(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-21
(45)【発行日】2022-01-18
(54)【発明の名称】有機エレクトロルミネセンス表示装置
(51)【国際特許分類】
G02B 5/30 20060101AFI20220107BHJP
H01L 51/50 20060101ALI20220107BHJP
H05B 33/02 20060101ALI20220107BHJP
H01L 27/32 20060101ALI20220107BHJP
【FI】
G02B5/30
H05B33/14 A
H05B33/02
H01L27/32
(21)【出願番号】P 2018567400
(86)(22)【出願日】2018-02-02
(86)【国際出願番号】 JP2018003595
(87)【国際公開番号】W WO2018147184
(87)【国際公開日】2018-08-16
【審査請求日】2019-07-30
(31)【優先権主張番号】P 2017020536
(32)【優先日】2017-02-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2017120240
(32)【優先日】2017-06-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】306037311
【氏名又は名称】富士フイルム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100152984
【氏名又は名称】伊東 秀明
(74)【代理人】
【識別番号】100148080
【氏名又は名称】三橋 史生
(72)【発明者】
【氏名】矢内 雄二郎
(72)【発明者】
【氏名】兼岩 秀樹
(72)【発明者】
【氏名】芥川 暢之
(72)【発明者】
【氏名】柏木 大助
【審査官】藤岡 善行
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-259721(JP,A)
【文献】特開2013-186132(JP,A)
【文献】特開2002-215067(JP,A)
【文献】特開2001-004995(JP,A)
【文献】特開2003-307622(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 5/30
H01L 51/50
H05B 33/02
H01L 27/32
G09F 9/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
視認側から、少なくとも、偏光子、位相差層、円偏光分離層および有機エレクトロルミネセンス発光素子が、この順に配置
され、
前記位相差層の面内レタデーションRe(550)が100~160nmであり、前記円偏光分離層が、425~475nmの範囲を選択反射中心波長とする、螺旋の巻き数が6~8の
、円盤状液晶化合物からなるコレステリック液晶層であり、さらに前記偏光子と有機エレクトロルミネセンス発光素子との間に配置される光学的な機能を有する部材の厚さ方向のレタデーションRth(550)の和が-50~50nmである、有機エレクトロルミネセンス表示装置。
【請求項2】
前記偏光子と有機エレクトロルミネセンス発光素子との間に、さらに、Cプレートが配置され、
前記コレステリック液晶層の螺旋の巻き数が6~8である、請求項1に記載の有機エレクトロルミネセンス表示装置。
【請求項3】
前記位相差層が、Bプレートであり、
前記コレステリック液晶層の螺旋の巻き数が6~8である、請求項1に記載の有機エレクトロルミネセンス表示装置。
【請求項4】
前記位相差層が逆波長分散性を示す、請求項1~3のいずれか1項に記載の有機エレクトロルミネセンス表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機エレクトロルミネセンス表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、液晶ディスプレイに代わる表示装置として、有機エレクトロルミネセンス(有機EL(Electro Luminescence)(OLED(Organic Light Emitting Diode))の開発が加速され、すでに60インチクラスの大型ディスプレイも登場し始めている。
【0003】
従来の有機EL表示装置は、各色を発光するために必要なエネルギーに差があることから、一般的に、緑または赤の発光素子に比べて、青色発光素子の劣化が早い。そのため、青色発光素子の寿命を考慮し、発光量を抑えるなどの施策がなされており、本来有する素子の性能を十分に発揮できていない。
【0004】
また、有機EL基板表面は反射率が高いため、特に明環境では外光を反射してしまい、コントラストを悪化させてしまうため、偏光子とλ/4板からなる反射防止フィルムが配置されている。しかし、有機EL素子の発光した光がその偏光子で吸収され、性能を十分に発揮できていなかった。
【0005】
この問題の改善のため、コレステリック液晶相を固定してなるコレステリック液晶層を反射防止フィルムと有機EL基板との間に配置することが知られている(特許文献1)。ただし、この構成では、反射防止の効果は低下し、また詳細は後述するが、斜め方向の反射防止効果も低下する。
【0006】
また、斜め方向の反射を防止する位相差フィルムに関しては、たとえば特許文献2の構成が知られているが、コレステリック液晶層との併用についての記載はない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特許第4011292号公報
【文献】特許第5965675号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、青色輝度の向上、および斜め方向の反射防止機能を高めた有機EL表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この課題を解決するための手段は、以下の通りである。
[1] 視認側から、少なくとも、偏光子、位相差層、円偏光分離層および有機エレクトロルミネセンス発光素子が、この順に配置され、
位相差層の面内レタデーションRe(550)が100~160nmであり、円偏光分離層が、425~475nmの範囲を選択反射中心波長とするコレステリック液晶層であり、さらに偏光子と有機エレクトロルミネセンス発光素子との間に配置される光学的な機能を有する部材の厚さ方向のレタデーションRth(550)の和が-50~50nmである、有機エレクトロルミネセンス表示装置。
[2] コレステリック液晶層の螺旋の巻き数が4~8である、[1]に記載の有機エレクトロルミネセンス表示装置。
[3] 偏光子と有機エレクトロルミネセンス発光素子との間に、さらに、Cプレートが配置され、コレステリック液晶層の螺旋の巻き数が6~8である、[1]または[2]に記載の有機エレクトロルミネセンス表示装置。
[4] 位相差層が、Aプレートであり、コレステリック液晶層の螺旋の巻き数が4または5である、[1]または[2]に記載の有機エレクトロルミネセンス表示装置。
[5] 位相差層が、Bプレートであり、コレステリック液晶層の螺旋の巻き数が6~8である、[1]または[2]に記載の有機エレクトロルミネセンス表示装置。
[6] 位相差層が逆波長分散性を示す、[1]~[5]のいずれかに記載の有機エレクトロルミネセンス表示装置。
[7] 円偏光分離層が円盤状液晶化合物からなるコレステリック液晶層である、[1]~[6]のいずれかに記載の有機エレクトロルミネセンス表示装置。
[8] 円偏光分離層が棒状液晶化合物からなるコレステリック液晶層である、[1]~[6]のいずれかに記載の有機エレクトロルミネセンス表示装置。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、青色輝度の向上、および斜め方向の反射防止機能を高めた有機EL表示装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、本発明の有機EL表示装置の一例を示す概念図である。
【
図2】
図2は、
図1に示す有機EL表示装置の作用を説明するための概念図である。
【
図3】
図3は、本発明の有機EL表示装置の別の例を示す概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の有機エレクトロルミネセンス表示装置(有機EL表示装置)について、詳細に説明する。
【0013】
なお、本明細書において、Re(λ)、Rth(λ)は、各々、波長λにおける面内のレタデーション、および、厚さ方向のレタデーションを表す。特に記載がないときは、波長λは、550nmとする。
本明細書において、Re(λ)、Rth(λ)は、AxoScan(Axometrics社製)において、波長λで測定した値である。AxoScanにて平均屈折率((nx+ny+nz)/3)と膜厚(d(μm))を入力することにより、
遅相軸方向(°)
Re(λ)=R0(λ)
Rth(λ)=((nx+ny)/2-nz)×d
が算出される。
なお、R0(λ)は、AxoScanで算出される数値として表示されるものであるが、Re(λ)を意味している。
