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特許6995073基板処理装置及び半導体装置の製造方法、プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-16
(45)【発行日】2022-01-14
(54)【発明の名称】基板処理装置及び半導体装置の製造方法、プログラム
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/31 20060101AFI20220106BHJP
   H01L 21/318 20060101ALI20220106BHJP
   C23C 16/44 20060101ALI20220106BHJP
【FI】
H01L21/31 B
H01L21/318 B
C23C16/44 Z
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019044677
(22)【出願日】2019-03-12
(65)【公開番号】P2020150053
(43)【公開日】2020-09-17
【審査請求日】2020-09-15
(73)【特許権者】
【識別番号】318009126
【氏名又は名称】株式会社KOKUSAI ELECTRIC
(72)【発明者】
【氏名】稲田 哲明
(72)【発明者】
【氏名】大橋 直史
(72)【発明者】
【氏名】松井 俊
【審査官】加藤 芳健
(56)【参考文献】
【文献】韓国公開特許第10-2007-0110737(KR,A)
【文献】特開平07-111244(JP,A)
【文献】特開2013-197569(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/31
H01L 21/318
C23C 16/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を処理する処理室を有する金属製の容器と、
前記基板を加熱する加熱部と、
前記容器内で回転可能に設けられ、上面には複数の凹部が円周状に配される基板載置プレートと、前記基板載置プレートを固定する金属製のコア部と、前記コア部と前記加熱部との間に配される第二のカバーと、を備える支持部と、
前記第二のカバーに設けられ、空間を介して前記コア部に隣接する熱減衰部と、
前記処理室にガスを供給するガス供給部と、
を有する基板処理装置。
【請求項2】
前記容器の底部には、前記処理室と雰囲気が隔離され、金属壁と石英製の窓と前記加熱部とで構成されるヒータユニットが設けられ、
第二の熱減衰部は、前記加熱部と前記金属壁との間に配される請求項1に記載の基板処理装置。
【請求項3】
前記容器の底部には、金属製の排気構造と、前記排気構造に隣接する第一のカバーとが設けられ、
第三の熱減衰部は前記第一のカバーのうち、前記排気構造と対向する側に設けられる請求項1または請求項2に記載の基板処理装置。
【請求項4】
基板を金属製の容器に設けられた処理室に搬送する工程と、
前記容器内で回転可能に設けられ、上面には複数の凹部が円周状に配される基板載置プレートと、前記基板載置プレートを固定する金属製のコア部と、前記コア部と加熱部との間に配される第二のカバーと、を備える支持部のうち、前記基板載置プレートに前記基板を載置する工程と、
前記基板載置プレートを回転させつつ、ガス供給部が前記処理室にガスを供給すると共に、
前記加熱部から前記コア部への熱エネルギーを、前記第二のカバーに設けられ、空間を介して前記コア部に隣接する熱減衰部が減衰させつつ、前記加熱部が前記基板を加熱する工程と、
を有する半導体装置の製造方法。
【請求項5】
基板を金属製の容器に設けられた処理室に搬送する手順と、
前記容器内で回転可能に設けられ、上面には複数の凹部が円周状に配される基板載置プレートと、前記基板載置プレートを固定する金属製のコア部と、前記コア部と加熱部との間に配される第二のカバーと、を備える支持部のうち、前記基板載置プレートに前記基板を載置する手順と、
前記基板載置プレートを回転させつつ、ガス供給部が前記処理室にガスを供給すると共に、
前記加熱部から前記コア部への熱エネルギーを、前記第二のカバーに設けられ、空間を介して前記コア部に隣接する熱減衰部が減衰させつつ、前記加熱部が前記基板を加熱する手順と、
をコンピュータによって基板処理装置に実行させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、基板処理装置及び半導体装置の製造方法、プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
半導体基板を処理する装置として、複数の基板を回転トレー上に周方向に配置し、その基板載置部を回転させて二種類のガスを順番に複数の基板に供給する回転型装置(特許文献1参照)が知られている。ガスを供給する際は、加熱部によって基板が加熱されている。
【0003】
【文献】特開2013-84898
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
回転型装置では、例えば300mmの基板が処理される。300mmの基板を周方向に配するため、装置自体が大きくなる。そのため、装置の容器を構成する材質としては、加工容易な金属が用いられる。また、300mm基板を周方向に配すると重量がかさむ為、それに耐えられるよう、回転トレーは金属で支持されている。
【0005】
基板を処理する際には加熱処理が為される。その際、装置の容器や回転トレーを支持する支持部等は金属で構成されるため、熱が蓄積し、熱膨張してしまう。これにより、部品の位置ずれ等が発生してしまう恐れがある。
【0006】
