(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-20
(45)【発行日】2022-01-17
(54)【発明の名称】高周波スイッチ装置
(51)【国際特許分類】
H03K 17/693 20060101AFI20220107BHJP
H03K 17/10 20060101ALI20220107BHJP
H03K 17/00 20060101ALI20220107BHJP
H01P 1/15 20060101ALI20220107BHJP
【FI】
H03K17/693 A
H03K17/10
H03K17/00 D
H01P1/15
(21)【出願番号】P 2017204042
(22)【出願日】2017-10-20
【審査請求日】2020-09-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000191238
【氏名又は名称】新日本無線株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099818
【氏名又は名称】安孫子 勉
(72)【発明者】
【氏名】村越 康則
【審査官】及川 尚人
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-175834(JP,A)
【文献】特開2014-236381(JP,A)
【文献】特開2013-027035(JP,A)
【文献】特表2005-515657(JP,A)
【文献】特表2013-507873(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H03K 17/693
H03K 17/10
H03K 17/00
H01P 1/15
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の半導体スイッチ素子が直列接続されてなる高周波パススイッチ回路を有し、一つの高周波入出力共通端子と、所要数設けられた高周波入出力個別端子との間に、前記高周波パススイッチ回路がそれぞれ設けられ、前記高周波パススイッチ回路の動作を制御する制御信号を生成、出力する制御回路
部を有
してなる高周波スイッチ装置において、
前記制御回路
部は、
外部から印加される電源入力電圧を基に正の電圧を生成、出力する正電圧電源回路と、
外部から印加される電源入力電圧を基に負の電圧を生成、出力する負電圧電源回路と、
外部から入力される制御信号をデコードして前記高周波パススイッチ回路の設置数に対応した複数の第一制御信号を生成、出力するデコーダ回路と、
論理値Lowに相当する電圧レベルから論理値Highに相当する電圧レベルへの入力信号の立ち上がりに対して第1の遅延時間の遅延を施して出力する一方、前記入力信号の論理値Highに相当する電圧レベルから論理値Lowに相当する電圧レベルへの立ち下がりに対して前記第1の遅延時間より長い第2の遅延時間の遅延を施して出力するよう構成されてなり、前記高周波パススイッチ回路に対応してそれぞれ設けられたタイミング調整回路と、
前記タイミング調整回路に対応してそれぞれ設けられ、対応する前記タイミング調整回路の出力信号が入力されるレベルシフトバッファ回路と、を具備し、
前記デコーダ回路から出力される複数の第一制御信号は、前記高周波パススイッチ回路の内、所望の高周波パススイッチ回路を導通状態とするべく論理値Highに相当する電圧レベルとされた一方の第一制御信号と、前記導通状態とされる高周波パススイッチ回路を除く残余の前記高周波パススイッチ回路を非導通状態とすべく論理値Lowに相当する電圧レベルとされた他方の第一制御信号とに区分され、
前記タイミング調整回路の内、前記一方の第一制御信号が入力されたタイミング調整回路は、前記一方の第一制御信号に前記遅延を施して一方の第二制御信号として出力する一方、前記他方の第一制御信号が入力されたタイミング調整回路は、前記他方の第一制御信号に前記遅延を施して他方の第二制御信号として出力し、
前記レベルシフトバッファ回路は、論理値Lowに相当する電圧レベルの前記第二制御信号が入力された場合に、前記負電圧電源回路で生成された負電圧を出力する一方、論理値Highに相当する電圧レベルの前記第二制御信号が入力された場合に、前記正電圧電源回路で生成された正電圧を出力するよう構成されると共に、前記レベルシフトバッファ回路の各々の出力と対地との間には、それぞれデカップリングコンデンサが接続され、
前記高周波パススイッチ回路は、それぞれ、前記複数の半導体スイッチ素子としての複数の電界効果型トランジスタが直列接続されて構成されてなり、前記複数の電界効果型トランジスタの各々のゲートは、それぞれゲート抵抗器を介して、対応する前記レベルシフトバッファ回路の出力に接続され、
前記高周波パススイッチ回路の内、導通状態にある高周波パススイッチ回路が、導通状態から非導通状態へ、残余の前記高周波パススイッチ回路の内、所要の高周波パススイッチ回路が新たに非導通状態から導通状態とされる場合、前記デコーダ回路へ入力される制御信号の論理の切り替えにより、前記一方の第一制御信号は、論理値Highから論理値Lowとされ、次いで、前記タイミング調整回路において前記制御信号の論理値の切り替え時から前記第1の遅延時間遅れて論理値Highから論理値Lowとされて第二制御信号として前記レベルシフトバッファ回路を介して前記導通状態から非導通状態とされる高周波パススイッチ回路へ入力される一方、前記他方の第一制御信号の内、前記制御信号の論理の切り替えにより、論理値Lowから論理値Highとされた第一制御信号は、前記タイミング調整回路において前記制御信号の論理値の切り替え時から前記第2の遅延時間遅れて論理値Lowから論理値Highとされて第二制御信号として前記レベルシフトバッファ回路を介して前記新たに導通状態とされる前記高周波パススイッチ回路に入力され、
