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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-20
(45)【発行日】2022-01-17
(54)【発明の名称】画像形成方法及びインクセット
(51)【国際特許分類】
   B41M 5/00 20060101AFI20220107BHJP
   C09D 11/30 20140101ALI20220107BHJP
   B41J 2/01 20060101ALI20220107BHJP
【FI】
B41M5/00 100
B41M5/00 132
B41M5/00 134
B41M5/00 120
C09D11/30
B41J2/01 123
B41J2/01 501
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2019544404
(86)(22)【出願日】2018-08-14
(86)【国際出願番号】 JP2018030315
(87)【国際公開番号】W WO2019064978
(87)【国際公開日】2019-04-04
【審査請求日】2020-02-14
(31)【優先権主張番号】P 2017190329
(32)【優先日】2017-09-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】306037311
【氏名又は名称】富士フイルム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】特許業務法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】藤井 勇介
(72)【発明者】
【氏名】宮戸 健志
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 綾人
【審査官】野田 定文
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-145312(JP,A)
【文献】国際公開第2018/079580(WO,A1)
【文献】特開2016-179675(JP,A)
【文献】特開2015-074184(JP,A)
【文献】特開2017-222441(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41M 5/00 - 5/52
B41J 2/01 - 2/215
C09D 11/00 - 11/54
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
色材、水、及び20℃における蒸気圧が0.20kPa以下である有機溶剤Aを含有し、インクの全量に対する前記有機溶剤Aの含有量が10質量%以上であるインクを準備する工程と、
前記インク中の成分を凝集させる凝集剤及び水を含有する凝集液を準備する工程と、
樹脂及び20℃における蒸気圧が2.50kPa以上である有機溶剤Bを含有し、オーバーコート液の全量に対する前記有機溶剤Bの含有量が10質量%以上であり、かつ、オーバーコート液の全量に対する水の含有量が20質量%以下であるオーバーコート液を準備する工程と、
非浸透性基材上に、前記凝集液を付与する工程と、
前記非浸透性基材の前記凝集液が付与された領域上の少なくとも一部に、インクジェット法によって前記インクを付与して画像を形成する工程と、
前記画像が形成された前記非浸透性基材における前記凝集液が付与された領域上に、前記オーバーコート液を付与してオーバーコート層を形成する工程と、
を有する画像形成方法。
【請求項2】
色材、水、及び20℃における蒸気圧が0.20kPa以下である有機溶剤Aを含有し、インクの全量に対する前記有機溶剤Aの含有量が10質量%以上であるインクを準備する工程と、
前記インク中の成分を凝集させる凝集剤及び水を含有する凝集液を準備する工程と、
樹脂、無機粒子、及び20℃における蒸気圧が2.50kPa以上である有機溶剤Bを含有し、オーバーコート液の全量に対する前記有機溶剤Bの含有量が10質量%以上であるオーバーコート液を準備する工程と、
非浸透性基材上に、前記凝集液を付与する工程と、
前記非浸透性基材の前記凝集液が付与された領域上の少なくとも一部に、インクジェット法によって前記インクを付与して画像を形成する工程と、
前記画像が形成された前記非浸透性基材における前記凝集液が付与された領域上に、前記オーバーコート液を付与してオーバーコート層を形成する工程と、
を有する画像形成方法。
【請求項3】
前記オーバーコート液が、無機粒子を含有する請求項のいずれか1項に記載の画像形成方法。
【請求項4】
前記オーバーコート液に含有される前記無機粒子の少なくとも1種は、モース硬度が4以上である請求項2又は請求項3に記載の画像形成方法。
【請求項5】
前記インクに含有される前記有機溶剤Aの少なくとも1種は、20℃における蒸気圧が0.10kPa以下である請求項1~請求項4のいずれか1項に記載の画像形成方法。
【請求項6】
前記オーバーコート液の全量に対する前記有機溶剤Bの含有量が、25質量%以上である請求項1~請求項5のいずれか1項に記載の画像形成方法。
【請求項7】
前記オーバーコート液において、20℃における蒸気圧が0.10kPa以下である有機溶剤の含有量が、前記オーバーコート液の全量に対して10質量%以下である請求項1~請求項のいずれか1項に記載の画像形成方法。
【請求項8】
SP値の単位をMPa1/2とし、前記インクに含有される前記有機溶剤Aの平均SP値をISPとし、前記オーバーコート液に含有される液体成分全体の平均SP値をOSPとした場合に、Isp-Osp≧3を満足する請求項1~請求項のいずれか1項に記載の画像形成方法。
【請求項9】
前記凝集液が、樹脂粒子を含有する請求項1~請求項のいずれか1項に記載の画像形成方法。
【請求項10】
前記非浸透性基材が、樹脂基材である請求項1~請求項のいずれか1項に記載の画像形成方法。
【請求項11】
前記凝集剤が、多価金属化合物、有機酸又はその塩、及び、金属錯体よりなる群から選ばれる少なくとも1種である請求項1~請求項10のいずれか1項に記載の画像形成方法。
【請求項12】
単位面積当たりの前記凝集液の付与質量に対する単位面積当たりの前記オーバーコート液の付与質量の比が1.0以上である請求項1~請求項11のいずれか1項に記載の画像形成方法。
【請求項13】
色材、水、及び20℃における蒸気圧が0.20kPa以下である有機溶剤Aを含有し、インクの全量に対する前記有機溶剤Aの含有量が10質量%以上であるインクと、
前記インク中の成分を凝集させる凝集剤及び水を含有する凝集液と、
樹脂及び20℃における蒸気圧が2.50kPa以上である有機溶剤Bを含有し、オーバーコート液の全量に対する前記有機溶剤Bの含有量が10質量%以上であり、かつ、オーバーコート液の全量に対する水の含有量が20質量%以下であるオーバーコート液と、
を備えるインクセット。
【請求項14】
色材、水、及び20℃における蒸気圧が0.20kPa以下である有機溶剤Aを含有し、インクの全量に対する前記有機溶剤Aの含有量が10質量%以上であるインクと、
前記インク中の成分を凝集させる凝集剤及び水を含有する凝集液と、
樹脂、無機粒子、及び20℃における蒸気圧が2.50kPa以上である有機溶剤Bを含有し、オーバーコート液の全量に対する前記有機溶剤Bの含有量が10質量%以上であるオーバーコート液と、
を備えるインクセット。
【請求項15】
前記オーバーコート液が、無機粒子を含有する請求項13に記載のインクセット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、画像形成方法及びインクセットに関する。
【背景技術】
【0002】
基材上に、インク中の成分を凝集させる凝集剤(「反応剤」等とも称されている)を含む液体を付与し、次いでインクを付与し、次いで樹脂を含む液体を付与する技術が知られている。
【0003】
例えば、特許文献1には、インク低吸収性または非吸収性の記録媒体に対して、画質及び耐久性に優れた記録画像を記録できる記録方法として、記録媒体の記録領域へ着色インク組成物を凝集または増粘させる反応剤を含有する反応液を付着させる反応液付着工程と、反応液を付着させた記録領域に対して樹脂と色材とを含有する着色インク組成物を付着させる着色インク組成物付着工程と、樹脂を含有するクリアインク組成物を付着させるクリアインク組成物付着工程と、を備え、着色インク組成物に含まれる樹脂として、1質量%の含有量で樹脂を含む水3mLを凝集させるために必要な酢酸カルシウム0.085mol/kg水溶液の体積が7mL以下である樹脂を含む記録方法が開示されている。
【0004】
特許文献2には、記録媒体に対して、定着性に優れ、印刷ムラが抑制された画像を安定性よく記録することのできるインクジェット記録方法として、記録媒体へ、色材を含む着色インクの成分を凝集又は増粘させる反応剤を含む反応液を付着させる反応液付着工程と、反応液付着工程の後、記録媒体に付着した反応液の揮発成分の残存率が25質量%以上の状態で、反応液を付着させた領域へ、着色インクをインクジェット法により付着させる着色インク付着工程と、着色インクを付着させた領域へ、樹脂を含むクリアインクを付着させるクリアインク付着工程と、を含むインクジェット記録方法が開示されている。
【0005】
特許文献3には、顔料を凝集させる前処理を施した記録用メディアを用いることで画像濃度を向上させつつ、該前処理の影響を受けずに定着性(耐摩擦性)の向上および光沢の付与を達成し得る画像形成方法として、顔料凝集機能を有する記録用メディアの面上に、顔料を含有するインクジェット用インクを付着させて画像を形成する画像形成工程と、記録用メディアのインクジェット用インクを付着させた面上に水及び樹脂粒子を含有する後処理液を付着させる後処理工程と、を有し、インクジェット用インクはアニオン性界面活性剤を含有せず、樹脂粒子はpKaが7.0以下であり、後処理液はアニオン性フッ素系界面活性剤を含有する画像形成方法が開示されている。
【0006】
特許文献1:特開2016-196177号公報
特許文献2:特開2016-179675号公報
特許文献3:特開2016-120670号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
インク中の成分を凝集させる凝集剤(例えば、特許文献1及び2に記載された「反応剤」)は、基材上でインク中の成分を凝集させることにより、形成される画像の画質を向上させる役割を果たす。
従って、非浸透性基材上に凝集液を付与する工程と、非浸透性基材の凝集液が付与された領域上の少なくとも一部に、インクをインクジェット法によって付与して画像を形成する工程と、画像が形成された非浸透性基材における凝集液が付与された領域上に、オーバーコート液を付与しオーバーコート層を形成する工程と、を有する画像形成方法によれば、画質に優れた画像を形成でき、かつ、少なくとも画像上を被覆するオーバーコート層を形成できる。
【0008】
しかし、上記オーバーコート層を形成する工程等を有する上記画像形成方法を、特許文献1~3に記載の技術によって実施した場合、オーバーコート層が他の物体に転写する場合があることが判明した。例えば、オモテ面(即ち、画像が形成される面。以下同じ。)に画像及びオーバーコート層が形成された非浸透性基材を巻き取ってロールを形成する場合に、オーバーコート層が、このオーバーコート層の上に接する非浸透性基材のウラ面(即ち、オモテ面に対する反対面。以下同じ。)に転写される場合があることが判明した。
オーバーコート層の転写の原因は明らかではないが、凝集剤自体が他の物体に転写されやすい性質を有すること、及び、基材として非浸透性基材を用いたことにより凝集剤が基材の表面に残存し易いことが関係していると考えられる。詳細には、上記性質を有する凝集剤が、この凝集剤上に配置される画像及びこの画像上のオーバーコート層中に浸透し、これによりオーバーコート層がべたつき易くなる場合があり、その結果、オーバーコート層が他の物体に転写されやすくなる場合があるためと考えられる。
【0009】
また、インクジェット法によりインクを付与して画像を形成する場合には、インクジェットヘッドのノズルからインクを吐出する際の吐出安定性(以下、「インクの吐出安定性」ともいう)が要求される。
【0010】
本開示の一態様の課題は、画質に優れた画像、及び、他の物体への転写が抑制されたオーバーコート層を形成でき、画像を形成する際のインクの吐出安定性に優れる画像形成方法を提供することである。
本開示の別の一態様の課題は、画質に優れた画像、及び、他の物体への転写が抑制されたオーバーコート層を形成でき、画像を形成する際のインクの吐出安定性に優れるインクセットを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
課題を解決するための具体的手段には、以下の態様が含まれる。
<1> 色材、水、及び20℃における蒸気圧が0.20kPa以下である有機溶剤Aを含有し、インクの全量に対する有機溶剤Aの含有量が10質量%以上であるインクを準備する工程と、
インク中の成分を凝集させる凝集剤及び水を含有する凝集液を準備する工程と、
樹脂及び20℃における蒸気圧が2.50kPa以上である有機溶剤Bを含有し、オーバーコート液の全量に対する有機溶剤Bの含有量が10質量%以上であるオーバーコート液を準備する工程と、
非浸透性基材上に、凝集液を付与する工程と、
非浸透性基材の凝集液が付与された領域上の少なくとも一部に、インクジェット法によってインクを付与して画像を形成する工程と、
画像が形成された非浸透性基材における凝集液が付与された領域上に、オーバーコート液を付与してオーバーコート層を形成する工程と、
を有する画像形成方法。
<2> インクに含有される有機溶剤Aの少なくとも1種は、20℃における蒸気圧が0.10kPa以下である<1>に記載の画像形成方法。
<3> オーバーコート液の全量に対する有機溶剤Bの含有量が、25質量%以上である<1>又は<2>に記載の画像形成方法。
<4> オーバーコート液において、20℃における蒸気圧が0.10kPa以下である有機溶剤の含有量が、オーバーコート液の全量に対して10質量%以下である<1>~<3>のいずれか1つに記載の画像形成方法。
<5> SP値の単位をMPa1/2とし、インクに含有される有機溶剤Aの平均SP値をISPとし、オーバーコート液に含有される液体成分全体の平均SP値をOSPとした場合に、Isp-Osp≧3を満足する<1>~<4>のいずれか1つに記載の画像形成方法。
<6> 凝集液が、樹脂粒子を含有する<1>~<5>のいずれか1つに記載の画像形成方法。