本開示は、上記課題を解決するものであり、回転型装置において熱膨張の影響を低減する技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
基板を処理する処理室を有する金属製の容器と、前記容器内で回転可能に設けられ、上面には複数の凹部が円周状に配される基板載置プレートと、前記複数の凹部に載置された基板を加熱する加熱部と、前記加熱部と前記容器との間に設けた熱減衰部と、前記処理室にガスを供給するガス供給部と、前記基板載置プレートを回転させる支持部とを有する技術を提供する。
【発明の効果】
【0008】
本開示に係る基板処理装置及び半導体装置の製造方法によれば、回転型装置において熱膨張の影響を低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本開示の実施形態に係る基板処理装置が備えるリアクタの横断面概略図である。
図2】本開示の実施形態に係る基板処理装置が備えるリアクタの縦断面概略図であり、図1に示すリアクタのA-A’線断面図である。
図3】本開示の実施形態に係る基板支持機構を説明する説明図である。
図4】金属の吸収率を説明する説明図である。
図5】本開示の実施形態に熱減衰部を説明する説明図である。
図6】本開示の実施形態に係る原料ガス供給部を説明する説明図である。
図7】本開示の実施形態に係る反応ガス供給部を説明する説明図である。
図8】本開示の実施形態に係る第一不活性ガス供給部を説明する説明図である。
図9】本開示の実施形態に係る第二不活性ガス供給部を説明する説明図である。
図10】本開示の実施形態に係るコントローラを説明する説明図である。
図11】本開示の実施形態に係る基板処理工程を説明するフロー図である。
図12】本開示の実施形態に係る基板処理工程を説明するフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、本開示の実施形態について、図面を参照しながら説明する。
本実施形態に係る処理炉としてのリアクタの構成について、主に図1から図10を用いて説明する。図1は、本実施形態に係る基板処理装置としてのリアクタ200の横断面概略図である。図2は、本実施形態に係るリアクタ200の縦断面概略図であり、図1に示すリアクタのA-A’線断面図である。なお、A-A’線は、Aから容器203の中心を通ってA’に向かう線である。
【0011】
図3は基板支持機構を説明する説明図である。図4から図5は熱減衰部を説明する説明図である。図6から図9はガス供給系を説明する説明図である。図10はコントローラを説明する図である。
【0012】
リアクタ200の具体的構成を説明する。
図1および図2に示されているように、リアクタ200は、円筒状の気密容器である容器203を備えている。そのため、装置の容器を構成する材質としては、加工容易な金属が用いられる。また、300mm基板を周方向に配すると重量がかさむ為、それに耐えられるよう、回転トレーは金属で支持されている。例えば、ステンレス(SUS)やアルミ合金等で構成されている。容器203内には、基板Sを処理する処理室201が構成されている。容器203にはゲートバルブ205が接続されており、ゲートバルブ205を介して基板Sが搬入出される。
【0013】
処理室201は、処理ガスを供給する処理領域206とパージガスを供給するパージ領域207を有する。ここでは処理領域206とパージ領域207は、円周状に交互に配される。例えば、第1処理領域206a、第1パージ領域207a、第2処理領域206bおよび第2パージ領域207bの順に配される。後述するように、第1処理領域206a内には原料ガスが供給され、第2処理領域206b内には反応ガスが供給され、また第1パージ領域207aおよび第2パージ領域207bには不活性ガスが供給される。これにより、それぞれの領域内に供給されるガスに応じて、基板Sに対して所定の処理が施される。
【0014】
パージ領域207は、第1処理領域206aと第2処理領域206bとを空間的に切り分ける領域である。パージ領域207の天井208は処理領域206の天井209よりも低くなるよう構成されている。第1パージ領域207aには天井208aが設けられ、第2パージ領域207bには天井208bが設けられる。各天井を低くすることで、パージ領域207の空間の圧力を高くする。この空間にパージガスを供給することで、隣り合う処理領域206を区画している。なお、パージガスは基板S上の余分なガスを除去する役割も有する。
【0015】
容器203の中央には、例えば容器203の中心に回転軸を有し、回転自在に構成される基板載置プレート217が設けられている。基板載置プレート217は、基板Sへの金属汚染の影響が無いように、例えば、石英、カーボンまたはSiC等の材料で形成されている。
【0016】
基板載置プレート217は、容器203内に、複数枚(例えば6枚)の基板Sを同一面上に、且つ回転方向に沿って同一円周上に並べて支持するよう構成される。ここでいう「同一面」とは、完全な同一面に限られるものではなく、基板載置プレート217を上面から見たときに、複数枚の基板Sが互いに重ならないように並べられていればよい。
【0017】
基板載置プレート217表面における基板Sの支持位置には、凹部217bが設けられている。処理する基板Sの枚数と同数の凹部217bが基板載置プレート217の中心から同心円上の位置に互いに等間隔(例えば60°の間隔)で配置されている。なお、図1においては、説明の便宜上図示を省略している。
【0018】
それぞれの凹部217bは、例えば基板載置プレート217の上面から見て円形状であり、側面から見て凹形状である。凹部217bの直径は基板Sの直径よりもわずかに大きくなるように構成することが好ましい。この凹部217bの底には基板載置面が設けられており、凹部内に基板Sを載置することにより、基板Sを基板載置面に載置できる。各凹部217bには、後述するピン219が貫通する貫通孔217aが複数設けられている。
