(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-17
(45)【発行日】2022-01-17
(54)【発明の名称】放射性医薬品に係る製品の受注または発注を管理するコンピュータに実行させるためのコンピュータプログラム、装置及び方法
(51)【国際特許分類】
G06Q 10/08 20120101AFI20220107BHJP
G06Q 30/06 20120101ALI20220107BHJP
【FI】
G06Q10/08 330
G06Q30/06 306
(21)【出願番号】P 2020112449
(22)【出願日】2020-06-30
(62)【分割の表示】P 2017010962の分割
【原出願日】2017-01-25
【審査請求日】2020-06-30
(73)【特許権者】
【識別番号】000149837
【氏名又は名称】富士フイルム富山化学株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】306037311
【氏名又は名称】富士フイルム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000279
【氏名又は名称】特許業務法人ウィルフォート国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】伴 聡
(72)【発明者】
【氏名】関口 幸治
【審査官】上田 威
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-211007(JP,A)
【文献】特開2006-084432(JP,A)
【文献】特開2008-253356(JP,A)
【文献】特開2014-083272(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00 - 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
放射性医薬品に係る製品の受注または発注を管理するコンピュータに実行させるためのコンピュータプログラムであって、
前記放射性医薬品となるバルク溶液の濃度および残量を前記バルク
溶液の生産ロットごとに有
し、かつ、前記生産ロットの出荷可能時刻をさらに有する生産スケジュールテーブルにアクセス可能な前記コンピュータに、
前記生産スケジュールテーブルに基づいて、検定時刻別及び放射能量別に製造可能な前記製品
の数量を特定した製品テーブルを生成する製品テーブル生成処理、を実行させ
、
前記製品テーブル生成処理は、
前記放射性医薬品を使用する施設および検定日を受け付ける処理と、
前記生産スケジュールテーブルに基づいて、前記検定日に対応する前記生産ロットの出荷可能時刻から定まる、当該生産ロットの製品が前記施設に到着可能な最も早い時刻を特定する処理と、
前記最も早い時刻以降の検定時刻に対応する製品を前記製造可能な製品として特定する処理と、を含む、コンピュータプログラム。
【請求項2】
放射性医薬品に係る製品の受注または発注を管理するコンピュータに実行させるためのコンピュータプログラムであって、
前記放射性医薬品となるバルク溶液の濃度および残量を前記バルク溶液の生産ロットごとに有する生産スケジュールテーブルにアクセス可能な前記コンピュータに、
前記生産スケジュールテーブルに基づいて、検定時刻別及び放射能量別に製造可能な前記製品の数量を特定した製品テーブルを生成する製品テーブル生成処理、を実行させ、
前記生産ロットは、第1の生産ロットと前記第1の生産ロットよりも後に生産される第2の生産ロットであり、前記第1の生産ロットに係る製品と前記第2の生産ロットに係る製品の検定時刻及び放射能量に重複がある、コンピュータプログラム。
【請求項3】
前記第1の生産ロットのバルク溶液の濃度と前記第2の生産ロットのバルク溶液の濃度とが互いに異なる、請求項
2に記載のコンピュータプログラム。
【請求項4】
前記放射性医薬品に係る製品は、予め定められた複数の前記検定時刻及び複数の前記放射能量のそれぞれに対して、前記バルク溶液から分注して製造する製品である、請求項1
から3のいずれか一項に記載のコンピュータプログラム。
【請求項5】
前記製品テーブル生成処理は、液量が予め定められた範囲内となる前記製造可能な製品を特定する、請求項1
から4のいずれか一項に記載のコンピュータプログラム。
【請求項6】
前記生産スケジュールテーブルは、前記製品の有効期限をさらに有し、
前記製品テーブル生成処理では、前記有効期限より前の検定時刻に対応する製品を前記製造可能な製品として特定する処理を含む、請求項1から
5のいずれか一項に記載のコンピュータプログラム。
【請求項7】
放射性医薬品に係る製品の受注または発注を管理する管理装置であって、
