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特許6997215組成物、熱伝導材料、熱伝導層付きデバイス、及び熱伝導材料の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-20
(45)【発行日】2022-01-17
(54)【発明の名称】組成物、熱伝導材料、熱伝導層付きデバイス、及び熱伝導材料の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08G 59/32 20060101AFI20220107BHJP
   C08G 65/18 20060101ALI20220107BHJP
   C08K 3/38 20060101ALI20220107BHJP
   C08L 63/00 20060101ALI20220107BHJP
【FI】
C08G59/32
C08G65/18
C08K3/38
C08L63/00 Z
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2019561545
(86)(22)【出願日】2018-12-18
(86)【国際出願番号】 JP2018046579
(87)【国際公開番号】W WO2019131332
(87)【国際公開日】2019-07-04
【審査請求日】2020-05-14
(31)【優先権主張番号】P 2017252328
(32)【優先日】2017-12-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】306037311
【氏名又は名称】富士フイルム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100152984
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 秀明
(74)【代理人】
【識別番号】100148080
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 史生
(72)【発明者】
【氏名】人見 誠一
(72)【発明者】
【氏名】高橋 慶太
(72)【発明者】
【氏名】新居 輝樹
(72)【発明者】
【氏名】吉田 有次
【審査官】佐藤 貴浩
(56)【参考文献】
【文献】特表平08-503729(JP,A)
【文献】特開2007-084789(JP,A)
【文献】特開2013-112631(JP,A)
【文献】国際公開第2017/131007(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/203965(WO,A1)
【文献】特開2016-204606(JP,A)
【文献】特開2016-204602(JP,A)
【文献】国際公開第2019/013299(WO,A1)
【文献】DONG-GUE KANG et al.,Heat Transfer Organic Materials: Robust Polymer Films with the Outstanding Thermal Conductivity Fabricated by the Photopolymerization of Uniaxially Oriented Reactive Discogens,ACS APPLIED MATERIALS & INTERFACES,2016年10月20日,vol. 8,pages 30492-30501
【文献】KAWAGISHI SHIGERU et al.,Liquid Crystalline Epoxy Resins Consisting of Mesogenic Diepoxide and Mesogenic Hardner,MOLECULAR CRYSTALS AND LIQUID CRYSTALS,1998年,vol. 318,pages 179-197
【文献】New types of liquid crystalline epoxy resins cured by a mesogenic hardening compound,POLYMER,1996年,vol. 37 no. 10,pages 1925-1932
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G59/00-59/72
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
活性水素含有官能基を含む硬化剤と、
前記活性水素含有官能基と反応する反応性基を含む主剤と、
無機物と、を含み、
前記硬化剤及び前記主剤が、各々、単独の状態において150℃以下の温度で液晶性を示し、
前記無機物が窒化ホウ素である、組成物。
【請求項2】
前記硬化剤及び前記主剤が、各々、単独の状態において150℃以下の温度でネマチック液晶性を示す、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記主剤が、環重合性基を含む、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
前記硬化剤が、円盤状化合物である、請求項1~3のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項5】
前記主剤が、円盤状化合物である、請求項1~4のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項6】
前記硬化剤及び前記主剤が、いずれも円盤状化合物である、請求項1~5のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項7】
前記円盤状化合物が、下記式(CR4)で表される部分構造を含む円盤状化合物、及び下記式(CR16)で表される部分構造を含む円盤状化合物からなる群より選ばれる円盤状化合物である、請求項4~6のいずれか1項に記載の組成物。
【化1】
式中、*は、結合位置を表す。
【化2】
式中、複数存在するX211Xは、各々独立に、単結合、-O-、-C(=O)-、-NH-、-OC(=O)-、-OC(=O)O-、-OC(=O)NH-、-OC(=O)S-、-C(=O)O-、-C(=O)NH-、-C(=O)S-、-NHC(=O)-、-NHC(=O)O-、-NHC(=O)NH-、-NHC(=O)S-、-S-、-SC(=O)-、-SC(=O)O-、-SC(=O)NH-、又は-SC(=O)S-を表す。
複数存在するZ21Xは、各々独立に、5員環若しくは6員環の芳香族環基、又は5員環若しくは6員環の非芳香族環基を表す。
2X、A3X、及びA4Xは、いずれも-CH=を表す。
複数存在するn21Xは、各々独立に、0~3の整数を表す。
*は、結合位置を表す。
【請求項8】
前記窒化ホウ素の平均粒径が20μm以上である、請求項1~7のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項9】
ネマチック液晶性を示す、請求項1~のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項10】
熱伝導材料を形成するために用いられる、請求項1~のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項11】
請求項1~10のいずれか1項に記載の組成物を用いて組成物層を形成する工程1と、
前記組成物層中の前記硬化剤及び前記主剤がいずれも液晶性を示し、且つ、150℃以下の温度に前記組成物層を加熱し、前記硬化剤及び前記主剤を配向させる工程2と、
前記組成物層を硬化させる工程3と、を含む、熱伝導材料の製造方法。
【請求項12】
前記工程3が、熱硬化方法による硬化工程である、請求項11に記載の熱伝導材料の製造方法。
【請求項13】
請求項1~10のいずれか1項に記載の組成物を用いて形成される、熱伝導材料。
【請求項14】
ネマチック液晶相を固定化してなる、請求項13に記載の熱伝導材料。
【請求項15】
シート状である、請求項13又は14に記載の熱伝導材料。
【請求項16】
デバイスと、前記デバイス上に配置された請求項1315のいずれか1項に記載の熱伝導材料を含む熱伝導層とを含む、熱伝導層付きデバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、組成物、熱伝導材料、熱伝導層付きデバイス、及び熱伝導材料の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
パーソナルコンピュータ、一般家電、及び自動車等の様々な電気機器に用いられているパワー半導体デバイスは、近年、小型化が急速に進んでいる。小型化に伴い高密度化されたパワー半導体デバイスから発生する熱の制御が困難になっている。
このような問題に対応するため、パワー半導体デバイスからの放熱を促進する熱伝導材料が用いられている。
例えば、特許文献1に、熱伝導性が優れたエポキシ樹脂として、「メソゲン骨格を有し、且つ、1分子内に2個のグリシジル基を有するエポキシ樹脂モノマーと、1つのベンゼン環に2個の水酸基を置換基として有する2価フェノール化合物との反応により得られ、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー測定における数平均分子量が600~2500であるエポキシ樹脂。」が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】国際公開2016/104772号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明者らは、特許文献1に記載されたエポキシ樹脂(熱伝導材料)について検討したところ、熱伝導性が昨今求められている水準を満たしておらず、更なる改善が必要であることを明らかとした。
【0005】
そこで、本発明は、熱伝導性に優れた硬化物(熱伝導材料)を与え得る組成物を提供することを課題とする。
また、本発明は、上記組成物により形成される熱伝導材料、及び熱伝導層付きデバイスを提供することをも課題とする。
また、本発明は、上記組成物を用いた熱伝導材料の製造方法を提供することも課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記課題を達成すべく鋭意検討した結果、主剤及び硬化剤のいずれについても液晶性を示す化合物を用いることで上記課題が解決できることを見出し、本発明を完成させた。
すなわち、以下の構成により上記課題が解決できることを見出した。
【0007】
〔1〕 活性水素含有官能基を含む硬化剤と、
