(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-17
(45)【発行日】2022-01-14
(54)【発明の名称】ディスプレイパネル用視認性改善フィルムおよびそれを含むディスプレイ装置
(51)【国際特許分類】
G02B 5/02 20060101AFI20220106BHJP
G02F 1/1333 20060101ALI20220106BHJP
G02F 1/1335 20060101ALI20220106BHJP
【FI】
G02B5/02 B
G02F1/1333
G02F1/1335
(21)【出願番号】P 2020528443
(86)(22)【出願日】2018-11-28
(86)【国際出願番号】 KR2018014848
(87)【国際公開番号】W WO2019107928
(87)【国際公開日】2019-06-06
【審査請求日】2020-05-25
(31)【優先権主張番号】10-2017-0160636
(32)【優先日】2017-11-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】500239823
【氏名又は名称】エルジー・ケム・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100122161
【氏名又は名称】渡部 崇
(72)【発明者】
【氏名】クワンソク・ソ
(72)【発明者】
【氏名】ハンナ・イ
(72)【発明者】
【氏名】ジンソク・ビョン
(72)【発明者】
【氏名】ヨンレ・チャン
【審査官】中村 説志
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-217065(JP,A)
【文献】特開2004-302223(JP,A)
【文献】国際公開第2016/204009(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/104112(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/012433(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/094550(WO,A1)
【文献】特開2009-244582(JP,A)
【文献】特開2011-033812(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0116648(US,A1)
【文献】韓国公開特許第10-2015-0086663(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 5/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材;および
前記基材の少なくとも一面に備えられた光硬化性樹脂層を含み;
前記光硬化性樹脂層は、平均粒径が1~10μmである金属コーティング無機酸化物微粒子を分散した形態で含み;
前記光硬化性樹脂層は、光硬化性
官能基を含むバインダ及び前記金属コーティング無機酸化物微粒子を含み、前記金属コーティング無機酸化物微粒子は、前記光硬化性
官能基を含むバインダ100重量部に対して3.56~8.53重量部で含まれ、
下記計算式1で表される相対視認性評価値が4以上であり、
JIS K 7136基準に従い測定されたヘイズ値が15%以下である;
ディスプレイパネル用視認性改善フィルム:
[計算式1]
視認性評価値=B1/A1
前記計算式1において、
A1は、JIS K 7361基準に従い測定された透過度が90であり、JIS K 7136基準に従い測定されたヘイズ値が22であるフィルムをガラススライドに接合した後、ブラックアクリル板上に置いて法線の45゜方向で535nmのレーザ光を照射したとき正面で測定される輝度値であり、
B1は、前記ディスプレイパネル用視認性改善フィルムをガラススライドに接合した後、ブラックアクリル板上に置いて法線の45゜方向で同じレーザ光を照射したとき正面で測定される輝度値である。
【請求項2】
前記金属コーティング無機酸化物微粒子は、平均粒径が1~7μmであり、扁平率が0.5以上である、請求項1に記載のディスプレイパネル用視認性改善フィルム。
【請求項3】
下記計算式2で表される輝度比値が80%以上である、請求項1または2に記載のディスプレイパネル用視認性改善フィルム:
[計算式2]
輝度比=(B2/A2)×100
前記計算式2において、
A2は、JIS K 7361基準に従い測定された透過度が90であり、JIS K 7136基準に従い測定されたヘイズ値が22であるフィルムをガラススライドに接合した後、バックライト面に置いたとき、正面で測定される輝度値であり、
B2は、前記ディスプレイパネル用視認性改善フィルムをガラススライドに接合した後、バックライト面に置いたとき、正面で測定される輝度値である。
【請求項4】
下記計算式3で表される白濁度比値が10以下である、請求項1から3のいずれか一項に記載のディスプレイパネル用視認性改善フィルム:
[計算式3]
白濁度比=B3/A3
前記計算式3において、
A3は、JIS K 7361基準に従い測定された透過度が90であり、JIS K 7136基準に従い測定されたヘイズ値が22であるフィルムをガラススライドに接合した後、ブラックアクリル板上に置いて9lxの条件に置いたとき、正面7cmの高さで測定された輝度値(cd/m
2)であり、
B3は、前記ディスプレイパネル用視認性改善フィルムをガラススライドに接合した後、ブラックアクリル板上に置いて9lxの条件に置いたとき、正面7cmの高さで測定された輝度値(cd/m
2)である。
【請求項5】
前記金属コーティング無機酸化物微粒子は、アルミニウム、金、銀、マグネシウム、白金、銅、チタン、ジルコニウム、ニッケル、スズ、ケイ素、およびクロムからなる群より選ばれた1種以上の金属が無機酸化物コアを囲む形態で形成された粒子である、請求項1から4のいずれか一項に記載のディスプレイパネル用視認性改善フィルム。
【請求項6】
前記金属コーティング無機酸化物微粒子は、金属成分を5~50wt%で含む、請求項1から5のいずれか一項に記載のディスプレイパネル用視認性改善フィルム。
【請求項7】
前記光硬化性樹脂層の厚さは、2~20μmである、請求項1から6のいずれか一項に記載のディスプレイパネル用視認性改善フィルム。
【請求項8】
