IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 一般財団法人電力中央研究所の特許一覧

<>
  • 特許-固体燃料の製造装置 図1
  • 特許-固体燃料の製造装置 図2
  • 特許-固体燃料の製造装置 図3
  • 特許-固体燃料の製造装置 図4
  • 特許-固体燃料の製造装置 図5
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-20
(45)【発行日】2022-02-21
(54)【発明の名称】固体燃料の製造装置
(51)【国際特許分類】
   C10L 5/44 20060101AFI20220214BHJP
   C10B 53/02 20060101ALI20220214BHJP
【FI】
C10L5/44
C10B53/02
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2017002107
(22)【出願日】2017-01-10
(65)【公開番号】P2018111758
(43)【公開日】2018-07-19
【審査請求日】2019-11-11
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)三菱重工環境・化学エンジニアリング株式会社 (1)平成25年度「CO2排出削減対策強化誘導型技術開発・実証事業(石炭火力における混焼率30%を実現する木質バイオマスの改質プロセスの実用化開発)委託業務」、(2)平成26年度「CO2排出削減対策強化誘導型技術開発・実証事業(石炭火力における混焼率30%を実現する木質バイオマスの改質プロセスの実用化開発)委託業務」、(3)平成27年度「CO2排出削減対策強化誘導型技術開発・実証事業(バイオ改質炭普及拡大に向けたエネルギー自立型製造プロセスの構築並びに
(73)【特許権者】
【識別番号】000173809
【氏名又は名称】一般財団法人電力中央研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100101236
【弁理士】
【氏名又は名称】栗原 浩之
(74)【代理人】
【識別番号】100166914
【弁理士】
【氏名又は名称】山▲崎▼ 雄一郎
(72)【発明者】
【氏名】斉藤 祐太
(72)【発明者】
【氏名】櫻木 潔
(72)【発明者】
【氏名】庄司 哲也
(72)【発明者】
【氏名】大高 円
【審査官】齊藤 光子
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-179416(JP,A)
【文献】特開2010-077399(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C10L 5/00
C10B 1/00-57/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
原料を炭化して固体燃料とする炭化手段と、
前記炭化手段による炭化状況を制御する炭化状況調整手段と、
前記炭化状況調整手段に動作指令を出力する制御手段とを備え、
前記制御手段は、
前記炭化手段で炭化された固体燃料の炭化状況として炭化率を求める炭化率導出手段を備えると共に、
前記制御手段は、
所定の炭化率に対する塩素除去率の関係が塩素情報として記憶され、所望の塩素除去率が入力され、入力された塩素除去率に対して導出された所望の炭化率になるように前記炭化状況調整手段に動作指示を出力する
ことを特徴とする固体燃料の製造装置。
【請求項2】
請求項1に記載の固体燃料の製造装置において、
前記固体燃料の原料は、バイオマスである
ことを特徴とする固体燃料の製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固体燃料の製造装置に関し、例えば、バイオマスを炭化して固体燃料とする製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、火力発電所では、未利用な資源として扱われていたバイオマスを燃料として有効利用することが検討されている。特に、カーボンニュートラルな木質バイオマスの利用が検討されている(例えば、特許文献1)。特許文献1では、木質バイオマスを熱分解することにより、炭化物とガスを生成し、炭化物をボイラの燃料として用いて電力を得ることが提案されている。