前記放射性医薬品となるバルク溶液の濃度および残量を前記バルク
溶液の生産ロットごとに有
し、かつ、前記生産ロットの出荷可能時刻をさらに有する生産スケジュールテーブルを記憶するデータ記憶部と
、
前記生産スケジュールテーブルに基づいて、検定時刻別及び放射能量別に製造可能な前記製品
の数量を特定した製品テーブルを生成する製品テーブル生成部と、を有
し、
前記製品テーブル生成部は、
前記放射性医薬品を使用する施設および検定日を受け付け、前記生産スケジュールテーブルに基づいて、前記検定日に対応する前記生産ロットの出荷可能時刻から定まる、当該生産ロットの製品が前記施設に到着可能な最も早い時刻を特定し、前記最も早い時刻以降の検定時刻に対応する製品を前記製造可能な製品として特定する、管理装置。
【請求項8】
放射性医薬品に係る製品の受注または発注を管理する管理装置であって、
前記放射性医薬品となるバルク溶液の濃度および残量を前記バルク溶液の生産ロットごとに有する生産スケジュールテーブルを記憶するデータ記憶部と
前記生産スケジュールテーブルに基づいて、検定時刻別及び放射能量別に製造可能な前記製品の数量を特定した製品テーブルを生成する製品テーブル生成部と、を有し、
前記生産ロットは、第1の生産ロットと前記第1の生産ロットよりも後に生産される第2の生産ロットであり、前記第1の生産ロットに係る製品と前記第2の生産ロットに係る製品の検定時刻及び放射能量に重複がある、管理装置。
【請求項9】
放射性医薬品に係る製品の受注または発注を管理するコンピュータが実行する方法であって、
前記放射性医薬品となるバルク溶液の濃度および残量を前記バルク
溶液の生産ロットごとに有
し、かつ、前記生産ロットの出荷可能時刻をさらに有する生産スケジュールテーブルを記憶し、
前記生産スケジュールテーブルに基づいて、検定時刻別及び放射能量別に製造可能な前
記製品
の数量を特定した製品テーブルを生成
し、
前記製品テーブルの生成では、
前記放射性医薬品を使用する施設および検定日を受け付け、
前記生産スケジュールテーブルに基づいて、前記検定日に対応する前記生産ロットの出荷可能時刻から定まる、当該生産ロットの製品が前記施設に到着可能な最も早い時刻を特定し、
前記最も早い時刻以降の検定時刻に対応する製品を前記製造可能な製品として特定する、方法。
【請求項10】
放射性医薬品に係る製品の受注または発注を管理するコンピュータが実行する方法であって、
前記放射性医薬品となるバルク溶液の濃度および残量を前記バルク溶液の生産ロットごとに有する生産スケジュールテーブルを記憶し、
前記生産スケジュールテーブルに基づいて、検定時刻別及び放射能量別に製造可能な前
記製品の数量を特定した製品テーブルを生成し、
前記生産ロットは、第1の生産ロットと前記第1の生産ロットよりも後に生産される第2の生産ロットであり、前記第1の生産ロットに係る製品と前記第2の生産ロットに係る製品の検定時刻及び放射能量に重複がある、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放射性医薬品に係る製品の受注または発注を管理する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
PET(ポジトロン・エミッション・トモグラフィー;陽電子放出核種を利用した画像再構成装置)検査の利用拡大に伴い、PET製剤の需要が増加している。PET製剤の中には、半減期が非常に短いものもあり、この製剤については、製造後速やかに検査を実施
する検査施設に配達しなければならない。
【0003】
例えば、特許文献1には、放射性医薬品をバルクで生産し、バルク溶液を分注した製品を効率的に複数の施設へ配送するスケジュールを立てる技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、PET製剤のような放射性医薬品は、時間の経過とともに放射能量が減少する。従って、製品として検定時刻と放射能量とが定まることで初めて、バルク溶液から分注すべき液量が定まる。そのため、既に受注済みの各製品の検定時刻、放射能量及び数量に応じて、さらに受注可能である検定時刻別放射能量別の製品数量が変動する。
【0006】
そこで、本発明の目的は、放射性医薬品に係る製品の受注または発注を効率的に行うことである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一つの実施態様に従う放射性医薬品に係る製品の受注または発注を管理するコンピュータに実行させるためのコンピュータプログラムは、前記コンピュータに、第1の生産ロットで生産される放射性医薬品に係る第1の製品であって、少なくとも放射能量及び検定時刻で特定される放射能量別の第1の製品の表示領域を有する受注または発注を受け付ける画面を表示させる処理と、前記表示領域の表示に基づいて指定された検定時刻及び放射能量に基づく受注または発注に係る処理と、を実行させる。前記表示領域は、前記第1の生産ロットの確定済み受発注情報に基づいて前記第1の製品の受注または発注が可能か否かを示す情報を表示する領域、を有する。
