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特許6995213ブロック共重合体組成物、その製造方法、およびそれを含むアスファルト組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-16
(45)【発行日】2022-01-14
(54)【発明の名称】ブロック共重合体組成物、その製造方法、およびそれを含むアスファルト組成物
(51)【国際特許分類】
   C08F 297/04 20060101AFI20220106BHJP
   C08L 95/00 20060101ALI20220106BHJP
   C08L 53/02 20060101ALI20220106BHJP
【FI】
C08F297/04
C08L95/00
C08L53/02
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2020545475
(86)(22)【出願日】2019-11-20
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-06-24
(86)【国際出願番号】 KR2019015945
(87)【国際公開番号】W WO2020111644
(87)【国際公開日】2020-06-04
【審査請求日】2020-08-31
(31)【優先権主張番号】10-2018-0147745
(32)【優先日】2018-11-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2019-0139439
(32)【優先日】2019-11-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】500239823
【氏名又は名称】エルジー・ケム・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000040
【氏名又は名称】特許業務法人池内アンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】イ、セ-キョン
(72)【発明者】
【氏名】キム、テ-チュン
(72)【発明者】
【氏名】キム、ヒョン-ウ
(72)【発明者】
【氏名】イ、ソン-トゥ
(72)【発明者】
【氏名】イ、チュン-ファ
【審査官】内田 靖恵
(56)【参考文献】
【文献】特表2018-518473(JP,A)
【文献】特開2009-127049(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2018-0043535(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 297/02
C08L 95/00
C08L 53/02
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ジブロック共重合体およびトリブロック共重合体を含むブロック共重合体組成物であって、
前記ジブロック共重合体は、第1共役ジエン系単量体由来の繰り返し単位を含む第1ブロックと、第1ビニル芳香族単量体由来の繰り返し単位を含む第2ブロックと、を含み、
前記ジブロック共重合体の一側末端に、下記化学式1で表される変性開始剤由来の官能基を含み、
前記トリブロック共重合体は、第2ビニル芳香族単量体由来の繰り返し単位を含む第3ブロックと、第2共役ジエン系単量体由来の繰り返し単位を含む第4ブロックと、カップリング剤由来の連結基と、を含むブロック共重合体組成物。
【化12】

(前記化学式1中、R1は、炭素数1~炭素数20のヒドロカルビル基であり、R2は、炭素数1~炭素数30のアルキレン基であり、R3およびR4は、それぞれ独立して、水素または炭素数1~炭素数30のアルキル基である。)
【請求項2】
ジブロック共重合体25重量%~42重量%を含み、前記トリブロック共重合体58重量%~75重量%を含む、請求項1に記載のブロック共重合体組成物。
【請求項3】
前記ジブロック共重合体30重量%~35重量%を含み、前記トリブロック共重合体65重量%~70重量%を含む、請求項1または2に記載のブロック共重合体組成物。
【請求項4】
1は、炭素数2~炭素数8のヒドロカルビル基であり、R2は、炭素数1~炭素数8のアルキレン基であり、R3およびR4は、それぞれ独立して、水素または炭素数1~炭素数8のアルキル基である、請求項1~3のいずれか一項に記載のブロック共重合体組成物。
【請求項5】
前記化学式1で表される変性開始剤は、下記化学式2または化学式3で表される変性開始剤である、請求項1~4のいずれか一項に記載のブロック共重合体組成物。
【化13】

【化14】
【請求項6】
前記ブロック共重合体組成物中のトリブロック共重合体のカップリング効率が62%~79%である、請求項1~5のいずれか一項に記載のブロック共重合体組成物。
【請求項7】
前記ブロック共重合体組成物中のトリブロック共重合体のカップリング効率が65%~67%である、請求項1~6のいずれか一項に記載のブロック共重合体組成物。
【請求項8】
下記化学式1で表される変性開始剤の存在下で、第1共役ジエン系単量体由来の繰り返し単位を含む第1ブロックを製造するステップと、
前記ステップで製造された第1ブロックの存在下で、第1ビニル芳香族単量体由来の繰り返し単位を含む第2ブロックを重合させ、ジブロック共重合体を製造するステップと、
第2ビニル芳香族単量体由来の繰り返し単位を含む第3ブロックを製造するステップと、
前記ステップで製造された第3ブロックの存在下で、第2共役ジエン系単量体を重合させ、第3ブロック-第4ブロック共重合体を製造するステップと、
前記第3ブロック-第4ブロック共重合体にカップリング剤を反応させてトリブロック共重合体を製造するステップと、
前記ジブロック共重合体および前記トリブロック共重合体を混合するステップと、を含む、ブロック共重合体組成物の製造方法。
【化15】

(前記化学式1中、R1は、炭素数1~炭素数20のヒドロカルビル基であり、R2は、炭素数1~炭素数30のアルキレン基であり、R3およびR4は、それぞれ独立して、水素または炭素数1~炭素数30のアルキル基である。)
【請求項9】
前記ブロック共重合体組成物が、前記ジブロック共重合体25重量%~42重量%および前記トリブロック共重合体58重量%~75重量%を含む、請求項8に記載のブロック共重合体組成物の製造方法。
