味する。本発明においては、保護膜は偏光子の表面に直接積層された状態にあり、接着剤層または粘着剤層等が介在することなく偏光子に保護膜が直接接着している。本発明においては、保護膜を偏光子の表面に直接形成することにより、接着剤等を介して偏光子に貼合する従来の保護フィルムからなる保護膜(保護層)と比較して、保護膜自体の薄型化を図れるだけでなく、接着剤層または粘着剤層等を介することなく偏光子に保護膜を積層するため、偏光板全体の厚みを薄くすることができる点でも有利である。
【0010】
本発明において、保護膜を構成する活性エネルギー線硬化性組成物は、(a)ポリオルガノシルセスキオキサンから構成されるラジカル重合性シリコーン化合物を含む。ポリオルガノシルセスキオキサンから構成されるラジカル重合性シリコーン化合物を含むことにより、弾性率や表面硬度、耐衝撃性が高く、従来偏光板において広く用いられているトリアセチルセルロース(TAC)等から形成される保護フィルムと同等またはそれより向上した機械特性を有しながら、保護膜の薄型化を達成することができる。
なお、シリコーン化合物とは、Si-O結合を含む化合物であり、本発明において「ポリオルガノシルセスキオキサンから構成される」とは、実質的にポリオルガノシルセスキオキサンからなることを意味し、具体的には、ラジカル重合性シリコーン化合物の総量に対して50質量%以上がポリオルガノシルセスキオキサンであることを意味する。
【0011】
ポリオルガノシルセスキオキサンは、基本となる構成単位がT単位であるポリシロキサンである。本発明において、活性エネルギー線硬化性組成物に含まれるポリオルガノシルセスキオキサンの構造としては、例えば、ランダム型、籠型またはラダー型の構造を有するポリオルガノシルセスキオキサン等が挙げられる。本発明においては、ポリオルガノシルセスキオキサンとして1種のみを用いてもよく、また2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0012】
本発明において、ポリオルガノシルセスキオキサンから構成されるラジカル重合性シリコーン化合物における重合性基としては、(メタ)アクリロイル基、ビニル基、スチリル基、アリル基などが挙げられる。中でも、(メタ)アクリロイル基、ビニル基またはスチリル基が好ましく、(メタ)アクリロイル基がより好ましい。ラジカル重合性シリコーン化合物中における重合性基の数は特に制限されず、1つであっても、複数個存在していてもよい。なお、(メタ)アクリロイル基とは、アクリロイル基またはメタクリロイル基を意味する。
【0013】
本発明において、(a)ラジカル重合性シリコーン化合物を構成するポリオルガノシルセスキオキサンとしては、籠型構造を有するものが好ましく、加えて下記式(1):
[RSiO
3/2]
n (1)
〔式中、Rは(メタ)アクリロイル基を有する有機官能基であり、nは8、10または12である〕
で表される構造単位を有するものであることが好ましい。式(1)中、有機官能基としては、下記式(3):
【化2】
〔式中、R
10は、水素原子またはメチル基を表し、mは1~3の整数を表す。〕
で表される官能基が挙げられる。
【0014】
本発明において、機械的強度、特に弾性率を向上させることができることから、(a)ラジカル重合性シリコーン化合物を構成するポリオルガノシルセスキオキサンとしては、籠型のポリオルガノシルセスキオキサンを含むことが好ましい。籠型ポリオルガノシルセスキオキサンとしては、含まれるケイ素原子全てに重合性基を有する、分子量分布および分子構造の制御されたものが好ましいが、重合性基の一部がアルキル基やフェニル基等に置換されているものであってもよい。また、完全な多面体構造であってもよく、一部が開裂したような構造であってもよい。
【0015】
籠型ポリオルガノシルセスキオキサンとしては、具体的に、例えば下記式(4)~(6)で表される構造体が挙げられる。
【化3】
【0016】
また、下記式(7):で表される開裂の籠型ポリオルガノシルセスキオキサンも好適に用いることができる。
(R11SiO3/2)n1-(R11(R12)2SiO1/2)m1 (7)
式中、R11は、(メタ)アクリロイル基を有する有機官能基を表す。R12は、メチル基を表す。(n1+m1)個あるR11は互いに同じであっても異なっていてもよい。有機官能基としては、上記式(3)で表される有機官能基が好ましく挙げられる。n1は、8、10、12または14を示し、m1は、0、2、4または6を示す。
【0017】
上記式(7)で表される開裂の籠型ポリオルガノシルセスキオキサンとしては、具体的に、以下のような構造体が挙げられる。なお、下記構造体においては、「R11」を「R1」と、「R12」を「R2」として表記する。
【0018】
【0019】
