(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-20
(45)【発行日】2022-01-17
(54)【発明の名称】半導体ウェーハの洗浄方法、および該洗浄方法を用いた半導体ウェーハの製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/304 20060101AFI20220107BHJP
【FI】
H01L21/304 648G
H01L21/304 642A
H01L21/304 647Z
(21)【出願番号】P 2018131759
(22)【出願日】2018-07-11
【審査請求日】2020-07-13
(73)【特許権者】
【識別番号】302006854
【氏名又は名称】株式会社SUMCO
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100165696
【氏名又は名称】川原 敬祐
(74)【代理人】
【識別番号】100205833
【氏名又は名称】宮谷 昂佑
(72)【発明者】
【氏名】若杉 勝郎
【審査官】山口 祐一郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-126702(JP,A)
【文献】特開2000-024604(JP,A)
【文献】特開2004-193534(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/304
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体ウェーハを洗浄槽内のオゾン水に浸漬して洗浄する半導体ウェーハの洗浄方法であって、
前記洗浄槽の下方から前記洗浄槽内に前記オゾン水を供給しつつ、前記洗浄槽の上方から前記洗浄槽外に前記オゾン水をオーバーフローさせて、
その後、前記オゾン水の供給を停止して、
その後、前記半導体ウェーハを前記洗浄槽内の前記オゾン水に浸漬して、
その後、前記洗浄槽の下方から前記洗浄槽内に前記オゾン水を再び供給しつつ、前記洗浄槽の上方から前記洗浄槽外に前記オゾン水を再びオーバーフローさせる
ことを特徴とする半導体ウェーハの洗浄方法。
【請求項2】
前記オゾン水の供給を停止してから、前記オゾン水を再び供給するまでの時間を1秒以上30秒以下とする、請求項1に記載の半導体ウェーハの洗浄方法。
【請求項3】
前記オゾン水の供給を停止してから、前記半導体ウェーハの下端を前記オゾン水の液面に接触させるまでの時間を1秒以上10秒以下とする、請求項2に記載の半導体ウェーハの洗浄方法。
【請求項4】
前記半導体ウェーハ全体を前記オゾン水に浸漬してから、前記オゾン水を再び供給するまでの時間を1秒以上10秒以下とする、請求項2または3に記載の半導体ウェーハの洗浄方法。
【請求項5】
前記洗浄に先立ち、前記半導体ウェーハにエピタキシャル成長処理を施す、請求項1~4のいずれか一項に記載の半導体ウェーハの洗浄方法。
【請求項6】
前記洗浄に先立ち、前記半導体ウェーハに還元性雰囲気または不活性ガス雰囲気でのアニール処理を施す、請求項1~4のいずれか一項に記載の半導体ウェーハの洗浄方法。
【請求項7】
前記半導体ウェーハは、シリコンウェーハである、請求項1~6のいずれか一項に記載の半導体ウェーハの洗浄方法。
【請求項8】
半導体ウェーハを製造する工程において、請求項1~7のいずれか一項に記載の半導体ウェーハの洗浄方法を用いることを特徴とする半導体ウェーハの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体ウェーハの洗浄方法、および該洗浄方法を用いた半導体ウェーハの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体ウェーハの洗浄では、オゾン水が貯留された洗浄槽に半導体ウェーハを浸漬することにより、半導体ウェーハに付着した有機物などの汚染物が除去される。また、半導体ウェーハの洗浄では、一般的に、半導体ウェーハをオゾン水に浸漬して酸化することで、ウェーハ表面に酸化膜を形成した後に、半導体ウェーハをフッ酸に浸漬することで、この酸化膜を除去すると同時にパーティクルを除去することも行われている。