【0003】
また、バイオマスから作られた炭化物を石炭に混ぜてボイラで燃焼させて電力を得ることが考えられている。このような状況から、バイオマスの使用量が拡大しつつある。しかし、バイオマスの需要増加に伴い、石炭と混焼させることができるバイオマスの入手が困難になったり、バイオマスの価格が上昇したりすることが予想される。
【0004】
このため、現状では、石炭と混焼させることができないバイオマス、例えば、海に近い場所で伐採された樹木で、塩素が多く含まれているバイオマス(木質バイオマス)の使用が検討されている。塩素が含まれているバイオマスを使用することができれば、石炭火力発電所に適用可能なバイオマスの量を増大することができると共に、バイオマスの供給量増大に伴って、入手に必要なコストを抑制することができると考えられている。
【0005】
塩素を含有しているバイオマスを炭化して得られる固体燃料は、単位体積当たりの塩素含有率が高くなるため、炭化処理の過程で塩素を除去することが好ましい。しかし、炭化処理の過程で任意の塩素含有率まで低減した固体燃料を得るのは、技術面で困難であった。一方で、使用者側で、塩素を十分に除去できる排ガス処理を備えている等の状況であれば、塩素が含まれているバイオマスから得られた固体燃料であっても、原料を安価に入手できるため、使用したい要望があるのも現実である。
【0006】
このため、塩素が含まれているバイオマスから固体燃料を得る際に(炭化処理を施す際に)、塩素の含有率をある程度調整できれば、安定した価格で入手できるバイオマスから、使う側の事情に応じた所望の塩素含有率となる固体燃料が得られることになり、安価なバイオマスを使用したい要望に応えることが可能になる。
【0007】
このような状況から、塩素が含まれるバイオマスを炭化して固体燃料とする際に、塩素の除去状況が調整できる技術の出現が望まれているのが現状である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2014-205730号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は上記状況に鑑みてなされたもので、塩素の除去状況を調整して固体燃料を製造
することができる固体燃料の製造装置を提供することを目的とする。
【0010】
特に、バイオマス(木質バイオマス)を炭化して炭化物(固体燃料)を得る際に、塩素
の除去率を調整することができる固体燃料の製造装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明を実施するための固体燃料の塩素状況調整方法は、反応槽内で移送される固体燃料に熱風を供給して固体燃料を炭化するに際し、前記固体燃料の所望の塩素除去率に対する炭化率(炭化処理が施された固体燃料中の固定炭素量の重量割合)を導出し、導出された炭化率になるように、熱風の温度、流量、固体燃料の移送速度を調整することで、固体燃料の塩素除去状況を制御することが好ましい
【0012】
これにより、固体燃料の炭化状況を調整することで、炭化処理の際に塩素の除去状況が制御され、塩素が所望の状況で除去された固体燃料を得ることができる。
また、原料の炭化処理における炭化率、即ち、炭化処理が施された固体燃料中の固定炭素量の重量割合に応じて炭化された固体燃料の中の塩素の含有状況を調整することができる。
【0013】
この結果、塩素の除去状況を調整して固体燃料を製造することが可能になる。塩素の除去状況を調整することができるので、原料の塩素の含有状況に制約を受けずに、固体燃料を使用する側での塩素の浄化システム等の状況により、コストと排気ガスの浄化性能に基づいて任意の原料を選択することが可能になる。
【0014】
