(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-17
(45)【発行日】2022-01-14
(54)【発明の名称】窒化物半導体テンプレートの製造方法、窒化物半導体テンプレートおよび窒化物半導体デバイス
(51)【国際特許分類】
H01L 21/20 20060101AFI20220106BHJP
C30B 29/38 20060101ALI20220106BHJP
C23C 16/34 20060101ALI20220106BHJP
C23C 16/56 20060101ALI20220106BHJP
H01L 21/205 20060101ALI20220106BHJP
【FI】
H01L21/20
C30B29/38 C
C23C16/34
C23C16/56
H01L21/205
(21)【出願番号】P 2016236874
(22)【出願日】2016-12-06
【審査請求日】2019-08-14
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】515131378
【氏名又は名称】株式会社サイオクス
(73)【特許権者】
【識別番号】000002093
【氏名又は名称】住友化学株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】304026696
【氏名又は名称】国立大学法人三重大学
(74)【代理人】
【識別番号】100145872
【氏名又は名称】福岡 昌浩
(74)【代理人】
【識別番号】100187632
【氏名又は名称】橘高 英郎
(72)【発明者】
【氏名】藤倉 序章
(72)【発明者】
【氏名】今野 泰一郎
(72)【発明者】
【氏名】三宅 秀人
【審査官】桑原 清
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2009/154215(WO,A1)
【文献】国際公開第2011/077541(WO,A1)
【文献】国際公開第2012/090818(WO,A1)
【文献】国際公開第2014/069235(WO,A1)
【文献】特開2018-056551(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0340558(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/20
C30B 29/38
C23C 16/34
C23C 16/56
H01L 21/205
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に窒化物半導体層が形成されてなる窒化物半導体テンプレートの製造方法であって、
前記基板として、表面に凹凸パターンが形成され
、前記凹凸パターンの凸部上面が連続した平面を成すように構成されたパターン基板を用意する準備工程と、
前記パターン基板の前記凹凸パターン上に、アルミニウムを含む窒化物半導体からなる第一層をエピタキシャル成長させて形成するとともに、前記第一層の表面が平坦化しない厚さで、かつ、連続膜となる厚さに前記第一層を形成する第一層形成工程と、
前記第一層に対してアニール処理を行うアニール工程と、
前記アニール工程を経た後の前記第一層に重ねるように、アルミニウムを含む窒化物半導体からなる第二層をエピタキシャル成長させて形成するとともに、前記第二層の表面が平坦化するような厚さに前記第二層を形成し、前記第一層と前記第二層とで前記窒化物半導体層を構成する第二層形成工程と、
を備え、
前記第一層形成工程では、前記凹凸パターンの前記凸部上面において、前記第一層が連続膜となる厚さで、かつ、前記第一層にクラックが発生しない厚さとなるように、前記第一層の形成を行い、
前記第一層形成工程で形成される前記第一層は、前記凹凸パターンの前記連続した平面上における前記第一層の厚さが、前記連続した平面以外の前記第一層の厚さよりも厚く、
前記第一層および前記第二層は、それぞれが同一組成のものであり、かつ、それぞれが
不純物としての酸素を含み、前記第一層中の酸素濃度より前記第二層中の酸素濃度が低く、前記酸素濃度の違いにより
前記第一層と前記第二層が区別され
、
前記第一層と前記第二層とで構成する前記窒化物半導体層は、前記連続した平面から表面までの厚さが5μm以下である
窒化物半導体テンプレートの製造方法。
【請求項2】
基板上に窒化物半導体層が形成されてなる窒化物半導体テンプレートの製造方法であって、
前記基板として、表面に凹凸パターンが形成され、前記凹凸パターンの凸部の頂部が尖った形状に形成されているとともに前記凹凸パターンの凹部底面が連続した平面を成すように構成されたパターン基板を用意する準備工程と、
前記パターン基板の前記凹凸パターン上に、アルミニウムを含む窒化物半導体からなる第一層をエピタキシャル成長させて形成するとともに、前記第一層の表面が平坦化しない厚さで、かつ、連続膜となる厚さに前記第一層を形成する第一層形成工程と、
前記第一層に対してアニール処理を行うアニール工程と、
前記アニール工程を経た後の前記第一層に重ねるように、アルミニウムを含む窒化物半導体からなる第二層をエピタキシャル成長させて形成するとともに、前記第二層の表面が平坦化するような厚さに前記第二層を形成し、前記第一層と前記第二層とで前記窒化物半導体層を構成する第二層形成工程と、
を備え、
前記第一層形成工程では、前記凹凸パターンの前記凹部底面において、前記第一層が連続膜となる厚さで、かつ、前記第一層にクラックが発生しない厚さとなるように、前記第一層の形成を行うとともに、
前記第一層形成工程にて、少なくとも前記凹凸パターンの前記凸部の頂部に付着しないような成長条件で前記第一層を形成し、
前記第一層および前記第二層は、それぞれが同一組成のものであり、かつ、それぞれが不純物としての酸素を含み、前記第一層中の酸素濃度より前記第二層中の酸素濃度が低く、前記酸素濃度の違いにより前記第一層と前記第二層が区別され、
前記第一層と前記第二層とで構成する前記窒化物半導体層は、前記連続した平面から表面までの厚さが5μm以下である
窒化物半導体テンプレートの製造方法。
【請求項3】
前記アニール工程では、前記アニール工程後の前記第一層の表面における平均転位密度が1×10
9個/cm
2以下となる条件で、前記アニール処理を行う
請求項
1または2に記載の窒化物半導体テンプレートの製造方法。
【請求項4】
前記第二層形成工程では、前記第二層の表面粗さRMSが10nm以下となる条件で、前記第二層の形成を行う
請求項1から
3のいずれか1項に記載の窒化物半導体テンプレートの製造方法。
【請求項5】
前記アニール工程では、前記アニール処理を、窒素ガス雰囲気、または、1600℃以上の温度の少なくとも一方の条件下で行う
請求項1から4のいずれか1項に記載の窒化物半導体テンプレートの製造方法。
【請求項6】
前記第一層形成工程、前記アニール工程および前記第二層形成工程を、同一の成長装置を用いて連続的に行う
請求項1から
5のいずれか1項に記載の窒化物半導体テンプレートの製造方法。
【請求項7】
前記第一層および前記第二層が、In
1-x-yAl
xGa
yN(0≦x+y≦1、0<x≦1、0≦y≦1)で表わされる窒化アルミニウム、窒化インジウムアルミニウム、窒化アルミニウムガリウム、または、窒化アルミニウムガリウムインジウムからなる
請求項1から
6のいずれか1項に記載の窒化物半導体テンプレートの製造方法。
【請求項8】
前記第二層がボイドを包含し、
前記ボイドが、前記凹凸パターンの凸部上面に形成された前記第一層と当該第一層に重ねるように形成された前記第二層とを跨ぐ高さ位置に配されている
請求項1から7のいずれか1項に記載の窒化物半導体テンプレートの製造方法。
【請求項9】
基板上に窒化物半導体層が形成されてなる窒化物半導体テンプレートであって、
前記基板は、表面に凹凸パターンが形成され
、前記凹凸パターンの凸部上面が連続した平面を成すように構成されたパターン基板であり、
前記窒化物半導体層は、
前記パターン基板の前記凹凸パターン上に、表面が平坦化しない厚さで、かつ、連続膜となる厚さで形成された、アルミニウムを含む窒化物半導体からなる第一層と、
前記第一層と重なるように、表面が平坦化するような厚さで形成された、アルミニウムを含む窒化物半導体からなる第二層と、
を備えて構成され、
前記第一層は、前記凹凸パターンの前記連続した平面上における前記第一層の厚さが、前記連続した平面以外の前記第一層の厚さよりも厚く、
前記第一層および前記第二層は、それぞれが同一組成のものであり、かつ、それぞれが
不純物としての酸素を含み、前記第一層中の酸素濃度より前記第二層中の酸素濃度が低く、前記酸素濃度の違いにより
前記第一層と前記第二層が区別され
、
前記第一層と前記第二層とで構成する前記窒化物半導体層は、前記連続した平面から表面までの厚さが5μm以下である
窒化物半導体テンプレート。
【請求項10】
基板上に窒化物半導体層が形成されてなる窒化物半導体テンプレートであって、
前記基板は、表面に凹凸パターンが形成され、前記凹凸パターンの凸部の頂部が尖った形状に形成されているとともに前記凹凸パターンの凹部底面が連続した平面を成すように構成されたパターン基板であり、
前記窒化物半導体層は、
前記パターン基板の前記凹凸パターン上に、表面が平坦化しない厚さで、かつ、連続膜となる厚さで形成された、アルミニウムを含む窒化物半導体からなる第一層と、
前記第一層と重なるように、表面が平坦化するような厚さで形成された、アルミニウムを含む窒化物半導体からなる第二層と、
を備えて構成され、
前記第一層は、少なくとも前記凹凸パターンの前記凸部の頂部に付着しないように形成されており、
前記第一層および前記第二層は、それぞれが同一組成のものであり、かつ、それぞれが不純物としての酸素を含み、前記第一層中の酸素濃度より前記第二層中の酸素濃度が低く、前記酸素濃度の違いにより前記第一層と前記第二層が区別され、
前記第一層と前記第二層とで構成する前記窒化物半導体層は、前記連続した平面から表面までの厚さが5μm以下である
窒化物半導体テンプレート。
【請求項11】
前記パターン基板は、前記凹凸パターンが二次元的な周期構造を有する
請求項
9または10に記載の窒化物半導体テンプレート。
【請求項12】
前記窒化物半導体層は、連続した平面を成す前記凹凸パターンの凸部上面または凹部底面から表面までの厚さが5μm以下である
請求項
9から11のいずれか1項に記載の窒化物半導体テンプレート。
【請求項13】
前記窒化物半導体層は、表面に対するX線ロッキングカーブ測定における(10-12)回折の半値幅が600秒以下、または、表面の表面粗さRMSが10nm以下の少なくとも一方を満足する
請求項
9から12のいずれか1項に記載の窒化物半導体テンプレート。
【請求項14】
前記第一層および前記第二層が、In
1-x-yAl
xGa
yN(0≦x+y≦1、0
<x≦1、0≦y≦1)で表わされる窒化アルミニウム、窒化インジウムアルミニウム、窒化アルミニウムガリウム、または、窒化アルミニウムガリウムインジウムからなる