【0003】
特許文献1には、洗浄槽の下方から洗浄槽内にオゾン水を供給しつつ、洗浄槽の上方から洗浄槽外にオゾン水をオーバーフローさせる洗浄装置を用いて、半導体ウェーハを洗浄する方法が開示されている。すなわち、特許文献1では、オゾン水をオーバーフローさせた状態で、半導体ウェーハを洗浄槽内のオゾン水に浸漬し、洗浄槽の下方から上方に向かうオゾン水の上昇流によって半導体ウェーハを洗浄している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
洗浄槽内にオゾン水を長時間貯留すると、オゾン水に含まれるオゾンが分解して、そのオゾン濃度が減少するので、オゾン水の洗浄力が低下してしまう。そのため、従来、オゾン水の洗浄力を確保するためには、特許文献1のように、オゾン水をオーバーフローさせた状態で、半導体ウェーハを洗浄槽内のオゾン水に浸漬して、洗浄することが重要であると考えられてきた。しかし、特許文献1の方法を用いて半導体ウェーハの洗浄を行うと、洗浄後のウェーハ主表面に、付着物が一定方向に沿って複数残存していることが判明した。この付着物は、ウェーハ主表面に強固に付着しており、その後、いわゆるSC-1洗浄を行っても、オゾン洗浄およびフッ酸洗浄を繰り返しても、あるいはブラシスクラブ等の物理洗浄を行っても十分に除去することができなかった。
【0006】
本発明は、上記課題に鑑み、ウェーハ主表面の付着物を効果的に低減することが可能な半導体ウェーハの洗浄方法を提供することを目的とする。また、本発明は、ウェーハ主表面の付着物が効果的に低減された半導体ウェーハを得ることが可能な半導体ウェーハの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らが、ウェーハ主表面の付着物をLPD(Light Point Defect)検査によって調べたところ、
図2(A),(B)に示すようにこの付着物は、半導体ウェーハの浸漬方向とは逆方向に沿って存在していることがわかった。この方向は、洗浄槽内のオゾン水の上昇流の方向と一致する。また、この付着物の成分をラマン分光法により分析したところ、ポリビニルアルコールなどの樹脂が検出された。そして、さらなる検討を進めたところ、以下のことが判明した。
【0008】
オゾン洗浄前の半導体ウェーハの製造工程間搬送には、搬送アームやFOUP(Front Opening Unified Pod)等の搬送容器が用いられる。具体的には、搬送アームに設けられた複数のチャックピンによりウェーハ端面を挟持して、半導体ウェーハをハンドリングする。そして、ウェーハ端面が搬送容器の内面に設けられた溝に接触保持される形で、半導体ウェーハは、搬送容器に収容されて搬送される。この時、チャックピンや搬送容器の素材には、一般に樹脂が用いられるので、ウェーハ端面には樹脂を含むパーティクルが付着してしまう。また、ウェーハ裏面にも樹脂を含むパーティクルが付着する可能性がある。したがって、オゾン洗浄に供する前の半導体ウェーハのウェーハ端面や裏面にはパーティクルが付着している。また、オゾン洗浄に供する前の半導体ウェーハの表面は、酸化膜が形成されていない場合には、ウェーハ素材であるシリコン等の元素が露出した活性面(疎水面)となっており、パーティクルが強固に付着しやすい。このような状態の半導体ウェーハを上昇流が生じているオゾン水に浸漬すると、ウェーハ端面や裏面から脱離したパーティクルや、ウェーハ端面や裏面に付着したパーティクルが溶解して細かく分離した樹脂成分が、オゾン水の上昇流に乗って拡散して、ウェーハ主表面に再び付着してしまう。これに起因して、洗浄後のウェーハ主表面には、付着物がオゾン水の上昇流の方向に沿って複数残存する。
【0009】
