(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-20
(45)【発行日】2022-01-17
(54)【発明の名称】戸先センサ
(51)【国際特許分類】
E05F 15/44 20150101AFI20220107BHJP
B61D 19/02 20060101ALI20220107BHJP
B60J 5/00 20060101ALI20220107BHJP
【FI】
E05F15/44
B61D19/02 T
B60J5/00 D
(21)【出願番号】P 2017240047
(22)【出願日】2017-12-14
【審査請求日】2020-06-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000005083
【氏名又は名称】日立金属株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002583
【氏名又は名称】特許業務法人平田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】秋元 克弥
(72)【発明者】
【氏名】川瀬 賢司
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 秀一
【審査官】家田 政明
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-004714(JP,A)
【文献】特開2006-100035(JP,A)
【文献】特開2017-203661(JP,A)
【文献】独国実用新案第000029808292(DE,U1)
【文献】欧州特許出願公開第02774795(EP,A2)
【文献】特開2002-235480(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E05F 15/00-15/79
B61D 19/02
B60J 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ドア開口部を開閉するドアの閉方向の先端部に取り付けられ、前記閉方向に交差する方向に延びる空洞が内部に形成された戸先弾性部材と、
前記戸先弾性部材に取り付けられ、前記空洞の延伸方向に沿って配置された線状の感圧部材とを備え、
前記空洞はその断面形状が円形状であり、
前記戸先弾性部材の内壁面に前記空洞の延伸方向に沿って延びる凹部が形成され、
前記感圧部材は、その少なくとも一部が前記凹部内に固定され、他部が前記空洞に露出しており、
前記感圧部材は、前記戸先弾性部材
の側部が折れ曲がり前記凹部の変形に伴って変形する弾性を有する管状の絶縁体チューブと、前記絶縁体チューブの内面に固定された複数の導電部材とを有し、
前記複数の導電部材は、前記絶縁体チューブの非変形状態において非接触であり、前記絶縁体チューブが変形したとき互いに接触する、
戸先センサ。
【請求項2】
前記感圧部材は、前記戸先弾性部材における前記ドアの開閉方向の両端部を除いた側部に取り付けられている、
請求項1に記載の戸先センサ。
【請求項3】
一対の前記感圧部材が、前記ドアの開閉方向に平行な同ドアの厚み方向の中心面を挟み、同中心面の一側及び他側におけるそれぞれの前記側部に取り付けられている、
請求項2に記載の戸先センサ。
【請求項4】
前記感圧部材は、前記ドアの前記中心面に垂直で且つ前記空洞の中心を通る基準線よりも前記閉方向側に前記絶縁体チューブの中心が位置するように取り付けられている、
請求項3に記載の戸先センサ。
【請求項5】
前記戸先弾性部材よりも硬質な硬質部材が前記戸先弾性部材に取り付けられ、
前記感圧部材が、前記硬質部材よりも前記ドアの閉方向側に取り付けられている、
請求項1乃至
4の何れか1項に記載の戸先センサ。
【請求項6】
前記硬質部材は、前記戸先弾性部材の内壁面に形成された凹部に少なくとも一部が収容されている、
請求項
5に記載の戸先センサ。
【請求項7】
前記硬質部材は、前記空洞に露出する位置に配置されている、
請求項
5又は6に記載の戸先センサ。
【請求項8】
前記硬質部材は、棒状の金属から形成されたものである、
請求項
5乃至7のいずれか1項に記載の戸先センサ。
【請求項9】
前記感圧部材は、前記絶縁体チューブの中心と前記空洞の中心とを結ぶ直線と、前記基準線との間の角度が10°~30°となる位置に配置された、
請求項4に記載の戸先センサ。
【請求項10】
前記感圧部材は、前記絶縁体チューブの中心と前記空洞の中心とを結ぶ直線と、前記基準線との間の角度が20°~30°となる位置に配置された、
請求項4に記載の戸先センサ。
【請求項11】
前記戸先弾性部材は、前記空洞の中心に向かって突出する突部を有し、
前記感圧部材が前記突部における突出方向の端部に取り付けられている、
請求項1に記載の戸先センサ。
【請求項12】
前記戸先弾性部材は、前記空洞の中心に向かって突出する複数の突部を有し、
前記感圧部材が前記複数の突部に挟まれる位置に取り付けられている、
請求項1に記載の戸先センサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば鉄道車両等の車両に設けられたドア開口部を開閉するドアに取り付けられ、ドアの閉動作時における戸挟みを検知する戸先センサに関する。
【背景技術】
【0002】
車両等に設けられたドア開口部を人員が通過する際、ドアの閉動作に伴って人員の体の一部や所持品がドアに挟まれる戸挟みが発生する場合がある。従来、このような戸挟みを検出する戸挟み検出装置が提案されている(例えば、特許文献1,2参照)。
【0003】
特許文献1に記載された戸挟み検出装置は、鉄道車両の各ドアの先端に装着される戸先ゴムの取り付け部の内部に断面円形の中空部を設けるとともに、戸先ゴムの内部の空洞部に円筒部を設け、中空部から得られる基準圧力データと円筒部から得られる内圧データとの差を検出することで戸先ゴムの変形具合を判断して、戸挟み状態を検出するように構成されている。
【0004】
特許文献2に記載された戸挟み検出装置は、戸先ゴムの内部に圧電材を配置し、戸挟みが発生した際に圧電材から発生する電荷量の変化を検出することにより、戸挟みが発生したことを検出するように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2006-283312号公報
