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特許6995979ヘテロエピタキシャルウェハおよびヘテロエピタキシャルウェハの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-17
(45)【発行日】2022-01-17
(54)【発明の名称】ヘテロエピタキシャルウェハおよびヘテロエピタキシャルウェハの製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/365 20060101AFI20220107BHJP
【FI】
H01L21/365
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2020512014
(86)(22)【出願日】2018-08-16
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-11-05
(86)【国際出願番号】 EP2018072229
(87)【国際公開番号】W WO2019042782
(87)【国際公開日】2019-03-07
【審査請求日】2020-04-21
(31)【優先権主張番号】17188124.6
(32)【優先日】2017-08-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】599119503
【氏名又は名称】ジルトロニック アクチエンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】Siltronic AG
【住所又は居所原語表記】Einsteinstrasse 172,81677 Muenchen, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】特許業務法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】タパ,サラド・バハドゥール
(72)【発明者】
【氏名】フォルダーベストナー,マルティン
【審査官】田中 崇大
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-222730(JP,A)
【文献】特開2012-160608(JP,A)
【文献】国際公開第2011/155496(WO,A1)
【文献】特開2014-057020(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/365
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヘテロエピタキシャルウェハであって、以下の順序で、
直径および厚さを有するシリコン基板と、
AlN核生成層と、
第1の平均Al含有量zを有するAlGa1-zN層である第1のひずみ蓄積層とを備え、0<zであり、さらに、
5単位以上50単位以下の第1の連続層を含む第1のひずみ保持ブロックを備え、前記第1の連続層はAlN層と少なくとも2つのAlGaN層とを含み、前記第1のひずみ保持ブロックは第2の平均Al含有量yを有し、y>zであり、さらに、
第3の平均Al含有量xを有するAlGa1-xN層である第2のひずみ蓄積層を備え、0≦x<yであり、
5単位以上50単位以下の第2の連続層を含む第2のひずみ保持ブロックを備え、前記第2の連続層はAlN層と少なくとも1つのAlGaN層とを含み、前記第2のひずみ保持ブロックは第4の平均Al含有量wを有し、x<w<yであり、さらに、
GaN層を備え、前記AlN核生成層と前記GaN層との間の前記層はAlGaNバッファを形成する、ヘテロエピタキシャルウェハ。
【請求項2】
前記AlGaNバッファの厚さは1.0μm以上5μm以下である、請求項1に記載のヘテロエピタキシャルウェハ。
【請求項3】
前記AlGaNバッファの平均Al含有量は30%以上である、請求項1または2に記載のヘテロエピタキシャルウェハ。
【請求項4】
前記AlGaNバッファは、第5の平均Al含有量vを有するAlGa1-vN層である第3のひずみ蓄積層をさらに含み、0≦v<wである、請求項1~3のいずれか1項に記載のヘテロエピタキシャルウェハ。
【請求項5】
前記AlGaNバッファは超格子ブロックをさらに含み、前記超格子ブロックは第6の平均Al含有量uを有し、u>vおよびu<wである、請求項1~4のいずれか1項に記載のヘテロエピタキシャルウェハ。
【請求項6】