上記活性水素含有官能基と反応する反応性基を含む主剤と、を含み、
上記硬化剤及び上記主剤が、各々、単独の状態において150℃以下の温度で液晶性を示す、組成物。
〔2〕 上記硬化剤及び上記主剤が、各々、単独の状態において150℃以下の温度でネマチック液晶性を示す、〔1〕に記載の組成物。
〔3〕 上記主剤が、環重合性基を含む、〔1〕又は〔2〕に記載の組成物。
〔4〕 上記硬化剤が、円盤状化合物である、〔1〕~〔3〕のいずれかに記載の組成物。
〔5〕 上記主剤が、円盤状化合物である、〔1〕~〔4〕のいずれかに記載の組成物。
〔6〕 上記硬化剤及び上記主剤が、いずれも円盤状化合物である、〔1〕~〔5〕のいずれかに記載の組成物。
〔7〕 上記円盤状化合物が、後述する式(CR4)で表される部分構造を含む円盤状化合物、及び後述する式(CR16)で表される部分構造を含む円盤状化合物からなる群より選ばれる円盤状化合物である、〔4〕~〔6〕のいずれかに記載の組成物。
〔8〕 更に、無機物を含む、〔1〕~〔7〕のいずれかに記載の組成物。
〔9〕 上記無機物が、無機窒化物又は無機酸化物である、〔8〕に記載の組成物。
〔10〕 上記無機物の平均粒径が20μm以上である、〔8〕又は〔9〕に記載の組成物。
〔11〕 上記無機物が窒化ホウ素である、〔8〕又は〔9〕に記載の組成物。
〔12〕 ネマチック液晶性を示す、〔1〕~〔11〕のいずれかに記載の組成物。
〔13〕 熱伝導材料を形成するために用いられる、〔1〕~〔12〕のいずれかに記載の組成物。
〔14〕 〔1〕~〔13〕のいずれかに記載の組成物を用いて組成物層を形成する工程1と、
上記組成物層中の上記硬化剤及び上記主剤がいずれも液晶性を示し、且つ、150℃以下の温度に上記組成物層を加熱し、上記硬化剤及び上記主剤を配向させる工程2と、
上記組成物層を硬化させる工程3と、を含む、熱伝導材料の製造方法。
〔15〕 上記工程3が、熱硬化方法による硬化工程である、〔14〕に記載の熱伝導材料の製造方法。
〔16〕 〔1〕~〔13〕のいずれかに記載の組成物を用いて形成される、熱伝導材料。
〔17〕 ネマチック液晶相を固定化してなる、〔16〕に記載の熱伝導材料。
〔18〕 シート状である、〔16〕又は〔17〕に記載の熱伝導材料。
〔19〕 デバイスと、上記デバイス上に配置された〔16〕~〔18〕のいずれかに記載の熱伝導材料を含む熱伝導層とを含む、熱伝導層付きデバイス。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、熱伝導性に優れる硬化物(熱伝導材料)を与え得る組成物を提供できる。
また、本発明によれば、上記組成物により形成される熱伝導材料、及び熱伝導層付きデバイスを提供できる。
また、本発明によれば、上記組成物を用いた熱伝導材料の製造方法を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の組成物、熱伝導材料、熱伝導層付きデバイス、及び熱伝導材料の製造方法について詳細に説明する。
以下に記載する構成要件の説明は、本発明の代表的な実施態様に基づいてなされることがあるが、本発明はそのような実施態様に制限されるものではない。
なお、本明細書において、「~」を用いて表される数値範囲は、「~」の前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む範囲を意味する。
また、本明細書において、オキシラニル基は、エポキシ基とも呼ばれる官能基であり、例えば、飽和炭化水素環基の隣接する炭素原子2つがオキソ基(-O-)により結合してオキシラン環を形成している基等もオキシラニル基に含む。
【0010】
また、本明細書において、「(メタ)アクリロイル基」との記載は、「アクリロイル基及びメタクリロイル基のいずれか一方又は双方」の意味を表す。また、「(メタ)アクリルアミド基」との記載は、「アクリルアミド基及びメタクリルアミド基のいずれか一方又は双方」の意味を表す。
【0011】
また、本明細書において、「置換基を有していてもよい」という場合の置換基の種類、置換基の位置、及び置換基の数は特に制限されない。置換基の数は例えば、1個、又は、2個以上が挙げられる。置換基の例としては水素原子を除く1価の非金属原子団が挙げられ、例えば、以下の置換基群Yから選択できる。
【0012】
置換基群Y:
ハロゲン原子(-F、-Br、-Cl、-I)、水酸基、アミノ基、カルボキシ基及びその共役塩基基、無水カルボン酸基、シアネートエステル基、不飽和重合性基、オキシラニル基、オキセタニル基、アジリジニル基、チオール基、イソシアネート基、チオイソシアネート基、アルデヒド基、アルコキシ基、アリーロキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アルキルジチオ基、アリールジチオ基、N-アルキルアミノ基、N,N-ジアルキルアミノ基、N-アリールアミノ基、N,N-ジアリールアミノ基、N-アルキル-N-アリールアミノ基、アシルオキシ基、カルバモイルオキシ基、N-アルキルカルバモイルオキシ基、N-アリールカルバモイルオキシ基、N,N-ジアルキルカルバモイルオキシ基、N,N-ジアリールカルバモイルオキシ基、N-アルキル-N-アリールカルバモイルオキシ基、アルキルスルホキシ基、アリールスルホキシ基、アシルチオ基、アシルアミノ基、N-アルキルアシルアミノ基、N-アリールアシルアミノ基、ウレイド基、N’-アルキルウレイド基、N’,N’-ジアルキルウレイド基、N’-アリールウレイド基、N’,N’-ジアリールウレイド基、N’-アルキル-N’-アリールウレイド基、N-アルキルウレイド基、N-アリールウレイド基、N’-アルキル-N-アルキルウレイド基、N’-アルキル-N-アリールウレイド基、N’,N’-ジアルキル-N-アルキルウレイド基、N’,N’-ジアルキル-N-アリールウレイド基、N’-アリール-N-アルキルウレイド基、N’-アリール-N-アリールウレイド基、N’,N’-ジアリール-N-アルキルウレイド基、N’,N’-ジアリール-N-アリールウレイド基、N’-アルキル-N’-アリール-N-アルキルウレイド基、N’-アルキル-N’-アリール-N-アリールウレイド基、アルコキシカルボニルアミノ基、アリーロキシカルボニルアミノ基、N-アルキル-N-アルコキシカルボニルアミノ基、N-アルキル-N-アリーロキシカルボニルアミノ基、N-アリール-N-アルコキシカルボニルアミノ基、N-アリール-N-アリーロキシカルボニルアミノ基、ホルミル基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリーロキシカルボニル基、カルバモイル基、N-アルキルカルバモイル基、N,N-ジアルキルカルバモイル基、N-アリールカルバモイル基、N,N-ジアリールカルバモイル基、N-アルキル-N-アリールカルバモイル基、アルキルスルフィニル基、アリールスルフィニル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、スルホ基(-SO3H)及びその共役塩基基、アルコキシスルホニル基、アリーロキシスルホニル基、スルフィナモイル基、N-アルキルスルフィナモイル基、N,N-ジアルキルスルフィナモイル基、N-アリールスルフィナモイル基、N,N-ジアリールスルフィナモイル基、N-アルキル-N-アリールスルフィナモイル基、スルファモイル基、N-アルキルスルファモイル基、N,N-ジアルキルスルファモイル基、N-アリールスルファモイル基、N,N-ジアリールスルファモイル基、N-アルキル-N-アリールスルファモイル基、N-アシルスルファモイル基及びその共役塩基基、N-アルキルスルホニルスルファモイル基(-SO2NHSO2(alkyl))及びその共役塩基基、N-アリールスルホニルスルファモイル基(-SO2NHSO2(aryl))及びその共役塩基基、N-アルキルスルホニルカルバモイル基(-CONHSO2(alkyl))及びその共役塩基基、N-アリールスルホニルカルバモイル基(-CONHSO2(aryl))及びその共役塩基基、アルコキシシリル基(-Si(Oalkyl)3)、アリーロキシシリル基(-Si(Oaryl)3)、ヒドロキシシリル基(-Si(OH)3)及びその共役塩基基、ホスホノ基(-PO32)及びその共役塩基基、ジアルキルホスホノ基(-PO3(alkyl)2)、ジアリールホスホノ基(-PO3(aryl)2)、アルキルアリールホスホノ基(-PO3(alkyl)(aryl))、モノアルキルホスホノ基(-PO3H(alkyl))及びその共役塩基基、モノアリールホスホノ基(-PO3H(aryl))及びその共役塩基基、ホスホノオキシ基(-OPO32)及びその共役塩基基、ジアルキルホスホノオキシ基(-OPO3(alkyl)2)、ジアリールホスホノオキシ基(-OPO3(aryl)2)、アルキルアリールホスホノオキシ基(-OPO3(alkyl)(aryl))、モノアルキルホスホノオキシ基(-OPO3H(alkyl))及びその共役塩基基、モノアリールホスホノオキシ基(-OPO3H(aryl))及びその共役塩基基、シアノ基、ニトロ基、アリール基、アルケニル基、アルキニル基、及びアルキル基。
また、これらの置換基は、可能であるならば置換基同士、又は置換している基と結合して環を形成してもよい。
【0013】
なお、不飽和重合性基としては、例えば、(メタ)アクリロイル基、(メタ)アクリルアミド基、及び以下に示すQ1~Q7で表される置換基等が挙げられる。
【0014】
【化1】
【0015】
[組成物]
本発明の組成物は、
活性水素含有官能基を含む硬化剤と、
上記活性水素含有官能基と反応する反応性基を含む主剤と、を含み、
上記硬化剤及び上記主剤が、各々、単独の状態において150℃以下の温度で液晶性を示す。
【0016】
なお、本明細書において「単独の状態において150℃以下の温度で液晶性を示す」とは、硬化剤として機能する化合物、又は主剤として機能する化合物が、単体の状態で(言い換えると、他の成分と混合されていない状態で)、150℃以下の温度で液晶性を示すことを意図する。なお、下限値は特に制限されないが、例えば室温(25℃)以上である。
また、「150℃以下の温度で液晶性を示す」とは、上記化合物が、少なくとも150℃以下の温度領域にて液晶相を示せばよい意図である。つまり、上記化合物が、(1)結晶相-液晶相の相転移温度が150℃以下であり、且つ、等方相-液晶相の相転移温度が150℃以下である場合、又は、(2)結晶相-液晶相の相転移温度が150℃以下であり、且つ、等方相-液晶相の相転移温度が150℃超である場合に相当する。
上記化合物の液晶性は、偏光顕微鏡観察、又は示差走査熱量測定により確認できる。
【0017】
本発明者らは、今般、主剤と上記主剤と反応し得る硬化剤とを含む組成物において、主剤及び硬化剤がそれぞれ単独で所定温度以下の温度にて液晶性を示す化合物である場合、得られる硬化物(熱伝導材料)の熱伝導性が飛躍的に向上することを知見している。