【0008】
好適な実施態様では、前記表示領域に表示される前記受注または発注が可能であるか否かを示す情報は、前記第1の製品の出荷可能時刻と、前記放射性医薬品に係る製品の製造場所から前記放射性医薬品を使用する施設までの所要時間とから定まる第1の時刻以降の検定時刻に対応して表示されるようにしてもよい。
【0009】
好適な実施態様では、前記表示領域に表示される前記受注または発注が可能であるか否かを示す情報は、放射能量別及び検定時刻別に表示されてもよい。
【0010】
好適な実施態様では、前記表示領域に表示される前記受注または発注が可能であるか否かを示す情報は、受注または発注が可能な製品数量であってもよい。
【0011】
好適な実施態様では、前記表示領域に表示される前記受注または発注が可能であるか否かを示す情報は、前記第1の製品の液量でよい。
【0012】
好適な実施態様では、前記表示領域は、さらに、前記第1の生産ロットより後の時刻に生産される第2の生産ロットの放射性医薬品に係る第2の製品の出荷可能時刻と、前記所要時間とから定まる第2の時刻以降の検定時刻について、前記第2の製品の受注または発注が可能か否かを表示する領域を有してもよい。
【0013】
好適な実施態様では、前記表示領域において、前記第1の製品と前記第2の製品が識別可能に表示されるようにしてもよい。
【0014】
好適な実施態様では、前記製品数量の表示領域において、前記第1の製品、及び前記第2の製品のいずれも受注または発注が可能である検定時刻及び放射能量については、前記第1の製品の受注または発注が可能か否かを示す情報が表示されるようにしてもよい。
【0015】
好適な実施態様では、前記表示領域において、前記第1の製品、及び前記第2の製品のいずれも受注または発注が可能である検定時刻及び放射能量については、前記第2の製品の受注または発注が可能か否かを示す情報が表示されるようにしてもよい。
【0016】
好適な実施態様では、前記表示領域において、前記第1の製品、及び前記第2の製品のいずれも受注または発注が可能である検定時刻及び放射能量については、前記第1の製品の受注または発注が可能な数量と、前記第2の製品の受注または発注が可能な数量との和が表示されるようにしてもよい。
【0017】
好適な実施態様では、前記第1の製品は、前記第1の生産ロットの生産時刻に基づいて定まる第1の有効期限を有し、前記第2の製品は、前記第2の生産ロットの生産時刻に基づいて定まる第2の有効期限を有する。そして、前記表示領域において、前記第1の製品の受注または発注が可能か否かを示す情報は、前記第1の有効期限以前の検定時刻について表示され、前記第2の製品の受注または発注が可能か否かを示す情報は、前記第2の有効期限以前の検定時刻について表示されるようにしてもよい。
【0018】
好適な実施態様では、前記コンピュータに、確定した受注または発注に係る情報を出力する処理を、さらに実行させてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の一実施形態に係る放射性医薬品の管理システムである。
【
図2】施設テーブル121及び生産スケジュールテーブル123の一例を示す。
【
図3】製品テーブル125及び受注テーブル127の一例を示す。
【
図4】製品テーブル生成部11の処理手順を示すフローチャートである。
【
図7】画面生成部13の処理手順を示すフローチャートである。
【
図8】受注処理部15の処理手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の一実施形態に係る放射性医薬品の受注または発注を管理する放射性医薬品の受発注システムについて、図面を参照して説明する。
【0021】
図1は、本実施形態にかかる放射性医薬品の管理システムの全体構成を示す。
【0022】
本システムは、放射性医薬品管理装置(以下、単に管理装置と称する)1と、一以上の施設端末7とがネットワーク9を介して接続されている。
【0023】
管理装置1は、例えば、放射性医薬品の製造を行う製薬会社に配置されていても良い。施設端末7は、例えば、放射性医薬品に係る製品を患者に投与する医療機関等の施設に配置されていても良い。施設が放射性医薬品に係る製品を製薬会社に対して発注し、製薬会社はそれを受注する。管理装置1は、この製品の受発注に係る処理を行う。施設からの発注を受注すると、製薬会社は受注した放射性医薬品に係る製品を製造し、製造場所(製造工場)から施設まで所定の輸送手段で配送する。