前記第1の遅延時間と前記第2の遅延時間は、前記第1の遅延時間遅れて論理値Highから論理値Lowとなる前記第二制御信号と、前記第2の遅延時間遅れて論理値Lowから論理値Highとなる第二制御信号とが共に論理値Lowとなる期間が生じて前記高周波パススイッチ回路を全て非導通状態とできる値に設定され、前記導通状態から非導通状態となる前記高周波パススイッチ回路においては、導通状態から非導通状態となる際に、当該高周波パススイッチ回路のゲート容量が、第1の経路と第2の経路の2つの経路により負電圧に充電され、
前記第1の経路は、前記負電圧電源回路の出力とグランドとの間に接続されて設けられた出力コンデンサから、前記導通状態から非導通状態となる高周波パススイッチ回路に接続された前記レベルシフトバッファ回路を介して充電電流が流入する経路であり、
前記第2の経路は、前記新たに導通状態とされる高周波パススイッチ回路及び非導通状態を継続する高周波パススイッチ回路のゲート容量と、これらの高周波パススイッチ回路に接続された前記レベルシフトバッファ回路の出力に接続された前記デカップリングコンデンサとから、前記新たに導通状態とされる高周波パススイッチ回路及び非導通状態を継続する高周波パススイッチ回路に接続された前記レベルシフトバッファ回路と、前記導通状態から非導通状態とされる前記高周波パススイッチ回路に接続された前記レベルシフトバッファ回路を介する経路から充電電流が流入する経路であり、
前記2つの経路を介した充電により前記高周波パススイッチ回路の導通状態から非導通状態への短時間での切り替えを可能としてなることを特徴とする高周波スイッチ装置。
【請求項2】
半導体スイッチ素子を用いてなり、前記高周波パススイッチ回路が非導通状態にある場合に、当該高周波パススイッチ回路の入力段をグランドに接続する高周波シャントスイッチ回路を設け
、
前記高周波シャントスイッチ回路には、当該高周波シャントスイッチ回路が接続された前記高周波パススイッチ回路に入力される前記第二制御信号と逆論理の前記デコーダ回路により生成された第一制御信号が、前記高周波パススイッチ回路の動作制御に用いられる前記タイミング調整回路及び前記レベルシフトバッファ回路と同一構成のタイミング調整回路及びレベルシフトバッファ回路を介して入力されて動作制御されることで、
前記高周波シャントスイッチ回路が導通状態から非導通状態へ、当該高周波シャントスイッチ回路が接続された前記高周波パススイッチ回路が非導通状態から導通状態へ、それぞれ切り替わる際に、前記高周波シャントスイッチ回路においては、前記高周波パススイッチ回路を構成する電界効果型トランジスタのゲート容量が前記2つの経路により負電圧に充電されると同様に、前記高周波シャントスイッチ回路を構成する前記複数の半導体スイッチ素子としての複数の直列接続されて設けられた電界効果型トランジスタのゲート容量が、2つの経路により負電圧に充電され、前記高周波シャントスイッチ回路の導通状態から非導通状態への短時間での切り替えを可能としてなることを特徴とする請求項1記載の高周波スイッチ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高周波スイッチに係り、特に、スイッチ素子が多段直列接続された構成におけるスイッチ動作の高速化を図ったものに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、SPDT(Single Pole Double Throw:単極双投)スイッチ等を構成する高周波スイッチでは、微細プロセス技術を用いた製造が行われるため、ゲート長が短くなり、FET(電界効果型トランジスタ)1つのみではハイパワーの信号を十分に制御することが難しくなってきている。
【0003】
それ故、FET等の半導体スイッチ素子を多段直列接続した構成が採られることがある(例えば、特許文献1等)。
このような半導体スイッチ素子が多段直列接続された高周波スイッチを有する高周波スイッチ装置の従来回路例について、
図13乃至
図16を参照しつつ説明する。
この高周波スイッチ装置は、SPDTスイッチの場合の構成例であり、高周波回路部100Aと制御回路部200Aとに大別されて構成されている(
図13参照)。
【0004】
高周波回路部100Aは、高周波入出力共通端子PCと高周波入出力個別端子P1,P2と、高周波入出力共通端子PCと高周波入出力個別端子P1との間に接続された高周波パススイッチ回路8A-1と、高周波入出力共通端子PCと高周波入出力個別端子P2との間に接続された高周波パススイッチ回路8A-2を有して構成されている。
高周波パススイッチ回路8A-1,8A-2は、複数のFETが直列接続されて構成されている。
【0005】
制御回路部200Aは、正電圧電源回路(
図13においては「+POWER」と表記)1Aと、負電圧電源回路(
図13においては「-POWER」と表記)2Aと、デコーダ(
図13においては「DEC」と表記)3Aと、レベルシフトバッファ回路5A-1,5A-2と、出力コンデンサ6Aと、デカップリングコンデンサ7A-1,7A-2を有して構成されている。
