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特許6996425原料結晶棒の固定方法、半導体単結晶の製造方法及び原料結晶棒用包装材
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-20
(45)【発行日】2022-01-17
(54)【発明の名称】原料結晶棒の固定方法、半導体単結晶の製造方法及び原料結晶棒用包装材
(51)【国際特許分類】
   C30B 13/28 20060101AFI20220107BHJP
   C30B 13/32 20060101ALI20220107BHJP
   C30B 29/06 20060101ALI20220107BHJP
【FI】
C30B13/28
C30B13/32
C30B29/06 501A
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2018105046
(22)【出願日】2018-05-31
(65)【公開番号】P2019210163
(43)【公開日】2019-12-12
【審査請求日】2021-02-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000190149
【氏名又は名称】信越半導体株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100102532
【弁理士】
【氏名又は名称】好宮 幹夫
(74)【代理人】
【識別番号】100194881
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 俊弘
(72)【発明者】
【氏名】永井 直樹
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 聡
(72)【発明者】
【氏名】児玉 義博
【審査官】山本 一郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-031283(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C30B 13/28
C30B 13/32
C30B 29/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
原料結晶棒を固定する上軸と種結晶を固定する下軸とを有するFZ単結晶製造装置に、先端部が円錐形状とされた原料結晶棒を固定する方法であって、
前記原料結晶棒の前記先端部の形状に対応する円錐形状部分を有する包装材を準備する工程と、
前記原料結晶棒の前記先端部と前記包装材の前記円錐形状部分とを一致させて、前記原料結晶棒を前記包装材により包装する工程と、
前記原料結晶棒の先端部が嵌合する円錐形状の凹部を有する冶具を、前記円錐形状の凹部の円錐頂部と前記下軸の軸中心とが一致するように前記下軸に設置する工程と、
前記原料結晶棒が前記包装材により包装された状態で、前記原料結晶棒の前記先端部と前記冶具の前記円錐形状の凹部とを嵌合させることで、前記原料結晶棒を前記下軸に設置された前記冶具に載せて前記原料結晶棒を支える工程と、
前記原料結晶棒を前記上軸及び前記下軸に対して芯出ししながら前記上軸に固定する工程とを有することを特徴とする原料結晶棒の固定方法。
【請求項2】
前記包装材を準備する工程では、包装材の底部にV字形にヒートシールを施して、前記原料結晶棒の前記先端部の形状に対応する前記円錐形状部分とすることを特徴とする請求項1に記載の原料結晶棒の固定方法。
【請求項3】
前記包装材としてPE(ポリエチレン)製の包装材を用いることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の原料結晶棒の固定方法。
【請求項4】
前記包装材として少なくとも二重の包装材を用いることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の原料結晶棒の固定方法。
【請求項5】