ポリオルガノシルセスキオキサンとして、非籠型のポリオルガノシルセスキオキサンを含んでいてもよいが、籠型構造を有するポリオルガノシルセスキオキサンを含むことにより、弾性率を向上させることができることから、ポリオルガノシルセスキオキサンの総量に基づいて、籠型構造を有するポリオルガノシルセスキオキサンを50質量%以上含むことが好ましく、60質量%以上含むことがより好ましく、70質量%以上含むことがさらに好ましい。
【0020】
本発明において活性エネルギー線硬化性組成物は、活性エネルギー線硬化性組成物に含まれる全重合性化合物の総量に対して、(a)ポリオルガノシルセスキオキサンから構成されるラジカル重合性シリコーン化合物を40~90質量%含むことが好ましく、45~85質量%含むことがより好ましく、50~80質量%含むことがさらに好ましい。(a)ポリオルガノシルセスキオキサンから構成されるラジカル重合性シリコーン化合物の含有量が上記範囲内であると、弾性率や表面硬度が高く、機械特性に優れた保護膜を得ることができる。
【0021】
本発明において、保護膜を構成する活性エネルギー線硬化性組成物は、(b)(メタ)アクリルアミド系ラジカル重合性化合物を含む。(メタ)アクリルアミド系ラジカル重合性化合物を含むことにより、偏光子と保護膜との密着性を効果的に向上させることができる。また、例えば、偏光子に対してシランカップリング処理等の表面処理を施さなくても偏光子と保護膜との高い密着性を確保することができるため、偏光板の製造に必要な工程を少なくすることができ、生産性の点においても有利である。
【0022】
本発明において、(b)(メタ)アクリルアミド系ラジカル重合性化合物は、(メタ)アクリルアミド骨格を有するラジカル重合性化合物である限り特に限定されるものではないが、下記式(2):
【化5】
〔R
1は、水素原子またはメチル基であり、R
2およびR
3は、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1~6のアルキル基またはR
2とR
3が一緒になって、それらが結合する窒素原子と共に、酸素原子を環構成員として有してもよい5員環若しくは6員環であり、該アルキル基に含まれる水素原子は、ヒドロキシル基またはアミノ基で置換されていてもよい〕
で表される化合物である
で表される化合物であることが好ましい。
【0023】
上記式(2)で表される(メタ)アクリルアミド系ラジカル重合性化合物としては、例えば、N-メチル(メタ)アクリルアミド、N-メチロール(メタ)アクリルアミドブチルエーテル、N-エチル(メタ)アクリルアミド、N-n-プロピル(メタ)アクリルアミド、N-イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N-シクロプロピル(メタ)アクリルアミド、ダイアセトン(メタ)アクリルアミド、N-ヒドロキシメチル(メタ)アクリルアミド、N-ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジエチル(メタ)アクリルアミド、N-メチル,N-エチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、N-メチロール(メタ)アクリルアミドメチルエーテル、N-メチロール(メタ)アクリルアミドエチルエーテル、N-メチロール(メタ)アクリルアミドプロピルエーテル、N-ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N-ビニル-2-ピロリドン、N-ビニル-ε-カプロラクタム、及び(メタ)アクリロイルモルホリン等が挙げられる。中でも、偏光子への密着性の観点から、N,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド、N-ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミドからなる群から選択される化合物が好ましい。なお「(メタ)アクリルアミドラジカル重合性化合物」とは、アクリルアミドラジカル重合性化合物またはメタクリルアミドラジカル重合性化合物の意味である。
【0024】
本発明において活性エネルギー線硬化性組成物は、活性エネルギー線硬化性組成物に含まれる全重合性化合物の総量に対して、(b)(メタ)アクリルアミド系ラジカル重合性化合物を5~25質量%含むことが好ましく、10~25質量%含むことがより好ましく、10~20質量%含むことがさらに好ましい。(b)(メタ)アクリルアミド系ラジカル重合性化合物の含有量が上記範囲内であると、偏光子との密着性に優れた保護膜を得ることができる。
【0025】
本発明において、保護膜を構成する活性エネルギー線硬化性組成物は、(c)ウレタン系ラジカル重合性化合物を含むことが好ましい。ウレタン系ラジカル重合性化合物を含むことにより、かかる硬化性組成物の硬化物の靱性を高め、耐衝撃性を向上させることができる。また、硬化性組成物の取扱性が向上し、加工性に優れる点においても有利である。
【0026】
