(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-20
(45)【発行日】2022-01-17
(54)【発明の名称】気体分離膜活性層形成用の組成物の製造方法、これによって製造された気体分離膜活性層形成用の組成物、気体分離膜の製造方法および気体分離膜
(51)【国際特許分類】
B01D 71/10 20060101AFI20220107BHJP
B01D 69/10 20060101ALI20220107BHJP
B01D 69/12 20060101ALI20220107BHJP
B01D 71/68 20060101ALI20220107BHJP
B01D 71/50 20060101ALI20220107BHJP
B01D 71/46 20060101ALI20220107BHJP
B01D 71/52 20060101ALI20220107BHJP
B01D 71/64 20060101ALI20220107BHJP
B01D 71/26 20060101ALI20220107BHJP
B01D 71/30 20060101ALI20220107BHJP
B01D 71/34 20060101ALI20220107BHJP
B01D 71/36 20060101ALI20220107BHJP
B01D 69/02 20060101ALI20220107BHJP
【FI】
B01D71/10
B01D69/10
B01D69/12
B01D71/68
B01D71/50
B01D71/46
B01D71/52
B01D71/64
B01D71/26
B01D71/30
B01D71/34
B01D71/36
B01D69/02
(21)【出願番号】P 2020509012
(86)(22)【出願日】2018-11-30
(86)【国際出願番号】 KR2018015128
(87)【国際公開番号】W WO2019112259
(87)【国際公開日】2019-06-13
【審査請求日】2020-02-19
(31)【優先権主張番号】10-2017-0165055
(32)【優先日】2017-12-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】500239823
【氏名又は名称】エルジー・ケム・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】龍華国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】リー、ビョンスー
(72)【発明者】
【氏名】バン、ソラ
(72)【発明者】
【氏名】シン、チョン キュ
【審査官】富永 正史
(56)【参考文献】
【文献】特表2009-502724(JP,A)
【文献】特開昭59-055307(JP,A)
【文献】特開平01-111421(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第101277754(CN,A)
【文献】特開平02-212501(JP,A)
【文献】韓国登録特許第10-0212039(KR,B1)
【文献】国際公開第2016/047351(WO,A1)
【文献】特表2011-518661(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 61/00-71/82
B01D 53/22
C02F 1/44
D01F 2/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
セルロース系化合物とフッ素に置換された酸とを反応させて第1反応物を得るステップ;および
フッ素に置換された酸無水物を常温よりも高い温度で前記第1反応物に滴下させるステップ
を含む、
気体分離膜活性層形成用の組成物の製造方法。
【請求項2】
前記気体分離膜活性層形成用の組成物の全体重量を基準としてセルロース系化合物の含量は2.9wt%から5wt%である、
請求項1に記載の気体分離膜活性層形成用の組成物の製造方法。
【請求項3】
前記フッ素に置換された酸は、フッ素が少なくとも一つ置換された炭素数2から10のアルカン酸である、
請求項1または2に記載の気体分離膜活性層形成用の組成物の製造方法。
【請求項4】
前記フッ素に置換された酸無水物は、フッ素が少なくとも一つ置換された炭素数3から10の酸無水物である、