前記芯出しの評価を、レーザー変位計を用いて行うことを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の原料結晶棒の固定方法。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の原料結晶棒の固定方法により前記原料結晶棒を前記上軸に固定し、さらに前記冶具を取り外すとともに前記包装材を除去し、
前記上軸に固定された前記原料結晶棒を誘導加熱コイルで加熱溶融して浮遊帯域を形成し、前記誘導加熱コイルに対して前記原料結晶棒及び前記下軸に固定された種結晶に成長する単結晶棒を回転させながら相対的に下降させ、前記浮遊帯域を移動させることで前記単結晶棒を育成することを特徴とするFZ法による半導体単結晶の製造方法。
【請求項7】
FZ法による半導体単結晶の製造に用いる先端部が円錐形状とされた原料結晶棒を包装するための包装材であって、
前記包装材の一部が、前記原料結晶棒の前記先端部の形状に対応する円錐形状部分を有するものであることを特徴とする原料結晶棒用包装材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、FZ法による半導体単結晶の製造に関する。
【背景技術】
【0002】
シリコン単結晶を製造する方法として、FZ法が知られている。従来、高耐圧パワーデバイスやサイリスタ等のパワーデバイス製造用には、FZ法により製造された高純度シリコンウェーハが使用されてきた。近年では、半導体デバイスの性能向上とコストの低減のため、大口径のシリコンウェーハが求められ、これに伴って大口径シリコン単結晶の育成が要求されている(特許文献1参照)。
【0003】
図1に、一般的に用いられるFZ単結晶製造装置30を示す。
このFZ単結晶製造装置30を用いて、シリコン単結晶を製造する方法について説明する。原料結晶棒1をチャンバー20内に設置された上軸3の上部保持治具4に保持させ、直径の小さい種結晶(単結晶の種)8を、原料結晶棒1の下方に位置する下軸5の下部保持治具6に保持させる。次に、誘導加熱コイル7により原料結晶棒1を溶融して、種結晶8に融着させる。その後、種絞りにより絞り部9を形成して無転位化する。そして、上軸3と下軸5とを回転させながら、原料結晶棒1とシリコン単結晶である単結晶棒2とを下降させることで浮遊帯域(溶融帯あるいはメルトともいう)10を原料結晶棒1と単結晶棒2の間に形成し、当該浮遊帯域10を原料結晶棒1の上端まで移動させてゾーニングし、単結晶棒2を成長させる。この成長は、Arガスに微量の窒素ガスを混合した雰囲気中で行われる。なお、上記誘導加熱コイル7としては、銅または銀からなる単巻または複巻の冷却用の水を流通させた誘導加熱コイルが用いられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2010-132470号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
通常、原料結晶棒1は、上軸3の上部保持治具4にて保持する必要があるため、原料結晶棒1の上側(単結晶になった時のテール側)を予め機械加工したり、下側(単結晶になった時のコーン側)の先端部を種付けし易いように機械加工したり、所望の直径にするために直胴部に機械加工などが施される。
機械加工が施された原料結晶棒1の表面には不純物が付着しているため、高純度な単結晶を製造するために、一般的にはエッチングや洗浄が行われる。エッチングや洗浄を行い乾燥した後には、表面に再度不純物が付着しないようにするために、原料結晶棒1は包装材で包装される。そしてFZ単結晶製造装置30へ運搬され、チャンバー20内で上軸3に固定するために上部保持治具4に保持させる作業が行われる。
【0006】
このとき、原料結晶棒1を上軸3の上部保持治具4に保持させる作業のために、一旦、図5に示すように、下軸5に設置された円錐形状の凹部16を有する治具15に、原料結晶棒1の下部であって、先端部が円錐形状とされた部分を載せて支える。続いて原料結晶棒1の芯出しをしながら上軸3の上部保持治具4に保持させる。
【0007】
