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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-17
(45)【発行日】2022-01-14
(54)【発明の名称】電力系統安定化システム
(51)【国際特許分類】
   H02J 3/00 20060101AFI20220106BHJP
   H02J 3/24 20060101ALI20220106BHJP
   H02J 13/00 20060101ALI20220106BHJP
【FI】
H02J3/00 170
H02J3/24
H02J13/00 301D
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2018005980
(22)【出願日】2018-01-17
(65)【公開番号】P2019126200
(43)【公開日】2019-07-25
【審査請求日】2021-01-04
(73)【特許権者】
【識別番号】317015294
【氏名又は名称】東芝エネルギーシステムズ株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000173809
【氏名又は名称】一般財団法人電力中央研究所
(74)【代理人】
【識別番号】110001634
【氏名又は名称】特許業務法人 志賀国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】井脇 洋
(72)【発明者】
【氏名】石橋 哲
(72)【発明者】
【氏名】石原 祐二
(72)【発明者】
【氏名】芹澤 善積
(72)【発明者】
【氏名】大場 英二
【審査官】坂東 博司
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-159644(JP,A)
【文献】特開2003-319559(JP,A)
【文献】特開2016-226147(JP,A)
【文献】特開2017-005891(JP,A)
【文献】国際公開第2015/025426(WO,A1)
【文献】特開2019-092351(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0105931(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 3/00
H02J 3/24
H02J 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電力系統のシミュレーションを行い、前記電力系統の事故点と事故様相と制御対象とが関連付けられた情報を含む制御テーブルを生成する演算装置と、
前記電力系統の事故点および事故様相を検出し、検出した前記事故点および事故様相を示す起動信号を出力する起動装置と、
前記起動装置により出力された前記起動信号により示される前記事故点および事故様相が前記制御テーブルに含まれる場合、前記起動信号により示される前記事故点および事故様相と関連付けられた前記制御対象を制御する制御指令を出力する中央装置と、
前記中央装置により出力された制御指令に基づいて、前記制御対象を制御する制御装置と、
前記制御テーブルに、電力系統安定化システムにおいて起動対象として定義されていない事故点が含まれているか否かを判定する判定部、および、前記判定部により、前記制御テーブルに前記起動対象として定義されていない事故点が含まれていると判定された場合、前記電力系統安定化システムに設置された第1既設装置に、前記起動対象として定義されていない事故点の起動判定機能を追加し、前記第1既設装置を新たな起動装置として機能させる起動判定機能追加部を備える管理装置と、
を備える電力系統安定化システム。
【請求項2】
前記判定部は、前記制御テーブルに、前記電力系統安定化システムにおいて制御対象として定義されていない制御対象が含まれているか否かを判定し、
前記管理装置は、
前記判定部により、前記制御テーブルに前記制御対象として定義されていない制御対象が含まれていると判定された場合、前記電力系統安定化システムに設置された第2既設装置に、前記制御対象に対する制御出力機能を追加し、前記第2既設装置を新たな制御装置として機能させる、制御出力機能追加部をさらに備える、
請求項1に記載の電力系統安定化システム。
【請求項3】
前記判定部は、前記起動装置の検出対象である前記事故点および事故様相が、前記制御テーブルに含まれているか否かを判定し、
前記管理装置は、
前記判定部により、前記起動装置の検出対象である前記事故点および事故様相が前記制御テーブルに含まれていないと判定された場合、前記起動装置から起動判定機能を削除する起動判定機能削除部をさらに備える、
請求項1または2に記載の電力系統安定化システム。
【請求項4】
