(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-20
(45)【発行日】2022-01-17
(54)【発明の名称】光学デバイスの製造方法
(51)【国際特許分類】
G02F 1/1337 20060101AFI20220107BHJP
G02F 1/1341 20060101ALI20220107BHJP
【FI】
G02F1/1337 500
G02F1/1337 525
G02F1/1341
(21)【出願番号】P 2020516451
(86)(22)【出願日】2018-09-21
(86)【国際出願番号】 KR2018011304
(87)【国際公開番号】W WO2019066428
(87)【国際公開日】2019-04-04
【審査請求日】2020-03-18
(31)【優先権主張番号】10-2017-0127825
(32)【優先日】2017-09-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】500239823
【氏名又は名称】エルジー・ケム・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】龍華国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】ユ、ジュン スン
(72)【発明者】
【氏名】コ、ドン ホ
(72)【発明者】
【氏名】リー、ヒョ ジン
(72)【発明者】
【氏名】ムン、イン ジュ
(72)【発明者】
【氏名】キム、ナム ギュ
(72)【発明者】
【氏名】リー、ヒュン ジュン
【審査官】磯崎 忠昭
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-191754(JP,A)
【文献】特開平04-293016(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2017-0072573(KR,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0370134(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第103033991(CN,A)
【文献】国際公開第2015/064630(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02F 1/1337
G02F 1/1341
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材層と前記基材層上に形成されたスペーサーおよびラビング配向膜を含んでいる第1基板の前記ラビング配向膜をラビング処理する段階
;
基材層と前記基材層上に形成されたラビング配向膜を含み、スペーサーが存在しない第2基板の前記ラビング配向膜をラビング処理する段階;
前記第1基板の前記ラビング配向膜上に液晶化合物を含む光変調物質をドッティングする段階;および
前記第2基板を前記光変調物質がドッティングされた前記ラビング配向膜と対向配置した状態で、圧力を加えて前記ドッティングされた前記光変調物質が前記ラビング配向膜の間の間隔を充填するようにする段階;を含む光学デバイスの製造方法であって、
前記第1基板の前記ラビング配向膜のラビング処理時の下記の数式1によって決定されるラビング強度RS1と、前記第2基板の前記ラビング配向膜のラビング処理時の下記の数式1によって決定されるラビング強度RS2と、が下記の数式2を満足し、前記ラビング強度RS1が2.5~100の範囲内であり、前記ラビング強度(RS1およびRS2)の平均が12~250の範囲内となるようにする、製造方法:
[数式1]
RS1またはRS2=2×N×M×π×n×r/(v-1)
[数式2]
RS1<RS2
数式1および2において、RS1は第1基板の前記ラビング配向膜のラビング処理時のラビング強度、RS2は第2基板の前記ラビング配向膜のラビング処理時のラビング強度であり、Nはラビング回数、Mはラビング深さ(単位:mm)であり、rはラビングドラムの半径(単位:mm)、nはラビングドラムの回転速度(単位:rpm)であり、vはラビングドラムに対する基板の相対的な移動速度(単位:mm/sec)である。
【請求項2】
前記第1基板および前記第2基板の基材層はプラスチックフィルムである、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
前記基材層上には電極層が存在し、前記ラビング配向膜が前記電極層上に形成されている、請求項1または2に記載の製造方法。
【請求項4】
前記ラビング配向膜は垂直配向膜または水平配向膜である、請求項1から3のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項5】
