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特許6994952計測用X線CT装置、及び、その校正方法
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  • 特許-計測用X線CT装置、及び、その校正方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-16
(45)【発行日】2022-01-14
(54)【発明の名称】計測用X線CT装置、及び、その校正方法
(51)【国際特許分類】
   G01B 15/00 20060101AFI20220106BHJP
   G01N 23/046 20180101ALI20220106BHJP
【FI】
G01B15/00 H
G01N23/046
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2018003721
(22)【出願日】2018-01-12
(65)【公開番号】P2019124491
(43)【公開日】2019-07-25
【審査請求日】2020-12-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000137694
【氏名又は名称】株式会社ミツトヨ
(74)【代理人】
【識別番号】110002963
【氏名又は名称】特許業務法人MTS国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100080458
【弁理士】
【氏名又は名称】高矢 諭
(74)【代理人】
【識別番号】100076129
【弁理士】
【氏名又は名称】松山 圭佑
(74)【代理人】
【識別番号】100144299
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 崇
(74)【代理人】
【識別番号】100150223
【弁理士】
【氏名又は名称】須藤 修三
(72)【発明者】
【氏名】境 久嘉
(72)【発明者】
【氏名】小林 香苗
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 誠治
【審査官】續山 浩二
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-156243(JP,A)
【文献】特表2015-531480(JP,A)
【文献】特開2006-170876(JP,A)
【文献】特開昭62-67432(JP,A)
【文献】特開平5-306972(JP,A)
【文献】特開2012-189517(JP,A)
【文献】特開2008-185359(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01B 15/00
G01N 23/046
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転テーブル上に配置した測定対象を回転させながらX線を照射し、その投影画像を再構成して測定対象の断層画像を得るようにした計測用X線CT装置において、
タンデム状に設けられた複数の回転テーブルと、
該回転テーブルを搭載したキャリッジと、
該キャリッジをX線放射の中心軸と直交する方向に移動するための移動手段とを備え、
前記回転テーブルの1つが被測定物搭載用、他の1つが参照体搭載用とされている
ことを特徴とする計測用X線CT装置。
【請求項2】
前記計測用X線CT装置で発生するX線が外部に漏れないようにするためのX線遮蔽ブースが設けられ、非測定状態のキャリッジが、該X線遮蔽ブースの外からアクセス可能とされていることを特徴とする請求項1に記載の計測用X線CT装置。
【請求項3】
複数の互いに独立して移動可能なキャリッジが設けられ、各キャリッジ毎に前記回転テーブルが1台搭載されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の計測用X線CT装置。
【請求項4】
前記参照体がマスタワーク又はゲージとされていることを特徴とする請求項1に記載の計測用X線CT装置。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれかに記載の計測用X線CT装置の校正に際して、
タンデム状に設けられた回転テーブルの1つに被測定物を搭載し、他の1つに参照体を搭載して、
該参照体との比較照合により校正を行うことを特徴とする計測用X線CT装置の校正方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、計測用X線CT装置、及び、その校正方法に係り、特に、被測定物と参照体の比較照合による校正を容易に行うことができ、測定の高精度化と効率向上を図ることが可能な計測用X線CT装置、及び、その校正方法に関する。
