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特許6997727コーティング装置およびコーティング方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-21
(45)【発行日】2022-01-18
(54)【発明の名称】コーティング装置およびコーティング方法
(51)【国際特許分類】
   C23C 14/04 20060101AFI20220107BHJP
   C23C 14/50 20060101ALI20220107BHJP
   C23C 16/04 20060101ALI20220107BHJP
   H01L 51/50 20060101ALI20220107BHJP
   H05B 33/10 20060101ALI20220107BHJP
【FI】
C23C14/04 A
C23C14/50 F
C23C16/04
H05B33/14 A
H05B33/10
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2018565367
(86)(22)【出願日】2017-06-08
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-07-11
(86)【国際出願番号】 EP2017063893
(87)【国際公開番号】W WO2017216014
(87)【国際公開日】2017-12-21
【審査請求日】2020-06-04
(31)【優先権主張番号】102016110884.7
(32)【優先日】2016-06-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】502010251
【氏名又は名称】アイクストロン、エスイー
(74)【代理人】
【識別番号】100095267
【弁理士】
【氏名又は名称】小島 高城郎
(74)【代理人】
【識別番号】100124176
【弁理士】
【氏名又は名称】河合 典子
(74)【代理人】
【識別番号】100146950
【弁理士】
【氏名又は名称】南 俊宏
(72)【発明者】
【氏名】ゲルスドルフ、マルクス
(72)【発明者】
【氏名】ヤコブ、マルクス
(72)【発明者】
【氏名】シュバンベラ、マルクス
【審査官】末松 佳記
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2012/039310(WO,A1)
【文献】韓国公開特許第10-2015-0044728(KR,A)
【文献】特開2010-265518(JP,A)
【文献】特表2011-525719(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23C 14/00-14/58
C23C 16/00-16/56
H01L 21/205、21/31
H01L 21/365、21/469
H01L 21/86
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
反応炉ハウジング(1)の中に配置されたプロセスチャンバー(2)を有し、1つ以上の基板(10)の上に層を堆積させるための装置であって、
a)前記基板(10)に向けて流れの方向(S)で前記プロセスチャンバー(2)の中にプロセスガスの流れを導入するための少なくとも1つの温度制御可能なガス注入部材(3)と、
b)前記流れの方向(S)に対して前記ガス注入部材(3)の直接下流に配置され、遮蔽位置において前記ガス注入部材(3)と前記基板(10)とをお互いから熱的に遮蔽する少なくとも1つの遮蔽部材(6)と、
c)前記流れの方向(S)に対して前記遮蔽部材(6)の下流に配置され、それぞれマスク(8,8’)を保持する複数のマスクホルダ(7,7’)と、
d)それぞれ1つ以上の前記マスクホルダ(7,7’)に対応し、前記流れの方向(S)に対して前記マスク(8,8’)の下流に配置され、お互いから物理的に離れており、少なくとも1つの前記基板(10)を保持する複数の基板ホルダ(9,9’)と、
e)各前記基板ホルダ(9,9’)に割り当てられており、前記基板(10,10’)が前記基板ホルダ(9,9’)上に載置されることができる位置であって前記基板(10,10’)が前記基板ホルダ(9,9’)から取り外されることができる位置である前記マスクホルダ(7,7’)から離れた位置から、前記基板ホルダ(9,9’)上に配置された基板(10,10’)が前記マスク(8,8’)との接触位置でコーティングされることができる位置である前記マスクホルダ(7,7’)と隣接した位置に、前記基板ホルダ(9,9’)を動かす各移動装置(11,11’)と、
