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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-16
(45)【発行日】2022-01-14
(54)【発明の名称】光学積層体及びその巻回体
(51)【国際特許分類】
   G02B 5/30 20060101AFI20220106BHJP
【FI】
G02B5/30
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2021073934
(22)【出願日】2021-04-26
【審査請求日】2021-06-21
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002093
【氏名又は名称】住友化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】特許業務法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】藤井 幹士
【審査官】中村 説志
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-207390(JP,A)
【文献】特開2021-056302(JP,A)
【文献】国際公開第2018/042924(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2005/0208316(US,A1)
【文献】特開2020-024357(JP,A)
【文献】特開2015-191142(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0109161(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第107406769(CN,A)
【文献】特開2001-330725(JP,A)
【文献】特表2021-504767(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 5/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
重合性液晶化合物の硬化物層を含む第1位相差層、接着剤層、及び光学層がこの順に積層された光学積層体であって、
前記第1位相差層は、平面視において、前記第1位相差層の端部を含む第1領域と、前記第1領域に隣接する第2領域と、を有し、
前記端部、前記第1領域、及び前記第2領域は、前記第1位相差層の平面視において、前記端部に交差する交差方向に沿ってこの順に配置され、
前記第1位相差層の前記接着剤層側の面において、前記第1領域のフッ素含有量は、前記第2領域のフッ素含有量よりも小さく、
前記第1領域は、前記端部と、前記端部から前記交差方向に100μmの位置との間の領域を含み、
前記第2領域は、前記第1領域と前記第2領域との境界位置と、前記端部から前記交差方向に1000μmの位置との間の領域を含み、
前記第1位相差層の前記接着剤層側の面において、前記端部から100μmの地点におけるフッ素含有量F1[atm%]と、前記端部から1000μmの地点におけるフッ素含有量F2[atm%]とは、下記式(A)の関係を満たす、光学積層体。
F1[atm%]≦F2[atm%]-2.5[atm%] (A)
【請求項2】
前記第1位相差層の厚みは、0.5μm以上10μm以下である、請求項1に記載の光学積層体。
【請求項3】
前記第1位相差層の平面視形状は、矩形であり、
前記端部は、前記矩形の周縁にある端部である、請求項1又は2に記載の光学積層体。
【請求項4】
前記第1位相差層は、前記光学積層体の積層方向に貫通する貫通孔を有し、
前記端部は、前記貫通孔の周縁にある端部である、請求項1~のいずれか1項に記載の光学積層体。
【請求項5】
前記光学層は、重合性液晶化合物の硬化物層を含む第2位相差層である、請求項1~のいずれか1項に記載の光学積層体。
【請求項6】
さらに、直線偏光子を含み、
前記直線偏光子は、前記第1位相差層又は前記光学層の前記接着剤層側とは反対側に積層されている、請求項に記載の光学積層体。
【請求項7】
前記光学層は、直線偏光子を含む、請求項1~のいずれか1項に記載の光学積層体。
【請求項8】
さらに、重合性液晶化合物の硬化物層を含む第3位相差層を含み、
前記第3位相差層は、前記第1位相差層の前記接着剤層側とは反対側に積層されている、請求項に記載の光学積層体。
【請求項9】
請求項1~のいずれか1項に記載の光学積層体をロール状に巻回した巻回体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学積層体及びその巻回体に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置や有機EL表示装置等の表示装置には、偏光板や位相差板等の光学フィルムを含む部材が用いられている。このような光学フィルムを含む部材として、基材層上に重合性液晶化合物を含む液晶組成物を塗布した後、重合性液晶化合物を重合硬化することによって位相差層を形成し、この位相差層上に接着剤層を介して偏光子を積層した光学積層体が知られている(例えば、特許文献1等)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2015-191142号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
光学積層体は通常、長尺物として製造され、この長尺の光学積層体がロール状に巻回した状態で市場流通や保管等がなされる。光学積層体をロール状に巻回した巻回体では、巻回体の巻回軸方向の端部付近において表面全体が平滑にならず、特に薄膜化された光学積層体においては、凹凸が発生する場合があることが見出された。表面が変形した巻回体から巻出された光学積層体は、フィルム面全体が水平面に沿って平坦とならず、変形している場合があるため、光学積層体への加工処理、又は、表示装置等への適用等に適さない。
【0005】
本発明は、重合性液晶化合物の硬化物層を含む位相差層を有する光学積層体であって、変形が抑制された光学積層体及びその巻回体の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、以下の光学積層体を提供する。
〔1〕 重合性液晶化合物の硬化物層を含む第1位相差層、接着剤層、及び光学層がこの順に積層された光学積層体であって、
前記第1位相差層は、平面視において、前記第1位相差層の端部を含む第1領域と、前記第1領域に隣接する第2領域と、を有し、
前記端部、前記第1領域、及び前記第2領域は、前記第1位相差層の平面視において、前記端部に交差する交差方向に沿ってこの順に配置され、
前記第1位相差層の前記接着剤層側の面において、前記第1領域のフッ素含有量は、前記第2領域のフッ素含有量よりも小さい、光学積層体。
〔2〕 前記第1領域は、前記端部と、前記端部から前記交差方向に100μmの位置との間の領域を含み、
前記第2領域は、前記第1領域と前記第2領域との境界位置と、前記端部から前記交差方向に1000μmの位置との間の領域を含み、
前記第1位相差層の前記接着剤層側の面において、前記端部から100μmの地点におけるフッ素含有量F1[atm%]と、前記端部から1000μmの地点におけるフッ素含有量F2[atm%]とは、下記式(A)の関係を満たす、〔1〕に記載の光学積層体。
F1[atm%]≦F2[atm%]-2.5[atm%] (A)