請求項
9から13のいずれか1項に記載の窒化物半導体テンプレート。
【請求項15】
前記第二層がボイドを包含し、
前記ボイドが、前記凹凸パターンの凸部上面に形成された前記第一層と当該第一層に重ねるように形成された前記第二層とを跨ぐ高さ位置に配されている
請求項
9から14のいずれか1項に記載の窒化物半導体テンプレート。
【請求項16】
請求項
9から15のいずれか1項に記載の窒化物半導体テンプレートと、
前記窒化物半導体テンプレート上に成長して形成された窒化物半導体積層構造と、
を備える窒化物半導体デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、窒化物半導体テンプレートの製造方法、窒化物半導体テンプレートおよび窒化物半導体デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
発光ダイオード(LED)については、基板表面に凹凸パターンを形成しておき、その凹凸パターン上に窒化物半導体層を積層して構成することで、窒化物半導体層における結晶の高品質化(低転位化)と光取り出し効率向上とを実現することが提案されている(例えば非特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【文献】H.Miyake他、「HVPE growth of thick AlN on trench-patterned substrate」、Phys Status Solidi C 8、No.5、1483-1486(2011)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
例えば、紫外波長帯で発光するLED(以下、単に「紫外LED」という。)については、下地基板として、アルミニウム(Al)を含む窒化物半導体膜を有した窒化物半導体テンプレートが用いられることがある。かかる窒化物半導体テンプレートは、サファイア基板や炭化ケイ素(SiC)基板等の異種基板上に、Alを含む窒化物半導体膜(例えば、窒化アルミニウム(AlN)膜)が数100nm~数10μm厚で形成されてなるものである。
しかしながら、このような窒化物半導体テンプレートにおいて、サファイア基板やSiC基板等の表面に凹凸パターンを形成した場合には、その上に形成するAlを含む窒化物半導体膜について、厚膜化の抑制と低転位化との両立が必ずしも容易ではない。
【0005】
本発明は、基板に凹凸パターンを形成した場合であっても、高品質な窒化物半導体テンプレートとこれを用いた窒化物半導体デバイスを容易に得ることができる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様によれば、
基板上に窒化物半導体層が形成されてなる窒化物半導体テンプレートの製造方法であって、
前記基板として、表面に凹凸パターンが形成されたパターン基板を用意する準備工程と、
前記パターン基板の前記凹凸パターン上に、アルミニウムを含む窒化物半導体からなる第一層をエピタキシャル成長させて形成するとともに、前記第一層の表面が平坦化しない厚さに前記第一層を形成する第一層形成工程と、
前記第一層に対してアニール処理を行うアニール工程と、
前記アニール工程を経た後の前記第一層に重ねるように、アルミニウムを含む窒化物半導体からなる第二層をエピタキシャル成長させて形成するとともに、前記第二層の表面が平坦化するような厚さに前記第二層を形成し、前記第一層と前記第二層とで前記窒化物半導体層を構成する第二層形成工程と、
を備える窒化物半導体テンプレートの製造方法が提供される。
【0007】
本発明の他の態様によれば、
基板上に窒化物半導体層が形成されてなる窒化物半導体テンプレートであって、
前記基板は、表面に凹凸パターンが形成されたパターン基板であり、
前記窒化物半導体層は、
前記パターン基板の前記凹凸パターン上に、表面が平坦化しない厚さで形成された、アルミニウムを含む窒化物半導体からなる第一層と、
前記第一層と重なるように、表面が平坦化するような厚さで形成された、アルミニウムを含む窒化物半導体からなる前記第二層と、
を備えて構成されている窒化物半導体テンプレートが提供される。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、基板に凹凸パターンを形成した場合であっても、高品質な窒化物半導体テンプレートとこれを用いた窒化物半導体デバイスを容易に得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の一実施形態に係る窒化物半導体テンプレートの概略構成例を示す断面図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係る窒化物半導体テンプレートを構成する基板の凹凸パターンの周期構造の一具体例を示す平面図である。
【
図3】本発明の一実施形態に係る窒化物半導体テンプレートの製造に用いられる成長装置の一具体例を示す模式図である。
【
図4】本発明の一実施形態に係る窒化物半導体テンプレートの製造手順の概要を示す断面図である。
【
図5】本発明の一実施形態に係る窒化物半導体テンプレートにおいて第一層を構成するAlN膜の表面の転位に関する状態とアニール処理条件との関係の一具体例を示す説明図である。
【
図6】本発明の一実施形態に係る窒化物半導体テンプレートにおいて第二層を構成するAlN膜の表面の転位に関する状態とアニール処理条件との関係の一具体例を示す説明図である。
【
図7】本発明の他の実施形態に係る窒化物半導体テンプレートの概略構成例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
<発明者の得た知見>
例えば、LEDを製造するにあたり、基板表面に凹凸パターンを形成しておき、その凹凸パターン上に窒化物半導体層を積層してLEDを構成することは、窒化物半導体層における結晶の高品質化(低転位化)と光取り出し効率向上とを実現するために、極めて有効な手法である(例えば非特許文献1参照)。このような低転位化等に関する技術は、凹凸パターン上に成長する窒化物半導体層が窒化ガリウム(GaN)層である場合には極めて有効に働いた。
【0011】
ところが、この手法を、紫外LEDを構成する場合に用いられる窒化物半導体テンプレートであって、構成元素としてアルミニウム(Al)を含む窒化物半導体(具体的には、In1-x-yAlxGayN(0≦x+y≦1、0<x≦1、0≦y≦1)で表わされる窒化アルミニウム(AlN)、窒化インジウムアルミニウム(AlInN)、窒化アルミニウムガリウム(AlGaN)、または、窒化アルミニウムガリウムインジウム(AlInGaN)等)の層を有してなる窒化物半導体テンプレートに適用することは、必ずしも容易ではない。なぜならば、Al原子の表面マイグレーションが、GaN成長時のガリウム(Ga)のマイグレーションと比較して、極めて弱いからである。そのため、基板表面の凹凸パターン上にAlを含む窒化物半導体の層を成長させると、Alを含まない場合と比較して、成長中の転位同士の会合・消滅が生じ難く、十分な低転位化を達成するためには、凹凸パターンの凹凸周期を例えば10μm以上と大きくして、成長初期に凹凸の頂上に形成された窒化物半導体膜を十分に厚く成長させて横方向にも成長させることで、低転位領域を広げるといった手法を取らざるを得なかった。この場合には、島状に点在する窒化物半導体膜のうち、隣り合うもの同士を結合して、平坦な表面を得るためには、例えば20μm以上の厚さを成長しなくてはならないといった点も問題となる。より薄い膜厚で表面を平坦化するためには、凹凸パターンの凹凸周期を数μm程度と小さくする必要があるが、その場合には低転位化の効果が十分に得られない。
つまり、Alを含む窒化物半導体層を有した窒化物半導体テンプレートにおいて、基板表面に凹凸パターンを形成した場合には、その上に形成するAlを含む窒化物半導体層について、厚膜化の抑制と低転位化との両立が必ずしも容易ではない。
【0012】
ところで、Alを含む窒化物半導体層を低転位化する手法としては、凹凸パターンが形成されていない平坦な基板を用いた場合であれば、例えば、その基板上に形成されたAlを含む窒化物半導体層の一例である薄いAlN膜に対して、アニール処理を行うことが提案されている(例えば、H.Miyake他、「Annealing of an AlN buffer in N2-CO for growth of a high-quality AlN film on sapphire」、Applied Physics Express 9、025501 (2016))。具体的には、かかる文献には、表面が平坦なサファイア基板上に同じく表面が平坦なAlN膜を成長させた後に、その基板およびAlN膜に対してN2-CO混合雰囲気中で1600℃以上の高温アニールすることで、AlN膜の転位密度を1×108個/cm2台に低転位化することが記載されている。
【0013】
しかしながら、アニール処理によって低転位化する手法を、凹凸パターンが形成された基板を用いた窒化物半導体テンプレートに適用したときには、アニール処理前にAlを含む窒化物半導体層の表面が平坦化するのに十分な厚さになるまで当該窒化物半導体層を成長させると、そのアニール処理後に窒化物半導体層にクラックが生じるおそれがあることがわかった。具体的には、凹凸パターンの高さにもよるが、例えばLEDを構成した場合に十分な光取り出し効率向上の効果を与える高さである400nm以上の高さの凹凸パターンに対して、表面を平坦化するために十分な厚さである800nmを超える厚さの窒化物半導体層を成長させると、その窒化物半導体層にクラックが生じてしまうおそれがある。このことは、アニール処理を、N2-CO混合雰囲気中ではなく、窒素ガス(N2)雰囲気中で行った場合についても同様である。
【0014】
これらのことを踏まえた上で、本発明者は鋭意検討を重ねた結果、凹凸パターンが形成された基板上であっても、一旦表面が平坦化しない厚さでAlを含む窒化物半導体層を形成し、その段階にてN2ガス雰囲気中で高温アニールを行った後に、再度Alを含む窒化物半導体層を成長させて表面を平坦化することで、クラックが生じることなく窒化物半導体層の厚膜化の抑制と低転位化とを両立して、表面の転位密度を1×109個/cm2以下にできる、という新たな知見を得るに至った。
【0015】
本発明は、本発明者が見出した上述の新たな知見に基づくものである。
【0016】
<本発明の一実施形態>
以下、本発明の一実施形態について図面を参照しながら説明する。
【0017】
(1)窒化物半導体テンプレートの構成
先ず、本実施形態に係る窒化物半導体テンプレートの概略構成例について説明する。
図1は、本実施形態に係る窒化物半導体テンプレートの概略構成例を示す断面図である。
【0018】