を備え、
f)前記遮蔽部材(6)が単一の遮蔽部材または複数の遮蔽部材であり、1つ以上の前記遮蔽部材が、前記遮蔽位置において全ての前記マスクホルダ(7,7’)と少なくとも1つの前記ガス注入部材(3)の全てのガス放出面との間に同時に配置され、複数の前記基板(10,10’)の同時コーティングの間に保管スペース(17)に同時に収容され、かつ、
前記保管スペース(17)が、前記反応炉ハウジング(1)の壁に形成されたスロットであり、前記スロットの高さは、前記ガス注入部材(3)のガス放出面と前記マスクホルダ(7、7’)との間の距離よりも小さいことを特徴とする装置。
【請求項2】
前記基板ホルダ(9,9’)が、個々に温度制御可能であり、個々に移動可能であることを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記ガス注入部材(3)が加熱素子(12)を有し、前記基板ホルダ(9,9’)が冷却装置(13,13’)を有することを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項4】
関連する前記基板ホルダ(9,9’)に対して前記マスクホルダ(7,7’)の位置を個々に調整する調整装置(14,14’)を備えることを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項5】
複数のガス注入部材(3,3’)が、お互いに隣接して配置されることを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項6】
反応炉ハウジング(1)の中に配置されたプロセスチャンバー(2)を有し、1つ以上の基板(10)の上に層を堆積させるための装置であって、
a)前記基板(10)に向けて流れの方向(S)で前記プロセスチャンバー(2)の中にプロセスガスの流れを導入するための少なくとも1つの温度制御可能なガス注入部材(3)と、
b)前記流れの方向(S)に対して前記ガス注入部材(3)の直接下流に配置され、遮蔽位置において前記ガス注入部材(3)と前記基板(10)とをお互いから熱的に遮蔽する少なくとも1つの遮蔽部材(6)と、
c)前記流れの方向(S)に対して前記遮蔽部材(6)の下流に配置され、それぞれマスク(8,8’)を保持する複数のマスクホルダ(7,7’)と、
d)それぞれ1つ以上の前記マスクホルダ(7,7’)に対応し、前記流れの方向(S)に対して前記マスク(8,8’)の下流に配置され、お互いから物理的に離れており、少なくとも1つの前記基板(10)を保持する複数の基板ホルダ(9,9’)と、
e)各前記基板ホルダ(9,9’)に割り当てられており、前記基板(10,10’)が前記基板ホルダ(9,9’)上に載置されることができる位置であって前記基板(10,10’)が前記基板ホルダ(9,9’)から取り外されることができる位置である前記マスクホルダ(7,7’)から離れた位置から、前記基板ホルダ(9,9’)上に配置された基板(10,10’)が前記マスク(8,8’)との接触位置でコーティングされることができる位置である前記マスクホルダ(7,7’)と隣接した位置に、前記基板ホルダ(9,9’)を動かす各移動装置(11,11’)と、
を備え、
f)前記遮蔽部材(6)が単一の遮蔽部材または複数の遮蔽部材であり、1つ以上の前記遮蔽部材が、前記遮蔽位置において全ての前記マスクホルダ(7,7’)と少なくとも1つの前記ガス注入部材(3)の全てのガス放出面との間に同時に配置され、複数の前記基板(10,10’)の同時コーティングの間に保管スペース(17)に同時に収容され、
1つのガス注入部材(3)が2つのガス分配室(5,5’)を含み、当該各ガス分配室(5,5’)が移動可能な壁(18)によってお互いから分離されていることを特徴とする装置。
【請求項7】
1つ以上の基板の上に層を堆積させるための方法であって、
請求項1ないし6のいずれか1項に記載の装置を使用し、
前記マスクホルダ(7,7’)から遠い位置に前記基板ホルダ(9,9’)を置き、
少なくとも各前記基板(10,10’)が載置された各前記基板ホルダ(9,9’)を前記遠い位置から前記隣接した位置に同時に動かし、
各前記基板(10,10’)が載置された基板ホルダ(9,9’)に割り当てられている各ガス分配室(5,5’)の中にプロセスガスを導入することによって、各前記基板(10,10’)上に、前記マスク(8,8’)の使用に起因して横方向に構造化された層を同時に堆積させる、
