(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-17
(45)【発行日】2022-02-21
(54)【発明の名称】潤滑油組成物、冷凍機用組成物及び漏洩箇所の検出方法
(51)【国際特許分類】
C10M 169/04 20060101AFI20220214BHJP
C09K 5/04 20060101ALI20220214BHJP
G01M 3/38 20060101ALI20220214BHJP
C10M 101/02 20060101ALN20220214BHJP
C10M 107/34 20060101ALN20220214BHJP
C10M 107/24 20060101ALN20220214BHJP
C10M 105/38 20060101ALN20220214BHJP
C10M 105/06 20060101ALN20220214BHJP
C10M 107/02 20060101ALN20220214BHJP
C10M 127/04 20060101ALN20220214BHJP
C10N 30/08 20060101ALN20220214BHJP
C10N 30/20 20060101ALN20220214BHJP
C10N 40/02 20060101ALN20220214BHJP
C10N 40/04 20060101ALN20220214BHJP
C10N 40/06 20060101ALN20220214BHJP
C10N 40/08 20060101ALN20220214BHJP
C10N 40/12 20060101ALN20220214BHJP
C10N 40/30 20060101ALN20220214BHJP
【FI】
C10M169/04
C09K5/04 F
C09K5/04 E
G01M3/38 L
C10M101/02
C10M107/34
C10M107/24
C10M105/38
C10M105/06
C10M107/02
C10M127/04
C10N30:08
C10N30:20
C10N40:02
C10N40:04
C10N40:06
C10N40:08
C10N40:12
C10N40:30
(21)【出願番号】P 2018543992
(86)(22)【出願日】2017-10-06
(86)【国際出願番号】 JP2017036513
(87)【国際公開番号】W WO2018066700
(87)【国際公開日】2018-04-12
【審査請求日】2020-05-25
(31)【優先権主張番号】P 2016197933
(32)【優先日】2016-10-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000183646
【氏名又は名称】出光興産株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002620
【氏名又は名称】特許業務法人大谷特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100119666
【氏名又は名称】平澤 賢一
(74)【代理人】
【識別番号】100153866
【氏名又は名称】滝沢 喜夫
(74)【代理人】
【識別番号】100078732
【氏名又は名称】大谷 保
(72)【発明者】
【氏名】金子 正人
【審査官】黒川 美陶
(56)【参考文献】
【文献】特開昭63-214633(JP,A)
【文献】特開昭61-211391(JP,A)
【文献】特開2001-348589(JP,A)
【文献】特表2007-511645(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第02166040(EP,A1)
【文献】英国特許出願公告第00419062(GB,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C10M127/04, C09K5/04, C10M69/04, G01M3/20, C10M101/02, C10M105/06, C10M105/38, C01M107/02, C10M107/24, C10M107/34, C10N30/08, C10N40/02, C10N40/04, C10N40/06, C10N40/08, C10N40/12, C10N40/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基油(A)と、分子内に、窒素、酸素及び硫黄を有さず、かつ3環以上の縮合環を有する蛍光性の縮合環式化合物(B)とを含有してなり、
前記基油(A)が、鉱油、ポリアルキレングリコール、ポリビニルエーテル、ポリオールエステル、アルキルベンゼン及びポリα-オレフィンから選ばれる1種以上であり、前記縮合環式化合物(B)を潤滑油組成物全量基準で0.001~1.0質量%含む潤滑油組成物
と、冷媒(D)とを含む冷凍機用組成物。
【請求項2】
前記縮合環式化合物(B)が、ペリレン系化合物、ナフタセン系化合物及びアントラセン系化合物から選ばれる1種以上である請求項
1に記載の
冷凍機用組成物。