【文献】特開2013-147195号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1に記載された戸挟み検出装置は、円筒部の内圧変化に基づき戸挟みの有無の判定を行うため、かかる戸挟み検出装置では、円筒部の変形をさせにくい小さい異物ほど、深く挟まれた状態にならないと、検出が難しいという問題が生じる。つまり、鞄のように戸先ゴムに接する面積が大きいものは検出されやすいが、手指のように戸先ゴムに接する面積が小さいものは深く挟まれた状態にならないと検出が難しいという問題が生じる。
【0007】
また、特許文献2に記載された戸挟み検出装置は、圧電材から発生する電荷量の変化によって戸挟みを検出するので、戸挟みが発生した後、その戸挟み状態が継続しているか否かを検出することができず、例えばドアが異物に衝突して戸挟みが検出された後、異物との接触状態が解除されても戸挟み状態が続いていると誤認識してしまうおそれがある。
【0008】
そこで本発明は、戸先ゴムと異物との接触面積に依存することなく戸挟み状態を検出することが可能で、かつ戸挟み状態が継続しているか否かを判別することが可能な戸先センサを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上記目的を達成するため、下記の戸先センサを提供するものである。
[1]ドア開口部を開閉するドアの閉方向の先端部に取り付けられ、前記閉方向に交差する方向に延びる空洞が内部に形成された戸先弾性部材と、前記戸先弾性部材に取り付けられ、前記空洞の延伸方向に沿って配置された線状の感圧部材とを備え、前記感圧部材は、前記戸先弾性部材の弾性変形に伴って変形する弾性を有する管状の絶縁体チューブと、前記絶縁体チューブの内面に固定された複数の導電部材とを有し、前記複数の導電部材は、前記絶縁体チューブの非変形状態において非接触であり、前記絶縁体チューブが変形したとき互いに接触する、戸先センサ。
[2]前記感圧部材は、前記戸先弾性部材における前記ドアの開閉方向の両端部を除いた側部に取り付けられている、[1]に記載の戸先センサ。
[3]一対の前記感圧部材が、前記ドアの開閉方向に平行な同ドアの厚み方向の中心面を挟み、同中心面の一側及び他側におけるそれぞれの前記側部に取り付けられている、[2]に記載の戸先センサ。
[4]前記感圧部材は、前記ドアの前記中心面に垂直で且つ前記空洞の中心を通る基準線よりも前記閉方向側に前記絶縁体チューブの中心が位置するように取り付けられている、[3]に記載の戸先センサ。
[5]前記戸先弾性部材の内壁面に前記空洞の延伸方向に沿って延びる凹部が形成され、前記感圧部材は、その少なくとも一部が前記凹部内に配置されている、[1]乃至[4]の何れか1項に記載の戸先センサ。
[6]前記感圧部材は、その一部が前記空洞に露出している、[1]乃至[5]の何れか1項に記載の戸先センサ。
[7]前記戸先弾性部材よりも硬質な硬質部材が前記戸先弾性部材に取り付けられ、前記感圧部材が、前記硬質部材よりも前記ドアの閉方向側に取り付けられている、[1]乃至[6]の何れか1項に記載の戸先センサ。
[8]前記硬質部材は、前記戸先弾性部材の内壁面に形成された凹部に少なくとも一部が収容されている、[7]に記載の戸先センサ。
[9]前記硬質部材は、前記空洞に露出する位置に配置されている、[7]又は[8]に記載の戸先センサ。
[10]前記硬質部材は、棒状の金属から形成されたものである、[7]乃至[9]のいずれか1項に記載の戸先センサ。
[11]前記感圧部材は、前記絶縁体チューブの中心と前記空洞の中心とを結ぶ直線と、前記基準線との間の角度が10°~30°となる位置に配置された、[4]に記載の戸先センサ。
[12]前記感圧部材は、前記絶縁体チューブの中心と前記空洞の中心とを結ぶ直線と、前記基準線との間の角度が20°~30°となる位置に配置された、[4]に記載の戸先センサ。
[13]前記戸先弾性部材は、前記空洞の中心に向かって突出する突部を有し、前記感圧部材が前記突部における突出方向の端部に取り付けられている、[1]に記載の戸先センサ。
[14]前記戸先弾性部材は、前記空洞の中心に向かって突出する複数の突部を有し、前記感圧部材が前記複数の突部に挟まれる位置に取り付けられている、[1]に記載の戸先センサ。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、戸先ゴムと異物との接触面積に依存することなく戸挟み状態を検出することが可能で、かつ戸挟み状態が継続しているか否かを判別することが可能な戸先センサを提供することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、本発明の実施の形態に係る戸先センサが適用される電車のドアの正面図である。
【
図2】
図2は、
図1のAの部分を上から見て拡大した概略の構成を示す横断面図である。
【
図3】
図3は、本発明の第1の実施の形態に係る戸先センサを示す断面図である。
【
図4】
図4は、本実施の形態のコードスイッチの要部斜視図である。
【
図5】
図5は、コードスイッチの原理を説明するための模式的な回路図である。
【
図6】
図6は、本実施の形態の戸先センサを用いた、戸挟み検出システムの概略構成を示す回路図である。
【
図7】
図7は、本発明の第2の実施の形態に係る戸先センサを示す断面図である。
【
図8】
図8は、本発明の第3の実施の形態に係る戸先センサを示す断面図であり、(a)は荷重が加わっていない初期状態を示す断面図、(b)は荷重Fにより当接部が変形した様子を示す断面図である。
【
図9】
図9は、本発明の第4の実施の形態に係る戸先センサを示す断面図である。(a)は荷重が加わっていない初期状態を示す断面図、(b)は荷重Fにより当接部が変形した様子を示す断面図である。
【
図10】
図10は、戸先ゴムに荷重を加えてその変形の様子を調べるシミュレーション装置の概略の構成を示す斜視図である。
【
図11】
図11は、シミュレーションの対象の戸先ゴムの各部の詳しい寸法を表示した断面図である。
【
図12】
図12は、実施例3のシミュレーションの様子を示し、(a)は荷重が加わっていない初期状態を示す断面図、(b)は荷重Fにより当接部が変形した様子を示す断面図である。
【
図13】
図13は、実施例4のシミュレーションの様子を示し、(a)は荷重が加わっていない初期状態を示す断面図、(b)は荷重Fにより当接部が変形した様子を示す断面図である。
【
図14】