本実施形態で例に挙げる窒化物半導体テンプレート10は、LED等の半導体装置(半導体デバイス)を製造する際に下地基板として用いられるもので、基板状の構造体として構成されているものである。具体的には、窒化物半導体テンプレート10は、基板11と、窒化物半導体層12と、を備えて構成されている。
【0019】
(基板)
基板11は、窒化物半導体層12を支持する支持基板として機能するものである。なお、以下において、基板11の上面(窒化物半導体層12の側の面)を「表面(または第一の主面)」とし、その反対側に位置する基板11の下面を「裏面(または第二の主面)」とする。
【0020】
基板11は、例えば、サファイア(Al2O3)基板からなり、表面に凹凸パターン13が形成されたパターン基板として構成されたものである。凹凸パターン13は、窒化物半導体層12の側に向けて突出する凸部14と、これとは逆に裏面の側に向けて窪む凹部15とが、周期的に配されてなるものである。すなわち、凹凸パターン13は、凸部14と凹部15とによる二次元的な周期構造を有するものである。
【0021】
図2は、本実施形態に係る窒化物半導体テンプレートを構成する基板の凹凸パターンの周期構造の一具体例を示す平面図である。
本実施形態では、凹凸パターン13として、その凹凸パターン13における凸部14の上面が連続した平面をなすものを例に挙げる。すなわち、本実施形態で例に挙げる凹凸パターン13は、凸部14の上面が連続した平面をなしており、その平面が基板11の表面となるように構成されている。
【0022】
基板11の表面となる凸部14の上面は、例えば、C面((0001)面)からなる面、またはC面からa軸方向またはm軸方向に0.1~3°傾いた面であり、鏡面となるように形成された面である。換言すると、その上にIII族窒化物半導体をエピタキシャル成長させることが可能な、いわゆるエピレディ面となっている。具体的には、凸部14の上面の二乗平均平方根粗さ(RMS)が、例えば、10nm以下、好ましくは1nm以下である。なお、本明細書でいう「RMS」は、原子間力顕微鏡(AFM)にて5μm×5μmサイズの像を解析することで得られる値を意味している。なお、基板11の裏面については、特に限定されるものではないが、例えばランダムな凹凸を有する粗面である、いわゆるラップ面とすることが考えられるが、鏡面であっても構わない。
【0023】
一方、凹凸パターン13における凹部15については、例えば、基板11の表面側から平面視したときの形状が円形状の非貫通孔によって構成されている。そして、凹部15は、複数のものが、例えば平面視6回対称性を有するように配置されている。具体的には、凹部15は、例えば、正六角形の各頂点部分および中心部分のそれぞれに位置するように配置されている。
このように凹部15が配置されることで、凹凸パターン13は、平面視したときに対称性を有するパターンに形成されることになる。さらに、凹部15は、それぞれが均等なピッチPで配置されて二次元的な周期構造を構成することになる。周期構造の周期、すなわち各凹部15間のピッチPは、例えば3μm以下、より好ましくは光の波長程度の0.5~2μmである。また、凹部15の形成深さ(凸部14の上面から凹部15の底面までの距離)は、例えば、周期構造の周期以下であるものとする。また、隣り合う凹部15の円形中心は、基板11のm軸方向あるいはa軸方向と概ね平行な向きに配列されているものとする。また、凹部15の開口部の直径は、凸部14面上で見て、ピッチPの20~60%程度が好ましい。
【0024】
このような凹凸パターン13を有する基板11の直径サイズは、例えば、2~8インチ径のサイズのものを用いる。これにより、窒化物半導体テンプレート10は、1インチ径を超える大きな基板サイズに対応したものとなる。また、基板11の厚さについては、LED構造積層後のウエハの反りを抑制する観点から、ウエハの直径サイズが大きいほど厚いほうが好ましいが、例えば、300μm~2mmとすることが考えられる。
【0025】
(窒化物半導体層)
また
図1において、窒化物半導体層12は、基板11の凹凸パターン13上に形成された、アルミニウム(Al)を含む窒化物半導体からなる層である。Alを含む窒化物半導体としては、例えば窒化アルミニウム(AlN)が挙げられるが、これに限定されることはない。すなわち、Alを含む窒化物半導体は、In
1-x-yAl
xGa
yN(0≦x+y≦1、0<x≦1、0≦y≦1)で表わされるものであれば、AlNの他に、窒化インジウムアルミニウム(AlInN)、窒化アルミニウムガリウム(AlGaN)、または、窒化アルミニウムガリウムインジウム(AlInGaN)であってもよい。
また、窒化物半導体層12は、基板11に面する側に位置する第一層16と、その第一層16に重なるように形成された第二層17と、の二層構造に構成されている。第一層16の凸部14の上面の部分と凹部15の底面の部分は、
図1に示すように凹凸パターン13の境界にある斜面・側面で繋がっていてもよいが、それぞれが分断されていても構わない。凹凸パターン13の境界が例えば基板表面に対して80~120°の角度を有して急峻あるいはオーバーハング状に形成されている場合のように、その凹凸パターン13の境界の斜面に窒化物半導体層12が成長し難い場合が、この場合に対応する。
【0026】
窒化物半導体層12を構成する第一層16と第二層17とは、それぞれが不純物濃度の違いにより区別される。例えば、二次イオン質量分析法(SIMS)による分析結果に基づき、第一層16と第二層17との不純物濃度を比べると、基板11の側に近い第一層16には、不純物としての酸素(O)が、第二層17に比べて多量に含まれている。
【0027】
このような第一層16と第二層17との酸素濃度の違いが生じる原因は、各層成長時のAlを含む窒化物半導体の結晶性の違いに起因する。すなわち、第一層16の成長時には、Alを含む窒化物半導体中の転位密度が多いため、成長中に基板11側からの拡散により、あるいは、成長雰囲気からの混入により、多量の酸素が取り込まれる。その濃度は、例えば1×1018~1×1021/cm3程度である。一方、第二層17の成長時には、下地となる第一層16は後述するようにアニール処理によって高品質化(低転位化)しているため、第二層17も低転位なAlを含む窒化物半導体の層となる。このため、第二層17の成長時には、第一層16からの若干の酸素拡散はあるものの、全体的には酸素の取り込みが抑制される。第二層17の酸素濃度は、成長装置の雰囲気にも依存するが、典型的には例えば1×1018/cm3以下となる。
【0028】
したがって、窒化物半導体層12は、不純物濃度を測定することによって、第一層16と第二層17との二層構造であることを特定することができ、さらには第一層16と第二層17との界面位置がどこに存在するかを特定することができる。なお、不純物濃度の測定については、例えばSIMS分析の結果を用いて行うことが考えられるが、他の公知の手法を用いて行っても構わない。
【0029】
(第一層)
二層構造を構成する一方の層である第一層16は、詳細を後述するように、基板11の凹凸パターン13上にAlを含む窒化物半導体をエピタキシャル成長させて形成された層であり、さらに不活性ガス雰囲気でのアニール処理が施されてなる層である。
【0030】
第一層16は、その表面が平坦化しない厚さで形成されている。ここで、平坦化しない厚さとは、凹凸パターン13上に形成される第一層16が、その凹凸パターン13の凹部15の部分で斜めファセット成長する場合であっても、その凹部15を完全には塞がない程度の厚さのことをいう。ここで、斜めファセット成長とは、成長面(C面)とは異なる面(ファセット)の結晶成長が斜め方向に行われることをいう。
具体的には、第一層16は、表面が平坦化しない厚さとして、以下のような厚さで形成されている。すなわち、第一層16は、凹凸パターン13の凸部14の上面部分において、連続膜となる厚さで、かつ、クラックが発生しない厚さとなるように、例えば、100~800nmの厚さで形成されている。第一層16の厚さが100nm未満であると連続膜にならないおそれがあるが、100nm以上とすることで連続膜として形成することができる。また、第一層16の厚さが800nmを超えてしまうと、その形成時あるいはその後のアニール処理時にクラックが発生してしまうおそれがあるが、800nm以下とすることでクラックが発生しないように形成することができる。
【0031】
また、第一層16は、アニール処理が施されることで、その表面(すなわち、凹凸パターン13の凸部14の上面に対応する部分の面で、第二層17の側の面)が低転位化されている。具体的には、例えば、表面における平均転位密度は、1×109個/cm2以下である。また、例えば、X線回折(XRD)を利用した表面に対するX線ロッキングカーブ(XRC)測定の(10-12)回折の半値幅は、600秒以下、より好ましくは400秒以下である。
【0032】
(第二層)
二層構造を構成する他方の層である第二層17は、詳細を後述するように、第一層16と重なり、その第一層16の表面側を覆うように、Alを含む窒化物半導体をエピタキシャル成長させて形成された層である。
【0033】
第二層17は、その表面が平坦化する厚さで形成されている。ここで、平坦化する厚さとは、第一層16に重ねて形成される第二層17が、その第一層16の表面に残存する凹凸の凹部を完全に塞ぎ、第二層17の表面が平坦な平面となるような厚さのことをいう。
具体的には、第二層17は、表面が平坦化する厚さとして、以下のような厚さで形成されている。すなわち、例えばLEDを構成した場合に十分な光取り出し効率向上の効果を与える高さである400nm以上の高さの凹凸パターンに対しては、第一層16と第二層17の合計の厚さ(具体的には、凹凸パターン13の凸部14の上面から窒化物半導体層12の最表面までの厚さ)が、例えば、少なくとも800nmを超える厚さで形成されている。第一層16と第二層17の合計の厚さが800nmを超えていれば、表面を平坦化することのできる厚さとなる。
また、第二層17は、第一層16と第二層17とを合わせた厚さ、すなわち連続した平面を成す凹凸パターン13の凸部14の上面から第二層17の表面(平坦化された面)までの厚さが、例えば、5μm以下となるように形成されていることが好ましい。第一層16と第二層17とからなる窒化物半導体層12の厚膜化を極力抑制するためである。
なお、表面が平坦化するように形成されることで、第二層17は、基板11における凹凸パターン13の凹部15に対応する部分に、例えば三角錐状のボイド(空洞)18を包含することになる。
【0034】
また、第二層17は、低転位化された第一層16の上に形成されているので、第一層16と同様に低転位なものとなる。具体的には、例えば、その表面(平坦化された面)における平均転位密度は、1×109個/cm2以下である。
【0035】
しかも、第二層17は、第一層16の上に重ねて成長させているので、第一層16のみの場合に比べて、表面の粗さについても改善されたものとなる。具体的には、第二層17は、その表面の表面粗さRMSが10nm以下、より好ましくは1nm以下となっている。また、第二層17は、表面に対するXRC測定における(10-12)回折の半値幅が600秒以下、より好ましくは400秒以下となっている。
