(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-20
(45)【発行日】2022-01-17
(54)【発明の名称】電波式発熱装置
(51)【国際特許分類】
H05B 6/70 20060101AFI20220107BHJP
H05B 6/80 20060101ALI20220107BHJP
H01Q 13/22 20060101ALI20220107BHJP
H01Q 17/00 20060101ALI20220107BHJP
H01Q 1/52 20060101ALI20220107BHJP
【FI】
H05B6/70 E
H05B6/80 Z
H01Q13/22
H01Q17/00
H01Q1/52
(21)【出願番号】P 2017113463
(22)【出願日】2017-06-08
【審査請求日】2020-06-04
(73)【特許権者】
【識別番号】304021277
【氏名又は名称】国立大学法人 名古屋工業大学
(73)【特許権者】
【識別番号】511083776
【氏名又は名称】ジーエネックス株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000229128
【氏名又は名称】ベルテクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001128
【氏名又は名称】特許業務法人ゆうあい特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 洋介
(72)【発明者】
【氏名】河辺 伸二
【審査官】土屋 正志
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-127796(JP,A)
【文献】特開2009-097160(JP,A)
【文献】特開2013-098106(JP,A)
【文献】特開2004-139863(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05B 6/70
H05B 6/80
H01Q 13/22
H01Q 17/00
H01Q 1/52
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電波を導く漏洩導波管(12)と、
前記漏洩導波管から放射された前記電波が入射することで温度上昇して放熱する放熱部材(13)と、を備え、
前記漏洩導波管(12)には、前記電波を前記放熱部材に放射する1個以上のスロット(121、122)が形成され、
前記1個以上のスロット(121)の少なくとも一部は、前記放熱部材(13)から離れて
おり、前記1個以上のスロットと前記放熱部材の間に設けられた空隙は前記放熱部材(13)に比べて比誘電率または比透磁率が安定していることを特徴とする電波式発熱装置。
【請求項2】
前記1個以上のスロット(121、122)から前記放熱部材(13)までの最短距離は、前記1個以上のスロット(121、122)から放射される電波の波長の0.4倍以上であることを特徴とする請求項1に記載の電波式発熱装置。
【請求項3】
前記1個以上のスロットの各々を対象スロットとしたとき、前記対象スロットのシールド効果は、当該電波式発熱装置から前記放熱部材(13)を廃して得られた物における前記対象スロットのシールド効果と、同等であることを特徴とする請求項1または2に記載の電波式発熱装置。
【請求項4】
前記1個以上のスロット(121、122)と前記放熱部材(13)の間の空隙および前記漏洩導波管(12)の内部空間には、空気が存在することを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1つに記載の電波式発熱装置。
【請求項5】
前記1個以上のスロットから前記放熱部材(13)を離すよう、前記漏洩導波管(12)または前記放熱部材(13)を支持する支持部材(14、15a、15b、16、17)を備えた事を特徴とする請求項1ないし4のいずれか1つに記載の電波式発熱装置。
【請求項6】
前記1個以上のスロットは複数個のスロット(121、122)であり、
前記複数個のスロット(121、122)は、前記漏洩導波管(12)における前記電波の伝搬方向に沿って並んで配置され、
前記複数個のスロットは、1個以上の第1種のスロット(121)と、1個以上の第2種のスロット(122)とを備え
、
前記1個以上の第2種のスロット(122)の各々は、前記1個以上の第1種のスロットのどれよりも、前記漏洩導波管(12)における短手方向の長さが大きく、前記短手方向は、前記伝搬方向にも鉛直方向にも直交する方向であり、
前記1個以上の第2種のスロット(122)は、前記漏洩導波管(12)において、前記1個以上の第1種のスロットよりも前記電波の伝搬方向の先側に配置されていることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1つに記載の電波式発熱装置。
【請求項7】
電波を導く漏洩導波管(12)と、
電波を吸収して発熱する放熱部材(13)と、
前記漏洩導波管(12)または前記放熱部材(
13)を支持するための支持部材(14、15a、15b、16、17)と、を備え
前記漏洩導波管(12)には、前記電波を放射する1個以上のスロット(121)が形成され、
前記支持部材(14、15a、15b、16、17)は、前記1個以上のスロット(121)の少なくとも一部が前記放熱部材(13)から離れて前記スロットから前記放熱部材(13)に電波が放射されるように、前記漏洩導波管(12)または前記放熱部材(13)を支持するための部材であ
り、
前記1個以上のスロットと前記放熱部材の間に設けられた空隙は前記放熱部材(13)に比べて比誘電率または比透磁率が安定していることを特徴とする電波式発熱装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電波式発熱装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、電波を導く漏洩導波管と、漏洩導波管から放射された電波が入射することで温度上昇して放熱する放熱部材と、を備えた電波式発熱装置が知られている。例えば、非特許文献1に記載の電波式発熱装置では、電波を放熱部材に放射するスロットが漏洩導波管に形成され、このスロットは、放熱部材に接触している。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【文献】伊藤洋介、河辺 伸二、大羽 慧、「準マイクロ波による融雪用発熱モルタルブロックの電波遮蔽材に関する研究」、日本建築学会構造系論文集、2017年1月31日、第82巻、731号、1-10ページ