そこで、本発明者らは、ウェーハ主表面の付着物を効果的に低減するための洗浄方法を検討したところ、オゾン水の上昇流を抑制した状態で、半導体ウェーハを洗浄槽内のオゾン水に浸漬すると、ウェーハ主表面の付着物を効果的に低減することができることを知見した。
【0010】
本発明は、上記知見に基づくものであり、その要旨構成は以下のとおりである。
(1)半導体ウェーハを洗浄槽内のオゾン水に浸漬して洗浄する半導体ウェーハの洗浄方法であって、
前記洗浄槽の下方から前記洗浄槽内に前記オゾン水を供給しつつ、前記洗浄槽の上方から前記洗浄槽外に前記オゾン水をオーバーフローさせて、
その後、前記オゾン水の供給を停止して、
その後、前記半導体ウェーハを前記洗浄槽内の前記オゾン水に浸漬して、
その後、前記洗浄槽の下方から前記洗浄槽内に前記オゾン水を再び供給しつつ、前記洗浄槽の上方から前記洗浄槽外に前記オゾン水を再びオーバーフローさせる
ことを特徴とする半導体ウェーハの洗浄方法。
【0011】
(2)前記オゾン水の供給を停止してから、前記オゾン水を再び供給するまでの時間を1秒以上30秒以下とする、上記(1)に記載の半導体ウェーハの洗浄方法。
【0012】
(3)前記オゾン水の供給を停止してから、前記半導体ウェーハの下端を前記オゾン水の液面に接触させるまでの時間を1秒以上10秒以下とする、上記(2)に記載の半導体ウェーハの洗浄方法。
【0013】
(4)前記半導体ウェーハ全体を前記オゾン水に浸漬してから、前記オゾン水を再び供給するまでの時間を1秒以上10秒以下とする、上記(2)または(3)に記載の半導体ウェーハの洗浄方法。
【0014】
(5)前記洗浄に先立ち、前記半導体ウェーハにエピタキシャル成長処理を施す、上記(1)~(4)のいずれか一つに記載の半導体ウェーハの洗浄方法。
【0015】
(6)前記洗浄に先立ち、前記半導体ウェーハに還元性雰囲気または不活性ガス雰囲気でのアニール処理を施す、上記(1)~(4)のいずれか一つに記載の半導体ウェーハの洗浄方法。
【0016】
(7)前記半導体ウェーハは、シリコンウェーハである、上記(1)~(6)のいずれか一つに記載の半導体ウェーハの洗浄方法。
【0017】
(8)半導体ウェーハを製造する工程において、上記(1)~(7)のいずれか一つに記載の半導体ウェーハの洗浄方法を用いることを特徴とする半導体ウェーハの製造方法。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、ウェーハ主表面の付着物を効果的に低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】(A)~(D)は、本発明の一実施形態による半導体ウェーハの洗浄方法を説明する図である。
【
図2】(A)及び(B)は、従来の半導体ウェーハの洗浄方法を用いた場合における、洗浄後のウェーハおもて面のLPDマップであり、図中の矢印は半導体ウェーハの浸漬方向を示す。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照しつつ本発明の実施形態を詳細に説明する。
【0021】
[洗浄装置]
図1(A)を参照して、本発明の一実施形態において用いることができる半導体ウェーハの洗浄装置の一例を説明する。
【0022】
この洗浄装置は、洗浄槽1と、一対のオゾン水供給ノズル2と、オゾン水供給配管3と、オゾン水発生ユニット(不図示)と、を備える。
【0023】
洗浄槽1は、半導体ウェーハWを収容することが可能な略直方体の容器であり、その上部が開口となっている。一対のオゾン水供給ノズル2は、洗浄槽1の底部に設けられており、洗浄槽1の上方を向いている。オゾン水発生ユニットは、オゾン水供給配管3に接続されている。オゾン水供給配管3は、その途中で分岐して、一対のオゾン水供給ノズル2に接続されている。また、オゾン水供給配管3には、洗浄槽1内に供給するオゾン水の流量を調整するための調整弁4が設けられている。なお、オゾン水発生ユニットとしては、公知または任意のものを好適に用いることができ、例えば、純水を電気分解することによりオゾンを発生させるものが挙げられる。
【0024】