JIS K 7361基準に従い測定された光透過度値が80%以上である、請求項1から7のいずれか一項に記載のディスプレイパネル用視認性改善フィルム。
【請求項9】
500g荷重でHB以上の鉛筆硬度を示す、請求項1から8のいずれか一項に記載のディスプレイパネル用視認性改善フィルム。
【請求項10】
前記基材は、ガラス、ポリエチレンテレフタレート(polyethyleneterephtalate,PET)、エチレンビニルアセテート(ethylene vinyl acetate,EVA)、環状オレフィン重合体(cyclic olefin polymer,COP)、環状オレフィン共重合体(cyclic olefin copolymer,COC)、ポリアクリレート(polyacrylate,PAC)、ポリカーボネート(polycarbonate、PC)、ポリエチレン(polyethylene,PE)、ポリメチルメタクリレート(polymethylmethacrylate,PMMA)、ポリエーテルエーテルケトン(polyetheretherketon,PEEK)、ポリエチレンナフタレート(polyethylenenaphthalate,PEN)、ポリエーテルイミド(polyetherimide,PEI)、ポリイミド(polyimide,PI)、フッ素系樹脂、およびトリアセチルセルロース(triacetylcellulose,TAC)からなる群より選ばれる1種以上を含む、請求項1から9のいずれか一項に記載のディスプレイパネル用視認性改善フィルム。
【請求項11】
ディスプレイパネルおよび請求項1から10のいずれか一項に記載のディスプレイパネル用視認性改善フィルムを含む、ディスプレイ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願との相互引用]
本出願は、2017年11月28日付韓国特許出願第10-2017-0160636号に基づいた優先権の利益を主張し、当該韓国特許出願の文献に開示されたすべての内容は本明細書の一部として含まれている。
【0002】
本発明は、ディスプレイパネル用視認性改善フィルムおよびそれを含むディスプレイ装置に関する。
【0003】
より詳細には、特定の大きさおよび形態を有する形態の金属コーティング無機酸化物微粒子を含み、特にレーザポインタに対する視認性を高めることができながらも、輝度とコントラスト比など優れた光学的特性を示すことができるディスプレイパネル用視認性改善フィルムと、前記ディスプレイパネル用視認性改善フィルムを含むディスプレイ装置に関する。
【背景技術】
【0004】
講義や、会議、発表などでプレゼンテーションを行う場合、一般的にはディスプレイ装置で資料画像を再生し、資料画像の上にレーザポインタを用いてスクリーンなどを指しながらプレゼンテーションをする。
【0005】
従来には、ビームプロジェクタをスクリーンや壁に投影してプレゼンテーションを行うことが多かった。しかし、プロジェクタ方式は、コントラスト比と画質が良くない短所があった。最近では、LCD、PDP、OLEDなど多様な駆動方式の大型ディスプレイパネルが多く供給され、ディスプレイ自体に直接画像を表示してプレゼンテーションを行うことが可能になった。
【0006】
しかし、ディスプレイ装置は、発光特性があり、特定角度の正反射以外にレーザ光を散乱させることができる因子がないので、レーザポインタの視認性が顕著に低下する短所がある。
【0007】
したがって、過度な追加工程なしでディスプレイ装置でレーザポインタの視認性を改善する方法に対する開発がまだ求められている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、LCD、PDF、OLEDなどのディスプレイパネルにおいて、低コストでレーザポインタに対する視認性を向上させることができながらも、優れた物理的、光学的特性を示すことができるディスプレイパネル用視認性改善フィルムおよびそれを含むディスプレイ装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、
基材;および
前記基材の少なくとも一面に備えられた光硬化性樹脂層を含み;
前記光硬化性樹脂層は、平均粒径が1~10μmである金属コーティング無機酸化物微粒子を分散した形態で含み;
下記計算式1で表される相対視認性評価値が4以上である;
ディスプレイパネル用視認性改善フィルムを提供する。
【0010】
[計算式1]
視認性評価値=B1/A1
【0011】
前記計算式1において、
A1は、JIS K 7361基準に従い測定された透過度が80~100であり、JIS K 7136基準に従い測定されたヘイズ値が20~25であるフィルムをガラススライドに接合した後、ブラックアクリル板上に置いて、法線の45゜方向でレーザ光を照射したとき正面で測定される輝度値であり、
B1は、前記ディスプレイパネル用視認性改善フィルムをガラススライドに接合した後、ブラックアクリル板上に置いて法線の45゜方向で同じレーザ光を照射したとき正面で測定される輝度値である。
【0012】
また、本発明は、ディスプレイパネルおよび上述したディスプレイパネル用視認性改善フィルムを含むディスプレイ装置を提供する。
【発明の効果】
【0013】
本発明のディスプレイパネル用視認性改善フィルムによれば、ディスプレイ装置上で低下したレーザポインタの視認性を顕著に向上させることができる。
【0014】
また、このような効果は、ディスプレイの駆動方式やパネル内部のカラーフィルタ、積層構造などに対する変更なしにディスプレイパネルの外部にフィルムの形態で適用することによって得ることができるので、過度な工程変更やコスト増加を必要としないため生産コストを節減することができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明のディスプレイパネル用視認性改善フィルムは、
基材;および
前記基材の少なくとも一面に備えられた光硬化性樹脂層を含み;
前記光硬化性樹脂層は、平均粒径が1~10μmである金属コーティング無機酸化物微粒子を分散した形態で含み;
下記計算式1で表される相対視認性評価値が4以上である。
【0016】
[計算式1]
視認性評価値=B1/A1
【0017】
前記計算式1において、
A1は、JIS K 7361基準に従い測定された透過度が80~100であり、JIS K 7136基準に従い測定されたヘイズ値が20~25であるフィルムを、ガラススライドに接合した後、ブラックアクリル板上に置いて法線の45゜方向でレーザ光を照射したとき正面で測定される輝度値であり、