〔3〕 前記第1位相差層の厚みは、0.5μm以上10μm以下である、〔1〕又は〔2〕に記載の光学積層体。
〔4〕 前記第1位相差層の平面視形状は、矩形であり、
前記端部は、前記矩形の周縁にある端部である、〔1〕~〔3〕のいずれかに記載の光学積層体。
〔5〕 前記第1位相差層は、前記光学積層体の積層方向に貫通する貫通孔を有し、
前記端部は、前記貫通孔の周縁にある端部である、〔1〕~〔4〕のいずれかに記載の光学積層体。
〔6〕 前記光学層は、重合性液晶化合物の硬化物層を含む第2位相差層である、〔1〕~〔5〕のいずれかに記載の光学積層体。
〔7〕 さらに、直線偏光子を含み、
前記直線偏光子は、前記第1位相差層又は前記光学層の前記接着剤層側とは反対側に積層されている、〔6〕に記載の光学積層体。
〔8〕 前記光学層は、直線偏光子を含む、〔1〕~〔5〕のいずれかに記載の光学積層体。
〔9〕 さらに、重合性液晶化合物の硬化物層を含む第3位相差層を含み、
前記第3位相差層は、前記第1位相差層の前記接着剤層側とは反対側に積層されている、〔8〕に記載の光学積層体。
〔10〕 〔1〕~〔9〕のいずれかに記載の光学積層体をロール状に巻回した巻回体。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、重合性液晶化合物の硬化物層を含む位相差層を有する光学積層体の変形を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の一実施形態に係る光学積層体を模式的に示す断面図である。
図2図1に示す光学積層体の第1位相差層側の一例を模式的に示す平面図である。
図3図1に示す光学積層体の第1位相差層側の他の例を模式的に示す平面図である。
図4図1に示す光学積層体の第1位相差層側のさらに他の例を模式的に示す平面図である。
図5】本発明の他の実施形態に係る光学積層体を模式的に示す断面図である。
図6】本発明のさらに他の実施形態に係る光学積層体を模式的に示す断面図である。
図7】本発明のさらに他の実施形態に係る光学積層体を模式的に示す断面図である。
図8】本発明のさらに他の実施形態に係る光学積層体を模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して本発明の光学積層体の実施形態について説明する。以下に示す各実施形態は任意に組み合わせてもよい。各実施形態及び各図面において、先に説明した部材と同一の又は相当する部材には、同一の又は対応する参照符号を付し、その説明を繰り返さない場合がある。また、各図面は、各構成要素を理解しやすくするために縮尺を適宜調整して示しており、図面に示される各構成要素の縮尺と実際の構成要素の縮尺とは必ずしも一致しない。
【0010】
〔実施形態1〕
図1は、本実施形態に係る光学積層体を模式的に示す断面図である。図2及び図3は、図1に示す光学積層体の第1位相差層側を模式的に示す平面図である。
【0011】
光学積層体1は、図1に示すように、第1位相差層10、接着剤層20、及び光学層30がこの順に積層されている。第1位相差層10は、重合性液晶化合物の硬化物層を含み、さらに重合性液晶化合物を配向させるための配向層を含んでいてもよい。第1位相差層10は、例えばλ/4位相差層、λ/2位相差層、又はポジティブC層等であってもよい。接着剤層20は、接着剤組成物を硬化させた層である。光学層30は、光を透過する、反射する、吸収する等の光学機能を有する層である。第1位相差層10と接着剤層20とは通常、直接接するように設けられる。接着剤層20と光学層30とは通常、直接接するように設けられる。
【0012】
光学積層体1の平面視形状は特に限定されず、例えば矩形、正方形、又は、矩形及び正方形以外の他の形状である。他の形状としては例えば、多角形、円形、楕円形が挙げられる。光学積層体1は、矩形、正方形、又は他の形状の外周縁に凹部が形成された異形形状を有するものであってもよいし、矩形、正方形、又は多角形の角が角丸(Rを有する形状)とされた角丸形状を有するものであってもよいし、後述するように貫通孔を有するものであってもよい。光学積層体1は、枚葉体であってもよいし、長尺のフィルム状物であってもよい。光学積層体1が長尺のフィルム状物である場合、光学積層体1をロール状に巻回して巻回体とすることができる。
【0013】
図2及び図3に示すように、光学積層体1の第1位相差層10は、平面視において、端部Saを含む第1領域11aと、第1領域11aに隣接する第2領域12aとを有する。端部Sa、第1領域11a、及び第2領域12aは、第1位相差層10の平面視において、端部Saに交差する第1交差方向X1(交差方向)に沿ってこの順に配置されている。端部Saは、例えば、第1位相差層10の外周縁にある端部であり、図2及び図3に示すように第1位相差層10の平面視形状が矩形である場合、矩形の周縁にある端部とすることができる。端部Saは、図2及び図3に示すように、第1位相差層10の1辺の全体を含んでいてもよいし、1辺の一部であってもよい。第1交差方向X1は、端部Saに交差する方向であれば特に限定されず、図2及び図3に示すように端部Saに直交する方向であってもよい。
【0014】
光学積層体1の第1位相差層10の接着剤層20側の面において、第1領域11aのフッ素含有量は、第2領域12aのフッ素含有量よりも小さい。本明細書においてフッ素含有量とは、フッ素原子の含有量をいう。第1位相差層10の接着剤層20側の面のフッ素原子の含有量は、後述する実施例に記載の方法によって測定することができる。第1位相差層10に存在するフッ素原子は、第1位相差層10を形成するための材料に含まれ、例えば、レベリング剤に含まれるフッ素原子である。
【0015】
光学積層体1の製造では、第1位相差層10上に接着剤組成物を塗布する、又は、第1位相差層10上で接着剤組成物が押し広げられることによって、接着剤層20が形成される。第1位相差層10の接着剤層20側の面において端部Sa付近の領域のフッ素含有量が、当該領域に隣接する領域と同じ又は当該領域よりも大きい場合、端部Sa付近の領域に形成される接着剤層の厚みが大きくなることが見出された。これは、上記のようなフッ素含有量を有する端部Sa付近の領域では、当該領域に塗布又は押し広げられた接着剤組成物のハジキや表面張力により、接着剤組成物が滞留しやすくなるためと考えられる。端部Sa付近の領域に接着剤組成物が滞留すると、第1位相差層と光学層との間に形成される接着剤層の厚みが不均一になる。このような厚みが不均一な接着剤層を有する光学積層体をロール状に巻回すると、巻回体の表面全体が平滑にならず、特に端部Sa付近の領域において凹凸が発生しやすくなり、巻回体から巻出された光学積層体が変形する場合がある。
【0016】
これに対し、本実施形態の光学積層体1では、上記したように、第1位相差層10の接着剤層20側の面において、第1位相差層10の端部Saを含む第1領域11aのフッ素含有量が第2領域12aのフッ素含有量よりも小さい。そのため、光学積層体1の製造にあたって第1位相差層10上に接着剤組成物が塗布される又は押し広げられる場合に、第1領域11aにおいて接着剤組成物の滞留が発生することを抑制することができる。これにより、第1位相差層10上に形成された接着剤層20の厚みを全体にわたって均一に形成しやすくなるため、光学積層体1をロール状に巻回した巻回体の表面に凹凸が発生しにくく、表面全体が平滑になりやすい。そのため、巻回体から巻出された光学積層体1の変形を抑制することができる。
【0017】
光学積層体1の第1位相差層10の接着剤層20側の面のフッ素含有量は通常、第1領域11aに含まれる端部Saから、第1交差方向X1に向かって増加する。このフッ素含有量の増加は、連続的であってもよいし、段階的であってもよい。
【0018】