<7> オーバーコート液が、無機粒子を含有する<1>~<6>のいずれか1つに記載の画像形成方法。
<8> オーバーコート液に含有される無機粒子の少なくとも1種は、モース硬度が4以上である<7>に記載の画像形成方法。
<9> 非浸透性基材が、樹脂基材である<1>~<8>のいずれか1つに記載の画像形成方法。
<10> オーバーコート液における水の含有量が、オーバーコート液の全量に対して20質量%以下である<1>~<9>のいずれか1つに記載の画像形成方法。
<11> 凝集剤が、多価金属化合物、有機酸又はその塩、及び、金属錯体よりなる群から選ばれる少なくとも1種である<1>~<10>のいずれか1つに記載の画像形成方法。
<12> 単位面積当たりの凝集液の付与質量に対する単位面積当たりのオーバーコート液の付与質量の比が、1.0以上である<1>~<11>のいずれか1つに記載の画像形成方法。
【0012】
<13> 色材、水、及び20℃における蒸気圧が0.20kPa以下である有機溶剤Aを含有し、インクの全量に対する有機溶剤Aの含有量が10質量%以上であるインクと、
インク中の成分を凝集させる凝集剤及び水を含有する凝集液と、
樹脂及び20℃における蒸気圧が2.50kPa以上である有機溶剤Bを含有し、オーバーコート液の全量に対する有機溶剤Bの含有量が10質量%以上であるオーバーコート液と、
を備えるインクセット。
【発明の効果】
【0013】
本開示の一態様によれば、画質に優れた画像、及び、他の物体への転写が抑制されたオーバーコート層を形成でき、画像を形成する際のインクの吐出安定性に優れる画像形成方法が提供される。
本開示の別の一態様によれば、画質に優れた画像、及び、他の物体への転写が抑制されたオーバーコート層を形成でき、画像を形成する際のインクの吐出安定性に優れるインクセットが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本開示の一実施形態に係る画像形成方法に好適な画像形成装置の一例を示す概略構成図である。
図2】実施例における、画質の評価に用いた文字画像の鏡像を概念的に示す図である。
図3】実施例における、画質の評価基準の詳細を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本明細書において、「~」を用いて表される数値範囲は、「~」の前後に記載される数値を下限値および上限値として含む範囲を意味する。
本明細書において、組成物中の各成分の量は、組成物中に各成分に該当する物質が複数存在する場合、特に断らない限り、組成物中に存在する上記複数の物質の合計量を意味する。
本明細書において、「工程」との語は、独立した工程だけでなく、他の工程と明確に区別できない場合であっても工程の所期の目的が達成されれば、本用語に含まれる。
本明細書において、「(メタ)アクリル」は、アクリル及びメタクリルの少なくとも一方を意味し、「(メタ)アクリレート」は、アクリレート及びメタクリレートの少なくとも一方を意味する。
本明細書において、好ましい態様の組み合わせは、より好ましい態様である。
【0016】
〔画像形成方法〕
本開示の一実施形態に係る画像形成方法は、
色材、水、及び20℃における蒸気圧(以下、「20℃蒸気圧」ともいう)が0.20kPa以下である有機溶剤Aを含有し、インクの全量に対する有機溶剤Aの含有量が10質量%以上であるインクを準備する工程と、
インク中の成分を凝集させる凝集剤及び水を含有する凝集液を準備する工程と、
樹脂及び20℃における蒸気圧が2.50kPa以上である有機溶剤Bを含有し、オーバーコート液の全量に対する有機溶剤Bの含有量が10質量%以上であるオーバーコート液を準備する工程と、
非浸透性基材上に、凝集液を付与する工程と、
非浸透性基材の凝集液が付与された領域上の少なくとも一部に、インクジェット法によってインクを付与して画像を形成する工程と、
画像が形成された非浸透性基材における凝集液が付与された領域上に、オーバーコート液を付与しオーバーコート層を形成する工程と、
を有する。
本実施形態の画像形成方法は、必要に応じ、その他の工程を有していてもよい。
【0017】
本実施形態の画像形成方法によれば、画質に優れた画像を形成でき、かつ、少なくとも画像上を被覆する、他の物体への転写が抑制されたオーバーコート層を形成できる。また、本実施形態の画像形成方法は、画像を形成する際のインクの吐出安定性に優れる。
上記効果が得られる理由は明確ではないが、以下のように推測される。
【0018】
画質に優れた画像を形成できる理由は、凝集液が付与された領域の少なくとも一部にインクを付与して画像を形成することにより、インク中の成分を凝集させて画像を形成できるためと考えられる。
【0019】
インクの吐出安定性に優れる理由は、インクが、20℃蒸気圧が0.20kPa以下である有機溶剤Aをインクの全量に対して10質量%以上含有することにより、インクジェットヘッドのノズルにおけるインク中の有機溶剤Aの揮発、及び、この揮発に起因するインクの吐出不良(例えば、不吐出等)が抑制されるためと考えられる。
【0020】
他の物体への転写が抑制されたオーバーコート層を形成できる理由は、オーバーコート層を形成するためのオーバーコート液が、20℃蒸気圧が2.50kPa以上である有機溶剤Bをオーバーコート液の全量に対して10質量%以上含有することにより、オーバーコート液の付与後、有機溶剤Bを速やかに揮発させることができ(即ち、オーバーコート液の乾燥性を向上させることができ)、その結果、べたつきが抑制されたオーバーコート層を形成できるためと考えられる。
ここでいうオーバーコート層のべたつきは、非浸透性基材及び凝集剤を用いた画像形成方法に特有の現象であり、凝集剤が画像及びオーバーコート層中に浸透することによって生じる現象である。
【0021】
以上のように、本実施形態の画像形成方法によれば、画質に優れた画像、及び、他の物体への転写が抑制されたオーバーコート層を形成でき、画像を形成する際のインクの吐出安定性に優れるので、印刷物(即ち、画像及びオーバーコート層が形成された非浸透性基材。以下同じ。)における高画質化及び印刷物の生産性向上が実現され得る。
【0022】
以下、本実施形態の画像形成方法の各工程について説明する。
【0023】
<インクを準備する工程>
インクを準備する工程(以下、「インク準備工程」ともいう)は、インクを製造する工程には限定されず、予め製造されたインクを、本実施形態の画像形成方法のために単に準備するだけの工程であってもよい。
インク準備工程では、インクを1種のみ(即ち、1色のインクのみ)を準備してもよいし、2種以上準備してもよい(例えば、2色以上のインクを準備してもよい)。
インク準備工程で、2色以上のインクを準備し、後述の画像形成工程において、非浸透性基材の凝集液が付与された領域上の少なくとも一部に、2色以上のインクを付与した場合には、2色以上の画像を形成することができる。
【0024】
インクは、色材、水、及び20℃蒸気圧が0.20kPa以下である有機溶剤Aを含有し、インクの全量に対する有機溶剤Aの含有量が10質量%以上である。
【0025】
(色材)
インクは、色材を少なくとも1種含有する。
色材としては、特に限定されず、インクジェット用インクの分野で公知の色材が使用可能であるが、有機顔料又は無機顔料が好ましい。
【0026】
有機顔料としては、例えば、アゾ顔料、多環式顔料、染料キレート、ニトロ顔料、ニトロソ顔料、アニリンブラック、などが挙げられる。これらの中でも、アゾ顔料、多環式顔料などがより好ましい。
無機顔料としては、例えば、酸化チタン、酸化鉄、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、水酸化アルミニウム、バリウムイエロー、カドミウムレッド、クロムイエロー、カーボンブラック、などが挙げられる。これらの中でも、カーボンブラックが特に好ましい。
色材としては、特開2009-241586号公報の段落0096~0100に記載の着色剤が好ましく挙げられる。
【0027】
色材の含有量(2種以上である場合には総含有量)としては、インクの全量に対して、1質量%~25質量%が好ましく、2質量%~20質量%がより好ましく、2質量%~15質量%が特に好ましい。
【0028】
(分散剤)
インクは、上記色材を分散するための分散剤を含有してもよい。分散剤としては、ポリマー分散剤、又は低分子の界面活性剤型分散剤のいずれでもよい。また、ポリマー分散剤は、水溶性の分散剤、又は非水溶性の分散剤のいずれでもよい。
分散剤としては、例えば、特開2016-145312号公報の段落0080~0096に記載の分散剤が好ましく挙げられる。
【0029】
色材(p)と分散剤(s)との混合質量比(p:s)としては、1:0.06~1:3の範囲が好ましく、1:0.125~1:2の範囲がより好ましく、更に好ましくは1:0.125~1:1.5である。
【0030】
(水)
インクは、水を含有する。
水の含有量は、インクの全量に対して、好ましくは50質量%以上であり、より好ましくは60質量%以上である。
水の含有量の上限は、水以外の成分の含有量に応じて適宜定まる。
水の含有量の上限としては、例えば、89質量%、85質量%、80質量%等が挙げられる。
【0031】
(有機溶剤A)
インクは、20℃蒸気圧が0.20kPa以下である有機溶剤Aを少なくとも1種含有する。インクの全量に対する有機溶剤Aの含有量(2種以上である場合には総含有量。以下同じ。)は、10質量%以上である。これにより、インクの吐出安定性が向上する。
【0032】
20℃蒸気圧が0.20kPa以下である有機溶剤Aの20℃蒸気圧の下限には特に制限はないが、下限として、例えば、0.0001kPa、0.0005kPa、0.001kPa等が挙げられる。
【0033】
インクの全量に対する有機溶剤Aの含有量(2種以上である場合には総含有量)は、10質量%以上である。
インクの吐出安定性をより向上させる観点から、上記有機溶剤Aの含有量は、15質量%以上であることがより好ましい。
上記有機溶剤Aの含有量の上限は、他の成分の含有量に依存するが、上限としては40質量%が好ましい。
【0034】
インクの吐出安定性をより向上させる観点から、インクに含有される有機溶剤Aの少なくとも1種は、20℃蒸気圧が0.10kPa以下(より好ましくは0.05kPa以下、更に好ましくは0.03kPa以下)であることが好ましい。
【0035】
また、オーバーコート層をより向上させる観点から、インクに含有される有機溶剤Aの少なくとも1種は、SP値が18MPa1/2以上(より好ましくは18MPa1/2~50MPa1/2、さらに好ましくは20MPa1/2~48MPa1/2)であることが好ましい。
【0036】
有機溶剤Aとしては、
1,2-プロパンジオール(20℃蒸気圧0.01kPa、SP値35MPa1/2)、
1,3-プロパンジオール(20℃蒸気圧0.005kPa、SP値35MPa1/2;以下、「1,3-PD」とも称する)、
グリセリン(20℃蒸気圧0.001kPa未満、SP値48MPa1/2;以下、「GL」とも称する)、
プロピレングリコールモノブチルエーテル(20℃蒸気圧0.11kPa、SP値21MPa1/2;以下、「PGmBE」とも称する)、
プロピレングリコールモノメチルエーテル(20℃蒸気圧0.09kPa、SP値24MPa1/2;以下、「PGmME」とも称する)、
ジプロピレングリコールモノメチルエーテル(20℃蒸気圧0.003kPa、SP値22MPa1/2)、
トリプロピレングリコールモノメチルエーテル(20℃蒸気圧0.001kPa未満、SP値21MPa1/2)、
プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(20℃蒸気圧0.03kPa、SP値21MPa1/2)、
ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(20℃蒸気圧0.001kPa未満、SP値20MPa1/2)、
プロピレングリコールモノプロピルエーテル(20℃蒸気圧0.02kPa、SP値23MPa1/2;以下、「PGmPE」とも称する)、
ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル(20℃蒸気圧0.001kPa未満、SP値22MPa1/2)、
ジプロピレングリコールモノブチルエーテル(20℃蒸気圧0.001kPa未満、SP値21MPa1/2)、
トリプロピレングリコールモノブチルエーテル(20℃蒸気圧0.001kPa未満、SP値20MPa1/2)、
ジプロピレングリコールジメチルエーテル(20℃蒸気圧0.005kPa、SP値22MPa1/2)、
ジエチレングリコールモノエチルエーテル(20℃蒸気圧0.001kPa未満、SP値23MPa1/2)、
ジエチレングリコールモノメチルエーテル(20℃蒸気圧0.002kPa、SP値24MPa1/2)、
ジエチレングリコールモノブチルエーテル(20℃蒸気圧0.001kPa未満、SP値22MPa1/2)、
ジエチレングリコールモノヘキシルエーテル(20℃蒸気圧0.001kPa未満、SP値21MPa1/2)、
エチレングリコールモノプロピルエーテル(20℃蒸気圧0.02kPa、SP値23MPa1/2;以下、「EGmPE」とも称する)、
エチレングリコールモノブチルエーテル(20℃蒸気圧0.007kPa、SP値22MPa1/2)、
エチレングリコールモノヘキシルエーテル(20℃蒸気圧0.001kPa未満、SP値21MPa1/2)、
トリエチレングリコールモノメチルエーテル(20℃蒸気圧0.001kPa未満、SP値23MPa1/2)、
トリエチレングリコールモノエチルエーテル(20℃蒸気圧0.001kPa未満、SP値22MPa1/2)、
トリエチレングリコールモノブチルエーテル(20℃蒸気圧0.001kPa未満、SP値22MPa1/2)、
1,2-ヘキサンジオール(20℃蒸気圧0.002kPa、SP値30MPa1/2)、
1,4-ブタンジオール(20℃蒸気圧0.001kPa、SP値31MPa1/2)、
1,2-ブタンジオール(20℃蒸気圧0.003kPa、SP値31MPa1/2)、
2-ピロリドン(20℃蒸気圧0.001kPa未満、SP値29MPa1/2)、
γ-ブチロラクトン(20℃蒸気圧0.004kPa、SP値21MPa1/2)、
等が挙げられる。
【0037】
本実施形態の画像形成方法において、SP値の単位をMPa1/2とし、インクに含有される有機溶剤Aの平均SP値をISPとし、後述するオーバーコート液に含有される液体成分全体の平均SP値をOSPとした場合に、Isp-Osp≧3を満足することが好ましい。