本発明において、(c)ウレタン系ラジカル重合性化合物としては、2~6個のラジカル重合性基を含むウレタン系モノマーおよびウレタン系オリゴマーであることが好ましい。ウレタン系モノマーおよびウレタン系オリゴマーは、それぞれ単独で用いてもよく、組み合わせて用いてもよい。
【0027】
ウレタン系オリゴマーとしては、2~6個のラジカル重合性基を含み、ウレタン結合を有する数重量平均分子量が1000~20000であるオリゴマーであることが好ましい。ウレタン系オリゴマーの数平均分子量が上記範囲内であると、保護膜の適度な柔軟性と表面硬度の両立が可能となる。本発明において、ウレタン系オリゴマーの重量平均分子量は、1500~15000であることがより好ましく、2000~10000であることがさらに好ましい。なお、重量平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィーにより求めることができる。
【0028】
上記ウレタン系ラジカル重合性化合物は、当該分野において従来公知の方法により調製することができる。例えば、(メタ)アクリル酸または(メタ)アクリル酸エステルとポリオールとから得られるヒドロキシ(メタ)アクリレートを、ジイソシアネートと反応させることにより得ることができる。ウレタン系ラジカル重合性化合物を調製できる。
【0029】
上記(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0030】
上記ポリオールとしては、例えば、エチレングリコール、1,3-プロピレングリコール、1,2-プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,9-ノナンジオール、1,10-デカンジオール、2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールエステル、トリシクロデカンジメチロール、1,4-シクロヘキサンジオール、スピログリコール、水添ビスフェノールA、エチレンオキサイド付加ビスフェノールA、プロピレンオキサイド付加ビスフェノールA、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、グリセリン、3-メチルペンタン-1,3,5-トリオール、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、グルコース類等が挙げられる。
【0031】
上記ジイソシアネートとしては、例えば、芳香族、脂肪族または脂環族の各種のジイソシアネート類を使用することができる。上記ジイソシアネートの具体例としては、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、2,4-トリレンジイソシアネート、4,4-ジフェニルジイソシアネート、1,5-ナフタレンジイソシアネート、3,3-ジメチル-4,4-ジフェニルジイソシアネート、キシレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、4,4-ジフェニルメタンジイソシアネート、およびこれらの水添物等が挙げられる。
【0032】
また、ウレタン系ラジカル重合性化合物として市販品を用いてもよく、例えば、日本合成化学工業(株)製 商品名「紫光」シリーズ、ダイセル・サイテック(株)製脂肪族ウレタンアクリレートなどを用いることができる。
【0033】
本発明において活性エネルギー線硬化性組成物は、活性エネルギー線硬化性組成物に含まれる全重合性化合物の総量に対して、(c)ウレタン系ラジカル重合性化合物を3~20質量%含むことが好ましく、5~20質量%含むことがより好ましく、5~15質量%含むことがさらに好ましい。(c)ウレタン系ラジカル重合性化合物の含有量が上記範囲内であると、耐衝撃性に優れた保護膜を得ることができる。
【0034】
本発明において、活性エネルギー線硬化性組成物は、(a)ポリオルガノシルセスキオキサンから構成されるラジカル重合性シリコーン化合物、(b)(メタ)アクリルアミド系ラジカル重合性化合物および(c)ウレタン系ラジカル重合性化合物以外のラジカル重合性化合物(以下、「(d)他のラジカル重合性化合物」ともいう)を含んでいてもよい。(d)他のラジカル重合性化合物としては、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、トリメチロールプロパンアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、エトキシ化イソシアヌル酸トリアクリレートなどが挙げられる。
【0035】
活性エネルギー線硬化性組成物がこのような他のラジカル重合性化合物を含む場合、その含有量は、活性エネルギー線硬化性組成物に含まれる全重合性化合物の総量に対して、1~40質量%であることが好ましく、5~30質量%であることがより好ましい。
【0036】