第1領域11aは、第1位相差層の端部Saを含む領域であって、第1位相差層10の接着剤層20側の面のフッ素含有量が、第1交差方向X1に隣接する第2領域12aよりも小さい領域であればその範囲は特に限定されない。第1領域11aは、図2及び図3に示すように、第1位相差層10の端部Saと、端部Saから第1交差方向X1に100μm離れた位置P1aとの間の領域を含んでいてもよい。例えば、第1領域11aは、端部Saから位置P1aまでの領域であってもよいし、図2及び図3に示すように、位置P1aを含むように、端部Saから第1交差方向X1に100μmを超える範囲を含んでいてもよい。
【0019】
第1領域11aは、第1位相差層10に2以上設けられてもよい。例えば、第1位相差層10が矩形である場合、図3に示すように、第1領域11aは、対向する1対の辺の端部Sa,Sa’をそれぞれ含むように、第1位相差層10に2つ設けられてもよい。第1位相差層10が2以上の第1領域11aを有する場合、各第1領域11aの上記フッ素含有量は、互いに同じであってもよいし、互いに異なっていてもよい。
【0020】
第2領域12aは、第1交差方向X1に第1領域11aに隣接する領域であって、第1位相差層10の接着剤層20側の面のフッ素含有量が、第1領域11aよりも大きい領域であればその範囲は特に限定されない。第2領域12aは、図2及び図3に示すように、第1領域11aと第2領域12aとの境界位置と、端部Saから第1交差方向X1に1000μmの位置P2aとの間の領域を含んでいてもよい。例えば、第2領域12aは、上記境界位置から位置P2aまでの領域であってもよいし、図2及び図3に示すように、位置P2aを含むように、端部Saから第1交差方向X1に1000μmを超える範囲を含んでいてもよい。第1領域11aと第2領域12aとの境界位置は、位置P1aの位置であってもよいし、端部Saから第1交差方向X1に100μmを超える位置(位置P1aを超える位置)にあってもよい。第2領域12aは、位置P2aを含んでいてもよい。
【0021】
第2領域12aは、第1位相差層10に2以上設けられてもよい。例えば、第1位相差層10が矩形である場合、図3に示すように、2つの第1領域11a,11aにそれぞれ隣接するように、2つの第2領域12a,12aが設けられてもよいし、2つの第1領域11aの両方に隣接するように1つの第2領域12aが設けられてもよい。第1位相差層10が2以上の第2領域12aを有する場合、各第2領域12aの上記フッ素含有量は、互いに同じであってもよいし、互いに異なっていてもよい。
【0022】
第1領域11aが、端部Saと位置P1aとの間の領域を含み、第2領域12aが、第1領域11aと第2領域12aとの境界位置と、位置P2aとの間の領域を含む場合、第1位相差層10の接着剤層20側の面において、位置P1aにおけるフッ素含有量F1[atm%]と、位置P2aにおけるフッ素含有量F2[atm%]とは、下記式(A)の関係を満たすことが好ましい。
F1[atm%]≦F2[atm%]-2.5[atm%] (A)
【0023】
F1は、F2-2.8以下であってもよいし、F2-3.0以下であってもよいし、F2-3.1以下であってもよい。F1が上記式(A)の範囲内であることにより、第1位相差層10の第1領域11aにおいて、接着剤組成物の滞留が発生することを抑制しやすくなる。そのため、光学積層体1の巻回体の表面に凹凸を発生しにくくすることができるため、巻回体から巻出された光学積層体1の変形を抑制することができる。
【0024】
第1位相差層10の接着剤層20側の面において、端部Saと位置P1aとの間の領域におけるフッ素含有量は、位置P1aにおけるフッ素含有量F1よりも小さいことが好ましい。例えば、端部Saから50μmの位置におけるフッ素含有量F50は、F1-1.0以下であってもよいし、F1-1.5以下であってもよいし、F1-2.0以下であってもよいし、また、F2-3.0以下であってもよいし、F2-4.0以下であってもよいし、F2-5.0以下であってもよい。
【0025】
第1位相差層10の接着剤層20側の面において、位置P1aと位置P2aとの間におけるフッ素含有量は、位置P1aにおけるフッ素含有量F1よりも大きく、位置P2aにおけるフッ素含有量よりも小さいことが好ましい。例えば、端部Saから500μmの位置におけるフッ素含有量F500は、F2-0.3以上であってもよいし、F2-0.5以上であってもよいし、F2-0.7以上であってもよいし、また、F1+1.0以上であってもよいし、F1+1.5以上であってもよいし、F1+2.0以上であってもよい。
【0026】
第1位相差層10の第1領域11a及び第2領域12aのフッ素含有量は、例えば次の方法によって調整することができる。まず、フッ素原子を含む原反位相差層を準備する。原反位相差層は、例えば第1基材層に、重合性液晶化合物及びフッ素原子を含む材料等を混合した組成物を塗布して塗布層を形成し、塗布層中の重合性液晶化合物を重合硬化させることによって得ることができる。塗布層は、第1基材層上に形成した配向層上に形成してもよい。フッ素原子を含む材料としては、例えばレベリング剤等が挙げられる。上記のようにして得られた第1基材層と原反位相差層との原反積層体の端部に熱処理を施す。これにより、端部Saを含む第1領域11aのフッ素含有量が低減されるため、第1領域11aのフッ素含有量を第2領域12aのフッ素含有量よりも小さくすることができる。
【0027】
原反積層体の端部に施す熱処理としては、第1位相差層10のフッ素含有量を低減することができる処理であれば特に限定されないが、例えば、原反積層体の端部を火炎で炙るフレーム処理又はイトロ処理、原反積層体を熱線で炙る熱線処理等が挙げられる。火炎又は熱線による炙りは、原反積層体の端面を火炎又は熱線の熱によって素早くなでるように行えばよい。熱処理は、1枚の原反積層体の端面に対して行ってもよいが、長尺の原反積層体であれば原反積層体をロール状に巻回した原反ロールの端面に対して行ってもよいし、枚葉状の原反積層体であれば原料積層体を複数枚(例えば10~50枚)重ねた積層構造物の端面に対して行ってもよい。
【0028】
光学積層体1は、例えば、第1基材層上に形成された第1位相差層10と、光学層30とを接着剤層20を介して積層することによって製造することができる。接着剤層20を形成するための接着剤組成物は、第1位相差層10側に塗布してもよいし、光学層30側に塗布してもよいし、これらの両方に塗布してもよい。第1位相差層10及び光学層30のうちの少なくとも一方に塗布された接着剤組成物を介して第1位相差層10と光学層30とが積層されると、第1位相差層10と光学層30との間で接着剤組成物が押し広げられる。接着剤組成物の塗布方法としては、光学分野において用いられる公知の塗布方法が挙げられ、具体的には、スピンコ-ティング法、エクストルージョン法、グラビアコーティング法、ダイコーティング法、スリットコーティング法、バーコーティング法、コンマコーティング法、アプリケータ法、フレキソ法等が挙げられる。接着剤層20は、第1位相差層10と光学層30とを接着剤組成物を介して積層した後に、硬化させることによって形成することができる。接着剤層20を形成した後に、第1基材層を剥離してもよい。
【0029】
光学積層体1をロール状に巻回した巻回体は、例えば巻芯に巻回して得ることができる。巻回体の巻回軸方向の長さは、特に限定されないが、通常300mm以上2000mm以下であり、1000mm以上であってもよいし、1200mm以上であってもよいし、また、1800mm以下であってもよいし、1500mm以下であってもよい。巻回体の直径は特に限定されないが、通常50mm以上1000mm以下であり、100mm以上であってよいし、300mm以上であってもよいし、また、800mm以下であってもよいし、500mm以下であってもよい。