【0014】
本明細書において、可視光は、電磁波のうち、ヒトの目で見える波長の光であり、380~780nmの波長域の光を示す。非可視光は、380nm未満の波長域または780nmを超える波長域の光である。
またこれに限定されるものではないが、可視光のうち、420~490nmの波長域の光は青光であり、495~570nmの波長域の光は緑光であり、620~750nmの波長域の光は赤光である。
【0015】
図1に、本発明の有機エレクトロルミネセンス(有機EL(Electro Luminescence))表示装置の一例を概念的に示す。
図1に示す本発明の有機EL表示装置10は、視認側から、偏光子12、位相差層14、円偏光分離層16、および、有機EL発光素子(有機エレクトロルミネセンス発光素子)18を、この順番で有する。
【0016】
本発明では、偏光子12および位相差層14に加え、円偏光分離層16を設け、かつ、円偏光分離層16に、青光のみ反射するコレステリック液晶層を使用することで、青光の輝度を上げ、かつ、反射も抑制できる。特に、斜め方向の反射を抑制できる。
【0017】
反射、特に、斜め方向の反射が抑制できるのは、以下の理由による。
後述するが、円偏光分離層16は、コレステリック液晶層である。コレステリック液晶層とは、具体的には、コレステリック液晶相を固定してなる、コレステリック液晶構造を有する層である。このような円偏光分離層16は、反射帯域以外における光にとって、コレステリック液晶のカイラル性が平均化されるため、実質Cプレートとなる。またコレステリック液晶は、斜め方向で反射帯域が短波シフトするため、正面で青光反射するものは、斜め方向において可視域ではCプレートとして機能する。一方で、正面で緑光または赤光を反射するコレステリック液晶では、斜め方向でも色味が付き、反射防止効果が低減するため、使用できない。
【0018】
また、正面方向は青光のみ反射することで、正面方向の反射防止効果低下を可能なかぎり抑制することができる。これは、輝度への影響がすくないためである。
【0019】
本発明においては、偏光子12および位相差層14と、有機EL発光素子18(有機EL発光素子基板)との間に、青光を選択反射中心波長とするコレステリック液晶層を有する円偏光分離層16を配置する。ここで、位相差層14として、Rth(550)が正の値である+AプレートまたはBプレートを用い、また、円偏光分離層16のコレステリック液晶層として、円盤状液晶化合物からなるコレステリック液晶層を使用する組み合わせがより好ましい。円盤状液晶化合物からなるコレステリック液晶層は、反射帯域以外においては、+Cプレートとして機能するためである。さらに、位相差層14(λ/4フィルム)は逆波長分散性を有することが好ましい。
【0020】
もしくは、位相差層14として、Rth(550)が負の値である-AプレートまたはBプレートを用い、円偏光分離層16のコレステリック液晶層として、棒状液晶化合物からなるコレステリック液晶層を使用する組み合わせも好ましい。棒状液晶化合物からなるコレステリック液晶層は、反射帯域以外においては、-Cプレートとして機能するためである。
【0021】
[偏光子12]
偏光子12は、一方向の透過軸(偏光軸)を有し、自然光を特定の直線偏光に変換する機能を有する直線偏光板であればよい。偏光子12としては、例えば、各種の有機EL表示装置において、反射防止層を構成するために用いられている偏光子が、各種、利用可能である。
従って、偏光子12は、例えば、ヨウ素系偏光板、二色性染料を利用した染料系偏光板、および、ポリエン系偏光板の、いずれも用いることができる。ヨウ素系偏光板、および染料系偏光板は、一般に、ポリビニルアルコールにヨウ素または二色性染料を吸着させ、延伸することで作製される。
【0022】
後述する位相差層14は、円偏光分離層16が反射する円偏光の方向に応じて、自身が出射する直線偏光の方向が偏光子12の透過軸と一致するように、遅相軸の方向を調節される。典型的には、位相差層14の遅相軸と偏光子12の透過軸とが成す交差角度を45°±1°とする。
しかしながら、本発明においては、位相差層14の遅相軸と偏光子12の透過軸とが成す交差角度は、45°±1°の範囲外であってもよい。一例として、位相差層14の遅相軸と偏光子12の透過軸とが成す交差角度を38~52°としてもよい。位相差層14の遅相軸と偏光子12の透過軸とが成す交差角度を45°±1°の範囲外、特に上記範囲とすることで、青光の反射を抑えつつ、問題のない範囲で緑光および赤光の反射を増加して、反射防止機能を維持しながら、より優れた反射色相、特に斜めから観察した際の反射色相(視野角特性)を達成できる。この効果は、用いる位相差層14が逆波長分散性である場合に、より好適に得られる。
【0023】
[位相差層14]
(レタデーションRe、Rthの範囲)
本発明における位相差層14の面内レタデーション(Re(λ))は、反射防止の観点で、Re(550)の範囲が、100~160nmであり、110~155nmであることが好ましく、120~150nmであることがより好ましい。
また、コレステリック液晶層との組み合わせを考慮すると、斜め方向の反射防止の観点で、位相差層14の厚さ方向のレタデーションであるRth(550)の絶対値は、50~200nmであることが好ましく、55~180nmであることがより好ましく、60~160nmであることがさらに好ましい。
【0024】
位相差層14は、単層であっても、2層以上の積層体であってもよい。位相差層14は、2層以上の積層体であることが好ましい。
また、位相差層14は、必要に応じて、ガラス基板および樹脂フィルム等の基板上に形成してもよい。
なお、位相差層14をガラス基板および樹脂フィルム等の基板上に形成した場合には、位相差層14のRth(550)は、位相差層14自身のRth(550)と基板のRth(550)との合計のRth(550)を示す。この点に関しては、後述するCプレートおよび円偏光分離層等、偏光子12と有機EL発光素子18との間に設けられる、光が透過する全ての層(光学的な機能を有する部材)で同様である。
【0025】
位相差層14は、λ/4フィルム(λ/4板)であるのが好ましい。特に、λ/4フィルムは、位相差フィルム(光学的に略一軸性または略二軸性)、ネマチック液晶層またはスメクチック液晶層を発現する液晶モノマーを重合して形成した液晶化合物(円盤状液晶、棒状液晶化合物など)の少なくともひとつを含む1層以上の位相差フィルムであることがより好ましい。なかでも、位相差層14は、重合性液晶化合物を用いて形成されたλ/4フィルムであることがさらに好ましい。
位相差フィルムに関しては、フィルム製造時の搬送方向への延伸または搬送方向と垂直方向への延伸、および搬送方向に対して斜め方向に延伸した位相差フィルムを選択することができる。生産性を考慮すると、いわゆるロールトゥロールでの光学シート部材作製が可能な環状ポリオレフィン樹脂(ノルボルネン系樹脂)などを斜め方向に延伸した位相差フィルム、または、透明フィルム上を配向処理し、処理表面に、フィルムの製造時搬送方向に対し、液晶化合物を斜め方向に配向させた層を有するフィルムが好ましい。
【0026】
前述のように、位相差層14は、2層以上の積層体(2層以上の位相差層の積層体)であってもよい。
本発明においては、位相差層14が2層以上の積層体である場合では、積層体を1層の位相差層14として扱う。従って、位相差層14が2層以上の積層体である場合には、面内レタデーション(Re(550))および厚さ方向のレタデーション(Rth(550))は、積層体を1層の位相差層14と見なした場合のRe(550)およびRth(550)である。
【0027】
なお、本発明においては、位相差層14が積層体である場合には、Re(λ)およびRth(λ)は、以下の方法で測定する。
Re(λ)は、KOBRA 21ADHまたはWR(王子計測機器社製)において、波長λnmの光を位相差層14(フィルム)の法線方向に入射させて測定する。測定波長λnmの選択にあたっては、波長選択フィルターをマニュアルで交換するか、または、測定値をプログラム等で変換して測定できる。
他方、Rth(λ)は、位相差層14を構成する個々の層のRth(λ)の和である。従って、位相差層14を構成する各層のRth(λ)が既知である場合には、位相差層14のRth(λ)は、各層のRth(λ)の和を算出すれば、求められる。なお、位相差層14が、光学的な機能を有する支持体等を有する場合には、この和には、支持体等のRth(λ)も含む。
位相差層を構成する各層のRth(λ)が不明である場合には、Rth(λ)は、上述のRe(λ)の測定を、位相差層14面内の任意の方向を傾斜軸(回転軸)として、位相差層14の法線方向に対して法線方向から片側50°まで10°ステップで各々その傾斜した方向から波長λnmの光を入射させて、全部で6点、行い、測定されたレタデーション値と平均屈折率の仮定値および入力された膜厚値を基に、KOBRA 21ADHまたはWRが算出する。
【0028】
積層体である位相差層14は、Re(550)が100~160nmであり、かつ、偏光子12と有機EL発光素子18との間に設けられる光学的な機能を有する部材のRth(550)の和(合計)を-50~50nmとできるものであれば、公知の各種のものが利用可能である。