即ち、インクに含有される有機溶剤Aの親水性の度合いに関係するISPと、オーバーコート液に含有される液体成分全体の親水性の度合いに関係するOSPと、の間に、3MPa1/2以上の差があることが好ましい。これにより、インクを用いて形成された画像から、その上に形成されたオーバーコート層への有機溶剤Aの移行が抑制されるので、オーバーコート層のべたつき及び転写がより抑制される。
ここで、ISPを、インクに含有される液体成分全体の平均SP値ではなく、インクに含有される有機溶剤Aの平均SP値をISPとしている理由は、オーバーコート液が付与される段階で画像中に残存する液体成分は、主として有機溶剤Aであるためである。
また、オーバーコート液に含有される液体成分としては、少なくとも有機溶剤Bが該当する。オーバーコート液が、有機溶剤B以外の有機溶剤及び水を含有する場合には有機溶剤B以外の有機溶剤及び水も、オーバーコート液に含有される液体成分に該当する。
本実施形態の画像形成方法は、Isp-Osp≧5を満足することがより好ましく、Isp-Osp≧10を満足することが更に好ましい。
【0038】
ここで、インクに含有される有機溶剤Aの平均SP値とは、インクに含有される個々の有機溶剤AのSP値の加重平均値を意味し、オーバーコート液に含有される液体成分全体の平均SP値とは、オーバーコート液に含有される個々の液体のSP値の加重平均値を意味する。
【0039】
本明細書におけるSP値は、沖津法(沖津俊直著「日本接着学会誌」29(5)(1993))によって算出するものとする。
具体的には、SP値は以下の式で計算されるものである。なお、ΔFは文献記載の値である。
SP値(δ)=ΣΔF(Molar Attraction Constants)/V(モル容積)
また、本明細書におけるSP値の単位はMPa1/2である。
【0040】
また、SP値の加重平均値とは、下記数式1によって求められる「X」である。
詳細には、インクに含有される有機溶剤Aの平均SP値(ISP)は、下記数式1において、Sに、インクに含有されるi種目(iは1以上の整数を表す)の有機溶剤AのSP値を代入し、Wに、インクに含有される有機溶剤A全体に占めるi種目の有機溶剤Aの質量分率を代入することによって算出されるXである。
また、オーバーコート液に含有される液体成分全体の平均SP値(OSP)は、下記数式1において、Sに、オーバーコート液に含有されるi種目(iは1以上の整数を表す)の液体成分のSP値を代入し、Wに、オーバーコート液に含有される液体成分全体に占めるi種目の液体成分の質量分率を代入することによって算出されるXである。
【0041】
【数1】
【0042】
sp-Ospの上限には特に制限はないが、Isp-Ospは、例えば25MPa1/2以下あり、好ましくは20MPa1/2以下である。
SP自体の値には特に制限はないが、ISPは、20MPa1/2~45MPa1/2であることがより好ましい。
sp自体の値には特に制限はないが、Ospは、15MPa1/2~40MPa1/2であることが好ましい。
【0043】
インクは、本実施形態の条件を満足する限り、上記有機溶剤A以外の有機溶剤を含有してもよい。
インク中の全有機溶剤に占める有機溶剤Aの割合は、好ましくは50質量%~100質量%、より好ましくは60質量%~100質量%、さらに好ましくは80質量%~100質量%である。
【0044】
(樹脂粒子)
インクは、樹脂粒子を少なくとも1種含有してもよい。
樹脂粒子を含有することにより、主にインクの非浸透性基材への定着性及び耐擦過性をより向上させることができる。また、樹脂粒子は、後述の凝集剤と接触した際に凝集又は分散不安定化してインクを増粘させることにより、インク、すなわち画像を固定化させる機能を有する。このような樹脂粒子は、水及び含水有機溶剤に分散されているものが好ましい。
樹脂粒子としては、例えば、特開2016-188345号公報の段落0062~0076に記載の樹脂粒子(例えば自己分散性ポリマー粒子)が挙げられる。
【0045】
(その他の成分)
インクは、上記以外のその他の成分を含有してもよい。
その他の成分としては、例えば、乾燥防止剤(湿潤剤)、褪色防止剤、乳化安定剤、浸透促進剤、紫外線吸収剤、防腐剤、防黴剤、pH調整剤、表面張力調整剤、消泡剤、粘度調整剤、分散安定剤、防錆剤、キレート剤等の公知の添加剤が挙げられる。
【0046】
<凝集液を準備する工程>
凝集液を準備する工程(以下、「凝集液準備工程」ともいう)は、凝集液を製造する工程には限定されず、予め製造された凝集液を本実施形態の画像形成方法のために単に準備するだけの工程であってもよい。
凝集液は、インク中の成分を凝集させる凝集剤及び水を含有する。
【0047】
(凝集剤)
凝集液は、インク中の成分を凝集させる凝集剤を少なくとも1種含有する。
凝集剤は、非浸透性基材上でインク中の成分(例えば、色材、インクに樹脂粒子が含有される場合には樹脂粒子、等)を凝集させ、これにより、インクによって形成される画像の画質を向上させる機能を有する。
また、凝集液は、画像形成の高速化にも寄与する。
凝集剤としては、上述した機能を有するものであれば特に制限はない。
凝集剤としては、例えば、多価金属化合物、有機酸又はその塩、及び、金属錯体よりなる群から選ばれる少なくとも1種が挙げられる。
【0048】
-多価金属化合物-
多価金属化合物としては、周期表の第2属のアルカリ土類金属(例えば、マグネシウム、カルシウム)、周期表の第3属の遷移金属(例えば、ランタン)、周期表の第13属からのカチオン(例えば、アルミニウム)、ランタニド類(例えば、ネオジム)の塩を挙げることができる。これら金属の塩としては、硝酸塩、塩化物、及びチオシアン酸塩が好適である。
中でも、好ましくは、硝酸のカルシウム塩又はマグネシウム塩、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、及びチオシアン酸のカルシウム塩又はマグネシウム塩である。
なお、多価金属化合物は、凝集液中において、少なくとも一部が多価金属イオンと対イオンとに解離していることが好ましい。
【0049】
-有機酸又はその塩-
有機酸としては、酸性基を有する有機化合物が挙げられる。
酸性基としては、リン酸基、ホスホン酸基、ホスフィン酸基、硫酸基、スルホ基、スルフィン酸基、及びカルボキシ基等を挙げることができる。上記酸性基は、インクの凝集速度の観点から、リン酸基又はカルボキシ基が好ましく、カルボキシ基がより好ましい。
なお、上記酸性基は、凝集液中において、少なくとも一部が解離していることが好ましい。
【0050】
カルボキシ基を有する有機化合物としては、ポリアクリル酸、酢酸、グリコール酸、マロン酸、リンゴ酸(好ましくは、DL-リンゴ酸)、マレイン酸、アスコルビン酸、コハク酸、グルタル酸、ピメリン酸、アジピン酸、フマル酸、クエン酸、酒石酸、フタル酸、4-メチルフタル酸、乳酸、スルホン酸、オルトリン酸、ピロリドンカルボン酸、ピロンカルボン酸、ピロールカルボン酸、フランカルボン酸、ピリジンカルボン酸、クマリン酸、チオフェンカルボン酸、ニコチン酸、若しくはこれらの化合物の誘導体、又はこれらの塩等が好ましい。これらの化合物は、1種類で使用されてもよく、2種類以上併用されてもよい。
【0051】
カルボキシ基を有する有機化合物としては、インクの凝集速度の観点から、2価以上のカルボン酸(以下、多価カルボン酸ともいう。)が好ましく、ジカルボン酸がより好ましい。
多価カルボン酸としては、マロン酸、リンゴ酸、マレイン酸、コハク酸、グルタル酸、フマル酸、酒石酸、4-メチルフタル酸、又はクエン酸が好ましく、マロン酸、リンゴ酸、酒石酸、又はクエン酸がより好ましい。
【0052】
有機酸は、pKaが低いことが好ましい。
これにより、カルボキシ基等の弱酸性の官能基で分散安定化している、インク中の粒子(例えば、顔料、樹脂粒子など)の表面電荷を、よりpKaの低い有機酸性化合物と接触させることにより減じ、分散安定性を低下させることができる。
【0053】
凝集液に含まれる有機酸は、pKaが低く、水に対する溶解度が高く、価数が2価以上であることが好ましく、インク中の粒子を分散安定化させている官能基(例えば、カルボキシ基等)のpKaよりも低いpH領域に高い緩衝能を有する2価又は3価の酸性物質であることがより好ましい。
【0054】
-金属錯体-
金属錯体としては、様々な金属錯体が市販されており、本実施形態においては、市販の金属錯体を使用してもよい。また、様々な有機配位子、特に金属キレート触媒を形成し得る様々な多座配位子が市販されている。そのため、市販の有機配位子と金属とを組み合わせて調製した金属錯体を使用してもよい。
【0055】
金属錯体としては、例えば、ジルコニウムテトラアセチルアセトネート(例えば、マツモトファインケミカル(株)製「オルガチックスZC-150」)、ジルコニウムモノアセチルアセトネート(例えば、松本製薬工業(株)製「オルガチックスZC-540」)、ジルコニウムビスアセチルアセトネート(例えば、マツモトファインケミカル(株)製「オルガチックスZC-550」)、ジルコニウムモノエチルアセトアセテート(例えば、マツモトファインケミカル(株)製「オルガチックスZC-560」)、ジルコニウムアセテート(例えば、マツモトファインケミカル(株)製「オルガチックスZC-115」)、チタンジイソプロポキシビス(アセチルアセトネート)(例えば、マツモトファインケミカル(株)製「オルガチックス TC-100」)、チタンテトラアセチルアセトネート(例えば、マツモトファインケミカル(株)製「オルガチックス TC-401」)、チタンジオクチロキシビス(オクチレングリコレート)(例えば、マツモトファインケミカル(株)製「オルガチックス TC-200」)、チタンジイソプロポキシビス(エチルアセトアセテート(例えば、マツモトファインケミカル(株)製「オルガチックス TC-750」)、ジルコニウムテトラアセチルアセトネート(例えば、マツモトファインケミカル(株)製「オルガチックス ZC-700」)、ジルコニウムトリブトキシモノアセチルアセトネート(例えば、マツモトファインケミカル(株)製「オルガチックス ZC-540」)、ジルコニウムモノブトキシアセチルアセトネート ビス(エチルアセトアセテート)(例えば、マツモトファインケミカル(株)製「オルガチックス ZC-570」))、ジルコニウムジブトキシ ビス(エチルアセトアセテート)(例えば、マツモトファインケミカル(株)製「オルガチックス ZC-580」)、アルミニウムトリスアセチルアセトネート(例えば、マツモトファインケミカル(株)製「オルガチックス AL-80」)、チタンラクテートアンモニウム塩(マツモトファインケミカル(株)製「オルガチックス TC-300」)、チタンラクテート(マツモトファインケミカル(株)製「オルガチックス TC-310、315」)、チタントリエタノールアミネート(マツモトファインケミカル(株)製「オルガチックス TC-400」)、マツモトファインケミカル(株)製「オルガチックス ZC-126が挙げられ、これらの中でチタンラクテートアンモニウム塩(マツモトファインケミカル(株)製「オルガチックス TC-300」)、チタンラクテート(マツモトファインケミカル(株)製「オルガチックス TC-310、315」)、チタントリエタノールアミネート(マツモトファインケミカル(株)製「オルガチックス TC-400」)、マツモトファインケミカル(株)製「オルガチックス ZC-126が好ましい。
【0056】
-カチオン性ポリマー-
凝集剤としては、特開2016-188345号公報に記載のカチオン性ポリマーを、多価金属化合物、有機酸又はその塩、及び、金属錯体よりなる群から選ばれる少なくとも1種と併用してもよい。
【0057】
凝集剤の含有量は、特に制限はないが、インクの凝集速度の観点から、凝集液の全量に対し、0.1質量%~40質量%であることが好ましく、0.1質量%~30質量%であることがより好ましく、1質量%~20質量%であることが更に好ましく、1質量%~10質量%であることが特に好ましい。
【0058】
(水)
凝集液は、水を含有する。
水の含有量は、凝集液の全量に対して、好ましくは50質量%~90質量%であり、より好ましくは60質量%~80質量%である。
【0059】
(樹脂粒子)
凝集液は、樹脂粒子を少なくとも1種を含有することが好ましい。
凝集液が樹脂粒子を含有する場合には、画像と非浸透性基材との密着性がより向上する。
【0060】
樹脂粒子は、1種類の樹脂のみを含んでもよいし、複数種の樹脂を含んでもよい。
また、樹脂粒子に含まれる樹脂は、水不溶性の樹脂であることが好ましい。
本明細書中において、「水不溶性」とは、25℃の水100gに対する溶解量が1.0g未満(より好ましくは0.5g未満)である性質を意味する。
【0061】
樹脂粒子に含まれる樹脂としては、特に限定されないが、ポリウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリウレア樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂等が挙げられる。
【0062】
樹脂粒子としては、画像と非浸透性基材との密着性をより向上させる観点から、ポリウレタン樹脂粒子、ポリアミド樹脂粒子、ポリウレア樹脂粒子、ポリカーボネート樹脂粒子、ポリオレフィン樹脂粒子、ポリスチレン樹脂粒子、ポリエステル樹脂粒子、及び(メタ)アクリル樹脂粒子からなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましく、ポリエステル樹脂粒子及びポリアミド樹脂粒子からなる群から選択される少なくとも1種であることがより好ましい。
【0063】
-脂環式構造又は芳香環式構造-
樹脂粒子に含まれる樹脂は、脂環式構造又は芳香環式構造を有することが好ましく、芳香環式構造を有することがより好ましい。
脂環式構造としては、炭素数5~10の脂環式炭化水素構造が好ましく、シクロヘキサン環構造、ジシクロペンタニル環構造、ジシクロペンテニル環構造、又は、アダマンタン環構造が好ましい。
芳香環式構造としては、ナフタレン環又はベンゼン環が好ましく、ベンゼン環がより好ましい。
脂環式構造又は芳香環式構造の量としては、特に限定されず、例えば、樹脂粒子に含まれる樹脂100gあたり0.01mol~1.5molであることが好ましく、0.1mol~1molであることがより好ましい。
【0064】
-イオン性基-
樹脂粒子に含まれる樹脂は、構造中にイオン性基を有することが好ましい。
イオン性基としては、アニオン性基であってもカチオン性基であってもよいが、導入の容易性の観点から、アニオン性基が好ましい。
アニオン性基としては、特に限定されないが、カルボキシ基、又は、スルホ基であることが好ましく、スルホ基であることがより好ましい。
