(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-17
(45)【発行日】2022-01-14
(54)【発明の名称】チョコレート
(51)【国際特許分類】
A23G 1/00 20060101AFI20220106BHJP
A23G 1/32 20060101ALI20220106BHJP
A23D 9/00 20060101ALI20220106BHJP
【FI】
A23G1/00
A23G1/32
A23D9/00 518
(21)【出願番号】P 2017187358
(22)【出願日】2017-09-28
【審査請求日】2020-06-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000227009
【氏名又は名称】日清オイリオグループ株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】397059157
【氏名又は名称】大東カカオ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】安藤 雅崇
(72)【発明者】
【氏名】河原 達也
【審査官】田ノ上 拓自
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-132833(JP,A)
【文献】特開2013-255484(JP,A)
【文献】特開2008-228641(JP,A)
【文献】特開2012-065611(JP,A)
【文献】家政学雑誌, 2010年,第8巻, 第5号,p.197-205
【文献】家政学雑誌, 2010年,第8巻, 第6号,p.269-275
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23G 1/00-9/52
A23D 7/00-9/06
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
FSTA(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の(a)~(d)の条件を満たすチョコレート。
(a)カカオ固形分を5~30質量%含有する。
(b)ココアバターを15質量%以下含有する。
(c)乳固形分を10質量%以下含有する。
(d)下記菜種油Aを
0.5~4質量%含有する。
菜種油A:ロビボンド比色計でのY+10R値が
40~62の菜種油
【請求項2】
カカオ固形分を5~25質量%含有する請求項1に記載のチョコレート。
【請求項3】
乳固形分を5質量%以下含有する請求項1又は請求項2にチョコレート。
【請求項4】
前記菜種油Aが、菜種種子から圧搾又は圧搾抽出された菜種粗油を、脱ガム処理、脱酸処理、脱色処理した後、圧力が20トール未満の減圧下、温度が180℃以下、時間が10~120分間の条件で脱臭処理することで得られる菜種油を含む請求項1~請求項3のいずれか1項に記載のチョコレート。
【請求項5】
下記の(a)~(c)の条件を満たすチョコレートに、下記菜種油Aを
0.5~4質量%配合することを特徴とするチョコレートの風味を向上させる方法。
(a)カカオ固形分を5~30質量%含有する。
(b)ココアバターを15質量%以下含有する。
(c)乳固形分を10質量%以下含有する。
菜種油A:ロビボンド比色計でのY+10R値が
40~62の菜種油
【請求項6】
前記菜種油Aが、菜種種子から圧搾又は圧搾抽出された菜種粗油を、脱ガム処理、脱酸処理、脱色処理した後、圧力が20トール未満の減圧下、温度が180℃以下、時間が10~120分間の条件で脱臭処理することで得られる菜種油を含む請求項5に記載のチョコレートの風味を向上させる方法。
【請求項7】
下記菜種油Aからなる下記の(a)~(c)の条件を満たすチョコレートの風味向上剤。
(a)カカオ固形分を5~30質量%含有する。
(b)ココアバターを15質量%以下含有する。
(c)乳固形分を10質量%以下含有する。
菜種油A:ロビボンド比色計でのY+10R値が
40~62の菜種油
【請求項8】