前記基板の前記直径および前記厚さは、それぞれ150mmおよび1000μm以下である、またはそれぞれ200mmおよび1200μm以下である、またはそれぞれ300mmおよび1500μm以下である、請求項1~5のいずれか1項に記載のヘテロエピタキシャルウェハ。
【請求項7】
前記AlGaNバッファの絶縁破壊強度は2.5MV/cm以上である、請求項1~6のいずれかに記載のヘテロエピタキシャルウェハ。
【請求項8】
前記シリコン基板は、シリコン単結晶ウェハ、SOIウェハ、またはシリコン単結晶トップ層を有する積層ウェハである、請求項1~7のいずれかに記載のヘテロエピタキシャルウェハ。
【請求項9】
ヘテロエピタキシャルウェハの製造方法であって、前記方法はステップを以下の順序で含み、前記ステップは、
直径および厚さを有するシリコン基板を与え前記シリコン基板の上に複数の層を積層することにより積層基板を形成するステップを含み、前記ステップは、
前記シリコン基板の上にAlN核生成層を積層するステップと、
前記AlN核生成層の上に、第1の平均Al含有量zを有するAlGa1-zN層である第1のひずみ蓄積層を積層するステップとを含み、0<zであり、さらに、
前記第1のひずみ蓄積層の上に、5単位以上50単位以下の第1の連続層を含む第1のひずみ保持ブロックを積層するステップを含み、前記第1の連続層はAlN層と少なくとも2つのAlGaN層とを含み、前記第1のひずみ保持ブロックは第2の平均Al含有量yを有し、y>zであり、さらに、
前記第1のひずみ保持ブロックの上に、第3の平均Al含有量xを有するAlGa1-xN層である第2のひずみ蓄積層を積層するステップを含み、0≦x<yであり、
前記第2のひずみ蓄積層の上に、5単位以上50単位以下の第2の連続層を含む第2のひずみ保持ブロックを積層するステップを含み、前記第2の連続層はAlN層と少なくとも1つのAlGaN層とを含み、前記第2のひずみ保持ブロックは第4の平均Al含有量wを有し、x<w<yであり、さらに、
前記第2のひずみ保持ブロックの上にGaN層を積層するステップを含む、ヘテロエピタキシャルウェハの製造方法。
【請求項10】
前記積層基板の曲率が凹状曲率であるときにある時点で前記第1のひずみ保持ブロックを積層するステップを実行すること、および、前記積層基板の曲率が凸状曲率であるときにある時点で前記第2のひずみ保持ブロックを積層するステップを実行することとを含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記第1のひずみ保持ブロックの積層中に前記積層基板の曲率を増大するステップと、ΔC/Δthの値が-5km-1/μm未満になったときに前記第1のひずみ保持ブロックの成長を止めるステップとを含み、ΔC/Δthは、厚さの変化Δthに対する曲率の変化ΔCを表す、請求項9または10に記載の方法。
【請求項12】
ΔC/Δthの値が-1km-1/μm未満になったときに前記第2のひずみ保持ブロックの成長を止めるステップを含み、ΔC/Δthは、厚さの変化Δthに対する曲率の変化ΔCを表す、請求項9~11のいずれかに記載の方法。
【請求項13】
前記積層基板の曲率が凸状曲率であり50km-1以下であるときにある時点で前記GaN層の積層を開始するステップを含む、請求項9~12のいずれかに記載の方法。
【請求項14】
与えられた前記シリコン基板は、150mmの直径および1000μm以下の厚さ、または200mmの直径および1200μm以下の厚さ、または300mmの直径および1500μm以下の厚さを有する、請求項9~13のいずれかに記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シリコン基板、AlN核生成層、AlGaNバッファおよびGaN層をこの順序で含むヘテロエピタキシャルウェハに関する。本発明はさらに、このようなヘテロエピタキシャルウェハの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
先行技術/課題
基板と基板上に積層された層との格子不整合およびこれらの熱膨張係数に関する相違は、層が成長する間および積層基板を室温に冷却する間に、多層構造の反りを引き起こす。ウェハが反ることで、クラックの形成が生じる可能性がある。
【0003】
US2014/0374771A1は、半導体多層基板、半導体装置、およびその製造方法を開示している。この多層基板は、シリコンからなる基板と、予め定められた反りを基板に与える第1の反り制御層と、第2の反り制御層と含む。第2の反り制御層の単位厚さ当たりの反りの増加量は、第1の反り制御層の単位厚さ当たりの反りの増加量よりも少ない。効果、すなわち電流の漏れおよび電流コラプス(current collapse)をクラック密度の増加を伴うことなく抑制できかつ生産コストを低減できるという効果が得られる。