正電圧電源回路1Aは、高周波スイッチを導通状態にするための正の電圧VON及びデコーダ3A、レベルシフトバッファ回路5A-1,5A-2の電源電圧VHを出力する。電圧VONとVHは、同じ電圧でも良い。
負電圧電源回路2Aは、高周波スイッチを遮断状態にするための負の電圧VOFFを出力する。
【0006】
かかる従来回路において、例えば、
図14に示されたように、高周波入出力共通端子PCと高周波入出力個別端子P1間の経路が導通し、高周波入出力共通端子PCと高周波入出力個別端子P2間の経路が遮断した状態(状態I)から、高周波入出力共通端子PCと高周波入出力個別端子P1間の経路が遮断し、高周波入出力共通端子PCと高周波入出力個別端子P2間の経路が導通した状態(状態III)へ切り替わる際の回路動作を例に挙げて、以下説明する。
【0007】
まず、初期状態(状態I)においては、レベルシフトバッファ回路5A-1の入力信号vc1cは、PC-P1経路の高周波パススイッチ回路8A-1を導通状態とするため論理値Highに相当する電圧レベルとなっている(
図15(A)及び
図15(B)参照)。
また、レベルシフトバッファ回路5A-2の入力信号vc2cは、PC-P2経路の高周波パススイッチ回路8A-2を遮断状態とするため論理値Lowに相当する電圧レベルとなっている(
図15(A)及び
図15(C)参照)。
【0008】
かかる状態にあって、高周波パススイッチ回路8A-1,8A-2の経路切り替えのために、デコーダ3Aに外部から入力される制御信号VCの論理が切り替わると、レベルシフトバッファ回路5A-1,5A-2の入力信号vc1c及びvc2cは、
図15(B)及び
図15(C)に示されたように、ほぼ同時にデコード回路3Aから出力されて論理が反転する(状態III)。
【0009】
レベルシフトバッファ回路5A-1の入力信号vc1cの論理が変化したことにより、レベルシフトバッファ回路5A-1においては、出力信号の電圧が負電圧電源2Aの負電圧に切り替えられ、高周波パススイッチ回路8A-1のゲート容量がハイレベル(VON)からローレベル(VOFF)に充電される。
この際の充電経路は、
図16に点線で示されたように、負電圧電源回路回路2Aの出力コンデンサ6Aからレベルシフトバッファ回路5A-1を通る経路iss0となる。
【0010】
一方、レベルシフトバッファ回路5A-2においては、入力信号vc2cの論理変化により、レベルシフトバッファ回路5A-2において、出力信号の電圧が正電圧電源回路1Aの正電圧に切り替えられ、高周波パススイッチ回路8A-2のゲート容量がローレベル(VOFF)からハイレベル(VON)に充電される。
この際の充電経路は、
図16に点線で示されたように、正電源電圧1Aからレベルシフトバッファ回路5A-2を通る経路idd0となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
上述の従来回路において、高周波パススイッチ回路8A-1,8A-2は、多数のスイッチFETが直列接続されて構成されているが、オン抵抗を小さくするために、そのゲート幅は数mm程度に設定されており、そのためゲート容量は数10~100pF程度と非常に大きなものとなっている。
【0013】
正電圧電源回路1Aは、入出力電圧差が小さいLDO(Low Dorp Out)と称される回路構成などを用いて実現されて比較的電流駆動能力も高いため、高周波パススイッチ回路8A-1,8A-2のような大規模なゲート容量を充電する場合であっても負電圧を充電する場合ほどの遅延は発生しない。
【0014】
このような大きなゲート容量を瞬時に充電するには、負電圧電源回路2Aの出力コンデンサ6Aは、ゲート容量以上に大きな容量が必要になる。
しかしながら、半導体チップの制約上、必要とされるだけの大きな容量値を確保することは現実的には困難なため、実際には、半導体チップの制約の範囲で実現可能な値を選択せざる得ない。
【0015】
そのため、従来回路においては、高周波パススイッチ回路8A-1,8A-2の経路切り替えの際に、負電圧電源回路2Aの出力容量が不足することによる信号伝搬の遅延が発生し、高速、かつ、円滑な経路切り替えが確保できないという問題がある。
【0016】
本発明は、上記実状に鑑みてなされたもので、半導体スイッチ素子が多段直列接続された構成において、電源に大きな出力容量を付加することなく、スイッチング速度の高速化を可能とする高周波スイッチ装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記本発明の目的を達成するため、本発明に係る高周波スイッチ装置は、
複数の半導体スイッチ素子が直列接続されてなる高周波パススイッチ回路を有し、一つの高周波入出力共通端子と、所要数設けられた高周波入出力個別端子との間に、前記高周波パススイッチ回路がそれぞれ設けられ、前記高周波パススイッチ回路の動作を制御する制御信号を生成、出力する制御回路部を有してなる高周波スイッチ装置において、
前記制御回路部は、
外部から印加される電源入力電圧を基に正の電圧を生成、出力する正電圧電源回路と、
外部から印加される電源入力電圧を基に負の電圧を生成、出力する負電圧電源回路と、
外部から入力される制御信号をデコードして前記高周波パススイッチ回路の設置数に対応した複数の第一制御信号を生成、出力するデコーダ回路と、