なお、上記組成物を用いて熱伝導材料を形成する場合、上記組成物の塗膜(組成物層)を、上記組成物層中の硬化剤及び主剤がいずれも液晶性(好ましくはネマチック液晶性)を示し且つ硬化剤及び主剤の硬化反応が実質的に進行しない温度に加熱し、硬化剤及び主剤を配向させた後、この状態で熱硬化処理をすることが好ましい。なお、熱硬化反応は、通常150℃超の温度により開始するとされている。このため、上記組成物において硬化剤及び主剤が150℃以下の温度で液晶性を示すことにより、熱硬化反応よりも液晶成分の配向が優先して生じ、高い秩序度の硬化物(熱伝導材料)が得られる。また、硬化反応を熱硬化処理とすることで、光硬化処理と比較した場合と比べて、各々液晶性を示す主剤と硬化剤との反応をより促進でき、得られる熱伝導材料の熱伝導性がより優れることも確認している。
また、硬化剤及び主剤が、いずれも円盤状化合物である場合、得られる硬化物の熱伝導性がより優れる。円盤状化合物は、中心核に対して放射状に反応性基を含む側鎖を複数配することができるため(つまり、熱伝導パスを広げやすいため)熱伝導性がより優れると考えられる。
また、硬化剤及び主剤が150℃以下の温度領域にて示す液晶相は、ネマチック液晶相であることが好ましい。本発明の組成物により形成される熱伝導材料は、秩序度が比較的低いネマチック液晶相であっても、熱伝導シートに必要とされる程度の高い熱伝導性を有する。
また、本発明の組成物が無機物を含む場合、熱伝導材料の熱伝導性はより向上する。なお、本発明の組成物が無機物を含まない場合(言い換えると、有機物のみから形成される場合)であっても、熱伝導材料は、熱伝導シートに必要とされる程度の高い熱伝導性を有する。
【0018】
以下、組成物に含まれる成分について詳述する。
【0019】
〔硬化剤〕
本発明の組成物は硬化剤を含む。上記硬化剤は、活性水素含有官能基を含み、且つ、単独の状態において150℃以下の温度で液晶性を示す。
本明細書において「活性水素」とは、窒素原子、酸素原子、又は硫黄原子と直接結合した水素原子を意図する。
上記硬化剤が含む活性水素含有官能基としては、上記活性水素を含む官能基であれば特に制限されず、例えば、アミノ基、チオール基、水酸基、又はカルボキシ基が好ましい。
【0020】
なお、上記硬化剤中に含まれる活性水素含有官能基の種類は、併用する主剤中の反応性基の種類に応じて適宜選択される。
活性水素含有官能基がアミノ基である場合に使用可能な反応性基としては、オキシラニル基、オキセタニル基、カルボキシ基、ハロゲン化ベンジル基、イソシアネート基、アルデヒド基、及びカルボニル基等が挙げられる。
活性水素含有官能基がチオール基である場合に使用可能な反応性基としては、ビニル基、オキシラニル基、オキセタニル基、ハロゲン化ベンジル基、無水カルボン酸基、イソシアネート基、及びアルコキシシリル基等が挙げられる。
活性水素含有官能基が水酸基である場合に使用可能な反応性基としては、オキシラニル基、オキセタニル基、ハロゲン化ベンジル基、無水カルボン酸基、イソシアネート基、及びアルコキシシリル基等が挙げられる。
活性水素含有官能基がカルボキシ基である場合に使用可能な反応性基としては、オキシラニル基、オキセタニル基、ハロゲン化ベンジル基、シアネートエステル基、アミノ基、イソシアネート基、及びアジリジン基等が挙げられる。
【0021】
上記硬化剤は、単独の状態で少なくとも150℃以下の温度領域にて液晶性を示せばよい。上記硬化剤は、熱伝導材料の熱伝導性がより優れる点で、結晶相-液晶相の相転移温度が150℃未満であり、且つ、等方相-液晶相の相転移温度が200℃以下であることが好ましく、結晶相-液晶相の相転移温度が130℃以下であり、且つ、等方相-液晶相の相転移温度が180℃以下であることがより好ましい。
また、上記硬化剤が150℃以下の温度領域にて示す液晶相は、ネマチック液晶相であることが好ましい。
【0022】
上記硬化剤は、1種のみを使用してよいし、2種以上を併用してよい。
組成物中における上記硬化剤の含有量は、組成物の全固形分に対して、10~90質量%が好ましく、20~80質量%がより好ましく、20~70質量%が更に好ましい。なお、固形分とは、熱伝導材料を構成する成分であればよく、液体状であっても固形分に含まれる。
【0023】
硬化剤としては、少なくとも部分的に棒状構造を含む化合物(棒状化合物)、又は少なくとも部分的に円盤状構造を含む化合物(円盤状化合物)が好ましく、熱伝導材料の熱伝導性がより優れる点で、円盤状化合物がより好ましい。
硬化剤として円盤状化合物を用いた場合に熱伝導材料の熱伝導性がより優れる理由としては、棒状化合物が直線的(一次元的)にしか熱伝導できないのに対して、円盤状化合物は法線方向に平面的(二次元的)に熱伝導できる点にあると考えられる。つまり、硬化剤として円盤状化合物を用いた場合、熱伝導パスがより多く形成され、この結果として熱伝導率が向上すると考えられる。
また、円盤状化合物を用いることにより、組成物の硬化物の耐熱性が向上する。
以下、棒状化合物及び円盤状化合物について説明する。
【0024】
<棒状化合物>
硬化剤が棒状化合物である場合、棒状構造としては、アゾメチン類、アゾキシ類、シアノビフェニル類、シアノフェニルエステル類、安息香酸エステル類、シクロヘキサンカルボン酸フェニルエステル類、シアノフェニルシクロヘキサン類、シアノ置換フェニルピリミジン類、アルコキシ置換フェニルピリミジン類、フェニルジオキサン類、トラン類、及びアルケニルシクロヘキシルベンゾニトリル類等が挙げられる。以上のような低分子液晶化合物だけではなく、高分子液晶化合物も使用できる。上記高分子液晶化合物は、低分子の反応性基を有し、かつ、棒状構造を有する低分子液晶化合物が重合した高分子化合物である。
また、上記棒状化合物は、活性水素含有官能基を2個以上含むことが好ましい。
硬化剤が棒状化合物である場合の好適態様については、主剤が棒状化合物である場合の好適態様とともに、後段にて説明する。
【0025】
<円盤状化合物>
円盤状化合物は、少なくとも部分的に円盤状構造を有する。
円盤状構造は、少なくとも、脂環又は芳香族環を有する。特に、円盤状構造が、芳香族環を有する場合、円盤状化合物は、分子間のπ-π相互作用によるスタッキング構造の形成により柱状構造を形成し得る。
円盤状構造としては、具体的には、Angew.Chem.Int. Ed. 2012, 51, 7990-7993及び特開平7-306317号公報に記載のトリフェニレン構造、並びに、特開2007-2220号公報及び特開2010-244038号公報に記載の3置換ベンゼン構造等が挙げられる。
【0026】
上記円盤状化合物は、活性水素含有官能基を3個以上含むことが好ましい。3個以上の活性水素含有官能基を含む円盤状化合物を含む組成物の硬化物はガラス転移温度が高く、耐熱性が高い傾向がある。棒状化合物と比較すると、円盤状化合物は3個以上の活性水素含有官能基を含んでいてもメソゲン部分の特性に影響を受けにくいためである。円盤状化合物が含む活性水素含有官能基の数は、8個以下が好ましく、6個以下がより好ましい。
【0027】
円盤状化合物の具体例としては、C. Destrade et al., Mol. Crysr. Liq. Cryst., vol. 71, page 111 (1981) ;日本化学会編、季刊化学総説、No.22、液晶の化学、第5章、第10章第2節(1994);B. Kohne et al., Angew. Chem. Soc. Chem. Comm., page 1794 (1985);J. Zhang et al., J. Am. Chem. Soc., vol. 116, page 2655 (1994)、及び特許第4592225号に記載されている化合物等が挙げられる。円盤状化合物としては、Angew.Chem.Int. Ed. 2012, 51, 7990-7993、及び特開平7-306317号公報に記載のトリフェニレン構造、並びに特開2007-2220号公報、及び特開2010-244038号公報に記載の3置換ベンゼン構造等が挙げられる。
硬化剤が円盤状化合物である場合の好適態様については、主剤が円盤状化合物である場合の好適態様とともに、後段にて説明する。
【0028】
〔主剤〕
本発明の組成物は主剤を含む。上記主剤は、上述した硬化剤中の活性水素含有官能基と反応する反応性基を含み、且つ、単独の状態において150℃以下の温度で液晶性を示す。
【0029】
上記反応性基とは、重合性基及び架橋性基を意図し、なかでも重合性基が好ましい。
重合性基の種類は特に制限されず、公知の重合性基が挙げられ、反応性及びそれを起因として熱伝導性材料の熱伝導性がより優れる点で、付加重合反応が可能な官能基が好ましく、重合性エチレン性不飽和基又は環重合性基がより好ましく、環重合性基が更に好ましい。
重合性基としては、具体的には、熱伝導材料の熱伝導性がより優れる点で、(メタ)アクリロイル基、ビニル基、オキシラニル基、又はオキセタニル基が好ましく、オキシラニル基、又はオキセタニル基がより好ましい。なお、上記各基中の水素原子は、ハロゲン原子等他の置換基で置換されていてもよい。
また、架橋性基としては、例えば、無水カルボン酸基、ハロゲン原子、イソシアネート基、シアノ基、アジリジニル基、チオイソシアネート基、及びアルデヒド基等が挙げられる。
【0030】
上記主剤は、単独の状態で少なくとも150℃以下の温度領域にて液晶性を示せばよいが、熱伝導材料の熱伝導性がより優れる点で、結晶相-液晶相の相転移温度が150℃未満であり、且つ、等方相-液晶相の相転移温度が250℃以下であることがより好ましく、結晶相-液晶相の相転移温度が100℃以下であり、且つ、等方相-液晶相の相転移温度が250℃以下であることがより好ましい。
また、上記主剤が150℃以下の温度領域にて示す液晶相は、ネマチック液晶相であることが好ましい。
【0031】
上記主剤は、1種のみを使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
組成物中における上記主剤の含有量は、組成物の全固形分に対して、10~90質量%が好ましく、10~80質量%がより好ましく、15~70質量%が更に好ましい。
【0032】
主剤としては、棒状化合物又は円盤状化合物が好ましく、熱伝導材料の熱伝導性がより優れる点で、円盤状化合物がより好ましい。
主剤として円盤状化合物を用いた場合に熱伝導材料の熱伝導性がより優れる理由としては、棒状化合物が直線的(一次元的)にしか熱伝導できないのに対して、円盤状化合物は法線方向に平面的(二次元的)に熱伝導できる点にあると考えられる。つまり、主剤として円盤状化合物を用いた場合、熱伝導パスがより多く形成され、この結果として熱伝導率が向上すると考えられる。