【背景技術】
【0002】
1970年代に医療用X線CT装置が実用に供され、この技術をベースに1980年代初期頃より工業用製品のためのX線CT装置が登場した。以来、工業用X線CT装置は、外観からでは確認困難な鋳物部品の巣、溶接部品の溶接不良、および電子回路部品の回路パターンの欠陥などの観察・検査に用いられてきた。一方、近年3Dプリンタの普及に伴い、3Dプリンタによる加工品内部の観察・検査のみならず、内部構造の3D寸法計測とその高精度化の需要が増大しつつある。
【0003】
上述の技術の動向に対して、計測用X線CT装置がドイツを中心に普及し始めている(特許文献1、2参照)。この計測用X線CT装置では、測定対象を回転テーブル中心に配置して測定対象を回転させながらX線照射を行う。
【0004】
計測で使用する一般的なX線CT装置1の構成を図1に示す。X線を遮蔽するブース5の中にコーンビーム状のX線25を照射するX線源21、X線25を検出するX線検出器41、測定対象Wを置いてCT撮像の為に測定対象Wを回転させる回転テーブル32、X線検出器41に映る測定対象Wの位置や倍率を調整するためのXYZ移動機構部3があり、それらのデバイスを制御するモーションコントローラ7、及び、ユーザ操作によりモーションコントローラ7に指示を与えるホストコンピュータ6などで構成される。
【0005】
ホストコンピュータ6は、各デバイス制御の他に、X線検出器41に映る測定対象Wの投影画像を表示する機能や、測定対象Wの複数の投影画像から断層画像を再構成する機能を有する。
【0006】
X線源21から照射されたX線25は、図2に示す如く、回転テーブル32上の測定対象Wを透過してX線検出器41に届く。測定対象Wを回転させながらあらゆる方向の測定対象Wの透過画像(投影画像)をX線検出器41で得て、逆投影法や逐次近似法などの再構成アルゴリズムを使って再構成することにより、測定対象Wの断層画像を生成する。
【0007】
前記XYZ移動機構部3のXYZ軸と回転テーブル32のθ軸を制御することにより、測定対象Wの位置を移動することができ、測定対象Wの撮影範囲(位置、倍率)や撮影角度を調整することができる。
【0008】
又、近年、寸法計測の高精度化の要求に応えるため、X線CT装置の内部(特許文献3)や近傍(特許文献4)に三次元測定機(CMM)を併設した複合型測定システムが提案されている。この複合型測定システムでは、CMMによる測定で得られた外形寸法を基準にしてX線CT装置で得られた3D寸法を校正することによって高精度化が図られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】特開2002-71345号公報
【文献】特開2004-12407号公報
【文献】特許第5408873号公報
【文献】特許第3427046号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、CMMとX線CT装置を併設した複合型測定システムにおいては、CMMとX線CT装置による測定を連続的に行う必要があり、一方の稼働中には他方が停止状態となる。従って、共に高価な装置であるCMMとX線CT装置を同時に並行して使用することができず、特に量産ワークの連続測定が必要な場合には、作業効率に支障が出る。
【0011】
一方、CMMとX線CT装置が別置とされていれば、両者を独立して有効活用できるが、被測定物の測定値をマスタワークやゲージ等の参照体の測定値で校正するためには、被測定物と参照体をいちいち置き換える必要があり、その都度、放射線の遮蔽と解除を行う必要もあるため、やはり作業に時間がかかるという問題点を有していた。
【0012】
本発明は、前記従来の問題点を解決するべくなされたもので、三次元寸法計測により計測用X線CTの測定の高精度化を実現するだけでなく、計測用X線CT装置と三次元寸法計測装置を効率良く稼働させ、経済性を向上することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、回転テーブル上に配置した測定対象を回転させながらX線を照射し、その投影画像を再構成して測定対象の断層画像を得るようにした計測用X線CT装置において、タンデム状に設けられた複数の回転テーブルと、該回転テーブルを搭載したキャリッジと、該キャリッジをX線放射の中心軸と直交する方向に移動するための移動手段とを備え、前記回転テーブルの1つを被測定物搭載用、他の1つを参照体搭載用とすることにより、前記課題を解決したものである。
【0014】
ここで、前記計測用X線CT装置で発生するX線が外部に漏れないようにするためのX線遮蔽ブースを設け、非測定状態のキャリッジを、該X線遮蔽ブースの外からアクセス可能とすることができる。
【0015】