【請求項3】
さらに、着色剤(C)を含む請求項1
又は2に記載の
冷凍機用組成物。
【請求項4】
前記冷媒(D)が、炭素数1~3の飽和フッ化炭化水素冷媒及び炭素数3の不飽和フッ化炭化水素冷媒から選ばれる1種以上を含む
請求項1~3の何れか1項に記載の
冷凍機用組成物。
【請求項5】
冷凍機用組成物を含む
冷凍機において、請求項1~4の何れか1項に記載の
冷凍機用組成物を用い、前記縮合環式化合物(B)の発光の有無に基づき、
冷凍機用組成物の漏洩の有無を判断する、漏洩箇所の検出方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、潤滑油組成物、冷凍機用組成物及び漏洩箇所の検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
以前から、空調機システムや冷却システム等の各種の機器内を循環等する流体(空調機システムや冷却システムの場合は冷媒等)の漏洩箇所を特定する手段が求められている。
【0003】
漏洩箇所を特定する手段としては、石鹸水を配管や継手に吹きかけて気泡の有無で識別する方法が提案されている。
また、蛍光剤を用いた漏出検知方法も開発されており、カーエアコン用冷凍サイクルでは、レシーバドライヤ内に冷媒漏れ検出用の蛍光剤を含有させたものも提案されている。
【0004】
蛍光剤を用いた漏洩検出に関する潤滑油組成物として、例えば、特許文献1~10の技術が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開平11-335690号公報
【文献】特開2006-52938号公報
【文献】特開昭61-211391号公報
【文献】特開2006-291112号公報
【文献】特表2015-510002号公報
【文献】特表2014-517859号公報
【文献】特表2015-506402号公報
【文献】特開2013-209590号公報
【文献】特開2013-209591号公報
【文献】特開2013-209592号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、蛍光剤を含む潤滑油組成物は熱的安定性、化学的安定性が十分ではない場合があった。
例えば、空調機システムや冷却システムにおいて従来使用されていた冷媒は、地球温暖化に影響を与えるため、地球温暖化係数(GWP)が低い新規冷媒として、分子中に不飽和結合を有する冷媒(R1234yf冷媒等)や地球温暖化係数が低くシステム容量を小型化できる冷媒(R32等)が検討されている。このような地球温暖化係数の低い冷媒用の潤滑油組成物を検討する上で、蛍光剤入りの潤滑油組成物の熱的安定性、化学的安定性が不十分であることが本発明者により確認された。
【0007】
しかしながら、特許文献1~7の蛍光剤を含む潤滑油組成物は、熱的安定性及び化学的安定性に関して何ら検討を行っていない。
特許文献8~10の蛍光剤を含む潤滑油組成物は、熱的安定性及び化学的安定性を課題としているものの、十分な熱的安定性及び化学的安定性を付与し得るものではなかった。
【0008】
本発明は、以上の問題点に鑑みてなされたものであり、蛍光剤による潤滑油組成物等の漏洩箇所の検出を可能としながら、長期に渡って熱安定性及び化学的安定性に優れる潤滑油組成物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、以下の(1)~(3)を提供する。
(1)基油(A)と、分子内に、窒素、酸素及び硫黄を有さず、かつ3環以上の縮合環を有する蛍光性の縮合環式化合物(B)とを含有してなり、前記縮合環式化合物(B)を潤滑油組成物全量基準で0.001~1.0質量%含む潤滑油組成物。
(2)前記(1)に記載の潤滑油組成物と、冷媒とを含む冷凍機用組成物。
(3)潤滑油組成物を含む機器において、前記(1)に記載の潤滑油組成物を用い、前記縮合環式化合物(B)の発光の有無に基づき、潤滑油組成物の漏洩の有無を判断する、漏洩箇所の検出方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、蛍光剤による潤滑油組成物等の漏洩箇所の検出を可能としながら、長期に渡って熱安定性及び化学的安定性に優れた潤滑油組成物及び冷凍機用組成物を提供できる。また、本発明によれば、潤滑油組成物等の漏洩箇所を容易に検出する方法を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態を説明する。
<潤滑油組成物>
本実施形態の潤滑油組成物は、基油(A)と、分子内に、窒素、酸素及び硫黄を有さず、かつ3環以上の縮合環を有する蛍光性の縮合環式化合物(B)とを含有してなり、前記縮合環式化合物(B)を潤滑油組成物全量基準で0.001~1.0質量%含むものである。
【0012】
[基油(A)]
基油としては特に制限されることなく、鉱油及び各種の合成油を用いることができる。合成油としては、ポリアルキレングリコール、ポリビニルエーテル、ポリオールエステル、アルキルベンゼン及びポリα-オレフィンが好適に用いられる。