前記ラビング配向膜はポリイミド(polyimide)化合物、ポリビニルアルコール(poly(vinyl alcohol))化合物、ポリアミック酸(poly(amic acid))化合物、ポリスチレン(polystylene)化合物、ポリアミド(polyamide)化合物およびポリオキシエチレン(polyoxyethylene)化合物からなる群から選択された一つ以上を含む、請求項1から4のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項6】
それぞれの前記ラビング配向膜が互いに向き合うように前記第1基板および前記第2基板を対向配置した状態で、前記ラビング配向膜の間に光変調層を形成する段階をさらに遂行する、請求項1から5のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項7】
前記光変調物質は、二色性染料をさらに含む、請求項1から6のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項8】
対向配置された前記第1基板および前記第2基板の間隔が4μm以上となるようにする、請求項
1から
7のいずれか一項に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は2017年9月29日付出願された大韓民国特許出願第10-2017-0127825号に基づいた優先権の利益を主張し、該当大韓民国特許出願の文献に開示されたすべての内容は本明細書の一部として含まれる。
【0002】
本出願は光学デバイスの製造方法および光学デバイスに関するものである。
【背景技術】
【0003】
基板の間に光変調層を配置させて光の透過率または色相などを調節できる光学デバイスは公知とされてある。例えば、特許文献1には液晶ホスト(liquid crystal host)と二色性染料ゲスト(dichroic dye guest)の混合物を適用した、いわゆるGHセル(Guest host cell)が知られている。
【0004】
光学デバイスを製造する方法は多様に知られている。その一つの方法として、表面に配向膜が形成された基板上に光変調物質をドッティング(dotting)し、対向基板を前記ドッティングされた光変調物質上に圧着して光変調物質が基板の間の間隔で広がりながら前記間隔を充填するようにする方法(VALC(vacuum assembly LC)またはODF(One drop filling)とも呼称される)(以下、ドッティング工程と呼称することもある。)がある。
【0005】
図1は、前記のようなドッティング工程が進行される過程を例示的に示す図面である。
図1でのように前記ドッティング工程は、基板201A上の適正部位に光変調物質301をドッティングされた後に、他の基板201Bをローラ等で圧力を加えて合着してドッティングされた光変調物質が均一に基板の間に広がるように遂行され得る。ただし、
図1に示した工程はドッティング工程の例示であり、実際のドッティング工程は
図1に示された方式に基づいて多様に変更され得る。
【0006】
このような方法は、他の方式に比べて正確に必要量の液晶のみを使用できるため液晶の消耗量を減らすことができ、大面積化などの場合にもTAT(Turn Around Time)を減らして生産性を大幅に向上させることができる。しかし、前記方法は、前記圧着時に光変調物質がドッティングされた領域と広がる領域で配向不良によるドッティング斑が時々発生する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本出願は光学デバイスの製造方法および光学デバイスに関するものである。本出願では、ドッティング斑がなく優秀な性能のデバイスを製造する方法とそのような方式で製造された光学デバイスを提供することを一つの目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本出願は光学デバイスの製造方法に関するものであって、一例示でドッティング工程を適用して光学デバイスを製造する方法に関するものである。
【0009】
用語光学デバイスの範疇には、互いに異なる二つ以上の光学状態、例えば、高透過率および低透過率状態、高透過率、中間透過率および低透過率状態、互いに異なる色相が具現される状態などの間をスイッチングできるように形成されたすべての種類のデバイスが含まれ得る。
【0010】
前記製造方法は、基材層上に形成されている配向膜を特定の条件でラビングする工程を含むことができる。
【0011】
すなわち、一般的に光学デバイスは、表面に配向膜が形成されている2個の基板の前記配向膜を対向配置させ、その対向配置された配向膜の間に光変調層を形成して製造されるが、前記2個の基板のうちいずれか一つの基板にはセルギャップ(cell gap)を維持させるためのスペーサーが形成されている。
【0012】
