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特許6996475ウェーハ収納容器の洗浄方法およびその洗浄装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-20
(45)【発行日】2022-01-17
(54)【発明の名称】ウェーハ収納容器の洗浄方法およびその洗浄装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/304 20060101AFI20220107BHJP
【FI】
H01L21/304 648E
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2018206683
(22)【出願日】2018-11-01
(65)【公開番号】P2020072215
(43)【公開日】2020-05-07
【審査請求日】2020-10-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000190149
【氏名又は名称】信越半導体株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100102532
【弁理士】
【氏名又は名称】好宮 幹夫
(74)【代理人】
【識別番号】100194881
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 俊弘
(72)【発明者】
【氏名】大久保 裕司
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 聖二
(72)【発明者】
【氏名】有本 康浩
(72)【発明者】
【氏名】田中 紀通
【審査官】小池 英敏
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-80037(JP,A)
【文献】特開2007-123769(JP,A)
【文献】特開2004-202451(JP,A)
【文献】特開2002-334863(JP,A)
【文献】特開2001-156034(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/304
H01L 21/673
B08B 3/02
B08B 3/10
B08B 5/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のウェーハを収納する容器本体と、該容器本体の開口部をパッキンを介して密閉する蓋体とを有するウェーハ収納容器の洗浄方法であって、
前記容器本体における、前記密閉時に前記パッキンと接触する部分を局所的に洗浄する工程を有することを特徴とするウェーハ収納容器の洗浄方法。
【請求項2】
前記局所的に洗浄する工程において、さらに、前記パッキンにおける、前記密閉時に前記容器本体と接触する部分を局所的に洗浄することを特徴とする請求項1に記載のウェーハ収納容器の洗浄方法。
【請求項3】
前記局所的に洗浄する工程として、高圧ジェット洗浄と、二流体洗浄と、ブラシまたは不織布によるスクラブ洗浄のうちいずれか1つ以上を行うことを特徴とする請求項1または請求項2に記載のウェーハ収納容器の洗浄方法。
【請求項4】
前記局所的に洗浄する工程の他、前記ウェーハ収納容器を全体的に洗浄する工程を有することを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のウェーハ収納容器の洗浄方法。
【請求項5】
前記全体的に洗浄する工程として、ディップ式洗浄またはシャワー式洗浄を行うことを特徴とする請求項4に記載のウェーハ収納容器の洗浄方法。
【請求項6】
複数のウェーハを収納する容器本体と、該容器本体の開口部をパッキンを介して密閉する蓋体とを有するウェーハ収納容器の洗浄装置であって、
前記容器本体における、前記密閉時に前記パッキンと接触する部分を局所的に洗浄する、局所洗浄ノズルと、局所洗浄ブラシと、局所洗浄不織布のうちいずれか1つ以上を有することを特徴とするウェーハ収納容器の洗浄装置。
【請求項7】
前記局所洗浄ノズルと、前記局所洗浄ブラシと、前記局所洗浄不織布は、さらに、前記パッキンにおける、前記密閉時に前記容器本体と接触する部分を局所的に洗浄するものであることを特徴とする請求項6に記載のウェーハ収納容器の洗浄装置。
