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特許6997187容器、容器の製造方法、及び、薬液収容体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-20
(45)【発行日】2022-01-17
(54)【発明の名称】容器、容器の製造方法、及び、薬液収容体
(51)【国際特許分類】
   B65D 25/14 20060101AFI20220107BHJP
【FI】
B65D25/14 Z
【請求項の数】 21
(21)【出願番号】P 2019531035
(86)(22)【出願日】2018-07-17
(86)【国際出願番号】 JP2018026718
(87)【国際公開番号】W WO2019017333
(87)【国際公開日】2019-01-24
【審査請求日】2019-11-25
(31)【優先権主張番号】P 2017139022
(32)【優先日】2017-07-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2018133571
(32)【優先日】2018-07-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】306037311
【氏名又は名称】富士フイルム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100152984
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 秀明
(74)【代理人】
【識別番号】100148080
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 史生
(72)【発明者】
【氏名】大松 禎
(72)【発明者】
【氏名】上村 哲也
(72)【発明者】
【氏名】清水 哲也
【審査官】田中 一正
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-152712(JP,A)
【文献】特開2015-183130(JP,A)
【文献】特開2008-007153(JP,A)
【文献】特開2015-101680(JP,A)
【文献】国際公開第2017/099121(WO,A1)
【文献】特開2017-068262(JP,A)
【文献】特開2016-071020(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 25/14
B08B 3/00-3/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材と、前記基材上の接液部の全部に配置された、ポリオレフィンと、Ti、Al、Mg、Zr、Hf、Fe、Ni、Sn、Zn、Cr、及び、Moからなる群から選択される少なくとも1種の金属成分とを含有する組成物を含有する、厚みが50μm以上の被覆層と、を有する容器であって、
前記組成物が、1種の前記金属成分を含有する場合、
前記被覆層の表面と前記表面を基準として前記被覆層の厚み方向に10nmの位置との間を表面領域とし、前記表面を基準として前記被覆層の厚み方向に30μmの位置と前記表面を基準として前記被覆層の厚み方向に50μmの位置との間を内部領域とし、前記表面領域及び前記内部領域を飛行時間型二次イオン質量分析装置で測定した際に、
前記被覆層の少なくとも一部において、前記表面領域の前記ポリオレフィンに由来する二次イオンのピーク強度に対する、前記表面領域の前記金属成分に由来する二次イオンのピーク強度の強度比CA1s、及び、前記内部領域の前記ポリオレフィンに由来する二次イオンのピーク強度に対する、前記内部領域の前記金属成分に由来する二次イオンのピーク強度の強度比CA2s、によりCA1s/CA2sで計算される比RCAsが、0.90以下であり
前記組成物が、2種以上の前記金属成分を含有する場合、
前記被覆層の少なくとも一部において、2種以上の前記金属成分のそれぞれについて求めた前記RCAsの平均値が、0.90以下である、容器。
【請求項2】
ポリオレフィンと、Ti、Al、Mg、Zr、Hf、Fe、Ni、Sn、Zn、Cr、及び、Moからなる群から選択される少なくとも1種の金属成分とを含有する組成物からなる容器であって、
前記組成物が、1種の前記金属成分を含有する場合、
前記容器の表面と、前記表面を基準として前記容器の厚み方向に10nmの位置との間を表面領域とし、前記表面を基準として前記容器の厚み方向に30μmの位置と、前記表面を基準として前記容器の厚み方向に50μmの位置との間を内部領域とし、前記表面領域及び前記内部領域を飛行時間型二次イオン質量分析装置で測定した際に、
前記容器の少なくとも一部において、前記表面領域の前記ポリオレフィンに由来する二次イオンのピーク強度に対する、前記表面領域の前記金属成分に由来する二次イオンのピーク強度の強度比CA1、及び、前記内部領域の前記ポリオレフィンに由来する二次イオンのピーク強度に対する、前記内部領域の前記金属成分に由来する二次イオンのピーク強度の強度比CA2、によりCA1/CA2で計算される比RCAが、0.90以下であり
前記組成物が、2種以上の前記金属成分を含有する場合、
前記容器の少なくとも一部において、2種以上の前記金属成分のそれぞれについて求めた前記RCAの平均値が、0.90以下である、容器。
【請求項3】
基材と、前記基材上の接液部の全部に配置された、ポリオレフィンと、Ti、Al、Mg、Zr、Hf、Fe、Ni、Sn、Zn、Cr、及び、Moからなる群から選択される少なくとも1種の金属成分とを含有する組成物を含有する、厚みが50μm未満の被覆層と、を有する容器であって、
前記組成物が、1種の前記金属成分を含有する場合、
被覆層の表面と、前記表面を基準として前記被覆層の厚み方向に10nmの位置との間を表面領域とし、前記表面を基準として前記被覆層の厚み方向に向かって前記被覆層の全体厚みの70%の厚みに対応する位置と、前記表面を基準として前記被覆層の厚み方向に向かって前記被覆層の全体厚みの100%の厚みに対応する位置との間を内部領域とし、前記表面領域及び前記内部領域を飛行時間型二次イオン質量分析装置で測定した際に、
前記被覆層の少なくとも一部において、前記表面領域の前記ポリオレフィンに由来する二次イオンのピーク強度に対する、前記表面領域の前記金属成分に由来する二次イオンのピーク強度の強度比CA1t、及び、前記内部領域の前記ポリオレフィンに由来する二次イオンのピーク強度に対する、前記内部領域の前記金属成分に由来する二次イオンのピーク強度の強度比CA2t、によりCA1t/CA2tで計算される比RCAtが、0.90以下であり
前記組成物が、2種以上の前記金属成分を含有する場合、
前記被覆層の少なくとも一部において、2種以上の前記金属成分のそれぞれについて求めた前記RCAtの平均値が、0.90以下である、容器。
【請求項4】
前記被覆層の少なくとも一部において、前記表面領域における、飛行時間型二次イオン質量分析装置で測定した、
前記ポリオレフィンに由来する二次イオンのピーク強度に対する、C2n-で表される二次イオンのピーク強度の強度比、
前記ポリオレフィンに由来する二次イオンのピーク強度に対する、C2pCOO-で表される二次イオンのピーク強度の強度比、及び、
前記ポリオレフィンに由来する二次イオンのピーク強度に対する、C2qPO-で表される二次イオンのピーク強度の強度比、の平均値CB1、並びに、
前記内部領域における、飛行時間型二次イオン質量分析装置で測定した、
前記ポリオレフィンに由来する二次イオンのピーク強度に対する、前記C2n-で表される二次イオンのピーク強度の強度比、
前記ポリオレフィンに由来する二次イオンのピーク強度に対する、前記C2pCOO-で表される二次イオンのピーク強度の強度比、及び、
前記ポリオレフィンに由来する二次イオンのピーク強度に対する、前記C2qPO-で表される二次イオンのピーク強度の強度比、の平均値CB2、によりCB1/CB2で計算される比RCBが、1.00未満であり、
nは12~20の整数であり、pは8~24の整数であり、qは8~24の整数である、請求項1又は3に記載の容器。
【請求項5】
前記表面の少なくとも一部において、前記表面領域における、飛行時間型二次イオン質量分析装置で測定した、
前記ポリオレフィンに由来する二次イオンのピーク強度に対する、C2n-で表される二次イオンのピーク強度の強度比、
前記ポリオレフィンに由来する二次イオンのピーク強度に対する、C2pCOO-で表される二次イオンのピーク強度の強度比、及び、
前記ポリオレフィンに由来する二次イオンのピーク強度に対する、C2qPO-で表される二次イオンのピーク強度の強度比、の平均値CB1、並びに、
前記内部領域における、飛行時間型二次イオン質量分析装置で測定した、
前記ポリオレフィンに由来する二次イオンのピーク強度に対する、前記C2n-で表される二次イオンのピーク強度の強度比、
前記ポリオレフィンに由来する二次イオンのピーク強度に対する、前記C2pCOO-で表される二次イオンのピーク強度の強度比、及び、
前記ポリオレフィンに由来する二次イオンのピーク強度に対する、前記C2qPO-で表される二次イオンのピーク強度の強度比、の平均値CB2、によりCB1/CB2で計算される比RCBが、1.0未満であり、
nは12~20の整数であり、pは8~24の整数であり、qは8~24の整数である、請求項に記載の容器。
【請求項6】
前記容器に40℃の純水を容器体積の50体積%となるように収容し、1日保持した後、
前記純水中にFeが含まれる場合、前記純水中におけるFeの含有量が、前記純水全質量に対して、0.01質量ppt~0.3質量ppbであり、
前記純水中にCrが含まれる場合、Crの含有量が、前記純水全質量に対して、0.01質量ppt~0.3質量ppbであり、
前記純水中にNiが含まれる場合、Niの含有量が、前記純水全質量に対して、0.01質量ppt~0.3質量ppbである、請求項1~のいずれか1項に記載の容器。
【請求項7】
前記容器に40℃の純水を容器体積の50体積%となるように収容し、1日保持した後、前記純水中に、脂肪族アミド、及び、沸点が300℃以上の有機物からなる群から選択される化合物が含有され、
前記化合物の含有量が、前記純水全質量に対して、0.1質量ppb~1000質量ppmであり、
前記沸点が300℃以上の有機物がアルキルオレフィンを含有する、又は、
脂肪族アミドが、カルボニル基に連結した炭素数16以上の脂肪族鎖を含有する、請求項1~のいずれか1項に記載の容器。
【請求項8】
ポリオレフィンと、Ti、Al、Mg、Zr、Hf、Fe、Ni、Sn、Zn、Cr、及び、Moからなる群から選択される少なくとも1種の金属成分とを含む組成物を基材上に接触させて、洗浄前被覆層を形成する工程と、
前記洗浄前被覆層を、純水、酸、塩基、及び、有機溶剤からなる群から選択される少なくとも1種である洗浄液を用いて洗浄して、請求項1、3及び4のいずれか1項に記載の容器を得る工程と、を有する、容器の製造方法。
【請求項9】
ポリオレフィンと、Ti、Al、Mg、Zr、Hf、Fe、Ni、Sn、Zn、Cr、及び、Moからなる群から選択される少なくとも1種の金属成分とを含む組成物を基材上に接触させて、洗浄前被覆層を形成する工程と、
前記洗浄前被覆層を、酸及び有機溶剤からなる群から選択される少なくとも1種である洗浄液を用いて洗浄して、請求項1、3及び4のいずれか1項に記載の容器を得る工程と、を有する、容器の製造方法。
【請求項10】
前記洗浄液中の金属イオンの含有量が100質量ppt以下であり、前記洗浄液中の有機不純物の含有量が100質量ppm以下であり、
光散乱式液中粒子計数器によって計数される、30nm以上のサイズの被計数体の数が、前記洗浄液1mlあたり50個以下である、請求項8又は9に記載の容器の製造方法。
【請求項11】
ポリオレフィンと、Ti、Al、Mg、Zr、Hf、Fe、Ni、Sn、Zn、Cr、及び、Moからなる群から選択される少なくとも1種の金属成分とを含む組成物からなる基体を、純水、酸、塩基、及び、有機溶剤からなる群から選択される少なくとも1種である洗浄液を用いて洗浄して、請求項2又は5に記載の容器を得る、容器の製造方法であって、
前記洗浄液中の金属イオンの含有量が100質量ppt以下であり、前記洗浄液中の有機不純物の含有量が100質量ppm以下であり、
光散乱式液中粒子計数器によって計数される、30nm以上のサイズの被計数体の数が、前記洗浄液1mlあたり50個以下である、容器の製造方法。
【請求項12】
ポリオレフィンと、Ti、Al、Mg、Zr、Hf、Fe、Ni、Sn、Zn、Cr、及び、Moからなる群から選択される少なくとも1種の金属成分とを含む組成物からなる基体を、酸及び有機溶剤からなる群から選択される少なくとも1種である洗浄液を用いて洗浄して、請求項2又は5に記載の容器を得る、容器の製造方法であって、
前記洗浄液中の金属イオンの含有量が100質量ppt以下であり、前記洗浄液中の有機不純物の含有量が100質量ppm以下であり、
光散乱式液中粒子計数器によって計数される、30nm以上のサイズの被計数体の数が、前記洗浄液1mlあたり50個以下である、容器の製造方法。
【請求項13】
洗浄後の前記洗浄液が、Ti、Al、Mg、Zr、Hf、Fe、Ni、Sn、Zn、Cr、及び、Moからなる群から選択される1種のイオンを含有する場合には、洗浄後の前記洗浄液の全質量に対する、前記1種のイオンの含有量が0.01質量ppt~1.0質量ppmであり、
洗浄後の前記洗浄液がTi、Al、Mg、Zr、Hf、Fe、Ni、Sn、Zn、Cr、及び、Moからなる群から選択される2種以上のイオンを含有する場合には、洗浄後の前記洗浄液の全質量に対する、前記2種以上のイオンの含有量の平均が0.01質量ppt~1.0質量ppmである、請求項8~12のいずれか一項に記載の容器の製造方法。
【請求項14】
洗浄後の前記洗浄液が、有機不純物を1.0質量ppt~500質量ppm含有する、請求項8~13のいずれか一項に記載の容器の製造方法。
【請求項15】
洗浄後の洗浄液が以下の要件1及び要件2を満たすまで、洗浄を繰り返す、請求項8~14のいずれか一項に記載の容器の製造方法。
要件1:洗浄後の前記洗浄液中に、Ti、Al、Mg、Zr、Hf、Fe、Ni、Sn、Zn、Cr、及び、Moからなる群から選択される1種のイオンが含有される場合、前記1種のイオンの含有量が1.0質量ppm以下となるか、又は、洗浄後の前記洗浄液中に、Ti、Al、Mg、Zr、Hf、Fe、Ni、Sn、Zn、Cr、及び、Moからなる群から選択される2種以上のイオンが含有される場合、前記2種以上のイオンの含有量の平均が1.0質量ppm以下となる。
要件2:洗浄後の洗浄液中に、有機不純物が1種含有される場合、前記有機不純物の含有量が500質量ppm以下となるか、又は、洗浄後の洗浄液中に、有機不純物が2種以上含有される場合、前記2種以上の有機不純物の含有量の平均が500質量ppt以下となる。
【請求項16】
請求項1~7のいずれか一項に記載の容器と、前記容器に収容された薬液とを有する薬液収容体。
【請求項17】
請求項1~7のいずれか一項に記載の容器と、前記容器に収容された薬液とを有し、
前記薬液が、界面活性剤を含有する、薬液収容体。
【請求項18】
式(X)によって求められる充填率が60体積%以上である、請求項16又は17に記載の薬液収容体。
式(X):充填率=(容器内の薬液の体積/容器の容器体積)×100
【請求項19】
式(Y)によって求められる有機物濃度が1体積ppm以下である、請求項16~18のいずれか1項に記載の薬液収容体。
式(Y):有機物濃度=(容器内の前記薬液が充填されてない空間中に含まれる有機物の体積/容器内の薬液が充填されてない空間の体積)×100
ただし、前記有機物には、前記薬液に含有される成分は含まれない。
【請求項20】
前記薬液が、水を含有し、前記薬液中における水の含有量が、50質量%以上であり、前記薬液を基板上に塗布し、前記薬液の塗布前後での前記基板上におけるパーティクル検査装置を用いて測定した、19nm以下の粒子径のパーティクルの密度の変化が0.3個/cm以下である、請求項16~19のいずれか一項に記載の薬液収容体。
【請求項21】
前記薬液が、水を含有し、前記薬液中における水の含有量が、50質量%超であり、
単一粒子誘導結合プラズマ質量分析計で測定した、前記薬液中における30nm以下の粒子径の粒状物が、前記薬液の全質量に対して1.0質量ppb以下である、請求項16~20のいずれか一項に記載の薬液収容体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、容器、容器の製造方法、及び、薬液収容体に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスの製造の際、溶剤(典型的には有機溶剤)を含有する薬液が用いられている。近年、上記薬液に含有される不純物をより低減することが求められている。また、10nmノード以下の半導体デバイスの製造が検討されており更に上記要求が強まっている。
【0003】
特許文献1には、「密度が945kg/cm以上である高密度ポリエチレンと、有機核剤50ppm~2000ppmとを含む、ポリエチレン樹脂組成物からなり、エタノールで抽出される炭素数18及び20の炭化水素成分の含有量が100ppm以下であり、Al、Mg、Ti、Zr、及びHfの合計含有量が40ppm以下である、容器。」が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開第2013-249094号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明者らは、特許文献1に記載された容器について、上記容器に薬液を収容して薬液収容体を作製し、検討した。その結果、上記薬液収容体を保管した場合、保管後の薬液収容体から取り出した上記薬液の性能が低下している場合があるのを明らかにした。
【0006】
そこで、本発明は、薬液を収容して、長期間保管した場合にも、経時的に薬液の性能が低下しにくい(以下、「本発明の効果を有する」ともいう。)容器を提供することを課題とする。また、本発明は容器の製造方法、及び、薬液収容体を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、鋭意検討した結果、以下の構成により上記課題を達成することができることを見出した。
【0008】
[1] 基材と、基材上の少なくとも一部に配置された、ポリオレフィンと、Ti、Al、Mg、Zr、Hf、Fe、Ni、Sn、Zn、Cr、及び、Moからなる群から選択される少なくとも1種の金属成分とを含有する組成物を含有する、厚みが50μm以上の被覆層と、を有する容器であって、組成物が、1種の金属成分を含有する場合、被覆層の表面と表面を基準として被覆層の厚み方向に10nmの位置との間を表面領域とし、表面を基準として被覆層の厚み方向に30μmの位置と表面を基準として被覆層の厚み方向に50μmの位置との間を内部領域とし、表面領域及び内部領域を飛行時間型二次イオン質量分析装置で測定した際に、被覆層の少なくとも一部において、表面領域のポリオレフィンに由来する二次イオンのピーク強度に対する、表面領域の金属成分に由来する二次イオンのピーク強度の強度比CA1s、及び、内部領域のポリオレフィンに由来する二次イオンのピーク強度に対する、内部領域の金属成分に由来する二次イオンのピーク強度の強度比CA2s、によりCA1s/CA2sで計算される比RCAsが、1.00未満であるか、又は、組成物が、2種以上の金属成分を含有する場合、被覆層の少なくとも一部において、2種以上の金属成分のそれぞれについて求めたRCAsの平均値が、1.00未満である、容器。
[2] ポリオレフィンと、Ti、Al、Mg、Zr、Hf、Fe、Ni、Sn、Zn、Cr、及び、Moからなる群から選択される少なくとも1種の金属成分とを含有する組成物からなる容器であって、組成物が、1種の金属成分を含有する場合、容器の表面と、表面を基準として容器の厚み方向に10nmの位置との間を表面領域とし、表面を基準として容器の厚み方向に30μmの位置と、表面を基準として容器の厚み方向に50μmの位置との間を内部領域とし、表面領域及び内部領域を飛行時間型二次イオン質量分析装置で測定した際に、容器の少なくとも一部において、表面領域のポリオレフィンに由来する二次イオンのピーク強度に対する、表面領域の金属成分に由来する二次イオンのピーク強度の強度比CA1、及び、内部領域のポリオレフィンに由来する二次イオンのピーク強度に対する、内部領域の金属成分に由来する二次イオンのピーク強度の強度比CA2、によりCA1/CA2で計算される比RCAが、1.00未満であるか、又は、組成物が、2種以上の金属成分を含有する場合、容器の少なくとも一部において、2種以上の金属成分のそれぞれについて求めたRCAの平均値が、1.00未満である、容器。