請求項1または2に記載の気体分離膜活性層形成用の組成物の製造方法。
【請求項5】
前記フッ素に置換された酸は、トリフルオロアセト酸(Trifluoroacetic acid)である、
請求項1または2に記載の気体分離膜活性層形成用の組成物の製造方法。
【請求項6】
前記フッ素に置換された酸無水物は、トリフルオロアセト酸無水物(Trifluoroacetic anhydride)である、
請求項1または2に記載の気体分離膜活性層形成用の組成物の製造方法。
【請求項7】
前記常温よりも高い温度は、30℃から80℃である、
請求項1から6のいずれか1項に記載の気体分離膜活性層形成用の組成物の製造方法。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか一項に記載の気体分離膜活性層形成用の組成物の製造方法によって気体分離膜活性層形成用の組成物を製造するステップ;
多孔性基材上に親水性高分子の溶液を塗布して多孔性支持体を形成するステップ;および
前記多孔性支持体上に前記気体分離膜活性層形成用の組成物を塗布して活性層を形成するステップ
を含む、
気体分離膜の製造方法。
【請求項9】
前記多孔性基材は、多孔性不織布である、
請求項
8に記載の気体分離膜の製造方法。
【請求項10】
前記気体分離膜活性層形成用の組成物を塗布する方法は、スロットコーティング方法である、
請求項
8または
9に記載の気体分離膜の製造方法。
【請求項11】
前記親水性高分子は、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリカーボネート、ポリエチレンオキサイド、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン、ポリメチルクロライド、ポリビニリデンフルオライドおよびこれらの混合物からなる群れより選択される1種以上である、
請求項
8から
10のいずれか1項に記載の気体分離膜の製造方法。
【請求項12】
多孔性支持体;および
前記多孔性支持体上に備えられた下記化学式1で表される単位を含む活性層
を含
み、
メタンを基準として二酸化炭素の選択度が5から40である、
気体分離膜:
[化学式1]
【化1】
前記化学式1において、
nは、単位の繰り返し数で、1から1,000であり、
R1からR3は、互いに同一または異なり、それぞれ独立して、水素または-(CO)CF
3であり、
R1からR3の少なくとも一つは-(CO)CF
3である。
【請求項13】
前記多孔性支持体は、多孔性不織布および親水性高分子を含む、
請求項
12に記載の気体分離膜。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2017年12月4日付にて韓国特許庁に提出された韓国特許出願第10-2017-0165055号の出願日の利益を主張し、その内容の全ては本明細書に組み込まれる。
【0002】
本明細書は、気体分離膜活性層形成用の組成物の製造方法、これによって製造された気体分離膜活性層形成用の組成物、気体分離膜の製造方法および気体分離膜に関する。
【背景技術】
【0003】
気体分離膜は、支持層、活性層および保護層で構成されており、活性層の気孔の大きさおよび構造的特性を用いて混合気体から選択的に気体を分離する膜である。したがって、気体透過度と選択度は、膜の性能を示す重要な指標として使用され、このような性能は、活性層を構成する高分子物質によって大きい影響を受ける。
【0004】
したがって、気体分離膜の透過度および選択度を増加させるための方法の開発が求められている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本明細書は、気体分離膜活性層形成用の組成物の製造方法、これによって製造された気体分離膜活性層形成用の組成物、気体分離膜の製造方法および気体分離膜について提供しようとする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本明細書の一実施形態は、セルロース系化合物とフッ素に置換された酸とを反応させて第1反応物を得るステップ;およびフッ素に置換された酸無水物を常温よりも高い温度で前記第1反応物に滴下させるステップを含む気体分離膜活性層形成用の組成物の製造方法を提供する。
【0007】
本明細書のまた一つの実施形態は、前述の製造方法によって製造された気体分離膜活性層形成用の組成物を提供する。