この洗浄装置では、オゾン水発生ユニットにて生成したオゾン水が、オゾン水供給配管3を通過して、一対のオゾン水供給ノズル2から洗浄槽1内に供給される。そして、洗浄槽1がオゾン水で満たされると、オゾン水は、洗浄槽1の上部の開口からオーバーフローする。ここで、
図1(A)中の矢印は、オゾン水のフローを示す。なお、オーバーフローさせたオゾン水は、洗浄槽1の外壁周りに設けた二重の槽で回収して、再利用してもよい。このようにオゾン水をオーバーフローさせると、半導体ウェーハから脱離したパーティクルが洗浄槽1内において対流して半導体ウェーハに再付着することを抑制することができる。そのため、通常、半導体ウェーハのオゾン洗浄では、オゾン水をオーバーフローさせる。
【0025】
ここで、オゾン水供給ノズル2は、洗浄槽1の下方に設けられ、かつ洗浄槽1の上方を向いていれば、必ずしも洗浄槽1の底部に設ける必要はない。また、オゾン水供給ノズルの本数も2本に限定されない。例えば、オゾン水供給ノズルを洗浄槽1の側部の下方に設けてもよい。
【0026】
[半導体ウェーハの洗浄方法]
以下では、
図1(A)~(D)を参照して、上述した洗浄装置を用いて行うことが可能な半導体ウェーハの洗浄方法の一例を説明する。
【0027】
〔第1工程:オゾン水の供給〕
図1(A)を参照して、第1工程では、洗浄槽1の下方から洗浄槽1内にオゾン水を供給しつつ、洗浄槽1の上方から洗浄槽1外にオゾン水をオーバーフローさせる。これにより、洗浄槽1内のオゾン水は、常に新しいオゾン水に置換されるので、そのオゾン濃度が一定に保たれる。この時、洗浄槽1内では、その下方から上方に向かってオゾン水の上昇流が生じている。
【0028】
例えば、第1工程は、以下のようにして行うことができる。まず、オゾン水発生ユニットにてオゾン水を生成する。その後、オゾン水供給配管3に設けられた調整弁4を開くと、オゾン水が、オゾン水供給配管3を通過して、洗浄槽1の底部に設けられた一対のオゾン水供給ノズル2から洗浄槽1内に供給される。そして、洗浄槽1がオゾン水で満たされると、オゾン水は、洗浄槽1の上部の開口からオーバーフローする。
【0029】
オゾン水のオゾン濃度は、質量基準で10ppm以上とすることが好ましい。10ppm以上であれば、オゾン水の洗浄力を十分に確保することができるからである。なお、オゾン濃度の上限は、ウェーハ表面に酸化膜を形成する観点からは高いほうがよいが、生産性の観点から30ppm以下とすることが好ましい。
【0030】
オゾン水供給ノズル2から供給するオゾン水の供給量は30000mm3/sec以上とすることが好ましい。30000mm3/sec以上であれば、オゾン水の洗浄能力を十分に確保することができるからである。なお、生産性の観点から、オゾン水の供給量は55000mm3/sec以下とすることが好ましい。
【0031】
〔第2工程:オゾン水の供給の停止〕
図1(B)を参照して、第2工程では、洗浄槽1へのオゾン水の供給を停止する。これにより、第1工程で生じたオゾン水の上昇流が抑制される。この技術的意義については後述する。なお、第2工程は、調整弁4を閉じることにより行えばよい。
【0032】
〔第3工程:半導体ウェーハの浸漬〕
図1(C)を参照して、第3工程では、半導体ウェーハWを洗浄槽1内のオゾン水に浸漬する。
【0033】
例えば、第3工程は、公知または任意の搬送ロボットを用いて行うことができる。ここで、搬送ロボットは、半導体ウェーハWを搬送するための十字型の搬送アーム5と、搬送アーム5を水平方向および上下方向に移動させるための移動機構(不図示)と、を備える。なお、搬送アーム5には、半導体ウェーハWを保持するためのチャックピン6が4本設けられている。そして、洗浄槽1への半導体ウェーハWの投入は、以下のように行うことができる。まず、チャックピン6で半導体ウェーハWを保持する。その後、移動機構を用いて搬送アーム5を適宜移動させることにより、半導体ウェーハWを洗浄槽1上に移動させた後に、半導体ウェーハWを洗浄槽1に対して下降させる。これにより、半導体ウェーハWは、洗浄槽1内のオゾン水に浸漬される。なお、半導体ウェーハWの下降速度は、特に限定されず、30~200mm/secの範囲から適宜設定すればよい。