ことを特徴とする方法。
【請求項8】
少なくとも1つの前記基板ホルダ(9,9’)が空のままであり、前記流れの方向(S)で前記マスクホルダ(7)に向けて流れる洗浄ガスが前記少なくとも1つの空の基板ホルダ(9,9’)に割り当てられた前記ガス分配室(5,5’)の中に導入されることを特徴とする請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記マスク(8)によって構造化された層を複数の連続ステップで前記基板(10)上に堆積させ、
前記マスクホルダ(7,7’)に割り当てられた前記基板ホルダ(9,9’)に対して前記マスクホルダ(7,7’)の位置を横方向に変えることによって、お互いに横方向に隣接した層構造を前記基板(10,10’)上に生じさせる、
ことを特徴とする請求項7に記載の方法。
【請求項10】
OLED層が堆積され、前記ガス注入部材(3,3’)の温度が前記基板ホルダ(9,9’)の温度より高いことを特徴とする請求項7に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、1つ以上の基板上に層を堆積する装置に関し、その装置は反応炉ハウジング内に配置されたプロセスチャンバーを含む。ガス注入部材が提供され、それは温度制御されることができ、その中にプロセスガスが導入される。ガス注入部材はガス放出面を有し、ガス放出面を通ってプロセスガスがその流れの方向でプロセスチャンバーの中に流れることができる。遮蔽部材が流れの方向に対してガス注入部材の下流に配置され、ガス注入部材と基板とをお互いから熱的に遮蔽する。遮蔽部材は、ガス注入部材のガス放出面とマスクホルダとの間に位置している。コーティングプロセスの間、マスクホルダはコーティングされる基盤を横方向に構造化するためにマスクを支える。基板がコーティングされる間、マスクは基板の表面に置かれ、基板は温度制御可能な基板ホルダに接触して支えられる。装置は、基本的に長方形の基板上にOLED層を堆積させるために使用される。基板上に堆積する有機材料は、これらの有機材料に電圧を印加することによって、またはそれらを通して電流を流すことによって3原色で発光することができる。スクリーン用ディスプレイ、ディスプレイパネルなどが、そのように製造された基板を用いて製造されることができる。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、中央ガス注入部材を有するプロセスチャンバーを開示する。そのガス注入部材のガス放出開口は「シャッター」で閉じられることができる。2つの基板ホルダが、ガス注入部材に対してお互いに直径方向に反対に設けられており、それぞれマスクによって覆われた基板を支え、「シャッター」を開いた後に構造化された表面を基板上に堆積することができる。
【0003】
特許文献2は、有機層を堆積させるための装置を開示する。その装置では、ガス注入部材を形成する材料源は複数の基板に対して動かされることができ、それらの基板ホルダはそれぞれ流れ方向に対して直角に基板ホルダ上に配置される。
【0004】
特許文献3は、各基板に個別に割り当てられた基板ホルダ上に配置された複数の基板を同時にコーティングするための装置を開示する。その装置では、ガス注入部材が各基板に個別に割り当てられている。
【0005】
特許文献4は、ガス注入部材と基板ホルダを有するプロセスチャンバーを開示する。その基板ホルダは、ガス注入部材のガス放出面を出るプロセスガスの流れの流路に置かれている。基板ホルダは、ガス注入部材に対して流れの方向に動かすことができる。遮蔽部材が設けられており、それは基板ホルダとガス注入部材のガス放出面との間で動かすことができる。基板ホルダ上に載置された基板の上への層の構造化された堆積が、マスクを使うことによって実現される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】米国特許第7,964,037 B2号明細書
【文献】米国特許出願公開第2014/0322852 A1号明細書
【文献】国際公開第2010/114274 A1号
【文献】独国特許出願公開第10 2010 000 447 A1号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、有機層の堆積装置のプロセス効率を改善する目的に基づく。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この目的は、請求項で開示される本発明で達成される。各請求項はその目的への独立した解決策を示し、従属項は、独立項の有利な強化を示すだけでなく、また、その目的への独立した解決策を示す。