又、複数の互いに独立して移動可能なキャリッジを設け、各キャリッジ毎に前記回転テーブルを1台搭載することができる。
【0016】
又、前記参照体をマスタワーク又はゲージとすることができる。
【0017】
本発明は、又、前記の計測用X線CT装置の校正に際して、タンデム状に設けられた回転テーブルの1つに被測定物を搭載し、他の1つに参照体を搭載して、該参照体との比較照合により校正を行うことを特徴とする計測用X線CT装置の校正方法を提供するものである。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、計測用X線CT装置の構成要素の一つである回転テーブルをタンデム状に複数設け、その内の一つの回転テーブルを被測定物搭載用とし、他の一つの回転テーブルを形状寸法が高精度に値付けされる参照体(例えば被測定物と同一形状のマスタワークもしくは、図3(A)に例示するような、所定サイズの孔が多数空けられたホールプレート、図3(B)に例示するような、多数のボールが植設されたボールプレート、図3(C)、(D)に例示するような、直径が異なる複数の円柱が重ねられた段付きのステップシリンダ、図3(E)に例示するような、多数の先端球付柱が林立されたフォレストゲージ、図3(F)に例示するような、洗濯板状のステップゲージ等のゲージ等)搭載用とすることで、随時参照体との比較照合が可能となり、計測用X線CT装置による寸法測定の高精度化を図ることが可能となる。
【0019】
又、回転テーブルをタンデム状に複数設けることで、一つの回転テーブル上の測定対象をX線CTにより測定・検査している間に、他の一つの回転テーブル上では、先にX線CT測定に供された測定対象の取り外しや次の測定対象の設定を並行して行うことができ、測定・検査の効率を向上することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】計測用X線CT装置の基本的な構成を示す図
図2】同じく測定方法を説明するための概略図
図3】計測用X線CT装置で使用されるゲージ類を示す図
図4】本発明の第1実施形態の全体構成を示す水平断面図
図5】同じく要部構成を示す斜視図
図6】本発明の第2実施形態の構成を示す水平断面図
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態について詳細に説明する。なお、本発明は以下の実施形態及び実施例に記載した内容により限定されるものではない。又、以下に記載した実施形態及び実施例における構成要件には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のもの、いわゆる均等の範囲のものが含まれる。更に、以下に記載した実施形態及び実施例で開示した構成要素は適宜組み合わせてもよいし、適宜選択して用いてもよい。
【0022】
図4に本発明の第1実施形態を示す。なお、図4では、紙面に対して左右方向をX軸方向、紙面に対して上下方向をY軸方向とし、紙面に垂直な方向をZ軸方向として説明する。また、図5はX線CT本体部10の立体図であり、図4におけるZ軸方向の情報を補うものである。
【0023】
計測用のX線CT装置1は、主にハードウェアからなるX線CT本体部10、X線CT本体部10を囲みX線の漏れを防ぐX線遮蔽ブース5、ホストコンピュータ6およびモーションコントローラ7から構成されている。図において、51は遮蔽外壁である。
【0024】
まず、X線CT本体部10に関して、X線CT計測に関わる主要なハードウェアの構成要素はベース11の上面に配置される。ベース11の上面には、互いに離間しかつ平行にX軸方向に延びる2本のXガイドレール12aと12bが配置され、X線源21を搭載するX線源キャリッジ22とXキャリッジ31をX軸方向に案内する。
【0025】
X線源キャリッジ22はX軸第1駆動部23aで、Xキャリッジ31はX軸第2駆動部23bでX軸方向にそれぞれ独立して駆動制御される。X軸第1駆動部23aおよびX軸第2駆動部23bのX軸方向に延びる駆動軸は、Z軸上方から見て2本のXガイドレール12aと12bの中央線CLに一致して一直線上に配置される。
【0026】
X線源キャリッジ22に搭載されるX線源21は、X線源駆動部26によってZ軸方向に駆動制御される。X線放射の発生ポイントであるX線焦点24はZ軸上方から見て前記中央線CL上にほぼ一致して配置され、X線の放射ビームはX軸方向に円錐状に広がり(コーンビームX線25)、その中心線は中央線CLに一致するように調整される。
【0027】
Xキャリッジ31の上面には互いに離間しかつ平行にY軸方向に延びる2本のYガイドレール34aと34bが配置され、第1Yキャリッジ33aと第2Yキャリッジ33bをY軸方向に案内する。
【0028】
第1Yキャリッジ33aはY軸第1駆動部35aで、第2Yキャリッジ33bはY軸第2駆動部35bでY軸方向にそれぞれ独立して駆動制御される。
