(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-20
(45)【発行日】2022-01-17
(54)【発明の名称】単結晶の製造方法
(51)【国際特許分類】
C30B 29/06 20060101AFI20220107BHJP
C30B 13/28 20060101ALI20220107BHJP
【FI】
C30B29/06 501A
C30B13/28
(21)【出願番号】P 2018212846
(22)【出願日】2018-11-13
【審査請求日】2020-10-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000190149
【氏名又は名称】信越半導体株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100102532
【氏名又は名称】好宮 幹夫
(74)【代理人】
【識別番号】100194881
【氏名又は名称】小林 俊弘
(72)【発明者】
【氏名】永井 直樹
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 一徳
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 聡
(72)【発明者】
【氏名】児玉 義博
【審査官】松本 瞳
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-193461(JP,A)
【文献】特開平11-278981(JP,A)
【文献】特開平7-206573(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C30B 1/00-35/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
原料結晶棒を誘導加熱コイルで加熱溶融して浮遊帯域を形成し、前記誘導加熱コイルに対して上側の前記原料結晶棒及び下側の単結晶棒を回転させながら相対的に下降させ、前記浮遊帯域を移動させることで前記単結晶棒を育成するFZ法による単結晶の製造方法であって、
結晶成長途中で成長を停止し、FZ法による単結晶の製造を終了した場合に、残りの原料結晶棒の重量を測定する測定工程と、
前記残りの原料結晶棒から理論的に製造できる単結晶棒の前記残りの原料結晶棒に対するコーン部とテール部を除いた単結晶直胴部の理論歩留りを前記測定した重量から計算し、前記結晶成長途中で成長を停止する前の最初に製造した単結晶の直径以下で、予め定めた基準歩留りを満たす、前記残りの原料結晶棒を用いて再び製造できる単結晶の最大直径を決定する、又は、前記予め定めた基準歩留りを満たさない場合は、前記残りの原料結晶棒では単結晶の製造をしないことを決定する判定工程と、
前記再び製造できる単結晶の最大直径を決定した場合には、前記残りの原料結晶棒を用いて決定した前記再び製造できる単結晶の最大直径で単結晶を製造する再製造工程と
を有することを特徴とする単結晶の製造方法。
【請求項2】
前記判定工程において、
製造可能な単結晶の直径、及び、基準歩留りとして該製造可能な単結晶の直径毎の最低歩留りを予め定め、
前記残りの原料結晶棒から製造できる、前記最初に製造した単結晶の直径の理論歩留りを計算する最初の計算処理を行い、
該最初に製造した単結晶の直径の理論歩留りが直径毎に定める前記最低歩留り以上の場合は、同じ直径を前記再び製造できる単結晶の最大直径とし、直径毎に定める前記最低歩留りより小さい場合は、単結晶の仮の最大直径を、予め定めた前記製造可能な単結晶の直径のうち1サイズ小さい直径とする最初の判定処理を行い、
再度、前記残りの原料結晶棒から製造できる、前記単結晶の仮の最大直径の理論歩留りを計算する計算処理を行い、
前記単結晶の仮の最大直径の理論歩留りが直径毎に定める前記最低歩留り以上の場合は、該直径を前記再び製造できる単結晶の最大直径とし、直径毎に定める前記最低歩留りより小さい場合は、前記単結晶の仮の最大直径を予め定めた前記製造可能な単結晶の直径のうち更に1サイズ小さい直径に設定し直す判定処理を行い、該設定し直した単結晶の仮の最大直径で前記計算処理、前記判定処理を行うことを繰り返し、予め定めた前記製造可能な単結晶の直径の最低直径において計算した理論歩留りが直径毎に定める前記最低歩留りより小さい場合には単結晶を製造しないと決定することを特徴とする請求項1に記載の単結晶の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、FZ法による単結晶の製造方法に関し、更に詳しくはFZ法により単結晶を成長させている途中で成長を停止した場合に残りの原料結晶棒を合理的に利用する単結晶の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、高耐圧パワーデバイスやサイリスタ等のパワーデバイス製造用にはFZ法により製造された高純度シリコンウェーハが使用されてきた。