[3] 基材と、基材上の少なくとも一部に配置された、ポリオレフィンと、Ti、Al、Mg、Zr、Hf、Fe、Ni、Sn、Zn、Cr、及び、Moからなる群から選択される少なくとも1種の金属成分とを含有する組成物を含有する、厚みが50μm未満の被覆層と、を有する容器であって、組成物が、1種の金属成分を含有する場合、被覆層の表面と、表面を基準として被覆層の厚み方向に10nmの位置との間を表面領域とし、表面を基準として被覆層の厚み方向に向かって被覆層の全体厚みの70%の厚み対応する位置と、表面を基準として被覆層の厚み方向に向かって被覆層の全体厚みの100%の厚みに対応する位置との間を内部領域とし、表面領域及び内部領域を飛行時間型二次イオン質量分析装置で測定した際に、被覆層の少なくとも一部において、表面領域のポリオレフィンに由来する二次イオンのピーク強度に対する、表面領域の金属成分に由来する二次イオンのピーク強度の強度比CA1t、及び、内部領域のポリオレフィンに由来する二次イオンのピーク強度に対する、内部領域の金属成分に由来する二次イオンのピーク強度の強度比CA2t、によりCA1t/CA2tで計算される比RCAtが、1.00未満であるか、又は、組成物が、2種以上の金属成分を含有する場合、被覆層の少なくとも一部において、2種以上の金属成分のそれぞれについて求めたRCAtの平均値が、1.00未満である、容器。
[4] 被覆層の少なくとも一部において、表面領域における、飛行時間型二次イオン質量分析装置で測定した、ポリオレフィンに由来する二次イオンのピーク強度に対する、CnH2n-で表される二次イオンのピーク強度の強度比、ポリオレフィンに由来する二次イオンのピーク強度に対する、C2pCOOで表される二次イオンのピーク強度の強度比、及び、ポリオレフィンに由来する二次イオンのピーク強度に対する、C2qPO2-で表される二次イオンのピーク強度の強度比、の平均値CB1、並びに、内部領域における、飛行時間型二次イオン質量分析装置で測定した、ポリオレフィンに由来する二次イオンのピーク強度に対する、C2n で表される二次イオンのピーク強度の強度比、ポリオレフィンに由来する二次イオンのピーク強度に対する、C2pCOOで表される二次イオンのピーク強度の強度比、及び、ポリオレフィンに由来する二次イオンのピーク強度に対する、C2qPO2-で表される二次イオンのピーク強度の強度比、の平均値CB2、によりCB1/CB2で計算される比RCBが、1.00未満であり、nは12~20の整数であり、pは8~24の整数であり、qは8~24の整数である、[1]又は[3]に記載の容器。
[5] 表面の少なくとも一部において、表面領域における、飛行時間型二次イオン質量分析装置で測定した、ポリオレフィンに由来する二次イオンのピーク強度に対する、C2n で表される二次イオンのピーク強度の強度比、ポリオレフィンに由来する二次イオンのピーク強度に対する、C2pCOOで表される二次イオンのピーク強度の強度比、及び、ポリオレフィンに由来する二次イオンのピーク強度に対する、C2qPO2-で表される二次イオンのピーク強度の強度比、の平均値CB1、並びに、内部領域における、飛行時間型二次イオン質量分析装置で測定した、ポリオレフィンに由来する二次イオンのピーク強度に対する、C2n で表される二次イオンのピーク強度の強度比、ポリオレフィンに由来する二次イオンのピーク強度に対する、C2pCOOで表される二次イオンのピーク強度の強度比、及び、ポリオレフィンに由来する二次イオンのピーク強度に対する、C2qPO2-で表される二次イオンのピーク強度の強度比、の平均値CB2、によりCB1/CB2で計算される比RCBが、1.00未満であり、nは12~20の整数であり、pは8~24の整数であり、qは8~24の整数である、[2]に記載の容器。
[6] 容器に40℃の純水を容器体積の50体積%となるように100mlを収容し、1日保持した後、
純水中にFeが含まれる場合、純水中におけるFeの含有量が、純水全質量に対して、0.01質量ppt~0.3質量ppbであり、
純水中にCrが含まれる場合、Crの含有量が、純水全質量に対して、0.01質量ppt~0.3質量ppbであり、
純水中にNiが含まれる場合、Niの含有量が、純水全質量に対して、0.01質量ppt~0.3質量ppbである、[1]~[5]のいずれかに記載の容器。
[7] 容器に40℃の純水を容器体積の50体積%となるように100mlを収容し、1日保持した後、純水中に、脂肪族アミド、及び、沸点が300℃以上の有機物からなる群から選択される化合物が含有され、
化合物の含有量が、純水全質量に対して、0.1質量ppb~1000質量ppmであり、
沸点が300℃以上の有機物がアルキルオレフィンを含有する、又は、
脂肪族アミドが、カルボニル基に連結した炭素数16以上の脂肪族鎖を含有する、[1]~[6]のいずれかに記載の容器。
[8] ポリオレフィンと、Ti、Al、Mg、Zr、Hf、Fe、Ni、Sn、Zn、Cr、及び、Moからなる群から選択される少なくとも1種の金属成分を含む組成物を基材上に接触させて、洗浄前被覆層を形成する工程と、
洗浄前被覆層を、純水、酸、塩基、及び、有機溶剤からなる群から選択される少なくとも1種を含有する洗浄液を用いて洗浄して、[1]又は[3]に記載の容器を得る工程と、を有する、容器の製造方法。
[9] 洗浄液中の金属イオンの含有量が100質量ppt以下であり、洗浄液中の有機不純物の含有量が100質量ppm以下であり、
光散乱式液中粒子計数器によって計数される、30nm以上のサイズの被計数体の数が、洗浄液1mlあたり50個以下である、[8]に記載の容器の製造方法。
[10] ポリオレフィンと、Ti、Al、Mg、Zr、Hf、Fe、Ni、Sn、Zn、Cr、及び、Moからなる群から選択される少なくとも1種の金属成分とを含む組成物からなる基体を、純水、酸、塩基、及び、有機溶剤からなる群から選択される少なくとも1種を含有する洗浄液を用いて洗浄して、[2]に記載の容器を得る、容器の製造方法であって、
洗浄液中の金属イオンの含有量が100質量ppt以下であり、洗浄液中の有機不純物の含有量が100質量ppm以下であり、
光散乱式液中粒子計数器によって計数される、30nm以上のサイズの被計数体の数が、洗浄液1mlあたり50個以下である、容器の製造方法。
[11] 洗浄後の洗浄液が、Ti、Al、Mg、Zr、Hf、Fe、Ni、Sn、Zn、Cr、及び、Moからなる群から選択される1種のイオンを含有する場合には、洗浄後の洗浄液の全質量に対する、1種のイオンの含有量が0.01質量ppt~1.0質量ppmであり、
洗浄後の洗浄液がTi、Al、Mg、Zr、Hf、Fe、Ni、Sn、Zn、Cr、及び、Moからなる群から選択される2種以上のイオンを含有する場合には、洗浄後の洗浄液の全質量に対する、2種以上のイオンの含有量の平均が0.01質量ppt~1.0質量ppmである、[8]~[10]のいずれかに記載の容器の製造方法。
[12] 洗浄後の洗浄液が、有機不純物を1.0質量ppt~500質量ppm含有する、[8]~[11]のいずれかに記載の容器の製造方法。
[13] 洗浄後の洗浄液が後述する要件1及び要件2を満たすまで、洗浄を繰り返す、[8]~[12]のいずれかに記載の容器の製造方法。
[14] [1]~[7]のいずれかに記載の容器と、容器に収容された薬液とを有する薬液収容体。
[15] 後述する式(X)によって求められる充填率が60体積%以上である、[14]に記載の薬液収容体。
[16] 後述する式(Y)によって求められる有機物濃度が1体積ppm以下である、[14]又は[15]に記載の薬液収容体。
[17] 薬液が、水を含有し、薬液中における水の含有量が、50質量%以上であり、薬液を基板上に塗布し、薬液の塗布前後での基板上におけるパーティクル検査装置を用いて測定した、19nm以下の粒子径のパーティクルの密度の変化が0.3個/cm以下である、[14]~[16]のいずれかに記載の薬液収容体。
[18] 薬液が、水を含有し、薬液中における水の含有量が、50質量%以下であり、
単一粒子誘導結合プラズマ質量分析計で測定した、薬液中における30nm以下の粒子径の粒状物が、薬液の全質量に対して1.0質量ppb以下である、[14]~[17]のいずれかに記載の薬液収容体。
[19] 薬液が、更に界面活性剤を含有する、[14]~[18]のいずれかに記載の薬液収容体。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、薬液を収容して、長期間保管した場合にも、経時的に薬液の性能が低下しにくい(以下、「本発明の効果を有する」ともいう。)容器を提供することができる。また、本発明によれば、容器の製造方法、及び、薬液収容体を提供することもできる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明について詳細に説明する。
以下に記載する構成要件の説明は、本発明の代表的な実施形態に基づいてなされることがあるが、本発明はそのような実施形態に限定されるものではない。
なお、本明細書において、「~」を用いて表される数値範囲は、「~」の前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む範囲を意味する。
なお、本明細書において、単に「平均」というときには、相加平均を意味する。
また、本発明において「準備」というときには、特定の材料を合成又は調合して備えることのほか、購入等により所定の物を調達することを含む意味である。
また、本発明において、「ppm」は「parts-per-million(10-6)」を意味し、「ppb」は「parts-per-billion(10-9)」を意味し、「ppt」は「parts-per-trillion(10-12)」を意味し、「ppq」は「parts-per-quadrillion(10-15)」を意味する。
【0011】
[容器(第1実施形態)]
本発明の第1実施形態に係る容器は、基材(容器本体)と、基材上の少なくとも一部に配置された、ポリオレフィンと、Ti、Al、Mg、Zr、Hf、Fe、Ni、Sn、Zn、Cr、及び、Moからなる群から選択される少なくとも1種の金属成分(以下「特定金属」ともいう。)とを含有する組成物(以下「特定組成物」ともいう。)を含有する、厚みが50μm以上の被覆層とを有する容器であって、後述する要件を満たす容器である。なお、上記において、特定金属は、粒子状であってもよいし、イオンであってもよい。
【0012】
半導体製造工程で用いられる純度の高い薬液、及び/又は、殺菌若しくは消毒等の医療用に使用される純度の高い薬液は、一定のクリーン度(容器から薬液中に移行する不純物の量を減少させていること)が要求される。
特許文献1に記載された容器は、エタノールで抽出される特定の炭化水素成分及び金属成分の量が一定以下に抑制されている。しかしながら、本発明者らの検討によれば、上記容器に昨今要求されるレベルの高純度の薬液を収納した場合、経時的に、容器から不純物成分が溶出し、薬液の性能が悪化することがあることを知見した。
すなわち、特許文献1の容器では、昨今要求されるレベルの高純度の薬液を収納するには不十分であることがわかった。
【0013】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、上記容器のうち、被覆層の表面(表面とは、被覆層と、他の相との界面を意味する)を基準として、被覆層の厚み方向に10nmの位置との間(表面領域)と、被覆層の表面を基準として容器の厚み方向に30μmの位置と、表面を基準として被覆層の厚みの方向に50μmの位置との間(内部領域)における特定の成分の分布を制御することによって、課題を解決することができることを見出し、本発明を完成させた。
【0014】
すなわち、本実施形態に係る容器は、上記組成物が、1種の特定金属を含有する場合、表面領域及び内部領域を飛行時間型二次イオン質量分析装置で測定した際に、被覆層の少なくとも一部において、表面領域のポリオレフィンに由来する二次イオンのピーク強度に対する、表面領域の特定金属に由来する二次イオンのピーク強度の強度比CA1s、及び、内部領域のポリオレフィンに由来する二次イオンのピーク強度に対する、内部領域の1種の特定金属に由来する二次イオンのピーク強度の強度比CA2s、によりCA1s/CA2sで計算される比RCAsが1.00未満であるか、又は、上記組成物が、2種以上の金属成分を含有する場合、被覆層の少なくとも一部において、2種以上の特定金属のそれぞれについて求めたRCAsの平均値が1.00未満である、容器である。
以下では、上記容器の材料及び物性について、詳細に説明する。
【0015】
本実施形態に係る容器(以下「本容器」ともいう。)は、基材上の少なくとも一部に、特定組成物を含有する、厚みが50μm以上の被覆層を有する容器であり、特定組成物からなる厚みが50μm以上の被覆層を有する容器が好ましい。
なお、本容器は、接液部(本容器に液体を収容したとき、収容された液体と接触する可能性がある部分)の少なくとも一部に被覆層を有することが好ましい。すなわち、基材上の、接液部となる部分のうち、少なくとも一部に被覆層を有することが好ましく、接液部の全部に被覆層を有することがより好ましく、容器の内側表面の全部に被覆層を有することが更に好ましく、容器の表面の全部に被覆層を有することが特に好ましい。
言い換えれば、本容器においては、薬液を収容できる収容部を有する容器本体(基材に該当)の収容部の表面の全部に被覆層が配置されることが好ましく、容器本体の全面に被覆層が配置されることがより好ましい。
【0016】
〔基材〕
本実施形態に係る容器は基材上に、特定組成物を含有する被覆層を有する。基材としては特に制限されず、例えば、有機材料(樹脂等)及び無機材料(ガラス、及び、金属等)を使用できる。
なお、基材は、薬液を収容できる収容部を有する容器本体であることが好ましい。
【0017】
なかでも、より優れた本発明の効果を有する容器が得られる点で、基材は、後述するポリオレフィン、及び/又は、耐腐食材料を含有することが好ましく、ポリオレフィン、及び/又は、耐腐食材料からなることが好ましい。
【0018】
<耐腐食材料>
基材は、フッ素樹脂、及び、電解研磨された金属材料からなる群から選択される少なくとも1種の材料(耐腐食材料)で形成され、金属材料は、クロム、及びニッケルからなる群から選択される少なくとも1種を含有し、クロム及びニッケルの含有量の合計が金属材料の全質量に対して25質量%超であることが好ましい。
【0019】
(電解研磨された金属材料(電解研磨済み金属材料))
上記電解研磨された金属材料の製造に用いられる金属材料は、クロム及びニッケルからなる群から選択される少なくとも1種を含有し、クロム及びニッケルの含有量の合計が金属材料の全質量に対して25質量%超である金属材料であれば特に制限されず、例えばステンレス鋼、及び、ニッケル-クロム合金等が挙げられる。
金属材料におけるクロム及びニッケルの含有量の合計は、金属材料全質量に対して、25質量%以上が好ましく、30質量%以上がより好ましい。
なお、金属材料におけるクロム及びニッケルの含有量の合計の上限値としては特に制限されないが、一般的に90質量%以下が好ましい。
【0020】
ステンレス鋼としては、特に制限されず、公知のステンレス鋼を用いることができる。なかでも、ニッケルを8質量%以上含有する合金が好ましく、ニッケルを8質量%以上含有するオーステナイト系ステンレス鋼がより好ましい。オーステナイト系ステンレス鋼としては、例えばSUS(Steel Use Stainless)304(Ni含有量8質量%、Cr含有量18質量%)、SUS304L(Ni含有量9質量%、Cr含有量18質量%)、SUS316(Ni含有量10質量%、Cr含有量16質量%)、及びSUS316L(Ni含有量12質量%、Cr含有量16質量%)等が挙げられる。
なお、上記括弧中のNi含有量及びCr含有量は、金属材料の全質量に対する含有割合である。
【0021】
ニッケル-クロム合金としては、特に制限されず、公知のニッケル-クロム合金を用いることができる。なかでも、金属材料の全質量に対する、ニッケル含有量が40~75質量%、クロム含有量が1~30質量%のニッケル-クロム合金が好ましい。
ニッケル-クロム合金としては、例えば、ハステロイ(商品名、以下同じ。)、モネル(商品名、以下同じ)、及びインコネル(商品名、以下同じ)等が挙げられる。より具体的には、ハステロイC-276(Ni含有量63質量%、Cr含有量16質量%)、ハステロイ-C(Ni含有量60質量%、Cr含有量17質量%)、及び、ハステロイC-22(Ni含有量61質量%、Cr含有量22質量%)等が挙げられる。
また、ニッケル-クロム合金は、必要に応じて、上記した合金の他に、更に、ホウ素、ケイ素、タングステン、モリブデン、銅、及びコバルト等を含有していてもよい。
【0022】
金属材料を電解研磨する方法としては特に制限されず、公知の方法を用いることができる。例えば、特開2015-227501号公報の段落[0011]-[0014]、及び特開2008-264929号公報の段落[0036]-[0042]等に記載された方法を用いることができる。
【0023】
金属材料は、電解研磨されることにより表面の不動態層におけるクロムの含有量が、母相のクロムの含有量よりも多くなっているものと推測される。
なお、金属材料はバフ研磨されていてもよい。バフ研磨の方法は特に制限されず、公知の方法を用いることができる。バフ研磨の仕上げに用いられる研磨砥粒のサイズは特に制限されないが、金属材料の表面の凹凸がより小さくなりやすい点で、#400以下が好ましい。なお、バフ研磨は、電解研磨の前に行われることが好ましい。
【0024】
(フッ素樹脂)
上記フッ素樹脂としては、フッ素原子を含有する樹脂(ポリマー)であれば特に制限されず、公知のフッ素樹脂を用いることができる。フッ素樹脂としては、例えば、ポリテトラフルオロエチレン、ポリクロロトリフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、テトラフルオロエチレン-ヘキサフルオロプロピレン共重合体、テトラフルオロエチレン-パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体、テトラフルオロエチレン-エチレン共重合体、クロロトリフルオロエチレン-エチレン共重合体、及びパーフルオロ(ブテニルビニルエーテル)の環化重合体(サイトップ(登録商標))等が挙げられる。
【0025】
なお、基材の厚みとしては特に制限されないが、一般に100μm~500mmが好ましい。
【0026】
本実施形態に係る容器は、基材上に配置された被覆層を有し、上記被覆層は特定組成物を含有し、特定組成物からなることが好ましい。
なお、被覆層の厚みとしては50μm以上であれば特に制限されないが、一般に3000μm以下が好ましく、2000μm以下がより好ましい。
【0027】
〔組成物〕
<ポリオレフィン>
特定組成物は、ポリオレフィンと、特定金属を含有する。特定組成物中におけるポリオレフィンの含有量としては特に制限されないが、一般に組成物の全質量に対して、95.0質量%以上が好ましく、98.0質量%以上がより好ましい。上限としては特に制限されないが、一般に、99.99999質量%以下が好ましい。
【0028】
本明細書において、ポリオレフィンとは、オレフィン類をモノマーとして合成されるポリマーを意味する。ポリオレフィンとしては、例えば、ポリエチレン、及び、ポリプロピレン等が挙げられる。また、ポリオレフィンとしては、エチレンと他のα-オレフィンとの共重合体を用いることもできる。α-オレフィンとしては特に制限されないが、炭素数3~20のα-オレフィンが挙げられ、より具体的には、プロピレン、1-ブテン、4-メチル-1-ペンテン、1-ヘキセン、1-オクテン、1-ノネン、1-デセン、1-ウンデセン、1-ドデセン、1-トリデセン、及び、1-テトラデセン等が挙げられる。ポリオレフィンは、1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。2種以上のポリオレフィンを併用する場合には、合計含有量が上記範囲内であることが好ましい。
【0029】
なかでも、より優れた本発明の効果を有する容器が得られる点で、ポリオレフィンとしては、ポリエチレン、及び、エチレンとα-オレフィンとの共重合体からなる群から選択される少なくとも1種が好ましく、ポリエチレンがより好ましい。なかでもより優れた本発明の効果を有する容器が得られる点で高密度ポリエチレン(HDPE)が更に好ましい。
【0030】
HDPEの重量平均分子量(Mw)としては特に制限されないが、一般に1000~1000000が好ましく、5000~500000がより好ましい。
また、HDPEの分子量分布(Mw/Mn)は、特に制限されないが、2.0~6.0が好ましい。Mw/Mn値が2.0以上であれば、流動性に優れたブロー成形、及び射出成形が容易な高密度ポリエチレンとなる。一方、6.0以下であれば、低分子量成分が減少し、クリーン性が向上するだけでなく、耐衝撃性も向上する。高密度ポリエチレンのMw/Mn値は2.5~5.5がより好ましく、3.0~5.0が更に好ましい。なお、本明細書における重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)は、ゲル浸透クロマトグラフィーによりポリスチレン換算で求められる値を意味する。
【0031】
<特定金属>
特定組成物は特定金属を含有する。特定組成物中における特定金属の含有量としては特に制限されないが、一般に特定組成物の全質量に対して0.1~100質量ppmが好ましく、0.1~30質量ppmがより好ましく、0.1~20質量ppmが更に好ましい。
【0032】
特定金属は、ポリオレフィンと意図的に混合されることにより特定組成物中に含有されていてもよいし、意図せず(例えば、原料に由来する不純物、及び、製造工程中のコンタミネーション等として)組成物中に含有されていてもよい。
特定組成物が特定金属を含有する典型的な形態としては、特定金属が、ポリオレフィンの重合触媒として用いられる場合が挙げられる。すなわち、ポリオレフィンの重合過程において使用された特定金属を含有する重合触媒が、特定組成物中にも残存する場合が挙げられる。