活性エネルギー線硬化性組成物は、通常、活性エネルギー線硬化性組成物に含まれるラジカル重合性化合物の重合を開始させるためのラジカル重合開始剤を含有する。ラジカル重合開始剤としては、活性エネルギー線の照射によりラジカル重合性化合物の重合を開始させることができるものであればよく、公知のものを用いることができる。具体的には、例えば、アセトフェノン系開始剤、ベンゾインエーテル系開始剤、ベンゾフェノン系開始剤、チオキサントン系開始剤等が挙げられる。
【0037】
ラジカル重合開始剤は市販品を容易に入手することが可能であり、例えば、BASF(株)製の商品名「IRGACURE」シリーズ等を用いることができる。
【0038】
活性エネルギー線硬化性組成物におけるラジカル重合開始剤の含有量は、活性エネルギー線硬化性組成物に含まれる全重合性化合物の総量100質量部に対して、通常0.5~10質量部であり、好ましくは1~8質量部である。ラジカル重合開始剤の含有量が上記範囲であると、活性エネルギー線硬化性組成物を十分に硬化させることができ、得られる硬化物からなる保護膜と偏光子との優れた密着性を確保することができる。
【0039】
本発明において、活性エネルギー線硬化性組成物は、必要に応じて硬化性組成物に一般的に用いられる添加剤を含むことができる。そのような添加剤としては、例えば、可塑剤、光増感剤、レベリング剤、酸化防止剤、安定剤、難燃剤、粘度調整剤、抑泡剤、帯電防止剤、などが挙げられる。
【0040】
本発明の偏光板において、保護膜は、例えば、(a)ラジカル重合性シリコーン化合物および(b)(メタ)アクリルアミド系ラジカル重合性化合物、ならびに必要に応じて、(c)ウレタン系ラジカル重合性化合物、(d)他の重合性化合物、ラジカル重合開始剤および添加剤を混合して得られる硬化性組成物を、偏光子上に塗布し、活性エネルギー線を照射することにより塗布した硬化性組成物を硬化させることにより形成することができる。
【0041】
照射する活性エネルギー線としては、例えば、可視光、紫外線、赤外線、X線、α線、β線、γ線および電子線等を用いることができる。中でも、重合反応の進行を制御し易い点、および光重合装置として当分野で広範に用いられているものが使用できるという点で、紫外光が好ましい。
【0042】
前記活性エネルギー線の光源としては、例えば、低圧水銀ランプ、中圧水銀ランプ、高圧水銀ランプ、超高圧水銀ランプ、キセノンランプ、ハロゲンランプ、カーボンアーク灯、タングステンランプ、ガリウムランプ、エキシマレーザー、波長範囲380~440nmを発光するLED光源、ケミカルランプ、ブラックライトランプ、マイクロウェーブ励起水銀灯、メタルハライドランプ等が挙げられる。
【0043】
活性エネルギー線硬化性組成物への照射強度と照射時間との積として表される積算光量は好ましくは500~10000mJ/m2、より好ましくは1000~8000mJ/m2となるように設定される。活性エネルギー線硬化性組成物への積算光量が前記範囲内であると、重合開始剤由来の活性種を十分量発生させて、硬化反応をより確実に進行させることができ、また、照射時間が長くなりすぎず、良好な生産性を維持できる。なお、活性エネルギー線の照射による活性エネルギー線硬化性組成物の硬化は、例えば、偏光子の偏光度、透過率および色相といった偏光板の諸機能が低下しない条件で行なうことが好ましい。
【0044】
本発明の偏光板において、保護膜の厚みは特に限定されるものではないが、薄膜であっても高い機械特性を維持することができることから、例えば1~100μmの範囲内であってよく、2~80μmであることが好ましく、5~50μmであることがより好ましい。
【0045】
〔偏光子〕
本発明の偏光板を構成し得る偏光子としては、入射する自然光から直線偏光を取り出す機能を有する光学フィルムであって、例えば、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムに二色性色素を吸着配向させたものを用いることができる。
【0046】
偏光子の厚みは、通常2μm以上30μm以下であり、好ましくは25μm以下、より好ましくは15μm以下、さらに好ましくは10μm以下、特に好ましくは7μm以下である。なお、偏光子としてポリビニルアルコール系樹脂フィルムに二色性色素を吸着配向させたものを適用する場合は、ポリビニルアルコール系樹脂単体を延伸してもよいし、基材などにポリビニルアルコール系樹脂の溶液を塗工して乾燥させた後、基材と共に延伸させ、基材を除去してもよい。基材と共に延伸する場合、例えば厚み7μm以下の薄膜の偏光子を容易に作製することができる。前記基材としては、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリカーボネートフィルム、トリアセチルセルロースフィルム、ノルボルネンフィルム、ポリエステルフィルム、ポリスチレンフィルムなどが挙げられる。
【0047】