前記起動判定機能削除部は、前記起動装置の検出対象である前記事故点および事故様相が前記制御テーブルに含まれていないとの前記判定部による判定が一定期間以上継続した場合に、前記起動装置から起動判定機能を削除する、
請求項3に記載の電力系統安定化システム。
【請求項5】
前記判定部は、前記制御装置の制御対象が、前記制御テーブルに含まれているか否かを判定し、
前記管理装置は、
前記判定部により、前記制御装置の制御対象が前記制御テーブルに含まれていないと判定された場合、前記制御装置から制御出力機能を削除する制御出力機能削除部をさらに備える、
請求項1から4のいずれか一項に記載の電力系統安定化システム。
【請求項6】
前記制御出力機能削除部は、前記制御装置の制御対象が前記制御テーブルに含まれていないとの前記判定部による判定が一定期間以上継続した場合に、前記制御装置から制御出力機能を削除する、
請求項5に記載の電力系統安定化システム。
【請求項7】
前記管理装置は、
起動判定が可能となる情報を前記中央装置に中継する機能を、前記電力系統安定化システムに設置された第3既設装置に追加し、前記第3既設装置を中継装置として機能させる、中継機能追加部をさらに備える、
請求項1から6のいずれか一項に記載の電力系統安定化システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、電力系統安定化システムに関する。
【背景技術】
【0002】
電力設備の安定的な運用のため、各種設備の稼働状況を監視し、事故検知時には必要な制御処理を行う電力系統安定化システムが知られている。従来の代表的な電力系統安定化システムは、電力系統の系統情報を用いた電力系統のシミュレーションにより電力系統の不安定現象を抽出し、電力系統を安定化させるための制御対象を決定するように構成される。このような電力系統安定化システムでは、システム構築時に検出対象となる事故の内容と制御対象とが定義され、事故検出や制御対象の制御を行う装置の設置場所が予め決定される。
【0003】
一方、電源供給を行う発電機が計画外の故障や大規模災害などにより緊急停止する場合、代替の発電機などで電力需要が賄われる。また、再生可能エネルギーの導入拡大に伴い、当初想定されていない潮流が電力系統を構成する送電線に流れる場合がある。このような場合、電力系統安定化システムの構築時には想定されていない電力系統の事故で電力系統の不安定現象が発生する場合がある。このような事故による不安定現象に対応するためには、事故検出や制御対象の制御を行う装置を新たな電気所に設置する必要がある。しかしながら、装置の設置には時間がかかり、設置が完了するまでの間は不安定現象に対応できない場合がある。
【0004】
また、電力自由化に伴い、発電事業者が発電所の系統への接続を申請してから発電開始までの期間が従来よりも短くなっており、系統運用者は、電力系統の安定度の検討および電力系統安定化システムの構成の検討を短期間で行う必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2016-226147号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、検出対象である事故の態様の変化や制御対象の変更に応じた既設装置の構成変更を速やか且つ容易に行うことが可能な電力系統安定化システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
実施形態の電力系統安定化システムは、演算装置と、起動装置と、中央装置と、制御装置と、管理装置とを持つ。前記管理装置は、制御テーブルに、前記電力系統安定化システムにおいて起動対象として定義されていない事故点が含まれているか否かを判定する判定部と、前記判定部により、前記制御テーブルに前記起動対象として定義されていない事故点が含まれていると判定された場合、前記電力系統安定化システムに設置された第1既設装置に、前記起動対象として定義されていない事故点の起動判定機能を追加し、前記第1既設装置を新たな起動装置として機能させる、起動判定機能追加部とを備える。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】第1の実施形態の電力系統安定化システムの構成の一例を示す図。
図2】第1の実施形態の制御テーブルの一例を示す図。
図3】第1の実施形態のシステム管理装置の機能ブロック図。
図4】第1の実施形態のシステム管理装置おける起動判定機能追加処理の流れの一例を示すフローチャート。
図5】第1の実施形態のシステム管理装置おける制御出力機能追加処理の流れの一例を示すフローチャート。
図6】第2の実施形態のシステム管理装置の機能ブロック図。
図7】第2の実施形態のシステム管理装置おける起動判定機能削除処理の流れの一例を示すフローチャート。