【請求項10】
請求項1から7の何れか一項に記載のブロック共重合体組成物と、アスファルトと、を含むアスファルト組成物。
【請求項11】
前記ブロック共重合体組成物が、前記アスファルト組成物の総100重量部に対して、1重量部~10重量部で含まれる、請求項10に記載のアスファルト組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2018年11月26日付けの韓国特許出願第10-2018-0147745号および2019年11月04日付けの韓国特許出願第10-2019-0139439号に基づく優先権の利益を主張し、該当韓国特許出願の文献に開示された全ての内容は、本明細書の一部として組み込まれる。
【0002】
本発明は、ブロック共重合体組成物に関し、より詳細には、アスファルト改質剤として用いるためのブロック共重合体組成物、その製造方法、およびそれを含むアスファルト組成物に関する。
【背景技術】
【0003】
アスファルト(asphalt)は、石油の原油成分中において大部分の揮発性油分が蒸発した後の残留物であり、高温では、粘性の高い液体または半固体状態を維持するが、常温以下の温度では硬く固まる物性を有している。また、アスファルトは、可塑性が豊富であり、防水性、電気絶縁性、接着性などが高く、且つ化学的に安定した特徴を有しているため、道路の舗装材料や防水材などの建築材料に広く適用されている。しかし、かかるアスファルトは、使用中に高温に長期間にわたって曝される場合、塑性変形が発生し、低温では外部衝撃によってクラックが生じるなどの問題がある。
【0004】
このような問題を解決するために、近年、種々の高分子を添加してアスファルトの物性を改善しようとする研究が進んでいる。
【0005】
例えば、スチレン-ブタジエン-スチレン(SBS)共重合体のようなビニル芳香族炭化水素-共役ジエン共重合体を、アスファルト組成物の物性を向上させるための改質剤または衝撃補強剤などとして用いる方法が挙げられる。
【0006】
一般に、SBS共重合体をアスファルト組成物に用いるためには、アスファルトとの相溶性が最も基本的に且つ必須に求められる。
【0007】
しかしながら、最近、石油の原油価格の上昇と、省エネルギー政策により、精油施設の高度化が持続的に行われており、これに伴い、精油残留物であるアスファルト中の副産物であるアスファルテン(asphaltene)の含量が高くなっている。前記アスファルテンは、芳香族炭化水素の集合体であって、末端に多くの極性官能基を含んでいるため、極性官能基のないSBS共重合体との相溶性が非常に低い。そのため、アスファルト組成物の加工時間が大きく増加するだけでなく、改質されたアスファルト組成物の弾性が低下するなど、アスファルトの品質低下を引き起こしている。
【0008】
このような問題を解決するために、SBS共重合体の分子量を調節するか、カップリング効果を付加できるように、前記SBS共重合体の分子微細構造を変更する方法、または、加工補助剤としてオイルなどの添加剤を投入する方法などが提案されているが、様々な品質偏差を有するアスファルトのそれぞれに対して個別的な対策が行われなければならないため、窮極的な解決方法にはなっていない。
【0009】
したがって、アスファルトとの相溶性に優れた、アスファルト改質剤としてのSBS共重合体の開発が急務である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明で解決しようとする課題は、上記の発明の背景となる技術で述べた問題を解決するために、アスファルト改質剤として用いられるブロック共重合体組成物中に末端変性されたジブロック共重合体を含むことで、アスファルト組成物の軟化点および溶解性をともに改善させることにある。
【0011】
すなわち、本発明は、アスファルト改質剤として利用可能なブロック共重合体組成物を提供し、前記ブロック共重合体組成物を用いてアスファルトを改質させる場合、軟化点および溶解性が改善されるアスファルト組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記の課題を解決するための本発明の一実施形態によると、本発明は、ジブロック共重合体およびトリブロック共重合体を含むブロック共重合体組成物であって、前記ジブロック共重合体は、第1共役ジエン系単量体由来の繰り返し単位を含む第1ブロックと、第1ビニル芳香族単量体由来の繰り返し単位を含む第2ブロックと、を含み、前記ジブロック共重合体の一側末端に、下記化学式1で表される変性開始剤由来の官能基を含む、ブロック共重合体組成物を提供する。
【0013】
【化1】
【0014】
前記化学式1中、R1は、炭素数1~炭素数20のヒドロカルビル基であり、R2は、炭素数1~炭素数30のアルキレン基であり、R3およびR4は、それぞれ独立して、水素または炭素数1~炭素数30のアルキル基である。
【0015】
また、本発明は、下記化学式1で表される変性開始剤の存在下で、第1共役ジエン系単量体由来の繰り返し単位を含む第1ブロックを製造するステップと、前記ステップで製造された第1ブロックの存在下で、第1ビニル芳香族単量体由来の繰り返し単位を含む第2ブロックを重合させ、ジブロック共重合体を製造するステップと、トリブロック共重合体を製造するステップと、前記ジブロック共重合体および前記トリブロック共重合体を混合するステップと、を含む、ブロック共重合体組成物の製造方法を提供する。
【0016】
【化2】
【0017】
前記化学式1中、R1は、炭素数1~炭素数20のヒドロカルビル基であり、R2は、炭素数1~炭素数30のアルキレン基であり、R3およびR4は、それぞれ独立して、水素または炭素数1~炭素数30のアルキル基である。
【0018】
また、本発明は、前記ブロック共重合体組成物と、アスファルトと、を含むアスファルト組成物を提供する。
【発明の効果】
【0019】
本発明に係るブロック共重合体組成物をアスファルト改質剤として用いる場合、アスファルト組成物の軟化点および溶解度の両方を高いレベルに改善させる効果がある。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の説明および特許請求の範囲で用いられた用語や単語は、通常的もしくは辞書的な意味に限定して解釈してはならず、発明者らは、自分の発明を最善の方法で説明するために、用語の概念を適切に定義することができるという原則に則って、本発明の技術的思想に合致する意味と概念で解釈すべきである。
【0021】