【0034】
本実施形態では、第2工程において、洗浄槽1へのオゾン水の供給を停止した後に、第3工程において、洗浄槽1に貯留されたオゾン水に半導体ウェーハWを浸漬することが重要である。以下では、この技術的意義を説明する。
【0035】
従来、洗浄槽の下方からオゾン水を供給しつつ、洗浄槽の上方からオゾン水をオーバーフローさせた状態で、半導体ウェーハを洗浄槽内のオゾン水に浸漬して、洗浄していた。すなわち、洗浄槽の下方から上方に向かう上昇流が強く生じている状態で、半導体ウェーハをオゾン水に浸漬していた。ここで、オゾン洗浄に供する前の半導体ウェーハの端面には、ウェーハの製造工程間搬送に起因してパーティクルが付着している。また、裏面にも、ウェーハ処理に起因してパーティクルが付着する可能性がある。また、オゾン洗浄に供する前の半導体ウェーハの表面は、酸化膜が形成されていない場合は、ウェーハ素材であるシリコン等の元素が露出した活性面(疎水面)となっており、パーティクルが強固に付着しやすい。このような状態の半導体ウェーハを従来の洗浄方法に供すると、ウェーハ端面に付着したパーティクルが剥離して、オゾン水の上昇流に乗って拡散し、ウェーハ主表面側にパーティクルが回り込み、活性面(疎水面)となっているウェーハ主表面に再び付着してしまう。
【0036】
これに対して、本実施形態では、
図1(B)に示す第2工程で洗浄槽1へのオゾン水の供給を停止した後に、
図1(C)に示す第3工程で洗浄槽1内のオゾン水に半導体ウェーハWを浸漬する。そのため、半導体ウェーハWを洗浄槽1内のオゾン水に浸漬する際、オゾン水の上昇流が抑制されている。このような状況下で、半導体ウェーハWを浸漬すると、半導体ウェーハWとともにオゾン水が洗浄槽1の下方に移動するため、ウェーハ端面や裏面のパーティクルが脱離したとしても、ウェーハ主表面側に回り込みにくい。つまり、ウェーハ端面からパーティクルが脱離しても、脱離したパーティクルがオゾン水の上昇流に乗って拡散することが抑制される。その結果、ウェーハ主表面の付着物を効果的に低減することができる。
【0037】
図1(B)に示す第2工程にて、オゾン水の供給を停止してから、
図1(C)に示す第3工程にて、半導体ウェーハWの下端を洗浄槽1内に満たされたオゾン水の液面に接触させるまでの時間を1秒以上10秒以下とすることが好ましい。1秒以上であれば、オゾン水の上昇流を十分に抑制することができるからである。10秒以下であれば、オゾン水の供給を停止しても、オゾン水に含まれるオゾンの分解がそれほど起きず、オゾン水の洗浄力を十分に確保することができるからである。より好ましくは1秒以上5秒以下とする。
【0038】
〔第4工程:オゾン水の再供給〕
図1(D)を参照して、第4工程では、洗浄槽1の下方から洗浄槽1内にオゾン水を再び供給しつつ、洗浄槽1の上方から洗浄槽1外にオゾン水を再びオーバーフローさせる。この時、洗浄槽1内では、その下方から上方に向かってオゾン水の上昇流が生じている。しかし、パーティクルが脱離してオゾン水の上昇流によって拡散したとしても、第3工程を経るとウェーハ表面には酸化膜が形成されているので、拡散したパーティクルは、活性面ではなく酸化膜上に付着する。そのため、その後のフッ酸洗浄で酸化膜を除去する際に、酸化膜上のパーティクルも同時に除去される。第4工程でも、第1工程と同様に、洗浄槽1内のオゾン水は、常に新しいオゾン水に置換され、そのオゾン濃度が一定に保たれる。なお、第4工程は、第1工程と同様にして行うことができる。
【0039】
図1(C)に示す第3工程にて、半導体ウェーハW全体が洗浄槽1内に貯留されたオゾン水に浸漬してから、
図1(D)に示す第4工程にて、オゾン水を再び供給するまでの時間を1秒以上10秒以下とすることが好ましい。1秒以上であれば、オゾン水の酸化作用により半導体ウェーハの主表面には酸化膜が十分に形成される。そのため、第4工程にてオゾン水の上昇流が生じても、ウェーハ端部に付着したパーティクルがウェーハ主表面に強固に付着することを抑制することができるからである。10秒以下であれば、オゾン水の供給を停止しても、オゾン水に含まれるオゾンの分解がそれほど起きず、オゾン水の洗浄力を十分に確保することができるからである。より好ましくは1秒以上5秒以下とする。