図8】第2の実施形態のシステム管理装置おける制御出力機能削除処理の流れの一例を示すフローチャート。
図9】第3の実施形態のシステム管理装置の機能ブロック図。
図10】第3の実施形態のシステム管理装置おける中継機能追加処理の流れの一例を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、いくつかの実施形態の電力系統安定化システムを、図面を参照して説明する。
【0010】
(第1の実施形態)
第1の実施形態の電力系統安定化システムは、監視対象である電力系統の状態を監視し、事故が検出された場合には、その事故を解消して電力系統を安定化させるための制御処理を行う。本実施形態の電力系統安定化システムは、検出対象である事故や制御対象の変更に伴いシステム構成の変更が必要となった場合に、システム内に既に設置されている既設装置に必要な機能を任意に追加することが可能である。
【0011】
図1は、本実施形態の電力系統安定化システムA1の構成の一例を示す図である。電力系統安定化システムA1は、例えば、演算サーバ1(演算装置)と、中央装置2と、起動装置3と、制御装置4と、システム管理装置5とを備える。演算サーバ1は、第1ネットワークを介して、中央装置2およびシステム管理装置5と接続されている。また、中央装置2は、第2ネットワークを介して、複数の電気所に設置された起動装置3および制御装置4と接続されている。また、システム管理装置5は、第2ネットワークを介して、複数の電気所に設置された既設装置E1およびE3と接続されている。事故の発生に関連するリアルタイム性が要求される情報の送受信に利用される第2ネットワークは、制御テーブルTなどの装置の設定情報の送受信に利用される第1ネットワークよりも高速な通信を可能とするものであってよい。
【0012】
演算サーバ1は、電力系統の潮流状況、遮断器入切情報など、オンラインで入手した系統情報(オンライン系統データ)を用いて、安定度計算(系統シミュレーション)を実施し、不安定現象の抽出および制御対象の選定を行う。演算サーバ1は、抽出した不安定現象および選定した制御対象に基づいて制御テーブルTを生成する。
【0013】
制御テーブルTとは、電力系統に事故が発生した際に系統を安定化させるための制御内容を記載したテーブルである。制御テーブルTには、事故が想定される場所(装置)などを示す事故点と、事故の様相(類型)を示す事故様相と、系統を安定化させるために制御される制御対象とのセットが複数含まれる。制御テーブルTは、事故点と事故様相と制御対象とが関連付けられた情報を含む。
【0014】
図2は、制御テーブルTの一例を示す図である。この例では、事故点「A送電線」に対して、3つの事故様相が関連付けられている。図中の事故様相に記載された「3Φ4LG」などの情報は、事故様相を表すコードである。このコードは、例えば、A送電線が3相2回線で構成される場合に、いずれの相に事故が生じているかなどを示す。制御テーブルTにおいて、事故点および制御対象は運用中の全設備を指定可能である。また、事故様相はあらかじめ決められた選択肢から選択可能である。
【0015】
演算サーバ1は、継続的に現在の系統状態の系統シミュレーションを行うことで、監視設備に対して事故が発生した際の電力系統の安定度を確認し、不安定現象が発生する場合は、事故点および事故様相を安定化させるための制御対象を制御テーブルに追記する。演算サーバ1は、生成した制御テーブルTを、定周期に中央装置2およびシステム管理装置5に送信する。
【0016】
中央装置2は、検出された事故の内容に基づいて、事故を安定化させるための制御対象を決定する。中央装置2は、例えば、IED(Intelligent Electronic Device)により構成される。中央装置2は、起動装置3から事故点および事故様相の情報を含む起動信号S1を受信し、予め記憶された制御テーブルTを参照し、起動信号S1に基づいて制御対象を決定する。中央装置2は、決定した制御対象を示す制御指令S2を、この制御対象を制御する制御装置4に送信する。すなわち、中央装置2は、起動装置3により出力された起動信号S1により示される事故点および事故様相が制御テーブルTに含まれる場合、起動信号S1により示される事故点および事故様相と関連付けられた制御対象を制御する制御指令S2を出力する。
【0017】
起動装置3は、監視対象である電力系統内に設置された遮断器D1、断路器D2、保護継電装置D3などの各種機器から事故情報を受信し、受信した事故情報に基づく起動信号S1を中央装置2に送信する。保護継電装置D3により送信される事故情報は、例えば、保護リレー動作の情報を含む。保護リレー動作の情報とは、例えば、落雷発生時に、保護リレーが遮断器を瞬間的に開き、その後閉じるといった動作の情報である。また、監視対象が電流値、電圧値などを計測するセンサである場合、事故情報は、センサの計測値などを含んでもよい。すなわち、起動装置3は、電力系統の事故点および事故様相を検出し、検出した事故点および事故様相を示す起動信号S1を出力する。