本発明者などは、前記のような2個の基板に対して配向性を付与するためのラビング処理を遂行する時に、ラビング強度を異ならせることによってドッティング斑がない光学デバイスを製造できるという点を確認した。
【0013】
一般的に配向膜のラビング処理は、ラビングドラムを使って
図2に示したような形式で遂行され、このときラビング強度は次の数式1で決定される。
【0014】
[数式1]
RS=2×N×M×π×n×r/(v-1)
【0015】
数式1でRSはラビング強度(rubbing strength)、Nはラビング回数、Mはラビング深さ(単位:mm)、rはラビングドラムの半径(単位:mm)、nはラビングドラムの回転速度(単位:rpm)、vはラビングドラムに対する基板の相対的な移動速度(単位:mm)である。
【0016】
また、本明細書で符号πは特に別途に規定しない限り円周率である。
【0017】
前記でラビング回数Nは、ラビングドラムが基板を何回通り過ぎたかを表す。
【0018】
前記でラビング回数はラビングドラムが基板の表面を何回移動したかを表す数であり、通常1~10、1~9、1~8、1~7、1~6、1~5、1~4、1~3または1~2程度の範囲である。
【0019】
前記数式1において、ラビング深さM(単位:mm)は通常0mm~2mm程度であり得る。前記ラビング深さは、一例示において、約0.005mm以上程度であり得、1mm以下程度でもよい。
【0020】
前記数式1において、ラビングドラムの半径rの範囲も通常の範囲であり得、例えば、約50mm~300mm、約50mm~250mm、約50mm~200mm、約50mm~150mmまたは約50mm~100mm程度の範囲であり得る。
【0021】
前記数式1において、ラビングドラムの回転速度nは通常500~2000rpmの範囲内であり、ラビングドラムに対する基板の相対的な移動速度vは、通常500~2000mm/sec程度の範囲であり得る。
【0022】
本出願では前記のような通常の範囲内で前述したラビング強度が確保され得るように工程が進行され得る。
【0023】
すなわち、
図2のように、一般的にラビング工程はラビングドラムAを回転させ、配向膜が形成された基板Bを前記回転するラビングドラムと接触するように移動させながら遂行され、このようなラビング工程でそのラビング強度を前記数式1で決定する方式は公知である。
図2には前記ラビングドラムAの半径とラビング深さMが表示されている。
【0024】
本発明者などは、配向膜とスペーサーが形成された基材層である基板(以下、第1基板)と、配向膜が形成されているがスペーサーは形成されていない基材層である基板(第2基板)の前記配向膜をそれぞれラビング処理するにおいて、前記数式1で決定されるラビング強度を制御することによってドッティング斑がない光学デバイスを製造できるという点を確認した。
【0025】
すなわち、前記光学デバイスの製造方法は、基材層と前記基材層上に形成されたスペーサーおよびラビング配向膜を含んでいる第1基板の前記配向膜をラビング処理する段階;基材層と前記基材層上に形成されたラビング配向膜を含み、スペーサーが存在しない第2基板の前記配向膜をラビング処理する段階;および前記第1および第2基板の前記配向膜の間に光変調層を形成する段階を含み、このとき、前記第1基板の配向膜のラビング処理時の前記数式1によって決定されるラビング強度RS1と前記第2基板の配向膜のラビング処理時の前記数式1によって決定されるラビング強度RS2が下記の数式2を満足する。
【0026】
[数式2]
RS1<RS2
【0027】
本出願の製造方法では各ラビング強度RS1、RS2が前記条件を満足する限り、その具体的な範囲は特に制限されず、適正な配向能が確保され得るように制御され得る。
【0028】
一例示において、前記第1基板の配向膜のラビング処理時のラビング強度RS1は約2.5~100の範囲であり得る。このような範囲内で適切な配向能を確保し、ドッティング斑を防止することができる。前記ラビング強度RS1は、他の例示において約3以上であり得る。前記ラビング強度RS1は、他の例示において約95以下、90以下、85以下、80以下、75以下、70以下、65以下、60以下、55以下、50以下、45以下、40以下、35以下、30以下、25以下、20以下、15以下、10以下または5以下程度の範囲でもよい。
【0029】
また、前記第1基板の配向膜のラビング処理時のラビング強度RS1と前記第2基板の配向膜のラビング処理時のラビング強度RS2の平均(算術平均)は、約12~250以下の範囲であり得る。このような範囲内で適切な配向能を確保し、ドッティング斑を防止することができる。前記平均は、他の例示において約240以下、230以下、220以下、210以下、200以下、190以下、180以下、170以下、160以下、150以下、140以下、130以下、120以下、110以下、100以下、90以下、80以下、70以下、60以下、50以下、40以下、30以下、20以下または15以下の範囲内でもよい。