【請求項8】
前記ウェーハ収納容器を全体的に洗浄する槽またはシャワーを有することを特徴とする請求項6または請求項7に記載のウェーハ収納容器の洗浄装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウェーハ収納容器の洗浄方法及びその洗浄装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体ウェーハ、特にシリコン単結晶ウェーハに代表されるウェーハは、FOUPやFOSBと呼ばれる収納容器で搬送、保管を行っている。この収納容器は内部に異物が侵入するのを防ぐため蓋体に装着されたパッキンによりシールされている。パッキンは摩耗や環境暴露によりパッキン表面が劣化し発塵源となる。
【0003】
例えば特許文献1の(0006)に、「SMIF-PODやFOUPなどの基板ケースには、密封することを可能にしているパッキンから発塵する問題があり、その影響を抑制する目的で洗浄を行う。洗浄を実施する場合には、カバー部とドア部を分離し、別々に洗浄を実施する。」との記載があり、パッキンが発塵源となることは公知である。
【0004】
特許文献2には、FOUPの本体(ポッドシェル)とフタ(ドアシェル)を別々に洗浄する洗浄乾燥装置が開示されており、(0007)と(0009)に、それぞれの洗浄方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2012-238649号公報
【文献】特開2007-123769号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記の従来法により洗浄を行っても、収納容器に収納したウェーハ表面にパッキン由来と考えられるパーティクルが付着することがあった。
そこで本発明者らが鋭意調査を行ったところ、FOUP等のパッキンが密閉時に容器本体に接触する部分から、ウェーハ表面のパーティクルとなるゴミが発生していることが判明した。本発明者らの調査によると、パッキンと容器本体の接触箇所が擦れて蓄積された上記ゴミは、ウェーハ収納容器の蓋体を開ける際に放出されて容器本体内へ流れ込む気流により収納されたウェーハに付着することが判明した。このウェーハ表面のパーティクルは特にSlot25番(容器内最上段の位置のウェーハ)に顕著に表れる。
【0007】
パッキンから発生したゴミ(1次発生源)はパッキンと接触している容器本体の部分に転写・付着し2次発塵源となる。この転写されたゴミは従来の容器本体全体を均一に洗うシャワーまたはディップ式洗浄では除去できないことが分かった。
また、劣化したパッキンを新品に交換しても、従来の洗浄方法では除去できない容器本体に付着した上記ゴミ(交換前の劣化パッキン由来のものが残留している)が2次発塵源となり、収納したウェーハに付着する。これにより、劣化したパッキンのウェーハ収納容器はパッキンのみならず容器本体も交換する必要があった。
【0008】
なお、特許文献1によりパッキンが発塵源になることは公知であるが、パッキンと容器本体が接触する部分で容器本体に付着したパッキン材由来のゴミが、蓋体を開ける際に放出されてウェーハに付着するという技術課題や、その解決手段について開示している文献は見つからなかった。
【0009】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであって、ウェーハ収納容器の容器本体内に収納されたウェーハ表面にパッキン由来のゴミ(パーティクル)が付着するのを抑制することができるウェーハ収納容器の洗浄方法およびウェーハ収納容器の洗浄装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明は、複数のウェーハを収納する容器本体と、該容器本体の開口部をパッキンを介して密閉する蓋体とを有するウェーハ収納容器の洗浄方法であって、
前記容器本体における、前記密閉時に前記パッキンと接触する部分を局所的に洗浄する工程を有することを特徴とするウェーハ収納容器の洗浄方法を提供する。
【0011】
