(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-20
(45)【発行日】2022-01-17
(54)【発明の名称】無線通信方法
(51)【国際特許分類】
H04W 74/04 20090101AFI20220107BHJP
H04W 56/00 20090101ALI20220107BHJP
【FI】
H04W74/04
H04W56/00 130
(21)【出願番号】P 2017068654
(22)【出願日】2017-03-30
【審査請求日】2020-02-25
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構、戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)「次世代農林水産業創造技術」委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】301022471
【氏名又は名称】国立研究開発法人情報通信研究機構
(73)【特許権者】
【識別番号】501203344
【氏名又は名称】国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構
(74)【代理人】
【識別番号】100120868
【氏名又は名称】安彦 元
(72)【発明者】
【氏名】児島 史秀
(72)【発明者】
【氏名】中矢 哲郎
(72)【発明者】
【氏名】浪平 篤
(72)【発明者】
【氏名】樽屋 啓之
【審査官】永井 啓司
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2010/0110930(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 7/24- 7/26
H04W 4/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
収集制御局を根として2以上に亘り配置されたノード間のデータの送受信を行うツリー型ネットワークにおける無線通信方法において、
受信側の上記収集制御局では、上記各ノードから上記収集制御局への上りデータ通信時に、周期的な同期信号を発信すると共にその直後に続く周期的な待ち受け用の通信期間を設けると共に、上記各ノードと上りデータ通信するためのゲートウェイ機器を省略し、
送信側の上記各ノードによる上りデータの通信方式に応じて、上記収集制御局の待ち受け用の通信期間及び/又は上記各ノードのデータ送信用の通信期間を調整
し、
予め取得した上記データ送信用の通信期間に、上記待ち受け用の通信期間を合わせること
を特徴とする無線通信方法。
【請求項2】
上記データ送信用の通信期間に関する情報を含む情報通知信号を上記ノードから連続的に発信し、
上記待ち受け用の通信期間を介して上記情報通知信号を受信した上記収集制御局により上記データ送信用の通信期間に関する情報を取得し、その取得した上記データ送信用の通信期間に上記待ち受け用の通信期間を合わせること
を特徴とする請求項
1記載の無線通信方法。
【請求項3】
上記送信側の上記ノードにおいて上記収集制御局から発信される同期信号を受信するための受信窓期間を設け、当該受信窓期間を介して上記同期信号を受信した場合には、上記同期信号の直後に続く待ち受け用の通信期間に、上記データ送信用の通信期間を合わせること
を特徴とする請求項1
又は2記載の無線通信方法。
【請求項4】
収集制御局を根として2以上に亘り配置されたノード間のデータの送受信を行うツリー型ネットワークにおける無線通信方法において、
受信側の上記収集制御局では、上記各ノードから上記収集制御局への上りデータ通信時に、周期的な同期信号を発信すると共にその直後に続く周期的な待ち受け用の通信期間を設けると共に、上記各ノードと上りデータ通信するためのゲートウェイ機器を省略し、
送信側の上記各ノードによる上りデータの通信方式に応じて、上記収集制御局の待ち受け用の通信期間及び/又は上記各ノードのデータ送信用の通信期間を調整し、
予め取得した上記データ送信用の通信期間に、上記待ち受け用の通信期間を合わせる第1方式と、
上記データ送信用の通信期間に関する情報を含む情報通知信号を上記ノードから連続的に発信し、上記待ち受け用の通信期間を介して上記情報通知信号を受信した上記収集制御局により上記データ送信用の通信期間に関する情報を取得し、その取得した上記データ送信用の通信期間に上記待ち受け用の通信期間を合わせる第2方式と、