【0030】
前記製造方法で適用される基板の種類は特に制限されず、一般的に公知とされている基材層上に公知の方式で配向膜を形成した基板を適用することができる。
【0031】
前記で基材層としては、特に制限がなく、例えば、LCD(Liquid Crystal Display)のような公知の光学デバイスの構成で基板として使われる任意の基材層が適用され得る。例えば、基材層は無機基材層であるか有機基材層であり得る。無機基材層としてはガラス(glass)基材層などが例示され得、有機基材層としては、多様なプラスチックフィルムなどが例示され得る。プラスチックフィルムとしては、TAC(triacetyl cellulose)フィルム;ノルボルネン誘導体などのCOP(cyclo olefin copolymer)フィルム;PMMA(poly(methyl methacrylate)等のアクリルフィルム;PC(polycarbonate)フィルム;PE(polyethylene)またはPP(polypropylene)等のポリオレフィンフィルム;PVA(polyvinyl alcohol)フィルム;DAC(diacetyl cellulose)フィルム;Pac(Polyacrylate)フィルム;PES(poly ether sulfone)フィルム;PEEK(polyetheretherketon)フィルム;PPS(polyphenylsulfone)フィルム、PEI(polyetherimide)フィルム;PEN(polyethylenemaphthatlate)フィルム;PET(polyethyleneterephtalate)フィルム;PI(polyimide)フィルム;PSF(polysulfone)フィルムまたはPAR(polyarylate)フィルムなどが例示され得るが、これに制限されるものではない。
【0032】
本出願の製造方法は、特に前記基材層として有機基材層、例えば、プラスチックフィルムが使われる場合に有用であり得る。ドッティング斑などが発生する場合に前記斑が発生したデバイスなどを高温で処理することによって前記斑を除去する方法、例えば、光変調物質の例である液晶化合物のTni以上の温度で処理することによって前記斑を除去する方法が知られている。ところが、基板として有機基材層が適用される場合には、有機基材層の耐熱性が劣っているため、高温の熱処理工程を遂行することが困難である。しかし、本明細書で記述する方法によると、前記のような高温処理をすることなくドッティング斑が発生しないようにすることができるため、有機基材層が適用される場合にも優秀な物性の配向膜を形成することができる。
【0033】
本出願で前記基材層の厚さも特に制限されず、用途に応じて適正範囲が選択され得る。
【0034】
本出願の製造方法に適用される基板の配向膜は前記基材層上に直接形成されてもよく、前記基材層上に他の層または構成が存在する状態でその他の層または構成上に形成されてもよい。
【0035】
前記で他の層または構成の例は特に制限されず、光学デバイスの駆動および構成に必要な公知の層または構成がすべて含まれる。このような層または構成の例としては、電極層やスペーサーなどがある。
【0036】
前述した通り、前記第1基板は前記スペーサーが存在する基板であり、第2基板は前記スペーサーが存在しない基板である。
【0037】
配向膜は、液晶化合物の整列状態を調節するために前記基材層上に形成される。本出願で適用する配向膜の種類は特に制限されず、公知の配向膜を使うことができる。例えば、適切なコーティング性、溶媒に対する溶解度、耐熱性、耐化学性およびラビングのような配向処理に対する耐久性などを満足し、必要に応じて適切なチルティング(tilting)特性などを示し、不純度(impurity)管理による適切な電圧保持率(voltage holding ratio;VHR)と高明暗比などの物性を満足する公知の配向膜をすべて適用することができる。配向膜としては、例えば、垂直または水平配向膜であり得る。垂直または水平配向膜としては、隣接する液晶層の液晶化合物に対して垂直または水平配向能を有する配向膜であれば、特に制限なく選択して使うことができる。
【0038】
配向膜は、配向膜形成物質を含む配向膜形成材として、例えば、配向膜形成物質を適切な溶媒に分散、希釈および/または溶解させて製造した配向膜形成材、すなわち配向膜形成物質と溶媒を含む配向膜形成材を適用して公知の方式で形成することができる。
【0039】
配向膜形成物質の種類は、適切なラビング処理によって液晶に対する垂直または水平配向能のような配向能を示すことができるものとして公知とされているすべての種類の物質を使うことができる。このような物質としては、ポリイミド(polyimide)化合物、ポリビニルアルコール(poly(vinyl alcohol))化合物、ポリアミック酸(poly(amic acid))化合物、ポリスチレン(polystylene)化合物、ポリアミド(polyamide)化合物およびポリオキシエチレン(polyoxyethylene)化合物などのように、ラビング配向によって配向能を示すものとして公知とされている物質などが例示され得る。
