(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-20
(45)【発行日】2022-01-17
(54)【発明の名称】平板型ループヒートパイプ
(51)【国際特許分類】
F28D 15/04 20060101AFI20220107BHJP
F28D 15/02 20060101ALI20220107BHJP
【FI】
F28D15/04 H
F28D15/04 B
F28D15/02 L
(21)【出願番号】P 2018033585
(22)【出願日】2018-02-27
【審査請求日】2020-11-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000190688
【氏名又は名称】新光電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】倉嶋 信幸
【審査官】長尾 裕貴
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-281275(JP,A)
【文献】特開2005-106313(JP,A)
【文献】登録実用新案第3170065(JP,U)
【文献】特開2006-261472(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F28D 15/04
F28D 15/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
作動流体を気化させる蒸発器と、
作動流体を液化する凝縮器と、
前記蒸発器と前記凝縮器とを接続する蒸気管と、
前記凝縮器と前記蒸発器とを接続し、内部に第1のウィックを有する液管と、
を有し、
前記凝縮器は、
内部に前記蒸気管と前記液管とを接続する流路が形成された流路部と、
内部に、前記流路に接すると共に前記流路から平面方向に延び、前記第1のウィックと接続された第2のウィックを有するウィック部と、
を有
し、
前記凝縮器は、前記ウィック部にて平板を起こす方向に折り曲げられていること、
を特徴とする平板型ループヒートパイプ。
【請求項2】
前記第1のウィックは、前記第2のウィックよりも前記液化した作動流体に対して生じる毛細管力が高いことを特徴とする請求項1に記載の平板型ループヒートパイプ。
【請求項3】
前記蒸発器、前記蒸気管、前記凝縮器、及び前記液管は、一対の最外金属層と、前記一対の最外金属層の間に積層された複数の中間金属層からなることを特徴とする請求項1
又は2に記載の平板型ループヒートパイプ。
【請求項4】
前記第2のウィックは、隣接する前記中間金属層に形成され、平面視において互いに直交する方向に延びる溝を有することを特徴とする請求項
3に記載の平板型ループヒートパイプ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
平板型ループヒートパイプに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電子機器に搭載される半導体デバイス(例えば、CPU等)の発熱部品を冷却するデバイスとして、作動流体の相変化を利用したヒートパイプが提案されている(例えば、特許文献1,2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】国際公開第2015/087451号
【文献】特開2002-22381号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、電子機器によっては、発熱部と放熱部とが同一平面上にない場合がある。このような電子機器に用いるヒートパイプには、曲げ加工が必要となる。しかしながら、曲げ加工によって、作動流体の流路が狭くなったり閉塞されたりする。従って、作動流体の流路が確保できなくなり、作動流体の流れが阻害され、ヒートパイプとして機能しなくなる虞がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一観点によれば、平板型ループヒートパイプは、作動流体を気化させる蒸発器と、作動流体を液化する凝縮器と、前記凝縮器と前記蒸発器とを接続し、内部に第1のウィックを有する液管と、を有し、前記凝縮器は、内部に前記蒸気管と前記液管とを接続する流路が形成された流路部と、内部に、前記流路に接すると共に前記流路から平面方向に延び、前記第1のウィックと接続された第2のウィックを有するウィック部と、を有し、前記凝縮器は、前記ウィック部にて平板を起こす方向に折り曲げられている。
【発明の効果】
【0006】
本発明の一観点によれば、作動流体の流路を確保できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図2】最上層の金属層を除いた平板型ループヒートパイプの概略平面図。
【