2次発塵源である、密閉時にパッキンと接触する容器本体の部分(容器本体のパッキン接触部)を局所的に洗浄(局所洗浄)するため、従来法では除去できなかったパッキン接触部におけるパッキン由来のパーティクルを除去することができる。そのため、収納容器に収納したウェーハにパーティクルが付着するのを効果的に抑制することができる。
また、パッキンが劣化した場合は、2次発塵源からのウェーハへのパーティクル付着の防止のために、従来ではパッキンのみならず容器本体も交換する必要があった。しかしながら本発明の洗浄方法によって上記2次発塵源(蓄積したパーティクル)を除去できるため、交換するのはパッキンのみで容器本体を交換する必要がなくなり、ランニングコストを低減することができる。
【0012】
また、前記局所的に洗浄する工程において、さらに、前記パッキンにおける、前記密閉時に前記容器本体と接触する部分を局所的に洗浄することができる。
【0013】
このように、密閉時に容器本体と接触するパッキンの部分(パッキンの容器本体接触部)を局所洗浄するため、1次発塵源(蓄積したパーティクル)を除去することができる。したがって、より一層、ウェーハへのパーティクルの付着を抑制することができる。
【0014】
また、前記局所的に洗浄する工程として、高圧ジェット洗浄と、二流体洗浄と、ブラシまたは不織布によるスクラブ洗浄のうちいずれか1つ以上を行うことができる。
【0015】
このような洗浄を行えば、上記の2次発塵源や1次発塵源のパーティクルを効率良く除去することができる。
【0016】
また、前記局所的に洗浄する工程の他、前記ウェーハ収納容器を全体的に洗浄する工程を有することができる。
【0017】
このようにウェーハ収納容器を局所洗浄するのみならず全体的に洗浄(全体洗浄)すれば、ウェーハ収納容器に付着したパーティクルを全体的に除去することができ、ウェーハへのパーティクルの付着をさらに抑制することができる。
【0018】
また、前記全体的に洗浄する工程として、ディップ式洗浄またはシャワー式洗浄を行うことができる。
【0019】
このような洗浄は、ウェーハ収納容器に付着したパーティクルを全体的に除去するのに適している。全体洗浄として効率が良い方式である。
【0020】
また本発明は、複数のウェーハを収納する容器本体と、該容器本体の開口部をパッキンを介して密閉する蓋体とを有するウェーハ収納容器の洗浄装置であって、
前記容器本体における、前記密閉時に前記パッキンと接触する部分を局所的に洗浄する、局所洗浄ノズルと、局所洗浄ブラシと、局所洗浄不織布のうちいずれか1つ以上を有することを特徴とするウェーハ収納容器の洗浄装置を提供する。
【0021】
このような洗浄装置であれば、2次発塵源である容器本体のパッキン接触部に蓄積したパーティクルを効率的に除去することができ、ウェーハへのパーティクル付着を効果的に抑制できる。
また、上記のように本発明の洗浄装置で2次発塵源におけるパーティクルを除去してウェーハのパーティクル付着を防止できるため、パッキンが劣化した場合に容器本体は交換する必要はなく、パッキンのみ交換すれば良い。従来と異なり容器本体までも交換せずに済むため、ランニングコストを低減することができる。
【0022】
また、前記局所洗浄ノズルと、前記局所洗浄ブラシと、前記局所洗浄不織布は、さらに、前記パッキンにおける、前記密閉時に前記容器本体と接触する部分を局所的に洗浄するものとすることができる。
【0023】
このようなものであれば、1次発塵源であるパッキンの容器本体接触部に蓄積したパーティクルを効率的に除去することができ、より一層、ウェーハへのパーティクルの付着を抑制することができる。
【0024】
また本発明では、前記ウェーハ収納容器を全体的に洗浄する槽またはシャワーを有することができる。
【0025】
このようなものであれば、効率良く全体洗浄を行うことができる。
【発明の効果】
【0026】
以上のように、本発明のウェーハ収納容器の洗浄方法およびその洗浄装置によれば、容器本体のパッキン接触部に蓄積したパーティクルを除去することができ、ウェーハへのパーティクル付着を効果的に抑制できる。またパッキンが劣化した場合には容器本体は交換せずにパッキンのみ交換すれば良く、ランニングコストを低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】本発明のウェーハ収納容器の洗浄装置の一例を示す概略図である。
図2】本発明のウェーハ収納容器の洗浄装置の他の一例を示す概略図である。