論理値Lowに相当する電圧レベルから論理値Highに相当する電圧レベルへの入力信号の立ち上がりに対して第1の遅延時間の遅延を施して出力する一方、前記入力信号の論理値Highに相当する電圧レベルから論理値Lowに相当する電圧レベルへの立ち下がりに対して前記第1の遅延時間より長い第2の遅延時間の遅延を施して出力するよう構成されてなり、前記高周波パススイッチ回路に対応してそれぞれ設けられたタイミング調整回路と、
前記タイミング調整回路に対応してそれぞれ設けられ、対応する前記タイミング調整回路の出力信号が入力されるレベルシフトバッファ回路と、を具備し、
前記デコーダ回路から出力される複数の第一制御信号は、前記高周波パススイッチ回路の内、所望の高周波パススイッチ回路を導通状態とするべく論理値Highに相当する電圧レベルとされた一方の第一制御信号と、前記導通状態とされる高周波パススイッチ回路を除く残余の前記高周波パススイッチ回路を非導通状態とすべく論理値Lowに相当する電圧レベルとされた他方の第一制御信号とに区分され、
前記タイミング調整回路の内、前記一方の第一制御信号が入力されたタイミング調整回路は、前記一方の第一制御信号に前記遅延を施して一方の第二制御信号として出力する一方、前記他方の第一制御信号が入力されたタイミング調整回路は、前記他方の第一制御信号に前記遅延を施して他方の第二制御信号として出力し、
前記レベルシフトバッファ回路は、論理値Lowに相当する電圧レベルの前記第二制御信号が入力された場合に、前記負電圧電源回路で生成された負電圧を出力する一方、論理値Highに相当する電圧レベルの前記第二制御信号が入力された場合に、前記正電圧電源回路で生成された正電圧を出力するよう構成されると共に、前記レベルシフトバッファ回路の各々の出力と対地との間には、それぞれデカップリングコンデンサが接続され、
前記高周波パススイッチ回路は、それぞれ、前記複数の半導体スイッチ素子としての複数の電界効果型トランジスタが直列接続されて構成されてなり、前記複数の電界効果型トランジスタの各々のゲートは、それぞれゲート抵抗器を介して、対応する前記レベルシフトバッファ回路の出力に接続され、
前記高周波パススイッチ回路の内、導通状態にある高周波パススイッチ回路が、導通状態から非導通状態へ、残余の前記高周波パススイッチ回路の内、所要の高周波パススイッチ回路が新たに非導通状態から導通状態とされる場合、前記デコーダ回路へ入力される制御信号の論理の切り替えにより、前記一方の第一制御信号は、論理値Highから論理値Lowとされ、次いで、前記タイミング調整回路において前記制御信号の論理値の切り替え時から前記第1の遅延時間遅れて論理値Highから論理値Lowとされて第二制御信号として前記レベルシフトバッファ回路を介して前記導通状態から非導通状態とされる高周波パススイッチ回路へ入力される一方、前記他方の第一制御信号の内、前記制御信号の論理の切り替えにより、論理値Lowから論理値Highとされた第一制御信号は、前記タイミング調整回路において前記制御信号の論理値の切り替え時から前記第2の遅延時間遅れて論理値Lowから論理値Highとされて第二制御信号として前記レベルシフトバッファ回路を介して前記新たに導通状態とされる前記高周波パススイッチ回路に入力され、
前記第1の遅延時間と前記第2の遅延時間は、前記第1の遅延時間遅れて論理値Highから論理値Lowとなる前記第二制御信号と、前記第2の遅延時間遅れて論理値Lowから論理値Highとなる第二制御信号とが共に論理値Lowとなる期間が生じて前記高周波パススイッチ回路を全て非導通状態とできる値に設定され、前記導通状態から非導通状態となる前記高周波パススイッチ回路においては、導通状態から非導通状態となる際に、当該高周波パススイッチ回路のゲート容量が、第1の経路と第2の経路の2つの経路により負電圧に充電され、
前記第1の経路は、前記負電圧電源回路の出力とグランドとの間に接続されて設けられた出力コンデンサから、前記導通状態から非導通状態となる高周波パススイッチ回路に接続された前記レベルシフトバッファ回路を介して充電電流が流入する経路であり、
前記第2の経路は、前記新たに導通状態とされる高周波パススイッチ回路及び非導通状態を継続する高周波パススイッチ回路のゲート容量と、これらの高周波パススイッチ回路に接続された前記レベルシフトバッファ回路の出力に接続された前記デカップリングコンデンサとから、前記新たに導通状態とされる高周波パススイッチ回路及び非導通状態を継続する高周波パススイッチ回路に接続された前記レベルシフトバッファ回路と、前記導通状態から非導通状態とされる前記高周波パススイッチ回路に接続された前記レベルシフトバッファ回路を介する経路から充電電流が流入する経路であり、
前記2つの経路を介した充電により前記高周波パススイッチ回路の導通状態から非導通状態への短時間での切り替えを可能としてなるものである。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、複数の半導体スイッチ素子を用いてなる高周波パススイッチ回路の経路切り替えの際に、全ての半導体スイッチ素子がオフの状態を経由して所望する動作状態へ遷移するように構成することで、オフ状態の際に半導体スイッチ素子のゲート容量に加えてデカップッリング容量を負電圧電源の出力容量とすることができるので、オフ充電時における負電圧の劣化を抑制すると共に、従来と異なり半導体スイッチ素子のオフ動作が確実に高速化され、信頼性の高い高周波スイッチ装置を提供することができるという効果を奏するものである。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の実施の形態における高周波スイッチ装置の第1の回路構成例を示す回路図である。