【0029】
第1Yキャリッジ33aおよび第2Yキャリッジ33bのそれぞれ上面には、第1回転テーブル32aおよび第2回転テーブル32bが配置され、それぞれの回転軸は互いに平行に、且つZ軸と平行に調整され固定される。
【0030】
第1回転テーブル32aおよび第2回転テーブル32bの上面にはX線CT測定に供される測定対象が搭載される。ここで、第1回転テーブル32aおよび第2回転テーブル32bのどちらか一方には被測定物となるワークW2が搭載され、他方にはワークW2の比較参照基準となるマスタワークW1が搭載されることとなる。
【0031】
第1Yキャリッジ33aおよび第2Yキャリッジ33bのY軸方向の移動範囲は、それぞれ中央線CLとY駆動軸の交点CからY軸(-)方向のA点までとC点からY軸(+)方向のB点までである。
【0032】
X線源21からX軸方向にXキャリッジ31を挟んでX線源21に対向するように、検出器支持コラム42に支持されてX線検出器41が設けられている。また、X線検出器41は、X線源21のZ軸方向の移動に同調してZ軸方向に検出器駆動部43によって駆動される。
【0033】
これによりX線源21から放射され、X軸方向に円錐状に広がるコーンビームX線25は、C点に位置する第1回転テーブル32aまたはB点に位置する第2回転テーブル32bの上面に搭載される測定対象を透過し、X線検出器41に到達し検出されるようになっている。
【0034】
X線検出器41で得られた検出信号はホストコンピュータ6のデータ収集部63で収集され、測定演算処理部62で測定対象の投影画像が再構成処理されて三次元像が得られる。
【0035】
また、ホストコンピュータ6には、駆動制御部71、カウンタ部72、パワーアンプ部73、電源部74を含むモーションコントローラ7が接続され、移動指令部61からの移動指令が駆動制御部71に送信され、X線源キャリッジ22、Xキャリッジ31、第1Yキャリッジ33a、第2Yキャリッジ33b、X線源21、X線検出器41の直線駆動および第1回転テーブル32aと第2回転テーブル32bの回転駆動の制御を行う。
【0036】
本実施形態によれば、2台の回転テーブル32a、32bをタンデム方式に構成することで、比較照合による校正を随時可能とし測定精度を向上することができる。
【0037】
図6に本発明の第2実施形態を示す。
【0038】
この第2実施形態では、X線遮蔽ブース5の両側面に、外側位置にある回転テーブル32a、32bに作業者Oがアクセスするための外部スライドドア52を設けると共に、X線遮蔽ブース5内に、X線25の通過部分から、その外側位置にある回転テーブル32a、32bをそれぞれ遮蔽するための、Y軸方向に延びる作業者Oから見て左右一対の遮蔽内壁53と、X線25に沿ってX軸方向にスライド可能な内部スライドドア54を設けている。
【0039】
この第2実施形態では、例えば第1回転テーブル32a上の測定対象の測定が実施されている時に、外部スライドドア52を開きかつ内部スライドドア54を閉めることにより、作業者Oが放射線を気にすることなく第2回転テーブル32b上に次の測定対象のセッティングを行い、次の測定の準備を行うことが可能になる。
【0040】
これによって量産品の測定対象のX線CTによる検査効率を向上させることが可能になる。
【0041】
本実施形態においては、1台の回転テーブルで測定中に、もう一方の回転テーブル上にX線を浴びることなく測定対象又は参照体を載せることができるので、安全性が高く且つ作業効率が高い。
【0042】
なお、前記実施形態においては、いずれも、回転テーブル毎にキャリッジを設け、互いに独立してX線が通過する測定位置へ出し入れ可能としているので、例えば回転テーブルを両側に移動し、中央のX線通過部分を空けた状態でそれぞれに測定対象又は参照体を配設した後、例えば測定対象、続いて参照体をX線通過部分に移動して連続的に測定を行うことができ、自由度が高い。なお、共通のキャリッジの上に2台の回転テーブルを載置して、例えば両方の回転テーブルが空いている状態で一方に測定対象を載せ、測定対象をX線通過部分に移動した状態で他方の回転テーブルに参照体を載せ、その後で測定対象、次いで参照体と連続的に測定を行うこともできる。この場合には、キャリッジは1台でよく、構成が簡略である。
【0043】
なお、キャリッジに載せる回転テーブルの数は1台又は2台に限定されず、3台以上とすることも可能である。
【符号の説明】
【0044】
1…X線CT装置
5…X線遮蔽ブース
21…X線源
22…X線源キャリッジ
23a、23b…X軸駆動部
25…X線
31…Xキャリッジ
32a、32b…回転テーブル
33a、33b…Yキャリッジ
35a、35b…Y軸駆動部(移動手段)
41…X線検出器
1…マスタワーク(参照体)
2…ワーク(被測定物)
図1
図2
図3
図4
図5
図6