【0008】
本明細書の一実施形態は、下記化学式1で表される単位を含む気体分離膜活性層形成用の組成物を提供する。
【0009】
【0010】
前記化学式1において、
nは、単位の繰り返し数で、1から1,000であり、
R1からR3は、互いに同一または異なり、それぞれ独立して、水素または-(CO)CF3であり、
R1からR3の少なくとも一つは-(CO)CF3である。
【0011】
本明細書のまた一つの実施形態は、前述の気体分離膜活性層形成用の組成物の製造方法による方法で気体分離膜活性層形成用の組成物を製造するステップ;多孔性基材上に親水性高分子溶液を塗布して多孔性支持体を形成するステップ;および前記多孔性支持体上に前記気体分離膜活性層形成用の組成物を塗布して活性層を形成するステップを含む気体分離膜の製造方法を提供する。
【0012】
また、本明細書の一実施形態は、多孔性支持体;および前記多孔性支持体上に備えられた前記化学式1で表される単位を含む活性層を含む気体分離膜を提供する。
【発明の効果】
【0013】
本明細書の一実施形態に係る気体分離膜は、優れた二酸化炭素の透過度およびメタンに対する二酸化炭素の選択度を有する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本明細書の一実施形態に係る気体分離膜を示したものである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本明細書についてさらに詳細に説明する。
【0016】
本明細書において、ある部材が異なる部材「上に」位置しているとするとき、これは、ある部材が異なる部材に接している場合だけでなく、二つの部材の間にまた他の部材が存在する場合も含む。
【0017】
本明細書において、ある部分がある構成要素を「含む」とするとき、これは、特に反対する記載がない限り、他の構成要素を除くことでなく、他の構成要素をさらに含むことができるということを意味する。
【0018】
本明細書の一実施形態は、セルロース系化合物とフッ素に置換された酸とを反応させて第1反応物を得るステップ;およびフッ素に置換された酸無水物を常温よりも高い温度で前記第1反応物に滴下させるステップを含む気体分離膜活性層形成用の組成物の製造方法を提供する。
【0019】
セルローストリフルオロアセテート(Cellulose trifluoroacetate、CTFA)の合成過程で反応を常温で行うと、反応物を混合した後、2時間から3時間程度かき混ぜる(stirring)過程が必要であり、以後、1時間程度常温で放置する過程が必要である。しかし、常温よりも高い温度で反応させる場合、1時間から1.5時間の間反応させて反応を終結することができるし、常温で放置する時間も必要なく、反応時間を短縮することができる効果がある。
【0020】
また、CTFAの合成過程で反応時間を短縮することは、合成時に使用されるフッ素に置換された酸とフッ素に置換された酸無水物が強酸であるため、長期間酸に露出されると、セルロース重合体が割れることがあるが、酸に露出される時間を減らすことによって、セルロース重合体が割れる現象を防止することができる。
【0021】
本明細書の一実施形態によれば、前記フッ素に置換された酸は、フッ素が少なくとも一つ置換された炭素数2から10のアルカン酸であってもよい。前記アルカン酸は、アセト酸(acetic acid)、プロピオン酸(propionic acid)、ブチル酸(butyric acid)、吉草酸(valeric acid)、カプロン酸(caproic acid)、エナント酸(enanthic acid)、カプリル酸(caprylic acid)、ペラルゴン酸(pelargonic acid)、またはカプリン酸(capric acid)などであってもよいが、これに限定されるものではない。
【0022】
本明細書の一実施形態によれば、前記フッ素に置換された酸は、フッ素が3つ置換された炭素数2から10のアルカン酸であってもよい。
【0023】
本明細書の一実施形態によれば、前記フッ素に置換された酸は、フッ素が3つ置換された炭素数2から6のアルカン酸であってもよい。
【0024】
本明細書の一実施形態によれば、前記アルカン酸は、好ましくはアセト酸であってもよい。
【0025】
本明細書の一実施形態によれば、前記フッ素に置換された酸は、トリフルオロアセト酸(Trifluoroacetic acid、TFA)であってもよい。