B1は、前記ディスプレイパネル用視認性改善フィルムをガラススライドに接合した後、ブラックアクリル板上に置いて法線の45゜方向で同じレーザ光を照射したとき正面で測定される輝度値である。
【0018】
また、本発明のディスプレイ装置は、ディスプレイパネルおよび上述したディスプレイパネル用視認性改善フィルムを含む。
【0019】
本明細書において「上面」という用語は、フィルムがディスプレイパネルに取り付けられたときに視聴者側に向かうように配置された面を意味し、「上部」は視聴者側に向かう方向を意味する。逆に、「下面」または「下部」はフィルムがディスプレイパネルに取り付けられたとき、視聴者の反対側に向かうように配置された面または方向を意味する。
【0020】
本明細書において、単にヘイズ値、あるいは全体ヘイズ値とは、フィルムに他の処理をせず、それ自体に対して測定したヘイズ値(Hz)を意味する。このような全体ヘイズ値(Hz)は、フィルムの表面凹凸から起因するヘイズ値とフィルム内部に含まれた粒子などから起因するヘイズ値の合計によって示す。
【0021】
また、本明細書において使われる用語は、単に例示的な実施例を説明するために使われたものであり、本発明を限定する意図ではない。単数の表現は文脈上明白に異なる意味を示さない限り、複数の表現を含む。本明細書において、「含む」、「備える」または「有する」などの用語は、実施された特徴、数字、段階、構成要素またはこれらを組み合わせたものが存在することを指定しようとするものであり、一つまたはそれ以上の他の特徴や数字、段階、構成要素、またはこれらを組み合わせたものなどの存在または付加の可能性をあらかじめ排除しないものとして理解されなければならない。
【0022】
また、本発明において、各層または要素が各層または要素の「上に」または「の上に」形成されるものとして言及される場合は、各層または要素が直接各層または要素の上に形成されることを意味するか、他の層または要素が各層の間、対象体、基材上にさらに形成され得ることを意味する。
【0023】
本発明は多様な変更を加えることができ、様々な形態を有することができるため、特定の実施例を例示して下記で詳細に説明する。しかし、これは本発明を特定の開示形態に対して限定しようとするためではなく、本発明の思想および技術範囲に含まれるすべての変更、均等物ないし代替物を含むものとして理解しなければならない。
【0024】
以下、本発明のディスプレイパネル用視認性改善フィルム、およびそれを含むディスプレイ装置についてより詳細に説明する。
【0025】
本発明の一実施形態によれば、
基材;および
前記基材の少なくとも一面に備えられた光硬化性樹脂層を含み;
前記光硬化性樹脂層は、平均粒径が1~10μmである金属コーティング無機酸化物微粒子を分散した形態で含み;
下記計算式1で表される相対視認性評価値が4以上である;
ディスプレイパネル用視認性改善フィルムが提供される。
【0026】
[計算式1]
視認性評価値=B1/A1
【0027】
前記計算式1において、
A1は、JIS K 7361基準に従い測定された透過度が80~100であり、JIS K 7136基準に従い測定されたヘイズ値が20~25であるフィルムをガラススライドに接合した後、ブラックアクリル板上に置いて法線の45゜方向でレーザ光を照射したとき正面で測定される輝度値であり、
B1は、前記ディスプレイパネル用視認性改善フィルムをガラススライドに接合した後、ブラックアクリル板上に置いて法線の45゜方向で同じレーザ光を照射したとき正面で測定される輝度値である。
【0028】
本発明のコーティング組成物を用いて形成されたディスプレイパネル用視認性改善フィルムは、レーザポインタに使われる波長領域の光に対して特徴的な反射/散乱特性を示すことができ、レーザポインタの視認性向上に寄与することができる。
【0029】
このようなディスプレイパネル用視認性改善フィルムは、光硬化性官能基を含むバインダの硬化物、および前記光硬化性バインダの内部に分散した金属コーティング無機酸化物微粒子を含む。
【0030】
前記金属コーティング無機酸化物微粒子とは、一種のコア-シェル形態でガラスなど、無機酸化物微粒子を中心部に含み、それを囲んだ形態で金属コーティングがなされ、ガラス成分が外部に露出されない形態の粒子を意味する。
【0031】
一般的に使われるディスプレイパネル用フィルムとしては、ガラス、ポリエチレンテレフタレート(polyethyleneterephtalate,PET)などのポリエステル(polyester)、エチレンビニルアセテート(ethylene vinyl acetate,EVA)などのポリエチレン(polyethylene)、環状オレフィン重合体(cyclic olefin polymer,COP)、環状オレフィン共重合体(cyclic olefin copolymer,COC)、ポリアクリレート(polyacrylate,PAC)、ポリカーボネート(polycarbonate、PC)、ポリエチレン(polyethylene,PE)、ポリメチルメタクリレート(polymethylmethacrylate,PMMA)、ポリエーテルエーテルケトン(polyetheretherketon,PEEK)、ポリエチレンナフタレート(polyethylenenaphthalate,PEN)、ポリエーテルイミド(polyetherimide,PEI)、ポリイミド(polyimide,PI)、MMA(methyl methacrylate)、フッ素系樹脂またはトリアセチルセルロース(triacetylcellulose,TAC)などからなる基材が挙げられる。
【0032】
前記基材の中でも特にトリアセチルセルロース(TAC)フィルムが光学的特性に優れるため多く使われている。
【0033】
発明の一実施例によれば、前記光硬化性樹脂層は、基材の一面あるいは両面に形成されることもできる。特に、前記樹脂層が基材の上部、すなわち視聴者方向に向かうように形成される場合、前記樹脂層はハードコート層の役割を兼ねることができる。
【0034】
本発明の一実施形態によれば、基材上にコーティングおよび紫外線硬化して光硬化性樹脂層を形成し、ディスプレイパネルの少なくとも一面上に積層してディスプレイパネル用視認性改善フィルムとして使用できるコーティング組成物を使用する。
【0035】