また、円盤状化合物を用いることにより、組成物の硬化物の耐熱性が向上する。
【0033】
また、硬化剤と主剤とは、相溶性がより優れることによって熱伝導材料の熱伝導性がより優れる点で、いずれも棒状化合物であるか、又はいずれも円盤状化合物であることが好ましく、いずれも円盤状化合物であることがより好ましい。なかでも、硬化剤及び主剤のいずれもが、後述する式(CR4)で表される部分構造を有する円盤状化合物であるか、又は後述する式(CR16)で表される部分構造を有する円盤状化合物が好ましい。
【0034】
<棒状化合物>
主剤が棒状化合物である場合、棒状構造としては、アゾメチン類、アゾキシ類、シアノビフェニル類、シアノフェニルエステル類、安息香酸エステル類、シクロヘキサンカルボン酸フェニルエステル類、シアノフェニルシクロヘキサン類、シアノ置換フェニルピリミジン類、アルコキシ置換フェニルピリミジン類、フェニルジオキサン類、トラン類、及びアルケニルシクロヘキシルベンゾニトリル類等が挙げられる。以上のような低分子液晶化合物だけではなく、高分子液晶化合物も使用できる。上記高分子液晶化合物は、低分子の反応性基を有する棒状化合物が重合した高分子化合物である。
また、主剤は、反応性基を2個以上含むことが好ましい。
主剤が棒状化合物である場合の好適態様については、後段にて説明する。
【0035】
<円盤状化合物>
円盤状化合物は、少なくとも部分的に円盤状構造を有する。
円盤状構造は、少なくとも、脂環又は芳香族環を有する。特に、円盤状構造が、芳香族環を有する場合、円盤状化合物は、分子間のπ-π相互作用によるスタッキング構造の形成により柱状構造を形成しうる。
円盤状構造として、具体的には、Angew.Chem.Int. Ed. 2012, 51, 7990-7993又は特開平7-306317号公報に記載のトリフェニレン構造、並びに、特開2007-2220号公報及び特開2010-244038号公報に記載の3置換ベンゼン構造等が挙げられる。
【0036】
円盤状化合物は、反応性基を3個以上含むことが好ましい。3個以上の反応性基を含む円盤状化合物を含む組成物の硬化物はガラス転移温度が高く、耐熱性が高い傾向がある。棒状化合物と比較すると、円盤状化合物は3個以上の反応性基を含んでいてもメソゲン部分の特性に影響を受けにくいためである。円盤状化合物が含む反応性基の数は、8個以下が好ましく、6個以下より好ましい。
【0037】
円盤状化合物の具体例としては、C. Destrade et al., Mol. Crysr. Liq. Cryst., vol. 71, page 111 (1981) ;日本化学会編、季刊化学総説、No.22、液晶の化学、第5章、第10章第2節(1994);B. Kohne et al., Angew. Chem. Soc. Chem. Comm., page 1794 (1985);J. Zhang et al., J. Am. Chem. Soc., vol. 116, page 2655 (1994)、及び特許第4592225号に記載されている化合物が挙げられる。円盤状化合物としては、Angew.Chem.Int. Ed. 2012, 51, 7990-7993、及び特開平7-306317号公報に記載のトリフェニレン構造、並びに特開2007-2220号公報、及び特開2010-244038号公報に記載の3置換ベンゼン構造等が挙げられる。
主剤が円盤状化合物である場合の好適態様については、後段にて説明する。
【0038】
[硬化剤及び主剤の構造]
以下に、硬化剤が棒状化合物である場合及び主剤が棒状化合物である場合の好適態様、並びに、硬化剤が円盤状化合物である場合及び主剤が円盤状化合物である場合の好適態様について詳述する。
【0039】
〔硬化剤が棒状化合物である場合、及び主剤が棒状化合物である場合の好適態様〕
硬化剤が棒状化合物である場合、及び主剤が棒状化合物である場合、棒状化合物としては、下記式(XXI)で表される棒状化合物が好ましい。
【0040】
式(XXI):Q1-L111-A111-L113-M-L114-A112-L112-Q2
【0041】
式中、L111、L112、L113及びL114は、各々独立に、単結合又は2価の連結基を表す。A111及びA112は、各々独立に、炭素数1~20の2価の連結基(スペーサ基)を表す。Mはメソゲン基を表す。また、Q1及びQ2は、式(XXI)が硬化剤である場合、各々独立に、活性水素含有官能基を表し、式(XXI)が主剤である場合、各々独立に、反応性基を表す。
なお、活性水素含有官能基の定義、及び反応性基の定義は、各々、上述の通りである。
【0042】
111、L112、L113及びL114で表される2価の連結基としては、-O-、-S-、-C(=O)-、-NR112-、-C(=O)-O-、-O-C(=O)-O-、-C(=O)-NR112-、-NR112-C(=O)-、-O-C(=O)-、-CH2-O-、-O-CH2-、-O-C(=O)-NR112-、-NR112-C(=O)-O-、及び-NR112-C(=O)-NR112-からなる群より選ばれる2価の連結基であることが好ましい。上記R112は炭素数1~7のアルキル基又は水素原子である。
【0043】
111及びA112は、炭素数1~20の2価の連結基を表す。なかでも、炭素数1~12のアルキレン基、アルケニレン基、又はアルキニレン基が好ましく、炭素数1~12のアルキレン基がより好ましい。
2価の連結基は直鎖状であることが好ましく、隣接していない酸素原子又は硫黄原子を含んでいてもよい。また、上記2価の連結基は置換基を有していてもよく、置換基としては、例えば、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、及び臭素原子)、シアノ基、メチル基、及びエチル基等が挙げられる。
【0044】
Mで表されるメソゲン基としては、公知のメソゲン基が挙げられる。なかでも、下記式(XXII)で表される基が好ましい。
式(XXII):-(W1-L115n-W2
式中、W1及びW2は、それぞれ独立して、2価の環状アルキレン基、2価の環状アルケニレン基、アリーレン基、又は2価のヘテロ環基を表す。L115は、単結合又は2価の連結基を表す。nは、1、2又は3を表す。
【0045】
1及びW2としては、例えば、1,4-シクロヘキセンジイル、1,4-シクロヘキサンジイル、1,4-フェニレン、ピリミジン-2,5-ジイル、ピリジン-2,5-ジイル、1,3,4-チアジアゾール-2,5-ジイル、1,3,4-オキサジアゾール-2,5-ジイル、ナフタレン-2,6-ジイル、ナフタレン-1,5-ジイル、チオフェン-2,5-ジイル、及びピリダジン-3,6-ジイル等が挙げられる。1,4-シクロヘキサンジイルの場合、トランス体及びシス体の構造異性体のどちらの異性体であってもよく、任意の割合の混合物でもよい。なかでも、トランス体であることが好ましい。
1及びW2は、それぞれ置換基を有していてもよい。置換基としては、例えば、上述した置換基群Yで例示された基が挙げられ、より具体的には、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子、及びヨウ素原子)、シアノ基、炭素数1~10のアルキル基(例えば、メチル基、エチル基、及びプロピル基等)、炭素数1~10のアルコキシ基(例えば、メトキシ基、及びエトキシ基等)、炭素数1~10のアシル基(例えば、ホルミル基、及びアセチル基等)、炭素数1~10のアルコキシカルボニル基(例えば、メトキシカルボニル基、及びエトキシカルボニル基等)、炭素数1~10のアシルオキシ基(例えば、アセチルオキシ基、及びプロピオニルオキシ基等)、ニトロ基、トリフルオロメチル基、及びジフルオロメチル基等が挙げられる。
【0046】
115で表される2価の連結基としては、上述したL111~L114で表される2価の連結基の具体例が挙げられ、例えば、-C(=O)-O-、-O-C(=O)-、-CH2-O-、及び-O-CH2-等が挙げられる。
【0047】
上記式(XXII)で表されるメソゲン基の基本骨格で好ましいものを、以下に例示する。これらに上記置換基が置換していてもよい。
【0048】
【化2】
【0049】
【化3】



【0050】
なお、式(XXI)で表される化合物は、特表平11-513019号公報(WO97/00600)に記載の方法を参照して合成できる。
棒状化合物は、特開平11-323162号公報及び特許4118691号に記載のメソゲン基を有するモノマーであってもよい。
【0051】
〔硬化剤が円盤状化合物である場合、及び主剤が円盤状化合物である場合の好適態様〕
硬化剤が円盤状化合物である場合、及び主剤が円盤状化合物である場合、円盤状化合物としては、熱伝導材料の熱伝導性がより優れる点で、以下に示す式(CR1)~(CR16)で表される部分構造を含む円盤状化合物であることが好ましく、式(CR4)又は式(CR16)で表される部分構造を含む円盤状化合物であることがより好ましい。
なお、式(CR1)~(CR16)中、*は結合位置を示す。
【0052】
【化4】
【0053】
【化5】
【0054】
【化6】
【0055】
【化7】
【0056】
【化8】
【0057】
式(CR16)中、複数存在するX211Xは、各々独立に、単結合、-O-、-C(=O)-、-NH-、-OC(=O)-、-OC(=O)O-、-OC(=O)NH-、-OC(=O)S-、-C(=O)O-、-C(=O)NH-、-C(=O)S-、-NHC(=O)-、-NHC(=O)O-、-NHC(=O)NH-、-NHC(=O)S-、-S-、-SC(=O)-、-SC(=O)O-、-SC(=O)NH-、又は-SC(=O)S-を表す。
複数存在するZ21Xは、各々独立に、5員環若しくは6員環の芳香族環基、又は5員環若しくは6員環の非芳香族環基を表す。
2X、A3X、及びA4Xは、各々独立に、-CH=又は-N=を表し、A2X、A3X、及びA4Xが全て-CH=を表すことが好ましい。
複数存在するn21Xは、各々独立に、0~3の整数を表し、1~3の整数を表すことが好ましい。
【0058】
なかでも、円盤状化合物としては、熱伝導材料の熱伝導性がより優れる点で、以下に示す式(D1)~(D16)のいずれかで表される化合物がより好ましい。なお、式(D1)~(D16)は、各々、上述した式(CR1)~式(CR16)を部分構造として含む円盤状化合物に該当する。また、以下の式中、「-LQ」は「-L-Q」を表し、「QL-」は「Q-L-」を表す。
以下に、まず、式(D1)~(D15)について説明する。
【0059】
【化9】
【0060】
【化10】
【0061】
【化11】
【0062】
【化12】
【0063】
式(D1)~(D15)中、Lは2価の連結基を表す。