本発明において、用語「由来の繰り返し単位」、「由来の官能基」、および「由来の連結基」は、ある物質に起因した成分、構造、またはその物質自体を指し得て、具体的な例として、「由来の繰り返し単位」は、重合体の重合時に、投入される単量体が重合反応に関与して重合体中で成す繰り返し単位を意味し、「由来の官能基」は、重合体の重合時に、投入される開始剤が重合反応に関与して重合体中で成す繰り返し単位の一側末端に連結された官能基を意味し、「由来の連結基」は、重合体間のカップリング反応時に、投入されるカップリング剤がカップリング反応に関与してカップリングされた重合体中で各重合体を連結する連結基を意味し得る。
【0022】
本発明において、用語「ブロック」は、共重合体中において同一の単量体のみが重合反応に関与し、同一の単量体由来の繰り返し単位のみから構成された繰り返し単位群を意味し得て、具体的な例として、ビニル芳香族単量体由来の繰り返し単位を含むブロックは、ビニル芳香族単量体に由来の繰り返し単位のみで形成されたブロックを意味し、共役ジエン系単量体由来の繰り返し単位を含むブロックは、共役ジエン系単量体に由来の繰り返し単位のみで形成されたブロックを意味し得る。
【0023】
本発明において、用語「ジブロック共重合体」および「トリブロック共重合体」は、異なる単量体に由来のブロックを2種以上含む共重合体を意味し得る。
【0024】
本発明において、用語「活性重合体」は、アニオン重合反応により形成された重合体であって、重合体の一側末端がアニオン状態を維持し、追加的な重合または反応が可能な重合体を意味し得て、具体的な例として、リビングアニオン重合体を意味し得る。
【0025】
本発明において、用語「溶液」は、ブロック共重合体組成物の製造方法の各ステップにおける重合またはカップリング反応により生成された重合体、ジブロック共重合体、およびブロック共重合体を炭化水素系溶媒中に分散または溶解された形態で含んでいるものを意味し得る。
【0026】
<ブロック共重合体組成物>
本発明に係るブロック共重合体組成物は、ジブロック共重合体およびトリブロック共重合体を含んでもよい。
【0027】
一般に、アスファルト改質剤として主に用いられるビニル芳香族-共役ジエンブロック共重合体、特に、スチレン-ブタジエン-スチレン(SBS)のトリブロック共重合体において、スチレンブロックとブタジエンブロックとの含量、共役ジエンブロック中に存在するビニル基の含量など、分子の微細構造に関連した因子は互いに相関関系にあり、高温物性が上昇すると低温物性が低下し、溶解速度が増加すると機械的物性が低下し、硫黄架橋時にアスファルト組成物中にゲルが形成されるなどの問題が発生し得る。しかし、本発明に係るブロック共重合体組成物は、トリブロック共重合体とともに、一側末端に変性開始剤由来官能基を含むジブロック共重合体をともに含むことで、添加剤の投入や、トリブロック共重合体の分子量の調節や、分子微細構造の変更がなくても、軟化点および溶解性が向上する効果がある。
【0028】
本発明に係るブロック共重合体組成物に含まれる前記ジブロック共重合体は、第1共役ジエン系単量体由来の繰り返し単位を含む第1ブロックと、第1ビニル芳香族単量体由来の繰り返し単位を含む第2ブロックと、を含み、前記ジブロック共重合体の一側末端に、下記化学式1で表される変性開始剤由来の官能基を含んでもよい。一方、前記一側末端は、前記ジブロック共重合体の前記第1ブロックの一側末端であってもよい。
【0029】
【化3】
【0030】
前記化学式1中、R1は、炭素数1~炭素数20、炭素数1~炭素数15、または炭素数2~炭素数8のヒドロカルビル基であり、R2は、炭素数1~炭素数30、炭素数1~炭素数20、炭素数1~炭素数8のアルキレン基であり、R3およびR4は、それぞれ独立して、水素、炭素数1~炭素数30、炭素数1~炭素数20、または炭素数1~炭素数8のアルキル基である。
【0031】
前記ジブロック共重合体の第1共役ジエン系単量体由来の繰り返し単位を含む第1ブロックは、第1共役ジエン系単量体の重合により形成されたブロックであってもよい。前記第1ブロックを形成するための第1共役ジエン系単量体は、1,3-ブタジエン、2,3-ジメチル-1,3-ブタジエン、ピペリレン、3-ブチル-1,3-オクタジエン、イソプレン、2-フェニル-1,3-ブタジエン、および2-ハロ-1,3-ブタジエン(ハロは、ハロゲン原子を意味する)からなる群から選択される1種以上であってもよい。前記第1共役ジエン系単量体由来の繰り返し単位の含量は、前記ジブロック共重合体の総100重量部に対して、60重量部~80重量部、65重量部~75重量部、または67重量部~73重量部であってもよい。この範囲内であると、ジブロック共重合体を含むブロック共重合体組成物をアスファルト改質剤として用いる場合、アスファルト組成物の軟化点および溶解性が向上する効果がある。
【0032】
また、前記ジブロック共重合体の第1ビニル芳香族単量体由来の繰り返し単位を含む第2ブロックは、第1ビニル芳香族単量体の重合により形成されたブロックであってもよい。前記第2ブロックを形成するための第1ビニル芳香族単量体は、スチレン、α-メチルスチレン、3-メチルスチレン、4-メチルスチレン、4-プロピルスチレン、1-ビニルナフタレン、4-シクロヘキシルスチレン、4-(p-メチルフェニル)スチレン、および1-ビニル-5-ヘキシルナフタレンからなる群から選択される1種以上であってもよい。前記第1ビニル芳香族単量体由来の繰り返し単位の含量は、前記ジブロック共重合体の総100重量部に対して、20重量部~40重量部、25重量部~35重量部、または27重量部~33重量部であってもよい。この範囲内であると、ジブロック共重合体を含むブロック共重合体組成物をアスファルト改質剤として用いる場合、アスファルト組成物の軟化点および溶解性が向上する効果がある。
【0033】
一方、前記ジブロック共重合体組成物を含むアスファルト組成物の軟化点および溶解性をより向上させるために、前記ジブロック共重合体の一側末端、具体的な例として、前記第1ブロックの一側末端に、下記化学式1で表される変性開始剤由来の官能基を含んでもよい。
【0034】
【化4】
【0035】
前記化学式1中、R1は、炭素数1~炭素数20、炭素数1~炭素数15、または炭素数2~炭素数8のヒドロカルビル基であり、R2は、炭素数1~炭素数30、炭素数1~炭素数20、または炭素数1~炭素数8のアルキレン基であり、R3およびR4は、それぞれ独立して、水素、炭素数1~炭素数30、炭素数1~炭素数20、または炭素数1~炭素数8のアルキル基である。