【
図2】高周波パススイッチ回路の回路構成例を示す回路図である。
【
図3】タイミング調整回路の回路構成例を示す回路図である。
【
図4】タイミング調整回路の動作を説明するタイミングチャートであって、
図4(A)は入力信号の変化を示すタイミングチャート、
図4(B)は出力信号の変化を示すタイミングチャートである。
【
図5】レベルシフトバッファ回路の動作を説明するタイミングチャートであって、
図5(A)は入力電圧の変化を示すタイミングチャート、
図5(B)は出力電圧の変化を示すタイミングチャートである。
【
図6】第1の回路構成例における制御信号電圧の変化を示すタイミングチャートであって、
図6(A)はデコーダ回路に入力される制御信号VCの変化を示すタイミングチャート、
図6(B)はタイミング調整回路から出力される制御信号vc1bの変化を示すタイミングチャート、
図6(C)はタイミング調整回路から出力される制御信号vc2bの変化を示すタイミングチャートである。
【
図7】第1の回路構成例における高周波入出力共通端子と高周波入出力個別端子との導通状態の変化を説明する説明図である。
【
図8】第1の回路構成例において回路の動作状態が状態Iから状態IIとなる場合の充電経路を説明する回路図である。
【
図9】第1の回路構成例において回路の動作状態が状態IIIの場合の充電経路を説明する回路図である。
【
図10】第1の回路構成例におけるゲート電圧のシュミレーション結果を従来回路のシミュレーション結果と共に示す特性線図である。
【
図11】本発明の実施の形態における高周波スイッチ装置の第2の回路構成例を示す回路図である。
【
図12】第2の回路構成例における高周波パススイッチ回路及び高周波シャントスイッチ回路の回路構成例を示す回路図である。
【
図13】従来の高周波スイッチ装置の回路構成例を示す回路図である。
【
図14】従来回路における入出力端子間の動作状態を説明する説明図である。
【
図15】従来回路における制御信号電圧の変化を示すタイミングチャートであって、
図15(A)はデコーダ回路に入力される制御信号VCの変化を示すタイミングチャート、
図15(B)はデコーダ回路から出力される制御信号vc1cの変化を示すタイミングチャート、
図15(C)はデコーダ回路から出力される制御信号vc2cの変化を示すタイミングチャートである。
【
図16】従来回路における充電経路を説明する回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態について、
図1乃至
図12を参照しつつ説明する。
なお、以下に説明する部材、配置等は本発明を限定するものではなく、本発明の趣旨の範囲内で種々改変することができるものである。
最初に、第1の回路構成例について、
図1を参照しつつ説明する。
図1における回路構成例は、SPDTスイッチの場合の構成例であり、本発明の実施の形態における高周波スイッチ装置は、高周波回路部100と制御回路部200とに大別されて構成されたものとなっている。
【0021】
高周波回路部100は、1つの高周波入出力共通端子(
図1においては「PC」と表記)31と、2つの高周波入出力個別端子(
図1においては、それそれ「P1」、「P2」と表記)32-1,32-2と、高周波入出力共通端子31と第1の高周波入出力個別端子32-1との間、高周波入出力共通端子31と第2の高周波入出力個別端子32-2との間に、それぞれ接続される高周波パススイッチ回路8-1,8-2を有して構成されている。
【0022】
なお、この第1の回路構成例においては、先に述べたようにSPDTスイッチの場合の構成例を示しているため、高周波入出力個別端子32-1,32-2は2つであるが、この高周波スイッチ装置は、SPDTスイッチへの適用に限定されるものではない。すなわち、高周波入出力個別端子がn個のSPnTスイッチに適用できるものである。
【0023】
図2には、高周波パススイッチ回路8-1,8-2の回路構成例が示されており、以下、同図を参照しつつ高周波パススイッチ回路8-1,8-2について説明する。
高周波パススイッチ回路8-1,8-2は、半導体スイッチ素子として、k個のFET(電界効果型トランジスタ)21-1~21-kが直列接続されて構成されたものとなっている。
【0024】
高周波パススイッチ回路8-1は、高周波入出力共通端子31と第1の高周波入出力個別端子32-1の間に、高周波パススイッチ回路8-2は、高周波入出力共通端子31と第2の高周波入出力個別端子32-2の間に、それぞれFET21-1~21-kが直列接続されて設けられている。
【0025】
このように複数のFETを直列接続するのは、次述するような理由によるものである。
すなわち、近年、無線通信機器などで使用される高周波スイッチICの場合、その取り扱う高周波信号の電圧振幅は数10Vのピーク電圧に達している。
一方で、スイッチFETは、微細プロセスを用いて製造されているため、その動作耐圧は2.5V程度であり、1つのスイッチFETだけで高周波スイッチICに要求される耐電圧を満足することができない。そのため、複数直列接続することで所望の耐電圧を確保するためである。
【0026】
また、各FET21-1~21-kのゲートとレベルシフトバッファ回路5-1,5-2の出力段との間には、高周波帯でのハイインピーダンスを維持するために、それぞれゲート抵抗器(
図2においては、「RG11」、「RG12」、「RG13」・・・「RG1k」と表記)22-1~22-kが接続されている。
【0027】