【0026】
本明細書の一実施形態によれば、前記フッ素に置換された酸は、99%以上の高純度の酸であってもよい。
【0027】
本明細書の一実施形態によれば、前記フッ素に置換された酸無水物は、フッ素が少なくとも一つ置換された炭素数3から10の酸無水物であってもよい。前記アルカン酸は、前述の通りである。
【0028】
本明細書の一実施形態によれば、前記フッ素に置換された酸無水物は、フッ素が3つ置換された炭素数3から10の酸無水物であってもよい。
【0029】
本明細書の一実施形態によれば、前記フッ素に置換された酸無水物は、フッ素が3つ置換された炭素数3から6の酸無水物であってもよい。
【0030】
本明細書の一実施形態によれば、前記酸無水物は、アセト酸無水物(acetic anhydride)、アセトホルム酸無水物(acetic formic anhydride)、アセトプロピオン酸無水物(acetic propionic anhydride)、プロピオン酸無水物(propionic anhydride)、アセトブチル酸無水物(acetic butyric anhydride)、ブチルプロピオン酸無水物(butyric propionic anhydride)、コハク酸無水物(succinic anhydride)、またはグルタル酸無水物(glutaric anhydride)などであってもよいが、これに限定されるものではない。
【0031】
本明細書の一実施形態によれば、前記酸無水物は、好ましくはアセト酸無水物であってもよい。
【0032】
本明細書の一実施形態によれば、前記フッ素に置換された酸無水物は、トリフルオロアセト酸無水物(Trifluoroacetic anhydride、TFAA)であってもよい。
【0033】
本明細書の一実施形態によれば、前記フッ素に置換された酸無水物は、99%以上の高純度の酸無水物であってもよい。
【0034】
本明細書の一実施形態によれば、前記セルロース系化合物は、セルロースであってもよい。
【0035】
本明細書の一実施形態によれば、前記常温よりも高い温度は、30℃から80℃であってもよい。具体的に、前記常温よりも高い温度は40℃から70℃であってもよいし、さらに好ましくは、50℃から60℃であってもよい。CTFAの合成過程で反応温度を常温にして行うと、反応物を混合した後、2時間から3時間程度かき混ぜる(stirring)過程が必要であり、以後、1時間程度常温で放置する過程が必要である。しかし、常温よりも高い温度で反応させる場合、1時間から1.5時間の間反応させて反応を終結することができるし、常温で放置する時間も必要なく、反応時間を短縮することができる効果がある。
【0036】
また、CTFAの合成過程で反応時間を短縮することは、合成時に使用されるTFAとTFAAが強酸であるため、長期間酸に露出されると、セルロース重合体が割れることがあるが、酸に露出される時間を減らすことによって、セルロース重合体が割れる現象を防止することができる。
【0037】
本明細書の一実施形態によれば、前記フッ素に置換された酸無水物を常温よりも高い温度で前記第1反応物に滴下させるステップは、前記フッ素に置換された酸無水物を10分から60分間滴下させることであってもよい。好ましくは、15分から50分間滴下させることであってもよい。
【0038】
本明細書の一実施形態によれば、前記フッ素に置換された酸無水物を常温よりも高い温度で前記第1反応物に滴下させるステップの滴下速度は、2ml/minから5ml/minであってもよい。具体的に、2ml/minから3ml/minのものが好ましい。前記滴下させる速度が2ml/min未満の場合、反応時間が多く消耗され、経済的でなく、5ml/min超過の場合、第1反応物と前記フッ素に置換された酸無水物との撹拌が充分に行われないこともある。
【0039】
本明細書の一実施形態によれば、前記気体分離膜活性層形成用の組成物の製造方法は、前記フッ素に置換された酸無水物を常温よりも高い温度で前記第1反応物に滴下させるステップの以後、形成された混合物を第1有機溶媒で沈殿させるステップをさらに含むことができる。
【0040】
本明細書の一実施形態によれば、前記第1有機溶媒は極性溶媒であってもよい。
【0041】
本明細書の一実施形態によれば、前記第1有機溶媒は、エーテル(ether)溶媒であってもよいし、さらに好ましくは、ジエチルエーテル(diethyl ether)であってもよい。