【0036】
具体的な例として、前記化学式1で表される変性開始剤は、下記化学式2および化学式3で表されることができる。
【0037】
【化5】
【0038】
【化6】
【0039】
前記変性開始剤由来の官能基の変性開始剤は、アスファルト組成物の軟化点および溶解性を向上させるために、ベンジルアミン系化合物で変性させて製造された変性開始剤であってもよい。前記ベンジルアミン系化合物に由来の官能基がジブロック共重合体の一側末端に位置する場合、アスファルト中に存在する極性基と前記変性開始剤由来の官能基との親和度が増加し、それを含むジブロック共重合体のアスファルトに対する溶解性が向上する効果がある。このようなジブロック共重合体の溶解性の向上は、ブロック共重合体組成物中にともに含まれているトリブロック共重合体の鎖緩和(chain relaxation)にも助けになるため、ブロック共重合体組成物の全般的な溶解性が向上する効果がある。また、ジブロック共重合体がアスファルトに溶解された後には、アスファルト内部の高い温度(180℃以上)のため、ジブロック共重合体中のベンジルアミン系化合物に由来の官能基間の反応が起こり得るが、このように反応が起こったジブロック共重合体は、トリブロック共重合体の形態、またはジブロック共重合体が多数結合された形態に変形され、高分子の含量が増加し、物性の向上に寄与することになる。したがって、一側末端に前記変性開始剤由来の官能基を含むジブロック共重合体を含むブロック共重合体をアスファルト改質剤として用いる場合、アスファルト組成物の軟化点および溶解性が向上する効果がある。
【0040】
また、前記変性開始剤は、ベンジルアミン系化合物の中でも、ビニル基が置換されたものであってもよく、これは、前記変性開始剤が、ジブロック共重合体の製造時に重合反応を開始させる役割を果たすだけでなく、反応の最後ステップで、変性開始剤由来の官能基間の水素結合、共有結合などを含むゲル化のような相互作用が行われることができる。
【0041】
すなわち、本発明に係る変性開始剤は開始剤の役割を果たし、これを用いて製造されたジブロック共重合体の末端が効果的に変性されることができる。したがって、カップリング剤を投入しなくても、変性開始剤由来の官能基間の相互作用により、改質アスファルトの製造過程で、トリブロック共重合体の形態またはジブロック共重合体が多数結合された形態に変形することになり、高分子の含量が増加し、物性の向上に寄与する効果がある。これにより、アスファルト組成物に含まれる成分との相溶性およびアスファルト組成物の軟化点に優れる効果がある。
【0042】
前記変性開始剤由来の官能基の含量は、前記ジブロック共重合体の総100重量部に対して、0.248重量部~0.322重量部、0.248重量部~0.32重量部、または0.25重量部~0.3重量部であってもよい。この範囲内であると、ジブロック共重合体を含むブロック共重合体組成物をアスファルト改質剤として用いる場合、アスファルト組成物の軟化点および溶解性が向上する効果がある。
【0043】
本発明に係るブロック共重合体組成物に含まれるトリブロック共重合体は、第2ビニル芳香族単量体由来の繰り返し単位を含む第3ブロックと、第2共役ジエン系単量体由来の繰り返し単位を含む第4ブロックと、カップリング剤由来の連結基と、を含んでもよい。
【0044】
前記トリブロック共重合体の第2ビニル芳香族単量体由来の繰り返し単位を含む第3ブロックは、第2ビニル芳香族単量体の重合により形成されたブロックであってもよい。前記第3ブロックを形成するための第2ビニル芳香族単量体は、スチレン、α-メチルスチレン、3-メチルスチレン、4-メチルスチレン、4-プロピルスチレン、1-ビニルナフタレン、4-シクロヘキシルスチレン、4-(p-メチルフェニル)スチレン、および1-ビニル-5-ヘキシルナフタレンからなる群から選択される1種以上であってもよく、上述の第1ビニル芳香族単量体と同一でも異なっていてもよい。前記第2ビニル芳香族単量体由来の繰り返し単位の含量は、前記トリブロック共重合体の総100重量部に対して、20重量部~40重量部、25重量部~35重量部、または27重量部~33重量部であってもよい。この範囲内であると、トリブロック共重合体を含むブロック共重合体組成物をアスファルト改質剤として用いる場合、アスファルト組成物の軟化点および溶解性が向上する効果がある。
【0045】
また、前記トリブロック共重合体の第2共役ジエン系単量体由来の繰り返し単位を含む第4ブロックは、第2共役ジエン系単量体の重合により形成されたブロックであってもよい。前記第4ブロックを形成するための第2共役ジエン系単量体は、1,3-ブタジエン、2,3-ジメチル-1,3-ブタジエン、ピペリレン、3-ブチル-1,3-オクタジエン、イソプレン、2-フェニル-1,3-ブタジエン、および2-ハロ-1,3-ブタジエン(ハロは、ハロゲン原子を意味する)からなる群から選択される1種以上であってもよく、上述の第1共役ジエン系単量体と同一でも異なっていてもよい。前記第2共役ジエン系単量体由来の繰り返し単位の含量は、前記トリブロック共重合体100重量部に対して、60重量部~80重量部、65重量部~75重量部、または67重量部~73重量部であってもよい。この範囲内であると、トリブロック共重合体を含むブロック共重合体組成物をアスファルト改質剤として用いる場合、アスファルト組成物の軟化点および溶解性が向上する効果がある。
【0046】
前記カップリング剤由来の連結基は、複数の第2共役ジエン系単量体由来の繰り返し単位を含むブロックを連結する連結基であってもよい。前記カップリング剤由来の連結基を形成するためのカップリング剤は、ビニル基含有炭化水素系化合物、エステル系化合物、シラン系化合物、ポリシロキサン系化合物、およびポリケトンからなる群から選択される1種以上であってもよい。具体的な例として、前記カップリング剤は、多官能性カップリング剤であり、ジビニルベンゼンなどのようなビニル基含有炭化水素系化合物;ジエチルアジペート、グリシジルメタクリレートなどのようなエステル系化合物;ジメチルジクロロシラン、メチルジクロロシラン、メトキシシラン、グリシドキシトリメトキシシラン、オキシジプロピルビス(トリメトキシシラン)などのようなシラン系化合物;α,ω-ビス(2-トリクロロシリルエチル)ポリジメチルシロキサンなどのようなポリシロキサン系化合物;またはポリケトンなどからなる群から選択される1種以上であってもよい。前記カップリング剤由来の連結基の含量は、前記トリブロック共重合体の総100重量部に対して、0.278重量部~0.516重量部、0.28重量部~0.51重量部、または0.285重量部~0.45重量部であってもよい。この範囲内であると、カップリング効率が上昇し、トリブロック共重合体を含むブロック共重合体組成物をアスファルト改質剤として用いる場合、アスファルト組成物の軟化点が向上する効果がある。