【0003】
近年では、半導体デバイスの性能向上とコストの低減のため、大口径のシリコンウェーハが求められ、これに伴って大口径シリコン単結晶の育成が要求されている。また、従来の口径の製品の需要もあるので、8インチ(直径200mm)、6インチ(直径150mm)、5インチ(直径125mm)、4インチ(直径100mm)、それ以下の口径も製造されている。
【0004】
FZ法では、原料結晶棒を誘導加熱コイルで加熱溶融して浮遊帯域を形成し、誘導加熱コイルに対して上側の原料結晶棒及び下側の単結晶棒を相対的に下降させ、浮遊帯域を移動させることで単結晶棒を育成する(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
図3に、一般的に用いられるFZ単結晶製造装置30を示す。このFZ単結晶製造装置30を用いて、シリコン単結晶を製造する方法について説明する。
【0006】
まず、シリコン原料結晶棒1を準備する。シリコン原料結晶棒1としては、シーメンス法により製造されたシリコン多結晶棒又はCZ法により製造されたシリコン単結晶棒が用いられる。
【0007】
シリコン原料結晶棒1は上軸3に上部保持治具4にて保持する必要があるので、予め、シリコン原料結晶棒1の上側(単結晶になった時のテール側)には上軸3の上部保持治具4に保持する為に一部を機械加工したり、下側(単結晶になった時のコーン側)には種付けし易いように先端部を機械加工したり、直胴部を所望の直径にするための機械加工などが施されてもよい。機械加工をすると、そのままでは表面に不純物が付着しているので、高純度な単結晶を製造するために、一般的にはエッチングや洗浄がなされる。
【0008】
続いて、シリコン原料結晶棒1をチャンバー20内に設置された上軸3の上部保持治具4に保持する。そして、直径の小さい単結晶の種(種結晶)8を、シリコン原料結晶棒1の下方に位置する下軸5の下部保持治具6に保持する。
【0009】
次に、誘導加熱コイル7によりシリコン原料結晶棒1を溶融して、種結晶8に融着させる。その後、種絞りにより絞り部9を形成して無転位化する。そして、上軸3と下軸5を回転させながらシリコン原料結晶棒1とシリコン単結晶2を下降させることで浮遊帯域10(溶融帯あるいはメルトともいう)をシリコン原料結晶棒1とシリコン単結晶2の間に形成し、当該浮遊帯域10をシリコン原料結晶棒1の上端まで移動させてゾーニングし、シリコン単結晶2を成長させる。この成長は、Arガスに微量の窒素ガスを混合した雰囲気中で行われる。
【0010】
上記誘導加熱コイル7としては、銅又は銀からなる単巻又は複巻の冷却用の水を流通させた誘導加熱コイルが用いられている。
【0011】
目的の重量のシリコン単結晶に到達した段階で、テールを形成する工程となり、成長を停止し、シリコン原料結晶棒と切り離す。
【0012】
しかしながら、目的の重量に到達する前にシリコン単結晶が途中で有転位化してしまう場合もある。この場合には、残りのシリコン原料結晶棒の重量は想定よりも大きくなり、
図2に示す従来のシリコン原料結晶棒の再利用のフローに従い、測定した残りのシリコン原料結晶棒の重量が最低製品重量を取得できるほど大きい場合には、再度、FZ法に利用することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
FZ法によるシリコン単結晶の結晶成長においては1本のシリコン原料結晶棒(以下、単に原料結晶棒ともいう)からできるだけ大きな重量のシリコン単結晶(以下、単に単結晶ともいう)を製造することが、歩留り、コスト改善に繋がり好ましい。この理由は、FZ法による単結晶の製造用のシリコン原料結晶棒は高価であり、製造する単結晶のコストに対して大きな比率を占めているからである。
【0015】
しかしながら、不可避的な有転位化や地震、瞬停による停止により、途中で結晶成長を停止させることがある。また、FZ法の製品は多品種少量生産であり、必要な製品量が随分と少なく、途中で成長を停止させる場合がある。これらの場合にはシリコン原料結晶棒の残りの重量が大きくなってしまう。
【0016】
このような場合には、残りのシリコン原料結晶棒を再度、FZ法に利用することで少しでも製品を製造することは有効であるが、シリコン原料結晶棒の重量は最初に比べて軽くなっているので、このようなシリコン原料結晶棒から製品を再製造した場合、製品部分に対して製品にならないコーン部やテール部の比率が高くなり必然的に歩留りは低下してしまう。
【0017】
本発明はこのような課題に鑑みなされたもので、途中で結晶成長を停止させた場合に、残りの原料結晶棒を有効に利用することで歩留り低下を抑制した単結晶の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