【0040】
配向膜形成材は、前記のような配向膜形成物質を前記溶媒に希釈、分散および/または溶解させて製造することができる。この時、適用され得る溶媒は基本的に特に制限されはしない。例えば、溶媒としては、シクロヘキサン(cyclohexane)等の炭素数3~12または炭素数3~8のシクロアルカン、DMSO(dimethyl sulfoxide)、THF(tetrahydrofuran)、DMF(dimethylformamide)、NMP(N-Methyl-pyrrolidone)、クロロホルム(CHCl3)、シクロヘキサノン(cyclohexanon)またはシクロペンタノンなどの炭素数1~12または炭素数3~8のケトン、2-ブトキシエタノールまたはブタノールなどの炭素数1~12または炭素数1~8のアルコールまたはエチレングリコールやブチレングリコールなどの炭素数1~12または炭素数1~8のグリコールのうち選択されたいずれか一つまたは前記の中から選択された2種以上の混合溶媒を適用することができる。
【0041】
前記配向膜形成材内で前記配向膜形成物質の濃度も特に制限されず、使われた前記物質や溶媒の種類によって適正に制御され得る。
【0042】
本出願では前記のような配向膜形成材を使って配向膜を形成し、この場合,その形成方法は特に制限されない。例えば、配向膜形成工程は、基材層上に配向膜形成材の層を形成し、前記形成された層に配向処理などの公知の処理を遂行する工程を含むことができる。また、前記配向膜形成材の層を塗布などによって形成し、焼成までの時間が基板ごとに一定でない場合や、塗布後直ちに焼成されない場合には乾燥工程などのような前処理工程が遂行されてもよい。例えば、前記乾燥および/または熱処理などの工程は、適切な乾燥機、オーブンまたはホットプレートなどを使って遂行できる。
【0043】
前記のような工程によって形成される配向膜の厚さも特に制限されず、例えば、約50nm以上でありながら約1,000nm以下、900nm以下、800nm以下、700nm以下、600nm以下、500nm以下、400nm以下、300nm以下または200nm以下程度の範囲内で厚さが調節され得る。
【0044】
本出願の製造方法では前記形成された配向膜(配向膜形成材の層)に配向処理を遂行する段階、すなわちラビング段階を遂行し、この場合にラビング強度が前記方式で調節され得る。前記ラビング処理は、前述した通り、ラビングドラムなどの公知の手段を使って遂行することができ、例えば、コットン、レーヨンまたはナイロン等からなるラビング布が適用されたラビングドラムが使われ得る。
【0045】
本出願の製造方法は、また、前記のように形成された第1および第2基板のうち、いずれか一つの配向膜上に液晶化合物を含む光変調物質をドッティングする段階と第1および第2基板のうち、他の一つの基板を前記光変調物質がドッティングされた配向膜と対向配置した状態で圧力を加えて前記ドッティングされた光変調物質が前記基板の配向膜の間の間隔を充填するようにする段階をさらに含むことができる。
【0046】
前記過程は例えば、一般的なドッティング工程の進行方式により遂行され得、その具体的な進行方式は特に制限されない。
【0047】
また、適用される液晶化合物などの材料も特に制限されず、必要に応じて公知の適正材料が選択される。
【0048】
前記過程で前記基材層と対向基板の間の間隔、すなわちいわゆるセルギャップも特に制限されない。ただし、一例示において、前記間隔は、約4μm以上となり得る。前記間隔は、他の例示において約5μm以上、約6μm以上、約7μm以上または約8μm以上となり得、その上限は約20μm、約18μm、約16μm、約14μm、約12μmまたは約10μm程度であり得る。通常的にセルギャップが小さい場合、例えば、約4μm未満である場合には、ドッティング工程が適用される場合にもドッティング斑の問題がさほど浮き彫りにされてはしないが、セルギャップが大きくなる場合には前記問題点が浮き彫りにされる。ところが、必要に応じて光学デバイスに高いセルギャップが要求される場合があるが、本出願の方式を適用すると、高いセルギャップのデバイスの製造においてもドッティング斑を最小化するか抑制することができる。
【0049】