【0042】
前記フッ素に置換された酸無水物を前記第1反応物に滴下させると、ゲル(gel)状の混合物が得られる。このゲル状の混合物を第1有機溶媒に少しずつ注ぐと、フッ素に置換されたセルロース系化合物は沈殿物として沈み、フッ素に置換された酸またはフッ素に置換された酸無水物は、第1有機溶媒に溶解されている。すなわち、前記第1有機溶媒は、フッ素に置換されたセルロース系化合物を溶解せず、フッ素に置換された酸またはフッ素に置換された酸無水物をよく溶解するものが好ましい。
【0043】
具体的に、ジエチルエーテルで沈殿させる場合、ジエチルエーテルに対して溶解度の良くないCTFAは沈殿物として沈み、ジエチルエーテルに対して溶解度の良いTFAまたはTFAAは溶解されている。したがって、CTFAが沈殿物として得られる。
【0044】
本明細書の一実施形態によれば、前記気体分離膜活性層形成用の組成物は、前記フッ素に置換された酸無水物を常温よりも高い温度で前記第1反応物に滴下させるステップの以後、形成された混合物を第1有機溶媒に沈殿させて形成された沈殿物を含むことができる。
【0045】
本明細書の一実施形態によれば、前記気体分離膜活性層形成用の組成物の製造方法は、前記沈殿物を第2有機溶媒に溶かすステップをさらに含むことができる。
【0046】
本明細書の一実施形態によれば、前記第2有機溶媒は、ニトロメタン(nitromethane)であってもよい。
【0047】
本明細書の一実施形態によれば、前記気体分離膜活性層形成用の組成物の製造方法は、セルロース系化合物とフッ素に置換された酸とを反応させて第1反応物を得るステップ;フッ素に置換された無水物を常温よりも高い温度で前記第1反応物に滴下させて混合物を得るステップ;前記混合物を第1有機溶媒に沈澱させて沈殿物を得るステップ;および前記沈殿物を第2有機溶媒に溶かすステップを含むことができる。
【0048】
本明細書の一実施形態によれば、前記気体分離膜活性層形成用の組成物は、前述の沈殿物のほかにニトロメタン(nitromethane)を溶媒として含むことができる。
【0049】
本明細書の一実施形態によれば、前記気体分離膜活性層形成用の組成物は、前述の沈殿物およびニトロメタン(nitromethane)からなってもよい。この場合、前記ニトロメタンの含量は、前記気体分離膜活性層形成用の組成物の全体重量を基準として95wt%から97.1wt%であってもよい。
【0050】
本明細書の一実施形態によれば、前記気体分離膜活性層形成用の組成物の全体重量を基準としてセルロース系化合物の含量は2.9wt%から5wt%であってもよい。前記セルロース系化合物の含量が前記範囲を満足する場合、二酸化炭素と-CF3の作用基との吸着が容易になり、気体分離膜は、二酸化炭素の透過度および選択度を高めることができる。
【0051】
本明細書の一実施形態は、前述の気体分離膜活性層形成用の組成物の製造方法によって製造された気体分離膜活性層形成用の組成物を提供する。
【0052】
また、本明細書の一実施形態は、下記化学式1で表される単位を含む気体分離膜活性層形成用の組成物を提供する。
【0053】
【0054】
前記化学式1において、
nは、単位の繰り返し数で、1から1,000であり、
R1からR3は、互いに同一または異なり、それぞれ独立して、水素または-(CO)CF3であり、
R1からR3の少なくとも一つは-(CO)CF3である。
【0055】
本明細書の一実施形態によれば、前記R1は、-(CO)CF3であり、前記R2およびR3は、水素であってもよい。
【0056】
本明細書の一実施形態によれば、前記R2は、-(CO)CF3であり、前記R1およびR3は、水素であってもよい。
【0057】
本明細書の一実施形態によれば、前記R3は、-(CO)CF3であり、前記R1およびR2は、水素であってもよい。
【0058】
本明細書の一実施形態によれば、前記R1およびR2は、-(CO)CF3であり、前記R3は、水素であってもよい。
【0059】
本明細書の一実施形態によれば、前記R1およびR3は、-(CO)CF3であり、前記R2は、水素であってもよい。
【0060】
本明細書の一実施形態によれば、前記R2およびR3は、-(CO)CF3であり、前記R1は、水素であってもよい。
【0061】
本明細書の一実施形態によれば、前記R1からR3は、-(CO)CF3であってもよい。
【0062】