【0018】
制御装置4は、中央装置2から制御指令S2を受信し、受信した制御指令S2に基づいて制御対象機器D4の制御を行う。制御対象機器D4は、例えば、発電機に接続される遮断器などを含む。これにより、発生した事故を安定化させることが可能である。例えば、制御装置4は、中央装置2から受信した制御指令S2と、フェイルセーフ(FS)リレー動作とに基づいて、所定の制御指令出力ロジックに従って制御出力を行う。すなわち、制御装置4は、中央装置2により出力された制御指令S2に基づいて、制御対象を制御する。
【0019】
システム管理装置5は、演算サーバ1から受信した制御テーブルTにおいて、受信時点において想定されている起動対象事故以外の新たな起動対象事故が指定されている場合、この新たな事故を検出するための起動装置の設置電気所および事故検出方法を定め、この新たな起動対象事故の検出に対応する起動判定機能(起動装置機能)を、この新たな起動対象事故を検出することが可能な任意の既設装置に追加する。例えば、システム管理装置5が起動判定機能を既設装置E1に追加した場合、既設装置E1は、新たな起動装置である新規起動装置E2として動作することが可能となる。
【0020】
また、システム管理装置5は、演算サーバ1から受信した制御テーブルTにおいて、受信時点において想定されている制御対象以外の新たな制御対象が指定されている場合、この新たな制御対象を制御するための制御装置の設置電気所および制御方法を定め、この新たな制御対象に対応する制御出力機能(制御装置機能)を、この新たな制御対象に対応することが可能な任意の既設装置に追加する。例えば、システム管理装置5が制御出力機能を既設装置E3に追加した場合、既設装置E3は、新たな制御装置である新規制御装置E4として動作することが可能となる。
【0021】
既設装置E1およびE3は、監視対象の電力系統内における所望の電気所に設置される。既設装置E1およびE3は、所望の目的に応じて設置された任意の機能を有する装置である。既設装置E1およびE3は、例えば、電気所内の特定の設備の保護機能や、監視制御機能を有する装置である。既設装置E1およびE3は、例えば、IEDにより構成され、任意の機能を追加または削除することが可能である。
【0022】
図3は、システム管理装置5の機能ブロック図である。システム管理装置5は、例えば、通信部10と、受付部12、取得部14と、判定部16と、抽出部18と、検索部20と、起動判定機能追加部22と、制御出力機能追加部24と、記憶部26とを備える。
【0023】
通信部10は、第2ネットワークを介して、演算サーバ1から制御テーブルTを受信する。また、通信部10は、第2ネットワークを介して、起動判定機能を追加するための機能追加指令S4を既設装置E1に送信する。通信部10は、例えば、NICなどの通信インターフェースを含む。
【0024】
受付部12は、システム管理装置5を管理するオペレータの各種操作を受け付ける。受付部12は、例えば、キーボード、マウス、各種操作ボタン、タッチパネル等である。
【0025】
取得部14は、演算サーバ1から受信した制御テーブルTに基づいて、起動条件および/または制御対象に関する制御テーブルTの更新分を取得する。
【0026】
判定部16は、取得部14により取得された制御テーブルTの更新分に、新たな起動条件および/または制御対象が存在するか否かを判定する。抽出部18は、新たに追加する起動装置の条件および/または新たに追加する制御装置の条件の抽出を行う。すなわち、判定部16は、制御テーブルTに、電力系統安定化システムA1において起動対象として定義されていない事故点が含まれているか否かを判定する。また、判定部16は、制御テーブルTに、電力系統安定化システムA1において制御対象として定義されていない制御対象が含まれているか否かを判定する。
【0027】
検索部20は、抽出部18により抽出された起動装置の条件および/または制御装置の条件を満たす既設装置を、接続可能な既設装置の中から検索する。
【0028】
起動判定機能追加部22は、検索部20により検索された既設装置に対して、起動判定機能を追加する。また、起動判定機能追加部22は、起動条件の設定や、事故情報の送信先の設定などを合わせて行う。すなわち、起動判定機能追加部22は、判定部16が、制御テーブルTに起動対象として定義されていない事故点が含まれていると判定した場合、電力系統安定化システムA1に設置された第1既設装置に事故点の起動判定機能を追加し、第1既設装置を新たな起動装置として機能させる。
【0029】
制御出力機能追加部24は、検索部20により検索された既設装置に対して、制御出力機能を追加する。また、制御出力機能追加部24は、制御対象の設定、制御情報の送信先の設定、FSリレーの条件の設定などを合わせて行う。すなわち、制御出力機能追加部24は、判定部16が、制御テーブルTに制御対象として定義されていない制御対象が含まれていると判定した場合、電力系統安定化システムA1に設置された第2既設装置に制御対象に対する制御指令出力機能を追加し、第2既設装置を新たな制御装置として機能させる。