必要な場合に前記光変調物質は二色性染料(dichroic dye)をさらに含むことができる。例えば、前記二色性染料は二種類に区分することができるが、特定の方向に他の方向よりも多くの光を吸収する分子で分子の長軸方向の偏光を吸収する色素は正(positive)二色性染料またはp型染料、垂直な方向の光を吸収する色素は負(negative)二色性染料またはn型染料という。一般的に前記のような染料は最大の吸収を起こす波長を中心に狭い領域の吸収スペクトルを有することができる。また、ゲストホスト液晶ディスプレイ(Guest Host LCD)に使われる染料は、化学的・光学的安定性、色相と吸収スペクトルの幅、二色性比、色素の秩序度、ホスト(Host)に対する溶解度、非イオン化程度、消衰(extinction)係数および純度と高い比抵抗のような特性で評価することができる。以下、特に言及しない限り二色性染料は正の染料であると仮定する。
【0050】
本明細書で用語「染料」とは、可視光領域、例えば、400nm~700nm波長範囲内で少なくとも一部または全体範囲内の光を集中的に吸収および/または変形させることができる物質を意味し得、用語「二色性染料」は前記可視光領域の少なくとも一部または全体範囲で光の二色性吸収が可能な物質を意味し得る。
【0051】
二色性染料としては、例えば、液晶の整列状態により整列され得る特性を有するものとして知られている公知の染料を選択して使うことができる。二色性染料としては、例えば、黒色染料(black dye)を使うことができる。このような染料としては、例えば、アゾ染料またはアントラキノン染料などで公知とされているが、これに制限されるものではない。
【0052】
二色性染料の二色比(dichroic ratio)は本出願の目的を考慮して適切に選択され得る。例えば、前記二色性染料は二色比が5以上~20以下であり得る。本明細書で用語「二色比」とは、例えば、p型染料である場合、染料の長軸方向に平行な偏光の吸収を前記長軸方向に垂直な方向に平行な偏光の吸収で除算した値を意味し得る。異方性染料は可視光領域の波長範囲内、例えば、約380nm~700nmまたは約400nm~700nmの波長範囲内で少なくとも一部の波長またはいずれか一つの波長で前記二色比を有することができる。
【0053】
本出願はまた、光学デバイス、例えば、前記製造方法によって製造された光学デバイスに関するものである。このような光学デバイスは前記第1基板;前記第1基板と対向配置されている前記第2基板;および前記第1および第2基板の間に存在する光変調物質を含むことができる。
【0054】
前記光変調物質は、液晶化合物および二色性染料を含むことができる。前記光変調物質が液晶化合物および二色性染料をすべて含む場合、前記光変調物質はゲスト-ホスト型光変調物質として作用することができる。すなわち、前記ゲスト-ホスト型光変調物質は、液晶化合物の配列により二色性染料が共に配列されて染料の整列方向に平行な光は吸収し、垂直な光は透過させることによって非等方性光吸収効果を示すことができる。また、前記光変調物質の異方性染料の含量は本出願の目的を考慮して適切に選択され得る。例えば、前記光変調物質の異方性染料の含量は0.1重量%以上~10重量%以下であり得る。
【0055】
また、光学デバイスのセルギャップ、すなわち前記第1および第2基板間の間隔は特に制限されない。ただし、一例示において、前記間隔は、約4μm以上となり得る。前記間隔は、他の例示において約5μm以上、約6μm以上、約7μm以上または約8μm以上となり得、その上限は約20μm、約18μm、約16μm、約14μm、約12μmまたは約10μm程度であり得る。
【発明の効果】
【0056】
本出願では、ドッティング工程によって光学デバイスを製作する場合に発生し得るドッティング斑を最小化するか、あるいはなくすことができる製造方法が提供される。このような本出願の方法は、特に大きなセルギャップを有するか、基板として高分子基板が適用されて高温熱処理が不可能な場合にも、前記ドッティング斑を改善して配向性が向上した配向膜を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【
図1】一つの例示的なドッティング工程の進行過程を示す図面。
【
図2】ラビングドラムを使ったラビング工程を例示的に示す図面。
【
図3】実施例1に対してドッティング斑の発生の有無を評価した結果。
【
図4】比較例1に対してドッティング斑の発生の有無を評価した結果。
【
図5】比較例2に対してドッティング斑の発生の有無を評価した結果。
【
図6】比較例3に対してドッティング斑の発生の有無を評価した結果。
【
図7】比較例4に対してドッティング斑の発生の有無を評価した結果。
【
図8】比較例5に対してドッティング斑の発生の有無を評価した結果。
【発明を実施するための形態】
【0058】
以下、本出願に係る実施例および本出願に従わない比較例を通じて本出願を具体的に説明するが、本出願の範囲は下記に提示された実施例によって制限されるものではない。
【0059】
1.ドッティング斑の確認
ドッティング斑は次の方式で確認した。実施例または比較例で製造された光学デバイスに電圧を印加して光変調物質の液晶を水平配向させた後に線形偏光子を前記水平配向された液晶の光軸と垂直となるように位置させた後にドッティング斑の有無を確認した。
【0060】
実施例1.