イオン性基の量としては、特に限定されず、樹脂粒子に含まれる樹脂100gあたり0.001~1.0molであることが好ましく、0.01~0.5molであることがより好ましい。
【0065】
-体積平均粒径-
樹脂粒子の体積平均粒径は、1nm~300nmであることが好ましく、3nm~200nmであることがより好ましく、5nm~150nmであることが更に好ましい。
【0066】
本明細書において、体積平均粒径は、レーザー回折・散乱式粒度分布計により測定された値を意味する。
測定装置としては、例えば、粒度分布測定装置「マイクロトラックMT-3300II」(日機装(株)製)が挙げられる。
【0067】
-重量平均分子量-
樹脂粒子に含まれる樹脂の重量平均分子量(Mw)は、1000~300000であることが好ましく、2000~200000であることがより好ましく、5000~100000であることが更に好ましい。
【0068】
本明細書において、重量平均分子量(Mw)は、特別な記載がない限り、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によって測定された値を意味する。
ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)による測定は、測定装置として、HLC(登録商標)-8020GPC(東ソー(株))を用い、カラムとして、TSKgel(登録商標)Super Multipore HZ-H(4.6mmID×15cm、東ソー(株))を3本用い、溶離液として、THF(テトラヒドロフラン)を用いる。また、測定条件としては、試料濃度を0.45質量%、流速を0.35mL/min、サンプル注入量を10μL、及び測定温度を40℃とし、RI検出器を用いて行う。
検量線は、東ソー(株)の「標準試料TSK standard,polystyrene」:「F-40」、「F-20」、「F-4」、「F-1」、「A-5000」、「A-2500」、「A-1000」、及び「n-プロピルベンゼン」の8サンプルから作製する。
【0069】
樹脂粒子の具体例としては、ペスレジンA124GP、ペスレジンA645GH、ペスレジンA615GE、ペスレジンA520(以上、高松油脂(株)製)、Eastek1100、Eastek1200(以上、Eastman Chemical社製)、プラスコートRZ570、プラスコートZ687、プラスコートZ565、プラスコートRZ570、プラスコートZ690(以上、互応化学工業(株)製)、バイロナールMD1200(東洋紡(株)製)、EM57DOC(ダイセルファインケム社製)等が挙げられる。
【0070】
凝集液が樹脂粒子を含有する場合、凝集液の全量に対する樹脂粒子の含有量は、1質量%~25質量%であることが好ましく、2質量%~20質量%であることがより好ましく、3質量%~15質量%であることが更に好ましい。
【0071】
また、凝集液が樹脂粒子を含有する場合、凝集剤に対する樹脂粒子の含有質量比(即ち、比〔樹脂粒子の含有質量/凝集剤の含有質量〕)は、1~10であることが好ましく、1~8であることがより好ましく、1~5であることが更に好ましい。
【0072】
(水溶性高分子化合物)
凝集液は、水溶性高分子化合物を含んでもよい。
水溶性高分子化合物としては特に限定はなく、ポリビニルアルコール、ポリアクリルアミド、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコール等の公知の水溶性高分子化合物を用いることができる。
また、水溶性高分子化合物としては、特開2013-001854号公報の段落0026~0080に記載された水溶性高分子化合物も好適である。
【0073】
(水溶性有機溶剤)
凝集液は、水溶性有機溶剤の少なくとも1種を含むことが好ましい。
本明細書中において、「水溶性」とは、25℃の水100gに対して3g以上(より好ましくは10g以上)溶解する性質を意味する。
水溶性有機溶剤としては、公知のものを特に制限なく用いることができる。
水溶性有機溶剤としては、例えば、グリセリン、1,2,6-ヘキサントリオール、トリメチロールプロパン、エチレングリコール、プロピレングリコール(即ち、1,2-プロパンジオール)、トリエチレングリコール(即ち、1,3-プロパンジオール)、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ペンタエチレングリコール、ジプロピレングリコール等のグリコール類;2-ブテン-1,4-ジオール、2-エチル-1,3-ヘキサンジオール、2-メチル-2,4-ペンタンジオール、1,2-オクタンジオール、1,2-ヘキサンジオール、1,2-ペンタンジオール、4-メチル-1,2-ペンタンジオール等のアルカンジオールなどの多価アルコール類;特開2011-42150号公報の段落0116に記載の、糖アルコール類、ヒアルロン酸類、炭素原子数1~4のアルキルアルコール類、グリコールエーテル類、2-ピロリドン、N-メチル-2-ピロリドン;等が挙げられる。
中でも、凝集液に含まれる成分の転写の抑制の観点から、ポリアルキレングリコール又はその誘導体であることが好ましく、ジエチレングリコールモノアルキルエーテル、トリエチレングリコールモノアルキルエーテル、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコールモノアルキルエーテル、ポリオキシプロピレングリセリルエーテル、及びポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコールから選ばれる少なくとも1種であることがより好ましい。
【0074】
凝集液における水溶性有機溶剤の含有量としては、塗布性などの観点から、凝集剤の全量に対し、3質量%~20質量%であることが好ましく、5質量%~15質量%であることがより好ましい。
【0075】
また、凝集液は、非浸透性基材との密着性の観点から、SP値が26MPa1/2以下の水溶性有機溶剤を含まないか、又は、SP値が26MPa1/2以下の水溶性有機溶剤の含有量が0質量%を超え10質量%未満であることが好ましく、SP値が26MPa1/2以下の水溶性有機溶剤を含まないか、又は、SP値が26MPa1/2以下の水溶性有機溶剤の含有量が0質量%を超え5質量%未満であることがより好ましく、SP値が26MPa1/2以下の水溶性有機溶剤を含まないか、又は、SP値が26MPa1/2以下の水溶性有機溶剤の含有量が0質量%を超え2質量%未満であることが更に好ましく、SP値が26MPa1/2以下の水溶性有機溶剤を含まないことが特に好ましい。
【0076】
(界面活性剤)
凝集液は、界面活性剤の少なくとも1種を含んでもよい。
界面活性剤は、表面張力調整剤又は消泡剤として用いることができる。表面張力調整剤又は消泡剤としては、ノニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、ベタイン界面活性剤等が挙げられる。中でも、インクの凝集速度の観点から、ノニオン性界面活性剤又はアニオン性界面活性剤が好ましい。
【0077】
界面活性剤としては、特開昭59-157636号公報の第37~38頁及びリサーチディスクロージャーNo.308119(1989年)に界面活性剤として挙げた化合物も挙げられる。また、特開2003-322926号、特開2004-325707号、特開2004-309806号の各公報に記載のフッ素(フッ化アルキル系)系界面活性剤やシリコーン系界面活性剤等も挙げられる。
【0078】
凝集液における界面活性剤の含有量としては特に制限はないが、凝集液の表面張力が50mN/m以下となるような含有量であることが好ましく、20mN/m~50mN/mとなるような含有量であることがより好ましく、30mN/m~45mN/mとなるような含有量であることが更に好ましい。
【0079】
(その他の添加剤)
凝集液は、必要に応じ、上記以外のその他の成分を含んでいてもよい。
凝集液に含有され得るその他の成分としては、固体湿潤剤、コロイダルシリカ、無機塩、褪色防止剤、乳化安定剤、浸透促進剤、紫外線吸収剤、防腐剤、防黴剤、pH調整剤、粘度調整剤、防錆剤、キレート剤等の公知の添加剤が挙げられる。
【0080】
(凝集液の物性)
凝集液は、インクの凝集速度の観点から、25℃におけるpHが0.1~3.5であることが好ましい。
凝集液のpHが0.1以上であると、非浸透性基材のザラツキがより低減され、画像部の密着性がより向上する。
凝集液のpHが3.5以下であると、凝集速度がより向上し、非浸透性基材上におけるインクによるドット(インクドット)の合一がより抑制され、画像のザラツキがより低減される。
凝集液のpH(25℃)は、0.2~2.0がより好ましい。
【0081】
凝集液の粘度としては、インクの凝集速度の観点から、0.5mPa・s~10mPa・sの範囲が好ましく、1mPa・s~5mPa・sの範囲がより好ましい。粘度は、VISCOMETER TV-22(TOKI SANGYO CO.LTD製)を用いて25℃の条件下で測定されるものである。
【0082】
凝集液の25℃における表面張力としては、60mN/m以下であることが好ましく、20mN/m~50mN/mであることがより好ましく、30mN/m~45mN/mであることが更に好ましい。凝集液の表面張力が範囲内であると、非浸透性基材と凝集液との密着性が向上する。凝集液の表面張力は、Automatic Surface Tensiometer CBVP-Z(協和界面科学(株)製)を用い、プレート法によって測定されるものである。
【0083】
<オーバーコート液を準備する工程>
オーバーコート液を準備する工程(以下、「オーバーコート液準備工程」ともいう)は、オーバーコート液を製造する工程には限定されず、予め製造されたオーバーコート液を本実施形態の画像形成方法のために単に準備するだけの工程であってもよい。
オーバーコート液は、樹脂及び20℃蒸気圧が2.50kPa以上である有機溶剤Bを含有し、オーバーコート液の全量に対する有機溶剤Bの含有量が10質量%以上である。
【0084】
(有機溶剤B)
オーバーコート液は、2.50kPa以上である有機溶剤Bを少なくとも1種含有する。オーバーコート液の全量に対する有機溶剤Bの含有量(2種以上である場合には総含有量。以下同じ。)は、10質量%以上である。これにより、オーバーコート層のべたつきが抑制され、他の物体へのオーバーコート層の転写が抑制される。
有機溶剤Bの20℃蒸気圧として、より好ましくは2.80kPa以上である。
【0085】
20℃蒸気圧が2.50kPa以上である有機溶剤Bの20℃蒸気圧の上限には特に制限はないが、上限としては30kPaが好ましい。
【0086】
オーバーコート層の転写をより抑制させる観点から、オーバーコート液に含有される有機溶剤Bの少なくとも1種は、20℃蒸気圧が4.00kPa以上(より好ましくは6.00kPa以上、更に好ましくは8.00kPa以上)であることが好ましい。
【0087】
オーバーコート液の全量に対する有機溶剤Bの含有量(2種以上である場合には総含有量。以下同じ。)は、10質量%以上である。
オーバーコート層の転写をより抑制する観点から、上記有機溶剤Bの含有量は、25質量%以上であることがより好ましく、35質量%以上であることが更に好ましく、45質量%以上であることが更に好ましい。
上記有機溶剤Bの含有量の上限は、他の成分の含有量との関係によって定まるが、上限としては80質量%が好ましい。
【0088】
有機溶剤Bとしては、
トルエン(20℃蒸気圧2.90kPa;以下、「TOL」とも称する)、
イソプロピルアルコール(20℃蒸気圧4.30kPa;以下、「IPA」とも称する)、
酢酸エチル(20℃蒸気圧8.70kPa;以下、「EA」とも称する)、
アセトン(20℃蒸気圧24kPa)、
酢酸メチル(20℃蒸気圧23kPa)、
酢酸プロピル(20℃蒸気圧2.5kPa)、
テトラヒドロフラン(20℃蒸気圧19kPa)、
メタノール(20℃蒸気圧13kPa)、
メチルエチルケトン(20℃蒸気圧9.5kPa)、
エタノール(20℃蒸気圧5.9kPa)、
メチルシクロヘキサン(20℃蒸気圧6.2kPa)、
シクロヘキサン(20℃蒸気圧10.3kPa)、
等が挙げられる。
【0089】
オーバーコート液は、本実施形態の条件を満足する限り、上記有機溶剤B以外の有機溶剤を含有してもよい。
オーバーコート層の転写をより抑制する観点から、オーバーコート液において、20℃における蒸気圧が0.10kPa以下である有機溶剤の含有量は、オーバーコート液の全量に対して10質量%以下であることが好ましい。
【0090】
また、オーバーコート層の転写をより抑制する観点から、オーバーコート液中の全有機溶剤に占める有機溶剤Bの割合は、好ましくは50質量%~100質量%、より好ましくは60質量%~100質量%、さらに好ましくは80質量%~100質量%である。
【0091】
また、オーバーコート液は、水を含有してもよい。
オーバーコート層の転写をより抑制する観点から、オーバーコート液における水の含有量は、オーバーコート液の全量に対して、好ましくは30質量%以下、より好ましくは20質量%以下、更に好ましくは15質量%以下、更に好ましくは10質量%以下である。
オーバーコート液における水の含有量は、0質量%であってもよい。即ち、オーバーコート液は、水を含有しなくてもよい。
【0092】
前述したとおり、オーバーコート層の転写をより抑制する観点から、本実施形態の画像形成方法は、Isp-Osp≧3を満足することが好ましく、Isp-Osp≧5を満足することがより好ましく、Isp-Osp≧10を満足することが更に好ましい。
【0093】
(樹脂)
オーバーコート液は、樹脂を少なくとも1種含有する。
樹脂は、形成されるオーバーコート層におけるバインダーとして機能する。
樹脂としては、ポリアミド樹脂、ポリウレタン樹脂、セルロース樹脂、(メタ)アクリル樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリエステル樹脂、塩化ビニル樹脂、酢酸ビニル樹脂、等が挙げられる。
【0094】
樹脂の重量平均分子量としては、5,000~100,000が好ましく、10,000~100,000がより好ましく、20,000~80,000が更に好ましい。
【0095】
オーバーコート液の全量に対する樹脂の含有量には特に制限はない。
オーバーコート液の全量に対する樹脂の含有量は、好ましくは5~70質量%、より好ましくは10~50質量%、更に好ましくは20~40質量%である。
【0096】
(無機粒子)
オーバーコート液は、無機粒子を少なくとも1種含有することが好ましい。
オーバーコート液が無機粒子を含有する場合には、オーバーコート層の転写がより抑制される。
【0097】