【0019】
容器203のうち、基板載置プレート217下方であってゲートバルブ205と向かい合う箇所には、図3に記載の基板保持機構218が設けられている。基板保持機構218は、基板Sの搬入・搬出時に、基板Sを突き上げて、基板Sの裏面を支持するピン219を複数有する。ピン219は延伸可能な構成であって、例えば基板保持機構218本体に収納可能である。基板Sを移載する際には、ピン219が延伸され貫通孔217aを貫通すると共に、基板Sを保持する。その後、ピン219の先端が下方に移動することで、基板Sは凹部217bに載置される。基板保持機構218は、例えば容器203に固定する。基板保持機構218は、基板載置時にピン219を孔217aに挿入可能な構成であればよく、後述する内周凸部282や外周凸部283に固定してもよい。
【0020】
基板載置プレート217はコア部221に固定される。コア部221は基板載置プレート217の中心に設けられ、基板載置プレート217を固定する役割を有する。基板載置プレート217を支持する構造であることから、重量に耐えられるよう金属が用いられる。コア部221の下方にはシャフト222が配される。シャフト222はコア部221を支持する。
【0021】
シャフト222の下方は、容器202の底部に設けられた孔223を貫通し、容器203外で気密可能な容器204で覆われている。また、シャフト222の下端は回転部224に接続される。回転部224は回転軸やモータ等を搭載し、後述するコントローラ300の指示によって基板載置プレート217を回転可能に構成される。
【0022】
コア部221を覆うように石英カバー225が設けられる。すなわち、石英カバー225はコア部221と処理室201との間に設けられている。石英カバー225は、空間を介してコア部221を覆うよう構成される。石英カバー225のうち、コア部221側には熱減衰部226がコーティングされる。石英カバー225は基板Sへの金属汚染の影響が無いように、例えば、石英やSiC等の材料で形成されている。熱減衰部226の詳細は後述する。コア部221、シャフト222、回転部224、石英カバー225をまとめて支持部と呼ぶ。
【0023】
基板載置プレート217の下方には、加熱部としてのヒータ280を内包するヒータユニット281が配される。ヒータ280は、基板載置プレート217に載置した各基板Sを加熱する。ヒータ280は、容器203の形状に沿って円周状に構成される。
【0024】
ヒータユニット281は、容器203の底部上であって、容器203の中心側に設けられた内周凸部282と、ヒータ280よちも外周側に配される外周凸部283と、ヒータ280とで主に構成される。内周凸部282、ヒータ280、外周凸部283は、同心円状に配される。内周凸部282と外周凸部283の間には空間284が形成される。ヒータ280は空間284に配される。内周凸部282、外周凸部283は容器203に固定されるものでもあるので、容器203の一部として考えてもよい。
【0025】
ここでは円周状のヒータ280と説明したが、基板Sを加熱できればそれに限るものではなく、複数分割した構造としてもよい。
【0026】
内周凸部282の上部であってヒータ280側にはフランジ282aが形成される。窓285はフランジ282aと外周凸部283の上面で支持される。窓285はヒータ280から発生する熱を透過する材質であり、例えば石英で構成される。窓285は後述する排気構造286の上部286aと内周凸部282によって挟まれることで固定される。その際、窓285と内周凸部282との間、窓285と上部286aとの間に空間を設ける。空間を設ける理由は後述する。
【0027】
ヒータ280には、ヒータ制御部287が接続される。ヒータ280は後述するコントローラ300に電気的に接続され、コントローラ300の指示によってヒータ280への電力供給を制御し、温度制御を行う。
【0028】
容器203の底部には、空間284と連通する不活性ガス供給管275が設けられる。不活性ガス供給管275は後述する不活性ガス供給部270に接続される。不活性ガス供給部270から供給された不活性ガスは、不活性ガス供給管275を介して空間284に供給される。空間284を不活性ガス雰囲気とすることで、処理ガスが窓285付近の隙間等から侵入することを防ぐ。
【0029】
外周凸部283の外周面と容器203の内周面との間には、金属製の排気構造286が配される。排気構造286は、排気溝288と排気バッファ空間289を有する。排気溝288、排気バッファ空間289は、容器203の形状に沿って円周状に構成される。
【0030】
排気構造286のうち外周凸部283と接触しない箇所を上部286aと呼ぶ。前述のように、上部286aは、内周凸部282と共に窓285を固定する。
【0031】
本実施形態のような回転型基板処理装置においては、基板Sの高さと排気口とを同じ高さにするか、あるいは高さを近づけることが望ましい。仮に排気口の高さが低い場合、基板載置プレートの端部でガスの乱流が発生する恐れがある。これに対して、同じ高さとするか、あるいは高さを近づけることで、排気口側の基板エッジにおいても乱流が発生しないようにする。
【0032】
本実施形態においては排気構造286の上端を基板載置プレート217と同じ高さとしている。この場合、図2のように上部286aが窓285からはみ出す部分が発生するため、パーティクル拡散防止の観点から、その部分には石英カバー290を設ける。仮に石英カバー290が無い場合、上部286aにガスが接触して上部286aが腐食し、処理室201内にパーティクルを発生させる恐れがある。石英カバー290と上部286aとの間には空間299を設ける。空間299を設ける理由は後述する。ここで、石英カバー290は第一のカバー、もしくは第一の石英カバーとも呼ぶ。また、前述の石英カバー225は第二のカバー、もしくは第二の石英カバーとも呼ぶ。