ここで、図4に、汎用されている包装材13を示す。この汎用の包装材13は筒状の形状をしており、下端部を一直線(平坦)にヒートシール14を施したものである。このような包装材13を円錐形状である原料結晶棒1の先端部に被せると、原料結晶棒1の先端部と包装材13の形状とが大きく異なり一致していないため、図5に示すように、余分な包装材が皺になり、原料結晶棒1の先端部と冶具15の凹部16との間に皺の重なり部18が形成されることとなる。そのため、原料結晶棒1の先端部の円錐形状部の頂部と、冶具15の凹部16における円錐頂部17との位置のずれが大きくなる。その結果、芯出しの調整時に誤差が生じるという問題があった。誤差が許容範囲を超える場合は、修正してやり直さなければならないので、時間が余分に掛かってしまう。
【0008】
また、芯出しの程度が悪く誤差が大きいと、原料結晶棒1が偏芯して回転するので、絞り工程では絞りが困難になり、場合によっては失敗してしまう。また、絞り工程がうまくできても、その後も常に原料結晶棒1の回転が偏芯しているので、溶融が不均一となり、単結晶が有転位化する確率が増加するという問題があった。
このように、芯出しの誤差をできるだけ小さくする必要があった。
【0009】
本発明は、上記問題を解決するためになされたものであり、芯出しの誤差が小さい原料結晶棒の固定方法、及び、不均一な溶融や単結晶の有転位化を抑制できる半導体単結晶の製造方法を提供することを目的とする。また、前記原料結晶棒を包装するための原料結晶棒用包装材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、上記課題を達成するためになされたものであり、原料結晶棒を固定する上軸と種結晶を固定する下軸とを有するFZ単結晶製造装置に、先端部が円錐形状とされた原料結晶棒を固定する方法であって、前記原料結晶棒の前記先端部の形状に対応する円錐形状部分を有する包装材を準備する工程と、前記原料結晶棒の前記先端部と前記包装材の前記円錐形状部分とを一致させて、前記原料結晶棒を前記包装材により包装する工程と、前記原料結晶棒の先端部が嵌合する円錐形状の凹部を有する冶具を、前記円錐形状の凹部の円錐頂部と前記下軸の軸中心とが一致するように前記下軸に設置する工程と、前記原料結晶棒が前記包装材により包装された状態で、前記原料結晶棒の前記先端部と前記冶具の前記円錐形状の凹部とを嵌合させることで、前記原料結晶棒を前記下軸に設置された前記冶具に載せて前記原料結晶棒を支える工程と、前記原料結晶棒を前記上軸及び前記下軸に対して芯出ししながら前記上軸に固定する工程とを有することを特徴とする原料結晶棒の固定方法を提供する。
【0011】
このような原料結晶棒の固定方法によれば、高い精度で原料結晶棒の芯出しを行うことができるようになる。
【0012】
このとき、前記包装材を準備する工程では、包装材の底部にV字形にヒートシールを施して、前記原料結晶棒の前記先端部の形状に対応する前記円錐形状部分とすることができる。
【0013】
これにより、より簡便に、原料結晶棒の先端形状に対応する形状の包装材を得ることができる。
【0014】
このとき、前記包装材としてPE(ポリエチレン)製の包装材を用いることができる。
【0015】
これにより、包装材を安価で清浄なものとすることができる。また、ヒートシールがより容易となる。
【0016】
このとき、前記包装材として少なくとも二重の包装材を用いることが好ましい。
【0017】
これにより、包装材の穴あき等の破損に基づく原料結晶棒の汚染量をより少なくすることができる。
【0018】
このとき、前記芯出しの測定を、レーザー変位計を用いて行うことができる。
【0019】
これにより、より精度良く芯出しの程度を測定することができる。
【0020】
そして、原料結晶棒の固定方法により前記原料結晶棒を前記上軸に固定し、さらに前記冶具を取り外すとともに前記包装材を除去し、前記上軸に固定された前記原料結晶棒を誘導加熱コイルで加熱溶融して浮遊帯域を形成し、前記誘導加熱コイルに対して前記原料結晶棒及び前記下軸に固定された種結晶に成長する単結晶棒を回転させながら相対的に下降させ、前記浮遊帯域を移動させることで前記単結晶棒を育成することを特徴とするFZ法による半導体単結晶の製造方法が提供される。
【0021】
これにより、絞りをより容易に行うことができるとともに、より均一な溶融にできるため、単結晶の有転位化をより抑制することができる。
【0022】