熱伝導材料の熱伝導性がより優れる点で、Lは、各々独立に、アルキレン基、アルケニレン基、アリーレン基、-C(=O)-、-NH-、-O-、-S-、及びこれらの組み合わせからなる群より選ばれる基であることが好ましく、アルキレン基、アルケニレン基、アリーレン基、-C(=O)-、-NH-、-O-、及び-S-からなる群より選ばれる基を2個以上組み合わせた基であることがより好ましい。なお、Lとしては、-C(=O)-O-及び-O-C(=O)-の少なくとも1方を含む2価の連結基であることがより好ましい。
上記アルキレン基の炭素数としては、1~12が好ましい。上記アルケニレン基の炭素数としては、2~12が好ましい。上記アリーレン基の炭素数としては、10以下が好ましい。なお、上記アルキレン基、上記アルケニレン基、及び上記アリーレン基は、更に置換基を有していてもよい。上記置換基としては特に制限されないが、例えば、アルキル基(炭素数1~6が好ましい)、ハロゲン原子、シアノ、アルコキシ基(炭素数1~6が好ましい)、及びアシルオキシ基(炭素数1~6が好ましい)等が挙げられる。
【0064】
Lの例を以下に示す。以下の例では、左側の結合手が式(D1)~(D15)のいずれかで表される化合物の中心核(以下、単に「中心環」ともいう)に結合し、右側の結合手がQに結合する。
ALはアルキレン基又はアルケニレン基を意味し、ARはアリーレン基を意味する。
【0065】
L101:-AL-C(=O)-O-AL-
L102:-AL-C(=O)-O-AL-O-
L103:-AL-C(=O)-O-AL-O-AL-
L104:-C(=O)-AR-O-AL-
L105:-C(=O)-AR-O-AL-O-
L106:-NH-AL-O-
L107:-AL-C(=O)-O-AL-AR-
L108:-AL-C(=O)-O-AR-
L109:-O-AL-NH-AR-
【0066】
L110:-O-AL-O-C(=O)-NH-AL-
L111:-O-AL-S-AL-
L112:-O-C(=O)-AL-AR-O-AL-
L113:-O-C(=O)-AL-AR-O-AL-O-
L114:-O-C(=O)-AR-O-AL-C(=O)-
L115:-O-C(=O)-AR-O-AL-
L116:-O-C(=O)-AR-O-AL-O-
L117:-O-C(=O)-AR-O-AL-O-AL-
L118:-O-C(=O)-AR-O-AL-O-AL-O-
L119:-O-C(=O)-AR-O-AL-O-AL-O-AL-
L120:-O-C(=O)-AR-O-AL-O-AL-O-AL-O-
L121:-S-AL-
L122:-S-AL-O-
L123:-S-AL-S-AL-
L124:-S-AR-AL-
L125:-O-C(=O)-AL-
L126:-O-C(=O)-AL-O-
L127:-O-C(=O)-AR-O-AL-
L128:-O-C(=O)-AR-O-AL-O-C(=O)-AL-S-AR-
L129:-O-C(=O)-AL-S-AR-
L130:-O-C(=O)-AR-O-AL-O-C(=O)-AL-S-AL-
L131:-O-C(=O)-AL-S-AR-
L132:-O-AL-S-AR-
L133:-AL-C(=O)-O-AL-O-C(=O)-AL-S-AR-
L134:-AL-C(=O)-O-AL-O-C(=O)-AL-S-AL-
L135:-AL-C(=O)-O-AL-O-AR-
L136:-O-AL-O-C(=O)-AR-
L137:-O-C(=O)-AL-O-AR-
L138:-O-C(=O)-AR-O-AL-O-AR-
【0067】
式(D1)~(D15)中、Qは、各々独立に、水素原子又は置換基を表す。
式(D1)~(D15)が硬化剤である場合、上記置換基としては、活性水素含有官能基、及び上述した置換基群Yで例示される基等が挙げられ、なかでも、活性水素含有官能基が好ましい。ただし、式(D1)~(D15)中、1個以上のQは、活性水素含有官能基であり、なかでも、熱伝導材料の熱伝導性がより優れる点で、3個以上のQが活性水素含有官能基であることが好ましく、全てのQが活性水素含有官能基であることがより好ましい。なお、活性水素含有官能基の定義は、上述の通りである。
式(D1)~(D15)が主剤である場合、上記置換基としては、反応性基、及び上述した置換基群Yで例示される基等が挙げられ、なかでも、反応性基が好ましい。ただし、式(D1)~(D15)中、1個以上のQは反応性基であり、なかでも、熱伝導材料の熱伝導性がより優れる点で、3個以上のQが反応性基であることが好ましく、全てのQが反応性基であることがより好ましい。なお、反応性基の定義は、上述の通りである。
【0068】
式(D1)~(D15)で表される化合物のなかでも、熱伝導材料の熱伝導性がより優れる点で、式(D4)で表される化合物が好ましい。
式(D4)で表される化合物としては、熱伝導材料の熱伝導性がより優れる点で、式(XI)で表される化合物が好ましい。
【0069】
【化13】
【0070】
式(XI)中、R11、R12、R13、R14、R15、及びR16は、各々独立に、*-X11-L11-P11、又は*-X12-L12-Y12を表す。
なお、*はトリフェニレン環との結合位置を表す。
11、R12、R13、R14、R15、及びR16のうち、2個以上は、*-X11-L11-P11であり、3個以上が*-X11-L11-P11であることが好ましい。
なかでも、熱伝導材料の熱伝導性がより優れる点で、R11及びR12のいずれか1個以上、R13及びR14のいずれか1個以上、並びに、R15及びR16のいずれか1個以上が、*-X11-L11-P11であることが好ましく、R11、R12、R13、R14、R15、及びR16が、全て、*-X11-L11-P11であることがより好ましい。加えて、R11、R12、R13、R14、R15、及びR16が、全て同一であることが更に好ましい。
【0071】
11は、各々独立に、単結合、-O-、-C(=O)-、-NH-、-OC(=O)-、-OC(=O)O-、-OC(=O)NH-、-OC(=O)S-、-C(=O)O-、-C(=O)NH-、-C(=O)S-、-NHC(=O)-、-NHC(=O)O-、-NHC(=O)NH-、-NHC(=O)S-、-S-、-SC(=O)-、-SC(=O)O-、-SC(=O)NH-、又は-SC(=O)S-を表す。
なかでも、X11は、各々独立に、-O-、-OC(=O)-、-OC(=O)O-、-OC(=O)NH-、-C(=O)O-、-C(=O)NH-、-NHC(=O)-、又は-NHC(=O)O-が好ましく、-O-、-OC(=O)-、-C(=O)O-、-OC(=O)NH-、又は-C(=O)NH-がより好ましく、-C(=O)O-が更に好ましい。
【0072】
11は、各々独立に、単結合又は2価の連結基を表す。
2価の連結基の例としては、-O-、-OC(=O)-、-C(=O)O-、-S-、-NH-、アルキレン基(炭素数は、1~10が好ましく、1~8がより好ましく、1~7が更に好ましい。)、アリーレン基(炭素数は、6~20が好ましく、6~14がより好ましく、6~10が更に好ましい。)、及びこれらの組み合わせからなる基等が挙げられる。
上記アルキレン基としては、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基、ヘキシレン基、及びヘプチレン基等が挙げられる。
上記アリーレン基としては、1,4-フェニレン基、1,3-フェニレン基、1,4-ナフチレン基、1,5-ナフチレン基、及びアントラセニレン基等が挙げられ、1,4-フェニレン基が好ましい。
【0073】
上記アルキレン基及び上記アリーレン基はそれぞれ置換基を有していてもよい。置換基の数は、1~3が好ましく、1がより好ましい。置換基の置換位置は特に制限されない。置換基としては、ハロゲン原子又は炭素数1~3のアルキル基が好ましく、メチル基がより好ましい。
上記アルキレン基及び上記アリーレン基は無置換であることも好ましい。なかでも、アルキレン基は無置換であることが好ましい。
【0074】
-X11-L11-は2価の基を表す。
-X11-L11-の例としては、上述のLの例であるL101~L138が挙げられる。
【0075】
式(XI)が硬化剤である場合、P11は、活性水素含有官能基を表す。なお、活性水素含有官能基の定義は上述のとおりである。なお、P11が水酸基である場合、L11はアリーレン基を含み、このアリーレン基はP11と結合していることが好ましい。
式(XI)が主剤である場合、P11は、反応性基を表す。なお、反応性基の定義は上述のとおりである。
【0076】
12は、X11と同様であり、好適な条件も同様である。
12は、L11と同様であり、好適な条件も同様である。
-X12-L12-は2価の基を表す。
-X12-L12-の例として、上述のLの例であるL101~L138が挙げられる。
【0077】
12は、水素原子、炭素数1~20の直鎖状、分岐鎖状、若しくは環状のアルキル基、又は、炭素数1~20の直鎖状、分岐鎖状、若しくは環状のアルキル基において1個又は2個以上のメチレン基が-O-、-S-、-NH-、-N(CH3)-、-C(=O)-、-OC(=O)-、又は-C(=O)O-で置換された基を表す。
【0078】
12が、炭素数1~20の直鎖状、分岐鎖状、若しくは環状のアルキル基、又は、炭素数1~20の直鎖状、分岐鎖状、若しくは環状のアルキル基において1個又は2個以上のメチレン基が-O-、-S-、-NH-、-N(CH3)-、-C(=O)-、-OC(=O)-、又は-C(=O)O-で置換された基の場合、Y12に含まれる水素原子の1個以上がハロゲン原子で置換されていてもよい。
12は、水素原子、炭素数1~20の直鎖状、分岐鎖状、若しくは環状のアルキル基、又は、炭素数1~20の直鎖状、分岐鎖状、若しくは環状のアルキル基において1個又は2個以上のメチレン基が-O-で置換された基が好ましく、炭素数1~12の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基、炭素数2~20の-(OC24m1-Hで表される基(但し、m1は、1以上の整数を表す。)、又は、炭素数3~20の-(OC36m2-Hで表される基(但し、m2は、1以上の整数を表す。)がより好ましい。
【0079】
式(XI)で表される化合物の具体例については、特開平7-281028号公報の段落番号0028~0036、特開平7-306317号公報、特開2005-156822号公報の段落番号0016~0018、特開2006-301614号公報の段落番号0067~0072、及び液晶便覧(平成12年丸善株式会社発刊)330頁~333頁に記載の化合物を参照できる。
【0080】
式(XI)で表される化合物は、特開平7-306317号公報、特開平7-281028号公報、特開2005-156822号公報、及び特開2006-301614号公報に記載の方法に準じて合成できる。