一例として、積層体である位相差層14は、複数の位相差層、好ましくは第1位相差層および第2位相差層を有し、波長450nm、550nmおよび650nmで測定したRe(450)、Re(550)およびRe(650)が、式(1)~(3)を満足する、位相差層14が例示される。
式(1) 100≦Re(550)≦180nm
式(2) 0.70≦Re(450)/Re(550)≦0.90
式(3) 1.05≦Re(650)/Re(550)≦1.30
【0029】
第1位相差層および第2位相差層としては、λ/4層およびλ/2層が例示される。
λ/4層およびλ/2層は、いずれが第1位相差層で、いずれが第2位相差層でもよいが、λ/2層を偏光子12側とするのが好ましい。
【0030】
位相差層14がλ/4層とλ/2層との積層体である場合、λ/4層は、波長550nmにおける面内レタデーションRe(550)が『100nm≦Re(550)≦180nm』であるのが好ましい。この範囲であると、λ/2層と組み合わせたときに、反射光の光漏れをより低減できるため好ましい。
また、位相差層14がλ/4層とλ/2層との積層体である場合、λ/2層の面内レタデーションRe1がλ/4層の面内レタデーションRe2に対して実質的に2倍であるように設定されるのが好ましい。ここで、「レタデーションが実質的に2倍である」とは、『Re1=2×Re2±50nm』であることを意味する。
【0031】
(Aプレート、Bプレート、Cプレート)
本明細書において、Aプレートは以下のように定義される。
Aプレートは、+Aプレート(ポジティブAプレート、正のAプレート)と-Aプレート(ネガティブAプレート、負のAプレート)との2種があり、フィルム面内の遅相軸方向(面内での屈折率が最大となる方向)の屈折率をnx、面内の遅相軸と面内で直交する方向の屈折率をny、厚さ方向の屈折率をnzとしたとき、+Aプレートは式(A1)の関係を満たすものであり、-Aプレートは式(A2)の関係を満たすものである。なお、+AプレートはRthが正の値を示し、-AプレートはRthが負の値を示す。
式(A1) nx>ny≒nz
式(A2) ny<nx≒nz
なお、上記「≒」とは、両者が完全に同一である場合だけでなく、両者が実質的に同一である場合も包含する。「実質的に同一」とは、例えば、(ny-nz)×d(ただし、dはフィルムの厚さである)が、-10~10nm、好ましくは-5~5nmの場合も「ny≒nz」に含まれ、(nx-nz)×dが、-10~10nm、好ましくは-5~5nmの場合も「nx≒nz」に含まれる。
【0032】
Bプレートは、nx、ny、nzのいずれも値が異なるものであり、式(B1)の関係を満たす、Rthが負のBプレートと、式(B2)の関係を満たす、Rthが正のBプレートとの2種がある。
式(B1) (nx+ny)/2>nz
式(B2) (nx+ny)/2<nz
【0033】
Cプレートは、+Cプレート(ポジティブCプレート、正のCプレート)と-Cプレート(ネガティブCプレート、負のCプレート)との2種があり、+Cプレートは式(C1)の関係を満たすものであり、-Cプレートは式(C2)の関係を満たすものである。なお、+CプレートはRthが負の値を示し、-CプレートはRthが正の値を示す。
式(C1) nz>nx≒ny
式(C2) nz<nx≒ny
なお、上記「≒」とは、両者が完全に同一である場合だけでなく、両者が実質的に同一である場合も包含する。「実質的に同一」とは、例えば、(nx-ny)×d(ただし、dはフィルムの厚さである)が、0~10nm、好ましくは0~5nmの場合も「nx≒ny」に含まれる。
【0034】
(逆波長分散性)
反射の色味を低減する観点で、位相差層14は、Reが逆波長分散性であることが好ましい。逆波長分散性とは、Re(450)<Re(550)<Re(650)の関係のことをいう。
具体的には、Re(450)/Re(550)は0.8~0.9の範囲が好ましく、Re(650)/Re(550)は1.03~1.25の範囲が好ましい。
また、後述するCプレートに関しては、Cプレートが逆波長分散性とは、Rth(450)<Rth(550)<Rth(650)の関係のことをいう。
【0035】
(位相差層の光学的性質)
位相差層14は、光学的に、一軸性でも二軸性でもよい。
二軸性の位相差層14(Bプレート)を用いることにより、Rth(550)の絶対値が大きくなるので、後述する円偏光分離層16におけるコレステリック液晶の螺旋の巻き数を多くして、青光の輝度を高くできる(青光の照射量(青光の光量)を増やせる)。
その反面、二軸性の位相差層14を用いると、Rth(550)の絶対値が大きくなることに起因して斜め方向の反射防止機能が低減し、さらに、表示の色バランスが崩れる可能性もある。
従って、位相差層14を一軸性にするか二軸性にするかは、有機EL表示装置に要求される特性等に応じて、適宜、選択すればよい。本発明者らの検討によれば、青光の輝度、斜め反射防止性、および、表示の色バランスの総合的なバランスの点で、位相差層14は一軸性(Aプレート)であるのが好ましい。
【0036】
[円偏光分離層16]
前述のように、円偏光分離層16は、コレステリック液晶相を固定してなる、コレステリック液晶構造を有する層である。本発明では『コレステリック液晶相を固定してなる、コレステリック液晶構造を有する層』を『コレステリック液晶層』とも言う。
なお、円偏光分離層16は、必要に応じて、ガラス基板および樹脂フィルム等の基板上に形成してもよい。
(コレステリック液晶構造)
コレステリック構造は特定の波長において、選択反射性を示すことが知られている。選択反射中心波長λ(反射中心波長λ、選択反射の中心波長λ)は、コレステリック構造における螺旋構造のピッチP(=螺旋の周期)に依存し、コレステリック液晶の平均屈折率nとλ=n×Pの関係に従う。そのため、この螺旋構造のピッチを調節することによって、反射中心波長を調節することができる。コレステリック構造のピッチは、円偏光分離層16の形成の際に、重合性液晶化合物とともに用いるキラル剤の種類、またはその添加濃度に依存するため、これらを調節することによって所望のピッチを得ることができる。
なお、ピッチの調節については富士フイルム研究報告No.50(2005年)p.60-63に詳細な記載がある。螺旋のセンスおよびピッチの測定法については「液晶化学実験入門」日本液晶学会編 シグマ出版2007年出版、46頁、および「液晶便覧」液晶便覧編集委員会 丸善 196頁に記載の方法を用いることができる。
【0037】
(選択反射中心波長)
本発明において、円偏光分離層16の選択反射中心波長と半値幅は下記のように求めることができる。
分光光度計UV3150(島津製作所製)を用いて円偏光分離層の透過スペクトルを測定すると、選択反射領域に透過率の低下ピークがみられる。この最も大きいピーク高さの1/2の高さの透過率となる2つの波長のうち、短波側の波長の値をλ1(nm)、長波側の波長の値をλ2(nm)とすると、選択反射中心波長と半値幅は下記式で表すことができる。
選択反射中心波長=(λ1+λ2)/2
半値幅=(λ2-λ1)
【0038】
ここで、本発明においては、円偏光分離層16(コレステリック液晶層)による選択反射の半値幅には制限はないが、狭い方が好ましい。円偏光分離層16による選択反射の半値幅は、20~100nmが好ましく、30~60nmがより好ましく、35~50nmがさらに好ましい。
円偏光分離層16による選択反射の半値幅を上述の範囲とすることにより、青光の輝度向上効果を好適に得られると共に、有機EL表示装置10の内部における円偏光分離層16に起因する多重反射を抑えられることにより、外光の映り込み(いわゆるハロー現象)を抑制して、より優れた表示が可能になる。
【0039】
コレステリック液晶構造は、走査型電子顕微鏡(SEM(Scanning Electron Microscope))によって観測される円偏光分離層16の形成面に対して垂直な断面画像において、明部と暗部との縞模様を与える。この明部と暗部の繰り返し2回分(明部3つおよび暗部2つ分)が螺旋1ピッチ分(螺旋の巻き数1回分)に相当する。このことからコレステリック液晶層の螺旋の巻き数は、SEM断面図から測定することができる。上記縞模様の各線の法線が螺旋軸方向となる。
【0040】
(コレステリック構造の作製方法)
コレステリック構造は、コレステリック液晶相を固定して得ることができる。コレステリック液晶相を固定した構造は、コレステリック液晶相となっている液晶化合物の配向が保持されている構造であればよく、典型的には、重合性液晶化合物をコレステリック液晶相の配向状態としたうえで、紫外線照射、加熱等によって重合、硬化し、流動性が無い層を形成して、同時に、外場または外力によって配向形態に変化を生じさせることない状態に変化した構造であればよい。なお、コレステリック液晶相を固定した構造においては、コレステリック液晶相の光学的性質が保持されていれば十分であり、液晶化合物はもはや液晶性を示していなくてもよい。例えば、重合性液晶化合物は、硬化反応により高分子量化して、もはや液晶性を失っていてもよい。
【0041】
コレステリック構造の形成に用いる材料としては、液晶化合物を含む液晶組成物などが挙げられる。液晶化合物は重合性液晶化合物であることが好ましい。