【0030】
システム管理装置5の各機能部は、コンピュータなどに搭載されるCPUなどのプロセッサが、プログラムメモリなどに記憶されたプログラムを実行することで実現される。尚、これらの機能部は、プロセッサがプログラムを実行するのと同様の機能を有するLSI(Large Scale Integration)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、およびFPGA(Field-Programmable Gate Array)、GPU(Graphics Processing Unit)などのハードウェアにより実現されてもよいし、ソフトウェアとハードウェアが協働することにより実現されてもよい。
【0031】
記憶部26は、演算サーバ1から受信した制御テーブルTを記憶する。また、記憶部26は、演算サーバ1から受信した制御テーブルTの履歴情報を記憶してもよい。記憶部26は、例えば、RAM(Random Access Memory)、HDD(Hard Disk Drive)、フラッシュメモリ、SDカード、レジスタ、またはこれらのうち複数が組み合わされたハイブリッド型記憶装置などにより実現される。
【0032】
次に、システム管理装置5における機能追加時の動作について説明する。図4は、システム管理装置5による起動判定機能追加処理の流れの一例を示すフローチャートである。まず、システム管理装置5は、演算サーバ1から受信した制御テーブルTに基づいて、起動条件に関する制御テーブルTの更新分を取得する(S101)。
【0033】
例えば、システム管理装置5は、想定されている起動対象事故をリスト化した起動条件一覧表を予め作成し、この起動条件一覧表と、演算サーバ1から受信した制御テーブルTとを比較することで制御テーブルTの更新分を取得する。或いは、システム管理装置5は、演算サーバ1から受信した制御テーブルT(新しい制御テーブルTn)と、記憶部26に記憶されている制御テーブルT(古い制御テーブルTo)との差分を取ることで、制御テーブルTの更新分を取得してもよい。また、演算サーバ1が新たに制御テーブルTに追加した起動条件(事故点、事故様相などの条件)を指定してシステム管理装置5に通知するようにし、システム管理装置5がこの通知を受信することで制御テーブルTの更新分を取得してよい。
【0034】
次に、システム管理装置5は、取得した制御テーブルTの更新分に、新たな起動条件が存在するか否かを判定する(S103)。システム管理装置5は、新たな起動条件が存在しないと判定した場合、本フローチャートの処理を終了する。
【0035】
一方、システム管理装置5は、新たな起動条件が存在すると判定した場合、この新たな起動条件を判定するための起動装置の条件の抽出を行う(S105)。起動装置の条件は、例えば、設置電気所、必要な事故条件、処理時間の条件などを含む。設置電気所の条件としては、監視設備が接続されている、もしくは設置されている電気所において、事故判定を行う為の計測値や機器情報を取得できることなどが指定される。必要な事故条件としては、新たな起動条件(事故様相)を検出可能であることなどが指定される。処理時間の条件としては、例えば、「10[ms]以下」といった、許容される最大の判定処理時間などが指定される。
【0036】
システム管理装置5は、例えば、予め記憶された電気所の送電線、母線、変圧器などの系統接続情報、母線・変圧器設置情報、電気所に設置された既設装置の情報(各装置の性能情報、計測・機器情報取得状態など)を参照することで、上述の起動装置の条件の抽出を行う。また、システム管理装置5は、オペレータが受付部12を介して入力した情報に基づいて、起動装置の条件の抽出を行ってもよい。
【0037】
次に、システム管理装置5は、抽出した起動装置の条件を満たす既設装置を、接続可能な既設装置の中から検索する(S107)。次に、システム管理装置5は、検索した既設装置に対して、起動判定機能を追加する(S109)。また、システム管理装置5は、起動条件の設定や、事故情報の送信先の設定などを合わせて行う。これにより、起動判定機能が追加された既設装置は、新たな起動装置として動作することが可能となる。尚、起動条件一覧表を用いて起動装置の管理を行っている場合には、新たに起動判定機能が追加された既設装置の情報を起動条件一覧表に追加する。以上により、システム管理装置5は、本フローチャートの処理を終了する。
【0038】