本発明のディスプレイパネル用視認性改善フィルムを製造するためのコーティング組成物は、光硬化性官能基を含むバインダ;前記バインダ内に分散しており、1~10μmである金属コーティング無機酸化物微粒子;光重合開始剤;および溶媒などを含み得る。前記光硬化性官能基を含むバインダは、紫外線によって重合反応を起こすことができる不飽和官能基を含む化合物であれば、特に制限されないが、光硬化性官能基として(メタ)アクリレート基、アリル基、アクリロイル基、またはビニル基を含む化合物であり得る。本発明の一実施例によれば、前記光硬化性官能基を含むバインダは、多官能アクリレート系モノマー、多官能アクリレート系オリゴマー、および多官能アクリレート系弾性高分子からなる群より選ばれる1種以上であり得る。
【0036】
本発明の明細書でアクリレート系とは、アクリレートだけでなくメタクリレート、またはアクリレートやメタクリレートに置換基が導入された誘導体をすべて意味する。
【0037】
前記多官能アクリレート系モノマーは、アクリレート系官能基を2個以上で含むモノマーを意味する。より具体的には、例えばヘキサンジオールジアクリレート(HDDA)、トリプロピレングリコールジアクリレート(TPGDA)、エチレングリコールジアクリレート(EGDA)、トリメチロールプロパントリアクリレート(TMPTA)、トリメチロールプロパンエトキシトリアクリレート(TMPEOTA)、グリセリンプロポキシル化トリアクリレート(GPTA)、ペンタエリスリトールトリ(テトラ)アクリレート(PETA)、またはジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(DPHA)などが挙げられるが、本発明のコーティング組成物がこれに制限されるものではない。前記多官能アクリレート系モノマーは、互いに架橋されて保護フィルムに一定の鉛筆強度と耐摩耗性を付与する役割をする。
【0038】
前記多官能アクリレート系モノマーは単独でまたは互いに異なる種類を組み合わせて使用することができる。
【0039】
前記多官能アクリレート系オリゴマーは、アクリレート官能基を2個以上で含むオリゴマーであり、重量平均分子量が約1,000~約10,000g/mol、または約1,000~約5,000g/mol、または約1,000~約3,000g/molの範囲を有することができる。
【0040】
また、本発明の一実施例によれば、前記多官能アクリレート系オリゴマーは、ウレタン(urethane)、エチレンオキシド(ethylene oxide)、プロピレンオキシド(propylene oxide)、またはカプロラクトン(caprolactone)中の1種以上で変性されたアクリレート系オリゴマーであり得る。前記変性された多官能アクリレート系オリゴマーを使用する場合、変性によって前記多官能アクリレート系オリゴマーに柔軟性がさらに付与されて保護フィルムのカール特性および可撓性が増加することができる。
【0041】
前記多官能アクリレート系オリゴマーは、単独でまたは互いに異なる種類を組み合わせて使用することができる。
【0042】
前記多官能アクリレート系弾性高分子は、柔軟性と弾性に優れ、アクリレート官能基を2個以上含む高分子であり、重量平均分子量が約100,000~約800,000g/mol、または約150,000~約700,000g/mol、または約180,000~約650,000g/molの範囲を有することができる。
【0043】
前記多官能アクリレート系弾性高分子を含むコーティング組成物を用いて形成した保護フィルムは、機械的物性を確保しながらも高い弾性または柔軟性を確保することができ、カール(curl)またはクラック(crack)の発生も最小化することができる。
【0044】
前記多官能アクリレート系弾性高分子のまた他の例としてはウレタン系アクリレート高分子が挙げられる。前記ウレタン系アクリレート高分子はアクリルポリマーの主鎖にウレタン系アクリレートオリゴマーが側鎖として連結されている形態を有する。
【0045】
一方、本発明の一実施例によれば、前記コーティング組成物は、金属コーティング無機酸化物微粒子を含みレーザポインタに対する特徴的な光散乱特性を示すことができる。
【0046】
前記コーティング組成物が金属コーティング無機酸化物微粒子を含むとき、それを用いて硬化した光硬化性樹脂層はレーザポインタに用いられるレーザ光を効果的に反射および散乱させ、視認性を高めることができる。
【0047】
一般的に、ディスプレイパネル用フィルムなどを製造する場合、コーティング組成物などに有機粒子あるいは酸化金属などの無機微粒子を使用する場合が多いが、これは該当粒子が高い透過率を有しているからである。
【0048】
このような透過型粒子などは、主に屈折と回折によって光散乱を起こす反面、金属粒子は光を反射させる。さらに具体的には、透過型粒子の場合、光が通る経路に沿って回折と屈折による光散乱が連続して起き、これにより、光が広がり曇った光が現れるが、金属粒子の場合には光を透過させず反射によって光散乱が発生するので、光の経路に沿って散乱が連続して発生せず、光の広がり現象が発生しなくなる。
【0049】
特に、バインダとの屈折率差が大きい二酸化チタン(TiO2)粒子などの金属酸化物系無機粒子を用いる場合、高い光散乱効果を得ることができるが、粒子の高い透過率によってコントラスト比が大きく低下する短所がある。
【0050】
ディスプレイ装置のコントラスト比は、ディスプレイパネルから出る画像の明るさとフィルムによる明るさ差に起因するものであるが、透過型粒子を使用する場合、粒子によってフィルム内の明るさが増加し、結局パネルとフィルムとの間の明るさの差が小さくなるので、コントラスト比が低下する。
【0051】
したがって、本願発明の実施形態によるディスプレイパネル用フィルムは、金属コーティング無機酸化物微粒子を使用し、レーザポインタ光の視認性を向上させることができながらも、同時に高いコントラスト比を実現することができる。
【0052】
特に、金属コーティング無機酸化物微粒子の場合、金属粒子に比べて相対的に価格が安いながらも、視認性を上昇させることができる長所があり、また、内部に含まれたガラスなど、無機酸化物微粒子の形状に応じて、粒子自体の形状を簡単に調節し、フィルムのヘイズ値など他の光学的物性を阻害せず、視認性を高めることができるという長所がある。
【0053】
前記金属コーティング無機酸化物微粒子の平均粒径は、光の散乱効果を最適化する側面から1μm以上であり得、ヘイズおよびコーティングの厚さを適切にするための側面から10μm以下であり得る。さらに好ましくは約3~約7μm、または約4~約6μmの粒子であり得る。
【0054】