【0081】
次に、式(D16)について説明する。
【0082】
【化14】
【0083】
式(D16)中、A2X、A3X、及びA4Xは、各々独立に、-CH=又は-N=を表す。なかでも、A2X、A3X、及びA4Xは、いずれも-CH=が好ましい。言い換えると、円盤状化合物の中心環はベンゼン環であることも好ましい。
17X、R18X、及びR19Xは、各々独立に、*-(X211X-Z21Xn21X-L21X-Qを表す。*は、中心環との結合位置を表す。
211Xは、各々独立に、単結合、-O-、-C(=O)-、-NH-、-OC(=O)-、-OC(=O)O-、-OC(=O)NH-、-OC(=O)S-、-C(=O)O-、-C(=O)NH-、-C(=O)S-、-NHC(=O)-、-NHC(=O)O-、-NHC(=O)NH-、-NHC(=O)S-、-S-、-SC(=O)-、-SC(=O)O-、-SC(=O)NH-、又は-SC(=O)S-を表す。
21Xは、各々独立に、5員環若しくは6員環の芳香族環基、又は5員環若しくは6員環の非芳香族環基を表す。
21Xは、単結合又は2価の連結基を表す。
Qは、式(D1)~(D15)におけるQと同義であり、好適態様も同じである。
n21Xは、0~3の整数を表す。n21Xが2以上の場合、複数存在する(X211X-Z21X)は、同一でも異なっていてもよい。
【0084】
式(D16)で表される化合物としては、式(XII)で表される化合物が好ましい。
【0085】
【化15】
【0086】
式(XII)中、A2、A3、及びA4は、各々独立に、-CH=又は-N=を表す。なかでも、A2、A3、及びA4は、いずれも-CH=が好ましい。言い換えると、円盤状化合物の中心環はベンゼン環であることも好ましい。
【0087】
17、R18、及びR19は、各々独立に、*-(X211-Z21n21-L21-P21、又は*-(X221-Z22n22-Y22を表す。*は中心環との結合位置を表す。
17、R18、及びR19のうち2個以上は、*-(X211-Z21n21-L21-P21である。熱伝導材料の熱伝導性がより優れる点で、R17、R18、及びR19は全てが、*-(X211-Z21n21-L21-P21であることが好ましい。加えて、R17、R18、及びR19が、全て同一であることが好ましい。
【0088】
211及びX221は、各々独立に、単結合、-O-、-C(=O)-、-NH-、-OC(=O)-、-OC(=O)O-、-OC(=O)NH-、-OC(=O)S-、-C(=O)O-、-C(=O)NH-、-C(=O)S-、-NHC(=O)-、-NHC(=O)O-、-NHC(=O)NH-、-NHC(=O)S-、-S-、-SC(=O)-、-SC(=O)O-、-SC(=O)NH-、又は-SC(=O)S-を表す。
なかでも、X211及びX221としては、各々独立に、単結合、-O-、-C(=O)O-、又は-OC(=O)-が好ましい。
【0089】
21及びZ22は、各々独立に、5員環若しくは6員環の芳香族環基、又は5員環若しくは6員環の非芳香族環基を表し、例えば、1,4-フェニレン基、1,3-フェニレン基、及び芳香族複素環基等が挙げられる。
【0090】
上記芳香族環基及び上記非芳香族環基は、置換基を有していてもよい。置換基の数は1又は2が好ましく、1がより好ましい。置換基の置換位置は、特に制限されない。置換基としては、ハロゲン原子又はメチル基が好ましい。上記芳香族環基及び上記非芳香族環基は無置換であることも好ましい。
【0091】
芳香族複素環基としては、例えば、以下の芳香族複素環基等が挙げられる。
【0092】
【化16】
【0093】
式中、*はX211又はX221に結合する部位を表す。**はL21又はY22に結合する部位を表す。A41及びA42は、各々独立に、メチン基又は窒素原子を表す。X4は、酸素原子、硫黄原子、メチレン基、又はイミノ基を表す。
41及びA42は、少なくとも一方が窒素原子であることが好ましく、両方が窒素原子であることがより好ましい。また、X4は、酸素原子であることが好ましい。
【0094】
後述するn21及びn22が2以上の場合、複数存在する(X211-Z21)及び(X221-Z22)は、それぞれ同一でも異なっていてもよい。
【0095】
21は、各々独立に、単結合又は2価の連結基を表し、上述した式(XI)におけるL11と同義である。L21としては、-O-、-OC(=O)-、-C(=O)O-、-S-、-NH-、アルキレン基(炭素数は、1~10が好ましく、1~8がより好ましく、1~7が更に好ましい。)、アリーレン基(炭素数は、6~20が好ましく、6~14がより好ましく、6~10が更に好ましい。)、又はこれらの組み合わせからなる基が好ましい。
【0096】
後述するn21が1以上の場合において、-L21-の例としては、上述の式(D1)~(D15)におけるLの例であるL101~L138が同様に挙げられる。
【0097】
式(XII)が硬化剤である場合、P21は、活性水素含有官能基を表す。なお、活性水素含有官能基の定義は上述のとおりである。なお、P21が水酸基である場合、L21はアリーレン基を含み、このアリーレン基はP21と結合していることが好ましい。
式(XII)が主剤である場合、P21は、反応性基を表す。なお、反応性基の定義は上述のとおりである。
【0098】
22は、水素原子、炭素数1~20の直鎖状、分岐鎖状、若しくは環状のアルキル基、又は、炭素数1~20の直鎖状、分岐鎖状、若しくは環状のアルキル基において1個又は2個以上のメチレン基が-O-、-S-、-NH-、-N(CH3)-、-C(=O)-、-OC(=O)-、又は-C(=O)O-で置換された基を表す。Y22の好適態様としては、式(XI)におけるY12の好適態様と同じである。
【0099】
n21及びn22は各々独立に、0~3の整数を表し、熱伝導性がより優れる観点から、1~3の整数が好ましく、2~3がより好ましい。
【0100】
式(XII)で表される化合物の好ましい例としては、以下の化合物が挙げられる。
なお、下記構造式中、Rは、-L21-P21を表す。
【0101】
【化17】
【0102】
式(XII)で表される化合物の詳細、及び具体例については、特開2010-244038号公報の段落0013~0077の記載を参照でき、その内容は本明細書に組み込まれる。
【0103】
式(XII)で表される化合物は、特開2010-244038号公報、特開2006-76992号公報、及び特開2007-2220号公報に記載の方法に準じて合成できる。
【0104】
電子密度を減らすことでスタッキングを強くし、カラム状集合体を形成しやすくなるという観点から、円盤状化合物は水素結合性官能基を有する化合物であることが好ましい。水素結合性官能基としては、-OC(=O)NH-、-C(=O)NH-、-NHC(=O)-、-NHC(=O)O-、-NHC(=O)NH-、-NHC(=O)S-、又は-SC(=O)NH-等が挙げられる。
【0105】
以下に、硬化剤の具体例を示すが、硬化剤としてはこれに制限されない。
(硬化剤)
【0106】
【化18】
【0107】
【化19】
【0108】
【化20】
【0109】
以下に、主剤の具体例を示すが、主剤としてはこれに制限されない。
(主剤)
【0110】
【化21】
【0111】
【化22】
【0112】
【化23】
【0113】
〔その他の成分〕
上記組成物は、上述した硬化剤及び主剤以外の成分を含んでいてもよい。
以下に、本発明の組成物が含み得る他の成分について詳述する。
【0114】
<無機物>
上記組成物は、得られる熱伝導材料の熱伝導性がより優れる点で、無機物を含むことが好ましい。
【0115】
無機物としては、従来から熱伝導材料の無機フィラーに用いられているいずれの無機物を用いてもよい。無機物としては、無機酸化物、又は無機窒化物が好ましい。無機物は、無機酸窒化物であってもよい。無機物の形状は特に制限されず、粒子状であってもよく、フィルム状であってもよく、又は板状であってもよい。粒子状無機物の形状は、米粒状、球形状、立方体状、紡錘形状、鱗片状、凝集状、及び不定形状が挙げられる。
【0116】
無機酸化物としては、例えば、酸化ジルコニウム(ZrO2)、酸化チタン(TiO2)、酸化ケイ素(SiO2)、酸化アルミニウム(Al23)、酸化鉄(Fe23、FeO、Fe34)、酸化銅(CuO、Cu2O)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化イットリウム(Y23)、酸化ニオブ(Nb25)、酸化モリブデン(MoO3)、酸化インジウム(In23、In2O)、酸化スズ(SnO2)、酸化タンタル(Ta25)、酸化タングステン(WO3、W25)、酸化鉛(PbO、PbO2)、酸化ビスマス(Bi23)、酸化セリウム(CeO2、Ce23)、酸化アンチモン(Sb23、Sb25)、酸化ゲルマニウム(GeO2、GeO)、酸化ランタン(La23)、及び酸化ルテニウム(RuO2)等が挙げられる。
上記の無機酸化物は、1種のみを使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
無機酸化物は、酸化チタン、酸化アルミニウム、又は酸化亜鉛が好ましく、酸化アルミニウムがより好ましい。
無機酸化物は、非酸化物として用意された金属が、環境下等で酸化したことにより生じている酸化物であってもよい。
【0117】
無機窒化物としては、例えば、窒化ホウ素(BN)、窒化炭素(C34)、窒化ケイ素(Si34)、窒化ガリウム(GaN)、窒化インジウム(InN)、窒化アルミニウム(AlN)、窒化クロム(Cr2N)、窒化銅(Cu3N)、窒化鉄(Fe4N)、窒化鉄(Fe3N)、窒化ランタン(LaN)、窒化リチウム(Li3N)、窒化マグネシウム(Mg32)、窒化モリブデン(Mo2N)、窒化ニオブ(NbN)、窒化タンタル(TaN)、窒化チタン(TiN)、窒化タングステン(WN)、窒化タングステン(WN2)、窒化イットリウム(YN)、及び窒化ジルコニウム(ZrN)等が挙げられる。
上記の無機窒化物は、1種のみを使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
無機窒化物は、アルミニウム原子、ホウ素原子、又は珪素原子を含むことが好ましく、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、又は窒化珪素であることがより好ましく、窒化アルミニウム、又は窒化ホウ素であることが更に好ましく、窒化ホウ素であることが特に好ましい。
【0118】
無機物の大きさは特に制限されないが、無機物の分散性がより優れる点で、無機物の平均粒径は500μm以下が好ましく、300μm以下がより好ましく、200μm以下が更に好ましい。下限は特に制限されないが、取り扱い性の点で、10nm以上が好ましく、100nm以上がより好ましい。