図14は、参考例のシミュレーションの様子を示し、(a)は荷重が加わっていない初期状態を示す断面図、(b)は荷重Fにより当接部が変形した様子を示す断面図である。
【
図15】
図15は、参考例のシミュレーションにおける荷重Fと押し込み量Vとの関係を示すグラフである。
【
図16】
図16は、実施例1のシミュレーションにおける荷重Fと押し込み量Vとの関係を示すグラフである。
【
図17】
図17は、実施例2のシミュレーションにおける荷重Fと押し込み量Vとの関係を示すグラフである。
【
図18】
図18は、実施例3のシミュレーションにおける荷重Fと押し込み量Vとの関係を示すグラフである。
【
図19】
図19は、実施例4のシミュレーションにおける荷重Fと押し込み量Vとの関係を示すグラフである。
【
図20】
図20は、実施例3のコードスイッチの取り付け角度を説明するための断面図である。
【
図21】
図21(a)は、実施例3のコードスイッチの取り付け角度θと動作時の押し込み量Vとの関係を示すグラフであり、
図21(b)は、実施例3のコードスイッチの取り付け角度θと動作時の荷重Fとの関係を示すグラフである。
【
図22】
図22は、実施例4のコードスイッチの取り付け角度を説明するための断面図である。
【
図23】
図23(a)は、実施例4のコードスイッチの取り付け角度θと動作時の押し込み量Vとの関係を示すグラフであり、
図23(b)は、実施例4のコードスイッチの取り付け角度θと動作時の荷重Fとの関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。なお、各図中、実質的に同一の機能を有する構成要素については、同一の符号を付してその重複した説明を省略する。
【0013】
[第1の実施の形態]
図1は、本発明の実施の形態に係る戸先センサが適用される電車(鉄道車両)のドアの正面図である。
【0014】
図1に示すように、電車の車両1の側面の乗降口であるドア開口部には、図の左右方向にスライド移動して同ドア開口部を開閉する1組のドア2(2a,2b)が設けられている。また、スライド式の各ドア2a,2bが閉じる際の移動方向である閉方向の先端部には、戸先弾性部材としての戸先ゴム4(4a,4b)がそれぞれ取り付けられている。戸先ゴム4は、合成ゴムからなり、乗降口の上下方向(図の上下方向)に沿って取り付けられている。この1組のドア2(2a,2b)に設けられた対向する1組の戸先ゴム4(4a,4b)は、ドア2(2a,2b)が閉じたドア閉時には、
図1に示すように互いに当接するようになっている。
【0015】
図2は、
図1のAの部分を上から見て拡大した概略の構成を示す横断面図である。
図2中、Bはドア2の開閉方向、Baはドア2の開方向、Bbはドア2の閉方向を示す。ドア2(2a,2b)が完全に閉じている場合には、戸先ゴム4aと戸先ゴム4bとは実際には当接しているが、
図2では、分かり易くするために、ドア2aの先端部に設けられた戸先ゴム4aとドア2bの先端部に設けられた戸先ゴム4bとの間に少し隙間を設けて図示している。
【0016】
左右のドア2a,2bに取り付けられる戸先ゴム4a,4bは、同様に構成されているため、以下、右側のドア2aに取り付けられる戸先ゴム4aについて説明する。戸先ゴム4aは、ドア2aへの取り付けのための取り付け部5と、取り付け部5よりも閉方向Bb側に配置される当接部6と、取り付け部5と当接部6とを接続する接続部5aとを含む。取り付け部5は、ドア2aの閉方向Bbの先端に設けられた取り付け溝3aに嵌合するようになっている。ドア2aの当接部6は、ドア閉時において他方のドア2bの当接部6に当接する。また、当接部6には、閉方向Bbに交差する方向に延びる空洞7が内部に形成されている。本実施の形態では、空洞7の延伸方向がドア2の開閉方向Bに対して垂直な上下方向である。
【0017】
この空洞7は、戸先ゴム4aをドア2aに取り付けた際、ドア2aの開閉方向Bに平行で、かつドア2aの厚み方向Wを二等分するドア2aの厚み方向の中心面Sを含む位置に形成されている。
図2に示す例では、空洞7の横断面は中心面Sに関して対称な円形を有しているが、空洞7の断面形状は円形でなくともよく、中心面Sに対して対称でなくてもよい。空洞7aの横断面の形状は、円形以外に楕円形や半円形あるいは三日月形、その他正方形、長方形、台形等でもよい。
【0018】
戸先ゴム4aには、空洞7の延伸方向に沿って配置された線状の感圧部材としてのコードスイッチ10が取り付けられている。コードスイッチ10の構成の詳細は後述するが、コードスイッチ10は、その構成要素として、戸先ゴム4aの弾性変形に伴って変形する弾性を有する管状の絶縁体チューブと、絶縁体チューブの内面に固定された複数の導電部材とを有し、複数の導電部材が絶縁体チューブの非変形状態において非接触であり、絶縁体チューブが変形したとき互いに接触するように構成されている。
【0019】
図2では、コードスイッチ10がドア2aの厚み方向の中心面Sを挟み、中心面Sの一側及び他側(車両1の外側及び内側)の2か所に配置されているが、片側だけに配置してもよい。コードスイッチ10のより好ましい位置については、後述するシミュレーションの結果を踏まえて後で詳しく述べることとする。
【0020】
このように戸先ゴム4(4a、4b)にコードスイッチ10を配置することにより、戸先ゴム4(4a、4b)とコードスイッチ10とを備えた戸先センサ20(20a、20b)が形成される。
【0021】
図3は、本発明の第1の実施の形態に係る戸先センサ20を示す断面図である。なお、
図3では、コードスイッチ10を模式的に示す。
図3を用いて戸先センサ20をさらに詳しく説明する。
図3に示すのは、一方のドア2aの先端に設けられた戸先センサ20aである。他方のドア2bの先端に設けられた戸先センサ20bもこれと同様であるので、以下、戸先センサ20aについて説明する。
【0022】
戸先ゴム4aは、取り付け部5と、当接部6と、取り付け部5と当接部6とを接続する接続部5aとを備える。当接部6には、ドアの厚み方向W(
図2参照)における中心面S上に空洞7が設けられている。戸先ゴム4aの内壁面には、空洞7の延伸方向に沿って延びる弧状の凹部6aが形成されている。凹部6aは、コードスイッチ10の直径(例えば、4mm)に対応した半径を有する。コードスイッチ10は、凹部6aに沿ってその一部が凹部6a内に配置され、他の一部が空洞7に露出するように設けられる。ここで、露出するとは、凹部6aが形成されていない部分の当接部6の内面よりも空洞7の中心Cに向かってコードスイッチ10の一部が突出していることをいう。戸先ゴム4aは、例えば射出成型或いは押出成形等の方法により形成することができ、コードスイッチ10は、例えば、接着剤や溶着等によって凹部6aに接合される。