ポリビニルアルコール系樹脂フィルムを構成するポリビニルアルコール系樹脂としては、ポリ酢酸ビニル系樹脂をケン化したものを使用することができる。ポリ酢酸ビニル系樹脂としては、酢酸ビニルの単独重合体であるポリ酢酸ビニルのほか、酢酸ビニルとこれに共重合可能な他の単量体との共重合体が例示される。酢酸ビニルに共重合可能な他の単量体としては、不飽和カルボン酸、オレフィン、ビニルエーテル、不飽和スルホン酸、アンモニウム基を有するアクリルアミドなどが挙げられる。
【0048】
ポリビニルアルコール系樹脂のケン化度は、通常80モル%以上であり、好ましくは90~100モル%であり、より好ましくは94~100モル%である。ケン化度が上記下限以上であると、得られる偏光板の耐水性および耐湿熱性が良好であり、ケン化度が上記上限以下であると、染色速度が速く、効率よく生産することができるとともに十分な偏光性能を有する偏光子を得ることができる。
【0049】
ポリビニルアルコール系樹脂は、一部が変性されている変性ポリビニルアルコールであってもよく、例えば、エチレンおよびプロピレン等によるオレフィン変性;アクリル酸、メタクリル酸およびクロトン酸等による不飽和カルボン酸変性;不飽和カルボン酸のアルキルエステル、アクリルアミドなどにより変性されたもの等を使用してもよい。ポリビニルアルコール系樹脂の変性の割合は、30モル%未満であることが好ましく、10%未満であることがより好ましい。変性の割合が上記範囲であると、二色性色素が吸着しやすく、十分な偏光性能を有する偏光子を得ることができる。
【0050】
ポリビニルアルコール系樹脂の平均重合度は、好ましくは100~10000程度であり、より好ましくは1500~8000、さらに好ましくは2000~5000である。平均重合度が上記下限以上であると、十分な偏光性能を得ることができ、平均重合度が上記上限以下であると、溶媒への溶解性が良好で、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムを容易に形成することができる。
【0051】
ポリビニルアルコール系樹脂としては適宜の市販品を使用することができる。好適な市販品としては、例えば、いずれも商品名で、株式会社クラレ製の“PVA124”および“PVA117”(いずれもケン化度:98~99モル%)、“PVA624”(ケン化度:95~96モル%)、“PVA617”(ケン化度:94.5~95.5モル%);日本合成化学工業株式会社製の“N-300”および“NH-18”(いずれもケン化度:98~99モル%)、“AH-22”(ケン化度:97.5~98.5モル%)、“AH-26”(ケン化度:97~98.8モル%)、;日本酢ビ・ポバール株式会社製の“JC-33”(ケ
ン化度:99モル%以上)、“JF-17”、“JF-17L”および“JF-20”(いずれもケン化度:98~99モル%)、“JM-26”(ケン化度:95.5~97.5モル%)、“JM-33”(ケン化度:93.5~95.5モル%)および“JP-45”(ケン化度:86.5~89.5モル%)などが挙げられる。
【0052】
偏光子は、通常、このようなポリビニルアルコール系樹脂フィルムを一軸延伸する工程、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムを二色性色素で染色することにより、二色性色素を吸着させる工程、二色性色素が吸着されたポリビニルアルコール系樹脂フィルムをホウ酸水溶液で処理する工程、およびホウ酸水溶液による処理後に水洗処理を行う工程を経て製造される。なお、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムを二色性色素で染色することにより、二色性色素がポリビニルアルコール系樹脂フィルムに含まれることとなる。かかる製造方法にて偏光子を製造する場合、偏光子は二色性色素を含む延伸ポリビニルアルコール系樹脂フィルムとなる。
【0053】
ポリビニルアルコール系樹脂フィルムの一軸延伸は、二色性色素の染色前に行なってもよく、染色と同時に行なってもよく、または染色の後に行なってもよい。一軸延伸を染色の後で行なう場合には、この一軸延伸は、ホウ酸処理の前に行なってもよく、ホウ酸処理中に行なってもよい。これらの複数の段階で一軸延伸を行なうことも可能である。一軸延伸にあたっては、周速の異なるロール間で一軸に延伸してもよく、熱ロールを用いて一軸に延伸してもよい。また、一軸延伸は、大気中で延伸を行なう乾式延伸であってもよく、溶剤を用い、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムを膨潤させた状態で延伸を行なう湿式延伸であってもよい。延伸倍率は、偏光子の変形を抑制する観点から、好ましくは8倍以下、より好ましくは7.5倍以下、さらに好ましくは7倍以下である。また、延伸倍率は、偏光子としての機能を発現させる観点からは、通常3倍以上である。延伸倍率を前記範囲とすることにより、偏光子の経時的な変形を抑制することができる。
【0054】