前記菜種油Aが、菜種種子から圧搾又は圧搾抽出された菜種粗油を、脱ガム処理、脱酸処理、脱色処理した後、圧力が20トール未満の減圧下、温度が180℃以下、時間が10~120分間の条件で脱臭処理することで得られる菜種油を含む請求項7に記載のチョコレートの風味向上剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、風味が向上したチョコレートに関する発明である。
【背景技術】
【0002】
チョコレートは、カカオマス、ココアパウダー等のカカオ成分、油脂、砂糖等の糖類、粉乳等の乳製品、香料、乳化剤等が原料に使用されて製造される。チョコレートは、豊かな風味が楽しまれる嗜好品である。そのため、チョコレートは、風味が非常に重要視される食品である。
【0003】
チョコレートの配合によっては、豊かな風味を有するチョコレートが、得られないことがあった。そのため、チョコレートの風味を向上させる方法が求められていた。チョコレートの風味を向上させる方法としては、例えば、特許文献1~3の方法が提案されている。
【0004】
しかしながら、特許文献1~3の方法は、チョコレートにあまり使用されない特殊な成分が配合されている。そのため、特許文献1~3の方法では、配合されている特殊な成分の入手が困難であった。仮に、特許文献1~3の方法で配合されている特殊な成分が入手できても、高価であった。そのため、特許文献1~3の方法では、価格の面で問題があった。
【0005】
以上のような背景から、より簡便な方法でのチョコレートの風味を向上させる方法が求められていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】国際公開第2015/050156号
【文献】特開2008-131865号公報
【文献】特開2013-252114号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の課題は、風味が向上したチョコレートを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討を行った結果、特定の配合のチョコレートに、特定の油脂を使用することにより、本課題が解決できることが見いだされた。これにより、本発明が完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明の第1の発明は、下記の(a)~(d)の条件を満たすチョコレートである。
(a)カカオ固形分を5~30質量%含有する。
(b)ココアバターを15質量%以下含有する。
(c)乳固形分を10質量%以下含有する。
(d)下記菜種油Aを0.5~4質量%含有する。
菜種油A:ロビボンド比色計でのY+10R値が40~62の菜種油
本発明の第2の発明は、カカオ固形分を5~25質量%含有する第1の発明に記載のチョコレートである。
本発明の第3の発明は、乳固形分を5質量%以下含有する第1の発明又は第2の発明にチョコレートである。
本発明の第4の発明は、前記菜種油Aが、菜種種子から圧搾又は圧搾抽出された菜種粗油を、脱ガム処理、脱酸処理、脱色処理した後、圧力が20トール未満の減圧下、温度が180℃以下、時間が10~120分間の条件で脱臭処理することで得られる菜種油を含む第1の発明~第3の発明のいずれか1つの発明に記載のチョコレートである。
本発明の第5の発明は、下記の(a)~(c)の条件を満たすチョコレートに、下記菜種油Aを0.5~4質量%配合することを特徴とするチョコレートの風味を向上させる方法である。
(a)カカオ固形分を5~30質量%含有する。
(b)ココアバターを15質量%以下含有する。
(c)乳固形分を10質量%以下含有する。
菜種油A:ロビボンド比色計でのY+10R値が40~62の菜種油
本発明の第6の発明は、前記菜種油Aが、菜種種子から圧搾又は圧搾抽出された菜種粗油を、脱ガム処理、脱酸処理、脱色処理した後、圧力が20トール未満の減圧下、温度が180℃以下、時間が10~120分間の条件で脱臭処理することで得られる菜種油を含む第5の発明に記載のチョコレートの風味を向上させる方法である。
本発明の第7の発明は、下記菜種油Aからなる下記の(a)~(c)の条件を満たすチョコレートの風味向上剤である。
(a)カカオ固形分を5~30質量%含有する。
(b)ココアバターを15質量%以下含有する。
(c)乳固形分を10質量%以下含有する。
菜種油A:ロビボンド比色計でのY+10R値が40~62の菜種油