【0004】
Rowena他は、バッファの厚さを大きくすると、鉛直漏れ電流が抑制される傾向があり、AlGaN/GaN高電子移動度(HEMT)デバイスの絶縁破壊性能が改善されると報告している(“Buffer Thickness Contribution to Suppress Vertical Leakage Current With High Breakdown Field (2.3 MV/cm) for GaN on Si”IEEE Electron Device Letters, VOL. 32, NO. 11, November 2011)。
【0005】
基板の厚さを小さくすると曲率が大きくなることも知られており、よって、150mmおよび200mmの基板上にGaNを成長させるには、エピタキシャル膜の圧縮ひずみが相当に大きくなければならないと結論付けられた(Y.Cao et al.,“GaN-on-Silicon Growth by MOCVD: A Mechanistic Approach to Wafer Scaling”; CS MANTECH Conference, May 19th-22nd, 2014, Colorado, USA)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の発明者らは、依然としてさまざまな課題を解決する必要があることを発見した。
【0007】
絶縁破壊特性を改善するためにAlGaNバッファの厚さを大きくした場合、150mmまたは200mmまたは300mmという比較的大きな直径を有しSEMI標準に準じた厚さを有するシリコン基板を使用した場合よりも一層、ウェハの反りが大きくなる。エピ積層中のウェハの大きな反りは、表面上の温度を不均一にし、それによって最終的には層の厚さにばらつきが生じるとともにウェハの直径にわたって材料合金の変動が生じる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、これらの課題に対処するためになされたものである。
発明の説明
本発明は、ヘテロエピタキシャルウェハに向けられており、このヘテロエピタキシャルウェハは、以下の順序で、
直径および厚さを有するシリコン基板と、
AlN核生成層と、
第1の平均Al含有量zを有するAlGa1-zN層である第1のひずみ蓄積層とを備え、0<zであり、さらに
5単位以上50単位以下の第1の連続層を含む第1のひずみ保持ブロックを備え、第1の連続層はAlN層と少なくとも2つのAlGaN層とを含み、第1のひずみ保持ブロックは第2の平均Al含有量yを有し、y>zであり、さらに
第3の平均Al含有量xを有するAlGa1-xN層である第2のひずみ蓄積層を備え、0≦x<yであり、
5単位以上50単位以下の第2の連続層を含む第2のひずみ保持ブロックを備え、第2の連続層はAlN層と少なくとも1つのAlGaN層とを含み、第2のひずみ保持ブロックは第4の平均Al含有量wを有し、x<w<yであり、さらに
GaN層を備え、AlN核生成層とGaN層との間の層はAlGaNバッファを形成する。
【0009】
本発明はさらにヘテロエピタキシャルウェハの製造方法に向けられており、この方法はステップを以下の順序で含み、これらのステップは、
直径および厚さを有するシリコン基板を与えシリコン基板の上に複数の層を積層することにより積層基板を形成するステップを含み、このステップは、
シリコン基板の上にAlN核生成層を積層するステップと、
AlN核生成層の上に、第1の平均Al含有量zを有するAlGa1-zN層である第1のひずみ蓄積層を積層するステップとを含み、0<zであり、さらに、
第1のひずみ蓄積層の上に、5単位以上50単位以下の第1の連続層を含む第1のひずみ保持ブロックを積層するステップを含み、第1の連続層はAlN層と少なくとも2つのAlGaN層とを含み、第1のひずみ保持ブロックは第2の平均Al含有量yを有し、y>zであり、さらに、
第1のひずみ保持ブロックの上に、第3の平均Al含有量xを有するAlGa1-xN層である第2のひずみ蓄積層を積層するステップを含み、0≦x<yであり、
第2のひずみ蓄積層の上に、5単位以上50単位以下の第2の連続層を含む第2のひずみ保持ブロックを積層するステップを含み、第2の連続層はAlN層と少なくとも1つのAlGaN層とを含み、第2のひずみ保持ブロックは第4の平均Al含有量wを有し、x<w<yであり、さらに、
第2のひずみ保持ブロックの上にGaN層を積層するステップを含む。
【0010】