上記送信側の上記ノードにおいて上記収集制御局から発信される同期信号を受信するための受信窓期間を設け、当該受信窓期間を介して上記同期信号を受信した場合には、上記同期信号の直後に続く待ち受け用の通信期間に、上記データ送信用の通信期間を合わせる第3方式とを予め用意し、
上りデータ通信を行う上で上記ノードが採用する上記第1方式~上記第3方式の何れかに基づいて、
前記収集制御局においてデータを受信すること
を特徴とす
る無線通信方法。
【請求項5】
2以上に亘り配置されたノード間のデータの送受信を行うツリー型ネットワークにおける無線通信方法において、
受信側のノードでは、送信側のノードから当該受信側のノードへの上りデータ通信時に、周期的な同期信号を発信すると共にその直後に続く周期的な待ち受け用の通信期間を設けると共に、上記各ノードと上りデータ通信するためのゲートウェイ機器を省略し、
上記送信側のノードによる上りデータの通信方式に応じて、上記受信側のノードの待ち受け用の通信期間及び/又は上記送信側のノードのデータ送信用の通信期間を調整
し、
予め取得した上記データ送信用の通信期間に、上記待ち受け用の通信期間を合わせること
を特徴とする無線通信方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、収集制御局を根として2以上に亘り配置されたノード間のデータの送受信を行うツリー型ネットワークにおける無線通信方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、ワイヤレスネットワークにおいて、小型で安価であり、かつ低出力のデジタル無線通信を行うことのできる、IEEE802.15.4の規格に準拠する通信デバイスが用いられている。IEEE802.15.4の規格に準拠するネットワークでは、
図6に示すように、収集制御局であるCS(Collection station)71と、1つ以上のノード72-1~72-4とにより構成されたツリー型のトポロジが採用されている。 ツリー型トポロジでは、より下位のノード72が、より上位のノード72やCS71に向けて、必要に応じてデータを伝送することが行われている(例えば、特許文献1~3参照。)。
【0003】
このようなツリー型のトポロジでは、
図6に示すように、CS71に対してノード72を無線リンク73を介して接続される場合が一般的である。
【0004】
図7は、下位のノード72-3、72-4からのデータをCS71へ送信する場合におけるタイムチャートの例を示している。CS71並びに各ノード72は、それぞれ基本間隔(間欠待受周期)T内においてアクティブ期間(通信期間)T1と、スリープ期間T2とが割り当てられている。通信期間T1において無線通信を行うことが可能となり、スリープ期間T2においては受信側がスリープ状態に移行することで互いに無線通信を行うことができなくなる。あえて基本間隔T内においてスリープ期間T2を設けることにより消費電力を節減することができ、ひいてはシステム全体の使用電力を抑えること可能となる。
【0005】
ノード72-3からCS71に向けてデータを送信する場合には、ノード72-3からノード72-1を中継させてCS71の経路となる。かかる場合には、ノード72-3とこれよりも上位にあるノード72-1との間では、上位のノード72-1がマスター、下位のノード72-3がスレーブの関係となる。同様にノード72-1とCS71との間では、上位のノードとしてのCS71がマスター、下位のノード72-1がスレーブの関係となる。このようなマスターとスレーブとの関係においてより上位のマスターが基本間隔Tにおける通信期間T1のタイミングを決定し、より下位のスレーブがこのマスター側において決定された通信期間T1のタイミングに合わせてデータを送信することとなる。
【0006】
このような規則の下で、
図7において先ずノード72-3は、タイミングt91において生成したデータD81を、タイミングt92において開始するマスターとしてのノード72-1の通信期間T1に合わせて送信する。このデータD81を受信したノード72-1は、タイミングt93において開始するマスターとしてのCS71の通信期間T1に合わせて当該データD81を送信する。これによりCS71は、このデータD81を自ら設定した通信期間T1内において受信することが可能となる。
【0007】
同様に、ノード72-4からCS71に向けてデータを送信する場合には、ノード72-4からノード72-1を中継させてCS71の経路となる。ノード72-4は、タイミングt94において生成したデータD82を、タイミングt95において開始するマスターとしてのノード72-1の通信期間T1に合わせて送信する。このデータD82を受信したノード72-1は、タイミングt96において開始するマスターとしてのCS71の通信期間T1に合わせて当該データD82を送信する。これによりCS71は、このデータD82を自ら設定した通信期間T1内において受信することが可能となる。