【0023】
ここに「戸先弾性部材に取り付けられ、空洞の延伸方向に沿って配置された線状の感圧部材」とは、第1の実施の形態及び後述する第2の実施の形態におけるように、コードスイッチ10を戸先ゴム4aに接合するような方法で固定する形態に限らず、後述する第3の実施の形態におけるように、空洞の中心に向かって突出する複数の突部によってコードスイッチ10を挟持するような方法や、後述する第4の実施の形態におけるように、突部の表面にコードスイッチ10を配置するような方法で、戸先ゴム4aに対してコードスイッチ10を接着剤や溶着等によって固定しない形態をも含む。
【0024】
図3に示すように、本実施の形態では、コードスイッチ10が戸先ゴム4aにおけるドア4aの開閉方向Bの両端部を除いた側部に取り付けられている。より具体的には、一対のコードスイッチ10が、ドア4aの中心面Sを挟み、中心面Sの一側(車両1の外側)及び他側(車両1の車室側)におけるそれぞれの側部に取り付けられている。ここで、側部とは、中心面Sに交差する戸先ゴム4aの開閉方向Bの両端部を除く部位であり、この側部にコードスイッチ10が取り付けられていることにより、中心面Sがコードスイッチ10に交差しないようになっている。
【0025】
また、コードスイッチ10は、ドア4aの中心面Sに垂直で且つ空洞7の中心Cを通る基準線Mよりもドア4aの閉方向Bb側にコードスイッチ10の中心(後述する絶縁体チューブ11の中心)が位置するように取り付けられている。コードスイッチ10の中心と空洞7の中心Cとを結ぶ直線が、基準線Mとなす角度(取り付け角度)θの好ましい値については後でシミュレーション結果を踏まえて述べる。
【0026】
(コードスイッチ)
次に、コードスイッチ10について
図4を参照して説明する。
図4は、本実施の形態のコードスイッチ10の要部斜視図である。
【0027】
図4に示すように、コードスイッチ10は、弾性及び電気絶縁性を有する管状の絶縁体チューブ11と、絶縁体チューブ11を被覆する筒状のコードカバー13と、絶縁体チューブ11の内面に間隔を設けて対向して配置された複数の導電部材としての4本の電極線12とを備えている。なお、本実施の形態では、絶縁体チューブ11の保護及び補強のためにコードカバー13を用いているが、コードカバー13を省略してもよい。
【0028】
本実施の形態では、絶縁体チューブ11の外表面11bが円筒状であり、絶縁体チューブ11の中心部には長手方向に直交する断面の形状が十字形の中空部11aが形成されている。中空部11aの内面には、4本の電極線12がその一部を中空部11aに露出させて電気的に非接触の状態で螺旋状に保持されている。絶縁体チューブ11は、外力が加わることにより変形し、外力がなくなれば直ちに復元する弾性(復元性)を有している。
【0029】
このような特性を有する絶縁体チューブ11の材料として、例えば、シリコーンゴム、エチレンプロピレンゴム、スチレンブタジエンゴム、クロロプレンゴム等のゴム材料や、ポリエチレン、エチレン酢酸ビニル共重合体、エチレンエチルアクリレート共重合体、エチレンメチルメタクリレート共重合体等の弾性プラスチックを用いることができる。
【0030】
4本の電極線12は、同一の構成を有し、絶縁体チューブ11の中空部11aの内面に等間隔に配置され、かつ、絶縁体チューブ11内に螺旋状に配置されている。本実施の形態において、電極線12は、絶縁体チューブ11が有する弾性力のみで互いに離間して(非接触の状態で)中空部11aの内面に保持されている。
【0031】
図示は省略するが、電極線12のそれぞれは、複数の金属線と、この複数の金属線の夫々を一括して被覆する導電性を有する導電性被覆層とからなり、断面が円形に形成されている。この金属線は、優れた曲げ性及び弾性を得るため、金属素線を複数本撚り合わせた金属撚線を用いている。導電性被覆層は、例えば、ゴム又は弾性プラスチックにカーボンブラック等の導電性充填剤を配合した混和物からなる。導電性被覆層の断面積は、金属線の断面積の2倍以上であることが好ましい。これにより、電極線12に十分な弾力性を付与するとともに、絶縁体チューブ11による電極線12の保持が適切になされる。
【0032】
コードカバー13は、筒状に形成されており、中空部11aに電極線12を保持した絶縁体チューブ11を収容してこれらを保護している。コードカバー13は、例えば、ウレタンゴム、EPゴム、シリコーンゴム、スチレンブタジエンゴム、クロロプレンゴム、オレフィン系又はスチレン系の熱可塑性エラストマ、あるいはウレタン樹脂等からなる。
【0033】
図5は、コードスイッチ10の原理を説明するための模式的な回路図である。4本の電極線12のうち2本の電極線12の一方端の間に電源14及び電流計15が接続され、他の2本の電極線12の一方端の間に抵抗16が接続され、他方端17では電極線12同士が直接接続されることにより、電源14、電流計15、電極線12及び抵抗16からなる直列回路が形成されている。
【0034】
この回路には、通常、微弱監視電流が通電されており、外部からの荷重により4本の電極線12のいずれかの間が接触すると、短絡電流が流れ、この短絡電流の増加に基づいて異常を検出することができる。
【0035】
(戸挟み検出システム)
図6は、本実施の形態の戸先センサ20を用いた、戸挟み検出システムの概略の構成を示す回路図である。
【0036】
図6に示すように、戸挟み検出システムは、車両の各ドアに配置された各戸先センサ20は回線21により検出装置22に接続されている。戸先センサ20a,20bには、回線21を通じて微弱監視電流が流れており、戸先センサ20a,20bの何れかで戸挟み状態が発生し、コードスイッチ10に大きな電流が流れた場合には、それを検出信号として検出装置22が検出するようになっている。
【0037】
検出装置22は、例えば乗務員室に配置されており、どのドアで戸挟み状態が発生したかを検出するために、時分割で戸先センサ20a,20bに電流を送るとともに、検出信号を受けるように制御されていることが好ましい。また、検出装置22には警報装置24が接続され、検出装置22が戸挟み状態の発生を検出した場合には、戸挟み状態が発生したドアを表示するとともに警報音あるいは光によって報知してもよい。