【0036】
(2)窒化物半導体テンプレートの製造方法
次に、上述した構成の窒化物半導体テンプレート10を製造する手順、すなわち本実施形態に係る窒化物半導体テンプレートの製造方法について説明する。
【0037】
(成長装置の構成例)
ここで、先ず、窒化物半導体テンプレート10の製造に用いる成長装置の構成例について説明する。
図3は、本実施形態に係る窒化物半導体テンプレートの製造に用いられる成長装置の一具体例を示す模式図である。
図例は、成長装置の一具体例として、ハイドライド気相成長装置(HVPE装置)を示している。
【0038】
HVPE装置200は、石英やアルミナ等の耐熱性材料からなり、成膜室201が内部に構成された気密容器203を備えている。成膜室201内には、基板11を保持するサセプタ208が設けられている。サセプタ208は、基板11の表面を上側にした状態で基板11を収容するポケット208pを有している。サセプタ208は、回転機構216が有する回転軸215に接続されており、該サセプタ208の裏面に設けられたギアによって基板11を上方に保持したまま、該サセプタ208上に載置される基板11を周方向(主面に沿った方向)に回転可能に構成されている。
これらのサセプタ208、ポケット208p、回転機構216は、カーボンあるいはSiCや窒化ホウ素(BN)等のコーティングを施したカーボンで構成されるのが好ましく、それ以外の部材は、不純物の少ない高純度石英で構成されるのが好ましい。また、特に1300℃以上の高温にさらされる領域の部材は、高純度石英に代えてアルミナで構成されるのが好ましい。
【0039】
気密容器203の一端には、成膜室201内へ塩化水素(HCl)ガスを供給するガス供給管232b、成膜室201内へアンモニア(NH3)ガスを供給するガス供給管232c、および、成膜室201内へH2ガス、N2ガスまたはHClガスを供給するガス供給管232dが接続されている。ガス供給管232b~232dには、上流側から順に、流量制御器241b~241d、バルブ243b~243dがそれぞれ設けられている。ガス供給管232bの下流には、原料としての固体のAlを収容するガス生成器233bが設けられている。ガス生成器233bには、HClガスとAlとの反応により生成された成膜ガスとしての塩化アルミニウム(AlClまたはAlCl3)ガスを、サセプタ208上に保持された基板11等に向けて供給するノズル249bが接続されている。ガス供給管232c,232dの下流側には、これらのガス供給管から供給された成膜ガスをサセプタ208上に保持された基板11等に向けて供給するノズル249c,249dが接続されている。ノズル249b~249dは、基板11の表面に対して交差する方向(表面に対して斜めの方向)にガスを流すよう配置されている。
【0040】
一方、気密容器203の他端には、成膜室201内を排気する排気管230が設けられている。排気管230にはポンプ231(或いはブロワ)が設けられている。気密容器203の外周にはガス生成器233b内やサセプタ208上に保持された基板11等を所望の温度に加熱するゾーンヒータ207が、気密容器203内には成膜室201内の温度を測定する温度センサ209が、それぞれ設けられている。なお、ゾーンヒータ207のガス生成器233b付近(図中A1参照)は、600~800℃または400~600℃に維持され、これにより、HClガスとAlとの反応によりAlClガスまたはAlCl3ガスが生成される。また、ゾーンヒータ207のサセプタ208付近(図中A3参照)は、後述の成長に適した温度に維持される。
【0041】
HVPE装置200が備える各部材は、コンピュータとして構成されたコントローラ280に接続されており、コントローラ280上で実行されるプログラムによって、後述する処理手順や処理条件が制御されるように構成されている。
【0042】
なお、HVPE装置200は、上述した各部の他に、成膜室201内へHClガスを供給するガス供給管232a、流量制御器241a、バルブ243a、原料としてのガリウム(Ga)融液またはインジウム(In)融液を収容するガス生成器233a、ノズル249a等が設けられており、HClガスとGa融液またはIn融液との反応により生成された成膜ガスとしての塩化ガリウム(GaCl)ガスまたは塩化インジウム(InCl)ガスを、サセプタ208上に保持された基板11等に向けて供給するように構成されていてもよい。さらに言えば、Ga融液およびIn融液を収容するガス生成器をそれぞれ別個に持ち、GaClガスとInClガスをそれぞれ独立に供給可能な構成としてもよい。
【0043】
(製造手順の概要)
続いて、上述した構成のHVPE装置200を用いた窒化物半導体テンプレートの製造手順を、窒化物半導体がAlNである場合を例に挙げて説明する。以下、窒化物半導体がAlNである場合の窒化物半導体テンプレート10を「AlNテンプレート10」と称する。
図4は、本実施形態に係る窒化物半導体テンプレートの製造手順の概要を示す断面図である。
【0044】
AlNテンプレート10の製造は、基板準備工程(ステップ1、以下ステップを「S」と略す。)と、第一層形成工程(S2)と、アニール工程(S3)と、第二層形成工程(S4)と、を経て行う。
【0045】
(S1:基板準備工程)
基板準備工程(S1)では、HVPE装置200で処理される基板11、すなわちAlNテンプレート10を構成することになる基板11を用意する。具体的には、
図4(a)に示すように、基板11として、例えば、サファイア基板からなり、表面に凹凸パターン13が形成されたパターン基板を用意する。
【0046】
基板11としては、凹凸パターン13における各凹部15間のピッチPが、例えば3μm以下、より好ましくは光の波長程度の0.5~2μmであるものを用意する。ピッチPが3μmを超えると、その上に形成する窒化物半導体層(AlN層)12の表面を平坦化するために、そのAlN層12の厚膜化を招き得る。また、ピッチPが0.5~2μmであれば、LED等の発光デバイスを構成した場合の光取り出し効率を向上させることができる。また、凹部15の深さ(凸部14の上面から凹部15の底面までの距離)は、例えば、周期構造の周期以下が好ましいが、十分な光取り出しの効果を得るためには400nm以上であることが好ましい。また、凹部15の開口部の直径は、凸部14面上で見て、ピッチPの20~60%程度が好ましい。
【0047】
基板11の直径サイズは、例えば、2~8インチ径のサイズのいずれかを選択する。ここでいう直径サイズは、実際のインチサイズでも構わないが、慣例的に用いられている「2インチ」=50mm、「6インチ」=150mm等のサイズでも構わない。
【0048】
(S2:第一層形成工程)
基板準備工程(S1)の後は、次いで、第一層形成工程(S2)を行う。第一層形成工程(S2)では、先ず、基板準備工程(S1)で用意した基板11を、凹凸パターン13を上側にした状態で、HVPE装置200のサセプタ208上に載置する。
【0049】
また、HVPE装置200においては、ガス生成器233b内に原料としての固体のAlを収容しておく。そして、サセプタ208を回転させるとともに、成膜室201内の加熱および排気を実施しながら、ガス供給管232dから成膜室201内へH2ガス(あるいはH2ガスとN2ガスとの混合ガス)を供給する。さらには、成膜室201内が所望の成長温度、成長圧力に到達し、成膜室201内が所望の雰囲気となった状態で、ガス供給管232b,232cからガス供給を行い、基板11の表面に対して交差する方向に、成膜ガスとしてAlClガスまたはAlCl3ガスとNH3ガスとを供給する。これらの成膜ガスは、H2ガス、N2ガスまたはこれらの混合ガスから成るキャリアガスと混合して供給してもよい。
【0050】
これにより、
図4(b)に示すように、基板11における凹凸パターン13上には、AlNからなる第一層16が気相成長により エピタキシャル成長されて形成されることとなる。
【0051】
ところで、第一層16となるAlN膜の成長にあたり、凹凸パターン13の凸部14の上面については、AlN膜がC面((0001)面)を形成しつつ縦方向に成長するが、凹凸パターン13の凹部15に対応する部分では、AlN膜が斜めファセットを形成しつつ横方向に成長する。
ただし、第一層16の成長は、その表面が平坦化しない厚さで、かつ、成長時やアニール時に第一層16にクラックを生じない厚さ、具体的には凹凸パターン13の凸部14の上面に形成される第一層16が例えば100~800nmの厚さとなるように行われる。
そのため、第一層16は、その表面が平坦化しない状態に形成されることになる。より詳しくは、凹凸パターン13の凸部14の上面の上方側では平坦化された表面16aを有することになるが、凹凸パターン13の凹部15に対応する部分では表面が平坦化されることなく隙間16bが残存するように形成されることになる。
【0052】
また、第一層形成工程(S2)では、上述した厚さへの成長完了時点(すなわち、アニール処理前のアズグロウン状態)で、第一層16が結晶化する(すなわち、非アモルファス状態となる)条件にて、第一層16の形成を行う。具体的には、第一層16の形成を、例えば、HVPE装置200のサセプタ208付近が1000~1300℃の成長温度を維持する状態となるように、ゾーンヒータ207による加熱を行う(
図2中A3参照)。そして、第一層16を形成するためのAlN膜の成長は、成長速度が0.5~500nm/分となるように、AlClガスまたはAlCl
3ガスおよびNH
3の供給量を調整して行う。N源とAl源の供給量比(いわゆるV/III比)は、0.2~200とする。このとき、ノズル249dからは、ノズル249a~dへの寄生的なAlN付着を防止するためにHClガスを流してもよく、その量は、AlClガスまたはAlCl
3ガスに対して0.1~100の比率とする。
【0053】
このようにして形成された第一層16は、成長完了時点(すなわち、アニール処理前のアズグロウン状態)において、凹凸パターン13の凸部14の上面に対応する表面16aの表面粗さRMSが、例えば、0.3~10nm程度となる。この状態で5μm×5μm角の領域についてAFM測定を行うと、測定領域に隙間16bを含むことになる。そのため、単純に表面粗さRMSを計算すると、隙間16bの影響により、10nmよりも大きな値が得られる可能性がある。しかしながら、ここで重要なのは表面16aの表面粗さなので、この時点でのRMSは隙間16bの影響を除外して計算するものとする。
また、第一層16は、成長方向に極性を有するようになり、例えば基板11の側がN極性面となり、その反対側(すなわち、第一層16の表面)がほぼIII族極性面であるAl極性面となる。
【0054】
(S3:アニール工程)
ところで、第一層16は、上述した厚さとなるように薄く形成されるため、成長完了時点(すなわち、アニール処理前のアズグロウン状態)においては、転位密度が高くなってしまうことが懸念される。そこで、第一層形成工程(S2)の後は、基板11上の薄い第一層16を高品質化すべく、アニール工程(S3)を行うのである。