【0008】
CS71は、上述した無線通信の処理動作方法に基づいて、ツリー型ネットワークにおける各ノード72からのデータを全て収集することが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】特開2015-198333号公報
【文献】特開2014-23085号公報
【文献】特開2014-103580号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ところで、上述した従来のツリー型トポロジでは、ノード72がセンサ等のように各種データをセンシングし、これをCS71において収集する場合には、特に一刻一秒を争う緊急性の高いデータではない場合が殆どであるため、上述したようにより上位のノード72やCS71によって定義される周期的な待ち受け用の通信期間T1に合わせてデータを送信することで特段問題が生じることは無い。
【0011】
一方、ノード72が例えばアクチュエータとしての役割を担う場合、即ちバルブを停止させる制御を行ったり、ガス管を閉める制御を行うためのいわゆる制御系が加わるものである場合には、CS71からかかる制御系のノード72に対してこれを制御するための制御系データを下りデータ通信する場合がある。この制御系のデータD83は、時には緊急でバルブを停止したり、緊急でガス管を止める制御が求められる場合もあり、いわゆる緊急性を要するデータD83をノード72に送信しなければならない場合もある。
【0012】
即ち、ノード72からCS71への上りデータ通信、並びにCS71からノード72への下りデータ通信の双方向の通信が行われる上で、CS71によるデータ収集と制御は、そもそも期待される伝送品質が異なる。
【0013】
このような互いに期待される伝送品質が異なる上りデータ通信及び下りデータ通信において、各ノード72-1~72-4における無線通信方式や通信規格が互いに異なる場合が多く、これに応じて無線リンク73-1~73-4も同様に無線通信方式や通信規格が互いに相違する場合が多い。このためCS71は、これら通信規格が異なる可能性がある無線リンク73-1~73-4を介して無線通信を行うために、ゲートウェイ機器74を設けるのが一般的であった。即ち通信規格が異なる可能性がある無線リンク73-1~73-4であっても、このゲートウェイ機器74を通じて各種コンバートを行うことで一台のCS71との間で所望の通信を行うことが可能となる。
【0014】
しかしながら、無線リンク73-1~73-4の各通信規格に応じてそれぞれゲートウェイ機器74を準備しなければならないのは、システムの設置容易性を著しく損なうものとなり、システム全体のコスト低減も図ることができず、ひいてはシステムを社会へ広く普及させる上での阻害要因にもなってしまう。
【0015】
そこで本発明は、上述した問題点に鑑みて案出されたものであり、その目的とするところは、収集制御局を根として2以上に亘り配置されたノード間のデータの送受信を行うツリー型ネットワークにおいて、ノードにおいて期待される通信品質が多岐に渡るため、通信規格が多様なものであっても収集制御局側にゲートウェイ機器を設置することなく無線リンクを確立することが可能な無線通信方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明者らは、上述した問題点を解決するために、収集制御局を根として2以上に亘り配置されたノード間のデータの送受信を行う際に、受信側の上記収集制御局では、上記各ノードから上記収集制御局への上りデータ通信時に、周期的な同期信号を発信すると共にその直後に続く周期的な待ち受け用の通信期間を設けると共に、上記各ノードと上りデータ通信するためのゲートウェイ機器を省略し、送信側の上記各ノードによる上りデータの通信方式に応じて、上記収集制御局の待ち受け用の通信期間及び/又は上記各ノードのデータ送信用の通信期間を調整し、予め取得した上記データ送信用の通信期間に、上記待ち受け用の通信期間を合わせることが可能な無線通信方法を発明した。
【0017】