【0033】
排気構造286の底には、排気口291、排気口292が設けられる。排気口291は処理空間206aに供給される原料ガスと、その上流から供給されるパージガスを主に排気する。排気口292は処理空間206bに供給される反応ガスと、その上流から供給されるパージガスを主に排気する。各ガスは排気溝288、排気バッファ空間289を介して排気口291、排気口292から排気される。
【0034】
ところで、ここまでで説明したように、リアクタ200は、容器203や凸状部材等の金属製部品と、基板載置プレート217や窓285等の非金属部材で主に構成されている。非金属部材とは、パーティクルが発生しにくく、高温条件でも耐えられる素材であり、例えば石英やSiC、セラミックである。
【0035】
金属の熱膨張係数は、例えば石英のような非金属部材に比べて著しく大きい。そのため、所定温度に加熱された場合、石英は伸びずに金属のみ延びるという現象が発生する。本実施形態のような装置では、石英部品と金属部品との間でずれが発生してパーティクル等が発生する恐れがある。
【0036】
具体的には、窓285近辺の構造では、内周凸部282、外周凸状部材283の熱膨張により窓285に接触する恐れがある。コア部221近辺においては、コア部221の熱膨張により基板載置プレート217がずれてしまい、基板Sを載置する際にピン219と貫通孔217aが接触してしまう恐れがある。これらの接触等によりパーティクルが発生する。
【0037】
このように、石英部品と金属部品とが混在する装置においては、熱膨張差によって種々の問題が発生する。そこで本実施形態では、石英と金属のように熱膨張係数が大きく異なる部材が隣り合う部分において、金属部品の熱膨張を抑制するよう熱減衰部を設ける。
【0038】
次に、熱減衰部の詳細を説明する。
本実施形態では、コア部221の周囲に設けられた熱減衰部226、ヒータユニット281に設けられた熱減衰部293、295、296、窓285に設けられた熱減衰部297、石英カバー290に設けられた熱減衰部298が設けられる。
【0039】
続いて、図4図5を用いて熱減衰部の性質を説明する。
各熱減衰部は、石英部品に対して石英の微粒子を表面にコーティングしたカバーとして構成される。石英ガラスの微粒子をカバーとして付着させることで、微粒子間で散乱すると共に、それが乱反射するので、特に熱の反射性能が高い。
【0040】
石英微粒子のコーティングは、例えば厚みが200μm程度の場合、波長1.0μmから2μmの電磁波に対して70%から80%を反射することが知られている。
【0041】
図4は金属の波長に対する吸収率を示す図である。例えば、波長1.0μmの電磁波に対しては、ステンレスの吸収率が0.35である。また、波長1.6μmの電磁波に対しては、アルミ合金の吸収率が0.4であり、ステンレスの吸収率が0.2から0.9である。
アルミ合金やステンレスは、多くの基板処理装置に用いられる材質であるが、これらの波長帯域では金属の吸収率が非常に高いことがわかる。
【0042】
上記の反射率と図4の内容を照合して検討すると、アルミ合金やステンレスで吸収率の高い波長(例えば1.0から1.6μm)の電磁波に対しては、石英微粒子の反射率が非常に高いことがわかる。
【0043】
図5は電磁波の反射状況を説明する説明図である。なお、石英401での電磁波の反射率は、説明の便宜上省略する。図5では、電磁波404、411が石英401、金属402に向けて照査されている。図5(a)においては石英微粒子で構成される熱減衰部403が、石英401のうち、金属402と対向する面にコーティングされている。金属402は、熱減衰部403が無い状態である。(b)は石英401に熱減衰部がコーティングされていない状態である。
【0044】
例えば波長1.0μmの電磁波が照射された場合、図8(a)の構成では熱減衰部403が電磁波404を反射する。熱減衰部403の厚みが200μm程度であれば、約80%の電磁波407を反射する。したがって、金属に到達する電磁波405は約20%まで減衰する。この熱減衰部401を透過した電磁波406により金属402は加熱される。
【0045】
一方、(b)のように熱減衰部403を有しない場合、石英401を透過した電磁波411は、一部が電磁波413として反射されるものの、ほとんど減衰されていない電磁波412は金属402に吸収される。このように、(b)は(a)に比べて吸収されるエネルギーが著しく大きいため、(a)よりも金属の温度が高くなる。
【0046】
本実施形態における各熱減衰部は、以上説明した石英微粒子コーティングを用いて、金属製部品への熱エネルギーを減衰する。
【0047】
ところで、隣接する部品が金属の場合、熱膨張係数の違いから石英微粒子コーティングと金属の間でずれが発生し、それがパーティクルになる恐れがある。そこで、各熱減衰部は次のように構成される。
【0048】
熱減衰部226は、石英カバー225の内側であって、ヒータ280側にコーティングされている。熱減衰部226によって、コア部221への熱エネルギーを減衰する。
【0049】
また、コア部221とは空間を介して隣接している。石英カバー225は石英で構成されるので、石英微粒子で構成される熱減衰部226と熱膨張係数が等しい。また、コア部221と空間を介して隣接しているので、コア部221の熱膨張の影響を受けない。したがって、熱膨張係数の差によるコーティングの剥がれ等は発生しない。
【0050】
また、熱減衰部226は石英カバー225の内側なので処理ガスが付着しない。したがって、処理ガスによる腐食やエッチング等によるパーティクルの発生も起きない。
【0051】
このような構成によりコア部221への熱エネルギーを減衰させて熱膨張を抑制することで、回転プレート217に設けた孔217aの位置が変わることを防ぐ。
【0052】