図3】本発明のウェーハ収納容器の洗浄装置の他の一例を示す概略図である。
図4】ウェーハ収納容器の一例を示す概略図である。
図5】ウェーハ収納容器が密閉されているときの状態の一例を示す断面図である。
図6】パッキンと容器本体とが互いに接触している状態の一例を示す拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
前述したように、従来の洗浄方法では除去できないパッキン由来のパーティクルの発生源について本発明者らは鋭意調査を行った。まずその調査について詳述する。
ウェーハ収納容器(以下、単に収納容器とも言う)のパッキンから発生したゴミが、パッキンと接触している容器本体の部分に転写・付着して2次発塵源となること、及び、該容器本体のパッキン接触部を局所的に洗浄することによってパーティクル付着低減効果が得られることについては、以下の手順(1)―(4)により確認した。
【0029】
(1) ウェーハ収納容器の開閉で収納したウェーハにパーティクルが付着する。その元素はパッキンの成分であり、パッキンが原因であることを確認した。
(2) 上記収納容器に別の素材のパッキンを装着(フッ素ゴム製からポリエステル製へ)したが、開閉動作でウェーハにフッ素ゴム由来のパーティクルが付着した。
(フッ素ゴムパッキンに比べてポリエステルパッキンの方が発塵が少ないので、当初はパッキンの交換のみでパーティクルの低減が可能と考えたが、十分改善しなかった。)
(3) (2)の収納容器を通常の容器洗浄機(ディップ式及びシャワー式)で洗浄したが、開閉動作でウェーハにフッ素ゴム由来のパーティクルが付着することを確認した。
(4) (3)の容器本体のパッキン接触部の局所洗浄を行い、その後通常洗浄(シャワー式)して開閉テストを行ったところ、ウェーハ上へのパーティクル付着は減少し、パーティクル付着数に関して新品の収納容器と同等となった。
【0030】
これらのことから、本発明者らは容器本体のパッキン接触部の局所洗浄を行うことによって、そこに蓄積したパーティクルを除去することができ、ウェーハへのパーティクル付着を抑制できることを見出し、本発明を完成させた。
【0031】
以下、本発明について、実施態様の一例として、図を参照しながら詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
まず、図4に洗浄対象であるウェーハ収納容器の概略を示す。図4に示すように、ウェーハ収納容器1は、主な部材として、ウェーハを収納する容器本体2と、蓋体3と、パッキン4を備えている。容器本体2は、その開口部5をパッキン4を介して蓋体3により密閉することができるようになっている。パッキン4の材質としては、例えばフッ素ゴムやポリエステルなどが挙げられる。
【0032】
図5はウェーハ収納容器が密閉されているときの状態の一例を示す断面図である。図4のA-A破線に沿った断面図である。また、図6図5の丸印(破線)で囲った部分を拡大した断面図であり、パッキンと容器本体とが互いに接触している状態の一例を示している。
図5図6に示すように、密閉時はパッキン4と容器本体2とが互いに押し合っていることによりシールされている。より具体的には、容器本体2により、パッキン4は容器本体2の外側(蓋体3側)に向かって0.1mm以上押し戻されている(押しこみ量)。ここで、図6中の符号6が容器本体2のパッキン接触部を示し、符号7がパッキン4の容器本体接触部を示している。パッキン4は摩擦や劣化で発塵源となるが、パッキン4から発生したパーティクルは、パッキン4と接触している容器本体2のパッキン接触部6と擦れ、そこに転写・付着し、蓄積されることになる。
【0033】
次に、このようなウェーハ収納容器1を洗浄するための本発明の洗浄装置の一例を図1に示す。図1に示すように洗浄装置10はウェーハ収納容器1を全体的に洗浄するためのシャワー11と、容器本体2のパッキン接触部6を局所的に洗浄するための局所洗浄ノズル12を有している。
シャワー11は、容器本体2、蓋体3、パッキン4の表面全体に向けて洗浄液や純水等を噴出することができる。シャワー11によりこれらの部品の表面全体を効率的に洗浄することができ、表面に付着したパーティクル等のゴミを除去することができる。例えば従来のシャワーと同様のものとすることができる。
【0034】