【0030】
〔実施形態2〕
図4は、図1に示す光学積層体の第1位相差層側の他の例を模式的に示す平面図である。図4では、第1位相差層10が光学積層体1の積層方向に貫通する貫通孔15を有している場合の第1位相差層10の平面図を示している。
【0031】
光学積層体1は、図4に示すように、少なくとも第1位相差層10に、光学積層体1の積層方向に貫通する貫通孔15を有する。光学積層体1を構成する光学層30及び接着剤層20は、第1位相差層10の貫通孔15に対応する位置に貫通孔を有していてもよい。また、光学積層体1は、その積層方向に貫通するように貫通孔を有し、光学積層体1を構成する全ての層が貫通孔を有していてもよい。
【0032】
第1位相差層10が有する貫通孔15は、光学積層体1の積層方向に貫通していれば、形状、大きさ、及び数等は特に限定されない。貫通孔15の形状は、例えば、円形(真円形);楕円形;小判形;三角形や四角形等の多角形;多角形の少なくとも1つの角が角丸(Rを有する形状)とされた角丸多角形等とすることができる。図4には、貫通孔15が円形(真円形)である場合を示している。
【0033】
貫通孔15の径は、0.5mm以上であることが好ましく、1mm以上であってもよいし、2mm以上であってもよいし、3mm以上であってもよい。貫通孔15の径は、20mm以下であることが好ましく、15mm以下であってもよいし、10mm以下であってもよいし、7mm以下であってもよい。本明細書において貫通孔15の径とは、貫通孔の平面視形状が円形(真円形)である場合には該円の直径をいい、貫通孔の平面視形状が円形(真円形)以外の場合には、平面視における貫通孔の外接円(真円形)の直径をいう。
【0034】
第1位相差層10が有する貫通孔15は、1つであってもよいし、2以上であってもよい。2以上の貫通孔15を有する場合、形状及び大きさは、それぞれ同じであってもよいし異なっていてもよい。
【0035】
図4に示す第1位相差層10は、平面視において、端部Sbを含む第1領域11bと、第1領域11bに隣接する第2領域12bとを有する。端部Sb、第1領域11b、及び第2領域12bは、第1位相差層10の平面視において、端部Sbに交差する第2交差方向X2(交差方向)に沿ってこの順に配置されている。第1位相差層10が貫通孔15を有する場合、端部Sbは、図4に示すように、貫通孔15の周縁の端部であってもよいし、当該端部の一部又は全部であってもよい。第2交差方向X2は、端部Sbに交差する方向であれば特に限定されず、第1領域11bに含まれる端部Sbが第1位相差層10の貫通孔15部分の周縁全体である場合には、図4に示す第2交差方向X2に限らず、例えば、図2及び図3に示す第1交差方向X1と同じ方向であってもよい。
【0036】
図4に示す第1位相差層10においても、先の実施形態において第1位相差層10の外周縁にある端部Saを含む第1領域11a及びこれに隣接する第2領域12aについて説明したように(図2及び図3)、光学積層体1の第1位相差層10の接着剤層20側の面において、端部Sbを含む第1領域11bのフッ素含有量は、第2領域12bのフッ素含有量よりも小さい。
【0037】
光学積層体1の第1位相差層10の接着剤層20側の面のフッ素含有量は通常、第1領域11bに含まれる端部Sbから、第2交差方向X2に沿って増加する。このフッ素含有量の増加は、連続的であってもよいし、段階的であってもよい。
【0038】
第1領域11bは、第1位相差層10の端部Sbを含む領域であって、第1位相差層10の接着剤層20側の面のフッ素含有量が、第2交差方向X2に隣接する第2領域12bよりも小さい領域であればその範囲は特に限定されない。第1領域11bは、図4に示すように、端部Sbと、端部Sbから第2交差方向X2に100μmの位置P1bとの間の領域を含んでいてもよい。例えば、第1領域11bは、端部Sbから位置P1bまでの領域であってもよいし、図4に示すように、位置P1bを含むように、端部Sbから第2交差方向X2に100μmを超える範囲を含んでいてもよい。第1領域11bは、第1位相差層10に2以上設けられてもよいし、各第1領域11bの上記フッ素含有量は、互いに同じであってもよいし、互いに異なっていてもよい。
【0039】
第2領域12bは、第2交差方向X2に第1領域11bに隣接する領域であって、第1位相差層10の接着剤層20側の面のフッ素含有量が、第1領域11bよりも大きい領域であればその範囲は特に限定されない。第2領域12bは、図4に示すように、第1領域11bと第2領域12bとの境界位置と、端部Sbから第2交差方向X2に1000μmの位置P2bとの間の領域を含んでいてもよい。例えば、第2領域12bは、上記境界位置から位置P2bまでの領域であってもよいし、図4に示すように位置P2bを含むように、端部Sbから第1交差方向X1に1000μmを超える範囲を含んでいてもよい。第1領域11bと第2領域12bとの境界位置は、位置P1bの位置であってもよいし、端部Sbから第2交差方向X2に100μmを超える位置(位置P1bを超える位置)にあってもよい。第2領域12bは、第1位相差層10に2以上設けられてもよいし、各第2領域12bの上記フッ素含有量は、互いに同じであってもよいし、互いに異なっていてもよい。
【0040】
第1領域11bが、端部Sbと位置P1bとの間の領域を含み、第2領域12bが、上記境界位置と、端部Sbから位置P2bとの間の領域を含む場合、第1位相差層10の接着剤層20側の面において、位置P1bにおけるフッ素含有量F1[atm%]と、位置P2bにおけるフッ素含有量F2[atm%]とは、上記した式(A)の関係を満たすことが好ましい。F1、F50、及びF500の好ましい範囲は、上記したとおりである。
【0041】
上記のように、第1位相差層10に第1領域11b及び第2領域12bを設けた場合にも、光学積層体1をロール状に巻回した巻回体の表面に凹凸が発生することを抑制し、表面全体の平滑性を高めることができると考えられる。これにより、巻回体から巻出された光学積層体1の変形を抑制することが期待できる。
【0042】
第1位相差層10の第1領域11b及び第2領域12bのフッ素含有量は、例えば先の実施形態で説明した方法によって調整することができる。
【0043】
以下、光学積層体の具体的な層構造について説明する。
(光学積層体の例(1))
図5及び図6は、本実施形態に係る光学積層体を模式的に示す断面図である。図5及び図6に示す光学積層体2,3は、図1に示す光学積層体1における光学層30が、第2位相差層32であるものである。
【0044】
光学積層体2,3は、図5及び図6に示すように、第1位相差層10、接着剤層20、及び第2位相差層32(光学層30)を含む。第2位相差層32は、延伸フィルムであってもよいし、重合性液晶化合物の硬化物層を含んでいてもよい。第2位相差層32が上記硬化物層を含む場合、第2位相差層32はさらに、重合性液晶化合物を配向させるための配向層を含んでいてもよい。光学積層体2,3又は第1位相差層10は、光学積層体2,3の積層方向に貫通する貫通孔を有していてもよい。
【0045】
光学積層体2は、図5に示すように、第1位相差層10の接着剤層20側とは反対側に、第1貼合層21、及び、直線偏光子を含む偏光板35がこの順に積層されていてもよいし、第2位相差層32の接着剤層20側とは反対側に第2基材層31が積層されていてもよい。あるいは、光学積層体2は、第2位相差層32の接着剤層20側とは反対側に、第2貼合層、及び、直線偏光子を含む偏光板がこの順に積層されていてもよいし、第1位相差層10の接着剤層20側とは反対側に第1基材層が積層されていてもよい。偏光板35は、直線偏光子の片面又は両面に保護層を有し、直線偏光子と保護層とは接着剤組成物又は粘着剤組成物を介して積層されていてもよいし、直線偏光子上に直接保護層が積層されていてもよい。第2貼合層は、接着剤組成物の硬化物である接着剤層、又は、粘着剤組成物から形成される粘着剤層である。