さらに、各FET21-1~21-kには、ドレインとソースの間に、それぞれの電位を固定するためにドレイン・ソース間抵抗器(
図2においては、それぞれ「RDS11」、「RDS12」、「RDS13」・・・「RDS1k」と表記)23-1~23-kが接続されている。
【0028】
制御回路部200は、正電圧電源回路(
図1においては「+POWER」と表記)1と、負電圧電源回路(
図1においては「-POWER」と表記)2と、デコーダ(
図1においては「DEC」と表記)3と、タイミング調整回路4-1,4-2と、レベルシフトバッファ回路5-1,5-2と、出力コンデンサ6と、デカップリングコンデンサ7-1,7-2を有して構成されている。
【0029】
正電圧電源回路1は、外部から印加される電源入力電圧VDDを基に正の電圧(VON>0)を生成、出力するものである。このような電源回路は、例えば、半導体基板上に入出力電圧差が小さいLDO(Low Dorp Out)と称されるレギュレータICなどを設けて実現される。
かかる正電圧電源回路1の出力電圧は、レベルシフトバッファ回路5-1,5-2の正電圧入力端子に印加されるようになっている。なお、正電圧電源回路1はデコーダ回路3の正電源として用いても良い。
【0030】
負電圧電源回路2は、外部から印加される電源入力電圧VDDを基に負の電圧(VOFF<0)を生成、出力するものである。
かかる負電圧電源回路2は、良く知られているように、例えば、発振回路9とチャージポンプ回路10を用いて実現される。
かかる負電圧電源回路2の出力電圧は、レベルシフトバッファ回路5-1,5-2の負電圧入力端子に印加されるようになっている。
【0031】
デコーダ回路3は、外部から入力される制御信号VCをデコードして、複数の第一制御信号を生成、出力する。
デコーダ回路3から出力された複数の第一制御信号は、それぞれタイミング調整回路4-1,4-2へ入力される。なお、この第1の回路構成例におけるデコーダ回路3は、2つの第一制御信号vc1a、vc2aを生成、出力するものとなっている。
【0032】
タイミング調整回路4-1,4-2は、上述の第一制御信号のハイレベル、ローレベルに応じて、詳細は後述するように所定のタイミングで第二制御信号を生成、出力するものである。
タイミング調整回路4-1,4-2から出力された第二制御信号は、それぞれレベルシフトバッファ回路5-1,5-2へ入力される。
【0033】
図3には、タイミング調整回路4-1,4-2の具体回路構成例が、また、
図4にはタイミング調整回路4-1,4-2の入出力信号の変化のタイミングを説明するタイミングチャートが、それぞれ示されており、以下、これらの図を参照しつつ、タイミング調整回路4-1,4-2の具体回路構成例について説明する。
【0034】
まず、
図3に例示されたタイミング調整回路4-1,4-2の回路構成について説明する。
タイミング調整回路4-1,4-2は、いずれも、FET41と、2つのバッファ素子42-1,42-2と、一つの反転素子43と、抵抗器44と、コンデンサ45とを有して構成されたものとなっている。
【0035】
第1のバッファ素子42-1の入力端子には、外部からの入力信号が印加されるようになっている一方、出力端子は抵抗器44を介して第2のバッファ素子42-2の入力端子に接続されると共に、反転素子43の入力端子にも接続されている。
【0036】
反転素子43の出力端子はFET41のゲートに接続され、FET41のドレインは第2のバッファ素子42-2の入力端子に接続される一方、FET41のソースはグランドに接続されている。
また、抵抗器44と第2のバッファ素子42-2の入力端子の接続点とグランドとの間には、コンデンサ45が接続されている。
【0037】
次に、かかる構成における入出力信号の変化のタイミングについて
図4を参照しつつ説明する。
入力信号vin1が論理値Lowに相当する電圧レベルVLから論理値Highに相当する電圧レベルVHに遷移する際、出力信号vout1は時間Trdだけ遅延して第2のバッファ素子42-2から出力される(
図4(A)及び
図4(B)参照)。
【0038】
一方、入力信号vin1が論理値Highに相当する電圧レベルVHから論理値Lowに相当する電圧レベルVLに遷移する際には、出力信号vout1は時間Tfdだけ遅延して第2のバッファ素子42-2から出力される(
図4(A)及び
図4(B)参照)。
【0039】
ここで、出力信号vout1が論理値Lowから論理値Highに相当する電圧レベルに遷移する際の遅延時間Trdと、論理値Highから論理値Lowに相当する電圧レベルに遷移する際の遅延時間Tfdは、高周波パススイッチ回路8-1,8-2のゲート制御信号が全てオフ状態になる期間を作り出すように調整、設定されている。
すなわち、この第1の回路構成例にあっては、Trd>Tfdとなるように回路定数が設定される。
【0040】
次に、レベルシフトバッファ回路5-1,5-2は、タイミング調整回路4-1,4-2から出力された第二制御信号vc1b,vc2bの電圧振幅を、高周波スイッチ(FET)のバイアス値へレベルシフトして、ゲート制御信号として高周波パススイッチ回路8-1,8-2へ出力する。
【0041】
図5には、レベルシフトバッファ回路5-1,5-2のレベルシフト動作を説明するタイミングチャートが示されており、以下、同図を参照しつつレベルシフト動作について説明する。
レベルシフトバッファ回路5-1,5-2は、論理値Lowに相当する電圧レベルVLの信号が入力されると、負
電圧電源回路2で生成された負電圧VOFFを出力する(