請求項1に記載の無線通信方法は、収集制御局を根として2以上に亘り配置されたノード間のデータの送受信を行うツリー型ネットワークにおける無線通信方法において、受信側の上記収集制御局では、上記各ノードから上記収集制御局への上りデータ通信時に、周期的な同期信号を発信すると共にその直後に続く周期的な待ち受け用の通信期間を設けると共に、上記各ノードと上りデータ通信するためのゲートウェイ機器を省略し、送信側の上記各ノードによる上りデータの通信方式に応じて、上記収集制御局の待ち受け用の通信期間及び/又は上記各ノードのデータ送信用の通信期間を調整し、予め取得した上記データ送信用の通信期間に、上記待ち受け用の通信期間を合わせることを特徴とする。
【0019】
請求項2記載の無線通信方法は、請求項1記載の発明において、上記データ送信用の通信期間に関する情報を含む情報通知信号を上記ノードから連続的に発信し、上記待ち受け用の通信期間を介して上記情報通知信号を受信した上記収集制御局により上記データ送信用の通信期間に関する情報を取得し、その取得した上記データ送信用の通信期間に上記待ち受け用の通信期間を合わせることを特徴とする。
【0020】
請求項3記載の無線通信方法は、請求項1又は2記載の発明において、上記送信側の上記ノードにおいて上記収集制御局から発信される同期信号を受信するための受信窓期間を設け、当該受信窓期間を介して上記同期信号を受信した場合には、上記同期信号の直後に続く待ち受け用の通信期間に、上記データ送信用の通信期間を合わせることを特徴とする。
【0021】
請求項4記載の無線通信方法は、収集制御局を根として2以上に亘り配置されたノード間のデータの送受信を行うツリー型ネットワークにおける無線通信方法において、受信側の上記収集制御局では、上記各ノードから上記収集制御局への上りデータ通信時に、周期的な同期信号を発信すると共にその直後に続く周期的な待ち受け用の通信期間を設けると共に、上記各ノードと上りデータ通信するためのゲートウェイ機器を省略し、送信側の上記各ノードによる上りデータの通信方式に応じて、上記収集制御局の待ち受け用の通信期間及び/又は上記各ノードのデータ送信用の通信期間を調整し、予め取得した上記データ送信用の通信期間に、上記待ち受け用の通信期間を合わせる第1方式と、上記データ送信用の通信期間に関する情報を含む情報通知信号を上記ノードから連続的に発信し、上記待ち受け用の通信期間を介して上記情報通知信号を受信した上記収集制御局により上記データ送信用の通信期間に関する情報を取得し、その取得した上記データ送信用の通信期間に上記待ち受け用の通信期間を合わせる第2方式と、上記送信側の上記ノードにおいて上記収集制御局から発信される同期信号を受信するための受信窓期間を設け、当該受信窓期間を介して上記同期信号を受信した場合には、上記同期信号の直後に続く待ち受け用の通信期間に、上記データ送信用の通信期間を合わせる第3方式とを予め用意し、上りデータ通信を行う上で上記ノードが採用する上記第1方式~上記第3方式の何れかに基づいて、前記収集制御局においてデータを受信することを特徴とする。
【0022】
請求項5記載の無線通信方法は、2以上に亘り配置されたノード間のデータの送受信を行うツリー型ネットワークにおける無線通信方法において、受信側のノードでは、送信側のノードから当該受信側のノードへの上りデータ通信時に、周期的な同期信号を発信すると共にその直後に続く周期的な待ち受け用の通信期間を設けると共に、上記各ノードと上りデータ通信するためのゲートウェイ機器を省略し、上記送信側のノードによる上りデータの通信方式に応じて、上記受信側のノードの待ち受け用の通信期間及び/又は上記送信側のノードのデータ送信用の通信期間を調整し、予め取得した上記データ送信用の通信期間に、上記待ち受け用の通信期間を合わせることを特徴とする。
【発明の効果】
【0023】
上述した構成からなる本発明によれば、何れの通信方式を採用する場合においても、収集制御局は、周期的な同期信号を発信すると共にその直後に続く周期的な待ち受け用の通信期間を設ける動作を共通して行う。逆にこの共通して行うこの収集制御局の動作に対して、ノードがいかなる方式を採用するものであっても、自在に対応することが可能となる。ノードが仮に第1方式を採用するものであれば、収集制御局とノードとの間で互いに待ち受け用の通信期間とデータ送信用の通信期間とが時間的に重複するように予め調整しておくことで、特に収集制御局側において特別な制御を行うことなく、データを受信することができる。ノードが仮に第2方式を採用するものであれば、受信した情報通知信号に含まれるデータ送信用の通信期間に関する情報に基づいて待ち受け用の通信期間を設定することにより、データを受信することができる。更にノードが仮に第3方式を採用するものであれば、収集制御局から発信される同期信号をノードが読み取って自動的にデータ送信用の通信期間を待ち受け用の通信期間に合わせてくれるため、特に収集制御局側において特別な制御を行うことなく、データを受信することができる。