無機物の平均粒径としては、市販品を用いる場合、カタログ値を採用する。カタログ値が無い場合、上記平均粒径の測定方法としては、電子顕微鏡を用いて、100個の無機物を無作為に選択して、それぞれの無機物の粒径(長径)を測定し、それらを算術平均して求める。
【0119】
無機物は、1種のみを使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
組成物が無機物を含む場合、組成物中における無機物の含有量は、組成物の全固形分に対して、1~90質量%が好ましく、5~90質量%がより好ましく、10~90質量%が更に好ましい。
組成物が無機物を含む場合、熱伝導材料の熱伝導性がより優れる点で、組成物は、平均粒径が20μm以上(好ましくは、50μm以上)の無機粒子を少なくとも含むことがより好ましい。
また、組成物が無機物を含む場合、熱伝導材料の熱伝導性がより優れる点で、組成物は、窒化ホウ素を少なくとも含むことがより好ましい。
【0120】
<硬化促進剤>
組成物は、更に、硬化促進剤を含んでいてもよい。
硬化促進剤の種類は制限されず、例えば、トリフェニルホスフィン、2-エチル-4-メチルイミダゾール、三フッ化ホウ素アミン錯体、1-ベンジル-2-メチルイミダゾール、及び特開2012-67225号公報の段落0052に記載のものが挙げられる。
組成物が硬化促進剤を含む場合、組成物中における硬化促進剤の含有量は特に制限されないが、組成物中の全固形分に対して、0.1~20質量%が好ましい。
【0121】
<重合開始剤>
組成物は、更に、重合開始剤を含んでいてもよい。
特に、主剤が反応性基として(メタ)アクリロイル基を有する場合には、組成物は、特開2010-125782号公報の段落0062及び特開2015-052710号公報の段落0054に記載の重合開始剤を含むことが好ましい。
組成物が重合開始剤を含む場合、組成物中における重合開始剤の含有量は特に制限されないが、組成物中の全固形分に対して、0.1~50質量%が好ましい。
【0122】
<溶媒>
組成物は、更に、溶媒を含んでいてもよい。
溶媒の種類は特に制限されず、有機溶媒であることが好ましい。有機溶媒としては、例えば、酢酸エチル、メチルエチルケトン、ジクロロメタン、及びテトラヒドロフラン等が挙げられる。
【0123】
〔組成物の製造方法〕
組成物の製造方法は特に制限されず、公知の方法を採用でき、例えば、上述した各種成分を公知の方法で混合することにより製造できる。混合する際には、各種成分を一括で混合しても、順次混合してもよい。
なお、本発明の組成物は、ネマチック液晶性を示すことが好ましい。なお、主剤及び硬化剤が各々単独でネマチック液晶性を示す場合、通常、両者を含む組成物も同様にネマチック液晶性を示す。なかでも、本発明の組成物は、結晶相-液晶相の相転移温度が130℃以下であることが好ましく、結晶相-液晶相の相転移温度が130℃以下であり、且つ、等方相-液晶相の相転移温度が250℃以下であることがより好ましい。
【0124】
[熱伝導材料の製造方法(組成物の硬化方法)]
以下に、本発明の熱伝導材料の製造方法について説明する。
本発明の熱伝導材料の製造方法としては、少なくとも下記工程1~工程3を含む。
【0125】
工程1:上記組成物を用いて組成物層を形成する工程
工程2:上記組成物層中の上記硬化剤及び上記主剤がいずれも液晶性を示し、且つ、150℃以下の温度に上記組成物層を加熱し、上記硬化剤及び上記主剤を配向させる工程
工程3:上記組成物層を硬化させる工程。
以下に、工程1~工程3について詳述する。
【0126】
<工程1>
工程1は、本発明の組成物を用いて組成物層を形成する工程である。具体的には、上述した組成物を基板上に塗布し、組成物層を形成する工程である。
【0127】
(基板)
基板は、後述する組成物の層を支持する板である。なお、基板は、通常、組成物層の硬化後に、組成物層から剥離される。
基板を構成する材料は特に制限されず、例えば、プラスチックフィルム、金属フィルム、及びガラス板等が挙げられる。
上記プラスチックフィルムの材料としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)等のポリエステル、ポリカーボネート、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン、ポリアミド、ポリオレフィン、セルロース誘導体、及びシリコーン等が挙げられる。
上記金属フィルムとしては、例えば、銅フィルムが挙げられる。
【0128】
基板の厚さは特に制限されないが、薄型化、及び取り扱い性の点から、5~2000μmが好ましく、10~1000μmがより好ましい。
上記厚さは平均厚さを意図し、基板の任意の5点の厚さを測定し、それらを算術平均したものである。この厚さの測定方法に関しては、後述する反射層の厚さも同様である。
【0129】
(工程1の手順)
工程1では、まず、上述した組成物を基板上に塗布する。塗布方法は特に制限されず、例えば、ワイヤーバーコーティング法、押し出しコーティング法、ダイレクトグラビアコーティング法、リバースグラビアコーティング法、及びダイコーティング法等が挙げられる。
なお、必要に応じて、塗布後に、基板上に塗布された組成物を乾燥する処理を実施してもよい。乾燥処理を実施することにより、塗布された組成物から溶媒を除去できる。
【0130】
基板上に塗布された組成物(組成物層)の膜厚は特に制限されないが、5~2000μmが好ましく、10~1000μmがより好ましく、20~1000μmが更に好ましい。
【0131】
<工程2>
工程2は、工程1を経て得られた組成物層に含まれる液晶化合物(主剤及び硬化剤)を配向させて液晶相の状態とする工程である。工程2を経ることで、ネマチック液晶相を固定化してなる熱伝導材料を得ることができる。
主剤及び硬化剤を配向させる方法としては、組成物層を加熱する方法が挙げられる。具体的には、基板上に塗布された組成物(組成物層)を加熱して、組成物層中の主剤及び硬化剤を配向させて液晶相の状態とする。
組成物層の加熱温度としては、硬化剤及び主剤の各々がいずれも液晶性(好ましくはネマチック液晶性)を示し、且つ、150℃以下の温度であれば、特に制限されない。なお、組成物層の加熱温度が150℃以下であれば、硬化剤及び主剤の硬化反応が実質的に進行しない場合が多い。なお、加熱時間は、例えば、30分~12時間である。
また、熱伝導材料の熱伝導性がより優れる点で、工程2における加熱温度と、後述する工程3における加熱温度(本硬化の加熱温度)の差{(工程3における加熱温度(本硬化の加熱温度))-(工程2における加熱温度)}は、10~150℃が好ましく、20~120℃がより好ましく、20~100℃が更に好ましい。
また、熱伝導材料の熱伝導性がより優れる点で、工程2における加熱温度と、後述する工程3において硬化剤及び主剤の硬化反応が実質的に開始する温度{(工程3において硬化剤及び主剤の硬化反応が実質的に開始する温度)-(工程2における加熱温度)}は、10~150℃が好ましく、20~120℃がより好ましく、20~100℃が更に好ましい。なお、工程3が半硬化反応を含む場合、半硬化反応の際の加熱温度は、工程3において硬化剤及び主剤の硬化反応が実質的に開始する温度に該当する。
【0132】
<工程3>
工程3は、硬化剤と主剤とを反応させることにより、組成物層を硬化させる工程である。なお、硬化反応は、シート状とした組成物に対して実施することが好ましい。その際、プレス加工を行ってもよい。
【0133】
また、硬化反応は、半硬化反応であってもよい。つまり、得られる硬化物が、いわゆるBステージ状態(半硬化状態)であってもよい。
上記のような半硬化させた硬化物をデバイス等に接触するように配置した後、更に加熱等によって本硬化させることにより、硬化物である熱伝導材料を含む層とデバイスとの接着性がより向上する。
【0134】
硬化方法は特に制限されず、硬化剤が含む活性水素含有官能基、及び主剤が含む反応性基の種類によって適宜最適な方法が選ばれる。硬化方法は、例えば、熱硬化反応であっても、光硬化反応であってもよいが、熱伝導材料の熱伝導性がより優れる点で、熱硬化反応が好ましい。
熱硬化反応の際の加熱温度は特に制限されないが、例えば、150~250℃の温度範囲が好ましく、150~200℃がより好ましい。また、熱硬化反応を行う際には、温度の異なる加熱処理を複数回にわたって実施してもよい。
また、光硬化反応を実施する場合、紫外線照射によるラジカル重合反応であるのがより好ましい。
紫外線照射には、紫外線ランプ等の光源が利用される。
紫外線の照射エネルギー量は特に制限されないが、一般的には、0.1~0.8J/cm2程度が好ましい。また、紫外線を照射する時間は特に制限されないが、得られる層の充分な強度及び生産性の双方の観点から適宜決定すればよい。
【0135】
[用途]
上記組成物は、熱伝導材料として様々な分野に応用できる。なお、熱伝導材料の形状は特に制限されず、例えば、シート状であってもよい。
以下、熱伝導材料に関して詳述する。
【0136】
(熱伝導材料)
熱伝導材料は、上述した組成物を用いて形成できる。つまり、上記組成物は、熱伝導材料を形成するために使用できる。
【0137】
熱伝導材料は、熱伝導性に優れる材料であり、放熱シート等の放熱材として使用できる。例えば、パワー半導体デバイス等の各種デバイスの放熱用途に使用できる。より具体的には、デバイス上に上記熱伝導材料を含む熱伝導層を配置して熱伝導層付きデバイスを作製することにより、デバイスからの発熱を効率的に熱伝導層で放熱できる。
【0138】
熱伝導材料の形状は特に制限されず、用途に応じて、様々な形状に成形されたものであってもよい。典型的には、熱伝導材料は、シート状であることが好ましい。
【0139】
なお、上記熱伝導材料は、完全に硬化した状態であってもよく、半硬化状態(上述したBステージ状態)であってもよい。上述したように、半硬化状態であっても十分な熱伝導性を有するため、各種装置の部材の隙間等の、光硬化のための光を到達させることが困難な部位に配置する放熱材としても使用できる。また、熱伝導性を有する接着剤としての使用も可能である。
【0140】
上記熱伝導材料は、他の部材と組み合わせて使用されてもよい。具体的には、例えば、上記熱伝導材料がシート状である場合、シート状の支持体上に、シート状の上記熱伝導材料を積層してもよい。なお、シート状の上記熱伝導材料を積層する場合、シートとしては、製造時に用いられた基板(工程1で使用した基板)をそのまま使用してもよい。
【実施例
【0141】
以下に実施例に基づいて本発明をさらに詳細に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、及び処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更できる。したがって、本発明の範囲は以下に示す実施例により限定的に解釈されるべきものではない。