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
発明者の検討によれば、スロットは、放熱部材に接触しているため、放熱部材の比誘電率または比透磁率もしくはそれらの両方がスロットによる電波放射の特性に大きな影響を与えてしまう。したがって、放熱部材が別の比誘電率の放熱部材に取り替えられたり、または別の比透磁率の放熱部材に取り替えられたり、あるいは別の比誘電率および別の比誘電率の放熱部材に取り替えられたり、もしくは外的要因(例えば被水)によって放熱部材の比誘電率または比透磁率あるいはその両方が変化した場合、スロットによる電波放射の特性が変動してしまう。
【0005】
上記点に鑑み、本開示は、電波式発熱装置において、放熱部材が別の比誘電率の放熱部材に取り替えられたり、または別の比透磁率の放熱部材に取り替えられたり、あるいは別の比誘電率および別の比誘電率の放熱部材に取り替えられたり、もしくは外的要因によって放熱部材の比誘電率または比透磁率あるいはその両方が変化したりした場合に、スロットによる電波放射の特性を従来よりも安定させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の第1の観点によれば、電波式発熱装置は、電波を導く漏洩導波管と、前記漏洩導波管から放射された前記電波が入射することで温度上昇して放熱する放熱部材と、を備える。前記漏洩導波管には、前記電波を前記放熱部材に放射する1個以上のスロットが形成される。前記1個以上のスロットの少なくとも一部は、前記放熱部材から離れている。
【0007】
このように、1個以上のスロットの少なくとも一部が放熱部材から離れている。したがって、放熱部材が別の比誘電率の放熱部材に取り替えられたり、または別の比透磁率の放熱部材に取り替えられたり、あるいは別の比誘電率および別の比誘電率の放熱部材に取り替えられたり、もしくは外的要因によって放熱部材の比誘電率または比透磁率あるいはその両方が変化したりしても、その変化がスロットの電波放射の特性に影響を及ぼし難い。したがって、スロットの電波放射の特性が従来よりも安定する。
【0008】
また、第2の観点によれば、前記1個以上のスロットから前記放熱部材までの最短距離は、前記1個以上のスロットから放射される電波の波長の0.4倍以上である。1個以上のスロットが放熱部材からこの程度離れていれば、1個以上のスロットの電波放射の特性の安定性が更に増す。
【0009】
また、第3の観点によれば、前記1個以上のスロットの各々を対象スロットとしたとき、前記対象スロットのシールド効果は、当該電波式発熱装置から前記放熱部材を廃して得られた物における前記対象スロットのシールド効果と、同等である。このように、各スロットにおいて放熱部材がある場合とない場合で電波シールド効果が同等なら、1個以上のスロットの電波放射の特性の安定性が更に増す。
【0010】
また、第4の観点によれば、前記1個以上のスロットと前記放熱部材の間の空隙および前記漏洩導波管(12)の内部空間には、空気が存在する。空気は、比誘電率と比透磁率が比較的安定的であるから、電波放射の特性の更なる安定化が実現される。
【0011】
また、第5の観点によれば、前記1個以上のスロットから前記放熱部材を離すよう、前記漏洩導波管または前記放熱部材を支持する支持部材を、電波式発熱装置が備える。このようにすることで、支持部材によって漏洩導波管または放熱部材を支持できると共に1個以上のスロットと圧熱体の距離を適切な位置に設定することができる。
【0012】
また、第6の観点によれば、前記1個以上のスロットは複数個のスロットである。前記複数個のスロットは、前記漏洩導波管における前記電波の伝搬方向に沿って並んで配置される。前記複数個のスロットは、1個以上の第1種のスロットと、1個以上の第2種のスロットとを備える。前記1個以上の第2種のスロットは、前記漏洩導波管において、前記1個以上の第1種のスロットよりも前記電波の伝搬方向の先側に配置されている。
【0013】
このようになっていることで、1個以上の第1種のスロットにおいて漏洩しなかった電波波の多くは、1個以上の第2種のスロットで漏洩される。したがって、漏洩導波管において発生する反射波、定在波の量が抑えられる。その結果、漏洩導波管におけるマイクロ波の電波方向におけるマイクロ波の漏洩量のばらつきが、抑えられる。
【0014】
また、第7の観点によれば、電波式発熱装置は、電波を導く漏洩導波管と、電波が入射することで温度上昇して放熱する放熱部材と、前記漏洩導波管または前記放熱部材を支持するための支持部材と、を備える。前記漏洩導波管には、前記電波を放射する1個以上のスロットが形成される。前記支持部材は、前記1個以上のスロットの少なくとも一部が前記放熱部材から離れて前記スロットから前記放熱部材に電波が放射されるように、前記漏洩導波管または前記放熱部材を支持するための部材である。
【0015】
このように、1個以上のスロットの少なくとも一部が放熱部材から離れるように、支持部材が漏洩導波管または放熱部材を支持され得る。したがって、放熱部材が別の比誘電率の放熱部材に取り替えられたり、または別の比透磁率の放熱部材に取り替えられたり、あるいは別の比誘電率および別の比誘電率の放熱部材に取り替えられたり、もしくは外的要因によって放熱部材の比誘電率または比透磁率あるいはその両方が変化したりしても、その変化がスロットの電波放射の特性に影響を及ぼし難い。したがって、スロットの電波放射の特性が従来よりも安定する。
【0016】
なお、本欄および特許請求の範囲における括弧内の符号は、特許請求の範囲に記載された用語と後述の実施形態に記載されて当該用語の例となる具体物等との対応関係を示すものである。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】第1実施形態に係る融雪装置1の全体構成図を示す斜視図である。