【0047】
一方、前記ブロック共重合体組成物の全含量に対して、前記ジブロック共重合体の含量は、25重量%~42重量%、30重量%~40重量%、または30重量%~35重量%であってもよく、前記トリブロック共重合体の含量は、58重量%~75重量%、60重量%~70重量%、65重量%~70重量%であってもよい。この範囲内であると、前記ブロック共重合体組成物をアスファルト改質剤として用いる場合、アスファルト組成物の軟化点および溶解性が向上する効果がある。
【0048】
この際、前記ブロック共重合体組成物のカップリング効率は、62%~79%、62%~73%、または65%~67%であってもよく、この範囲内であると、本発明に係るブロック共重合体組成物をアスファルト改質剤として含むアスファルト組成物の軟化点および溶解性が向上する効果がある。
【0049】
<ブロック共重合体組成物の製造方法>
本発明によると、前記ブロック共重合体組成物を製造するための方法が提供されることができる。本発明に係るブロック共重合体組成物の製造方法は、ジブロック共重合体を製造するステップと、トリブロック共重合体を製造するステップと、前記ジブロック共重合体および前記トリブロック共重合体を混合するステップと、を含んでもよい。
【0050】
前記ジブロック共重合体を製造するステップは、下記化学式1で表される変性開始剤の存在下で、第1共役ジエン系単量体由来の繰り返し単位を含む第1ブロックを製造するステップと、前記ステップで製造された第1ブロックの存在下で、第1ビニル芳香族単量体由来の繰り返し単位を含む第2ブロックを重合させ、ジブロック共重合体を製造するステップと、を含んでもよい。
【0051】
【化7】
【0052】
前記化学式1中、R1は、炭素数1~炭素数20、炭素数1~炭素数15、または炭素数2~炭素数8のヒドロカルビル基であり、R2は、炭素数1~炭素数30、炭素数1~炭素数20、炭素数1~炭素数8のアルキレン基であり、R3およびR4は、それぞれ独立して、水素、炭素数1~炭素数30、炭素数1~炭素数20、または炭素数1~炭素数8のアルキル基である。
【0053】
前記変性開始剤は、重合開始剤と、ビニル基が置換されたベンジルアミン系化合物とを反応させることで、前記化学式1で表される変性開始剤を製造して用いることができる。
【0054】
具体的な例として、前記化学式1中、R1がブチル基に由来したものであり、R2がメチレン基、R3およびR4がそれぞれメチル基である場合の変性開始剤は、下記化学式2のとおりである。出発物質としてN,N-ジメチルビニルベンジルアミンを用い、これを重合開始剤であるn-ブチルリチウムと反応させると、一方の末端に前記n-ブチルリチウムが置換され、活性重合体であるベンジルアミン系化合物が形成される。
【0055】
【化8】
【0056】
他の具体的な例として、前記化学式1中、R1がブチル基に由来したものであり、R2がメチレン基、R3およびR4がそれぞれ水素である場合の変性開始剤は、下記化学式3のとおりである。出発物質としてビニルベンジルアミンを用い、これを重合開始剤であるn-ブチルリチウムと反応させると、一方の末端に前記n-ブチルリチウムが置換され、活性重合体であるベンジルアミン系化合物が形成される。
【0057】
【化9】
【0058】
前記重合開始剤としては、n-ブチルリチウムの他に、メチルリチウム、エチルリチウム、プロピルリチウム、s-ブチルリチウム、t-ブチルリチウム、ヘキシルリチウム、n-デシルリチウム、t-オクチルリチウム、フェニルリチウム、1-ナフチルリチウム、n-エイコシルリチウム、4-ブチルフェニルリチウム、4-トリルリチウム、シクロヘキシルリチウム、3,5-ジ-n-ヘプチルシクロヘキシルリチウム、4-シクロペンチルリチウム、ナフチルナトリウム、ナフチルカリウム、リチウムアルコキシド、ナトリウムアルコキシド、カリウムアルコキシド、リチウムスルホネート、ナトリウムスルホネート、カリウムスルホネート、リチウムアミド、ナトリウムアミド、カリウムアミド、リチウムイソプロピルアミドなどを用いてもよい。
【0059】
本発明に係る変性開始剤の製造は、50℃~70℃、53℃~68℃、または58℃~62℃の温度で、5分~20分、5分~15分、または7分~12分間行われることができる。この範囲内であると、重合開始剤とビニル基が置換されたベンジルアミン系化合物との反応速度が速く、変性開始剤の製造が容易である効果がある。
【0060】
前記変性開始剤の製造反応時に、出発物質と重合開始剤のモル比は、1:0.7~1.1、1:0.75~1.1、または1:0.8~1.1であってもよい。この範囲内であると、重合開始剤とビニル基が置換されたベンジルアミン系化合物との反応速度が速く、変性開始剤の製造が容易である効果がある。
【0061】
前記第1ブロックを製造するステップは、炭化水素系溶媒中、前記変性開始剤の存在下で、第1共役ジエン系単量体を添加して重合させ、第1共役ジエン系単量体由来の繰り返し単位を含む第1モノブロック重合体溶液を製造するステップであってもよい。前記第1ブロックを製造するステップで製造された第1モノブロック重合体溶液は、第1共役ジエン系単量体由来の繰り返し単位を含むブロック形成用重合体を含む。
【0062】
前記第2ブロックを重合させてジブロック共重合体を製造するステップは、前記第1ブロックを製造するステップで製造された第1共役ジエン系単量体由来の繰り返し単位を含む第1モノブロック重合体溶液に、第1ビニル芳香族単量体を添加して重合させることで、第1共役ジエン系単量体由来の繰り返し単位を含む第1ブロックと、第1ビニル芳香族単量体由来の繰り返し単位を含む第2ブロックと、を含む第1ジブロック共重合体溶液を製造するステップであってもよい。前記ブロック形成用重合体は、重合により、重合体の末端がアニオン活性状態であるリビングアニオン重合体であるため、前記第2ブロックを重合させてジブロック共重合体を製造するステップは、別の重合開始剤を投入せずに行われることができる。すなわち、前記第2ブロックは、リビングアニオン重合体から、追加投入される第1ビニル芳香族単量体の重合が行われ、第1共役ジエン系単量体由来の繰り返し単位ブロックに引き続き、第2ブロックを重合時に投入される第1ビニル芳香族単量体によるブロックが形成された、第1ジブロック共重合体を含む第1ジブロック共重合体溶液を製造するためのステップであってもよい。