【0042】
重合性液晶化合物を含む液晶組成物はさらに、界面活性剤、キラル剤、および、重合開始剤などを含む。界面活性剤、キラル剤、および、重合開始剤としては、例えば、特開2016-197219号公報に記載の化合物が挙げられる。
【0043】
重合性液晶化合物は、棒状液晶化合物であっても、円盤状液晶化合物であってもよい。
重合性基としては、アクリロイル基、メタクリロイル基、エポキシ基、および、ビニル基等を挙げることができる。重合性液晶化合物を硬化させることにより、液晶化合物の配向を固定することができる。重合性基を有する液晶化合物は、モノマーであるか、重合度が100未満の比較的低分子量な液晶化合物が好ましい。
【0044】
(円盤状液晶化合物)
円盤状液晶化合物としては、例えば、特開2007-108732号公報、特開2010-244038号公報、特開2013-195630号公報、特開平10-307208号公報、および、特開2000-171637号公報に記載のものが挙げられる。一般的には、特開2013-195630号公報では、円盤状液晶化合物はトリフェニレン構造を有する化合物が好ましいと記載がある。一方で、トリフェニレン構造よりも3置換ベンゼン構造を有する円盤状液晶化合物の方が、Δnが高く、反射波長帯域を広くすることができるため、必要によって適宜選択することができる。
【0045】
(棒状液晶化合物)
棒状液晶化合物としては、アゾメチン類、アゾキシ類、シアノビフェニル類、シアノフェニルエステル類、安息香酸エステル類、シクロヘキサンカルボン酸フェニルエステル類、シアノフェニルシクロヘキサン類、シアノ置換フェニルピリミジン類、アルコキシ置換フェニルピリミジン類、フェニルジオキサン類、トラン類、および、アルケニルシクロヘキシルベンゾニトリル類が好ましく用いられる。
【0046】
重合性液晶化合物である棒状液晶化合物としては、Makromol.Chem.,190巻、2255頁(1989年)、Advanced Materials 5巻、107頁(1993年)、米国特許4683327号、同5622648号、同5770107号、WO95/22586号、同95/24455号、同97/00600号、同98/23580号、同98/52905号、特開平1-272551号、同6-16616号、同7-110469号、同11-80081号、および、特願2001-64627号の各公報などに記載の化合物を用いることができる。更に棒状液晶化合物としては、例えば、特表平11-513019号公報または特開2007-279688号公報に記載の化合物も好ましく用いることができる。
【0047】
(コレステリック液晶の螺旋の巻き数(螺旋のピッチ数))
コレステリック液晶層である円偏光分離層16において、青光の反射率は、コレステリック液晶層の螺旋の巻き数に影響される。具体的には、コレステリック液晶層の螺旋の巻き数が多いほど、青光の反射率を高くして、青光の輝度を高くできる。
その反面、円偏光分離層16は、コレステリック液晶層の螺旋の巻き数が多くなるほど、Rth(550)の絶対値が大きくなる。
後述するが、本発明の有機EL表示装置では、偏光子12と有機EL発光素子18との間に設けられる光学的な機能を有する部材のRth(550)の和(合計)が-50~50nmである。
従って、円偏光分離層16におけるコレステリック液晶層の螺旋の巻き数は、要求される青光の輝度、および、偏光子12と有機EL発光素子18との間に設けられる光学的な機能を有する部材のRth(550)等に応じて、適宜、設定すればよい。
コレステリック液晶層の青光反射率を維持しつつ、コレステリック液晶層のRth(550)を最適にする観点において、コレステリック液晶層の螺旋の巻き数は4~8ピッチ(4~8回)が好ましい。
コレステリック液晶層の螺旋の巻き数の制御は円偏光分離層16の膜厚制御により可能である。
この点を考慮すると、円偏光分離層16の膜厚は1.0~2.5μmであることが好ましく、1.2~2.3μmであることがより好ましい。
【0048】
コレステリック液晶層の螺旋の巻き数は、位相差層14(λ/4フィルム)が一軸性の位相差層(例えば、Aプレート)であり、かつ、図示例の有機EL表示装置10のように、偏光子12と有機EL発光素子18との間に、光学的な機能を有する部材として位相差層14および円偏光分離層16しか部材を有さない場合には、コレステリック液晶層の螺旋の巻き数は、4または5が好ましい。
なお、本発明において、「光学的な機能を有する部材」とは、一例として、Reが5nm以上、および、Rthの絶対値が10nm以上の少なくとも一方を満たす部材を示す。
また、位相差層14(λ/4フィルム)が二軸性の位相差層(例えば、Bプレート)であり、かつ、図示例の有機EL表示装置10のように、偏光子12と有機EL発光素子18との間に、光学的な機能を有する部材として位相差層14および円偏光分離層16しか部材を有さない場合には、コレステリック液晶層の螺旋の巻き数は、6~8が好ましい。
また、後述するように、Cプレートを用いる場合は、青光の反射率をより高めることができる点で、コレステリック液晶層の螺旋の巻き数は6~8が好ましく、7~8がより好ましい。
【0049】
[位相差層14と円偏光分離層16との好ましい組合せ]
(Rthの和)
本発明の有機EL表示装置では、偏光子12と有機EL発光素子18との間に設けられる光学的な機能を有する部材のRth(550)の和(合計)が-50~50nm(±50nm)である。言い換えれば、本発明の有機EL表示装置では、偏光子12と有機EL発光素子18との間に設けられる光学的な機能を有する部材のRth(550)の和(合計)の絶対値が50nm以下である。
斜め方向の反射防止機能を高める観点で、偏光子12と有機EL発光素子18との間に設けられる光学的な機能を有する部材のRth(550)の和(合計)は、-45~45nmであることが好ましく、-40~40nmであることがより好ましく、-20~20nmであることがさらに好ましく、-10~10nmであることが特に好ましい。
特に、偏光子12と有機EL発光素子18との間にCプレートが配置される場合は、偏光子12と有機EL発光素子18との間に設けられる光学的な機能を有する部材のRth(550)の和(合計)は、-20~20nmであることが好ましく、-10~10nmであることがより好ましい。
【0050】
すなわち、
図1に示す有機EL表示装置10であれば、位相差層14のRth(550)と、円偏光分離層16のRth(550)との和(合計)が-50~50nmである。
また、後述する、
図3に示すCプレート32を有する有機EL表示装置30の構成であれば、位相差層14のRth(550)と、円偏光分離層16のRth(550)と、Cプレート32のRth(550)との和(合計)が-50~50nmである。
本発明の有機EL表示装置は、このような構成を有することにより、良好な斜め方向の反射防止機能を実現している。
【0051】
従って、位相差層14と円偏光分離層16との好ましい組合せの1つとしては、前述のように、Rth(550)が正の値である、逆波長分散性の+Aプレートまたは逆波長分散性のBプレートと、可視光領域で実質的に+Cプレートとして機能する、Rth(550)が負の値である円盤状液晶化合物からなる円偏光分離層16(コレステリック液晶層)と、の組み合わせが例示される。
また、位相差層14と円偏光分離層16との好ましい組合せとしての別の例としては、前述のように、Rth(550)が負の値である、順分散性の-Aプレートまたは順分散性のBプレートと、可視光領域で実質的に-Cプレートとして機能する、Rth(550)が正の値である棒状液晶化合物からなる円偏光分離層16(コレステリック液晶層)と、の組み合わせが例示される。
【0052】
(有機EL発光素子18)
有機EL発光素子18は、有機ELによって画像を表示するものである。
一例として、有機EL発光素子18は、透明電極層(TFT(Thin Film Transistor)、薄膜トランジスタ)、ホール注入層、ホール輸送層、有機EL発光層、正孔阻止層、電子輸送層、電子注入層、および、陰極等を有する、有機ELディスプレイおよび有機EL照明装置等の有機EL発光装置(OLED)を構成する、公知の有機EL発光素子である。
また、有機EL発光素子18としては、公知の有機ELディスプレイから、反射防止層(反射防止フィルム)を取り除いた物、反射防止層を有さない有機ELディスプレイ、および、公知の有機ELディスプレイ等も利用可能である。
【0053】
(青光の輝度向上作用)
このような本発明の有機EL表示装置において、反射防止機能の向上効果、特に、斜め方向から観察した際の反射防止機能を好適に得られる理由は、先に述べた。
一方、青色の輝度向上効果は、以下の作用による。
図2に、
図1に示す本発明の有機EL表示装置10、および、従来の有機EL表示装置100を分解して概念的に示す。周知のように、従来の有機EL表示装置100も、通常、反射防止層として、偏光子12と位相差層14(λ/4板)との組み合わせを有する。
【0054】
従来の有機EL表示装置100において、有機EL発光素子18が発光した青光bは、まず、位相差層14に入射して、何の作用も受けずに透過して、次いで、偏光子12に入射する。なお、
図2において、青光bの矢印の長さは、光強度(光量)を表す。