【0046】
光学積層体3は、図6に示すように、第1位相差層10の接着剤層20側とは反対側に、第1基材層18を有していてもよい。また、光学積層体3はさらに、図6に示すように、第2位相差層32の接着剤層20側とは反対側に、第2基材層31を有していてもよい。
【0047】
第2位相差層32が重合性液晶化合物の硬化物層を含む場合、第2位相差層32は、接着剤層20側の面において、フッ素含有量が異なる領域を有していてもよい。具体的には、第2位相差層32が、平面視において、第2位相差層32の端部を含む第1’領域と、第1’領域に隣接する第2’領域とを有し、第2位相差層32の平面視において、上記端部、第1’領域、及び第2’領域が、上記端部に交差する交差方向に沿ってこの順に配置される場合において、第1’領域のフッ素含有量が第2’領域のフッ素含有量よりも小さくてもよい。第2位相差層32の上記端部は、第2位相差層32の外周縁にある端部であってもよいし、貫通孔の周縁にある第2位相差層32の端部であってもよい。
【0048】
上記端部、第1’領域、及び第2’領域については、それぞれ第1位相差層10の端部Sa,Sa’,Sb、第1領域11a,11b、及び第2領域12a,12bについて説明したように構成することができる。例えば、第1’領域は、第2位相差層32の第1’領域に含まれる端部と、この端部から上記交差方向に100μmの位置P1’との間の領域を含むことができる。第2’領域は、第2位相差層32の第1’領域と第2’領域との境界位置と、第1’領域に含まれる端部から上記交差方向に1000μmの位置P2’との間の領域を含むことができる。
【0049】
第2位相差層32の接着剤層20側の面において、位置P1’におけるフッ素含有量F1[atm%]と、位置P2’におけるフッ素含有量F2[atm%]とは、上記した式(A)の関係を満たすことが好ましい。F1、F50、及びF500の好ましい範囲は、上記したとおりである。
【0050】
光学積層体2,3において、第1位相差層10及び第2位相差層32の組み合わせとしては、λ/2位相差層及びλ/4位相差層、又は、λ/4位相差層及びポジティブC層が挙げられる。第1位相差層10及び第2位相差層32のうちの一方がλ/4位相差層である場合、光学積層体2は円偏光板を構成する。
【0051】
図6に示す光学積層体3は、例えば、第1基材層18上に第1位相差層10が形成された第1積層体と、第2基材層31上に第2位相差層32が形成された第2積層体とを、接着剤層20を介して積層することによって製造することができる。接着剤層20を形成するための接着剤組成物は、第1積層体の第1位相差層10側に塗布してもよいし、第2積層体の第2位相差層32側に塗布してもよいし、これらの両方に塗布してもよい。接着剤組成物の塗布方法としては、上記した方法が挙げられる。接着剤層は、第1積層体と第2積層体とを接着剤組成物を介して積層した後に、硬化させることによって形成することができる。
【0052】
図5に示す光学積層体2は、例えば、図6に示す光学積層体3から第1基材層18を剥離し、露出した第1位相差層10上に第1貼合層21を介して偏光板35を積層することによって製造することができる。
【0053】
(光学積層体の例(2))
図7及び図8は、本実施形態に係る光学積層体を模式的に示す断面図である。図7及び図8に示す光学積層体4,5は、図1に示す光学積層体1における光学層30が直線偏光子を含む偏光板35であるものである。光学積層体4,5は、図7及び図8に示すように、第1位相差層10、接着剤層20、及び偏光板35(光学層30)を含む。光学積層体4,5又は第1位相差層10は、光学積層体4,5の積層方向に貫通する貫通孔を有していてもよい。
【0054】
光学積層体4は、図7に示すように、第1位相差層10の接着剤層20とは反対側に第1基材層18を有していてもよい。
【0055】
光学積層体5は、図8に示すように、第1位相差層10の接着剤層20側とは反対側に、第3貼合層23及び第3位相差層33がこの順に積層されていてもよい。第3位相差層33の第3貼合層23とは反対側には、第3基材層34が積層されていてもよい。
【0056】
第3位相差層33は、延伸フィルムであってもよいし、重合性液晶化合物の硬化物層を含んでいてもよい。第3位相差層33が重合性液晶化合物の硬化物層を含む場合、第3貼合層23側の面において、第2位相差層32について説明したように、フッ素含有量が異なる領域を有していてもよい。第3貼合層23は、接着剤組成物の硬化物である接着剤層又は粘着剤層である。
【0057】
光学積層体4の第1位相差層10がλ/4位相差層である場合、光学積層体4は円偏光板を構成する。光学積層体5において、第1位相差層10及び第3位相差層33の組み合わせとしては、λ/2位相差層及びλ/4位相差層、又は、λ/4位相差層及びポジティブC層が挙げられる。第1位相差層10及び第3位相差層33のうちの一方がλ/4位相差層である場合、光学積層体5は円偏光板を構成する。
【0058】
図7に示す光学積層体4は、例えば、第1基材層18上に第1位相差層10が形成された第1積層体と、直線偏光子を含む偏光板35とを、接着剤層20を介して積層することによって製造することができる。接着剤層を形成するための接着剤組成物は、第1積層体の第1位相差層10側に塗布してもよいし、偏光板35側に塗布してもよいし、これらの両方に塗布してもよい。接着剤組成物の塗布方法としては、上記した方法が挙げられる。接着剤層は、第1積層体と偏光板とを接着剤組成物を介して積層した後に、硬化させることによって形成することができる。
【0059】
図8に示す光学積層体5は、例えば、図7に示す光学積層体4から第1基材層18を剥離し、露出した第1位相差層10上に第3貼合層23を介して、第3基材層34上に第3位相差層33が形成された第3積層体を積層することによって製造することができる。
【0060】
光学積層体1~5の厚みは特に限定されないが、500μm以下であってもよいし、300μm以下であってもよいし、200μm以下であってもよい。光学積層体1~5の厚みは、10μm以上であってもよいし、50μm以上であってもよい。厚みが200μm以下の光学積層体であって、第1位相差層の接着剤層側の面のフッ素含有量を光学積層体1~5のように調整していない光学積層体をロール状に巻回すると、光学積層体に変形が生じやすくなる傾向にある。これに対し、光学積層体1~5のように第1位相差層の接着剤層側のフッ素含有量を調整することにより、厚みが200μm以下である場合にも、光学積層体1~5に発生する変形を抑制しやすくなる。
【0061】
以下、上記で説明した光学積層体1~5で用いる材料等について具体的に説明する。
(第1位相差層)
第1位相差層は、重合性液晶化合物の硬化物層を含むものであれば特に限定されない。第1位相差層は、上記硬化物層に加えて、重合性液晶化合物を配向させるための配向層を含んでいてもよい。第1位相差層は、フッ素原子を含む。
【0062】
第1位相差層の厚みは特に限定されないが、10μm以下であってもよいし、8μm以下であってもよいし、5μm以下であってもよいし、また、0.5μm以上であってもよいし、0.8μm以上であってもよいし、1μm以上であってもよい。第1位相差層の厚みが上記の範囲である場合に、第1位相差層の接着剤層側の面において、第1領域のフッ素含有量を、第2領域のフッ素含有量よりも小さくすることにより、光学積層体の変形を効果的に抑制することができる。