前記金属コーティング無機酸化物微粒子の平均粒径が過度に小さい場合、光の散乱によるレーザポインタ光に対する視認性改善効果が微々たり、前記金属コーティング無機酸化物微粒子の平均粒径が過度に大きい場合、フィルムの表面に突出を形成し、透明度、透過度など光学的物性を低下させる要因になる。
【0055】
前記金属コーティング無機酸化物微粒子の平均粒径は、前記樹脂層に含まれる全体金属コーティング無機酸化物微粒子の粒径を確認して求めることができ、前記金属コーティング無機酸化物微粒子の粒径は、前記樹脂層の断面などで確認可能である。また、前記金属コーティング無機酸化物微粒子の平均粒径は、前記樹脂層の製造時に使用される全体金属コーティング無機酸化物微粒子の粒径やこれらの平均粒径によっても確認可能である。
【0056】
前記金属コーティング無機酸化物微粒子は、1~10μmの平均粒径を有する個別微粒子の群(group)であり得、このような群(group)に含まれる個別微粒子は0.05~50μmの粒径を有することができる。より具体的には、前記群(group)に含まれる個別微粒子の95%、または99%が0.05~50μmの粒径を有することができる。
【0057】
このような条件を満足する微粒子は、より具体的な例として、アルミニウム、金、銀、マグネシウム、白金、銅、チタン、ジルコニウム、ニッケル、スズ、ケイ素、およびクロムからなる群より選ばれた1種以上金属が無機酸化物コアを囲む形態で形成された粒子などが挙げられるが、本発明が必ずしもこれに制限されるものではない。
【0058】
そして、前記金属コーティング無機酸化物微粒子は、金属成分を約5~約50wt%で含む形態であり得る。
【0059】
本発明の一実施例によれば、前記光硬化性官能基を含むバインダの総重量を100重量部とする時、前記金属コーティング無機酸化物微粒子を約1~約20重量部、または約1~約10重量部で含み得る。
【0060】
前記金属コーティング無機酸化物微粒子が過度に少なく含まれると、これによる該当波長での光反射効果が微々たり、レーザポインタの視認性向上効果が充分でなく、過度に多く含まれる場合、ディスプレイ装置の色再現性および輝度が低下してコーティング組成物の他の物性が低下し得るので、このような観点から前記範囲で含まれることが好ましい。
【0061】
そして、この時、前記金属コーティング無機酸化物微粒子は、平均粒径が約1~約7μmであり、扁平率が約0.5以上、好ましくは約0.7以上、または約0.9以下の板状粒子であり得る。
【0062】
扁平率(flattening)とは、楕円率(ellipticity)にも呼ばれ、3次元回転楕円体の扁平な程度を示す量であり、長い直径をa、短い半径をbとしたとき、(a-b)/aで表される値である。球の扁平率は0であり、平面の扁平率は1である。
【0063】
扁平率が過度に小さい場合、前記金属コーティング無機酸化物微粒子の含有量に対して散乱効率が低下し、視認性を効果的に高めることができない問題が発生し得る。
【0064】
一方、このような金属コーティング無機酸化物微粒子は、単独で使用することもできるが、光硬化性樹脂層に混合されたとき、分散性を高めるための側面から、分散液にあらかじめ分散している形態で使用することがさらに好ましい。
【0065】
本発明のコーティング組成物に含まれる前記光重合開始剤としては、1-ヒドロキシ-シクロヘキシル-フェニルケトン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニル-1-プロパノン、2-ヒドロキシ-1-[4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル]-2-メチル-1-プロパノン、メチルベンゾイルホルマート、α,α-ジメトキシ-α-フェニルアセトフェノン、2-ベンゾイル-2-(ジメチルアミノ)-1-[4-(4-モルホリニル)フェニル]-1-ブタノン、2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-(4-モルホリニル)-1-プロパノンジフェニル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-ホスフィンオキシド、またはビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルホスフィンオキシドなどが挙げられるが、これに制限されない。また、現在の市販されている商品としは、Irgacure 184、Irgacure 500、Irgacure 651、Irgacure 369、Irgacure 907、Darocur 1173、Darocur MBF、Irgacure 819、Darocur TPO、Irgacure 907、Esacure KIP 100Fなどが挙げられる。これら光重合開始剤は単独でまたは互いに異なる2種以上を混合して使用することができる。
【0066】
本発明の一実施例によれば、前記光重合開始剤の含有量は、特に制限されないが、全体コーティング組成物の物性を阻害せず、効果的な光重合を達成するために前記光硬化性官能基を含むバインダの総重量を100重量部とするとき、前記光重合開始剤を約0.1~約10重量部で含み得る。
【0067】
本発明のコーティング組成物に含まれる前記有機溶媒としては、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ブタノールなどのアルコール系溶媒、2-メトキシエタノール、2-エトキシエタノール、1-メトキシ-2-プロパノールなどのアルコキシアルコール系溶媒、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルプロピルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン系溶剤、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチルグリコールモノエチルエーテル、ジエチルグリコールモノプロピルエーテル、ジエチルグリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコール-2-エチルヘキシルエーテルなどのエーテル系溶媒、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族溶媒などを単独でまたは混合して使用することができる。
【0068】
本発明の一実施例によれば、前記有機溶媒の含有量は、コーティング組成物の物性を低下させない範囲内で多様に調節できるので、特に制限しないが、前記光硬化性官能基を含むバインダ100重量部に対して約50~約200重量部、好ましくは約100~約200重量部で含み得る。前記有機溶媒が前記範囲にあるとき適切な流動性および塗布性を有することができる。