因みに、特開2005-67789号公報には、木質系のバイオマスを焙焼して塩素含有率を0.002%以下にした固体燃料を製造する技術が開示されている。この技術は、塩素をできるだけ除去するための条件を見出した技術である。このため、特開2005-67789号公報で開示された技術は、塩素の除去状況を任意の状況に調整できる本願発明の固体燃料の塩素除去状況調整方法とは異なる分野の技術である。
【0015】
また、上述した固体燃料の塩素除去状況調整方法において、前記塩素除去率は、前記固体燃料の原料の中の塩素の含有割合と、前記原料に炭化処理を施した後の炭化燃料の中の塩素の含有割合とに基づいて導出されることが好ましい
【0016】
請求項2に係る本発明では、所望の塩素除去率で塩素が除去された固体燃料を得ることができる。塩素除去率の導出は、固体燃料の原料の中の塩素の含有割合と、原料に炭化処理を施した後の炭化燃料の中の塩素の含有割合とに基づいて導出される。
【0017】
例えば、
原料の中の塩素の含有率をm1とし、
原料の供給量をm0とし、
炭化燃料の中の塩素の含有率をm2とし、
炭化燃料の排出量(排出量が少ないほど炭化が進んだ状態)をm3とした際、
塩素除去率Rは、以下の式(1)により求めることができる。
R={(m1・m0)-(m2・m3)}/(m1・m0)・・・(1)
塩素除去率Rは、原料を炭化する際の処理温度に基づいて導出されることが知見として得られている(後述する図3参照)。
このため、炭化燃料の中の塩素の含有率m2は、以下の式(2)により求めることができる。
m2=m1・m0(1-R)/m3・・・(2)
【0018】
また、上述した固体燃料の塩素除去状況調整方法において、前記炭化状況は、前記固体
燃料の原料の炭化処理の処理温度であることが好ましい。
【0019】
これにより、原料の炭化処理の処理温度に応じて炭化された固体燃料の中の塩素の含有状況を調整することができる。
【0022】
また、上述した固体燃料の塩素除去状況調整方法において、前記固体燃料の原料は、バイオマス(木質バイオマス)であることが好ましい
【0023】
これにより、バイオマスを炭化して、所望の塩素除去状況で塩素が除去された固体燃料とすることができる。バイオマスとしては、林地残材、間伐材、未利用樹、製材廃材、建設廃材等の木質バイオマスを用いることが好適である。また、バイオマスとしては、稲、麦わら、もみ殻等の未利用バイオマスや、古紙、家畜の糞尿、食品残渣、汚泥等の廃棄物バイオマスを用いることも可能である。
【0024】
上記目的を達成するための請求項1に係る本発明の固体燃料の製造装置は、原料を炭化して固体燃料とする炭化手段と、前記炭化手段による炭化状況を制御する炭化状況調整手段と、前記炭化状況調整手段に動作指令を出力する制御手段とを備え、前記制御手段は、前記炭化手段で炭化された固体燃料の炭化状況として炭化率を求める炭化率導出手段を備えると共に、前記制御手段は、所定の炭化率に対する塩素除去率の関係が塩素情報として記憶され、所望の塩素除去率が入力され、入力された前記塩素除去率に対して導出された所望の炭化率になるように前記炭化状況調整手段に動作指示を出力することを特徴とする。
【0025】
請求項1に係る本発明では、制御手段の指令に基づいて炭化状況調整手段により固体燃料の炭化状況を調整することで、炭化手段での炭化処理の際の塩素の除去状況が制御される。制御手段の指令は、入力された所望の炭化状況になるように、炭化状況調整手段が動作される。所望の炭化状況にすることで、炭化処理の際に塩素の除去状況が所望の状態に制御され、塩素が所望の状況で除去された固体燃料を得ることができる。
また、所望の塩素除去率で塩素が除去された固体燃料を得ることができる。塩素除去率の導出は、固体燃料の原料の中の塩素の含有割合と、原料に炭化処理を施した後の炭化燃料の中の塩素の含有割合とに基づいて導出される。塩素除去率は、例えば、前述した式(1)により求めることができる。式(1)に基づき、炭化燃料の中の塩素の含有率を前述した式(2)により求めることができる。
また、炭化率導出手段で求められた原料の炭化処理における炭化率、即ち、炭化処理が施された固体燃料中の固定炭素量の重量割合に応じて炭化された固体燃料の中の塩素の含有状況を調整することができる。