【0024】
なお、この明細書においては、受注は製薬会社から見たときの表現で、発注は施設から見たときの表現であり、両者は実質的に同じ行為である。従って、本願明細書では、管理装置1における受注、発注及び受発注に相当する処理は共通する。
【0025】
管理装置1は、管理装置本体10と、キーボードまたはポインティングデバイスなどの入力装置2と、液晶ディスプレイなどの表示装置3とを有する。入力装置2と表示装置3とが一体となったタッチパネル型のディスプレイでも良い。
【0026】
施設端末7は、通信機能を有する端末装置であればよく、例えば、携帯電話機、携帯情報端末、あるいは汎用的なパーソナルコンピュータなどでもよい。施設端末7は、液晶パネルなどの表示装置、及びキーボードあるいはポインティングデバイスなどの入力装置を有する。
【0027】
管理装置本体10は、例えば、プロセッサ及びメモリを備えた汎用的なコンピュータシステムにより構成され、以下に説明する管理装置本体10内の個々の構成要素または機能は、例えば、コンピュータプログラムを実行することにより実現される。
【0028】
管理装置本体10は、製品テーブル生成部11と、画面生成部13と、受注処理部15と、データ記憶部120とを有する。
【0029】
データ記憶部120は、施設テーブル121と、生産スケジュールテーブル123と、製品テーブル125と、受注テーブル127とを有する。
【0030】
施設テーブル121は、製品を発注する施設に関する情報を有する。
【0031】
図2Aは施設テーブル121のデータ構造の一例を示す。すなわち、施設テーブル121は、データ項目として、施設名1211と、施設の住所1212と、所要時間1213と、輸送手段1215とを有する。
【0032】
施設名1211は施設の名称であり、各施設名1211はユニークである。
【0033】
所要時間1213は、放射性医薬品の製造場所からその医薬品を使用する各施設までに要する時間である。例えば、所要時間1213には、車両、航空機などの所定の移動手段を用いたときに要する時間及び施設内で医薬品が使用可能な状態になるまでに要する時間を含んでもよい。所要時間1213は、車両輸送の場合は渋滞等による遅れ、及び航空輸送の場合はダイヤ乱れや手続に要する時間などを考慮して定めても良い。さらには、季節及び時間帯などによる道路事情の相違あるいは航空機への搭載手続きに要する時間の相違などを考慮して所要時間1213を定めてもよい。
【0034】
輸送手段1215は、製品を配送する場合の手段であり、例えば、車両による輸送と航空機による輸送とがある。航空機による輸送を必要とする施設においては、航空機ごとに積載可能な放射能量を示す最大輸送指数が定められているので、その最大輸送指数に基づく受注制限を設けても良い。
【0035】
生産スケジュールテーブル123は、医薬品を製造するスケジュールに関する情報を有する。
【0036】
ここで、本実施形態の放射性医薬品は液体である。本実施形態では、放射性医薬品がバルク溶液として生産され、そのバルク溶液から所定量の溶液がバイアル壜に分注されて個別の製品が製造される。バルク溶液の生産は1日に複数回行われても良い。本実施形態で
は、第1回生産ロットから第3回生産ロットまで、バルク溶液の生産が3回行われる。
【0037】
図2Bは、生産スケジュールテーブル123のデータ構造の一例を示す。すなわち、生産スケジュールテーブル123は、生産される年月日1231と、ロットNo.1232と、品目1233と、生産量1234と、濃度1235と、生産時刻1236と、出荷可能時刻1237と、残量1238と、有効期限1239を有する。
【0038】
品目1233は、医薬品の種別を示し、放射性核種の種類を含めてもよい。
【0039】
生産量1234は、各ロットで生産されるバルク溶液の容量である。生産ロットによりバルク溶液の生産量1234を変えてもよい。例えば、生産時刻1236が早い生産ロットの生産量1234は遅い生産ロットよりも大容量でよいし、あるいは、生産時刻1236が遅い生産ロットの生産量1234は早い生産ロットよりも大容量でよい。これにより、需要見込みに応じて生産量を調整できる。
【0040】
濃度1235は、各生産ロットのバルク溶液の生産時放射能濃度である。生産ロットによりバルク溶液の濃度1235を変えてもよい。例えば、生産時刻1236が早い生産ロットが遅い生産ロットよりも高濃度でよいし、あるいは、生産時刻1236が遅い生産ロットが早い生産ロットよりも高濃度でよい。これにより、例えば、ある生産ロットは濃度1235を薄くして近郊の施設に好適としても良いし、別の生産ロットは濃度1235を濃くして主に遠方の施設に好適としても良い。
【0041】
生産時刻1236は、各ロットのバルク溶液が生産される時刻である。