【0033】
重合触媒としては特に制限されないが、例えば、チーグラー・ナッタ触媒、メタロセン触媒、及び、フィリップス触媒等が挙げられる。これらの触媒は、1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0034】
・チーグラー・ナッタ触媒
チーグラー・ナッタ触媒としては、Mg、Ti、ハロゲン及び電子供与体を含有する固体触媒成分と有機アルミニウム化合物とからなる触媒が挙げられる。電子供与体とは、酸素原子を含む有機化合物であり、例えば、エーテル類及びエステル類が挙げられ、エステル類が好ましい。
固体触媒成分の具体例としては、TiCl、TiBr、Ti(OEt)Cl、Ti(OEt)Br2、及び、その類似物等が挙げられる。
有機アルミニウム化合物とは、少なくとも1種以上のAl(アルミニウム)-炭素結合を含有する化合物であり、例えば、トリメチルAl、トリエチルAl、及び、トリイソブチルAl等が挙げられる。
【0035】
・メタロセン触媒
メタロセン触媒としては、シクロペンタジエン型アニオン骨格を有する基を持つ第4族遷移金属の錯体とアルミノキサンとからなる触媒が挙げられる。
シクロペンタジエン型アニオン骨格を含有する基としては、例えば、シクロペンタジエニル基、n-ブチルシクロペンタジエニル基、及び、インデニル基等が挙げられ、n-ブチルシクロペンタジエニル基、又は、インデニル基が好ましい。また、これらをアルキレン基、及び、シリレン基等で架橋したもの、例えばジメチルシリレンビスインデニル基、及び、エチレンビスインデニル基等が挙げられる。
【0036】
第4族遷移金属原子としては、Ti、Zr、及び、Hf等が挙げられ、Zrが好ましい。
シクロペンタジエン型アニオン骨格を有する基を持つ第4族遷移金属原子の錯体としては、例えば、ジシクロペンタジエニルZrジクロリド、ジn-ブチルシクロペンタジエニルZrジクロリド、ジメチルシリレンビスインデニルZrジクロリド、及び、エチレンビスインデニルZrジクロリド等が挙げられる。
アルミノキサンとは、-(Al(R)-O)n-の構造を含有する化合物であり、Rは炭素数1~4のアルキル基であり、アルキル基は同じであってもよく、異なっていてもよい。nは2~50の数である。
アルミノキサンのアルキル基(R)としては、例えば、メチル基及びエチル基等が挙げられる。nとしては、好ましくは10~30である。
アルミノキサンとしては、例えば、メチルアルミノキサン、及び、エチルアルミノキサン等が挙げられる。
【0037】
・フィリップス触媒
フィリップス触媒は、クロム化合物をシリカ、シリカ-アルミナ、及び、シリカ-チタニア等の無機酸化物担体に担持させ、非還元性雰囲気で賦活することにより、担持されたクロム元素の少なくとも一部のクロム元素を6価としたクロム触媒である。
フィリップス触媒としては、CrO、クロモセン(chromocene)、クロム酸シリル及びその類似物が挙げられ、これらは米国特許第4124532号明細書、及び、米国特許第4302565号明細書中に記載されている。
【0038】
・ポストメタロセン触媒
ポストメタロセン触媒(例えば、「ポリエチレン技術読本;2001年工業調査会(株)発行」、「均一系遷移金属触媒によるリビング重合;1999年アイピーシー(株)発行」、「触媒活用大辞典;2004年工業調査会発行」等)としては、中心金属が周期律表4B族であるTi、Zr、若しくは、Hfのもの、又は、Cr、Fe、Niのものが高活性を示す。
【0039】
その他の触媒としては、酸化モリブデンを含有する主触媒とアルミニウムの酸化物からなる触媒担体から構成されるスタンダード触媒、及び、ニッケル系触媒等が挙げられ、特開平5-175072号公報、及び、特開平6-122721号公報等に記載されている。
【0040】
上記重合触媒は、担体に担持されていることがあり、そのような担体としては、特に制限されないが、有機担体としては、例えば、炭素数2~10のα-オレフィンの(共)重合体(ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン-1、エチレン-プロピレン共重合体、エチレン-ブテン-1共重合体、エチレン-ヘキセン-1共重合体、プロピレン-ブテン-1共重合体、及び、プロピレン-ジビニルベンゼン共重合体等)、芳香族不飽和炭化水素重合体(ポリスチレン、及び、スチレン-ジビニルベンゼン共重合体等)、及び、極性基含有重合体(ポリアクリル酸エステル、ポリメタクリル酸エステル、ポリアクリルニトリル、ポリ塩化ビニル、ポリアミド、及び、ポリカーボネート等)が挙げられる。
【0041】
無機担体としては、例えば、SiO、Al、MgO、TiO、B、CaO、ZnO、BaO、ThO、SiO-MgO、SiO-Al、SiO-V、MgCl、AlCl、MnCl、NaCO、KCO、CaCO、MgCO、Al(SO、BaSO、KNO、Mg(NO、Mg(OH)、Al(OH)、及び、Ca(OH)等が挙げられる。担体の粒子径としては特に制限されないが、一般に、1~3000μmが好ましく、5~2000μmがより好ましく、10~1000μmが更に好ましい。
【0042】
特定組成物が上記特定金属を含有する形態としては、上記に制限されない。例えば、ポリオレフィンの製造装置(反応槽、ストレージタンク、及び、管路等)の接液部等から、Ti、Al、Mg、Zr、Hf、Fe、Ni、Sn、Zn、Cr、及び、Moが不純物としてポリオレフィンに移行し、結果として組成物が特定金属を含有する形態も挙げられる。
【0043】
<その他の成分>
特定組成物は、上記以外の成分を含有していてもよい。上記以外の成分としては、例えば、核化剤(結晶核剤)等が挙げられる。核化剤としては、例えば、リン酸エステル金属塩、カルボン酸エステル金属塩、ロジン金属塩、ベンジリデンソルビトール、キナクリドン、シアニンブルー、及び、タルク等が挙げられ、なかでも、より優れた本発明の効果を有する容器が得られる点で、リン酸エステル金属塩、又は、カルボン酸エステル金属塩が好ましい。
特定組成物中における核化剤の含有量としては特に制限されないが、一般に、組成物の全質量に対して、0.01~2.0質量%が好ましい。核化剤は、1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。2種以上の核化剤を併用する場合には、合計含有量が上記範囲内であることが好ましい。
【0044】
リン酸エステル金属塩としては、例えば、ナトリウム-2,2’-メチレン-ビス(4,6-ジ-t-ブチルフェニル)ホスフェート、ナトリウム-2,2’-エチリデン-ビス(4,6-ジ-t-ブチルフェニル)ホスフェート、リチウム-2,2’-メチレン-ビス(4,6-ジ-t-ブチルフェニル)ホスフェート、リチウム-2,2’-エチリデン-ビス(4,6-ジ-t-ブチルフェニル)ホスフェート、カルシウム-ビス[2,2’-メチレン-ビス(4,6-ジ-t-ブチルフェニル)ホスフェート]、マグネシウム-ビス[2,2’-メチレン-ビス(4,6-ジ-t-ブチルフェニル)ホスフェート]、アルミニウム-トリス[2,2’-メチレン-ビス(4,6-ジ-t-ブチルフェニル)ホスフェート]、2,2’-メチレンビス(4,6-ジ-t-ブチルフェニル)ホスフェート塩基性アルミニウム塩、及び、ビス(2,4,8,10-テトラ-t-ブチル-ヒドロキシ-12H-ジベンゾ[d,g][1,3,2]ジオキサホスホシン-6-オキシド)水酸化アルミニウム等が挙げられる。
【0045】
カルボン酸エステル金属塩としては、芳香族カルボン酸又は脂肪族カルボン酸の金属塩が挙げられ、具体的には、安息香酸アルミニウム塩、p-t-ブチル安息香酸アルミニウム塩、アジピン酸ナトリウム、チオフェネカルボン酸ナトリウム、及び、ピローレカルボン酸ナトリウム等が挙げられる。
【0046】
〔容器の物性〕
<RCAs>
本発明の実施形態に係る容器は、特定組成物が、1種の特定金属を含有する場合には、被覆層の少なくとも一部において、表面Sと、表面Sを基準として容器の厚み方向に10nmの位置S10との間(表面領域)における、飛行時間型二次イオン質量分析装置で測定したポリオレフィンに由来する二次イオンのピーク強度I10、に対する、特定金属に由来する二次イオンのピーク強度M10の強度比CA1s(M10/I10)及び、表面を基準として容器の厚み方向に30μmの位置と、表面を基準として容器の厚み方向に50μmの位置との間(内部領域)における、飛行時間型二次イオン質量分析装置で測定したポリオレフィンに由来する二次イオンのピーク強度I50kに対する、1種の特定金属に由来する二次イオンのピーク強度M50kの強度比のCA2s(M50k/I50k)、によりCA1s/CA2sで計算される比RCAsが1.00未満であるか、又は、
特定組成物が、2種以上の特定金属を含有する場合、被覆層の少なくとも一部において、2種以上の特定金属のそれぞれについて求めたRCAsの平均値が1.00未満である、容器である。
【0047】
なお、I10は、表面領域の各測定点において測定した、ポリオレフィンに由来する二次イオンのピーク強度(積算強度)の平均を意味し、表面領域における測定点数は、20点である。上記は、M10についても同様である。
なお、I50kは、内部領域の各測定点において測定した、ポリオレフィンに由来する二次イオンのピーク強度(積算強度)の平均を意味し、内部領域における測定点数は、20点である。上記は、M50kについても同様である。
なお、詳細な測定条件については実施例に記載したとおりである。
【0048】
容器がRCAs<1.00を満たす場合、内部領域と比較して、表面領域において、相対的に特定金属の含有量が少ないことを意味する。容器のうち接液部が上記の関係を満たす容器である場合、容器に薬液を収容し、長期間保管しても容器から不純物等が溶出しにくくなり、薬液の性能がより維持されやすい。
【0049】
RCAsは、1.00未満であれば特に制限されないが、より優れた本発明の効果を有する容器が得られる点で、0.90以下が好ましく、0.70未満がより好ましく、0.40未満が更に好ましく、0.25以下が特に好ましい。下限値としては特に制限されないが、一般に0.001以上が好ましい。
なおRCAsは飛行時間型二次イオン質量分析法により測定することができるI10、M10、I50k、及び、M50kから計算することができる数値であり、測定試料の準備方法及び測定条件は実施例に記載したとおりである。
【0050】
なお、上記関係は、被覆層の少なくとも一部において満たされればよいが、より優れた本発明の効果を有する容器が得られる点で、接液部となる被覆層の一部において満たされることが好ましく、接液部となる被覆層の全部において満たされることがより好ましく、被覆層の全部において満たされることが更に好ましい。
【0051】
本実施形態に係る容器は、更に蓋を有する蓋付き容器であってもよい。なお、本実施形態に係る容器が蓋を有する場合、蓋についても上記容器と同様の材料及び特性を有することが好ましい。
【0052】
[容器(第2実施形態)]
本発明の第2実施形態に係る容器は、特定組成物からなる容器であって、後述する要件を満たす容器である。
以下では、上記実施形態に係る容器について説明するが、以下に説明のない材料及び要件等は第1実施形態と同様である。
【0053】
半導体製造工程で用いられる純度の高い薬液、及び/又は、殺菌若しくは消毒等の医療用に使用される純度の高い薬液は、一定のクリーン度(容器から薬液中に移行する不純物の量を減少させていること)が要求される。
特許文献1に記載された容器は、エタノールで抽出される特定の炭化水素成分及び金属成分の量が一定以下に抑制されている。しかしながら本発明者らの検討によれば、上記容器に昨今要求されるレベルの高純度の薬液を収納した場合、経時的に、容器から不純物成分が溶出し、薬液の性能が経時的に悪化することがあることを知見した。
すなわち、特許文献1の容器では、昨今要求されるレベルの高純度の薬液を収納するには不十分であることがわかった。
【0054】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、特定組成物からなる容器のうち、容器の表面を基準として、容器の厚み方向に10nmの位置との間(表面領域)と、容器の表面を基準として被覆層の厚み方向に30μmの位置と、表面を基準として被覆層の厚みの方向に50μmの位置との間(内部領域)における特定の成分の分布を制御することによって、課題を解決することができることを見出し、本発明を完成させた。
【0055】
すなわち、本実施形態に係る容器は、特定組成物が、1種の特定金属を含有する場合、容器の表面と、表面を基準として容器の厚み方向に10nmの位置との間を表面領域とし、表面を基準として容器の厚み方向に30μmの位置と、表面を基準として容器の厚み方向に50μmの位置との間を内部領域とし、表面領域及び内部領域を飛行時間型二次イオン質量分析装置で測定した際に、容器の少なくとも一部において、表面領域のポリオレフィンに由来する二次イオンのピーク強度に対する、表面領域の金属成分に由来する二次イオンのピーク強度の強度比CA1、及び、内部領域のポリオレフィンに由来する二次イオンのピーク強度に対する、内部領域の金属成分に由来する二次イオンのピーク強度の強度比CA2、によりCA1/CA2で計算される比RCAが、1.00未満であるか、又は、
特定組成物が、2種以上の金属成分を含有する場合、容器の少なくとも一部において、2種以上の金属成分のそれぞれについて求めたRCAの平均値が、1.00未満である、容器である。
【0056】
〔容器の物性〕
本発明の実施形態に係る容器は、特定組成物が、1種の特定金属を含有する場合には、表面の少なくとも一部において、表面Sと、表面Sを基準として容器の厚み方向に10nmの位置S10との間(表面領域)における、飛行時間型二次イオン質量分析装置で測定したポリオレフィンに由来する二次イオンのピーク強度に対するI10、特定金属に由来する二次イオンのピーク強度M10の強度比CA1(M10/I10)、及び、表面を基準として容器の厚み方向に30μmの位置と、表面を基準として容器の厚み方向に50μmの位置との間(内部領域)における、飛行時間型二次イオン質量分析装置で測定したポリオレフィンに由来する二次イオンのピーク強度I50kに対する、1種の特定金属に由来する二次イオンのピーク強度M50kの強度比のCA2(M50k/I50k)、によりCA1/CA2で計算される比RCAが1.00未満であるか、又は、
特定組成物が、2種以上の特定金属を含有する場合、表面の少なくとも一部において、2種以上の特定金属のそれぞれについて求めたRCAの平均値が1.00未満である、容器である。
【0057】
なお、I10は、表面領域の各測定点において測定した、ポリオレフィンに由来する二次イオンのピーク強度(積算強度)の平均を意味し、表面領域における測定点数は、20点である。上記は、M10についても同様である。
なお、I50kは、内部領域の各測定点において測定した、ポリオレフィンに由来する二次イオンのピーク強度(積算強度)の平均を意味し、内部領域における測定点数は、20点である。上記は、M50kについても同様である。
【0058】
容器がRCA<1.00を満たす場合、内部領域と比較して、表面領域において、相対的に特定金属の含有量が少ないことを意味する。容器のうち接液部が上記の関係を満たす容器である場合、容器に薬液を収容し、長期間保管しても容器化から不純物等が溶出しにくくなり、薬液の性能がより維持されやすい。
【0059】
RCAは、1.00未満であれば特に制限されないが、より優れた本発明の効果を有する容器が得られる点で、0.90以下が好ましく、0.70未満がより好ましく、0.40未満が更に好ましく、0.25以下が特に好ましい。下限値としては特に制限されないが、一般に0.001以上が好ましい。
なお、RCAは飛行時間型二次イオン質量分析法により測定することができる数値であり、測定試料の準備方法及び測定条件は実施例に記載したとおりである。
【0060】
なお、上記関係は、容器の少なくとも一部において満たされればよいが、より優れた本発明の効果を有する容器が得られる点で、容器のうちで接液部の一部において満たされることが好ましく、容器のうちで接液部の全部において満たされることが更に好ましく、容器の全部において満たされることが特に好ましい。
【0061】
本実施形態に係る容器は、更に蓋を有する蓋付き容器であってもよい。なお、本実施形態に係る容器が蓋を有する場合、蓋についても上記容器と同様の材料及び特性を有することが好ましい。
また、本実施形態に係る容器の厚みとしては特に制限されないが、一般に50μmを超えるのが好ましく、100μm以上がより好ましく、200μm以上が更に好ましく、100mm以下が好ましく、80mm以下がより好ましく、50mm以下が更に好ましい。
【0062】
[容器(第3実施形態)]
本発明の第3実施形態に係る容器は、基材上に、特定組成物を含有する、厚みが50μm未満の被覆層を有する容器であり、特定組成物からなる厚みが50μm未満の被覆層を有する容器が好ましい。
【0063】
半導体製造工程で用いられる純度の高い薬液、及び/又は、殺菌若しくは消毒等の医療用に使用される純度の高い薬液は、一定のクリーン度(容器から薬液中に移行する不純物の量を減少させていること)が要求される。
特許文献1に記載された容器は、エタノールで抽出される特定の炭化水素成分及び金属成分の量が一定以下に抑制されている。しかしながら本発明者らの検討によれば、上記容器に昨今要求されるレベルの高純度の薬液を収納した場合、経時的に、容器から不純物成分が溶出し、薬液の性能が悪化することがあることを知見した。
すなわち、特許文献1の容器では、昨今要求されるレベルの高純度の薬液を収納するには不十分であることがわかった。
【0064】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、上記容器のうち、被覆層の表面を基準として、被覆層の厚み方向に10nmの位置との間(表面領域)と、被覆層の表面を基準として被覆層の厚み方向に向かって被覆層の全体厚みの70%の厚みに対応する位置と、被覆層の表面を基準として、被覆層の厚み方向に向かって被覆層の全体厚みの100%の厚みに対応する位置との間(内部領域)における特定の成分の分布を制御することによって、課題を解決することができることを見出し、本発明を完成させた。
【0065】
すなわち、本実施形態に係る容器は、基材と、基材上の少なくとも一部に配置された、特定組成物を含有する、厚みが50μm未満の被覆層と、を有する容器であって、特定組成物が、1種の特定金属を含有する場合、被覆層の表面と、表面を基準として被覆層の厚み方向に10nmの位置との間を表面領域とし、表面を基準として被覆層の厚み方向に向かって被覆層の全体厚みの70%の厚み対応する位置と、表面を基準として被覆層の厚み方向に向かって被覆層の全体厚みの100%の厚みに対応する位置との間を内部領域とし、表面領域及び内部領域を飛行時間型二次イオン質量分析装置で測定した際に、被覆層の少なくとも一部において、表面領域のポリオレフィンに由来する二次イオンのピーク強度に対する、表面領域の金属成分に由来する二次イオンのピーク強度の強度比CA1t、及び、内部領域のポリオレフィンに由来する二次イオンのピーク強度に対する、内部領域の金属成分に由来する二次イオンのピーク強度の強度比CA2t、によりCA1t/CA2tで計算される比RCAtが、1.00未満であるか、又は、特定組成物が、2種以上の金属成分を含有する場合、被覆層の少なくとも一部において、2種以上の金属成分のそれぞれについて求めたRCAtの平均値が、1.00未満である、容器である。
【0066】
容器がRCAt<1.00を満たす場合、表面領域において、内部領域と比較して、相対的に特定金属の含有量が少ないことを意味する。容器のうち接液部が上記の関係を満たす容器である場合、容器に薬液を収容し、長期間保管しても容器化から不純物等が溶出しにくくなり、薬液の性能がより維持されやすい。
【0067】
RCAtは、1.00未満であれば特に制限されないが、より優れた本発明の効果を有する容器が得られる点で、0.90以下が好ましく、0.70未満がより好ましく、0.40未満が更に好ましく、0.25以下が特に好ましい。下限値としては特に制限されないが、一般に0.001以上が好ましい。
なお、RCAtは飛行時間型二次イオン質量分析法により測定することができる数値であり、測定試料の準備方法及び測定条件は実施例に記載したとおりである。
【0068】
なお、上記関係は、被覆層の表面の少なくとも一部において満たされればよいが、より優れた本発明の効果を有する容器が得られる点で、接液部の一部において満たされることが好ましく、接液部の全部において満たされることが更に好ましく、被覆層の表面の全部において満たされることが特に好ましい。
【0069】
本実施形態に係る容器は、更に蓋を有する蓋付き容器であってもよい。なお、本実施形態に係る容器が蓋を有する場合、蓋についても上記容器と同様の材料及び特性を有することが好ましい。
【0070】
本実施形態に係る容器は、基材上に配置された被覆層を有し、上記被覆層は特定組成物を含有し、特定組成物からなることが好ましい。
なお、被覆層の厚みとしては50μm未満であれば特に制限されないが、一般に20μm以上が好ましく、30μm以上がより好ましい。
【0071】
[容器の物性(その他)]
〔RCB〕
これまでに説明した本発明の各実施形態に係る容器は、より優れた本発明の効果を有する点で、以下の方法により求められるRCBが、容器(又は被覆層を有する場合には被覆層)の少なくとも一部において1.0未満であることが好ましい。上記関係は、より優れた本発明の効果を有する容器が得られる点で、接液部の一部において満たされることが好ましく、接液部の全部において満たされることがより好ましく、表面(又は被覆層)の全部において満たされることが更に好ましい。