また、本発明は、FZ法による半導体単結晶の製造に用いる先端部が円錐形状とされた原料結晶棒を包装するための包装材であって、前記包装材の一部が、前記原料結晶棒の前記先端部の形状に対応する円錐形状部分を有するものであることを特徴とする原料結晶棒用包装材を提供する。
【0023】
このような原料結晶棒用包装材によれば、先端が円錐形状とされた結晶原料棒を包装したときの余剰部分を減らすことができ、結晶原料棒の芯出しの精度を高めることが可能なものとなる。
【発明の効果】
【0024】
以上のように、本発明の原料結晶棒の固定方法によれば、高い精度で原料結晶棒の芯出しを行うことができるようになる。また、本発明の原料結晶棒の固定方法を用いて原料結晶棒を上軸に固定しFZ法により半導体単結晶を製造することで、絞りをより容易に行うことができるとともに、より均一な溶融にできるため、単結晶の有転位化をより抑制することが可能になる。さらに、本発明の原料結晶棒用包装材によれば、先端が円錐形状とされた結晶原料棒の芯出しの精度を高めることが可能なものとなるとともに、原料先端部で包装材が破断するようなこともない。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】FZ単結晶製造装置を示す。
図2】本発明の原料結晶棒用包装材を示す。
図3】本発明の原料結晶棒取り付け作業時における、原料結晶棒を冶具に載せた状態図を示す。
図4】汎用(比較例)の包装材を示す。
図5】汎用(比較例)の包装材を使用した従来(比較例)の原料結晶棒取り付け作業時における、原料結晶棒を冶具に載せた状態図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0027】
上述のように、芯出しの誤差が小さい原料結晶棒の固定方法、不均一な溶融や単結晶の有転位化を抑制できる半導体単結晶の製造方法、及び、前記原料結晶棒の固定方法に用いる原料結晶棒用包装材が求められていた。
【0028】
本発明者らは、上記課題について鋭意検討を重ねた結果、原料結晶棒を固定する上軸と種結晶を固定する下軸とを有するFZ単結晶製造装置に、先端部が円錐形状とされた原料結晶棒を固定する方法であって、前記原料結晶棒の前記先端部の形状に対応する円錐形状部分を有する包装材を準備する工程と、前記原料結晶棒の前記先端部と前記包装材の前記円錐形状部分とを一致させて、前記原料結晶棒を前記包装材により包装する工程と、前記原料結晶棒の先端部が嵌合する円錐形状の凹部を有する冶具を、前記円錐形状の凹部の円錐頂部と前記下軸の軸中心とが一致するように前記下軸に設置する工程と、前記原料結晶棒が前記包装材により包装された状態で、前記原料結晶棒の前記先端部と前記冶具の前記円錐形状の凹部とを嵌合させることで、前記原料結晶棒を前記下軸に設置された前記冶具に載せて前記原料結晶棒を支える工程と、前記原料結晶棒を前記上軸及び前記下軸に対して芯出ししながら前記上軸に固定する工程とを有する原料結晶棒の固定方法により、高い精度で原料結晶棒の芯出しを行うことができることを見出し、本発明を完成した。
【0029】
また、FZ法による半導体単結晶の製造に用いる先端部が円錐形状とされた原料結晶棒を包装するための包装材であって、前記包装材の一部が、前記原料結晶棒の前記先端部の形状に対応する円錐形状部分を有する原料結晶棒用包装材により、先端が円錐形状とされた結晶原料棒を包装したときの余剰部分を減らすことができ、結晶原料棒の芯出しの精度を高めることができるものとなることを見出し、本発明を完成した。
【0030】
以下、図面を参照して説明する。
【0031】
本発明の原料結晶棒の固定方法、半導体単結晶の製造方法で使用するFZ単結晶製造装置は、図1に示されるような一般的なFZ単結晶製造装置30が挙げられる。
FZ単結晶製造装置30は、チャンバー20内に、原料結晶棒1を固定する上軸3、種結晶8を固定する下軸5、原料結晶棒1を溶融するための誘導加熱コイル7、浮遊帯域10にガスを吹き付けるガス吹き付け用ノズル11等を備えている。また、上軸3は原料結晶棒1を保持する上部保持冶具4を含み、下軸5は種結晶8を保持する下部保持冶具6を含んでいる。
【0032】