ポリビニルアルコール系樹脂フィルムを二色性色素で染色する方法としては、例えば、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムを、二色性色素を含有する水溶液に浸漬する方法を挙げることができる。二色性色素としては、例えば、ヨウ素または二色性有機染料が用いられる。二色性有機染料としては、レッドBR、レッドLR、レッドR、ピンクLB、ルビンBL、ボルドーGS、スカイブルーLG、レモンイエロー、ブルーBR、ブルー2R、ネイビーRY、グリーンLG、バイオレットLB、バイオレットB、ブラックH、ブラックB、ブラックGSP、イエロー3G、イエローR、オレンジLR、オレンジ3R、スカーレットGL、スカーレットKGL、コンゴーレッド、ブリリアントバイオレットBK、スプラブルーG、スプラブルーGL、スプラオレンジGL、ダイレクトスカイブルー、ダイレクトファーストオレンジS、ファーストブラック等を挙げることができる。二色性色素は、1種のみを単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。なお、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムは、染色処理の前に、水への浸漬処理を施しておくことが好ましい。
【0055】
二色性色素としてヨウ素を用いる場合は、通常、ヨウ素およびヨウ化カリウムを含有する水溶液に、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムを浸漬して染色する方法が採用される。この水溶液におけるヨウ素の含有量は、通常、水100質量部あたり0.01~1質量部であり、ヨウ化カリウムの含有量は、通常、水100質量部あたり0.5~20質量部である。二色性色素としてヨウ素を用いる場合、染色に用いる水溶液の温度は、通常20~40℃であり、また、この水溶液への浸漬時間(染色時間)は、通常20~1800秒である。
なお、ヨウ素およびヨウ化カリウムを含有する水溶液にポリビニルアルコール系樹脂フィルムを浸漬する前に、膨潤させて染色を容易にするために、該フィルムを水に浸漬してもよい。かかる浸漬処理の温度は通常20~80℃、好ましくは30~60℃であり、浸漬時間(染色時間)は通常20~1800秒程度である。
【0056】
二色性色素として二色性染料を用いる場合は、通常、水溶性二色性染料を含む水溶液に、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムを浸漬して染色する方法が採用される。この水溶液における二色性染料の含有量は、通常、水100質量部あたり1×10-4~10質量部、好ましくは1×10-3~1質量部であり、より好ましくは1×10-3~1×10-2質量部である。この水溶液は、硫酸ナトリウムなどの無機塩を染色助剤として含有していてもよい。二色性色素として二色性染料を用いる場合、染色に用いる染料水溶液の温度は、通常20~80℃であり、また、この水溶液への浸漬時間(染色時間)は、通常10~1800秒である。
【0057】
二色性色素による染色後のホウ酸処理は、染色されたポリビニルアルコール系樹脂フィルムをホウ酸水溶液に浸漬することにより行なうことができる。ホウ酸水溶液におけるホウ酸の量は、水100質量部あたり、通常2~15質量部、好ましくは5~12質量部である。二色性色素としてヨウ素を用いる場合には、このホウ酸水溶液はヨウ化カリウムを含有することが好ましい。ホウ酸水溶液におけるヨウ化カリウムの量は、水100質量部あたり、通常0.1~15質量部、好ましくは5~12質量部である。ホウ酸水溶液への浸漬時間は、通常60~1200秒、好ましくは150~600秒、より好ましくは200~400秒である。ホウ酸水溶液の温度は、通常50℃以上であり、好ましくは50~85℃、より好ましくは60~80℃である。
【0058】
ホウ酸処理後のポリビニルアルコール系樹脂フィルムは、通常、水洗処理される。水洗処理は、例えば、ホウ酸処理されたポリビニルアルコール系樹脂フィルムを水に浸漬することにより行なうことができる。水洗処理における水の温度は、通常5~40℃であり、浸漬時間は、通常1~120秒である。水洗後は乾燥処理が施されて、偏光子が得られる。乾燥処理は、熱風乾燥機や遠赤外線ヒーターを用いて行なうことができる。乾燥処理の温度は、通常30~100℃、好ましくは40~95℃、より好ましくは50~90℃である。乾燥処理の時間は、通常40~600秒、好ましくは50~600秒であり、より好ましくは60~600秒である。
【0059】
このように、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムに、一軸延伸、二色性色素による染色、およびホウ酸処理が施されることによって、偏光子を得ることができる。
【0060】