【0038】
(第1の実施の形態の作用、効果)
第1の実施の形態に係る戸先センサ20によれば、以下の作用、効果を奏する。
(1)空洞7の延伸方向に沿ってコードスイッチ10を配置し、戸先ゴム4aの弾性変形に伴ってコードスイッチ10の絶縁体チューブ11が変形することにより複数の電極線12が互いに接触するので、戸先ゴム4aと異物との接触面積に依存することなく戸挟み状態を検出することが可能になる。
(2)コードスイッチ10は、ドア2aの中心面Sを挟んで、戸先ゴム4aにおけるドア2aの厚み方向W両側の内壁面の2か所に設けられていることで、戸挟み状態を安定して検出することができる。
(3)コードスイッチ10は、戸挟みによって戸先ゴム4aの弾性変形が継続する間は複数の電極線12同士が互いに接触しているので、そのオンオフを検出するのみで戸挟み状態を簡易な構成で検出することができ、また戸挟み状態が継続しているか否かを判別することが可能である。
(4)コードスイッチ10は、その一部が空洞7に露出するように設けられているので、戸挟みの発生時に当接部6の変形によってコードスイッチ10が戸先ゴム4aの角部(凹部6aのエッジ部分)に挟まれて圧力を受け、戸挟み状態を早めに検出できる。
(5)コードスイッチ10の取り付け角度θを調整することにより、戸挟み状態を検出する荷重及び押し込み量を調整することができる。
【0039】
[第2の実施の形態]
図7は、本発明の第2の実施の形態に係る戸先センサ20を示す断面図である。本実施の形態は、第1の実施の形態に対して戸先ゴム4aよりも硬い硬質部材18を付加したものである。以下、第1の実施の形態と異なる点を中心に説明する。
【0040】
図7において、戸先ゴム4aの内壁面におけるコードスイッチ10の配置位置は、前述した第1の実施の形態と同様である。第2の実施の形態は、戸先ゴム4aよりも硬質な硬質部材18が戸先ゴム4aに取り付けられ、コードスイッチ10が硬質部材18よりもドア2aの閉方向Bb側に取り付けられている。硬質部材18は、コードスイッチ10が配置された凹部6aと平行に形成された凹部6bに少なくとも一部が収容され、他の一部が空洞7に露出する位置に配置されている。
【0041】
この硬質部材18としては、特に限定されるものではないが、戸先ゴム4よりもヤング率で10倍位の材料、例えば針金のような棒状の金属材料等が好ましい。なお、硬質部材18は、戸先ゴム4aよりも硬ければ、樹脂やゴム等でもよい。凹部6bは、硬質部材18の直径(例えば2mm)に対応した半径を有する。硬質部材18は、凹部6bに沿って設けられる。硬質部材18は、例えば、接着剤や溶着等によって凹部6bに接合される。
【0042】
(第2の実施の形態の作用、効果)
第2の実施の形態に係る戸先センサ20によれば、以下の作用、効果を奏する。
(1)戸先ゴム4aよりも硬質な硬質部材18がコードスイッチ10よりもドア2aの開方向Ba側に取り付けられていることにより、コードスイッチ10よりもドア2aの開方向Ba側の剛性が大きくなり、第1の実施の形態と比較して、少ない変形量で、かつ小さな荷重で戸挟み状態を検出することが可能になる。
(2)第1の実施の形態と同様に、コードスイッチ10の取り付け角度θを調整することにより、戸挟み状態を検出する荷重及び押し込み量を調整することができる。
【0043】
[第3の実施の形態]
図8は、本発明の第3の実施の形態に係る戸先センサ20を示す断面図である。本実施の形態は、第1の実施の形態に対してコードスイッチ10の配置位置を変更したものである。以下、第1の実施の形態と異なる点を中心に説明する。
【0044】
第3の実施の形態に係る戸先センサ20は、戸先ゴム4が空洞7の中心に向かって突出する複数の突部41を有し、コードスイッチ10が複数の突部41,42に挟まれる位置に取り付けられている。より具体的には、コードスイッチ10が台形状の一対の突部41,42に挟まれ、空洞7の略中央部に配置されている。一対の突部41,42は、ドア2の開閉方向Bに沿って並び、突部41がコードスイッチ10の閉方向Bb側に、また突部42がコードスイッチ10の開方向Ba側に、それぞれ設けられている。なお、突部41,42は、戸先ゴム4の長手方向の全体にわたって設けられている。
【0045】
(第3の実施の形態の作用、効果)
第3の実施の形態に係る戸先センサ20によれば、第1の実施の形態と同様の作用及び効果を得ることができる。また、戸挟みが発生した際にはドア2の開閉方向Bに並ぶ突部41と突部42との間にコードスイッチ10が挟圧されて複数の電極線12同士が互いに接触するので、第1及び第2の実施の形態と比較して、さらに少ない変形量で、かつ小さな荷重で戸挟み状態を検出することが可能になる。
【0046】
[第4の実施の形態]
図9は、本発明の第4の実施の形態に係る戸先センサを示す断面図である。本実施の形態は、第3の実施の形態に対してコードスイッチ10の支持方法を変更したものである。以下、第3の実施の形態と異なる点を中心に説明する。
【0047】
第4の実施の形態に係る戸先センサ20は、戸先ゴム4が空洞7の中心に向かって突出する突部42を有し、コードスイッチ10が突部42の突出方向の端部に取り付けられている。突部42は、コードスイッチ10側の開方向側に設けられ、ドア2の閉方向に向かって突出している。また、戸先ゴム4は、コードスイッチ10の閉方向側に突部42よりも突出量が小さい突部41を有し、突部41とコードスイッチ10との間には隙間が形成されている。すなわち、第4の実施の形態は、コードスイッチ10を一対の突部41,42で挟持するのではなく、一方の突部41を突部42よりも小さいものとすることで、突部42のみでコードスイッチ10を空洞の略中央部に配置した。
【0048】
第4の実施の形態に係る戸先センサ20において、戸挟みが発生していないときには、突部41がコードスイッチ10に当接せず、戸挟みが発生すると、突部41がコードスイッチ10に当接して突部42との間でコードスイッチ10を挟圧する。これにより、コードスイッチ10の複数の電極線12同士が互いに接触する。
【0049】
(第4の実施の形態の作用、効果)
第4の実施の形態に係る戸先センサ20によれば、第3の実施の形態と同様の作用及び効果が得られる。また、突部41とコードスイッチ10との間には隙間が形成されるので、第3の実施の形態に比較して、例えば手指が挟まれた場合の痛みが軽減される。
【0050】
(コードスイッチの取り付け位置に関するシミュレーション結果)