【
図2】融雪装置1から複数個の発熱ブロック13を取り除いた状態の斜視図である。
【
図4】漏洩導波管12および発熱ブロック13の断面図である。
【
図6】離間距離0mmの場合の発熱状態を示す図である。
【
図7】離間距離50mmの場合の発熱状態を示す図である。
【
図8】離間距離毎に水平距離に対する上昇温度の関係を示すグラフである。
【
図9】水平距離毎に離間距離に対する上昇温度の関係を示すグラフである。
【
図10】第2実施形態に係る融雪装置における、漏洩導波管12および発熱ブロック13の断面図である。
【
図11】第3実施形態に係る融雪装置における、漏洩導波管12および発熱ブロック13の断面図である。
【
図12】第4実施形態に係る融雪装置における、漏洩導波管12および発熱ブロック13の断面図である。
【
図13】第5実施形態における漏洩導波管12の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
(第1実施形態)
以下、第1実施形態について説明する。本実施形態にかかる電波式の融雪装置1は、道路の路面、個人宅の庭の地面等に設置され、電波を熱エネルギーに変換して融雪装置1の近傍の雪を溶かす装置である。融雪装置1は発熱装置に対応する。
【0019】
図1、
図2に示すように、融雪装置1は、1個の電波発振器11、1個の漏洩導波管12、および複数個の発熱ブロック13を有している。複数の発熱ブロック13の全体が、1つの放熱部材を構成する。
【0020】
電波発振器11は、所定の周波数の電波を生成して出力する装置である。所定の周波数としては、例えばマイクロ波帯の2.45GHzが採用されてもよいし、それ以外の電波帯域の周波数が採用されてもよい。
【0021】
漏洩導波管12は、電波発振器11が出力した電波を導く金属製(例えばステンレス製、鉄製、真鍮製など)の管である。電波発振器11が出力した電波は、漏洩導波管12の長手方向の一方の端部(すなわち始端部)から他方の端部(すなわち終端部)に向かって、漏洩導波管12の長手方向に沿って伝搬する。
【0022】
図2に示すように、漏洩導波管12の一方側の表面である上面には、漏洩導波管12によって囲まれる内部空間から漏洩導波管12の外部空間に貫通する貫通孔を囲む矩形枠形状の複数個のスロット121が、形成されている。以下、この上面をスロット形成面120という。
【0023】
複数個のスロット121は、漏洩導波管12の長手方向に沿って一列に並んで形成されている。各スロット121の長手方向は、漏洩導波管12の長手方向と直交する。
【0024】
各スロット121は、スロットアンテナとして機能する。すなわち、漏洩導波管12内をその長手方向に沿って伝搬する電波は、各スロット121から漏洩導波管12の外部に放射される。
【0025】
複数個の発熱ブロック13の各々は、板形状の部材であり、漏洩導波管12のスロット形成面120側において、漏洩導波管12の長手方向に沿って一列に並んで配置されている。複数個の発熱ブロック13の板面の一方側が、複数のスロット121のうちいずれか複数に対向している。各発熱ブロック13の比誘電率は、水の比誘電率とは異なる。または、各発熱ブロック13の比透磁率は、水の比透磁率とは異なる。あるいは、各発熱ブロック13の比誘電率と比透磁率の両方が、水の比誘電率および水の比透磁率とは異なる。
【0026】
なお、複数のスロット121の各々は、複数の発熱ブロック13のいずれかと、複数のスロット121の開口面に垂直な方向(すなわち鉛直方向)に重なっている。そして、各スロット121からは、漏洩導波管12を伝搬した後の電波が、当該スロット121に鉛直方向に重なっている発熱ブロック13に向けて放射される。したがって、複数のスロット121から放射された電波のほとんどは、複数の発熱ブロック13に入射する。
【0027】
漏洩導波管12の上述の内部空間には、空気が存在する。つまり、漏洩導波管12の上述の内部空間は、空気によって満たされている。
【0028】
複数の発熱ブロック13の各々は、
図3に示すように、基材131、電波吸収材132、および電波遮蔽材133を有した一体物である。したがって、各発熱ブロック13は、少なくとも電波吸収材132を有する一体物である。各発熱ブロック13に含まれる電波吸収材132以外の物質は、電波吸収材132と共に一体物を構成する。
【0029】
基材131は、電波吸収性能が電波吸収材132よりも小さい部材である。基材131は、スロット121から漏洩導波管12の外に放射された電波をほぼすべて透過する。基材は、例えば硬化させた普通ポルトランドセメントモルタルであってもよいし、他のモルタルであってもよいし、モルタル以外の部材(例えば、コンクリート、アスファルト、ガラス、樹脂板、布、紙等)であってもよい。
【0030】
電波吸収材132は、シート形状の部材である。電波吸収材132は、鉄の酸化化合物を含むため、基材131より遙かに電波吸収性能が高い。電波吸収材132は、スロット121から漏洩導波管12の外に放射された電波を吸収して発熱する。電波吸収材132は、例えば、粒度0.3mm以下の電気炉酸化スラグを骨材として製造されてもよい。電波吸収材132として、鉄の酸化化合物を含む電気炉酸化スラグやフェライト、カーボンなどを用いても良い。
【0031】
電波遮蔽材133は、シート形状の部材である。電波遮蔽材133は、スロット121から漏洩導波管12の外に放射された電波を反射する。電波遮蔽材133としては、例えば一部が欠損した溶接金網や金網、金属の短繊維など、金属繊維による材料、及び金属板が用いられてもよい。
【0032】
図3に示すように、基材131に電波吸収材132と電波遮蔽材133が埋め込まれている。したがって、基材131は、電波吸収材132および電波遮蔽材133を外部から保護する筐体として機能する。ただし、電波吸収材132および電波遮蔽材133は必ずしも基材131に全てが埋没している必要はなく、発熱ブロック13の漏洩導波管12側の面と直交する側面側に一部が露出していてもよい。
【0033】