【0055】
アニール工程(S3)にあたっては、HVPE装置200における成膜室201内へのAlClガスまたはAlCl
3ガス、NH
3ガスおよびH
2ガスの供給を停止し、全てのガス供給管からN
2ガスを供給することで、成膜室201内の雰囲気をN
2ガスへ置換する。そして、成膜室201内をN
2ガス雰囲気とした後に、サセプタ208を回転させつつ、成膜室201内の排気を実施しながら、ゾーンヒータ207(
図3中A3参照)によりサセプタ208付近を所望のアニール処理温度まで上昇させる。このようにして、アニール工程(S3)では、HVPE装置200の成膜室201内から基板11を搬出することなく、その基板11上に形成された第一層16に対して、N
2ガス雰囲気でアニール処理を行う。つまり、AlClガスまたはAlCl
3ガス、NH
3ガスおよびH
2ガスを含有しない雰囲気であるN
2ガス雰囲気で、第一層16に対するアニール処理を行うのである。このように、N
2ガス雰囲気でアニール処理を行うので、第一層16へのアニール処理中の炭素(C)やO素等の不純物混入を抑制することができ、また第一層形成工程(S2)で用いたHVPE装置200をそのまま用いたアニール処理も実現可能となる。
【0056】
アニール工程(S3)で行うアニール処理は、第一層16の表面の状態(特に、転位に関する状態)を高品質化するためのものである。このことから、アニール工程(S3)では、アニール処理後の第一層16の表面16aにおける平均転位密度が1×109個/cm2以下となる条件で、アニール処理を行うことが好ましい。また、アニール工程(S3)では、アニール処理後の第一層16の表面16aに対するXRC測定の(10-12)回折の半値幅が600秒以下、より好ましくは400秒以下となる条件で、アニール処理を行う。このことは、アニール工程(S3)では、第一層16の主として刃状転位を低減させる条件で、アニール処理を行うことに対応する。なお、平均転位密度が1×109個/cm2以下となる場合には、XRC測定の(10-12)回折の半値幅が概ね400秒以下となることに対応している。
【0057】
アニール処理後のAlN層の表面の転位(例えば刃状転位およびらせん転位)に関する状態は、例えば
図5に示すように、そのアニール処理を行う際の処理温度(アニール温度)に依存する。
図5は、第一層を構成するAlN膜の表面の転位に関する状態とアニール処理条件との関係の一具体例を示す説明図である。
図例は、XRD装置を用いたXRC測定の(10-12)回折の半値幅(すなわち刃状転位とらせん転位両方についての測定結果)とアニール温度との関係の具体例(
図5(a)参照)、並びに、同じくXRC測定の(0002)回折の半値幅(すなわちらせん転位についての測定結果)とアニール温度との関係の具体例(
図5(b)参照)を示している。具体的には、図例の場合、第一層16の厚さが100nm、200nm、320nm、460nm、570nm、800nm、840nm、1020nmのいずれかであり、アニール無しの場合またはアニール温度が1500~1850℃であり、アニール処理の時間が1時間であり、アニール処理の直後、すなわち第二層17を成長する前に、HVPE装置200からウエハを取り出してXRC測定を行った結果を示している。
【0058】
図5(a)および
図5(b)に示す測定結果によれば、アニール処理を全く行わない場合には、第一層16の表面における平均転位密度は、従来のAlN膜と同等の1×10
10個/cm
2程度かそれ以上であり、(0002)回折の半値幅は100秒程度と小さいものの、(10-12)回折の半値幅は1000秒程度と大きな値となっている。
一方、アニール処理を行った場合には、特に1600℃以上のアニール処理によってXRC半値幅に変化が生じている。すなわち、1600℃以上の温度のアニール処理を行うことにより、XRC測定の(0002)回折の半値幅はアニール処理を行わない場合と比較して増加し、(10-12)回折の半値幅は減少している。
特に、(10-12)回折の半値幅に着目すると、アニール温度が1600~1800℃の範囲で減少が顕著であり、殊に第一層16の厚さが800nm以下の場合に、600秒以下の小さな半値幅となっている。また、第一層16の厚さが320nm以下の場合には1600~1800℃の範囲で、第一層16の厚さが460nmの場合には1720~1800℃の範囲で、(10-12)回折の半値幅は400秒以下となっており、この条件においては、転位密度に換算して1×10
9個/cm
2以下となっていると考えられる。アニール温度が1850℃以上の場合には、(10-12)回折の半値幅は700秒以上に悪化しており、アニール温度が高すぎて、転位密度が逆に増加に転じているものと考えられる。
なお、アニール時間を30~180分の間で変えた場合にも、ほぼ同様の結果が得られている。
【0059】
以上のことから、アニール工程(S3)では、上述した第一層16の高品質化を実現するための具体的な条件として、例えば、第一層16の厚さが100~800nmの範囲で、アニール処理を1600~1800℃の温度範囲で、かつ、30~180分の時間で行う。
第一層16の厚さが100nmよりも小さい場合には、第一層16成長後に表面が平坦化しておらず、アニール処理中に基板11のサファイアがエッチングされることで、第一層16が剥離してしまうため、高品質な膜を得ることが困難となる。また、第一層16の厚さが800nmよりも大きい場合には、
図5に示すように、XRC測定の(0002)回折の半値幅を600秒以下とするのは困難である。このことは、後述するように第一層16が薄い場合には、アニール処理中にAlNの構成原子が比較的自由に動き回ることで転位が減少しているという考えを支持する現象である。すなわち、第一層16が厚い場合にAlN膜の高品質化が難しくなるのは、相対的にAlN中の構成原子の自由度が低下するためと考えると、説明できるのである。
アニール処理を1600℃未満の温度で行うと、そのアニール処理の効果を十分に得られず、第一層16の表面状態を高品質化できないおそれがあり、また1850℃以上の温度でアニール処理を行うと、過剰にアニール処理を行うことになってしまい、却って第一層16の表面状態の高品質化の妨げになる。
アニール処理の時間についても同様であり、アニール処理を30分未満の時間で行うと、そのアニール処理の効果を十分に得られず、第一層16の表面状態を高品質化できないおそれがあり、また180分を超える時間でアニール処理を行うと、過剰にアニール処理を行うことになってしまい、却って第一層16の表面状態の高品質化の妨げになることが懸念される。
【0060】
ところで、アニール工程(S3)では、十分にAlN膜を高品質化できる条件でアニール処理を行うと、第一層16の表面が劣化する。具体的には、アニール処理を行う前と、アニール処理を行った後とで、第一層16の表面16aに以下に述べるような変化が生じることがある。
【0061】
例えば、第一層16の表面16aの表面粗さRMSについては、アニール工程(S3)後の表面粗さRMSが、第一層形成工程(S2)の後でアニール工程(S3)を行う前の表面粗さRMSよりも大きい。具体的には、第一層形成工程(S2)後でアニール工程(S3)前の第一層16の表面16aの表面粗さRMSが0.3~10nmであるのに対して、アニール工程(S3)後の第一層16の表面16aの表面粗さRMSが1~50nmであるといったように、それぞれの表面粗さRMSに変化が生じる。
【0062】
また、例えば、第一層16の表面16aに対するXRC測定の(0002)回折あるいは(0004)回折の半値幅については、アニール工程(S3)後の値が、第一層形成工程(S2)後でアニール工程(S3)前における値よりも大きくなる。具体的には、
図5に示したように、第一層形成工程(S2)後でアニール工程(S3)前の第一層16の表面16aに対するXRC測定の(0002)回折あるいは(0004)回折の半値幅は、第一層16厚さが少なくとも800nm以下の場合には、50~200秒である。これに対して、アニール工程(S3)後の第一層16の表面16aに対するXRC測定の(0002)回折あるいは(0004)回折の半値幅は、1600~1800℃のアニール処理に対して、100~600秒であるといったように、アニール処理前後でそれぞれの値に変化が生じる。
(0002)回折あるいは(0004)回折の半値幅の増加は、一般的には、刃状転位密度の増加を示していると考えられている。しかしながら、これは主として、表面が平坦化した場合の結晶に対する議論であり、表面が荒れている場合には異なる議論が成り立つ。すなわち、表面が荒れている場合には、転位が存在していなくても、表面での原子位置あるいは格子面の向きに付加的な自由度が生じるため、(0002)回折あるいは(0004)回折の半値幅が大きく観測される場合がある。このことから考えて、少なくともアニール温度が1800℃以下の範囲では、
図5でみられる(0002)回折の半値幅の増大は、第一層16の転位密度の増大を反映したものではなく、表面荒れによるものと考えられる。後述するように、アニール処理後の第一層16上に僅か数100nmの第二層17を成長しただけであっても、表面が平坦化した場合に(0002)回折の半値幅がアニール処理前と同等程度に回復していることも、この推論(アニール処理後に転位密度が増大していない)を裏付けている。
【0063】
このように、N2ガス雰囲気でのアニール処理を第一層16が低転位化するほど行うと、その第一層16には、表面荒れ等の劣化が生じてしまう。そのため、従来は、N2ガス雰囲気でのアニール処理は用いられてこなかった。
アニール処理によるAlN中の転位密度の減少と表面粗さの増加は、そのアニール処理中に、AlN中またはその表面の構成原子が比較的自由に動き回っていることを意味している。転位部分には構成原子のダングリングボンドが多数存在するので、本来は完全結晶よりもエネルギー的に高い状態にある。本実施形態のアニール工程(S3)のようなAlNの構成原子が自由に動ける状態になると、結晶全体のエネルギーを下げるように転位を消滅させる駆動力が発生するのである。
ただし、このような構成原子が比較的自由に動く状態にすると、前述のようにAlN表面が荒れてしまうため、従来はこのような条件でのアニール処理が、AlNの低転位化の手法として採用されることが無かった。
ところが、N2ガス雰囲気でのアニール処理によって第一層16の表面16aに劣化が生じた場合であっても、その荒れた表面に対して追加のAlN膜を後述する所定条件下で成長させると、荒れた表面を鏡面化することができ、さらに再成長表面の平均転位密度を最良の場合には1×109個/cm2以下にできることを、本発明者は見出した。そこで、アニール工程(S3)の後は、第一層16に重ねて第二層17を所定条件下で成長させるべく、第二層形成工程(S4)を行うのである。
【0064】