【0063】
第1位相差層は、重合性液晶化合物を含有する第1組成物を用いて形成することができ、第1組成物は、フッ素原子を含むレベリング剤(以下、「レベリング剤(F)」ということがある。)を含むことが好ましい。レベリング剤(F)としては、「メガファック(登録商標)R-08」、同「R-30」、同「R-90」、同「F-410」、同「F-411」、同「F-443」、同「F-445」、同「F-470」、同「F-471」、同「F-477」、同「F-479」、同「F-482」、同「F-483」、及び同「F-556」(DIC(株));「サーフロン(登録商標)S-381」、同「S-382」、同「S-383」、同「S-393」、同「SC-101」、同「SC-105」、「KH-40」、及び「SA-100」(AGCセイミケミカル(株));「E1830」、「E5844」((株)ダイキンファインケミカル研究所);「エフトップEF301」、「エフトップEF303」、「エフトップEF351」、及び「エフトップEF352」(三菱マテリアル電子化成(株))等が挙げられる。
【0064】
重合性液晶化合物は、重合性反応基を有し、かつ、液晶性を示す化合物である。重合性反応基は、重合反応に関与する基であり、光重合性反応基であることが好ましい。光重合性反応基は、光重合開始剤から発生した活性ラジカルや酸等によって重合反応に関与し得る基をいう。光重合性官能基としては、ビニル基、ビニルオキシ基、1-クロロビニル基、イソプロペニル基、4-ビニルフェニル基、アクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基、オキシラニル基、オキセタニル基等が挙げられる。中でも、アクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基、ビニルオキシ基、オキシラニル基及びオキセタニル基が好ましく、アクリロイルオキシ基がより好ましい。重合性液晶化合物の種類は特に限定されず、棒状液晶化合物、円盤状液晶化合物、及びこれらの混合物を用いることができる。重合性液晶化合物の液晶性は、液晶性はサーモトロピック性液晶でもリオトロピック性液晶でもよいし、相秩序構造としてはネマチック液晶でもスメクチック液晶でもよい。
【0065】
第1組成物に含まれるレベリング剤(F)は、重合性液晶化合物100質量部に対して0.01質量部以上であることが好ましく、0.05質量部以上であることがより好ましく、また、5質量部以下であることが好ましく、3質量部以下であることがより好ましい。
【0066】
第1組成物は、さらに、重合開始剤、光増感剤、重合禁止剤、溶媒、レベリング剤(F)以外のレベリング剤等を含んでいてもよい。
【0067】
第1位相差層が含んでいてもよい配向層は、重合性液晶化合物を所望の方向に液晶配向させる配向規制力を有するものである。配向層としては、第1組成物の塗布等により溶解しない溶剤耐性を有し、溶剤の除去や重合性液晶化合物の配向のための加熱処理における耐熱性を有するものが好ましい。配向層としては、それぞれ独立して、配向性ポリマーを含む配向層、光配向層、表面に凹凸パターンや複数の溝を形成し配向させるグルブ配向層等が挙げられる。
【0068】
(第2位相差層、第3位相差層)
第2位相差層及び第3位相差層は、それぞれ独立して、延伸フィルムで構成された層であってもよいし、重合性液晶化合物の硬化物層を含むものであってもよい。第2位相差層及び第3位相差層が重合性液晶化合物の硬化物層を含む場合、第2位相差層及び第3位相差層は、重合性液晶化合物を配向させるための配向層を含んでいてもよいし、硬化物層はフッ素原子を含んでいてもよい。
【0069】
第2位相差層及び第3位相差層の厚みは特に限定されないが、それぞれ独立して、50μm以下であってもよいし、30μm以下であってもよいし、15μm以下であってもよいし、13μm以下であってもよいし、10μm以下であってもよいし、5μm以下であってもよいし、通常0.1μm以上であり、0.5μm以上であってもよいし、1μm以上であってもよいし、5μm以上であってもよいし、10μm以上であってもよい。
【0070】
第2位相差層及び第3位相差層が延伸フィルムである場合、後述する第1基材層、第2基材層、及び第3基材層で例示した樹脂材料で形成されたフィルムを一軸延伸又は二軸延伸した延伸フィルムを用いることができる。
【0071】
第2位相差層及び第3位相差層が重合性液晶化合物の硬化物層を含む場合、当該硬化物層は、重合性液晶化合物を含有する第2組成物を用いて形成することができる。重合性液晶化合物としては、第1位相差層で説明した化合物を用いることができる。第2組成物は、重合性液晶化合物の他に、重合開始剤、光増感剤、重合禁止剤、溶媒、レベリング剤(F)、レベリング剤(F)以外のレベリング剤等を含んでいてもよい。
【0072】
第2位相差層及び第3位相差層が配向層を含む場合、配向層としては、第1位相差層が含んでいてもよい配向層で説明した配向層を用いることができる。
【0073】
(第1基材層、第2基材層、第3基材層)
第1基材層、第2基材層、及び第3基材層は、それぞれ独立して樹脂材料で形成されたフィルムであることが好ましい。樹脂材料としては、例えば、透明性、機械的強度、熱安定性等に優れるものを用いることが好ましい。樹脂材料は、熱可塑性樹脂であることが好ましく、例えば、トリアセチルセルロース等のセルロース系樹脂;ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル系樹脂;ポリエーテルスルホン系樹脂;ポリスルホン系樹脂;ポリカーボネート系樹脂;ナイロンや芳香族ポリアミド等のポリアミド系樹脂;ポリイミド系樹脂;ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン・プロピレン共重合体等のポリオレフィン系樹脂;シクロ系及びノルボルネン構造を有する環状ポリオレフィン系樹脂;(メタ)アクリル系樹脂;ポリアリレート系樹脂;ポリスチレン系樹脂;ポリビニルアルコール系樹脂等が挙げられる。「(メタ)アクリル」は、アクリル及びメタクリルからなる群より選択される少なくとも一方を意味する。
【0074】
第1基材層、第2基材層、及び第3基材層はそれぞれ独立して、単層構造であってもよいし、多層構造を有していてもよいし、多層構造である場合、各層は同じ樹脂材料で形成されていてもよいし、異なる樹脂材料で形成されていてもよい。
【0075】
第1基材層、第2基材層、及び第3基材層の厚みは、強度や加工性の観点から、それぞれ独立して5~300μmであることが好ましく、10~200μmであることがより好ましい。
【0076】
(光学層)
光学層は、光を透過する、反射する、吸収する等の光学機能を有する層であり、樹脂フィルムであってもよいし、液晶層であってもよい。光学層は、単層構造であってもよいし、貼合層等を介して積層された2層以上の積層構造を有していてもよい。
【0077】
光学層としては、直線偏光子;直線偏光子の片面又は両面に保護層が積層された偏光板;偏光板の片面にプロテクトフィルムが積層されたプロテクトフィルム付き偏光板;反射フィルム;半透過性反射フィルム;輝度向上フィルム;光学補償フィルム;防眩機能付きフィルム;位相差フィルム又は位相差層等を挙げることができる。
【0078】
(偏光板)
光学積層体は、光学層として偏光板を含んでいてもよいし、光学層とは別に偏光板を含んでいてもよい。偏光板は、直線偏光子の片面又は両面に保護層が積層されたものである。偏光板が片面にのみ保護層を積層したものである場合、光学積層体において保護層は、直線偏光子の第1位相差層側又は第2位相差層側とは反対側に設けられることが好ましい。