また局所洗浄ノズル12は、容器本体2のパッキン接触部6に向けて洗浄液や純水等を噴出することができる。例えば、シャワー11よりも洗浄液等を高圧で噴射できる高圧ジェット洗浄ノズルとすることができる。その他、空気と洗浄液などの二つの流体を噴出できる二流体洗浄ノズルとすることも可能である。
この局所洗浄ノズル12により、シャワー11では除去できないような、パッキン接触部6に転写して蓄積されたパッキン4由来のパーティクルを効率的に除去することができる。したがって、従来のようにパッキン接触部6が2次発塵源となり、該2次発塵源からのパーティクルがウェーハに付着してしまうのを防ぐことができる。
【0035】
また、この局所洗浄ノズル12は、容器本体2のパッキン接触部6のみならず、パッキン4の容器本体接触部7も局所的に洗浄するものとすることができる。これにより、1次発塵源であるパッキン4、特には容器本体2と接触して擦れる箇所である容器本体接触部7に蓄積されたパーティクルをも効率的に除去することができる。そのため、より一層、ウェーハへのパーティクルの付着を抑制することができる。
【0036】
なお、シャワー11や局所洗浄ノズルの配置位置や本数、容器本体2などの洗浄時の向きなどは特に限定されず、適宜決定できる。
また、ここでは局所洗浄ノズル12を配置した例について説明したが、これに代えてブラシ(局所洗浄ブラシ13)や、または不織布(局所洗浄不織布14)を配置することもできる。これらの洗浄手段であっても、効率的に各接触部6、7のパーティクルの除去を効率的に行うことができる。
あるいは、これらを複数組み合わせて配置することも可能である。複数組み合わせて洗浄することでより効果的にパーティクルを除去することが可能である。
【0037】
また、図1では全体洗浄のシャワー11と局所洗浄の局所洗浄ノズル12が別の場所に配置されており、別のタイミングで各洗浄を行う形態を示したが、図2に示す他の一例のように、同様の場所に配置して同じタイミングで各洗浄を行うことも可能である。
【0038】
また、図1に示す例では全体洗浄のためにシャワー11を配置した例について説明したが、シャワー11の代わりに、図3に示すように洗浄液等を満たした槽15を配置することができる。図3は本発明のウェーハ収納容器の洗浄装置のさらに他の一例を示したものであり、全体洗浄部のみ示したものである。このような槽15に容器本体2などを浸漬することでも効率良く全体洗浄を行うことができる。
【0039】
以上のような本発明であれば、前述したように、容器本体2のパッキン接触部6や、さらにはパッキン4の容器本体接触部7に蓄積したパーティクルを除去してウェーハへの付着を防止することができる。
また、パッキン接触部6に転写して蓄積したパーティクルを除去できるので、パッキン4が劣化した場合に、従来のようにパッキン4のみならず容器本体2をも交換する必要はない。そのため、ランニングコストの低減を図ることができる。
【0040】
次に、図1の本発明のウェーハ収納容器の洗浄装置を用いた本発明のウェーハ収納容器の洗浄方法について説明する。
まず、ウェーハ収納容器1を分解して、容器本体2、蓋体3、パッキン4に分ける。
局所洗浄ノズル12により、容器本体2のパッキン接触部6や、さらには必要に応じてパッキン4の容器本体接触部7に向けて各種の洗浄液を噴出して局所洗浄する(局所洗浄工程)。例えば、高圧ジェット洗浄や二流体洗浄を行い、効率良く洗浄することができる。
次に、シャワー11により、容器本体2等の表面全体に向けて各種の洗浄液を噴出して全体洗浄する(全体洗浄工程)。
【0041】
なお、上記例では局所洗浄工程の後に全体洗浄工程を行っているが、これに限定されず、局所洗浄工程および全体洗浄工程を逆のタイミングで行うこともできるし、これらの工程を同じタイミングで行うこともできる。
また、局所洗浄工程として、ブラシまたは不織布によるスクラブ洗浄を行うこともできる(局所洗浄ブラシ13または局所洗浄不織布14の使用)。
さらには、シャワー11によるシャワー式洗浄に代えて、全体洗浄工程として、槽15を用いたディップ式洗浄を行うこともできる。
その後、容器本体2等を純水でリンスし、乾燥させる。
【0042】
以上の洗浄工程により、特に従来の洗浄方法では除去できなかった容器本体2のパッキン接触部6に付着しているパーティクルを除去することができる。これにより、ウェーハへのパーティクルの付着が抑制され、また、劣化パッキン交換に伴う容器本体の交換の必要性をなくすことができる。