偏光子12は、所定方向(x方向とする)の直線偏光しか透過しないので、x方向と直交する方向の直線偏光は、偏光子12で遮断される。従って、偏光子12を透過する青光bは、半分のx方向の青の直線偏光bxのみとなる。
【0055】
これに対し、本発明の有機EL表示装置10において、有機EL発光素子18が発光した青光bは、まず、円偏光分離層16に入射する。一例として、円偏光分離層16のコレステリック液晶層が青の右円偏光bRのみを反射する層である場合には、青の左円偏光bLは透過し、青の右円偏光bRは反射される。
円偏光分離層16を透過した青の左円偏光bLは、次いで、位相差層14(λ/4板)に入射して、透過することで、x方向の青の直線偏光bxとされる。
青の直線偏光bxは、次いで、偏光子12に入射する。前述のように、偏光子12は、x方向の直線偏光のみを透過する。従って、x方向の直線偏光である青の直線偏光bxは、偏光子12を透過して、出射される。
【0056】
一方、円偏光分離層16で反射された青の右円偏光bRは、有機EL発光素子18に入射して反射され、青の左円偏光bLとなる。
有機EL発光素子18で反射された青の左円偏光bLは、次いで、円偏光分離層16に入射するが、前述のように、青の右円偏光bRのみを反射するので、青の左円偏光bLは、円偏光分離層16を透過する。
これ以降は、先と同様に、青の左円偏光bLは、次いで、位相差層14よってx方向の直線偏光である青の直線偏光bxとされ、次いで、x方向の直線偏光のみを透過する偏光子12を透過して、出射される。
【0057】
すなわち、円偏光分離層16を有する本発明の有機EL表示装置10では、位相差層14が出射する直線偏光の方向と、偏光子12の透過軸の方向とが一致(略一致)するように、円偏光分離層16が反射する円偏光の方向、位相差層14の遅相軸、および、偏光子12の透過軸とを調節することにより、従来の有機EL表示装置の約2倍の青光を出射できる。
従って、本発明の有機EL表示装置10によれば、従来に比して、青光の輝度を約2倍にできるので、青光に合わせて赤光および緑光の輝度を向上することで、高輝度な画像表示が可能になる。逆に、表示輝度が従来の有機EL表示装置と同様でよい場合には、青光光源(青光を出射する有機EL光源)の出力を低減できるので、青光光源を長寿命化して、耐久性の高い有機EL表示装置10を実現できる。
【0058】
(必要に応じて追加的に使用するCプレート)
本発明の有機EL表示装置は、偏光子12と有機EL発光素子18との間に設けられる光学的な機能を有する部材のRth(550)の和(合計)を-50~50nmとして、反射防止機能、特に斜め方向の反射防止機能を達成するため、
図3に概念的に示す有機EL表示装置30のように、必要に応じて、Cプレート32を追加してもよい。
【0059】
前述のように、コレステリック液晶層である円偏光分離層16では、コレステリック液晶層の螺旋の巻き数が多いほど、青光の反射率を高くして、青光の輝度を高くできる。
その反面、コレステリック液晶層の螺旋の巻き数が多くなると(例えば、螺旋の巻き数が6以上の場合)、円偏光分離層16(コレステリック液晶層)のRth(550)の絶対値が大きくなり、位相差層14との組み合わせで、偏光子12と有機EL発光素子18との間に設けられる光学的な機能を有する部材のRth(550)の和(合計)を-50~50nmの範囲にすることが困難になる場合も生じる。
これに対して、位相差層14と円偏光分離層16との組み合わせに応じて、Rth(550)が正の値である-Cプレート32、または、Rth(550)が負の値である+Cプレート32を、偏光子12と有機EL発光素子18との間に設けることにより、位相差層14および円偏光分離層16のRth(550)によらず、偏光子12と有機EL発光素子18との間に設けられる光学的な機能を有する部材のRth(550)の和(合計)を-50~50nmとすることが可能になる。
【0060】
一例として、前述のように、Rth(550)が正の値である逆波長分散性の+Aプレートまたは逆波長分散性のBプレートからなる位相差層14と、可視光領域で実質的に+Cプレートとして機能する、Rth(550)が負の値である円盤状液晶化合物からなる円偏光分離層16(コレステリック液晶層)と、を用いる場合には、Rth(550)が正の値である-Cプレートを、偏光子12と有機EL発光素子18との間に設ける。
また、前述のように、Rth(550)が負の値である順分散性の-Aプレートまたは順分散性のBプレートからなる位相差層14と、可視光領域で実質的に-Cプレートとして機能する、Rth(550)が正の値である棒状液晶化合物からなる円偏光分離層16と、を用いる場合には、Rth(550)が負の値である+Cプレートを、偏光子12と有機EL発光素子18との間に設ける。
【0061】
このようなCプレート32を用いることにより、偏光子12と有機EL発光素子18との間の部材のRth(550)の和(合計)を、高い自由度で調節できる。
従って、Cプレート32を用いることにより、円偏光分離層16(コレステリック液晶層)の螺旋の巻き数を多くして、円偏光分離層16による青光の反射率を向上して、青光の輝度を十分に高くした上で、偏光子12と有機EL発光素子18との間の光学的な機能を有する部材のRth(550)の和(合計)の絶対値を非常に小さくして、斜め方向の反射防止機能も高くできる。
すなわち、本発明の有機EL表示装置においては、有機EL表示装置の厚さ、偏光子12と有機EL発光素子18との間の層構成の複雑さ、コスト、および、生産性等に問題がなければ、性能の点では、
図3に示す有機EL表示装置30のように、Cプレート32を有する構成が、最も有利である。
言い換えれば、有機EL表示装置の厚さ、偏光子12と有機EL発光素子18との間の層構成の簡易性、コスト、および、生産性等の点では、
図1に示す有機EL表示装置10のように、偏光子12と有機EL発光素子18との間には、位相差層14および円偏光分離層16のみを有する構成が有利である。
【0062】
Cプレート32は、公知のものが、全て、利用可能である。また、市販の光学フィルムをCプレート32として用いてもよい。
Cプレート32の配置場所は、位相差層14と円偏光分離層16との間、もしくは、円偏光分離層16と有機EL発光素子18との間が好ましい。また、Cプレート32のRth(550)に制限は無いが、位相差による色味付きをおこさないためには、Cプレート32のRth(550)の絶対値は300nm以下であることが好ましい。
また、Cプレート32は、必要に応じて、同じCプレート32または異なるCプレート32を、複数枚、併用してもよい。
【実施例】
【0063】
(仮支持体のPET(Polyethylene terephthalate)フィルムの作製)
富士フイルム社製のPETフィルム(厚さ75μm)を準備した。このPETフィルムにラビング処理を施して、仮支持体のPETフィルムとした。ラビング処理の方向は、フィルム長手方向と平行とした。
なお、仮支持体としては、上記PETフィルム以外に、一般的なPETフィルム(たとえば、東洋紡社製、コスモシャインA4100)を用いることができることを確認した。
【0064】
(ガラス基板)
ガラス(コーニング社製、イーグルガラス)に、粘着剤(総研化学社製、SK粘着剤)を貼合して、ガラス基板とした。
【0065】
(青光反射コレスレリック液晶層用塗布液の調製1)
下記組成のコレステリック液晶層用塗布液B1を調製した。
【0066】
──────────────────────────────────
コレステリック液晶層用塗布液B1
――――――――――――――――――――――――――――――――――
・円盤状液晶化合物(化合物101) 80質量部
・円盤状液晶化合物(化合物102) 20質量部
・重合性モノマー1 10質量部
・界面活性剤1 0.3質量部
・重合開始剤1 3質量部
・キラル剤1 5.04質量部
・メチルエチルケトン 290質量部
・シクロヘキサノン 50質量部
――――――――――――――――――――――――――――――――――
【0067】
【化1】
【化2】
【化3】
キラル剤1
【化4】
【0068】
(コレステリック液晶層(円偏光分離層)B1の作製)
仮支持体のPETフィルムのラビング処理面に、コレステリック液晶層塗布液B1を、バーを用いて塗布した。続いて、塗布膜を70℃、2分間乾燥し、溶媒を気化させた後に115℃で3分間加熱熟成を行って、均一な配向状態を得た。その後、この塗布膜を45℃に保持し、これに窒素雰囲気下で高圧水銀灯を用いて紫外線照射(300mJ/cm2)して、青の右円偏光を反射するコレステリック液晶層B1を形成した。コレステリック液晶層B1の断面をSEM観察した結果、膜厚は1.8μm、コレステリック液晶の螺旋の巻き数は6ピッチであった。
【0069】
次に、ガラス基板の粘着剤側に、作製したコレステリック液晶層B1側を貼合し、仮支持体のPETフィルムを剥離した。
コレステリック液晶層B1の位相差をAxoScanで測定した結果、Re(550)/Rth(550)=1nm/-130nmであった。また、法線方向から光に対する透過率が最小となる波長(選択反射中心波長)は450nmであり、その透過率は53%であった。