図3】(a)~(c)は、凝縮器を構成する金属層の一部を示す概略平面図。
【
図7】(a)(b)は、変形例の平板型ループヒートパイプを構成する金属層の一部を示す概略平面図。
【
図8】変形例の平板型ループヒートパイプを構成する金属層の一部を示す概略平面図。
【
図9】(a)(b)は、変形例の平板型ループヒートパイプを構成する金属層の一部を示す概略平面図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、各形態を説明する。
なお、添付図面は、理解を容易にするために構成要素を拡大して示している場合がある。構成要素の寸法比率は実際のものと、または別の図面中のものと異なる場合がある。また、平面図や断面図では、理解を容易にするためにハッチングを付しているが、一部の構成要素のハッチングを省略している場合がある。
【0009】
図1及び
図2に示すように、平板型ループヒートパイプ10は、蒸発器11と、蒸気管12と、凝縮器13と、液管14とを有している。蒸発器11は、作動流体Cを気化させて蒸気Cvを生成する機能を有している。凝縮器13は、気化した作動流体Cである蒸気Cvを液化して作動流体Cを生成する機能を有している。蒸気管12は、蒸発器11と凝縮器13とを接続し、液管14は、凝縮器13と蒸発器11とを接続する。液管14には、ウィック14tが設けられている。ウィック14tは、液管14に沿って、凝縮器13から蒸発器11の近傍まで延びている。ウィック14tは、作動流体Cに対して毛細管力を生じる構造体である。液化した作動流体Cは、ウィック14tの毛細管力によって、凝縮器13から蒸発器11へ移動する。蒸気管12及び液管14は、作動流体C又は蒸気Cvを流すループ状の流路21を形成する。本実施形態において、液管14の長さと蒸気管12の長さは、例えば互いに同じである。なお、液管14の長さと蒸気管12の長さは、異なっていてもよい。例えば、液管14の長さに比べて蒸気管12の長さが短くてもよい。
【0010】
蒸発器11には、ウィック11tが設けられている。ウィック11tは、作動流体Cに対して毛細管力を生じる構造体である。ウィック11tは、ウィック14tよりも作動流体Cに対して高い毛細管力を生じるように構成されることが好ましい。
【0011】
凝縮器13は、流路部13Aと、ウィック部13Bとを有している。流路部13Aには、蒸気管12と液管14とを接続する流路13rが形成されている。流路13rは、蒸気管12と液管14とともに、作動流体C又は蒸気Cvを流すループ状の流路21を形成する。
【0012】
ウィック部13Bには、ウィック13tが形成されている。ウィック13tは、流路13rに接続されるとともに、流路13rから平面方向(
図1及び
図2では左方向)に延びている。ウィック13tは、作動流体Cに対して毛細管力を生じる構造体である。ウィック部13Bのウィック13tは、液管14のウィック14tと接続されている。本実施形態において、液管14のウィック14tは、液管14から凝縮器13内へと延び、凝縮器13のウィック13tに接続されている。凝縮器13のウィック13tと液管14のウィック14tは、それぞれに生じる毛細管力により作動流体Cを移動させる。従って、作動流体Cは、凝縮器13のウィック13tから液管14のウィック14tへと移動できる。
【0013】
本実施形態において、液管14のウィック14tは、凝縮器13のウィック13tより、液化した作動流体Cに対して高い毛細管力を生じるように構成されている。言い換えると、凝縮器13のウィック13tは、液管14のウィック14tよりも低い毛細管力を生じるように構成されている。このため、凝縮器13にて液化した作動流体Cは、液管14のウィック14tへと移動する。
【0014】
蒸発器11は、
図6に示す発熱部品111に密着して固定される。蒸発器11内の作動流体Cは、発熱部品111にて発生した熱により気化し、蒸気Cvが生成される。なお、蒸発器11と発熱部品111との間に、熱伝導部材(TIM:Thermal Interface Material)が介在されてもよい。熱伝導部材は、発熱部品111と蒸発器11の間の接触熱抵抗を低減し、発熱部品111から蒸発器11への熱伝導をスムーズにする。蒸発器11にて発生した蒸気Cvは、蒸気管12を介して凝縮器13へと導かれ、凝縮器13にて液化する。凝縮器13で液化した作動流体Cは、液管14を介して蒸発器11へと導かれる。
【0015】
この平板型ループヒートパイプ10は、
図6に示す発熱部品111で発生した熱を凝縮器13に移動し、その凝縮器13において放熱する。これにより、平板型ループヒートパイプ10は、発熱部品111を冷却する。
【0016】
作動流体Cとしては、蒸気圧が高く、蒸発潜熱が大きい流体を使用するのが好ましい。このような作動流体Cを用いることで、蒸発潜熱によって発熱部品を効率的に冷却できる。作動流体Cとしては、例えば、アンモニア、水、フロン、アルコール、アセトン、等を用いることができる。