【0009】
最初に、および基本的に、OLED層を堆積するための装置が、次の特徴を有することが提案される。:プロセスガスをプロセスチャンバーの中に導入するために、少なくとも1つの温度制御可能なガス注入部材が設けられる。ガス注入部材はガス放出面を有し、ガス放出面を通ってプロセスガスがガス注入部材を出ることができる。プロセスガスの流れがガス注入部材のガス放出面を出る方向は、流れの方向を決める。さらに、少なくとも1つの遮蔽部材がプロセスガス流の流れの方向に対してガス注入部材の直接下流に配置され、その遮蔽部材が遮蔽位置においてガス注入部材と基板とをお互いから熱的に遮蔽する。OLED層の堆積の間、ガス注入部材、特にガス注入部材のガス放出面は基板の温度より高い温度を有する。少なくとも1つの遮蔽部材は、ガス注入部材から基板およびマスクホルダによって保持されるマスへの熱の移動を減少させる機能を有する。それぞれマスクを保持するための複数のマスクホルダが、流れの方向に対して少なくとも1つの遮蔽部材の下流に配置されている。好ましくは、ガス注入部材のガス放出面が、ガス放出平面に延びる。少なくとも1つの遮蔽部材が、ガス放出平面に平行である平面に延びる。同様に、マスクホルダは、ガス放出平面に平行に延びる共通の平面に配置される。本発明によれば、複数の基板ホルダが提供される。各基板ホルダは、少なくとも1つの基板を保持するために設計される。その少なくとも1つの基板はそれぞれガス放出平面に平行である平面に延びる。各基板ホルダは、お互いから分離される。1つの基板ホルダは、各マスクホルダに対応する。基板ホルダは、流れの方向に対してマスクの下流に配置され、マスクに向かう方向に動かされることができる。この目的のために、移動装置が提供される。各基板ホルダは個々に割り当てられた移動装置を有する。移動装置によって、基板ホルダは、マスクホルダから遠い位置から、マスクホルダと隣接した位置に動かされることができる。マスクホルダから遠い位置において、各基板は、基板ホルダ上に載置されることができ、また基板ホルダから取り外されることができる。この場合、遮蔽部材は遮蔽位置にあり、その遠い位置において基板の表面温度はプロセス温度より上に上昇することができず、望ましくは100℃よりも下であり、特に60℃よりも下である。基板がつかみ具を用いて基板ホルダの基板の上に載置される場合、これは特に有利である。基板ホルダの表面は、積極的に温度制御される。それは、特に冷却デバイスによって100℃よりも下の温度、好ましくは60℃よりも下の温度に冷却される。基板の上に少なくとも1つの層を堆積させるために、基板ホルダは移動装置を用いてマスクホルダと隣接する位置に動かされる。この位置において、コーティングされる基板の表面はマスクによって覆われ、マスクは好ましくはシャドーマスクの形で実現され、マスクによって決められる位置にのみコーティングが起こる。スクリーンのピクセル構造がマスクで製造されることができるように、マスクは規則的に配置された複数の開口を有することができる。隣接する位置では、マスクは基板の上に接触して置かれる。遮蔽部材は複数のパーツで構成されることができる。それは、マスクの表面に平行に延びる複数の遮蔽板で構成されることができる。けれども、遮蔽部材はマスクに平行に配置された1つの遮蔽板の形で実現されることが好ましい。複数の遮蔽部材が提供されることができる。遮蔽部材は、単一の部材であることが好ましい。それは、駆動部材によって遮蔽位置から保管位置へその平面内で動かされ、遮蔽部材は保管位置で保管スペースの中に置かれる。ガス注入部材は、加熱素子を有することができる。好ましくは、ガス注入部材は、複数のガス放出開口を有するガス放出面を備えたシャワーヘッドを形成する。ガス放出面はガス放出板によって形成されることができ、ガス放出面には複数の加熱素子が配置される。ガス放出板は、電気的に加熱されることができる。けれどもまた、液体加熱システムが提供される。また、独立した特徴を有する本発明の強化によれば、マスクと基板の相対的な位置を調整するために調整装置が提供される。調整装置は、特に、マスク平面内で基板に対してマスクを動かすことができる。特に、これは、ディスプレイを堆積する場合に有利である。調整装置を用いてディスプレイのピクセルまたはサブピクセルの位置を高い精度で調整することができる。お互いに異なる複数の層を連続的に堆積させることができる。この場合、異なる色を発光するピクセルが基板上でお互いに隣接して堆積するように、個々の堆積ステップの間で基板に対するマスクの位置が変更される。