本実施形態において、基油は、鉱油、ポリアルキレングリコール、ポリビニルエーテル、ポリオールエステル、アルキルベンゼン及びポリα-オレフィンから選ばれる1種以上であることが好ましく、ポリアルキレングリコール、ポリビニルエーテル及びポリオールエステルから選ばれる1種以上であることがより好ましい。特に、化学的安定性及び熱的安定性の観点から、ポリビニルエーテルが好適である。
【0013】
鉱油としては、溶剤精製、水添精製等の通常の精製法により得られるパラフィン基系鉱油、中間基系鉱油及びナフテン基系鉱油等;フィッシャートロプシュプロセス等により製造されるワックス(ガストゥリキッドワックス)、鉱油系ワックス等のワックスを異性化することによって製造されるワックス異性化系油等が挙げられる。鉱油は、米国石油協会の基油分類において、グループ3に分類されるものが好ましい。
【0014】
ポリアルキレングリコールとしては、例えば下記一般式(1)で示される化合物が挙げられる。
R1-[(OR2)m1-OR3]n1 (1)
式(1)中、R1は水素原子、炭素数1~10のアルキル基、炭素数2~10のアシル基、結合部2~6個を有する炭素数1~10の脂肪族炭化水素基を示し、R2は炭素数2~4のアルキレン基を示し、R3は水素原子、炭素数1~10のアルキル基、炭素数2~10のアシル基を示し、n1は1から6までの整数、m1はm1×n1の平均値が6~80となる数を示す。
【0015】
ポリアルキレングリコールの具体例としては、ポリプロピレングリコールポリエチレングリコールジメチルエーテル、ポリプロピレングリコールジメチルエーテルが挙げられる。
【0016】
ポリビニルエーテルとしては、1種のビニルエーテルモノマーの単独重合体、2種以上のビニルエーテルモノマーの共重合体、ビニルエーテルモノマーとオレフィン性二重結合を有する炭化水素モノマーとの共重合体等が挙げられる。
【0017】
ビニルエーテルモノマーとしては、例えばビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、ビニル-n-プロピルエーテル及びビニル-イソプロピルエーテル等が挙げられる。
オレフィン性二重結合を有する炭化水素モノマーとしては、エチレン、プロピレン、各種ブテン、各種ペンテン、各種ヘキセン、各種ヘプテン、各種オクテン、ジイソブチレン、トリイソブチレン、スチレン、α-メチルスチレン、各種アルキル置換スチレン等が挙げられる。
【0018】
ポリビニルエーテルの具体例としては、ポリエチルポリブチルビニルエーテル、ポリエチルビニルエーテル及びポリメチルビニルエーテルが挙げられる。
【0019】
ポリオールエステルとしては、ジオールあるいは水酸基を3~20個有するポリオールと、炭素数1~24の脂肪酸とのエステルが好ましく用いられる。
【0020】
ポリオールエステルの原料であるジオール及びポリオールの中では、加水分解安定性の観点からポリオールが好ましく、ネオペンチルグリコール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、トリメチロールブタン及びペンタエリスリトールがより好ましい。さらに、潤滑油組成物が冷媒を含む場合には、冷媒との相溶性の観点からペンタエリスリトールが好適である。
【0021】
ポリオールエステルの原料である脂肪酸は、潤滑性の点からは、炭素数3以上のものが好ましく、炭素数4以上のものがより好ましく、炭素数5以上のものがさらに好ましく、炭素数10以上のものがよりさらに好ましい。また、潤滑油組成物が冷媒を含む場合には、冷媒との相溶性の観点から、炭素数18以下のものが好ましく、炭素数12以下のものがより好ましく、炭素数9以下のものがさらに好ましい。
脂肪酸は、直鎖状脂肪酸、分岐状脂肪酸の何れであってもよく、潤滑性の点からは直鎖状脂肪酸が好ましく、加水分解安定性の点からは分岐状脂肪酸が好ましい。また、脂肪酸は、飽和脂肪酸、不飽和脂肪酸の何れであってもよい。
脂肪酸としては、例えば、イソ酪酸、ペンタン酸、ヘキサン酸、ヘプタン酸、オクタン酸、ノナン酸、デカン酸、ウンデカン酸、ドデカン酸、トリデカン酸、テトラデカン酸、ペンタデカン酸、ヘキサデカン酸、ヘプタデカン酸、オクタデカン酸、ノナデカン酸、イコサン酸、オレイン酸等の直鎖または分岐のもの、あるいはα炭素原子が4級である、いわゆるネオ酸等が挙げられる。
【0022】
ポリオールエステルの具体例としては、ネオペンチルグリコールと2-メチルペンタン酸とのジエステル、トリメチロールプロパンと3,5,5-トリメチルヘキサン酸とのトリエステル、ペンタエリスリトールと2-エチルブタン酸とのテトラエステル、ペンタエリスリトールとn-ペンタン酸及び2-エチルヘキサン酸とのテトラエステル、ペンタエリスリトールと2-メチルヘキサン酸及び3,5,5-トリメチルヘキサン酸とのテトラエステル、ペンタエリスリトールと2-エチルヘキサン酸とのテトラエステル、ペンタエリスリトールと3,5,5-トリメチルヘキサン酸とのテトラエステル、ジペンタエリスリトールと2-メチルブタン酸とのヘキサエステル、ジペンタエリスリトールと2-メチルペンタン酸とのヘキサエステル及びジペンタエリスリトールと2-エチルヘキサン酸とのヘキサエステルが挙げられる。
【0023】