好ましくは、上記窒化物を含む層は有機金属気相成長法(MOCVD)によって積層される。前駆体として、化合物であるトリメチルガリウム、トリメチルアルミニウムおよびアンモニアを使用できる。水素または窒素は好適なキャリアガスである。窒化物を含む層の成長温度は、好ましくは700℃以上1160℃以下である。
【0011】
シリコン基板は、好ましくは、直径150mmで厚さ1000μm以下、好ましくは675μm以下の、または、直径200mmで厚さ1200μm以下、好ましくは725μm以下の、または、直径300mmで厚さ1500μm以下、好ましくは775μm以下の、シリコン単結晶ウェハである。好ましくは、シリコン基板は{111}配向を有し2°以下の結晶オフカットを有する。これに代えて、シリコン基板は、上記配向およびオフカットを有してもよく、かつSOIウェハ(シリコン・オン・インシュレータウェハ)またはシリコン単結晶トップ層を有する積層ウェハであってもよい。
【0012】
AlN核生成層の厚さは、好ましくは100nm以上300nm以下である。基板の曲率は、AlN核生成層の厚さが大きいほど負の方向に大きくなる、すなわち凹状の度合いが大きくなる。
【0013】
第1のひずみ蓄積層は、第1の平均Al含有量zを有するAlGaN層である、すなわち、第1のひずみ蓄積層はAlGa1-zN層であり、0<zである。これに代えて、第1のひずみ蓄積層は、Al含有量が成長方向に減少する2つ以上のAlGaN層を含むものであってもよい。好ましくは、zの値は40%以上60%以下である。第1のひずみ蓄積層とAlN核生成層の上面とで界面を形成する。第1のひずみ蓄積層は、第1のひずみ蓄積層の成長の条件下で積層基板の凹状の程度が小さくなるように、凹状の曲率を低減する。凹状の曲率は基板が薄いほど小さい。好ましくは、積層基板の曲率は、第1のひずみ蓄積層の成長の過程においては凹状のままである。第1のひずみ蓄積層の厚さは、好ましくは30nm以上200nm以下である。
【0014】
第1のひずみ保持ブロックは、5単位以上50単位以下の第1の連続層を含む。第1の連続層は、AlN層と、Al含有量が異なる少なくとも2つのAlGaN層とを含む。好ましくは、第1のひずみ蓄積層の上面のAl含有量は、第1のひずみ保持ブロックの最も近いAlGaN層のAl含有量以上である。加えて、第1の単位のAlN層と第1のひずみ蓄積層の上面とで界面を形成することが好ましい。第1の連続層において、Al含有量は基板から遠ざかるにつれて小さくなる。好ましくは、第1の連続層の1つのAlGaN層が勾配組成AlGaN層である。Al組成の勾配は、段階的でもよく、または連続的でもよい。
【0015】
本発明の好ましい実施形態に従うと、第1の連続層は、成長方向において、AlN層と、厚い一定組成AlGaN層と、連続勾配組成AlGaN層と、任意で薄い一定組成AlGaN層とで構成されている。厚い一定組成AlGaN層の厚さは、連続勾配組成AlGaN層の厚さの少なくとも2倍であり、かつ薄い一定組成AlGaN層の厚さの少なくとも2倍である。薄い一定組成AlGaN層のAl含有量は、連続勾配AlGaN層の上面のAl含有量と等しいかまたは同様である。積層基板の曲率は、厚い一定組成層および薄い一定組成層の成長中よりも連続勾配組成AlGaN層の成長中の方が早く増大する。積層基板の曲率は、連続勾配組成AlGaN層のAl含有量および厚さを調整するだけで容易に制御できる。
【0016】
第1のひずみ保持ブロックは、yである第2の平均Al含有量を有し、y>zである。好ましくは、第1のひずみ保持ブロックは、積層基板の曲率がゼロになるまで、または、積層基板の曲率の凹状の程度が第1のひずみ保持ブロックの積層の開始時よりも小さくなるまで、積層される。第1のひずみ保持ブロックを積層している間に、第1のひずみ保持ブロックの厚さの変化Δthに対する曲率の変化ΔC(ΔC/Δth)は、好ましくは積層の開始時に正になり、その後ほぼ「ゼロ」になる、すなわち、ほぼ一定のままである、または一定である、または負にさえなる。ひずみ保持ブロックの厚さは、積層基板の曲率にそれほど大きな影響を与えない。好ましくは、第1のひずみ保持ブロックの成長は、ΔC/Δthの値が-5km-1/μm未満になると停止される。
【0017】
第2のひずみ蓄積層は、第3の平均Al含有量xを有するAlGaN層である、すなわち、第2のひずみ蓄積層はAlGa1-xN層であり、0≦x<yである。第2のひずみ蓄積層と第1のひずみ保持ブロックの上面とで界面を形成することが好ましく、第3の平均Al含有量は、第1のひずみ保持ブロックの上面のAl含有量未満である。第2のひずみ蓄積層は圧縮ひずみを蓄積し、第2のひずみ蓄積層の厚さおよびAl含有量は、第2のひずみ蓄積層の積層の終了時において積層基板の曲率がゼロに近くなる、すなわち好ましくは|3|km-1未満になるように、選択される。そうすると、積層基板は第2のひずみ蓄積層の成長後にはほぼ平坦である。第2のひずみ蓄積層の厚さは、好ましくは30nm以上200nm以下である。