調整装置は、スピンドル駆動部、空圧駆動部、または油圧式駆動部を有することができる。けれどもまた、位置の調整のためにマスクホルダの代わりに基板ホルダを動かしてもよい。ガス注入部材は、1つの供給開口のみまたは1つのガス分配室のみを有する単一のシャワーヘッドであることができる。けれどもまた、ガス注入部材のガス分配室を複数の個別の室に分割することができる隔壁のような手段を設けることができる。また、2つの分離したガス注入部材を使用することができる。この場合、各ガス注入部材は機能的にそれぞれマスクホルダまたは基板ホルダに割り当てられる。けれども、好ましくは、複数のガス注入部材のガス放出面は共通の平面に置かれる。さらに、物理的に単一のガス注入部材が、お互いに恒久的に分離されており、個々にプロセスガスまたは洗浄ガスを供給されることができる複数のガス分配室を有することがあり得る。好ましくは、流れの方向は、垂直方向であり、その流れは下から上に、または上から下に生じることができる。この場合、基板ホルダは、垂直方向において搬入位置から処理位置に動かすことができる。この場合、基板に対するマスクの位置は、水平方向において調整される。
【0010】
さらに、本発明は、1つ以上の基板の上に層を堆積させるための方法であって、次のステップを有する方法に関する。:
-上述した装置を使用し、
-前記マスクホルダから遠い位置に少なくとも1つの前記基板ホルダを置き、
-少なくとも各前記基板が載置された各前記基板ホルダを前記遠い位置から前記隣接した位置に同時に動かし、
-各前記基板が載置された基板ホルダに割り当てられている各前記ガス分配室の中にプロセスガスを導入することによって、各前記基板上に、前記マスクの使用に起因して横方向に構造化された層を堆積させる。
【0011】
より小さな基板を製造するためにコーティングプロセスの後で分割されなければならない大きな基板の代わりに、コーティングプロセスの後で分割する必要がない複数のより小さな基板が共通のプロセスチャンバーの中でコーティングされる。各基板は個々に割り当てられた基板ホルダによって保持され、各基板は、好ましくは単一の基板、特に長方形の基板を保持する。同様に、基板に対するマスクの位置は個々に調整される。ガス注入部材は、一様なプロセスガスを供給する共通のガス注入部材の形で実現されることができ、全ての基板が基本的に同一のプロセスパラメータで処理されるように、プロセスガスはガス放出面の全てのガス放出開口から一様に放出される。けれどもまた、コーティングプロセスの間に装置が基板を載置された基板ホルダと空の基板ホルダとを含むように、少数の基板ホルダのみに基板を載置することができる。この目的のために、好ましくは、ガス注入部材のガス分配室が複数のガス分配室に分割されることができるように、ガス注入部材は改良される。プロセスガスは、基板が載置されている基板ホルダに割り当てられているガス分配室の中に導入されるのみである。一方、洗浄ガスまたはキャリアガスは空の基板ホルダに割り当てられたガス分配室の中に導入される。この場合、洗浄ガスまたはキャリアガスのガス流はプロセスガスのガス流と一致する。本発明のより好ましい実施形態では、プロセスチャンバーはお互いに隣接する2つの基板ホルダと2つのマスクホルダを有する。
【0012】
また、ガス注入部材は、恒久的にお互いから分離された2つのガス分配室を有する。また、2つのガス注入部材がお互いに隣接して配置されることが提案される。全ての基板ホルダが遠い位置にあると見なされる動作状態において、各基板は、各基板ホルダ上に載置され、基板ホルダから取り外される。この場合、各基板をつかみ具を用いて運ぶことができる搬入ポートが反応炉ハウジングの壁に設けられる。搬入・搬出ポートは、好ましくは、その遠い位置において基板ホルダと同じ平面にある。従って、搬入および搬出プロセスは、プロセス温度より低い温度で起こる。その温度は60℃より低い。それから、基板が載置されている基板ホルダは、ガス注入部材の方向に同時に動かされ、続いて同時に処理される。この場合、全ての基板のコーティングプロセスは同時に始まり、同時に終わる。
【0013】
有利には、本発明は、単一のプロセスチャンバーにおいて複数の基板ホルダの上で複数の基板の同時に行われるコーティングを可能にする。
【0014】
本発明の実施形態が、添付図面を参照して以下に記載される。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】コーティング装置の第1の概略断面を示す。
図2】第2の実施形態に係るガス注入部材3とマスクホルダ7,7’と基板ホルダ9のみを示す図である。