【0042】
出荷可能時刻1237は、各ロットのバルク溶液から分注及び梱包等を行って、個別の製品が出荷可能となる時刻である。
【0043】
残量1238は、各ロットのバルク溶液のうち、既に受注した製品で使用する液量等を差し引いた製品として使用可能な溶液の残量である。受注処理部15が製品を受注するごとに、受注した製品の検定時刻及び放射能量に基づいてこの製品に必要な液量を算出し、その液量が残量1238から減算されるようにしても良い。また、残量1238は、所定のロス分の液量が生産量1234から予め減算されていても良い。
【0044】
なお、残量1238から受注した製品に必要な液量を減算する際、理論的に必要とされる液量にわずかな過量を加えてもよい。これは、以下の理由による。すなわち、バイアル壜は医薬品を安定して封入するのに適しているが、注射器等で内容液を取り出す場合に容器内面に医薬品が付着するため全量を取り出すことができないからである。なお、この過量は一定でなくてもよく、理論的に必要とされる液量によって段階的に設定されてもよい。
【0045】
有効期限1239は、各生産ロットの溶液の有効期限である。有効期限1239は、生産時刻1236に基づいて定まっても良い。各ロットから製造される製品がカバーし得る検定時刻の範囲が、出荷可能時刻1237から有効期限1239までである。
【0046】
製品テーブル125は、製品として受注または発注が可能な製品の数量を有する。
【0047】
放射性医薬品に係る製品は、品目、検定時刻、及び放射能量により製品仕様が特定される。従って、放射性医薬品に係る製品を使用する施設では、品目、検定時刻、及び放射能量並びに数量を特定して発注を行うこととなる。また、放射性医薬品の放射能量は時々刻々減少していくので、検定時刻において所望の放射能量を有する製品は、放射性核種の半
減期に基づいて算出された容量をバルク溶液から分注して製造される。同一生産ロットからの分注液量は、放射能量と検定時刻によって異なり、同じ検定時刻であれば放射能量に応じて多くなる。さらに、同じ放射能量であれば検定時刻が遅い方がより多くの分注液量を要する。
【0048】
そのため、各生産ロットについて、生産スケジュールテーブル123の残量1238から検定時刻別放射能量別に製品の数量を求めることができる。製品テーブル125には、生産ロットごとの、検定時刻別放射能量別に受発注可能な製品数量が記憶される。
【0049】
図3Aは、製品テーブル125のデータ構造の一例を示す。すなわち、製品テーブル125は、生産される年月日1251と、ロットNo1252と、品目1253と、検定時刻1254と、放射能量1255と、数量1256とを有する。
【0050】
受注テーブル127は、各施設からの製品の受注状況を有する。
【0051】
図3Bは、受注テーブル127のデータ構造の一例を示す。すなわち、受注テーブル127は、年月日1271と、施設名1272と、品目1273と、検定時刻1274と、放射能量1275と、数量1276とを有する。
【0052】
製品テーブル生成部11は、放射性医薬品の生産スケジュールに基づいて、受発注可能な放射性医薬品に係る製品の数量を算出する。例えば、製品テーブル生成部11は、生産スケジュールテーブル123を参照して、製品テーブル125を生成する。
【0053】
図4は、製品テーブル生成部11の処理手順を示すフローチャートである。
【0054】
製品テーブル生成部11は、製造年月日が指定されると、データ記憶部120に記憶されている生産スケジュールテーブル123からその日の生産スケジュールのデータを読み込む(S101)。
【0055】
次に、製品テーブル生成部11は、処理対象とする生産ロットを選択する(S103)。
【0056】
製品テーブル生成部11は、選択された生産ロットの生産スケジュールデータに基づいて、受発注可能な製品の数量を算出する(S105)。
【0057】
例えば、製品として用意される検定時刻は複数あり、各検定時刻における放射能量も複数あり、それらはいずれも予め定められていてもよい。このとき、製品テーブル生成部11は、予め定められた検定時刻別放射能量別に、放射能量の減衰を考慮した上で、濃度1235及び残量1238から製造可能な製品数を算出する。このとき、各製品に必要な液量は、例えば、放射性医薬品の核種によって定まる放射能量の時間減衰特性に基づいて算出されても良い。また、有効期限1239以降の検定時刻については、数量の算出は行わなくて良い。算出された検定時刻別放射能量別の製品数量は製品テーブル125に保存される。ここで、分注される液量の上限値及び下限値は予め定められていてもよい。例えば、バイアル壜のサイズが予め決まっていれば、これに応じて分注される液量の範囲も定まる。これにより、各生産ロットから製造可能な検定時刻及び放射能量の範囲が定まる。