【0026】
この結果、塩素の除去状況を調整して固体燃料を製造することが可能になる。塩素の除去状況を調整することができるので、原料の塩素の含有状況に制約を受けずに、固体燃料を使用する側での塩素の浄化システム等の状況により、コストと排気ガスの浄化性能に基づいて任意の原料を選択することが可能になる。
【0027】
因みに、特開2005-67789号公報には、木質系のバイオマスを焙焼して塩素含有率を0.002%以下にした固体燃料を製造する技術が開示されている。この技術は、塩素をできるだけ除去するための条件を見出した技術である。このため、特開2005-67789号公報で開示された技術は、塩素の除去状況を任意の状況に調整できる本願発明の固体燃料の塩素除去状況調整方法とは異なる分野の技術である。
【0030】
また、上述した固体燃料の製造装置において、前記炭化手段には、前記原料が炭化される際の処理温度を検出する処理温度検出手段が備えられ、前記炭化状況は、前記処理温度検出手段で検出される処理温度であることが好ましい。
【0031】
これにより、処理温度検出手段で検出される処理温度(原料の炭化処理の処理温度)に応じて炭化された固体燃料の中の塩素の含有状況を調整することができる。
【0034】
また、請求項2に係る本発明の固体燃料の製造装置は、請求項1に記載の固体燃料の製造装置において、前記固体燃料の原料は、バイオマス(木質バイオマス)であることを特徴とする。
【0035】
請求項2に係る本発明では、バイオマスを炭化して、所望の塩素除去状況で塩素が除去された固体燃料とすることができる。バイオマスとしては、林地残材、間伐材、未利用樹、製材廃材、建設廃材等の木質バイオマスを用いることが好適である。また、バイオマスとしては、稲、麦わら、もみ殻等の未利用バイオマスや、古紙、家畜の糞尿、食品残渣、汚泥等の廃棄物バイオマスを用いることも可能である。
【発明の効果】
【0036】
本発明の固体燃料の塩素除去状況調整方法は、塩素の除去状況を調整して固体燃料を製造することが可能になる。
【0037】
また、本発明の固体燃料の製造装置は、塩素の除去状況を調整して固体燃料を製造することが可能になる。
【0038】
本発明の固体燃料の塩素除去状況調整方法、及び、固体燃料の製造装置は、特に、バイオマス(木質バイオマス)を炭化して炭化物(固体燃料)を得る際に、塩素の除去率を調整して所望の塩素除去率で塩素が除去された炭化物(固体燃料)を得ることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
図1】本発明の一実施例に係る塩素除去状況調整方法を適用する固体燃料の製造装置の概略系統図である。
図2】本発明の参考例に係る固体燃料の製造装置の制御手段のブロック構成図である。
図3】塩素除去率と処理温度の関係を表すグラフである。
図4】本発明の一実施例に係る固体燃料の製造装置の制御手段のブロック構成図である。
図5】塩素除去率と固定炭素の割合(炭化率)の関係を表すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0040】
本実施例の固体燃料の塩素除去状況調整方法は、バイオマス(木質バイオマス)を炭化して燃料として使用する際に、木質バイオマスの炭化状況(炭化温度、炭化率)を把握し、炭化状況に基づいて塩素の除去状況(塩素の除去率)を導出することで、炭化状況に応じて木質バイオマスの炭化物(固体燃料)の塩素除去率を制御するものである。例えば、所望の塩素除去率で塩素が除去された炭化物を得ることができるようにしたものである。
【0041】
このため、塩素の除去率を調整して木質バイオマスを製造することが可能になる。塩素の除去率を調整することができるので、原料の塩素の含有状況に制約を受けずに、炭化物を使用する側での塩素の浄化システム等の状況により、コストと排気ガスの浄化性能に基づいて任意の原料を選択することが可能になる。
【0042】
つまり、塩素が含まれている木質バイオマから炭化物を得る際に(炭化処理を施す際に)、塩素の含有率をある程度調整できるため、安定した価格で入手できる木質バイオマスから、使う側の事情に応じた所望の塩素含有率となる炭化物が得られ、安価な木質バイオマスを使用したい要望に応えることが可能になる。