【0018】
第2のひずみ保持ブロックは、5単位以上50単位以下の第2の連続層を含む。第2の連続層は、AlN層と少なくとも1つのAlGaN層とを含む。第1の単位のAlN層と第2のひずみ蓄積層の上面とで界面を形成することが好ましい。第2の連続層のAlGaN層は、一定組成AlGaN層であってもよい、または、基板から遠ざかるにつれてAlが減少する勾配組成AlGaN層であってもよい。Al組成の勾配は、段階的でもよく、または連続的でもよい。本発明の好ましい実施形態に従うと、第2の連続層のAlGaN層は、一定組成AlGaN層であり、そのAl含有量はx以下である。第2のひずみ保持ブロックは、wである第4の平均Al含有量を有し、x<w<yである。
【0019】
好ましくは、第2のひずみ保持ブロックは、第2のひずみ保持ブロックの積層の開始時に対する、積層基板の曲率の相違が、負になるまで積層される。
【0020】
第2のひずみ保持ブロックは、積層基板の曲率を実質的には変えない。好ましくは、第2のひずみ保持ブロックの成長は、ΔC/Δthの値が-1km-1/μm未満になると停止され、第2のひずみ保持ブロックの成長後、積層基板はほぼ平坦なままである。
【0021】
GaN層と第2のひずみ保持ブロックの上面とが界面を形成する、または、これに代えて、GaN層と任意の第3のひずみ蓄積の上面とが界面を形成する、または、これに代えて、GaN層と任意の超格子ブロックの上面とが界面を形成する。
【0022】
第3のひずみ蓄積層がある場合、第3のひずみ蓄積層は、第5の平均Al含有量vを有するAlGaN層である、すなわち、第3のひずみ蓄積層はAlGa1-vN層であり、0≦v<wである。第3のひずみ蓄積層と第2のひずみ保持ブロックの上面とが界面を形成し、第5の平均Al含有量は、好ましくは第2のひずみ保持ブロックの上面のAl含有量未満である。第3のひずみ蓄積層は、圧縮ひずみをさらに蓄積し、積層基板の凸状の曲率をさらに大きくする。第2のひずみ蓄積層の厚さは、好ましくは30nm以上200nm以下である。
【0023】
ひずみ蓄積層とひずみ保持ブロックとを交互にしたものを実現することにより、比較的厚いAlGaNバッファを提供する一方で、積層基板をほぼ平坦に保ち、ウェハの曲率は25km-1を超えず、塑性変形は生じない。
【0024】
超格子ブロックがある場合、この超格子ブロックと、第2のひずみ保持ブロックの上面とが(すなわち第3のひずみ蓄積層は存在しない)、または第3のひずみ蓄積層の上面とが、界面を形成する。
【0025】
超格子ブロックは、好ましくは10以上100以下の層単位を含み、各層単位はAlN層とAlGaN層とを含む。超格子ブロックの第1の単位のAlN層と、第2のひずみ保持ブロックの上面とが(すなわち第3のひずみ蓄積層は存在しない)、または第3のひずみ蓄積層の上面とが、界面を形成する。超格子ブロックのこの単位のAlN層の厚さは、好ましくは5nm以上10nm以下である。超格子ブロックのこの単位のAlGaN層の厚さは、好ましくは超格子ブロックのこの単位のAlN層の厚さの2~10倍である。超格子ブロックのこの単位のAlGaN層のAlの含有量は、超格子ブロックのすぐ下にあるAlGaN層のAl含有量以下である。超格子ブロックは、第6の平均Al含有量uを有し、v<u<wである。超格子ブロックにより、積層基板の凸状の曲率を適度に大きくすることができる。
【0026】
第3のひずみ蓄積層および/または超格子ブロックの有無とは関係なく、AlGaNバッファの平均Al含有量は、好ましくは30%以上である。加えて、AlGaNバッファの厚さは、好ましくは1.0μm以上5μm以下である。
【0027】
GaN層は、意図的にドープされておらず炭素濃度が好ましくは1×1018原子/cm未満であり厚さが好ましくは50nm以上500nm以下である高純度GaN層であってもよい。
【0028】
好ましくは、GaN層は、炭素を含有する絶縁GaNバッファと上記高純度GaN層とを含む。絶縁GaNバッファがある場合、高純度GaN層と絶縁GaNバッファとが界面を形成し、絶縁GaNバッファと、第2のひずみ保持ブロックまたは第3のひずみ蓄積層または超格子ブロックとが、界面を形成する。
【0029】
絶縁GaNバッファ内の炭素の濃度は、好ましくは1×1018原子/cm以上1×1020原子/cm以下である。絶縁GaNバッファの厚さは、好ましくは500nm以上2000nm以下である。
【0030】