図5は、システム管理装置5による制御出力機能追加処理の流れの一例を示すフローチャートである。まず、システム管理装置5は、演算サーバ1から受信した制御テーブルTに基づいて、制御対象に関する制御テーブルTの更新分を取得する(S201)。例えば、システム管理装置5は、想定されている制御対象をリスト化した制御対象一覧表を予め作成し、この制御対象一覧表と、演算サーバ1から受信した制御テーブルTとを比較することで制御テーブルTの更新分を抽出する。或いは、システム管理装置5は、演算サーバ1から受信した新しい制御テーブルTnと、記憶部26に記憶されている古い制御テーブルToとの差分を取ることで、制御テーブルTの更新分を抽出してもよい。また、演算サーバ1が、新たに制御テーブルTに追加した制御対象を指定して、システム管理装置5に通知するようにしてもよい。
【0039】
次に、システム管理装置5は、取得した制御テーブルTの更新分に、新たな制御対象が存在するか否かを判定する(S203)。システム管理装置5は、新たな制御対象が存在しないと判定した場合、本フローチャートの処理を終了する。
【0040】
一方、システム管理装置5は、新たな制御対象が存在すると判定した場合、この新たな制御対象を制御する制御装置の条件の抽出を行う(S205)。制御装置の条件は、例えば、設置電気所の条件、制御装置の機能の条件、処理時間の条件、FSのためのアナログ入力の条件などを含む。設置電気所の条件としては、新たな制御対象からの距離(例えば、「~m以内」という距離)や、制御対象と通信可能であることなどが指定される。制御装置の機能の条件としては、上記の新たな制御対象を制御可能であることなどが指定される。処理時間の条件としては、例えば、「10[ms]以下」といった、許容される最大の制御出力処理時間などが指定される。FSのためのアナログ入力の条件としては、FSのためのアナログ入力が可能であることなどが指定される。
【0041】
システム管理装置5は、例えば、予め記憶された電気所の送電線、母線、変圧器、遮断器などの系統接続情報、電気所に設置された既設装置の情報(各装置の性能情報、計測・機器情報取得状態、発電機遮断回路実装状態など)を参照することで、上述の制御装置の条件の抽出を行う。また、システム管理装置5は、オペレータが受付部12を介して入力した情報に基づいて、制御装置の条件の抽出を行ってもよい。
【0042】
次に、システム管理装置5は、抽出した制御装置の条件を満たす既設装置を、接続可能な既設装置の中から検索する(S207)。次に、システム管理装置5は、検索した既設装置に対して、制御出力機能を追加する(S209)。また、システム管理装置5は、制御対象の設定、制御情報の送信先の設定、FSリレーの条件の設定などを合わせて行う。これにより、制御出力機能が追加された既設装置は、新たな制御装置として動作することが可能となる。尚、制御端末一覧表を用いて制御装置の管理を行っている場合には、新たに制御出力機能が追加された既設装置の情報を制御端末一覧表に追加する。以上により、システム管理装置5は、本フローチャートの処理を終了する。
【0043】
以上において説明した第1の実施形態の電力系統安定化システムA1によれば、検出対象である事故の態様の変化や制御対象の変更に応じた既設装置の構成変更を速やか且つ容易に行うことが可能である。すなわち、電力系統の事故発生時に新たな不安定現象発生個所や、制御対象が発生した際に、速やか且つ容易に新たな起動装置および/または制御装置を配置し、電力系統安定化システムの構成を変更することが可能である。また、既設装置を利用して新たな電力系統安定化システムの機能を実現できるため、システム構築のための費用を低減させることが可能である。
【0044】
(第2の実施形態)
以下、第2実施形態について説明する。第1実施形態と比較して、第2実施形態の電力系統安定化システムは、起動判定機能を削除する機能および制御出力機能を削除する機能を有する点が異なる。このため、構成などについては第1実施形態で説明した図および関連する記載を援用し、詳細な説明を省略する。
【0045】
図6は、システム管理装置5Aの機能ブロック図である。システム管理装置5Aは、第1実施形態のシステム管理装置5の構成に加えて、例えば、起動判定機能削除部28と、制御出力機能削除部30とを備える。
【0046】
判定部16は、取得部14により取得された制御テーブルTの更新分に基づいて、削除対象の起動装置および/または削除対象の制御装置が存在するか否かを判定する。すなわち、判定部16は、電力系統安定化システムに含まれる起動装置3の各々の検出対象である事故点および事故様相が、制御テーブルTに含まれているか否かを判定する。また、判定部16は、電力系統安定化システムに含まれる制御装置4の各々の制御対象が、制御テーブルTに含まれているか否かを判定する。
【0047】
起動判定機能削除部28は、判定部16により削除対象の起動装置と判定された起動装置から、起動判定機能を削除する。すなわち、起動判定機能削除部28は、判定部16により、起動装置3の検出対象である事故点および事故様相が制御テーブルTに含まれていないと判定された場合、起動装置3から起動判定機能を削除する。また、起動判定機能削除部28は、起動装置3の検出対象である事故点および事故様相が制御テーブルTに含まれていないとの判定部16による判定が一定期間以上継続した場合に、起動装置3から起動判定機能を削除する。