オーバーコート液が無機粒子を少なくとも1種含有する場合、オーバーコート液に含有される無機粒子の少なくとも1種は、モース硬度が4以上であることが好ましい。これにより、オーバーコート層の転写がより抑制される。
【0098】
無機粒子のモース硬度は、上述のとおり4以上であることが好ましく、5以上であることがより好ましい。
無機粒子のモース硬度の上限には特に制限はない。無機粒子のモース硬度の上限は、モース硬度の定義から当然に10であるが、好ましくは9である。
【0099】
ここで、モース硬度は、1~10の数値で表される硬さの指標である。
モース硬度1の標準物質は滑石(MgSi10(OH))であり、モース硬度2の標準物質は石膏(CaSO・2HO)であり、モース硬度3の標準物質は方解石(CaCO)であり、モース硬度4の標準物質は蛍石(CaF)であり、モース硬度5の標準物質は燐灰石(Ca(PO(OH,Cl,F))であり、モース硬度6の標準物質は正長石(KAlSi)であり、モース硬度7の標準物質は石英(SiO)であり、モース硬度8の標準物質はトパーズ(AlSiO(OH,F)であり、モース硬度9の標準物質はコランダム(Al)であり、モース硬度10の標準物質はダイヤモンド(C)である。
【0100】
オーバーコート液が、モース硬度が4以上である無機粒子を含有する場合、オーバーコート液は、モース硬度が4以上である無機粒子だけでなく、モース硬度が4未満である無機粒子を含有してもよい。
オーバーコート液に含有される無機粒子中に占める、モース硬度が4以上である無機粒子の割合は、50質量%~100質量%であることが好ましく、80質量%~100質量%であることがより好ましい。
【0101】
モース硬度が4以上である無機粒子としては、アナターゼ型酸化チタン粒子(モース硬度5.5~6.0)、ルチル型酸化チタン粒子(モース硬度7.0~7.5)、シリカ粒子(モース硬度7)、アルミナ粒子(モース硬度9)、等が挙げられる。
【0102】
モース硬度が4未満である無機粒子としては、硫酸バリウム粒子(モース硬度3.0~3.5)が挙げられる。
【0103】
また、オーバーコート液に含有され得る無機粒子としては、白色顔料が好ましい。
オーバーコート液が、無機粒子として白色顔料を含有する場合には、画像及びオーバーコート層が形成された非浸透性基材において、非浸透性基材の側から画像を見た場合の画像の見栄えが向上する。
白色顔料である無機粒子としては、アナターゼ型酸化チタン粒子、ルチル型酸化チタン粒子、硫酸バリウム粒子、等が挙げられる。
【0104】
無機粒子の体積平均粒径としては、0.10μm~2.00μmが好ましく、0.15μm~1.00μmがより好ましく、0.20μm~0.50μmが更に好ましい。
【0105】
オーバーコート液の全量に対する無機粒子の含有量には特に制限はない。
オーバーコート液の全量に対する無機粒子の含有量は、好ましくは5~70質量%、より好ましくは10~50質量%、更に好ましくは20~50質量%である。
【0106】
(その他の成分)
オーバーコート液は、上記以外のその他の成分を含有してもよい。
その他の成分としては、例えば、乾燥防止剤(湿潤剤)、褪色防止剤、乳化安定剤、浸透促進剤、紫外線吸収剤、防腐剤、防黴剤、pH調整剤、表面張力調整剤、消泡剤、粘度調整剤、分散剤、分散安定剤、防錆剤、キレート剤等の公知の添加剤が挙げられる。
【0107】
<凝集液を付与する工程>
凝集液を付与する工程(以下、「凝集液付与工程」ともいう)は、非浸透性基材上に凝集液を付与する工程である。
【0108】
(非浸透性基材)
本明細書において、「非浸透性基材」とは、水の吸収が少ないか又は水を吸収しない基材を意味し、具体的には、水の吸収量が0.3g/m以下である基材を意味する。
基材の水の吸収量(g/m)は、以下のようにして測定する。
基材のオモテ面(即ち、画像を形成しようとする面)における100mm×100mmの領域に水を接触させ、この状態で25℃にて1分間保持する。この1分間の保持によって吸収された水の質量(吸収量(g))を求め、得られた吸収量(g)を単位面積当たりの吸収量(g/m)に換算する。
【0109】
非浸透性基材としては特に制限はないが、樹脂基材が好ましい。
樹脂基材としては特に限定されないが、例えば熱可塑性樹脂からなる基材が挙げられる。
樹脂基材としては、例えば、熱可塑性樹脂をシート状に成形した基材が挙げられる。
樹脂基材は、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ナイロン、ポリエチレン、又は、ポリイミドを含むことが好ましい。
【0110】
樹脂基材は、透明な樹脂基材であっても、着色された樹脂基材であってもよいし、少なくとも一部に金属蒸着処理等がなされていてもよい。
樹脂基材の形状は、特に限定されないが、シート状の樹脂基材であることが好ましく、印刷物(即ち、画像及びオーバーコート層が形成された樹脂基材)の生産性の観点から、巻き取りによってロールを形成可能なシート状の樹脂基材であることがより好ましい。
樹脂基材の厚さとしては、10μm~200μmが好ましく、10μm~100μmがより好ましい。
【0111】
樹脂基材は、表面処理がなされていてもよい。
表面処理としては、コロナ処理、プラズマ処理、フレーム処理、熱処理、摩耗処理、光照射処理(UV処理)、火炎処理等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。 例えば、インクを付与して画像を記録する前に、予め樹脂基材の表面にコロナ処理を施すと、樹脂基材の表面エネルギーが増大し、樹脂基材の表面の湿潤及び樹脂基材へのインクの接着が促進される。コロナ処理は、例えば、コロナマスター(信光電気計社製、PS-10S)等を用いて行なうことができる。コロナ処理の条件は、樹脂基材の種類、インクの組成等、場合に応じて適宜選択すればよい。例えば、下記の処理条件としてもよい。
・処理電圧:10~15.6kV
・処理速度:30~100mm/s
【0112】
非浸透性基材への凝集液の付与は、塗布法、インクジェット法、浸漬法などの公知の方法を適用して行なうことができる。
塗布法としては、バーコーター(例えばワイヤーバーコーター)、エクストルージョンダイコーター、エアードクターコーター、ブレードコーター、ロッドコーター、ナイフコーター、スクイズコーター、リバースロールコーター、グラビアコーター、フレキソコーター等を用いた公知の塗布法が挙げられる。
インクジェット法の詳細については、後述する画像形成工程におけるインクジェット法と同様である。
【0113】
単位面積当たりの凝集液の付与質量(g/m)としては、インク中の成分を凝集可能であれば特に制限はないが、好ましくは0.1g/m~10g/m、より好ましくは0.5g/m~6.0g/m、さらに好ましくは1.0g/m~4.0g/mである。
【0114】
また、凝集液付与工程において、凝集液の付与前に非浸透性基材を加熱してもよい。
加熱温度としては、非浸透性基材の種類や凝集液の組成に応じて適宜設定すればよいが、非浸透性基材の温度を20℃~50℃とすることが好ましく、25℃~40℃とすることがより好ましい。
【0115】
凝集液付与工程では、凝集液の付与後であって、後述の画像形成工程前に、凝集液を加熱乾燥させてもよい。
画像の加熱乾燥を行うための手段としては、ヒータ等の公知の加熱手段、ドライヤ等の公知の送風手段、及び、これらを組み合わせた手段が挙げられる。
画像の加熱乾燥を行うための方法としては、例えば、
非浸透性基材の凝集液が付与された面とは反対側からヒータ等で熱を与える方法、
非浸透性基材の凝集液が付与された面に温風又は熱風をあてる方法、
非浸透性基材の凝集液が付与された面又は凝集液が付与された面とは反対側から、赤外線ヒータで熱を与える方法、
これらの複数を組み合わせた方法、
等が挙げられる。
【0116】
加熱乾燥時の加熱温度は、35℃以上が好ましく、40℃以上がより好ましい。
加熱温度の上限には特に制限はないが、上限としては、例えば100℃が挙げられ、90℃が好ましく、70℃がより好ましい。
加熱乾燥の時間には特に制限はないが、0.5秒~60秒が好ましく、0.5秒~20秒がより好ましく、0.5秒~10秒が特に好ましい。
【0117】
<画像を形成する工程>
画像を形成する工程(以下、「画像形成工程」ともいう)は、非浸透性基材の凝集液が付与された領域上の少なくとも一部に、インクジェット法によってインクを付与して画像を形成する工程である。
本工程では、非浸透性基材上に選択的にインクを付与でき、これにより、所望とする形状の画像(詳細には、可視画像)を形成できる。
本工程では、凝集液が付与された領域上の全体にインクを付与し、上記全体に画像を形成してもよいし、凝集液が付与された領域上の一部にインクを付与し、上記一部に画像を形成してもよい。上記一部に画像を形成した場合には、凝集液が付与された領域上において、画像と、画像非形成領域(即ち、インクが付与されていない領域)と、が形成される。
【0118】
画像形成工程では、非浸透性基材の凝集液が付与された領域上の少なくとも一部に、インクを1種のみ付与して画像を形成してもよいし、インクを2種以上付与して画像を形成してもよい。画像形成工程において、2色以上のインクを付与した場合には、2色以上の画像を形成することができる。
【0119】
インクジェット法におけるインクの吐出方式には特に制限はなく、公知の方式、例えば、静電誘引力を利用してインクを吐出させる電荷制御方式、ピエゾ素子の振動圧力を利用するドロップオンデマンド方式(圧力パルス方式)、電気信号を音響ビームに変えインクに照射して放射圧を利用してインクを吐出させる音響インクジェット方式、及びインクを加熱して気泡を形成し、生じた圧力を利用するサーマルインクジェット(バブルジェット(登録商標))方式等のいずれであってもよい。
インクジェット法としては、特に、特開昭54-59936号公報に記載の方法で、熱エネルギーの作用を受けたインクが急激な体積変化を生じ、この状態変化による作用力によって、インクをノズルから吐出させるインクジェット法を有効に利用することができる。
インクジェット法として、特開2003-306623号公報の段落番号0093~0105に記載の方法も適用できる。
【0120】
非浸透性基材の凝集液が付与された領域に対するインクジェット法によるインクの付与は、インクジェットヘッドのノズルからインクを吐出することにより行う。
インクジェットヘッドの方式としては、短尺のシリアルヘッドを、非浸透性基材の幅方向に走査させながら記録を行なうシャトル方式と、非浸透性基材の1辺の全域に対応して記録素子が配列されているラインヘッドを用いたライン方式と、がある。
ライン方式では、記録素子の配列方向と交差する方向に非浸透性基材を走査させることで非浸透性基材の全面に画像形成を行なうことができる。ライン方式では、シャトル方式における、短尺ヘッドを走査するキャリッジ等の搬送系が不要となる。また、ライン方式では、シャトル方式と比較して、キャリッジの移動と非浸透性基材との複雑な走査制御が不要になり、非浸透性基材だけが移動する。このため、ライン方式によれば、シャトル方式と比較して、画像形成の高速化が実現できる。
【0121】
インクジェットヘッドのノズルから吐出されるインクの液滴量としては、高精細な画像を得る観点で、1pL(ピコリットル)~10pLが好ましく、1.5pL~6pLがより好ましい。
また、画像のムラ、連続階調のつながりを改良する観点で、異なる液適量を組み合わせて吐出することも有効である。
【0122】
画像形成工程では、非浸透性基材の凝集液が付与された領域へインクを付与し、付与されたインクを加熱乾燥させることにより、画像を形成してもよい。
加熱乾燥を行うための手段としては、ヒータ等の公知の加熱手段、ドライヤ等の公知の送風手段、及び、これらを組み合わせた手段が挙げられる。
インクの加熱乾燥を行うための方法としては、例えば、
非浸透性基材のインクが付与された面とは反対側からヒータ等で熱を与える方法、
非浸透性基材のインクが付与された面に温風又は熱風をあてる方法、
非浸透性基材のインクが付与された面又は凝集液が付与された面とは反対側から、赤外線ヒータで熱を与える方法、
これらの複数を組み合わせた方法、
等が挙げられる。
【0123】
加熱乾燥時の加熱温度は、55℃以上が好ましく、60℃以上がより好ましく、65℃以上が特に好ましい。
加熱温度の上限には特に制限はないが、上限としては、例えば100℃が挙げられ、90℃が好ましい。
インクの加熱乾燥の時間には特に制限はないが、3秒~60秒が好ましく、5秒~60秒がより好ましく、10秒~45秒が特に好ましい。
【0124】
また、画像形成工程では、インクの付与前に、非浸透性基材(詳細には、凝集液付与工程において、凝集液が付与された非浸透性基材)を加熱してもよい。
加熱温度としては、非浸透性基材の種類やインクの組成に応じて適宜設定すればよいが、非浸透性基材の温度を20℃~50℃とすることが好ましく、25℃~40℃とすることがより好ましい。
なお、凝集液付与工程において、凝集液を加熱乾燥させる場合には、凝集液の加熱乾燥のための加熱が、インク付与前の非浸透性基材の加熱を兼ねていてもよい。
【0125】
<オーバーコート層を形成する工程>
オーバーコート層を形成する工程(以下、「オーバーコート層形成工程」ともいう)は、画像が形成された非浸透性基材における凝集液が付与された領域上に、オーバーコート液を付与しオーバーコート層を形成する工程である。
ここで、「画像が形成された非浸透性基材における凝集液が付与された領域上」とは、前述の画像形成工程において、凝集液が付与された領域上の全体に画像を形成した場合には、上記画像上を意味し、前述の画像形成工程において、凝集液が付与された領域上に画像と画像非形成領域とを形成した場合には、上記画像上及び上記画像非形成領域上を意味する。
【0126】
オーバーコート層形成工程では、少なくとも画像上を被覆するオーバーコート層が形成される。
詳細には、前述の画像形成工程において、凝集液が付与された領域上の全体に画像を形成した場合には、オーバーコート層形成工程では、画像上を被覆するオーバーコート層が形成される。前述のインク付与工程において、凝集液が付与された領域上に画像と画像非形成領域とを形成した場合には、オーバーコート層形成工程では、画像上及び画像非形成領域上を被覆するオーバーコート層が形成される。
【0127】
画像が形成された非浸透性基材における凝集液が付与された領域上へのオーバーコート液の付与は、塗布法、インクジェット法、浸漬法などの公知の方法を適用して行なうことができる。
塗布法としては、バーコーター(例えばワイヤーバーコーター)、エクストルージョンダイコーター、エアードクターコーター、ブレードコーター、ロッドコーター、ナイフコーター、スクイズコーター、リバースロールコーター、グラビアコーター、フレキソコーター等を用いた公知の塗布法が挙げられる。