【0058】
製品テーブル生成部11は、全生産ロットについて受発注可能な数量の算出が終わるまで、ステップS103及びS105の処理を繰り返す(S107)。
【0059】
製品テーブル生成部11は、任意のタイミングで上記の処理を行うようにしても良い。
例えば、生産スケジュールテーブル123にある製造年月日の生産スケジュールが登録されたときに、製品テーブル生成部11がこの処理を行っても良い。あるいは、受注処理部15が受注処理を行い、生産スケジュールテーブル123の残量1238が更新されたときに、製品テーブル生成部11がその受注日について上記処理を行っても良い。
【0060】
画面生成部13は、受発注画面を生成する。
【0061】
【0062】
同図に示すように、受発注画面400は、条件入力部410と、製品数量表示部420と、発注条件表示部430と、発注ボタン440とを有する。
【0063】
受発注画面400は、管理装置本体10に接続された表示装置3に表示されても良いし、施設端末7の表示装置に表示されても良い。表示装置3に表示されるときは、施設から電話、ファクシミリ等で発注を受けて、製薬会社のスタッフが受発注画面400に対する入力を行う。施設端末7に表示されるときは、施設のスタッフが受発注画面400に対する入力を行う。
【0064】
条件入力部410は、施設411、品目412、及び検定日413の各入力領域を有する。施設411、品目412、及び検定日413は、オペレータによる入力を受け付ける。
【0065】
施設411は、製品の配送先である施設の指定を受け付ける。例えば、施設411には医薬品を発注する施設名が入力される。施設411では、予め施設テーブル121に登録されている施設が選択されるようにしても良い。
図5では、製品の製造場所からの所要時間が180分の施設Xが選択されている。
図6では、同じく所要時間が300分の施設Yが指定されている。
【0066】
なお、別の手段で施設を指定する場合は、施設411は省略可能である。例えば、施設端末7に受発注画面400を表示する場合は、発注する施設はその端末7が設置されている施設である。施設の特定は、例えば、端末固有のMACアドレスまたはIPアドレス等を用いて行っても良いし、端末のGPSを用いて取得した位置情報を用いて行ってもよい。従って、その場合は、受発注画面400において施設411の表示は省略されてもよく、受注処理部15が発注要求を送信した施設端末7が配置されている施設からの発注と判定してもよい。
【0067】
製品数量表示部420は、各生産ロットで生産される製品の出荷可能時刻と、指定された施設までの所要時間とから定まる時刻以降の検定時刻について、製品の受注または発注が可能か否かを示す情報を表示する。この図の例では、製品の受注または発注が可能か否かを示す情報は製品数量であるが、これ以外にも、例えば、製品の液量(残量)であってもよい。
【0068】
製品数量表示部420は、検定時刻と放射能量(単位はMBq)のマトリックスとなっている。放射線量はマトリックスの上段から下段へ向けて徐々に増加(例えば、A(MBq)<B(MBq))している。マトリックスの各交点に受発注可能な製品の数量が表示されている。空欄は受発注不可を示す。製品数量表示部420に表示される製品数量は、製品テーブル125に保存されている数値でよい。つまり、製品テーブル125の数量1256が対応する検定時刻及び放射線量のエリアにコピーされる。
【0069】
製品数量表示部420には、第1回生産ロットから製造可能な製品数量の表示領域42
1と、第2回生産ロットから製造可能な製品数量の表示領域422と、第3回生産ロットから製造可能な製品数量の表示領域423とが含まれる。製品数量表示部420の表示は、画面を操作するオペレータが生産ロットの違いを識別可能であっても良いし、そうでなくてもよい。
【0070】
ところで、本実施形態では、製品の製造場所から製品を使用する各施設まで製品を配送する必要がある。従って、各施設で受発注が可能な検定時刻は、それぞれの施設までの配送に要する時間を考慮する必要がある。つまり、各施設で受発注が可能な最も早い検定時刻は、生産ロットごとに、各生産ロットの出荷可能時刻と製造場所からの所要時間により定まる。そして、受発注画面400は、生産ロットごとに、受発注が可能な最も早い検定時刻以降についてのみ受発注を受け付ける。
【0071】
例えば、2回目生産ロットの出荷可能時刻が午前7時30分であるとき、施設Xまでの所要時間は120分、施設Yまでは240分であるので、
図5に示す施設Xについては最も早い検定時刻が9:30、
図6に示す施設Yについては最も早い検定時刻が11:30となっている。
【0072】