以下、戸先ゴム4にコードスイッチ10を取り付ける位置に関する様々なシミュレーションを行った結果について詳細に説明する。
【0051】
このシミュレーションは戸先ゴム4の様々な位置にコードスイッチ10を取り付けて、戸先ゴム4に荷重を加えたとき、それぞれの場合に荷重と戸先ゴム4aの変形量(押し込み量)の関係を調べたものである。より具体的には加圧部材40の半円状下部の半径を5mmごとに変化させた場合の荷重と戸先ゴムの変形量(押し込み量)の関係を調べたものである。ここで解析ツールとしては、Cybernet Systems社のANSYS Mechanical(プラットフォーム:ANSYS Workbench 14.5)を用いた。解析モデルは、1/4モデルとした。戸先ゴム4のヤング率は3MPa、ポアソン比は0.49とした。コードスイッチ10は、一般的な弾性体と仮定し、ヤング率は9MPa、ポアソン比は0.49とした。この条件は、他のシミュレーションにおいても同じである。
【0052】
図10は、戸先ゴム4に荷重を加えてその変形の様子を調べるシミュレーション装置の概略の構成を示す斜視図である。
図10に示すように、このシミュレーション装置は、台座30に戸先ゴム4を取り付けて、戸先ゴム4の当接部6に対して加圧部材40で上から荷重Fを加えるようにしたものである。
【0053】
戸先ゴム4の当接部6は、円形の空洞7を有し、上部は半円状となっており、この中にコードスイッチ10が配置される。また、加圧部材40は略直方体状で戸先ゴム4の当接部6に接触する下部は、半円状となっている。なお、図中の各矢印の近くに記入された数字はそれぞれの寸法を示すものであり、単位は全てmmである。
【0054】
台座30は、縦(戸先ゴム4の長手方向)、横(戸先ゴム4の幅方向)、高さがそれぞれ60mm、21.6mm、12.5mmである。また、加圧部材40は、奥行き、高さが夫々30mm、20mmであり、幅は10mm(加圧部材40手段の半円状下部の半径5mm)、20mm(加圧部材40の半円状下部の半径10mm)、30mm(加圧部材40の半円状下部の半径15mm)、40mm(加圧部材40の半円状下部の半径20mm)というふうに変化させて用いた。
【0055】
図11は、シミュレーションの対象の戸先ゴム4の各部の詳しい寸法を表示した断面図である。なお、図中の各矢印の近くに記入された数字はそれぞれの寸法を示すものであり、単位は全てmmである。取り付け部5の横幅は15.2mm、高さは9.0mmであり、空洞7の直径は14.8mm、当接部6の上部の厚さは1.7mmである。また、当接部6の外周は、上部が半円状で下部が直線状となっており、取り付け部5の最下部からこの半円状部分と直線状部分の境界までの高さは19.2mmである。また、取り付け部5と当接部6との間の接続部5aの幅は6.8mmで、当接部6の外端部6cはこの接続部5aより0.5mm下がっている。当接部6の外端部6cが接続部5aより下がっていることにより、取り付け部5をドア2の取り付け溝3aに嵌合したときに水平になり、ドア2に密着する。
【0056】
(実施例1)
実施例1は、第3の実施の形態に対応した構成であり、コードスイッチ10を支持部材により空洞7の略中央部に配置したものである。実施例1について行ったシミュレーションは、当接部6の空洞7内にコードスイッチ10を支持する複数の支持部材を設け、コードスイッチ10を空洞7の略中央部に配置した。このシミュレーションでは、
図8(a)に示すように、戸先ゴム4に一対の突部41,42を設け、これらの突部41,42でコードスイッチ10を挟むように空洞7の略中央部にコードスイッチ10を配置した。
【0057】
このシミュレーション及び以下のシミュレーションでは、すべて加圧部材40は戸先ゴム4に対して荷重Fを変化させて加圧した。そして、荷重Fに対して、コードスイッチ10が戸挟み状態の発生を検出したときに加圧部材40が戸先ゴム4の当接部6の上端をどれだけ下へ押し込んだか、その押し込み量を求めた。その結果を表1に示す。
図8は実施例1のシミュレーションの様子を示し、(a)は荷重が加わっていない初期状態を示す断面図、(b)は荷重F(5.51kgf)により当接部が変形した様子を示す断面図である。
【0058】
【0059】
表1によると、実施例1は、加圧部材40の大きさに関わらず、ほぼ同じ押し込み量でコードスイッチ10が戸挟み状態の発生を検出することがわかる。つまり、実施例1は戸先ゴムと異物との接触面積に依存することなく、戸挟み状態を検出することができることがわかる。
【0060】
(実施例2)
実施例2は、第4の実施の形態に対応したものであり、コードスイッチ10を突部42の突出方向の端部の表面に配置したものである。すなわち、実施例2は、突部41を取り付け部5側の突部42よりも小さいものとすることで、突部42のみでコードスイッチ10を空洞7の略中央部に配置した。
【0061】
図9は、実施例2のシミュレーションの様子を示し、(a)は荷重が加わっていない初期状態を示す断面図、(b)は荷重F(6.12kgf)により当接部6が変形した様子を示す断面図である。
図9(a)に示すように、取り付け部5側の突部42のみでコードスイッチ10を空洞7の略中央部に配置し、突部41は突部42よりも小さくしてコードスイッチ10の上側(ドア2の閉方向側)を開放した。このシミュレーションの結果を表2に示す。
【0062】
【0063】
表2によると、実施例2は加圧部材40の大きさに関わらず、ほぼ同じ押し込み量でコードスイッチ10が戸挟み状態の発生を検知することがわかる。つまり、実施例2は、戸先ゴム4と異物との接触面積に依存することなく、戸挟み状態を検出することができる。
【0064】
(実施例3)
実施例3は、第1の実施の形態に対応してコードスイッチ10を戸先ゴム4の側部に配置したものである。ここでは、ドアの厚み方向Wにおける中心面Sに対して垂直で且つ空洞7の中心Cを通る基準線Mに対して、空洞7の中心Cを基準に±40°の範囲内にコードスイッチ10を配置した。
図12は実施例3のシミュレーションの様子を示し、(a)は荷重が加わっていない初期状態を示す断面図、(b)は荷重Fにより当接部6が変形した様子を示す断面図である。
【0065】
実施例3は、コードスイッチ10を戸先ゴム4の内壁面に配置すればよいのであるが、ここでは戸先ゴム4の内壁面の側部の中央に配置している。このとき荷重Fにより当接部6が変形する場合には、