インクジェット法の詳細については、後述する画像形成工程におけるインクジェット法と同様である。
【0128】
印刷物の生産性の観点から、オーバーコート液の付与は、グラビアコーター又はフレキソコーターによって行うことが好ましい。
【0129】
オーバーコート液の付与量としては特に制限はない。
単位面積当たりの凝集液の付与質量(g/m)に対する単位面積当たりのオーバーコート液の付与質量(g/m)の比(以下、「付与質量比〔オーバーコート液/凝集液〕」ともいう)は、好ましくは1.0以上である。
付与質量比〔オーバーコート液/凝集液〕が1.0以上である場合には、オーバーコート層の転写抑制の効果がより効果的に発揮される。オーバーコート層の転写抑制の効果をより効果的に発揮させる観点から、付与質量比〔オーバーコート液/凝集液〕は、より好ましくは1.5以上である。
付与質量比〔オーバーコート液/凝集液〕の上限は、画像の画質をより向上させる観点から、好ましくは20以下であり、より好ましくは15以下であり、更に好ましくは10以下である。
【0130】
オーバーコート層形成工程では、画像が形成された非浸透性基材における凝集液が付与された領域上へのオーバーコート液の付与後、オーバーコート液を加熱乾燥させてもよい。
オーバーコート液の加熱乾燥を行うための手段としては、ヒータ等の公知の加熱手段、ドライヤ等の公知の送風手段、及び、これらを組み合わせた手段が挙げられる。
オーバーコート液の加熱乾燥を行うための方法としては、例えば、
非浸透性基材のオーバーコート液が付与された面とは反対側からヒータ等で熱を与える方法、
非浸透性基材のオーバーコート液が付与された面に温風又は熱風をあてる方法、
非浸透性基材のオーバーコート液が付与された面又はオーバーコート液が付与された面とは反対側から、赤外線ヒータで熱を与える方法、
これらの複数を組み合わせた方法、
等が挙げられる。
【0131】
オーバーコート液の加熱乾燥時の加熱温度は、50℃以上が好ましく、60℃以上がより好ましい。
加熱温度の上限には特に制限はないが、上限としては、例えば100℃が挙げられ、90℃が好ましい。
加熱乾燥の時間には特に制限はないが、0.1秒~60秒が好ましく、0.1秒~30秒がより好ましく、0.1秒~20秒が特に好ましい。
【0132】
<画像形成装置の一例>
以下、本実施形態の画像形成方法に好適な画像形成装置の一例について、図1を参照して説明する。
図1は、本実施形態の画像形成方法に好適な画像形成装置の一例を概念的に示す図である。
図1に示されるように、本一例に係る画像形成装置は、ロール状に巻き取られている長尺形状の非浸透性基材S1を、巻き出し装置W1によって巻き出し、巻き出された非浸透性基材S1をブロック矢印の方向に搬送させ、凝集液付与装置A1、凝集液乾燥ゾーンDry1、インクジェットインク付与装置IJ1、インク乾燥ゾーンDry2、オーバーコート液付与装置OC1、及びオーバーコート液乾燥ゾーンDry3をこの順に通過させ、最後に巻取り装置W2にて巻き取る装置である。
なお、図1は、概念図であるため、非浸透性基材S1の搬送経路を簡略化し、非浸透性基材S1が一方向に搬送されるかのように図示している。実際には、非浸透性基材S1の搬送経路は蛇行していてもよいことは言うまでもない。非浸透性基材S1の搬送方式としては、胴、ローラー等の各種ウェブ搬送方式を適宜選択することができる。
【0133】
本一例に係る画像形成装置のうち、オーバーコート液付与装置OC1及びオーバーコート液乾燥ゾーンDry3以外の部分については、特開2010-83021号公報、特開2009-234221号公報、特開平10-175315号公報等に記載の公知の画像形成装置を適宜参照できる。
【0134】
凝集液付与装置A1及び凝集液乾燥ゾーンDry1により、上述した凝集液付与工程が実施される。凝集液乾燥ゾーンDry1は省略されていてもよい。
凝集液付与装置A1における凝集液の付与の方法及び条件については、凝集液付与工程の説明で例示した方法及び条件を適用できる。
凝集液乾燥ゾーンDry1における乾燥の方法及び条件についても、凝集液付与工程の説明で例示した方法及び条件を適用できる。
また、凝集液付与装置A1に対して非浸透性基材S1の搬送方向上流側には、非浸透性基材S1に表面処理(好ましくはコロナ処理)を施すための表面処理部(不図示)が設けられていてもよい。
【0135】
インク付与装置IJ1及びインク乾燥ゾーンDry2により、上述した画像形成工程が実施される。インク乾燥ゾーンDry2は省略されていてもよい。
インク付与装置IJ1における凝集液の付与の方法及び条件については、画像形成工程の説明で例示した方法及び条件を適用できる。
インク乾燥ゾーンDry2における乾燥の方法及び条件についても、画像形成工程の説明で例示した方法及び条件を適用できる。
【0136】
図示は省略したが、インク付与装置IJ1の構造は、少なくとも1つのインクジェットヘッドを備える構造とすることができる。
インクジェットヘッドは、シャトルヘッドでも構わないが、画像形成の高速化の観点から、長尺形状の非浸透性基材の幅方向にわたって多数の吐出口(ノズル)が配列されたラインヘッドが好ましい。
画像形成の高速化の観点から、インク付与装置IJ1の構造として、好ましくは、ブラック(K)インク用のラインヘッド、シアン(C)インク用のラインヘッド、マゼンダ(M)インク用のラインヘッド、及びイエロー(Y)インク用のラインヘッドのうちの少なくとも1つを備える構造である。
インク付与装置IJ1の構造として、より好ましくは、上記4つのラインヘッドのうちの少なくとも2つを備え、これら2つ以上のラインヘッドが、非浸透性基材の搬送方向(ブロック矢印の方向)に配列されている構造である。
インク付与装置IJ1は、更に、ホワイトインク用のラインヘッド、オレンジインク用のラインヘッド、グリーンインク用のラインヘッド、パープルインク用のラインヘッド、ライトシアンインク用のラインヘッド、及びライトマゼンタインク用のラインヘッドのうちの少なくとも1つのラインヘッドを備えていてもよい。
【0137】
インク乾燥ゾーンDry2における乾燥の方法及び条件についても、画像形成工程の説明で例示した方法及び条件を適用できる。
【0138】
オーバーコート液付与装置OC1及びオーバーコート液乾燥ゾーンDry3により、上述したオーバーコート層形成工程が実施される。オーバーコート液乾燥ゾーンDry3は、省略されていてもよい。
オーバーコート液付与装置OC1におけるオーバーコート液の付与の方法及び条件については、オーバーコート層形成工程の説明で例示した方法及び条件を適用できる。
オーバーコート液乾燥ゾーンDry3における乾燥の方法及び条件についても、オーバーコート層形成工程の説明で例示した方法及び条件を適用できる。
【0139】
<参考形態>
本開示の参考形態に係る画像形成方法としては、
色材、水、及び有機溶剤を含有するインクを準備する工程と、
インク中の成分を凝集させる凝集剤及び水を含有する凝集液を準備する工程と、
樹脂、無機粒子(好ましくは、モース硬度が4以上である無機粒子)、及び有機溶剤を含有するオーバーコート液を準備する工程と、
非浸透性基材上に、凝集液を付与する工程と、
非浸透性基材の凝集液が付与された領域上の少なくとも一部に、インクジェット法によってインクを付与して画像を形成する工程と、
画像が形成された非浸透性基材における凝集液が付与された領域上に、オーバーコート液を付与しオーバーコート層を形成する工程と、
を有する。
参考形態に係る画像形成方法は、必要に応じ、その他の工程を有していてもよい。
【0140】
参考形態に係る画像形成方法は、インクに含まれる有機溶剤の種類及び含有量、並びに、オーバーコート液に含まれる有機溶剤の種類及び含有量が限定されておらず、かつ、オーバーコート液が無機粒子を含有することに限定されていることを除き、本実施形態に係る画像形成方法と同様であり、好ましい形態も同様である。
参考形態に係る画像形成方法の好ましい形態は、本実施形態に係る画像形成方法の好ましい形態に該当することがあってもよい。
【0141】
参考形態に係る画像形成方法によれば、オーバーコート液が無機粒子を含有することにより、オーバーコート液が無機粒子を含有しない場合と比較して、オーバーコート層の転写が抑制される。
即ち、参考形態に係る画像形成方法によれば、画質に優れた画像を形成でき、少なくとも画像上を被覆する、他の物体への転写が抑制されたオーバーコート層を形成できる。
【0142】
〔インクセット〕
<実施形態>
本開示の一実施形態に係るインクセットは、
色材、水、及び20℃における蒸気圧が0.20kPa以下である有機溶剤Aを含有し、インクの全量に対する有機溶剤Aの含有量が10質量%以上であるインクと、
インク中の成分を凝集させる凝集剤及び水を含有する凝集液と、
樹脂及び20℃における蒸気圧が2.50kPa以上である有機溶剤Bを含有し、オーバーコート液の全量に対する有機溶剤Bの含有量が10質量%以上であるオーバーコート液と、
を備える。
【0143】
本実施形態に係るインクセットにおいて、インク、凝集液、及びオーバーコート液は、それぞれ、本実施形態に係る画像形成方法に用いられる、インク、凝集液、及びオーバーコート液と同様である。
従って、本実施形態に係るインクセットを用い、本実施形態に係る画像形成方法を実施することにより、本実施形態に係る画像形成方法による効果と同様の効果が奏される。
即ち、本実施形態に係るインクセットによれば、画質に優れた画像を形成でき、少なくとも画像上を被覆する、他の物体への転写が抑制されたオーバーコート層を形成でき、かつ、画像を形成する際のインクの吐出安定性に優れる。
【0144】
本実施形態に係るインクセットに備えられる、インク、凝集液、及びオーバーコート液は、それぞれ、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。
例えば、本実施形態に係るインクセットは、2色以上のインクを備えていてもよい。
【0145】
<参考形態>
参考形態に係るインクセットは、
色材、水、及び有機溶剤を含有するインクと、
インク中の成分を凝集させる凝集剤及び水を含有する凝集液と、
樹脂、無機粒子(好ましくは、モース硬度が4以上である無機粒子)、及び有機溶剤を含有するオーバーコート液と、
を備える。
【0146】
参考形態に係るインクセットは、インクに含まれる有機溶剤の種類及び含有量、並びに、オーバーコート液に含まれる有機溶剤の種類及び含有量が限定されておらず、かつ、オーバーコート液が無機粒子を含有することに限定されていることを除き、本実施形態に係るインクセットと同様であり、好ましい形態も同様である。
参考形態に係るインクセットの好ましい形態は、本実施形態に係るインクセットの好ましい形態に該当することがあってもよい。
【0147】
参考形態に係るインクセットを用い参考形態に係る画像形成方法を実施した場合には、オーバーコート液が無機粒子を含有することにより、オーバーコート液が無機粒子を含有しない場合と比較して、オーバーコート層の転写が抑制される。
即ち、参考形態に係る画像形成方法によれば、画質に優れた画像を形成でき、少なくとも画像上を被覆する、他の物体への転写が抑制されたオーバーコート層を形成できる。
【0148】
参考形態に係るインクセットに備えられる、インク、凝集液、及びオーバーコート液は、それぞれ、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。
例えば、参考形態に係るインクセットは、2色以上のインクを備えていてもよい。
【実施例
【0149】
以下、本開示の実施例を示すが、本開示は以下の実施例には限定されない。
なお、特に断りのない限り、「部」および「%」は質量基準である。
また、水としては、イオン交換水を用いた。
【0150】
〔実施例1〕
<凝集液の調製>
下記組成の凝集液を調製した。
【0151】
-凝集液の組成-
・マロン酸(和光純薬工業(株)製;ジカルボン酸)
… 5質量%
・EastekTM1200(Eastman Chemical社製、ポリエステル樹脂粒子、体積平均粒径30nm;以下、「PE1」とする)
… 樹脂粒子の量として10質量%
・1,2-プロパンジオール(和光純薬工業社製、SP値35MPa1/2
… 10質量%
・消泡剤(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社製、TSA-739(15質量%)、エマルジョン型シリコーン消泡剤)
… 消泡剤の固形分量として0.01質量%
・水
… 全体で100質量%となる残量
【0152】
<シアンインクの調製>
下記組成のシアンインクを調製した。
【0153】
-シアンインクの組成-
・Projet Cyan APD1000(FUJIFILM Imaging Colorants社製、シアン顔料分散液、顔料濃度:12質量%)
… 固形分量として2.4質量%
・1,2-PD(有機溶剤A;1,2-プロパンジオール、20℃蒸気圧(表1中では「20℃VP」)0.01kPa、SP値35MPa1/2、和光純薬工業(株)製)
… 20質量%
・オルフィンE1010(界面活性剤、日信化学工業(株)製)
… 1質量%
・下記のポリマー粒子B-01(樹脂粒子)
… 8質量%
・スノーテックス(登録商標)XS(日産化学(株)製、コロイダルシリカ)
… シリカの固形分量として0.06質量%
・水
… 全体で100質量%となる残量
【0154】
(ポリマー粒子B-01の合成)
ポリマー粒子B-01は、以下のようにして作製した。
撹拌機、温度計、還流冷却管、及び窒素ガス導入管を備えた2リットル三口フラスコに、メチルエチルケトン560.0gを仕込んで87℃まで昇温した。次いで反応容器内の還流状態を保ちながら(以下、反応終了まで還流状態を保った)、反応容器内のメチルエチルケトンに対し、メチルメタクリレート220.4g、イソボルニルメタクリレート301.6g、メタクリル酸58.0g、メチルエチルケトン108g、及び「V-601」(和光純薬工業(株)製の重合開始剤;ジメチル2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオネート))2.32gからなる混合溶液を、2時間で滴下が完了するように等速で滴下した。滴下完了後、1時間撹拌した後に、この1時間撹拌後の溶液に対し、下記工程(1)の操作を行った。
工程(1) … 「V-601」1.16g及びメチルエチルケトン6.4gからなる溶液を加え、2時間撹拌を行った。
【0155】
続いて、上記工程(1)の操作を4回繰り返し、次いで、さらに「V-601」1.16g及びメチルエチルケトン6.4gからなる溶液を加えて3時間撹拌を続けた(ここまでの操作を、「反応」とする)。