【0024】
上りデータ通信を行う上でノードが採用する第1方式~第3方式の何れかに基づいて、収集制御局においてデータを受信することが可能となる。換言すれば収集制御局側は、ノードが第1方式~第3方式の何れを採用するものであっても、これに対して自在に合わせてデータを受信することが可能となる。
【0025】
特にノードは、上述したように制御系の機器に接続されているものもあれば、センサ機器に接続されている場合もあり、無線通信方式や通信規格が互いに異なる場合も多い。このためノード間において通信方式が必ずしも統一されているとは限らず、ある一のノードは第1方式を採用するものもあれば、他のノードは第3方式を採用する場合もある。このようにノード間において採用する通信方式が第1方式~第3方式で統一されていない場合においても、本発明によればこれに対して自在に合わせて収集制御局側にてデータを受信することが可能となる。このため、ゲートウェイ機器の機能を盛り込んだシステム構成とすることができることから、収集制御局においてゲートウェイ機器を接続することを省略することができる。このため本発明によれば、システムを構築する上で、ノードがそれぞれ採用する無線通信方式や通信規格に応じたゲートウェイ機器をそれぞれ設置する必要がなくなることで、システムの設置容易性を向上させることができ、システム全体のコスト低減も図ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】本発明が適用される無線通信システムの例を示す模式図である。
【
図2】実際にノードに水位センサや電動バルブを接続した例を示す図である。
【
図3】通信期間の調整を図るための第1方式について説明するための図である。
【
図4】通信期間の調整を図るための第2方式について説明するための図である。
【
図5】通信期間の調整を図るための第3方式について説明するための図である。
【
図6】IEEE802.15.4の規格に準拠するネットワークの例を示す図である。
【
図7】従来技術の問題点について説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
第1実施形態
以下、本発明の第1実施形態としての無線通信方法について詳細に説明する。
図1は、本発明が適用される無線通信システム1の例を示す模式図である。無線通信システム1は、無線通信端末として、収集制御局(Collection Station:以下CSという。)2を根とした2以上のノード3-1、3-2、3-3とを備え、いわゆるツリー型のトポロジが採用されている。この無線通信システム1では、より下位のノード3が、より上位のノード3やCS2に向けて上りデータ通信を行う。また無線通信システム1では、より上位のノード3やCS2が、より下位のノード3に向けて下りデータ通信する。
【0028】
CS2は、最上位のマスターデバイスであり、各ノード3-1~3-3から上りデータ通信によりワイヤレス送信されてくるデータを収集する。またCS2は、この無線通信システム1全体を制御するための中央制御部としての役割も担い、ある特定のノード3に対して制御系のデータを下りデータ通信する。なお、このCS2には、いわゆるゲートウェイ機器が一切接続されてなく、或いはこのゲートウェイ機器の機能が内部に一切実装されていないことが前提である。
【0029】
ノード3は、データの発信や中継等を始めとしたデータの送受信を行うことが可能なデバイスの総称であり、例えばIEEE802.15.4の規格に準拠する通信デバイスである。ノード3は、所定のデータをセンシングしてこれを無線により送信するセンサとして具現化されるものもあれば、例えば携帯電話、スマートフォン、タブレット型端末、ウェアラブル端末、ノート型のパーソナルコンピュータ(PC)等のような無線通信が可能な端末装置として具現化されるものであってもよい。またこのノード3はアクチュエータのような制御系に接続されるものであってもよいし、各種センサに接続されるものであってもよい。
【0030】
図2の例では、実際にノード3-1に水位センサ31を接続し、ノード3-2に電動バルブ32を接続した例を示している。ちなみに、この
図2の例では、CS2に対してプログラマブルロジックコントローラ(PLC)33が接続されてシステム全体の制御を統括させてもよい。なお、CS2としての役割を担うべくこのようなPLC33が接続されていてもよいが、CS2側にPLC33の機能が実装されることで、CS2自身がPLC33として動作するものであってもよい。