【0069】
一方、本発明のコーティング組成物は、上述した成分の他にも界面活性剤、酸化防止剤、UV安定剤、レベリング剤、防汚剤など本発明が属する技術分野で通常使用される添加剤をさらに含み得る。また、その含有量は本発明のコーティング組成物の物性を低下させない範囲内で多様に調節できるので、特に制限しないが、例えば全体コーティング組成物100重量部に対して約0.1~約10重量部で含まれ得る。
【0070】
本発明の一実施例によれば、前記コーティング組成物を用いて形成した光硬化性樹脂層は、乾燥および硬化後に約2~20μmの厚さを有し得、前記のような厚さ範囲内で適切な光学物性および物理的特性を示すことができる。
【0071】
前記のような本発明のディスプレイパネル用視認性改善フィルムは、透明プラスチック基材にコーティング組成物を塗布して光硬化させて形成することができる。
【0072】
コーティング組成物およびそれを構成する各成分に対する具体的な説明および例示は上述したとおりである。
【0073】
前記コーティング組成物を塗布する方法は、本技術が属する技術分野で用いられる方法であれば特に制限されず、例えばバーコーティング方式、ナイフコーティング方式、ロールコーティング方式、ブレードコーティング方式、ダイコーティング方式、マイクログラビアコーティング方式、コンマコーティング方式、スロットダイコーティング方式、リップコーティング方式、またはソリューションキャスティング方式などを用いることができる。
【0074】
次に、塗布されたコーティング組成物に紫外線を照射して光硬化反応を行うことによって保護フィルムを形成することができる。前記紫外線を照射する前にコーティング組成物の塗布面を平坦化し、コーティング組成物に含まれた溶媒を揮発させるために乾燥する過程をさらに行い得る。
【0075】
前記紫外線の照射量は、例えば約20~約600mJ/cm2であり得る。紫外線照射の光源としては本技術が属する技術分野で用いられるものであれば特に制限されず、例えば高圧水銀ランプ、メタルハライドランプ、ブラックライト(black light)蛍光ランプなどを用いることができる。
【0076】
前記本発明のディスプレイパネル用視認性改善フィルムは、前述したように特定形状の金属コーティング無機酸化物微粒子を含み、液晶ディスプレイでレーザポインタによって入射されるレーザ光を効果的に反射および散乱させることができ、レーザポインタの視認性を高めることができながらも、輝度とコントラスト比が高く、優れた画質の画像を実現することができるディスプレイ装置を提供することができる。
【0077】
具体的には、前記ディスプレイパネル用視認性改善フィルムは、下記計算式1で表される相対視認性評価値が4以上である。
【0078】
[計算式1]
視認性評価値=B1/A1
【0079】
前記計算式1において、
A1は、JIS K 7361基準に従い測定された透過度が80~100であり、JIS K 7136基準に従い測定されたヘイズ値が20~25であるフィルム、より一層好ましくは透過度が90~95であり、ヘイズ値が22~25であるフィルム、最も好ましくは透過度が約90であり、ヘイズ値が約22であるフィルムをガラススライドに接合した後、ブラックアクリル板上に置いて、法線の45゜方向でレーザ光を照射したとき正面で測定される輝度値であり、
B1は、前記ディスプレイパネル用視認性改善フィルムをガラススライドに接合した後、ブラックアクリル板上に置いて、法線の45゜方向で同じレーザ光を照射したとき正面で測定される輝度値である。
【0080】
上記の通りに、本発明のディスプレイパネル用視認性改善フィルムは、一般的なUV硬化型コーティング層を用いる場合と比較したとき、金属コーティング無機酸化物微粒子による散乱/反射光で、一般的な光硬化性コーティング層に対してレーザポインタ光散乱による輝度が約50%以上、好ましくは約60%以上上昇する効果を実現することができ、これにより、レーザポインタの視認性を顕著に向上させることができる。
【0081】
また、前記ディスプレイパネル用視認性改善フィルムは、下記計算式2で表される輝度比値が約80%以上、好ましくは約85~約95%であり、優れた光学的特性を有することもできる。
【0082】
[計算式2]
輝度比=(B2/A2)×100
【0083】
前記計算式2において、
A2は、JIS K 7361基準に従い測定された透過度が80~100であり、JIS K 7136基準に従い測定されたヘイズ値が20~25であるフィルム、より一層好ましくは透過度が90~95であり、ヘイズ値が22~25であるフィルム、最も好ましくは透過度が約90であり、ヘイズ値が約22であるフィルムをガラススライドに接合した後、バックライト面に置いたとき、正面で測定される輝度値であり、
B2は、前記ディスプレイパネル用視認性改善フィルムをガラススライドに接合した後、バックライト面に置いたとき、正面で測定される輝度値である。
【0084】
また、前記ディスプレイパネル用視認性改善フィルムは、下記計算式3で表される白濁度比値が10以下、好ましくは約5以下であることであり得る。
【0085】
[計算式3]
白濁度比=B3/A3
【0086】
前記計算式3において、
A3は、JIS K 7361基準に従い測定された透過度が80~100であり、JIS K 7136基準に従い測定されたヘイズ値が20~25であるフィルム、より一層好ましくは透過度が90~95であり、ヘイズ値が22~25であるフィルム、最も好ましくは透過度が約90であり、ヘイズ値が約22であるフィルムをガラススライドに接合した後、ブラックアクリル板上に置いて9lxの条件に置いたとき、正面7cmの高さで測定された輝度値(cd/m2)であり、
B3は、前記ディスプレイパネル用視認性改善フィルムをガラススライドに接合した後、ブラックアクリル板上に置いて、9lxの条件に置いたとき、正面7cmの高さで測定された輝度値(cd/m2)である。
【0087】
そして、前記ディスプレイパネル用視認性改善フィルムは、JIS K 7361に従い測定された透過度値(Tt)が約80%以上、好ましくは約80~90%で、高い光透過度を示すものであり得る。
【0088】
また、前記ディスプレイパネル用視認性改善フィルムは、JIS K 7136によって測定されたヘイズ値が、約15%以下、または約1~約11%であり得る。
【0089】