GaN層の積層は、好ましくは、積層基板の曲率が凸状で50km-1以下であるときに、ある時点で開始される。
【0031】
絶縁GaNバッファの有無とは関係なく、GaN層の上面の二乗平均平方根(RMS)粗さは、好ましくは、5μm×5μmの原子間力顕微鏡(AFM)スキャン領域上で0.5nm未満であり、GaN層の002反射および102反射のX線回折(XRD)ロッキングカーブの半値全幅(FWHM)は、それぞれ好ましくは650arcsecおよび1200arcsec未満である。
【0032】
本発明に係るヘテロエピタキシャルウェハは、反りに関して優れた材料特性を有する。たとえば、厚さ4.5μmのエピ層の場合、このエピ層にはクラックがなく(3mmのエッジの除外を考慮)、ヘテロエピタキシャルウェハの反りは、|50|μm未満である。
【0033】
直径が少なくとも150mmである(111)配向シリコン上における鉛直漏れ電流1mA/mmに対して2.5MV/cmを上回る高絶縁破壊電界であるため、本発明に係るヘテロエピタキシャルウェハを用いることにより、その上に600V HEMT(高電子移動度トランジスタ)を構築できる。
【0034】
そのためには、デバイス層をGaN層の上に形成すればよい。デバイス層は、たとえば、pGaN/AlGaN層またはSiN/AlGaN層またはSiN/AlGaN/AlN層またはGaN/AlGaN/AlN層またはGaN/AlGaN層またはAlGaN層を、含み得る。
【0035】
定義
積層基板は、基板および基板上に積層した少なくとも1つの層を意味する。
【0036】
エピ層は、基板上に成長させた層の全部を意味する。
AlGaNバッファは、AlN核生成層よりも上に位置しかつGaN層よりも下に位置する層の全部を意味する。
【0037】
ヘテロエピタキシャルウェハは、基板と、AlN核生成層と、AlGaNバッファと、GaN層とを含む独立体を意味する。
【0038】
層のAl含有量または平均Al含有量は、存在するIII族原子合計に対する存在するAl原子の百分率として示すことができる。
【0039】
曲率は、積層基板またはヘテロエピタキシャルウェハ各々の曲率半径の逆数を意味する。
【0040】
反りは、基準面からウェハの中央面までの最大距離と最小距離との差を意味する。
本発明を図面を参照しながらさらに説明する。
【図面の簡単な説明】
【0041】
図1】III族窒化物層の積層の熱条件下の湾曲したシリコン基板を示す図である。
図2】本発明の好ましい実施形態に係る第1のひずみ保持ブロックの第1の連続層を概略的に示す図である。
図3図2が示している第1の連続層の成長中の積層基板の曲率Cとこれらの層の厚さthとの間にどのような相関関係があるかを定性的に示す図である(実線)。
図4】本発明の好ましい実施形態に係るヘテロエピタキシャルウェハの構造を概略的に示す図である。
図5図4に示されるエピ層の積層過程における時間tにわたる積層基板の曲率Cの推移を示す図である。
図6図4に従うヘテロエピタキシャルウェハに基づく、AlGaNバッファの性能のばらつきを測定するために使用されるデバイスの構造を示す図である。
図7】本発明に係るヘテロエピタキシャルウェハおよび比較例として使用されたヘテロエピタキシャルウェハから得られた絶縁破壊曲線を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0042】
シリコン基板1は裏面から加熱される(図1)。加熱中、シリコン基板1の上面の温度T1はシリコン基板1の下面の温度T2よりも低い。この負の温度勾配ΔT(T1-T2)により、基板1が凹状になる、すなわち、III族窒化物の積層の前に基板に負の曲率が生じ、この負の曲率は基板温度が高いほど大きい。
【0043】
凹曲率であるか凸曲率であるかに関係なく、上面の温度は径方向位置に沿って変化し、積層条件も同様に変化する。結果として、上面に積層されたIII族窒化物層の材料特性は、曲率の程度に応じて径方向に不均質になる。
【0044】
本発明は、積層基板の過度の曲率を回避することによって層の材料特性を均質にし、同時に高絶縁破壊電界を可能にする。
【0045】
図2は、本発明の好ましい実施形態に係る第1のひずみ保持ブロックの第1の連続層を概略的に示す。示されている第1の連続層は、AlN層20と、厚い一定組成AlGaN層30と、連続勾配AlGaN層40と、薄い一定組成AlGaN層50とで構成されている。
【0046】
この構造故に、この第1のひずみ保持ブロックの第2の平均Al含有量yは、AlN層20および厚い一定組成AlGaN層30のAl含有量によって左右され、したがって比較的高い。その結果、高絶縁破壊電界が得られ、GaN層内の内部応力の低減が促進され、一定組成AlGaN層30の熱膨張率はシリコン基板の熱膨張率により近い状態に保たれる。