RCBは、後述するように、ポリオレフィン(特に、低重合度のポリオレフィン)に由来する成分、及び、核化剤に由来する成分の容器中における分布を反映した数値であり、これが一部の表面において1.0未満であることは、表面領域における、ポリオレフィン(特に、低重合度のポリオレフィン)に由来する成分及び/又は核化剤に由来する成分の含有量が、内部領域と比較して相対的に少ないことを意味する。本発明者らの検討によれば、ポリオレフィン(特に、低重合度のポリオレフィン)に由来する成分及び核化剤に由来する成分は、容器に収容された薬液に経時的に溶出するため、長期間保管した場合、薬液の性能を低下させる要因の一つとなることを見出している。なお、「由来する成分」とは、それ自体、並びに、それの反応物生成物及び分解物等を含む。
本発明の実施形態に係る容器が、RCB<1.00を満たすと、上記容器に保管した薬液には、ポリオレフィン(特に、低重合度のポリオレフィン)に由来する成分、及び/又は、核化剤に由来する成分が溶出しにくく、結果として薬液の性能が長期にわたって維持されやすい。
【0072】
以下では、RCBの計算方法について説明する。
【0073】
(CB1)
CB1は、表面領域における、飛行時間型二次イオン質量分析装置で測定した、以下の上記L10/I10、A10/I10、及び、P10/I10の算術平均として求められる。
(A)ポリオレフィンに由来する二次イオンのピーク強度I10に対する、C2n-で表される二次イオンのピーク強度L10の強度比(L10/I10
(B)ポリオレフィンに由来する二次イオンのピーク強度I10に対する、C2pCOO-で表される二次イオンのピーク強度A10の強度比(A10/I10
(C)ポリオレフィンに由来する二次イオンのピーク強度I10に対する、C2qPO-で表される二次イオンのピーク強度P10の強度比(P10/I10
また、nは12~20の整数を表し、pは8~24の整数を表し、qは8~24の整数を表す。
なお、上記において(A)は、表面領域における低重合度のポリオレフィンに由来する成分の含有量を反映し、(B)及び(C)は表面領域における核化剤に由来する成分の含有量を反映する数値である。
【0074】
(CB2)
CB2は、内部領域における、飛行時間型二次イオン質量分析装置で測定した、上記L50k/I50k、A50k/I50k、及び、P50k/I50kの算術平均として求められる。
(a)ポリオレフィンに由来する二次イオンのピーク強度I50kに対する、C2n-で表される二次イオンのピーク強度L50kの強度比(L50k/I50k
(b)ポリオレフィンに由来する二次イオンのピーク強度(I50k)に対する、C2pCOO-で表される二次イオンのピーク強度(A50k)の強度比(A50k/I50k
(c)ポリオレフィンに由来する二次イオンのピーク強度(I50k)に対する、C2qPO-で表される二次イオンのピーク強度(P50k)の強度比(P50k/I50k
n、p及びqの定義は、上述した通りである。
【0075】
CB1/CB2で計算されるRCBは、1.00未満であれば特に制限されないが、より優れた本発明の効果を有する容器が得られる点で、0.70未満がより好ましく、0.40未満が更に好ましい。下限値としては特に制限されないが、一般に0.001以上が好ましい。
なおRCBは飛行時間型二次イオン質量分析法により測定することができるI10、L10、A10、P10、I50k、L50k、A50k、及び、P50kから計算することができる数値であり、測定試料の準備方法及び測定条件は実施例に記載したとおりである。
【0076】
〔金属成分及び有機不純物の純水への溶出量〕
より優れた本発明の効果を有する容器が得られる点で、上記容器は、以下の溶出試験において、以下の要件A及び/又は要件Bを満たすことが好ましく、要件A及び要件Bを満たすことがより好ましい。
【0077】
溶出試験:容器に40℃の純水を容器体積の50体積%となるように100mlを収容し、1日保持する。
要件A:溶出試験後の純水中に含有される、金属成分の含有量の平均が1.0質量ppb以下(好ましくは、10質量ppt以下、更に好ましくは、1質量ppt以下)である。
要件B:溶出試験後の純水中のTOC(全有機炭素)が1000質量ppm以下(好ましくは、100質量ppm以下、更に好ましくは、1質量ppm以下)である。
【0078】
なお、溶出試験において、溶出試験後の純水中には、Fe、Cr、及び、Niのいずれかの金属元素が含まれていてもよい。
溶出試験後の純水中にFeが含まれる場合、溶出試験後の純水中における、Feの含有量は、0.01質量ppt~0.30質量ppbが好ましい。上限に関しては、0.1質量ppb以下が好ましく、0.01質量ppb以下がより好ましく、0.001質量ppb以下が更に好ましい。
溶出試験後の純水中にCrが含まれる場合、溶出試験後の純粋中における、Crの含有量は、0.01質量ppt~0.30質量ppbが好ましい。上限に関しては、0.1質量ppb以下が好ましく、0.01質量ppb以下がより好ましく、0.001質量ppb以下が更に好ましい。
溶出試験後の純水中にNiが含まれる場合、溶出試験後の純粋中における、Niの含有量は、0.01質量ppt~0.30質量ppbが好ましい。上限に関しては、0.1質量ppb以下が好ましく、0.01質量ppb以下がより好ましく、0.001質量ppb以下が更に好ましい。
各金属元素(Fe、Cr、Ni)の含有量が上述した上限値以下の場合、容器中に収容された薬液を用いてウェハを処理した後の欠陥の発生がより抑制される。また、各金属元素(Fe、Cr、Ni)の含有量が上述した下限値以上の場合、そもそも容器への洗浄処理の負荷を低減でき、結果として、容器への洗浄処理由来のダメージを抑制でき、容器からの有機不純物の溶出を抑制できる。
【0079】
なお、溶出試験において、溶出試験後の純水中には、脂肪族アミド、及び、沸点が300℃以上の有機物からなる群から選択される化合物が含まれていてもよく、沸点が300℃以上の有機物としては、アルキルオレフィン(好ましくは、低重合度アルキルオレフィン)が含まれていてもよい。なお、低重合度アルキルオレフィンとは、炭素数22以下のアルキルオレフィンを意味する。また、脂肪族アミドは、カルボニル基に連結した炭素数16以上の脂肪族鎖を含有していてもよい。なお、上記脂肪族鎖は、置換基を有していてもよい。上記沸点は、1気圧下における沸点を意味する。
溶出試験後の純水中における、上記化合物の含有量は、純水全質量に対して、0.1質量ppb~1000質量ppmが好ましい。
溶出試験後の純水中における、脂肪族アミドの含有量は、0.1質量ppb~1000質量ppmが好ましい。
また、溶出試験後の純水中における、アルキルオレフィンの含有量は、0.1質量ppb~1000質量ppmが好ましい。
上記成分の含有量が、上述した上限値以下の場合、容器中に収容された薬液を用いてウェハを処理した後の欠陥の発生がより抑制される。上記成分(特に、脂肪族アミド)の含有量が、上述した下限値以上の場合、容器中に収容された薬液を長期間保管した後、その薬液を用いた際に、欠陥の更なる悪化を抑制できる。抑制のメカニズムは定かではないが、容器から薬液中に上記成分が微量溶出することで、薬液中に極微量含まれる無機不純物及び金属イオンと相互作用して無機不純物及び金属イオンを安定化し、これらに由来する欠陥源の成長を抑制できるためと考えられる。
【0080】
なお、金属成分の含有量はICP-MSを用いて測定できる。TOCは、全有機炭素計を用いて測定できる。
また、検出感度を向上させるため、評価する薬液を事前に濃縮した上で評価してもよい。濃縮倍率としては、2~100000倍程度の最適な倍率が適宜選択される。
【0081】
[容器の製造方法の第1実施形態]
本発明の容器の製造方法の第1実施形態は、特定組成物を基材上に接触させて、洗浄前被覆層を形成する工程と、洗浄前被覆層を、純水、酸、塩基、及び、有機溶剤からなる群から選択される少なくとも1種を含有する洗浄液を用いて洗浄して、容器を得る工程と、を有する、容器の製造方法である。以下では工程ごとにその形態を詳述する。
【0082】
<洗浄前被覆層形成工程>
本工程では、まず、基材を準備する。本工程で準備される基材の材料としては特に制限されないが、既に説明した基材を使用するのが好ましい。基材の形状としては特に制限されないが、液体を収容するのに適した形状が好ましい。また、基材は、特定組成物を用いて形成されていてもよい。但し、この場合、洗浄前被覆層を形成する特定組成物とは異なるものとする。
基材の形状としては特に制限されず、液体を収容するための好ましい形状であればよい。
【0083】
なお、本工程は、基材の表面の一部又は全部を易接着処理する工程、及び/又は、基材の表面の一部又は全部に易接着層を形成する工程を更に有していてもよい。すなわち、基材は、易接着処理済み基材、又は、易接着層付き基材であってもよい。
易接着処理としては、特に制限されず、基材の表面にプラズマ照射、及び、電離放射線照射する方法等が挙げられる。また、易接着層は公知の接着剤を塗布して形成することができる。
【0084】
本工程は、特定組成物を基材上に接触させて洗浄前被覆層を得る工程である。基材上とは、基材の表面の少なくとも一部を意味し、形成された容器において接液部を形成する部分の一部が好ましく、接液部を形成する部分の全部がより好ましく、表面の全部が更に好ましい。
基材上に組成物を接触させる方法としては特に制限されないが、例えば、共押出し法(ラミネート、及び、ブロー等)により、基材と洗浄前被覆層とを一度に成形する方法、特定組成物を基材に塗布して、乾燥、及び/又は、焼付けして塗膜状の洗浄前被覆層を形成する方法等が挙げられる。なかでも、より簡便に容器を得ることができる点で、共押出し法が好ましい。
【0085】
洗浄前被覆層を形成するために用いられる被覆層形成用の特定組成物について説明する。
被覆層形成用の特定組成物は、ポリオレフィンと特定金属とを含有していれば特に制限されない。共押出し法により容器が形成される場合、被覆層形成用の特定組成物は、典型的には、ペレットとして準備され、これが溶融され、押出し成形される。このとき、上記ペレットは、既に説明した洗浄液で洗浄されることが好ましい。ペレットを洗浄することによって、所定の要件を満たす容器が得られやすくなる。
【0086】
本製造方法は、洗浄前被覆層形成工程の後に、洗浄工程を有する。洗浄工程は、以下に説明する洗浄液を用いて、洗浄前被覆層の表面を洗浄する工程である。洗浄前被覆層の表面を所定の洗浄液で洗浄することにより、得られる被覆層の表面領域における特定金属の含有量が、内部領域における特定金属の含有量と比較して少なくなりやすい。なお、本工程において表面とは、被覆層の一部を意味し、被覆層のうち、接液部を構成する部分の一部が好ましく、被覆層のうち、接液部を構成する部分の全部がより好ましく、被覆層の全部が更に好ましく、容器の表面の全部が特に好ましい。
【0087】
・洗浄工程
洗浄工程は、洗浄前被覆層を、純水、酸、塩基、及び、有機溶剤からなる群から選択される少なくとも1種を含有する洗浄液を用いて洗浄する工程である。
【0088】
洗浄液としては、純水、酸、塩基、及び、有機溶剤からなる群から選択される少なくとも1種(以下「主剤」ともいう。)を含有していればよく、2種以上を含有していてもよい。なかでも、より優れた本発明の効果を有する容器が得られる点で、洗浄液としては、酸、塩基、及び、有機溶剤からなる群から選択される少なくとも1種を含有することが好ましい。
洗浄液中における主剤の含有量としては特に制限されないが、一般に、洗浄液の全質量に対して、99.98~100質量%が好ましい。主剤は、1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。2種以上の主剤を併用する場合には、合計含有量が上記範囲内であることが好ましい。
【0089】
主剤としての酸は特に制限されず、洗浄液用として公知の酸を用いることができる。酸としては、例えば、塩酸、フッ酸、硫酸、硝酸、硝酸、リン酸(HPO)、ホスホン酸(HPO)、有機酸、及び、これらと水との混合物等が挙げられる。
有機酸としては、例えば特開2014-232872号公報の0031段落、及び、0032段落に記載の酸を使用できる。
主剤としての塩基は特に制限されず、洗浄用として公知の塩基を用いることができる。塩基としては、硫酸アンモニウム等のアンモニウム塩;トリエタノールアミン、及び、ジエタノールアミン等の水溶性の含窒素化合物;硫酸アンモニウムと水の混合物;等が挙げられる。そのほか、例えば、特開2014-232874号公報の0030~0068段落に記載の無機塩基、及び、有機塩基等も使用できる。
主剤としての有機溶剤としては特に制限されず、洗浄用として公知の有機溶剤を用いることができる。有機溶剤としては炭化水素系溶剤、ケトン系溶剤、エステル系溶剤、アルコール系溶剤、アミド系溶剤、及び、エーテル系溶剤からなる群から選択される少なくとも1種類の有機溶剤から適宜選択することができる。具体的には、例えばIPA(イソプロピルアルコール)、プロピレングリコールモノアルキルエーテル、メチルイソブチルカルビノール、シクロヘキサン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、酢酸ブチル、酢酸イソプロピル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、乳酸エチル、ガンマブチロラクトン、及び、これらの混合物、並びに、これらと水との混合物等が挙げられる。
【0090】
洗浄工程に使用する洗浄液は、金属イオンを含有してもよい。金属イオンの含有量としては特に制限されないが、100質量ppt以下が好ましく、50質量ppt以下がより好ましく、20質量ppt以下が更に好ましい。なお、下限としては特に制限されないが、定量下限の関係から、0.01質量ppt以上が好ましい。本明細書において洗浄液中に含有される金属イオンの含有量は、ICP-MS(誘導結合プラズマ質量分析計)を用いて測定できる。なお、洗浄液中に2種以上の金属イオンが含有されている場合、上記の値は各金属イオンの含有量の算術平均である。
【0091】
洗浄工程に使用する洗浄液は、有機不純物を含有してもよい。なお、本明細書において有機不純物とは、洗浄液中の主剤以外の有機化合物を意味する。洗浄液中における有機不純物の含有量としては特に制限されないが、100質量ppm以下が好ましく、50質量ppm以下がより好ましく、30質量ppm以下が更に好ましい。なお、下限としては特に制限されないが、定量下限の観点から1.0質量ppt以上が好ましく、0.1質量ppm以上がより好ましい。
本明細書において洗浄液中に含有される有機不純物の含有量の測定は、GC-MS(ガスクロマトグラフ質量分析装置)を用いて実施例に記載した方法により実施できる。
なお、洗浄液中に2種以上の有機不純物が含有されている場合、上記の値は各有機不純物の含有量の算術平均である。
【0092】
また、洗浄液は、光散乱式液中粒子計数器によって計数される、30nm以上のサイズの被計数体の数が、洗浄液1mlあたり50個以下であることが好ましい。より優れた効果を有する容器が得られる点で、被計数体の数は、洗浄液1mlあたり100個以下が好ましく、50個以下がより好ましい。なお、下限値としては特に制限されないが、定量下限の観点から、一般に0.1個以上が好ましい。
【0093】
なかでもより優れた本発明の効果を有する容器が得られる点で、洗浄液としては、洗浄液中の金属イオンの含有量が100質量ppt以下であり、洗浄液中の有機不純物の含有量が100質量ppm以下であり、光散乱式液中粒子計数器によって計数される、30nm以上のサイズの被計数体の数が、洗浄液1mlあたり50個以下であることが好ましい。
【0094】
洗浄前被覆層を洗浄する洗浄方法としては特に制限されず、洗浄前被覆層を洗浄液に浸漬する(浸漬中に超音波を照射する、及び/又は、洗浄液を加熱することによって、効果をより高めることができる。)、洗浄前被覆層に洗浄液を吹き付ける等の方法がある。
洗浄液は1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。2種以上の洗浄液を併用する場合には、洗浄液を混合して用いてもよいし、2種以上の洗浄液で順番に洗浄してもよい。なかでも、より優れた本発明の効果を有する容器が得られる点で、2種以上の洗浄液で順番に洗浄することが好ましい。
【0095】
・・確認工程
洗浄工程は、更に、洗浄後の洗浄液に含有される不純物等の含有量を測定し、その値が予め定めた数値範囲に含まれるかを確認するための確認工程を更に有していてもよい。確認工程において、洗浄液中に含有される不純物等の含有量を確認することで、基体の洗浄の進捗を把握することができる。
確認工程において、確認する不純物等としては、例えば、洗浄後の洗浄液中に含有される、金属イオン(中でも特定金属のイオンが好ましい)、及び、有機不純物が挙げられる。
【0096】
確認工程としては、洗浄後の洗浄液が以下の要件1及び要件2を満たすまで洗浄を繰り返すことが好ましい。
要件1:洗浄後の洗浄液中に、特定金属イオン(特定金属のイオン)が1種含有される場合、1種の特定金属イオンの含有量が1.0質量ppt以下(より好ましくは、0.01質量ppt~0.5質量ppm)となるか、又は、洗浄後の洗浄液中に、特定金属イオンが2種以上含有される場合、2種以上の特定金属イオンの含有量の平均が1.0質量ppt(より好ましくは、0.01質量ppt~0.5質量ppm)以下となる。
要件2:洗浄後の洗浄液中に、有機不純物が1種含有される場合、有機不純物の含有量が500質量ppm以下となるか、又は、洗浄後の洗浄液中に、有機不純物が2種以上含有される場合、2種以上の有機不純物の含有量の平均が500質量ppt(より好ましくは、1.0質量ppt~300質量ppm)以下となる。
【0097】
なお、洗浄液中に含有される特定金属イオンの含有量は、ICP-MSで測定できる。
また、洗浄液中に含有される有機不純物の含有量は、GC-MSで測定することができる。
【0098】
要件1及び要件2において、それぞれ洗浄液中に含有される上記成分の含有量が上限値以下であると、洗浄が十分進んでおり、また、同一の洗浄液で複数回洗浄した場合でも上記成分が洗浄対象物に再度付着するのが抑制される。また、下限値としては、一般に、定量下限から選択される。
【0099】
洗浄工程において、洗浄は1回実施されてもよく、複数回実施されてもよい。なかでも、より優れた本発明の効果を有する容器が得られる点で、洗浄工程は、洗浄液を用いて基体を洗浄した後、洗浄後の洗浄液中の、特定金属イオンの含有量が1.0質量ppm以下となり、かつ、有機不純物の含有量が500質量ppm以下となるまで、洗浄液を用いて被覆層を繰り返して洗浄する工程であることが好ましい。
洗浄液を繰り返し用いながら、既に説明した方法によって洗浄後の洗浄液中に含有される不純物等の含有量を確認することで、被覆層の洗浄の進捗を把握できる。上記の工程を有する容器の製造方法によれば、所定の要件を満たす容器をより確実に製造できる。
【0100】
[容器の製造方法の第2実施形態]
本発明の容器の製造方法の第2実施形態は、組成物からなる容器を製造するための容器の製造方法であり、以下の工程を有する。以下では、工程ごとの形態を詳述する。
【0101】
<基体を準備する工程>
基体を得る工程は、ポリオレフィンと、特定金属とを含有する組成物を用いて成形された基体を準備する工程である。基体を準備する方法としては、例えば、購入及び調達、並びに、合成及び成形する方法が挙げられる。
【0102】
基体に使用するポリオレフィンの合成方法としては特に制限されず、公知の合成方法を用いることができる。公知の合成方法としては、例えば、スラリー重合法、及び、気相重合法等が挙げられる。重合圧力としては特に制限されないが、1~100気圧が好ましく、3~30気圧がより好ましい。重合温度としては特に制限されないが、20℃~115℃が好ましく、50~90℃がより好ましい。なかでもより優れた本発明の効果を有する容器が得られる点で、スラリー重合法が好ましい。なお、スラリー重合法に用いる溶媒としては、イソブタン、イソペンタン、ヘプタン、ヘキサン、及び、オクタン等が挙げられる。
【0103】
上記で合成したポリオレフィンを成形して基体を形成する方法としは特に制限されず、公知の方法を用いることができる。公知の成形方法としては、例えば、ブロー成形法、及び、射出成形法等が挙げられ、その成形条件も公知である。
【0104】
<洗浄工程>
洗浄工程は、準備した基体を、純水、酸、塩基、及び、有機溶剤からなる群から選択される少なくとも1種を含有する洗浄液を用いて洗浄して、容器を得る工程である。
洗浄液、及び、洗浄方法については、第1実施形態において説明したものと同様である。
[薬液収容体]
本発明の実施形態に係る薬液収容体は、既に説明した容器と、上記容器に収容された薬液とを有する。上記容器は、所定の要件を満たすため、上記薬液収容体は、長期間保管しても収容された薬液の性能が低下しにくい。
なお、空隙中に含まれるTOC成分の薬液のコンタミネーション抑止、および空隙中に含まれる酸素による薬液の劣化の抑止の点で、式(X)によって求められる容器内の充填率が60体積%以上であることが好ましく、70体積%以上であることがより好ましく、85体積%以上であることが更に好ましい。上限は特に制限されないが、99体積%以下の場合が多い。