本発明の第8の発明は、前記菜種油Aが、菜種種子から圧搾又は圧搾抽出された菜種粗油を、脱ガム処理、脱酸処理、脱色処理した後、圧力が20トール未満の減圧下、温度が180℃以下、時間が10~120分間の条件で脱臭処理することで得られる菜種油を含む第7の発明に記載のチョコレートの風味向上剤である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によると、風味が向上したチョコレートを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の実施の形態のチョコレートは、下記の(a)~(d)の条件を満たす。
(a)カカオ固形分を5~30質量%含有する。
(b)ココアバターを15質量%以下含有する。
(c)乳固形分を10質量%以下含有する。
(d)下記菜種油Aを0.3~8質量%含有する。
菜種油A:ロビボンド比色計でのY+10R値が40以上の菜種油
【0012】
本発明の実施の形態のチョコレートは、カカオ固形分を5~30質量%含有し、好ましくは5~25質量%含有し、より好ましくは8~20質量%含有する(条件(a))。
なお、本発明でカカオ固形分は、カカオ成分から油脂、水を除いた固形分である。また、本発明でカカオ成分は、カカオ豆から得られるカカオ豆由来の成分のことである。カカオ成分の具体例は、カカオマス、カカオニブ、ココアパウダー、ココアケーキ等である。従って、本発明の実施の形態のチョコレートのカカオ固形分の含有量は、カカオマス、カカオニブ、ココアパウダー、ココアケーキ等の配合量によって調整することができる。
【0013】
本発明の実施の形態のチョコレートは、ココアバターを15質量%以下含有し、好ましくは10質量%以下含有し、より好ましくは0~5質量%含有する(条件(b))。
なお、ココアバターは、カカオ豆に含まれる油脂である。ココアバターは、カカオ脂とも呼ばれる。カカオ豆から得られるカカオマスには、通常約55質量%のココアバターが含まれる。同じくカカオ豆から得られるココアパウダーには、通常約11質量%のココアバターが含まれる。従って、本発明の実施の形態のチョコレートのココアバターの含有量は、カカオマス、ココアパウダー、ココアバター等の配合量によって調整することができる。
【0014】
本発明の実施の形態のチョコレートは、乳固形分を10質量%以下含有し、好ましくは5質量%以下含有し、より好ましくは0~5質量%含有する(条件(c))。
なお、本発明で乳固形分は、乳成分から油脂、水を除いた固形分である。また、本発明で乳成分は、乳から得られる乳由来の成分のことである。乳成分の具体例は、全脂粉乳、脱脂粉乳等である。従って、本発明の実施の形態のチョコレートの乳固形分含有量は、全脂粉乳、脱脂粉乳等の配合量によって調整することができる。
【0015】
本発明の実施の形態のチョコレートは、下記菜種油Aを0.3~8質量%含有し、好ましくは0.4~4質量%含有し、より好ましくは0.5~3質量%含有し、さらに好ましくは0.8~1.5質量%含有する(条件(d))。
【0016】
本発明の実施の形態のチョコレートの製造に使用される前記菜種油Aは、ロビボンド比色計でのY+10R値が40以上であり、好ましくは50~80であり、より好ましくは55~70である。
なお、本発明でロビボンド比色計でのY+10R値は、1インチセル(25.4ミリセル)を使用して測定したY値と、同じく1インチセル(25.4ミリセル)を使用して測定したR値とから、Y値にR値の10倍の数を加えることによって導き出される値である。ロビボンド比色計でのY値及びR値の測定は、日本油化学協会、基準油脂分析法2.2.1.1-1996のロビボンド法に準拠して行える。
【0017】
本発明の実施の形態のチョコレートの製造に使用される前記菜種油Aは、ロビボンド比色計でのY+10R値が前記範囲であれば、製造条件は制限されない。前記菜種油Aの製造には、好ましくは菜種種子から圧搾又は圧搾抽出された菜種粗油が使用される。前記菜種種子は、好ましくは未焙煎の菜種種子である。
【0018】