熱減衰部293は容器203の底面にコーティングされ、熱減衰部295は内周凸部282の空間284側の面にコーティングされ、熱減衰部296は外周凸部283の空間284側の面にコーティングされている。
【0053】
熱減衰部293、295、296を設けることで、ヒータ280から容器203の底面、内周凸部282、外周凸部283への熱エネルギーを減衰する。しかしながら、各熱減衰部は容器203等の金属部品と接触するため、長時間の加熱によって金属部品が加熱された場合、熱膨張差によってパーティクルが発生する可能性がある。これに対して本構造では、熱減衰部293はヒータユニット281の中に設けられ、窓285によって処理室201と隔離されるので、ヒータユニット281中でパーティクル等が発生したとしても、処理室201への拡散を抑制できる。
【0054】
熱減衰部297は、窓285の外周面にコーティングされる。すなわち、処理室201とは基板載置プレート217を介して隔離された領域に設けられる。窓285の外周に設けることで、ヒータ280から上部286a、内側凸部282の凸部分への熱エネルギーを減衰する。窓285は石英部品であるので、熱減衰部297と熱膨張係数が等しい。
【0055】
なお、上部286aは空間299を介して隣接しているので、長時間の加熱によって上部286aに熱が蓄積され、膨張したとしても、その影響を受けることがない。したがって、熱膨張係数の差によって接触する等して発生するコーティングの剥がれ等を抑制できる。仮に熱の影響等により熱減衰部297が劣化してパーティクルとなったとしても、処理室201と隔離して設けているので、処理室201への拡散を防ぐことができる。
【0056】
熱減衰部298は、石英カバー290の外周に構成される。すなわち、処理室201との間に石英カバー290が設けられている。石英カバー290の外周に設けることで、ヒータ280から上部286aへの熱エネルギーを減衰する。石英カバー290は石英部品であるので、熱減衰部297と熱膨張係数が等しい。また、上部286aと空間299を介して隣接しているので、長時間の加熱によって上部286aに熱が蓄積され、膨張したとしても、その影響を受けることがない。したがって、熱膨張係数の差によるコーティングの剥がれ等の発生を抑制できる。仮に熱の影響等により熱減衰部297が劣化してパーティクルとなったとしても、処理室201との間に石英カバー290が設けられているので、処理室201への拡散を防ぐことができる。
【0057】
続いて図1図6を用いて原料ガス供給部240を説明する。図1に記載のように、容器203の側方には容器203の中心方向に向かってノズル245が挿入される。ノズル245は第1処理領域206aに配される。図1のBは図6のBと接続される。ノズル245には、ガス供給管241の下流端が接続されている。
【0058】
ガス供給管241には、上流方向から順に、原料ガス供給源242、流量制御器(流量制御部)であるマスフローコントローラ(MFC)243、及び開閉弁であるバルブ244が設けられている。
【0059】
原料ガスは、MFC243、バルブ244、ノズル245を介して、ガス供給管241から第1処理領域206a内に供給される。
【0060】
ここでいう「原料ガス」とは、処理ガスの一つであり、薄膜形成の際の原料になるガスである。原料ガスは、薄膜を構成する元素として、例えばチタン(Ti)、タンタル(Ta)、シリコン(Si)、ハフニウム(Hf)、ジルコニウム(Zr)、ルテニウム(Ru)、ニッケル(Ni)、およびタングステン(W)の少なくともいずれか一つを含む。
【0061】
具体的には、本実施形態では、原料ガスは、例えば、ジクロロシラン(Si2H2Cl2)ガスである。原料ガスの原料が常温で気体である場合、MFC243は気体用のマスフローコントローラである。
【0062】
主に、ガス供給管241、MFC243、バルブ244、ノズル245により、原料ガス供給部(第1ガス供給系、もしくは原料ガス供給部と呼んでもよい。)240が構成される。なお、原料ガス供給源242を原料ガス供給部240に含めて考えてもよい。
【0063】
続いて図1図7を用いて原料ガス供給部250を説明する。図1に記載のように、容器203の側方には容器203の中心方向に向かってノズル255が挿入される。ノズル255は第2処理領域206bに配される。図1のCは図7のCと接続される。
【0064】
ノズル255には、ガス供給管251が接続されている。ガス供給管251には、上流方向から順に、反応ガス供給源252、流量制御器(流量制御部)であるMFC253、及び開閉弁であるバルブ254が設けられている。
【0065】
反応ガスは、MFC253、バルブ254、ノズル255を介して、反応ガス供給源252から第2処理領域206b内に供給される。
【0066】
ここでいう「反応ガス」とは、処理ガスの一つであり、基板S上に原料ガスによって形成された第1層と反応するガスである。反応ガスは、例えばアンモニア(NH3)ガス、窒素(N2)ガス、水素(H2)ガス、および酸素(O2)ガスの少なくともいずれか一つである。ここでは、反応ガスは、例えばアンモニアガスである。
【0067】
主に、ガス供給管251、MFC253、バルブ254、ノズル255により反応ガス供給部(第2ガス供給部)250が構成される。なお、反応ガス供給源252を反応ガス供給部250に含めて考えてもよい。
【0068】
続いて図1図8を用いて第1不活性ガス供給部260を説明する。図1に記載のように、容器203の側方には容器203の中心方向に向かってノズル265、ノズル266が挿入される。ノズル265は、第1パージ領域207aに挿入されるノズルである。例えば、第1パージ領域207aの天井208aに固定される。ノズル266は、第1パージ領域207bに挿入されるノズルである。例えば、第1パージ領域207bの天井208bに固定される。