前記R1からR3に-(CO)CF3に比べて鎖長さの長い置換基が導入される場合、選択度に悪影響を及ぼすことがある。長くなった鎖によって活性層を構成する高分子鎖の間のpacking densityが減少し、二酸化炭素およびメタンの透過度が同時に増加し、これによってCO2/CH4の選択度が減少するためである。
【0063】
本明細書の一実施形態によれば、前記nが2以上の場合、括弧内の構造は、互いに同一または異なってもよい。
【0064】
本明細書の一実施形態によれば、前記気体分離膜活性層形成用の組成物は、前記化学式1で表される単位のほかに溶媒をさらに含むことができる。
【0065】
本明細書の一実施形態によれば、前記溶媒は、前述の第2有機溶媒に関する説明を適用することができる。
【0066】
本明細書の一実施形態によれば、前記nは、単位の繰り返し数で、100から500であってもよい。好ましくは、100から300であってもよい。
【0067】
本明細書の一実施形態によれば、前記化学式1で表される単位の重量平均分子量は、100g/molから200,000g/molであってもよい。好ましくは、10,000g/molから200,000g/molであってもよいし、さらに好ましくは、100,000g/molから200,000g/molであってもよい。前記化学式1で表される単位の重量平均分子量が前記範囲を満足する場合、気体分離膜の二酸化炭素の透過度を高め、メタン気体に対する二酸化炭素の選択度を向上させることができる。
【0068】
本明細書の一実施形態は、前述の気体分離膜活性層形成用の組成物の製造方法による方法で気体分離膜活性層形成用の組成物を製造するステップ;多孔性基材上に親水性高分子溶液を塗布して多孔性支持体を形成するステップ;および前記多孔性支持体上に前記気体分離膜活性層形成用の組成物を塗布して活性層を形成するステップを含む気体分離膜の製造方法を提供する。
【0069】
本明細書のまた一つの実施形態は、多孔性基材上に親水性高分子溶液を塗布して多孔性支持体を形成するステップ;および前記多孔性支持体上に前述の気体分離膜活性層形成用の組成物を塗布して活性層を形成するステップを含む気体分離膜の製造方法を提供する。
【0070】
本明細書の一実施形態によれば、前記多孔性基材は、気体分離膜の支持体として使用される材質であれば制限なく使用されてもよいし、例えば、ポリエステル、ポリプロピレン、ナイロン、ポリエチレン、または不織布であってもよいが、これに限定されるものではない。具体的に、前記多孔性基材は不織布を使用してもよい。
【0071】
本明細書の一実施形態によれば、前記親水性高分子は、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリカーボネート、ポリエチレンオキサイド、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン、ポリメチルクロライド、またはポリビニリデンフルオライドなどが使用されてもよいが、必ず、これらに制限されるものではない。具体的に、前記親水性高分子は、ポリスルホンであってもよい。
【0072】
本明細書の一実施形態によれば、前記親水性高分子溶液は、前記親水性高分子を溶媒に溶かして形成することができる。前記溶媒は、親水性高分子を溶解することができる溶媒であれば制限なく使用してもよい。例えば、アセトン(acetone)、アセトニトリル(acetonitrile)、テトラハイドロフラン(THF)、ジメチルスルポキシド(DMSO)、ジメチルホルムアミド(DMF)、またはヘキサメチルホスホアミド(HMPA)などがあるが、これに限定されるものではない。前記親水性高分子は、親水性高分子溶液を基準として12重量%から20重量%含まれてもよい。
【0073】
本明細書の一実施形態によれば、前記多孔性支持体上に前述の気体分離膜活性層形成用の組成物を塗布する方法は、浸漬、スプレイまたはコーティングなどの方法を用いることができるが、これに限定されるものではない。
【0074】
本明細書の一実施形態によれば、前記多孔性支持体上に前述の気体分離膜活性層形成用の組成物を塗布する方法は、スロットコーティング方法であってもよい。
【0075】
本明細書のまた一つの実施形態は、前述の気体分離膜の製造方法によって製造された気体分離膜を提供する。
【0076】
また、本明細書の一実施形態は、多孔性支持体;および前記多孔性支持体上に備えられた前記化学式1で表される単位を含む活性層を含む気体分離膜を提供する。