図12(b)に示すように戸先ゴム4の側部が折れ曲がり、当接部6がコードスイッチ10を挟み込むようにしてコードスイッチ10に圧力を与える。
図12(b)は荷重F(4.29kgf)により当接部6が変形した様子を示す断面図である。シミュレーションの結果を表3に示す。
【0066】
【0067】
表3によると、実施例3は、加圧部材40の大きさに関わらず、ほぼ同じ押し込み量でコードスイッチ10が戸挟み状態の発生を検出することがわかる。つまり、実施例3は戸先ゴムと異物との接触面積に依存することなく、戸挟み状態を検出することができる。
【0068】
(実施例4)
実施例4は第2の実施の形態に対応して戸先ゴム4にコードスイッチ10及び硬質部材18を配置したものである。すなわち、実施例4は、戸先ゴム4の内壁面の側部に設けられたコードスイッチ10よりも取り付け部5側の内壁面に戸先ゴム4よりも硬さが硬い硬質部材を配置した。ここでは、コードスイッチ10の取り付け角度θを15°とし、コードスイッチ10の中心と空洞7の中心Cとを結ぶ直線と硬質部材18の中心と空洞7の中心Cとを結ぶ直線との成す角度αを30°とした。
【0069】
図13は、実施例4のシミュレーションの様子を示し、(a)は荷重が加わっていない初期状態を示す断面図、(b)は荷重F(4.29kgf)により当接部6が変形した様子を示す断面図である。実施例4は、コードスイッチ10よりも取り付け部5側に戸先ゴム4よりも硬さが硬い硬質部材18を設けた。シミュレーションの結果を表4に示す。
【0070】
【0071】
表4によると、実施例4は、加圧部材40の大きさに関わらず、ほぼ同じ押し込み量でコードスイッチ10が戸挟み状態の発生を検出することがわかる。つまり、実施例4は戸先ゴム4と異物との接触面積に依存することなく、戸挟み状態を検出することができる。
【0072】
(コードスイッチの取り付け位置に関するシミュレーションの結果2)
各実施例における戸挟み検出時における押し込み量と、荷重との関係をコードスイッチ10がない状態の戸先ゴム4の変形挙動との比較において検討した。ここで解析ツールおよび諸条件については加圧部材40の幅を10mmに固定してシミュレーションを行った点を除けば、前述のシミュレーションと同様に行った。
【0073】
(参考例)
参考例はコードスイッチ10を有していないものである。実施例との比較の意味でコードスイッチ10を有していない戸先ゴム4についてシミュレーションを行った。
【0074】
図14は、参考例のシミュレーションの様子を示し、(a)は荷重が加わっていない初期状態を示す断面図、(b)は荷重F(6.12kgf)により当接部6が変形した様子を示す断面図である。
【0075】
図14(a)の初期状態において、加圧部材40の下部と戸先ゴム4の当接部6の上端との間には、0.05mmの隙間が空いている。このシミュレーション及び以下のシミュレーションでは全て加圧部材40は戸先ゴム4に対して荷重Fが0.31kgfから略0.3kgf刻みで6.12kgfに至るまで加圧した。そして、各荷重Fに対して、加圧部材40が戸先ゴム4の当接部6の上端をどれだけ下へ押し込んだか、その押し込み量を求めた。
【0076】
図15は、参考例のシミュレーションにおける荷重Fと押し込み量Vとの関係を示すグラフである。最初、荷重Fが0.31kgfのときには、押し込み量Vは1.93mmであった。その後、荷重Fを次第に増加させていくと、押し込み量Vも次第に増えていき、最終的に、
図15(b)に示す荷重Fが6.12kgfとなったときの押し込み量Vは7.34mmであった。
【0077】
実施例1について、参考例と同様の方法でシミュレーションを実施した。荷重Fが5.51kgfとなったときに、コードスイッチ10が戸挟み状態の発生を検知した。このときの押し込み量Vは3.33mmであった。なお、戸挟み状態の発生の検出は、シミュレーションで行ったものであり、他のシミュレーションでも同様である。
【0078】
図16は、実施例1のシミュレーションにおける荷重Fと押し込み量Vとの関係を示すグラフである。
図16において、白丸で示したのは参考例のデータであり、
図15に示すグラフと同じものである。白い菱形で示したものが実施例1のシミュレーションの結果である。
【0079】
このシミュレーションでは、当初の荷重Fが0.31kgfのときの押し込み量Vは0.41mmであり、コードスイッチ10が戸挟み状態の発生を検出した検出位置Pにおける荷重Fが5.51kgfのときの押し込み量Vは3.33mmで、最終的に荷重Fが6.12kgfとなったときには押し込み量Vは3.56mmであった。
【0080】
このように、突部41,42でコードスイッチ10を挟んで空洞7の略中央部に支持した場合には、5.51kgfの荷重Fで押し込み量Vが3.33mm(略3.3mm)であり、参考例に比べて荷重Fに対する押し込み量Vが少ない。
【0081】
実施例2について、参考例と同様の方法で、シミュレーションを実施した。実施例2においては、荷重Fが6.12kgfとなったときに、コードスイッチ10が戸挟み状態を検出した。
【0082】
図17は、実施例2のシミュレーションにおける荷重Fと押し込み量Vとの関係を示すグラフである。この
図17においても
図16と同様に、参考例のグラフを白丸で示し、実施例2のシミュレーションの結果を白い菱形で示している。
図17に示すように、最初の荷重Fが0.31kgfにおける押し込み量Vは1.07mmであり、その後荷重Fの増加とともに押し込み量Vが増えていくが、荷重Fが略2kgfを超えてからは荷重Fの増加に対する押し込み量Vの増加はあまり多くない。そして最終的にはコードスイッチ10が戸挟み状態を検出した検出位置Pにおける荷重F6.12kgfにおいて、押し込み量Vは5.53mmであった。
【0083】
このように、実施例2のシミュレーションでは、実施例1のシミュレーションよりも押し込み量Vは増えたが、コードスイッチ10が戸挟み状態を検出した荷重Fは6kgf以下であり、実施例1よりも増えている。すなわち、実施例2よりも実施例1の方がより戸挟み状態の検出が速いことがわかる。
【0084】
実施例3について、参考例と同様の方法でシミュレーションを実施した。荷重Fが5.51kgfとなったときに、コードスイッチ10が戸挟み状態を検出した。
【0085】
図18は実施例3のシミュレーションにおける荷重Fと押し込み量Vとの関係を示すグラフである。この
図18においても
図16と同様に、参考例のグラフを白丸で示し、実施例3のシミュレーションの結果を白い菱形で示している。