また、最も遅い検定時刻は、各生産ロットの有効期限により定まる。すなわち、受発注画面400は、有効期限より前の検定時刻についてのみ受発注を受け付ける。従って、製品数量表示部420では、各生産ロットの有効期限より前の検定時刻について数量が表示され、有効期限を過ぎた検定時刻については表示されない。1回目の生産ロットの有効期限が午前11時50分であるとき、
図5に示す施設X及び
図6に示す施設Yのいずれにおいても、最も遅い検定時刻は午前11時30分である。
【0073】
また、各生産ロットのエリアが右肩上がりになっているのは、分注液量の上限値及び下限値が定められているからである。つまり、分注量の下限値の液量を有する製品は、時間経過とともに放射線量が減るので、それにより上側の斜めラインが規定される。例えば、
図5の第3回生産ロットのエリアが13:00、13:30、14:00、14:30の最小放射能量が減少している。同じく、分注量の上限値の液量を有する製品も、時間経過とともに放射能量が減るので、それにより下側の斜めラインが規定される。例えば、
図5の第3回生産ロットのエリアが14:00~16:00までの最大放射能量が減少している。
【0074】
また、本実施形態では1日に複数回生産を行うので、同じ製造年月日のある検定時刻及び放射能量の製品について、第1の生産ロットに係る製品と、第1の生産ロットよりも後に生産された第2の生産ロットに係る製品のいずれも受発注が可能である場合がある。画面生成部13は、そのような複数の生産ロットから供給可能な重複する検定時刻及び放射能量については、所定のポリシーに従って製品数量表示部420に表示する数量を決定するようにしても良い。
【0075】
例えば、生産時刻1236が遅い第2の生産ロットの製品数を優先させて表示させるポリシーが採用されても良い。この場合、そのような2つのロットから供給可能な重複する検定時刻及び放射能量については、製品数量表示部420に生産時刻1236が遅い生産ロットの製品数が表示される。これにより、生産時刻が遅い生産ロットに係る製品を優先させて受注できる。生産時刻1236が遅い生産ロットを用いた方が、同じ検定時刻及び放射能量の製品に必要な分注量が少なくて済むため、より多くの製品を確保できる。
【0076】
また、施設によって異なるポリシーが採用されてもよい。例えば、輸送にかかる所要時間が所定以上である施設の場合、生産時刻が早い第1の生産ロットの製品数を優先させて表示させ、所要時間が所定より短い施設の場合、生産時刻が遅い第2の生産ロットの製品
数を優先させて表示させてもよい。
【0077】
一方で、生産時刻1236が早い第1の生産ロットの製品数を優先させて表示させるポリシーが採用されても良い。この場合、2つのロットから供給可能な重複する検定時刻及び放射能量については、製品数量表示部420に生産時刻1236が早い生産ロットの製品数が表示される。これにより、生産時刻が早い生産ロットに係る製品を優先させて受注できる。その結果、生産時刻が遅い生産ロットのバルク溶液が温存され、検定時刻間際の発注をより多く受け付けられる可能性が高くなる。
【0078】
さらには、2つのロットから供給可能な重複する検定時刻及び放射能量について、製品数量表示部420では、第1の生産ロットに係る製品の受発注可能数量と第2の生産ロットに係る製品の受発注可能数量の和を表示するポリシーでも良い。これにより、重複する検定時刻及び放射能量について、受発注可能な最大の数量を提示できる。
【0079】
製品数量表示部420のマトリックスにおいて、数字が表示されている検定時刻及び放射能量の製品については、その数字を超えない範囲で受注及び発注が可能である。そこで、以下に説明するように、オペレータは製品数量表示部420で検定時刻及び放射能量を選択し、数量入力エリア431で受発注可能な範囲の数値を指定して受注または発注するようにしてもよい。なお、検定時刻及び放射能量の指定は、これ以外の方法で行われても良い。
【0080】
製品数量表示部420のマトリックスの各エリアは、オペレータによる選択が可能である。製品数量表示部420のいずれかのエリアが選択されると、選択されたエリアを囲む選択表示425が表示される。
【0081】
発注条件表示部430には、選択表示425に対応する検定時刻及び放射能量が表示される。さらに、発注条件表示部430は、数量の入力を受け付けるエリア431を有する。選択表示425で選択された検定時刻及び放射能量と、数量の入力エリア431に入力された数量が受発注の条件となる。なお、発注数量をデフォルト設定(例えば「1」)とし、受発注画面400から数量の入力エリア431を省略しても良い。
【0082】
発注ボタン440が押されると、受発注画面400はそのときの条件入力部410及び数量表示部420に示す受発注条件で受発注の要求を受け付ける。
【0083】
図5の施設Xと