【0069】
図1のDは、図8のDと接続される。ノズル265、ノズル266には、不活性ガス供給管261の下流端が接続されている。不活性ガス供給管261には、上流方向から順に、不活性ガス供給源262、MFC263、及びバルブ264が設けられている。不活性ガスは、MFC263、バルブ264、ノズル265及びノズル266を介して、不活性ガス供給管261から第1パージ領域207a内及び第2パージ領域207b内にそれぞれ供給される。第1パージ領域207a内及び第2パージ領域207b内に供給される不活性ガスは、パージガスとして作用する。
【0070】
主に、不活性ガス供給管261、MFC263、バルブ264、ノズル265、ノズル266により第1不活性ガス供給部が構成される。なお、不活性ガス供給源262を第1不活性ガス供給部に含めて考えてもよい。
【0071】
続いて図2図9を用いて第2不活性ガス供給部270を説明する。
図2のEは図9のEと接続される。不活性ガス供給管275には、不活性ガス供給管271の下流端が接続されている。不活性ガス供給管271には、上流方向から順に、不活性ガス供給源272、MFC273、及びバルブ274が設けられている。不活性ガスは、MFC273、バルブ274、不活性ガス供給管275を介して、不活性ガス供給管271から空間284、容器204に供給される。
【0072】
容器204に供給された不活性ガスは、回転トレー217と窓285の間の空間を介して、排気溝288から排気される。このような構造とすることで、原料ガスや反応ガスが回転トレー217と窓285の間の空間に回り込むことを防ぐ。さらには、上部286aの熱膨張により、上部286aと熱減衰部297、熱減衰部298が接触してパーティクルを発生させたとしても、パーティクルを処理室201に侵入させることなく排気溝288から排気できる。
【0073】
主に、不活性ガス供給管271、MFC273、バルブ274、不活性ガス供給管275により第2不活性ガス供給部270が構成される。なお、不活性ガス供給源272を第2不活性ガス供給部270に含めて考えてもよい。
【0074】
ここで「不活性ガス」は、例えば、窒素(N2)ガス、ヘリウム(He)ガス、ネオン(Ne)ガス、アルゴン(Ar)ガス等の希ガスの少なくともいずれか一つである。ここでは、不活性ガスは、例えばN2ガスである。
【0075】
図1に示されているように、容器203には排気口291、排気口292が設けられる。排気口291は、処理領域206aの回転方向下流側に設けられる。主に原料ガスと不活性ガスを排気する。
【0076】
排気口291と連通するよう、排気部234の一部である排気管234aが設けられる。排気管234aには、開閉弁としてのバルブ234d、圧力調整器(圧力調整部)としてのAPC(Auto Pressure Controller)バルブ234cを介して、真空排気装置としての真空ポンプ234bが接続されており、処理室201内の圧力が所定の圧力(真空度)となるよう真空排気し得るように構成されている。
【0077】
排気管234a、バルブ234d、APCバルブ234cをまとめて排気部234と呼ぶ。なお、真空ポンプ234bを排気部234に含めてもよい。
【0078】
また、図1図2に示されているように、排気口292と連通するよう、排気部235が設けられる。排気口292は、処理領域206bの回転方向下流側に設けられる。主に反応ガスと不活性ガスを排気する。
【0079】
排気口292と連通するよう、排気部235の一部である排気管235aが設けられる。排気管235aには、開閉弁としてのバルブ235d、圧力調整器(圧力調整部)としてのAPCバルブ235cを介して、真空排気装置としての真空ポンプ235bが接続されており、処理室201内の圧力が所定の圧力(真空度)となるよう真空排気し得るように構成されている。
【0080】
排気管235a、バルブ235d、APCバルブ235cをまとめて排気部235と呼ぶ。なお、真空ポンプ235bを排気部235に含めてもよい。
【0081】
リアクタ200は、各部の動作を制御するコントローラ300を有している。コントローラ300は、図10に記載のように、演算部(CPU)301、一時記憶部302、記憶部303、送受信部304を少なくとも有する。コントローラ300は、送受信部304を介して基板処理装置10の各構成に接続され、上位コントローラや使用者の指示に応じて記憶部303からプログラムやレシピを呼び出し、その内容に応じて各構成の動作を制御する。なお、コントローラ300は、専用のコンピュータとして構成してもよいし、汎用のコンピュータとして構成してもよい。例えば、上述のプログラムを格納した外部記憶装置(例えば、磁気テープ、フレキシブルディスクやハードディスク等の磁気ディスク、CDやDVD等の光ディスク、MO等の光磁気ディスク、USBメモリ(USB Flash Drive)やメモリカード等の半導体メモリ)312を用意し、外部記憶装置312を用いて汎用のコンピュータにプログラムをインストールすることにより、本実施形態に係るコントローラ300を構成できる。また、コンピュータにプログラムを供給するための手段は、外部記憶装置312を介して供給する場合に限らない。例えば、インターネットや専用回線等の通信手段を用いても良いし、上位装置320から送受信部311を介して情報を受信し、外部記憶装置312を介さずにプログラムを供給するようにしてもよい。また、キーボードやタッチパネル等の入出力装置313を用いて、コントローラ300に指示をしても良い。
【0082】
なお、記憶部303や外部記憶装置312は、コンピュータ読み取り可能な記録媒体として構成される。以下、これらを総称して、単に記録媒体ともいう。なお、本明細書において記録媒体という言葉を用いた場合は、記憶部303単体のみを含む場合、外部記憶装置312単体のみを含む場合、または、その両方を含む場合がある。