上述のアニール工程(S3)後の表面16aの劣化を抑制したい場合には、そのアニール工程(S3)において、成長後の第一層16の表面を保護した状態でアニール処理を行うことが好ましい。第一層16の表面保護は、その表面保護の手段として、例えば
図1等に示した凹凸パターン13を有しないサファイア基板の鏡面状の表面を第一層16に対向させることで行うことが好ましく、また第一層16を有する基板11あるいは凹凸パターン13を有しないサファイア基板上に第一層16を付加した基板を別に用意して第一層16の表面同士を対向させることで行ってもよい。このような表面保護を行えば、工程が若干複雑となるものの、アニール工程(S3)終了後の段階で、かつ、第二層17を成長する前の段階であっても、以下で述べる第一層16の表面16aの表面RMSの増大を抑制することができる。
【0065】
(S4:第二層形成工程)
第二層形成工程(S4)では、第一層16が形成された基板11をHVPE装置200の成膜室201内から搬出することなく、サセプタ208を回転させるとともに、成膜室201内の加熱および排気を実施しながら、ガス供給管232dから成膜室201内へH2ガス(あるいはH2ガスとN2ガスとの混合ガス)を供給する。さらには、成膜室201内が所望の成長温度、成長圧力に到達し、成膜室201内が所望の雰囲気となった状態で、ガス供給管232b,232cからガス供給を行い、基板11の表面に対して交差する方向に、成膜ガスとしてAlClガスまたはAlCl3ガスとNH3ガスとを供給する。これらの成膜ガスは、H2ガス、N2ガスまたはこれらの混合ガスから成るキャリアガスと混合して供給してもよい。
【0066】
これにより、
図4(c)に示すように、第一層16上には、AlNからなる第二層17が気相成長により エピタキシャル成長されて形成されることとなる。このように、第二層17を気相成長によりエピタキシャル成長させて形成することで、第二層17の結晶構造は、第一層16の結晶構造に準じたものとなる。つまり、第一層16が低転位化されているので、その上に形成する第二層17についても、低転位なものとなる。具体的には、例えば、アニール処理後の第一層16の表面16aにおける平均転位密度が最良の場合には1×10
9個/cm
2以下であることから、その上に形成する第二層17の表面17aにおける平均転位密度についても最良の場合には1×10
9個/cm
2以下となる。
【0067】
第二層17の形成は、例えば、その表面17aが平坦化する厚さ、具体的には第一層16と第二層17とを合わせた厚さ、すなわち凹凸パターン13の凸部14の上面から第二層17の表面(平坦化された面)17aまでの厚さが少なくとも800nmを超える厚さとなるように行う。このように、表面17aが平坦化する厚さで第二層17を形成すると、第一層16における隙間16bが閉じ、第二層17内にボイド18が残存することになる。
【0068】
また、第二層17の形成は、第一層16と第二層17とを合わせた厚さ、すなわち凹凸パターン13の凸部14の上面から第二層17の表面(平坦化された面)17aまでの厚さが、例えば5μm以下となるように行う。第一層16と第二層17とからなるAlN層12の厚膜化を極力抑制するためであり、厚膜化の抑制によりAlN層12にクラックが生じないようにするためである。
【0069】
また、第二層17の形成は、例えば、HVPE装置200のサセプタ208付近が1000~1600℃の成長温度、より好ましくは1400~1600℃ の成長温度を維持する状態となるように、ゾーンヒータ207(
図3中A3参照)による加熱を行う。そして、第二層17を形成するためのAlN膜の成長は、成長速度が0.5~500nm/分となるように、AlClガスまたはAlCl
3ガスおよびNH
3の供給量を調整して行う。N源とAl源の供給量比(いわゆるV/III比)は、0.2~200とする。このとき、ノズル249dからは、ノズル249a~dへの寄生的なAlN付着を防止するためにHClガスを流してもよく、その量は、AlCl
3ガスに対して0.1~100の比率とする。
【0070】
このようにして形成された第二層17は、その表面17aの表面粗さRMSが、例えば、10nm以下、より好ましくは1nm以下となる。このことは、AlN層12の表面の表面粗さRMSが、例えば、10nm以下、より好ましくは1nm以下であることを意味する。
【0071】
また、第二層17は、その表面17aに対するXRC測定における(10-12)回折の半値幅が600秒以下となる。このことは、AlN層12の表面に対するXRC測定における(10-12)回折の半値幅が600秒以下であることを意味する。
【0072】
つまり、第一層16の表面が平坦化しない厚さに形成されている場合であっても、その第一層16が低転位化されていることを前提とした上で、第一層16と第二層17とを合わせた厚さ、すなわち凹凸パターン13の凸部14の上面から第二層17の表面(平坦化された面)17aまでの厚さの合計の厚さが少なくとも800nmを超える厚さで、かつ、1000~1600℃の成長温度、特に1400~1600℃の成長温度で成長させると、第二層17の表面17aについては平坦化させることができる。
しかも、第一層16と第二層17とを合わせた厚さ、すなわち凹凸パターン13の凸部14の上面から第二層17の表面(平坦化された面)17aまでの厚さを例えば5μm以下とすれば、AlN層12の厚膜化を極力抑制することができるとともに、厚膜化の抑制によりAlN層12にクラックが生じることもない。さらには、AlN層12の厚膜化を抑制した場合であっても、そのAlN層12の表面、すなわち第二層17の表面17aの転位密度を最良の場合には1×109個/cm2以下にすることができる。
【0073】
図6は、第二層を構成するAlN膜の表面の転位に関する状態とアニール処理条件との関係の一具体例を示す説明図であり、XRC測定の(10-12)回折の半値幅(すなわち刃状転位とらせん転位両方についての測定結果)とアニール温度との関係の具体例(
図6(a)参照)、並びに、同じくXRC測定の(0002)回折の半値幅(すなわちらせん転位についての測定結果)とアニール温度との関係の具体例(
図6(b)参照)を示している。
図例は、第一層16上に800nmの厚さの第二層17を成長した後に測定したXRC半値幅を示したものである。さらに詳しくは、図例は、第一層16の厚さが100nm、200nm、320nm、460nm、570nm、800nm、840nm、1020nmのいずれかであり、アニール無しの場合またはアニール温度が1500~1850℃であり、アニール処理の時間が1時間である場合において、その第一層16上に800nmの厚さで形成した第二層17についてXRC測定を行った結果を示している。
【0074】
図6(a)に示す測定結果によれば、第一層16のアニール温度が1600~1800℃の範囲であり、第一層16の厚さが800nm以下の場合に、第二層17の表面に対するXRC測定の(10-12)回折の半値幅は、600秒以下となっている。また、
図6(b)に示す測定結果によれば、対応する条件での(0002)回折の半値幅は200秒以下であり、これらの条件において刃状転位およびらせん転位の双方の転位密度が低く抑えられていることがわかる。
特に、(10-12)回折の半値幅に着目すると、アニール温度が1600~1800℃の範囲で、かつ、第一層16の厚さが320nm以下の場合と、アニール温度が1700℃~1800℃の範囲で、かつ、第一層16の厚さが460nmの場合には、XRC測定の(10-12)回折の半値幅は400秒以下となっており、転位密度が1×10
9個/cm
2以下となっている。
なお、第二層17の厚さを、100nm~20μmと変えた場合においても、表面が平坦化した場合においては、ほぼ同様の結果が得られている。
【0075】
(S2からS4までの流れ)
以上のように、本実施形態において、AlNテンプレート10の製造にあたっては、第一層形成工程(S2)、アニール工程(S3)および第二層形成工程(S4)を、同一の成長装置であるHVPE装置200を用いて連続的に行う。つまり、連続的に行うので、アニール工程(S3)の後、第一層16に対する研磨工程を挟まずに、第二層形成工程(S4)を行う。
【0076】
したがって、アニール工程(S3)を経る場合であっても、成長装置とは別に、COガスを流せるアニール装置を準備する必要がない。さらには、N2ガス雰囲気でのアニール処理を行うので、特に上部の第二層17へのCやO等の不純物混入を抑制することができ、また気相成長を行うHVPE装置200をそのまま用いたアニール処理も実現可能となる。
【0077】
(製造品)
以上に説明した各工程(S1~S4)を経ることで、
図1に示す本実施形態のAlNテンプレート10が製造される。
【0078】
かかるAlNテンプレート10は、基板11の凹凸パターン13上に第一層16を表面16aが平坦化しない厚さで成長させた後、N2ガス雰囲気中で1600~1800℃の温度でのアニール処理を行い、その上に第二層17を表面17aが平坦化する厚さで成長させて得られたものであり、これにより第二層17の表面17aを平坦化かつ低転位化したものである。つまり、かかるAlNテンプレート10は、HVPE装置200のみで(すなわち、成長装置とは別のアニール装置等を必要としない簡素な装置構成で)、良好な表面品質および結晶品質を実現したものである。
【0079】
また、かかるAlNテンプレート10は、第一層16と第二層17とが同一のHVPE装置200を用いて連続的に形成されたものであるが、第一層16の成長中には、AlN中の転位密度が多いため、成長中に基板11側からの拡散により、あるいは、成長雰囲気からの混入により、多量の酸素が取り込まれる。その濃度は、1×1018~1×1021/cm3程度である。第一層16自体は従来用いられている方法で成長しているので、この酸素濃度に関しても従来法によるものと同程度である。一方、第二層17の成長時には、下地となる第一層16がアニール処理により高品質化(低転位化)しているため、第二層17も低転位なAlNとなる。このため、第二層17の成長時には、第一層16からの若干の酸素拡散はあるものの、全体的には酸素の取り込みが抑制される。第二層17の酸素濃度は、成長装置の雰囲気にも依存するが、典型的には1×1018/cm3以下となる。
【0080】
このようにして得られたAlNテンプレート10は、例えば、LED等の半導体装置(半導体デバイス)を製造する際に用いられる。すなわち、AlNテンプレート10上にn型、p型またはアンドープの多層膜を積層し、これによりAlを含む窒化物半導体積層構造を成長させて形成することで、窒化物半導体デバイスを構成することができる。かかる窒化物半導体デバイスは、例えば、ショットキーダイオード、pn接合ダイオード、発光ダイオードまたはトランジスタを実現し得るものとなる。
【0081】
(3)本実施形態により得られる効果
本実施形態によれば、以下に示す1つまたは複数の効果が得られる。
【0082】