光学フィルムなどにおいて、フィルムの内部に含まれる導入粒子に応じて透過率およびヘイズ特性が変化するが、一般的には類似の光学特徴を有する光散乱粒子が多く含まれるほど透過度が低くなり、ヘイズが増加する傾向を示す。
【0090】
しかし、使用する粒子の種類によっては透過度とヘイズの特徴的な関係を有することができる。特に金属コーティング無機酸化物微粒子は、樹脂層に含まれたとき、上述したような反射特性により、光に対する透過率を低くしながらも、一般的に使用される有機微粒子、または無機酸化物微粒子に比べて低いヘイズ値を示し得るため、特に、透過型光散乱粒子を使用する場合と比較したとき、同一の透過率値を示しても相対的に低いヘイズ値を有し得る特徴がある。
【0091】
特に、光透過率値は、粒子含有量に応じて変化するが、透過率が過度に高い場合、光を散乱または反射させるための粒子の量が絶対的に不足し、適切な視認性を実現できない問題が発生し得、透過率が過度に低い場合、視認性は良いが、コントラスト比および輝度低下の問題が発生してディスプレイに実現しようする画像の画質が低下する問題が発生し得る。
【0092】
したがって、上述した透過率(Tt)の範囲および、金属コーティング無機酸化物微粒子を使用することに起因する特徴的なヘイズ値を限定し、レーザポインタの使用に対して優れた視認性を有しながらも、同時に優れたコントラスト比を実現することができる。
【0093】
本発明のディスプレイパネル用視認性改善フィルムにおいて、前記樹脂層が形成される基材は、通常ディスプレイパネル用に使用されるガラス、または透明性プラスチック樹脂を使用することができる。より具体的に本発明の一実施例によれば、ポリエチレンテレフタレート(polyethyleneterephtalate,PET)などのポリエステル(polyester)、エチレンビニルアセテート(ethylene vinyl acetate,EVA)などのポリエチレン(polyethylene)、環状オレフィン重合体(cyclic olefin polymer,COP)、環状オレフィン共重合体(cyclic olefin copolymer,COC)、ポリアクリレート(polyacrylate,PAC)、ポリカーボネート(polycarbonate、PC)、ポリエチレン(polyethylene,PE)、ポリメチルメタクリレート(polymethylmethacrylate,PMMA)、ポリエーテルエーテルケトン(polyetheretherketon,PEEK)、ポリエチレンナフタレート(polyethylenenaphthalate,PEN)、ポリエーテルイミド(polyetherimide,PEI)、ポリイミド(polyimide,PI)、MMA(methyl methacrylate)、フッ素系樹脂またはトリアセチルセルロース(triacetylcellulose,TAC)などが挙げられる。
【0094】
好ましくは、前記基材はトリアセチルセルロース(TAC)を含むフィルムであり得る。
【0095】
前記基材の厚さは特に制限されないが、フィルムの軽度および他の物性を満足させる範囲として、約20~約100μm、または約20~約60μmの厚さを有する基材を用いることができる。
【0096】
本発明のディスプレイパネル用視認性改善フィルムは、500g荷重での鉛筆軽度がHB以上、または1H以上、または2H以上であり得る。
【0097】
また、摩擦試験機にスチールウール(steel wool)#0を取り付けた後200gの荷重、または300g荷重、または400g荷重で10回往復させる場合にスクラッチが発生しない耐摩耗性を示すことができる。
【0098】
発明の一実施例によれば、前記ディスプレイパネル用視認性改善フィルムは、基材;前記基材の上部に備えられる樹脂層;および前記樹脂層の上部に形成される反射防止層および防眩性層のうちいずれか一つ以上の機能性コーティング層をさらに含む形態であり得る。
【0099】
反射防止層は、従来のディスプレイパネル用フィルムにおける反射防止効果に加え、レーザポインタの使用時、正反射を防止することによってレーザポインタ光が正反射し、画像に向かう観察者の目に直接入射されることを効果的に防止することができる。このような反射防止層は、従来のディスプレイ装置用フィルム、あるいは偏光板用光学フィルムなどで使われていた一般的な反射防止層、具体的には、例えば屈折率が異なる多数の層を形成させて光の干渉を用いる反射防止層や反射防止コーティング(Anti reflection,AR)などを特に制限なしで用いることができる。
【0100】
また、前記防眩性層は、表面の凹凸で、レーザポインタを使用するとき、レーザポインタ光を乱反射させることによって、同様に画像に向かう観察者の目に直接正反射光が入射されるのを効果的に防止することができる。このような防眩性層は、樹脂に無機微粒子などのフィラーを分散させて表面に凹凸を付与する方法(Anti-glare,AG)などを特別な制限なしで使うことができる。
【0101】
上述した反射防止層および防眩性層などを備える場合、このような機能性コーティング層は、フィルムの最上部に位置することが好ましい。
【0102】
一方、本発明の他の一実施形態によれば、ディスプレイパネルおよび上述したディスプレイパネル用視認性改善フィルムを含むディスプレイ装置が提供される。
【0103】
この時、前記ディスプレイパネルは、駆動方式や構造などに特に制限されず、具体的には、LCDパネル、PDPパネル、あるいはOLEDパネルにもすべて適用されることができる。
【0104】
前記ディスプレイパネル用視認性改善フィルムとディスプレイパネルは、別途の接着剤などを使用してラミネーションすることにより接着させる。使用可能な接着剤としては当該技術分野に知られているものであれば特に制限されない。例えば、水系接着剤、一液型または二液型のポリビニルアルコール(PVA)系接着剤、ポリウレタン系接着剤、エポキシ系接着剤、スチレンブタジエンゴム系(SBR系)接着剤、またはホットメルト型接着剤などがあるが、本発明がこれらの例に限定されるものではない。
【0105】
また、前記樹脂層が粘着層の役割を兼ねることもできることは、上述した通りであり、樹脂層が粘着層の役割を兼ねない場合には、前記樹脂層が形成されていない基材面がディスプレイパネル側に付着するようにし、前記樹脂層は外側に位置するように積層し、レーザポインタが入射される側を直接対面する構造であることが好ましい。
【0106】
以下、発明の具体的な実施例により、発明の作用および効果をより詳細に説明する。ただし、このような実施例は発明の例示として提示されたものに過ぎず、発明の権利範囲はこれによって定められない。