【0047】
図3は、図2が示している第1の連続層の成長中の積層基板の曲率(curvature)Cとこれらの層の厚さ(thickness)thとの間にどのような相関関係があるかを定性的に示す(実線)。比較のために、連続勾配AlGaN層40を省いた。そうすると、積層基板と同じ曲率を得るためには(点線)、厚いAlGaN層30のAl含有量を低減するまたはAlN層20の厚さを低減することが可能であった。しかしながら、そうすると、AlGaNバッファの絶縁破壊電圧が低下し、漏れ電流が増加した。
【0048】
図4は、本発明の好ましい実施形態に係る、デバイス層をさらに含むヘテロエピタキシャルウェハの構造を概略的に示す。図4に従うヘテロエピタキシャルウェハは、シリコン基板1と、AlN核生成層2と、第1のひずみ蓄積層3と、第1のひずみ保持ブロック4と、第2のひずみ蓄積層5と、第2のひずみ保持ブロック6と、第3のひずみ蓄積層7と、超格子ブロック8と、GaN層9と、デバイス層10とで構成されている。
【0049】
図4に従うヘテロエピタキシャルウェハは、たとえば以下の構造を有し得る。
シリコン基板1は、直径150mm、厚さ675μmの(111)配向シリコン単結晶ウェハであり、
AlN核生成層2の厚さは200nmであり、
第1のひずみ蓄積層3は、厚さi nmのAlGa1-zN層であり、
第1のひずみ保持ブロック4は、第1の連続層の30の繰り返し単位からなり、1単位内の層は、シリコン基板側から順に、厚さj nmのAlN層、厚さk nm(k>j)のAlGa1-aN層、Al含有量がa%からb%に減少する厚さl nm(l<k)の連続勾配AlGaN層、および、厚さm nm(m>l)のAlGa1-bN層であり、1単位の平均Al含有量はyであり、y>zであり、
第2のひずみ蓄積層5は、厚さn nmのAlGa1-xN(x<y)層であり、
第2のひずみ保持ブロック6は、第2の連続層の40の繰り返し単位からなり、1単位内の層は、シリコン基板側から順に、厚さj nmのAlN層および厚さp nmのAlGa1-cN(c<b)層であり、1単位の平均Al含有量はwであり、w>xおよびw<yであり、
第3のひずみ蓄積層7は、厚さq nmのAlGa1-vN(v<w)層であり、
超格子ブロック8は、層の25の繰り返し単位からなり、1単位内の層は、シリコン基板側から順に、厚さj nmのAlN層および厚さr nmのAlGa1-dN(d<c)層であり、1単位の平均Al含有量はuであり、u>vおよびu<wであり、
GaN層9は、炭素濃度4×1019原子/cm、厚さ1000nmの、炭素がドープされたGaN層9aと、厚さ400nmの非意図的にドープされたGaN層9bとで構成され、
デバイス層10は、Al含有量25%、厚さ25nmのAlGaNバリア層10bと、in-situ SiNパシベーション層10bとで構成されている。
【0050】
原則として、pドープAlGaN(Al含有量は0~30%の範囲)をAlGaNバリア層10aの上に積層することにより、eモードHEMTデバイスを作ることができる。
【0051】
図4に従う構造を有し上記組成を有するヘテロエピタキシャルウェハを、本発明に従い米国のVeeco Instruments社から市販されているMOCVDツール内で製造することができ、積層基板の曲率を層の成長中にモニタリングした。
【0052】
図5は、シリコン基板上にエピ層を積層する過程における時間tにわたる積層基板の曲率Cの推移を示し、0は、凹(負)変形と凸(正)変形との間の境界線を表す。
【0053】
AlGaNバッファの性能のばらつきを、S. Stoffels他によって記述された方法論(The physical mechanism of dispersion caused by AlGaN/GaN buffers on Si and optimization for low dispersion, 2015 IEEE International Electron Devices Meeting (IEDM), 2015, p. 35.4.1-35.4.4)を用いて測定した。図6に示されるように金属パッド11を10μmの間隔を置いて積層し、2DEG(2次元電子ガス(two-dimensional electron gas))抵抗を測定した。-600Vの電圧(Vstress)を電気応力としてSi基板の裏面に10秒印加した(応力段)。次に、応力を取り除きセンシング電圧1Vを2DEG抵抗器に対して印加した(リカバリ段)。応力段とリカバリ段との間の切り替え遅延は1msであった。応力を取り除いた後で測定した値に対する応力なしのデバイスの初期2DEG抵抗の比率は、ほぼ1であった。したがって、2DEG導電率には変化がなく、AlGaNバッファによって生じたばらつきはほぼ0%であった。加えて、ヴァン・デル・パウ(Van der Pauw)ホール測定を図6に示される装置に対して室温で実行したところ、以下の結果、すなわちシート抵抗425Ω/sq、キャリア密度9.76×1012cm-2およびキャリア移動度1466cm/Vsが得られた。