図3図1に従う、本発明の第3の実施形態に係る図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明に係る装置は、例えば長方形のガラス基板10,10’上にOLED層を堆積するための反応炉である。2つの基板ホルダ9,9’は、お互いから物理的に分離されて、基板10,10’を保持するために反応炉ハウジング1の中に配置される。基板ホルダ9,9’は、移動装置11,11’によって矢印b,b’の方向にお互いに平行に動かすことができる。各基板ホルダ9,9’は、冷却デバイスの形の温度制御装置13,13’を有する。基板ホルダ9,9’は、特に個々に温度制御されることができる。冷却装置13は冷却チャネルの形で実現されることができ、冷却チャネルを通って冷却液が流れる。冷却液は、フレキシブルラインによって、例えばホースによって、冷却チャネル13に供給されることができる。
【0017】
図1に示す実施形態では、単一のガス注入部材3が提供される。ガス注入部材3は図示しない1つ以上の供給ラインを有することができ、その供給ラインを通ってプロセスガスがガス注入部材3のガス室の中に導入されることができる。そのガス室は、単一のガス室であることができる。符号18は壁を示す。壁18は、ガス室5,5’が単一に形成されている実施形態には存在しない。また、2つ以上のガス供給ラインが提供され、それぞれ2つのガス室5,5’の1つに割り当てられる。隔壁18は、移動可能または移動不可であることができる。壁18が移動可能に実現されるならば、2つのガス室5,5’がお互いから分離される分離位置に壁18を動かすことができる。けれども、ガス室5,5’がお互いに流体的に接続される位置に壁18を動かすこともできる。
【0018】
矢印S,S’は、複数の隣接して配置されたガス放出開口4,4’を有するガス注入部材3のガス放出面からのプロセスガスの流れを象徴する。ガス放出開口4,4’を形成するガス放出板は、さらに、加熱素子12を有する。加熱素子12によってガス放出板は約400℃の温度に加熱されることができる。加熱素子12は、電流が流れるときに熱を放つワイヤの形で、または高温の液体が流れるチャネルの形で実現されることができる。
【0019】
ガス注入部材3の実施形態の変形例では、壁18は選択的に単一のガス分配室5を2つのガス分配室5,5’に分割する隔壁を形成する。この変形例では、ガス注入部材3は複数のガス供給ラインを持つ。
【0020】
金属板によって形成され得る平面の遮蔽部材6は、流れ方向S,S’において、ガス注入部材3のガス放出面から離れて間隔を空けられる。遮蔽部材6は、積極的に温度制御され、例えば冷却され、または加熱される。遮蔽部材6は、矢印aの方向に遮蔽部材6を動かすことによって、流れ方向S,S’においてガス放出面を覆う遮蔽位置から保管位置に動かされることができる。遮蔽部材6は保管スペース17の中に動かされることができ、堆積プロセスの間、遮蔽部材6は保管スペース17に格納される。
【0021】
遮蔽位置において、遮蔽部材6は、ガス注入部材3によって制限される熱放射から、ガス放出面に平行な平面内に配置された2つ以上のマスクホルダ7,7’を遮蔽する。マスクホルダ7,7’は、ガス放出面に平行に延びる共通の平面に位置する。マスクホルダ7,7’は、マスク8,8’の端を支えるフレームによって形成される。マスクは、基板10,10’の上に堆積される層を個々のピクセル/サブピクセルに構造化するために使用される。
【0022】
図1に示す実施形態では、ガス注入部材3は、反応炉ハウジング1の上部に配置されている。遮蔽部材6は、ガス注入部材3の直下に位置している。それぞれマスク8,8’を支える2つのマスクホルダ7,7’が、遮蔽部材6の下に位置している。
【0023】
それぞれ基板が置かれた2つの基板ホルダ9,9’が、マスクホルダ7,7’の下に、マスクホルダ7,7’から離れて間隔を空けて位置する。これらの基板ホルダは、移動装置11,11’によって垂直上方に移動させられることができる。これは、矢印b、b’の方向に起こる。
【0024】
基板10,10’がマスク8,8’と当接するまで、基板ホルダ9を上方に動かすことができる。けれどもまた、水平方向の移動によって基板10,10’に対してマスク8,8’を調整するために、マスク8,8’の下面と基板10,10’の上面との間にほんのわずかなすき間が残ることが提案される。
【0025】
図1に示す装置は、特に、クラスタシステムでの使用に適している。この場合、基板は、搬入・搬出ポート16を通って反応炉ハウジング1の中に搬入される。搬入・搬出ポート16は、真空密閉されることができる。