本発明において、偏光子と保護膜との接着面には、接着性向上のため、プラズマ処理、コロナ処理、紫外線照射処理、フレーム(火炎)処理、ケン化処理などの表面処理を適宜施してもよいが、本発明の活性エネルギー線硬化性組成物の硬化物からなる保護膜は、偏光子に対する密着性に優れるため、偏光子の表面に上記処理を施さなくても偏光子と保護膜との十分に高い密着性を確保することができる。
【0061】
本発明の偏光板は、必要に応じて、さらに、位相差フィルム、視角補償フィルムおよび輝度向上フィルム等の光学層を積層していてもよい。本発明の偏光板において光学層は、当該分野で既知の材料を用いて形成することができる。
【0062】
本発明の偏光板は、公知の方法で製造することができる。例えば、偏光子に活性エネルギー線硬化性組成物を塗布し、活性エネルギー線を照射して硬化性組成物を硬化させることにより保護膜を形成することにより製造することができる。活性エネルギー線硬化性組成物の塗布する方法としては、例えばダイコーティング、ナイフコーティング、カーテンコーティング等の公知の方法を採用することができる。
【0063】
<活性エネルギー線硬化性組成物>
本発明は、活性エネルギー線硬化性組成物にも関する。本発明の活性エネルギー線硬化性組成物は、(a)ポリオルガノシルセスキオキサンから構成されるラジカル重合性シリコーンおよび(b)(メタ)アクリルアミド系ラジカル重合性化合物を含んでなる。また、好ましくは、(c)ウレタン系ラジカル重合性化合物をさらに含んでなる。本発明の活性エネルギー線硬化性組成物を硬化させることにより生成する硬化物は、薄膜であっても優れた機械特性を有し、偏光子との密着性にも優れるため、例えば、画像表示措置装置等に使用される偏光板の保護膜(保護層)を構成する材料として好適に使用することができる。従来偏光板に用いられている保護フィルムの代わりとして本発明の活性エネルギー線硬化性組成物の硬化物を用いることにより、より薄型の偏光板を製造することが可能である。
なお、前記重合性化合物(a)~(c)を含む、本発明の活性エネルギー線硬化性組成物を構成する各成分は、本発明の偏光板の保護膜を構成する各成分と同じである。
【実施例】
【0064】
以下、実施例により本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により何ら限定されるものではない。なお、実施例、比較例中の「%」および「部」は特に断りのない限り、「質量%」または「質量部」を表す。
【0065】
1.実施例1
(1)偏光子の調製
厚み20μmのポリビニルアルコールフィルム(平均重合度約2400、ケン化度99.9モル%以上)を乾式延伸により約5倍に縦一軸延伸し、さらに緊張状態を保ったまま、60℃の純水に1分間浸漬した後、ヨウ素/ヨウ化カリウム/水の重量比が0.05/5/100である28℃の水溶液に60秒間浸漬した。その後、ヨウ化カリウム/ホウ酸/水の重量比が8.5/8.5/100である72℃の水溶液に300秒間浸漬した。引き続き、26℃の純水で20秒間洗浄した後、65℃で乾燥処理を行って、ポリビニルアルコールフィルムにヨウ素が吸着配向している厚み7μmの偏光子を得た。
【0066】
(2)活性エネルギー線硬化性組成物の調製
活性エネルギー線硬化性樹脂組成物として、以下の成分からなる紫外線硬化性樹脂組成物を使用した。
重合開始剤を含有した、重合性基を有する籠型シルセスキオキサン組成物(新日鉄住金化学(株)) 80質量部
ウレタンアクリレート(日本合成化学(株) UV7000B) 5質量部
トリメチロールプロパントリアクリレート(TMPTA)(新中村化学工業(株)) 5質量部
N,N-ジメチルアクリルアミド(DMAA)(東京化成工業(株)) 10質量部
【0067】
(3)偏光板の作製
偏光子の片面に水系接着剤を用いて厚み13μmのシクロオレフィン系樹脂フィルムを貼合して片保護フィルム偏光板を得た。得られた片保護フィルム偏光板の偏光子面に活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を塗布して塗布層を形成し、塗布層にシクロオレフィン系樹脂フィルムを重ねた状態でHバルブの無電極UVランプにて3200mJ/m2の紫外線を照射して塗布層を硬化させて、偏光子の片面に直接保護膜を形成した偏光板を得た。
【0068】
(4)保護膜単層の作製
シクロオレフィン系樹脂フィルム上に活性エネルギー線硬化性組成物を塗布して塗布層を形成し、塗布層にシクロオレフィン系樹脂フィルムを重ねた状態でHバルブの無電極UVランプにて3200mJ/m2の紫外線を照射して塗布層を硬化させて、シクロオレフィン系樹脂フィルムから硬化膜を剥離して、評価用の保護膜を得た。
【0069】
(5)偏光板(保護膜)の評価
<密着性>
密着性は、偏光板の硬化樹脂層が形成されたのと反対側の面を、硝子板に厚み約20μmの粘着剤層を介して貼り付けた後、硬化樹脂層表面について、JIS K 5400に準じた碁盤目剥離試験を実施し、碁盤目100枚中の残存個数により評価した。