【0063】
前記トリブロック共重合体を製造するステップは、炭化水素溶媒中で、第2ビニル芳香族単量体由来の繰り返し単位を含む第3ブロックと、第2共役ジエン系単量体由来の繰り返し単位を含む第4ブロックと、カップリング剤由来の連結基と、を含むトリブロック共重合体を製造するステップを含んでもよい。
【0064】
前記トリブロック共重合体を製造するステップは、前記ジブロック共重合体を製造するステップと別に行われることができ、前記ジブロック共重合体と同時に、または順に行われてもよい。
【0065】
前記トリブロック共重合体は、具体的な例として、炭化水素系溶媒中、当業界で用いられる通常の重合開始剤の存在下で、第2ビニル芳香族単量体を添加して重合させ、第2ビニル芳香族単量体由来の繰り返し単位を含む第3ブロック形成用重合体を含む第2モノブロック重合体溶液を製造するステップと、前記第2モノブロック重合体溶液を製造するステップで製造された第2ビニル芳香族単量体由来の繰り返し単位を含む第3ブロック形成用重合体溶液に、第2共役ジエン系単量体を添加して重合させることで、第2ビニル芳香族単量体由来の繰り返し単位を含む第3ブロックと、第2共役ジエン系単量体由来の繰り返し単位を含む第4ブロックと、を含む第2ジブロック共重合体を含む第2ジブロック共重合体溶液を製造するステップと、前記第2ジブロック共重合体溶液を製造するステップで製造された第2ジブロック共重合体溶液に、カップリング剤を添加してカップリング反応させることで、第2ビニル芳香族単量体由来の繰り返し単位を含む第3ブロックと、第2共役ジエン系単量体由来の繰り返し単位を含む第4ブロックと、カップリング剤由来の連結基と、を含むトリブロック共重合体を製造するステップと、を含んで行われることができる。
【0066】
前記第2モノブロック重合体溶液を製造するステップは、トリブロック共重合体の重合時に、重合を開始することで、第2ビニル芳香族単量体由来の繰り返し単位を含む第3ブロックを形成するための、第2ビニル芳香族単量体由来の繰り返し単位を含む第3ブロック形成用重合体を含む第2モノブロック重合体溶液を製造するためのステップであってもよい。前記第2モノブロック重合体溶液を製造するステップで製造された第2モノブロック重合体溶液は、第2ビニル芳香族単量体由来の繰り返し単位を含むブロック形成用重合体を含んでもよい。
【0067】
また、前記第2ジブロック共重合体溶液を製造するステップは、前記第2モノブロック重合体溶液を製造するステップで製造された第2モノブロック重合体溶液に含まれた、第2ビニル芳香族単量体由来の繰り返し単位を含む第3ブロック形成用重合体の存在下で、第2共役ジエン系単量体を添加して重合させることで、第2ビニル芳香族単量体由来の繰り返し単位を含む第3ブロックと、第2共役ジエン系単量体由来の繰り返し単位を含む第4ブロックと、を含む第2ジブロック共重合体を含む第2ジブロック共重合体溶液を製造するためのステップであってもよい。前記第2モノブロック重合体溶液を製造するステップで製造された第2モノブロック重合体溶液は、第2ビニル芳香族単量体由来の繰り返し単位ブロック形成用重合体を含み、これは、上述の第2モノブロック重合体溶液を製造するステップの重合により、重合体の末端がアニオン活性状態であるリビングアニオン重合体であるため、前記第2ジブロック共重合体を製造するステップは、別の重合開始剤を投入せずに行われることができる。すなわち、前記第2ジブロック共重合体を製造するステップは、リビングアニオン重合体から、追加投入される第2共役ジエン系単量体の重合反応が行われ、第2ビニル芳香族単量体由来の繰り返し単位を含む第3ブロックに引き続き、第2ジブロック共重合体を製造するステップで投入される第2共役ジエン系単量体によるブロックが形成された、第2ジブロック共重合体を製造するためのステップであってもよい。
【0068】
また、前記トリブロック共重合体を製造するステップは、前記第2ジブロック共重合体を製造するステップで製造された第2ジブロック共重合体溶液に含まれた第2ジブロック共重合体を、カップリング剤を用いてカップリング反応させ、ジブロック共重合体がカップリングされたトリブロック共重合体、すなわち、ブロック共重合体を含む溶液を製造するためのステップであってもよい。前記第2ジブロック共重合体を製造するステップで製造された第2ジブロック共重合体溶液は、第2ジブロック共重合体を含み、これは、上述の第2ジブロック共重合体を製造するステップの重合により、共重合体の末端、具体的に、第2共役ジエン系単量体由来の繰り返し単位を含むブロックの末端がアニオン活性状態であるリビングアニオン共重合体であるため、カップリング剤に含有されている置換または添加が可能な官能基(functional group)の個数によって、第2カップリング剤の官能基が前記リビングアニオン共重合体で置換されるか、第2カップリング剤の官能基に前記リビングアニオン共重合体が添加されるカップリング反応が行われることができる。すなわち、前記トリブロック共重合体は、カップリング剤に含有されている置換または添加が可能な官能基の個数によって、第2ジブロック共重合体が前記カップリング剤により連結されたものであってもよく、具体的な例として、2個以上の第2ジブロック共重合体が前記カップリング剤由来の連結基によりカップリングされたものであってもよく、より具体的な例として、2個~4個の第2ジブロック共重合体が前記カップリング剤由来の連結基によりカップリングされたものであってもよい。
【0069】
また、前記トリブロック共重合体を製造するステップは、前記カップリング反応の後、反応器内に水またはアルコールを添加し、活性状態の高分子の活性を除去するステップを選択的にさらに含んでもよい。
【0070】
本発明によると、前記炭化水素系溶媒は、重合開始剤と反応せず、且つアニオン重合反応に通常用いられるものであれば使用可能であり、具体的な例として、ブタン、n-ペンタン、n-ヘキサン、n-ヘプタン、またはイソ-オクタンなどの直鎖状または分岐状脂肪族炭化水素化合物;シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロヘプタン、メチルシクロヘキサン、またはメチルシクロヘプタンなどのアルキル基で置換されているかまたは置換されていない環状脂肪族炭化水素化合物;およびベンゼン、トルエン、キシレン、またはナフタレンなどのアルキル基で置換されているかまたは置換されていない芳香族炭化水素化合物であってもよく、これらのうち何れか1つ、または2つ以上の混合物を用いてもよい。