第1基板として、一面にITO(Indium Tin Oxide)電極層、公知のポリイミド垂直配向膜(Nissan社、SE-5661)および約12μm程度のセルギャップ(cell gap)が維持されるようにするボールスペーサーが存在するPC(polycarbonate polymer)フィルムを使用し、第2基板として、前記第1基板と同一構造を有するものの、スペーサーは存在しないPCフィルムを使用した。前記フィルムで配向膜は電極層上に形成されており、第1基板でスペーサーは前記配向膜内に固定化された状態であった。前記第1および第2基板の配向膜をそれぞれ
図2に示した方式でラビングした。この時、第1基板に対するラビング強度RS1は約3程度であり、第2基板に対するラビング強度RS2は約20.9程度に制御した。具体的には、ラビング強度RS1の場合、数式1のラビング回数Nは1であり、ラビング深さMは約0.008mm程度であり、前記ラビングドラムの半径rは約70mmであり、ラビングドラムの回転速度nは約1000rpmであり、前記基板の移動速度vは約1160mm/secであった。また、ラビング強度RS2の場合、数式1のラビング回数Nは1であり、ラビング深さMは約0.055mm程度であり、前記ラビングドラムの半径rは約70mmであり、ラビングドラムの回転速度nは約1000rpmであり、前記基板の移動速度vは約1160mm/secであった。
【0061】
前記工程後に第1基板の端部には通常液晶セルの製造に適用される接着剤をコーティングし、適切な位置に光変調物質(HCCH社のHNG730200(ne:1.551、no:1.476、ε∥:9.6、ε⊥:9.6、TNI:100℃、△n:0.075、△ε:-5.7)液晶と異方性染料(BASF社、X12)の混合物)をドッティング(dotting)した後に前記第2基板を合着することによって、ドッティング(dotting)された光変調物質が2個の基板の間に均一に広がるようにして光学デバイスを製造した。
図3は、前記のような方式で形成された光学デバイスに対してドッティング斑の存在を観察した結果であり、
図3のようにドッティング斑は観察されなかった。
【0062】
比較例1
第1基板の配向膜のラビング強度RS1が20.9程度であり、第2基板の配向膜のラビング強度RS2が7.6となるようにしたことを除いては、実施例1と同様にして光学デバイスを製造した。具体的には、ラビング強度RS1の場合、数式1のラビング回数Nは1であり、ラビング深さMは約0.055mm程度であり、前記ラビングドラムの半径rは約70mmであり、ラビングドラムの回転速度nは約1000rpmであり、前記基板の移動速度vは約1160mm/secであった。また、ラビング強度RS2の場合、数式1のラビング回数Nは1であり、ラビング深さMは約0.02mm程度であり、前記ラビングドラムの半径rは約70mmであり、ラビングドラムの回転速度nは約1000rpmであり、前記基板の移動速度vは約1160mm/secであった。
【0063】
図4は、前記のような方式で形成された光学デバイスに対してドッティング斑の存在を観察した結果であり、
図4のように相当のドッティング斑が確認された。
【0064】
比較例2
第1基板の配向膜のラビング強度RS1が1.9程度であり、第2基板の配向膜のラビング強度RS2が7.6となるようにしたことを除いては、実施例1と同様にして光学デバイスを製造した。具体的には、ラビング強度RS1の場合、数式1のラビング回数Nは1であり、ラビング深さMは約0.005mm程度であり、前記ラビングドラムの半径rは約70mmであり、ラビングドラムの回転速度nは約1000rpmであり、前記基板の移動速度vは約1160mm/secであった。また、ラビング強度RS2の場合、数式1のラビング回数Nは1であり、ラビング深さMは約0.02mm程度であり、前記ラビングドラムの半径rは約70mmであり、ラビングドラムの回転速度nは約1000rpmであり、前記基板の移動速度vは約1160mm/secであった。