【0077】
本明細書の一実施形態によれば、前記多孔性支持体は、多孔性基材および親水性高分子を含むことができる。すなわち、前記多孔性支持体は、前記多孔性基材上に親水性高分子溶液を塗布して形成されたものであってもよい。前記多孔性基材と前記親水性高分子溶液は、前述の説明を適用することができる。
【0078】
本明細書の一実施形態によれば、前記気体分離膜の厚さは、100μmから250μmであってもよい。前記気体分離膜の厚さが前記範囲を満足する場合、気体分離膜の気体透過度が減少される現象を防止することができる効果がある。
【0079】
本明細書の一実施形態によれば、前記多孔性支持体の厚さは、60μmから150μmであってもよいが、これに限定されるものではなく、必要に応じて調節することができる。また、前記多孔性支持体の気孔の大きさは、1nmから500nmのものが好ましいが、これに限定されるものではない。
【0080】
本明細書の一実施形態によれば、前記活性層の厚さは、1μmから5μmであってもよいし、さらに好ましくは、1μmから3μmであってもよい。
【0081】
本明細書の一実施形態によれば、前記気体分離膜は、メタンを基準として二酸化炭素の選択度が5から40であってもよい。具体的に、10から35であってもよい。
【0082】
本明細書の一実施形態によれば、前記気体分離膜は、二酸化炭素の透過度が10から100であってもよい。具体的に、12から80であってもよい。
【0083】
本明細書において、「二酸化炭素(CO2)の透過度」は、セル(Cell)の内部に気体分離膜を締結した後、気体分離膜にCO2単一気体を80psiで押し、気体分離膜を通過した後、透過されたCO2の流量を流量計(flowmeter)で測定することができる。前記のような方法で気体の種類を入れ替えてメタン(CH4)の気体透過度を測定した後、メタンを基準として二酸化炭素の選択度(CO2の透過度/CH4の透過度)を計算してCO2/CH4の選択度を測定することができる。
【0084】
図1は、本明細書の一実施形態に係る気体分離膜の構造を例示したものである。
【0085】
図1には、多孔性基材上に親水性高分子溶液を塗布して形成した多孔性支持体(10)および前記多孔性支持体(10)上に備えられた活性層形成用の組成物を塗布して形成された活性層(11)を含む気体分離膜(100)が例示されている。前記活性層形成用の組成物は、前記化学式1で表される単位を含むことができる。
【0086】
以下、本明細書を具体的に説明するために、実施例を挙げて詳細に説明する。しかし、本明細書による実施例等は、様々な他の形態に変形することができ、本明細書の範囲が下記で詳述する実施例等に限定されるものとは解釈されない。本明細書の実施例等は、当業界において平均的な知識を有する者に本明細書をより完全に説明するために提供されるものである。
【0087】
<実験例1>
【0088】
<実施例1>
【0089】
Cellulose powderの10g、TFA(Trifluoroacetic acid)200mlを窒素雰囲気下でかき混ぜる(stirring)。その後、TFAA(Trifluoroacetic anhydride)70mlを窒素雰囲気を維持しながら、1時間の間滴下(dropping)して60℃で1時間30分反応させた。反応後、ゲル(gel)状の物質をジエチルエーテル(diethyl ether)溶媒に少しずつ注ぎ、CTFA(Cellulose trifluoroacetate)を沈澱させた。
【0090】
ニトロメタンに前記CTFAを5wt%入れて活性層形成用の組成物を製造した。
【0091】
多孔性不織布にポリスルホン溶液をコーティングして準備したUF支持体上に前記活性層形成用の組成物をスロットコーティングによって塗布して気体分離膜を製造した。
【0092】
<実施例2>
【0093】
実施例1において、CTFAの5wt%の代わりに、CTFAの2.9wt%を使用して活性層形成用の組成物を製造したことを除いては、実施例1と同じ方法で気体分離膜を製造した。
【0094】
<比較例1>
【0095】
実施例1において、CTFAの5wt%の代わりに、Cellulose acetateの5wt%を使用したことを除いては、実施例1と同じ方法で気体分離膜を製造した。
【0096】
<比較例2>
【0097】