式(X):充填率=(容器内の薬液の体積/容器の容器体積)×100
また、空隙中に含まれるTOC成分の薬液のコンタミネーション抑止の点で、式(Y)によって求められる有機物濃度が1体積ppm以下であることが好ましい。上記有機物濃度の下限は特に制限されないが、0.1体積ppb以上の場合が多い。
式(Y):有機物濃度=(容器内の薬液が充填されてない空間中に含まれる有機物の体積/容器内の薬液が充填されてない空間の体積)×100
ただし、上記有機物には、薬液に含有される成分は含まれない。
また、有機物の体積は、1g/1mLとして概算する。
【0105】
〔薬液〕
上記薬液収容体が有する薬液としては特に制限されず、水系であっても、有機溶剤系であってもよい。本明細書において水系とは、薬液中に含有される水分の含有量が、薬液の全質量に対して50質量%を超えるものを意味し、溶剤系とは、薬液中に含有される有機溶剤の含有量(2種以上の有機溶剤を含有する場合にはその合計量)が50質量%を超えるものを意味する。
【0106】
<水系>
水系の薬液は水を含有する。薬液中における水の含有量としては、薬液の全質量に対して50質量%を超えれば特に制限されない。
水系の薬液が含有する成分としては、例えば、アルカリ現像液、レジスト剥離液、エッチング液、化学機械研磨用(CMP)スラリー、及び、ポストCMPクリーナー等が挙げられる。
【0107】
水は、特に限定されないが、半導体製造に使用される超純水が好ましく、その超純水をさらに精製し、無機陰イオン及び金属イオンの含有量を低減させた水がより好ましい。精製方法は特に限定されないが、ろ過膜又はイオン交換膜を用いた精製、並びに、蒸留による精製が好ましい。また、例えば、特開2007―254168号公報に記載されている方法により精製を行なうことが好ましい。
水は、金属の含有量が0.001質量ppt未満であることが好ましい。
【0108】
(水系の薬液の第1実施形態)
水系の薬液の第1の実施形態としては、(1)フッ化水素酸、又は、フッ化水素酸の塩(塩基としては、例えば、ヒドロキシルアミン類、第1級、第2級又は第3級の脂肪族アミン、脂環式アミン、芳香族アミン、複素環式アミン等の有機アミン類、アンモニア水、及び、低級アルキル第四級アンモニウム水酸化物等が挙げられる。)、(2)アルカリ化合物(例えば、ヒドロキシルアミン又はその塩、アミン、アミジン化合物、及び、第四級アンモニウム化合物からなる群から選択される1種)、及び、(3)その他(水溶性の有機溶剤、pH調整剤、界面活性剤、及び、腐食防止剤等)と、水とを含有する薬液が挙げられる。
上記薬液は、レジスト剥離液、エッチング液、及び、洗浄液等として使用することができる。
【0109】
(水系の薬液の第2実施形態)
水系の薬液の第2の実施形態としては、(1)コロイダルシリカ等の砥粒、(2)過酸化水素水等の酸化剤、(3)アゾール化合物等の腐食防止剤、及び、(4)その他(アミノ酸、pH調整剤、及び、界面活性剤等)と、水とを含有する薬液が挙げられる。上記薬液は、CMPスラリーとして使用することができる。
【0110】
(水系の薬液の第3実施形態)
水系の薬液の第3の実施形態としては、硫酸及び過酸化水素と水の混合物が挙げられる。上記薬液は、剥離液、及び、洗浄液等として使用することができる。
【0111】
(水系の薬液の第4実施形態)
水系の薬液の第4の実施形態としては、第4級アンモニウム化合物と水とを含有する薬液が挙げられる。上記薬液は、例えば、現像液として使用することができる。
【0112】
・第4級アンモニウム化合物
上記薬液は、下記一般式(N)で表される第4級アンモニウム化合物を含有する。
【0113】
【化1】

一般式(N)中、RN1~RN4は、それぞれ独立に、アルキル基、フェニル基、ベンジル基又はシクロヘキシル基を表し、これらの基は置換基を有してもよい。
【0114】
N1~RN4のアルキル基は、炭素数1~8が好ましく、炭素数1~4がより好ましい。
N1~RN4のアルキル基、フェニル基、ベンジル基又はシクロヘキシル基が有してもよい置換基は、例えば、ヒドロキシ基等が挙げられる。
【0115】
第4級アンモニウム化合物は、例えば、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH:Tetramethylammonium hydroxide)、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド(TEAH:Tetraethylammonium hydroxide)、テトラプロピルアンモニウムヒドロキシド、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド(TBAH:Tetrabuthylammonium hydroxide)、テトラペンチルアンモニウムヒドロキシド、テトラヘキシルアンモニウムヒドロキシド、テトラオクチルアンモニウムヒドロキシド、エチルトリメチルアンモニウムヒドロキシド、ブチルトリメチルアンモニウムヒドロキシド、メチルトリアミルアンモニウムヒドロキシド、ジブチルジペンチルアンモニウムヒドロキシド、トリエチルフェニルアンモニウムヒドロキシド、トリメチルベンジルアンモニウムヒドロキシド、トリエチルベンジルアンモニウムヒドロキシド、トリベンジルメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラベンジルアンモニウムヒドロキシド、トリメチルシクロヘキシルアンモニウムヒドロキシド、トリブチルシクロヘキシルアンモニウムヒドロキシド、モノヒドロキシエチルトリメチルアンモニウムヒドロキシド、ジヒドロキシエチルジメチルアンモニウムヒドロキシド(ジメチルビス(2-ヒドロキシエチル)アンモニウムヒドロキシド)、トリヒドロキシエチルモノメチルアンモニウムヒドロキシド、モノヒドロキシエチルトリエチルアンモニウムヒドロキシド、ジヒドロキシエチルジエチルアンモニウムヒドロキシド、トリヒドロキシエチルモノエチルアンモニウムヒドロキシド、モノヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウムヒドロキシド、ジヒドロキシプロピルジメチルアンモニウムヒドロキシド、トリヒドロキシプロピルモノメチルアンモニウムヒドロキシド、モノヒドロキシプロピルトリエチルアンモニウムヒドロキシド、ジヒドロキシプロピルジエチルアンモニウムヒドロキシド、及び、トリヒドロキシプロピルモノエチルアンモニウムヒドロキシド等が挙げられる。
【0116】
なかでも、第4級アンモニウム化合物としては、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド、又は、ジメチルビス(2-ヒドロキシエチル)アンモニウムヒドロキシドが好ましく、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、又は、ジメチルビス(2-ヒドロキシエチル)アンモニウムヒドロキシドがより好ましい。
【0117】
薬液中における、第4級アンモニウム化合物の含有量としては特に制限されないが、一般に、薬液全質量に対して、25質量%以下が好ましく、20質量%以下がより好ましく、15質量%以上が好ましく、10質量%以上がより好ましい。
第4級アンモニウム化合物は1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。2種以上の第4級アンモニウム化合物を併用する場合には、合計含有量が上記範囲内であることが好ましい。
【0118】
また、第4級アンモニウム化合物は、公知の方法により精製できる。例えば、国際公開第WO12/043496号パンフレットに記載されている、炭化ケイ素を用いた吸着精製に加えて、フィルタ濾過を繰り返すことで精製を行うことができる。
【0119】
・キレート剤
上記薬液は、キレート剤を含有してもよい。キレート剤としては、特に制限されないが、1分子中の2つ以上の官能基により金属原子と配位結合する化合物であることが好ましい。この官能基は、金属吸着性基であることが好ましい。キレート剤は、1分子中に2つ以上の金属吸着性基を含有することがより好ましい。
【0120】
金属吸着性基としては、酸基又はカチオン性基が好ましい。酸基は、酸解離定数(pKa)が7以下が好ましい。酸基は、例えば、フェノール性ヒドロキシル基、-COOH、-SOH、-OSOH、-PO、-OPO、及びCOCHCOCH等が挙げられる。酸基は、-COOHが特に好ましい。
【0121】
また、これら酸基は、酸基の塩であってもよい。酸基の塩としては、金属塩及び含窒素カチオンの塩が挙げられる。
【0122】
金属塩は、Na、K、Ca、Fe、Cu、Mg、Mn、Li、Al、Cr、Ni、及び、Znからなる群から選択される少なくとも1種の塩が好ましい。
【0123】
含窒素カチオンとしては、第4級アンモニウムカチオン及びアミンの水素付加体であるカチオンであれば特に制限されない。
第4級アンモニウムカチオンとしては、例えば、テトラメチルアンモニウムカチオン、テトラエチルアンモニウムカチオン、テトラプロピルアンモニウムカチオン、メチルトリブチルアンモニウムカチオン、テトラブチルアンモニウムカチオン、及び、コリン型カチオン(ヒドロキシエチルトリメチルアンモニウムカチオン)等が挙げられる。
なかでも、テトラメチルアンモニウムカチオン、テトラエチルアンモニウムカチオン、テトラプロピルアンモニウムカチオン、テトラブチルアンモニウムカチオン、又は、コリン型カチオンが好ましく、テトラメチルアンモニウムカチオン、テトラエチルアンモニウムカチオン、テトラプロピルアンモニウムカチオン、又は、コリン型カチオンがより好ましい。
【0124】
また、カチオン性ポリマーが対イオンであってもよい。
【0125】
金属吸着性基としてのカチオン性基は、オニウム基が好ましい。オニウム基としては、例えば、アンモニウム基、ホスホニウム基、アルソニウム基、スチボニウム基、オキソニウム基、スルホニウム基、セレノニウム基、スタンノニウム基、及び、ヨードニウム基が挙げられる。オニウム基としては、アンモニウム基、ホスホニウム基、又は、スルホニウム基が好ましく、アンモニウム基、又は、ホスホニウム基がより好ましく、アンモニウム基が更に好ましい。
【0126】
本発明のキレート剤の具体例として、カルボキシ基を有する化合物(以下、適宜「カルボン酸化合物」とも称する。)が挙げられる。カルボン酸化合物は、1分子中に少なくとも1個のカルボキシ基を有するが、1分子中に2個以上のカルボキシ基を有するものがより好ましい。
【0127】
1個のカルボキシ基を有するカルボン酸化合物は、カルボキシ基の他に、別の金属吸着性基か、アルコール性ヒドロキシル基、メルカプト基、アミノ基、及び、カルボニル基等、カルボキシ基よりは弱いが金属への配位性のある官能基を有することが好ましい。具体例としては、グリコール酸、チオグリコール酸、乳酸、β-ヒドロキシプロピオン酸、グルコン酸、ピルビン酸、アセト酢酸、サリチル酸、5-スルホサリチル酸、β-アラニン、フェニルアラニン、及び、N-エチルグリシン等が挙げられる。
【0128】
2個のカルボキシ基を有するカルボン酸化合物の具体例としては、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、マレイン酸、フタル酸、3-スルホフタル酸、4-スルホフタル酸、2-スルホテレフタル酸、3-ヒドロキシフタル酸、4-ヒドロキシフタル酸、酒石酸、リンゴ酸、ジピコリン酸、及び、クエン酸等が挙げられる。
【0129】
これらの中でも、3-スルホフタル酸、4-スルホフタル酸、及び、2-スルホテレフタル酸等の芳香族環に2つ以上のカルボキシ基と1つのスルホ基を有する化合物;5-スルホサリチル酸等の芳香族環にヒドロキシル基、カルボキシ基、及び、スルホ基を有する化合物;4-ヒドロキシフタル酸、シュウ酸、酒石酸、リンゴ酸、及び、ジピコリン酸等;が好ましく、3-スルホフタル酸、及び、4-スルホフタル酸等のスルホフタル酸;5-スルホサリチル酸;4-ヒドロキシフタル酸;がより好ましい。
【0130】
また、下記の3個以上のカルボキシ基を有し、炭素原子及び水素原子以外の原子を含有する他の官能基を有さない低分子の有機化合物も、カルボン酸化合物として好ましい。
【0131】
これらの具体例としては、プロパン-1,2,3-トリカルボン酸、ブタン-1,2,3-トリカルボン酸、ブタン-1,2,4-トリカルボン酸、ブタン-1,2,3,4-テトラカルボン酸、2-カルボキシメチルプロパン-1,3-ジカルボン酸、ペンタン-1,2,3-トリカルボン酸、ペンタン-1,2,4-トリカルボン酸、ペンタン-1,2,5-トリカルボン酸、ペンタン-1,3,4-トリカルボン酸、ペンタン-2,3,4-トリカルボン酸、ペンタン-1,2,3,4-テトラカルボン酸、ペンタン-1,2,3,5-テトラカルボン酸、2-カルボキシメチルブタン-1,3-ジカルボン酸、2-カルボキシメチルブタン-1,4-ジカルボン酸、3-カルボキシメチルブタン-1,2-ジカルボン酸、3-カルボキシメチルブタン-1,2,4-トリカルボン酸、2,2-ジカルボキシメチルプロパン-1,3-ジカルボン酸、1,2,3,4-シクロペンタンテトラカルボン酸、ヘミメリット酸、トリメリット酸、ピロメリット酸、及び、ナフタレン-1,4,5,8-テトラカルボン酸等が挙げられる。
【0132】
なかでも、炭素数が5以下のアルキル基に3個以上のカルボキシ基が置換したものが好ましく、プロパン-1,2,3-トリカルボン酸がより好ましい。
【0133】
この他に、2-ホスホノブタン-1,2,3-トリカルボン酸等の3個以上のカルボキシ基を有し、ヘテロ原子を含有する他の官能基を有する化合物も好ましい。
【0134】
また、キレート剤は、下記一般式(K1)で表される化合物、又は、(K2)で表される化合物が好ましい。
【0135】
【化2】
【0136】
一般式(K1)中、
K1及びRK2は、それぞれ独立に、単結合又はアルキレン基を表す。
K3は、2価の有機基を表す。
は、CH基又は窒素原子を表す。
K1及びYK2は、それぞれ独立に、金属吸着性基を表す。
は、水素原子又は親水性基を表す。
【0137】
一般式(K2)中、
K4、RK5、RK6及びRK7は、それぞれ独立に、単結合又はアルキレン基を表す。
K8は、3価の有機基を表す。
及びXは、CH基又は窒素原子を表す。
K3、YK4、YK5及びYK6は、それぞれ独立に、金属吸着性基を表す。
は、水素原子又は親水性基を表す。
【0138】
以下に一般式(K1)について説明する。
K1及びRK2は、それぞれ独立に、単結合又はアルキレン基を表す。
K1及びRK2のアルキレン基は、例えば、炭素数1~6が好ましく、炭素数1~3がより好ましい。
K1及びRK2のアルキレン基は、直鎖状であっても分岐鎖状であってもよく、直鎖状であることが好ましい。
K1及びRK2のアルキレン基は、具体的には、メチレン基がより好ましい。
【0139】
K3は、2価の有機基を表す。有機基は、少なくとも1つの炭素原子を有する基をいう。
K3の2価の有機基は、例えば、アルキレン基及びアリーレン基等が挙げられる。
K3のアルキレン基は、直鎖状であっても分岐鎖状であってもよく、直鎖状であることが好ましい。
K3のアルキレン基及びアリーレン基は、炭素数1~10が好ましく、炭素数1~8がより好ましく、炭素数1~6が更に好ましい。
K3の2価の有機基は、メチレン基、エチレン基、又は、フェニル基が好ましい。
【0140】
は、CH基又は窒素原子を表す。Xは、窒素原子であることが好ましい。
【0141】
K1及びYK2は、それぞれ独立に、金属吸着性基を表す。
金属吸着性基としては、酸基又はカチオン性基が好ましい。具体例としては、カルボン酸化合物の金属吸着基について前述した酸基又はカチオン性基の具体例と同じものが挙げられる。また、カチオン性基が対イオンであるものであってもよい。
【0142】
は、水素原子又は親水性基を表す。
の親水性基としては、例えば、ヒドロキシル基、カルボキシ基、カルボキシレート基、ヒドロキシエチル基、ポリオキシエチル基、ヒドロキシプロピル基、ポリオキシプロピル基、アミノ基、アミノエチル基、アミノプロピル基、アンモニウム基、アミド基、カルボキシメチル基、スルホ基、及び、リン酸基等が挙げられる。
の親水性基は、ヒドロキシル基が好ましい。
【0143】
以下に、一般式(K2)について説明する。
K4、RK5、RK6及びRK7は、それぞれ独立に、単結合又はアルキレン基を表す。
K4、RK5、RK6及びRK7のアルキレン基は、一般式(K1)中のRK1及びRK2と同義である。RK4、RK5、RK6及びRK7の好ましい態様は、一般式(K1)中のRK1及びRK2の好ましい態様と同じである。
【0144】
K8は、3価の有機基を表す。有機基は、少なくとも1つの炭素原子を有する基をいう。
K8の3価の有機基は、炭素数としては1~10が好ましく、1~8がより好ましく、1~6が更に好ましい。また、3価の有機基は置換基を有してもよく、置換基同士が結合して環状構造を形成していてもよく、有機鎖中にヘテロ原子を有してもよい。置換基同士が結合して形成する環状構造としては、シクロアルキル基が好ましい。また、有機基の主鎖中に有してもよいヘテロ原子としては、酸素原子又は窒素原子が好ましい。
【0145】
及びXは、CH基又は窒素原子を表す。Xは、窒素原子であることが好ましい。Xは、窒素原子であることが好ましい。
K3、YK4、YK5及びYK6は、それぞれ独立に、金属吸着性基を表す。
K3、YK4、YK5及びYK6の金属吸着性基は、一般式(K1)中のYK1及びYK2の金属吸着性基と同義である。YK3、YK4、YK5及びYK6の金属吸着性基の好ましい態様は、一般式(K1)中のYK1及びYK2の金属吸着性基の好ましい態様と同じである。
【0146】
は、水素原子又は親水性基を表す。
の親水性基は、一般式(K1)中のAと同義である。Aの好ましい態様は、一般式(K1)中のAの好ましい態様と同じである。
以下に、一般式(K1)で表されるキレート剤及び(K2)で表されるキレート剤の具体例を示す。
【0147】
【化3】
【0148】
キレート剤は、本発明の半導体製造用処理液を現像液として用いる場合、2価金属に対するキレート剤であることが好ましい。
【0149】
2価金属に対するキレート剤は、例えば、Na、Na、Na、NaP(NaOP)PONa、カルゴン(ポリメタリン酸ナトリウム)等のポリリン酸塩、例えば、エチレンジアミンテトラ酢酸、そのカリウム塩、そのナトリウム塩、そのアミン塩;ジエチレントリアミンペンタ酢酸、そのカリウム塩、そのナトリウム塩;トリエチレンテトラミンヘキサ酢酸、そのカリウム塩、そのナトリウム塩;ヒドロキシエチルエチレンジアミントリ酢酸、そのカリウム塩、そのナトリウム塩;ニトリロトリ酢酸、そのカリウム塩、そのナトリウム塩;1,2-ジアミノシクロヘキサンテトラ酢酸、そのカリウム塩、そのナトリウム塩;1,3-ジアミノ-2-プロパノールテトラ酢酸、そのカリウム塩、そのナトリウム塩等のようなアミノポリカルボン酸類の他、2-ホスホノブタントリカルボン酸-1,2,4、そのカリウム塩、そのナトリウム塩;2-ホスホノブタノントリカルボン酸-2,3,4、そのカリウム塩、そのナトリウム塩;1-ホスホノエタントリカルボン酸-1,2、2、そのカリウム塩、そのナトリウム塩;1-ヒドロキシエタン-1,1-ジホスホン酸、そのカリウム塩、そのナトリウム塩;アミノトリ(メチレンホスホン酸)、そのカリウム塩、そのナトリウム塩等のような有機ホスホン酸類が挙げられる。
【0150】
これらの中でも、エチレンジアミンテトラ酢酸、そのカリウム塩、そのナトリウム塩、そのアミン塩;エチレンジアミンテトラ(メチレンホスホン酸)、そのアンモニウム塩、そのカリウム塩、;ヘキサメチレンジアミンテトラ(メチレンホスホン酸)、そのアンモニウム塩、そのカリウム塩が好ましい。
【0151】
このような2価の金属に対するキレート剤の最適量は、一般的には、薬液を現像液として用いる場合、薬液の全質量に対して、0.01~5質量%が好ましく、0.01~0.5質量%がより好ましい。
【0152】
<有機溶剤系>
有機溶剤系の薬液は有機溶剤を含有する。薬液中における有機溶剤の含有量としては薬液の全質量に対して50質量%を超えれば特に制限されないが、一般に薬液の全質量に対して、97.0~99.999質量%が好ましく、99.9~99.9質量%がより好ましい。有機溶剤は1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。2種以上の有機溶剤を併用する場合には、合計含有量が上記範囲内であることが好ましい。
なお、本明細書において、有機溶剤とは、上記薬液の全質量に対して、1成分あたり10000質量ppmを超えた含有量で含有される液状の有機化合物を意図する。つまり、本明細書においては、上記薬液の全質量に対して10000質量ppmを超えて含有される液状の有機化合物は、有機溶剤に該当するものとする。
なお、本明細書において液状とは、25℃、大気圧下において、液体であることを意図する。
【0153】
(有機溶剤)
有機溶剤の種類としては特に制限されず、公知の有機溶剤を用いることができる。有機溶剤としては、例えば、アルキレングリコールモノアルキルエーテルカルボキシレート、アルキレングリコールモノアルキルエーテル、乳酸アルキルエステル、アルコキシプロピオン酸アルキル、環状ラクトン(好ましくは炭素数4~10)、環を有してもよいモノケトン化合物(好ましくは炭素数4~10)、アルキレンカーボネート、アルコキシ酢酸アルキル、及び、ピルビン酸アルキル等が挙げられる。