【0040】
図1(B)に示す第2工程にて、オゾン水の供給を停止してから、
図1(D)に示す第4工程にて、オゾン水を再び供給するまでの時間を1秒以上30秒以下とすることが好ましい。1秒以上であれば、第3工程において半導体ウェーハWを下降するための時間を十分に確保できるからである。30秒以下であれば、オゾン水の供給を停止しても、オゾン水に含まれるオゾンの分解がそれほど起きず、オゾン水の洗浄力を十分に確保することができるからである。より好ましくは1秒以上10秒以上、さらに好ましくは1秒以上5秒以下とする。
【0041】
[半導体ウェーハ]
本実施形態に供することができる半導体ウェーハは、一般にオゾン洗浄に供するシリコンウェーハ等の半導体ウェーハであれば特に限定されない。ただし、本実施形態の効果をより顕著に得る観点からは、半導体ウェーハは、シリコンウェーハ上にシリコンエピタキシャル層が形成されたエピタキシャルシリコンウェーハ、あるいはシリコンウェーハに還元性雰囲気または不活性ガス雰囲気でのアニール処理を施したシリコンアニールウェーハであることが好ましい。これらの半導体ウェーハの主表面は活性面(疎水面)となっているからである。
【0042】
以上、本実施形態を例にして、本発明の半導体ウェーハの洗浄方法を説明したが、本発明は、これに限定されず、特許請求の範囲において適宜変更を加えることができる。
【0043】
[半導体ウェーハの製造方法]
本発明は、半導体ウェーハを製造する工程において、上述した洗浄方法を用いることを特徴とする。
【0044】
本発明の一実施形態による半導体ウェーハの製造方法は、半導体ウェーハを搬送(工程間搬送)する工程と、その後、上述した洗浄方法を用いて、半導体ウェーハを洗浄する工程と、その後、SC1洗浄、またはブラシスクラブ洗浄などのパーティクル除去を主な目的とする洗浄を行う工程と、その後、SC2洗浄やDHF(Diluted Hydrofluoric acid)リンス、またはフッ酸洗浄およびオゾン水洗浄の繰返しスピン洗浄などのメタル除去を主な目的とする洗浄を行う工程と、を含むことができる。なお、フッ酸洗浄およびオゾン水洗浄の繰返しスピン洗浄に上述した洗浄方法を適用しても、フッ酸洗浄槽からオゾン洗浄槽までの間には洗浄装置内でのウェーハ搬送しかないので、そもそもパーティクルの発生確率が低く、ウェーハ表面にはほとんど付着物が存在しない。
【0045】
また、半導体ウェーハをオゾン洗浄槽に搬送する工程に先立って、半導体ウェーハに対して、エピタキシャル成長処理を行う工程を含んでもよく、または、還元性雰囲気もしくは不活性ガス雰囲気でのアニール処理を行う工程を含んでもよい。エピタキシャル成長処理では、例えば半導体ウェーハをシリコンウェーハとして、CVD法により、原料ガスをジクロロシラン、トリクロロシラン等とし、基板温度を1000~1150℃として、厚さが1~20μmのシリコンエピタキシャル層を成長させることができる。この場合、シリコンエピタキシャル層の主表面が活性面(疎水面)となる。また、アニール処理では、半導体ウェーハをシリコンウェーハとして、シリコンウェーハに対して、水素などの還元性雰囲気またはアルゴンなどの不活性ガス雰囲気で1150~1250℃の熱処理を施して、シリコンウェーハの表層部(表面から1~10μmまでの領域)のGrown-in欠陥(COP:Crystal Originated Particle)を低減させることができる。この場合、シリコンウェーハの表層部側の主表面が活性面(疎水面)となる。活性面(疎水面)を有する半導体ウェーハを工程間搬送すると、活性面にパーティクルが付着しやすい。そのため、上述した洗浄方法を用いると、活性面の付着物をさらに効果的に抑制することができる。なお、エピタキシャル成長処理やアニール処理後のウェーハ主表面は、オゾン洗浄前に自然酸化膜が成長することもあるが、自然酸化膜が形成されていても活性面(疎水面)であることには変わりない。