図5(A)及び
図5(B)参照)一方、論理値Highに相当する電圧レベルVHの信号が入力されると、正電圧電源回路1で生成された正電圧VONを出力する(
図5(A)及び
図5(B)参照)。
【0042】
出力コンデンサ6は、負電圧電源回路2の出力とグランドとの間に接続されている。この出力コンデンサ6は、負電圧(VOFF)で充電され、負電圧電源回路2の出力電圧(VOFF)を安定化させる機能を有する。
デカップリングコンデンサ7-1,7-2は、レベルシフトバッファ回路5-1,5-2の出力において対地に対して接続されている。
このデカップリングコンデンサ7-1,7-2は、高周波回路部100と制御回路部200を電気的に分離するために設けられている。
【0043】
次に、かかる構成における回路動作について、
図6乃至
図10を参照しつつ説明する。
以下、初期状態である状態Iから状態III(
図7参照)へ遷移する際の回路動作について説明する。
ここで、状態Iは、高周波入出力共通端子31と第1の高周波入出力個別端子32-1間の経路が導通し、高周波入出力共通端子31と第2の高周波入出力個別端子32-2間の経路が遮断した状態と定義する(
図7参照)。
また、状態IIIは、高周波入出力共通端子31と第1の高周波入出力個別端子32-1間の経路が遮断し、高周波入出力共通端子31と第2の高周波入出力個別端子32-2間の経路が導通した状態であると定義する(
図7参照)。
【0044】
まず、初期状態(状態I)においては、レベルシフトバッファ回路5-1の入力信号vc1bは、高周波入出力共通端子31と第1の高周波入出力個別端子32-1間の経路の高周波パススイッチ回路8-1を導通状態とするため論理値Highに相当する電圧レベルとなっている(
図6(A)及び
図6(B)参照)。
また、レベルシフトバッファ回路5-2の入力信号vc2bは、高周波入出力共通端子31と第2の高周波入出力個別端子32-2間の経路の高周波パススイッチ回路8-2を遮断状態とするため論理値Lowに相当する電圧レベルとなっている(
図6(A)及び
図6(C)参照)。
【0045】
次いで、高周波パススイッチ回路8-1,8-2の経路切り替えのために、制御信号vcの論理が切り替わると、デコード回路3から第一制御信号vc1a,vc2aが出力される。第一制御信号vc1aはタイミング調整回路4-1に、第一制御信号vc2aはタイミング調整回路4-2に、それぞれ入力される。
【0046】
第一制御信号vc1aはタイミング調整回路4-1に入力され、時間Tfdの遅延が施された後、第二制御信号vc1bとして出力され(
図6(A)及び
図6(B)参照)、レベルシフトバッファ回路5-1に入力される。
一方、第一制御信号vc2aはタイミング調整回路4-2に入力され、時間Trdの遅延が施された後、第二制御信号vc2bとして出力され(
図6(A)及び
図6(C)参照)、レベルシフトバッファ回路5-2に入力される。
【0047】
本発明の実施の形態における高周波スイッチ装置においては、高周波パススイッチ回路8-1,8-2の経路切り替えの際に、全てのFETゲートが全てオフ状態にバイアスされるよう第二制御信号vc1b,vc2bの立ち上がり、立ち下がりのタイミングが調整されており(
図6(A)乃至
図6(C)参照)、Trd>Tfdが成立するものとなっている。
すなわち、高周波パススイッチ回路8-1,8-2の経路切り替えは、
図7に示されたように、従来と異なり、状態Iから状態IIを経由して状態IIIへ、又は、状態IIIから状態IIを経由して状態Iへ至るものとなっている。
【0048】
状態IIにおいて、第二制御信号vc2bのレベルは、状態Iと変わらず論理値Lowに相当するレベルであるため、レベルシフトバッファ回路5-2の出力は負電圧(VOFF)に維持されたままとなる。
一方、第二制御信号vc1bのレベルは、論理値Highに相当するレベルから論理値Lowに相当するレベルへ遷移するため、レベルシフトバッファ回路5-1においては、正電圧(VON)から負電圧(VOFF)へ出力切替が行われる。
その結果、高周波パススイッチ回路8-1のFETのゲート容量は、ハイレベル(VON)からローレベル(VOFF)に充電されることとなる。
【0049】
この場合、充電経路は、
図8に示されたように、負電圧電源回路2の出力コンデンサ6からレベルシフトバッファ回路5-1を通る経路iss0に加えて、オフ状態の高周波パススイッチ回路8-2のゲート容量とオフバイアスで充電されているデカップリングコンデンサ7-2からレベルシフトバッファ回路5-2を通る経路iss2の2つの経路が生ずることとなる。
【0050】
これに対して、従来回路(
図13参照)にあって、高周波パススイッチ回路8A-1のゲート容量の充電経路は経路iss0のみである(
図16参照)。
したがって、本発明の実施の形態における高周波スイッチ装置においては、上述のように、2つの経路iss0、経路iss2によって高周波パススイッチ回路8-1のゲート容量の充電が行われるため、従来回路に比してより早く短時間での充電が可能となる。
【0051】
状態IIIにおいては、第二制御信号vc2bは、ローレベルからハイレベルへ遷移するため、レベルシフトバッファ回路5-2においては、負電圧(VOFF)から正電圧(VON)へ出力切替が行われ、高周波パススイッチ回路8-2のゲート容量がハイレベルに充電される。
この場合、充電経路は、
図9に示されたように、正電圧電源回路1からレベルシフトバッファ回路5-2を通る経路idd0となる。