【0079】
直線偏光子と保護層とは、接着剤層又は粘着剤層を介して貼合されていることが好ましい。接着剤層を形成するための接着剤組成物、及び粘着剤層を形成するための粘着剤組成物としては、後述の接着剤組成物及び粘着剤組成物が挙げられる。保護層としては、第1基材層、第2基材層、及び第3基材層で例示した樹脂材料で形成されたフィルムが挙げられる。
【0080】
偏光板の厚みは、例えば200μm以下であってもよいし、120μm以下であってもよいし、100μm以下であってもよいし、50μm以下であってもよいし、30μm以下であってもよいし、通常10μm以上であり、15μm以上であってもよいし、20μm以上であってもよい。
【0081】
(直線偏光子)
直線偏光子は、例えば、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムに二色性色素を吸着配向させたPVA偏光層や、重合性液晶化合物の硬化層中で二色性色素が配向している液晶偏光層が挙げられる。
【0082】
ポリビニルアルコール系樹脂フィルムを構成するポリビニルアルコール系樹脂は、ポリ酢酸ビニル系樹脂をケン化することにより得ることができる。ポリ酢酸ビニル系樹脂としては、酢酸ビニルの単独重合体であるポリ酢酸ビニルのほか、酢酸ビニルと共重合可能な単量体と酢酸ビニルとの共重合体等が挙げられる。酢酸ビニルと共重合可能な単量体としては、不飽和カルボン酸、オレフィン、ビニルエーテル、不飽和スルホン酸、アンモニウム基を有する(メタ)アクリルアミド等が挙げられる。
【0083】
ポリビニルアルコール系樹脂のケン化度は、通常85~100モル%、好ましくは98モル%以上である。ポリビニルアルコール系樹脂は変性されていてもよいし、例えば、アルデヒド類で変性されたポリビニルホルマール又はポリビニルアセタール等を用いることもできる。ポリビニルアルコール系樹脂のケン化度及び平均重合度は、通常1000~10000、好ましくは1500~5000である。ポリビニルアルコール系樹脂の平均重合度は、JIS K 6726に準拠して求めることができる。
【0084】
通常、ポリビニルアルコール系樹脂を製膜したものをPVA偏光層の原反フィルムとして用いる。ポリビニルアルコール系樹脂は、公知の方法で製膜することができる。原反フムの厚みは、通常1~150μmであり、延伸のしやすさ等も考慮すれば、好ましくは10μm以上である。
【0085】
PVA偏光層は、例えば、原反フィルムに対して、一軸延伸する工程、二色性色素でフィルムを染色してその二色性色素を吸着させる工程、ホウ酸水溶液でフィルムを処理する工程、及び、フィルムを水洗する工程が施され、最後に乾燥することによって製造される。PVA偏光層の厚みは、20μm以下であってもよいし、15μm以下であってもよいし、10μm以下であってもよいし、通常3μm以上であり、5μm以上であってもよい。
【0086】
PVA偏光層は、[i]原反フィルムとしてポリビニルアルコール系樹脂フィルムの単独フィルムを用い、このフィルムに対して一軸延伸処理及び二色性色素の染色処理を施す方法の他、[ii]基材フィルムにポリビニルアルコール系樹脂を含有する塗工液(水溶液等)を塗工、乾燥させてポリビニルアルコール系樹脂層を有する基材フィルムを得た後、これを基材フィルムごと一軸延伸し、延伸後のポリビニルアルコール系樹脂層に対して二色性色素の染色処理を施し、次いで基材フィルムを剥離除去する方法によっても得ることができる。基材フィルムとしては、第1基材層、第2基材層、及び第3基材層で説明した樹脂材料を用いて形成されたフィルムが挙げられる。
【0087】
液晶偏光層を形成するために用いる重合性液晶化合物としては、第1組成物及び第2組成物で例示した重合性反応基を有する重合性液晶化合物を用いることができる。液晶偏光層は、[iii]例えば基材フィルム上に形成した配向層上に、重合性液晶化合物及び二色性色素を含む偏光層形成用組成物を塗布し、重合性液晶化合物を重合して硬化させる方法、[iv]基材フィルム上に、偏光層形成用組成物を塗布して塗膜を形成し、この塗膜を基材フィルムとともに延伸する方法によって形成することができる。基材フィルムとしては、上記[ii]で用いた基材フィルムが挙げられる。液晶偏光層の厚みは、20μm以下であってもよいし、15μm以下であってもよいし、13μm以下であってもよいし、10μm以下であってもよいし、5μm以下であってもよいし、通常0.1μm以上であり、0.3μm以上であってもよい。
【0088】
(接着剤層)
接着剤層は、接着剤組成物を硬化させた層である。接着剤組成物は、硬化性成分として硬化性の樹脂成分を含むものであって、後述する感圧型接着剤(粘着剤)以外の接着剤である。接着剤組成物としては、硬化性の樹脂成分を水に溶解又は分散させた水系接着剤、活性エネルギー線硬化性化合物を含有する活性エネルギー線硬化性接着剤、熱硬化性接着剤等が挙げられる。
【0089】
水系接着剤に含有される樹脂成分としては、ポリビニルアルコール系樹脂やウレタン系樹脂等が挙げられる。
【0090】
活性エネルギー線硬化性接着剤としては、紫外線、可視光、電子線、X線等の活性エネルギー線の照射によって硬化する組成物が挙げられる。このうち、紫外線の照射によって硬化する紫外線硬化性樹脂組成物であることが好ましい。活性エネルギー線硬化性接着剤は、硬化性成分としてエポキシ化合物を含むことが好ましく、脂環式エポキシ化合物を含むことがより好ましい。活性エネルギー線硬化性接着剤は、エポキシ化合物とともに(メタ)アクリル系化合物等を含有していてもよい。
【0091】
熱硬化性接着剤としては、エポキシ系樹脂、シリコーン系樹脂、フェノール系樹脂、メラミン系樹脂等を主成分として含むものが挙げられる。接着剤組成物は、硬化性成分以外に、溶剤、増感剤、重合促進剤、イオントラップ剤、酸化防止剤、連鎖移動剤、粘着付与剤、熱可塑性樹脂、充填剤、流動調整剤、可塑剤、消泡剤、帯電防止剤、レベリング剤等の添加剤を含んでいてもよい。
【0092】
(第1貼合層、第2貼合層、第3貼合層)
第1貼合層、第2貼合層、及び第3貼合層は、接着剤組成物を硬化させた接着剤層、又は、粘着剤組成物を用いて形成された粘着剤層である。接着剤組成物としては、上記したものを用いることができる。
【0093】
粘着剤組成物は、粘着剤を含む。粘着剤は、それ自体を被着体に貼り付けることで接着性を発現するものであり、いわゆる感圧型接着剤と称されるものである。粘着剤としては、(メタ)アクリル系ポリマー、シリコーン系ポリマー、ポリエステル系ポリマー、ポリウレタン系ポリマー、ポリエーテル系ポリマー、又はゴム系ポリマー等のポリマーを主成分として含むものが挙げられる。本明細書において、主成分とは、粘着剤の全固形分のうち50質量%以上を含む成分をいう。粘着剤は、活性エネルギー線硬化型、熱硬化型であってもよいし、活性エネルギー線照射や加熱により、架橋度や接着力を調整してもよい。
【実施例
【0094】
以下、実施例及び比較例を示して本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの例によって限定されるものではない。
【0095】
[フッ素原子量の検出]
フッ素原子量の算出は、X線光電子分光装置(サーモサイエンティフィック社製、K-Alpha)を用いたX線光電子分光分析により、次の手順で行った。
【0096】
まず、第1位相差層の接着剤層側の表面の測定スポットにおいて、ワイドスキャンスペクトルを取得し、ワイドスキャンスペクトルで検出されたすべての元素について、ナロースキャンスペクトルを取得した。次に、全元素のナロースキャンスペクトルのピーク面積を求め、各測定スポットにおける元素組成比[atom%]を算出し、測定スポットにおけるフッ素原子の元素量を算出した。測定スポットは、第1位相差層を構成する硬化物層のフレーム処理を施した端部から、当該端部に交差する方向(幅方向、巻回軸方向)に、50μmの位置、100μmの位置、200μmの位置、500μmの位置、700μmの位置、及び1000μmの位置とした。