反応終了後、溶液の温度を65℃に降温し、イソプロパノール163.0gを加えて放冷することにより、メチルメタクリレート/イソボルニルメタクリレート/メタクリル酸(=38/52/10[質量比])共重合体を含む重合溶液(固形分濃度41.0%)を得た。
上記共重合体は、重量平均分子量(Mw)が63000であり、酸価が65.1(mgKOH/g)であった。
【0156】
次に、得られた重合溶液317.3g(固形分濃度41.0質量%)を秤量し、ここに、イソプロパノール46.4g、20%無水マレイン酸水溶液1.65g(水溶性酸性化合物、共重合体に対してマレイン酸として0.3質量%相当)、及び2モル/LのNaOH水溶液40.77gを加え、反応容器内の液体の温度を70℃に昇温した。
次に、70℃に昇温された溶液に対し、蒸留水380gを10mL/分の速度で滴下し、水分散化を行った(分散工程)。
その後、減圧下、反応容器内の液体の温度を70℃で1.5時間保つことにより、イソプロパノール、メチルエチルケトン、及び蒸留水を合計で287.0g留去した(溶剤除去工程)。得られた液体に対し、プロキセルGXL(S)(アーチ・ケミカルズ・ジャパン(株)製)を0.278g(ポリマー固形分に対してベンゾイソチアゾリン-3-オンとして440ppm)添加した。
得られた液体を、1μmのフィルターでろ過し、ろ液を回収することにより、固形分濃度26.5質量%のポリマー粒子B-01の水性分散物を得た。
【0157】
<オーバーコート液の調製>
(ポリウレタン樹脂PU2の30質量%トルエン溶液の調製)
攪拌機、冷却管及び窒素ガス導入管を備えた四つ口フラスコに、数平均分子量2000の3-メチル-1,5-ペンチレンアジペートジオール100質量部、数平均分子量2000のポリプロピレングリコール100質量部、及びイソホロンジイソシアネート44.4質量部を仕込み、窒素ガスを導入しながら100~105℃で6時間反応させた。得られた液体を液温が30℃となるまで放冷し、次いでこの液体にトルエンを200質量部加え、次いでモノエタノールアミン0.5質量部を加えて反応停止させた。得られた液体にトルエンを加えることにより、ポリウレタン樹脂PU2の30質量%トルエン溶液を得た。
ポリウレタン樹脂PU2のMwは、5万であった。
【0158】
(オーバーコート液の調製)
上記ポリウレタン樹脂PU2の30質量%トルエン溶液、トルエン、酢酸エチル、及び下記ルチル型酸化チタン粒子CR-50を用い、下記組成のオーバーコート液を調製した。
【0159】
-オーバーコート液の組成-
・PU2(上記ポリウレタン樹脂PU2)
… 10質量%
・TOL(有機溶剤B;トルエン、20℃蒸気圧2.90kPa、SP値18MPa1/2
… 28質量%
・EA(有機溶剤B;酢酸エチル、20℃蒸気圧8.70kPa、SP値18MPa1/2
… 28質量%
・TiO2(R)(ルチル型酸化チタン粒子CR-50(石原産業社製)、平均体積粒径0.25μm)
… 34質量%
【0160】
<画像及びオーバーコート層の形成>
上述した、凝集液、シアンインク、及びオーバーコート液を用い、非浸透性基材としてPET(ポリエチレンテレフタレート)基材を用い、画像及びオーバーコート層の形成を行った。
画像形成装置としては、前述した一例に係る、図1に示す画像形成装置を用いた。
【0161】
非浸透性基材S1としては、フタムラ化学社製のPET基材「FE2001」(厚さ25μm)を用いた。
非浸透性基材S1の搬送速度(即ち、非浸透性基材S1の走行速度)は、635mm/秒とした。
凝集液付与装置A1としては、ワイヤーバーコーターを用いた。
凝集液乾燥ゾーンDry1における乾燥方法は、温風乾燥とした。
【0162】
インク付与装置IJ1におけるインクジェットヘッド及びインク吐出条件は、以下のとおりとした。
・インクジェットヘッド:1200dpi(dot per inch、1inchは2.54cm)/20inch幅ピエゾフルラインヘッド(全ノズル数2048)を用いた。
・インク滴量:各2.4pLとした。
・駆動周波数:30kHzとした。
【0163】
インク乾燥ゾーンDry2における乾燥方法は、温風乾燥とした。
オーバーコート液付与装置OC1としては、グラビアコーターを用いた。
オーバーコート液乾燥ゾーンDry3における乾燥方法は、温風乾燥とした。
【0164】
まず、厚さ25μm、幅500mm、長さ2000mの非浸透性基材S1(上記PET基材「FE2001」)がロール状に巻き取られたロール体(以下、「ロール体1」ともいう)を準備した。このロール体1を、巻き出し装置W1にセットした。
更に、凝集液付与装置A1に上述の凝集液をセットし、インク付与装置IJ1に上述のシアンインクをセットし、オーバーコート液付与装置OC1に、上述のオーバーコート液をセットした。
【0165】
(凝集液付与工程)
巻き出し装置W1により、ロール体1から非浸透性基材S1を巻き出し、巻き出した非浸透性基材S1を上記搬送速度にて搬送した。
搬送中の非浸透性基材S1の片面全体に、上述の凝集液を、凝集液付与装置A1により、単位面積当たりの付与質量が1.7g/mとなるように塗布した。塗布された凝集液を、凝集液乾燥ゾーンDry1にて、80℃で3秒間乾燥させた。
【0166】
(画像形成工程)
次に、非浸透性基材S1の凝集液が塗布された領域(即ち、片面全体)のうちの一部に、インク付与装置IJ1により、上述のシアンインクをインクジェット法によってベタ画像状に付与した。ここで、シアンインクを付与する領域は、非浸透性基材S1の全幅500mmのうち、幅方向中央部を中心とする幅250mmの帯状の領域とした。この際、シアンインクを付与する領域における、単位面積当たりのシアンインクの付与質量は、3g/mとした。
次に、付与されたシアンインクを、インク乾燥ゾーンDry2にて80℃で8秒乾燥させた。
以上により、上述した幅250mmの帯状の領域全体に、シアンベタ画像を形成した。非浸透性基材S1の幅方向両端部の各々における、幅125mmの領域は、それぞれ、画像非形成領域とした。
【0167】
(オーバーコート層形成工程)
次に、非浸透性基材S1上の、シアンベタ画像及び画像非形成領域からなる片面全体(言い換えれば、凝集液が塗布された領域の全体)に、オーバーコート液付与装置OC1により、上述のオーバーコート液を付与した。この際、単位面積当たりのオーバーコート液の付与質量は、6g/mとした。即ち、付与質量〔オーバーコート液/凝集液〕は、3.5とした。
付与されたオーバーコート液を、オーバーコート液乾燥ゾーンDry3にて、80℃で5秒乾燥させることにより、シアンベタ画像及び画像非形成領域を被覆するオーバーコート層を形成した。
【0168】
最後に、シアンベタ画像及びオーバーコート層が形成された非浸透性基材S1を、巻取り装置W2により、巻き圧(面圧)が50kPaとなる条件で巻き取った。
巻き取られた非浸透性基材S1を、以下、「ロール体2」とする。
【0169】
<インクの吐出安定性の評価>
上述したインクジェットヘッド(全ノズル数は2048)において、不吐出ノズル数が10以下となるように調整した後、このインクジェットヘッドからシアンインクを80分間連続して吐出した。上記調整後の吐出ノズル数を、以下、「初期吐出ノズル数」とする。
次いでシアンインクの吐出を停止し、シアンインクの吐出を停止したまま24時間静置した。
次に、再度シアンインクを連続的に吐出し、吐出開始から5分の時点において、初期吐出ノズル数に対する不吐出ノズル数の割合(%)を確認した。
確認した結果に基づき、下記評価基準により、インクの吐出安定性を評価した。評価基準において、インクの吐出安定性に最も優れるランクは、5である。
結果を表1に示す。
【0170】
-評価基準-
5:不吐出ノズル数の割合が0%である。
4:不吐出ノズル数の割合が0%超1%以下である。
3:不吐出ノズル数の割合が1%超2%以下である。
2:不吐出ノズル数の割合が2%超5%以下である。
1:不吐出ノズル数の割合が5%超である。
【0171】
<オーバーコート層の転写の評価>
上記ロール体2(即ち、シアンベタ画像及びオーバーコート層が形成された後に巻き取られた非浸透性基材S1)から非浸透性基材S1を巻き出した。
巻き出された非浸透性基材S1において、長手方向の一端部から長手方向に1000mの位置における、長手方向長さ500mm×幅500mm(即ち、非浸透性基材S1の全幅)の領域を、観察領域として選定した。
この観察領域におけるオーバーコート層の転写跡(即ち、非浸透性基材S1のウラ面に転写した痕跡)の有無を確認し、転写跡がある場合にはその面積を測定した。
以上の結果に基づき、下記評価基準により、オーバーコート層の転写を評価した。
下記評価基準において、オーバーコート層の転写が最も抑制されているランクは、5である。
結果を表1に示す。
【0172】
-評価基準-
5:オーバーコート層の転写跡が全く見られない(観察領域の全面積に対し、オーバーコート層の転写跡の面積が0%である)。
4:観察領域の全面積に対し、オーバーコート層の転写跡の面積が0%超1%未満である
3:観察領域の全面積に対し、オーバーコート層の転写跡の面積が1%以上3%未満である
2:観察領域の全面積に対し、オーバーコート層の転写跡の面積が3%以上10%未満である
1:観察領域の全面積に対し、オーバーコート層の転写跡の面積が10%以上である
【0173】
<画質の評価>
上述のシアンベタ画像及びオーバーコート層の形成と同様にして、オーバーコート層によって被覆された文字画像を形成した。
形成した文字画像は、図2に示す文字画像(unicode:U+9DF9;2pt、3pt、4pt、及び5pt)の左右を反転させた画像(即ち、図2に示す文字画像に対する鏡像)とした。ここで、ptはフォントサイズを表すDTPポイントを意味し、1ptは1/72inchである。
形成された文字画像を、基材側から(即ち、基材の文字画像が形成された面とは反対側の面の側から)観察し、下記評価基準により、画質の評価を行った。
結果を表1に示す。
【0174】
-評価基準-
5: 2pt文字が再現可能
4: 3pt文字が再現可能であったが、2ptの文字は再現できなかった。
3: 4pt文字が再現可能であったが、3pt以下の文字は再現できなかった。
2: 5pt文字が再現可能であったが、4pt以下の文字は再現できなかった。
1: 5pt文字が再現できなかった。
なお、上記「再現可能」とは、0.5m離れた場所から確認した場合に、図2に記載の文字画像において、図3に記載の11で表された横線と、図3に記載の12で表された横線とが、分離されていることを意味する。
【0175】
<密着性の評価>
上述したオーバーコート層の転写の評価における観察領域に隣接する領域中、シアンベタ画像の形成領域(以下、「密着性評価領域」ともいう)において、画像の密着性の評価を行った。
上記密着性評価領域において、シアンベタ画像を被覆しているオーバーコート層上に、セロテープ(登録商標、No.405、ニチバン(株)製、幅12mm、以下、単に「テープ」ともいう。)のテープ片を貼り付け、次いでテープ片をオーバーコート層から剥離することにより、画像の密着性を評価した。
テープの貼り付け及び剥離は、具体的には、下記の方法により行った。
一定の速度でテープを取り出し、約75mmの長さにカットし、テープ片を得た。
得られたテープ片をオーバーコート層に重ね、テープ片の中央部の幅12mm、長さ25mmの領域を指で貼り付け、指先でしっかりこすった。
テープ片を貼り付けてから5分以内に、テープ片の端をつかみ、できるだけ60°に近い角度で0.5~1.0秒で剥離した。
剥離したテープ片における付着物の有無と、非浸透性基材上における画像(詳細には、オーバーコート層によって被覆されたシアンベタ画像)の剥がれの有無と、を目視で観察し、下記評価基準に従い、画像の密着性を評価した。
結果を表1に示す。
【0176】
-評価基準-
5: テープ片に付着物が視認されず、非浸透性基材上の画像の剥がれも視認されない。
4: テープ片に若干の色付きの付着物が視認されるが、非浸透性基材上の画像の剥がれは視認されない。
3: テープ片に若干の色付きの付着物が視認され、非浸透性基材上の画像に若干の剥がれが視認されるが、実用上許容できる範囲内である。
2: テープ片に色付きの付着物が視認され、非浸透性基材上の画像に剥がれも視認され、実用上許容できる範囲を超えている。
1: テープ片に色付きの付着物が視認され、非浸透性基材上の画像がほとんど剥がれ、非浸透性基材が視認される。
【0177】
〔実施例2~4〕
シアンインク中の有機溶剤A(詳細には、20℃における蒸気圧が0.20kPa以下である有機溶剤A)の種類及び量を、表1に示すように変更したこと以外は実施例1と同様の操作を行った。実施例3は、有機溶剤Aを2種用いた例である。
結果を表1に示す。
【0178】
〔実施例5〕
オーバーコート液の調製に用いたポリウレタン樹脂PU2の30質量%トルエン溶液を、同質量の下記のポリアミド樹脂PA1の30質量%トルエン溶液に変更することにより、オーバーコート液中の樹脂の種類を、下記のポリアミド樹脂PA1に変更したこと以外は実施例1と同様の操作を行った。
結果を表1に示す。
【0179】
(ポリアミドPA1の30質量%トルエン溶液の調製)
ポリアミド樹脂PA1としての「ベジケムグリーン(登録商標)V930」(築野食品工業社製)を、トルエンに溶解させることにより、ポリアミド樹脂PA1の30質量%トルエン溶液を調製した。
【0180】
〔実施例6〕
オーバーコート液の調製において、ポリウレタン樹脂PU2の30質量%トルエン溶液に代えて、下記のポリウレタン樹脂PU2の30質量%IPA溶液を用い、表1に示す組成のオーバーコート液を調製したこと以外は実施例1と同様の操作を行った。
結果を表1に示す。
実施例6において、オーバーコート液の全量に対する樹脂の含有量は10質量%であり、オーバーコート液の全量に対する無機粒子の含有量は34質量%である。
【0181】
(ポリウレタン樹脂PU2の30質量%IPA溶液の調製)
実施例1における「ポリウレタン樹脂PU2の30質量%トルエン溶液の調製」において、6時間の反応後の液体に加えるトルエンを、イソプロピルアルコール(IPA)に変更したこと以外は同様にして、ポリウレタン樹脂PU2の30質量%IPA溶液を調製した。
【0182】
〔実施例7~10〕
オーバーコート液の調製において、ポリウレタン樹脂PU2の30質量%トルエン溶液に代えて、下記のポリウレタン樹脂PU3の30質量%溶液を用い、表1に示す組成のオーバーコート液を調製したこと以外は実施例1と同様の操作を行った。
結果を表1に示す。
実施例7~10のいずれにおいても、オーバーコート液の全量に対する樹脂の含有量は10質量%であり、オーバーコート液の全量に対する無機粒子の含有量は34質量%である。
【0183】