図18に示すように、このシミュレーションにおける荷重Fと押し込み量Vとの関係は、
図14のコードスイッチ10を有していない場合の参考例のグラフにかなり近い。そして、荷重Fが5.51kgfのときが戸挟み状態を検出する検出位置Pであり、このときの押し込み量Vは6.58mm(約6.6mm)であった。
【0086】
このように、実施例3の場合、実施例2のシミュレーションの結果と比較しても、コードスイッチ10が戸挟み状態を検出した際に、より小さい荷重Fでより大きな押し込み量Vが得られている。このことは、当接部6の側部が折れ曲がり、戸先ゴム4の内壁面に設けられた凹部6aが変形し、コードスイッチ10が挟まれるので、そこに配置されたコードスイッチ10が戸挟み状態を検出しやすくなっている結果である。実施例3によれば、参考例とほぼ同様の押し込み量Vと荷重Fの挙動を示しながら、より速いタイミングで戸挟み状態を検出することができるというメリットがある。
【0087】
実施例4について、参考例と同様の方法でシミュレーションを実施した。荷重Fが4.29kgf、押し込み量が5.08mmとなったときに、コードスイッチ10が戸挟み状態を検出した。
【0088】
図19は、実施例4のシミュレーションにおける荷重Fと押し込み量Vとの関係を示すグラフである。この
図19においても
図16と同様に参考例のグラフを白丸で示し、実施例4のシミュレーション結果を白い菱形で示している。
図18に示すコードスイッチ10のみを戸先ゴム4の側部に設けた実施例3と比較して、実施例4は戸挟み状態を検出した荷重Fが4.29kgfで小さくなっているので、より速く戸挟み状態を検出することができる。これは、コードスイッチ10の配置位置よりも取り付け部5側に硬質部材18を設けたことにより、戸先ゴム4のドア2の開方向Ba側の剛性が大きくなり、コードスイッチ10の変形のタイミングを早めた結果による。実施例4によれば、参考例とほぼ同様の押し込み量Vと荷重Fの挙動を示しながら、実施例3よりもより早いタイミングで戸挟み状態を検出することができるメリットがある。
【0089】
(コードスイッチの取り付け角度)
実施例3について、コードスイッチ10の取り付け位置を少しずつずらして最適な取り付け角度を探るシミュレーションを行った。
【0090】
図20は、実施例3のコードスイッチ10の取り付け角度を説明するための断面図である。
図20に示すように、戸先ゴム4の内壁面には、コードスイッチ10の中心が、ドア2の厚み方向Wにおける中心面Sに対して垂直であり且つ空洞7の中心Cを通る基準線Mよりもドア2の閉方向側に位置するようにコードスイッチ10が配置されている。このとき、コードスイッチ10の中心と空洞7の中心Cとを結ぶ直線が、ドア2の厚み方向Wにおける中心面Sに対して垂直であり且つ空洞7の中心Cを通る基準線Mとなす角度θをいろいろと変えて、上述した加圧部材40により上から当接部6を加圧するシミュレーションを行った。
【0091】
図21(a)は、実施例3のコードスイッチ10の取り付け角度θと動作時の押し込み量Vとの関係を示すグラフであり、
図21(b)は、実施例3のコードスイッチ10の取り付け角度θと動作時の荷重Fとの関係を示すグラフである。なお、動作時とは、加圧部材40で当接部6を加圧して行ったときに戸挟み状態を検出した時をいう。
【0092】
図21から分かるように、コードスイッチ10のみの実施例3の場合には、コードスイッチ10の取り付け角度θが20°~25°の場合に、押し込み量V及び荷重Fともに最小となる。すなわち、取り付け角度θがこの範囲のとき、小さい荷重Fで早めに戸挟み状態を検出することができる。
【0093】
図22は、実施例4のコードスイッチ10の取り付け角度を説明するための断面図である。実施例4は、コードスイッチ10の中心と中心Cとを結ぶ直線と、硬質部材18の中心と中心Cとを結ぶ直線とのなす角αは30°で固定とする。
【0094】
図23(a)は、実施例4のコードスイッチ10の取り付け角度θと動作時の押し込み量Vとの関係を示すグラフであり、
図23(b)は、実施例4のコードスイッチ10の取り付け角度θと動作時の荷重Fとの関係を示すグラフである。
【0095】
このように、コードスイッチ10の配置位置よりも取り付け部5側に硬質部材18を配置した場合には、動作時の押し込み量V及び荷重Fともに、取り付け角度θを-10°から大きくしていくにつれて10°までは同じように小さくなっていくが、20°を超えると、押し込み量Vの減少が急に小さくなっている。
【0096】
コードスイッチ10の取り付け角度θに関しては、硬質部材18を設けない実施例3は、10°~30°が好ましい。硬質部材18を設ける実施例4は、取り付け角度θは20°~30°が好ましい。
【0097】
[変形例]
以上、本発明の実施の形態について説明してきたが、本発明はこれらの実施の形態のみに限定されるものではない。本発明は、これらの他にも本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々な変形が可能である。例えば、上記各実施の形態では、戸先センサを電車のドアに適用した場合について説明したが、本発明の戸先センサを電車のホームに設けられたホームドアや、自動車等の車両のスライド式ドア、エレベータのドア、ビル等の建物の入り口に設けられたドア等の他のドアに適用してもよい。
【0098】
また、上記各実施の形態では、戸先センサをドアの閉方向側先端部が対向する一対のドアに適用した場合について説明したが、対向するドアが設けられていない単独のドアに適用してもよい。例えば、電車の場合でも片開きのドアの車両にも適用可能である。
【0099】
また、コードスイッチは戸先センサの全長に渡って設ける必要はなく、戸先センサの全長の一部のみに形成するものであってもよい。
【符号の説明】
【0100】
1…車両、2(2a、2b)…ドア、4(4a、4b)…戸先ゴム、5…取り付け部、5a…接続部、6…当接部、6a、6b…凹部、7…空洞、8a、8b…支持部材、10…コードスイッチ(感圧部材)、11…絶縁体チューブ、11a…中空部、11b…外表面、12…電極線、13…コードカバー、14…電源、15…電流計、16…抵抗、17…他方端、18…硬質部材、20…戸先センサ、21…回線、22…検出装置、24…警報装置、30…台座、40…加圧部材、B…ドアの開閉方向、Ba…ドアの開方向、Bb…ドアの閉方向、C…空洞の中心、L…中心線、W…ドアの厚み方向