本発明の実施の形態のチョコレートの製造に使用される前記菜種油Aは、前記菜種粗油が、好ましくは圧力が20トール未満の減圧下、温度が180℃以下、時間が10~120分間の条件で脱臭処理されることで製造され、より好ましくは圧力が2~10トールの減圧下、温度が100~170℃、時間が20~90分間の条件で脱臭処理されることで製造され、さらに好ましくは2~10トールの減圧下、温度が120~160℃、時間が30~90分間の条件で脱臭処理されることで製造される。前記脱臭処理は、好ましくは水蒸気蒸留が行われる。
【0019】
本発明の実施の形態のチョコレートの製造に使用される前記菜種油Aは、前記菜種粗油が脱臭処理以外に、好ましくは脱ガム処理されることで製造され、より好ましくは脱ガム処理、脱酸処理、脱色処理されることで製造される。
【0020】
本発明の実施の形態のチョコレートの製造に使用される前記菜種油Aを製造する時の脱ガム処理の条件は、特に制限されない。本発明の実施の形態のチョコレートの製造に使用される前記菜種油Aを製造する時の脱ガム処理は、通常の食用油脂の脱ガム処理の条件で行うことができる。本発明の実施の形態のチョコレートの製造に使用される前記菜種油Aを製造する時の脱ガム処理は、好ましくは温度が70~80℃、水の添加量が菜種粗油に対して1~5質量%で行われる。前記脱ガム処理は、必要に応じてクエン酸又はリン酸の添加、水洗い、乾燥後の再ろ過を行うことができる。前記脱ガム処理によって発生するリン脂質は、脱ガム処理された油脂が遠心分離機で遠心分離させることで除去される。
【0021】
本発明の実施の形態のチョコレートの製造に使用される前記菜種油Aを製造する時の脱酸処理の条件は、特に制限されない。本発明の実施の形態のチョコレートの製造に使用される前記菜種油Aを製造する時の脱酸処理は、通常の食用油脂の脱酸処理の条件で行うことができる。本発明の実施の形態のチョコレートの製造に使用される前記菜種油Aを製造する時の脱酸処理は、脱ガム処理された油脂に、アルカリ水溶液を添加することで行われる。本発明の実施の形態のチョコレートの製造に使用される前記菜種油Aを製造する時の脱酸処理は、好ましくは温度が80~90℃、アルカリ水溶液の添加量が脱ガム処理された油脂の遊離脂肪酸に対する中和当量で5~40質量%過剰量で行われる。前記アルカリ水溶液は、例えば、水酸化ナトリウム水溶液、水酸化カリウム水溶液等である。前記脱酸処理によって発生する沈殿物は、脱酸処理された油脂が遠心分離機で遠心分離させることで除去される。前記脱酸処理の後には、必要に応じて、油脂中に含まれる石鹸(アルカリ成分)を除去するために、水又は湯での洗浄を行うことができる。前記水又は湯での洗浄後に、油脂を乾燥させることができる。
【0022】
本発明の実施の形態のチョコレートの製造に使用される前記菜種油Aを製造する時の脱色処理の条件は、特に制限されない。本発明の実施の形態のチョコレートの製造に使用される前記菜種油Aを製造する時の脱色処理は、通常の食用油脂の脱色処理の条件で行うことができる。本発明の実施の形態のチョコレートの製造に使用される前記菜種油Aを製造する時の脱色処理は、好ましくは脱酸処理された油脂に吸着剤が添加されることにより行われる。前記吸着剤は、好ましくは活性白土、活性炭であり、より好ましくは活性白土である。本発明の実施の形態のチョコレートの製造に使用される前記菜種油Aを製造する時の脱色処理は、好ましくは吸着剤の添加量が油脂に対して0.05~0.4質量%、圧力が減圧下、温度が90~120℃、時間が10~40分間で行われる。前記脱色処理後は、脱色処理された油脂がフィルタープレス等でろ過されることで、吸着剤が除去される。
【0023】
本発明の実施の形態のチョコレートが、上記の(a)~(d)の条件を満たすと、風味が向上したチョコレートが得られる。
【0024】
本発明の実施の形態のチョコレートは、上記の(a)~(d)の条件を満たせば、「チョコレート類の表示に関する公正競争規約」(全国チョコレート業公正取引協議会)乃至法規上で規定されたチョコレートに限定されない。また、本発明の実施の形態のチョコレートは、上記の(a)~(d)の条件を満たせば、その他の原料等は限定されない。
【0025】
本発明でチョコレートとは、チョコレート製造の工程(混合工程、微粒化工程、精練工程、成形工程、冷却工程等の全部乃至一部)を経て製造され、油脂が連続相をなし、実質的に水を含有しない食品(好ましくは水分含有量が3質量%以下である。)である。
【0026】