また、電波吸収材132は、発熱ブロック13の鉛直方向中央よりも漏洩導波管12から遠い側に埋め込まれている。このようにすることで、電波吸収材132で発生した熱が発熱ブロック13の漏洩導波管12とは反対側の面に伝わり易くなる。
【0034】
また、電波遮蔽材133は、電波吸収材132に対して漏洩導波管12の反対側に、基材131の一部と共に、配置されている。基材131の大部分は、電波吸収材132と漏洩導波管12の間に配置されている。発熱ブロック13は、このような構造となっていることにより、電波が入射することで温度上昇して周囲に放熱する。
【0035】
電波発振器11が電波を出力すると、当該電波は漏洩導波管12内を漏洩導波管12の長手方向に沿って進むと共に、複数のスロット121から複数の発熱ブロック13に向かって放射される。発熱ブロック13に向かって放射された電波は、基材131を透過して、一部が電波吸収材132で吸収される。電波吸収材132で吸収されずに電波吸収材132を透過した電波は、電波遮蔽材133で反射された後、電波吸収材132で吸収される。
【0036】
電波吸収材132は、電波を吸収すると、吸収した電波のエネルギーを熱エネルギーに変換して発熱する。このようにして発生した熱は、熱伝導により電波吸収材132から基材131および電波遮蔽材133に伝達され、その結果、発熱ブロック13の表面全体の温度が上昇する。
【0037】
発熱ブロック13の上面における温度上昇量が、他の表面おける温度上昇量よりも大きい。これは、上述の通り、電波吸収材132が発熱ブロック13の鉛直方向中央よりも上方に位置しているからである。発熱ブロック13の上面の温度が上昇すると、当該上面に積もっている雪が溶ける。
【0038】
図4に、漏洩導波管12および発熱ブロック13を設置する方法について説明する。漏洩導波管12は、ベース部20の上面に載置される。ベース部20は、例えば土でもよいし、アスファルトでもよいし、コンクリート製のU形側溝に敷き詰められた川砂でもよい。
【0039】
また、漏洩導波管12のスロット形成面120における、漏洩導波管12の短手方向の両端部には、木製の棒形状の支持部材14の下端部が、漏洩導波管12の長手方向に沿って複数本、固定されている。なお、漏洩導波管12の短手方向は、漏洩導波管12の長手方向にも鉛直方向にも直交する方向である。
【0040】
これら支持部材14は、複数のスロット121の開口面に垂直な方向(すなわち鉛直方向)に伸びている。これら支持部材14の上端部には、発熱ブロック13の下端部が固定されている。各支持部材14は、木製すなわち非導電性の誘電体なので、漏洩導波管12から漏洩した電波を反射しにくい。また、支持部材14は、漏洩導波管12から漏洩した電波が支持部材14で反射されにくくするため、スロット形成面120上において、隣り合うスロット121への最短距離が最も遠くなる位置に配置されている。
【0041】
各支持部材14は、対応する発熱ブロック13を、漏洩導波管12のスロット121から遠ざかる方向へ付勢することで、対応する発熱ブロック13を支持している。すなわち、各支持部材14は、スロット121から電波が放射される方向に、対応する発熱ブロック13を付勢している。
【0042】
このとき、漏洩導波管12の短手方向における各発熱ブロック13の端部が、対応する支持部材14によって支持されるが、当該短手方向における各発熱ブロック13の中央部は、支持されない状態である。したがって、発熱ブロック13が自重で撓んでしまう恐れがある。本実施形態では、そのような恐れがあったとしても、敢えてスロット121が発熱ブロック13から離されている。スロット121が発熱ブロック13から離されていることの効果が重要だからである。
【0043】
このような複数の支持部材14により、漏洩導波管12のスロット形成面120のうち、スロット121が形成されて発熱ブロック13に対向しているスロット形成面120は、発熱ブロック13から離されている。したがって、スロット形成面120に形成されたすべてのスロット121が、発熱ブロック13から離されている。
【0044】
つまり、各スロット121と発熱ブロック13の間には空隙が設けられている。なお、漏洩導波管12のスロット形成面120以外の部分も、当然に、当該スロット形成面120と同じかそれ以上、発熱ブロック13から離れている。
【0045】
またこの場合、スロット形成面120と発熱ブロック13の間の空隙には空気と支持部材14が存在する。つまり、スロット形成面120と発熱ブロック13の間の空隙は、空気と複数個の支持部材14によって満たされている。また、各スロット121と発熱ブロック13の間の空隙には空気のみが存在する。つまり、各スロット121と発熱ブロック13の間の空隙は、空気によって満たされている。
【0046】
より具体的には、複数のスロット121の各々を対象スロット121とすると、対象スロット121から複数の発熱ブロック13までの最短距離は、対象スロット121から放出される電波の波長に0.4を乗じた値以上である。したがって、漏洩導波管12全体から発熱ブロック13までの最短距離も、スロット121から放出される電波の波長に0.4を乗じた値以上である。実用上、電波の波長に0.4を乗じた値以上でも顕著な効果を生じるが、0.5を乗じた値以上にすると、なお効果は高くなる。
【0047】
このようになっていることで、発熱ブロック13の比誘電率または比透磁率あるいはその両方が水の付着(すなわち被水)によって大きく変わっても、漏洩導波管12の放射特性に影響が殆ど出ない。また、空気は発熱ブロック13に比べて比誘電率と比透磁率が安定している。したがって、スロット121の近くに空気があったとしても、漏洩導波管12の放射特性に悪影響が及ぶ可能性が低い。また、スロット形成面120と発熱ブロック13の間に空隙が介在している場合、その空隙に電波計測装置を挿入して漏洩導波管12の放射特性をテストすることが容易である。
【0048】
以下、上記のような特徴を満たす複数種類の融雪装置1について発明者が発熱実験を行った結果を示す。
【0049】
以下に、実験で用いられた融雪装置1の詳細について説明する。電波発振器11はマグネトロンで、出力が1100W以上かつ1200W以下で、出力する電波の周波数は2.45GHzである。また、漏洩導波管12の長手方向の終端部が反射板で短絡されている。