【0026】
図2は本発明の第2の実施形態を示し、図2には、基板10,10’に対するマスク8,8’の位置を調整するための調整装置14が機能要素の形で示されている。調整装置14が基板10,10’に対してマスク8,8’を動かす調整方向は、矢印c、c’で示される。
【0027】
第1の実施形態とは異なり、図2に示す第2の実施形態では、ガス注入部材3は隔壁19によって別個のガス分配室5,5’に分割される。各ガス分配室5,5’は個々にマスクホルダ7,7’または基板ホルダ9,9’に割り当てられる。けれども、遮蔽部材6は単一の遮蔽部材である。特に、それは単一材料の遮蔽板の形で実現される。ガス分配室5,5’の供給は、個別のガス注入ノズル15,15’によって実現される。隔壁19は、デッドスペースが形成されないように形成されていてもよい。図2に示す2つの隔壁10の間のデッドスペースは、不活性ガスで洗い流されることができ、またはガス、例えば不活性ガスまたはキャリアガスを中間領域に供給するために使用されることができる。
【0028】
2つの基板10,10’が同時にコーティングされるとき、両方のガス注入ノズル15,15’を通して同じガス混合物がガス分配室5,5’に導入され、基板ホルダ9,9’上に載置される基板10,10’の上に同じ層特性を有する層が同時に堆積される。この目的のために、基板ホルダ9,9’は、離れた位置から隣接する位置へ同時に動かされ、コーティングプロセスの完了後に隣接する位置から離れた位置へ同時に戻される。
【0029】
図3に示す実施形態は、ガス注入部材3、3’の構成によって本質的に上述の実施形態とは異なる。この場合、物理的にお互いから独立した2つのガス注入部材3、3’が設けられている。それらは、単一の遮蔽部材6によってマスクホルダ7,7’およびマスクホルダ7,7’によって保持されたマスク8,8’から遮蔽される。
【0030】
図3に示す装置は、特にインラインシステムでの使用に適する。搬入開口16は、搬出開口16’の反対に配置されている。基板は、つかみ具によって搬入開口16を通って反応炉ハウジング1の中に持ち込まれ、基板ホルダ9,9’上に配置される。搬入開口16と搬出開口16’は気密に密閉されている。反応炉ハウジング1内で、不活性ガスを導入し、図示しない真空ポンプによって不活性ガスを排気することにより、不活性ガス雰囲気を所望の圧力に調節する。基板10,10’が置かれた基板ホルダ9,9’は、遠い位置から隣接する位置に同時に動かされる。層の堆積の後で、基板ホルダ9,9’は同時に遠い位置に戻される。搬出開口16’を開いた後に、基板10,10’を基板ホルダ9,9’から取り外すことができる。
【0031】
けれども、上述した装置では、同時にコーティングされる基板の数が提供される基板ホルダ9,9’の数よりも少ないように、提供されるよりも少ない基板ホルダが同時に基板を装填されることができる。例えば、2つの基板ホルダ9,9’の1つのみに置かれた単一の基板のみをこれらの装置でコーティングすることができる。他の基板ホルダ9,9’には、基板は配置されていない。堆積プロセスの間に、プロセスガスは、装填された基板ホルダ9,9’に機能的に割り当てられたガス放出開口4,4’を通って流れ方向S,S’でマスク8,8’によって覆われた基板に向かってのみ流れる。流れのバランスをとってデッドボリュームを避けるために、キャリアガスは、機能的に空の基板ホルダ9,9’に割り当てられているガス放出開口4,4’を通って流れる。
【0032】
上記の説明は、本発明に含まれる全ての発明を説明するために役立ち、少なくとも以下の特徴の組み合わせでそれぞれ独立して先行技術を改良する。すなわち、
【0033】
反応炉ハウジング1の中に配置されたプロセスチャンバー2を有し、1つ以上の基板10の上に層を堆積させるための装置であって、次の特徴を有する装置。
a)前記基板10に向けて流れの方向Sで前記プロセスチャンバー2の中にプロセスガスの流れを導入するための少なくとも1つの温度制御可能なガス注入部材3と、
b)前記流れの方向Sに対して前記ガス注入部材3の直接下流に配置され、遮蔽位置において前記ガス注入部材3と前記基板10とをお互いから熱的に遮蔽する少なくとも1つの遮蔽部材6と、
c)前記流れの方向Sに対して前記遮蔽部材6の下流に配置され、それぞれマスク8,8’を保持する複数のマスクホルダ7,7’と、
d)それぞれ1つ以上の前記マスクホルダ7,7’に対応し、前記流れの方向Sに対して前記マスク8,8’の下流に配置され、お互いから物理的に離れており、少なくとも1つの前記基板10を保持する複数の基板ホルダ9,9’と、