【0052】
なお、正電圧電源回路1は、入出力電圧差が小さいLDO(Low Dorp Out)と称される回路構成などを用いて実現される。そのため、比較的電流駆動能力は高く、高周波パススイッチ回路8-1,8-2のような大規模なゲート容量を充電する際にあっても負電圧の場合ほどの遅延は発生しない。
このように、本発明の実施の形態における高周波スイッチ装置においては、従来回路に比して、高周波パススイッチ回路8-1,8-2の経路切り替えが確実に高速で行われるものとなっている。
【0053】
図10には、高周波パススイッチ回路8-1,8-2のゲート容量をハイレベルからローレベルへ充電する際の充電時間のシミュレーション結果が示されており、以下、同図について説明する。
図10において、本発明の実施の形態における高周波スイッチ装置のシミュレーション結果が実線で、従来回路(
図13参照)のシュミレーション結果が点線で、それぞれ表されている。
【0054】
本発明の実施の形態における高周波スイッチ装置の場合、高周波パススイッチ回路8-1,8-2のゲート電位がFETの閾値に達するまでの時間はt2であるのに対して、従来回路の場合、時間t1(t1>t2)と、時間t2よりも長く、本発明の実施の形態における高周波スイッチ装置は、従来回路に比して確実に早く高周波パススイッチ回路8-1,8-2の経路切り替えが行われることが確認できる。
【0055】
なお、上述の第1の回路構成例においては、高周波パススイッチ回路8-1,8-2がSPDTスイッチである場合の例として説明したが、SPnT構成の場合は、レベルシフトバッファ回路5、デカップリングコンデンサ7、及び、オフ状態の高周波パススイッチ回路8も(n-1)個となるため、より大きな効果が期待できる。
【0056】
次に、第2の回路構成例について、
図11及び
図12を参照しつつ説明する。 なお、
図1に示された構成要素と同一の構成要素については、同一の符号を付して、その詳細な説明を省略し、以下、異なる点を中心に説明する。
先の第1の回路構成例は2つの高周波パススイッチ回路8-1,8-2を有する構成のものであったのに対して、第2の回路構成例は、1つの高周波パススイッチ回路8とし、新たに高周波シャントスイッチ回路13を付加した構成を有するものである。
【0057】
かかる構成において、一方のレベルシフトバッファ回路5-1は高周波パススイッチ回路8に、他方のレベルシフトバッファ回路5-2は高周波シャントスイッチ回路13に、それぞれ接続されている。
【0058】
図12には、高周波パススイッチ回路8と高周波シャントスイッチ回路13の具体回路構成例が示されており、以下、同図を参照しつつ、これらの回路構成について説明する。
高周波パススイッチ回路8は、先に
図2に示された回路構成と同一であるので、ここでの再度の詳細な説明は省略する。
【0059】
高周波シャントスイッチ回路13は、高周波入出力個別端子(
図12においては「Pn」と表記)32-1と接地端子間に直列接続されて設けられる。
かかる高周波シャントスイッチ回路13は、複数のFET(
図12においては、「S11」、「S12」、「S13」・・・「S1k」と表記)24-1~24-kが直接接続されて設けられている。
【0060】
各FET24-1~24-kのゲートとレベルシフトバッファ回路5-2の出力端子との間には、高周波帯でのハイインピーダンスを維持するために、それぞれゲート抵抗器(
図12においては、「SRG11」、「SRG12」、「SRG13」・・・「SRG1k」と表記)25-1~25-kが接続されている。
【0061】
さらに、各FET24-1~24-kには、ドレインとソースの間に、それぞれの電位を固定するためにドレイン・ソース間抵抗器(
図12においては、それぞれ「SRDS11」、「SRDS12」、「SRDS13」・・・「SRDS1k」と表記)26-1~26-kが接続されている。
【0062】
かかる高周波シャントスイッチ回路13は、高周波パススイッチ回路8が遮断状態(非導通状態)の時に導通状態となり、高周波パススイッチ回路8から漏れだした高周波電力を接地側へ逃がし、高周波パススイッチ回路8の遮断特性の向上を図っている。
【0063】
一方、高周波パススイッチ回路8が導通状態の時に、高周波シャントスイッチ回路13は遮断状態となる。これにより、高周波パススイッチ回路8を通過する高周波信号は、高周波シャントスイッチ回路13の影響を受けることなく通過可能となる。
このように、高周波パススイッチ回路8と高周波シャントスイッチ回路13は、逆論理で動作するものとなっている。
【0064】
したがって、第1の回路構成例で説明したように、高周波パススイッチ回路8と高周波シャントスイッチ回路13へ対する制御信号の論理を切り替える際に、高周波パススイッチ回路8と高周波シャントスイッチ回路13が共にオフ状態(
図7の状態II参照)になるようタイミング調整回路4-1,4-2の回路定数を設定することで、第1の回路構成例と同様、切り替え時間の遅延発生が回避されるものとなっている。
【産業上の利用可能性】
【0065】
電源に大きな出力容量を付加することなくスイッチング速度の確保が所望される高周波スイッチ装置に適用できる。
【符号の説明】
【0066】
1…正電圧電源回路
2…負電圧電源回路
3…デコーダ回路
4-1,4-2…タイミング調整回路
5-1,5-2…レベルシフトバッファ回路
6…出力コンデンサ
7-1,7-2…デカップリングコンデンサ
8-1,8-2…高周波パススイッチ回路
100…高周波回路部
200…制御回路部