【0142】
〔組成物の調製及び評価〕
[各種成分]
以下に、実施例及び比較例で使用した各種成分を示す。
<硬化剤>
以下に、実施例及び比較例で使用した硬化剤を示す。なお、構造式中、*は、結合位置を示す。
【0143】
【化24】
【0144】
【化25】
【0145】
【化26】
【0146】
【化27】
【0147】
【化28】
【0148】
<主剤>
以下に、実施例及び比較例で使用した主剤を示す。なお、構造式中、*は、結合位置を示す。
【0149】
【化29】
【0150】
【化30】
【0151】
【化31】
【0152】
【化32】
【0153】
<無機物>
以下に、実施例及び比較例で使用した無機物を示す。
「PTX-60」:凝集状窒化ホウ素(平均粒径:60μm、モーメンティブ製)
「PT-110」:平板状窒化ホウ素(平均粒径:45μm、モーメンティブ製)
「S-50」:窒化アルミニウム(平均粒径:55μm、MARUWA製)
「SGPS」:窒化ホウ素(平均粒径12μm、デンカ(株)社製)
「AA-3」:アルミナ(平均粒径:3μm、住友化学製)
「AA-04」:アルミナ(平均粒径:0.4μm、住友化学製)
【0154】
<溶媒>
溶媒として、THF(テトラヒドロフラン)、又はMEK(メチルエチルケトン)を用いた。
<硬化促進剤>
硬化促進剤として、PPh(トリフェニルホスフィン)を用いた。
【0155】
[硬化剤及び主剤の液晶性]
硬化剤及び主剤の各化合物について、各々単独の状態でホットステージ上にて加熱した。加熱後、上記化合物を冷却しながら偏光顕微鏡観察を行い、150℃以下での液晶性を調べた。
表1及び表2に、硬化剤及び主剤の各化合物の150℃以下での液晶性の有無、及び液晶相の種類を示す。なお、表1及び表2中、「-」とは、液晶性を示さなかったことを意図する。また、表1及び表2中、「DNe」とはディスコティックネマチック相を意味し、「Ne」はネマチック相を意味する。
【0156】
なお、実施例8で使用する主剤(化合物A-4)は、K80/DNe230/Isoであり、硬化剤(化合物B-4)は、K148/DNe185/Isoであった。
また、後述する組成物1と同様の方法に基づいて、実施例8で調整した組成物の液晶性を調べたところ、K130/DNe200/Isoであった。
更に、実施例11で使用する主剤(化合物A-4)は、K80/DNe230/Isoであり、硬化剤(化合物B-7)は、K72/DNe147/Isoであった。
また、後述する組成物1と同様の方法に基づいて、実施例11で調整した組成物の液晶性を調べたところ、K67/DNe191/Isoであった。
【0157】
[実施例1]
下記表1に示す配合に基づいて主剤及び硬化剤をTHFに溶解させ、溶液を得た。次いで、上記溶液を、撹拌しているヘキサンに滴下した。その後、ろ過により、主剤及び硬化剤の混合粉末組成物1を得た。
【0158】
次に、ポリエステルフィルム(NP-100A パナック社製、膜厚100μm)の離型面上に組成物1を均一に載せ、空気下、15MPaで2分間処理した。
次に、処理後の上記組成物1のポリエステルフィルムとは反対側の面を別のポリエステルフィルムで覆い、空気下で熱プレス(熱板温度80~150℃(使用する化合物によって液晶性が異なるため、化合物に応じて熱板温度を適宜調整した。)、圧力12MPaで30分間処理した後、さらに、170℃、圧力12MPaで30分間処理した後、190℃で2時間)で処理することで組成物1を硬化し、樹脂シートを得た。樹脂シートの両面にあるポリエステルフィルムを剥がし、平均膜厚150μmの熱伝導性シート1を得た。
【0159】
なお、実施例11では、上述の工程2として、熱板温度80℃にて圧力12MPaで30分間処理した後、さらに、上述の工程3として、170℃にて圧力12MPaで30分間処理した後(半硬化反応)、190℃にて2時間で処理(本硬化)することにより、組成物1を硬化している。
【0160】
<組成物1の液晶性>
上記組成物1をホットステージ上で加熱した。加熱後、上記組成物を冷却しながら偏光顕微鏡観察を行い、150℃以下での液晶性を調べた。
表1に、組成物の150℃以下での液晶性の有無、及び液晶相の種類を示す。
【0161】
<熱伝導性評価>
熱伝導性評価は、熱伝導性シート1を用いて実施した。下記の方法で熱伝導率の測定を行い、下記の基準に従って熱伝導性を評価した。
【0162】
(熱伝導率(W/m・k)の測定)
(1)アイフェイズ社製の「アイフェイズ・モバイル1u」を用いて、熱伝導性シート1の厚み方向の熱拡散率を測定した。
(2)メトラー・トレド社製の天秤「XS204」を用いて、熱伝導性シート1の比重をアルキメデス法(「固体比重測定キット」使用)で測定した。
(3)セイコーインスツル社製の「DSC320/6200」を用い、10℃/分の昇温条件の下、25℃における熱伝導性シート1の比熱を求めた。
(4)得られた熱拡散率に比重及び比熱を乗じることで、熱伝導性シート1の熱伝導率を算出した。
【0163】
(評価基準)
「A」: 0.7W/m・K以上
「B」: 0.5W/m・K以上0.7W/m・K未満
「C」: 0.3W/m・K以上0.5W/m・K未満
「D」: 0.3W/m・K未満
結果を表1に示す。
【0164】
[実施例2~20、比較例1~2]
下記表1に示す配合に基づいて、実施例1と同様の手順により、実施例及び比較例の各組成物を得た。
また、得られた各組成物について、実施例1と同様に150℃以下での液晶性を評価した。更に、得られた各組成物から熱伝導性シート2~20、比較用熱伝導性シート1~2を作製し、実施例1と同様の熱伝導性評価試験を実施した。結果を表1に示す。
【0165】
以下、表1を示す。
表1及び後述する表2において、各種組成物の成分欄に記載される(数値)は、組成物中の全固形分に対する各種成分の含有量(質量%)を意味する。
また、表1及び後述する表2中に記載される「膜厚[μm]」は、熱伝導性シートの平均膜厚を意味する。
表1及び後述する表2中に記載される「分子形状」は、使用した主剤及び硬化剤が、円盤状化合物であるか、又は棒状化合物であるかを示す。
表1及び後述する表2中に記載される「円盤状化合物の分子構造」は、使用した主剤及び硬化剤が円盤状化合物である場合、その部分構造が式(CR4)に該当するか、又は式(CR16)に該当するかを示す。
表1及び後述する表2中の主剤及び硬化剤欄に記載される「150℃以下での液晶性」とは、主剤及び硬化剤の各化合物の単独の状態での150℃以下での液晶性の有無を意味する。なお、表1中、「-」とは、150℃以下で液晶性を示さなかったことを意図する。また、表1及び後述する表2中、「DNe」とはディスコティックネマチック相を意味し、「Ne」はネマチック相を意味し、「Sm」とはスメクチック液晶相を意味する。
【0166】
【表1】
【0167】
表1の結果から、実施例の組成物によれば、熱伝導性に優れた熱伝導材料を形成できることが明らかである。
また、表1の結果から、硬化剤及び主剤がいずれも円盤状化合物である場合、熱伝導性がより優れることが確認できた(実施例12、実施例13、実施例19、及び実施例20の結果参照)。
また、表1の結果から、硬化剤及び主剤がいずれも、式(CR4)で表される部分構造を有する円盤状化合物であるか、又は式(CR16)で表される部分構造を有する円盤状化合物である場合、熱伝導性がより優れることが確認できた(実施例14及び実施例15の結果参照)。
また、表1の結果から、主剤が、環重合性基を含む場合、熱伝導性がより優れることが確認できた(実施例18の結果参照)。
一方、比較例の組成物から得られる熱伝導材料は、いずれも所望の要求を満たさなかった。
【0168】
[実施例21]
下記表2に示す各種成分を、主剤、MEK(メチルエチルケトン)、及び硬化剤の順で混合した後、無機物を添加した。得られた混合物を自転公転ミキサー(THINKY社製、あわとり練太郎ARE-310)で5分間処理することで組成物21を得た。
また、組成物21の最終的な固形分は、表2に記載された固形分濃度(「溶媒」欄内に記載)になるよう、MEKで調整した。
【0169】
次に、アプリケーターを用いて、ポリエステルフィルム(NP-100A パナック社製、膜厚100μm)の離型面上に組成物21を均一に塗布し、空気下で1時間放置することで塗膜21を得た。
次に、塗膜21の塗膜面を別のポリエステルフィルムで覆い、空気下で熱プレス(熱板温度80~150℃(使用する化合物よって液晶性が異なるため、化合物に応じて熱板温度を適宜調整した。)、圧力12MPaで30分間処理した後、さらに、170℃、圧力12MPaで30分間処理した後、190℃2時間)で処理することで塗膜を硬化し、樹脂シートを得た。樹脂シートの両面にあるポリエステルフィルムを剥がし、平均膜厚250μmの熱伝導性シート21を得た。
【0170】
得られた組成物21について、塗膜21を用いて、実施例1と同様に150℃以下での液晶性を評価した。また、得られた熱伝導シート21を用いて、実施例1と同様の方法により、熱伝導性を評価した。なお、実施例21~37、及び比較例3~4については、下記の評価基準に基づいて熱伝導性を評価した。
(評価基準)
「A」: 15W/m・K以上
「B」: 12W/m・K以上15W/m・K未満
「C」: 9W/m・K以上12W/m・K未満
「D」: 9W/m・K未満
【0171】
[実施例22~37、比較例3~4]
実施例21と同様の手順により、下記表2に示す実施例及び比較例の各組成物を得た。
また、組成物の最終的な固形分は、表2に記載された固形分濃度(「溶媒」欄内に記載)になるよう、MEKで調整した。
また、得られた各組成物について、実施例21と同様に150℃以下での液晶性を評価した。更に、得られた各組成物から熱伝導性シート22~37、比較用熱伝導性シート3~4を作製し、実施例1と同様の熱伝導性評価試験を実施した。結果を表2に示す。
以下、表2を示す。
【0172】
【表2】
【0173】
表2の結果から、実施例の組成物によれば、熱伝導性に優れた熱伝導材料を形成できることが明らかである。
また、表2の結果から、硬化剤及び主剤がいずれも円盤状化合物である場合、熱伝導性がより優れることが確認できた(実施例32及び実施例33の結果参照)。
また、表2の結果から、無機物が平均粒径が20μm以上場合(好ましくは50μm未状の場合)、熱伝導性がより優れることが確認できた(実施例31、実施例34及び実施例36の対比)。
また、無機物が窒化ホウ素を含む場合、熱伝導性がより優れることが確認できた(実施例31及び実施例35の対比)。
一方、比較例の組成物から得られる熱伝導材料は、いずれも所望の要求を満たさなかった。