【0050】
また、複数のスロット121の各々の幅は、一律に3mmである。また、複数のスロット121の各々の長さは、一律に30mmである。隣り合う2つのスロット121間の間隔は、一律に10mmである。漏洩導波管12は、ステンレス製の金属から成る。ここで、各スロット121の幅は、漏洩導波管12の長手方向に沿った、当該スロット121の幅である。各スロット121の長さは、漏洩導波管12の短手方向に沿った、当該スロット121の長さである。
【0051】
また、複数の発熱ブロック13の各々は、縦300mm×横300m×厚さ45mmの正方形板である。また、電波吸収材132の厚さは8mmである。また、電波吸収材132よりも漏洩導波管12に近い側の基材131の厚さは29mmである。また、電波吸収材132よりも漏洩導波管12から遠い側の基材131および電波遮蔽材133から成る部分の厚さは8mmである。複数の発熱ブロック13の数は8個であり、漏洩導波管12の長手方向に沿って一列に並ぶことで、全体として2.4mの長さになっている。
【0052】
ここで、実験では、複数のスロット121の各々から複数の発熱ブロック13までの最短距離(以下、離間距離という)を0mm、5mm、…、70mmと、0mmから70mmまで5mm毎に変えて計15種類の実験を行った。なお、各実験において、複数のスロット121の各々から発熱ブロック13までの距離は、どのスロット121においても同じである。
【0053】
図5に、実験で用いられた融雪装置1の写真を示す。
図6、
図7に、それぞれ離間距離0mm、50mmの実験で電波発振器11が電波を30分連続して出力したときのサーモグラフィを示す。離間距離が0mmの場合は、複数の発熱ブロック13は、電波発振器11に近いものほど発熱量が多い。これに対し、離間距離が50mmの場合は、電波発振器11からの距離によらず、複数の発熱ブロック13がほぼ一様に暖まっている。
【0054】
図8に、電波発振器11が電波を30分連続して出力したときの各発熱ブロック13の中央部における上昇温度と、漏洩導波管12の始端から上昇温度測定位置までの漏洩導波管12の長手方向に沿った距離(すなわち水平距離)との関係を、離間距離0mmから70mmまで10mm毎に示す。
【0055】
離間距離が0mmの場合、上昇温度は高い部分と低い部分で約60℃の差がある。これは、発熱ブロック13の比誘電率または比透磁率あるいはその両方が漏洩導波管12のスロットの電波の漏洩量(すなわち、電波の放射量)に影響していると考えられる。
【0056】
このような電波漏洩状態では、実験に用いられた融雪装置1よりも漏洩導波管12および放熱部材の長手方向の長さを(例えば10mまで)延ばすと、漏洩導波管12の始端部と終端部の中央よりも終端部に近い部分において、スロット121から電波が殆ど出力されなくなってしまう。したがって、漏洩導波管12における電波の漏洩量が始端部からの距離によらずできるだけ一様であることが望ましい。
【0057】
一方、離間距離が20mm以上場合は、離間距離が0mmの場合に比べて、複数の発熱ブロック13間における上昇温度のばらつきが低減されている。つまり、発熱ブロック13と各スロット121との間に隙間を設けると、各スロット121は発熱ブロック13の比誘電率または比透磁率あるいはその両方の影響を受けにくくなる。本測定の範囲内においては離間距離を20mm以上にした場合、電波の漏洩量は漏洩導波管12の長さ方向にわたってほぼ一様にできる。
【0058】
図9に、電波発振器11が電波を30分連続して出力したときの各発熱ブロック13の中央部における上昇温度に対する離間距離の関係を示す。離間距離が50mm以上の場合、離間距離を更に大きくしても上昇温度にほぼ変化が無い。つまり、発熱ブロック13と各スロット121の間に0.4×λ以上の隙間を設けると、各スロット121は発熱ブロック13の比誘電率の影響をほとんど受けなくなるか、発熱ブロック13の比透磁率の影響をほとんど受けなくなるか、あるいは、発熱ブロック13の比誘電率および比透磁率の影響をほとんど受けなくなる。ここでλは、各スロット121から放射される電波の波長である。
【0059】
また、発熱ブロック13と漏洩導波管12の隙間において電波の減衰はほとんど無い。発熱ブロック13と漏洩導波管12の隙間において減衰があるならば、隙間を大きくするほど際限なく上昇温度が低下するからである。
【0060】
以上より、複数の発熱ブロック13と漏洩導波管の間に0.4×λ以上の隙間が設けられた状態で融雪装置1を構築すれば、漏洩導波管12の各スロット121は複数の発熱ブロック13の比誘電率の影響をほとんど受けなくなるか、発熱ブロック13の比透磁率の影響をほとんど受けなくなるか、あるいは、発熱ブロック13の比誘電率および比透磁率の影響をほとんど受けなくなる。
【0061】
そして、離間距離が0.4×λ以上となると、各スロット121のシールド効果に対する複数の発熱ブロック13の影響が殆どなくなる。すなわち、複数のスロット121の各々を対象スロットとしたとき、対象スロットのシールド効果は、
図2に示すように融雪装置1から全部の発熱ブロック13を廃して得られた物における対象スロットのシールド効果と、同等である。ここで、同等であるとは、差が1dB以下であることをいう。このように、各スロット121において放熱部材がある場合とない場合で電波シールド効果が同等なら、スロット121の電波放射の特性の安定性が更に増す。
【0062】
このようになっていることで、複数の発熱ブロック13を漏洩導波管12の長手方向に亘って一様に暖めることができる。
【0063】
なお、各スロット121に対して複数の発熱ブロック13が及ぼす影響と、離間距離との関係は、漏洩導波管12の形状にも、漏洩導波管12の大きさにも、発熱ブロック13の形状にも、発熱ブロック13の大きさにもほとんど依存しない。また、各スロット121に対して複数の発熱ブロック13が及ぼす影響と離間距離との関係に対して、各発熱ブロック13の比誘電率が影響する度合いは、小さいと推測される。あるいは、各スロット121に対して複数の発熱ブロック13が及ぼす影響と離間距離との関係に対して、各発熱ブロック13の比透磁率が影響する度合いは、小さいと推測される。あるいは、各スロット121に対して複数の発熱ブロック13が及ぼす影響と離間距離との関係に対して、各発熱ブロック13の比誘電率と比透磁率の両方が影響する度合いは、小さいと推測される。