上記課題を解決するため、本発明は、原料結晶棒を誘導加熱コイルで加熱溶融して浮遊帯域を形成し、前記誘導加熱コイルに対して上側の前記原料結晶棒及び下側の単結晶棒を回転させながら相対的に下降させ、前記浮遊帯域を移動させることで前記単結晶棒を育成するFZ法による単結晶の製造方法であって、
結晶成長途中で成長を停止し、FZ法による単結晶の製造を終了した場合に、残りの原料結晶棒の重量を測定する測定工程と、
前記残りの原料結晶棒から理論的に製造できる単結晶棒の前記残りの原料結晶棒に対するコーン部とテール部を除いた単結晶直胴部の理論歩留りを前記測定した重量から計算し、前記結晶成長途中で成長を停止する前の最初に製造した単結晶の直径以下で、予め定めた基準歩留りを満たす、前記残りの原料結晶棒を用いて再び製造できる単結晶の最大直径を決定する、又は、前記予め定めた基準歩留りを満たさない場合は、前記残りの原料結晶棒では単結晶の製造をしないことを決定する判定工程と、
前記再び製造できる単結晶の最大直径を決定した場合には、前記残りの原料結晶棒を用いて決定した前記再び製造できる単結晶の最大直径で単結晶を製造する再製造工程と
を有することを特徴とする単結晶の製造方法を提供する。
【0019】
このように、残りの原料結晶棒の重量を測定し、その重量の原料結晶棒から、最初に製造した単結晶の直径以下で、基準歩留りを満たす最大直径の単結晶を製造することで、適切な直径の単結晶を製造することが可能となるため、原料結晶棒を有効に利用することができ、従来よりも製品歩留りを向上させることができる。また、予め定めた基準歩留りを満たさない場合は単結晶の製造をしないことで従来よりも製造コストを低減することができる。
【0020】
このとき、前記判定工程において、
製造可能な単結晶の直径、及び、基準歩留りとして該製造可能な単結晶の直径毎の最低歩留りを予め定め、
前記残りの原料結晶棒から製造できる、前記最初に製造した単結晶の直径の理論歩留りを計算する最初の計算処理を行い、
該最初に製造した単結晶の直径の理論歩留りが直径毎に定める前記最低歩留り以上の場合は、同じ直径を前記再び製造できる単結晶の最大直径とし、直径毎に定める前記最低歩留りより小さい場合は、単結晶の仮の最大直径を、予め定めた前記製造可能な単結晶の直径のうち1サイズ小さい直径とする最初の判定処理を行い、
再度、前記残りの原料結晶棒から製造できる、前記単結晶の仮の最大直径の理論歩留りを計算する計算処理を行い、
前記単結晶の仮の最大直径の理論歩留りが直径毎に定める前記最低歩留り以上の場合は、該直径を前記再び製造できる単結晶の最大直径とし、直径毎に定める前記最低歩留りより小さい場合は、前記単結晶の仮の最大直径を予め定めた前記製造可能な単結晶の直径のうち更に1サイズ小さい直径に設定し直す判定処理を行い、該設定し直した単結晶の仮の最大直径で前記計算処理、前記判定処理を行うことを繰り返し、予め定めた前記製造可能な単結晶の直径の最低直径において計算した理論歩留りが直径毎に定める前記最低歩留りより小さい場合には単結晶を製造しないと決定することが好ましい。
【0021】
このような方法を用いれば、より簡単で確実に、従来よりも製品歩留りを向上させることができ、また、製造コストを低減することができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明の単結晶の製造方法によると、残りの原料結晶棒の重量を測定し、その重量の原料結晶棒から、最初に製造した単結晶の直径以下で、基準歩留りを満たす最大直径の単結晶を製造することで、適切な直径の単結晶を製造することが可能となるため、原料結晶棒を有効に利用することができ、従来よりも製品歩留りを向上させることができる。また、予め定めた基準歩留りを満たさない場合は単結晶の製造をしないことで従来よりも製造コストを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】本発明のシリコン原料結晶棒の再利用のフローの例である。
【
図2】従来のシリコン原料結晶棒の再利用のフローである。
【
図3】一般的に用いられるFZ単結晶製造装置を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
上述したように、途中で結晶成長を停止させた場合に、残りのシリコン原料結晶棒から製品を再製造すると、製品部分に対して製品にならないコーン部やテール部の比率が高くなり必然的に歩留りは低下してしまうという課題があった。
【0025】
本発明者らは、このような課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、途中で結晶成長を停止させた場合に、残りの原料結晶棒を有効に利用することで歩留り低下を抑制できることが判り、本発明を完成させた。