アルキルベンゼンとしては、アルキル基の総炭素数が20以上のアルキルベンゼンが好ましい。また、アルキルベンゼンのアルキル基の数は1つでも良いが、熱安定性の観点から、アルキル基を2個以上有することが好ましい。なお、アルキル基を2個以上有する場合、前述したアルキル基の総炭素数とは、全てのアルキル基の炭素数の合計を意味するものとする。
【0024】
ポリ-α-オレフィンとしては、種々のものが使用可能であるが、炭素数8~18のα-オレフィンの重合体が好ましく使用される。また、炭素数8~18のα-オレフィンの重合体の中でも、熱安定性及び潤滑性の観点から、1-ドデセン、1-デセンあるいは1-オクテンの重合体が好適である。
なお、ポリ-α-オレフィンとしては、熱安定性の観点から、ポリ-α-オレフィンの水素化処理物が好ましい。
【0025】
上述した各種の合成油のポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)は、5000未満のものが好ましく、より好ましくは200~3000、さらに好ましくは250~2000である。
【0026】
基油の100℃動粘度は、好ましくは0.1mm2/s以上50mm2/s以下であり、より好ましくは1mm2/s以上30mm2/s以下であり、さらに好ましくは3mm2/s以上20mm2/s以下である。
基油の40℃動粘度は、好ましくは1mm2/s以上250mm2/s以下であり、より好ましくは10mm2/s以上150mm2/s以下であり、さらに好ましくは30mm2/s以上80mm2/s以下である。
基油の粘度指数は、好ましくは60以上であり、より好ましくは80以上であり、さらに好ましくは100以上である。
40℃の動粘度、100℃の動粘度及び粘度指数は、JIS K2283:2000に準拠して測定する。
【0027】
基油(A)の含有量は、潤滑油組成物全量基準で90~99質量%であることが好ましく、92~99質量%であることがより好ましく、93~98質量%であることがさらに好ましい。
【0028】
[縮合環式化合物(B)]
本実施形態の潤滑油組成物は、分子内に、窒素、酸素及び硫黄を有さず、かつ3環以上の縮合環を有する蛍光性の縮合環式化合物(B)を用いる。
本実施形態において「蛍光性」は、紫外線又は可視光線の照射を受けた際に、可視光領域の光を発光する性質のことをいう。縮合環式化合物(B)は、非発光時は無色であってもよいし、有色であってもよい。
【0029】
蛍光性化合物の分子内に窒素、酸素及び硫黄が含まれる場合、蛍光性化合物と基油とが反応しやすく、蛍光性化合物及び基油が変質することにより、潤滑油組成物の変色、酸価の上昇、スラッジの発生を招くとともに、機器内の金属を腐食してしまう。特に、合成油として有用なポリアルキレングリコール及びポリオールエステルは、分子内に、窒素、酸素及び硫黄を含む蛍光性化合物と反応しやすい。また、そもそも分子内に窒素、酸素及び硫黄を含む蛍光性化合物は、基油と反応しなくても、それ自身が経時的に劣化(変質、分解)しやすいため、経時的に蛍光性能が損なわれ、潤滑油組成物の漏洩箇所の検出に悪影響が生じる。
一方、本実施形態で用いる蛍光性化合物としての縮合環式化合物(B)は、分子内に、窒素、酸素及び硫黄を有さないことから、基油との反応が抑制されるため、潤滑油組成物の熱安定性及び化学的安定性に優れ、潤滑油組成物の経時的な劣化(変質、分解)を抑制できる。また、本実施形態で用いる蛍光性化合物としての縮合環式化合物(B)は、それ自身が経時的に劣化(変質、分解)しにくいものである。すなわち、本実施形態の潤滑油組成物は、経時的な変色、酸価の上昇、スラッジの発生、機器内の金属腐食を抑制できるとともに、蛍光性能の経時的な劣化も抑制し得るものである。
【0030】
本実施形態の潤滑油組成物は、縮合環式化合物(B)を潤滑油組成物全量基準で0.001~1.0質量%含む。
縮合環式化合物(B)の含有量が0.001質量%未満の場合、潤滑油組成物の漏洩箇所の検出が困難となる。また、縮合環式化合物(B)の含有量が1.0質量%超の場合、潤滑油組成物に縮合環式化合物(B)が溶解できない場合があり、潤滑性等に悪影響を与える可能性がある。また、縮合環式化合物(B)の含有量が1.0質量%を超えても、潤滑油組成物の漏洩箇所の検出精度の向上は期待できない。
縮合環式化合物(B)の含有量は、潤滑油組成物全量基準で0.001~0.8質量%であることが好ましく、潤滑油組成物全量基準で0.001~0.5質量%であることがより好ましく、潤滑油組成物全量基準で0.002~0.2質量%であることがさらに好ましく、潤滑油組成物全量基準で0.002~0.1質量%であることがよりさらに好ましい。
【0031】
縮合環式化合物(B)は、分子内に、窒素、酸素及び硫黄を有さず、かつ3環以上の縮合環を有するという条件を満たしていれば、置換基を有するものであってもよい。置換基はアルキル基、アリール基等の炭化水素基が好ましく、アリール基がより好ましい。なお、本明細書において、アリール基とは、単純芳香環のみならず、ナフチル等の多環芳香族炭化水素基を含むものとする。
このような置換基を有する縮合環式化合物(B)を用いることで、より熱安定性及び化学的安定性に優れた潤滑油組成物を提供することができる。
【0032】