e)各前記基板ホルダ9,9’に割り当てられており、前記基板10,10’が前記基板ホルダ9,9’上に載置されることができる位置であって前記基板10,10’が前記基板ホルダ9,9’から取り外されることができる位置である前記マスクホルダ7,7’から離れた位置から、前記基板ホルダ9,9’上に配置された基板10,10’が前記マスク8,8’との接触位置でコーティングされることができる位置である前記マスクホルダ7,7’と隣接した位置に、前記基板ホルダ9,9’を動かす各移動装置11,11’と、
を備え、
f)前記遮蔽部材6が単一の遮蔽部材または複数の遮蔽部材であり、1つ以上の前記遮蔽部材が、前記遮蔽位置において全ての前記マスクホルダ7,7’と少なくとも1つの前記ガス注入部材3の全てのガス放出面との間に同時に配置され、複数の前記基板10,10’の同時コーティングの間に保管スペース17に同時に収容される。
【0034】
前記基板ホルダ9,9’が、個々に温度制御可能であり、個々に移動可能であることを特徴とする装置。
【0035】
前記遮蔽部材6が単一の遮蔽部材または複数の遮蔽部材であり、1つ以上の前記遮蔽部材が、好ましくは前記遮蔽位置において全ての前記マスクホルダ7,7’と少なくとも1つの前記ガス注入部材3との間に同時に配置されることを特徴とする装置。
【0036】
前記ガス注入部材3が加熱素子12を有し、前記基板ホルダ9,9’が冷却装置13,13’を有することを特徴とする装置。
【0037】
関連する前記基板ホルダ9,9’に対して前記マスクホルダ7,7’の位置を個々に調整する調整装置14,14’を備えることを特徴とする装置。
【0038】
複数の前記ガス注入部材3、3’がお互いに隣接して配置されるか、または1つのガス注入部材3が2つのガス分配室5,5’を含み、当該各ガス分配室5,5’が移動可能な壁18によってお互いから分離されていることを特徴とする装置。
【0039】
1つ以上の基板の上に層を堆積させるための方法であって、次のステップを有する方法。
-上述した装置を使用し、
-前記マスクホルダ7,7’から遠い位置に少なくとも1つの前記基板ホルダ9,9’を置き、
-少なくとも各前記基板10,10’が載置された各前記基板ホルダ9,9’を前記遠い位置から前記隣接した位置に同時に動かし、
-各前記基板10,10’が載置された基板ホルダ9,9’に割り当てられている各前記ガス分配室5,5’の中にプロセスガスを導入することによって、各前記基板10,10’上に、前記マスク8,8’の使用に起因して横方向に構造化された層を堆積させる。
【0040】
少なくとも1つの前記基板ホルダ9,9’が空のままであり、前記流れの方向Sで前記マスクホルダ7に向けて流れる洗浄ガスが前記空の基板ホルダ9,9’に割り当てられた前記ガス分配室5,5’の中に導入されることを特徴とする方法。
【0041】
前記マスク8によって構造化された層を複数の連続ステップで前記基板10上に堆積させ、前記マスクホルダ7,7’に割り当てられた前記基板ホルダ9,9’に対して前記マスクホルダ7,7’の位置を横方向に変えることによって、お互いに横方向に隣接した層構造を前記基板10,10’上に生じさせる方法。
【0042】
OLED層が堆積され、前記ガス注入部材3,3’の温度が前記基板ホルダ9,9’の温度より高いことを特徴とする方法。
【0043】
開示される全ての特徴は(個々に、しかしまたお互いに組み合わせて)本発明に対して基本的である。これによってまた、関連する/添付される優先権書類(優先権出願のコピー)の開示内容が完全に本出願の開示に含められ、すなわちまた、本出願の請求項にこれらの書類の特徴を統合する目的のために包含される。従属項の特徴は、特にこれらの請求項に基づいて分割出願を行うために、先行技術の独立した発明の強化を特徴づける。
【符号の説明】
【0044】
1…反応炉ハウジング
2…プロセスチャンバー
3…ガス注入部材
3’…ガス注入部材
4…ガス放出開口
4’…ガス放出開口
5…ガス分配室
5’…ガス分配室
6…遮蔽部材
7…マスクホルダ
7’…マスクホルダ
8…マスク
8’…マスク
9…基板ホルダ
9’ …基板ホルダ
10…基板
10’…基板
11…移動装置
11’…移動装置
12…加熱素子
13…冷却装置
13’…冷却装置
14…調整装置
14’…調整装置
15…ガス注入ノズル
15’…ガス注入ノズル
16…搬入開口
16’…搬出開口
17…保管スペース
18…壁
19…隔壁
S…プロセスガスの流れ
S’…プロセスガスの流れ
a…矢印
b…矢印
b’…矢印
c…矢印
c’…矢印
S…矢印
S’…矢印
図1
図2
図3