実施例1において、CTFAの5wt%の代わりに、Cellulose acetateの2.5wt%を使用したことを除いては、実施例1と同じ方法で気体分離膜を製造した。
【0098】
<比較例3>
【0099】
実施例1において、CTFAの5wt%の代わりに、下記構造のFluorinated cellulose acetateの5wt%を使用したことを除いては、実施例1と同じ方法で気体分離膜を製造した。
【0100】
<比較例4>
【0101】
実施例1において、CTFAの5wt%の代わりに、下記構造のFluorinated cellulose acetateの2.5wt%を使用したことを除いては、実施例1と同じ方法で気体分離膜を製造した。
【0102】
[Fluorinated cellulose acetate]
【化3】
【0103】
前記実施例1において、TFAAを添加した後、反応時間経過による置換度をNMRで分析した結果を下記表1に示した。
【0104】
前記実施例1および2、比較例1から4によって製造された気体分離膜に対して、TFCサンプルを作って気体透過度を評価した。二酸化炭素の透過度、メタンの透過度、およびメタンに対する二酸化炭素の透過度値を計算して下記表2に示した。
【0105】
常温で気体透過セルの上部にPressure Regulatorを用いて一定圧力(50psi、80psi、100psi、200psiなど)のガスを注入して膜の上部と下部との圧力差による気体透過を誘導した。この際、分離膜を透過した気体の流量をbubble flowmeterを用いて測定して安定化時間(>1hour)を考慮して分離膜の透過度を評価した。
【0106】
【0107】
前記表1の結果によれば、反応後300分までは置換度45%内外で大きな変化がないことが確認できた。24時間反応させた70%以上のフッ素置換高分子は、気体分離膜として使用できなかった。フッ素置換度が高いと、フッ素による気体吸着能力が向上できるが、それに伴い高分子の溶解度が減少する。合成した高分子を使用するためには、高分子を特定溶媒、すなわちニトロメタンに溶かして使用する必要があるが、フッ素置換度が過度に高い高分子の場合、これを溶かせる溶媒がないため、気体分離膜としてコーティングできる加工性が劣ることになる。
【0108】
したがって、本発明の一実施形態によれば、TFAAの添加後、1時間30分程度反応させた置換度40~45%のCTFAを活性層形成用の組成物として使用する場合に、ニトロメタンにも適当に溶け、活性層形成後の乾燥過程が容易になる。
【0109】
【0110】
前記CO2/CH4の選択度(Selectivity)は、メタン気体を基準とする二酸化炭素気体の気体選択度を意味する。
【0111】
前記表2によれば、実施例1および2による気体分離膜は、メタンを基準として二酸化炭素の選択度が10以上であり、CTFA(Cellulose trifluoroacetate)を活性層に含む気体分離膜は、二酸化炭素の透過度および選択度に優れた結果を示した。
【0112】
実施例1によるCTFAを活性層に含む気体分離膜は、比較例1によるセルロースアセテートを活性層に含む気体分離膜と対比して、二酸化炭素の透過度は2倍以上さらに高く、メタンの透過度は7倍さらに低いため、16倍以上向上されたCO2/CH4の選択度を有する。
【0113】
同様に、実施例2によるCTFAを活性層に含む気体分離膜は、比較例2によるセルロースアセテートを活性層に含む気体分離膜と対比して、二酸化炭素の透過度は、4倍以上さらに高く、メタンの透過度は1.6倍さらに低いため、5.6倍以上向上されたCO2/CH4の選択度を有する。
【0114】
また、実施例1および2による気体分離膜は、比較例3および4による気体分離膜に比べて2倍、多くは8倍以上のCO2/CH4の選択度を有する。これより、置換基鎖の長さが長くなれば気体透過度は増加するが、選択度が減少することが確認できる。これは、長くなった鎖によって活性層を構成する高分子鎖の間のpacking densityが減少したため、二酸化炭素およびメタンの透過度が同時に増加し、選択度が減少したものである。
【0115】
以上より、本発明の好ましい実施例について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、特許請求範囲と発明の詳細な説明の範囲内で様々に変形して実施することが可能であり、これも発明の範疇に属する。
【符号の説明】
【0116】
100:気体分離膜
10:多孔性支持体
11:活性層