【0065】
図5は、前記のような方式で形成された光学デバイスに電圧を印加して水平配向させた状態で水平配向性を確認した結果であり、
図5のように水平配向が不良であることが確認された。
【0066】
比較例3
第1基板の配向膜のラビング強度RS1が1.9程度であり、第2基板の配向膜のラビング強度RS2が519.9となるようにしたことを除いては、実施例1と同様にして光学デバイスを製造した。具体的には、ラビング強度RS1の場合、数式1のラビング回数Nは1であり、ラビング深さMは約0.005mm程度であり、前記ラビングドラムの半径rは約70mmであり、ラビングドラムの回転速度nは約1000rpmであり、前記基板の移動速度vは約1160mm/secであった。また、ラビング強度RS2の場合、数式1のラビング回数Nは1であり、ラビング深さMは約1.37mm程度であり、前記ラビングドラムの半径rは約70mmであり、ラビングドラムの回転速度nは約1000rpmであり、前記基板の移動速度vは約1160mm/secであった。
【0067】
図6は、前記のような方式で形成された光学デバイスに対してドッティング斑の存在を観察した結果であり、
図6のように相当のドッティング斑が確認された。
【0068】
比較例4
第1基板の配向膜のラビング強度RS1が1.9程度であり、第2基板の配向膜のラビング強度RS2が64.5となるようにしたことを除いては、実施例1と同様にして光学デバイスを製造した。具体的には、ラビング強度RS1の場合、数式1のラビング回数Nは1であり、ラビング深さMは約0.005mm程度であり、前記ラビングドラムの半径rは約70mmであり、ラビングドラムの回転速度nは約1000rpmであり、前記基板の移動速度vは約1160mm/secであった。また、ラビング強度RS2の場合、数式1のラビング回数Nは1であり、ラビング深さMは約0.17mm程度であり、前記ラビングドラムの半径rは約70mmであり、ラビングドラムの回転速度nは約1000rpmであり、前記基板の移動速度vは約1160mm/secであった。
【0069】
図7は、前記のような方式で形成された光学デバイスに電圧を印加して水平配向させた状態で水平配向性を確認した結果であり、
図7のように水平配向が不良であることが確認された。
【0070】
比較例5
第1基板の配向膜のラビング強度RS1が110.1程度であり、第2基板の配向膜のラビング強度RS2が7.6となるようにしたことを除いては、実施例1と同様にして光学デバイスを製造した。具体的には、ラビング強度RS1の場合、数式1のラビング回数Nは1であり、ラビング深さMは約0.29mm程度であり、前記ラビングドラムの半径rは約70mmであり、ラビングドラムの回転速度nは約1000rpmであり、前記基板の移動速度vは約1160mm/secであった。また、ラビング強度RS2の場合、数式1のラビング回数Nは1であり、ラビング深さMは約0.02mm程度であり、前記ラビングドラムの半径rは約70mmであり、ラビングドラムの回転速度nは約1000rpmであり、前記基板の移動速度vは約1160mm/secであった。
【0071】
図8は、前記のような方式で形成された光学デバイスに対してドッティング斑の存在を観察した結果であり、
図8のように相当のドッティング斑が確認された。
【符号の説明】
【0072】
201A、201B:基板
301:光変調物質