【0046】
本実施形態によれば、ウェーハ主表面の付着物が効果的に抑制された半導体ウェーハを得ることができる。
【0047】
以上、本実施形態を例にして、本発明の半導体ウェーハの製造方法を説明したが、本発明は、これに限定されず、特許請求の範囲において適宜変更を加えることができる。
【実施例】
【0048】
(発明例)
単結晶シリコンインゴットを切り出して得られた直径:300mmのシリコンウェーハに対して、1000℃~1150℃の温度でエピタキシャル成長処理を施して、エピタキシャルシリコンウェーハを25枚作製した。なお、エピタキシャル成長条件は、原料ガスをトリクロロシランとし、、シリコンエピタキシャル層の厚さを2μmとした。そして、各エピタキシャルシリコンウェーハを
図1(A)~(D)に示す洗浄方法に供した。
【0049】
まず、オゾン水発生ユニットで生成したオゾン濃度:20ppmのオゾン水を、オゾン水供給配管を介して、洗浄槽の底部に設けた一対のオゾン水供給ノズルから洗浄槽内に供給しつつ、洗浄槽の上部の開口からオーバーフローさせた(第1工程)。調整弁を調整して、オゾン水供給ノズルから供給するオゾン水の供給量を42000mm3/secとした。
【0050】
次に、調整弁を閉じて、洗浄槽へのオゾン水の供給を停止した(第2工程)。次に、上述した搬送ロボットを用いて、エピタキシャルシリコンウェーハを、洗浄槽に対して190mm/secの速度で下降させて、洗浄槽内のオゾン水に浸漬した(第3工程)。第2工程にて、オゾン水の供給を停止してから、第3工程にて、ウェーハ下端をオゾン水の液面に接触させるまでの時間を1秒とした。
【0051】
次に、調整弁を開いて、オゾン水供給ノズルから洗浄槽内にオゾン水を再び供給しつつ、洗浄槽の上部の開口から再びオーバーフローさせた(第4工程)。第3工程にて、エピタキシャルシリコンウェーハ全体をオゾン水に浸漬させてから、第4工程にて、オゾン水を再び供給するまでの時間を1秒とした。また、第2工程にて、オゾン水の供給を停止してから、第4工程にて、オゾン水を再び供給するまでの時間を4秒とした。
【0052】
(比較例)
比較例では、発明例における第2,3工程の代わりに、洗浄槽の下方から洗浄槽内にオゾン水を供給しつつ、洗浄槽の上方からオゾン水をオーバーフローさせた状態で、洗浄槽内のオゾン水に各エピタキシャルシリコンウェーハを浸漬した。それ以外は、発明例と同様である。なお、ウェーハ下降時にオゾン水供給ノズルから供給するオゾン水の供給量を60000mm3/secとした。
【0053】
(評価方法)
各発明例および比較例で作製した各25枚のエピタキシャルシリコンウェーハについて、表面検査装置(KLA-Tencor社製:Surfscan SP-2)を用いて、DCOモード(Dark Field CompositeObliqueモード)でシリコンエピタキシャル層の表面を観察し、サイズが45nm以上のLPD(Light Point Defect)の個数を調べた。表1には、25枚の平均値を示す。
【0054】
【0055】
(評価結果の説明)
表1に示すように、比較例では、洗浄槽内のオゾン水の上昇流が抑制されていない状態で、エピタキシャルシリコンウェーハをオゾン水に浸漬した。そのため、シリコンエピタキシャル層の表面には付着物が多数残存しており、LPDを抑制することができなかった。これに対して、発明例では、洗浄槽内のオゾン水の上昇流が抑制された状態で、エピタキシャルシリコンウェーハをオゾン水に浸漬した。そのため、シリコンエピタキシャル層の表面の付着物を効果的に低減することができ、LPDを効果的に低減することができた。
【産業上の利用可能性】
【0056】
本発明によれば、ウェーハ主表面の付着物を効果的に低減することができる。
【符号の説明】
【0057】
1 洗浄槽
2 オゾン水供給ノズル
3 オゾン水供給配管
4 調整弁
5 搬送アーム
6 チャックピン
W 半導体ウェーハ