【0043】
塩素除去率の導出は、炭化物の原料である木質バイオマスの中の塩素の含有割合と、木質バイオマスに炭化処理を施した後の炭化物(炭化燃料)の中の塩素の含有割合とに基づいて導出される。
【0044】
例えば、
原料の木質バイオマス中の塩素の含有率をm1とし、
原料の木質バイオマスの供給量をm0とし、
炭化物(炭化燃料)の中の塩素の含有率をm2とし、
炭化物(炭化燃料)の排出量(排出量が少ないほど炭化が進んだ状態)をm3とした際に、
塩素除去率Rは、以下の式により求めることができる。
R={(m1・m0)-(m2・m3)}/(m1・m0)
塩素除去率Rは、原料を炭化する際の処理温度に基づいて導出されることが知見として得られている(後述する図3参照)。このため、炭化燃料の中の塩素の含有率m2は、以下の式により求めることができる。
m2=m1・m0(1-R)/m3
【0045】
原料のバイオマスとしては、林地残材、間伐材、未利用樹、製材廃材、建設廃材等の木質バイオマスを用いることが好適である。また、原料のバイオマスとしては、稲、麦わら、もみ殻等の未利用バイオマスや、古紙、家畜の糞尿、食品残渣、汚泥等の廃棄物バイオマスを用いることも可能である。
【0046】
図1から図3に基づいて本発明の一実施例の参考となる固体燃料の塩素除去状況調整方法を実施する固体燃料の製造装置を説明する。
【0047】
図1には本発明の一実施例に係る固体燃料の製造装置の全体構成を説明する概略系統、図2には本発明の参考例に係る固体燃料の製造装置における制御手段のブロック構成、図3には塩素除去率と処理温度の関係を表すグラフを示してある。
【0048】
図1に示すように、原料であるバイオマス(木質バイオマス)を炭化して炭化燃料(固体燃料)とする炭化手段としての炭化設備1を備えている。炭化設備1は、入口部3から出口部4に向けて木質バイオマスが軸方向に順次搬送される加熱本体2を備えている。加熱本体2はモータ5bにより回転される回転体で構成され、加熱本体2の回転により木質バイオマスが出口部4に向けて搬送される。加熱本体2には、モータ5aにより駆動されるコンベア6(スクリューコンベア)から木質バイオマスが供給される。コンベア6による木質バイオマスの供給速度、加熱本体2の回転による木質バイオマスの搬送速度が制御されることで、木質バイオマスの炭化時間が調整される(炭化状況調整手段)。
【0049】
炭化設備1の加熱本体2は加熱ドラム11に覆われ、加熱本体2と加熱ドラム11の間(加熱ドラム11の内側)に熱風が供給されることで、加熱本体2の内部の木質バイオマスが炭化される。熱風の温度が制御されることで、木質バイオマスの炭化時間が調整される(炭化状況調整手段)。加熱ドラム11には処理温度検出手段としての温度検出手段13が設けられ(例えば、加熱ドラム11の軸方向に4箇所設けられ)、温度検出手段13により炭化処理の処理温度が検出される。
【0050】
尚、上記実施例では、炭化設備1として、加熱本体2(回転体)を回転させて原料を搬送する回転ドラム型の反応設備を適用した例を挙げて説明したが、多段の燃焼炉を備えた反応設備、流動層型の反応設備、移動層型の反応設備等、他の形式で原料を加熱(直接、間接)する設備を適用することが可能である。
【0051】
炭化された木質バイオマスである炭化燃料8が出口部4から冷却手段12を介して排出される。また、炭化に伴って生じる塩素を含む熱分解ガスが出口部4から排出されて処理設備に送られて清浄化される。熱分解ガスは燃料としても利用できるので、熱分解ガスの全部もしくは一部は、後述する燃料供給路16に投入される。
【0052】
加熱ドラム11の内側に熱風を供給する熱風炉15が備えられ、熱風炉15には燃料供給路16から燃料が供給され、空気供給路17から燃焼用の空気が供給される。燃料供給路16には流量調整手段18aが設けられ、空気供給路17には流量調整手段18bが設けられている。流量調整手段18a、18bの制御により、燃料量と空気量が調整され、熱風の温度及び流量が制御される(炭化状況調整手段)。