【0064】
なお、
図8、
図9に示した実験結果は、複数の発熱ブロック13を複数のスロット121から離した場合に、電波の漏洩量が漏洩導波管12の長手方向に概ね一様になり得ることを示している。
【0065】
しかし、この実験は、複数の発熱ブロック13が複数のスロット121に接触した場合に、電波の漏洩量が漏洩導波管12の長手方向に概ね一様になり得ないことを示しているわけではない。複数のスロット121の長さや幅を適切に調整すれば、各スロット121が複数の発熱ブロック13のいずれかに接触していても、電波の漏洩量が漏洩導波管12の長手方向に概ね一様になり得る。
【0066】
ただ、発熱ブロック13は、被水等によって比誘電率または比透磁率もしくはその両方が大きく変わってしまうので、発熱ブロック13の被水等によって電波の漏洩量の一様性が大きく損なわれてしまう恐れがある。
【0067】
これに対し、各スロット121が複数の発熱ブロック13から離れていれば、複数の発熱ブロック13の比誘電率または比透磁率もしくはその両方の各スロット121に対する影響が抑えられる。したがって、発熱ブロック13の比誘電率または比透磁率もしくはその両方が被水等により変化しても、電波の漏洩量の一様性が損なわれる可能性が低減される。
【0068】
したがって、放熱部材の被水によって放熱部材の比誘電率または比透磁率もしくはその両方が変化しても、その変化が各スロット121の電波放射の特性に影響を及ぼし難い。したがって、放熱部材の被水に対して各スロット121の電波放射の特性が従来よりも安定する。
【0069】
ここで複数の発熱ブロック13の比誘電率または比透磁率もしくはその両方が各スロット121に対して及ぼす影響について説明する。各スロット121の長さは電波の半波長近傍の長さになると、沢山電波を漏洩するが、個々のスロット121が電波を漏洩しすぎると、漏洩導波管12の終端部近傍まで十分な量の電波が届かなくなる。
【0070】
そこで、本実施形態では、終端部近傍まで均等に電波を漏洩させるようスロット121の長さを設定している。しかし、電波の半波長の長さは、スロット121の周囲の環境の比誘電率および比透磁率をそれぞれε、μとしたとき、「空気中の波長/(ε1/2×μ1/2)」になる。スロット121の周囲のεはスロット121に発熱ブロック13を近づけることによって大きくなるので、スロット121に発熱ブロック13を近づけることで電波の波長が変化する。この場合、このような変化を考慮しない設計では、漏洩導波管12の長手方向に一様な電波の放出ができなくなってしまう。またこの場合、発熱ブロック13と漏洩導波管12の間に隙間が無いので、漏洩導波管12からの電波漏洩量を計測装置で直接測定することが難しく、上記変化を考慮する設計は困難である。
【0071】
このように、1個以上のスロットが放熱部材から離れているので、放熱部材が別の比誘電率の放熱部材に取り替えられたり、または別の比透磁率の放熱部材に取り替えられたり、あるいは別の比誘電率および別の比誘電率の放熱部材に取り替えられたり、もしくは外的要因によって放熱部材の比誘電率または比透磁率あるいはその両方が変化したりしても、その変化がスロットの電波放射の特性に影響を及ぼし難い。したがって、スロットの電波放射の特性が従来よりも安定する。
【0072】
また、発熱ブロック13が設置されていない状態で漏洩導波管12の電波漏洩量を直接測定して設計したデータを、発熱ブロック13が設置された後の漏洩導波管12の電波漏洩量として活用できる。
【0073】
また、各スロット121と複数の発熱ブロック13の間に介在する空気は、比誘電率と比透磁率が比較的安定的であるから、電波の漏洩量の一様性が損なわれる可能性が更に低減される。すなわち、各スロット121の電波放射の特性の更なる安定化が実現される。
【0074】
(第2実施形態)
次に、第2実施形態について、
図10を用いて説明する。本実施形態の融雪装置1は、第1実施形態の融雪装置1と比べて漏洩導波管12と発熱ブロック13の支持構造が異なる。
【0075】
具体的には、本実施形態の融雪装置1では、複数の支持部材14の代わりに複数の支持部材15aおよび複数の支持部材15bを有する。これら複数の支持部材15aおよび複数の支持部材15bは、変形可能な紐状の部材である。
【0076】
複数の支持部材15aの各々は、上端が発熱ブロック13の下端かつ側端に固定され、下端が漏洩導波管12の上端かつ側端に固定される。複数の支持部材15bの各々は、上端が発熱ブロック13の下端かつ側端に固定され、下端が漏洩導波管12の下端かつ側端に固定される。なお、側端は、漏洩導波管12の短手方向における端部である。
【0077】
複数の発熱ブロック13は、図示しないU型側溝の上端部によって支持されて、U型側溝を塞ぐように配置されている。U型側溝は、発熱ブロック13を、漏洩導波管12のスロット121から遠ざかる方向へ付勢することで、発熱ブロック13を支持している。すなわち、U型側溝は、スロット121から電波が放射される方向に、発熱ブロック13を付勢している。このとき、漏洩導波管12の短手方向における各発熱ブロック13の端部が、U型側溝によって支持されるが、当該短手方向における各発熱ブロック13の中央部は、支持されない状態である。
【0078】
漏洩導波管12は、支持部材15a、15bによって、U型側溝の内部に吊されている。つまり、漏洩導波管12は、これら支持部材15a、15bによって支持されている。
【0079】
これら複数の支持部材15a、15bは、漏洩導波管12が吊されて安定した状態において、鉛直方向に対して傾いている。このようになっていることで、安定的に支持部材14が支持される。
【0080】
支持部材15a、15bの各々は、布製等の非導電性の誘電体である。したがって、漏洩導波管12の電気的特性に対する支持部材15a、15bの影響度が低い。このように、上から吊される形態で漏洩導波管12が支持されている状態では、例えば、U型側溝が深すぎる場合でも、漏洩導波管12と複数の発熱ブロック13との離間距離を適切に保つことができる。