(a)本実施形態によれば、AlNテンプレート10のAlN層12を第一層16と第二層17との二層構造とし、基板11の凹凸パターン13上に表面が平坦化しない厚さで形成された第一層16に対してN2ガス雰囲気でアニール処理を行った後に、その第一層16の上に第二層17を表面が平坦化する厚さに再成長させるので、基板11に凹凸パターン13を形成した場合であっても、高品質なAlNテンプレート10を容易に得ることができる。
【0083】
(b)本実施形態のAlNテンプレート10は、基板11上のAlN層12が第一層16と第二層17との二層構造であり、これら第一層16および第二層17がいずれも気相成長によるエピタキシャル成長によって形成されている。したがって、例えば昇華法で形成する場合に比べると、AlNテンプレート10の大口径化や透明度確保等の点で有利である。
【0084】
(c)また、本実施形態のAlNテンプレート10は、第一層16に対してアニール処理を行っているので、これにより第一層16を低転位化することができる。しかも、第一層16が低転位化されているので、その上に形成する第二層17についても低転位なものとなる。つまり、本実施形態のAlNテンプレート10は、AlN層12の低転位化を第一層16へのアニール処理によって達成するので、低転位化のためにAlN成長厚を大きくする必要がなく、アニール処理を経ない場合よりも薄い厚さ(第一層16および第二層17の合計厚)でAlN層12の表面の低転位化を達成でき、そのAlN層12にクラックが生じる危険性を低減することができる。
【0085】
(c)また、本実施形態のAlNテンプレート10は、第一層16の形成厚さを、基板11の凹凸パターン13に対応する隙間16bが残存した、表面が平坦化しない厚さに止めておくので、第一層16に対してアニール処理を行っても、第一層16の隙間16bによる空隙部分で内部歪が緩和され、第一層16におけるクラックの発生を抑制することができる。
さらに、本実施形態のAlNテンプレート10は、第二層17の形成厚さを表面が平坦化する厚さとするので、凹凸パターン13を有する基板11を用いた場合であっても、第二層17の表面、すなわちAlN層12の表面の平坦性は担保されることになる。
【0086】
(d)また、本実施形態のAlNテンプレート10は、第一層16については表面が平坦化しない厚さに止めておけばよく、その上に形成する第二層17についても表面が平坦化するために必要十分な厚さであればよいので、第一層16と第二層17とで構成されるAlN層12の薄型化が実現可能となる。しかも、その場合であっても、第二層17の表面、すなわちAlN層12の表面は、低転位なものである。つまり、AlN層12の薄型化を実現する場合であっても、そのAlN層12の表面の低転位化の効果を十分に得ることができる。
【0087】
(e)また、本実施形態のAlNテンプレート10は、第一層16に対してN2ガス雰囲気でアニール処理を行うので、CやO等の不純物混入を抑制することができ、成長させるAlN膜の純度が低下してしまうといった懸念を解消することができる。
しかも、N2ガス雰囲気でのアニール処理であれば、AlN膜を成長させるHVPE装置200をそのまま用いて行うことが実現可能となるので、HVPE装置200とは別のアニール装置を準備する必要がない。つまり、AlNテンプレート10の製造にあたって、第一層形成工程(S2)、アニール工程(S3)および第二層形成工程(S4)をHVPE装置200で連続的に行うことが実現可能となるので、そのAlNテンプレート10の製造を非常に容易かつ効率的に行うことができる。
【0088】
(f)また、本実施形態のAlNテンプレート10は、凹凸パターン13を有する基板11を用いるので、例えば、LED等の光を発する半導体装置(半導体デバイス)を構成した場合の光取り出し効率を向上させることができる。
【0089】
<他の実施形態>
以上に、本発明の一実施形態を具体的に説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。
【0090】
上述した実施形態では、窒化物半導体がAlNである場合、すなわち第一層13および第二層14がAlNを用いて形成されている場合を例に挙げたが、本発明がこれに限定されることはない。第一層13および第二層14は、それぞれAlを含む窒化物半導体、例えば、In1-x-yAlxGayN(0≦x+y≦1、0<x≦1、0≦y≦1)で表わされるAlN、AlInN、AlGaN、または、AlInGaNである場合には、上述した実施形態の例と同様の結果が得られる。
【0091】
また、上述した実施形態では、基板11の凹凸パターン13として、その凹凸パターン13における凸部14の上面が連続した平面をなすものである場合を例に挙げたが、本発明がこれに限定されることはない。凹凸パターンは、凸部と凹部とによる二次元的な周期構造を有するものであれば、例えば、凸部の頂部が尖った形状に形成されており、凹部の底面が連続した平面をなすものであってもよい。
【0092】
図7は、本発明の他の実施形態に係る窒化物半導体テンプレートの概略構成例を示す断面図である。
図例の窒化物半導体テンプレート20において、基板21の凹凸パターン23は、凸部24の頂部が尖った形状に形成されているとともに、凹部25の底面が連続した平面をなしており、その平面が基板21の表面となるように構成されている。凹凸パターン23における凸部24の頂部間のピッチPは、例えば3μm以下、より好ましくは光の波長程度の0.5~2μmであるのが好ましい。ピッチPが3μmを超えると、その上に形成するAlを含む窒化物半導体層の表面を平坦化するために、その窒化物半導体層の厚膜化を招き得る。また、ピッチPが0.5~2μmであれば、LED等の発光デバイスを構成した場合の光取り出し効率を向上させることができる。また、凸部24の高さ(凸部14の頂部から凹部25の底面までの距離)は、例えば、周期構造の周期以下が好ましいが、十分な光取り出しの効果を得るためには400nm以上であることが好ましい。また、凸部24は円錐あるいは三角錐、四角錐、六角錐等の多角錐であるのが好ましく、その底面の寸法は凹部25面上で見て、ピッチPの20~60%程度が好ましい。
このような凹凸パターン23の基板21を用いた場合には、第一層形成工程(S2)で、その凹凸パターン23の凹部25の底面において、第一層26が連続膜となる厚さで、かつ、第一層26にクラックが発生しない厚さとなるように、第一層26の形成を行うことになる。この場合、凸部24の最上部に平坦面が存在しないので、第一層26は主として凹部25の底面に成長されることになる。成長条件によっては、
図7に示したように、凸部24の頂部や斜面には殆どAlを含む窒化物半導体膜が付着しないように成長することが可能となる。この場合、第一層26は、連続した平面を成す凹部25の底面を覆う、穴が開いている連続膜の態様をなしている。このような場合であっても、第一層26の表面が平坦化しない厚さとなるように、すなわち凹凸パターン23に対応した凹凸が残存するように、第一層26の形成を行うものとする。
そして、アニール工程(S3)で第一層26にアニール処理を行った後、第二層形成工程(S4)では、第一層26に重ねて、第二層27の表面が平坦化する厚さで、第二層27の形成を行う。このような成長を行った場合には、例えば
図4等に示したようなボイド18は形成されないことになる。
このような構成の窒化物半導体テンプレート20の場合には、内部にボイド18を含まないため、クラックの抑制という点では、
図4等に示した構成の場合よりもやや劣るものの、それでもなお、上述した実施形態で説明した窒化物半導体テンプレート10とほぼ同様の技術的効果を奏する。
【0093】
また、上述した実施形態では、基板11の凹凸パターン13が平面視6回対称性を有する場合を例に挙げたが、本発明がこれに限定されることはない。凹凸パターンは、凸部と凹部とによる二次元的な周期構造を有するものであれば、平面視したときの構成パターンが特に限定されるものではない。
【0094】
また、上述した実施形態では、アニール工程(S3)においてN2ガス雰囲気でのアニール処理を行う場合を例に挙げたが、本発明がこれに限定されることはない。すなわち、アニール工程(S3)で行うアニール処理は、GaClガス、GaCl3ガス、AlClガス、AlCl3ガス、InClガス、InCl3ガス、HClガス、Cl2ガス、NH3ガスおよびH2ガスを含有しない雰囲気で第一層16に対して行うものであれば、N2ガスに代えて、例えば、アルゴン、ヘリウム等といったN2ガスとは別種の不活性ガスを使用して行うものであってもよく、その場合であっても上述した実施形態の場合と同様の技術的効果を奏する。
【0095】
また、上述した実施形態では、基板11がサファイア基板である場合について説明したが、本発明がこれに限定されることはなく、例えば基板11はSiC基板等であってもよい。ただし、基板11がSiC基板の場合には、アニール工程(S3)での最適アニール温度は1600~2000℃の範囲となる。
また、基板11の表面は、C面に限定されるものではなく、R面、A面もしくはM面、またはこれらの面から0.1~3°の範囲で傾いた面であってもよい。
【0096】
また、上述した実施形態では、HVPE装置200において、基板11の主面に対して交差する方向(主面に対して斜めの方向)にガスを流す場合について説明したが、基板11の主面に沿った方向(主面に対して平行な方向)や、基板11の主面に対して垂直な方向に膜ガスを流してもよい。
【0097】
また、上述した実施形態では、HVPE装置200を用いて窒化物半導体テンプレート10を製造する場合を例に挙げたが、本発明がこれに限定されることはない。すなわち、窒化物半導体テンプレート10の製造に用いる成長装置は、第一層16および第二層17をエピタキシャル成長させて形成するものであれば、例えば、MOVPE装置等の他の気相成長装置や、スパッタ法やナトリウムフラックス法等の気相成長法以外の成長装置を用いて行うものであってもよく、その場合であっても上述した実施形態の場合と同様の技術的効果を奏する。
【0098】
さらに、上述した実施形態では、第一層形成工程(S2)、アニール工程(S3)および第二層形成工程(S4)を、同一のHVPE装置200を用いて連続的に行う場合を例に挙げたが、本発明がこれに限定されることはない。すなわち、第一層形成工程(S2)、アニール工程(S3)および第二層形成工程(S4)は、各工程を全て異なる装置を用いて行うか、またはいずれか二工程について同一の成長装置を用いて行うようにしても構わない。例えば、先に述べたように、Alを含む窒化物半導体層の表面荒れを防ぐ目的で表面を保護する場合には、むしろアニール工程(S3)は第一層形成工程(S2)等で用いる成長装置とは別の装置で行うのが好ましい場合もある。
【0099】
<本発明の好ましい態様>
以下、本発明の好ましい態様について付記する。
【0100】
[付記1]
本発明の一態様によれば、
基板上に窒化物半導体層が形成されてなる窒化物半導体テンプレートの製造方法であって、
前記基板として、表面に凹凸パターンが形成されたパターン基板を用意する準備工程と、