【0031】
またCS2は、他のネットワークにおけるCS2´との間で互いに無線通信を行うようにしてもよい。このCS2´にも同様にPLC33´が接続され、このPLC33´は、電話通信網等を始めとした公衆通信網36に接続されているが、CS2も同様に公衆通信網36に接続されていてもよい。
【0032】
またノード3-2に接続される制御系としての電動バルブ32を制御する代替として、例えばバルブを停止する制御を行ったり、ロボットの制御を行ったり、ガスを停止するための制御を行うことを可能とするデバイスとして具現化するようにしてもよい。ノード3が制御系を含むアクチュエータ等として具現化されるものであれば、CS2から他のノード3を介して下りデータ通信されてくる制御用のデータに基づき、各種制御動作を実行していくこととなる。
【0033】
本実施の形態においては、
図1に示す無線通信システム1に示すように、CS2の下に4つのノード3-1、3-2、3-3が配置されている場合を例にとり説明をするが、これに限定されるものではない。即ち、CS2の下位リンクに配置されるノード3は、CS2にデータを収集させるものであれば、いかなる枝分かれのパターンで構成されるツリー構造とされていてもよく、また2以上のいかなるノード数で構成されていてもよい。またノード3-1~3-3の更なる下位リンクにおいて更にノード3が配置されるものであってもよい。
【0034】
次に、本発明を適用した無線通信システム1の処理動作方法について説明をする。この無線通信システム1における送信側の各ノード3による上りデータの通信方式に応じて、CS2及び/または各ノード3は、通信期間の調整を行う。かかる通信期間の調整を図る上では、以下に説明する第1方式、第2方式、第3方式の何れかに基づいて行う。
【0035】
第1方式では、
図3に示すように、各ノード3からCS2に対して上りデータ通信を行う過程で、CS2は、周期的な同期信号S1を発信すると共にその直後に続く周期的な待ち受け用の通信期間S2を設ける。CS2においては、この通信期間S2のみアクティブ期間となるが、これ以外の非アクティブ期間は、スリープ状態に移行することで、デバイス全体の消費電力を抑える構成としている。
【0036】
データ送信側であるノード3は、
図3に示すように、待ち受け用の通信期間S3が周期的に設けられている。この待ち受け用の通信期間S3は、ノード3内において予め決定した基本時間間隔毎に周期的に設けるようにしてもよい。実際に送信すべきデータがタイミングt1において発生した場合には、データ送信用の通信期間S4を介してこれをCS2に対して送信する。このデータ送信用の通信期間S4は、待ち受け用の通信期間S3の直後となるように設定される場合を例にとり説明をするが、これに限定されるものではなく、ノード3内において自由に設定されていてもよい。
【0037】
タイミングt1において送信すべきデータが発生した場合、このタイミングt1が含まれる基本時間間隔が終了した次の待ち受け用の通信期間S3の直後に続くデータ送信用の通信期間S4において当該データがCS2に向けて送信されることとなる。このとき、CS2側は、データ送信用の通信期間S4がどのタイミングで生じえるかを予め取得しておく。仮にデータ送信用の通信期間S4が、基本時間間隔が終了した次の待ち受け用の通信期間S3の直後に設定されるのであれば、その旨をCS2自身が予め認識しておく。CS2は、本システムの動作前においてその旨をノード3から予め取得するようにしてもよい。このとき、CS2は、データ送信用の通信期間S4そのものをノード3から予め取得するようにしてもよいし、これ以外には待ち受け用の通信期間S3や基本時間間隔等の情報を予め取得した上でこのデータ送信用の通信期間S4をそこから推定するようにしてもよい。
【0038】
CS2は、この取得したデータ送信用の通信期間S4に合わせて、自らの待ち受け用の通信期間S2を設けておく。これにより、データ送信用の通信期間S4と、待ち受け用の通信期間S2との間で重複時間が発生することになる。その結果、CS2は、データ送信用の通信期間S4からデータを待ち受け用の通信期間S2において受信することが可能となる。なお、このCS2は、待ち受け用の通信期間S2を、この合わせるべき通信期間S4に応じて拡大、延長するようにしてもよい。待ち受け用の通信期間S2とデータ送信用の通信期間S4とは完全に重複していることは必須ではなく、少なくとも一部が時間的に合致するものであればよい。
【0039】