【0053】
炭化設備1には、木質バイオマスが所望の炭化状況(塩素除去率)になるように炭化状況調整手段に動作指示を出力する制御手段21が備えられている。即ち、制御手段21には、所望の塩素除去率の情報、木質バイオマスの塩素含有量の情報(原料情報)等が入力され、必要に応じて、温度検出手段13で検出される炭化処理の処理温度の情報が入力される。
【0054】
制御手段21からは、モータ5a、モータ5bに駆動指令が出力され、流量調整手段18a、18bに制御指令が出力される。つまり、コンベア6による木質バイオマスの供給速度が制御されると共に、加熱本体2の回転数が制御されて木質バイオマスの搬送速度が制御される。そして、燃料供給路16の燃料量の状況、空気供給路17の燃焼用の空気流量の状況が制御されて熱風炉15からの熱風の温度、流量が制御される。熱風炉15からの熱風の温度、流量が制御されることにより、炭化処理の処理温度が制御され、処理温度に応じて炭化された炭化燃料8の塩素の含有量(炭化燃料の塩素の除去率)が調整される。
【0055】
図2に示すように、制御手段21には、所定の処理温度(炭化状況)に対する塩素除去率(塩素除去状況)の関係が温度-除去率マップ22(塩素情報)として記憶されている。制御手段21では、入力された所望の塩素除去率に対する温度を温度-除去率マップ22から導出し、導出された温度になるように、熱風の温度、流量が温度制御手段23で調整される。制御手段21からは、温度制御手段23で調整された熱風の温度、流量になるように、空気供給路17(炭化設備1)に制御指令が出力される。
【0056】
温度-除去率マップ22には、図3に示すように、塩素除去率と処理温度の関係がマップ化されている。例えば、木質バイオマスを炭化する場合の処理温度がある温度T1(例えば、360℃から380℃)に至るまでは、塩素の除去率が徐々に高くなり、多くの塩素が除去される(例えば、除去率80%から90%)。
【0057】
そして、処理温度がある温度であるT1を超えると、塩素の除去率の上昇がほとんど無くなり、処理温度がある温度よりも高い温度であるTS(例えば、400℃)になるとこれ以上温度が高くなっても、塩素の除去率は変化しなくなる(例えば、90%が上限となる)。
【0058】
例えば、塩素の処理設備を備えていない場合、必要となる炭化燃料の所望の塩素除去率が高い値(100%に近い)の状況になるので、木質バイオマスを炭化する場合の処理温度をT1に調整して炭化設備1を運転することで、最大限の除去率で塩素が除去された炭化燃料8を得ることができる。
【0059】
また、例えば、塩素を高いレベルで除去できる排煙設備を備えている場合、必要となる炭化燃料の所望の塩素除去率は高くなくてよい(70%程度)状況になるので、木質バイオマスを炭化する場合の処理温度をT1よりも低い温度に調整して炭化設備1を運転することで、最小限のエネルギーの消費により、所望の除去率で塩素が除去された炭化燃料8を得ることができる。
【0060】
この結果、木質バイオマスを炭化する場合の処理温度を制御することにより、任意の塩素除去率(所望の塩素除去率)の炭化燃料8(固体燃料)を製造することが可能になる。
【0061】
つまり、木質バイオマスを炭化する場合の処理温度を調整して塩素の除去率(除去状況)を調整し、炭化燃料8(固体燃料)を製造することが可能になり、使用する木質バイオマスの塩素の含有状況の制約を受けることなく、炭化燃料8(固体燃料)を使用する側での塩素の浄化システム等の状況により、コストと排気ガスの浄化性能に基づいて任意の(安価で塩素が含有されている状況の)木質バイオマスを選択することが可能になる。
【0062】
上述した固体燃料の製造装置は、木質バイオマスを炭化して炭化物(固体燃料)を得る際に、処理温度を調整することで塩素の除去率を調整することが可能になる。
【0063】
図1図4図5に基づいて本発明の一実施例を説明する。本実施例では、炭化燃料8の炭化率に応じて炭化燃料8の塩素の除去率が調整される。
【0064】