これより、コレステリック液晶層B1は、青光を反射し、かつ、反射帯域以外では+Cプレートになっていることを確認した。
【0070】
(コレステリック液晶層(円偏光分離層)B4、B5およびB7の作製)
コレステリック液晶層の膜厚を、それぞれ、1.2μm(B4)、1.5μm(B5)、および、2.3μm(B7)にした以外は、コレステリック液晶層B1と同様に、仮支持体のPETフィルム上にコレステリック液晶層を形成し、形成したコレステリック液晶層をガラス基板の粘着剤側に転写して、コレステリック液晶層B4、コレステリック液晶層B5、および、コレステリック液晶層B7をそれぞれ作製した。
コレステリック液晶層B1と同様に、コレステリック液晶層B4、コレステリック液晶層B5、および、コレステリック液晶層B7の螺旋の巻き数を確認したところ、それぞれ、4ピッチ(B4)、5ピッチ(B5)、および、8ピッチ(B7)であった。
また、コレステリック液晶層B1と同様に、コレステリック液晶層B4、コレステリック液晶層B5、および、コレステリック液晶層B7のRe(550)/Rth(550)を測定したところ、それぞれ、1nm/-85nm(B4)、1nm/-100nm(B5)、および、1nm/-155nm(B7)であった。
さらに、コレステリック液晶層B1と同様に、コレステリック液晶層B4、コレステリック液晶層B5、および、コレステリック液晶層B7の選択中心反射波長(450nm)における透過率を測定したところ、それぞれ、64%(B4)、54%(B5)、および、50%(B7)であった。
コレステリック液晶層B5に関しては、分光光度計UV3150(島津製作所製)を用いて、選択反射の半値幅を測定した。その結果、選択反射の半値幅は60nmであった。
【0071】
(青光反射コレスレリック液晶層用塗布液の調製2)
下記組成のコレステリック液晶層用塗布液B2を調製した。
【0072】
──────────────────────────────────
コレステリック液晶層用塗布液B2
――――――――――――――――――――――――――――――――――
・下記の棒状液晶化合物の混合物 100.0質量部
・IRGACURE(登録商標)819(BASF社製) 10.0質量部
・下記構造のキラル剤 6.5質量部
・下記構造の界面活性剤 0.08質量部
・メトキシエチルアクリレート 145.0質量部
――――――――――――――――――――――――――――――――――
【0073】
【0074】
(コレステリック液晶層B2(円偏光分離層)の作製2)
仮支持体のPETフィルムのラビング処理面に、コレステリック液晶層塗布液B2を、バーを用いて塗布した。続いて、塗布膜を95℃、1分間乾燥した後、25℃で、高圧水銀灯を用いて紫外線照射(500mJ/cm2)して、青の右円偏光を反射するコレステリック液晶層B2を形成した。コレステリック液晶層B2の断面をSEM観察した結果、膜厚は1.8μm、コレステリック液晶の螺旋の巻き数は6ピッチであった。
【0075】
次に、ガラス基板の粘着側に、作製したコレステリック液晶層B2側を貼合して、仮支持体のPETフィルムを剥離した。コレステリック液晶層B2の位相差を、AxoScanで測定した結果、Re(550)/Rth(550)=1nm/160nmであった。また、法線方向から光に対する透過率が最小となる波長(選択反射中心波長)は450nmであり、その透過率は53%であった。
これより、コレステリック液晶層B2は、青光を反射し、かつ、反射帯域以外では-Cプレートになっていることを確認した。
【0076】
(コレステリック液晶層(円偏光分離層)B3およびB6の作製)
コレステリック液晶層の膜厚を、それぞれ、1.2μm(B3)、および、2.4μm(B6)にした以外は、コレステリック液晶層B2と同様に、仮支持体のPETフィルム上にコレステリック液晶層を形成し、形成したコレステリック液晶層をガラス基板の粘着剤側に転写して、コレステリック液晶層B3、および、コレステリック液晶層B6を作製した。
コレステリック液晶層B2と同様に、コレステリック液晶層B3、および、コレステリック液晶層B6の螺旋の巻き数を確認したところ、それぞれ、4ピッチ(B3)、および、8ピッチ(B6)であった。
また、コレステリック液晶層B2と同様に、コレステリック液晶層B3、および、コレステリック液晶層B6のRe(550)/Rth(550)を測定したところ、それぞれ、1nm/110nm(B3)、および、1nm/210nm(B6)であった。
さらに、コレステリック液晶層B2と同様に、コレステリック液晶層B3、および、コレステリック液晶層B6の選択反射中心波長(450nm)における透過率を測定したところは、それぞれ、63%(B3)、および、50%(B6)であった。
【0077】
(コレステリック液晶層(円偏光分離層)B8の作製)
窒素雰囲気下で高圧水銀灯を用いて紫外線照射(300mJ/cm2)する際に、100℃に加熱しながら紫外線照射し、かつ、コレステリック液晶層の膜厚を1.5μm(B5と同じ膜厚)とした以外は、コレステリック液晶層B1と同様に、仮支持体のPETフィルム上にコレステリック液晶層を形成し、形成したコレステリック液晶層をガラス基板の粘着剤側に転写して、コレステリック液晶層B8を作製した。すなわち、このコレステリック液晶層B8は、紫外線照射時に加熱した以外は、コレステリック液晶層B5と同様に作製したコレステリック液晶層である。
コレステリック液晶層B1と同様に、コレステリック液晶層B8の螺旋の巻き数を確認したところ、5ピッチであった。
また、コレステリック液晶層B1と同様に、コレステリック液晶層B8のRe(550)/Rth(550)を測定したところ、1nm/-100nmであった。
さらに、コレステリック液晶層B1と同様に、コレステリック液晶層B8の選択反射中心波長(450nm)における透過率を測定したところ、42%であった。また、コレステリック液晶層B5と同様に選択反射の半値幅を測定したところ、コレステリック液晶層B8の選択反射の半値幅は45nmであった。
【0078】
(青光反射コレスレリック液晶層用塗布液の調製3)
青色反射コレステリック液晶層塗布液B2において、棒状液晶化合物の混合物([化5])を、下記構造の棒状液晶化合物に変更して、コレステリック液晶層用塗布液B3を調製した。
【0079】
【0080】
(コレステリック液晶層(円偏光分離層)B9の作製)
コレステリック液晶層の膜厚を3.0μmとし、さらに、コレステリック液晶層用塗布液B1を、コレステリック液晶層用塗布液B3に変更した以外は、コレステリック液晶層B1と同様に、仮支持体のPETフィルム上にコレステリック液晶層を形成し、形成したコレステリック液晶層をガラス基板の粘着剤側に転写して、青色の右円偏光を反射するコレステリック液晶層B9を作製した。
コレステリック液晶層B1と同様に、コレステリック液晶層B9の螺旋の巻き数を確認したところ、5ピッチであった。
また、コレステリック液晶層B1と同様に、コレステリック液晶層B9のRe(550)/Rth(550)を測定したところ、1nm/110nmであった。
さらに、コレステリック液晶層B1と同様に、コレステリック液晶層B9の選択反射中心波長(450nm)における透過率を測定したところ、42%であった。また、コレステリック液晶層B5と同様に選択反射の半値幅を測定したところ、コレステリック液晶層B9の選択反射の半値幅は30nmであった。
【0081】
(位相差層の作製1)
下記組成の光学異方性層用塗布液01を調製した。
【0082】
――――――――――――――――――――――――――――――――――
光学異方性層用塗布液01
――――――――――――――――――――――――――――――――――
・下記液晶化合物L-3 43.75質量部
・下記液晶化合物L-4 43.75質量部
・下記重合性化合物A-1 12.50質量部
・下記重合開始剤S-1(オキシム型) 3.00質量部
・レベリング剤G-1 0.20質量部
・ハイソルブMTEM(東邦化学工業社製) 2.00質量部
・NKエステルA-200(新中村化学工業社製) 1.00質量部
・メチルエチルケトン 424.8質量部
――――――――――――――――――――――――――――――――――
なお、下記液晶化合物L-3およびL-4のアクリロイルオキシ基に隣接する基は、プロピレン基(メチル基がエチレン基に置換した基)を表し、下記液晶化合物L-3およびL-4は、メチル基の位置が異なる位置異性体の混合物を表す。
【0083】
【0084】
仮支持体のPETフィルムのラビング処理面に、光学異方性層用塗布液01を塗布した。続いて、塗布膜を90℃、2分間乾燥し、溶媒を気化させた後に60℃で3分間加熱熟成を行って、均一な配向状態を得た。その後、この塗布膜を60℃に保持し、これに窒素雰囲気下で高圧水銀灯を用いて紫外線照射(500mJ/cm2)して、膜厚2.0μmの光学異方性層01(位相差層)を作製した。
【0085】
次に、ガラス基板の粘着剤側に、作製した光学異方性層01を貼合して、仮支持体のPETフィルムを剥離した。光学異方性層01の位相差を、AxoScanで測定した結果、下記の値であった。測定波長は450nm、550nmおよび650nmを用いた。
450nm 550nm 650nm
Re/Rth(nm) 119/60 140/70 147/74