【実施例
【0043】
以下、実施例及び比較例を示して本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
劣化したパッキン(フッ素ゴム)を有する使用済みのFOUPを用意した。この劣化したパッキンを有するFOUPに対し、または、パッキンを交換したFOUPに対し、後述する実施例1、2、比較例1、2のように各洗浄を行った後に、下記(1)―(4)の工程を実施し、ウェーハ表面に付着したパーティクル増加個数を計測した。
【0044】
(1)FOUPにエピタキシャルウェーハを2枚収納
(SlotNo.25(最上部)とNo.1(最下部))
(2)SP5(KLA-テンコール社製)でパーティクル数を測定
(3)蓋体の開閉動作を20回実施
(4)SP5で再測定し、蓋体の開閉動作前後の増加パーティクル数を計測(個/wafer。なお、パーティクルは22nm以上のサイズのものを計測)
【0045】
各実施例および比較例における、洗浄対象、洗浄方法、パーティクル増加個数は以下の通りである。
(比較例1)
劣化したパッキン(フッ素ゴム)を装着したFOUPに対し、通常の容器洗浄を実施後に上記(1)~(4)を実施した。
通常の容器洗浄:収納容器全体に界面活性剤0.1%のシャワーを行った後、純水シャワーを行い、その後に乾燥した。
このように比較例1の洗浄は、従来法と同様の全体洗浄工程のみとした。
増加個数:265個/wafer(平均値)
【0046】
(比較例2)
劣化したパッキン(フッ素ゴム)をポリエステルパッキンに交換したFOUPに対し、通常の容器洗浄を実施後に上記(1)~(4)を実施した。
このように比較例2の洗浄は、従来法と同様の全体洗浄工程のみとした。
増加個数:585個/wafer(平均値)
【0047】
(実施例1)
劣化したパッキン(フッ素ゴム)をポリエステルパッキンに交換したFOUPに対し、本発明の局所洗浄(図1の洗浄装置の局所洗浄ノズル12を使用)を行った後に通常の容器洗浄を実施後に上記(1)~(4)を実施した。
局所洗浄:二流体洗浄(空気+洗浄液)(洗浄液として界面活性剤0.1%、水圧0.2MPa、水量38.3ml/min、洗浄時間は容器本体のパッキン接触部の一辺あたり20秒間×2回(5cm離れた位置から噴射))を行い、純水でリンスした。
このように実施例1の洗浄は、局所洗浄工程と全体洗浄工程からなるものとした。
増加個数:2個/wafer(平均値)
【0048】
(実施例2)
劣化したパッキン(フッ素ゴム)をポリエステルパッキンに交換したFOUPに対し、本発明の局所洗浄を行った後に通常の容器洗浄を実施後に上記(1)~(4)を実施した。
局所洗浄:高圧ジェット(水圧10MPaの純水ジェット、水量1.2l/min、洗浄時間は容器本体のパッキン接触部の一辺あたり20秒間×2回(10cm離れた位置から噴射))を行い、純水でリンスした。
このように実施例2の洗浄は、局所洗浄工程と全体洗浄工程からなるものとした。
増加個数:1個/wafer(平均値)
【0049】
以上のように、ウェーハ表面に付着したパーティクル増加個数に関して、本発明の洗浄方法および洗浄装置を用いた実施例1、2では、各々、2個/wafer、1個/waferであり、従来法による比較例1、2では、各々、265個/wafer、585個/waferであった。なお、比較例1、2の増加個数の差はバラツキの範囲内と考えられる。
従来法に比べ、本発明の洗浄方法および洗浄装置であればパーティクル増加個数を1/100未満にまで低減できていることが分かる。
【0050】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は、例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
【符号の説明】
【0051】
1…ウェーハ収納容器、 2…容器本体、 3…蓋体、 4…パッキン、
5…開口部、 6…容器本体のパッキン接触部、 7…パッキンの容器本体接触部、
10…本発明のウェーハ収納容器の洗浄装置、 11…シャワー、
12…局所洗浄ノズル、 13…局所洗浄ブラシ、 14…局所洗浄不織布、
15…槽。
図1
図2
図3
図4
図5
図6