【0026】
即ち、本発明は、原料結晶棒を誘導加熱コイルで加熱溶融して浮遊帯域を形成し、前記誘導加熱コイルに対して上側の前記原料結晶棒及び下側の単結晶棒を回転させながら相対的に下降させ、前記浮遊帯域を移動させることで前記単結晶棒を育成するFZ法による単結晶の製造方法であって、結晶成長途中で成長を停止し、FZ法による単結晶の製造を終了した場合に、残りの原料結晶棒の重量を測定する測定工程と、前記残りの原料結晶棒から理論的に製造できる単結晶棒の前記残りの原料結晶棒に対するコーン部とテール部を除いた単結晶直胴部の理論歩留りを前記測定した重量から計算し、前記結晶成長途中で成長を停止する前の最初に製造した単結晶の直径以下で、予め定めた基準歩留りを満たす、前記残りの原料結晶棒を用いて再び製造できる単結晶の最大直径を決定する、又は、前記予め定めた基準歩留りを満たさない場合は、前記残りの原料結晶棒では単結晶の製造をしないことを決定する判定工程と、前記再び製造できる単結晶の最大直径を決定した場合には、前記残りの原料結晶棒を用いて決定した前記再び製造できる単結晶の最大直径で単結晶を製造する再製造工程とを有することを特徴とする単結晶の製造方法である。
【0027】
このように、残りの原料結晶棒の重量に適した、基準歩留りを満たす最大直径の単結晶を製造することで、従来よりも製品歩留りを向上させることができる。また、予め定めた基準歩留りを満たさない場合は単結晶の製造をしないことで従来よりも製造コストを低減することができる。
【0028】
以下、図を参照しながら本発明について実施の形態を説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0029】
例として
図1の本発明のシリコン原料結晶棒の再利用のフローを用いて、本発明の単結晶の製造方法を説明する。
【0030】
まず、本発明の単結晶の製造方法の判定工程における判定基準を作成することができる。ここでは、例えば、
図1に示すようなシリコン原料結晶棒の再利用のフローにおいて用いる判定基準を作成することができる。このとき、結晶成長途中で成長を停止する前の最初に製造した単結晶の直径以下で、製造可能な単結晶の直径、及び、基準歩留りとして製造可能な単結晶の直径毎の最低歩留りを予め定めておく(
図1のA)。
【0031】
図1の本発明のシリコン原料結晶棒の再利用のフローでは、最初に、結晶成長途中で成長を停止した(
図1のB)後の残りの原料結晶棒の重量から製造できる、結晶成長途中で成長を停止する前の最初に製造した単結晶直径の理論歩留りを計算する最初の計算処理を行い(
図1のD)、その理論歩留りが予め直径毎に定めた最低歩留り以上の場合は同じ単結晶の直径を再び製造できる単結晶の最大直径に決定し(
図1のF)、最低歩留りより小さい場合は単結晶の仮の最大直径を予め定めた製造可能な単結晶の直径のうち1サイズ小さい直径とする最初の判定処理を行う(
図1のH)。
【0032】
そして、上記理論歩留りが最低歩留りより小さい場合は、再度、単結晶の仮の最大直径の理論歩留りを計算する計算処理を行い、その理論歩留りが予め直径毎に定めた最低歩留り以上の場合は該直径を再び製造できる単結晶の最大直径とし、最低歩留りより小さい場合は単結晶の仮の最大直径を予め定めた直径のうち更に1サイズ小さい直径に設定し直す判定処理を行う(
図1のE)。上記単結晶の仮の最大直径の理論歩留りが最低歩留りより小さい場合は、設定し直した単結晶の仮の最大直径で上記計算処理、上記判定処理を行うことを繰り返す。また、予め定めた最低直径において計算した理論歩留りが最低直径における最低歩留りより小さい場合には製品を製造しない(
図1のI)。
【0033】
上記のように、単結晶の理論歩留りが、直径毎に定めた最低歩留り以上であるか、直径毎に定めた最低歩留りより小さいかを判定基準にすることができる。
【0034】
また、ここで、理論歩留りとは、結晶成長途中で成長を停止した後の残りの原料結晶棒から理論的に製造できる単結晶棒の残りの原料結晶棒に対するコーン部とテール部を除いた単結晶直胴部の歩留りのことである。
【0035】
このような方法を用いれば、より簡単で確実に、従来よりも製品歩留りを向上させることができ、また、製造コストを低減することができる。
【0036】
ただし、残りの原料結晶棒の重量が軽く、例えばコーン部とテール部の重量にも満たないような、明らかに最初に製造した単結晶の直径と同直径では最低歩留りに達しない場合には、最初に製造した製品の直径より小さい直径を仮に単結晶の仮の最大直径と決めて、その直径から上記計算処理、上記判定処理を開始することができる。
【0037】