なお、上述した第1方式の説明では、あくまでデータ送信用の通信期間S4をCS2側が予め取得した上で、これに待ち受け用の通信期間S2を合わせる場合を例にとり説明をしたが、これに限定されるものではない。ノード3側がCSから待ち受け用の通信期間S2を取得し、これにデータ送信用の通信期間S4を合わせるようにしてもよい。
【0040】
何れの場合においても、CS2とノード3との間で互いに、待ち受け用の通信期間S2とデータ送信用の通信期間S4とが時間的に重複するように予め調整されていれば、いかなる方法に基づくものであってもよい。
【0041】
第2方式は、CS2側のみが自らの待ち受け用の通信期間S2の調整義務を担う方式である。
図4に示すように、CS2は、周期的な同期信号S1を発信すると共にその直後に続く周期的な待ち受け用の通信期間S2を設ける点は、第1方式と同様である。
【0042】
データ送信側であるノード3は、
図4に示すように、CS2に対して時点t1において送信すべきデータが発生した場合、情報通知信号S5を連続的に発信する。各情報通知信号S5には、その後に続くデータ送信用の通信期間S4に関する情報が含まれている。この通信期間S4に関する情報は、この情報通知信号S5の発信時又は受信時から何秒後に通信期間S4が来るかに関する情報を含めるようにしてもよい。例えば、先頭に位置する情報通知信号S5には、1秒後に通信期間S4が来る旨の情報が含まれており、その次に続く情報通知信号S5には0.9秒後に通信期間S4が来る旨の情報が含まれており、更にその次に続く情報通知信号S5には0.8秒後に通信期間S4が来る旨の情報が含まれている。情報通知信号は時系列的に後になるにつれて、データ送信用の通信期間S4との間隔が短くなるが、かかる情報が各情報通知信号S5に含まれることになる。
【0043】
ノード3は、待ち受け用の通信期間S2を介してこの情報通知信号S5を受信する。通信期間S2は周期的に設定されているため、時間帯によっては通信期間S2が設定されていなくスリープ状態もあり得る。しかしながらノード3において、少なくとも1回の発信時刻が通信期間S2と合致するように、情報通知信号S5を複数回に亘り連続的に送信する。これにより、CS2は、ノード3からの情報通知信号S5を通信期間2を介して受信することが可能となる。
【0044】
情報通知信号S5を受信したCS2は、それに含まれている情報を解読する。その結果、CS2は、情報通知信号S5の発信時又は受信時から何秒後に通信期間S4が来るかを判別することが可能となる。そして、判別したデータ送信用の通信期間S4と少なくとも一部が時間的に重複するように、待ち受け用の通信期間S2を新たに設定する。仮にこの情報通知信号S5において受信時から0.8秒後に通信期間S4が来る旨を判別した場合、これに合うように、受信時から0.8秒後に待ち受け用の通信期間S2を設定する。その結果、CS2は、データ送信用の通信期間S4からデータを待ち受け用の通信期間S2において受信することが可能となる。なお、このCS2は、待ち受け用の通信期間S2を、この合わせるべき通信期間S4に応じて拡大、延長するようにしてもよい。
【0045】
第3方式は、ノード3側のみが自らのデータ送信用の通信期間S4の調整義務を担う方式である。
図5に示すように、CS2は、周期的な同期信号S1を発信すると共にその直後に続く周期的な待ち受け用の通信期間S2を設ける点は、第1、第2方式と同様である。
【0046】
データ送信側であるノード3は、
図5に示すように、受信窓期間S6を設けておく。この受信窓期間S6は、CS2から発信される同期信号S1を受信するための期間である。ノード3は、CS2に対して送信すべきデータが時点t1において発生した後、この受信窓期間S6を設定することにより同期信号S1の検知を開始する。
【0047】
CS2から発信される同期信号S1は周期的に発信されるものであることから、受信窓期間S6を設定して連続的に検知し続けることにより、必ずあるタイミングにおいて同期信号S1を受信することができる。この同期信号S1の直後に待ち受け用の通信期間S2が続くことから、ノード3は、この同期信号S1の受信直後に自らのデータ送信用の通信期間S4を設定する。これにより、CS2は、データ送信用の通信期間S4からデータを待ち受け用の通信期間S2において受信することが可能となる。なお、このCS2は、待ち受け用の通信期間S2を、この合わせるべき通信期間S4に応じて拡大、延長するようにしてもよい。
【0048】