まず、最初に原料結晶棒1であるシリコン原料棒を準備する。シリコン原料棒としては、シーメンス法により製造されたシリコン多結晶棒やCZ法により製造されたシリコン単結晶棒などが用いられるが、製造するFZ単結晶の仕様に合わせて適宜選択すればよい。
【0033】
原料結晶棒1は、上側、下側、直胴部などに必要な加工(機械加工等)が施される。特に、結晶製造装置30に設置されたときに下側となる原料結晶棒1の先端部の形状は、後述の原料結晶棒1の取り付け時の芯出し作業や、種付け時の溶融帯の形成のために、円錐形状に加工される。ここで、本発明において「円錐形状」という場合、先細り状の形状であればよく、正確に円錐形状であるもののみならず、概ね円錐体(略円錐体)と認識されるものが含まれる。
【0034】
原料結晶棒1に機械加工等を行った後は表面に不純物が付着しているので、高純度な単結晶を製造するために、一般的にはエッチングや洗浄が行われる。エッチングや洗浄を行い乾燥した後には、再度の不純物付着を防止するために、包装材を用いて原料結晶棒1を包装する必要がある。
【0035】
次に、図2に示すような、包装材13を準備する工程について説明する。本発明においては、一部が原料結晶棒1の先端部の円錐形状に対応した円錐形状部分12を有する包装材13を準備する点に特徴がある。このような円錐形状部分12を有する包装材13は、袋やシートなどの汎用の包装材を利用して作製することができる。例えば、図2に示すように、包装材の先端を原料結晶棒1の円錐形状に合わせてV字形にヒートシール14を施すことで、原料結晶棒1の先端部の円錐形状に対応した円錐形状部分12を有する包装材13を簡単に作製可能である。ヒートシール14を施した外側の余分な部分を可能な限りカットすることで、芯出しへの悪影響をさらに小さくすることができる。
なお、包装材13の円錐形状部分12の形状は、できるだけ原料結晶棒1の先端部の円錐形状に近いものが好ましいことは当然であるが、必ずしも完全に一致したものに限定されず、形状に多少の違いがあってもよい。
【0036】
包装材13の材質は、PE(ポリエチレン)が好ましい。PEは厚さ等の種類も多く、適当なシートや袋から選択が容易で安価である。また、添加剤、スリップ剤等を使用していない無添加のPEはCZ用のチャンクポリなどに一般的に用いられており、不純物汚染が少ないためより好ましい。
【0037】
また、包装材13の包装が二重であると、袋が裂けたり、特に原料結晶棒1の先端部と対応する円錐形状部分で穴が開いたりすることを防止できるとともに、原料結晶棒1をチャンバー20内に搬入する直前に外側の包装材を外すことが出来るので、チャンバー20に不純物を持ち込む可能性を一段と低くすることができる点で、好ましい。
【0038】
次に、包装材13を用いて原料結晶棒1を包装する。このとき、原料結晶棒1の先端部と包装材13の円錐形状部分12とを一致させて、包装する。原料結晶棒1の先端部の形状(円錐形状)と、包装材の円錐形状部分12とは対応する形状であるため、包装材の余剰部分がなくなるか、極めて少なくなる。
【0039】
次に、図3に示すように、原料結晶棒1の取り付け、芯出し等を行うための冶具15を、下軸5に設置する。この冶具15には、原料結晶棒1の先端部が嵌合する円錐形状の凹部16が形成されており、円錐形状の凹部16における円錐頂部17が、下軸5の軸中心と一致するように設置する。
【0040】
次に、原料結晶棒1をチャンバー20内に搬入する。図3に示すように、原料結晶棒1が包装材13により包装された状態で、原料結晶棒1の先端部と下軸5に設置された冶具15の円錐形状の凹部16とを嵌合させるようにして、原料結晶棒1を冶具15に載せて、下軸5により原料結晶棒1を載せて支える。図2に示すような、原料結晶棒1の先端部の円錐形状に対応した円錐形状部分12を有する包装材13を使用すると、図5に示すような皺の重なり部18の発生をなくすか、極めて少なくすることができる。
なお、包装材13が二重の場合にはチャンバー20の外で外側の袋を剥がして除去し、内側の包装材13のみでチャンバー20の中に運ぶのが好ましい。
【0041】
続いて、原料結晶棒1を上軸3に固定するために、包装材13の上部の一部を切断し原料結晶棒1の一部を露出させ、原料結晶棒1の露出した部分を上部保持治具4に保持させる。このときに、保持させるのに必要な最小量だけ包装材13を剥がすことで、汚染量は最小とできる。そして、上軸3、下軸5に対して芯出しをしながら原料結晶棒1を上部保持治具4に保持させ、上軸3に固定する。