縮合環式化合物(B)としては、ペリレン系化合物、ナフタセン系化合物及びアントラセン系化合物が挙げられる。
【0033】
ペリレン系化合物は、下記一般式(2)で示されるペリレン、及び該ペリレンに置換基を有する化合物が挙げられる。置換基としては、アルキル基、アリール基等の炭化水素基等が挙げられる。
【化1】
【0034】
ペリレン系化合物としては、基油への溶解性及び潤滑性の低下の抑制の観点から、アルキル基又はアリール基を置換基として有するペリレンが好ましく、アリール基を置換基として有するペリレンがより好ましい。
置換基として有するペリレンの具体例としては、2,3,10,11-テトラメチルペリレン、3-メチルペリレン、3,7-ジプロピルペリレン、2,5,7,10-テトラフェニルペリレン、3,9-ビス(2-ナフチル)ペリレンが挙げられる。
【0035】
ナフタセン系化合物は、下記一般式(3)で示されるナフタセン、及び該ナフタセンに置換基を有する化合物が挙げられる。置換基としては、アルキル基、アリール基等の炭化水素基等が挙げられる。
【化2】
【0036】
ナフタセン系化合物としては、基油への溶解性及び潤滑性の低下の抑制の観点から、アルキル基又はアリール基を置換基として有するナフタセンが好ましく、アリール基を置換基として有するナフタセンがより好ましい。
置換基として有するナフタセンの具体例としては、5,6,11,12-テトラフェニルナフタセン、1-メチルナフタセン、2,9-ジオクチルナフタセンが挙げられる。この中でも、5,6,11,12-テトラフェニルナフタセンが好ましい。
【0037】
アントラセン系化合物は、下記一般式(4)で示されるアントラセン、及び該アントラセンに置換基を有する化合物が挙げられる。置換基としては、アルキル基、アリール基等の炭化水素基等が挙げられる。
【化3】
【0038】
アントラセン系化合物としては、基油への溶解性及び潤滑性の低下の抑制の観点から、アルキル基又はアリール基を置換基として有するアントラセンが好ましく、アリール基を置換基として有するアントラセンがより好ましい。
置換基として有するアントラセンの具体例としては、9-フェニルアントラセン、9,10-ジフェニルアントラセン、9-9’-ビアントラセン、9-メチルアントラセン、2-エチルアントラセンが挙げられる。この中でも、9-フェニルアントラセン、9,10-ジフェニルアントラセン、9-9’-ビアントラセンのいずれかが好ましい。
【0039】
本実施形態の潤滑油組成物は、縮合環式化合物(B)以外の蛍光性化合物(以下、「その他の蛍光性化合物」と称する場合がある。)を含有してもよいが、その含有量は微量であることが好ましい。具体的には、その他の蛍光性化合物の含有量は、潤滑油組成物の全量基準で0.1質量%未満であることが好ましく、0.05質量%未満であることがより好ましく、0.01質量%未満であることがさらに好ましく、0.005質量%未満であることがよりさらに好ましい。
【0040】
[着色剤]
本実施形態の潤滑油組成物は、さらに着色剤を含有してもよい。潤滑油組成物に着色剤を含有させることにより、潤滑油組成物を所望の色に調整することができ、縮合環式化合物(B)が非発光時に無色のものであっても、潤滑油組成物中の縮合環式化合物(B)の含有の有無を容易に判別することができる。また、縮合環式化合物(B)の発光色と、着色剤の色とを合成することにより、暗い所で人間の目が視認しやすい色に調整することができる。暗い所で人間の目が視認しやすい色とは、紫色~青色~緑色~黄色の範囲である。橙色~赤色は暗いところで人間の目が視認しにくい。
【0041】
着色剤の色は特に限定されないが、縮合環式化合物(B)の発光の有無を確認しやすくする観点からは、黄色、緑色、赤色、青色等の非暗色系の色であることが好ましい。
着色剤としては、潤滑性等の諸性能を維持しやすくする観点から、染料が好適に用いられる。
【0042】
染料としては、アゾ系染料、キサンテン系染料、キノリン系染料、トリフェニルメタン系染料、アントラキノン系染料等が挙げられる。また、染料として、その他の蛍光性化合物であって、非発光時に着色しているもの(蛍光性着色染料)を用いることもできる。これら染料の中でも、潤滑性等の諸性能を維持しやすくする観点から、油溶性のものが好適である。
【0043】
油溶性を有する染料の具体例としては、ソルベントイエロー116(黄色)、ソルベントグリーン20(緑色)、ソルベントブルー35(青色)、ソルベントレッド207(赤色)等が挙げられる。
【0044】
着色剤の含有量は、潤滑油組成物全量基準で0.0001質量%~0.1質量%であることが好ましく、潤滑油組成物全量基準で0.0001~0.05質量%であることがより好ましく、潤滑油組成物全量基準で0.0002~0.02質量%であることがさらに好ましい。
【0045】
[添加剤]
潤滑油組成物中には、酸化防止剤、極圧剤、酸捕捉剤、酸素捕捉剤及び銅不活性化剤からなる添加剤から選択される少なくとも一種を含有してもよい。各添加剤の含有量は、潤滑油組成物全量に対して、通常0.01~5質量%、好ましくは0.05~3質量%である。
【0046】