【0017】
平板型ループヒートパイプ10は、例えば、複数の金属層を積層した構造とすることができる。金属層は、例えば、熱伝導性に優れた銅層であって、固相接合等により互いに直接接合されている。金属層の各々の厚さは、例えば、50μm~200μm程度とすることができる。なお、金属層は、銅層に限定されず、ステンレス層やアルミニウム層、マグネシウム合金層等から形成してもよい。又、金属層の積層数は特に限定されない。なお、積層した金属層のうちの一部の金属層について、他の金属層と異なる材料が用いられてもよい。
【0018】
この平板型ループヒートパイプ10は、
図1に示す2点鎖線にて示す位置にて、折り曲げられる。この折り曲げ位置は、本実施形態の平板型ループヒートパイプ10において、凝縮器13に設定されている。
【0019】
図4に示すように、蒸気管12は、例えば、最外金属層41、中間金属層42~45、最外金属層46が順次積層された構造とすることができる。なお、最外金属層と中間金属層とを区別する必要がない場合には、両者の総称として単に金属層と称する場合がある。なお、
図4では、各金属層41~46を判り易くするため、実線にて区別するとともに、異なるハッチングを付している。例えば金属層41~46を拡散接合により一体化した場合、各金属層41~46の界面は消失していることがあり、境界は明確ではないことがある。
【0020】
最外金属層41,46は、蒸気管12を構成する金属層の積層構造の両外側(上下方向両外側)に位置し、中間金属層42~45は、最外金属層41と最外金属層46とに挟まれている。つまり、蒸気管12を含む平板型ループヒートパイプ10は、一対の最外金属層41,46と、一対の最外金属層41,46の間に積層された中間金属層42~45から構成される。最外金属層41は、孔や溝が形成されていないべた状とされている。中間金属層42~45は、蒸気管12の管壁12aを形成する壁部42a,43a,44a,45aを有している。
【0021】
図5に示すように、液管14は、最外金属層41、中間金属層42~45、最外金属層46が順次積層されて構成されている。液管14のウィック14tは、例えば、6層の金属層41~46のうち、最上層の金属層41と最下層の金属層46を除く4層の金属層42~45により形成される。なお、
図5において、ウィック14tを形成する金属層42~45の部分には、梨地のハッチングを付している。なお、
図5では、
図4と同様に、各金属層41~46を実線にて区別するように示している。上述のように、例えば、各金属層41~46を拡散接合により一体化した場合、各金属層41~46の界面は消失しており、境界は明確ではない。
【0022】
中間金属層42,43,44,45の壁部42b,43b,44b,45bは、液管14の管壁14aを構成する。また、中間金属層42,43,44,45は、壁部42b,43b,44b,45bの内側に配置されるウィック形成部42c,43c,44c,45cを有している。積層されたウィック形成部42c,43c,44c,45cには、中間金属層42,43,44,45を厚さ方向に貫通する複数の貫通孔42X,43X,44X,45Xが形成されている。複数の貫通孔42X~45Xは、例えば円形状に形成されている。そして、各貫通孔42X~45Xは、上下方向に接する金属層42~45の貫通孔42X~45Xと一部が重なるように形成されている。複数の貫通孔42X~45Xは、それらの間に作動流体Cが流れる微細な流路24bを形成する。この流路24bにより、毛細管力が生じ作動流体Cが液管14内を流れ易くなる。本実施形態において、ウィック14tは、液管14の管壁14aから間隔をおいて設けられている。これにより、液管14は、管壁14aとウィック14tの間に、ループ状の流路21を構成する流路14bを有している。流路14bは、液管14において、作動流体Cを流れ易くする。
【0023】
図3(a)~
図3(c)は、平板型ループヒートパイプを構成する金属層41~43を示す。なお、
図3(a)~
図3(c)には、同様の形状の金属層44~46について括弧を付して対応関係を示している。
【0024】
図3(a)は、最外金属層41の一部であり、凝縮器13を構成する部分を示す。この最外金属層41には、溝や貫通孔等は形成されていない。
図4及び
図5に示す最外金属層46は、
図3(a)に示す最外金属層41と同様の形状である。
【0025】
図3(b)は、金属層42の一部であり、凝縮器13を構成する部分を示す。この金属層42において、蒸気管12に対応する部分は、壁部42aによって区画された流路12bを有している。また、凝縮器13に対応する部分は、ウィック13tに対応するウィック形成部42tと、流路13rに対応する流路42rとを有し、流路42rは、ウィック形成部42tと壁部42dとによって区画されている。また、液管14に対応する部分は、壁部42bと、ウィック形成部42cと、壁部42bとウィック形成部42cとの間の流路14bとを有している。