図6の施設Yは、製品の製造場所からそれぞれへの所要時間1213が120分と240分である。従って、この違いによってそれぞれの施設から発注できる製品数量が変化する。
【0084】
図7は、画面生成部13の処理手順を示すフローチャートである。
【0085】
画面生成部13が、まず、受発注画面400を表示させる。このとき条件入力部410、数量表示部420及び発注条件表示部430の表示は任意である。ここで、画面生成部13は、条件入力部410において指定された施設、品目、検定日を受け付ける(S201)。
【0086】
次に、画面生成部13は、施設テーブル121から、ステップS201で指定された施設の所要時間1213を取得する(S203)。
【0087】
そして、画面生成部13は、生産スケジュールテーブル123から、品目1233及び検定日に対応する年月日1231に基づいて、各生産ロットの出荷可能時刻1237を取
得する。そして、各生産ロットの製品が施設に到着可能な最も早い時刻を特定する(S205)。
【0088】
さらに、画面生成部13は、生産スケジュールテーブル123を参照して、各生産ロットの有効期限1239を特定する(S207)。
【0089】
画面生成部13は、製品テーブル125を参照して、生産ロット別に、最も早い到着時刻以降でかつ有効期限より前の検定時刻について、放射能量別の製品数量を特定して製品数量表示部420を生成する(S209)。このとき、2つの生産ロットから供給可能な重複する検定時刻及び放射能量については、所定のポリシーに従って処理をするようにしても良い。本実施形態では、生産時刻が後の生産ロットの表示を優先させるポリシーを採用している。
【0090】
画面生成部13は、上記の処理に従って生成された製品数量表示部420を有する受発注画面400を表示装置に表示させる(S211)。
【0091】
画面生成部13は、条件入力部410において、施設、品目、検定日のいずれか一つ以上が更新されるごとに、上述の処理を実行するようにしても良い。
【0092】
受発注画面400において発注ボタン440が押下されると、受注処理部15が受注処理を行う。受注処理部15は、製品数量表示部420の表示に基づいて指定された検定時刻、放射能量及び数量に基づいて受注処理を行う。
【0093】
図8は、受注処理部15の処理手順を示すフローチャートである。
【0094】
受注処理部15は、受発注画面400から受発注要求を受け付ける(S301)。この受発注要求には、例えば、受発注画面400で指定された施設名、品目、検定日、検定時刻、放射能量及び発注数量を含む受発注情報が含まれていても良い。
【0095】
受注処理部15は、製品テーブル125を参照して、取得した受発注情報に基づいて受発注の可否を判定する(S303)。例えば、受注処理部15は、受発注要求に係る品目、検定日、検定時刻及び放射能量の製品が要求された数量だけ確保できるか否かを判定する。
【0096】
ステップS303で受注が可能であると判定された場合(S303:Yes)、受注処理部15は製品テーブル125及び受注テーブル127を更新して、受注を完了する(S305)。例えば、受注処理部15は、受注処理として、受発注情報に対応する製品テーブル125のレコードの数量1256を発注された数量だけ減らす。さらに、受注処理部15は、受発注情報に対応する受注テーブル127のレコードの数量1276に発注された数量を加算する。
【0097】
なお、このときに、発注した施設が航空機輸送が必要な施設であれば、受注済み製品の放射線量1275及び数量1276に基づいて、輸送に用いる航空機の最大輸送指数を超過していないか否かを判定し、超過する場合には受注不可としても良い。
【0098】
受注処理部15は、受注完了後、受注または発注に係る所定の受発注情報の出力を指示する(S307)。例えば、受注処理部15からの指示に基づいて、管理装置1から生産設備を管理するシステムへ受発注に係る製品情報を含む生産指示情報を出力してもよいし、図示しないプリンタ等から受発注に係る製品情報を含む配送情報を送り状又は配送伝票などに印刷するようにしてもよい。
【0099】
ステップS303で受発注が可能でないと判定された場合(S303:No)、処理を終了する。このとき、受注処理部15は、オペレータに対して何らかのエラーメッセージを出力するようにしても良い。
【0100】
上述した本発明の実施形態は、本発明の説明のための例示であり、本発明の範囲をそれらの実施形態にのみ限定する趣旨ではない。当業者は、本発明の要旨を逸脱することなしに、他の様々な態様で本発明を実施することができる。
【符号の説明】
【0101】
10 管理装置本体
11 製品テーブル生成部
13 画面生成部
15 受注処理部
120 データ記憶部
121 施設テーブル
123 生産スケジュールテーブル
125 製品テーブル
127 受注テーブル
400 受発注画面