本発明の実施の形態のチョコレートには、前記菜種油A以外に、通常チョコレートの製造に使用される食用油脂(パーム油、パーム分別油(パーム中融点部、パーム分別軟質油(パームオレイン、パームスーパーオレイン等)、パーム分別硬質油(パームステアリン等)等)、シア脂、シア分別油、サル脂、サル分別油、イリッペ脂、パーム核油、パーム核分別油、ヤシ油、ヤシ分別油、ココアバター、乳脂、大豆油、菜種油等)を使用することもできる。本発明の実施の形態のチョコレートは、油脂を好ましくは25~70質量%含有し、より好ましくは28~65質量%含有し、更に好ましくは30~60質量%含有する。
【0027】
本発明の実施の形態のチョコレートは、好ましくは糖類を含有する。糖類は、例えば、ショ糖(砂糖、粉糖)、乳糖、ブドウ糖、果糖、麦芽糖、還元澱粉糖化物、液糖、酵素転化水飴、異性化液糖、ショ糖結合水飴、還元糖ポリデキストロース、オリゴ糖、ソルビトール、還元乳糖、トレハロース、キシロース、キシリトース、マルチトール、エリスリトール、マンニトール、ラフィノース、デキストリン等である。
本発明の実施の形態のチョコレートは、糖類を好ましくは25~70質量%含有し、より好ましくは28~60質量%含有し、更に好ましくは30~50質量%含有する。
【0028】
本発明の実施の形態のチョコレートは、その他に、チョコレートに一般的に配合される原料を使用することができる。具体的には、例えば、全脂粉乳、脱脂粉乳等の乳成分、カカオマス、カカオニブ、ココアパウダー、ココアケーキ等のカカオ成分、大豆粉、大豆蛋白、果実加工品、野菜加工品、抹茶粉末、コーヒー粉末等の各種粉末、ガム類、澱粉類、レシチン、リゾレシチン、酵素分解レシチン、ポリグリセリン縮合リシノール酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル等の乳化剤、酸化防止剤、着色料、香料等を使用することができる。
【0029】
本発明の実施の形態のチョコレートは、従来公知のチョコレートの製造方法で製造することができる。本発明の実施の形態のチョコレートは、例えば、油脂、カカオ成分、糖類、乳化剤等を原料とし、混合工程、微粒化工程(リファイニング)、精練工程(コンチング)、冷却工程等を経て製造される。本発明の実施の形態のチョコレートは、好ましくは微粒化工程を経て製造される。
【0030】
上記の(a)~(c)の条件を満たすチョコレートに、前記菜種油Aを0.3~8質量%配合することで、風味を向上させることができる。すなわち、本発明の実施の形態のチョコレートの風味を向上させる方法は、上記の(a)~(c)の条件を満たすチョコレートに、前記菜種油Aを0.3~8質量%配合することを特徴とする。
本発明の実施の形態のチョコレートの風味を向上させる方法は、上記の(a)~(c)の条件を満たすチョコレートに、前記菜種油Aを0.3~8質量%配合し、好ましくは0.4~4質量%配合し、より好ましくは0.5~3質量%配合し、さらに好ましくは0.8~1.5質量%配合する。
本発明の実施の形態のチョコレートの風味を向上させる方法に使用される上記の(a)~(c)の条件を満たすチョコレートは、前記菜種油A以外は本発明の実施の形態のチョコレートと同じである。また、本発明の実施の形態のチョコレートの風味を向上させる方法に使用される菜種油Aは、本発明の実施の形態のチョコレートの製造に使用される菜種油Aと同じである。
【0031】
また、上記の(a)~(c)の条件を満たすチョコレートに、前記菜種油Aを0.3~8質量%配合することで、風味を向上させることができる。そのことから、前記菜種油Aは、上記の(a)~(c)の条件を満たすチョコレートの風味向上剤として使用することができる。すなわち、本発明の実施の形態の上記の(a)~(c)の条件を満たすチョコレートの風味向上剤は、前記菜種油Aからなる。本発明の実施の形態の上記の(a)~(c)の条件を満たすチョコレートの風味向上剤の上記の(a)~(c)の条件を満たすチョコレートは、前記菜種油A以外は本発明の実施の形態のチョコレートと同じである。また、本発明の実施の形態の上記の(a)~(c)の条件を満たすチョコレートの風味向上剤に使用される菜種油Aは、本発明の実施の形態のチョコレートの製造に使用される菜種油Aと同じである。
【実施例】
【0032】
次に、実施例および比較例を挙げ、本発明を更に詳しく説明する。しかし、本発明はこれらに何ら制限されない。
【0033】