上記は、波長450nmにおけるReおよびRthが、それぞれ、119nmおよび60nmであり、波長550nmにおけるReおよびRthが、それぞれ、140nmおよび70nmであり、波長650nmにおけるReおよびRthが、それぞれ、147nmおよび74nmであることを示す。
これより、光学異方性層01は、逆波長分散性を有する+Aプレートのλ/4フィルムであることを確認した。以下、光学異方性層01をλ/4フィルム01とする。
【0086】
(位相差層の作製2)
下記組成の光学異方性層用塗布液02を調製した。
【0087】
――――――――――――――――――――――――――――――――――
光学異方性層用塗布液02
――――――――――――――――――――――――――――――――――
・円盤状液晶化合物(上記化合物101) 80質量部
・円盤状液晶化合物(上記化合物102) 20質量部
・配向助剤1 0.9質量部
・配向助剤2 0.1質量部
・上記界面活性剤1 0.3質量部
・上記重合開始剤1 3質量部
・メチルエチルケトン 301質量部
──────────────────────────────────
【0088】
【0089】
仮支持体のPETフィルムのラビング処理面に、光学異方性層用塗布液02を塗布した。続いて、塗布膜を130℃、90秒間乾燥し、溶媒を気化させた後、80℃に保持し、高圧水銀灯を用いて紫外線照射(300mJ/cm2)して、膜厚1.0μmの光学異方性層02(位相差層)を作製した。
【0090】
次に、ガラス基板の粘着剤側に、作製した光学異方性層02を貼合して、仮支持体のPETフィルムを剥離した。光学異方性層02の位相差を、AxoScanで測定した結果、下記の値であった。測定波長は450nm、550nmおよび650nmを用いた。
450nm 550nm 650nm
Re/Rth(nm) 154/-78 140/-70 134/-67
上記は、波長450nmにおけるReおよびRthが、それぞれ、154nmおよび-78nmであり、波長550nmにおけるReおよびRthが、それぞれ、140nmおよび-70nmであり、波長650nmにおけるReおよびRthが、それぞれ、134nmおよび-67nmであることを示す。
これより、光学異方性層02は、順分散性を有する-Aプレートのλ/4フィルムであることを確認した。以下、光学異方性層02をλ/4フィルム02とする。
【0091】
(位相差層の作製3)
<セルロースアシレート溶液の調製>
下記の原料をミキシングタンクに投入し、加熱しながら攪拌して、溶解し、セルロースアシレート溶液を調製した。
セルロースアシレート(アシル基の全置換度:2.1) 100質量部
メチレンクロライド(第1溶媒) 402質量部
メタノール(第2溶媒) 60質量部
下記に示すポリエステル添加剤A 5質量部
下記に示す糖エステル添加剤B 3質量部
【0092】
【0093】
<セルロースアシレートフィルムの作製>
作製したセルロースアシレート溶液を、絶対濾過精度0.01mmの濾紙で濾過した。濾過する際の温度は40℃であった。次いで、ろ過により得られたドープを、バンド流延機を用いて流延した。バンド流延機上で乾燥したフィルムを剥離して、温度190℃、延伸倍率80%の条件で固定端一軸延伸して、膜厚45μmのセルロースアシレートフィルム01を作製した。
【0094】
作製したセルロースアシレートフィルム01の位相差を、AxoScanで測定した結果、下記の値であった。測定波長は450nm、550nmおよび650nmを用いた。
450nm 550nm 650nm
Re/Rth(nm) 124/128 140/140 146/145
上記は、波長450nmにおけるReおよびRthが、それぞれ、124nmおよび128nmであり、波長550nmにおけるReおよびRthが、それぞれ、140nmおよび140nmであり、波長650nmにおけるReおよびRthが、それぞれ、146nmおよび145nmであることを示す。
これより、セルロースアシレートフィルム01は、正のRthを有し、かつ、逆波長分散性を有するBプレートの二軸性のλ/4フィルムであることを確認した。以下、セルロースアシレートフィルム01をλ/4フィルム03とする。
【0095】
(位相差層の作製4)
<ポリスチレン溶液の調製>
下記の原料をミキシングタンクに投入し、加熱しながら攪拌して、溶解し、ポリスチレン溶液を調製した。
ポリスチレンPSJ-G9504(PSジャパン社製) 100質量部
メチレンクロライド 233質量部
【0096】
<ポリスチレンフィルム試料の作製>
作製した溶液を絶対濾過精度10μmの濾紙(東洋濾紙社製、#63)で濾過し、さらに、絶対濾過精度2.5μmの金属焼結フィルター(ポール社製、FH025)で濾過した。その後、特開2006-122889号公報の実施例1に記載されるスロットダイを用いたダイコート法で、ガラス基板上にポリスチレン溶液を塗布し、110℃で30分乾燥させた。
その後、ガラス基板上から形成されたフィルムを剥離して、温度105℃、延伸倍率120%、延伸速度60%/minの条件で固定端一軸延伸し、膜厚27μmのポリスチレンフィルム01を作製した。
【0097】
作製したポリスチレンフィルム01の位相差を、AxoScanで測定した結果、下記の値であった。測定波長は450nm、550nmおよび650nmを用いた。
450nm 550nm 650nm
Re/Rth(nm) 147/-122 140/-116 136/-113
上記は、波長450nmにおけるReおよびRthが、それぞれ、147nmおよび-122nmであり、波長550nmにおけるReおよびRthが、それぞれ、140nmおよび-116nmであり、波長650nmにおけるReおよびRthが、それぞれ、136nmおよび-113nmであることを示す。
これより、ポリスチレンフィルム01は、負のRthを有し、かつ、順分散性を有するBプレートの二軸性のλ/4フィルムであることを確認した。以下、ポリスチレンフィルム01をλ/4フィルム04とする。
【0098】
(位相差層の作製5)
国際公開第2013/137464号の実施例14に記載される、セルロースアシレートフィルム、円盤状液晶化合物を用いるλ/2位相差層、および、円盤状液晶化合物を用いるλ/4位相差層が、この順番で積層された積層フィルム01(光学積層体)を作製した。
積層フィルム01の位相差を、KOBRAで測定した結果、下記の値であった。
450nm 550nm 650nm
Re/Rth(nm) 109/-120 135/-148 147/-161
上記は、波長450nmにおけるReおよびRthが、それぞれ、109nmおよび-120nmであり、波長550nmにおけるReおよびRthが、それぞれ、135nmおよび-148nmであり、波長650nmにおけるReおよびRthが、それぞれ、147nmおよび-161nmであることを示す。
これより、積層フィルム01は、一枚のフィルムと見なした際に、負のRthを有し、かつ、逆波長分散性を有するλ/4フィルムであることを確認した。以下、積層フィルム01をλ/4フィルム05とする。
【0099】
(-Cプレート01)
TACフィルム(トリアセチルセルロースフィルム、富士フイルム社製、フジタックTD80UL)を用意した。
このTACフィルムの位相差を、AxoScanで測定した結果、下記の値であった。測定波長は450nm、550nmおよび650nmを用いた。
450nm 550nm 650nm
Re/Rth(nm) 0/37 0/40 1/42
上記は、波長450nmにおけるReおよびRthが、それぞれ、0nmおよび37nmであり、波長550nmにおけるReおよびRthが、それぞれ、0nmおよび40nmであり、波長650nmにおけるReおよびRthが、それぞれ、1nmおよび42nmであることを示す。
これより、このTACフィルムは、正のRthを有し、かつ、逆波長分散性を有する-Cプレートであることを確認した。以下、このTACフィルムを-Cプレート01とする。
【0100】
(+Cプレート02の作製)
特開2013-222006号公報の実施例の記載を参考に、セルローストリアセテートフィルム(富士フイルム社製、Z-TAC)上に配向膜を形成し、さらに、配向膜上に位相差層用組成物を塗布し、光学異方性層03を形成した。これを光学異方性フィルム03とした。
【0101】
光学異方性フィルム03の位相差を、AxoScanで測定した結果、下記の値であった。測定波長は450nm、550nmおよび650nmを用いた。
450nm 550nm 650nm
Re/Rth(nm) 5/-81 3/-70 2/-67
上記は、波長450nmにおけるReおよびRthが、それぞれ、5nmおよび-81nmであり、波長550nmにおけるReおよびRthが、それぞれ、3nmおよび-70nmであり、波長650nmにおけるReおよびRthが、それぞれ、2nmおよび-67nmであることを示す。
これより、光学異方性フィルム03は、順分散性を有する+Cプレートであることを確認した。以下、この光学異方性フィルム03を、+Cプレート02とする。
【0102】
(+Cプレート03の作製)
光学異方性層の膜厚を変更した以外は、光学異方性層03と同様に光学異方性層04を形成した。これを光学異方性フィルム04とした。