【0071】
また、ブロック共重合体を製造するステップで用いられる重合開始剤は、上述の重合開始剤から選択される1種以上であってもよい。
【0072】
前記ジブロック共重合体とトリブロック共重合体を混合するステップは、ジブロック共重合体とトリブロック共重合体が互いに混在している状態で存在するブロック共重合体組成物を製造するためのステップであることができる。前記混合は、それぞれ粉体の形態で混合して行ってもよく、ブロック共重合体組成物中のジブロック共重合体とトリブロック共重合体をそれぞれ均一に分散および分布させるために、前記ステップで製造されたジブロック共重合体を含む溶液と、前記ステップで製造されたトリブロック共重合体を含む溶液との混合により行ってもよい。この場合、ジブロック共重合体およびトリブロック共重合体の分散性に優れ、均一な分布度を有して、ブロック共重合体組成物を含むアスファルト組成物の物性バランスに優れる効果がある。
【0073】
<アスファルト組成物>
本発明によると、前記ブロック共重合体組成物をアスファルト改質剤として含むアスファルト組成物が提供される。前記アスファルト組成物は、前記ブロック共重合体組成物と、アスファルトと、を含んでもよい。この際、前記ブロック共重合体組成物は、前記アスファルト組成物の総100重量部に対して、1重量部~10重量部、3重量部~8重量部、または4重量部~6重量部で含まれてもよく、この範囲内であると、ブロック共重合体組成物のアスファルトに対する溶解性に優れ、アスファルト組成物の物性に優れる効果がある。
【0074】
前記アスファルト組成物は、アスファルト組成物を架橋させるための架橋剤をさらに含んでもよい。前記架橋剤は、硫黄または硫酸鉄を含有する硫黄化合物であってもよく、具体的な例として、硫黄元素(粉末)であってもよい。前記架橋剤は、前記アスファルト組成物の総100重量部に対して、0.05重量部~3重量部で含まれてもよく、この範囲内であると、適正な架橋反応が維持されて高温物性および弾性が向上し、ゲル化が防止される効果がある。
【0075】
また、前記アスファルトは、アスファルトの総重量に対して、アスファルテンを1重量%~40重量%、または5重量%~30重量%で含んでもよい。
【0076】
また、前記アスファルト組成物は、道路舗装材料、または防水材などの建築材料であってもよい。
【0077】
以下、実施例を挙げて本発明をより詳細に説明する。しかし、下記実施例は、本発明を例示するためのものにすぎず、本発明の範疇および技術思想の範囲内で多様な変更および修正が可能であることは、通常の技術者にとって明白なことであり、これらにのみ本発明の範囲が限定されるものではない。
【0078】
実施例
[実施例1]
<ジブロック共重合体の製造>
窒素で置換されたサス(SUS)高圧反応器に、シクロヘキサン4440gとN,N-ジメチルビニルベンジルアミン1.965gを溶かした後、60℃に昇温した。反応器の温度が60℃に達した時に、シクロヘキサンで4%に希釈されたn-ブチルリチウム25.44gを添加した。この際、溶液がアニオン基を有することになり、赤色に変わった。10分間撹拌させることで、下記化学式2で表される変性開始剤を含む溶液を製造した。次いで、製造された変性開始剤を含む溶液に1,3-ブタジエン612gを投入して撹拌しながらブタジエンブロックを重合した。ブタジエンモノマーが全て消費されると、次いで、前記ブタジエンブロックが生成された混合溶液にスチレン238gを投入し、スチレンが完全に消費されるまで重合し、反応終結剤として水10gを投入して反応活性を除去した後、下記化学式2で表される変性開始剤由来の官能基が置換された(ブタジエン)-(スチレン)ジブロック共重合体を含むジブロック共重合体溶液を製造した。
【0079】
【化10】
【0080】
<トリブロック共重合体の製造>
窒素で置換された10Lの反応器に、精製されたシクロヘキサン4440gおよびスチレン238gを投入して撹拌しながら60℃に昇温した。反応器の温度が60℃に達した時に、前記反応器に、シクロヘキサンで4%に希釈されたn-ブチルリチウム25.44gを投入してスチレンブロックを重合した。
【0081】
次いで、前記スチレンが全て消費されると、1,3-ブタジエン612gを投入し、1,3-ブタジエンが完全に消費されるまで重合し、(スチレン)-(ブタジエン)ジブロック共重合体を製造した。
【0082】
前記重合反応が完了された後、(スチレン)-(ブタジエン)ジブロック共重合体が生成された混合溶液に、105℃、3.5barの条件下で、カップリング剤としてジメチルジクロロシラン0.77gを投入し、5分間カップリング反応を行った。次いで、反応終結剤として水1gを投入して反応活性を除去した後、(スチレン)-(ブタジエン)ジブロック共重合体がカップリングされたトリブロック共重合体を含むトリブロック共重合体溶液を製造した。この際、カップリング効率は92.89%であった。
【0083】
<ブロック共重合体組成物の製造>
前記製造されたジブロック共重合体溶液33重量部(固形分基準)および前記製造されたトリブロック共重合体溶液67重量部(固形分基準)を10時間混合し、混合溶液をストリッピング、凝集、および乾燥することで、ブロック共重合体組成物ペレットを製造した。
【0084】
[実施例2]
前記実施例1において、ジブロック共重合体の製造時に、N,N-ジメチルビニルベンジルアミン1.965gの代わりにビニルベンジルアミン(一級アミン)1.965gを投入し、下記化学式3で表される変性開始剤を含む溶液を製造したことを除き、前記実施例1と同様の方法により行った。
【0085】
【化11】
【0086】
[実施例3]
前記実施例1において、ブロック共重合体組成物の製造時に、ジブロック共重合体溶液33重量部(固形分基準)の代わりに52重量部、トリブロック共重合体溶液67重量部(固形分基準)の代わりに48重量部を使用したことを除き、実施例1と同様の方法により行った。
【0087】
[実施例4]
前記実施例1において、ブロック共重合体組成物の製造時に、ジブロック共重合体溶液33重量部(固形分基準)の代わりに16重量部、トリブロック共重合体溶液67重量部(固形分基準)の代わりに84重量部を使用したことを除き、実施例1と同様の方法により行った。
【0088】
[比較例1]