制御手段21からは、モータ5に駆動指令が出力され、流量調整手段18に制御指令が出力される。つまり、コンベア6による搬送速度が制御されて木質バイオマスの炭化時間が調整される。炭化時間が調整されることで、炭化燃料8の炭化率(炭化処理が施された炭化燃料中の固定炭素量の重量割合)が制御され、炭化率に応じて炭化された炭化燃料8の塩素の含有量(炭化燃料8の塩素の除去率)が調整される。
【0065】
制御手段21には、加熱本体2で炭化された炭化燃料8の炭化率(炭化処理が施された炭化燃料中の固定炭素量の重量割合)を求める炭化率導出手段が備えられ、炭化率導出手段で求められた炭化率(炭化状況)に対する塩素除去率(塩素除去状況)の関係が炭化率-除去率マップ25として記憶されている。
【0066】
制御手段21では、入力された所望の塩素除去率に対する炭化率を炭化率-除去率マップ25から導出し、導出された炭化率になるように、熱風の温度、流量、コンベア6による搬送速度が制御され、木質バイオマスの炭化温度、炭化時間が、炭化率制御手段26で調整される(炭化率が調整される)。
【0067】
制御手段21からは、炭化率制御手段26で調整された熱風の温度、流量、及び、搬送速度になるように、空気供給路17(炭化設備1)、モータ5(炭化設備1)に制御指令が出力される。
【0068】
炭化率-除去率マップ25には、図5に示すように、塩素除去率と固定炭素の割合(固定炭素量:炭化率)の関係がマップ化されている。例えば、炭化燃料の固定炭素の割合が、ある割合、例えば、20wt%を超えて30wt%に至るまでの間に、塩素の除去率が急激に上昇し、多くの塩素が除去されている(例えば、除去率80%から90%)。
【0069】
そして、炭化燃料の固定炭素の割合がある割合を超えると、例えば、30wt%を超えると、塩素の除去率の上昇がほとんど無くなり、固定炭素の割合がこれ以上高くなっても、塩素の除去率は変化しなくなる(例えば、90%が上限となる)。
【0070】
例えば、塩素の処理設備を備えていない場合、必要となる炭化燃料の所望の塩素除去率が高い値(100%に近い)の状況になるので、木質バイオマスを炭化した場合の固定炭素の割合(炭化率)が、例えば、30wt%になるように炭化設備1の運転を調整することで、最大限の除去率で塩素が除去された炭化燃料8を得ることが出来る。
【0071】
また、例えば、塩素を高いレベルで除去できる排煙設備を備えている場合、必要となる炭化燃料の所望の塩素除去率は高くなくてよい(70%程度)状況になるので、木質バイオマスを炭化した場合の固定炭素の割合(炭化率)を30wt%よりも低い状態に調整して炭化設備1の運転を調整することで、最小限のエネルギーの消費により、所望の除去率で塩素が除去された炭化燃料8を得ることができる。
【0072】
この結果、木質バイオマスを炭化した場合の炭化率を制御することにより、任意の塩素除去率(所望の塩素除去率)の炭化燃料8(固体燃料)を製造することが可能になる。
【0073】
つまり、木質バイオマスを炭化する場合の炭化率を調整して塩素の除去率(除去状況)を調整し、炭化燃料8(固体燃料)を製造することが可能になり、使用する木質バイオマスの塩素の含有状況の制約を受けることなく、炭化燃料8(固体燃料)を使用する側での塩素の浄化システム等の状況により、コストと排気ガスの浄化性能に基づいて任意の(安価で塩素が含有されている状況の)木質バイオマスを選択することが可能になる。
【0074】
上述した固体燃料の製造装置は、木質バイオマスを炭化して炭化物(固体燃料)を得る際に、炭化率を調整することで塩素の除去率を調整することが可能になる。
【産業上の利用可能性】
【0075】
本発明は、固体燃料の塩素除去状況調整方法、及び、固体燃料の製造装置の産業分野で利用することができる。
【符号の説明】
【0076】
1 炭化設備
2 加熱本体
3 入口部
4 出口部
5a、5b モータ
6 コンベア
8 炭化燃料
11 加熱ドラム
12 冷却手段
13 温度検出手段
15 熱風炉
16 燃料供給路
17 空気供給路
18a、18b 流量調整手段
21 制御手段
22 温度-除去率マップ
23 温度制御手段
25 炭化率-除去率マップ
26 炭化率制御手段
図1
図2
図3
図4
図5