また、有機溶剤としては、例えば、特開2016-57614号公報、特開2014-219664号公報、特開2016-138219号公報、及び、特開2015-135379号公報に記載のものを用いてもよい。
【0154】
なかでも、有機溶剤としては、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、乳酸エチル、メトキシプロピオン酸メチル、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、γ-ブチロラクトン、ジイソアミルエーテル、酢酸ブチル、酢酸イソアミル、イソプロパノール、4-メチル-2-ペンタノール、ジメチルスルホキシド、n-メチル-2-ピロリドン、ジエチレングリコール、エチレングリコール、ジプロピレングリコール、プロピレングリコール、炭酸エチレン、炭酸プロピレン、スルフォラン、シクロヘプタノン、及び、2-ヘプタノンからなる群から選択される少なくとも1種が好ましい。
【0155】
有機溶剤系の薬液としては、例えば、溶剤系現像液、及び、プリウェット液等が挙げられる。
【0156】
<その他の成分>
薬液は、上記以外のその他の成分を含有してもよい。その他の成分としては、例えば、界面活性剤、特定金属イオン、及び、その他の不純物等が挙げられる。
【0157】
(界面活性剤)
薬液は、界面活性剤を含有することが好ましい。薬液中における界面活性剤の含有量としては特に制限されないが、一般に、界面活性剤の全質量に対して、0.0001~2.0質量%が好ましく、0.0005~1.0質量%がより好ましい。
界面活性剤は、1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。2種以上の界面活性剤を併用する場合には、合計含有量が上記範囲内であることが好ましい。
【0158】
薬液が含有する界面活性剤としては特に制限されず、公知の界面活性剤を用いることができる。界面活性剤としては、フッ素系界面活性剤、及び/又は、シリコン系界面活性剤を使用してもよいし、又は、それ以外の界面活性剤を使用してもよい。それ以外の界面活性剤としては、フッ素及びケイ素をいずれも含有しない、後述するアニオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤、又は、カチオン性界面活性剤を適宜用いることもできる。
フッ素系界面活性剤、及び/又は、シリコン系界面活性剤としては、米国特許出願公開第2008/0248425号明細書の0276段落に記載の界面活性剤が挙げられる。
また、フッ素系界面活性剤、及び、シリコン系界面活性剤以外の他の界面活性剤としては、例えば米国特許出願公開第2008/0248425号明細書の0280段落に記載の界面活性剤が使用できる。また、特開2010-256842号公報の0313~0316段落に記載の界面活性剤も使用できる。
界面活性剤は1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。2種以上の界面活性剤を併用する場合には、合計含有量が上記範囲内であることが好ましい。
【0159】
本発明の組成物が界面活性剤を含有する場合、界面活性剤の使用量は、組成物の全固形分に対して、0.0001~2質量%が好ましく、0.0005~1質量%がより好ましい。
【0160】
上記以外の界面活性剤としては、アニオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤、及び、カチオン性界面活性剤も使用できる。
アニオン性界面活性剤は、例えば、アルキル硫酸エステル、アルキルスルホン酸、アルキルベンゼンスルホン酸、アルキルナフタレンスルホン酸、アルキルジフェニルエーテルスルホン酸、ポリオキシエチレンアルキルエーテルカルボン酸、ポリオキシエチレンアルキルエーテル酢酸、ポリオキシエチレンアルキルエーテルプロピオン酸、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸、ポリオキシエチレンアリールエーテル酢酸、ポリオキシエチレンアリールエーテルプロピオン酸、ポリオキシエチレンアリールエーテル硫酸、及び、それらの塩等が挙げられる。
なかでも、アルキル硫酸エステル、ポリオキシエチレンアリールエーテル硫酸、又は、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸が好ましく、ポリオキシエチレンアリールエーテル硫酸がより好ましい。
【0161】
ノニオン性界面活性剤としては、例えば、ポリアルキレンオキサイドアルキルフェニルエーテル系界面活性剤、ポリアルキレンオキサイドアルキルエーテル系界面活性剤、ポリエチレンオキサイドとポリプロピレンオキサイドからなるブロックポリマー系界面活性剤、ポリオキシアルキレンジスチレン化フェニルエーテル系界面活性剤、ポリアルキレントリベンジルフェニルエーテル系界面活性剤、及び、アセチレンポリアルキレンオキサイド系界面活性剤等が挙げられる。
【0162】
ノニオン性界面活性剤は、下記一般式(A1)で表される化合物が好ましい。
【0163】
【化4】
【0164】
一般式(A1)中、
a1、Ra2、Ra3及びRa4は、それぞれ独立に、アルキル基を表す。
a1及びLa2は、それぞれ独立に、単結合又は2価の連結基を表す。
【0165】
以下に一般式(A1)について説明する。
a1、Ra2、Ra3及びRa4は、それぞれ独立に、アルキル基を表す。
a1、Ra2、Ra3及びRa4のアルキル基は、直鎖状であっても、分岐鎖状であってもよく、置換基を有していてもよい。
a1、Ra2、Ra3及びRa4のアルキル基は、炭素数1~5であることが好ましい。炭素数1~5のアルキル基は、例えば、メチル基、エチル基、イソプロピル基及びブチル基等が挙げられる。
【0166】
a1及びLa2は、それぞれ独立に、単結合又は2価の有機基を表す。
a1及びLa2の2価の連結基は、アルキレン基、-ORa5-基及びこれらの組み合わせが好ましい。Ra5は、アルキレン基を表す。
【0167】
ノニオン性界面活性剤は、例えば、2,4,7,9-テトラメチル-5-デシン-4,7-ジオール、3,6-ジメチル-4-オクチン-3,6-ジオール、及び、3,5-ジメチル-1-ヘキシン-3オールが挙げられる。
【0168】
一般式(A2)で表される化合物は、例えば、下記一般式(A2)で表される化合物が挙げられる。
【0169】
【化5】
【0170】
一般式(A2)中、
a1、Ra2、Ra3及びRa4は、それぞれ独立に、アルキル基を表す。
m及びnは、それぞれ独立に0.5~80の正数を表し、m+n≧1を満たす。
【0171】
以下に一般式(A2)について説明する。
a1、Ra2、Ra3及びRa4は、それぞれ独立に、アルキル基を表す。
a1、Ra2、Ra3及びRa4のアルキル基は、一般式(A1)中のRa1、Ra2、Ra3及びRa4のアルキル基と同様である。
【0172】
m及びnは、エチレンオキシドの付加モル数を表し、それぞれ独立に0.5~80の正数を表し、m+n≧1を満たす。m+n≧1を満たす範囲であれば、任意の値を選択することができる。m及びnは、1≦m+n≦100を満たすことが好ましく、3≦m+n≦80であることがより好ましい。
【0173】
一般式(A2)で表される化合物は、例えば、2,5,8,11-テトラメチル-6-ドデシン-5,8-ジオール、5,8-ジメチル-6-ドデシン-5,8-ジオール、2,4,7,9-テトラメチル-5-デシン-4,7-ジオール、4,7-ジメチル-5-デシン-4,7-ジオール8-ヘキサデシン-7,10-ジオール、7-テトラデシン-6,9-ジオール、2,3,6,7-テトラメチル-4-オクチン-3,6-ジオール、3,6-ジエチル-4-オクチン-3,6-ジオール、3,6-ジメチル-4-オクチン-3,6-ジオール、及び、2,5-ジメチル-3-ヘキシン-2,5-ジオール等が挙げられる。
【0174】
また、ノニオン性界面活性剤は、市販品を用いることができる。具体的には、例えば、AirProducts&Chemicals社製のSURFYNOL82、465、485、DYNOL604、607、日信化学工業社製のオルフィンSTG、オルフィンE1010等が挙げられる。
【0175】
ノニオン性界面活性剤のHLB(Hydrophilic-Lipophilic Balance)値は、8以上であることが好ましく、10以上であることがより好ましい。また、ノニオン性界面活性剤のHLB値は、16以下であることが好ましく、14以下であることがより好ましい。ここで、HLB値はグリフィン式(20Mw/M;Mw=親水性部位の分子量、M=ノニオン性界面活性剤の分子量)より算出した値で規定され、場合によりカタログ値や他の方法で算出した値を使用してもよい。
【0176】
ノニオン性界面活性剤は、2種以上を組み合わせて用いてもよい。2種以上のノニオン性界面活性剤は、少なくとも2種のノニオン性界面活性剤が一般式(A1)で表される化合物であることが好ましい。
【0177】
2種以上のノニオン性界面活性剤は、HLBが12以上であるノニオン性界面活性剤を少なくとも1種と、HLBが10以下であるノニオン性界面活性剤を少なくとも1種であることも好ましい。上記の組み合わせによれば、薬液を現像液として用いた場合に、矩形性に優れたパターンを得ることができる。
【0178】
HLBが12以上であるノニオン性界面活性剤の全質量は、HLBが10以下であるノニオン性界面活性剤の全質量に対し、0.5~4であることが好ましく、0.7~3.5であることがより好ましく、1.0~3.0であることがさらに好ましい。本発明者らは、HLBが12以上であるノニオン性界面活性剤の全質量が、HLBが10以下であるノニオン性界面活性剤の全質量よりも多いことにより、薬液を現像液として用いた場合に、矩形性に優れたパターンが得られる。
【0179】
カチオン性界面活性剤としては、例えば、第4級アンモニウム塩系界面活性剤、及び、アルキルピリジウム系界面活性剤等が挙げられる。
【0180】
第4級アンモニウム塩系界面活性剤としては、例えば、塩化テトラメチルアンモニウム、塩化テトラブチルアンモニウム、塩化ドデシルジメチルベンジルアンモニウム、塩化アルキルトリメチルアンモニウム、塩化オクチルトリメチルアンモニウム、塩化デシルトリメチルアンモニウム、塩化ドデシルトリメチルアンモニウム、塩化テトラデシルトリメチルアンモニウム、塩化セチルトリメチルアンモニウム、及び、塩化ステアリルトリメチルアンモニウム等が挙げられる。第4級アンモニウム塩系界面活性剤は、特に限定されないが、塩化ドデシルジメチルベンジルアンモニウムが好ましい。
【0181】
アルキルピリジウム系界面活性剤としては、例えば、塩化ブチルピリジニウム、塩化ドデシルピリジニウム、及び、塩化セチルピリジウム等が挙げられる。アルキルピリジウム系界面活性剤は、特に限定されないが、塩化ブチルピリジニウムが好ましい。
【0182】
カチオン性界面活性剤は、例えば、まず、トリエタノールアミン、メチルジエタノールアミン、及び3-(N,N-ジメチルアミノ)-1,2-プロピレングリコ-ル等を、長鎖脂肪酸或いは脂肪酸メチルによりアシル化し、中間体のアルカノ-ルアミンエステルを合成する。その後、塩化メチル、ジメチル硫酸、及びジエチル硫酸等の4級化剤によりカチオン化合物へ転換する等により得られる。
【0183】
〔薬液の物性〕
<条件1>
上記薬液収容体に収容される薬液としては、その性能がより長期間にわたって維持されやすい点で、以下の条件1を満たすことが好ましい。
条件1:薬液を基板上に塗布し、薬液の塗布前後での基板上におけるパーティクル検査装置を用いて測定した、19nm以下の粒子径のパーティクルの密度の変化が0.3個/cm以下である。
なお、更に長期間にわたって薬液の性能が維持されやすい点で、パーティクルの密度の変化が0.2個/cm以下であることがより好ましく、0.1個/cm以下であることが更に好ましい。
【0184】
容器から取り出した薬液が条件1を満たすかを確認する方法を説明する。まず、薬液を基板上に塗布する。このとき、用いる基板としては、特に制限されないが、パーティクルの密度の変化をより簡便に測定できる点で、シリコンウェハが好ましい。塗布方法としては回転塗布が好ましい。
【0185】
次に、塗布前後での基板上におけるパーティクルの密度の変化を測定し、変化が0.3個/cm以下であることを確認する。
薬液塗布前後の基板におけるパーティクル密度の変化は、薬液を塗布する前の基板上のパーティクルの密度と、洗浄液を塗布した後の基板上のパーティクルの密度を測定し、その差分を求めることにより算出できる。この場合、塗布前後での基板上でのパーティクルの密度の測定方法としては、パーティクル検査装置を用いて測定することができ、例えば、KLA-Tencor社製SP-5等により実施できる。
【0186】
<条件2>
上記薬液収容体に収容される薬液としては、その性能がより長期間にわたって維持されやすい点で、以下の条件2を満たすことが好ましい。
条件2:薬液が、水を含有し、薬液中における水の含有量が、50質量%以下であり、単一粒子誘導結合プラズマ質量分析計(SP-ICP-MS)で測定した、薬液中における30nm以下の粒子径の粒状物が、薬液の全質量に対して1.0質量ppb以下(好ましくは0.5質量ppb以下、より好ましくは0.2質量ppb以下)である。
【0187】
ここで、SP-ICP-MSにおいて使用される装置は、通常のICP-MS法(誘導結合プラズマ質量分析法)(以下、単に、「ICP-MS」とも言う)において使用される装置と同じであり、データ分析のみが異なる。SPICP-MSとしてのデータ分析は、市販のソフトウエアにより実施できる。
ICP-MSでは、測定対象とされた成分の含有量が、その存在形態に関わらず、測定される。従って、測定対象とされた成分が粒子状(粒状物)と、イオンの合計質量として定量される。
【0188】
一方、SP-ICP-MSでは、測定対象とされた成分の粒状物の含有量が個別に測定される。
【0189】
SP-ICP-MS法の装置としては例えば、アジレントテクノロジー社製、Agilent 8800 トリプル四重極ICP-MS(inductively coupled plasma mass spectrometry、半導体分析用、オプション#200)を用いて、実施例に記載した方法により測定することができる。上記の他に、PerkinElmer社製 NexION350Sのほか、アジレントテクノロジー社製、Agilent 8900も挙げられる。
【0190】
<金属成分量>
上記薬液中における金属成分量は特に制限されないが、1質量ppb以下が好ましい。なお、上記金属成分としては、金属イオン、及び、金属粒子が挙げられる。
【0191】
<沸点300℃以上の化合物の含有量>
上記薬液中における沸点300℃以上の化合物の含有量は特に制限されないが、1質量ppm以下が好ましい。
沸点300℃以上の化合物としては、エステル構造、スルホンアミド構造、アミド構造、ウレタン構造、ウレア構造、及び、炭酸エステル構造からなる群から選択される有機化合物が挙げられる。
【0192】
<特定金属イオン>
上記薬液が、1種の特定金属のイオンを含有している場合、上記1種の特定金属イオンの含有量としては、1000質量ppt以下が好ましく、500質量ppt以下がより好ましく、100質量ppt以下が更に好ましい。下限としては特に制限されないが、定量下限との関係から、一般に0.01質量ppt以上が好ましい。
尚、評価時に薬液を濃縮してから測定することで、より高精度の含有量測定を行うことができる。
上記薬液が、2種以上の特定金属のイオンを含有している場合、上記2種以上の特定金属のイオンの含有量としては、その算術平均が、上記範囲内となることが好ましい。
【0193】
<被計数体>
薬液は、光散乱式液中粒子計数器によって計数される、30nm以上のサイズの被計数体の数が、薬液1mlあたり100個以下であることが好ましく、70個以下がより好ましく、30個以下が更に好ましい。なお、下限値としては特に制限されないが、定量下限の観点から、一般に0.1個以上が好ましい。
【0194】
<その他の不純物(無機塩)>
薬液が、アニオン性界面活性剤又はカチオン性界面活性剤を含有する場合、薬液には、不純物として、無機塩が含有されることがある。無機塩としては、例えば、硫酸塩、硝酸塩、酢酸塩、及び、リン酸塩等が挙げられる。
【0195】
薬液中における無機塩の含有量は、薬液の全質量に対して1.0質量ppq~1000質量pptが好ましく、5.0質量ppq~500質量pptがより好ましく、10質量ppq~500質量pptが更に好ましく、100質量ppq~100質量pptが特に好ましい。
無機塩は、薬液中の金属原子と反応し、金属塩を析出する。これにより、欠陥が発生する。そのため、無機塩の含有量は、薬液に対し、上記の範囲とすることが好ましい。
【0196】
<その他の不純物(過酸化物)>
薬液が、ノニオン性界面活性剤を含有する場合、薬液には、不純物として、過酸化物が含有されることがある。
過酸化物としては、例えば、過酸化カルシウム、過酸化マグネシウム、過酸化カリウム、及び、過酸化ナトリウム等が挙げられる。
【0197】
薬液中における過酸化物の含有量は、薬液の全質量に対して、1.0質量ppq~1000質量pptが好ましく、5.0質量ppq~500質量pptがより好ましく、10質量ppq~500質量pptが更に好ましく、100質量ppq~100質量pptが特に好ましい。過酸化物は、電子デバイスの電気的特性を劣化させる原因、及び、パターン欠陥を引き起こす原因となる。そのため、過酸化物の含有量は、薬液に対して、上記の範囲とすることが好ましい。
【0198】
<その他の不純物(エステル化合物)>
薬液が、ノニオン性界面活性剤を含有する場合、薬液には不純物として、エステル化合物が含有されることがある。
エステル化合物としては、ステアリン酸メチルエステル、ステアリン酸オクチルエステル、オレイン酸ブチルエステル、ラウリン酸オレイルエステル、パルミチン酸ステアリルエステル、ベヘニン酸ステアリルエステル、ミリスチン酸ミリスチルエステル、アクリル酸ヘキシルエステル、メタアクリル酸オクチルエステル、カプロン酸ビニルエステル、及び、オレイル酢酸エステル等が挙げられる。
【0199】
薬液中におけるエステル化合物の含有量としては、薬液に対して、1.0質量ppq~1000質量pptが好ましく、5.0質量ppq~500質量pptがより好ましく、10質量ppq~500質量pptが更に好ましく、100質量ppq~100質量pptが特に好ましい。エステル化合物は、金属原子に吸着し、凝集する。凝集したエステル化合物は、基板上に吸着し、そのまま残存する。これにより、欠陥を引き起こす。そのため、エステル化合物の含有量は、薬液に対して、上記の範囲であることが好ましい。
【0200】
<その他の不純物(アミン化合物)>
薬液がノニオン性界面活性剤を含有する場合、薬液には不純物として、アミン化合物が含有されることがある。
アミン化合物としては、例えば、モノメチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、モノエチルアミン、ジエチルアミン、及び、トリエチルアミン等が挙げられる。
【0201】
薬液中におけるアミン化合物の含有量としては、薬液の全質量に対して、1.0質量ppq~1000質量pptが好ましく、5.0質量ppq~500質量pptがより好ましく、10質量ppq~500質量pptが更に好ましく、100質量ppq~100質量pptが特に好ましい。アミン化合物は、金属原子に吸着し、凝集する。凝集したアミン化合物は、基板上に吸着し、そのまま残存する。これにより、欠陥を引き起こす。そのため、無機塩の含有量は、薬液に対して、上記の範囲であることが好ましい。
【0202】
<その他の不純物(キレート錯体)>
薬液がキレート剤を含有する場合、薬液には不純物として、キレート錯体が含有されることがある。キレート錯体は、上述のキレート剤の全てではなく、その一部と、薬液が含有している特定金属イオン等の金属原子とが結合して形成される。
キレート錯体としては、例えば、エチレンジアミン四酢酸モノカルシウム、エチレンジアミン四酢酸-銅(II)等が挙げられる。
【0203】
薬液中におけるキレート錯体の含有量は、薬液の全質量に対して、1.0質量ppq~1000質量pptが好ましく、5.0質量ppq~500質量pptがより好ましく、10質量ppq~500質量pptが更に好ましく、100質量ppq~100質量pptが更に好ましい。キレート錯体は、ウェハ上に付着して蓄積する。これにより、現像及びリンス等の洗浄による負荷を高める。さらに、現像及びリンス等の洗浄により除去できなかったキレート錯体は、欠陥となる。そのため、キレート錯体の含有率は、薬液に対して、上記の範囲であることが好ましい。
【実施例
【0204】
以下に実施例に基づいて本発明を更に詳細に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、及び、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。従って、本発明の範囲は以下に示す実施例により限定的に解釈されるべきものではない。
【0205】
〔容器の作製〕
<容器の製造例1:実施例3~9、11~12、比較例1、2>
基体として、市販のポリエチレン製キャニスター(アイセロ社製、表1では、「市販のPE製キャニスター」と記載した)を準備した。なお、このポリエチレン製キャニスターは、特定金属を含有することを確認した。次に、この基体を表1に記載した方法で順次洗浄して、容器を得た。洗浄順序は表1に(1)~(11)と記載したとおりであり、全洗浄処理はクラス100のクリーンルーム環境下にて実施した。表1中には、使用した洗浄液の種類、洗浄方法、洗浄時の温度、及び、洗浄時間を記載した。なお、比較例1は市販のポリエチレン製キャニスターを洗浄せずに用いた。