酸化防止剤としては、2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェノール(DBPC)、2,6-ジ-tert-ブチル-4-エチルフェノール、2,2’-メチレンビス(4-メチル-6-tert-ブチルフェノール)等のフェノール系酸化防止剤、フェニル-α-ナフチルアミン、N,N’-ジ-フェニル-p-フェニレンジアミン等のアミン系酸化防止剤等が挙げられる。
極圧剤としては、リン酸エステル、酸性リン酸エステル、亜リン酸エステル、酸性亜リン酸エステル及びこれらのアミン塩等のリン系極圧剤、硫化油脂、硫化脂肪酸、硫化エステル等の硫黄系極圧剤、炭素数3~60の脂肪酸金属塩等が挙げられる。
酸捕捉剤としては、フェニルグリシジルエーテル、アルキルグリシジルエーテル、アルキレングリコールグリシジルエーテル、グリシジルエステル、シクロヘキセンオキシド、α-オレフィンオキシド、エポキシ化大豆油等のエポキシ化合物が挙げられる。
酸素捕捉剤としては、4,4’-チオビス(3-メチル-6-t-ブチルフェノール)、ジフェニルスルフィド、ジオクチルジフェニルスルフィド、ジアルキルジフェニレンスルフィド、ベンゾチオフェン、ジベンゾチオフェン、フェノチアジン、ベンゾチアピラン、チアピラン、チアントレン、ジベンゾチアピラン、ジフェニレンジスルフィド等の含硫黄芳香族化合物、各種オレフィン、ジエン、トリエン等の脂肪族不飽和化合物、二重結合を有するテルペン類等が挙げられる。
銅不活性化剤としては、N-[N,N’-ジアルキル(炭素数3~12のアルキル基)アミノメチル]トリアゾール等が挙げられる。
【0047】
[潤滑油組成物の物性]
潤滑油組成物の40℃動粘度、100℃動粘度及び粘度指数の好適な範囲は、上述した基油(A)の40℃動粘度、100℃動粘度及び粘度指数の好適な範囲と同様である。
【0048】
潤滑油組成物の酸価は、化学的安定性及び熱的安定性の観点から、0.05mgKOH/g以下であることが好ましく、0.03mgKOH/g以下であることがより好ましく、0.02mgKOH/g以下であることがさらに好ましい。酸価は、JIS K2501:2003の「指示薬滴定法」に準拠して測定する。
なお、酸価、並びに、後述する水酸基価及び体積抵抗率は、新油の状態で満たすことが好ましく、実施例のオートクレーブ試験を行った後にも満たすことがより好ましい。
【0049】
潤滑油組成物の水酸基価は、安定性の観点から、10mgKOH/g以下であることが好ましく、5mgKOH/g以下であることがより好ましく、3mgKOH/g以下であることがさらに好ましい。水酸基価は、JIS K0070:1992の「中和滴定法」に準拠して測定する。
【0050】
潤滑油組成物の体積抵抗率は、2.0×108Ω・m以上であることが好ましく、5.0×108Ω・m以上であることがより好ましく、1.0×109Ω・m以上であることがさらに好ましい。体積抵抗率が2.0×108Ω・m以上となると、潤滑油組成物の絶縁性が高まり、電気自動車や電動カーエアコン等のように駆動源が電動である機器の動作に影響を与える漏れ電流が生じにくくなる。
【0051】
潤滑油組成物の水分含有量は、1000ppm未満であることが好ましく、300ppm以下であることがより好ましく、150ppm以下であることがさらに好ましい。水分含有量を低くすることにより、潤滑油組成物の加水分解が生じにくくなり、潤滑油組成物の安定性が高まり、長期にわたって良好な潤滑性能を提供することができる。
【0052】
[用途]
上述した本実施形態の潤滑油組成物の用途は特に制限されないが、例えば、冷凍機油、油圧作動油、軸受油、歯車油、タービン油、変速機油、ショックアブソーバー油及びモーター冷却油の何れかに用いることができる。
【0053】
<冷凍機用組成物>
本実施形態の冷凍機用組成物は、上述した本実施形態の潤滑油組成物と、冷媒とを含むものである。
【0054】
[冷媒]
冷媒としては、炭素数1~3の飽和フッ化炭化水素冷媒及び炭素数3の不飽和フッ化炭化水素冷媒から選ばれる1種以上を含むことが好ましい。
特に、炭素数1~3の飽和フッ化炭化水素冷媒は安定性に優れ分解しにくいことから、縮合環式化合物(B)及び基油(A)に対して悪影響を及ぼすことを抑制でき、ひいては、潤滑油組成物の経時的な変色、潤滑油組成物の酸価の上昇、潤滑油組成物を元にしたスラッジ発生、潤滑油組成物を原因とする機器内の金属腐食、蛍光性能の経時的な劣化等を抑制しやすくできる点で好ましい。
【0055】
炭素数1~3の飽和フッ化炭化水素冷媒としては、ジフルオロメタン(R32)、1,1,1,2,2-ペンタフルオロエタン(R125)、1,1,2,2-テトラフルオロエタン(R134)、1,1,1,2-テトラフルオロエタン(R134a)、1,1,2-トリフルオロエタン(R143)、1,1,1-トリフルオロエタン(R143a)、1,1-ジフルオロエタン(R152a)、及びフルオロエタン(R161)等が挙げられる。これらの中でも、ジフルオロメタン(R32)が好ましく、特にジフルオロメタン(R32)単独の冷媒とすることが好ましい。
【0056】