【0026】
この金属層42において、ウィック形成部42tは、複数の溝部42sを有している。金属層42において、各溝部42sは、金属層42を厚さ方向に貫通して形成されている。また、各溝部42sは、所定の方向、例えば平板型ループヒートパイプ10の長手方向(
図1及び
図3(b)の左右方向)に沿って延び、互いに平行に形成されている。また、各溝部42sは、凝縮器13を構成する流路13r(42r)と交差する方向(本実施形態では直交する方向)に沿って延び、各溝部42sは流路13r(42r)と連通している。各溝部42sの幅W1は、例えば、0.8mm以下とすることができる。なお、溝部42sの幅W1は、例えば、金属層42の厚さ、金属層42の材質、等に応じて適宜変更することもできる。
【0027】
図3(c)は、金属層43の一部であり、凝縮器13を構成する部分を示す。この金属層43において、蒸気管12に対応する部分は、壁部43aによって区画された流路12bを有している。また、凝縮器13に対応する部分は、ウィック13tに対応するウィック形成部43tと、流路13rに対応する流路43rとを有し、流路43rは、ウィック形成部43tと壁部43dとによって区画されている。また、液管14に対応する部分は、壁部43bと、ウィック形成部43cと、壁部43bとウィック形成部43cとの間の流路14bとを有している。流路14bは、液管14内において、作動流体Cを流れ易くする。
【0028】
この金属層43において、ウィック形成部43tは、複数の溝部43sを有している。金属層43において、各溝部43sは、金属層43を厚さ方向に貫通して形成されている。また、各溝部43sは、所定の方向、例えば、平板型ループヒートパイプ10の短手方向(
図1及び
図3(b)の上下方向)に沿って延び、互いに平行に形成されている。つまり、積層方向に隣接する金属層42,43において、各金属層42,43の溝部42s,43sは、平面視において互いに直交する方向に沿って延びるように形成されている。従って、積層方向に隣接する金属層42,43において、それぞれの溝部42s,43sは平面視において部分的に重なり、互いに連通している。また、溝部43sは、溝部42sを介して、又は直接、流路13r(43r)と連通している。各溝部43sの幅W2は、例えば、0.8mm以下とすることができる。なお、溝部43sの幅W2は、例えば、金属層43の厚さ、金属層43の材質、等に応じて適宜変更することもできる。
【0029】
図4及び
図5に示す金属層44において、凝縮器13を構成する部分は、
図3(b)に示す金属層42と同様に、壁部44d、流路13rを構成する流路44r、及びウィック13tを構成するウィック形成部44tを有している。ウィック形成部44tには複数の溝部44sが形成されている。なお、本実施形態において、金属層44の形状は金属層42と同じであるため、
図3(b)に金属層44に含まれる部材について括弧を付して示し、図を省略する。
【0030】
図4及び
図5に示す金属層45において、凝縮器13を構成する部分は、
図3(c)に示す金属層43と同様に、壁部45d、流路13rを構成する流路45r、及びウィック13tを構成するウィック形成部45tを有している。ウィック形成部45tには複数の溝部45sが形成されている。なお、本実施形態において、金属層45の形状は金属層43と同じであるため、
図3(c)に金属層45に含まれる部材について括弧を付して示し、図を省略する。
【0031】
凝縮器13のウィック13tは、積層された金属層41~46のうち、最外金属層41,46を除く金属層42~45の溝部42s~45sにより形成される3次元構造の流路を有し、このウィック13tは、凝縮器13の流路13rと連通している。従って、流路13rにおいて液化した作動流体Cは、ウィック13tにおいて生じる毛細管力によってウィック13tを流れ、液管14へと導かれる。
【0032】
次に、本実施形態の平板型ループヒートパイプ10の製造方法について説明する。
図3(a)~
図3(c)に示す金属層41~43(44~46)は、例えば厚さが100μmの銅層を、例えばウエットエッチングにより所定の形状にパターニングすることで作成される。
【0033】
図3(a)に示す金属層41を最上層に配置し、
図3(b)に示す金属層42と
図3(c)に示す金属層43とを配置し、同様に形成された金属層44,45を配置し、最下層に金属層41と同様に形成された金属層46を配置する。そして、金属層41~46を所定温度(例えば、900℃)に加熱しながら積層した金属層41~46をプレスすることにより、拡散接合にて金属層41~46を接合する。
【0034】
次に、接合した金属層41~46からなる平板型ループヒートパイプ10を、