前記実施例1において、ブロック共重合体組成物の製造時に、トリブロック共重合体溶液を使用せず、ジブロック共重合体溶液100重量部(固形分基準)のみを使用したことを除き、前記実施例1と同様の方法により行った。
【0089】
[比較例2]
前記実施例1において、ブロック共重合体組成物の製造時に、ジブロック共重合体溶液を使用せず、トリブロック共重合体溶液100重量部(固形分基準)のみを使用したことを除き、前記実施例1と同様の方法により行った。
【0090】
[比較例3]
<トリブロック共重合体の製造>
窒素で置換された10Lの反応器に、精製されたシクロヘキサン4440gおよびスチレン238gを投入して撹拌しながら60℃に昇温した。反応器の温度が60℃に達した時に、前記反応器に、シクロヘキサンで4%に希釈されたn-ブチルリチウム28.54gを投入してスチレンブロックを重合した。
【0091】
次いで、前記スチレンが全て消費されると、1,3-ブタジエン612gを投入し、1,3-ブタジエンが完全に消費されるまで重合して、(スチレン)-(ブタジエン)ジブロック共重合体を製造した。
【0092】
前記重合反応が完了された後、(スチレン)-(ブタジエン)ジブロック共重合体が生成された混合溶液に、105℃、3.5barの条件下で、カップリング剤としてジメチルジクロロシラン1.003gを投入して5分間カップリング反応を行った。次いで、反応終結剤として水1gを投入して反応活性を除去した後、(スチレン)-(ブタジエン)ジブロック共重合体がカップリングされたトリブロック共重合体を含むトリブロック共重合体溶液を製造した。この際、カップリング効率は下記表1に示した。
【0093】
[比較例4]
前記比較例3において、トリブロック共重合体の製造時に、シクロヘキサンで4%に希釈されたn-ブチルリチウム28.54gの代わりに26.05g、ジメチルジクロロシラン1.003gの代わりに0.75gを使用したことを除き、比較例3と同様の方法により行った。
【0094】
[比較例5]
前記比較例3において、トリブロック共重合体の製造時に、ジメチルジクロロシラン1.003gの代わりに0.90gを使用したことを除き、比較例3と同様の方法により行った。
【0095】
[比較例6]
前記比較例3において、トリブロック共重合体の製造時に、シクロヘキサンで4%に希釈されたn-ブチルリチウム28.54gの代わりに23.67g、ジメチルジクロロシラン1.003gの代わりに0.85gを使用したことを除き、比較例3と同様の方法により行った。
【0096】
実験例
[実験例1]
前記実施例1~4および比較例1~6で製造された各ブロック共重合体組成物のTSV粘度(cSt)、最大ピーク分子量(Mp、X103g/mol)、カップリング効率(C/E、%)、並びにブロック共重合体組成物中の、スチレン単量体由来の繰り返し単位の含量およびビニル単量体由来の繰り返し単位の含量を下記表1に示した。
【0097】
また、実施例1~4および比較例1~6で製造された各ブロック共重合体組成物をアスファルト改質剤として利用する場合の、軟化点、粘度、および相分離温度を比較するために、180℃の条件で、アスファルト(SK AP-5)600gに前記実施例1~4および比較例1~6で製造された各ブロック共重合体組成物を4.5重量%と計算して投入した後、高剪断撹拌機(HSM、High Shear Mixer)にて2,500rpmで30分間混合した後、低剪断撹拌機(LSM、Low Shear Mixer)にて250rpmで2時間撹拌し、軟化点、粘度、および相分離温度(溶解性)を測定して下記表1に示した。
【0098】
*TSV粘度(cSt):ブロック共重合体組成物をトルエンに5重量%の濃度で溶解させ、25℃に維持されている恒温槽にて、毛細管粘度計を用いて測定した。
【0099】
*最大ピーク分子量(Mp、X103g/mol)、カップリング効率(%)、スチレン単量体由来の繰り返し単位の含量、およびビニル単量体由来の繰り返し単位の含量:PLgel Olexis(Polymer Laboratories社)カラム2本とPLgel mixed-C(Polymer Laboratories社)カラム1本を組み合わせてGPC(Gel permeation chromatograph)を測定し、最大ピーク分子量の計算時に、GPC基準物質(Standard material)としてPS(polystyrene)を用いて実施した。スチレン単量体由来の繰り返し単位の含量およびビニル単量体由来の繰り返し単位の含量は、前記GPCおよび1H NMRにより測定した。カップリング効率は、GPCに現れた高分子のピーク面積を用い、下記数学式1に基づいて計算して示した。
【0100】
[数学式1]
カップリング効率(%)={(カップリングされた高分子の面積)/(高分子の全面積)}X100
【0101】
*軟化点(℃):アスファルト組成物の試験片を、ASTM D36に準じて、1分当たり5℃ずつ水またはグリセリンの加熱時に、これにより試験片が軟化し始まって、試験片上に位置した直径9.525mm、重量3.5gの玉が1インチだけ垂れた時の温度を測定した。
【0102】
*粘度(cps):前記アスファルト組成物の製造時に、低剪断撹拌2時間経過後、135℃の粘度をブルックフィールド粘度計(BROOK FIELD VISCOMETER)を用いて測定した。
【0103】
*相分離温度(溶解性△T、℃):製造されたアスファルト組成物をアルミニウムチューブに50g計量し、180℃のオーブンで72時間熟成(aging)した後、三等分して上部と下部の軟化点を上記のような方法により測定した。この際、相分離温度の値が低いほど、溶解性が増加することを意味する。
【0104】
【表1】
【0105】
前記表1に示したように、本発明に係るジブロック共重合体およびトリブロック共重合体を含むブロック共重合体組成物をアスファルト改質剤として使用した実施例は、軟化点および溶解性が両方とも優れていることを確認することができた。
【0106】
これに対し、ジブロック共重合体のみを含む比較例1は、軟化点が低下し、トリブロック共重合体のみを含む比較例2は、溶解性が低下することを確認することができた。
【0107】
また、前記化学式1で表される変性開始剤由来の官能基を含まないジブロック共重合体を使用した場合であって、ジブロック共重合体とトリブロック共重合体を混合する方式により製造されたブロック共重合体組成物ではない比較例3~6は、本発明に係る実施例に比べて軟化点が低下するか(比較例3、5)、または相分離温度から確認される溶解性が低下することが分かった(比較例4、6)。