なお、表1中において、実施例2の(1)の超純水による洗浄には、「常温、5分間、流水」とあり、これは、洗浄温度が「常温」で、洗浄時間が「5分間」で、洗浄方法が「流水」であることを表している。また、実施例4の(1)の超純水による洗浄は、「超音波、90℃/1h」とあり、これは、洗浄方法が「超音波」で、洗浄温度が「90℃」で、洗浄時間が「1h(すなわち1時間)」であることを表している。なお、比較例2の(1)は超純水による洗浄に代えて、孔径が1μmの簡易フィルタでろ過した水道水を使用したものである。
また、(2)の酸による洗浄については、例えば、実施例4の「塩酸(1N、40℃/1h)」とあるのは、1Nの塩酸で40℃、1時間の条件で洗浄したことを表している。なお、実施例12の「塩酸(1N、80℃/12h) 本処理を3サイクル実施した」とあるのは、1Nの塩酸で60℃、12時間の条件での洗浄を3サイクル実施したことを表している。
また、(3)の超純水による洗浄については、例えば、実施例4の「超音波、90℃/1h」とあるのは、洗浄温度が「90℃」で、超音波処理を「1h」実施したことを表している。
また、(4)の酸による洗浄については、例えば、実施例5の「希フッ酸(0.8質量%、40℃/1h)」とあるのは、0.8質量%の希フッ酸を用いて、洗浄温度が「40℃」で、洗浄時間が「1h」であることを表している。
また、(6)の塩基による洗浄については、例えば、実施例4の「硫酸アンモニウム(1.0質量%、60℃/1h)」とあるのは、1.0質量%の硫酸アンモニウム水溶液を用いて、洗浄温度が「60℃」で、洗浄時間が「1h」であることを表している。
また、(8)の混合物による洗浄については、例えば、実施例5の「混合物B:TMAH(0.5%)/EDTA(0.3%)/エチレンジアミン(0.1%)/ジエチレントリアミン(0.1%)/エチレングリコールブチルエーテル(10%)含有水(超音波、120℃/1h)」とあるのは、混合物Bを用いて、洗浄温度が「120℃」で、洗浄時間が「1h」であることを表している。
また、(10)の有機溶剤による洗浄について、「IPA(常温、5分間、流して洗浄)」とは、IPA(イソプロパノール)を用い、洗浄温度が「常温」で、洗浄時間が「5分間」で、洗浄方法が「流して洗浄」であることを表している。なお、実施例11の「IPA(超音波、40℃/1h)」とは、IPAを用いて、洗浄温度が「40℃」で、超音波処理を「1時間」実施したことを表している。また、実施例12の「PGMEA/PGME/酢酸ブチル(超音波、40℃/1h)」とは、PGMEA(30%)/PGME(40%)/酢酸ブチル(30%)を用いて、洗浄温度が「40℃」で、超音波処理を「1時間」実施したことを表している。
また、(11)の超純水の洗浄において、「超音波、熱(90℃/1h)」とあるのは、超音波処理槽にて、90℃に加温した状態で1時間超音波処理を実施することによる洗浄方法を表している。また、表中、「-」とあるのは、その洗浄液を用いなかったことを表す。また表中「RCA」及び「RCB」とあるのは、実施例1、2及び10についてはRCAs及びRCBsと読み替えるものとする。
【0206】
<容器の製造例2:実施例1>
ポリエチレンを基材とし、上記基材の接液部となるべき部分に、下記の手順で作製した被覆層形成用組成物1による被覆層1を射出ブロー成形法により配置し、容器を得た。被覆層1の厚みは、250μmだった。
なお、表1において、「基体」の欄に、(被覆層1/PE)とあるのは、基材であるPE上に被覆層1を有する容器であることを表しており、実施例2も同様である。
【0207】
(被覆層形成用組成物1の作製)
まず以下の方法でHDPEを合成した。まず、HDPEは、チューブラー重合器を用い、Ti/Mg系の触媒、及び、トリエチルアルミニウムを助触媒として用い、ヘキサン中、80℃の温度で圧力260MPa環境下、滞留時間2時間の条件で合成した。
次に、合成したHDPEは、更にデカヒドロキシナフタレンに90℃の温度で溶解させたのち、0.1N HCl水を用いて90℃で分液精製処理を行ったのち、純水で分液精製処理を行い、更に高純度のシクロヘキサノンで析出させることで、被覆層形成用組成物1を得た。
【0208】
<容器の製造例3:実施例2>
実施例1と同様の方法で得られた容器を、表1に記載した条件で、更に洗浄した。なお、被覆層1の厚みは、250μmだった。
【0209】
<容器の製造例4:実施例10>
ポリエチレンを基材として、上記基材の接液部となるべき部分に、下記の手順で被覆層を作製した。
得られた被覆層形成用組成物2が接液部となるようにして、被覆層形成用組成物2による被覆層2を射出ブロー成形法により配置し、容器を得た。被覆層2の厚みは、250μmだった。
なお、表1において、「基体」の欄に、(被覆層2/PE)とあるのは、基材であるPE上に被覆層2を有する容器であることを表している。
【0210】
(被覆層形成用組成物2の作製)
まず、以下の方法でHDPEを合成した。まず、HDPEは、チューブラー重合器を用い、Ti/Mg系の触媒、及び、トリエチルアルミニウムを助触媒として用い、ヘキサン中、80℃の温度で圧力260MPa環境下、滞留時間2時間の条件で合成した。
次に、合成したHDPEは、更にデカヒドロキシナフタレンに90℃の温度で溶解させたのち、蒸留水を用いて90℃で分液精製処理を行ったのち、純水で分液精製処理を行い、被覆層形成用組成物2を得た。
【0211】
〔洗浄液の調製〕
各工程で使用した洗浄液はそれぞれ以下の方法で調製した後に、すべてNylon製ろ過材を有するフィルタ(孔径20nm、親水化処理済み、Pall社製)を使用してろ過した。
【0212】
(1)超純水:超純水生成装置(栗田工業製)を使用し、全原子100質量ppt以下の含有量の超純水を得て、洗浄液とした。また、以下の洗浄液の調液にもこれを使用した。
(2)塩酸:多摩化学工業製塩化水素水溶液(TAMAPURE-AA-10グレード)を使用し、上記超純水と混合することで1Nの塩酸を調製した。
(3)希フッ酸:多摩化学工業製フッ酸水溶液(TAMAPURE-AA-10グレード)を使用し、上記超純水と混合することで0.8wt.%HF水溶液を調製した。
(4)硫酸アンモニウム:多摩化学工業製 硫酸(TAMAPURE-AA100グレード)、アンモニア水(TAMAPURE-AA-100グレード)、上記超純水から、硫酸アンモニウム1%水溶液を調製した。
(5)IPA(イソプロピルアルコール):富士フイルムウルトラピュア社製のIPAを使用した。
(6)混合物A:上記(4)と同じアンモニア水、及びEDTA2アンモニウム水溶液40%(富山薬品工業製)を使用し、20%アンモニア水(5.0%)/EDTA(0.3%)/エチレンジアミン(0.1%)/ジエチレントリアミン(0.1%)/エチレングリコールブチルエーテル(10%)含有水溶液を調製した。なお、EDTAはエチレンジアミン四酢酸を表す略号である。また、エチレングリコールブチルエーテル(KHネオケム社製)、エチレンジアミン(林純薬製)、ジエチレントリアミン(林純薬製)を使用した。
(7)混合物B:上記(2)と同じTMAH、及びEDTA2アンモニウム水溶液40%(富山薬品工業製)を使用し、TMAH(0.5%)/EDTA(0.3%)/エチレンジアミン(0.1%)/ジエチレントリアミン(0.1%)/エチレングリコールブチルエーテル(10%)含有水溶液を調製した。また、エチレングリコールブチルエーテル(KHネオケム社製)、エチレンジアミン(林純薬製)、ジエチレントリアミン(林純薬製)を使用した。
(13)酢酸ブチル(50%)/PGMEA(50%):酢酸ブチルとして富士フイルムエレクロトニクルマテリアルズ台湾社製のFN-DP001を使用し、PGMEA(KHネオケム社製)を用い、酢酸ブチル(50%)/PGMEA(50%)からなる混合液を調整した。
【0213】
なお、各洗浄液に含有される金属イオンの含有量は100質量ppt以下であり、有機不純物の含有量が100質量ppm以下であり、光散乱式液中粒子計数器によって計数される、30nm以上のサイズの被計数体の数が、洗浄液1mlあたり50個以下であることを確認した。
【0214】
また、洗浄後の各洗浄液中に含有される特定金属のイオンの含有量の平均は、いずれも0.01質量ppt~1.0質量ppmの範囲内であり、有機不純物の含有量は、1.0質量ppt~500質量ppmの範囲内だった。
【0215】
〔薬液の調製〕
評価に使用した薬液はそれぞれ以下の方法で調製した後に、すべてNylon製ろ過材を有するフィルタ(孔径20nm、親水化処理済み、Pall社製)を使用してろ過した。
(8)TMAH現像液:TMAH(多摩化学工業製)、超純水を使用して、2.38質量%水溶液を調製した(なお、TMAHは水酸化テトラメチルアンモニウムを表す略号である。)。これを充分に撹拌して溶解を確認したのち、ろ過(使用したフィルタは、Entegris社製、UPE(超高分子量ポリエチレン)製ろ過材を有するフィルタ、孔径20nm)して、薬液とした。
(9)評価で使用するレジスト:ポジ型レジスト組成物
ポジ型レジスト組成物として、特開2010-256842号公報の実施例1に記載のレジスト組成物を準備した。すなわち、以下の樹脂A,酸発生剤、塩基性化合物、界面活性剤、疎水性樹脂、及び、溶媒を混合して12時間撹拌後、3nmのUPEフィルタ(インテグリス社製、カプセルフィルター、UPEは超高分子量ポリエチレンの略号である。)でろ過した。
【0216】
・樹脂A:(87.01質量部)
組成比40/10/50、Mw8200、分散度1.53のポリマー
【化6】
【0217】
・酸発生剤:(10.9質量部) (b36)
【化7】
【0218】
・塩基性化合物:(0.71質量部) (N-1) 2,6-ジイソプロピルアニリン
・界面活性剤:(0.50質量部) PF6320
【0219】
・疎水性樹脂:(0.879質量部)
【化8】

疎水性樹脂:組成比=40/56/2/2 (左から)
【0220】
溶媒:プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(1540質量部)、プロピレングリコールモノメチルエーテル(360質量部)
【0221】
(10)超高純度バッファードフッ酸 ステラケミファ社製 BHL を使用した。
(11)クリーン100 (和光純薬社製)ポストCMPクリーナー
(12)CMPスラリー:特表2009-510224号公報の0058段落の表2の「8071+150ppmメタノール」に記載したCMPスラリーにおいて、メタノール代えてPGMEA(KHネオケム社製)を用いて、CMPスラリーを調製した。
【0222】
〔測定方法1〕
本段落において液中とは、洗浄液中、及び、薬液中を意味する。
本実施例において、液中の金属イオンの含有量は、ICP-MS(アジレント社製)を使用して評価した。
本実施例において、液中の30nm以上のサイズの被計数体の数は、KS-19X(Rion社製)を用いて求めた。
本実施例において、液中の有機不純物の含有量は、GC/MS(ガスクロマトグラフ質量分析装置)を使用して測定対象となる液を直接インジェクションして測定したものである。検出された成分のうち、分子量500以下の成分に対して、含有量を求め、有機不純物の含有量とした。
【0223】
〔測定方法2〕
本実施例において、容器に係る測定方法は以下のとおりである。
(試料の作製)
表1に記載した方法により作製した容器及び比較例の容器から接液部(内壁)の一部を切り出して複数の切片を得た。上記切片から、表面領域評価用試料、及び、内部領域評価用試料のそれぞれについて、以下の方法で作製した。
【0224】
・表面領域評価用試料
容器の接液部の切片について、接液部の表面から厚み方向に向けて斜めに切削した。この際、切削により得られた断面(切削面)は、接液部の表面から厚み方向に1μmの領域に対する、切削長さが5mmとなるよう傾斜させた。
得られた切削面について、接液部の表面から厚み方向に10nmの表面領域に対応する、切削長さ50μmの領域を表面領域評価用試料とした。なお、ここでいう「切削長さ」とは、切削面を上面から観察した場合の、切削方向における切削面の切削開始点からの長さを意味する。
【0225】
・内部領域評価用試料
容器の接液部の切片について、接液部の表面から厚み方向に向けて斜めに切削した。この際、切削面は、接液部の表面から厚み方向に50μmの領域に対する、切削長さが10mmとなるよう傾斜させた。
得られた切削面について、接液部の表面から厚み方向に30~50μmの内部領域に対応する、切削長さ4mmの領域を内部領域評価用試料とした。
【0226】
(各金属成分に由来するピーク強度の測定)
上記で作製した、表面領域評価用試料の切削面を観察面とし、切削方向に沿って、各金属成分に由来する二次イオンのピーク強度を、等間隔で20点分測定した。併せて、各測定点の切削面の幅における位置を、各測定点が対応する被覆層(又は容器)の厚み方向の位置に換算した。上記により、各測定結果が所望の表面領域における金属成分含有量を反映したデータであることを確認した。
次に、測定点20点分の各金属成分に由来する二次イオンのピーク強度を、それぞれ各測定点において検出された全イオンの強度で除して得られた各金属成分に由来する二次イオンのピークの相対強度を、各測定点分について、金属成分ごとに平均した。得られた金属成分ごとの平均値を、表面領域における各金属成分に由来する二次イオンのピークの相対強度とした。
なお、最表面については、非切削箇所について5箇所を測定した平均値を最表面の測定値とした。
【0227】
次に、内部領域評価用試料の切削面を観察面とし、切削方向に沿って、各金属成分に由来する二次イオンのピーク強度を、等間隔で20点分測定した。次に、表面領域における測定及び計算手順と同様にして、内部領域における各金属成分に由来する二次イオンのピークの相対強度の平均値を得た。
なお、上記の測定は、飛行時間型二次イオン質量分析装置:ION-TOF社製TOF-SIMS Vを用いた。
【0228】
(ポリオレフィンに由来するピークの測定)
上記で作製した表面領域評価用試料の切断面を観察面として、金属成分に由来する二次イオンのピークの相対強度の測定と同様にして、各測定箇所においてC2n -(n=2~20)の各成分のフラグメントの強度を検出された全イオンの強度で除し、それらの合計値を求めた。次に、各測定点の測定結果を平均し、表面領域におけるポリオレフィンに由来する二次イオンのピークの相対強度を得た。
また、上記と同様にして、内部領域におけるポリオレフィンに由来する二次イオンのピークの相対強度を得た。
【0229】
(RCAの計算)
上記で計算したポリオレフィンに由来する二次イオンのピークの相対強度に対する、各金属成分に由来する二次イオンのピークの相対強度の比を求めた。
これを、表面領域と内部領域とでそれぞれ計算し、それぞれ、CA1(表面領域に対応、金属成分ごとのデータ)、CA2(内部領域に対応、金属成分ごとのデータ)とした。
次に、RCA=CA1/CA2を求めた。なお、金属成分としては、Ti、Mg、Al、Cr、Hf、Zr、Fe、Sn、Ni、及び、MoのそれぞれについてRCA値(又はRCAs)を求め、上記の金属成分のRCA値の算術平均値をその試料のRCA値とした。結果は表1に記載した。
【0230】
(RCBの計算)
各測定点において検出された、ポリオレフィンに由来する二次イオンピークのピーク強度に対する、C2n-で表されるフラグメントイオンのピーク強度、C2pCOO-で表される二次イオンのピーク強度、及び、C2qPO-で表される二次イオンのピーク強度の強度比をそれぞれ求めた。この強度比はそれぞれの成分の相対強度に対応し、これらを各測定点について、成分ごとに平均し、更に、得られた成分ごとの平均値を更に平均した。この最終的に得られた平均値が、表面領域についてはCB1に対応し、内部領域についてはCB2に対応する。ここから、RCB値(RCB=C B1/CB2)を求めた。結果は表1に示した。
なお、nは12~20の整数であり、pは8~24の整数であり、qは8~24の整数である。
【0231】
〔測定方法3〕
溶出試験は以下の方法により行った。実施例及び比較例の各容器にそれぞれ純水を100ml収容した(容器体積の50体積%に該当する)。その状態で、40℃で1日間維持した。その後、純水を回収し、上記純水に含有される金属成分の含有量(表中、「メタル」と記載した。)を上記のICP-MSで測定し、全炭素濃度計(SHIMADZU製TOC-Vw)を用いてTOCを測定した。
【0232】
[評価]
〔TMAH現像液の経時性能安定性〕
表1に記載したそれぞれの容器に、上記(8)で準備した2.38質量%のTMAH現像液を収容し、薬液収容体とした。
それぞれの薬液収容体を45℃で1カ月保管した。保管後の薬液収容体から上記現像液を取り出し、リソグラフィ性能を評価した。リソグラフィ性能の評価方法は以下のとおりである。
【0233】
シリコンウェハ上に、有機反射防止膜形成用組成物ARC29A(日産化学社製)を塗布し、205℃で、60秒間ベークして、膜厚86nmの反射防止膜を形成した。次に、反射防止膜上に上記ポジ型レジスト組成物を塗布し、100℃で、60秒間ベークして、膜厚100nmのレジスト膜を形成し、レジスト膜付きウェハを得た。次に、レジスト膜付きウェハをArFエキシマレーザー液浸スキャナー(ASML社製 XT1700i、NA1.20、C-Quad、アウターシグマ0.981、インナーシグマ0.895、XY偏向)を用い、ハーフピッチ40nm 1:1ラインアンドスペースパターンを形成できる6%ハーフトーンマスクを通して露光した。液浸液には超純水を使用した。次に、露光後のレジスト膜を100℃で、60秒間加熱した後、上記現像液で30秒間現像し、純水でリンスした後、スピン乾燥してレジストパターンを得た。
作製したレジストパターンについて、測長SEM(CG4500(日立ハイテク社製)を使用して、100点の位置でのラインエッジラフネス(LWR)を測定して、得られたデータ中のLWRの最大値と最小値との差(バラつき)を求め、パターン品質の指標とした。
結果は以下の基準により評価し、表1に示した(「リソ性能」欄に記載した)。
【0234】
A:LWRのバラつきが0.3nm以下だった。
B:LWRのバラつきが0.3nmより大きく、0.5nm以下だった。
C:LWRのバラつきが0.5nmより大きく、0.8nm以下だった。
D:LWRのバラつきが0.8nmより大きく、1.2nm以下だった。
E:LWRのバラつきが1.2nmより大きかった。
【0235】
<液中の被計数体数>
保管後の薬液収容体から現像液を取り出し、光散乱式液中粒子計数器:Rion社製 KS-19Xを使用し、30nm以上の被計数体数を求めた。結果は以下の基準により評価し、表1(「液中被計数体数欄」に示した)。なお、本実施例において、液中の被計数体を測定する場合、上記と同様の方法により実施した。
A:30個/ml以下だった。
B:30個/mlを超え、70個/ml以下だった。
C:70個/mlを超え、100個/ml以下だった。
D:100個/mlを超え、200個/ml以下だった。
E:200個/mlを超えた。
【0236】
<基板上のパーティクル密度の変化>
塗布コーターLithius-PROを使用し、保管後の薬液収容体から取り出した現像液をシリコンウェハ上に塗布した。このとき、塗布前後におけるシリコンウェハ上のパーティクル密度の変化を、SP5(KLAテンコール社製)を使用して測定した。なお、計数したのは粒子径が19nm以上となるパーティクル数である。結果は以下の基準により評価し、表1(「塗布パーティクル」欄)に示した。なお、本実施例において、基板上のパーティクル密度を測定する場合、上記と同様の方法により実施した。
A:0.06個/cm以下だった。
B:0.06個/cmを超え、0.1個/cm以下だった。
C:0.1個/cm以上を超え、0.2個/cm以下だった。
D:0.2個/cm以上を超え、0.3個/cm以下だった。
E:0.3個/cm以上を超えた。
【0237】
<液中の粒状物の評価>
評価装置: アジレント 8900
上記のSP-ICP-MSを使用して、経時後の薬液収容体から取り出した薬液について粒状物含有量の評価を行った。結果は以下の基準により評価し、表1の「粒状物評価」欄に示した。
A:0.05質量ppb以下だった。
B:0.05質量ppbを超え、0.2質量ppb以下だった。
C:0.2質量ppbを超え、0.5質量ppb以下だった。
D:0.5質量ppbを超え、1.0質量ppb以下だった。
E:1.0質量ppbを超えた。
【0238】
〔H/硫酸剥離液の経時性能安定性〕
過酸化水素組成物(30質量%)と硫酸水(98質量%)とを混合比率(質量比)=1/1で混合して、2時間撹拌した。撹拌後に5nmのナイロンフィルタを使用してろ過して、評価用の過酸化水素水液を作製した。この過酸化水素水液を、各容器に収容して薬液収容体を得た。それぞれの薬液収容体を30℃、及び、5℃で2週間保管した。
保管後の薬液収容体から、過酸化水素水液を取り出した。経時性能安定性は、レジスト剥離性能によって評価した。試験方法は以下のとおりである。
なお、本評価では、硫酸水を事前に60℃まで加熱した後に、過酸化水素水液と混合した。いずれの実施例についても、過酸化水素水液と硫酸水とを混合した後、更に「処理温度」となるまで加熱を行った後、レジスト剥離試験に用いた。
(レジスト剥離試験)