【0083】
CPU301は、記憶部303から制御プログラムを読み出して実行すると共に、入出力装置313からの操作コマンドの入力等に応じて記憶部303からプロセスレシピを読み出すように構成されている。そして、CPU301は、読み出したプロセスレシピの内容に沿うように、各部品を制御するように構成されている。
【0084】
なお、コントローラ300は、専用のコンピュータとして構成されている場合に限らず、汎用のコンピュータとして構成されていてもよい。例えば、上述のプログラムを格納した外部記憶装置(例えば、磁気テープ、フレキシブルディスクやハードディスク等の磁気ディスク、CDやDVD等の光ディスク、MO等の光磁気ディスク、USBメモリやメモリカード等の半導体メモリ)303を用意し、係る外部記憶装置312を用いて汎用のコンピュータにプログラムをインストールすること等により、本実施形態に係るコントローラ300を構成することができる。なお、コンピュータにプログラムを供給するための手段は、外部記憶装置312を介して供給する場合に限らない。例えば、インターネットや専用回線等の通信手段を用い、外部記憶装置312を介さずにプログラムを供給するようにしてもよい。なお、記憶部303や外部記憶装置312は、コンピュータ読み取り可能な記録媒体として構成される。以下、これらを総称して、単に記録媒体ともいう。なお、本明細書において記録媒体という言葉を用いた場合は、記憶部303単体のみを含む場合、外部記憶装置312単体のみを含む場合、または、その両方を含む場合がある。
【0085】
次に、図11および図12を用い、第1実施形態に係る基板処理工程について説明する。図11は、本実施形態に係る基板処理工程を示すフロー図である。図12は、本実施形態に係る成膜工程を示すフロー図である。以下の説明において、基板処理装置10のリアクタ200の構成各部の動作は、コントローラ300により制御される。
【0086】
ここでは、原料ガスとしてSi2H2Cl2ガスを用い、反応ガスとしてアンモニアガスを用い、基板S上に薄膜としてシリコン窒化(SiN)膜を形成する例について説明する。
【0087】
基板搬入・載置工程S110を説明する。リアクタ200では、ピン219を上昇させて、基板載置プレート217の貫通孔217aにピン219を貫通させる。その結果、ピン219が、基板載置プレート217表面よりも所定の高さ分だけ突出した状態となる。続いて、ゲートバルブ205を開き、図示しない基板移載機を用いて、図3のようにピン219上に基板Sを載置する。載置後、ピン219を下降させ、凹部217b上に基板Sを載置する。
【0088】
そして、基板Sが載置されていない凹部217bがゲートバルブ205と向かい合うよう、基板載置プレート217を回転させる。その後、同様に凹部217bに基板を載置する。すべての凹部217bに基板Sが載置されるまで繰り返す。
【0089】
凹部217bに基板Sを搬入したら、基板移載機をリアクタ200の外へ退避させ、ゲートバルブ205を閉じて容器203内を密閉する。
【0090】
なお、基板Sを処理室201内に搬入する際には、排気部234、235により処理室201内を排気しつつ、第一不活性ガス供給部260から処理室201内に不活性ガスとしてのN2ガスを供給することが好ましい。これにより、処理室201内へのパーティクルの侵入や、基板S上へのパーティクルの付着を抑制することが可能となる。真空ポンプ234b、235bは、少なくとも基板搬入・載置工程(S110)から後述する基板搬出工程(S170)が終了するまでの間は、常に作動させた状態とする。
【0091】
基板Sを基板載置プレート217に載置する際は、予めヒータ280に電力を供給し、基板Sの表面が所定の温度となるよう制御される。基板Sの温度は、例えば室温以上650℃以下であり、好ましくは、室温以上であって400℃以下である。ヒータ280は、少なくとも基板搬入・載置工程(S110)から後述する基板搬出工程(S170)が終了するまでの間は、常に通電させた状態とする。
【0092】
それと並行して、第二不活性ガス供給部270から容器204、ヒータユニット281に不活性ガスが供給される。不活性ガスは、少なくとも基板搬入・載置工程(S110)から後述する基板搬出工程(S170)が終了するまでの間供給する。
【0093】
基板載置プレート回転開始工程S120を説明する。基板Sが各凹部217bに載置されたら、回転部224は基板載置プレート217をR方向に回転するよう制御される。基板載置プレート217を回転させることにより、基板Sは、第1処理領域206a、第1パージ領域207a、第2処理領域206b、第2パージ領域207bの順に移動する。
【0094】
ガス供給開始工程S130を説明する。基板Sを加熱して所望とする温度に達し、基板載置プレート217が所望とする回転速度に到達したら、バルブ244を開けて第1処理領域206a内にSi2H2Cl2ガスの供給を開始する。それと併行して、バルブ254を開けて第2処理領域206b内にアンモニアガスを供給する。
【0095】
このとき、Si2H2Cl2ガスの流量が所定の流量となるように、MFC243を調整する。なお、Si2H2Cl2ガスの供給流量は、例えば50sccm以上500sccm以下である。
【0096】
また、アンモニアガスの流量が所定の流量となるように、MFC253を調整する。なお、アンモニアガスの供給流量は、例えば100sccm以上5000sccm以下である。
【0097】
なお、基板搬入・載置工程S110後、継続して、排気部234、235により処理室201内が排気されるとともに、第一不活性ガス供給部260から第1パージ領域207a内および第2パージ領域207b内にパージガスとしてのN2ガスが供給されている。また、APCバルブ234c、APCバルブ235cの弁開度を適正に調整することにより、処理室201内の圧力を所定の圧力とする。