図1に示す折り曲げ位置BPにて折り曲げ加工する。折り曲げ位置BPは、凝縮器13のウィック部13Bに設定されている。平板型ループヒートパイプ10は、ウィック部13Bにて平板を起こす方向に折り曲げられる。ウィック部13Bは、内部にウィック13tを有している。このウィック13tは、支柱として機能する。従って、折り曲げ加工によっても凝縮器13が潰れにくく、折り曲げの影響を受け難い。
【0035】
[本実施形態に係る平板型ループヒートパイプの実装構造]
次に、本実施形態に係る平板型ループヒートパイプの実装構造について、
図1や
図6を用いて説明する。
【0036】
図6に示すように、本実施形態の平板型ループヒートパイプ10は、例えば電子機器100に用いられる。
電子機器100は、筐体101と、筐体101に収容された配線基板110とを有している。配線基板110は、図示しない支持部により、筐体101の内面101aから離間した位置に配設されている。配線基板110の上面には、発熱部品111が実装されている。発熱部品111は、例えば、CPU(Central Processing Unit)やGPU(Graphics Processing Unit)等の半導体装置、等である。
【0037】
平板型ループヒートパイプ10は、上述した折り曲げ加工により平板を起こす方向に折り曲げられ、L字状に形成されている。蒸発器11は、発熱部品111の上に配置され、発熱部品111を冷却する。平板型ループヒートパイプ10の凝縮器13は、筐体101の側板102に沿って配設され、接続部材120により側板102の内面に固定される。接続部材120として、例えばヒートシンクを用いることができる。これにより、熱を筐体101の外部へと効率よく放熱できる。なお、凝縮器13と接続部材120との間と、接続部材120と筐体101の側板102との間の少なくとも一方に熱伝導部材(TIM)を介在させてもよく、凝縮器13から筐体101への熱伝導をスムーズにできる。
【0038】
凝縮器13は、凝縮器13は、流路13rと、流路13rに接する(連通する)ウィック13tを有している。蒸気管12を流れる蒸気Cvは、凝縮器13の流路13rに流れ込み、液化する。液化した作動流体Cは、流路13rに接するウィック13tに生じる毛細管力によって、流路13rからウィック13t内へと移動する。
【0039】
凝縮器13が流路13rを有していない場合、蒸気管12を流れる蒸気Cvとウィック13tの接する面積が小さいため、蒸気Cvは凝縮器13に入り込み難い。これに対し、本実施形態の凝縮器13は、蒸気管12の流路12b(21)に連通する流路13rを有しているため、蒸気Cvは蒸気管12からこの流路13rに流れ込む。更に、ウィック13tと流路13rとが接することにより、蒸気Cvとウィック13tの接する面積が増え、蒸気Cvが流路13rからウィック13tに入り込む量が増える。従って、蒸気Cvが凝縮器13に流れ易くなり、凝縮器13において効率よく蒸気Cvを液化できる。
【0040】
凝縮器13のウィック13tは、液管14のウィック14tと接続されている。従って、ウィック13tの作動流体Cは、液管14のウィック14tへと移動する。つまり、作動流体Cは、凝縮器13から液管14へと導かれる。従って、凝縮器13において液化した作動流体Cを容易に液管14に流すことができる。
【0041】
凝縮器13のウィック13tに対して、液管14のウィック14tは、作動流体Cに高い毛細管力を生じさせる。従って、作動流体Cは、凝縮器13から液管14へと容易に移動できる。そして、作動流体Cが凝縮器13のウィック13tから液管14のウィック14tへと移動することで、凝縮器13において、流路13rから、その流路13rに接するウィック13tに作動流体Cが移動し易くなる。
【0042】
以上記述したように、本実施形態によれば、以下の効果を奏する。
(1)平板型ループヒートパイプ10は、作動流体Cを気化させる蒸発器11と、作動流体C(蒸気Cv)を液化する凝縮器13と、蒸発器11と凝縮器13とを接続する蒸気管12と、凝縮器13と蒸発器11とを接続し、内部にウィック14tを有する液管14とを有している。凝縮器13は、蒸気管12と液管14とを接続する流路13rが形成された流路部13Aと、流路13rに接すると共に、流路13rから平面方向に延びるウィック13tを有するウィック部13Bとを有している。ウィック部13Bに折り曲げ位置BPが設定され、その折り曲げ位置BPにおいて平板型ループヒートパイプ10が折り曲げられる。ウィック部13Bの内部のウィック13tは、支柱として機能するため、凝縮器13における流路が潰れ難く、折り曲げの影響を受け難い。このため、作動流体Cの流路21を確保できる。
【0043】
(2)凝縮器13は、流路13rと、流路13rに接するウィック13tを有し、ウィック13tは流路13rと連通している。流路13rには、蒸気管12を介して蒸気Cvが流れる。従って、凝縮器13において蒸気Cvを効率よく液化できる。
【0044】