試験ウェハ:シリコンウェハ表面をHMDS(ヘキサメチルジシラザン)処理を実施したのち、4μmのOFPR800(TOK製ポジ型レジスト)を製膜し、このレジスト層に対する剥離能力を下記条件にて評価した。
・薬液量:600ml
・ウェハサイズ:12インチSiウェハ
・処理方法:枚葉式洗浄処理装置
・処理条件:120rpm/1min. + 1500rpm/30s
・流量:10ml./min./液温90℃
【0239】
レジスト剥離性については、処理後のウェハについてVM-3110(大日本スクリーン社製)を用いて膜厚分布を求め、そこからウェハ残渣がある面積の評価を行い、面積換算で除去率の評価を行った。経時評価をそれぞれの容器サンプルについてn=20の頻度で実施し、5℃で保管した薬液を用いた場合の除去率の標準偏差に対する、30℃で保管した薬液を用いた場合の除去率の標準偏差の比で評価した。
比=30℃で保管した薬液を用いた場合の標準偏差/5℃で保管した薬液を用いた場合の標準偏差
【0240】
A:標準偏差の比が1.1以下だった。
B:標準偏差の比が1.1を超え、1.3以下だった。
C:標準偏差の比が1.3を超え、1.5以下だった。
D:標準偏差の比が1.5を超え、2.0以下だった。
E:標準偏差の比が2.0を超えた。
【0241】
なお、液中被計数体数、塗布パーティクル、及び、粒状物評価は上記と同様である。
【0242】
〔バッファードフッ酸エッチング液の経時安定性〕
まず、ヒドロキシルアミン化合物を含有する水溶液(20質量%)を調製した。次に、48質量%水酸化カリウム(KOH)水溶液14.9g(この中には0.13molに相当するKOHが含まれている)、炭酸カリウム(KCO)粉末13.3g(これは0.096molのKCOに相当する)、20重量%ヒドロキシルアミン(HA)水溶液500.0g及び水471.8gを混合し、1000gのエッチング液を調製した。このエッチング液中のカリウムイオン濃度は0.32mol/kg、炭酸イオン濃度は0.096mol/kgと計算され、カリウムイオン濃度に対する炭酸イオン濃度のモル比は0.30である。このエッチング液中のHA濃度は10質量%であり、このエッチング液のpHは13以上である。
【0243】
<経時保管試験>
上記エッチング液を上記容器に収容し、薬液収容体を作製した。作製した薬液収容体を4℃、及び、40℃の環境下で1カ月保管した。保管後の薬液収容体から取り出した薬液について、上記と同様の方法で液中の被計数体数、基板上のパーティクル密度の変化、及び、液中の粒状物を測定し、表1に示した。
【0244】
<エッチング速度の評価>
ウェハ上に、酸化膜が200nm積層された直径300mmの酸化膜付きウェハを準備した。次に、保管後の薬液収容体から取り出した薬液(エッチング液)を用いて、上記酸化膜付きウェハを、浸漬法により30秒間、60℃で処理した。次に、浸漬後のウェハに対して、複数回、純水でリンスし、その後スピンドライし、処理済ウェハを作製した。処理前後のウェハ上の酸化膜の厚みを評価し、処理前後の酸化膜の厚みの差からエッチング速度を求めた。
具体的には、4℃の環境下で1カ月保管した薬液収容体から取り出されたエッチング液のエッチング速度の平均値1と、45℃の環境下で1カ月保管した薬液収容体から取り出されたエッチング液のエッチング速度の平均値2とを算出して、以下式で表される減少率を算出し、以下の基準で評価して、表1に示した。
なお、上記エッチング速度の平均値1は、4℃の環境下で1カ月保管した薬液収容体を50サンプル用意して、各サンプルのエッチング液のエッチング速度を算出して、それらを算術平均した値である。また、上記エッチング速度の平均値2は、40℃の環境下で1カ月保管した薬液収容体を50サンプル用意して、各サンプルのエッチング液のエッチング速度を算出して、それらを算術平均した値である。
式:減少率(%)={(エッチング速度の平均値1-エッチング速度の平均値2)/エッチング速度の平均値1}×100
【0245】
A:減少率が0.5%以下だった。
B:減少率が0.5%を超え、1.0%以下だった。
C:減少率が1.0%を超え、3.0%以下だった。
D:減少率が3.0%を超え、5.0%以下だった。
E:減少率が5.0%を超えた。
【0246】
〔CMP(chemical mechanical polishing)スラリーの経時安定性〕
CSL9044C(FFPS(FUJIFILM Ultra Pure Solutions)社製)を10倍希釈した溶液をCMPスラリー(薬液)とし、上記容器に収容して薬液収容体を作製した。次に、上記薬液収容体を4℃、及び、40℃で1カ月保管した。保管後の薬液収容体から取り出した薬液について、上記と同様の方法で液中の被計数体数、基板上のパーティクル密度の変化、及び、液中の粒状物を測定し、表1に示した。
【0247】
<研磨速度の評価>
ウェハ上に酸化膜が200nm積層された300mmの酸化膜付きウェハを準備した。
以下の評価方法に従って、研磨処理を行ったウェハを作製し、研磨処理前後のウェハの酸化膜の厚みを評価し、処理前後の膜厚の差から研磨速度を求めた。
<評価方法>
研磨装置としてラップマスター社製装置「LGP-612」を使用し、下記の条件で、スラリー(研磨液)を供給しながら、下記に示す各ウェハ膜を研磨した。
・テーブル回転数:90rpm
・ヘッド回転数:85rpm
・研磨圧力:13.79kPa
・研磨パッド:ロデール・ニッタ株式会社製 Polotexpad
・研磨液供給速度:200ml/min
【0248】
なお、評価においては、4℃の環境下で1カ月保管した薬液収容体から取り出されたCMPスラリーの研磨速度の平均値1と、40℃の環境下で1カ月保管した後の薬液収容体から取り出されたCMPスラリーの研磨速度の平均値2とを算出し、以下の式に従って研磨速度の減少率(%)を算出して、以下の基準に従って評価した。
なお、上記研磨速度の平均値1は、4℃の環境下で1カ月保管した薬液収容体を50サンプル用意して、各サンプルのCMPスラリーの研磨速度を算出して、それらを算術平均した値である。また、上記研磨速度の平均値2は、40℃の環境下で1カ月保管した薬液収容体を50サンプル用意して、各サンプルのCMPスラリーの研磨速度を算出して、それらを算術平均した値である。
式:減少率(%)={(研磨速度の平均値1-研磨速度の平均値2)/研磨速度の平均値1}×100
【0249】
A:減少率(%)が1.0%以下だった。
B:減少率(%)が1.0%を超え、1.5%以下だった。
C:減少率(%)が1.5%を超え、2.0%以下だった。
D:減少率(%)が2.0%を超え、3.0%以下だった。
E:減少率(%)が3.0%を超えた。
【0250】
〔pCMPクリーナーの経時安定性評価〕
ポストCMPクリーナー(表中では「pCMPクリーナー」と記載した。)としてClean-100(和光純薬社製)を用いた。Clean-100を上記容器に収納し、薬液収容体を作製した。次に、上記薬液収容体を、4℃、及び、40℃の環境下で、1カ月保管した。
保管後の薬液収容体から取り出した薬液(pCMPクリーナー)について、上記と同様の方法で液中の被計数体数、基板上のパーティクル密度の変化、及び、液中の粒状物を測定し、表1に示した。
【0251】
<欠陥抑制性能の評価>
シリコンウェハ上に酸化膜を100nm厚みとなるように製膜し、酸化膜付きシリコンウェハを得た。次に、酸化膜上にレジスト膜形成用組成物膜を製膜し、40nm線幅のLSパターンからなるパターン露光を行い、現像処理を実施し、パターン状のレジスト膜を形成した。
【0252】
得られたパターン状のレジスト膜をマスクとして、絶縁膜(酸化膜)をエッチングし、絶縁膜上に開口部を形成した。なお、エッチングは、窒素ガス及びハロゲンガスを含有するエッチングガスを用いた、プラズマエッチング法により実施した。
次に、酸素アッシング又は汎用のレジスト剥離液(FFEM(FUJIFILM Electronic Materials)社品MS6800)によって、パターン状のレジスト膜を除去し、更に、ヒドロキシルアミン化合物を含有する処理液を用いて洗浄し、エッチング処理により生じた不要な残渣物を除去した。
【0253】
次に、開口部が形成された絶縁膜上に、化学蒸着法にてTiからなる膜(バリア膜に相当)及びCoからなる膜を含有する金属膜を順に形成し、開口部を充填した。得られた金属膜を有する基材に対して、金属膜の不要部分を化学機械研磨によって除去して、平坦化処理を施し、金属配線が埋め込まれた絶縁膜を形成した。この際、研磨液を2種使用して、段階的に化学機械研磨した。具体的には、Tiからなる膜が露出するまでCSL9044C(FFPS社製)を10倍希釈した溶液を研磨液として用いて研磨を行い、その後、更に、平坦化が終了するまでBSL8178C(FFPS社製)を2倍希釈した溶液を研磨液として用いて研磨を行った。
【0254】
研磨後、上記保管後の薬液収容体から取り出した薬液を用いて、得られた金属配線が埋め込まれた絶縁膜を洗浄し、更に、水を用いた洗浄処理、及び、イソプロパノールを用いた洗浄処理を順に実施した。欠陥抑制性能は、UVsion5を用いて洗浄終了後のパターンを観察して、欠陥数を求め、欠陥数の上昇を以下の方法により求めた。
具体的には、評価においては、4℃の環境下で1カ月保管した薬液収容体から取り出された薬液を用いて処理した場合の欠陥数の平均値1と、40℃の環境下で1カ月保管した後の薬液収容体から取り出された薬液を用いて処理した場合の欠陥数の平均値2とを算出し、以下の式に従って欠陥数の上昇率(%)を算出して、以下の基準に従って評価した。
なお、上記欠陥数の平均値1は、4℃の環境下で1カ月保管した薬液収容体を50サンプル用意して、各サンプルの薬液を用いた場合の欠陥数を算出して、それらを算術平均した値である。また、上記欠陥数の平均値2は、40℃の環境下で1カ月保管した薬液収容体を50サンプル用意して、各サンプルの薬液を用いた場合の欠陥数を算出して、それらを算術平均した値である。
式:上昇率(%)={(欠陥数の平均値2-欠陥数の平均値1)/欠陥数の平均値1}×100
【0255】
A:上昇率が1.0%以下だった。
B:上昇率が1.0%を超え、2.0%以下だった。
C:上昇率が2.0%を超え、3.0%以下だった。
D:上昇率が3.0%を超え、5.0%以下だった。
E:上昇率が5.0%を超えた。
【0256】
〔プリウェット液の経時安定性評価〕
シクロヘキサノン、PGMEA(プロピレングリコール1-モノメチルエーテル2-アセタート)、乳酸エチル(EL)、及び、PGMEA/PC(炭酸プロピレン)をそれぞれ上記容器に収容し、薬液収容体を作製した。
上記で作製した薬液収容体を、4℃、及び、40℃の環境下で1カ月保管した。保管後の薬液収容体から取り出した薬液(プリウェット液)について、上記と同様の方法で液中の被計数体数、基板上のパーティクル密度の変化、及び、液中の粒状物を測定し、表1に示した。
【0257】
更に、PGMEA/PCを収容した薬液収容体においては、経時テストとして、容器中に薬液が収容された状態で、(1)-20℃で2日間の保管、(2)60℃で5日間の保管の2つの条件を交互に行うサイクル経時試験を10サイクル実施し、サイクル経時後の容器内に保管された薬液について、<基板上のパーティクル密度の変化>と同様の評価を行い、容器の耐久性について評価を行った。評価結果を、<サイクル評価>として表1に記載した。
【0258】
<リソグラフィ性能の評価>
下層反射防止膜層を製膜した300mmφのシリコンウェハ上にプリウェット液10cmを500rpmで5秒間濡れ広げた後、レジスト膜形成用組成物1cmを吐出し1500rpmで30秒間濡れ広げた後、100℃で60秒間乾燥させて、レジスト膜を製膜した。得られたレジスト膜に対して、上記とTMAH現像液と同様の方法でリソグラフィ性能を評価した。
【0259】
〔酢酸ブチル現像液の経時性能安定性〕
上述した〔TMAH現像液の経時性能安定性〕で使用したTMAH現像液の代わりに、酢酸ブチル現像液を用いた場合は、同様の手順で各種評価を実施した。
また、上記〔プリウェット液の経時安定性評価〕にして記載した<サイクル評価>を実施した。
なお、レジスト組成物として、ネガ現像向けのレジスト組成物を用い、またリンス処理は実施しない条件に変更して評価した。
ネガ現像向けのレジスト組成物として、ポジ用レジスト組成物中の樹脂Aのかわりに樹脂A2(87.01質量部)を用いた組成物を用いた。
樹脂A2:組成比30/10/60、Mw8200、分散度1.53のポリマー
【0260】
【化9】
【0261】
表1には、各実施例及び各比較例の容器の製造方法、容器の物性、及び、容器に収容された薬液の性能を、列ごとに記載した。例えば、実施例1の容器であれば、表1[1]<その1>及び表1[2]<その1>にわたって結果を記載した。すなわち、実施例1の容器は、基材上に被覆層を有する容器であって、溶出試験の結果、メタルが0.9質量ppb、TOCが200質量ppmであって、RCAが0.92、RCBが0.94であって、更に、上記容器に保管した各薬液の性能は次のとおりである。TMAH現像液のリソ性能がD、液中被計数体数がC、塗布パーティクルがC、粒状物評価がCであり、H/硫酸剥離液の剥離性能がD、液中被計数体数がC、塗布パーティクルがC、粒状物評価がCであり、バッファードフッ酸エッチング液のエッチング速度がD、液中被計数体数がC、塗布パーティクルがC、粒状物評価がC、CMPスラリーの研磨速度がD、液中被計数体数がC、塗布パーティクルがC、粒状物評価がC、pCMPクリーナーの欠陥抑制性能がD、液中被計数体数がC、塗布パーティクルがC、粒状物評価がC、シクロヘキサノンプリウェット液のリソ性能がD、液中被計数体数がC、塗布パーティクルがC、粒状物評価がC、PGMEAプリウェット液のリソ性能がD、液中被計数体数がC、塗布パーティクルがC、粒状物評価がC、ELプリウェット液のリソ性能がD、液中被計数体数がC、塗布パーティクルがC、粒状物評価がCである。
他の実施例及び比較例についても同様に、実施例2であれば表1[1]<その2>及び表1[2]<その2>に、実施例4であれば表1[1]<その3>及び表1[2]<その3>に、実施例6であれば表1[1]<その4>及び表[2]<その4>に、実施例8であれば表1[1]<その5>及び表2[2]<その5>に、実施例10であれば、表1[1]<その6>及び表1[2]<その6>に、実施例11であれば、表1[1]<その7>及び表1[2]<その7>にそれぞれ記載した。
【0262】
表中、「Fe」「Ni」「Cr」欄は、それぞれFe元素、Ni元素、及び、Cr元素の含有量(質量ppb)を表す。
「オレイン酸アミド」「ポリエチレン」欄は、それぞれオレイン酸アミド、及び、ポリエチレンの含有量(質量ppm)を表す。なお、ポリエチレンは、低重合度ポリエチレン(炭素数22以下のポリエチレン)であり、沸点300℃以上の有機物に該当する。
【0263】
【表1】
【0264】
【表2】
【0265】
【表3】
【0266】
【表4】
【0267】
【表5】
【0268】
【表6】
【0269】
【表7】
【0270】
【表8】
【0271】
【表9】
【0272】
【表10】
【0273】
【表11】
【0274】
【表12】
【0275】
【表13】
【0276】
【表14】
【0277】
各容器に収容される各薬液の含有メタル量を測定したところ、メタル種(Ti、Al、Zr、Hf、Fe、Ni、Sn、Zn、Cr、Mo、Fe、Ni、Sn)については、ICP-MS(Agilent8900)によりいずれの含有量が10質量ppt以下であることを確認した。
また、各薬液中の有機不純物を測定したところ、オレイン酸アミド、及び、低重合度アルキルオレフィン(炭素数22以下のアルキルオレフィン)を含む有機不純物の含有量が1質量ppm以下であることを確認した。
上記のように、保管する薬液のコンタミ成分の含有量がより少ないことで、不純物に起因する容器へのダメージをより低減でき、特に、低温/高温サイクル経時での溶出量をより抑制できる。
【0278】
表1に記載した結果から、各実施例の容器に収容された薬液は、経時的に薬液の性能が低下しにくいことがわかった。一方、各比較例の容器に収容された薬液は、経時的に薬液の性能が低下した。
基材上に特定組成物からなる被覆層を有する実施例2の容器は、特定組成物からなる実施例3の容器と比較して、RCA(s)がより低く、結果として収容された薬液の性能が経時的により低下しにくかった。
基材上に特定組成物からなる被覆層を有し、さらに、上記被覆層を表1に記載した方法により洗浄して製造された実施例2の容器は、洗浄工程を経なかった実施例1の薬液と比較して、RCAs及びRCBがより低く、結果として収容された薬液の性能が経時的により低下しにくかった。
洗浄工程において、使用する洗浄液の温度がより高く、かつ、洗浄方法が超音波洗浄である、実施例8の容器は、実施例3の容器と比較してRCA及びRCBがより低く、結果として、収容された薬液の性能が経時的により低下しにくかった。
洗浄工程において、洗浄液として酸及び有機溶剤を使用した、実施例7の容器は、実施例9の容器と比較して、RCBがより低く、溶出試験におけるTOCの溶出量も少なかった。結果として、有機不純物の影響がより大きい薬液(H/硫酸剥離液、及び、バッファードフッ酸エッチング液以外)において、性能が経時的により低下しにくかった。
洗浄工程において、超純水に余る洗浄を1時間実施した実施例8の容器は、超純水による洗浄を5分間実施した実施例2の容器と比較して、水溶性の不純物(塩等)の影響がより大きい、TMAH現像液、及び、CMPスラリーにおいて、性能が経時的により低下しにくかった。
実施例5の容器は、実施例4及び実施例6の容器と比較して、特に有機溶剤系の薬液における、結果として、塗布パーティクルがより少なかった。塗布パーティクルは、評価基準が厳しく、ごく微量成分の影響が残るが、特に評価ランクが高いところで差が顕著となる。薬液が有機溶剤系だと、塗布パーティクルが溶出しやすい為、より評価が悪くなるが、実施例5の容器はより優れた本発明の効果を有していた。
【0279】
なお、実施例1~12の容器について、各薬液を収容する前に、収容する薬液で容器を洗浄したのち、薬液の収容を行った。得られた薬液収容体を用い場合でも、上記と同様の結果が得られた。
また、実施例1~12の容器について、各薬液を収容する前に、収容する薬液に容器を1週間浸漬したのち、薬液の収容を行った。得られた薬液収容体を用い場合でも、上記と同様の結果が得られた。
【0280】
リソプロセス向けのコーター/ディベロッパー Lithius-ProZのソルベントラインに接続された薬液供給用2tタンク、及び、リソ装置への配管が繋がったプロセスユニットに対し、用意した薬液を用いて配管洗浄を実施した。なお、装置接続までの薬液ラインとしてはSUS製のタンク/ラインを使用した。洗浄条件の内容としては、準備した薬液を供給タンクに充填し、タンク及び配管の総薬液容量の10倍の量の薬液が流れるように配管のフラッシングを行った。上記のフラッシングを更に3サイクル実施したのち、製造用の薬液を投入し、薬液の製造を行った後、実施例1~12に記載の容器への充填を行った。
作製した薬液収容体中の薬液について、上述した、リソ性能、液中被計数体数、塗布パーティクル、及び、粒状物評価を行ったところ、上述した各実施例と同様の結果が得られた。
なお、コーター/ディベロッパー内に装填したPOUフィルターは装填前に、使用する薬液で事前に1週間浸漬後に、フラッシング前に接続して使用した。
【0281】
更に、製造ラインとして、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)ライニングしたSUS製の2t釜、PTFEライニングしたSUS製の配管、及び、PTFEライニングしたSUS製のフィルターユニット(耐圧容器)を接続した、半導体薬液の製造ラインを用いて同様に、リソ性能、液中被計数体数、塗布パーティクル、及び、粒状物評価を行ったところ、上記と同様の結果が得られた。
【0282】
また、容器として、18Lキャニスターサイズの容器、200Lのドラムサイズの容器、1tのToteサイズの容器、及び、10tのコンテナサイズの容器に対し、実施例と同様の処理を行った容器を作製し、作製した容器を用いて上記と同様の手順で各種評価を実施したところ、同様の結果が得られた。
【0283】
容器に薬液を収容する操作をクラス1000のクリーンルーム内で実施した以外は、実施例1~12と同様の方法でサンプルを作製し、同じ評価を行ったところ、実施例1~12と同様の結果が得られた。
また、容器に薬液を収容する操作をクラス100のクリーンルーム内で実施した以外は、実施例1~12と同様の方法でサンプルを作製し、同じ評価を行ったところ、実施例1~12と同様の結果が得られた。
また、実容器に薬液を収容する操作をクラス10のクリーンルーム内で実施した以外は、実施例1~12と同様の方法でサンプルを作製し、同じ評価を行ったところ、実施例1~12と同様の結果が得られた。
【0284】
上記実施例4および5の態様に関しては、以下式で表される充填率が80体積%の態様に該当する。
式(X):充填率=(容器内の薬液の体積/容器の容器体積)
上述した実施例4および5の態様に関して、充填率および有機物濃度の表2のように調整して、上述した評価を行った結果を示す。なお、実施例4-1が実施例4の態様において充填率および有機物濃度を変更した態様に該当し、実施例5-1が実施例5の態様において充填率および有機物濃度を変更した態様に該当する。
式(Y):有機物濃度=(容器内の薬液が充填されてない空間中に含まれる有機物の体積/容器内の薬液が充填されてない空間の体積)×100
【0285】
【表15】