炭素数3の不飽和フッ化炭化水素冷媒としては、1,2,3,3,3-ペンタフルオロプロペン(R1225ye)、1,3,3,3-テトラフルオロプロペン(R1234ze)、2,3,3,3-テトラフルオロプロペン(R1234yf)、及び1,2,3,3-テトラフルオロプロペン(R1234ye)、及び3,3,3-トリフルオロプロペン(R1243zf)等が挙げられる。これらの中でも、2,3,3,3-テトラフルオロプロペン(R1234yf)が好ましく、特に2,3,3,3-テトラフルオロプロペン(R1234yf)単独の冷媒とすることが好ましい。
【0057】
冷媒は、炭素数1~3の飽和フッ化炭化水素冷媒と炭素数3の不飽和フッ化炭化水素冷媒とを含む混合冷媒であってもよく、この場合は、特にジフルオロメタン(R32)と2,3,3,3-テトラフルオロプロペン(R1234yf)とを含む混合冷媒とすることが好ましい。
【0058】
また、冷媒としては、上記冷媒(炭素数1~3の飽和フッ化炭化水素冷媒及び炭素数3の不飽和フッ化炭化水素冷媒から選ばれる1種以上の冷媒)に加えて、その他の冷媒を含有してもよい。
その他の冷媒としては、フッ化エーテル化合物冷媒、フッ化アルコール化合物冷媒、フッ化ケトン化合物冷媒、及び自然冷媒等が挙げられる。
【0059】
フッ化エーテル化合物としては、例えば、ヘキサフルオロジメチルエーテル、ペンタフルオロジメチルエーテル、ビス(ジフルオロメチル)エーテル、フルオロメチルトリフルオロメチルエーテル、トリフルオロメチルメチルエーテル、ジフルオロメトキシペンタフルオロエタン、1-トリフルオロメトキシ-1,2,2,2-テトラフルオロエタン、ペルフルオロオキセタン、ペルフルオロ-1,3-ジオキソラン、ペンタフルオロオキセタンの各種異性体、テトラフルオロオキセタンの各種異性体等が挙げられる。
【0060】
フッ化アルコール化合物としては、例えば、モノフルオロメチルアルコール、ジフルオロメチルアルコール、トリフルオロメチルアルコール、ジフルオロエチルアルコールの各種異性体、トリフルオロエチルアルコールの各種異性体、テトラフルオロエチルアルコールの各種異性体、ペンタフルオロエチルアルコール、ジフルオロプロピルアルコールの各種異性体、トリフルオロプロピルアルコールの各種異性体、ヘキサフルオロプロピレングリコール等のフッ化プロピレングリコール、及びこのフッ化プロピレングリコールに対応するフッ化トリメチレングリコール等が挙げられる。
【0061】
フッ化ケトン化合物としては、例えば、ヘキサフルオロジメチルケトン、ペンタフルオロジメチルケトン、ビス(ジフルオロメチル)ケトン、フルオロメチルトリフルオロメチルケトン、トリフルオロメチルメチルケトン、ペルフルオロメチルエチルケトン、トリフルオロメチル-1,1,2,2-テトラフルオロエチルケトン等が挙げられる。
【0062】
自然系冷媒としては、二酸化炭素(炭酸ガス);プロパン、n-ブタン、イソブタン、2-メチルブタン、n-ペンタン、シクロペンタン、イソブタン、ノルマルブタン等の炭化水素;アンモニア等が挙げられる。
【0063】
冷凍機用組成物中における潤滑油組成物と冷媒との質量比(潤滑油組成物の質量/冷媒の質量)は、好ましくは1/99~99/1、より好ましくは5/95~60/40である、さらに好ましくは40/60~60/40である。
【0064】
[冷凍機]
冷凍機は圧縮型冷凍機が好ましい。また、圧縮型冷凍機圧縮機は、凝縮器、膨張機構(膨張弁等)及び蒸発器を備える冷凍サイクルを有するもの、又は、圧縮機、凝縮器、膨張機構、乾燥器及び蒸発器を備える冷凍サイクルを有するものがより好ましい。
冷凍機用組成物は、例えば、圧縮機等に設けられる摺動部分を潤滑するために使用される。
なお、摺動部分は、特に限定されないが、摺動部分のいずれかが鉄等の金属を含むことが好ましく、金属-金属間で摺動するものであることが好ましい。
【0065】
冷凍機は、例えば、エアコン、ガスヒートポンプ(GHP)、空調、冷蔵庫、自動販売機、ショーケース等の冷凍システム、給湯システム、及び暖房システム等に用いることができる。
【0066】
[冷凍機用組成物の物性]
冷凍機用組成物の酸価、水酸基価、体積抵抗率及び水分含有量の好適な範囲は、上述した潤滑油組成物の好適な範囲と同様である。
【0067】
<漏洩箇所の検出方法>
本実施形態の漏洩箇所の検出方法は、潤滑油組成物を含む機器において、上述した本実施形態の潤滑油組成物を用い、前記縮合環式化合物の発光の有無に基づき、潤滑油組成物等の漏洩の有無を検出するものである。
【0068】
潤滑油組成物を含む機器としては、冷凍機、油圧作動機構、軸受、歯車、タービン、変速機、ショックアブソーバー及びモーターから選ばれる1種以上を含む機器が挙げられる。
かかる機器の潤滑油組成物として、上述した本実施形態の潤滑油組成物を用い、ブラックライト等で紫外線又は可視光線を機器に照射することにより、潤滑油組成物が漏洩している箇所で、縮合環式化合物(B)が発する可視光領域の光を確認することで、潤滑油組成物等の漏洩箇所を検出することができる。
なお、縮合環式化合物(B)が発する可視光領域の光の確認は、目視で行ってもよく、受光素子を備えた機器で行ってもよい。
【0069】