ノード3が何れの方式を採用する場合においても、CS2は、周期的な同期信号S1を発信すると共にその直後に続く周期的な待ち受け用の通信期間S2を設ける動作を共通して行う。逆にこの共通して行うこのCS2の動作に対して、ノード3がいかなる方式を採用するものであっても、自在に対応することが可能となる。ノード3が仮に第1方式を採用するものであれば、CS2とノード3との間で互いに、待ち受け用の通信期間S2とデータ送信用の通信期間S4とが時間的に重複するように予め調整しておくことで、特にCS2側において特別な制御を行うことなく、データを受信することができる。ノード3が仮に第2方式を採用するものであれば、受信した情報通知信号S5に含まれるデータ送信用の通信期間S4に関する情報に基づいて待ち受け用の通信期間S2を設定することにより、データを受信することができる。更にノード3が仮に第3方式を採用するものであれば、CS2から発信される同期信号S1をノード3が読み取って自動的にデータ送信用の通信期間S4を待ち受け用の通信期間S2に合わせてくれるため、特にCS2側において特別な制御を行うことなく、データを受信することができる。
【0049】
上りデータ通信を行う上でノード3が採用する第1方式~第3方式の何れかに基づいて、CS2においてデータを受信することが可能となる。換言すればCS2側は、ノード3が第1方式~第3方式の何れを採用するものであっても、これに対して自在に合わせてデータを受信することが可能となる。
【0050】
特にノード3は、上述したように制御系の機器に接続されているものもあれば、センサ機器に接続されている場合もあり、無線通信方式や通信規格が互いに異なる場合も多い。このためノード3間において通信方式が必ずしも統一されているとは限らず、ある一のノード3は第1方式を採用するものもあれば、他のノード3は第3方式を採用する場合もある。即ち、ノードにおいて期待される通信品質が多岐に渡るため、通信規格が多様となる場合がある。このようにノード3間において採用する通信方式が第1方式~第3方式で統一されていない場合においても、本発明によればこれに対して自在に合わせてCS2側にてデータを受信することが可能となる。このため、ゲートウェイ機器の機能を盛り込んだシステム構成とすることができることから、CS2においてゲートウェイ機器を接続することを省略することができる。このため本発明によれば、システムを構築する上で、ノード3がそれぞれ採用する無線通信方式や通信規格に応じたゲートウェイ機器をそれぞれ設置する必要がなくなることで、システムの設置容易性を向上させることができ、システム全体のコスト低減も図ることが可能となる。
【0051】
なお、本発明は上述した実施の形態に限定されるものではない。例えば、CS2を根とした2以上のノード3-1~3-3が全て第1方式であれば、CS2とノード3-1~3-3との間で第1方式に基づいてデータを送受信する旨を決定し、以後は第1方式のみに基づいて上りデータ通信を行うようにしてもよい。CS2を根とした2以上のノード3-1~3-3が全て第2方式であれば、CS2とノード3-1~3-3との間で第2方式に基づいてデータを送受信する旨を決定し、以後は第2方式のみに基づいて上りデータ通信を行うようにしてもよい。CS2を根とした2以上のノード3-1~3-3が全て第3方式であれば、CS2とノード3-1~3-3との間で第3方式に基づいてデータを送受信する旨を決定し、以後は第3方式のみに基づいて上りデータ通信を行うようにしてもよい。
【0052】
CS2は、全てのノード3-1~3-3が第1方式~第3方式の何れで統一されているか否かを事前に判別するようにしてもよい。その結果、全てのノード3-1~3-3が第1方式~第3方式の何れであれば、ノード3とCS2間において、その統一されている方式に基づいて上りデータ通信を行うこととなる。
【0053】
また、上述したノード3は、CS2を含む概念とされていてもよい。即ち、各ノード3において行われる処理は、CS2において行われるものであってもよいし、CS2において行われる処理はノード3において行われるものであってもよい。また、CS2はいわゆるノード3に置き換えられるものであってもよい。
【0054】
また、上述した各処理は、CS2とノード3間との通信、及びノード3同士の通信において同様に適用可能であることは勿論である。
【0055】
更に上述した構成からなる本発明によれば、CS2を省略するようにしてもよく、2以上のノード3間の通信において適用するようにしてもよい。かかる場合には、CS2が、受信側のノードに代替され、ノード3が送信側のノードとなる。上述したCS2、ノード3における各処理は、そのまま受信側のノード、送信側のノードにおいて実行されることとなる。
【符号の説明】
【0056】
1 無線通信システム
2 CS
3 ノード
31 水位センサ
32 電動バルブ
33 PLC
36 公衆通信網