【0042】
原料結晶棒1が上軸3に固定されたら上軸3を上方に移動し原料結晶棒1を吊りあげ、包装材13を剥がし除去する。その後、芯出しの評価を行う。芯出しの評価は結晶を回転させた状態で、先端部の偏芯を目視にて確認することで行っても良いが、レーザー変位計を用いると、芯出しの程度を数値化でき、さらに精度良く芯出しの程度を評価することが出来るので好ましい。原料結晶棒1を回転させて、レーザー変位計により変位を測定すると、偏芯していれば回転に合わせて周期的に変位が変わるので、芯出しの程度を簡便かつ精度よく測定することができる。なお、原料結晶棒1を吊りあげた後に、冶具15を取り外し、下部保持冶具6を設置する。
【0043】
この後の工程は、通常のFZ法による単結晶製造工程と同様である。
図1に示すように、種結晶8を原料結晶棒1の下方に位置する下軸5の下部保持治具6に保持し、誘導加熱コイル7により原料結晶棒1の先端部を溶融して種結晶8に融着させ、その後、種絞りにより絞り部9を形成して無転位化する。そして、浮遊帯域(溶融帯あるいはメルトともいう)10を原料結晶棒1と単結晶棒2の間に形成し、誘導加熱コイル7に対して、上軸3と下軸5とを回転させながら原料結晶棒1とシリコン単結晶である単結晶棒2を相対的に下降させ、浮遊帯域10を原料結晶棒1の上端まで移動させてゾーニングし、単結晶棒2を成長させる。なお、この成長は、Arガスに微量の窒素ガスを混合した雰囲気中で行われる。
【実施例
【0044】
以下、実施例を挙げて本発明について詳細に説明するが、これは本発明を限定するものではない。
【0045】
(実施例)
先端部を先細りの略円錐形状としたシリコン原料棒を、別途準備した図2に示すようなシリコン原料棒の先端部の略円錐形状に対応した略円錐形状部分が形成された包装材を用いて包装し、FZ単結晶製造装置に搬入し、上軸及び下軸に対して芯出しの調整を行いながら、上軸に固定しセットした。
上軸を上昇させてシリコン原料棒を上軸に吊るした後、回転させながらレーザー変位計を用いて偏芯の変位測定を実施した。その後、FZ法によるシリコン結晶棒の製造を行った。この時、絞り形成工程において偏芯が原因で絞り形成が困難となった回数、結晶育成時の偏芯が原因の有転位化の回数をカウントした。
なお、実験は、100本のシリコン原料棒を用いて行った(N=100)。
【0046】
(比較例)
先端部を先細りの略円錐形状としたシリコン原料棒を、図4に示すような汎用の袋を用いて包装した以外は実施例と同様にして、FZ単結晶製造装置に搬入し、上軸に固定しセットし、その後、FZ法によるシリコン結晶棒の製造を行った。また、実施例と同様の評価を行った。なお、実験は実施例と同様100本のシリコン原料棒を用いて行った(N=100)。
【0047】
実施例と比較例の評価結果を表1に示す。
【0048】
【表1】
【0049】
変位測定の結果、シリコン原料棒を回転させたときの変位(偏芯)の平均値は、実施例では0.5mm、比較例では1.5mmであった。本発明の包装材を使用すると、偏芯の誤差を小さくできることがわかった。
【0050】
また、シリコン結晶棒の製造の絞り工程において、シリコン原料棒の偏芯が原因で絞り形成が困難となった回数は実施例では0回、比較例では3回であり、結晶育成時の有転位化の回数も実施例では0回、比較例では1回と、本発明の包装材を使用すると、偏芯が原因で発生する不良の回数をなくすことができた。
【0051】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
【符号の説明】
【0052】
1…原料結晶棒1、 2…単結晶棒、 3…上軸、 4…上部保持治具、
5…下軸、 6…下部保持治具、 7…誘導加熱コイル、 8…種結晶、
9…絞り部、 10…浮遊帯域、 11…ガス吹き付け用ノズル、
12…円錐形状部分、 13…包装材、 14…ヒートシール、
15…冶具、 16…円錐形状の凹部、 17…円錐頂部、 18…皺の重なり部、
20…チャンバー、 30…FZ単結晶製造装置。
図1
図2
図3
図4
図5