【0081】
そして、これら支持部材15a、15bの長さを適宜調整することで、各スロット121から複数の発熱ブロック13までの距離を適切に調整することができる。各スロット121から複数の発熱ブロック13までの離間距離は、第1実施形態と同様である。
【0082】
(第3実施形態)
次に、第3実施形態について、
図11を用いて説明する。本実施形態の融雪装置1は、第1実施形態の融雪装置1に比べて漏洩導波管12と発熱ブロック13の支持構造が異なる。
【0083】
具体的には、本実施形態の融雪装置1では、複数の支持部材14の代わりに複数の支持部材16を有する。これら複数の支持部材16は、変形可能な紐状の部材である。
【0084】
複数の支持部材16の各々は、上端が発熱ブロック13の下端かつ側端に固定され、下端が漏洩導波管12の上端かつ側端に固定される。なお、側端は、漏洩導波管12の短手方向における端部である。
【0085】
複数の発熱ブロック13は、図示しないU型側溝の上端部によって支持される。U型側溝は、発熱ブロック13を、漏洩導波管12のスロット121から遠ざかる方向へ付勢することで、発熱ブロック13を支持している。すなわち、U型側溝は、スロット121から電波が放射される方向に、発熱ブロック13を付勢している。このとき、漏洩導波管12の短手方向における各発熱ブロック13の端部が、U型側溝によって支持されるが、当該短手方向における各発熱ブロック13の中央部は、支持されない状態である。
【0086】
漏洩導波管12は、支持部材16によって、U型側溝の内部に吊されている。つまり、漏洩導波管12は、これら支持部材16によって支持されている。これら複数の支持部材16は、漏洩導波管12が吊されて安定した状態において、鉛直方向に平行に伸びている。
【0087】
支持部材16の各々は、布製等の非導電性の誘電体である。したがって、漏洩導波管12の電気的特性に対する支持部材16の影響度が低い。このように、上から吊される形態で漏洩導波管12が支持されている状態では、例えば、U型側溝が深すぎる場合でも、漏洩導波管12と複数の発熱ブロック13との離間距離を適切に保つことができる。
【0088】
そして、これら支持部材16長さを適宜調整することで、各スロット121から複数の発熱ブロック13までの離間距離を適切に調整することができる。各スロット121から複数の発熱ブロック13までの離間距離は、第1実施形態と同様である。
【0089】
(第4実施形態)
次に、第4実施形態について、
図12を用いて説明する。本実施形態の融雪装置1は、第1実施形態の融雪装置1に比べて漏洩導波管12と発熱ブロック13の支持構造が異なる。
【0090】
本実施形態では、U型側溝21の底に、高さ調整用の土台17が載置されている。そして、土台17の上面に、漏洩導波管12が載置される。これにより、漏洩導波管12がU型側溝21内に配置される。発熱ブロック13は、U型側溝21の上端部に載置され、U型側溝21を塞いで配置されている。U型側溝21は、発熱ブロック13を、漏洩導波管12のスロット121から遠ざかる方向へ付勢することで、発熱ブロック13を支持している。すなわち、U型側溝21は、スロット121から電波が放射される方向に、発熱ブロック13を付勢している。このとき、漏洩導波管12の短手方向における各発熱ブロック13の端部が、U型側溝21によって支持されるが、当該短手方向における各発熱ブロック13の中央部は、支持されない状態である。
【0091】
土台17の鉛直方向の高さを適宜調整することで、各スロット121から複数の発熱ブロック13までの離間距離を適切に調整することができる。各スロット121から複数の発熱ブロック13までの離間距離は、第1実施形態と同様である。
【0092】
(第5実施形態)
次に、第5実施形態について、
図13を用いて説明する。第1-第4実施形態においては、スロット形成面120に形成されて複数の発熱ブロック13のいずれかと鉛直方向に重なる複数のスロット121は、幅も長さもすべて一律に同じであった。
【0093】
これに対し、本実施形態では、これら複数のスロット121のうち複数が、
図13に示すように、複数のスロット122に置き換えられている。置き換えは1対1で行われている。複数のスロット122の各々は、各スロット121と同様、漏洩導波管12によって囲まれる内部空間から漏洩導波管12の外部空間に貫通する貫通孔を囲む矩形枠形状のスロットである。
【0094】
また、複数のスロット122の各々から複数の発熱ブロック13までの最短距離(すなわち、離間距離)も、2個以上のスロット121の各々から複数の発熱ブロック13までの最短距離と同じである。
【0095】
これら複数のスロット122の各々は、複数のスロット121のどれよりも、漏洩導波管12における短手方向の長さが大きい。例えば、これら複数のスロット122の各々は、漏洩導波管12における短手方向の長さが、複数のスロット121の各々の2倍以上であってもよい。また、これら複数のスロット122の各々は、漏洩導波管12における短手方向の長さが、漏洩導波管12を伝搬する電波の半波長の0.9倍以上1.1倍以下であってもよい。
【0096】
このようになっていることで、複数のスロット122の各々は、残った2個以上のスロット121のどれよりも、電波の漏洩量が多い。
【0097】
また、このようになっていることで、2個以上のスロット121および複数のスロット122は、全体として、漏洩導波管12における電波の伝搬方向に沿って連続して一列に並んで配置される。
【0098】
複数個のスロット121の各々が第1種のスロットに対応し、複数個のスロット122の各々が第2種のスロットに対応する。
【0099】
そして、これら2個以上のスロット121は、漏洩導波管12における電波の伝搬方向に沿って連続して(すなわち、間にスロット122を挟まず)並んで配置される。また、複数のスロット122は、漏洩導波管12において、上記2個以上のスロット121よりも電波の伝搬方向の先側に、連続して(すなわち、間にスロット121を挟まず)並んで配置されている。先側とは、漏洩導波管12の終端部側である。
【0100】