【0107】
<実施例>
光硬化性官能基を有するバインダ成分として、
ペンタエリスリトールトリ(テトラ)アクリレート(以下、PETA);
6官能脂肪族ウレタンアクリレートオリゴマーであるEBECRYL 1290(Allnex社)(以下、6UA);
光重合開始剤としてIrgacure 184(以下開始剤);
添加剤としてT270(製造メーカー:TEGO、ポリエーテルシロキサン共重合体)(以下添加剤);
有機溶媒として2-BuOHとメチルエチルケトン(以下、MEK)を混合し、下記表1の組成比に従いコーティング組成物を製造した。
【0108】
実施例において、金属コーティング無機酸化物微粒子としては、Potters Industries Inc社のthin glass flake silver粒子であるSG05TF40(silver含有量:40wt%、平均粒径:5μm、比重(specific gravity):3.5g/cc)製品を使用した。(以下、S-G、固形分10wt%であるトルエン分散液として使用)
【0109】
比較例1~3の場合、Ames Advanced Materials社の銀粒子であるSFTP-0010(平均粒径:0.7μm、扁平率:0.5以下)製品を超音波処理して使用した。(以下、S、固形分10w%であるトルエン分散液として使用)
【0110】
比較例4~6の場合、Chemours社のチタニア粒子であるTS-6200(平均粒径:0.39μm)を使用した。(以下、T、固形分6.3w%であるブチルセロソルブ分散液として使用)
【0111】
比較例8および9の場合、金属コーティング無機酸化物微粒子として、Potters Industries Inc社のthin glass flake silver粒子であるSG05TF40(silver含有量:40wt%、平均粒径:5μm、比重(specific gravity):3.5g/cc)製品を使用した。(以下、S-G、固形分10w%であるトルエン分散液として使用)
【0112】
バー(bar)を用いて基材であるTAC(厚さ:80μm)上にコートし、90℃で2分30秒間乾燥した後、水銀ランプで硬化させて(約200mj/cm2)、平均乾燥厚さが約4~約5μmであるディスプレイパネル用視認性改善フィルムを製造した。
【0113】
比較例7では、JIS K 7361基準に従い測定されたTt値が約90であり、JIS K 7136基準に従い測定されたヘイズ値が約22であるLG ChemのA25フィルムを準備した。
【0114】
【0115】
Tt値の測定:
前記実施例および比較例で製造したディスプレイパネル用視認性改善フィルムに対して、Murakami社のHM-150 haze meterを用いてJIS K 7361基準に従い透過度(Tt)値を測定した。
【0116】
ヘイズ値の測定:
Murakami社のHM-150 haze meterを用いてJIS K 7136基準に従い前記実施例および比較例で製造したディスプレイパネル用視認性改善フィルムのヘイズ値を測定した。
【0117】
白濁度比の測定:
前記比較例7のディスプレイパネル用視認性改善フィルムを、粘着フィルムを用いてガラススライドに接合し、ブラックアクリル板上に置いて9lxの条件に置いたとき、正面7cm高さで輝度値を測定し、(A3)
実施例および比較例のディスプレイパネル用視認性改善フィルムに対して、同様の方法によってガラススライドに接合し、同様の条件で測定した輝度値を求めた後、(B3)
各実施例および比較例で測定された輝度値をマッチングし、白濁度比を計算した。(測定装備:Konica Minolta社、CA-210)
【0118】
輝度比の測定:
前記比較例7のディスプレイパネル用視認性改善フィルムを粘着フィルムを用いてガラススライドに接合し、電源が入ったLCDパネルの上面に置いて正面5.5cm高さで測定した輝度値を求め、(A2)
実施例および比較例のディスプレイパネル用視認性改善フィルムに対して、同様の方法によってガラススライドに接合し、同様の条件で測定した輝度値を求めた後、(B2)
各実施例および比較例で測定された輝度値をマッチングし、輝度比を計算した。(測定装備:Konica Minolta社、CA-210,LCDパネル:4.7インチ、Gray scale 255,297.2cd/m2)
【0119】
測定は、3.5lx以下の暗室で行われた。
【0120】
レーザポインタの視認性評価:
前記比較例7のディスプレイパネル用視認性改善フィルムを粘着フィルムを用いてガラススライドに接合し、ブラックアクリル板上に置いて法線の45゜方向で535nmレーザを照射したとき、正面で測定した輝度値を求め、(A1)
実施例および比較例のディスプレイパネル用視認性改善フィルムに対して、同様の方法によってガラススライドに接合し、同様の条件で測定した輝度値を求めた後、(B1)
各実施例および比較例で測定された輝度値をマッチングし、視認性評価値を計算した。(測定装備:Konica Minolta社、CA-210,レーザポインタ:3M社、LP-7000)
【0121】
測定は、3.5lx以下の暗室で行われた。
【0122】
前記測定値を下記表2に整理した。
【0123】
【0124】
前記表を参照すると、本発明の一実施例によるディスプレイパネル用視認性改善フィルムは、金属コーティング無機酸化物微粒子を一定範囲で使用し、フィルムのヘイズ値が相対的に低いながらも、透過度値が非常に高く、また、比較例フィルムなどに比べて白濁度値が相対的に低いながらも輝度比値が高く、全体的に光学的物性が非常に優れながらも、レーザポインタ光に対する選択的な視認性を向上させ得ることを明確に確認することができる。
【0125】
一方、比較例の場合、レーザポインタ光に対する選択的な視認性を向上させる効果が充分でない場合が多く、特に、比較例8および9の場合、本願の実施例で使用したものと同じ種類の粒子を使用したが、視認性向上効果が本願の実施例には至らないことが分かる。
【0126】
一方、その他に他の比較例の場合、レーザポインタ光に対する選択的な視認性が良くない問題があるが、このような視認性を向上させるために各成分の含有量を調節する場合、透過度値が大きく低下したり、ヘイズ値が大きく増加するなど、他の光学物性において損する部分がかえってさらに多くなる。したがって、本願の実施例のように、レーザポインタ光に対する選択的な視認性、透過度、ヘイズ、白濁度、輝度比などの物性を同時に向上させることはかなり難しいという事実を明確に確認することができる。