【0097】
測定条件は、次のとおりである。
(測定条件)
・X線源:Al-Kαモノクロ(1486.7eV)
・X線スポットサイズ(測定スポットの径):400μm
・ワイドスキャン分析(Survey scan);
測定範囲:-10~1350eV、パスエネルギー:200eV、
ドゥエルタイム:25m秒、ステップ:1.0eV、積算回数:5回
・ナロースキャン分析(Snap scan);
パスエネルギー:150eV、取込み時間:1秒、積算回数:10回
【0098】
[製造例1:第1基材層上に形成された第1位相差層を有する積層体(1)の作製]
(配向層形成用組成物の調製)
ポリビニルアルコール(ポリビニルアルコール1000完全ケン化型、和光純薬工業株式会社製)の2質量%水溶液を配向層形成用組成物とした。
【0099】
(第1組成物の調製)
以下に示す重合性液晶化合物A、及び重合性液晶化合物Bを90:10の質量比で混合した混合物に対して、レベリング剤(F-556;DIC社製)を2.0部、及び重合開始剤である2-ジメチルアミノ-2-ベンジル-1-(4-モルホリノフェニル)ブタン-1-オン(「イルガキュア369(Irg369)」、BASFジャパン株式会社製)を6部添加した。さらに、固形分濃度が13%となるようにN-メチル-2-ピロリドン(NMP)を添加し、80℃で1時間撹拌することにより、第1組成物を得た。
【0100】
重合性液晶化合物Aは特開2010-31223号公報に記載の方法で製造した。また、重合性液晶化合物Bは、特開2009-173893号公報に記載の方法に準じて製造した。以下にそれぞれの分子構造を示す。
<重合性液晶化合物A>
【化1】

<重合性液晶化合物B>
【化2】
【0101】
(積層体(1)の作製)
第1基材層として、厚み50μm、幅1100mmの長尺のシクロオレフィン系フィルム〔日本ゼオン(株)製の商品名「ZF-14-50」〕上にコロナ処理を実施した後、配向層形成用組成物をダイコーターを用いて、塗布幅が1000mm(第1基材層の幅方向の両端部から各50mmが未塗布領域)となるように塗布し、60℃で1分間、さらに80℃で3分間乾燥し、厚み89nmの膜を形成した。続いて、得られた膜の表面にラビング処理を施して、配向層を形成した。ラビング処理は、半自動ラビング装置(商品名:LQ-008型、常陽工学株式会社製)を用いて、布(商品名:YA-20-RW、吉川化工株式会社製)によって、押し込み量0.15mm、回転数500rpm、16.7mm/sの条件で行った。
【0102】
次いで、配向層の全面に、ダイコーターを用いて第1組成物を塗布し、120℃で1分間乾燥した。その後、高圧水銀ランプ〔ウシオ電機(株)の商品名:「ユニキュアVB-15201BY-A」〕を用いて、紫外線を照射(窒素雰囲気下、波長365nmにおける積算光量:500mJ/cm)することにより、第1基材層上に設けられた配向層上に、重合性液晶化合物の硬化物層を形成した。続いて、各々45mmの幅となるように両端部をスリットし、幅1010mmの原反積層体(1)を得た。得られた原反積層体(1)からシート片(幅1010mm、長さ100mm)を切り出し、シート片の重合性液晶化合物の硬化物層の端部から100μm及び1000μmの位置をそれぞれ2箇所ずつ選び、合計4箇所の測定スポットについて、フッ素原子量を上記した方法で測定し、各位置での平均値を得た。結果を表1に示す。
【0103】
【表1】
【0104】
上記で得た原反積層体(1)をロール状に巻回して原反巻回体(1)を得た。原反巻回体(1)の巻回軸方向の両端にフレーム処理(熱処理)を施し、積層体(1)の巻回体(1)を得た。フレーム処理は、バーナー(ガス圧:0.4MPa)を使用し、固定した原反巻回体(1)の巻回軸方向の両端にある端面に沿ってバーナーを動かすことによって行った。フレーム処理において、バーナーの移動速度は700mm/秒とし、バーナーと原反巻回体(1)の巻回軸方向の端部に位置する硬化物層との距離を20mmとし、原反巻回体(1)の巻回軸方向の端面に沿ってバーナーを1往復移動させる(これをパス回数2回という)条件で行った。
【0105】
巻回体(1)から巻き出した積層体(1)の第1位相差層表面の、フレーム処理を施した端部から50μm、100μm、200μm、500μm、700μm、及び1000μmの位置をそれぞれ2箇所ずつ選び、合計12箇所の測定スポットについて、フッ素原子量を上記した方法で測定し、各位置での平均値を算出した。また、各測定スポットについて得たフッ素原子量の平均値と、端部から1000μmの位置のフッ素原子量の平均値との差の値を算出した。結果を表2に示す。
【0106】
【表2】
【0107】
[製造例2:接着剤組成物の調製]
3’,4’-エポキシシクロヘキシルメチル 3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート〔株式会社ダイセル製の商品名「セロキサイド2021P」〕75質量部に対して、1,4-ブタンジオールジグリシジルエーテル〔ナガセケムテックス株式会社製の商品名「EX-214L」〕25質量部、及び、光重合開始剤〔サンアプロ株式会社製の商品名「CPI-100P」〕5.0質量部を添加し、混合することによって、接着剤組成物を調製した。
【0108】
〔実施例1〕
積層体(1)(幅1010mm、長さ100m)を2つ用意し、一方の積層体(1)の第1位相差層表面に、製造例2で調製した接着剤組成物を塗布し、もう一方の積層体(1)の第1位相差層表面側と貼り合わせた後、紫外線(積算光量400mJ/cm(UV-B))を照射し、接着剤組成物を硬化させて接着剤層を形成し、光学積層体(1)を得た。得られた光学積層体(1)を巻芯に巻回して、光学積層体(1)の巻回体(1)を得た。
【0109】
巻回体(1)を温度23℃の条件下で3日間保管した後、巻回体(1)の表面を目視で確認したところ、凹凸は確認されなかった。
【0110】
〔比較例1〕
積層体(1)に代えて、原反積層体(1)(幅1010mm、長さ100m)を2つ用いたこと以外は、実施例1と同様にして、光学積層体(2)を得、光学積層体(2)の巻回体(2)を得た。巻回体(2)を温度23℃の条件下で3日間保管した後、巻回体(2)の表面を目視で確認したところ、凹凸が確認された。
【符号の説明】
【0111】
1~5 光学積層体、10 第1位相差層、11a,11b 第1領域、12a,12b 第2領域、15 貫通孔、18 第1基材層、20 接着剤層、21 第1貼合層、23 第3貼合層、30 光学層、31 第2基材層、32 第2位相差層(光学層)、33 第3位相差層、34 第3基材層、35 偏光板(光学層)、Sa,Sb 端部。
【要約】
【課題】変形が抑制された光学積層体及びその巻回体を提供する。
【解決手段】光学積層体は、重合性液晶化合物の硬化物層を含む第1位相差層、接着剤層、及び光学層がこの順に積層されている。第1位相差層は、平面視において、第1位相差層の端部を含む第1領域と、第1領域に隣接する第2領域と、を有する。上記端部、第1領域、及び第2領域は、第1位相差層の平面視において、上記端部に交差する交差方向に沿ってこの順に配置されている。第1位相差層の接着剤層側の面において、第1領域のフッ素含有量は、第2領域のフッ素含有量よりも小さい。
【選択図】図2
図1
図2
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図7
図8