また、製造可能な単結晶の直径としては、8インチ(直径200mm)、6インチ(直径150mm)、5インチ(直径125mm)、4インチ(直径100mm)、3インチ(直径75mm)、60mm、2インチ(直径50mm)等を選択できるが、製造する製品直径はこの限りではない。
【0038】
このように、予め定めた判定基準を用いて、本発明の単結晶の製造方法を
図1のフローに従ってあらためて説明する。実際にFZ法による単結晶の製造を行う。そして、停電、地震等の理由で成長途中で成長を停止した場合に(
図1のB)、残りのシリコン原料結晶棒の重量を測定する測定工程を行う(
図1のC)。
【0039】
次に、単結晶直胴部の理論歩留りを測定した重量から計算し、結晶成長途中で成長を停止する前の最初に製造した単結晶の直径以下で、予め定めた基準歩留りを満たす、残りの原料結晶棒を用いて再び製造できる単結晶の最大直径を決定する(
図1のD、E、F)、又は、予め定めた基準歩留りを満たさない場合は、前記残りの原料結晶棒では単結晶の製造をしないことを決定する(
図1のD、E、H、I)判定工程を行う。
【0040】
判定工程では、例えば、上記のように、まず、仮に決めた直径を単結晶の仮の最大直径として、その直径の理論歩留りを計算する計算処理を行う(
図1のD)。そして、その直径の予め定めた最低歩留りと比較して(
図1のE)、最低歩留り以上の場合は、その直径を再び製造できる単結晶の最大直径とし(
図1のF)、最低歩留りより小さい場合には、その直径より1サイズ小さい直径を仮の最大直径に設定し直す判定処理を行い(
図1のH)、再び理論歩留りを計算して上記と同様の比較を行う。このように計算処理と判定処理を繰り返して、製造可能な単結晶の直径の最低直径でも最低歩留りに達しない場合には、残りの原料結晶棒を用いた単結晶の製造は行わないと決定することができる(
図1のI)。
【0041】
判定工程において、再び製造できる単結晶の最大直径を決定した場合には、残りの原料結晶棒を用いて、決定した再び製造できる単結晶の最大直径で単結晶を製造する再製造工程を行う(
図1のG)。
【0042】
残りの原料結晶棒を用いて単結晶の再製造工程を行う方法は、一般的なFZ法による単結晶の製造方法を用いることができる。
【0043】
FZ法では、単結晶棒を所望の直径まで拡げながら成長させるコーン工程、コーン形成後、単結晶棒を一定直径に制御して成長させる直胴工程を経て、単結晶製造が行われる。再製造工程では、コーン工程において、単結晶の直径を、上記判定工程において決定した再び製造できる単結晶の最大直径まで拡げ、この直径の単結晶を成長させる。
【実施例】
【0044】
以下、本発明の実施例及び比較例を示して本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0045】
(実施例)
判定基準を、単結晶の理論歩留りが、以下の直径毎に定めた最低歩留り以上であるか、直径毎に定めた最低歩留りより小さいかとして、FZ法による8インチ(200mm)の直径の単結晶の製造を行なった。成長途中で成長を停止した場合に、
図1のようなフローで、残りの原料結晶棒を用いて、基準歩留りとして以下の直径毎に定めた最低歩留りを満たす最大直径の単結晶の再製造を行った。また、実施例の判定工程において、単結晶の製造をしないと決定することはなかった。
<判定基準>
直径 最低歩留り
8インチ 40%
6インチ 40%
4インチ 40%
3インチ 40%
60mm 40%
2インチ 40%
【0046】
合計30回の成長途中で成長を停止した場合について、
図1のようなフローで単結晶の再製造を行った。その結果、成長途中で成長を停止した30本の製品歩留りは後述する比較例に比べて10%向上した。
【0047】
(比較例)
成長途中で成長を停止した場合に、従来の
図2のようなフローで残りの原料結晶棒を用いて単結晶の再製造を行った。その結果、成長途中で成長を停止した30本の製品歩留りは実施例に比べて10%低かった。
【0048】
このように、実施例は比較例よりも製品歩留りが高く、本発明の単結晶の製造方法を用いることで、結晶成長途中で成長を停止し、FZ法による単結晶の製造を終了した場合に、残りの原料結晶棒を有効に利用することができ、従来よりも製品歩留りを向上させることができた。また、残りの原料結晶棒から出来るだけ大きな重量の単結晶を製造することで、製造コストを低減することができた。
【0049】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は、例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
【符号の説明】
【0050】
1…シリコン原料結晶棒、 2…シリコン単結晶、
3…上軸、 4…上部保持治具、
5…下軸、 6…下部保持治具、
7…誘導加熱コイル、 8…種結晶、 9…絞り部、 10…浮遊帯域、
20…チャンバー、 30…FZ単結晶製造装置。