油脂の色度Y値及びR値の測定は、ロビボンド比色計(ティントメーター社製、TINTOMETER MODEL F)で25.4ミリセル(=1インチセル)を用いて測定した。
【0034】
(菜種油A1の製造)
未焙煎の菜種種子から圧搾抽出された菜種粗油を、常法に従って、脱ガム、脱酸処理した後、活性白土を対油0.3質量%添加して、減圧下90~110℃で20分間攪拌した後、ろ過により活性白土を除去して脱色油を得た。得られた脱色油を、5~6トールの減圧下、140℃で60分間、水蒸気蒸留による脱臭処理を行い、ロビボンド比色計におけるY+10R値が62である菜種油A1を得た。
【0035】
(菜種油a1の製造)
未焙煎の菜種種子から圧搾抽出された菜種粗油を、常法に従って、脱ガム、脱酸処理した後、活性白土を対油0.7質量%添加して、減圧下90~110℃で20分間攪拌した後、ろ過により活性白土を除去して脱色油を得た。得られた脱色油を、5~6トールの減圧下、250℃で60分間、水蒸気蒸留による脱臭処理を行い、ロビボンド比色計におけるY+10R値が0.7である菜種油a1を得た。
【0036】
〔チョコレートの製造1〕
カカオマス、ココアパウダー、全脂粉乳、脱脂粉乳、砂糖、菜種油A1、植物油脂(菜種油A1、菜種油a1、ココアバター以外の植物油脂)、乳化剤、香料を原料にして、通常のチョコレートの製造方法(混合、微粒化、精練、冷却)で、実施例1-1~1-4、比較例1-1~1-2のチョコレートを製造した。また、菜種油a1を配合する以外は実施例1-1~1-4、比較例1-1~1-2のチョコレートと同様の方法で比較例1-3のチョコレートを製造した。また、菜種油A1を配合しない以外は実施例1-1~1-4、比較例1-1~1-2のチョコレートと同様の方法で標準品1のチョコレートを製造した。実施例1-1~1-4、比較例1-1~1-3、標準品1の全てのチョコレートは、カカオ固形分の含有量が12.8質量%、ココアバターの含有量が3.2質量%、乳固形分の含有量が2.4質量%、油脂の含有量が52.8質量%、糖類含有量が31.5質量%、水分の含有量は3質量%以下であった。実施例1-1~1-4、比較例1-1~1-3、標準品1のチョコレートの菜種油A1、菜種油a1の含有量は、表1~2に示した。
【0037】
〔チョコレートの製造2〕
カカオマス、ココアパウダー、砂糖、菜種油A1、植物油脂(菜種油A1、菜種油a1、ココアバター以外の植物油脂)、乳化剤、香料を原料にして、通常のチョコレートの製造方法(混合、微粒化、精練、冷却)で、実施例2のチョコレートを製造した。また、菜種油A1を配合しない以外は実施例2のチョコレートと同様の方法で標準品2のチョコレートを製造した。実施例2及び標準品2のチョコレートは、カカオ固形分の含有量が14.9質量%、ココアバターの含有量が3.1質量%、乳固形分の含有量が0質量%、油脂の含有量が43.7質量%、糖類含有量が39.7質量%、水分の含有量は3質量%以下であった。実施例2及び標準品2のチョコレートの菜種油A1の含有量は、表2に示した。
【0038】
〔チョコレートの製造3〕
カカオマス、ココアパウダー、全脂粉乳、砂糖、菜種油A1、ココアバター、植物油脂(菜種油A1、菜種油a1以外の植物油脂)、乳化剤、香料を原料にして、通常のチョコレートの製造方法(混合、微粒化、精練、冷却)で、実施例3のチョコレートを製造した。また、菜種油A1を配合しない以外は実施例3のチョコレートと同様の方法で標準品3のチョコレートを製造した。実施例3及び標準品3のチョコレートは、カカオ固形分の含有量が11.5質量%、ココアバターの含有量が3.5質量%、乳固形分の含有量が6.9質量%、油脂の含有量が46.2質量%、糖類含有量が36.1質量%、水分の含有量は3質量%以下であった。実施例3及び標準品3のチョコレートの菜種油A1の含有量は、表2に示した。
【0039】
〔チョコレートの製造4〕
カカオマス、ココアパウダー、全脂粉乳、砂糖、菜種油A1、ココアバター、植物油脂(菜種油A1、菜種油a1、ココアバター以外の植物油脂)、乳化剤、香料を原料にして、通常のチョコレートの製造方法(混合、微粒化、精練、冷却)で、比較例4のチョコレートを製造した。また、菜種油A1を配合しない以外は比較例4のチョコレートと同様の方法で標準品4のチョコレートを製造した。比較例4及び標準品4のチョコレートは、カカオ固形分の含有量が8.1質量%、ココアバターの含有量が3.9質量%、乳固形分の含有量が13.8質量%、油脂の含有量が48.7質量%、糖類含有量が32.4質量%、水分の含有量は3質量%以下であった。比較例4及び標準品4のチョコレートの菜種油A1の含有量は、表3に示した。