(3)凝縮器13の流路13rにおいて液化した作動流体Cは、ウィック13tにおいて生じる毛細管力によってウィック13tを流れ、液管14へと導かれる。従って、凝縮器13において液化した作動流体Cを容易に液管14に流すことができる。
【0045】
(4)液管14のウィック14tには、凝縮器13のウィック13tよりも作動流体Cに対して高い毛細管力が生じる。従って、作動流体Cを凝縮器13から液管14へと容易に移動させることができる。
【0046】
(変形例)
尚、上記実施形態は、以下の態様で実施してもよい。
・上記実施形態に対し、凝縮器13のウィック部13Bに含まれるウィック13tの構成を適宜変更してもよい。
【0047】
図7(a)に示すように、金属層201において、凝縮器13となる部分には、ウィック13tを構成するウィック形成部201tと、流路13rを構成する流路201rとを有し、ウィック形成部201tは、流路201rに対して斜めに延びる溝部201sを有している。
【0048】
図7(b)に示すように、金属層202において、凝縮器13となる部分には、ウィック13tを構成するウィック形成部202tと、流路13rを構成する流路202rとを有している。ウィック形成部202tは、流路202rに対して斜めに延びるとともに、金属層201の溝部201sに対して平面視において交差する方向(例えば直交する方向)に延びる溝部202sを有している。このような金属層201,202を、上記実施形態の最外金属層41,46の間に積層することで、平板型ループヒートパイプを形成できる。そして、両金属層201,202のウィック形成部201t,202tにより、流路13r(201r,202r)の作動流体Cを容易に移動させることができる。
【0049】
図8に示すように、金属層210において、凝縮器13となる部分には、ウィック13tを構成するウィック形成部210tと、流路13rとなる流路210rとを有している。ウィック形成部210tは、金属層210を厚さ方向に貫通する貫通孔210xを有している。複数の金属層210において、貫通孔210xの形成位置や大きさが異なるとともに、積層により隣接する金属層において貫通孔210xが部分的に重なるように形成する。このような複数の金属層210を上記実施形態の最外金属層41,46の間に積層することで、
図5に示すウィック14tと同様の微細な流路を形成でき、凝縮器のウィック部にウィックを有する平板型ループヒートパイプを形成できる。
【0050】
図9(a)に示すように、金属層221において、凝縮器13となる部分には、ウィック13tを構成するウィック形成部221tと、流路13rを構成する流路221rとを有し、ウィック形成部221tは、流路221rに対して直交する方向に延びる複数の溝部221sを有している。複数の溝部221sは、流路221rの延びる方向と、流路221rに対して斜めの方向とに配列されている。
【0051】
図9(b)に示すように、金属層222において、凝縮器13となる部分には、ウィック13tを構成するウィック形成部222tと、流路13rを構成する流路222rとを有し、ウィック形成部222tは、流路222rに対して平行に延びる複数の溝部222sを有している。複数の溝部222sは、流路221rの延びる方向と、流路222rに対して斜めの方向とに配列されている。このような金属層221,222を、上記実施形態の最外金属層41,46の間に積層することで、平板型ループヒートパイプを形成できる。そして、両金属層221,222のウィック形成部221t,222tにより、流路13r(221r,222r)の作動流体Cを容易に移動させることができる。
【0052】
・上記実施形態及び各変形例では、ウィック形成部の溝部を積層して隣接する金属層において平面視において互いに直交する方向に延びるものとしたが、隣接する金属層の溝部が成す角度を鋭角としてもよい。また、互いに平行であっても、部分的に重なり合って互いに連通するように形成することで、上記実施形態と同様の効果が得られる。
【0053】
・上記実施形態では、
図6に示すように、平板型ループヒートパイプ10を折り曲げ位置BP(
図1参照)にて直角に折り曲げられたが、折り曲げの角度は任意としてもよい。また、凝縮器13を円弧状に湾曲させるようにしてもよい。
【0054】
・上記実施形態に対し、溝部42sの幅W1、溝部43sの幅W2を適宜変更してもよい。また、溝部42sの幅W1と溝部43sの幅W2とを互いに異なる値としてもよい。
・上記実施形態及び上記変形例の一部を適宜公知の構成で置き換えても良い。また、上記実施形態及び上記変形例は、適宜その一部又は全部を他の形態、変形例と組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0055】
11 蒸発器
12 蒸気管
13 凝縮器
13A 流路部
13B ウィック部
13t ウィック(第2のウィック)
13r 流路
14 液管
14t ウィック(第1のウィック)
C 作動流体