【0070】
<弾性率>
弾性率は単層の保護膜を引張試験機(株式会社島津製作所製の「オートグラフ AG-1」)を用い、室温環境下で引張速度1mm/分の条件で引張試験を行い、フィルムの引張弾性率(MPa)を測定した。
【0071】
<鉛筆硬度>
鉛筆硬度は、硬化樹脂層が形成された偏光板で異なる硬度の鉛筆を用い、JIS K 5400(1990)に準じた試験方法により求めた。
【0072】
<マンドレル試験>
偏光フィルム吸収軸方向を長さ方向とする長さ120mm、幅10mmの試験片をフィルムから切り出した。この試験片について、TP技研株式会社製の耐屈曲性試験機(円筒法マンドレル法)を用い、円筒状の心棒の周りに巻き付けて、試験片をその幅方向に沿って屈曲させるマンドレル屈曲試験を行い、フィルムに割れや、欠け、亀裂、破断が生じない心棒の最小直径を求めた。この最小直径の値が小さいほど、フィルムの靭性が良好であり、ハンドリング性及び加工性に優れる。
【0073】
<シャルピー衝撃試験>
JIS K7111-1に規定される方法に従い、得られた単層の硬化樹脂層を、縦方向80mm、横方向10mmに切り出して測定し、硬化樹脂層の耐衝撃性を評価した。
【0074】
2.実施例2~4
実施例2
保護膜の厚みを40μmとした以外は実施例1と同様にして偏光板を作製した。得られた偏光板を、実施例1と同様の方法により評価した。
【0075】
実施例3
ウレタン系重合性化合物を下記に変更した以外は実施例1と同様にして偏光板を作製した。得られた偏光板を、実施例1と同様の方法により評価した。
ウレタンアクリレート(日本合成化学(株) UV2000B) 5質量部
【0076】
実施例4
組成比率を下記に変更した以外は実施例1と同様にして偏光板を作製した。得られた偏光板を、実施例1と同様の方法により評価した。
重合開始剤を含有した、重合性基を有する籠型シルセスキオキサン組成物(新日鉄住金化学(株)) 50質量部
ウレタンアクリレート(日本合成化学(株) UV7000B) 15質量部
トリメチロールプロパントリアクリレート(新中村化学工業(株)) 15質量部
N,N-ジメチルアクリルアミド(東京化成工業(株)) 20質量部
【0077】
3.比較例1~4
比較例1
活性エネルギー線硬化性樹脂組成物として、以下の成分からなる紫外線硬化性樹脂組成物を使用した以外は実施例1と同様にして偏光板を作製した。得られた偏光板を、実施例1と同様の方法により評価した。
ウレタンアクリレート(日本合成化学(株) UV7000B) 50質量部
トリメチロールプロパントリアクリレート(新中村化学工業(株)) 30質量部
N,N-ジメチルアクリルアミド(東京化成工業(株)) 20質量部
光重合開始剤:Irgacure184(BASF(株))3質量部
【0078】
比較例2
活性エネルギー線硬化性樹脂組成物として、以下の成分からなる紫外線硬化性樹脂組成物を使用した以外は実施例1と同様にして偏光板を作製した。得られた偏光板を、実施例1と同様の方法により評価した。
重合開始剤を含有した、重合性基を有する籠型シルセスキオキサン組成物(新日鉄住金化学(株)) 100質量部
【0079】
比較例3
活性エネルギー線硬化性樹脂組成物として、以下の成分からなる紫外線硬化性樹脂組成物を使用した以外は実施例1と同様にして偏光板を作製した。得られた偏光板を、実施例1と同様の方法により評価した。
重合開始剤を含有した、重合性基を有する籠型シルセスキオキサン組成物(新日鉄住金化学(株)) 50質量部
ウレタンアクリレート(日本合成化学(株) UV7000B) 15質量部
トリメチロールプロパントリアクリレート(新中村化学工業(株)) 15質量部
アクリル酸4-ヒドロキシブチル(HBA)(東京化成工業(株)) 20質量部
【0080】
比較例4
活性エネルギー線硬化性樹脂組成物として、以下の成分からなる紫外線硬化性樹脂組成物を使用した以外は実施例1と同様にして偏光板を作製した。得られた偏光板を、実施例1と同様の方法により評価した。
重合開始剤を含有した、重合性基を有する籠型シルセスキオキサン組成物(新日鉄住金化学(株)) 50質量部
トリメチロールプロパントリアクリレート(新中村化学工業(株)) 50質量部
【0081】
各実施例および比較例で用いた活性エネルギー線硬化性樹脂組成物の組成を表1に、評価結果を表2にそれぞれ示す。
【0082】
【0083】
ポリオルガノシルセスキオキサン:重合開始剤を含有した、重合性基を有する籠型シルセスキオキサン組成物(新日鉄住金化学(株))
UV-7000B:ウレタンアクリレート(日本合成化学(株) UV7000B)
UV-2000B:ウレタンアクリレート(日本合成化学(株) UV2000B)
TMPTA:トリメチロールプロパントリアクリレート(新中村化学工業(株))
HBA:アクリル酸4-ヒドロキシブチル(東京化成工業(株))
DMAA:N,N-ジメチルアクリルアミド(DMAA)(東京化成工業(株))
【0084】