また、本実施形態の漏洩箇所の検出方法は、機器が冷凍機である場合には、上述した本実施形態の冷凍機用組成物を用いることができる。具体的には、冷凍機の冷凍機用組成物として、上述した本実施形態の冷凍機用組成物を用い、ブラックライト等で紫外線又は可視光線を機器に照射することにより、冷凍機用組成物が漏洩している箇所で、縮合環式化合物(B)が発する可視光領域の光を確認することで、冷凍機用組成物等の漏洩箇所を検出することができる。
なお、縮合環式化合物(B)が発する可視光領域の光の確認は、目視で行ってもよく、受光素子を備えた機器で行ってもよい。
【実施例】
【0070】
以下に、本発明を、実施例により、さらに具体的に説明するが、本発明は、これらの例によってなんら限定されるものではない。
【0071】
1.潤滑油組成物(冷凍機用組成物)の調製
表1~3の組成からなる実施例1~26及び比較例1~4の潤滑油組成物(冷凍機用組成物)を調製した。
【0072】
2.評価
2-1.安定性
実施例1~26及び比較例1~4の潤滑油組成物(冷凍機用組成物)について、下記条件でオートクレーブ試験を行った後、油の外観(目視で観察される油の色)、触媒の外観(目視で観察される触媒の色)、スラッジの有無、油の酸価を評価又は測定した。酸価はJIS K2501:2003の「指示薬滴定法」に準拠して測定した。結果を表1~3に示す。なお、表1~3において、油の外観が良好及び触媒の外観が良好とは、評価前後で概ね色の変化がないことを示す。
<オートクレーブ試験>
内容積200mLのオートクレーブに、実施例1~26及び比較例1~4の冷凍機用組成物(組成物中の水分500質量ppm)60gと、鉄、銅及びアルミニウムからなる金属触媒とを封入し、真空引きした後(空気残量25mL)、温度175℃の条件にて336時間保持した。
【0073】
表1~3で使用した材料の詳細は以下の通りである。
<基油(A)>
・基油A:ポリビニルエーテル(ポリエチルビニルエーテル、40℃動粘度:67.5mm2/s、100℃動粘度:8.03mm2/s、粘度指数:81)
・基油B:ポリオールエステル(ペンタエリスリトール及びジペンタエリスリトールの混合ポリオール(質量比5:1)と、2-エチルヘキサン酸及び3,5,5-トリメチルヘキサン酸の混合脂肪酸(質量比9:10)とのヒンダードエステル、40℃動粘度:88.33mm2/s、100℃動粘度:9.60mm2/s、粘度指数:91)
・基油C:ポリアルキレングリコール(ポリプロピレングリコールジメチルエーテル、40℃動粘度:39.2mm2/s、100℃動粘度:8.65mm2/s、粘度指数:208)
<縮合環式化合物(B)>
・蛍光性化合物A:ペリレン
・蛍光性化合物B:5,6,11,12-テトラフェニルナフタセン
・蛍光性化合物C:9-フェニルアントラセン
・蛍光性化合物D:9,10-ジフェニルアントラセン
・蛍光性化合物E:9,9’-ビアントラセン
・蛍光性化合物F:アントラセン
<その他の蛍光性化合物>
・蛍光性化合物G:2-(4-tert-ブチルフェニル)-5-(4-ビフェニリル)-1,3,4-オキサジアゾール
<添加剤>
・酸化防止剤:2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェノール
・極圧剤:トリクレジルフォスフェート
・酸捕捉剤:2-エチルヘキシルグリシジルエーテル
<冷媒>
ジフルオロメタン(R32)
<着色剤>
・着色剤A:Solvent Yellow116(油溶性黄色染料、有効成分10質量%)
・着色剤B:Solvent Green20(油溶性緑色染料、有効成分10質量%)
・着色剤C:Solvent Blue35(油溶性青色染料、有効成分10質量%)
・着色剤D:Solvent Red207(油溶性赤色染料、有効成分10質量%)
【0074】
【0075】
【0076】
表1~3の結果から、実施例1~26の潤滑油組成物(冷凍機用組成物)は、経時的な変色、酸価の上昇、スラッジの発生、機器内の金属腐食を抑制できることが確認できる。また、表中では評価していないが、実施例1~26の潤滑油組成物(冷凍機用組成物)は、オートクレーブ試験後でも十分な蛍光性能を有するものであった。
一方、比較例1~4の潤滑油組成物(冷凍機用組成物)は、経時的な変色、酸価の上昇、スラッジの発生、機器内の金属腐食を抑制できないものであった。また、表中では評価していないが、比較例1~4の潤滑油組成物(冷凍機用組成物)は、オートクレーブ試験後の蛍光性能が低下し、長期に渡って漏洩箇所を検出することが困難なものであった。
【0077】
3.着色剤を含む潤滑油組成物(冷凍機用組成物)の調製及び評価
表4の組成からなる実施例及び比較例の潤滑油組成物(冷凍機用組成物)を調製した。
【0078】
【0079】
実施例27~36の冷凍機用組成物、及び比較例5~8の冷凍機用組成物について、上記2と同様のオートクレーブ試験を行った。その結果、実施例27~36の冷凍機用組成物は、比較例5~8の冷凍機用組成物に比べて、経時的な変色、酸価の上昇、スラッジの発生、機器内の金属腐食を抑制できることが確認できた。
また、実施例27~36の冷凍機用組成物は、縮合環式化合物(B)が非発光時であっても冷凍機用組成物を着色することができ、さらには、縮合環式化合物(B)の発光色と、着色剤の色との合成により、発光時に視認される色が暗いところで視認しやすい色(紫色~黄色)であった。