【0103】
光学異方性フィルム04の位相差を、AxoScanで測定した結果、下記の値であった。測定波長は450nm、550nmおよび650nmを用いた。
450nm 550nm 650nm
Re/Rth(nm) 5/-162 3/-140 2/-134
上記は、波長450nmにおけるReおよびRthが、それぞれ、5nmおよび-1620nmであり、波長550nmにおけるReおよびRthが、それぞれ、3nmおよび-140nmであり、波長650nmにおけるReおよびRthが、それぞれ、2nmおよび-134nmであることを示す。
これより、光学異方性フィルム04は、順分散性を有する+Cプレートであることを確認した。以下、この光学異方性フィルム04を、+Cプレート03とする。
【0104】
(偏光子01の作製)
TACフィルム(トリアセチルセルロースフィルム、富士フイルム社製、フジタックTD80UL)を、1.5規定の水酸化ナトリウム水溶液に55℃で2分間浸漬し、室温の水洗浴槽中で洗浄し、30℃で0.1規定の硫酸を用いて中和した。再度、得られたフィルムを室温の水洗浴槽中で洗浄し、更に100℃の温風で乾燥した。
【0105】
また、厚さ80μmのロール状ポリビニルアルコールフィルムをヨウ素水溶液中で連続して5倍に延伸し、乾燥して厚さ20μmの偏光子01を得た。
【0106】
ポリビニルアルコール(クラレ社製、PVA-117H)3%水溶液を接着剤として、上記フジタックTD80ULを偏光子01の片側のみに貼合し、片側偏光子01を作製した。偏光度は99.97%、単板透過率は43%であった。
ここで、偏光度と単板透過率は、分光光度計(日本分光社製、VAP-7070)を用いて測定した。
【0107】
(積層体の作製)
<積層体J1>
片側偏光子01の偏光子側に、λ/4フィルム01と、-Cプレート01と、コレステリック液晶層B1とを、この順番で貼合して、積層体J1を作製した。
なお、各層(フィルム、Cプレート)の貼合は、粘着剤(総研化学社製、SK粘着剤)を用いて行った。この点に関しては、以下の積層体も同様である。この粘着剤は、屈折率異方性が無い物質であり、従って、Rthは0nmである。
【0108】
<積層体J2>
片側偏光子01の偏光子側に、λ/4フィルム02と、+Cプレート02と、コレステリック液晶層B2とを、この順番で貼合して、積層体J2を作製した。
【0109】
<積層体H1>
片側偏光子01の偏光子側に、λ/4フィルム01のみを貼合して、積層体H1を作製した。
【0110】
<積層体H2>
片側偏光子01の偏光子側に、λ/4フィルム01と、コレステリック液晶層B3とを、この順番で貼合して、積層体H2を作製した。
【0111】
<積層体H3>
片側偏光子01の偏光子側に、λ/4フィルム02と、コレステリック液晶層B4とを、この順番で貼合して、積層体H3を作製した。
【0112】
<積層体J3>
片側偏光子01の偏光子側に、λ/4フィルム01と、コレステリック液晶層B5とを、この順番で貼合して、積層体J3を作製した。
<積層体J4>
片側偏光子01の偏光子側に、λ/4フィルム02と、コレステリック液晶層B3とを、この順番で貼合して、積層体J4を作製した。
【0113】
<積層体J5>
片側偏光子01の偏光子側に、λ/4フィルム03と、コレステリック液晶層B1とを、この順番で貼合して、積層体J5を作製した。
<積層体J6>
片側偏光子01の偏光子側に、λ/4フィルム04と、コレステリック液晶層B2とを、この順番で貼合して、積層体J6を作製した。
【0114】
<積層体J7>
片側偏光子01の偏光子側に、λ/4フィルム01と、-Cプレート01と、-Cプレート01と、コレステリック液晶層B7とを、この順番で貼合して、積層体J7を作製した。
<積層体J8>
片側偏光子01の偏光子側に、λ/4フィルム02と、+Cプレート03と、コレステリック液晶層B6とを、この順番で貼合して、積層体J8を作製した。
【0115】
<積層体J9>
片側偏光子01の偏光子側に、λ/4フィルム01と、コレステリック液晶層B5とを、この順番で貼合して、積層体J9を作製した。ただし、この積層体は、偏光子の透過軸とλ/4フィルム01の透過軸とが成す交差角度を、45°ではなく38°とした。
<積層体J10>
片側偏光子01の偏光子側に、λ/4フィルム01と、コレステリック液晶層B5とを、この順番で貼合して、積層体J10を作製した。ただし、この積層体は、偏光子の透過軸とλ/4フィルム01の透過軸とが成す交差角度を、45°ではなく52°とした。
なお、積層体J9および積層体J10以外の積層体は、いずれも、偏光子の透過軸とλ/4フィルムの透過軸とが成す交差角度は45°である。
【0116】
<積層体J11>
片側偏光子01の偏光子側に、λ/4フィルム05と、コレステリック液晶層B2とを、この順番で貼合して、積層体J11を作製した。なお、λ/4フィルム05は、λ/4位相差層とλ/2位相差層とを積層した積層体のλ/4フィルムである。
<積層体J12>
片側偏光子01の偏光子側に、λ/4フィルム01と、コレステリック液晶層B8とを、この順番で貼合して、積層体J12を作製した。
<積層体J13>
片側偏光子01の偏光子側に、λ/4フィルム05と、コレステリック液晶層B3とを、この順番で貼合して、積層体J11を作製した。なお、λ/4フィルム05は、λ/4位相差層とλ/2位相差層とを積層した積層体のλ/4フィルムである。
【0117】
(有機EL表示装置の作製)
GalaxyS4(Samsung社製)を分解し、製品に貼合されている反射防止フィルムの一部をはがして、発光素子とした。この発光素子に、粘着剤を介して、上記作製した積層体をそれぞれ貼合した。このとき、各偏光子のコレステリック液晶層側、もしくは、λ/4フィルム側をGalaxyS4側となるように貼合した。
【0118】
(評価)
評価としては、有機EL表示装置を青表示にした時の430~470nm波長領域の最大光量を、有機EL表示装置の法線方向から測定した(青光量)。なお、評価は、製品の最大光量を100とした相対値で行った。
【0119】
また、斜め方向の反射率は、電源offの状態で、有機EL表示装置の法線方向に対して60度の方向からLED光源を入射し、-58度方向に反射する光の輝度値より、反射率[%]を求めた。
反射率の測定にはSR-3UL1(トプコン社製)を用いた。
【0120】
円偏光分離層(コレステリック液晶層)の選択反射の半値幅を測定した実施例3(半値幅60nm)、実施例12(半値幅45nm)、および、実施例13(半幅30nm)に関しては、映り込み(ハロー現象)の評価も行った。
映り込みの評価は、以下のように行った。
【0121】
(映り込みの評価)
電源offの状態で、有機EL表示装置の法線方向に対して上方45°の方向から白色LED光源を入射し、正反射方向より、有機EL表示装置の表面に映る白色LED光源の反射像のにじみ(多重像)を目視にて評価した。
評価基準は以下のとおりであり、AおよびBが実用上問題の無いレベルである。
A・・・LED光源の反射像の多重像が全くない
B・・・LED光源の反射像の多重像が正反射像から0mm以上1mm未満の幅の中に複数観察される
C・・・LED光源の反射像の多重像が正反射像から1mm以上5mm未満の幅の中に複数観察される
D・・・LED光源の反射像の多重像が正反射像から5mm以上10mm未満の幅の中に複数観察される
E・・・LED光源の反射像の多重像が正反射像から10mm以上離れた場所まで複数観察される
以上の評価の結果、実施例3の映り込みの評価はB、実施例12の映り込みの評価はA、であった。
【0122】
層構成と評価結果の詳細を下記の表に示した。
【0123】
【0124】
【0125】
これらより、本発明の有機EL表示装置によれば、青光の輝度も向上し、かつ、斜め反射率も抑制できることが確認できた。
特に、実施例1および実施例2ならびに実施例7および実施例8に示されるように、Cプレートを併用することにより、コレステリック液晶層である円偏光分離層におけるコレステリック液晶の螺旋の巻き数を増加し、かつ、偏光板と発光素子との間の部材のRth(550)を好適に調節して、より青光の輝度が高く、かつ、より斜め反射も防止した有機EL表示装置が得られる。また、実施例5および実施例6に示されるように、λ/4フィルム(位相差層)としてBプレートを用いることでも、より青光の輝度が高い有機EL表示装置が得られる。
また、実施例11に示されるように、λ/4フィルム(位相差層)は積層型でも、良好な青光の輝度向上効果および斜め反射の抑制を得られる。さらに、実施例12および実施例13に示されるように、円偏光分離層(コレステリック液晶層)の選択反射の半値幅を狭くすることで、映り込みを抑制できる。
なお、実施例9および実施例10に示されるように、本発明においては、偏光板の透過軸とλ/4フィルムの遅相軸との交差角度を45°±1°から外しても、良好な青光の輝度向上効果および斜め反射の抑制を得られる。
【産業上の利用可能性】
【0126】
表示装置としての各種の用途に利用可能である。
【符号の説明】
【0127】
10,30,100 有機EL表示装置
12 偏光子
14 位相差層
16 円偏光分離層
18 有機EL発光素子
b 青光
bx 青の直線偏光
bL 青の左円偏光
bR 青の右円偏光