【0048】
制御出力機能削除部30は、判定部16により削除対象の制御装置と判定された制御装置から、制御装置機能を削除する。すなわち、制御出力機能削除部30は、判定部16により、制御装置4の制御対象が制御テーブルTに含まれていないと判定された場合、制御装置4から制御指令出力機能を削除する。また、制御出力機能削除部30は、制御装置4の制御対象が制御テーブルTに含まれていないとの判定部16による判定が一定期間以上継続した場合に、制御装置4から制御指令出力機能を削除する。
【0049】
次に、システム管理装置5Aにおける機能削除時の動作について説明する。図7は、システム管理装置5による起動判定機能削除処理の流れの一例を示すフローチャートである。まず、システム管理装置5Aは、演算サーバ1から受信した制御テーブルTに基づいて、起動条件に関する制御テーブルTの更新分を取得する(S301)。
【0050】
次に、システム管理装置5Aは、取得した制御テーブルTの更新分に基づいて、削除対象の起動装置が存在するか否かを判定する(S303)。例えば、記憶部26に記憶されている古い制御テーブルToには含まれているが、演算サーバ1から受信した新しい制御テーブルTnには含まれていない事故点および事故様相を検出する起動装置3は、既に不要となっている可能性がある。そこで、システム管理装置5Aは、一定期間以上、演算サーバ1から受信した新しい制御テーブルTnに含まれなくなった事故点および事故様相を検出する起動装置3を削除対象の起動装置と判定する。尚、システム管理装置5Aは、所定回数だけ連続して、新しい制御テーブルTnに含まれなくなった事故点および事故様相を検出する起動装置3を削除対象の起動装置と判定してもよい。
【0051】
次に、システム管理装置5Aは、削除対象と判定した起動装置3から起動判定機能を削除する(S305)。これにより、起動判定機能が削除された起動装置3(非-起動装置)は、起動装置として機能しなくなる。以上により、システム管理装置5Aは、本フローチャートの処理を終了する。
【0052】
図8は、システム管理装置5による制御出力機能削除処理の流れの一例を示すフローチャートである。まず、システム管理装置5Aは、演算サーバ1から受信した制御テーブルTに基づいて、制御対象に関する制御テーブルTの更新分を取得する(S401)。
【0053】
次に、システム管理装置5Aは、取得した制御テーブルTの更新分に基づいて、削除対象の制御装置4が存在するか否かを判定する(S403)。例えば、記憶部26に記憶されている古い制御テーブルToには含まれているが、演算サーバ1から受信した新しい制御テーブルTnには含まれていない制御対象を制御する制御装置4は、既に不要となっている可能性がある。そこで、システム管理装置5Aは、一定期間以上、演算サーバ1から受信した新しい制御テーブルTnに含まれなくなった制御対象を制御する制御装置4を削除対象の制御装置と判定する。尚、システム管理装置5Aは、所定回数だけ連続して、新しい制御テーブルTnに含まれなくなった制御対象を制御する制御装置4を削除対象の制御装置と判定してもよい。
【0054】
次に、システム管理装置5Aは、削除対象の制御装置と判定した制御装置4から制御出力機能を削除する(S405)。これにより、制御出力機能が削除された制御装置4(非-制御装置)は、制御装置として機能しなくなる。以上により、システム管理装置5Aは、本フローチャートの処理を終了する。
【0055】
以上において説明した第2の実施形態の電力系統安定化システムによれば、検出対象である事故の態様の変化や制御対象の変更に応じた既設装置の構成変更を速やか且つ容易に行うことが可能である。また、不要となった起動装置および制御装置から機能を削除することにより、新たなニーズに対してリソースを有効活用することが可能となる。
【0056】
(第3の実施形態)
以下、第3実施形態について説明する。第1実施形態と比較して、第3実施形態の電力系統安定化システムは、起動判定機能を追加する機能に代えて或いは加えて、起動判定が可能となる情報(機器情報、リレー動作情報など)を中央装置2に中継する中継機能を既設装置に追加する機能を有している点が異なる。本実施形態では、中央装置2が起動判定処理を行う。このため、構成などについては第1実施形態で説明した図および関連する記載を援用し、詳細な説明を省略する。
【0057】
図9は、システム管理装置5Bの機能ブロック図である。システム管理装置5Bは、第1実施形態のシステム管理装置5に含まれる起動判定機能追加部22に代えて、例えば、中継機能追加部32を備える。
【0058】