(ポリウレタン樹脂PU3の30質量%溶液の調製)
攪拌機、冷却管及び窒素ガス導入管を備えた四つ口フラスコに、数平均分子量2000のポリテトラメチレングリコール30.3部、数平均分子量2000のポリエチレングリコール25.0部、シクロヘキサンジメタノール5.84部、ジメチロールプロピオン酸9.25部及びイソホロンジイソシアネート29.6部を仕込み、140℃で6時間反応させた。得られた液体を液温が30℃となるまで放冷し、次いでこの液体に、28%アンモニア水3.14部と、水及びイソプロピルアルコールの混合溶液と、を滴下することにより、ポリウレタン樹脂PU3の30質量%溶液(溶媒は、水(2部)及びイソプロピルアルコール(1部)の混合溶媒)を得た。
ポリウレタン樹脂PU3のMwは、5万であった。
【0184】
〔実施例11及び12〕
凝集液中の樹脂粒子を、表1に示すように変更したこと以外は実施例1と同様の操作を行った。
結果を表1に示す。
【0185】
〔実施例13〕
非浸透性基材を、表1に示すように変更したこと以外は実施例1と同様の操作を行った。
結果を表1に示す。
【0186】
〔実施例14〕
オーバーコート液の組成を表1に示すように変更したこと以外は実施例1と同様の操作を行った。
結果を表1に示す。
実施例14において、オーバーコート液の全量に対する樹脂の含有量は10質量%であり、オーバーコート液の全量に対する無機粒子の含有量は34質量%である。
【0187】
〔実施例15〕
シアンインク中の有機溶剤Aの量を10質量%に変更し、水の量をシアンインク全体で100質量%となるように調整したこと以外は実施例1と同様の操作を行った。
結果を表1に示す。
【0188】
〔実施例16〕
凝集液中の樹脂粒子(PE1)を用いなかった(詳細には、PE1を同質量の水に変更した)こと以外は実施例1と同様の操作を行った。
結果を表1に示す。
【0189】
〔実施例17及び18〕
オーバーコート液中の無機粒子を、表1に示すように変更したこと以外は実施例1と同様の操作を行った。
結果を表1に示す。
【0190】
〔実施例19〕
オーバーコート液中の無機粒子を用いなかった(詳細には、無機粒子を同質量の樹脂(PU2)に置き換えた)こと以外は実施例1と同様の操作を行った。
結果を表1に示す。
【0191】
〔実施例20~22〕
凝集液中の凝集剤を、同質量の表2に示す凝集剤に変更したこと以外は実施例1と同様の操作を行った。
結果を表2に示す。
【0192】
〔実施例23~26〕
シアンインク中の有機溶剤Aの種類を、表2に示すように変更したこと以外は実施例1と同様の操作を行った。
結果を表2に示す。
【0193】
〔比較例1〕
シアンインク中の有機溶剤Aの種類を、表2に示すように変更したこと以外は実施例1と同様の操作を行った。
結果を表2に示す。
【0194】
〔比較例2〕
シアンインク中の有機溶剤Aの量を7質量%に変更し、水の量をシアンインク全体で100質量%となるように調整したこと以外は実施例1と同様の操作を行った。
結果を表2に示す。
【0195】
〔比較例3~5〕
オーバーコート液の調製において、ポリウレタン樹脂PU2の30質量%トルエン溶液に代えて、下記のポリウレタン樹脂PU2の30質量%1,2-PD溶液(比較例3及び4)、又は、下記のポリウレタン樹脂PU2の30質量%BA溶液(比較例5)を用い、表2に示す組成のオーバーコート液を調製したこと以外は実施例1と同様の操作を行った。
結果を表2に示す。
比較例3~5の各々において、オーバーコート液の全量に対する樹脂の含有量は10質量%であり、オーバーコート液の全量に対する無機粒子の含有量は34質量%である。
【0196】
(ポリウレタン樹脂PU2の30質量%1,2-PD溶液の調製;比較例3及び4)
実施例1における「ポリウレタン樹脂PU2の30質量%トルエン溶液の調製」において、6時間の反応後に加えるトルエンを、1,2-プロパンジオール(1,2-PD)に変更したこと以外は同様にして、ポリウレタン樹脂PU2の30質量%1,2-PD溶液の調製を行った。
【0197】
(ポリウレタン樹脂PU2の30質量%BA溶液の調製;比較例5)
実施例1における「ポリウレタン樹脂PU2の30質量%トルエン溶液の調製」において、6時間の反応後に加えるトルエンを、酢酸ブチル(BA)に変更したこと以外は同様にして、ポリウレタン樹脂PU2の30質量%BA溶液の調製を行った。
【0198】
〔比較例6〕
凝集液を用いなかったこと以外は実施例1と同様の操作を行った。
結果を表2に示す。
【0199】
〔比較例7〕
凝集液を用いなかったこと以外は比較例4と同様の操作を行った。
結果を表2に示す。
【0200】
〔比較例8〕
オーバーコート液を用いなかったこと以外は比較例6と同様の操作を行った。
結果を表2に示す。
【0201】
凝集液及びオーバーコート液を用いなかったこの比較例8では、オーバーコート層の転写の評価ではなく、シアンベタ画像の転写の評価を行った。
シアンベタ画像の転写の評価は、以下の点を変更したこと以外は、実施例1におけるオーバーコート層の転写の評価と同様にして実施した。
シアンベタ画像の転写の評価における観察領域は、実施例1におけるオーバーコート層の転写の評価における観察領域(長手方向長さ500mm×幅500mm)中、シアンベタ画像が形成されている領域(即ち、非浸透性基材S1の全幅500mmのうち、幅方向中央部を中心とする幅250mmの帯状の領域)のみとした。
シアンベタ画像の転写の評価における評価基準は、実施例1におけるオーバーコート層の転写の評価における評価基準において、「オーバーコート層の転写跡の面積」を、「シアンベタ画像の転写跡の面積」に変更した評価基準とした。
【0202】
【表1】
【0203】
【表2】
【0204】
表1及び表2中、インク中の水の量(質量%)については、小数点以下の数字を四捨五入して表記した。
表1及び表2中、空欄は、該当する成分が無いことを意味する。
表1及び表2中、「評価結果」欄における「転写」欄は、実施例1~26及び比較例1~7については、オーバーコート層の転写を意味し、比較例8については、シアンベタ画像の転写を意味する。
【0205】
表1及び表2中、非浸透性基材は以下のとおりである。
・PET:フタムラ化学社製のポリエチレンテレフタレートフィルム「FE2001」(厚さ25μm)
・OPP:東洋紡社製の二軸延伸ポリプロピレンフィルム「P6181」(厚さ25μm)
【0206】
表1及び表2中、凝集液における凝集剤は以下のとおりである。
・MA:マロン酸(和光純薬工業(株)製;ジカルボン酸)
・AA:酢酸(和光純薬工業(株)製;モノカルボン酸)
・MgSO4:硫酸マグネシウム(和光純薬工業(株)製;多価金属塩)
・CA:酢酸カルシウム(和光純薬工業(株)製;多価金属塩)
【0207】
表1及び表2中、凝集液における樹脂粒子は以下のとおりである。
・PE1:Eastek1200(Eastman Chemical社製、ポリエステル樹脂粒子、体積平均粒径30nm)
・PU1:スーパーフレックスE-4800(第一工業製薬(株)製、ポリウレタン樹脂粒子、体積平均粒径300nm)
・PE2:プラスコートRZ570(互応化学工業(株)製、ポリエステル樹脂粒子、体積平均粒径25nm)
【0208】
表1及び表2中、「有機溶剤A or 他溶剤」欄、「有機溶剤A」欄、2つの「有機溶剤B or 他溶剤」欄、及び「水」欄が空欄である場合は、該当する成分を含有しないことを意味する。
【0209】
表1及び表2中の有機溶剤(有機溶剤A、有機溶剤B他)は、以下のとおりである。
各溶剤種についての、20%蒸気圧(単位はkPa;表1中では「20℃ VP」と表記した)及びSP値(単位はMPa1/2;表1中では「SP」と表記した)は、それぞれ表1に示すとおりである。
・1,2-PD:1,2-プロパンジオール(和光純薬工業(株)製)
・1,3-PD:1,3-プロパンジオール(和光純薬工業(株)製)
・1,2-BD:1,2-ブタンジオール(和光純薬工業(株)製)
・GL:グリセリン(和光純薬工業(株)製)
・PGmBE:プロピレングリコールモノブチルエーテル(和光純薬工業(株)製)
・PGmME:プロピレングリコールモノメチルエーテル(和光純薬工業(株)製)
・PGmPE:プロピレングリコールモノプロピルエーテル(和光純薬工業(株)製)
・EGmPE:エチレングリコールモノプロピルエーテル(和光純薬工業(株)製)
・2-ME:2-メトキシエタノール(和光純薬工業(株)製)
・TOL:トルエン(和光純薬工業(株)製)
・IPA:イソプロピルアルコール(和光純薬工業(株)製)
・BA:酢酸ブチル(和光純薬工業(株)製)
・EA:酢酸エチル(和光純薬工業(株)製)
【0210】
表1及び表2中、ISP、OSP、及びIsp-Ospは、それぞれ、インクに含有される有機溶剤Aの平均SP値(単位はMPa1/2)、オーバーコート液に含有される液体成分全体の平均SP値OSP(単位はMPa1/2)、及び、IspからOspを差し引いた差を表す。
【0211】
表1及び表2中、オーバーコート液における樹脂は以下のとおりである。
・PU2:上述したポリウレタン樹脂PU2
・PU3:上述したポリウレタン樹脂PU3
・PA1:上述したポリアミド樹脂PA1
【0212】
表1及び表2中、オーバーコート液における無機粒子は以下のとおりである。各無機粒子種のモース硬度は表1及び表2に示したとおりである。
・TiO2(R):ルチル型酸化チタン粒子CR-50(石原産業社製、平均体積粒径:0.25μm)
・TiO2(A):アナターゼ型酸化チタン粒子A-220(石原産業社製、平均体積粒径0.16μm)
・BaSO4:硫酸バリウム粒子BARIACE 34(堺化学工業社製、体積平均粒径0.30μm)
【0213】
表1及び表2に示すように、色材、水、及び20℃蒸気圧(表1及び表2中の20℃VP)が0.20kPa以下である有機溶剤Aを含有し、インクの全量に対する有機溶剤Aの含有量が10質量%以上であるインクと、インク中の成分を凝集させる凝集剤及び水を含有する凝集液と、樹脂及び20℃における蒸気圧が2.50kPa以上である有機溶剤Bを含有し、オーバーコート液の全量に対する有機溶剤Bの含有量が10質量%以上であるオーバーコート液と、を用いた実施例1~26では、画質に優れた画像及び転写が抑制されたオーバーコート層が形成され、かつ、インクの吐出安定性に優れていた。実施例1~26で形成された、オーバーコート層で被覆された画像は、非浸透性基材との密着性にも優れていた。
【0214】
これらの実施例に対し、インクが有機溶剤Aを含有せず、20℃蒸気圧が0.20kPa超である他溶剤(2-ME;2-メトキシエタノール)を含有する比較例1では、インクの吐出安定性が低下した。
インクが有機溶剤Aを含有するが、インクの全量に対する有機溶剤Aの含有量が10質量%未満である比較例2では、インクの吐出安定性が低下した。
オーバーコート液が有機溶剤B(EA;酢酸エチル)を含有するが、オーバーコート液の全量に対する有機溶剤Bの含有量が10質量%以下である比較例3では、オーバーコート層の転写を抑制できなかった。
オーバーコート液が有機溶剤B(EA;酢酸エチル)を含有せず、20℃蒸気圧が2.50kPa未満である他溶剤(1,2-PD;1,2-プロパンジオール、BA;酢酸ブチル)を含有する比較例4及び5では、オーバーコート層の転写を抑制できなかった。
凝集液を用いなかった比較例6~8では、画質及び非浸透性基材との密着性に顕著な劣化が見られた。
【0215】
比較例4と比較例7との対比から明らかなように、凝集剤を用いた比較例4では、オーバーコート層の転写が見られたのに対し、凝集液を用いない比較例7では、オーバーコート層の転写が見られなかった。この結果から、オーバーコート層の転写の問題は、凝集液及びオーバーコート液を用いた画像形成方法に特有の問題であることがわかる。
また、凝集液及びオーバーコート液を用いなかった比較例8では、シアンベタ画像の転写は、例えば比較例4におけるオーバーコート層の転写と比較して、問題が無いレベル(評価基準における「3」)であることがわかる。この結果からも、オーバーコート層の転写の問題が、凝集液及びオーバーコート液を用いた画像形成方法に特有の問題であることがわかる。
【0216】
実施例1~4及び23~26の結果から、有機溶剤Aの少なくとも1種が、20℃における蒸気圧が0.10kPa以下である場合(実施例1~3及び23~26)、インクの吐出安定性がより向上することがわかる。
【0217】
実施例11~14の結果から、オーバーコート液の全量に対する有機溶剤Bの含有量が25質量%以上である場合(実施例11~13)、オーバーコート層の転写がより抑制されることがわかる。
【0218】
実施例1~10の結果から、Isp-Osp≧3を満足する場合(実施例1~7)、オーバーコート層の転写がより抑制されることがわかる。この理由は、画像からその上のオーバーコート層への有機溶剤の移行に起因する、オーバーコート層のべたつきがより抑制されるためと考えられる。
【0219】
実施例1及び16の結果から、凝集液が、樹脂粒子を含有する場合(実施例1)には、オーバーコート層付き画像と非浸透性基材との密着性がより向上することがわかる。
【0220】
実施例1及び17~19の結果から、オーバーコート液が無機粒子を含有する場合(実施例1、17及び18)には、オーバーコート層の転写がより抑制されることがわかる。
実施例1、17及び18の結果から、無機粒子のモース硬度が4以上である場合(実施例1及び17)には、オーバーコート層の転写が更に抑制されることがわかる。
【0221】
〔実施例101~103〕
凝集液の付与質量及び/又はオーバーコート液の付与質量を、表3に示すように変更したこと以外は実施例1と同様の操作を行った。
結果を表3に示す。
【0222】
【表3】
【0223】
表3に示すように、付与質量比〔オーバーコート液/凝集液〕が1.0以上であると、オーバーコートの転写がより抑制されることがわかる。
【0224】
以上、インクとして、シアンインクを用いた実施例群について説明したが、これらの実施例群において、シアンインクをシアンインク以外のインク(例えば、マゼンタインク、イエローインク、ブラックインク等)に変更した場合、又は、シアンインクに加えてシアンインク以外のインクの少なくとも1つを用いて多色の画像を形成した場合にも、上述した実施例群と同様の効果が得られることはいうまでもない。
【0225】
2017年9月29日に出願された日本国特許出願2017-190329号の開示は、その全体が参照により本明細書に取り込まれる。
本明細書に記載された全ての文献、特許出願、及び技術規格は、個々の文献、特許出願、及び技術規格が参照により取り込まれることが具体的かつ個々に記された場合と同程度に、本明細書に参照により取り込まれる。
図1
図2
図3