前記パターン基板の前記凹凸パターン上に、アルミニウムを含む窒化物半導体からなる第一層をエピタキシャル成長させて形成するとともに、前記第一層の表面が平坦化しない厚さに前記第一層を形成する第一層形成工程と、
前記第一層に対してアニール処理を行うアニール工程と、
前記アニール工程を経た後の前記第一層に重ねるように、アルミニウムを含む窒化物半導体からなる第二層をエピタキシャル成長させて形成するとともに、前記第二層の表面が平坦化するような厚さに前記第二層を形成し、前記第一層と前記第二層とで前記窒化物半導体層を構成する第二層形成工程と、
を備える窒化物半導体テンプレートの製造方法が提供される。
【0101】
[付記2]
付記1に記載の窒化物半導体テンプレートの製造方法において、好ましくは、
前記凹凸パターンの凸部上面が連続した平面を成すように構成された前記パターン基板に対して、前記第一層形成工程で、前記凹凸パターンの凸部上面において、前記第一層が連続膜となる厚さで、かつ、前記第一層にクラックが発生しない厚さとなるように、前記第一層の形成を行う。
【0102】
[付記3]
付記1に記載の窒化物半導体テンプレートの製造方法において、好ましくは、
前記凹凸パターンの凹部底面が連続した平面を成すように構成された前記パターン基板に対して、前記第一層形成工程で、前記凹凸パターンの凹部底面において、前記第一層が連続膜となる厚さで、かつ、前記第一層にクラックが発生しない厚さとなるように、前記第一層の形成を行う。
【0103】
[付記4]
付記1から3のいずれか一つに記載の窒化物半導体テンプレートの製造方法において、好ましくは、
前記第一層形成工程では、前記第一層の厚さが100~800nmとなるように、前記第一層の形成を行う。
【0104】
[付記5]
付記1から4のいずれか一つに記載の窒化物半導体テンプレートの製造方法において、好ましくは、
前記第一層形成工程では、成長完了時点(=アニール処理前のアズグロウン状態)で前記第一層が結晶化(=非アモルファス状態)する条件にて、前記第一層の形成を行う。
【0105】
[付記6]
付記5に記載の窒化物半導体テンプレートの製造方法において、好ましくは、
前記第一層形成工程では、前記第一層の形成を1000~1300℃の成長温度で行う。
【0106】
[付記7]
付記1から6のいずれか一つに記載の窒化物半導体テンプレートの製造方法において、好ましくは、
前記アニール工程では、前記アニール工程後の前記第一層の表面における平均転位密度が1×109個/cm2以下となる条件で、前記アニール処理を行う。
【0107】
[付記8]
付記1から7のいずれか一つに記載の窒化物半導体テンプレートの製造方法において、好ましくは、
前記アニール工程では、前記アニール処理の後の前記第一層の表面に対するX線ロッキングカーブ測定の(10-12)回折の半値幅が600秒以下となる条件で、前記アニール処理を行う。
【0108】
[付記9]
付記8に記載の窒化物半導体テンプレートの製造方法において、より好ましくは、
前記半値幅が400秒以下となる条件で、前記アニール処理を行う。
【0109】
[付記10]
付記1から9のいずれか一つに記載の窒化物半導体テンプレートの製造方法において、好ましくは、
前記アニール工程では、前記第一層の刃状転位を低減させる条件で、前記アニール処理を行う。
【0110】
[付記11]
付記1から10のいずれか一つに記載の窒化物半導体テンプレートの製造方法において、好ましくは、
前記パターン基板がサファイア基板であり、
前記アニール工程では、前記アニール処理を1600~1800℃の温度範囲で行う。
【0111】
[付記12]
付記1から10のいずれか一つに記載の窒化物半導体テンプレートの製造方法において、好ましくは、
前記パターン基板がSiC基板であり、
前記アニール工程では、前記アニール処理を1600~2000℃の温度範囲で行う。
【0112】
[付記13]
付記1から12のいずれか一つに記載の窒化物半導体テンプレートの製造方法において、好ましくは、
前記アニール工程では、前記アニール処理を30~180分の時間で行う。
【0113】
[付記14]
付記1から13のいずれか一つに記載の窒化物半導体テンプレートの製造方法において、好ましくは、
前記第二層形成工程では、前記第二層の表面粗さRMSが10nm以下となる条件で、前記第二層の形成を行う。
なお、表面粗さRMSは、原子間力顕微鏡による5μm×5μmサイズの像を解析することで得られる値とする。
【0114】
[付記15]
付記14に記載の窒化物半導体テンプレートの製造方法において、より好ましくは、
前記第二層の表面粗さRMSを1nm以下とする。
【0115】
[付記16]
付記1から15のいずれか一つに記載の窒化物半導体テンプレートの製造方法において、好ましくは、
前記第二層形成工程では、前記第二層の形成を1000~1600℃の成長温度で行う。
【0116】
[付記17]
付記1から16のいずれか一つに記載の窒化物半導体テンプレートの製造方法において、好ましくは、
前記第二層形成工程では、前記第一層と前記第二層とを合わせた厚さが5μm以下となるように、前記第二層の形成を行う。
【0117】
[付記18]
付記1から17のいずれか一つに記載の窒化物半導体テンプレートの製造方法において、好ましくは、
前記アニール工程では、前記アニール処理を窒素ガス雰囲気で行う。
【0118】
[付記19]
付記18に記載の窒化物半導体テンプレートの製造方法において、好ましくは、
前記アニール工程では、水素およびアンモニアガスを含有しない雰囲気で前記アニール処理を行う。
【0119】
[付記20]
付記18または19に記載の窒化物半導体テンプレートの製造方法において、好ましくは、
前記アニール工程では、窒素ガスに代えて、前記窒素ガスとは別種の不活性ガス(アルゴン、ヘリウム等)を使用して、前記アニール処理を行う。
【0120】
[付記21]
付記18から20のいずれか一つに記載の窒化物半導体テンプレートの製造方法において、好ましくは、
前記第一層形成工程、前記アニール工程および前記第二層形成工程を、同一の成長装置を用いて連続的に行う。
【0121】
[付記22]
付記21に記載の窒化物半導体テンプレートの製造方法において、好ましくは、
前記アニール工程の後、前記第一層に対する研磨工程を挟まずに、前記第二層形成工程を行う。
【0122】
[付記23]
付記18から20のいずれか一つに記載の窒化物半導体テンプレートの製造方法において、好ましくは、
前記第一層形成工程、前記アニール工程および前記第二層形成工程を、全て異なる装置を用いて行うか、またはいずれか二工程について同一の成長装置を用いて行う。
【0123】
[付記24]
付記18から21のいずれか一つに記載の窒化物半導体テンプレートの製造方法において、好ましくは、
前記第一層形成工程後の前記アニール工程では、成長後の前記第一層の表面を保護した状態でアニール処理を行う。
【0124】
[付記25]
本発明の他の態様によれば、
基板上に窒化物半導体層が形成されてなる窒化物半導体テンプレートであって、
前記基板は、表面に凹凸パターンが形成されたパターン基板であり、
前記窒化物半導体層は、
前記パターン基板の前記凹凸パターン上に、表面が平坦化しない厚さで形成された、アルミニウムを含む窒化物半導体からなる第一層と、
前記第一層と重なるように、表面が平坦化するような厚さで形成された、アルミニウムを含む窒化物半導体からなる前記第二層と、
を備えて構成されている窒化物半導体テンプレートが提供される。
【0125】
[付記26]
付記25に記載の窒化物半導体テンプレートにおいて、好ましくは、
前記パターン基板は、前記凹凸パターンの凸部上面が連続した平面を成すように構成されたものである。
【0126】
[付記27]
付記25に記載の窒化物半導体テンプレートにおいて、好ましくは、
前記パターン基板は、前記凹凸パターンの凹部底面が連続した平面を成すように構成されたものである。
【0127】
[付記28]
付記25から27のいずれか一つに記載の窒化物半導体テンプレートにおいて、好ましくは、
前記パターン基板は、前記凹凸パターンが二次元的な周期構造を有する。
【0128】
[付記29]
付記28に記載の窒化物半導体テンプレートにおいて、好ましくは、
前記周期構造の周期が3μm以下である。
【0129】
[付記30]
付記28または29に記載の窒化物半導体テンプレートにおいて、好ましくは、
前記凹凸パターンの凹部の深さが前記周期構造の周期以下である。
【0130】
[付記31]
付記28から30のいずれか一つに記載の窒化物半導体テンプレートにおいて、好ましくは、
前記凹凸パターンは、平面視したときに対称性を有するパターンに形成されている。
【0131】
[付記32]
付記25から31のいずれか一つに記載の窒化物半導体テンプレートにおいて、好ましくは、
前記窒化物半導体層は、連続した平面を成す前記凹凸パターンの凸部上面または凹部底面から表面までの厚さが5μm以下である。
【0132】
[付記33]
付記25から32のいずれか一つに記載の窒化物半導体テンプレートにおいて、好ましくは、
前記窒化物半導体層は、表面に対するX線ロッキングカーブ測定における(10-12)回折の半値幅が600秒以下である。
【0133】
[付記34]
付記25から33のいずれか一つに記載の窒化物半導体テンプレートにおいて、好ましくは、
前記窒化物半導体層は、表面における平均転位密度が1×109個/cm2以下である。
【0134】
[付記35]
付記25から34のいずれか一つに記載の窒化物半導体テンプレートにおいて、好ましくは、
前記窒化物半導体層は、表面の表面粗さRMSが10nm以下である。
【0135】
[付記36]
付記25から35のいずれか一つに記載の窒化物半導体テンプレートにおいて、好ましくは、
前記第一層および前記第二層は、In1-x-yAlxGayN(0≦x+y≦1、0<x≦1、0≦y≦1)で表わされる窒化アルミニウム、窒化インジウムアルミニウム、窒化アルミニウムガリウム、または、窒化アルミニウムガリウムインジウムからなる。
【0136】
[付記37]
本発明のさらに他の態様によれば、
請求項25から36のいずれか一つに記載の窒化物半導体テンプレートと、
前記窒化物半導体テンプレート上に成長して形成された窒化物半導体積層構造と、
を備える窒化物半導体デバイスが提供される。
【0137】
[付記38]
付記37に記載の窒化物半導体デバイスにおいて、好ましくは、
前記窒化物半導体積層構造は、In1-x-yAlxGayN(0≦x+y≦1、0<x≦1、0≦y≦1)で表わされる、n型、p型またはアンドープの多層膜を積層してなるものであり、ショットキーダイオード、pn接合ダイオード、発光ダイオードまたはトランジスタを実現するものである。
【符号の説明】
【0138】
10,20…窒化物半導体テンプレート(AlNテンプレート)、11,21…基板、12…窒化物半導体層、13,23…凹凸パターン、14,24…凸部、15,25…凹部、16,26…第一層、16a…表面、16b…隙間、17,27…第二層、17a…表面、18,28…ボイド、200…HVPE装置