判定部16は、取得部14により取得された制御テーブルTの更新分に、新たな起動条件が存在するか否かを判定する。検索部20は、判定部16により判定された新たな起動条件を中継することが可能な既設装置を、接続可能な既設装置の中から検索する。
【0059】
中継機能追加部32は、検索部20により検索された既設装置E5に対して、中継機能を追加する。これにより、既設装置E5は、中央装置2に起動条件を転送する中継装置として機能することが可能となる。すなわち、中継機能追加部32は、起動判定が可能となる情報を中央装置2に中継する機能を、電力系統安定化システムA1に設置された第3既設装置に追加し、第3既設装置を中継装置として機能させる。
【0060】
中央装置2は、中継装置により転送された起動条件に基づいて起動判定を行うとともに、予め記憶された制御テーブルTを参照し、制御対象を決定する。中央装置2は、決定した制御対象を示す制御指令S2を、この制御対象を制御する制御装置4に送信する。
【0061】
次に、システム管理装置5Bにおける機能追加時の動作について説明する。図10は、システム管理装置5Bによる中継機能追加処理の流れの一例を示すフローチャートである。まず、システム管理装置5Bは、演算サーバ1から受信した制御テーブルTに基づいて、起動条件に関する制御テーブルTの更新分を取得する(S501)。
【0062】
次に、システム管理装置5Bは、取得した制御テーブルTの更新分に、新たな起動条件が存在するか否かを判定する(S503)。システム管理装置5Bは、新たな起動条件が存在しないと判定した場合、本フローチャートの処理を終了する。
【0063】
一方、システム管理装置5Bは、新たな起動条件が存在すると判定した場合、判定された新たな起動条件を中継することが可能な既設装置を、接続可能な既設装置の中から検索する(S505)。次に、システム管理装置5は、検索した既設装置に対して、中継機能を追加する(S507)。これにより、中継機能が追加された既設装置E5は、中継装置として動作することが可能となる。以上により、システム管理装置5Bは、本フローチャートの処理を終了する。
【0064】
以上において説明した第3の実施形態の電力系統安定化システムによれば、検出対象である事故の態様の変化や制御対象の変更に応じた既設装置の構成変更を速やか且つ容易に行うことが可能である。また、起動判定が可能となる機器情報、リレー動作情報などをそのまま中央装置2に送信することで、既設装置に起動判定機能を追加することなく同様の機能を実現することが可能となる。
【0065】
尚、以上説明したいくつかの実施形態においては、演算サーバ1と、中央装置2と、システム管理装置5とが、別々の装置として構成される例について説明した。しかしながら、これらの一部または全部が1つの装置として構成されてもよい。例えば、システム管理装置5の機能は、演算サーバ1、もしくは中央装置2に実装されてもよい。
【0066】
以上説明した少なくとも一つの実施形態によれば、電力系統のシミュレーションを行い、前記電力系統の事故点と事故様相と制御対象とが関連付けられた情報を含む制御テーブルを生成する演算装置と、前記電力系統の事故点および事故様相を検出し、検出した前記事故点および事故様相を示す起動信号を出力する起動装置と、前記起動装置により出力された前記起動信号により示される前記事故点および事故様相が前記制御テーブルに含まれる場合、前記起動信号により示される前記事故点および事故様相と関連付けられた前記制御対象を制御する制御指令を出力する中央装置と、前記中央装置により出力された制御指令に基づいて、前記制御対象を制御する制御装置と、前記制御テーブルに、電力系統安定化システムにおいて起動対象として定義されていない事故点が含まれているか否かを判定する判定部、および、前記判定部により、前記制御テーブルに前記起動対象として定義されていない事故点が含まれていると判定された場合、前記電力系統安定化システムに設置された第1既設装置に、前記起動対象として定義されていない事故点の起動判定機能を追加し、前記第1既設装置を新たな起動装置として機能させる起動判定機能追加部を備える管理装置と、を備えることで、検出対象である事故の態様の変化や制御対象の変更に応じた既設装置の構成変更を速やか且つ容易に行うことが可能である。
【0067】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0068】
1…演算サーバ、2…中央装置、3…起動装置、4…制御装置、5…システム管理装置、10…通信部、12…受付部、14…取得部、16…判定部、18…抽出部、20…検索部、22…起動判定機能追加部、24…制御出力機能追加部、26…記憶部、28…起動判定機能削除部、30…制御出力機能削除部、32…中継機能追加部、A1…電力系統安定化システム
図1
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図10