このようになっていることで、2個以上のスロット121において漏洩しなかった電波の多くは、複数のスロット122で漏洩される。したがって、漏洩導波管12の終端部において電波が反射することによって発生する反射波の量が抑えられ、定在波が発生しにくくなる。その結果、漏洩導波管12の長手方向(すなわち電波の伝搬方向)における電波の漏洩量のばらつきが、より抑えられる。
【0101】
なお、これら2個以上のスロット121および複数のスロット122のいずれも、スロット形成面120に形成されて複数の発熱ブロック13のいずれかと鉛直方向に重なっている。このようになっていることで、放熱部材での熱の発生に寄与しない無駄な電波の漏洩が低減される。
【0102】
なお、複数のスロット122の各々の幅は、2個以上のスロット121の幅と同じであってもよいし、異なっていてもよい。
【0103】
(他の実施形態)
なお、本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、適宜変更が可能である。また、上記各実施形態は、互いに無関係なものではなく、組み合わせが明らかに不可な場合を除き、適宜組み合わせが可能である。また、上記各実施形態において、実施形態を構成する要素は、特に必須であると明示した場合および原理的に明らかに必須であると考えられる場合等を除き、必ずしも必須のものではない。また、上記各実施形態において、実施形態の構成要素の個数、数値、量、範囲等の数値が言及されている場合、特に必須であると明示した場合および原理的に明らかに特定の数に限定される場合等を除き、その特定の数に限定されるものではない。特に、ある量について複数個の値が例示されている場合、特に別記した場合および原理的に明らかに不可能な場合を除き、それら複数個の値の間の値を採用することも可能である。また、上記各実施形態において、構成要素等の形状、位置関係等に言及するときは、特に明示した場合および原理的に特定の形状、位置関係等に限定される場合等を除き、その形状、位置関係等に限定されるものではない。また、本発明は、上記各実施形態に対する以下のような変形例および均等範囲の変形例も許容される。なお、以下の変形例は、それぞれ独立に、上記実施形態に適用および不適用を選択できる。すなわち、以下の変形例のうち任意の組み合わせを、上記実施形態に適用することができる。
【0104】
(変形例1)
上記各実施形態では、各スロット121と、その鉛直上方の発熱ブロック13との間は、空気で満たされている。しかし、必ずしもこのようになっておらずともよい。例えば、各スロット121と放熱部材の間は真空で満たされていてもよい。その場合、漏洩導波管12の内部空間も真空で満たされていてもよい。
【0105】
あるいは、各スロット121と放熱部材の間に、空気の代わりに所定の比誘電率および比透磁率の誘電体が配置されていてもよい。その場合、漏洩導波管12の内部空間も同じ誘電体が配置されていてもよい。
【0106】
(変形例2)
上記各実施形態では、電波発振器11から出力されて漏洩導波管12を通って電波吸収材132で吸収される電波は、電波であった。しかし、電波発振器11から出力されて漏洩導波管12を通って電波吸収材132で吸収される電波は、電波以外の電波であってもよい。
【0107】
(変形例3)
上記各実施形態では、スロット121、122の長手方向は漏洩導波管12の短手方向に平行になっている。しかし、スロット121、122の長手方向は漏洩導波管12の長手方向に平行になっていてもよいし、漏洩導波管12の長手方向にも短手方向にも交差する方向に平行になっていてもよい。
【0108】
(変形例4)
上記実施形態では、各スロットの離間距離は、当該スロットから主に放出される電波の波長に0.4を乗じた値以上である。しかし、各スロットの離間距離は、当該スロットから主に放出される電波の波長に0.4を乗じた値未満かつゼロより大きくなっていてもよい。このようになっていても、離間距離がゼロである場合に比べ、複数の発熱ブロック13の被水等による比誘電率変化または比透磁率変化あるいはその両方の変化の影響を受け難い。
【0109】
(変形例5)
上記実施形態では、すべてのスロット121、122の離間距離は同じであるが、必ずしもこのようになっておらずともよい。複数のスロット121において、離間距離が互いに異なっていてもよい。
【0110】
(変形例6)
上記各実施形態では、スロット121のすべてが発熱ブロック13から離れている。しかし、必ずしもこのようになっておらずともよい。複数のスロット121のうち一部のスロット121のみが複数の発熱ブロック13から離れており、他のスロット121がいずれかの発熱ブロック13に接していてもよい。複数の発熱ブロック13から離れているスロットは1個のみでもよいし、複数でもよい。
【0111】
(変形例7)
上記第5実施形態では、漏洩導波管12に複数のスロット121と複数のスロット122が形成されている。しかし、漏洩導波管12に複数のスロット121と1個のスロット122だけが形成されていてもよい。
【0112】
(変形例8)
また、上記第5実施形態では、スロット122は、漏洩導波管12において最も終端部に近いスロットである。しかし、スロット122に対して先側(すなわち、漏洩導波管12の終端部側)に、スロット121と同等の長さのスロットが更に配置されていてもよい。
【0113】
(変形例9)
また、上記第5実施形態では、スロット122の全部が複数の発熱ブロック13のいずれかと鉛直方向に重なっている。しかし、スロット122の一部のみが複数の発熱ブロック13のいずれかと鉛直方向に重なっていてもよい。あるいは、すべてのスロット122が、複数の発熱ブロック13のいずれとも鉛直方向に重ならないように配置されていてもよい。
【0114】
(変形例10)
上記各実施形態では、電波式発熱装置の一例として融雪装置1が開示されている。しかし、電波式発熱装置の用途は融雪に限られない。発熱ブロック13が被水する可能性がある用途なら、電波式発熱装置はどのような用途に用いられてもよい。
【符号の説明】
【0115】
1…融雪装置、11…電波発振器、12…漏洩導波管、13…発熱ブロック、14、15a、15b、16、17…支持部材、20…ベース部、21…U型側溝、121、122…スロット、131…基材、132…電波吸収材、133…電波遮蔽材