【0054】
次に、絶縁破壊性能を調べた。そのために、第3のひずみ蓄積層7、AlGaNバリア層10a、SiNパシベーション層10bおよび金属パッド11以外図4に従うAlGaNバッファ構造を有するさらなるヘテロエピタキシャルウェハを作成した。
【0055】
このヘテロエピタキシャルウェハは以下の構造を有していた。
基板1として、直径150mm、厚さ675μmの(111)配向シリコン単結晶ウェハ、
厚さ200nmのAlN核生成層2、
第1のひずみ蓄積層3、すなわち厚さi nmのAlGa1-zN層、
第1のひずみ保持ブロック4、すなわち25の繰り返し単位の第1の連続層であって、1単位内の層は、シリコン基板側から順に、厚さj nmのAlN層、厚さk nmのAlGa1-aN層、厚さがl nmでありAl含有量がa%からb%に減少する連続勾配AlGaN層、および厚さm nmのAlGa1-bN層であり、
第2のひずみ蓄積層5、すなわち厚さn nmのAlGa1-xN層、
第2のひずみ保持ブロック6、すなわち36の繰り返し単位の第2の連続層であって、1単位内の層は、シリコン基板側から順に、厚さj nmのAlN層および厚さp nmのAlGa1-cN層であり、
41の繰り返し単位の層を有する超格子ブロック8であって、1単位内の層は、シリコン基板側から順に、厚さj nmのAlN層および厚さr nmのAlGa1-dN層、
炭素濃度4×1019原子/cm、厚さ1000nmの、炭素がドープされたGaN層9a、ならびに、
厚さ300nmの非意図的にドープされたGaN層9bである。
【0056】
エピ層の合計厚さは4.5μmであった(200nmのAlN層2、1800nmの層3、4、5、および6、1200nmの超格子ブロック8、1000nmの炭素がドープされたGaN層9a、ならびに300nmの非意図的にドープされたGaN層9b)。
【0057】
比較のために、本発明を表していないヘテロエピタキシャルウェハを成長させた。これと先のヘテロエピタキシャルウェハとの相違は、省略した第1および第2のひずみ保持ブロック4および6に関する相違のみであった。第1および第2のひずみ保持ブロック4および6を補償するために、超格子ブロック8の厚みを大きくした。エピ層の合計厚さは4.5μmであった(200nmのAlN層2、100nmのAlGaN層3、2900nmの超格子ブロック8、1000nmの炭素がドープされたGaN層9a、および300nmの非意図的にドープされたGaN層9b)。
【0058】
図7は、500μm×500μmのコンタクトパッドをGaN層の上およびシリコン基板の下に設けた後の、本発明に係る先のヘテロエピタキシャルウェハおよび比較例として使用されたヘテロエピタキシャルウェハから得られた絶縁破壊曲線を示す。示されている曲線は、鉛直バイアス電圧(vertical bias voltage)vbvに対する鉛直漏れ電流(vertical leakage current)vlcを表す。上側の曲線(uc)は先のヘテロエピタキシャルウェハから得られたものであり、下側の曲線(lc)は比較例としてのヘテロエピタキシャルウェハから得られたものである。
【0059】
600Vのバイアスで、先のヘテロエピタキシャルウェハから得られた漏れ電流は、比較例として使用したヘテロエピタキシャルウェハから得られた漏れ電流よりも一桁小さかった。先のヘテロエピタキシャルウェハでは、1500VまではAlGaNバッファの強力な絶縁破壊は生じなかった。
【符号の説明】
【0060】
使用する参照番号のリスト
1 シリコン基板
2 AlN核生成層
3 第1のひずみ蓄積層
4 第1のひずみ保持ブロック
5 第2のひずみ蓄積層
6 第2のひずみ保持ブロック
7 第3のひずみ蓄積層
8 超格子ブロック
9 GaN層
9a 炭素がドープされたGaN層
9b 非意図的にドープされたGaN層
10 デバイス層
10a AlGaNバリア層
10b SiNパシベーション層
11 金属パッド
20 AlN層
30 一定組成AlGaN層
40 連続勾配AlGaN層
50 薄い一定組成AlGaN層
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7