【0040】
〔チョコレートの製造5〕
ココアパウダー、砂糖、菜種油A1、植物油脂(菜種油A1、菜種油a1、ココアバター以外の植物油脂)、乳化剤、香料を原料にして、通常のチョコレートの製造方法(混合、微粒化、精練、冷却)で、実施例5のチョコレートを製造した。また、菜種油A1を配合しない以外は実施例5のチョコレートと同様の方法で標準品5のチョコレートを製造した。実施例5及び標準品5のチョコレートは、カカオ固形分の含有量が26.6質量%、ココアバターの含有量が3.4質量%、乳固形分の含有量が0質量%、油脂の含有量が41.8質量%、糖類含有量が30質量%、水分の含有量は3質量%以下であった。実施例5及び標準品5のチョコレートの菜種油A1の含有量は、表3に示した。
【0041】
〔チョコレートの製造6〕
カカオマス、ココアパウダー、砂糖、菜種油A1、ココアバター、植物油脂(菜種油A1、菜種油a1、ココアバター以外の植物油脂)、乳化剤、香料を原料にして、通常のチョコレートの製造方法(混合、微粒化、精練、冷却)で、比較例6のチョコレートを製造した。また、菜種油A1を配合しない以外は比較例6のチョコレートと同様の方法で標準品6のチョコレートを製造した。比較例6及び標準品6のチョコレートは、カカオ固形分の含有量が16.2質量%、ココアバターの含有量が18.8質量%、乳固形分の含有量が0質量%、油脂の含有量が34.8質量%、糖類含有量が48質量%、水分の含有量は3質量%以下であった。比較例6及び標準品6のチョコレートの菜種油A1の含有量は、表3に示した。
【0042】
〔チョコレートの製造7〕
脱脂粉乳、砂糖、菜種油A1、ココアバター、植物油脂(菜種油A1、菜種油a1、ココアバター以外の植物油脂)、乳化剤、香料を原料にして、通常のチョコレートの製造方法(混合、微粒化、精練、冷却)で、比較例7のチョコレートを製造した。また、菜種油A1を配合しない以外は比較例7のチョコレートと同様の方法で標準品7のチョコレートを製造した。比較例7及び標準品7のチョコレートは、カカオ固形分の含有量が0質量%、ココアバターの含有量が2質量%、乳固形分の含有量が7.6質量%、油脂の含有量が50.3質量%、糖類含有量が41.9質量%、水分の含有量は3質量%以下であった。比較例7及び標準品7のチョコレートの菜種油A1の含有量は、表4に示した。
【0043】
〔風味の評価〕
チョコレートを10名の専門パネルが食し、標準品のチョコレートの風味を基準にして、下記評価基準に従って点数を付けた。実施例1-1~1-4、比較例1-1~1-3のチョコレートは標準品1のチョコレートを標準品とし、実施例2のチョコレートは標準品2のチョコレートを標準品とし、実施例3のチョコレートは標準品3のチョコレートを標準品とし、比較例4のチョコレートは標準品4のチョコレートを標準品とし、実施例5のチョコレートは標準品5のチョコレートを標準品とし、比較例6のチョコレートは標準品6のチョコレートを標準品とし、比較例7のチョコレートは標準品7のチョコレートを標準品とした。10名の専門パネルの平均点を算出し、下記評価基準に従って評価した。評価結果を表1~4に示した。評価結果は、平均点の評価が◎、○又は△の場合、風味が向上していると判断した。なお、チョコレートの風味を評価した専門パネルは、チョコレートの風味等の官能評価の訓練を定期的に受けており、チョコレートの風味等の官能評価結果に個人差が少ない。
3点:標準品と比較して、風味が非常に向上している。
2点:標準品と比較して、風味が向上している。
1点:標準品と比較して、風味が少し向上している。
0点:標準品と比較して、風味が変わらないか、悪くなっている。
<平均点>
◎:2.5点以上
○:2.0点以上2.5点未満
△:1.5点以上2.0点未満
×:1.5点未満
【0044】
【0045】
【0046】
【0047】
【0048】
表1~3から分かるように、実施例のチョコレートは、風味が向上した。
一方、表2~4から分かるように、比較例のチョコレートは、風味が向上しなかった。