【0098】
成膜工程S140を説明する。ここでは成膜工程S140の基本的な流れについて説明し、詳細は後述する。成膜工程S140では、各基板Sは、第一処理領域206aにてシリコン含有層が形成され、更に回転後の第二処理領域206bにて、シリコン含有層とアンモニアガスとが反応し、基板S上にシリコン窒化膜を形成する。所望の膜厚となるよう、基板載置部を所定回数回転させる。
【0099】
ガス供給停止工程S150を説明する。所定回数回転させた後、バルブ244,254を閉じ、第1処理領域206aへのSi2H2Cl2ガスの供給、第2処理領域206bへのNH3ガスの供給を停止する。
【0100】
基板載置プレート回転停止工程S160を説明する。ガス供給停止S150の後、基板載置プレート217の回転を停止する。
【0101】
基板搬出工程S170を説明する。ゲートバルブ205と対向する位置に基板Sを移動するよう基板載置プレートを回転させる。その後、基板搬入時と同様にピン219上に基板Sを支持させる。支持後ゲートバルブ205を開き、図示しない基板移載機を用いて基板Sを容器203の外へ搬出する。これを処理した基板Sの枚数分繰り返し、すべての基板Sを搬出する。搬出後、第一不活性ガス供給部260、第二不活性ガス供給部270による不活性ガスの供給を停止する。
【0102】
続いて、図12を用いて成膜工程S140の詳細を説明する。尚、第1処理領域206a通過工程S210から第2パージ領域通過工程S240までは、基板載置部217上に載置された複数の基板Sの内、一枚の基板Sを主として説明する。
【0103】
図12に示されているように、成膜工程S140では、基板載置プレート217の回転によって、複数の基板Sを、第1処理領域206a、第1パージ領域207a、第2処理領域206b、および第2パージ領域207bを順次通過させる。
【0104】
第1処理領域通過S210を説明する。基板Sが第1処理領域206aを通過する際に、Si2H2Cl2ガスが基板Sに供給される。このとき、第1処理領域206a内には反応ガスが無いため、Si2H2Cl2ガスは反応ガスと反応することなく、直接基板Sの表面に接触(付着)する。これにより、基板Sの表面には、第1層が形成される。
【0105】
第1パージ領域通過S220を説明する。基板Sは、第1処理領域206aを通過した後に、第1パージ領域207aに移動する。基板Sが第1パージ領域207aを通過するときに、第1処理領域206aにおいて基板S上で強固な結合を形成できなかったSi2H2Cl2の成分が、不活性ガスによって基板S上から除去される。
【0106】
第2処理領域通過S230を説明する。基板Sは、第1パージ領域207aを通過した後に第2処理領域206bに移動する。基板Sが第2処理領域206bを通過するときに、第2処理領域206bでは、第1層が反応ガスとしてのアンモニアガスと反応する。これにより、基板Sの上には、少なくともSiおよびNを含む第2層が形成される。
【0107】
第2パージ領域通過S240を説明する。基板Sは、第2処理領域206bを通過した後に、第2パージ領域207bに移動する。基板Sが第2パージ領域207bを通過するときに、第2処理領域206cにおいて基板S上の第3層から脱離したHClや、余剰となったH2ガス等が、不活性ガスによって基板S上から除去される。
【0108】
このようにして、基板に対して、互いに反応する少なくとも2つの反応ガスを順番に供給する。以上の第1処理領域通過S210、第1パージ領域通過S220、第2処理領域通過S230、および第2パージ領域通過S240を1サイクルとする。
【0109】
判定S250を説明する。コントローラ300は、上記1サイクルを所定回数実施したか否かを判定する。具体的には、コントローラ300は、基板載置プレート217の回転数をカウントする。
【0110】
上記1サイクルを所定回数実施していないとき(S250でNoの場合)、さらに基板載置プレート217の回転を継続させて、第1処理領域通過S210、第1パージ領域通過S220、第2処理領域通過S230、第2パージ領域通過S240を有するサイクルを繰り返す。このように積層することにより薄膜を形成する。
【0111】
上記1サイクルを所定回数実施したとき(S250でYesの場合)、成膜工程S140を終了する。このように、上記1サイクルを所定回数回実施することにより、積層した所定膜厚の薄膜が形成される。
【0112】
なお、本実施形態においては、反応ガスとしてアンモニアガスを例にして説明したが、それに限るものではない。
【0113】
以上、本開示の実施形態を具体的に説明したが、本開示は上述の実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。
【0114】
また、上述の実施形態では、原料ガスとしてSi2H2Cl2ガスを用い、反応ガスとしてアンモニアガスを用い、基板S上に窒化膜としてSiN膜を形成する場合について説明したが、原料ガスとして、SiH4,Si2H6、Si3H8、アミノシラン、TSAガスを用いてもよい。反応ガスとしてO2ガスを用い、酸化膜を形成してもよい。TaN、TiNなどのその他の窒化膜、HfO、ZrO、SiOなどの酸化膜、Ru、Ni、Wなどのメタル膜を基板S上に形成してもよい。なお、TiN膜またはTiO膜を形成する場合、原料ガスとしては、例えばテトラクロロチタン(TiCl4)等を用いることができる。
【符号の説明】
【0115】
S:基板、
200:リアクタ、
206a:第1処理領域、
206b:第2処理領域、
217:基板載置プレート、
280:ヒータ、
226、293、295、296、297.298:熱減衰部、
300:コントローラ(制御部)

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12